(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】乾燥インプラント組成物及び注射可能なインプラント水性製剤
(51)【国際特許分類】
A61L 27/12 20060101AFI20240814BHJP
A61C 8/00 20060101ALI20240814BHJP
A61K 6/17 20200101ALI20240814BHJP
A61K 6/58 20200101ALI20240814BHJP
A61K 6/75 20200101ALI20240814BHJP
A61K 41/17 20200101ALI20240814BHJP
A61L 27/24 20060101ALI20240814BHJP
A61L 27/36 20060101ALI20240814BHJP
A61L 27/42 20060101ALI20240814BHJP
A61L 27/50 20060101ALI20240814BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
A61L27/12
A61C8/00 Z
A61K6/17
A61K6/58
A61K6/75
A61K41/17
A61L27/24
A61L27/36 100
A61L27/42
A61L27/50
A61P1/02
(21)【出願番号】P 2020532554
(86)(22)【出願日】2018-12-14
(86)【国際出願番号】 EP2018085018
(87)【国際公開番号】W WO2019115792
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-12-08
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-02
(32)【優先日】2017-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508326459
【氏名又は名称】ガイストリッヒ ファーマ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ズッピガー,ダニエーレ
(72)【発明者】
【氏名】ボクストン,ポール
(72)【発明者】
【氏名】キュルツ,ニーノ
【合議体】
【審判長】前田 佳与子
【審判官】岩下 直人
【審判官】井上 千弥子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/093502(WO,A1)
【文献】国際公開第03/010742(WO,A2)
【文献】Mater.Sci.Eng.R,2017年,Vol.111,pp.1-26
【文献】J.Biomed.Mater.Res.Part B Appl.Biomater.,2008年,Vol.84,No.2,pp.493-502
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C
A61F
A61L
CAplus/MEDLINE/REGISTRY/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
50~200μmのサイズを有する天然骨から得られるナノ結晶性ヒドロキシアパタイト粒子と、0.5mmのふるいを通過する天然架橋繊維状コラーゲン材料の断片との混合物
を含む乾燥インプラント組成物であって、ここで、コラーゲンに対するヒドロキシアパタイトのw/w比は、
2.5~4.5であ
り、乾燥インプラントの少なくとも99重量%が、前記混合物と、多くとも6%の無機塩とからなる、組成物。
【請求項2】
コラーゲンに対するヒドロキシアパタイトのw/w比が、2.5~4.2である、請求項1記載の乾燥インプラント組成物。
【請求項3】
コラーゲンに対するヒドロキシアパタイトのw/w比が、2.5~4.0である、請求項1記載の乾燥インプラント組成物。
【請求項4】
ヒドロキシアパタイト粒子が、100~180μmのサイズを有する、請求項1~3のいずれか一項記載の乾燥インプラント組成物。
【請求項5】
ガンマ線またはX線照射により滅菌されている、請求項1~4のいずれか一項記載の乾燥インプラント組成物。
【請求項6】
天然架橋繊維状コラーゲン材料が、ブタ真皮
、ブタ腹膜
及びブタ心膜からなる群より選択される、請求項1~5のいずれか一項記載の乾燥インプラント組成物。
【請求項7】
60Nを超えない力で
、ゲージ18(内径0.838mm)25.4mm長のカニューレを通して押し出すことができる、口腔組織再生のための注射可能なインプラント水性製剤を、25~45w/w%の乾燥インプラント組成物を薬学的に許容し得る水性媒体により再水和及び均質混合することにより製造するための、請求項1~6のいずれか一項記載の乾燥インプラント組成物の使用。
【請求項8】
薬学的に許容し得る水性媒体が、滅菌水、滅菌等張生理食塩水、血液又はその画分である、請求項7記載の使用。
【請求項9】
60Nを超えない力で
、ゲージ18(内径0.838mm)25.4mm長のカニューレを通して押し出すことができ、滅菌水又は滅菌等張生理食塩水により再水和及び均質混合されている、25~45w/w%の請求項1~6のいずれか一項記載の乾燥インプラント組成物を含む、口腔組織再生に使用するための注射可能なインプラント水性製剤。
【請求項10】
25~45w/w%の請求項1~6のいずれか一項記載の乾燥インプラント組成物を滅菌水又は滅菌等張生理食塩水中で再水和及び均質混合することを含む、請求項9記載の注射可能なインプラント水性製剤を製造するための方法。
【請求項11】
25~45w/w%の乾燥インプラント組成物を再水和及び均質混合することを、混合装置を備えたシリンジ中で行う、請求項10記載の方法。
【請求項12】
下記工程:
(a) 50~200μmのサイズを有する天然骨から得られるナノ結晶性ヒドロキシアパタイト粒子を提供する工程、
(b) アルカリ処理、酸処理及び有機溶媒による処理を含むプロセス並びに0.5mmのふるいを通過する断片に細かく刻むことにより、粉砕された天然架橋繊維状コラーゲン材料を調製する工程、
(c) (b)で得られた粉砕された天然架橋繊維状コラーゲン混合物を水溶液に加え、コラーゲンスラリーを得るように激しく混合し、(a)で調製された50~200μmのサイズを有するナノ結晶性ヒドロキシアパタイト粒子を加え、pHを4.2~7.5に維持しながら激しく混合する工程、
(d) (c)で得られたナノ結晶性ヒドロキシアパタイト粒子及びコラーゲンを含有する混合組成物を乾燥させる工程、及び
(e) (d)で得られた乾燥インプラント組成物をガンマ線又はX線照射により滅菌する工程、
を含む、請求項1~6のいずれか一項記載の乾燥インプラント組成物を製造するための方法。
【請求項13】
口腔組織再生に使用するための請求項9記載の注射可能なインプラント水性製剤を含有する、即時使用可能なシリンジ。
【請求項14】
-請求項1~6のいずれか一項記載の乾燥インプラント組成物を含有する混合装置
、及びゲージ18(内径0.838mm)25.4mm長のカニューレを備えたシリンジと、
-適切な量の滅菌水又は滅菌等張溶液が充填されている容器とを含む、
請求項9記載の口腔組織再生に使用するための注射可能なインプラント水性製剤を製造するためのキット。
【請求項15】
滅菌水又は滅菌等張溶液を含む容器が、カニューレを含むシリンジである、口腔組織再生に使用するための請求項14記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
本発明は、組織再生、特に、口腔組織再生、特に、歯槽骨、歯根セメント質又は歯周靭帯(PDL)の再生に使用するための、テーパーシステム及びゲージ18カニューレを介して歯周ポケットに適切に注入される、新規で注入可能なインプラント水性製剤を製造するための新規な乾燥インプラント組成物並びにその乾燥インプラント組成物を使用して製造された新規で注入可能なインプラント水性製剤、その新規で注入可能なインプラント水性製剤を調製するための方法及びキットに関する。
【0002】
歯周病の数多くのリスク要因、例えば、口腔衛生不良、タバコ喫煙、糖尿病、肥満、遺伝的素因、年齢並びに細菌の蓄積、バイオフィルム形成及び歯肉溝の感染、ひいては歯肉炎症又は歯肉炎の形成を容易にする社会経済的状態が存在する。放置すると、炎症は、歯根に沿って進行し、PDLと周囲の歯槽骨の破壊(例えば、歯周炎を指す)を引き起こす。歯周病が進行すると、歯と軟組織の間にポケットが発生し、歯の安定性が失われ、脱落するおそれがあるまで成長し続ける。歯周病の臨床徴候は、軟組織の炎症、(組織)プロービングでの出血(おそらく化膿を伴う)及び歯槽骨のX線写真状での喪失である。歯科医は、プローブを使用して歯周病の存在及び程度を判定して、歯周ポケットの深さ、すなわち、軟組織又は骨と歯との間の深さ(臨床的(歯)付着の喪失を指す)を測定することができる。
【0003】
組織再生誘導法(GTR)は、歯周構造の喪失を処置するのに広く使用されている外科手術である。この手術では、歯周病専門歯科医は、罹患した歯根及び周囲の骨へのアクセスを、軟組織を切開して、皮弁を上げることにより得る。次のステップは、適切な手動器具、超音波又はレーザー装置による罹患した骨、軟組織及び歯根表面のデブリードマンであり、ここで、罹患した組織が除去され、歯根表面がスケーリングされ、平面化される。デブリードマン後、より大きな骨欠損に、骨再生材料が充填される。誘導組織再生バリア、例えば、EP1676592B1に記載され、Geistlich Pharma AGから市販されているGeistlich Bio-Gide(登録商標)を、より深い骨欠損において骨再生材料を覆うように配置する。歯周病専門歯科医は、適切な縫合により皮弁を閉じる。ついで、歯肉、上皮付着部、骨及び骨と歯との間の歯周付着部が再形成する。この手術は有効であったが、歯肉の切開により、患者の不快感、疼痛、腫脹、歯肉退縮、敏感な歯、長い治癒時間が生じ、再感染の可能性が大きくなる。
【0004】
数多くの天然及び合成材料及び組成物が、骨欠損部位における骨再生材料として使用されてきた。
【0005】
歯周骨欠損における骨成長を促進する周知の天然の骨伝導性骨代替材料は、Geistlich Pharma AGから市販されているGeistlich Bio-Oss(登録商標)である。この材料は、US特許第5,167,961号及び同第5,417,975号に記載されている方法により天然骨から製造される。この材料により、天然骨の小柱構造及びナノ結晶構造の保存が可能となり、その結果、吸収されないか又は非常にゆっくり吸収される優れた骨伝導性マトリックスを生じる。
【0006】
歯肉の切開に関連する上記言及された欠点を軽減するために、注射可能なインプラント製剤が必要とされている。
【0007】
歯周ポケットに注射したときに患者が容易に受け入れることができ、シリンジを使用して手動で都合良く注射することができるように、注射可能なインプラント水性製剤は、ゲージ18(内径0.838mm)のカニューレ又は針より直径が大きくないカニューレを通して、好ましくは、60Nを超えない力で押し出すことができるべきである。
【0008】
最適な口腔組織再生のために、特に、歯槽骨、歯根セメント質又は歯周靭帯の再生のために、注入されたインプラント製剤が、このような再生が起こる本来のin vivo環境に近いヒドロキシアパタイト及びコラーゲンのマトリックスを提供するのが望ましい。
【0009】
天然の骨から得られるヒドロキシアパタイトは、合成(非生物学的)ヒドロキシアパタイト又はセラミックスより、再生が起こる本来のin vivo環境に近い。
【0010】
天然の骨から得られるヒドロキシアパタイトを粉砕することにより得られる粒子は、合成ヒドロキシアパタイト又はセラミックスを粉砕することにより得られる丸みを帯びた粒子より不規則かつ長手方向の形状を有する。このため、ゲージ18のカニューレを詰まらせるリスクがより高い。天然骨から得られるナノ結晶性ヒドロキシアパタイト粒子の走査型電子顕微鏡写真(SEM)を左側に、合成β-TCP粒子のSEMを右側に表わす
図5を参照のこと。このように、合成ヒドロキシアパタイト又はセラミックス粒子を含有する製剤のカニューレによる押出しの結果は、天然骨から得られるヒドロキシアパタイト粒子を含有する同様の製剤の押出しを部分的に予測するに過ぎない。
【0011】
ヒトの天然骨の1つの重要な特性は、ヒドロキシアパタイト結晶の形態及び非常に小さなサイズ(ナノサイズ)であり、ヒトの骨鉱物については、六方晶系空間群P63/m、長さ約30~50nm(c軸:[0,0,1])及び長さ14~25nm(a軸及びb軸:[1,0,0]及び[0,1,0])である。Weiner, S. et al., 1992, FASEB, 6:879-885を参照のこと。このため、再生が起こる本来の環境に近づけるために、好ましくは、ヒトの天然骨に近い結晶の形態及びサイズを有する、天然骨から得られるナノ結晶性ヒドロキシアパタイト粒子を使用するのが望ましい。
【0012】
US2012/0107401には、合成ヒドロキシアパタイト及びベータ-TCP又は天然骨から得られるヒドロキシアパタイト等のいずれかのセラミックの0.1~2mm 鉱物粒子と、ヒト又は動物源から得られる可溶性コラーゲン又は不溶性コラーゲンであることができるコラーゲンと、スタチンを含む治療剤との混合物を含む流動性移植可能骨伝導性マトリックスが記載されている。これらの流動性移植可能骨伝導性マトリックスは、ターゲット組織部位に注射し、噴霧し又は点滴注入することができるパテとして又はゲルとして適切であると教示されている。コラーゲンに対するセラミックスのw/w比は、0.15~22.5(請求項4)又は1.5~11.5(請求項5)であると教示されており、開示されているコラーゲンに対するセラミックスの唯一の具体的な比は、5及び4.83(請求項2及び[0089]、[0090])である。
【0013】
US特許第7,322,825号には、50~400μmのサイズを有する微結晶性ヒドロキシアパタイトの微粉砕された骨粒子と、直径1mm未満の「遊離コラーゲン」粒子との混合物である組成物を歯周ポケットに注射することにより歯周病を処置する方法を開示している。これらの「遊離コラーゲン」粒子は、非架橋コラーゲン小原線維又は原線維コラーゲン含有ゲル及び場合により、生理学的に適合性の増粘剤であると教示されている。この混合物は、例えば、マイクロ波放射による熱の適用による追加のエネルギー注入後に、18ゲージ(内径0.838mm)の針を通過するのに十分低い粘度を有するだけである。この特許によれば、架橋コラーゲン、例えば、Avitene又はCollastatは、18ゲージ針を通過するのに十分に小さい断片に切断することができない。具体的に記載される組成物について、コラーゲンに対するヒドロキシアパタイトのw/w比は、0.5~1.5である。
【0014】
US特許第7,322,825号の歯周病を処置する方法は広く普及していない。非架橋コラーゲン、例えば、「遊離コラーゲン」は、口腔組織再生、特に、歯槽骨、歯根セメント質又は歯周靭帯の再生に望ましい本来のin vivo環境とは程遠い。
【0015】
US特許第5,352,715号には、薬学的に許容し得る流体担体中にコラーゲン及びリン酸カルシウムセラミックス粒子を含み、ここで、リン酸カルシウムセラミックス粒子が50~250μmのサイズを有し、コラーゲンに対するリン酸セラミックス粒子のw/w比が1/19~1/1、好ましくは1/4~1/2である、軟組織及び硬組織修復及び増強のための注射可能なセラミックス製剤が開示されている。この特許の教示によれば、リン酸カルシウムセラミックス粒子は、好ましくは、非生物学的(合成)起源の焼成セラミックス粒子であり、コラーゲンは、架橋を実質的に含まない、すなわち、テロペプチドを欠き、好ましいコラーゲンは、精製アテロペプチド再構成コラーゲンである。その注射可能なセラミックス製剤は、20ゲージ(内径0.603mm)針を通過することができる。
【0016】
テロペプチド欠乏コラーゲンと合成リン酸カルシウム粒子との組み合わせは、再生が起こる本来のin vivo環境からは程遠い。
【0017】
EP0270254A2には、水分を除いて、2~40重量%の架橋を実質的に含まない再構成フィブリルアテロペプチドコラーゲンと、60~98重量%のリン酸三カルシウム、例えば、サイズ範囲100~2000μmのヒドロキシアパタイトとを含有する混合物を含み、例えば、乾燥インプラント組成物が開示されており、アテロペプチドコラーゲンに対するリン酸三カルシウムの質量比が、1.5~49である、乾燥インプラント組成物が開示されている。この乾燥インプラント組成物は、生物学的特性及び取扱い特性の両方を改善するために、ガンマ線照射で処理される。
【0018】
テロペプチドを欠くコラーゲンと合成リン酸三カルシウム粒子との組み合わせは、再生が起こる本来のin vivo環境からは程遠い。
【0019】
コラーゲンを含有する注射可能なインプラント水性製剤は、ガンマ線照射又はX線照射により滅菌することができない。無菌の注射可能なインプラント水性組成物の長期間(6か月超)にわたる安定性は、調製及び保存の劇的な無菌条件を必要とし、これは、常に容易に入手可能であるとは限らない。したがって、長期間にわたって安定であり、再水和により注射可能なインプラント水性製剤を容易に提供する、乾燥インプラント組成物を提供するのが望ましい。
【0020】
発明の概要
本発明の課題又は目的は、口腔組織再生、特に、歯槽骨、歯根セメント質又はPDLの再生に使用するための、注射可能なインプラント水性製剤を製造するのに使用することができる、乾燥インプラント組成物を見出すことであり、この注射可能なインプラント水性製剤は、先行技術のインプラント製剤の欠点を有さず、テーパーシステム及びゲージ18カニューレを通して押出し可能である。
【0021】
調製方法、成分及び天然骨から得られるナノ結晶性ヒドロキシアパタイト粒子及び天然架橋繊維状コラーゲンを含む乾燥インプラント組成物の300を超えるプロトタイプ中の成分の割合を変化させ、乾燥インプラント組成物の再水和及び均質混合により得られた製剤を、ゲージ18カニューレを使用する押出試験(実施例9に記載)に供することにより、本発明者らは、再水和され、均質に混合されたインプラント水性製剤のテーパーシステム及びゲージ18カニューレを通す押出可能性を予想外に提供し、後者は再生が起こる本来の環境に近いマトリックスを提供する、乾燥インプラント組成物の特徴を見出した。
【0022】
この上記目的は、添付の特許請求の範囲で定義された本発明により達成される。
【0023】
本発明は、
-50~200μmのサイズを有する天然骨から得られるナノ結晶性ヒドロキシアパタイト粒子と、0.5mmのふるいを通過する天然架橋繊維状コラーゲン材料の断片との混合物から本質的になり、ここで、コラーゲンに対するナノ結晶性ヒドロキシアパタイトのw/w比が1.8~4.5である、乾燥インプラント組成物、
-テーパーシステム及びゲージ18(内径0.838mm)25.4mm長のカニューレを通して押し出すことができ、口腔組織再生に使用するための注射可能なインプラント水性製剤を、25~45w/w%の上記乾燥インプラント組成物を薬学的に許容し得る水性媒体により再水和及び均質混合することにより製造するための、その乾燥インプラント組成物の使用及び
-60Nを超えない力で、テーパーシステム及びゲージ18(内径0.838mm)25.4mm長のカニューレを通して押し出すことができ、滅菌水又は滅菌等張生理食塩水により再水和及び均質混合されている、25~45w/w%の上記乾燥インプラント組成物を含む、口腔組織再生に使用するための注射可能なインプラント水性製剤
に関する。
【0024】
「混合物から本質的になる」という用語は、非常に高い割合、通常、乾燥インプラントの少なくとも99重量%が、列挙された混合物と、多くとも6%の無機塩(例えば、塩化ナトリウム等)とからなり、他の成分、通常、乾燥インプラントの多くとも1重量%が、天然源に由来し、注射可能なインプラント水性製剤の押出挙動に著しい影響を及ぼさないことを意味する。このような成分は、脂肪、硫酸化灰分、グルコサミン、ガラクトサミン及び非常に少量の残留タンパク質、例えば、ペリオスチン、デコリン及びルミカン又は類似のタンパク質の一部である場合がある。他の成分は、いかなる合成ポリマー、特に、いかなるポリエチレンオキシド、いかなるポリプロピレンオキシド又はいかなる合成潤滑剤も含まない。他の成分は、いかなるスタチン又はいかなる人工ヒドロキシアパタイト、すなわち、非生物学的起源のヒドロキシアパタイトも含まない。
【0025】
「天然骨から得られるナノ結晶性ヒドロキシアパタイト粒子」は、天然骨のナノ結晶構造の保存を可能にするプロセスにより天然骨から得られる粒子である。このようなプロセスは、天然骨の鉱物部分の再結晶がないように十分に低い温度、通常、700℃を超えない温度で行う必要がある。
【0026】
適切なこのようなプロセスは、US特許第5,167,961号又は同第5,417,975号に開示されている。アンモニアと共に加熱することにより脱脂骨中の有機物を分解すること、60℃未満の温度で流水により洗浄することによって可溶化分解産物を抽出すること及び天然骨の小柱構造及びナノ結晶構造の保存を可能にするように、250℃~600℃の温度で空気中において骨鉱物を処理すること、非常に低含量の有機不純物又はタンパク質を有するナノ結晶性ヒドロキシアパタイトを与えることを含む。天然骨から得られるナノ結晶性ヒドロキシアパタイト粒子は、上記ナノ結晶性ヒドロキシアパタイトを粉砕し、ふるい分けすることにより得ることができる。
【0027】
また、天然骨から得られるナノ結晶性ヒドロキシアパタイト粒子は、Geistlich Bio-Oss(登録商標) Small Granules(Geistlich Pharma AG, CH-6110, Switzerlandから入手可能)を粉砕し、ふるい分けすることによっても都合良く得ることができる。
【0028】
本発明の組成物に包含させるのに適した「天然骨から得られるナノ結晶性ヒドロキシアパタイト粒子」は、50~200μmのサイズを有する。
【0029】
実際に、天然骨から得られるナノ結晶性ヒドロキシアパタイト粒子が、200μm超のサイズを有する場合、再水和及び均質混合により得られるインプラント製剤は、ゲージ18(内径0.838mm)のシリンジカニューレを詰まらせる傾向があり、天然骨から得られるナノ結晶性ヒドロキシアパタイト粒子が、50μm未満のサイズを有する場合、このように小さな粒子により生じる炎症のリスクが大きくなる。
【0030】
このため、50~200μmの範囲のサイズが重要である。
【0031】
好ましくは、天然骨から得られるそのようなナノ結晶性ヒドロキシアパタイト粒子は、100~180μmのサイズを有する。ついで、炎症又は目詰まりのリスクは最小限に抑えられる。
【0032】
「天然架橋繊維状コラーゲン材料」という用語は、そのテロペプチド構造及びその天然架橋の大部分を保持するのを可能にするプロセスにより、天然の組織材料から得られる繊維状コラーゲン材料を意味する。このような天然架橋繊維状コラーゲン材料は、いかなる酵素処理、いかなる化学的架橋又はいかなる物理的架橋(例えば、脱水熱処理DHT、UV照射等による)にも供されていない不溶性コラーゲン材料である。実際に、後者の処置はいずれも、天然組織材料中に存在するテロペプチド構造及び/又は天然架橋を著しく変化させる場合がある。
【0033】
天然架橋繊維状コラーゲン材料は、加水分解及びRP-HPLCを含む公知の方法の改変に従ってデスモシン/ヨーデスモシン測定により測定された場合、50~100w/w%のコラーゲン及び0~50w/w%のエラスチン、好ましくは、70~95w/w%のコラーゲン及び5~30w/w%のエラスチンを含有する天然起源の組織から適切に得られる(例えば、Guida E. et al. 1990 Development and validation of a high performance chromatography method for the determination of desmosines in tissues in Journal of Chromatography又はRodriguqe P 2008 Quantification of Mouse Lung Elastin During Prenatal Development in The Open Respiratory Medicine Journalを参照のこと)。このような組織の例は、脊椎動物、特に、哺乳類(例えば、ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ラピヌ)の腹膜又は心膜、胎盤膜、小腸粘膜下組織(SIS)及び真皮を含む。このような組織は、好ましくは、ブタ、ウシ又はウマである。興味深い組織は、ブタ、ウシ又はウマの腹膜及び真皮である。
【0034】
好ましくは、天然架橋繊維状コラーゲン材料は、ブタ真皮及びブタ腹膜又は心膜からなる群より選択される。
【0035】
通常、コラーゲンは、主にI型コラーゲン、III型コラーゲン又はそれらの混合物である。また、コラーゲンは、一定割合の、特に、II型、IV型、VI型もしくはVIII型コラーゲン又はそれらの任意の組み合わせ又は任意のコラーゲン型を含むこともできる。
【0036】
通常、天然架橋繊維状コラーゲン材料は、50~100w/w%のコラーゲン及び0~50w/w%のエラスチン、好ましくは、70~95w/w%コラーゲン及び5~30w/w%のエラスチンを含有する。
【0037】
天然組織から得られる適切な天然架橋繊維状コラーゲン材料は、EP1676592B1の「実施例」に記載されているのと同様の方法により調製された、ブタ、ウシ又はウマの腹膜又は心膜からのコラーゲン膜であり、同方法は、アルカリ処理、酸処理及び有機溶媒による処理、続けて、0.5mmのふるいを通過する断片に細かく刻むことを含む。
【0038】
天然組織から得られる別の適切な天然架橋繊維状コラーゲン材料は、0.5mmのふるいを通過する断片に細かく刻まれたGeistlich Bio-Gide(登録商標)(Geistlich Pharma AGから市販)である。
【0039】
天然組織から得られる別の適切な天然架橋繊維コラーゲン材料は、EP2654816B1の実施例7に記載されたものと同様の方法により調製されたブタ真皮である。同方法は、アルカリ処理、酸処理、凍結乾燥及び有機溶媒による洗浄、続けて、0.5mmのふるいを通過する断片に細かく刻むことを含む。
【0040】
天然架橋繊維状コラーゲン材料が、円二色性分光法により示されるような三重らせんを示す成熟コラーゲン繊維を含むことは興味深い。実際に、このような繊維は、口腔組織再生細胞、特に、骨の再生のための細胞及びPDL靭帯の再生のための細胞によるコロニー形成に有利に働く足場を形成する。
【0041】
天然架橋繊維状コラーゲン材料は、0.5mmのふるいを通過する断片中に存在する必要がある。このような断片は、一般的には、遠心分離ミル及びコラーゲン断片のふるい分けを含む手法により、天然架橋繊維状コラーゲンを粉砕することによって得られる。
【0042】
0.5mmのふるいを通過する断片中に存在する天然架橋繊維状コラーゲン材料の特徴は、テーパーシステム及びゲージ18(内径0.838mm)カニューレを通る押出しに重要である。実際に、多数のプロトタイプについて行われた実験により示されるように、天然架橋材料のより大きな断片、例えば、0.6又は0.7mmのふるいを通過する断片が、乾燥インプラント組成物に使用された場合、乾燥インプラント組成物の再水和及び均質混合により得られるインプラント製剤がゲージ18カニューレを詰まらせる相当なリスクが存在する。
【0043】
コラーゲンに対するナノ結晶性ヒドロキシアパタイトのw/w比は、テーパーシステム及びゲージ18(内径0.838mm)カニューレを通した押出しのための別の重要なパラメータである。
【0044】
実際に、数多くのプロトタイプについて行われた実験により示されるように、コラーゲンに対するナノ結晶性ヒドロキシアパタイトのw/w比が、1.8未満又は4.5超の場合、再水和及び均質混合により得られたインプラント製剤は、容易に注射可能ではなく、テーパーシステム及びゲージ18(0.838mm内径)カニューレを通した押出に必要な力が大きすぎる。これは、予想外の結果であり、簡単には説明できないと考えられる。押出しに必要な力は、1.8から1.5に急激に向上するが、4.5から6には中程度にしか向上しない。一方、数多くのプロトタイプについて行われた実験により示されるように、比が4.5を超える、例えば、5である場合、インプラント製剤を押し出すのに必要な力の再現性は十分ではない。市販のインプラント製品に必要な高い再現性は、コラーゲンに対するナノ結晶性ヒドロキシアパタイトの比が1.8~4.5である場合にのみ達成される。
【0045】
このため、コラーゲンに対するナノ結晶性ヒドロキシアパタイトのw/w比の範囲が1.8~4.5であることが重要である。
【0046】
好ましくは、コラーゲンに対するナノ結晶性ヒドロキシアパタイトのw/w比は、2.5~4.2である。この範囲内では、押出に必要な力は、通常、より小さい。
【0047】
最も好ましくは、コラーゲンに対するナノ結晶性ヒドロキシアパタイトのw/w比は、2.5~4.0である。小さな力での押出結果の最も高い再現性が、コラーゲンに対するナノ結晶性ヒドロキシアパタイトのそのw/w比を有する注射可能なインプラント水性製剤について実際に見出された。
【0048】
注射可能なインプラント水性製剤の押出性を向上させるために、乾燥インプラント組成物は、滅菌のための通常の放射線量、典型的には、27~33kGyを使用して、ガンマ線又はX線照射により滅菌されているのが適切である。実際に、このような処理は、天然架橋繊維状コラーゲン中の特定の結合を破壊するため、その流動性及び押出性に有利である。
【0049】
「注射可能なインプラント水性製剤」という用語は、25~45w/w%の乾燥インプラント組成物を薬学的に許容し得る水性媒体により再水和及び均質混合することにより調製され、口腔組織再生のためにヒト又は動物の身体、特に、歯周ポケットに都合良く注射可能で、テーパーシステム及びゲージ18(0.838mm内径)25.4mm長のカニューレを通して押し出すことができる、インプラント製剤を指す。
【0050】
通常、注射可能なインプラント水性製剤は、60Nを超えない力で、テーパーシステム及びゲージ18(内径0.838mm)長さ25.4mmのカニューレを通して押し出すことができる。
【0051】
一般的には、その薬学的に許容し得る水性媒体は、滅菌水、滅菌等張生理食塩水、血液又はそれらの画分、通常、患者自身の血液である。
【0052】
注射可能なインプラント水性製剤は、好ましくは、25~45w/w%の乾燥インプラント組成物、より好ましくは、30~40w/w%の乾燥インプラント組成物を、滅菌水、滅菌等張生理食塩水又は血液により再水和及び均質混合することにより得られる。その量の乾燥インプラント組成物を使用する場合、注射可能なインプラント水性製剤は、60Nを超えない力で、テーパーシステム及び18ゲージ(内径0.838mm)25.4mm長のカニューレを通してシリンジから押し出すことができる新規な製剤である。
【0053】
注射可能なインプラント水性製剤が、30~40w/w%の上記定義された乾燥インプラント組成物を滅菌水又は滅菌等張生理食塩水により再水和及び均質混合することにより得られる場合、注射可能なインプラント水性製剤をテーパーシステム及び18ゲージ(内径0.838mm)、25.4mm長のカニューレを通して押し出すのに必要な力は、40N未満、好ましくは、20N未満である。
【0054】
注射可能なインプラント水性製剤が、30~40w/w%の上記定義された乾燥インプラント組成物を血液により再水和及び均質混合することにより得られる場合、30~40w/w%の乾燥インプラント組成物を含有する注射可能なインプラント水性製剤を薬学的に許容し得る媒体中で押し出すのに必要な力は、45N未満、好ましくは、25N未満である。
【0055】
本発明に使用される乾燥インプラント組成物を、下記工程:
(a) 50~200μmのサイズを有する天然骨から得られるナノ結晶性ヒドロキシアパタイト粒子を提供する工程、
(b) アルカリ処理、酸処理及び有機溶媒による処理を含むプロセス並びに0.5mmのふるいを通過する断片に細かく刻むことにより、粉砕された天然架橋繊維状コラーゲン材料を調製する工程、
(c) (b)で得られた粉砕された天然架橋繊維状コラーゲン混合物を水溶液に加え、コラーゲンスラリーを得るように激しく混合し、(a)で調製された50~200μmのサイズを有するナノ結晶性ヒドロキシアパタイト粒子を加え、pHを4.2~7.5に維持しながら激しく混合する工程、
(d) (c)で得られたナノ結晶性ヒドロキシアパタイト粒子及びコラーゲンを含有する混合組成物を乾燥させる工程、及び
(e) (d)で得られた乾燥インプラント組成物をガンマ線又はX線照射により滅菌する工程を含む方法により調製することができる。
【0056】
天然骨から得られるセラミックスのナノ結晶性ヒドロキシアパタイト粒子は、上記されたように、天然骨のナノ結晶構造の保存を可能にするプロセスにより天然骨から得られる粒子である。
【0057】
上記プロセスにより得られる高純度骨鉱物は、必要なサイズを有するように粉砕し、ふるい分けすることができる。
【0058】
代替的には、必要なサイズを有する天然骨から得られるセラミックス粒子を、粉砕工程及びふるい分け工程を使用して、Geistlich Bio-Oss(登録商標)(Geistlich Pharma AGから市販されている)から製造することができる。
【0059】
工程(b)の粉砕された天然架橋繊維状コラーゲンは、EP2654815B1の実施例7に記載されたものと同様の方法により調製することができる。同方法は、水中で、ブタ、ウシ、ウマ、ヤギ又はラピヌの獣皮を0.5~30mmの小片に粉砕することと、水溶性溶媒、例えば、アルコール又はケトンを使用して、水を除去することと、塩素化炭化水素、例えば、ジクロロエタンもしくは塩化メチレン又は非塩素化炭化水素、例えば、ヘキサンもしくはトルエンを使用して脱脂することと、pH12.0以上の強無機塩基及びpH0~1の強無機酸によりコラーゲンを処理することと、得られたスポンジの乾燥コラーゲン繊維を凍結乾燥し、これを有機溶媒、例えば、アルコール、エーテル、ケトン及び塩素化水素により洗浄することと、この溶媒を真空下で除去することと、さらに、洗浄されたコラーゲンスポンジを、遠心分離ミルを含む手法及びコラーゲン断片のふるい分けにより0.5mmのふるいを通過する断片に細かく刻むこととを含む。
【0060】
また、工程(b)の粉砕された天然架橋繊維状コラーゲンは、EP1676592B1に記載されているものと同様の方法によっても調製することができる。同方法は、ブタ、ウシ、ウマの腹膜又は心膜を機械的に処理することにより肉及びグリースを除去することと、水で洗浄することと、1~5% 水酸化ナトリウム溶液で処理することと、水で洗浄することと、0.2~0.8% 塩酸で酸性化することと、水でpH3.5まで洗浄することと、NaHCO3溶液で中和することと、水で洗浄することと、水溶性溶媒、例えば、アルコール又はケトンで脱水することと、炭化水素、例えば、ヘキサンで脱脂することと、さらに、洗浄されたコラーゲン膜を、遠心分離ミルを含む手法及びコラーゲン断片のふるい分けにより0.5mmのふるいを通過する断片に細かく刻むこととを含む。
【0061】
工程(c)において、工程(b)で調製された粉砕天然架橋繊維状コラーゲンを水溶液に加え、そのまま激しく混合して、コラーゲンスラリーを得て、ついで、コラーゲンスラリーに、工程(a)で調製された50~200μmのサイズを有するナノ結晶性ヒドロキシアパタイト粒子をコラーゲンスラリーに加え、コラーゲンスラリーと共に激しく混合する。
【0062】
通常、工程(c)で測定されるpHは、4.2~7.5、好ましくは、4.5~7.5である。
【0063】
工程(d)は、一般的には、(c)で得られたナノ結晶性ヒドロキシアパタイト粒子及びコラーゲンを含有する混合組成物を、好ましくは、減圧下で凍結乾燥し又は風乾することにより乾燥させることを含む。
【0064】
工程(b)で得られた乾燥インプラント組成物の含水率は、カールフィッシャー滴定法で測定された場合、一般的には、3~7%である。
【0065】
工程(d)に続けて、一般的には、滅菌のための通常の放射線量、典型的には、27~33kGyを使用する、ガンマ線又はX線照射による滅菌する工程(e)を場合により行う。
【0066】
さらに、本発明は、60Nを超えない力で、テーパーシステム及び18ゲージ(内径0.838mm)25.4mm長のカニューレを通して押し出すことができ、滅菌水又は滅菌等張生理食塩水により再水和及び均質混合されている、25~45w/w%の上記乾燥インプラント組成物を含む、口腔組織再生に使用するための新規で注射可能なインプラント水性製剤に関する。
【0067】
注射可能なインプラント水性製剤が、30~40w/w%の滅菌水又は滅菌等張食塩水により再水和及び均質混合された上記乾燥インプラント組成物を含む場合、注射可能なインプラント水性製剤をテーパーシステム及び18ゲージ(内径0.838mm)25.4mm長のカニューレを通して押し出すのに必要な力は、40N未満、多くの場合、20N未満である。
【0068】
骨形成細胞は、本発明の注射可能なインプラント水性製剤中において、in vitroで増殖することができることが観察されている。このことは、移植時に、再生が起こる本来のin vivo環境に非常に近いマトリックスを提供するような、注射可能なインプラント水性製剤の高い生体適合性を示す。
【0069】
また、本発明は、25~45w/w%、それぞれ30~40w/w%の上記定義された乾燥インプラント組成物を滅菌水又は滅菌等張生理食塩水により再水和及び均質混合することを含む、上記注射可能なインプラント水性製剤を製造するための方法に関する。
【0070】
再水和された材料の均質混合は、弱い力でシリンジから押し出すのに必須である。
【0071】
混合装置を備えたシリンジ内で、乾燥インプラント組成物を無菌水又は無菌等張食塩水により再水和及び均質混合するのが都合が良い。
【0072】
適切なこのようなシリンジは、
図1に示されるMedmixシリンジ混合システム(MEDMIX、SP 003-00M-02/B、カタログ番号507211)である。
【0073】
さらに、本発明は、注射可能なインプラント製剤を含有する即時使用可能なシリンジに関する。
【0074】
このような即時使用可能なシリンジは、非常に厳しい無菌条件下で注射のかなり前に、上記定義された乾燥インプラント製剤を調製し、25~45w/w%の上記定義された乾燥インプラント組成物を無菌水又は滅菌等張食塩水により再水和及び均質混合し、シリンジに注射可能なインプラント水性製剤を導入することにより調製することができる。
【0075】
また、このような即時使用可能なシリンジは、上記乾燥インプラント組成物を含有する混合装置を備えたシリンジから、シリンジ中で、この乾燥インプラント組成物を滅菌水、滅菌等張生理食塩水又は血液により再水和及び均質混合することにより、注射の直前に準備することもできる。
【0076】
また、本発明は、
-上記定義された乾燥インプラント組成物を含有する混合装置、テーパーシステム及びゲージ18(内径0.838mm)25.4mm長のカニューレを備えたシリンジと、
-適切な量の滅菌水又は滅菌等張溶液が充填されている容器とを含む、
口腔組織再生に使用するための上記注射可能なインプラント水性製剤を製造するためのキットに関する。
【0077】
好ましくは、適切な量の滅菌水又は滅菌等張溶液が充填された容器は、カニューレを有するシリンジである。このため、液体は、乾燥インプラント組成物を含有する混合装置を備えたシリンジに都合良く導入することができる。
【0078】
さらに、本発明は、上記注射可能なインプラント製剤を口腔内に埋め込むことにより、歯槽骨、歯根セメント質又はPDLの再生を促進する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0079】
本発明を、本発明の好ましい実施態様の実例及び添付の図面を参照して、さらに詳細に説明するものとする。
【
図1】
図1は、Medmixシリンジ混合システム(MEDMIX、SP 003-00M-02/B、カタログ番号507211)を表わす。(1)は、乾燥生体材料を含有するシリンジであり、(2)は、任意のルアーカニューレと適合する開孔ルアー出口を有するシリンジキャップであり、(3)は、混合プロセス中にシリンジを閉じるための開孔キャップであり、(4)は、プランジャーが取り外されると、可撓性ミキサーとなる混合装置であり、(5)は、シリンジ内の材料を混合するために取り外すことができ、その後に材料を押し出すためにリセットすることができるプランジャーである。
【
図2】
図2は、Medmixシリンジ混合システムに添付された操作説明書に記載されたMedmix混合手順のコピーである。
【
図3A】
図3Aは、実施例における乾燥インプラント組成物2を等張生理食塩水(曲線(1))又は新鮮なヒト血液(曲線(2))それぞれにより再水和及び均質混合することにより得られた注射可能なインプラント水性製剤の押出曲線を表わす。
【
図3B】
図3Bは、実施例における乾燥インプラント組成物4を等張生理食塩水(曲線(3))又は新鮮なヒト血液(曲線(4))それぞれにより再水和及び均質混合することにより得られた注射可能なインプラント水性製剤の押出曲線を表わす。
【
図4】
図4は、乾燥インプラント組成物4(実施例6で調製)をヒト血液により再水和及び均質混合することにより得られた、注入可能なインプラント水性製剤4の561nmレーザー照射による励起による、CV1000共焦点スピニングディスク顕微鏡を使用した顕微鏡画像であり、増殖したMC3T3 CytoLight Red細胞を明るく可視化する。
【
図5】
図5は、天然骨から得られるナノ結晶ヒドロキシアパタイト粒子の走査型電子顕微鏡写真(SEM)を左側に、合成ベータ-TCP粒子のSEMを右側に表わす。
【0080】
詳細な説明
以下の実施例により、本発明の範囲を限定することなく、本発明を例証する。
【0081】
実施例1 原材料の調製
1)100~150μm又は125~180μmのサイズを有するナノ結晶性ヒドロキシアパタイト微粒子の調製
ナノ結晶性ヒドロキシアパタイト骨鉱物微粒子を、US特許第5417975号の実施例1~4に記載されているように、それぞれ100~150μm又は125~180μmの更なるふるい分け工程を使用して、皮質骨又は海面骨から調製した。
【0082】
代替的には、ナノ結晶性ヒドロキシアパタイト骨鉱物微粒子を、Geistlich Bio-Oss(登録商標)Small Granules(Geistlich Pharma AG, CH-6110, Switzerlandから入手)を粉砕し、ピストルを使用して注意深く衝撃を与え、それぞれ100~150μm又は125~180μmの追加のふるい分け工程により製造した。
【0083】
100~150μm又は125~180μmのサイズを有する、上記調製されたナノ結晶性ヒドロキシアパタイト骨鉱物微粒子を使用するまでガラス瓶に保存した。
【0084】
2)コラーゲンAの調製
ブタ獣皮を肉粉砕機で1~20mmの小片に粉砕した。水分を、水溶性溶媒、例えば、アルコール又はケトンを使用して除去した。コラーゲン繊維を、塩素化炭化水素、例えば、ジクロロエタンもしくは塩化メチレン又は非塩素化炭化水素、例えば、ヘキサンもしくはトルエンを使用して脱脂した。溶媒を除去した後、コラーゲンをpH12以上の強無機塩基で6~24時間処理し、pH0~1の強無機酸で1~12時間処理した。過剰の酸を水で洗浄することにより除去し、懸濁液を無機塩等の膨潤レギュレーターの存在下で、0.5~2% コラーゲン繊維均質懸濁液に均質化した。この懸濁液を凍結乾燥により乾燥させ、得られたスポンジの乾燥コラーゲン繊維を種々の有機溶媒、例えば、アルコール、エーテル、ケトン及び塩素化炭化水素で連続的に洗浄し、ついで、溶媒を真空下で1%未満 溶媒残留物まで蒸発させた。
【0085】
洗浄されたコラーゲンスポンジの1×1cm片を、はさみを使用して手で切断した。切断片を、最初に0.5~4.0mmのふるいを含む切断ミルを使用し、ついで、台形孔を含む0.5mmのふるいを有する遠心分離ミル(Retsch, ZM200)を使用することによりさらに細かく刻んだ。代替的には、はさみ切断片を遠心分離ミルで直接粉砕した。
【0086】
このようにして、0.5mmのふるいを通過する天然架橋繊維状コラーゲン断片からなるコラーゲンAを得た。
【0087】
3)コラーゲンBの調製
若齢ブタの腹膜を肉及びグリースから機械的手段により完全に除去し、流水下で洗浄し、2% NaOH溶液で12時間処理した。ついで、この膜を流水下で洗浄し、0.5% HClで酸性化した。材料をその全厚にわたって酸性化した後(約15分)、この材料をpH3.5になるまで洗浄した。ついで、この材料を7% 食塩水で収縮させ、1% NaHCO3溶液で中和し、流水下で洗浄した。ついで、この材料をアセトンで脱水し、n-ヘキサンで脱脂した。
【0088】
この材料を、エタノールエーテルを使用して乾燥させ、0.5~1.0mmの台形スリーブを含む切削ミル(Fritsch製のPulverisette 25(www.fritsch.de./produkte/mahlen/schneidmuehlen/Pulverisette-25を参照のこと)又はRetsch製のSM300(www.retsch.de/de/produkte/zerkleinern/schneidmuehlen.htlmを参照のこと))を使用して粉砕した。
【0089】
切断コラーゲン繊維断片を、台形孔を含む0.5mmのふるいを有する遠心分離ミル(Retsch, ZM200)を使用してさらに細かく刻んだ。
【0090】
このようにして、0.5mmのふるいを通過する天然架橋繊維状コラーゲン断片からなるコラーゲンBを得た。
【0091】
実施例2 ナノ結晶性ヒドロキシアパタイト粒子及びコラーゲンを含有する混合組成物の乾燥及び滅菌
ナノ結晶性ヒドロキシアパタイト粒子及びコラーゲンを含有する混合組成物(以下の実施例3~8に記載されたように得られる)を減圧下での凍結乾燥又は風乾により乾燥させ、ガンマ線又はX線照射により滅菌した。
【0092】
1)凍結乾燥
50mlのシリンジから、塊を1mlの環状オレフィンコポリマー(COC)シリンジに裏側から充填した。1mlのシリンジ当たりに、約0.5ml容量を充填した。シリンジを両側から閉じて、4℃の冷蔵庫で5時間保管した。ついで、シリンジの両側を開けて、凍結乾燥機の金属板上に置き、各シリンジを金属板との接触面が大きくなるように倒した位置に置いた。ついで、下記凍結乾燥プログラムを開始した。
【0093】
1. -40℃に7時間凍結
2. -40℃で4時間保持
3. -10℃及び850μbarで20時間一次乾燥
4. +20℃及び100μbarで6時間二次乾燥
【0094】
代替的には、粘性コラーゲンナノ結晶性ヒドロキシアパタイト塊をシリンジ中で凍結乾燥させず、ステンレス鋼プレート上又は直径25mm未満及び深さ10mm未満の小型ステンレス鋼形態中で凍結乾燥させた。凍結乾燥後に得られた乾燥材料を、1.5mm~10mmのふるいを有する遠心分離ミル(Retsch, ZM200)を使用することにより、サイズ0.1~2mmの粒子に粉砕した。ミルによる粉砕により、再構成最終生成物中のより小さなナノ結晶性ヒドロキシアパタイト粒子がもたらされた。
【0095】
代替的には、粘性コラーゲンナノ結晶性ヒドロキシアパタイトを破砕するために、塊をシリンジの標準的なルアー出口から押し出し、ステンレス鋼プレート上に直線として形成した。ついで、この材料をそのまま凍結乾燥させた。
【0096】
2)風乾
代替的には、例えば、直線として形成された粘性コラーゲンナノ結晶性ヒドロキシアパタイト塊を、真空オーブン中で30℃及び10mbarで24時間風乾させた。
【0097】
乾燥させた直線を手で5~10mmの長さのスティックに切断した。
【0098】
ついで、顆粒化された材料又は小スティックを、開孔ルアー及び開孔キャップ(MEDMIX、SP 003-00M-02/B、カタログ番号507211)を有するシリンジキャップを備えた3mlのシリンジ混合システム(MEDMIX、CP 000-76M/D、カタログ番号506964)に充填した。
【0099】
3)滅菌
減圧下での凍結乾燥又は風乾により得られた乾燥インプラント組成物をシリンジ中で、27~33kGyのガンマ線又はX線照射により滅菌した。
【0100】
滅菌直後の乾燥生成物中の含水率は、カールフィッシャー滴定法により測定して3~7%であった。
【0101】
実施例3 100~150μm又は125~180μmのサイズを有するナノ結晶性ヒドロキシアパタイト粒子及びコラーゲンAを含有し、コラーゲンに対するナノ結晶性ヒドロキシアパタイトのw/w比が4.0である乾燥インプラント組成物1の調製
コラーゲン-ナノ結晶性ヒドロキシアパタイト組成物の調製
水及び塩酸(2M)をビーカー中で、スパチュラを使用して混合した。実施例1で得られた粉砕コラーゲンAを加え、注意深く液体中に押し込み、全てのコラーゲンを湿らせた。ビーカーをスクリュー蓋で閉じ、水-コラーゲンスラリーをSpeedmixer(CosSearch GmbH, Speedmixer DAC400.1FVZ)により、2500rpmで4分間均質に混合した。コラーゲンスラリーを混合手順の間わずかに加熱した。ついで、コラーゲンスラリーを4℃の冷蔵庫中で30分間冷却した。
【0102】
コラーゲンスラリーをSpeedmixerにより、2500rpmで2分間再度混合した。ついで、実施例1で調製された100~150μm又は125~180μmのサイズを有するナノ結晶性ヒドロキシアパタイト骨鉱物微粒子を、コラーゲンスラリーと共にビーカーに加え、塊をSpeedmixerにより、2000rpmで2分間混合した。得られたpHは、約4.5であった。
【0103】
上記実験に使用された材料の量を下記表に明記する。
【0104】
【0105】
コラーゲン-ナノ結晶性ヒドロキシアパタイト組成物の乾燥
減圧下での凍結乾燥又は風乾による乾燥及び滅菌を実施例2に記載されたように行った。
【0106】
このようにして、100~150μm又は125~180μmのサイズを有するナノ結晶性ヒドロキシアパタイト粒子及コラーゲンAを含有し、コラーゲンに対するナノ結晶性ヒドロキシアパタイトのw/w比が4.0であり、実施例9に記載されたように行った脱塩水での再水和後に4.5のpHを与える乾燥インプラント組成物1を得た。
【0107】
実施例4 125~180μmのサイズを有するナノ結晶性ヒドロキシアパタイト粒子及びコラーゲンBを含有し、コラーゲンに対するナノ結晶性ヒドロキシアパタイトのw/w比が4.0である乾燥インプラント組成物2の調製
コラーゲン-ナノ結晶性ヒドロキシアパタイト組成物の調製
実施例1で得られた粉砕コラーゲンBを注意深く脱塩水中に押し込み、全てのコラーゲンを湿らせた。ビーカーをスクリュー蓋で閉じ、水-コラーゲンスラリーをSpeedmixerにより、2500rpmで1分間均質に混合した。ついで、コラーゲンスラリーを水浴中で70℃まで4時間加熱した。ついで、コラーゲンスラリーを周囲温度又は冷蔵庫もしくは水浴中で30分間冷却した。
【0108】
コラーゲンスラリーをSpeedmixerにより、2500rpmで2分間再度混合した。ついで、実施例1で調製された125~180μmのサイズを有するナノ結晶性ヒドロキシアパタイト骨鉱物微粒子を、コラーゲンスラリーと共にビーカーに加え、塊をSpeedmixerにより、2000rpmで2分間混合した。得られたpHは、6.2であった。
【0109】
上記実験に使用された材料の量を下記表に明記する。
【0110】
【0111】
コラーゲン-ナノ結晶性ヒドロキシアパタイト組成物の乾燥
減圧下での凍結乾燥又は風乾による乾燥及び滅菌を実施例2に記載されたように行った。
【0112】
このようにして、125~180μmのサイズを有するナノ結晶性ヒドロキシアパタイト粒子及コラーゲンBを含有し、コラーゲンに対するナノ結晶性ヒドロキシアパタイトのw/w比が4.0であり、実施例9に記載されたように行った脱塩水での再水和後に6.2のpHを与える乾燥インプラント組成物2を得た。
【0113】
実施例5 125~180μmのサイズを有するナノ結晶性ヒドロキシアパタイト粒子と2部 コラーゲンA及び1部 コラーゲンBの混合物とを含有し、コラーゲンに対するナノ結晶性ヒドロキシアパタイトの(w/w)比が2.67である乾燥インプラント組成物3の調製
コラーゲン-ナノ結晶性ヒドロキシアパタイト組成物の調製
水及び塩酸(2M)をビーカー中で、スパチュラを使用して混合した。実施例1で得られた粉砕コラーゲンBを注意深く液体中に押し込み、全てのコラーゲンを湿らせた。ビーカーをスクリュー蓋で閉じ、水-コラーゲンスラリーをSpeedmixerにより、2500rpmで2分間均質に混合した。得られたpHは、0.9~1であった。ついで、コラーゲンスラリーを水浴中で70℃まで20分間加熱した。ついで、コラーゲンスラリーを25℃の水浴中で30分間冷却した。
【0114】
実施例1で得られた粉砕コラーゲンAを加え、注意深くコラーゲンスラリー中に押し込み、全てのコラーゲンを湿らせた。ついで、このスラリーをSpeedmixerにより、2500rpmで4分間混合した。
【0115】
最後に、実施例1で調製された125~180μmのサイズを有するナノ結晶性ヒドロキシアパタイト骨鉱物微粒子を、コラーゲンスラリーと共にビーカーに加え、塊をSpeedmixerにより、2000rpmで2分間混合した。得られたpHは、約4.5であった。
【0116】
上記実験に使用された材料の量を下記表に明記する。
【0117】
【0118】
ナノ結晶性ヒドロキシアパタイト-コラーゲン組成物の乾燥
減圧下での凍結乾燥又は風乾による乾燥及び滅菌を実施例2に記載されたように行った。
【0119】
このようにして、125~180μmのサイズを有するナノ結晶性ヒドロキシアパタイト粒子と2部 コラーゲンA及び1部 コラーゲンBの混合物とを含有し、コラーゲンに対するナノ結晶性ヒドロキシアパタイトの(w/w)比が2.67であり、実施例9に記載されたように行われた脱塩水での再水和後に4.5のpHを与える乾燥インプラント組成物3を得た。
【0120】
実施例6 125~180μmのサイズを有するナノ結晶性ヒドロキシアパタイト粒子と2部 コラーゲンA及び1部 コラーゲンBの混合物とを含有し、コラーゲンに対するナノ結晶性ヒドロキシアパタイトのw/w比が2.67である乾燥インプラント組成物4の調製
【0121】
コラーゲン-ナノ結晶性ヒドロキシアパタイト組成物の調製
実施例1で得られた粉砕コラーゲンBを注意深く脱塩水中に押し込み、全てのコラーゲンを湿らせた。ビーカーをスクリュー蓋で閉じ、水-コラーゲンスラリーをSpeedmixerにより、2500rpmで1分間均質に混合した。ついで、コラーゲンスラリーを水浴中で70℃まで20分間加熱した。ついで、コラーゲンスラリーを25℃の水浴中で30分間冷却した。
【0122】
実施例1で得られた粉砕コラーゲンAを加え、注意深くコラーゲンスラリー中に押し込み、全てのコラーゲンを湿らせた。ついで、このスラリーをSpeedmixerにより、2500rpmで4分間混合した。
【0123】
最後に、実施例1で調製された125~180μmのサイズを有するナノ結晶性ヒドロキシアパタイト骨鉱物微粒子を、コラーゲンスラリーと共にビーカーに加え、塊をSpeedmixerにより、2000rpmで2分間混合した。得られたpHは、6.0であった。
【0124】
上記実験に使用された材料の量を下記表に明記する。
【0125】
【0126】
ナノ結晶性ヒドロキシアパタイト-コラーゲン組成物の乾燥
減圧下での凍結乾燥又は風乾による乾燥及び滅菌を実施例2に記載されたように行った。
【0127】
このようにして、125~180μmのサイズを有するナノ結晶性ヒドロキシアパタイト粒子と2部 コラーゲンA及び1部 コラーゲンBの混合物とを含有し、コラーゲンに対するナノ結晶性ヒドロキシアパタイトのw/w比が2.67であり、実施例9に記載されたように行われた脱塩水での再水和後に6.0のpHを与える乾燥インプラント組成物4を得た。
【0128】
実施例7 125~180μmのサイズを有するナノ結晶性ヒドロキシアパタイト粒子及びコラーゲンAを含有し、コラーゲンに対するナノ結晶性ヒドロキシアパタイトのw/w比が4.0である乾燥インプラント組成物5の調製
コラーゲン-ナノ結晶性ヒドロキシアパタイト組成物の調製
粉砕コラーゲンAを注意深く脱塩水中に押し込み、全てのコラーゲンを湿らせた。実施例1で調製された125~180μmのサイズを有するナノ結晶性ヒドロキシアパタイト骨鉱物微粒子を加え、ビーカーをスクリュー蓋で閉じた。水-コラーゲン-ナノ結晶性ヒドロキシアパタイトスラリーをボルテックスミキサーにより1分間、スコップにより1分間均質に混合した。
【0129】
得られたpHは、6.1であった。
【0130】
使用された材料の量を下記表に明記する。
【0131】
【0132】
ナノ結晶性ヒドロキシアパタイト-コラーゲン組成物の乾燥
減圧下での凍結乾燥又は風乾による乾燥及び滅菌を実施例2に記載されたように行った。
【0133】
このようにして、125~180μmのサイズを有するナノ結晶性ヒドロキシアパタイト粒子及びコラーゲンAを含有し、コラーゲンに対するナノ結晶性ヒドロキシアパタイトのw/w比が4.0であり、実施例9に記載されたように行われた脱塩水での再水和後に6.1のpHを与える乾燥インプラント組成物5を得た。
【0134】
実施例8 125~180μmのサイズを有するナノ結晶性ヒドロキシアパタイト粒子及びコラーゲンAを含有し、コラーゲンに対するナノ結晶性ヒドロキシアパタイトの(w/w)比が2.0である乾燥インプラント組成物6の調製
コラーゲン-ナノ結晶性ヒドロキシアパタイト組成物の調製
粉砕コラーゲンAを注意深く脱塩水中に押し込み、全てのコラーゲンを湿らせた。実施例1で調製された125~180μmのサイズを有するナノ結晶性ヒドロキシアパタイト骨鉱物微粒子を加え、ビーカーをスクリュー蓋で閉じた。水-コラーゲン-ナノ結晶性ヒドロキシアパタイトスラリーをボルテックスミキサーにより1分間、スコップにより1分間均質に混合した。
【0135】
得られたpHは、5.8であった。
【0136】
使用された材料の量を下記表に記載する。
【0137】
【0138】
ナノ結晶性ヒドロキシアパタイト-コラーゲン組成物の乾燥
減圧下での凍結乾燥又は風乾による乾燥及び滅菌を実施例2に記載されたように行った。
【0139】
このようにして、125~180μmのサイズを有するナノ結晶性ヒドロキシアパタイト粒子及びコラーゲンAを含有し、コラーゲンに対するナノ結晶性ヒドロキシアパタイトの(w/w)比が2.0であり、実施例9に記載されたように行われた脱塩水での再水和後に5.8のpHを与える乾燥インプラント組成物6を得た。
【0140】
実施例9 シリンジ中での乾燥インプラント組成物の再水和による、注射可能なインプラント水性製剤を含有する即時使用可能なシリンジの調製
1)乾燥インプラント組成物の再水和及び均質混合により得られる、注射可能なインプラント水性製剤を含有する即時使用可能なシリンジの調製
a)3方向ストップコックバルブLuer-Lokアダプター及び1mlのシリンジの使用
2)1mlのシリンジ製品中の乾燥滅菌ナノ結晶性ヒドロキシアパタイト-コラーゲン組成物を、3方向ストップバルブルアー(Luer-Lok)アダプター(BD Connecta、3方向ストップコック、カタログ番号394600)、Vaclokシリンジ(Qosina、Vaclokシリンジ、カタログ番号C1097)及び通常の1ml単回使用補助シリンジ(Luer-Lok)を使用して再水和した。
【0141】
コラーゲンを再水和するための液体は、脱塩水、等張生理食塩水、150mM リン酸ナトリウムバッファーを含有するpH7.4のPBS溶液(NaH2PO4を脱塩水に溶解させ、水酸化ナトリウムでpHを調整することにより調製)又は血液とした。
【0142】
シリンジ中の乾燥生体材料(実施例3~8の1つで得られた乾燥インプラント組成物)の重量は既知であるか又は測定された。一定量の再水和液を補充シリンジに充填して、38重量% 乾燥生体材料を含有する注射可能なペーストを得た。
【0143】
ついで、シリンジ製品を3方向ストップコックバルブに接続し、3方向ストップコックバルブの180°反対側を閉鎖キャップにより閉じた。3方向ストップコックバルブの第3の位置(シリンジ製品から90°)で、60mlのVaclokシリンジをシステムに接続した。空気をVaclokシリンジのプランジャーを引っ張り、50ml容量でロックすることにより、シリンジ製品から排出した。ついで、3方向バルブを180°回転させて、シリンジ製品中の真空を維持した。一方、Vaclokシリンジを液体が充填された補助シリンジに置き換えた。ついで、3方向バルブを180°回転させた。真空により、液体は、シリンジ製品に自動的に流入し、生成物を湿らせた。シリンジ製品への完全な液体移動を確実にするために、シリンジ製品のプランジャーを引き戻した。材料を30秒間静置して、再水和を可能にし、その後、この材料をシリンジ製品から補助シリンジに押し込み、戻し、この連続を40回繰り返して、均質に混合された材料を得た。混合手順の後、3方向ストップコックバルブをテーパーシステム及び鈍端18ゲージ(内径0.838mm)25.4mm長のカニューレであるアプリケーターにより交換した。
【0144】
各乾燥インプラント組成物1~6を脱塩水により再水和及び均質混合することにより得られた再構成注射可能なインプラント水性製剤は、凍結乾燥前に測定されたpHに近いpH、すなわち、それぞれ約4.5、6.2、4.5、6.0、6.1及び5.8を有していた。
【0145】
b)3mlのMedmixシリンジ混合システムの使用
代替的には、乾燥材料の粒子を、脱塩水、等張生理食塩水、150mM リン酸ナトリウムバッファーを含有するpH7.4のPBS溶液又は血液により、
図1に表わされた開孔ルアー及び開孔キャップ(MEDMIX、CP 000-76M/D、カタログ番号506964)を有するシリンジキャップを備えたMedmixシリンジ混合システム(MEDMIX、SP 003-00M-02/B、カタログ番号507211)中で再水和した。同図において、(1)は、乾燥生体材料を含有するシリンジであり、(2)は、任意のルアーカニューレと適合する開孔ルアー出口を有するシリンジキャップであり、(3)は、混合プロセス中にシリンジを閉じるための開孔キャップであり、(4)は、プランジャーが取り外されると、可撓性ミキサーとなる混合装置であり、(5)は、シリンジ内の材料を混合するために取り外すことができ、その後に材料を押し出すためにリセットすることができるプランジャーである。
【0146】
図2に示されたMedmix混合手順に従った。最適な結果を得るために、ステップ4の後、プランジャーを3回押して、液体を材料に押し込んで湿らせ、混合工程(ステップ6)を60秒間行った。全ての空気をステップ8で除去する。
【0147】
3)押出試験
得られた再構成注射可能なインプラント水性製剤の押出性を、張力及び圧力試験装置(Zwick & Roell, BT1-FR2.5TS.D14)を使用して試験した。上記調製された即時使用可能な調製済みシリンジをシリンジ保持具に垂直に置き、プランジャーを機械から押し下げ、一方、テーパーシステム及び鈍端18ゲージ(内径0.838mm)25.4mm長のカニューレ(Nordson EFD, Precision Tip 18GA 1’’、カタログ番号7018110)を含むアプリケーターを通してシリンジから生成物を押し出す力を、下記プログラムで測定した。
【0148】
〇 抵抗までの力:0.1N
〇 抵抗までの速度:100mm/分
〇 試験速度: 1mm/s、位置制御
〇 試験終了:力限界、150N
〇 力センサ:200N
【0149】
脱塩水、等張生理食塩水又はPBS溶液による再水和及び均質混合により得られた全ての試験された注射可能なインプラント製剤、特に、乾燥インプラント組成物1~6から調製された注射可能なインプラント製剤について、測定された力は、40Nを超えなかった。
【0150】
血液による再水和及び均質混合により得られた全ての試験された注射可能なインプラント製剤、特に、乾燥インプラント組成物1~6から調製された注射可能なインプラント製剤について、測定された力は、45Nを超えなかった。
【0151】
乾燥インプラント組成物1、2、3、5及び6から調製された、脱塩水、等張生理食塩水又はPBS溶液による再水和及び均質混合により得られた注射可能なインプラント製剤について、測定された力は、20Nを超えなかった。
【0152】
乾燥インプラント組成物1(100~150μm又は125~180μmのサイズを有するナノ結晶性ヒドロキシアパタイト粒子及びコラーゲンAを含有し、コラーゲンに対するナノ結晶性ヒドロキシアパタイトのw/w比が4.0である)及び乾燥インプラント組成物2(125~180μmのサイズを有するナノ結晶性ヒドロキシアパタイト粒子及びコラーゲンBを含有し、コラーゲンに対するナノ結晶性ヒドロキシアパタイトのw/w比が4.0である)から調製された、血液による再水和及び均質混合により得られた注射可能なインプラント製剤について、測定された力は、25Nを超えなかった。
【0153】
乾燥インプラント組成物2及び4をそれぞれ等張生理食塩水又は新鮮なヒト血液により再水和及び均質混合することにより得られた注射可能なインプラント製剤の押出曲線を表わす、
図3A及び3Bを参照のこと。
【0154】
図3Aにおいて、(1)及び(2)は、等張生理食塩水及び新鮮なヒト血液それぞれにより再水和された乾燥インプラント組成物2(125~180μmのサイズを有するナノ結晶性ヒドロキシアパタイト粒子及びコラーゲンBを含有し、コラーゲンに対するナノ結晶性ヒドロキシアパタイトのw/w比が4.0である)の押出曲線である。
【0155】
図3Bにおいて、(3)及び(4)は、等張生理食塩水及び新鮮なヒト血液それぞれにより再水和された乾燥インプラント組成物4(125~180μmのサイズを有するナノ結晶性ヒドロキシアパタイト粒子と2部 コラーゲンA及び1部 コラーゲンBの混合物を含有し、コラーゲンに対するナノ結晶性ヒドロキシアパタイトのw/w比が2.67である)の押出曲線である。
【0156】
実施例10 生体適合性:本発明の注射可能なインプラント水性製剤における2つの骨形成細胞系統の増殖に関するin vitro試験
- Cytolight Red Lentivirus(Essen Bioscience)を使用して細胞質中に赤色蛍光タンパク質を発現するように形質導入されたマウス頭蓋冠由来の前骨芽細胞系統(ATCC CRL-2593)であるMC3T3 Cytolight red又は
- MG63(ヒト骨肉腫から得られる細胞系統)
からの細胞を本発明の注射可能なインプラント水性製剤にコロニー形成する能力について、下記のように試験した。
【0157】
これらの細胞を供給者により推奨される条件下で培養した。すなわち、MC3T3 Cytolight Red細胞については:10% ウシ胎仔血清(FBS、Lubio)、1% ペニシリン-ストレプトマイシン(GIBCO)及び0.5μg/ml ピューロマイシン(Sigma)が補充されたαMEM(GIBCO)中で培養し、MG63細胞については:10% FBS(Lubio)、1% ペニシリン-ストレプトマイシン(GIBCO)が補充されたDMEM(GIBCO)中で培養した。これらの細胞の層をマルチウォールプレートのウェルに導入し、生体材料 約1mlを、乾燥インプラント組成物1~4(実施例3~6で調製)をヒト血液又は等張生理食塩水により再水和及び均質混合することにより得られた注射可能なインプラント製剤1~4を含有する3mlのMedmixシリンジを使用して各ウェル中の細胞の層上に加えた。細胞を8日間培養した。
【0158】
これらの実験から、各注射可能なインプラント製剤1~4について、各MC3T3 CytoLight Red及びM63細胞系統による生体材料のコロニー形成が示された。
【0159】
乾燥インプラント組成物4(実施例6で調製)をヒト血液により再水和及び均質混合することにより得られた、注入可能なインプラント水性製剤4の561nmレーザー照射による励起による、CV1000共焦点スピニングディスク顕微鏡(Yokogawa)を使用した顕微鏡画像であり、増殖したMC3T3 CytoLight Red細胞を明るく可視化する、
図4を参照のこと。
【0160】
これらの実験から、骨形成細胞が本発明の注射可能なインプラント水性製剤中において、in vitroで増殖することができることが示される。このことは、移植時に、再生が起こる本来のin vivo環境に非常に近いマトリックスを提供するような、注射可能なインプラント水性製剤の高い生体適合性を示す。