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  • 特許-グロメット取付構造、及び、グロメット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】グロメット取付構造、及び、グロメット
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/22 20060101AFI20240814BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20240814BHJP
   H01B 17/58 20060101ALI20240814BHJP
   F16L 5/02 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
H02G3/22
B60R16/02 622
H01B17/58 C
F16L5/02 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021008345
(22)【出願日】2021-01-22
(65)【公開番号】P2022112532
(43)【公開日】2022-08-03
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊田 竜平
【審査官】井上 弘亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-109969(JP,A)
【文献】特開平11-234862(JP,A)
【文献】特開2014-033564(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0144378(US,A1)
【文献】特開平05-223114(JP,A)
【文献】実開平01-139320(JP,U)
【文献】特開2001-332879(JP,A)
【文献】特開平08-336224(JP,A)
【文献】特開2002-305832(JP,A)
【文献】特開2008-193793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/22
B60R 16/02
H01B 17/58
F16L 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面が被止水面として構成され、他方の面が被係止面として構成されて、前記被止水面と前記被係止面とに渡って貫通する取付孔が形成され、かつ前記被係止面において前記取付孔の周りに段差が形成された取付パネルと、
前記取付パネルの前記被止水面との間を止水可能で、かつ前記取付孔に貫通される配索材を前記取付孔の貫通方向に延在する軸線に沿って挿通可能に設けられたグロメット本体と、
前記グロメット本体が装着された状態で前記取付孔に嵌合されるグロメットインナと、
を備え、
前記グロメットインナは、
前記軸線に対して交差する径方向に沿って弾性変形可能に設けられた弾性部、及び、前記弾性部と一体に形成され前記取付パネルの前記被係止面において前記取付孔の縁に係止可能であって前記軸線の延在方向に沿って複数設けられた係止爪を含んで構成される係止アーム部を前記軸線の周りに複数有し、
複数の前記係止アーム部は、それぞれ、前記取付パネルの前記段差に応じて複数の前記係止爪のいずれかが前記取付孔の縁に係止される、グロメット取付構造。
【請求項2】
前記グロメットインナは、前記係止アーム部が、前記取付パネルの前記被係止面側に突出可能に形成され、
前記係止爪は、前記被係止面に向けて前記軸線に漸次近づく態様で複数段に設けられている、
請求項1に記載のグロメット取付構造。
【請求項3】
前記グロメット本体は、前記取付パネルの前記被止水面に接触可能な止水部を含み、
前記止水部は、前記軸線の周りに環状に形成され、かつ前記被止水面に向けて前記軸線に近づく態様で窄まって形成されている、
請求項1または請求項2に記載のグロメット取付構造。
【請求項4】
一方の面が被止水面として構成され、他方の面が被係止面として構成されて、前記被止水面と前記被係止面とに渡って貫通する取付孔が形成され、かつ前記被係止面において前記取付孔の周りに段差が形成された取付パネルの前記被止水面との間を止水可能で、かつ前記取付孔に貫通される配索材を前記取付孔の貫通方向に延在する軸線に沿って挿通可能に設けられたグロメット本体と、
前記グロメット本体が装着された状態で前記取付孔に嵌合されるグロメットインナと、
を備え、
前記グロメットインナは、
前記軸線に対して交差する径方向に沿って弾性変形可能に設けられた弾性部、及び、前記弾性部と一体に形成され前記取付パネルの前記被係止面において前記取付孔の縁に係止可能であって前記軸線の延在方向に沿って複数設けられた係止爪を含んで構成される係止アーム部を前記軸線の周りに複数有し、
複数の前記係止アーム部は、それぞれ、前記取付パネルの前記段差に応じて複数の前記係止爪のいずれかが前記取付孔の縁に係止される、グロメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グロメット取付構造、及び、グロメットに関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に適用される従来のグロメットとして、例えば、特許文献1には、線状体を密着保持する軟質性材料よりなるグロメット本体と、該グロメット本体に組み付けられ、所定の開口部に係止固定される係止部を有する硬質性材料よりなるリング部からなるグロメットが開示されている。このグロメットは、リング部に異なる大きさの開口部に係止する複数段の係止部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平09-161580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなグロメットは、例えば、取付対象となるパネルの取付孔の周りに部分的に高さの異なる段差があるような場合であっても適正な止水性能を確保することが望まれている。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、取付孔の周りに部分的に高さの異なる段差があっても、止水性能を確保することができるグロメット取付構造、及び、グロメットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るグロメット取付構造は、一方の面が被止水面として構成され、他方の面が被係止面として構成されて、前記被止水面と前記被係止面とに渡って貫通する取付孔が形成され、かつ前記被係止面において前記取付孔の周りに段差が形成された取付パネルと、前記取付パネルの前記被止水面との間を止水可能で、かつ前記取付孔に貫通される配索材を前記取付孔の貫通方向に延在する軸線に沿って挿通可能に設けられたグロメット本体と、前記グロメット本体が装着された状態で前記取付孔に嵌合されるグロメットインナと、を備え、前記グロメットインナは、前記軸線に対して交差する径方向に沿って弾性変形可能に設けられた弾性部、及び、前記弾性部と一体に形成され前記取付パネルの前記被係止面において前記取付孔の縁に係止可能であって前記軸線の延在方向に沿って複数設けられた係止爪を含んで構成される係止アーム部を前記軸線の周りに複数有し、複数の前記係止アーム部は、それぞれ、前記取付パネルの前記段差に応じて複数の前記係止爪のいずれかが前記取付孔の縁に係止される。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るグロメットは、一方の面が被止水面として構成され、他方の面が被係止面として構成されて、前記被止水面と前記被係止面とに渡って貫通する取付孔が形成され、かつ前記被係止面において前記取付孔の周りに段差が形成された取付パネルの前記被止水面との間を止水可能で、かつ前記取付孔に貫通される配索材を前記取付孔の貫通方向に延在する軸線に沿って挿通可能に設けられたグロメット本体と、前記グロメット本体が装着された状態で前記取付孔に嵌合されるグロメットインナと、を備え、前記グロメットインナは、前記軸線に対して交差する径方向に沿って弾性変形可能に設けられた弾性部、及び、前記弾性部と一体に形成され前記取付パネルの前記被係止面において前記取付孔の縁に係止可能であって前記軸線の延在方向に沿って複数設けられた係止爪を含んで構成される係止アーム部を前記軸線の周りに複数有し、複数の前記係止アーム部は、それぞれ、前記取付パネルの前記段差に応じて複数の前記係止爪のいずれかが前記取付孔の縁に係止される。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るグロメット取付構造、及び、グロメットは、取付孔の周りに部分的に高さの異なる段差があっても、止水性能を確保することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係るグロメットの分解斜視図である。
図2図2は、実施形態に係るグロメットの分解斜視図である。
図3図3は、実施形態に係るグロメットの側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
[実施形態]
図1乃至図3に示す本実施形態のグロメット1は、車両等に配索されるワイヤハーネスWHに組み込まれるものである。ここで、ワイヤハーネスWHは、例えば、車両に搭載される各機器間の接続のために、電源供給や信号通信に用いられる複数の配索材Wを束にして集合部品とし、コネクタ等で複数の配索材Wを各機器に接続するようにしたものである。ワイヤハーネスWHは、導電性を有する配索材Wと、配索材Wに設けられ当該配索材Wが挿通されるグロメット1とを備える。ワイヤハーネスWHは、この他、さらに、コルゲートチューブ、樹脂テープ、プロテクタ等の外装部材、電気接続箱、固定具など種々の構成部品を含んで構成されてもよい。配索材Wは、例えば、金属棒、電線、電線束等によって構成される。金属棒は、導電性を有する棒状部材の外側を、絶縁性を有する被覆部によって覆ったものである。電線は、複数の導電性を有する金属素線からなる導体部(芯線)の外側を、絶縁性を有する被覆部によって覆ったものである。電線束は、当該電線を束ねたものである。ワイヤハーネスWHは、複数の配索材Wを束ねて集約すると共に、束ねられた配索材Wの端末に設けられたコネクタ等を介して各種機器が電気的に接続される。
【0012】
グロメット1は、取付対象である取付パネル100に形成された取付孔101を介して当該取付パネル100を境界にして区画される2つの空間に渡って配索材Wを配索する際に当該取付孔101に適用されるものである。取付パネル100は、例えば、車両のボデー等を構成する金属板であり、取付孔101は、当該取付パネル100を板厚方向に沿って貫通する。取付パネル100を境界にして区画される2つの空間とは、典型的には、車内空間(例えば、キャビン)と車外空間(例えば、エンジンコンパートメント)である。
【0013】
取付パネル100は、軸線方向Xに向く一方の面が被止水面102として構成され、他方の面が被係止面103として構成される。取付孔101は、被止水面102と被係止面103とに渡って貫通する。被止水面102は、取付孔101の縁の全周が同一の平坦な面として形成される。被止水面102は、グロメット1において、後述する止水部11Aが接触可能な面である。一方、被係止面103は、取付孔101の縁の周りに段差103aが形成される。段差103aは、図3に示すように被止水面102と被係止面103との間の板厚が取付孔101の縁の周りで異なるように形成されたものであり、ここでは、4つの段差103aが設けられている。
【0014】
そして、グロメット1は、当該ワイヤハーネスWHの配索材Wが挿通され当該配索材Wの周囲に外装された状態で取付孔101に組み付けられることで、取付孔101を通る配索材Wを保護すると共に当該取付孔101を止水(防水)するものである。グロメット1は、取付孔101の防水の他、防塵、遮音等の機能も有する。本実施形態のグロメット取付構造50は、上記の取付パネル100と、グロメット1とを備えて構成されるものである。以下、各図を参照してグロメット1の構成について詳細に説明する。
【0015】
なお、以下の説明では、便宜的に互いに交差する第一方向、第二方向、及び、第三方向のうち、第一方向を「軸線方向X」といい、第二方向を「幅方向Y」といい、第三方向を「高さ方向Z」という。軸線方向Xと幅方向Yと高さ方向Zとは、典型的には、相互に直交する。ここでは、軸線方向Xは、上述した取付パネル100の板厚方向に相当し、取付孔101に対する配索材W、グロメット1の挿通方向に相当する。言い換えれば、軸線方向Xは、グロメット1に挿通された配索材Wの延在方向に沿う方向である。幅方向Y、高さ方向Zは、取付パネル100の延在方向に相当する。ここでは、説明をわかり易くするため便宜的に、配索材Wが軸線方向Xに沿って直線状に配索されるものとして説明するが、これに限らず、グロメット1が取付パネル100に取付られた状態で、グロメット1に挿通された配索材Wが軸線方向Xから外れるように一部で屈曲や湾曲されて設けられるものであってもよい。また、以下の説明で用いる各方向は、特に断りのない限り、グロメット1が取付パネル100に組み付けられた状態での方向として説明する。また、取付孔101の中心を通過する軸線Cは、取付パネル100の板面に対して直交し、軸線方向Xに沿って延びる。軸線Cに直交する方向を径方向といい、軸線Cから離れる側を径方向外側といい、軸線Cに近づく側を径方向内側という。
【0016】
本実施形態のグロメット1は、図1乃至図3に示すように、グロメット本体10、及び、グロメットインナ20を含む。
【0017】
グロメット本体10は、本体部11、及び、筒部12を含んで構成され、これらが一体となって弾性体として形成される。グロメット本体10は、例えば、ゴムや熱可塑性エラストマー等、剛性が低く高い可撓性を有する絶縁性の弾性樹脂材料(例えば、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)等)により形成される。
【0018】
本体部11は、取付パネル100の取付孔101に装着された状態で、当該取付孔101を止水すると共に軸線方向Xに沿って配索材Wが挿通される部分である。本体部11は、止水部11A、及び、閉塞部11Bを含んで構成され、全体としてドーム状に形成される。
【0019】
止水部11Aは、取付パネル100の取付孔101の周りを囲むように環状に形成される。止水部11Aは、取付パネル100の被止水面102に対して接触し、当該被止水面102との間を止水する部分である。本実施形態の止水部11Aは、先端が被止水面102に向くように舌状に形成されて止水部11Aの環状に沿う環状の外周部として形成される。止水部11Aは、先端11Aaが径方向内側に向いて形成される。従って、止水部11Aは、軸線Cの周りに環状に形成され、かつ被止水面102に向けて軸線Cに近づく態様で窄まって形成されている。止水部11Aは、グロメット1が取付孔101に装着された状態で、弾性変形によって取付孔101の周縁の被止水面102に密着し、取付孔101の全周縁をシールするよう構成される。
【0020】
閉塞部11Bは、止水部11Aの基端に一体に繋がって形成され、止水部11Aの環状を塞ぐように形成される。従って、閉塞部11Bは、止水部11Aが密着する取付パネル100の被止水面102側において、止水部11Aと共に取付孔101を覆って塞ぐように構成される。なお、図3に示すように、本体部11の内面において、閉塞部11Bと止水部11Aとの間には、環状に連続する溝部11Cが形成される。
【0021】
筒部12は、本体部11と一体で筒状に形成され、内部に軸線方向Xに沿って配索材Wが挿通される。筒部12は、閉塞部11Bに対して一体に設けられる。筒部12は、軸線Cを中心とした円筒状に形成され、軸線方向Xに沿って延在する。筒部12は、軸線方向Xの一方側である先端部12Aが開口し、他方側の基端部12Bが閉塞部11Bに接続される。筒部12は、先端部12Aが基端部12Bよりも直径が小さくなっている。筒部12は、先端部12Aの内周面にリップ部12Aaが形成されている。リップ部12Aaは、周方向に沿って環状に形成される襞状の止水部であり、軸線方向Xに沿って間隔をあけて複数設けられている。各リップ部12Aaは、筒部12の内部に配索材Wが挿通された状態で当該配索材Wの外表面に接触し当該外表面との間を止水する。そして、筒部12は、挿通された配索材Wと当該筒部12とに渡って巻きテープ等が巻き回されることで開口が止水される。
【0022】
また、筒部12は、管部材12Cを含む。管部材12Cは、筒部12の基端部12Bに設けられ、当該基端部12Bを軸線方向Xに貫通して形成される。従って、管部材12Cは、グロメット1を貫通して設けられている。管部材12Cは、グロメット1を取付パネル100の取付孔101に取り付けた後、例えば、図には明示しないが、ウォッシャー液を通すパイプを軸線方向Xに通すことに用いられる。
【0023】
グロメットインナ20は、グロメット本体10が装着されると共に内側に配索材Wが挿通され、取付パネル100の取付孔101の縁に沿って嵌合可能な部材である。グロメットインナ20は、図1乃至図3に示すように、本体部21、係止アーム部22、及び、鍔部23を含んで構成される。グロメットインナ20は、本体部21、係止アーム部22、及び、鍔部23が一体となってグロメット本体10より高剛性の剛体として形成される。グロメットインナ20は、例えば、グロメット本体10よりも剛性の高いポリプロピレン(PP)等の合成樹脂材により形成される。本体部21は、取付パネル100の取付孔101の形状に沿って軸線方向Xに延びる筒状に形成され、当該筒状が第一部材21Aと第二部材21Bとに分割して形成される。第一部材21A、及び、第二部材21Bは、対称形状に形成され、相互の爪21Aa,21Baと孔21Ab,21Bbとが嵌め合うことで筒状を形成する。係止アーム部22は、詳細を後述するが、本体部21の第一部材21A、及び、第二部材21Bの外周面から外側に突出して形成される。係止アーム部22は、取付パネル100の取付孔101の縁に引っ掛かるように設けられ、本体部21を取付孔101の縁に装着する。係止アーム部22は、筒状の本体部21に対し軸線Cの周りに等間隔で複数個所に配置され、本実施形態では4個所に配置されている。鍔部23は、本体部21の筒状の一端において本体部21の外側に向けて延在し、かつ本体部21の筒状に沿って周方向に連続して設けられる。鍔部23は、本体部21の第一部材21A、及び、第二部材21Bと共に分割して形成される。鍔部23は、グロメット本体10の本体部11に形成された溝部11Cに挿入する。このグロメットインナ20は、鍔部23がグロメット本体10の本体部11の溝部11Cに挿入された状態で、第一部材21A、及び、第二部材21Bを嵌め合わせて筒状に形成し、この状態で係止アーム部22を取付パネル100の取付孔101の縁に引っ掛ける。このようにすることで、グロメットインナ20は、図3に示すように、グロメット本体10を伴って取付パネル100の取付孔101に装着される。グロメットインナ20によって取付パネル100の取付孔101に装着されたグロメット本体10は、止水部11Aが取付パネル100の被止水面102に接触して止水性能を発揮する。なおここでは、第一部材21Aと第二部材21Bとは、別体に形成されるものとして説明したが、相互に開閉可能なようにヒンジ形状で連結されて形成されてもよい。
【0024】
このグロメット1は、グロメット本体10の筒部12に配索材Wを挿通した後、配索材Wが筒状の中を通るように、グロメットインナ20の第一部材21A、及び、第二部材21Bをグロメット本体10に組み付け、第一部材21A、及び、第二部材21Bを嵌め合わせる。グロメットインナ20は、分割された第一部材21A、及び、第二部材21Bを有することで、グロメット本体10の溝部11Cに容易に挿入できる。また、グロメットインナ20は、分割された第一部材21A、及び、第二部材21Bを有することで、配索材Wを避けてグロメット本体10に容易に嵌め合わせることができる。このグロメットインナ20は、第一部材21A、及び、第二部材21Bが対称形状に形成されているため、同一部材の成形によって得ることができる。ここまでの手順により、グロメット1は、配索材Wに取り付けられ、配索材Wと共にワイヤハーネスWHを構成する。その後、グロメット1は、取付パネル100の被止水面102側からグロメット本体10の筒部12側を挿通すると共にグロメットインナ20の本体部21を当該取付孔101に嵌合させる。グロメットインナ20は、鍔部23がグロメット本体10の本体部11の溝部11Cに挿入された状態で、係止アーム部22が取付パネル100における被止水面102側から取付孔101に挿通されて被係止面103側にて取付孔101の縁に引っ掛かる。これにより、グロメットインナ20は、グロメット本体10を伴って取付パネル100の取付孔101に装着される。グロメット本体10は、止水部11Aが被止水面102に接触し、これにより止水性能が確保される。
【0025】
以下、係止アーム部22の詳細について説明する。係止アーム部22は、弾性部22A、及び、係止爪22Bを含みグロメットインナ20の本体部21等と一体に構成される。上述したように係止アーム部22は、軸線Cの周りに複数配置されることから、当該係止アーム部22に構成される弾性部22A、及び、係止爪22Bも軸線Cの周りに複数配置される。
【0026】
弾性部22Aは、本体部21(第一部材21A、及び、第二部材21B)において、軸線Cに対して交差する径方向に沿って弾性変形可能に設けられる。具体的に、弾性部22Aが設けられる、グロメットインナ20の本体部21は、第一部材21Aと第二部材21Bとが嵌め合わされた状態で、図3に示すように、軸線Cを中心として軸線方向Xに延びる筒状の内周壁21C、及び、外周壁21Dを含む。内周壁21Cと外周壁21Dとは、径方向に間隔を空けて設けられており、軸線方向Xの一端側が連結され、他端側が開放されて相互の間に空間部21Eを構成する。外周壁21Dには、他端部に上記鍔部23が設けられる。この本体部21に対し、弾性部22Aは、外周壁21Dの一部が軸線方向Xに沿って切り欠かれ、これにより内周壁21Cと外周壁21Dとが連結する軸線方向Xの一端側を基端部22Aaとし、軸線方向Xに沿って延在する板片として形成されている。弾性部22Aは、基端部22Aaが内周壁21Cの一端側から他端側に折り返すように湾曲して形成される。さらに、弾性部22Aは、先端部22Abが軸線方向Xの他端側であって、図3に示すようにグロメットインナ20が取付パネル100に嵌合した状態で被係止面103側に向けて突出して形成される。これらの構成により、弾性部22Aは、その板片が、軸線Cに対して交差する径方向に自身の弾性力を伴って弾性変形することで、内周壁21C、及び、外周壁21Dに対して相対的に径方向に変位可能に設けられる。即ち、弾性部22Aは、内周壁21C、及び、外周壁21Dを不動とした状態で、自身のみが弾性力を伴って弾性変形し、径方向に変位することができる。
【0027】
係止爪22Bは、弾性部22Aにおいて軸線方向Xに沿って延在する先端部22Abに一体に設けられる。係止爪22Bは、板片をなす弾性部22Aの先端部22Abにおいて、径方向外側に設けられ、かつ軸線方向Xに沿って複数設けられている。また、係止爪22Bは、図3に示すようにグロメットインナ20が取付パネル100に嵌合した状態で被係止面103に向けて軸線Cに漸次近づく態様で複数段に設けられている。即ち、係止爪22Bは、グロメットインナ20が取付パネル100に嵌合した状態で、弾性部22Aにおける先端部22Abの径方向外側にて、被係止面103に向けて径方向内側に近づくように複数の階段状に設けられ、各段が被係止面103側において取付パネル100の取付孔101の縁に引っ掛かるように設けられる。
【0028】
なお、係止アーム部22は、係止爪22Bが弾性部22Aよりも径方向外側に突出して形成され、鍔部23から最も遠い係止爪22Bが径方向外側に最も突出している。そして、係止アーム部22は、この鍔部23から最も遠い係止爪22Bと、弾性部22Aの基端部22Aaとの間に、径方向外側において相互を連ねる傾斜面22Cが形成される。
【0029】
このようにして、弾性部22A、係止爪22B、及び、傾斜面22Cを含む係止アーム部22は、グロメットインナ20において取付パネル100の被係止面103側に突出可能に形成される。
【0030】
このように構成された係止アーム部22は、取付パネル100の取付孔101にグロメットインナ20を嵌合させる場合、弾性部22Aの基端部22Aa側が先に被止水面102側から取付孔101に挿入される。係止アーム部22は、傾斜面22Cが取付孔101の内周面に接触することで、弾性部22Aが径方向外側に弾性力を生じながら径方向内側に弾性変形する。係止アーム部22は、さらに挿入が進み、図3に示すように、取付孔101を通過して被係止面103側に出た係止爪22Bが弾性部22Aの弾性力により取付孔101の縁に引っ掛かる。このとき、グロメット本体10は、取付パネル100の被止水面102に止水部11Aが十分に接触するまで押し付けられ、この押し付け量に応じて係止アーム部22は、係止爪22Bのいずれかが取付孔101の縁に引っ掛かることとなる。従って、グロメット1は、止水部11Aが被止水面102に対して十分に接触して止水性能を確保できるまでグロメット本体10が被止水面102に押し付けられることで係止アーム部22の係止爪22Bのいずれかが取付孔101の縁に適宜引っ掛かり、取付孔101に装着される。
【0031】
ここで、取付パネル100において取付孔101の周りに段差103aが形成されている場合、グロメット1は、上記と同様に止水部11Aが被止水面102に対して十分に接触して止水性能を確保できるまでグロメット本体10が被止水面102に押し付けられる。このとき、係止アーム部22は、比較的低い段差103a(103aa)に対しては、鍔部23に近い係止爪22Bが取付孔101の縁に引っ掛かり、比較的高い段差103a(103ab)に対しては、鍔部23から遠い係止爪22Bが取付孔101の縁に引っ掛かる。低い段差103a(103aa)とは、被止水面102から被係止面103が近い段差103aで、取付パネル100の板厚T1が薄い部分であり、高い段差103a(103ab)とは、被止水面102から被係止面103が遠い段差103aで、取付パネル100の板厚T2が厚い部分である。
【0032】
本実施形態のグロメット取付構造50、及び、グロメット1は、上述したように、係止アーム部22において、グロメットインナ20の内周壁21C、及び、外周壁21Dを不動とした状態で、弾性部22A自身のみが弾性力を伴って弾性変形し、径方向に変位する。即ち、グロメット1は、取付孔100に装着されるとき、グロメット本体10の止水部11Aが被止水面102に対して十分に接触して止水性能を確保できるまでグロメット本体10が被止水面102に押し付けられる。このとき、グロメットインナ20は、外周壁21Dに設けられた鍔部23がグロメット本体10の溝部11Cに挿入されているためグロメット本体10と共に被止水面102側に押される。一方、係止アーム部22は、弾性部22Aが内周壁21C、及び、外周壁21Dに対して相対的に径方向に変位可能に設けられている。従って、係止アーム部22は、グロメット本体10の止水部11Aを被止水面102に押し付けるための外周壁21Dの軸線方向Xに沿った移動に伴って弾性部22Aが当該外周壁21Dに対して径方向に変位して段差103aに応じて係止爪22Bが取付孔101の縁に引っ掛かる。このとき、係止アーム部22は、段差103aの位置に応じて複数の係止爪22Bのうちのいずれかが選択的に取付孔101の縁に引っ掛かる。
【0033】
より具体的には、複数の係止アーム部22は、段差103aに起因して、被係止面103における係止位置に応じて取付パネル100の厚みが異なる位置に係止されることとなる。このとき、各係止アーム部22は、軸線方向Xに並んだ複数の係止爪22Bのうち、段差103aに応じた位置の係止爪22B、言い換えれば、取付パネル100の厚みに応じた位置の係止爪22Bが被係止面103に係止されることとなる。そして、係止アーム部22のこの係止動作は、上記のように外周壁21Dに対して弾性部22Aが独立して弾性変形することによって行われるため、この動作に起因して外周壁21Dと被止水面102との距離を変位させることを抑制することができる。この結果、複数の係止アーム部22は、自身の係止動作によってグロメットインナ20、及び、グロメット本体10を軸線Cに対して傾けたりすることを抑制することができる。このように、本実施形態の係止アーム部22係止動作は、グロメット本体10の止水部11Aが被止水面102に接触することを阻害することはない。従って、本実施形態のグロメット取付構造50、及び、グロメット1によれば、取付孔101の周りに部分的に高さの異なる段差103aがあっても止水性能を確保することができる。
【0034】
以上で説明したように、本実施形態のグロメット取付構造50は、一方の面が被止水面102として構成され、他方の面が被係止面103として構成されて、被止水面102と被係止面103とに渡って貫通する取付孔101が形成され、かつ被係止面103において取付孔101の周りに段差103aが形成された取付パネル100と、グロメット1とを備える。グロメット1は、取付パネル100の被止水面102との間を止水可能で、かつ取付孔101に貫通される配索材Wを取付孔101の貫通方向に延在する軸線Cに沿って挿通可能に設けられたグロメット本体10と、グロメット本体10が装着された状態で取付孔101に嵌合されるグロメットインナ20と、を備える。そして、グロメットインナ20は、軸線Cに対して交差する径方向に沿って弾性変形可能に設けられた弾性部22A、及び、弾性部22Aと一体に形成され取付パネル100の被係止面103において取付孔101の縁に係止可能であって軸線Cの延在方向に沿って複数設けられた係止爪22Bを含んで構成される係止アーム部22を軸線Cの周りに複数有し、複数の係止アーム部22は、それぞれ、取付パネル100の段差103aに応じて複数の係止爪22Bのいずれかが取付孔101の縁に係止される。
【0035】
このグロメット取付構造50、及び、グロメット1によれば、複数の係止アーム部22は、取付パネル100の段差103aに応じて複数の係止爪22Bのいずれかが取付孔101の縁に係止される。このため、このグロメット取付構造50、及び、グロメット1によれば、グロメットインナ20を取付孔101に嵌合でき、グロメット本体10による取付パネル100の被止水面102との間の止水が行える。この結果、このグロメット取付構造50、及び、グロメット1によれば、取付孔101の周りに部分的に高さの異なる段差103aがあっても、止水性能を確保することができる。
【0036】
また、本実施形態のグロメット取付構造50、及び、グロメット1では、グロメットインナ20は、係止アーム部22が、取付パネル100の被係止面103側に突出可能に形成され、係止爪22Bは、被係止面103に向けて軸線Cに漸次近づく態様で複数段に設けられている。
【0037】
このグロメット取付構造50、及び、グロメット1によれば、係止爪22Bは、グロメットインナ20が取付パネル100に嵌合した状態で、被係止面103に向けて径方向内側に近づくように複数の階段状に設けられる。このため、このグロメット取付構造50、及び、グロメット1によれば、グロメット本体10を装着した状態のグロメットインナ20を取付孔101に挿入する過程で、複数の係止アーム部22の各段の係止爪22Bが被係止面103側において取付パネル100の取付孔101の縁に引っ掛かる。この結果、このグロメット取付構造50、及び、グロメット1によれば、グロメットインナ20を取付孔101に適宜嵌合させることができ、止水性能を確保することができる。
【0038】
また、本実施形態のグロメット取付構造50、及び、グロメット1では、グロメット本体10は、取付パネル100の被止水面102に接触可能な止水部11Aを含み、止水部11Aは、軸線Cの周りに環状に形成され、かつ被止水面102に向けて軸線Cに近づく態様で窄まって形成されている。
【0039】
このグロメット取付構造50、及び、グロメット1によれば、被止水面102への押し付け力によって止水部11Aが内倒しの形態となって被止水面102からの浮きが抑止される。この結果、このグロメット取付構造50、及び、グロメット1によれば、環状の周方向において被止水面102との密着度を均等に保つことができ、止水性能を確保することができる。
【0040】
なお、上述した実施形態のグロメット取付構造50、及び、グロメット1において、取付パネル100は、被止水面102の取付孔101の縁の全周が同一の平坦な面として形成されると説明したが、この限りではない。例えば、被止水面102は、被係止面103の段差103aの絞り加工によって追従した凹凸が形成される場合がある。また、被止水面102は、被係止面103の段差103aの加工に伴わず凹凸が形成される場合がある。ここで、本実施形態のグロメット1は、止水部11Aの先端11Aaが径方向内側に向いて形成される。この構成により、グロメット取付構造50、及び、グロメット1は、被止水面102に凹凸がある場合でも当該凹凸に対し止水部11Aが追従して被止水面102に密着するため、止水性能を確保できる。
【0041】
なお、上述した本発明の実施形態に係るグロメット取付構造50、及び、グロメット1は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。また、本実施形態に係るグロメット取付構造50、及び、グロメット1は、以上で説明した実施形態、変形例の構成要素を適宜組み合わせることで構成してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 グロメット
10 グロメット本体
11A 止水部
20 グロメットインナ
22 係止アーム部
22A 弾性部
22B 係止爪
50 グロメット取付構造
100 取付パネル
101 取付孔
102 被止水面
103 被係止面
103a 段差
C 軸線
W 配索材
図1
図2
図3