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特許7538062運賃決定方法、運賃決定システム、及び、運賃決定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】運賃決定方法、運賃決定システム、及び、運賃決定装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/40 20240101AFI20240814BHJP
【FI】
G06Q50/40
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021026418
(22)【出願日】2021-02-22
(65)【公開番号】P2022128091
(43)【公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山城 昌雄
(72)【発明者】
【氏名】大塚 理恵子
(72)【発明者】
【氏名】青木 千佐子
【審査官】山崎 誠也
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-114032(JP,A)
【文献】特開2004-139367(JP,A)
【文献】特開2020-154657(JP,A)
【文献】中川伸吾,イールドマネジメントのための割引商品発売上限数計画システム,JREA,一般社団法人日本鉄道技術協会,2020年04月01日,63巻, 4号,25-28ページ,ISSN 0447-2322
【文献】ダイナミックプライシングは万能か 繁閑差がビジネスチャンスを生む PART 3 新幹線も料金変動?,日経XTREND,日本,日経BP社,2019年03月14日,vol.012,P.22-23,ISSN 2434-0219
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサが、公共交通機関の乗降場所が区間の基準とされた各時間帯における各区間の乗車率と、乗車率の条件式または乗車率に情報を付加した条件式に合わせて決定された定数と、を用いて、出発地から到着地までの全区間についての乗車率に対応する前記定数を合計することで、運賃の変動量の決定に用いる運賃変動定数を前記各時間帯について計算し、
対象となる時間帯における、出発地から到着地までの移動体の利用者数を取得し、
交通事業者の目標収入に運賃収入が近付くように、計算した前記運賃変動定数と、取得した前記利用者数と、に基づいて運賃の変動量である運賃変動量を前記各時間帯について決定し、
前記各時間帯の運賃変動量を用いて、変更前運賃である基準運賃と前記運賃変動量を合計することで、前記出発地から前記到着地までの各時間帯の変動後の運賃を決定する、
ことを特徴とする運賃決定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の運賃決定方法であって
前記プロセッサは、
間における複数日の乗車率実績の平均値、区間における複数日の乗車率実績の中央値、または、区間における複数日の乗車率実績の最頻値に基づいて、前記の区間の乗車率を算出する、
ことを特徴とする運賃決定方法。
【請求項3】
請求項2に記載の運賃決定方法であって
前記プロセッサは、
発地から到着地までの複数の移動経路のうちで、出発地から到着地までの所要時間が最も短くなる移動経路の公共交通機関を利用者が利用する公共交通機関であると推定し、
推定した公共交通機関の移動体について、前記の各区間の乗車率を算出する、
ことを特徴とする運賃決定方法。
【請求項4】
請求項1に記載の運賃決定方法であって、
前記時間帯は、各区間の出発地に関する利用者の入時刻と、各区間の到着地に関する利用者の出時刻と、を基準とする、
ことを特徴とする運賃決定方法。
【請求項5】
請求項1に記載の運賃決定方法であって
発地から到着地までの複数の移動経路のうちで、出発地から到着地までの所要時間が最も短くなる移動経路において、出発地から到着地まで利用者が移動する時間に輸送障害が発生していた場合
前記プロセッサは、
記利用者の各区間の出発地に関する入時刻と出発地と到着地が参照された第1運賃と、前記利用者の各区間の到着地に関する出時刻と出発地と到着地が参照された第2運賃と、のうちの安い方の運賃を、前記利用者の運賃として出場時に決定する、
ことを特徴とする運賃決定方法。
【請求項6】
請求項1に記載の運賃決定方法であって、
前記プロセッサは、
間における移動体の乗車人数の統計値と、前記移動体の定員人数と、に基づいて、前記の区間の乗車率を算出する、
とを特徴とする運賃決定方法。
【請求項7】
請求項1に記載の運賃決定方法であって
前記プロセッサは、
前記利用者数を、所定時間帯における、出発地から到着地への移動経路における移動体の利用者数に関する過去実績、或いは、所定時間帯における、出発地から到着地への移動経路における移動体の利用者数を推定出力する学習済モデルに基づいて予測し、
交通事業者の年間の目標収入に年間の運賃収入が近付くように、予測される前記利用者数を用いて前記運賃変動量を自動調整する、
ことを特徴とする運賃決定方法。
【請求項8】
請求項7に記載の運賃決定方法であって
前記プロセッサは、
前記利用者数を、それぞれ異なる複数の尺度を用いて範囲を持たせて予測し、
予測される前記利用者数を用いて、前記運賃変動量を、範囲を持たせて決定する、
ことを特徴とする運賃決定方法。
【請求項9】
請求項1に記載の運賃決定方法であって、
前記プロセッサは、
前記利用者数を、運賃が変動する場合の利用者数の変動の予測に用いるモデルを用いて取得し、
交通事業者の年間の目標収入に年間の運賃収入が近付くように、前記利用者数を用いて前記運賃変動量を自動調整する、
ことを特徴とする運賃決定方法。
【請求項10】
運賃決定装置と、利用者の各区間の出発地に関する入時刻と、利用者の出発地と、利用者の到着地と、利用者の各区間の到着地に関する出時刻を取得する外部システムと、を備える運賃決定システムであって、
前記運賃決定装置は、
プロセッサを備え、
記プロセッサは
共交通機関の乗降場所が区間の基準とされた各時間帯における各区間の乗車率を計算し
算した各区間における前記乗車率と、乗車率の条件式または乗車率に情報を付加した条件式に合わせて決定された定数と、を用いて、出発地から到着地までの全区間についての乗車率に対応する前記定数を合計することで、運賃の変動量の決定に用いる運賃変動定数を前記各時間帯について計算し、
対象となる時間帯における、出発地から到着地までの移動体の利用者数を取得し、
交通事業者の目標収入に運賃収入が近付くように、計算した前記運賃変動定数と、取得した前記利用者数と、に基づいて運賃の変動量である運賃変動量を前記各時間帯について決定し、
前記各時間帯の運賃変動量を用いて、変更前運賃である基準運賃と前記運賃変動量を合計することで、前記出発地から前記到着地までの各時間帯の変動後の運賃を決定する、
とを特徴とする運賃決定システム。
【請求項11】
請求項10に記載の運賃決定システムであって、
表示装置を備え
記プロセッサは
前記基準運賃と、前記基準運賃と前記運賃変動量の合計の変動後の運賃である変動後運賃と、を前記表示装置に表示させる、
ことを特徴とする運賃決定システム。
【請求項12】
請求項10に記載の運賃決定システムであって、
表示装置を備え
記プロセッサは
記運賃変動定数の計算に用いる各区間における乗車率と、前記運賃変動定数の計算において前記乗車率と前記定数を紐づける条件式と、前記運賃変動定数の計算に用いた前記定数と、を前記表示装置に表示させる、
ことを特徴とする運賃決定システム。
【請求項13】
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
共交通機関の乗降場所が区間の基準とされた各時間帯における各区間の乗車率を計算し
算した各区間における前記乗車率と、乗車率の条件式または乗車率に情報を付加した条件式に合わせて決定された定数と、を用いて、出発地から到着地までの全区間についての乗車率に対応する前記定数を合計することで、運賃の変動量の決定に用いる運賃変動定数を前記各時間帯について計算し
対象となる時間帯における、出発地から到着地までの移動体の利用者数を取得し、
交通事業者の目標収入に運賃収入が近付くように、計算した前記運賃変動定数と、取得した前記利用者数と、に基づいて運賃の変動量である運賃変動量を前記各時間帯について決定し、
前記各時間帯の運賃変動量を用いて、変更前運賃である基準運賃と前記運賃変動量を合計することで、前記出発地から前記到着地までの各時間帯の変動後の運賃を決定する、
とを特徴とする運賃決定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運賃決定方法、運賃決定システム、及び、運賃決定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
公共交通機関は、例えばマイカー等の移動手段を持たない地域住民にとっては必要な移動手段であると考えられる。従って、交通事業者の独断に基づいて、サービスの内容が変更されたり、サービスが停止されたりすることは好ましくない。その一方で、少子化や生活様式の変化による公共交通機関の利用者減少により、事業経営が成り立たなくなるという事例もある。従って、公共交通機関のサービス継続のためには、利用者の利用状況をモニタし、利用者の利便性と負担を考慮しつつ、経営収支が安定化するように運賃を柔軟に変更することが必要であると考えられる。
【0003】
鉄道の運賃を決定する方法としては、一例として、IC乗車券のIDに紐づいた情報を、改札タッチ時に参照することで、運賃を決定する方法が考えらえる。例えば、特許文献1は、割引の対象となる条件とその条件に対応する割引に関する情報を改札機に格納しておき、改札機が利用者の乗車券情報を受信すると、その乗車券の条件に対応する割引情報を抽出し、割引された運賃を確定運賃として、運賃を決定する方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特願2009-122649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記で説明したように、交通事業者の収益と利用者の満足度を継続的に安定させるには、その時々の状況に合わせ適切な割引値を計算し、状況によっては値上げを行うことも必要である。例えば、著しい混雑が発生する時間帯では、運賃を値上げし、混雑分散を図ることで、乗客の不満を解消した上での収益の向上が見込めると考えられる。また、著しく利用者が少ない時間帯では、運行本数の維持のために、利用者に一定の負担を要求することも必要となると考えられる。また、過剰な価格上昇とならないように値上げと値引きを同時に行い、運賃のバランスを取ることが必要であると考えられる。しかしながら、上記の特許文献1には、こうしたバランスを考慮した運賃の値上げや値下げに係る技術について開示されていないと考えられる。
【0006】
そこで、本発明は、利用者の利用状況と、交通事業者の経営状態と、の双方を考慮して、バランスの取れた運賃を決定することができる運賃決定方法、運賃決定システム、および、運賃決定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、以下の運賃決定方法が提供される。すなわち、運賃決定方法は、公共交通機関の乗降場所が区間の基準とされた、各時間帯における各区間の乗車率と、乗車率に対応付けた定数と、を用いて、運賃の変動量を決定するための運賃変動定数を計算する。計算した運賃変動定数と、交通事業者の目標収入と、に基づいて、運賃の変動量である運賃変動量を決定する。
【0008】
本発明の第2の態様によれば、以下の運賃決定システムが提供される。すなわち、運賃決定システムは、運賃決定装置と、外部システムと、を備える。運賃決定装置は、プロセッサと、記憶部と、を備える。記憶部には、乗車率計算部と、運賃変動定数計算部と、運賃計算部と、がプログラムとして配置される。乗車率計算部は、公共交通機関の乗降場所が区間の基準とされた、各時間帯における各区間の乗車率を計算することに用いる。運賃変動定数計算部は、計算した各区間における乗車率と、乗車率に対応付けた定数と、を用いて、運賃の変動量を決定するための運賃変動定数を計算することに用いる。運賃計算部は、計算した運賃変動定数と、交通事業者の目標収入と、に基づいて、運賃の変動量である運賃変動量を決定することに用いる。プロセッサは、乗車率計算部を実行して、公共交通機関の乗降場所が区間の基準とされた、各時間帯における各区間の乗車率を計算する。プロセッサは、運賃変動定数計算部を実行して、計算した各区間における乗車率と、乗車率に対応付けた定数と、を用いて、運賃の変動量を決定するための運賃変動定数を計算する。プロセッサは、運賃計算部を実行して、計算した運賃変動定数と、交通事業者の目標収入と、に基づいて、運賃の変動量である運賃変動量を決定する。
【0009】
本発明の第3の態様によれば、以下の運賃決定装置が提供される。すなわち、運賃決定装置は、プロセッサと、記憶部と、を備える。記憶部には、乗車率計算部と、運賃変動定数計算部と、運賃計算部と、がプログラムとして配置される。乗車率計算部は、公共交通機関の乗降場所が区間の基準とされた、各時間帯における各区間の乗車率を計算することに用いる。運賃変動定数計算部は、計算した各区間における乗車率と、乗車率に対応付けた定数と、を用いて、運賃の変動量を決定するための運賃変動定数を計算することに用いる。運賃計算部は、計算した運賃変動定数と、交通事業者の目標収入と、に基づいて、運賃の変動量である運賃変動量を決定することに用いる。プロセッサは、乗車率計算部を実行して、公共交通機関の乗降場所が区間の基準とされた、各時間帯における各区間の乗車率を計算する。プロセッサは、運賃変動定数計算部を実行して、計算した各区間における乗車率と、乗車率に対応付けた定数と、を用いて、運賃の変動量を決定するための運賃変動定数を計算する。プロセッサは、運賃計算部を実行して、計算した運賃変動定数と、交通事業者の目標収入と、に基づいて、運賃の変動量である運賃変動量を決定する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、利用者の利用状況と、交通事業者の経営状態と、の双方を考慮して、バランスの取れた運賃を決定することができる運賃決定方法、運賃決定システム、および、運賃決定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】運賃計算システムの全体的な構成を説明するためのブロック図である。
図2】乗車率データの一例を示す図である。
図3】運賃変動条件表の一例を示す図である。
図4】運賃変動定数表の一例を示す図である。
図5】運賃変動計算結果の出力画面の一例について説明するための図である。
図6】運賃変動計算結果の出力画面の一例について説明するための図である。
図7】乗客の価格感応度モデルの一例である。
図8】自動調整処理の一例について説明するためのフローチャートである。
図9】設定画面の一例について説明するための図である。
図10】運賃決定の一例について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施形態では、公共交通機関の運賃を変動させる量(運賃変動量)を決定して、運賃変動量に基づく運賃を決定し、利用者の運賃を決定することができる運賃計算システム(運賃決定システム)の一例について説明する。図1は、運賃計算システムの全体的な構成を説明するためのブロック図である。
【0013】
運賃決定システムは、運賃計算装置1と、外部システム2と、外部サーバ3と、を備える。本実施形態では、運賃計算装置1、外部システム2、および、外部サーバ3は、ネットワーク4を介して接続されており、それぞれが通信可能である。
【0014】
先ず、図1を参照しながら、運賃計算装置1のハードウェア構成について説明する。運賃計算装置1は、中央制御装置11と、入力装置12と、出力装置13と、通信装置14と、記憶部と、を備えるコンピュータとして構成される。中央制御装置11は、プロセッサであり、例えば、CPUとすることができる。入力装置12は、オペレータがデータ入力を行うためのインタフェースである。出力装置13(表示装置)は、中央制御装置11が出力する情報を表示するディスプレイである。通信装置14は、ネットワーク4を介して通信を行うためのインタフェースである。運賃計算装置1は、通信装置14を介して、通信により外部からの情報を受信して取得することができる。
【0015】
運賃計算装置1の記憶部は、データやプログラムを記憶する。本実施形態では、記憶部は、主記憶装置15と、補助記憶装置16と、を備える。主記憶装置15と補助記憶装置16は、データやプログラムを記憶(配置)することができる適宜の記録装置とされており、例えば、ハードディスクドライブ(HDD;Hard Disk Drive)を用いて構成することができる。また、記憶部は、メモリを備えてもよく、記憶部に配置されるプログラムは、一例として、メモリに読み込まれて中央制御装置11が実行することにより実現する。
【0016】
次に、外部システム2と外部サーバ3について説明する。外部システム2は、利用者の公共交通機関の利用データを取得するシステムである。そして、外部システム2は、ネットワーク4を介して、取得したデータを送信することができる。外部システム2は、運賃決定装置1の処理に用いるデータを取得する。
【0017】
外部システム2は、利用者が使用する交通系ICカードを対象とする、ICカードリーダ部を含んで構成することができる。ここで、公共交通機関が鉄道である場合では、外部システム2は、駅構内の改札口に設置されたICカードリーダ部を含んで構成される。この場合、外部システム2は、交通系ICカードをICカードリーダ部に読み込ませて改札口から入場する利用者の入場記録(例えば、利用者の入場場所、入場時刻)を取得することができる。また、外部システム2は、交通系ICカードをICカードリーダ部に読み込ませて改札口から出場する利用者の出場記録(例えば、利用者の出場場所、出場時刻)を取得することができる。
【0018】
外部サーバ3は、プロセッサと、記憶装置と、通信装置と、を備え、外部システム2が取得したデータを受信して蓄積することができるコンピュータとして構成されている。記憶装置には、外部サーバ3を適宜に動作させるためのプログラム(すなわち、データの送受信に用いるプログラムやデータを記憶することに用いるプログラムなど)が配置される。そして、プロセッサがプログラムを読み込んで実行することにより、外部システム2からのデータを取得して蓄積したり、データを外部へ送信したりすることができる。
【0019】
次に、運賃計算装置1に配置されるプログラムとデータについて説明する。主記憶装置15には、データ取得部(不図示)と、乗車率計算部21と、運賃変動定数計算部22と、利用者数予測部23と、運賃計算部24と、運賃決定部(不図示)と、表示出力部(不図示)と、がプログラムとして配置される。それぞれのプログラムは、中央制御装置11により実行される。その一方で、補助記憶装置16には、利用者情報31と、時刻表情報32と、乗車率データ33と、運賃変動条件表34と、運賃変動定数表35と、運賃算出結果36と、がデータとして記憶される。
【0020】
運賃計算装置1は、データ取得部を実行して、外部からのデータを取得して補助記憶装置16に利用者情報31を記憶する処理を行う。利用者情報31は、利用者の公共交通機関の利用データであり、一例として、公共交通機関が鉄道である場合には、利用者の入場場所(出発地)や出場場所(到着地)、利用者の入場時刻や出場時刻に関するデータが含まれる。
【0021】
運賃計算装置1において、補助記憶装置16に記憶される時刻表情報32には、公共交通機関の時刻表に関するデータ(すなわち、移動体の発着時刻のデータ)が含まれる。公共交通機関が鉄道である場合には、列車の発着時刻のデータが含まれる。
【0022】
次に、乗車率計算部21の処理について説明する。乗車率計算部21は、公共交通機関の移動体の乗車率を計算して、乗車率データ33を生成することに用いるプログラムである。図2の乗車率データ33の一例に示すように、乗車率計算部21の処理により生成される乗車率データ33には、時間帯と、出発地と、到着地と、利用者数と、区間数と、乗車率(この例では、平均乗車率)と、が含まれる。
【0023】
乗車率データ33において、時間帯は、乗車率を計算する区分とされている。時間帯は、一例として、オペレータによって適宜に設定され、図2の例においては、1時間単位の設定が行われている。ここで、図2において、例えば、時間帯5:00は、5:00以降で6:00より前の時間を示す。
【0024】
乗車率データ33において、出発地と到着地は、利用者の出発地と到着地を示しており、乗車率を計算し、公共交通機関の運賃を変動させる量(運賃変動量)を決定する範囲となる。なお、図2の例では、公共交通機関を利用してAからCへ利用者が移動する場合について示されている。
【0025】
乗車率データ33において、利用者数は、時間帯ごとの出発地から到着地までの公共交通機関の利用者の数である。利用者数は、一例として、時間帯ごとの利用者の入出場場所や入出場時刻に基づいて取得される。利用者数は、例えば、利用者情報31を利用して、適宜のプログラム(例えば、乗車率計算部21)の実行により取得されてもよい。また、運賃計算装置1は、データ取得部を実行して、外部から利用者数を取得してもよい。例えば、外部サーバ3が時間帯ごとの利用者数を計算して、運賃計算装置1は、データ取得部を実行して、外部サーバ3から利用者数を取得してもよい。
【0026】
本実施形態での乗車率計算部21による乗車率の計算処理においては、出発地から到着地までの移動経路において、利用者が利用するであろうと考えられる公共交通機関(交通機関)が推定されたデータが用いられ、出発地から到着地までの移動経路における移動体の平均乗車率が、区間ごとに計算される。なお、本実施形態では、区間は、公共交通機関の乗降場所を基準とされている(すなわち、公共交通機関の隣接した乗降場所が1つの区間とされている)。そして、公共交通機関が鉄道である場合、ある駅の乗降場所と、路線上で該駅の隣となる駅の乗降場所と、の間が1区間として数えられる。
【0027】
出発地から到着地への移動経路において、利用者が利用するであろうと考えられる公共交通機関を推定する方法は、妥当性がある推定方法であれば特に限定されないが、例えば、次の方法に基づく推定が行われてもよい。すなわち、出発地から到着地への移動経路が複数ある場合、出発地から到着地までの所要時間が最も短くなる移動経路で利用者は移動すると考えて、出発地から到着地までの所要時間が最も短くなる移動経路の公共交通機関を利用者が利用すると推定する。
【0028】
図2の乗車率データ33の一例で説明すると、出発地Aから到着地Cへ至る複数の移動経路があり、区間A-Bで交通機関A線を利用し、且つ、区間B-Cで交通機関B線を利用することで、所要時間が最短となる(すなわち、他の移動経路で移動する場合の所要時間よりも短くなる)場合では、出発地Aから到着地Cまで移動する利用者は、交通機関A線と交通機関B線とを利用すると推定する。
【0029】
なお、公共交通機関を推定する処理については、運賃計算装置1により行われてもよい。この場合、一例として、記憶部には、公共交通機関の路線情報に関するデータと、推定するための適宜のプログラム(例えば、乗車率計算部21)と、が記憶される。そして、中央制御装置11が当該プログラムを実行して、時刻表情報32と、路線情報と、を用いて、利用者が利用する公共交通機関を推定する。その一方で、運賃計算装置1は、データ取得部を実行して、推定されたデータを外部から取得してもよい。
【0030】
乗車率データ33において、区間数は、出発地から到着地までの移動経路上の区間の数である。図2の例においては、区間A-Bと、区間B-Cと、に係る2つの区間の値が格納されている。
【0031】
本実施形態では、平均乗車率は、時間帯ごとに計算される。また、平均乗車率は、区間ごとに計算される。ここで、平均乗車率の計算方法は、適切に計算することができれば特に限定されない。平均乗車率は、一例として、区間での乗車人数統計値と、移動体の定員人数と、の商(乗車人数統計値/移動体の定員人数)に、100を掛けることで計算することができる。ここで、乗車人数統計値は、一例として、過去のある日からある日までの区間での移動体の乗車人数の統計値とすることができ、時間帯ごとに集計された統計値とすることができる。また、平均乗車率は、区間における複数日の乗車率の実績(乗車率実績)の平均値として算出されてもよい。つまり、ある時間帯でのある区間における、複数日の乗車率の統計値の平均値として、平均乗車率が計算されてもよい。
【0032】
このように、本実施形態では、出発地から到着地までの移動経路で利用者が利用する公共交通機関を推定したデータを用いて、利用者の乗車が予測される移動体の出発地から到着地までの各区間の平均乗車率が計算される。
【0033】
なお、平均乗車率を計算する例について説明されたが、乗車率計算部21の処理では、中央値や最頻値に基づく乗車率が計算されてもよい。例えば、平均乗車率に代えて、区間における複数日の乗車率の実績(乗車率実績)の中央値として、乗車率が算出されてもよい。また、平均乗車率に代えて、区間における複数日の乗車率の実績(乗車率実績)の最頻値として、乗車率が算出されてもよい。ここで、上記で説明した平均値を算出する場合と同様に、ある時間帯でのある区間における、複数日の乗車率の統計値の中央値として、乗車率が計算されてもよい。ある時間帯でのある区間における、複数日の乗車率の統計値の最頻値として、乗車率が計算されてもよい。
【0034】
また、上記の説明では、利用者の利用する公共交通機関を推定したデータを用いて、利用者の乗車が予測される移動体の出発地から到着地までの各区間の乗車率が求められていたが、一例として、オペレータが適宜に設定する区間の乗車率が求められてもよい。すなわち、出発地から目的地までの移動経路上でオペレータにより適宜に設定された区間ごとの乗車率が算出されてもよい。
【0035】
次に、運賃変動定数計算部22について説明する。運賃変動定数計算部22は、乗車率データ33と、運賃変動条件表34と、を用いて、運賃変動量を決定するための運賃増減合計スコア(運賃変動定数)を計算することに用いるプログラムである。ここで、図3を参照しながら、運賃変動定数計算部22の計算処理に用いる運賃変動条件表34について説明する。
【0036】
図3に示すように、運賃変動条件表34には、条件(条件式)と、運賃増減スコア(定数)と、が含まれる。運賃変動条件表34において、条件には、乗車率データ33に含まれる情報(時間帯、乗車率、区間数などに関する情報)が含まれる。そして、運賃増減スコアは、条件に対応する定数(すなわち、条件に合わせて決定された定数)とされている。なお、運賃変動条件表34は、オペレータによって設定される。
【0037】
運賃増減合計スコアは、運賃変動条件表34において該当する条件の運賃増減スコアを累計して、時間帯ごとに計算される。図2の乗車率データ33も適宜に利用しながら、運賃増減合計スコアの計算について具体的に説明する。
【0038】
図3の運賃変動条件表34において、6:00以降で7:00より前の時間帯という条件に、-5の値の運賃増減スコアが対応付けられており、23:00以降の時間帯という条件に、+5の値の運賃増減スコアが対応付けられている。
【0039】
そして、図2の乗車率データ33における運賃増減合計スコアを計算する場合、6:00以降で7:00より前の時間帯では、運賃変動条件表34において該当する条件の運賃増減スコアがある(言い換えれば、運賃条件変動表34において該当するレコードがある)ので、当該時間帯では、時間帯の条件に係る運賃増減スコアの値が-5として計算される。
【0040】
図3の運賃変動条件表34において、乗車率の条件には、閾値が設けられており、それぞれの閾値(それぞれの乗車率の範囲)に合わせた運賃増減スコアが設定されている。なお、図3の乗車率の条件は、一例であり、乗車率に情報を付加した条件式(例えば、乗車率と時間帯を組み合わせた条件式)が適宜に設定されてもよい。
【0041】
図3の運賃変動条件表34において、乗車率が10%未満の条件、および、乗車率が150%以上で200%未満の条件に、+2の値の運賃増減スコアが対応付けられており、乗車率が10%以上で20%未満の条件、および、乗車率が100%以上で150%未満の条件に、+1の値の運賃増減スコアが対応付けられている。また、乗車率が20%以上で100%未満の条件に、0の値の運賃増減スコアが対応付けられており、乗車率が200%以上の条件に、+3の値の運賃増減スコアが対応付けられている。
【0042】
そして、図2の乗車率データ33における運賃増減合計スコアを計算する場合、5:00以降で6:00より前の時間帯では、区間A-Bに係る平均乗車率が15%であり、且つ、区間B-Cに係る平均乗車率が10%であるので、当該時間帯では、乗車率の条件に係る運賃増減スコアの値が+2(すなわち、区間A-Bに係る+1と、区間B-Cに係る+1と、の和)として計算される。6:00以降で7:00より前の時間帯では、区間A-Bに係る平均乗車率が50%であり、且つ、区間B-Cに係る平均乗車率が50%であるので、当該時間帯では、乗車率の条件に係る運賃増減スコアの値が0として計算される。また、7:00以降で8:00より前の時間帯では、区間A-Bに係る平均乗車率が160%であり、且つ、区間B-Cに係る平均乗車率が210%であるので、当該時間帯では、乗車率の条件に係る運賃増減スコアの値が+5(区間A-Bに係る+2と、区間B-Cに係る+3と、の和)として計算される。このようにして、運賃変動定数計算部22の計算処理においては、区間ごとの乗車率を用いた計算が行われる。
【0043】
図3の運賃変動条件表34において、時間帯が8時台、且つ、交通機関Aという条件(すなわち、時間帯と交通機関を組み合わせた条件式)に、+2の値の運賃増減スコアが対応付けられている。図2の乗車率データ33には、該当するデータがないので、当該条件に基づく運賃増減スコアの値は0として計算される。また、図3の運賃変動条件表34において、区間数が15以上という条件に、-3の値の運賃増減スコアが対応付けられている。図2の乗車率データ33には、該当するデータがないので、当該条件に基づく運賃増減スコアの値は0として計算される。
【0044】
そして、上述したように、運賃増減合計スコアは、運賃増減スコアを累計して時間帯ごとに計算される。すなわち、図2の乗車率データ33における5:00以降で6:00より前の時間帯では、時間帯の条件が0、乗車率の条件が+2、その他の条件が0であるので、運賃増減合計スコアは、+2(すなわち、0+2+0)である。6:00以降で7:00より前の時間帯では、時間帯の条件が-5、乗車率の条件が0、その他の条件が0であるので、運賃増減合計スコアは、-5(すなわち、-5+0+0)である。7:00以降で8:00より前の時間帯では、時間帯の条件が0、乗車率の条件が+5、その他の条件が0であるので、運賃増減合計スコアは、+5(すなわち、0+5+0)である。
【0045】
運賃増減スコアの値は、重み(詳細には、0を基準として、+値は値上げ、-値は値下げ、である重み)として考えることができる。
【0046】
図3の運賃変動条件表34を例として考えると、7:00以降で8:00より前の時間帯における乗車率が著しく高いので、混雑を分散させて6:00以降で7:00より前の時間帯での利用を促すために、当該時間帯の条件に、運賃の値下げに係る運賃増減スコア(-5)が設定されている。また、23:00以降の時間帯における利用者を少なくするために、当該時間帯の条件に、運賃の値上げに係る運賃増減スコア(+5)が設定されている。
【0047】
この例では、乗車率のバランスを図るために(すなわち、乗車率が著しく高い交通機関、および、乗車率が著しく低い交通機関を減らし、乗車率が20%以上で100%未満となる交通機関の利用を促すために)、乗車率が最大値に近付くほど運賃増減スコア(+値)が大きくなっており、乗車率が0%に近付くほど運賃増減スコア(+値)が大きくなっている。
【0048】
また、特定の交通機関(詳細には、8時台の交通機関A)の利用者を少なくするために、この条件に、運賃の値上げに係る運賃増減スコア(+2)が設定されている。区間数が多くなる場合(図3においては、区間数が15よりも多くなる場合)、運賃の値下げに係る運賃増減スコア(-3)が設定されている。
【0049】
このように、本実施形態では、条件や運賃増減スコアが適宜に設定される運賃変動条件表34を用いて、時間帯や区間ごとに計算された乗車率などをきめ細かく評価して、バランスの良い運賃増減合計スコアを計算する。
【0050】
次に、利用者数予測部23について説明する。利用者数予測部23は、対象となる時間帯における、出発地から到着地への移動経路における移動体の利用者数を予測して出力することに用いるプログラムである。
【0051】
利用者数の予測は、適宜の手法により実行されればよい。例えば、所定時間帯における、出発地から到着地への移動経路における移動体の利用者数に関する過去実績(一例として、数年分)に基づいて、当該所定時間帯における、当該出発地から当該到着地への移動経路における移動体の利用者数の予測が行われてもよい。
【0052】
また、所定時間帯における、出発地から到着地への移動経路における移動体の利用者数を推定出力する学習済モデルに基づいて、当該所定時間帯における、当該出発地から当該到着地への移動経路における移動体の利用者数の予測が行われてもよい。ここで、学習済モデルは、適宜の手法により生成されればよい。
【0053】
なお、利用者数予測部23の処理では、一例として、利用者数の予測値(すなわち、固定値)が計算されるが、利用者数は、固定値でなく数値範囲として予測されてもよい。ここで、利用者数の範囲は、複数の尺度で計算される利用者の予測値に基づいて計算することができる。
【0054】
例えば、楽観的な尺度と、悲観的な尺度と、平均的な尺度(すなわち、楽観的な尺度と悲観的な尺度の中間的な尺度)と、に基づく利用者数の予測値を計算して、悲観的な尺度に基づく予測値(すなわち、利用者数が少なくなることを考慮して計算される予測値)と、楽観的な尺度に基づく予測値(すなわち、利用者数が多くなることを考慮して計算される予測値)と、の間の範囲が、利用者数の予測範囲とされてもよい。また、利用者数の予測範囲は、平均的な尺度に基づく利用者数の予測値から乖離しないように調整されてもよい。
【0055】
運賃計算装置1は、記憶部に配置される適宜のプログラムの実行により、運賃変動定数表35を生成して補助記憶装置16に記憶する。図4に示すように、運賃変動定数表35には、運賃変動定数計算部22による処理の結果や利用者数予測部23による処理の結果が含まれており、詳細に説明すると、運賃変動定数表35には、時間帯と、出発地と、到着地と、利用者数実績値と、利用者数予測値と、運賃増減合計スコアと、が含まれている。ここで、時間帯と出発地と到着地は、乗車率データ33に対応する。ここで、利用者数実績値は、時間帯ごとの出発地から到着地まで実際に移動した利用者数である。
【0056】
利用者数実績値は、一例として、利用者情報31に基づいて、適宜のプログラムを用いて計算することができる。すなわち、利用者の入場時刻、入場場所、出場時刻、出場場所を参照して、時間帯ごとの利用者数実績値が計算されてもよい。その一方で、運賃計算装置1は、外部から利用者数実績値を取得してもよく、例えば、外部サーバ3において計算された利用者数実績値を取得してもよい。
【0057】
利用者数予測値は、利用者数予測部23の実行により予測される、利用者数の予測値である。なお、利用者数予測部23の実行により利用者数の予測範囲を予測した場合では、運賃変動定数表35には、利用者数の予測範囲が含まれてもよい。また、利用者数予測値に代えて利用者数の予測範囲が含まれてもよい。ここで、利用者数の予測範囲は、一例として、5~15、20~30などの数値範囲とすることができる。
【0058】
次に、運賃計算部24について説明する。運賃計算部24は、運賃変動量を計算し、運賃変動量に基づく運賃を計算し、運賃算出結果36を記憶部に記憶することに用いるプログラムである。
【0059】
本実施形態では、運賃変動量は、交通事業者の目標収入と、運賃増減合計スコアと、利用者数と、を用いて、決定することができる。また、運賃変動量は、計算する運賃が目標収入に近付くように決定される。
【0060】
ここで、利用者数は、利用者数実績値、利用者数予測値、または、上記した利用者数の予測範囲とすることができる。
【0061】
目標収入は、交通事業者により適宜に設定され、公共交通機関の利用による運賃収入の目標額とされる。
【0062】
本実施形態では、運賃変動量は、運賃変動定数表35の時間帯ごとに決定される。図4の運賃変動定数表35においては、時間帯が5:00の運賃増減合計スコアが+2であるので、当該時間帯では、運賃増減合計スコア+2分の値上げをするための運賃変動量が計算される。時間帯が6:00の運賃増減合計スコアが-5であるので、当該時間帯では、運賃増減合計スコア-5分の値下げをするための運賃変動量が計算される。また、時間帯が7:00の運賃増減合計スコアが+5であるので、当該時間帯では、運賃増減合計スコア+5分の値上げをするための運賃変動量が計算される。
【0063】
ここで、運賃変動量は、利用者数により調整されてもよい。例えば、運賃収入を目標収入に近付けるために、利用者数の多い時間帯で運賃の値上げを大きくするように、運賃変動量が調整され、利用者数の少ない時間帯で運賃の値上げを小さくするように、運賃変動量が調整されてもよい。
【0064】
目標収入は、一例として、年間の運賃収入の目標額とすることができる。そして、利用者数予測値や利用者数の予測範囲が利用者数として用いられる場合、予測される利用者数を用いて、目標収入に年間の運賃収入が近付くように、運賃変動量の大きさが自動的に調整されてもよい。すなわち、所定時間(例えば、一定の期間)ごとに利用者数の予測を行うことで、利用者数(予測値)が変動するので、この利用者数(予測値)の変動に対応させるように、運賃変動量が自動的に調整されてもよい。なお、この自動調整の一例については、後で詳しく説明する。
【0065】
運賃変動量に基づく運賃は、現状の運賃に運賃変動量を見積もることで、変動後運賃として、時間帯ごとに計算される。例えば、5:00の時間帯では、運賃増減合計スコア+2分の値上げをするための運賃変動量に基づく運賃(変動後運賃)が決定される。6:00の時間帯では、運賃増減合計スコア-5分の値下げをするための運賃変動量に基づく運賃(変動後運賃)が決定される。7:00の時間帯では、運賃増減合計スコア+5分の値上げをするための運賃変動量に基づく運賃(変動後運賃)が決定される。そして、決定された各時間帯の運賃は、運賃算出結果36のデータとして補助記憶装置16に記憶される。
【0066】
運賃算出結果36は、表示画面の出力に用いるプログラムである表示出力部(不図示)を中央制御装置11が実行することにより、出力装置13に出力することができる。次に、図5を参照しながら、運賃算出結果36のデータ構造、および、運賃変動計算結果の出力画面の一例について説明する。図5は、運賃変動計算結果の出力画面の一例について説明するための図である。
【0067】
図5の例では、運賃変動計算結果出力画面には、運賃変動計算結果(すなわち、運賃算出結果36)と、運賃増減合計スコア詳細と、が表示される。運賃変動計算結果は、一例として、時間帯と、出発地と、到着地と、運賃増減合計スコアと、変動前運賃と、変動後運賃と、を含む。ここで、時間帯、出発地、到着地、運賃増減合計スコアは、運賃変動定数表35のデータに対応する。変動前運賃は、運賃変動量を作用させる前の運賃である。変動後運賃は、運賃変動量に基づく変動後の運賃である。そして、変動前運賃および変動後運賃は、時間帯ごとにまとめられている。
【0068】
各時間帯における出発地Aから到着地Cまでの変動前運賃は、それぞれ200円とされている。すなわち、出発地と到着地が同じであれば、変動前運賃は、それぞれの時間帯で同一の運賃とされている。その一方で、変動後運賃は、運賃変動量の作用により、変動前運賃と比較して運賃が変動している。
【0069】
この例では、5:00の時間帯において、運賃増減合計スコアの+2分の重みにより、変動前運賃に+2分の料金(すなわち、20円)が加算され、変動後運賃は、220円と算出されている。6:00の時間帯では、変動前運賃に-5分の料金が減算され、変動後運賃は、150円と算出されている。7:00の時間帯では、変動前運賃に+5分の料金が加算され、変動後運賃は、250円と算出されている。
【0070】
なお、図5の例では、運賃増減合計スコアの+1ポイントが10円分の値上げの運賃変動量とされ、-1ポイントが10円分の値下げの運賃変動量とされているが、運賃変動量は、目標収入を考慮したうえで、目標収入に近付くように適切に見積もられればよい。運賃変動量は、例えば、目標収入を考慮して、+1ポイントで20円分の値上げとされていてもよい。また、運賃変動量は、目標収入を考慮して、値上げと値下げで運賃増減合計スコアの重みを異ならせて求められてもよい。運賃変動量は、例えば、値上げに関しては+1ポイントで20円分、値下げに関しては-1ポイントで10円分とされてもよい。
【0071】
図5の例では、運賃増減合計スコア詳細は、設定欄として、時間帯の欄と、出発地の欄と、到着地の欄と、を含む。ここで、それぞれの設定欄は、オペレータが理解することができればよく、適宜の形式で表示されればよい。そして、オペレータは、入力装置12を用いて、それぞれの設定欄にデータを入力することができる。なお、それぞれの設定欄は、例えば、プルダウンメニューにより、対象となる項目を選択可能とされてもよい。
【0072】
ここで、入力装置12は、一例として、マウスやキーボードなどの適宜のインタフェースを挙げることができる。それぞれの設定欄に、オペレータが、時間帯、出発地、到着地を入力することで、設定した時間帯、出発地、および、到着地に対応する運賃増減合計スコアの詳細なデータが出力装置13に表示される。
【0073】
運賃増減合計スコアの詳細には、評価項目と、該当条件式と、運賃増減スコアと、が含まれる。
【0074】
評価項目の欄には、上記のそれぞれの設定欄に入力された対象が表示される。すなわち、図5の例では、時間帯の欄には、6:00の時間帯が入力されているので、評価項目の欄には、6:00の時間帯が出力される。
【0075】
この例では、出発地の欄には出発地Aが入力され、且つ、到着地の欄には到着地Cが入力されている。従って、評価項目の欄には、出発地Aから到着地Cまでの区間の情報が表示される。詳細には、乗車率データ33に含まれる、出発地Aから到着地Cまでの各区間と、各区間における乗車率と、が表示される。
【0076】
また、評価項目の欄には、出発地の欄と到着地の欄の入力に基づく区間数が表示される。この例では、出発地Aから到着地Cまでにおいて、A-B区間と、B-C区間と、が含まれているので、区間数が2つであることが表示される。なお、区間数は、乗車率データ33に含まれる区間数に対応する。
【0077】
評価項目の欄には、利用路線(運賃変動条件表34に設定された交通機関)が表示される。この例では、出発地Aから到着地Cまでの移動において、交通機関A線を用いてA-B区間を移動し、交通機関B線を用いてB-C区間を移動する。そして、運賃変動条件表34には、交通機関A線に関する条件があるので、評価項目の欄には、利用路線として交通機関A線が表示される。
【0078】
該当条件式の欄には、評価項目の内容に該当する条件(条件式)が、運賃変動条件表34から抽出されて表示される。この例では、評価項目の欄の時間帯6:00は、運賃変動条件表34の6:00以降で7:00より前の時間帯の条件に該当するので、該当条件式として、この条件が表示される。つまり、運賃変動合計スコアを計算する対象の時間帯と、対応する運賃増減スコアと、を紐づける条件式が表示される。
【0079】
評価項目の欄のA-B区間における乗車率50%は、運賃変動条件表34の乗車率が20%以上で100%未満の条件に該当するので、該当条件式として、この条件が表示される。評価項目の欄のB-C区間における乗車率50%は、運賃変動条件表34の乗車率が20%以上で100%未満の条件に該当するので、該当条件式として、この条件が表示される。つまり、運賃変動合計スコアの計算において、各区間における乗車率と、対応する定数(運賃増減スコア)と、を紐づける条件式が表示される。評価項目の区間数:2、および、利用路線:A線は、運賃変動条件表34の条件に該当しないので、該当条件式は表示されない。
【0080】
運賃増減スコアの欄には、該当条件式に対応する運賃増減スコアが表示される。この例では、6:00以降で7:00より前の時間帯の条件に対応する運賃増減スコアの値(すなわち、-5)が表示され、乗車率が20%以上で100%未満の条件に対応する運賃増減スコアの値(すなわち、0)が表示される。
【0081】
オペレータは、出力装置13に表示される運賃増減合計スコア詳細を参照して、設定した時間帯、出発地、到着地に係る、運賃増減合計スコアの詳細な内容(すなわち、運賃増減合計スコアを決定する、評価項目と、該当条件式と、運賃増減スコアと、の関係性について)を確認することができる。
【0082】
次に、図5とは異なる運賃変動計算結果の出力画面の一例について、図6を参照しながら説明する。図6は、運賃変動計算結果の出力画面の一例について説明するための図である。図6の例では、運賃変動計算結果出力画面には、運賃変動計算結果と、利用者予測シナリオ詳細と、が表示される。該運賃変動計算結果出力画面は、中央制御装置11が表示出力部を実行することで、出力装置13に出力される。
【0083】
運賃変動計算結果(すなわち、運賃算出結果36)は、一例として、時間帯と、出発地と、到着地と、利用者予測シナリオと、利用者数予測値と、運賃増減合計スコアと、変動前運賃と、変動後運賃と、を含む。時間帯の欄、出発地の欄、および、到着地の欄には、計算対象となるデータが表示される。
【0084】
利用者予測シナリオは、利用者数予測部23の処理において、利用者数を予測する際に用いる尺度に対応し、運賃の値段を変えない場合の利用者数のトレンドを考慮して、オペレータにより適宜に設定される。そして、利用者予測シナリオの欄には、それぞれの尺度を示す表示が行われる。表示の態様は、オペレータが理解できれば特に限定されないが、例えば、記号や文章などの態様でそれぞれを区別して表示することができる。この例では、利用者予測シナリオXは、悲観的な尺度であり、利用者予測シナリオYは、平均的な尺度であり、利用者予測シナリオZは、楽観的な尺度である。
【0085】
利用者数予測値の欄には、利用者数の予測値が表示される。この例では、各利用者予測シナリオ(X~Z)を用いた予測により予測される利用者数(800人、1000人、1200人)が表示されている。ここで、利用者数予測値の欄には、後述する自動調整処理後の予測値が表示されてもよい。また、同一の時間帯、出発地、到着地の条件において、それぞれ異なる利用者予測シナリオを用いるので、利用者数は、この条件において、範囲(この例では、800人~1200人)を持たせて予測されている。
【0086】
運賃合計スコアの欄には、運賃合計スコアが表示され、変動前運賃の欄には、運賃を変動させる前の運賃が表示される。そして、変動後運賃の欄には、運賃変動量に基づく変動後の運賃が表示される。ここで、変動後運賃の表示は、後述する自動調整処理後の値が表示されてもよい。また、同一の時間帯、出発地、到着地の条件において、それぞれ異なる利用者予測シナリオを用いた調整が行われているので、変動後運賃は、この条件において、範囲(この例では、210円~230円)を持たせて出力されている。
【0087】
利用者予測シナリオの詳細には、上記の運賃変動計算結果に含まれる利用者予測シナリオと、利用者の年増加率想定値と、乗客の価格感応度モデルと、が含まれる。
【0088】
利用者予測シナリオの欄の表示は、上記で説明した運賃変動計算結果の表示と対応する。利用者の年増加率想定値の欄には、それぞれの尺度(つまり、それぞれの利用者予測シナリオ)に基づく想定値が表示される。この想定値は、各利用者予測シナリオの観点に基づいて、オペレータにより適宜に設定される。この例では、利用者予測シナリオX(つまり、悲観的な尺度)では、利用者数が年率で5%低下すると見込み、-5%の想定値が設定されており、利用者予測シナリオZ(つまり、楽観的な尺度)では、利用者数が年率で5%増加すると見込み、+5%の想定値が設定されている。また、利用者予測シナリオY(つまり、平均的な尺度)では、利用者数は変わらないと見込み、0%の想定値が設定されている。
【0089】
乗客の価格感応度モデルの欄には、後述の自動調整の処理に用いる価格感応度モデルが表示される。価格感応度モデルは、複数種類あり、それぞれの利用者予測シナリオに適宜に割り当てられている。価格感応度モデルの割り当ては、オペレータにより行われてもよいし、適宜のプログラム処理により実行されてもよい。価格感応度モデルの表示は、オペレータが使用するモデルを理解することができればよく、例えば、記号や文章などを用いた態様とすることができる。
【0090】
価格感応度モデルは、運賃が変動する場合の利用者数の変動を予測するために用いるモデルである。価格感応度モデルは、記憶部に記憶される。そして、中央制御装置11が利用者数予測部23を実行することにより、価格感応度モデルを用いて、利用者数の予測値を算出する。
【0091】
図7を参照しながら、価格感応度モデルの一例について説明する。図7は、乗客の価格感応度モデルの一例である。図7に示すように、価格感応度モデルは、一例として、時系列上において隣接する時間帯との運賃の差分と、隣接する時間帯の運賃が安価である場合に利用時間帯を変更する利用者の割合と、を関連付けたモデルとすることができる。
【0092】
価格感応度モデルは、運賃の変動(価格変動)による利用者数の変動(利用者数の推移)を適切に予測するモデルであればよい。価格感応度モデルは、例えば、運賃の値下げ額と、運賃の値下げにより増加する新規利用者の増加数と、を関連付けたモデルであってもよい。その逆に、運賃の値上げ額と、運賃の値上げにより減少する既存利用者の減少数と、を関連付けたモデルであってもよい。また、価格感応度モデルは、対象となる時間帯および区間における運賃の値下げ額(または、運賃の値上げ額)と、対象となる時間帯および区間における新規利用者増加数(または、既存利用者減少数)と、を関連付けたモデルであってもよい。
【0093】
次に、図8を参照しながら、自動調整処理について説明する。図8は、自動調整処理の一例について説明するためのフローチャートである。この自動調整処理は、中央制御装置11が記憶部に記憶される適宜のプログラムを実行することによって実現する。
【0094】
先ず、中央制御装置11は、利用者数予測部23を実行して、オペレータにより設定された利用者の年増加率想定値に基づく利用者数の予測値を計算する。ここで、利用者数の予測値は、利用者予測シナリオごとに計算される。そして、中央制御装置11は、運賃計算部24を実行して、予測された利用者数を用いて、利用者予測シナリオごとの運賃(一例として、利用者予測シナリオごとの変動前運賃)を調整する(S101)。
【0095】
次に、中央制御装置11は、利用者数予測部23を実行して、調整した運賃を価格感応度モデルに入力し、価格変動に基づく利用人数の変動を求めて、上記S101で予測した利用者数を調整する(S102)。なお、各利用者予測シナリオの利用者数が調整される。
【0096】
その次に、中央制御装置11は、運賃計算部24を実行して、上記のS102で調整した利用者数と、目標収入と、を用いて、運賃を調整する(S103)。なお、各利用者予測シナリオの運賃が調整される。
【0097】
中央制御装置11は、S102と、S103と、の処理を繰り返す。すなわち、調整した運賃を価格感応度モデルに入力して利用者数を調整する処理と、調整した利用者数および目標収入を用いて運賃を調整する処理と、を繰り返し、最終的な値の利用者数予測値と、最終的な運賃(すなわち、最終的な変動後運賃)と、を算出する(S104)。このようにして、利用者予測シナリオごとの利用者数予測値および変動後運賃が算出される。
【0098】
S104の処理におけるループの終了は、適宜に決定することができる。例えば、一定の値または一定の範囲に、運賃が収束したかどうかの判定を行ってもよい。また、処理前後における変動幅が閾値以下となった場合に、ループを終了してもよい。また、ループの回数を基準とした処理が行われてもよい。すなわち、予め決定された回数のループ処理が実行されてもよい。
【0099】
S104の処理で算出された利用者予測シナリオごとの利用者数予測値および変動後運賃は、図6の運賃変動計算結果の表示に用いることができる。また、S104の処理で算出された利用者予測シナリオごとの利用者数予測値および変動後運賃から、同一の時間帯、出発地、および、到着地の条件における変動後運賃の代表値が算出され、該代表値が図5の運賃変動計算結果の変動後運賃に格納されてもよい。
【0100】
次に、オペレータが目標収入等を設定する画面の一例について説明する。図9は、設定画面の一例について説明するための図である。設定画面は、中央制御装置11による表示出力部の実行により、出力装置13に表示される。設定画面には、収益目標の設定に係る情報と、運賃増減スコアの条件式と定数設定に係る情報と、価格感応度モデルの管理に係る情報と、が含まれる。
【0101】
収益目標の設定の部分における表示には、次年度収益目標が含まれる。次年度収益目標は、次年度の目標収益である。オペレータは、入力装置12を操作することにより、次年度収益目標を適宜に設定することができる。なお、昨年度収益が表示されてもよく、この場合、オペレータは、昨年度収益を参照して次年度収益目標を決定することができる。
【0102】
運賃増減スコアの条件式と定数設定の部分における表示には、オペレータにより設定される各種の条件(条件式)と、オペレータにより設定される各種の条件に対応する運賃増減スコアと、が含まれる。オペレータは、設定画面を参照して入力装置12を操作することにより、条件式を設定したり、運賃増減スコアを設定したりすることができる。すなわち、上記で説明した運賃変動条件表34の設定を行うことができる。
【0103】
価格感応度モデルの管理の部分における表示には、記憶部に記憶されている各種の価格感応度モデルを説明するための情報が含まれる。例えば、該表示には、モデル名と、予測対象と、計算式と、が含まれていてもよい。
【0104】
モデル名の欄には、価格感応度モデルの名称が表示される。価格感応度モデルの名称は、適宜に決定することができる。オペレータによる入力装置12の操作により、価格感応度モデルの名称が適宜に設定されてもよい。
【0105】
予測対象の欄には、どのような利用者を予測対象にするのかについての具体的な説明が表示される。例えば、価格感応度モデルの予測対象が、安価な時間帯に変更する利用者であるのか、新規に利用する利用者であるのか、についての説明が表示される。説明文章は、オペレータによる入力装置12の操作により適宜に作成されてもよい。
【0106】
計算式の欄には、価格感応度モデルの計算式を説明するための情報が表示される。計算式の説明は、オペレータの入力装置12の操作により適宜に作成されてもよい。
【0107】
オペレータは、一例として、設定画面を参照しながら入力装置12を操作して、それぞれの利用者予測シナリオに、価格感応度モデルを適宜に割りあてることができる。なお、価格感応度モデルの割り当ては、中央制御装置11が記憶部に記憶される適宜のプログラムを実行して、自動的に行われてもよい。
【0108】
また、オペレータは、設定画面を参照しながら入力装置12を操作して、価格感応度モデルを適宜に追加することができる。価格感応度モデルは、運賃計算装置1の外部で生成されてもよく、運賃計算装置1は、中央制御装置11によるデータ取得部の実行により、外部で生成された価格感応度モデルを取得してもよい。また、運賃計算装置1が価格感応度モデルを生成してもよい。価格感応度モデルは、記憶部に記憶される適宜のモデル生成プログラムを中央制御装置11が実行することにより取得されてもよい。その一方で、オペレータの適宜の選択により選択された価格感応度モデルが削除されるように、運賃計算装置1が構成されていてもよい。
【0109】
次に、利用者の運賃を決定する方法について説明する。運賃計算装置1は、運賃算出結果36を用いて、例えば、下記のようにして、利用者の運賃を決定することができる。利用者の運賃の決定にあたり、運賃計算装置1の記憶部には、利用者の運賃を決定することに用いるプログラムである運賃決定部(不図示)が配置される。そして、中央制御装置11が運賃決定部を実行することにより、利用者の運賃が決定される。
【0110】
運賃決定部の処理では、利用者の入場時刻と入場場所と出場場所が参照された第1運賃と、利用者の出場時刻と入場場所と出場場所が参照された第2運賃と、前記第1運賃と前記第2運賃の平均値である第3運賃と、のうちの何れかの運賃が、利用者の運賃として決定される。ここで、利用者の運賃の決定は、利用者の出場時に行われる。
【0111】
例えば、利用者が、出発地Aから到着地Cに移動して、出発地Aに入場した時刻が5:00~6:00の間であり、且つ、到着地Cから出場した時刻が6:00~7:00である事例における、運賃決定部の処理について説明する。
【0112】
この場合、利用者の運賃は、入場時刻(すなわち、5:00の時間帯)と出発地Aと到着地Cが参照された第1運賃と、出場時刻(すなわち、6:00の時間帯)と出発地Aと到着地Cが参照された第2運賃と、第1運賃と第2運賃の平均値である第3運賃と、のうちの何れかの運賃とされる。ここで、第1運賃は、運賃算出結果36において、5:00の時間帯の運賃変動量に基づく運賃(変動後運賃)に対応する。第2運賃は、運賃算出結果36において、6:00の時間帯の運賃変動量に基づく運賃(変動後運賃)に対応する。
【0113】
なお、第1運賃、第2運賃、第3運賃のうちの何れを利用者の運賃とするかについての処理は、適宜に実行されればよい。例えば、これらの運賃のうちで値段が最も高い運賃を利用者の運賃とする処理が行われてもよい。また、出場時刻を基準として運賃を決定したい場合は、第2運賃を利用者の運賃とする処理が行われてもよい。
【0114】
また、中央制御装置11が利用者数予測部23を実行して、複数の尺度(複数の利用者予測シナリオ)を用いて利用者数の範囲を予測する場合、同一の時間帯、出発地、到着地の条件において、それぞれの尺度に基づく変動後運賃が求められる。つまり、変動後運賃は、範囲を持たせて決定される。この場合、各利用者予測シナリオに基づく変動後運賃から、利用者の運賃(すなわち、第1運賃、第2運賃、第3運賃)の決定に用いる変動後運賃が、適宜に選択されてもよい。また、各利用者予測シナリオの変動後運賃から求められる代表値を用いて、利用者の運賃が決定されてもよい。
【0115】
ところで、利用者の運賃を計算する区間において、公共交通機関に輸送障害が発生する場合があると考えられる。例えば、利用者が入場してから出場するまでの時刻に、利用者が利用すると推定された公共交通機関(本実施形態では、交通機関A線や交通機関B線)に輸送障害が発生する場合が考えられる。この場合(つまり、輸送障害が発生した場合)、利用者の運賃は、第1運賃と第2運賃のうちの安い方とする。なお、輸送障害の発生については、一例として、時刻表情報32に基づく移動体の到着時刻と、利用者の出場時刻と、を比較して判定することができる。
【0116】
決定した運賃は、適宜のプログラム(例えば、表示出力部)の実行により、出力装置13に出力することができる。
【0117】
次に、上記で説明した、運賃決定のフローの一例について説明する。図10は、運賃決定の一例について説明するためのフローチャートである。
【0118】
運賃計算装置1は、乗車率計算部21を実行して、乗車率データ33を取得する。ここで、乗車率は、時間帯ごとに計算される。また、乗車率は、区間ごとに計算される(S201)。
【0119】
次に、運賃計算装置1は、運賃変動定数計算部22を実行して、各時間帯における運賃増減合計スコアを計算する。運賃増減合計スコアの計算では、区間ごとの乗車率が評価される(S202)。
【0120】
次に、運賃計算装置1は、運賃計算部24を実行して、時間帯ごとの運賃変動量を決定する。運賃変動量は、時間帯ごとの運賃増減合計スコアと、交通事業者の目標収入と、に基づいて、決定される。ここで、運賃計算装置1は、利用者数を用いて、目標収入に近付けるための運賃変動量の調整を行ってもよい。そして、求められた各時間帯の運賃変動量に基づく運賃(すなわち、変動後運賃)は、運賃算出結果36のデータとして補助記憶装置16に記憶される(S203)。
【0121】
次に、運賃計算装置1は、運賃決定部を実行して、利用者の運賃を決定する。利用者の運賃は、運賃算出結果36を参照して(運賃算出結果36における、時間帯、出発地、到着地、変動後運賃を参照して)、適宜に決定することができる(S204)。すなわち、運賃計算装置1は、上記で説明したように、一例として、第1運賃、第2運賃、または、第3運賃を利用者の運賃として決定することができる。
【0122】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々な変形が可能である。
【0123】
乗車率データ33の時間帯に関して、利用者の入場時刻と出場時刻を基準とした時間帯が含まれてもよい、この場合、当該利用者の入場時刻と出場時刻を時間帯とする運賃変動量と運賃変動量に基づく運賃(すなわち、変動後運賃)を決定することができ、該時間帯を基準として利用者の運賃を決定することができる。
【0124】
公共交通機関は、初乗り運賃で固定されず、出発地と到着地に応じて運賃が変動するバスであってもよい。公共交通機関がバスである場合、外部システム2は、一例として、バス(移動体)の乗車口の付近と降車口の付近に設置されるICカードリーダ部を含んで構成することができる。この場合、外部システム2は、交通系ICカードをICカードリーダ部に読み込ませて乗車口から乗車する利用者の乗車記録を取得することができる。乗車記録には、例えば、利用者の乗車場所(出発地)、乗車時刻が含まれる。また、外部システム2は、交通系ICカードをICカードリーダ部に読み込ませて降車口から降車する利用者の降車記録を取得することができる。降車記録には、例えば、利用者の降車場所(到着地)、降車時刻が含まれる。また、区間は、バスの乗降場所が基準とされる。そして、あるバス乗降場所と、バス路線上で該バス乗降場所の隣のバス乗降場所と、の間が1区間として数えられる。
【0125】
なお、本明細書において、入場時刻と、乗車時刻と、をまとめて入時刻と言うことがある。また、出場時刻と、降車時刻と、をまとめて出時刻と言うことがある。また、到着地における利用者の改札通過時、および、バスの降車時について、まとめて出場時と言うことがある。
【0126】
本実施形態では、運賃増減スコアと運賃増減合計スコアは、+で値上げを示し、-で値下げを示していたが、-で値上げを示し、+で値下げを示すようにしてもよい。
【0127】
本実施形態において、記憶部は、主記憶装置15と、補助記憶装置16と、を備えるが、記憶部は、単数の記憶媒体により構成されてもよいし、複数の記憶媒体により構成されてもよい。また、処理を適切に行うことができれば、プログラムやデータは、分割されて記憶されてもよい。
【0128】
プロセッサの一例としてはCPUが考えられるが、所定の処理を実行する主体であれば他の半導体デバイス(例えば、GPU)でもよい。
【0129】
表示装置は、出力装置13として運賃計算装置1に備えられていたが、運賃計算装置1の外部に設けられるディスプレイとされてもよい。そして、中央制御装置11は、運賃計算装置1の外部に設けられる表示装置に出力してもよい。
【0130】
上記の説明では、現金で運賃が決定されていたが、運賃計算装置1は、例えば、金銭価値のあるポイント、電子貨幣や仮想通貨等のデジタル通貨など、で運賃を決定してもよい。すなわち、運賃計算装置1は、運賃増減合計スコアを用いて運賃変動量を決定し、利用者の運賃を金銭価値のあるポイントなどで決定してもよい。ここで、運賃計算装置1は、例えば、現金に代えて上記した金銭価値があるポイントなどを用いた処理を行い、利用者の運賃を上記した金銭価値のあるポイントなどで決定してもよい。また、運賃計算装置1は、換算処理を行ってもよく、例えば、現金と金銭価値のあるポイントなどを換算する処理を行ってもよい。
【符号の説明】
【0131】
1 運賃計算装置(運賃決定装置)
2 外部システム
3 外部サーバ
4 ネットワーク
11 中央制御装置
12 入力装置
13 出力装置
14 通信装置
15 主記憶装置
16 補助記憶装置
21 乗車率計算部
22 運賃変動定数計算部
23 利用者数予測部
24 運賃計算部
31 利用者情報
32 時刻表情報
33 乗車率データ
34 運賃変動条件表
35 運賃変動定数表
36 運賃算出結果
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10