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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】露光装置および露光方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 9/00 20060101AFI20240814BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
G03F9/00 H
G03F7/20 501
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021029894
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2022131120
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000128496
【氏名又は名称】株式会社オーク製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】奥山 隆志
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-065228(JP,A)
【文献】特開2015-142036(JP,A)
【文献】特開2016-111197(JP,A)
【文献】特開2018-091896(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0208222(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 9/00
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
副走査方向に対して正負逆の傾斜角度をもつ第1、第2スリットを主走査方向に並べた遮光部と、
前記遮光部に対し、位置検出パターンの光を投影可能な露光部と、
前記第1、第2スリットを透過する光を受光する受光部と、
位置検出パターンの光を主走査方向に走査させたときに前記受光部から出力される信号に基づいて、露光位置を検出する検出部とを備え、
前記露光部が、前記第1スリットに平行な連続的又は離散的第1パターン要素と、前記第2スリットに平行な連続的又は離散的第2パターン要素とによって構成され、前記第1パターン要素と前記第2パターン要素の一部が共有されている位置検出パターンの光を、前記遮光部に投影することを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記露光部が、前記第1パターン要素と前記第2パターン要素とが互いに交差する交差状パターンの光を、位置検出パターンの光として前記遮光部に投影することを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記露光部が、所定間隔空けて並ぶ複数のサブパターンで構成される離散的第1パターン要素と、所定間隔空けて並ぶ複数のサブパターンで構成される離散的第2パターン要素とによって構成され、前記第1パターン要素および前記第2パターン要素の中心あるいは中心付近に位置サブパターンが共有されている交差状パターンの光を、前記遮光部に投影することを特徴とする請求項2に記載の露光装置。
【請求項4】
複数の第1スリットと、複数の第2スリットとが、主走査方向に沿って、それぞれまとまって、順に並び、
前記第1パターン要素の隣り合うサブパターンの距離間隔が、前記第1スリットの距離間隔およびスリット幅の長さに対応し、前記第2パターン要素の隣り合うサブパターンの距離間隔が、前記第2スリットの距離間隔およびスリット幅の長さに対応していることを特徴とする請求項3に記載の露光装置。
【請求項5】
前記露光部が、ライン状の連続的第1パターン要素と、ライン状の連続的第2パターン要素とによって構成される交差状パターンの光を、前記遮光部に投影することを特徴とする請求項2に記載の露光装置。
【請求項6】
前記露光部が、複数並んだライン状の連続的第1パターン要素と、複数並んだライン状の連続的第2パターン要素とによって構成さる交差状パターンの光を、前記遮光部に投影し、
前記第1パターン要素および前記第2パターン要素のライン幅が、それぞれ、前記第1スリットのスリット幅および前記第2スリットのスリット幅より小さいことを特徴とする請求項5に記載の露光装置。
【請求項7】
複数の第1スリットと、複数の第2スリットとが、主走査方向に沿って、それぞれまとまって、順に並び、
連続的第1パターン要素の並び距離間隔が、前記第1スリットの距離間隔およびスリット幅の長さに対応し、前記連続的第2パターン要素の並び距離間隔が、前記第2スリットの距離間隔およびスリット幅の長さに対応していることを特徴とする請求項6に記載の露光装置。
【請求項8】
前記第1および第2パターン要素の離散的サブパターンが、円状または矩形状パターンによって構成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の露光装置。
【請求項9】
副走査方向に対して正負逆の傾斜角度をもつ第1、第2スリットを主走査方向に並べた遮光部に対し、位置検出パターンの光を投影し
位置検出パターンの光を主走査方向に走査させたときに、前記第1、第2スリットを透過する光を受光する受光部から出力される信号に基づいて、露光位置を検出する露光方法であって、
前記第1スリットに平行な連続的又は離散的第1パターン要素と、前記第2スリットに平行な連続的又は離散的第2パターン要素とによって構成され、前記第1パターン要素と前記第2パターン要素の一部が共有されている位置検出パターンの光を、前記遮光部に投影することを特徴とする露光方法。
【請求項10】
副走査方向に対して正負逆の傾斜角度をもつ第1、第2スリットを形成した遮光部を備え、
位置検出パターンの光を前記遮光部に対して走査させたとき、前記第1、第2スリットそれぞれに平行なサブパターンで構成される位置検出パターンが、前記第1、第2スリットを順に通過可能であることを特徴とする露光装置。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置に関し、特に、基板等に投影されるパターンの位置検出に関する。
【背景技術】
【0002】
マスクレス露光装置では、基板が搭載されるステージを走査方向に沿って移動させながら、DMD(Digital Micro-mirror Device)などの光変調素子アレイによってパターン光を基板に投影する。そこでは、ステージに載せられた基板上における投影エリア(露光エリア)の位置を検出し、その位置に応じたパターン光を投影するように、2次元状に配列されたマイクロミラーなど光変調素子を制御する。
【0003】
微細パターンを形成する場合、基板の位置を正確に検出し、パターン光を位置ずれなく投影する必要がある。しかしながら、DMDの温度変化などに起因して、パターン光の投影位置にずれが生じ、パターン形成位置に誤差が生じることがある。
【0004】
これを防ぐため、基板を搭載するテーブルなどにスリットを形成し、スリットを透過する光を受光して露光位置のずれを検出する。テーブルを移動させながら所定の位置検出用のパターン像を投影することによって、時系列的に光量を検出し、光量から算出される露光位置と、基準となる露光位置との差に基づいて、露光データの補正、あるいは取付位置調整などを行う。
【0005】
露光位置の2次元座標を検出する場合、2つの走査領域を設けて異なるスリットを形成し、スリットに合わせたパターン像を別々に投影する方法が知られている(特許文献1参照)。そこでは、一方の走査領域に対して副走査方向に平行なスリットを形成し、そのスリットに平行なパターンを投影する。他方の走査領域には、副走査方向に対して傾斜するスリットを形成し、その傾斜スリットに平行なパターンを投影する。
【0006】
また、露光対象エリア内の様々な箇所における露光位置を検出するため、折れ線状スリットを副走査方向に並べ、スポット状のパターン光を走査させる方法が知られている(特許文献2参照)。そこでは、対となる折れ線スリットを通過するパターン光から検出される光量に基づいて、露光位置を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-142036号公報
【文献】特開2018-91896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
パターンの微細化に伴い、露光対象エリアの中でより狭いエリアを設定し、そのエリアでの露光位置を精度よく検出することが要求される。しかしながら、特許文献1のように、2つの走査領域に異なるスリットを設ける検出方法では、狭いエリア設定とが難しい。一方、特許文献2のように、スポット状のパターンを投影する方法では、光量不足に起因して測定精度の低下の恐れがある。
【0009】
したがって、露光装置において、狭小なエリアでも露光位置を精度よく検出することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の露光装置は、副走査方向に対して正負逆の傾斜角度をもつ第1、第2スリットを主走査方向に並べた遮光部と、遮光部に対し、位置検出パターンの光を投影可能な露光部と、第1、第2スリットを透過する光を受光する受光部と、位置検出パターンの光を主走査方向に走査させたときに受光部から出力される信号に基づいて、露光位置を検出する検出部とを備える。例えば、副走査方向に関して対称的な第1、第2スリット部を形成することが可能である。また、複数の第1スリットと、複数の第2スリットとが、主走査方向に沿って、それぞれまとまって、順に並べるように構成することも可能である。
【0011】
そして露光部は、第1スリットに平行な連続的又は離散的第1パターン要素と、第2スリットに平行な連続的又は離散的第2パターン要素とによって構成され、第1パターン要素と第2パターン要素の一部が共有されている位置検出パターンの光を、遮光部に投影することができる。
【0012】
位置検出パターンの光は、第1、第2スリットの形状、サイズ、配置、数などに従って様々な形状の位置検出パターンを構成することが可能であり、離散的な、あるいは連続的な第1、第2のパターン要素で構成することができる。例えば、露光部は、第1パターン要素と第2パターン要素とが互いに交差する交差状パターンの光を、位置検出パターンの光として遮光部に投影することができる。
【0013】
離散的な交差状パターンの光として、露光部は、所定間隔空けて並ぶ複数のサブパターンで構成される離散的第1パターン要素と、所定間隔空けて並ぶ複数のサブパターンで構成される離散的第2パターン要素とによって構成され、第1パターン要素および第2パターン要素の中心あるいは中心付近に位置サブパターンが共有されている交差状パターンの光を、遮光部に投影することができる。例えば、第1および第2パターン要素の離散的サブパターンが、円状または矩形状パターンを投影することができる。
【0014】
特に、露光部は、所定間隔空けて並ぶ複数のサブパターンで構成される離散的第1パターン要素と、所定間隔空けて並ぶ複数のサブパターンで構成される離散的第2パターン要素とによって構成され、第1パターン要素および第2パターン要素の中心あるいは中心付近に位置サブパターンが共有されている交差状パターンの光を、遮光部に投影することができる。
【0015】
このような交差状パターンの光を投影する場合、第1パターン要素の隣り合うサブパターンの距離間隔が、第1スリットの距離間隔およびスリット幅の長さに対応し、第2パターン要素の隣り合うサブパターンの距離間隔が、第2スリットの距離間隔およびスリット幅の長さに対応しているパターン光を形成することが可能である。
【0016】
一方、連続的な第1パターン、第2パターン要素の位置検出パターンの光を投影する場合、露光部は、ライン状の連続的第1パターン要素と、ライン状の連続的第2パターン要素とによって構成される交差状パターンの光を、遮光部に投影することも可能である。例えば、露光部は、複数並んだライン状の連続的第1パターン要素と、複数並んだライン状の連続的第2パターン要素とによって構成さる交差状パターンの光を、遮光部に投影し、第1パターン要素および第2パターン要素のライン幅が、それぞれ、第1スリットのスリット幅および第2スリットのスリット幅より小さくなるように交差状パターンの光を投影すればよい。
【0017】
特に、連続的第1パターン要素の並び距離間隔が、第1スリットの距離間隔およびスリット幅の長さに対応し、連続的第2パターン要素の並び距離間隔が、第2スリットの距離間隔およびスリット幅の長さに対応しているような交差状パターンの光を投影することができる。
【0018】
本発明の他の態様である露光方法は、副走査方向に対して正負逆の傾斜角度をもつ第1、第2スリットを主走査方向に並べた遮光部に対し、位置検出パターンの光を投影し、位置検出パターンの光を主走査方向に走査させたときに、第1、第2スリットを透過する光を受光する受光部から出力される信号に基づいて、露光位置を検出する露光方法であって、第1スリットに平行な連続的又は離散的第1パターン要素と、第2スリットに平行な連続的又は離散的第2パターン要素とによって構成され、第1パターン要素と第2パターン要素の一部が共有されている位置検出パターンの光を、遮光部に投影する。
【0019】
本発明の他の態様である露光装置は、副走査方向に対して正負逆の傾斜角度をもつ第1、第2スリットを形成した遮光部を備え、位置検出パターンの光を遮光部に対して走査させたとき、第1、第2スリットそれぞれに平行なサブパターンで構成される位置検出パターンが、第1、第2スリットを順に通過可能である。例えば、副走査方向などの特定の方向に沿って対称的な第1、第2スリットを形成することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、露光装置において、狭小なエリアでも露光位置を精度よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1の実施形態である露光装置のブロック図である。
図2】遮光部の一部を示した平面図である。
図3】位置検出パターンを示した図である。
図4】位置検出パターンPTが第2スリットSU2を通過するときの図である。
図5】位置検出パターンPTが第2スリットSU2を通過するときにフォトセンサPDで検出される光量時系列分布を示したグラフである。
図6】スリットの露光位置ずれを示した図である。
図7】第2の実施形態における位置検出パターンを示した図である。
図8】第2の実施形態における、位置検出パターンが第2スリットSU2を通過するときの状態を示した図である。
図9】第3の実施形態における位置検出パターンを示した図である。
図10】第3の実施形態における、位置検出パターンPT”が第2スリットSU2を通過するときの図である。
図11】第3の実施形態における、位置検出パターンPT”が第2スリットSU2を通過するときにフォトセンサPDで検出される光量時系列分布を示したグラフである。
図12】位置検出パターンの変形例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0023】
図1は、第1の実施形態である露光装置のブロック図である。
【0024】
露光装置(描画装置)10は、フォトレジストなどの感光材料を塗布、あるいは貼り付けた基板Wへ光を照射することによってパターンを形成するマスクレス露光装置であり、基板Wを搭載するステージ12が走査方向に沿って移動可能に設置されている。ステージ駆動機構15は、主走査方向X、副走査方向Yに沿ってステージ12を移動させることができる。
【0025】
露光装置10は、パターン光を投影する複数の露光ヘッドを備えており(ここでは1つの露光ヘッド18のみ図示)、露光ヘッド18は、DMD22、照明光学系、結像光学系(いずれも図示せず)を備える。光源20は、例えば放電ランプ(図示せず)によって構成され、光源駆動部21によって駆動される。
【0026】
ベクタデータなどで構成されるCAD/CAMデータが露光装置10へ入力されると、ベクタデータがラスタ変換回路26に送られ、ベクタデータがラスタデータに変換される。生成されたラスタデータは、バッファメモリ(図示せず)に一時的に格納された後、DMD駆動回路24へ送られる。
【0027】
DMD22は、微小マイクロミラーを2次元配列させた光変調素子アレイであって、各マイクロミラーは、姿勢を変化させることによって光の反射方向を選択的に切り替える。DMD駆動回路24によって各ミラーが姿勢制御されることにより、パターンに応じた光が、結像光学系を通じて基板Wの表面に投影される。
【0028】
ステージ駆動機構15は、不図示のリニアエンコーダを備え、コントローラ30から送られてくる制御信号に従ってステージ12を移動させるとともに、ステージ12の位置を測定してコントローラ30にフィードバックする。
【0029】
位置検出部28は、ステージ12の端部付近に設置されており、フォトセンサPDおよび不図示のパルス信号発生部を備える。フォトセンサPDは、ここでは単一のセンサによって構成される。位置検出部28の上方には、部分的に光を通す遮光部40が設けられている。位置算出部27は、位置検出部28から送られてくる信号に基づき、露光位置、すなわち露光ヘッド18に対する基板W(ステージ12)の位置を算出する。
【0030】
露光動作中、ステージ12は、主走査方向Xに沿って一定速度で移動する。DMD22全体による投影エリア(以下、露光エリアという)は、基板Wの移動に伴って基板W上を相対的に移動する。露光動作は所定の露光ピッチに従って行なわれ、露光ピッチに合わせてマイクロミラーがパターン光を投影するように制御される。
【0031】
DMD22の各マイクロミラーの制御タイミングを露光エリアの相対位置に従って調整することにより、露光エリアの位置に描くべきパターンの光が順次投影される。そして、露光ヘッド18を含めた複数の露光ヘッドにより基板W全体を描画することによって、基板W全体にパターンが形成される。露光方式としては、一定速度で移動する連続移動方式だけでなく、間欠的に移動するステップ&リピートも可能である。また、露光ショット時の投影エリアを部分的に重ねる多重露光(オーバラップ露光)も可能である。
【0032】
露光動作を始める前段階などでは、パターンを正確な位置に形成するため、露光開始位置に関する補正処理が行われる。具体的には、ステージ12を一定速度で移動させながら位置検出用のパターンの光を遮光部40上で走査させる。コントローラ30は、位置算出部27から送られてくる露光位置情報に基づき、露光開始位置を補正する。
【0033】
以下、図2~6を用いて、露光位置の検出および補正について説明する。
【0034】
図2は、遮光部の一部を示した平面図である。図3は、位置検出パターンを示した図である。
【0035】
遮光部40のスリットエリアSTには、スリットSUが主走査方向Xに沿って形成されている。遮光部40は、フォトセンサPDの受光面と基板Wの描画面に並行であり、位置検出パターンの光がスリットエリアST上を通過するように、ステージ12が移動する。
【0036】
スリットSUは、それぞれ複数(ここではともに15個)のスリットから成る第1スリットSU1と第2スリットSU2とから構成され、所定のピッチ間隔で並んでいる。第1スリットSU1、第2スリットSU2は、副走査方向Yに関してそれぞれθ1、θ2だけ傾斜している。
【0037】
第1スリットSU1、第2スリットSU2は、位置検出パターンの光を主走査方向Xに沿って走査させたとき、第1スリットSU1、第2スリットSU2を順に通過するように、同一走査ラインに沿って形成されている。また、第1スリットSU1、第2スリットSU2は、副走査方向Yに関して対称的(線対称)となるように、副走査方向Yに対して正負逆の傾斜角度θ1、θ2をもつ。ここでは、副走査方向Yに対して同じ傾斜角度(|θ1|=|θ2|)であり、±45°に定められている。またピッチ間隔およびスリット幅Lも等しくなるように定められている。
【0038】
図3に示す位置検出パターンPTは、5つの矩形状パターン(以下、サブパターンという)から構成され、互いに所定間隔離れている。位置検出パターンPTは、中心部に位置するサブパターン(以下、中心サブパターンともいう)PT1と、第1スリットSU1に平行な方向に沿って中心サブパターンPT1の両側に位置する2つのサブパターンPT2、PT3と、第2スリットSU2に平行な方向に沿って中心サブパターンPT1の両側に位置する2つのサブパターンPT4、PT5とから成る。
【0039】
本実施形態では、位置検出パターンPTは、中心サブパターンPT1を中心として主走査方向X、副走査方向Yに関して対称となるように、5つのサブパターンPT1~PT5を配置した離散的なX型のパターンとして構成される。別の言い方をすれば、第1スリットS1の方向に沿って並ぶサブパターンPT1、PT2、PT3を第1パターン要素PE1とし、第2スリットS2の方向に沿って並ぶサブパターンPT4、PT1、PT5を第2パターン要素PE2とした場合、位置検出パターンPTは、第1パターン要素PE1、第2パターン要素PE2が中心部で直交するとともに、中心サブパターンPT1を共有している交差状パターンとて構成される。
【0040】
サブパターンPT1~PT5の矩形サイズはいずれも等しく、ここでは1辺の長さDの正方形パターンで構成されている。また、第1スリットSU1に沿った第1のパターン要素PE1において、互いに隣り合うサブパターンPT1、PT2、PT3の距離間隔は互に等しく(DA1)、第1スリットSU1に沿った第2パターン要素PE2も、サブパターンPT4、PT1、PT5の互いの距離間隔は等しい(DA1)。
【0041】
図4は、位置検出パターンPTが第2スリットSU2を通過するときの図である。図5は、位置検出パターンPTが第2スリットSU2を通過するときにフォトセンサPDで検出される光量時系列分布を示したグラフである。
【0042】
サブパターンPT1~PT5の辺の長さD(サイズ)は、第2スリットSU2のスリット幅Lよりも大きく、隣り合うスリット距離間隔Mよりも小さい。また、サブパターンPT1~PT5の隣り合う距離間隔DAも、スリット幅Lより大きい。また、サブパターンPT1~PT5のピッチ間隔Pは、隣り合うスリット距離間隔Mとスリット幅Lの長さに対応している。ただし、ピッチ間隔Pは、ここでは第1スリットSU1、第2スリットSU2の方向に沿って表している。
【0043】
ここでのスリット幅Lは、DMD22の1つの微小マイクロミラーの露光エリアサイズ(セルサイズともいう)よりも大きく、ステージ移動方向すなわち主走査方向に関してもおおきい(例えば、2倍の幅を有するように構成することができる)。サブパターンPT1~PT5は、いずれも所定数の塊部分の微小マイクロミラーによって形成されるパターンであるが、位置検出パターンPTが第1スリットUS1、第2スリットSU2を通過するとき、そのスリット幅Lを通過して検出される光量は、主走査方向に関して複数の微小マイクロミラーからの光に基づいている。
【0044】
このようなサイズおよびスリットとの配置間隔をもつ位置検出パターンPTが、ある特定の第2スリットSUを通過するとき、第1パターン要素PE1のサブパターンPT2が最初に第2スリットSUを通過する。そして、中心サブパターンPT1を含む第2パターン要素PE2がそのスリットを通過し、最後に第1パターン要素PE1のサブパターンPT3が通過する。
【0045】
図4の上段には、位置検出パターンPTが遮光部40の第2スリットSU2から外れた位置にあって、それぞれ次の第2スリットSU2へ進む直前の状態を示している。一方、図4の下段には、位置検出パターンPTのサブパターンPT1~PT5が、それぞれ第2スリットSU2を通過中であって、中間地点にある状態を示している。
【0046】
上述したように、サブパターンPT1~PT5の長さDが、スリット幅Lより大きく、距離間隔Mよりも小さいため、サブパターンPT1~PT5がそれぞれ対応する第2スリットSU2を通過する間、フォトセンサPDでは光量が常時検出される。その一方で、隣り合う第2スリットSU2に一部パターンが入り込むことがない。
【0047】
上述したように、フォトセンサPDのサイズは、スリットエリアSTより大きい。そのため、位置検出パターンPTが所定の第2スリットSU2を通過するとき、図5に示すような光量時系列分布が得られる。図5の光量時系列分布(A)は、位置検出パターンPTが第2スリットSU2のうち最上段のスリットを通過するときにフォトセンサPDが検出する光量時系列分布を表し、光量時系列分布(B)は、位置検出パターンPTが第2スリットSU2の上位2段を通過するときの光量時系列分布を表す。そして、光量時系列分布(C)は、位置検出パターンPTが上位3段の第2スリットSU2を通過するときの光量時系列分布を表す。
【0048】
以降、位置検出パターンPTが所定の第2スリットSU2が通過する間、サブパターンPT1~PT5がそれぞれ対応スリットを通過することによって、フォトセンサPDは光量時系列分布(D)を検出し続ける。ここでは、光量信号の立ち上がりと立下りにおいて閾値を跨いだときの位置平均を、スリット位置として検出する。位置検出パターンPTが第1スリットSU1を通過するときも、同様の光量時系列分布が得られる。
【0049】
露光ヘッドの組付け誤差などが生じている場合、測定されるスリット位置とあらかじめ定められた基準スリット位置との間にずれが生じる。これは、本来測定されるべきタイミングで位置検出パターンPTの光がスリットを通過してないことを示す。そこで、測定されたスリット位置、すなわち露光位置と基準となる露光位置との差を、ずれ量として検出する。
【0050】
なお、上記説明した光量時系列分布に基づくずれ量検出の方法は、例えば特開2015-142036号公報に示すように、主走査方向に沿った光強度分布/光量分布と、センサ検出による時系列的な光量分布とがともに略ガウス分布となって相関関係をもつことを前提とするずれ量検出であり、スリット幅LよりもサブパターンPT1~PT5の幅Dを十分大きく定めることでずれ検出精度を向上させることができる。
【0051】
図6は、スリットの露光位置ずれを示した図である。ここでは、位置検出パターンPTを1つのサブパターンPT1によって構成されるパターンに単純化して、第1スリットSU1および第2スリットSU2の露光位置ずれ算出の一例を説明する。
【0052】
スリット位置にずれが生じる場合、主走査方向Xに沿ったサブパターンPT1の位置ずれ量dxは、第1スリットSU1、第2スリットSU2それぞれにおいてそのまま測定される。一方、副走査方向Yに沿ったサブパターンPT1のずれ量は、スリット傾斜角度が45°であることから、第1スリットSU1では主走査方向Xに沿った変位量dxと等しく、第2スリットSU2では、反対方向(ベクトルが逆向き)の変位量-dxとして求められる。
よって、SU1の測定値d1とSU2の測定値d2は、以下の式で表される。

d1=dx+dy d2=dx-dy・・・・(1)
【0053】
そのため、第1スリットSU1と第2スリットSU2に対し、主走査方向Xに沿ったスリット位置ずれ量dx、副走査方向Yに沿ったスリット位置ずれ量dyは、(1)式より求められた以下の(2)式によって求められる。ここでは、第1スリットSU1、第2スリットSU2の2本のスリットのみがある場合を例示しているが、第1スリットSU1、第2スリットSU2がそれぞれ複数のスリットで構成される場合であっても、第1スリットSU1、第2スリットSU2それぞれの各スリットのdxとdyを測定し、それぞれ平均値を算出することで平均dxと平均dyを求め、式に当てはめることが可能である。

dx=(d1+d2)/2 dy=(d1-d2)/2 ・・・(2)
【0054】
以上、位置検出パターンPTを1つのサブパターンPTとして単純化した場合のスリット位置ずれの算出を説明したが、実際には、図4、5に示す位置検出パターンPTのスリット通過によって得られる光量時系列分布から、上記(2)式に基づいてスリット位置ずれ量が算出される。したがって、本実施形態における露光位置のずれ量算出方法は、特定の微小マイクロミラーを点灯させてそのセルパターンの位置情報やスリット位置通過時のスリット位置情報を検出する機能をもつことなく、光量時系列分布から露光位置のずれ量を算出しているものといえる。
【0055】
なお、第1スリットSU1、SU2が傾斜角度45°以外の傾斜角度で形成されている場合にも、tangentθを考慮することによって、スリット位置のずれを算出することができる。また、第1スリットSU1、第2スリットSU2が、副走査方向Yに関して対称的でなくてもよく、第1スリットSU1、第2スリットSU2を異なる傾斜角度に設定する、あるいは、第1スリットSU1、SU2を交互に並べることも可能である。なお、スリットSU1とSU2のいずれもが主走査方向と平行にならないようにする、あるいは、SU1とSU2の少なくとも一方が、副走査方向と平行にならないようにすればよい。
【0056】
このように本実施形態によれば、露光装置10は、主走査方向Xに沿って並ぶ第1スリットSU1、第2スリットSU2を設けた遮光部40を備え、正方形状のサブパターンPT1~PT5を配置したX型の離散的位置検出パターンPTの光を、遮光部40の第1、第2スリットSU1、SU2に対して主走査方向Xに沿って走査させる。
【0057】
正負逆で副走査方向Yに関して線対称であって、主走査方向Xに関して同一走査ラインに並ぶ第1スリットSU1、SU2を形成し、第1スリットSU1、SU2に平行な第1パターン要素PE1、第2パターン要素PE2から成る位置検出パターンPTを走査させることにより、副走査方向Yに関して狭小なスリットエリアSTを形成することができ、また、一度の走査で露光位置を検出することができる。
【0058】
また、離散的に並ぶサブパターンPT1~PT5によって位置検出パターンPT5を形成し、光量が検出できない期間を設けるように、サイズおよび距離間隔を設定することによって、光量最大値を検出するときにフォトセンサPDのフルレンジを用いて光量検出することができる。フルレンジによる光量検出によって、光量時系列分布の立ち上がり、立下りが急峻となり、検出精度が向上する。
【0059】
なお、5個以外のサブパターンによって離散的な位置検出パターンPTを検出することも可能であるが、閾値を最大光量の半値に設定したときに誤った光量検出されることを防ぐため、奇数個に設定するのが良い。
【0060】
次に、図7、8を用いて、第2の実施形態である露光装置について説明する。第2の実施形態では、位置検出パターンが連続的な棒状パターン要素から構成される。
【0061】
図7は、第2の実施形態における位置検出パターンを示した図である。位置検出パターンPT’は、棒状の第1、第2パターン要素PE’1、PE’2を、対称性をもたせるように中心部で交差させたX型パターンとして構成されている。位置検出パターンPT’は、第1の実施形態で示したサブパターンPT1~PT5から成る離散的な位置検出パターンPTに対し、隣り合うサブパターンの隙間をなくしたパターン形状に相当する。
【0062】
図8は、第2の実施形態における、位置検出パターンが第2スリットSU2を通過するときの状態を示した図である。連続的パターン要素PE’1、PE’2から成る位置検出パターンPT’においても、第1の実施形態と同様の光量時系列分布が得られる。したがって、第1の実施形態と同じようにスリットの位置(露光位置)を算出することができる。ただし、第1、第2パターン要素PE’1、PE’2の長さD’は、第2パターン要素PE’2が第2スリットSU2の中間位置にあるとき、第1パターン要素P’1の両端が隣り合う第2スリットSU2と重なるように、定められている。
【0063】
次に、図9~11を用いて、第3の実施形態である露光装置について説明する。第2の実施形態では、位置検出パターンが細線のサブパターンから構成される。
【0064】
図9は、第3の実施形態における位置検出パターンを示した図である。位置検出パターンPT”は、棒状のサブパターンPT”1~PT”3から成る第1パターン要素PE’1と、棒状のサブパターンPT”4~PT”6から成る第2パターン要素PE’1から構成される。サブパターンPT”2は、両隣りのサブパターンPT”1、PT”3よりも長く、第1パターン要素PE”1は、サブパターンPT”2に関して対称的(線対称)である。第2パターン要素PE”2についても同様に、サブパターンPT”5が両隣りのサブパターンPT”4、PT”6よりも長く、対称的配置になっている。
【0065】
位置検出パターンPT”は、サブパターンPT”2、PT”5がそれぞれ中心部で交差した、主走査方向Xに関して対称的パターンであり、サブパターンPT”1~PT”6の幅D’は、スリット幅Lより短い。サブパターンPT”1~PT”3のピッチ間隔P”は、スリット距離間隔Mとスリット幅Lの長さに対応している。
【0066】
図10は、第3の実施形態における、位置検出パターンPT”が第2スリットSU2を通過するときの図である。図11は、第3の実施形態における、位置検出パターンPT”が第2スリットSU2を通過するときにフォトセンサPDで検出される光量時系列分布を示したグラフである。
【0067】
第3の実施形態においても、第1、第2の実施形態と同様の光量時系列分布が得られるが、サブパターンPT”1~PT”6の幅D’が細線であって、スリット幅Lと比べて短いため、光量時系列分布の立ち上がり、立下りがより急峻となる。そのため、スリット位置を精度よく検出することができる。
【0068】
以上、第1~第3の実施形態では、離散的あるいは連続的なサブパターンで構成される交差状の位置検出パターンを例示したが、それ以外の構成も可能であり、第1スリットSU1、第2スリットSU2にそれぞれ平行な第1パターン要素、第2パターン要素から成り、パターン一部を、中心部あるいはそれ以外の部分で共有化した位置検出パターンを構成すればよい。
【0069】
図12は、位置検出パターンの変形例を示した図である。図12(A)~(F)に示すように、T字型やドット状のサブパターンで構成することも可能であり、また、連続的サブパターンと離散的サブパターンを組み合わせることも可能である。露光装置10がDMD22を備えたマスクレス露光装置であるため、様々な位置検出パターンの光を投影することができる。
【符号の説明】
【0070】
10 露光装置
22 DMD(光変調素子アレイ)
27 位置算出部
28 位置検出部(測光部)
30 コントローラ(露光制御部)
40 遮光部
PD フォトセンサ


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12