(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】連続鋳造設備の可変装置
(51)【国際特許分類】
B22D 11/16 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
B22D11/16 106A
(21)【出願番号】P 2021036063
(22)【出願日】2021-03-08
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】川口 浩志
(72)【発明者】
【氏名】前田 剛
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-190344(JP,U)
【文献】実開昭60-042432(JP,U)
【文献】実公昭49-029218(JP,Y1)
【文献】特開平09-150240(JP,A)
【文献】特開2013-220468(JP,A)
【文献】実開昭61-092441(JP,U)
【文献】米国特許第06142212(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/00-11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続鋳造設備の鋳型をなす一対の短辺鋳型同士の間隔を変更する、連続鋳造設備の可変装置において、
前記短辺鋳型同士が対向する方向である対向方向に前記短辺鋳型を進退させる主進退軸と、
前記対向方向に進退可能に前記主進退軸を支持する主進退軸支持筒と、
前記主進退軸よりも上側または下側に配置され、前記対向方向に前記短辺鋳型を進退させる副進退軸と、
前記対向方向に進退可能に前記副進退軸を支持する副進退軸支持筒と、
を有し、
前記主進退軸は、断面形状が上下方向に縦長であって、
前記副進退軸よりも断面積が大きく、前記副進退軸よりも鋳片の引き抜き方向における剛性が高くされ
、
前記主進退軸の先端部、および、前記副進退軸の先端部の各々は、前記引き抜き方向および前記対向方向にそれぞれ直交する方向に延びる接続部材で前記短辺鋳型に接続され、
前記主進退軸支持筒は、前記鋳型をなす長辺鋳型に支持され、
前記副進退軸支持筒は、前記引き抜き方向および前記対向方向にそれぞれ直交する方向を回転中心として前記上下方向に揺動可能に前記主進退軸支持筒に支持され、
前記短辺鋳型は、前記主進退軸支持筒に対する前記主進退軸の進出長さと、前記副進退軸支持筒に対する前記副進退軸の進出長さとを異ならせることで、前記引き抜き方向および前記対向方向にそれぞれ直交する方向を回転中心として傾斜可能とされていることを特徴とする連続鋳造設備の可変装置。
【請求項2】
連続鋳造設備の鋳型をなす一対の短辺鋳型同士の間隔を変更する、連続鋳造設備の可変装置において、
前記短辺鋳型同士が対向する方向である対向方向に前記短辺鋳型を進退させる主進退軸と、
前記対向方向に進退可能に前記主進退軸を支持する主進退軸支持筒と、
前記主進退軸よりも上側または下側に配置され、前記対向方向に前記短辺鋳型を進退させる副進退軸と、
前記対向方向に進退可能に前記副進退軸を支持する副進退軸支持筒と、
を有し、
前記主進退軸は、断面形状が上下方向に縦長であって、
前記副進退軸よりも断面積が大きく、前記副進退軸よりも鋳片の引き抜き方向における剛性が高くされ
、
前記主進退軸の先端部、および、前記副進退軸の先端部の各々は、前記引き抜き方向および前記対向方向にそれぞれ直交する方向に延びる接続部材で前記短辺鋳型に接続され、
前記主進退軸支持筒は、前記鋳型をなす長辺鋳型に支持され、
前記副進退軸支持筒は、前記引き抜き方向および前記対向方向にそれぞれ直交する方向を回転中心として前記上下方向に揺動可能に前記長辺鋳型に支持され、
前記短辺鋳型は、前記主進退軸支持筒に対する前記主進退軸の進出長さと、前記副進退軸支持筒に対する前記副進退軸の進出長さとを異ならせることで、前記引き抜き方向および前記対向方向にそれぞれ直交する方向を回転中心として傾斜可能とされていることを特徴とする連続鋳造設備の可変装置。
【請求項3】
連続鋳造設備の鋳型をなす一対の短辺鋳型同士の間隔を変更する、連続鋳造設備の可変装置において、
前記短辺鋳型同士が対向する方向である対向方向に前記短辺鋳型を進退させる主進退軸と、
前記対向方向に進退可能に前記主進退軸を支持する主進退軸支持筒と、
前記主進退軸よりも上側または下側に配置され、前記対向方向に前記短辺鋳型を進退させる副進退軸と、
前記対向方向に進退可能に前記副進退軸を支持する副進退軸支持筒と、
を有し、
前記主進退軸は、断面形状が上下方向に縦長であって、
前記副進退軸よりも断面積が大きく、前記副進退軸よりも鋳片の引き抜き方向における剛性が高くされ
、
前記主進退軸の先端部、および、前記副進退軸の先端部の各々は、前記引き抜き方向および前記対向方向にそれぞれ直交する方向に延びる接続部材で前記短辺鋳型に接続され、
前記主進退軸支持筒および前記副進退軸支持筒の各々は、前記鋳型をなす長辺鋳型に支持され、
前記短辺鋳型は、前記副進退軸の先端部と前記短辺鋳型との接続部分における前記上下方向に長い長孔に前記接続部材を刺し通すことにより前記副進退軸の先端部に対して前記上下方向に移動可能にされ、
前記短辺鋳型は、前記主進退軸支持筒に対する前記主進退軸の進出長さと、前記副進退軸支持筒に対する前記副進退軸の進出長さとを異ならせることで、前記引き抜き方向および前記対向方向にそれぞれ直交する方向を回転中心として傾斜可能とされていることを特徴とする連続鋳造設備の可変装置。
【請求項4】
前記主進退軸支持筒および前記副進退軸支持筒の各々を、前記鋳型をなす一対の長辺鋳型同士が対向する方向に移動させることが可能な移動手段を有することを特徴とする請求項
1~
3のいずれか1項に記載の連続鋳造設備の可変装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続鋳造設備の鋳型をなす一対の短辺鋳型同士の間隔を変更する、連続鋳造設備の可変装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、連続鋳造の鋳込み中にストランド幅(鋳片の幅)を変更するのに用いる短辺鋳型駆動装置を備えた連続鋳造機が開示されている。この連続鋳造機では、短辺鋳型を進退させる進退軸の外面形状、および、進退軸を支持する進退軸支持筒の内面形状をストランド引き抜き方向(鋳片の引き抜き方向)に長い矩形断面として、ストランド引き抜き方向における進退軸の剛性を強化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の連続鋳造機では、上側と下側の2つの進退軸の各々が、短辺鋳型にかかる、鋳片の引き抜き方向、および、短辺鋳型同士が対向する方向である対向方向の負荷をそれぞれ受け持っている。そして、特許文献1では、2つの進退軸の断面積を同等にしている。しかしながら、この場合、鋳片の厚みが薄く、短辺鋳型同士の間隔の変更量が大きい鋳型においては、2つの進退軸の断面積をそれぞれ小さくせざるを得ず、鋳片の引き抜き方向における進退軸の剛性を十分に確保することができない。
【0005】
本発明の目的は、鋳片の厚みが薄く、短辺鋳型同士の間隔の変更量が大きい鋳型においても、鋳片の引き抜き方向における進退軸の剛性を十分に確保することが可能な、連続鋳造設備の可変装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、連続鋳造設備の鋳型をなす一対の短辺鋳型同士の間隔を変更する、連続鋳造設備の可変装置において、前記短辺鋳型同士が対向する方向である対向方向に前記短辺鋳型を進退させる主進退軸と、前記主進退軸よりも上側または下側に配置され、前記対向方向に前記短辺鋳型を進退させる副進退軸と、を有し、前記主進退軸は、断面形状が上下方向に縦長であって、前記副進退軸よりも鋳片の引き抜き方向における剛性が高くされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、主進退軸は、断面形状が上下方向に縦長であって、鋳片の引き抜き方向における剛性が副進退軸よりも高くされている。そのため、鋳片の引き抜き方向を引き抜き方向、短辺鋳型同士が対向する方向を対向方向とすると、主進退軸に、短辺鋳型にかかる引き抜き方向および対向方向の負荷をそれぞれ受け持たせる一方で、副進退軸に、短辺鋳型にかかる対向方向の負荷だけを受け持たせることができる。すると、副進退軸は、短辺鋳型にかかる引き抜き方向の負荷を受け持つ必要がないので、副進退軸の断面積を小さくすることができる。副進退軸の断面積を小さくすることで、空いたスペースを利用して、主進退軸の断面積を大きくすることができる。その結果、引き抜き方向における主進退軸の剛性を高めることができる。これにより、鋳片の厚みが薄く、短辺鋳型同士の間隔の変更量が大きい鋳型においても、鋳片の引き抜き方向における進退軸の剛性を十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】連続鋳造設備の上面図であり、一対の短辺鋳型同士の間隔が広くされた状態を示す図である。
【
図3】連続鋳造設備の上面図であり、一対の短辺鋳型同士の間隔が狭くされた状態を示す図である。
【
図5】
図1のA-A断面図であり、短辺鋳型が傾斜された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0010】
(連続鋳造設備の構成)
本実施形態による連続鋳造設備の可変装置(可変装置)は、連続鋳造設備の鋳型をなす一対の短辺鋳型同士の間隔を変更するものである。連続鋳造設備20の上面図である
図1に示すように、連続鋳造設備20は、一対の長辺鋳型21と、一対の長辺銅板22と、一対の短辺鋳型23と、一対の短辺銅板24と、を有している。なお、
図1では、長辺鋳型21および長辺銅板22の右半分しか図示していない。よって、短辺鋳型23および短辺銅板24は1つずつしか図示していない。
【0011】
一対の長辺鋳型21、一対の長辺銅板22、一対の短辺鋳型23、および、一対の短辺銅板24は、1つの鋳型を形成している。長辺銅板22は、長辺鋳型21の内面(長辺鋳型21同士が対向する面)に配置されている。短辺銅板24は、短辺鋳型23の内面(短辺鋳型23同士が対向する面)に配置されている。また、短辺銅板24は、一対の長辺銅板22の間に配置されている。
【0012】
このような構成において、鋳型内に注入された溶湯は鋳型内で凝固して鋳片となる。この鋳片が、下方(紙面奥方向)に連続的に引き抜かれる。以降、鋳片の引き抜き方向を、「引き抜き方向」とする。また、引き抜き方向およびその逆方向を「上下方向」として、引き抜き方向を「下方向」とする。
【0013】
一対の長辺鋳型21同士の間隔、即ち、鋳片の厚みは、可変にされている。鋳片の厚みが変更された場合、短辺鋳型23は、その厚みに合った幅のものに交換される。ここで、短辺鋳型23の幅とは、鋳片の厚み方向の長さである。また、一対の短辺鋳型23同士の間隔は、可変装置1によって可変にされている。
【0014】
(可変装置の構成)
図1のA-A断面図である
図2に示すように、可変装置1は、主進退軸2と、主進退軸支持筒3と、副進退軸4と、副進退軸支持筒5と、を有している。これらは、一対の長辺鋳型21同士の間に配置されている。
【0015】
主進退軸2は、対向方向に短辺鋳型23を進退させる。副進退軸4は、主進退軸2よりも上側に配置され、対向方向に短辺鋳型23を進退させる。ここで、「対向方向」とは、一対の短辺鋳型23同士が対向する方向(図中左右方向)である。
【0016】
なお、副進退軸4が主進退軸2よりも下側に配置されていてもよい。つまり、主進退軸2と副進退軸4とは上下が逆に配置されていてもよい。
【0017】
主進退軸2には、主進退軸2の中心軸に沿って送りねじ11が螺合されている。同様に、副進退軸4には、副進退軸4の中心軸に沿って送りねじ12が螺合されている。
【0018】
主進退軸2の先端部は、引き抜き方向および対向方向にそれぞれ直交する方向(紙面に直交する方向)に延びるピン(接続部材)14で、短辺鋳型23の下部に設けられたブラケット23aに接続されている。同様に、副進退軸4の先端部は、引き抜き方向および対向方向にそれぞれ直交する方向(紙面に直交する方向)に延びるピン(接続部材)15で、短辺鋳型23の上部に設けられたブラケット23bに接続されている。
【0019】
主進退軸支持筒3は、対向方向に進退可能に主進退軸2を支持する。主進退軸支持筒3の長手方向の両端部において、主進退軸支持筒3と主進退軸2との間には、レベル調整用のライナープレート16が設けられている。主進退軸支持筒3の短辺鋳型23とは反対側の端部には、送りねじ11を軸支するベアリング17が設けられている。
【0020】
副進退軸支持筒5は、対向方向に進退可能に副進退軸4を支持する。副進退軸支持筒5においても、主進退軸支持筒3と同様に、ライナープレート16やベアリング17が設けられている。
【0021】
送りねじ11が回転されると、主進退軸支持筒3内を、主進退軸2が対向方向に進退される。同様に、送りねじ12が回転されると、副進退軸支持筒5内を、副進退軸4が対向方向に進退される。連続鋳造設備20の上面図である
図3に示すように、一対の短辺鋳型23同士の間隔が狭くされた際には、主進退軸2および副進退軸4は、一対の長辺銅板22の間に侵入することになる。つまり、一対の長辺鋳型21同士が対向する方向において、主進退軸2および副進退軸4の幅は、短辺鋳型23の幅と同じか、それよりも小さくされている。
【0022】
図2に戻って、主進退軸支持筒3は、一対の長辺鋳型21の一方(
図1の上側の長辺鋳型21)に支持されている。具体的には、主進退軸支持筒3の長手方向の両端部が、長辺鋳型21に支持されている。なお、主進退軸支持筒3は、長辺鋳型21を支持する支持枠などに支持されていてもよい。ここで、支持枠とは、実開昭52-17311に開示されているように、鋳型を取り囲むように配置された枠である。
【0023】
一方、副進退軸支持筒5は、上下方向に揺動可能に主進退軸支持筒3に支持されている。具体的には、
図2のB-B断面図である
図4に示すように、主進退軸支持筒3の上部から上方に向かって一対のフランジ18が突出されており、これらフランジ18と副進退軸支持筒5とが、副進退軸支持筒5の両側部に設けられた円柱状の凸部19で接続されている。凸部19は、上下方向および対向方向(紙面に直交する方向)にそれぞれ直交する方向(図中左右方向)に延びている。
【0024】
図1のA-A断面図である
図5に示すように、主進退軸2の進出長さと、副進退軸4の進出長さとを異ならせることで、短辺鋳型23が傾斜される。図示のように短辺鋳型23が傾斜された際に、凸部19を中心に、副進退軸支持筒5が下方向(引き抜き方向)に揺動する。
【0025】
ここで、図示しない鋳型振動装置によって、鋳型は上下方向に往復運動される。長辺銅板22および短辺銅板24は、鋳片と接しているので、この往復運動によって、鋳型には上下方向に外力が作用する。鋳造中における鋳片の幅の変更時には、短辺鋳型23は長辺鋳型21でクランプされない状態になり、短辺鋳型23は2つの進退軸のみで支持される。そのため、進退軸の先端に上下方向に外力が作用することになる。引き抜き方向における進退軸の剛性が不足していると、進退軸の先端が撓むことで、短辺銅板24が鋳片に固着した状態になり、正常な振動波形が得られなくなる。その結果、鋳片の表面品質が損なわれる。また、鋳片が短辺銅板24に固着してブレークアウトになることもある。なお、ブレークアウトとは、鋳型内での冷却において、表層部の凝固シェルが破れ内部溶鋼が流出する現象である。
【0026】
そこで、
図4に示すように、主進退軸2は、断面形状が上下方向に縦長の矩形であって、引き抜き方向における剛性(断面二次モーメント)が副進退軸4よりも高くされている。なお、本実施形態では、副進退軸4も、断面形状が上下方向に縦長の矩形である。なお、主進退軸2の断面形状は、上下方向に縦長であれば、楕円などであってもよい。また、副進退軸4の断面形状は、上下方向に縦長でなくてもよく、正方形や円形などであってもよい。
【0027】
本実施形態では、主進退軸2の断面形状は、上下方向の長さが300mmで、左右方向の長さが120mmである。この主進退軸2は、直径が120mmの断面円形の進退軸に比べて、断面二次モーメントが26.5倍、断面係数が10.6倍である。断面形状を円形から上下方向に縦長にすることで、進退軸のたわみ量は1/26.5に軽減され、進退軸に生じる曲げ応力は1/10.6に軽減される。
【0028】
主進退軸2は、短辺鋳型23にかかる、引き抜き方向および対向方向の負荷をそれぞれ受け持つ。一方、副進退軸4は、短辺鋳型23にかかる対向方向の負荷だけを受け持つ。つまり、主進退軸2は、長辺鋳型21に支持されることで、対向方向の負荷だけでなく、引き抜き方向の負荷を受け持つ。これに対して、副進退軸4は、上下方向に揺動可能にされることで、引き抜き方向の負荷を受け持たず、対向方向の負荷だけを受け持つ。
【0029】
このように、副進退軸4は、短辺鋳型23にかかる、鋳片の引き抜き方向の負荷を受け持つ必要がないので、副進退軸4の断面積を小さくすることができる。副進退軸4の断面積を小さくすることで、空いたスペースを利用して、主進退軸2の断面積を大きくすることができる。その結果、鋳片の引き抜き方向における主進退軸2の剛性を高めることができる。これにより、鋳片の厚みが薄く、短辺鋳型23同士の間隔の変更量が大きい鋳型においても、鋳片の引き抜き方向における進退軸の剛性を十分に確保することができる。
【0030】
主進退軸支持筒3の断面図である
図6に示すように、主進退軸支持筒3は、複数の部材を組み立てて構成されている。本実施形態では、主進退軸支持筒3の上辺をなすプレート部材31と、主進退軸支持筒3の下辺をなすプレート部材32と、主進退軸支持筒3の左辺をなすプレート部材33と、主進退軸支持筒3の右辺をなすプレート部材34とが、ボルトで締結されて筒状に組み立てられることで、主進退軸支持筒3が構成されている。
【0031】
上述したように、図示しない鋳型振動装置によって、鋳型は上下方向に往復運動される。進退軸支持筒の矩形穴と、進退軸との間に大きな遊隙があると、その遊隙の範囲で短辺銅板24が鋳片に固着した状態になる。その結果、正常な振動波形が得られなくなるので、鋳片の表面品質が損なわれる。また、鋳片が短辺銅板24に固着してブレークアウトになることもある。
【0032】
そこで、矩形穴の寸法精度および摺動面の加工精度を上げる必要がある。棒状の部材を加工して長尺の矩形穴を形成する場合、矩形穴の寸法精度を上げるのは容易ではない。これに対して、複数のプレート部材31~34を組み立てて矩形穴を形成することで、矩形穴の寸法精度を上げることができる。また、筒状の部材よりも、筒状に組み立てる前のプレート部材31~34の方が、主進退軸2との摺動面の加工が容易であるので、摺動面の加工精度を上げることができる。
【0033】
なお、主進退軸支持筒3の上辺および左辺をなす断面L字状の部材と、主進退軸支持筒3の下辺および右辺をなす断面L字状の部材とが、ボルトなどで締結されて筒状に組み立てられることで、主進退軸支持筒3が構成されていてもよい。また、主進退軸支持筒3の上辺、左辺、および、右辺をなす断面コ字状の部材と、主進退軸支持筒3の下辺をなす板状の部材とが、ボルトなどで締結されて筒状に組み立てられることで、主進退軸支持筒3が構成されていてもよい。
【0034】
図2のC-C断面図である
図7に示すように、可変装置1は、シリンダ(移動手段)6を有している。シリンダ6は、主進退軸支持筒3および副進退軸支持筒5の各々を、鋳型をなす一対の長辺鋳型21同士が対向する方向(図中左右方向)に移動させることが可能である。
【0035】
具体的には、主進退軸支持筒3の短辺鋳型23側の端部は、長辺鋳型21に形成された空間36内に収容されている。この空間36は、長辺鋳型21同士が対向する方向に延在している。主進退軸支持筒3の短辺鋳型23側の端部の側面には、長辺鋳型21の側方に配置されたシリンダ6のロッド6aが接続されている。このシリンダ6は、長辺鋳型21同士が対向する方向にロッド6aを進退させる。主進退軸支持筒3の短辺鋳型23とは反対側の端部も、同様の空間36内に収容され、この端部の側面にも、同様に配置されたシリンダ6のロッド6aが接続されている。
【0036】
2つのシリンダ6が同期してロッド6aを進退させることで、空間36内を主進退軸支持筒3の両端部が、長辺鋳型21同士が対向する方向に移動される。これにより、主進退軸支持筒3は、長辺鋳型21同士が対向する方向に移動される。副進退軸支持筒5は、主進退軸支持筒3に支持されているので、主進退軸支持筒3とともに長辺鋳型21同士が対向する方向に移動される。
【0037】
このように、主進退軸支持筒3および副進退軸支持筒5の各々が、一対の長辺鋳型21同士が対向する方向に移動可能に構成されているので、長辺鋳型21同士の間隔、即ち、鋳片の厚みが変更されても、主進退軸2および副進退軸4を、鋳片の厚み方向における短辺鋳型23の中央に位置させることができる。これにより、主進退軸2および副進退軸4で、短辺鋳型23にかかる対向方向の負荷を好適に受け持つことができる。
【0038】
(変形例)
なお、凸部19を中心に、副進退軸支持筒5が、上下方向に揺動可能に主進退軸支持筒3に支持された構成に限定されず、以下の構成であってもよい。即ち、副進退軸支持筒5は、上下方向に揺動可能に長辺鋳型21に支持されていてもよい。例えば、副進退軸支持筒5の長手方向の中央部において、副進退軸支持筒5の両側面から突出した円柱状の凸部の各々が、長辺鋳型21に形成された凹部に嵌ることで、凸部を中心に副進退軸支持筒5が上下方向に揺動する構成であってよい。一対の長辺鋳型21同士の間隔が変更されない場合には、このような構成であっても、副進退軸4に、短辺鋳型23にかかる対向方向の負荷だけを受け持たせることができる。
【0039】
また、副進退軸支持筒5は、長辺鋳型21に支持され、短辺鋳型23は、副進退軸4の先端部に対して上下方向に移動可能にされていてもよい。例えば、ブラケット23b(
図2参照)に形成されてピン15が刺し通される穴が、上下方向に長い長穴にされることで、副進退軸支持筒5が上下方向に揺動しなくても、短辺鋳型23を傾斜させることが可能にされている(
図5参照)。このような構成であっても、副進退軸4に、短辺鋳型23にかかる対向方向の負荷だけを受け持たせることができる。なお、ブラケット23bに形成されてピン15が刺し通される穴の代わりに、副進退軸4の先端部に形成されてピン15が刺し通される穴が長穴にされていてもよい。
【0040】
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係る可変装置1によると、主進退軸2は、断面形状が上下方向に縦長であって、鋳片の引き抜き方向における剛性が副進退軸4よりも高くされている。そのため、鋳片の引き抜き方向を引き抜き方向、短辺鋳型23同士が対向する方向を対向方向とすると、主進退軸2に、短辺鋳型23にかかる引き抜き方向および対向方向の負荷をそれぞれ受け持たせる一方で、副進退軸4に、短辺鋳型23にかかる対向方向の負荷だけを受け持たせることができる。すると、副進退軸4は、短辺鋳型23にかかる引き抜き方向の負荷を受け持つ必要がないので、副進退軸4の断面積を小さくすることができる。副進退軸4の断面積を小さくすることで、空いたスペースを利用して、主進退軸2の断面積を大きくすることができる。その結果、引き抜き方向における主進退軸2の剛性を高めることができる。これにより、鋳片の厚みが薄く、短辺鋳型23同士の間隔の変更量が大きい鋳型においても、鋳片の引き抜き方向における進退軸の剛性を十分に確保することができる。
【0041】
また、主進退軸支持筒3は、鋳型をなす長辺鋳型21に支持されている一方、副進退軸支持筒5は、凸部19を中心に上下方向に揺動可能に主進退軸支持筒3に支持されている。主進退軸支持筒3を長辺鋳型21で支持することで、主進退軸2に、引き抜き方向および対向方向の負荷をそれぞれ受け持たせることができる。一方、副進退軸支持筒5を、凸部19を中心に上下方向に揺動可能にすることで、副進退軸4に、短辺鋳型23にかかる対向方向の負荷だけを受け持たせることができる。
【0042】
また、主進退軸支持筒3は、複数の部材を組み立てて構成されている。主進退軸2は、断面形状が上下方向に縦長であるので、主進退軸支持筒3も、断面形状が上下方向に縦長となる。例えば、上辺、下辺、左辺、右辺をなす4つの部材を、ボルトなどで締結して筒状に組み立てることで、主進退軸支持筒3を構成する。また、例えば、上辺および左辺をなす断面L字状の部材と、下辺および右辺をなす断面L字状の部材とを、ボルトなどで締結して筒状に組み立てることで、主進退軸支持筒3を構成する。棒状の部材を加工して長尺の矩形穴を形成する場合、矩形穴の寸法精度を上げるのは容易ではないが、複数の部材を組み立てて矩形穴を形成することで、矩形穴の寸法精度を上げることができる。また、筒状の部材よりも、筒状に組み立てる前の部材の方が、主進退軸2との摺動面の加工が容易であるので、摺動面の加工精度を上げることができる。
【0043】
また、主進退軸支持筒3および副進退軸支持筒5の各々が、鋳型をなす一対の長辺鋳型21同士が対向する方向に移動可能に構成されている。これにより、長辺鋳型21同士の間隔、即ち、鋳片の厚みが変更されても、主進退軸2および副進退軸4を、鋳片の厚み方向における短辺鋳型23の中央に位置させることができる。これにより、主進退軸2および副進退軸4で、短辺鋳型23にかかる対向方向の負荷を好適に受け持つことができる。
【0044】
なお、変形例のように、主進退軸支持筒3が、鋳型をなす長辺鋳型21に支持されている一方、副進退軸支持筒5が、円柱状の凸部を中心に、上下方向に揺動可能に長辺鋳型21に支持されている場合には、以下の効果を奏する。主進退軸支持筒3を長辺鋳型21で支持することで、主進退軸2に、引き抜き方向および対向方向の負荷をそれぞれ受け持たせることができる。一方、副進退軸支持筒5を上下方向に揺動可能にすることで、副進退軸4に、短辺鋳型23にかかる対向方向の負荷だけを受け持たせることができる。
【0045】
また、変形例のように、主進退軸支持筒3および副進退軸支持筒5が、鋳型をなす長辺鋳型21に支持され、短辺鋳型23は、副進退軸4の先端部に対して上下方向に移動可能にされている場合には、以下の効果を奏する。主進退軸支持筒3を長辺鋳型21で支持することで、主進退軸2に、引き抜き方向および対向方向の負荷をそれぞれ受け持たせることができる。一方、副進退軸支持筒5を長辺鋳型21で支持し、短辺鋳型23を副進退軸4の先端部に対して上下方向に移動可能にすることで、副進退軸4に、短辺鋳型23にかかる対向方向の負荷だけを受け持たせることができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0047】
1 可変装置
2 主進退軸
3 主進退軸支持筒
4 副進退軸
5 副進退軸支持筒
6 シリンダ(移動手段)
11,12 送りねじ
14,15 ピン(接続部材)
16 ライナープレート
17 ベアリング
18 フランジ
19 凸部
20 連続鋳造設備
21 長辺鋳型
22 長辺銅板
23 短辺鋳型
23a,23b ブラケット
24 短辺銅板
31~34 プレート部材
36 空間