IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝デバイス&ストレージ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-半導体装置 図1
  • 特許-半導体装置 図2
  • 特許-半導体装置 図3
  • 特許-半導体装置 図4
  • 特許-半導体装置 図5
  • 特許-半導体装置 図6
  • 特許-半導体装置 図7
  • 特許-半導体装置 図8
  • 特許-半導体装置 図9
  • 特許-半導体装置 図10
  • 特許-半導体装置 図11
  • 特許-半導体装置 図12
  • 特許-半導体装置 図13
  • 特許-半導体装置 図14
  • 特許-半導体装置 図15
  • 特許-半導体装置 図16
  • 特許-半導体装置 図17
  • 特許-半導体装置 図18
  • 特許-半導体装置 図19
  • 特許-半導体装置 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/338 20060101AFI20240814BHJP
   H01L 29/812 20060101ALI20240814BHJP
   H01L 29/778 20060101ALI20240814BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20240814BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20240814BHJP
   H01L 25/00 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
H01L29/80 E
H01L29/80 H
H01L27/04 P
H01L25/00 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021148365
(22)【出願日】2021-09-13
(65)【公開番号】P2023041166
(43)【公開日】2023-03-24
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】杉山 亨
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 啓
(72)【発明者】
【氏名】洪 洪
(72)【発明者】
【氏名】磯部 康裕
(72)【発明者】
【氏名】小林 仁
【審査官】恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-182000(JP,A)
【文献】特開2015-056564(JP,A)
【文献】特開2010-103236(JP,A)
【文献】国際公開第2019/163205(WO,A1)
【文献】特開2021-125669(JP,A)
【文献】特開2001-127099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/338
H01L 21/822
H01L 25/00
H01L 29/778
H01L 29/812
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端子と、
第2端子と、
前記第2端子と電気的に接続された基板と、前記基板上に設けられた窒化物半導体層と、前記窒化物半導体層上に設けられ、前記第1端子と電気的に接続された第1ドレイン電極と、前記窒化物半導体層上に設けられ、前記第2端子と電気的に接続された第1ソース電極と、前記第1ドレイン電極と前記基板との間の基板容量と、を有する第1チップと、
前記第1ドレイン電極と前記第2端子との間における前記基板容量を含む経路に直列に接続された抵抗部と、
を備える半導体装置。
【請求項2】
前記第1チップの前記第1ソース電極と電気的に接続された第2ソース電極と、前記第2端子と電気的に接続された第2ドレイン電極と、を有する第2チップをさらに備える請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1チップは、ノーマリオン型のHEMT(High Electron Mobility Transistor)を含み、
前記第2チップは、ノーマリオフ型のMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)を含む請求項に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1チップを搭載し、前記基板と接合されたダイパッドをさらに備える請求項1~3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記抵抗部は、前記ダイパッドと前記第2端子との間に電気的に接続されたチップ抵抗器を含む請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記ダイパッドは、前記第2端子を兼ね、
前記抵抗部は、前記基板と前記ダイパッドとを接合する接合部材を含む請求項4に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記抵抗部は、前記第1チップ上に設けられ、ワイヤによって前記ダイパッド及び前記第2端子と電気的に接続されている請求項4に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記抵抗部は、前記基板または前記窒化物半導体層に設けられた抵抗層を含む請求項1~4のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項9】
前記基板は、シリコン基板である請求項1~8のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項10】
前記抵抗部の抵抗は、前記基板の抵抗よりも高い請求項1~9のいずれか1つに記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーデバイスとして、例えば、窒化ガリウム(GaN)を用いた横型のHEMT(High Electron Mobility Transistor)が用いられている。このようなGaNデバイス特有の現象としてスイッチング中にオン抵抗が上がってしまうことがある。これを抑制するため、GaNデバイスにおいて基板をソース電位にすることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-78570号公報
【文献】特許第5668707号公報
【文献】特許第5099243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態は、ドレイン電極と基板との間の基板容量に起因するリンギングを抑制することができる半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、半導体装置は、第1端子と、第2端子と、前記第2端子と電気的に接続された基板と、前記基板上に設けられた窒化物半導体層と、前記窒化物半導体層上に設けられ、前記第1端子と電気的に接続された第1ドレイン電極と、前記窒化物半導体層上に設けられ、前記第2端子と電気的に接続された第1ソース電極と、前記第1ドレイン電極と前記基板との間の基板容量と、を有する第1チップと、前記第1ドレイン電極と前記第2端子との間における前記基板容量を含む経路に直列に接続された抵抗部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1~第4実施形態の半導体装置の等価回路図である。
図2】第1実施形態の半導体装置の模式平面図である。
図3図2におけるA-A断面を表す模式断面図である。
図4】第1~第3、第5~第7実施形態の第1チップの模式断面図である。
図5】第2実施形態の半導体装置の模式平面図である。
図6図5におけるB-B断面を表す模式断面図である。
図7】第3実施形態の半導体装置の模式平面図である。
図8】第4実施形態の第1チップの模式断面図である。
図9】第5~第8実施形態の半導体装置の等価回路図である。
図10】第5実施形態の半導体装置の模式平面図である。
図11図10におけるC-C断面を表す模式断面図である。
図12】第6実施形態の半導体装置の模式平面図である。
図13図12におけるD-D断面を表す模式断面図である。
図14】第7実施形態の半導体装置の模式平面図である。
図15】第9実施形態の半導体装置の等価回路図である。
図16】(a)は、図15の回路を用いたシミュレーションによるVdsの波形図であり、(b)は、そのときのIdの波形図である。
図17】(a)は、図15の回路を用いたシミュレーションによるVdsの波形図であり、(b)は、そのときのIdの波形図である。
図18】(a)は、図15の回路を用いたシミュレーションによるVdsの波形図であり、(b)は、そのときのIdの波形図である。
図19】(a)は、図15の回路を用いたシミュレーションによるVdsの波形図であり、(b)は、そのときのIdの波形図である。
図20図15の回路を用いたシミュレーションによるゲート抵抗Rgとスイッチング損失Eonとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照し、実施形態について説明する。なお、各図面中、同じ構成には同じ符号を付している。
【0008】
[第1実施形態]
第1実施形態の半導体装置1について、図1図4を参照して説明する。
【0009】
図1に示すように、半導体装置1は、第1端子11と、第2端子12と、第1チップ30と、第2チップ20とを有する。第1チップ30と第2チップ20は、第1端子11と第2端子12との間にカスコード接続されている。
【0010】
第1チップ30は、例えば、ゲートに入力信号がない場合にオンとなるノーマリオン型のHEMT(High Electron Mobility Transistor)を含む。
【0011】
図4に示すように、第1チップ30は、基板31と、基板31上に設けられた第1半導体層40を有する。第1半導体層40は、第1窒化物半導体層41と第2窒化物半導体層42とのヘテロ接合構造を有する。基板31上に第1窒化物半導体層41が設けられ、第1窒化物半導体層41上に第2窒化物半導体層42が設けられている。第2窒化物半導体層42は、第1窒化物半導体層41よりもバンドギャップが大きい。例えば、第1窒化物半導体層41はアンドープのGaN層であり、第2窒化物半導体層42はAlGaN層である。第1窒化物半導体層41における第2窒化物半導体層42との界面付近に二次元電子ガス36が形成される。
【0012】
第2窒化物半導体層42上に、第1ドレイン電極32と第1ソース電極33が設けられている。第1ドレイン電極32及び第1ソース電極33は、第2窒化物半導体層42に接している。第2窒化物半導体層42上であって第1ドレイン電極32と第1ソース電極33との間の領域に、絶縁膜35を介して、第1ゲート電極34が設けられている。
【0013】
基板31は、例えば、シリコン基板である。基板31の抵抗値は、例えば、1mΩ・cm以上1Ω・cm以下である。第1チップ30は、第1ドレイン電極32と基板31との間に基板容量Cbdを有する。
【0014】
図2及び図3に示すように、半導体装置1は、さらに、ダイパッド13、第1ゲート端子14、第2ゲート端子16、及び電源端子15を有する。第1端子11、第2端子12、ダイパッド13、第1ゲート端子14、第2ゲート端子16、及び電源端子15は、金属部材であるリードフレームを構成する。リードフレーム、第1チップ30、及び第2チップ20は、樹脂によって覆われ、パッケージングされる。
【0015】
第1チップ30は、ダイパッド13上に搭載されている。第1チップ30の基板31が、接合部材51によって、ダイパッド13に接合されている。接合部材51の材料は、例えば、半田、Agペーストなどである。
【0016】
第1チップ30の第1ドレイン電極32は、ワイヤWによって、第1端子11と電気的に接続されている。第1チップ30の第1ソース電極33は、ワイヤWによって、電源端子15と電気的に接続されている。第1チップ30の第1ゲート電極34は、ワイヤWによって、第1ゲート端子14と電気的に接続されている。
【0017】
第2チップ20は、ゲートに入力信号がない場合にオフとなるノーマリオフ型であり、例えば、p型チャネルのMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)を含む。
【0018】
第2チップ20は、第2半導体層21と、第2半導体層21の厚さ方向における一方の面に設けられた第2ドレイン電極22と、第2半導体層21の厚さ方向における他方の面に設けられた第2ソース電極23と、前記他方の面に設けられた第2ゲート電極24とを有する。第2半導体層21は、例えばシリコン層であり、p型のチャネルを含む。第2チップ20は、第2半導体層21の厚さ方向(第2ドレイン電極22と第2ソース電極23とを結ぶ縦方向)に電流が流れる縦型デバイスである。
【0019】
第2チップ20は、第2端子12上に搭載されている。第2チップ20の第2ドレイン電極22が、例えば、はんだなどの接合部材によって、第2端子12に接合されている。第2ドレイン電極22は、第2端子12と電気的に接続されている。
【0020】
第2チップ20の第2ソース電極23は、ワイヤWによって、電源端子15及び第1チップ30の第1ソース電極33と電気的に接続されている。第2チップ20の第2ゲート電極24は、ワイヤWによって、第2ゲート端子16と電気的に接続されている。第1チップ30の第1ソース電極33は、第2チップ20を介して、第2端子12と電気的に接続されている。
【0021】
図1に示すように、半導体装置1は、第1チップ30の第1ドレイン電極32と、第2端子12との間における基板容量Cbdを含む経路に直列に接続された抵抗部Rを有する。抵抗部Rは寄生抵抗ではなく意図的に上記経路に挿入した抵抗部である。例えば、抵抗部Rの抵抗は、第1チップ30の基板31の抵抗よりも高い。
【0022】
第1実施形態の半導体装置1は、抵抗部Rとして、図2に示すチップ抵抗器61を含む。チップ抵抗器61は、第1チップ30の基板31と接合されたダイパッド13と、第2端子12との間に電気的に接続されている。
【0023】
第1チップ30の基板容量Cbdと、ワイヤや配線等の寄生インダクタンスとが直列共振を起こすと、ドレイン電流のリンギングの一因になる。通常、こうしたリンギングを抑制するには、大きな外付けゲート抵抗を挿入して、dV/dt(スイッチング過渡期に発生する単位時間当たりのドレイン・ソース間の電圧変化量)を下げている。ただし、dV/dtが下がるとスイッチング損失が増加し、回路効率が低下する。
【0024】
本実施形態によれば、第1チップ30の第1ドレイン電極32と、第2端子12との間における基板容量Cbdを含む経路に直列に抵抗部Rを接続する。抵抗部Rは、基板容量CbdとRCスナバ回路を構成する。基板容量Cbdと寄生インダクタンスとの直列共振のエネルギーは、抵抗部R(スナバ抵抗)で消費(吸収)され、ドレイン電流のリンギングを抑制することができる。
【0025】
ドレイン電流のリンギングを抑制することで、ゲート抵抗を低減して、高いdV/dtでの安定動作が可能となる。結果的に、スイッチング損失が低減し、回路効率の向上につながる。
【0026】
以下、他の実施形態について説明する。他の実施形態において、第1実施形態と同じ構成には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。他の実施形態においても、第1実施形態と同様に、第1チップ30の第1ドレイン電極32と、第2端子12との間における基板容量Cbdを含む経路に抵抗部Rが直列に接続されている。したがって、他の実施形態においても、基板容量Cbdと寄生インダクタンスとの直列共振のエネルギーは、抵抗部R(スナバ抵抗)で消費(吸収)され、ドレイン電流のリンギングを抑制することができる。
【0027】
[第2実施形態]
第2実施形態の半導体装置2について、図5及び図6を参照して説明する。
【0028】
第2実施形態においては、第2端子12上に、第1チップ30及び第2チップ20が搭載されている。すなわち、第2端子12は、第1チップ30を搭載するダイパッドも兼ねている。第1チップ30の基板31が、接合部材51によって、第2端子12に接合されている。第2実施形態における抵抗部Rは、基板31と、第2端子12(ダイパッドを兼ねる)とを接合する接合部材51を含む。抵抗部Rとしての接合部材51の材料としては、例えば、Agの割合を減らしたAgペーストが好ましい。
【0029】
[第3実施形態]
第3実施形態の半導体装置3について、図7を参照して説明する。
【0030】
第3実施形態における抵抗部62は、第1チップ30上に設けられている。抵抗部62は、ワイヤWによってダイパッド13及び第2端子12と電気的に接続されている。抵抗部62の材料は、例えば、第1チップ30上に形成された薄膜抵抗である。または、図4に示す第1ドレイン電極32及び第2ソース電極33の上面視における縦横比によりGaNHEMT自体の抵抗を調整することで、第1ドレイン電極32と第2端子12との間における基板容量Cbdを含む経路に接続された抵抗部Rの抵抗を調整することができる。すなわち、この場合、第1ドレイン電極32及び第2ソース電極33が、第1チップ30上の抵抗部62として機能し得る。
【0031】
[第4実施形態]
図8は、第4実施形態の第1チップ30の模式断面図である。
【0032】
第4実施形態における抵抗部Rは、第1チップ30の基板31に設けられた抵抗層63を含む。抵抗層63は、例えば、低ボロンドーピングの高抵抗Si層である。また、抵抗層63は、窒化物半導体層41、42における第1ドレイン電極32と基板31との間の領域に設けてもよい。
【0033】
[第5実施形態]
第5実施形態の半導体装置5について、図9図11を参照して説明する。
【0034】
半導体装置5は、第1端子11と、第2端子12と、第1チップ30とを有する。第1チップ30の第1ドレイン電極32が第1端子11に電気的に接続され、第1ソース電極33が第2端子12に電気的に接続されている。
【0035】
半導体装置5は、第2チップ20を含まない。半導体装置5の第1チップ30は、例えば、ゲートに入力信号がない場合にオフとなるノーマリオフ型のHEMTを含む。
【0036】
第5実施形態の半導体装置5は、抵抗部Rとして、図10に示すチップ抵抗器61を含む。チップ抵抗器61は、第1チップ30の基板31と接合されたダイパッド13と、第2端子12との間に電気的に接続されている。
【0037】
[第6実施形態]
第6実施形態の半導体装置6について、図12及び図13を参照して説明する。
【0038】
半導体装置6は、第2チップ20を含まない。半導体装置6の第1チップ30は、例えば、ノーマリオフ型のHEMTを含む。
【0039】
第6実施形態においては、第2端子12上に第1チップ30が搭載されている。第2端子12は、第1チップ30を搭載するダイパッドも兼ねている。第1チップ30の基板31が、接合部材51によって、第2端子12に接合されている。第2実施形態における抵抗部Rは、基板31と、第2端子12(ダイパッドを兼ねる)とを接合する接合部材51を含む。
【0040】
[第7実施形態]
第7実施形態の半導体装置7について、図14を参照して説明する。
【0041】
半導体装置7は、第2チップ20を含まない。半導体装置7の第1チップ30は、例えば、ノーマリオフ型のHEMTを含む。
【0042】
第7実施形態における抵抗部62は、第1チップ30上に設けられている。抵抗部62は、ワイヤWによってダイパッド13及び第2端子12と電気的に接続されている。
【0043】
[第8実施形態]
第8実施形態の半導体装置は、第2チップ20を含まない。第8実施形態の半導体装置の第1チップ30は、例えば、ノーマリオフ型のHEMTを含む。第8実施形態における抵抗部Rは、第1チップ30の基板31に設けられた抵抗層63を含む。また、抵抗層63は、窒化物半導体層41、42における第1ドレイン電極32と基板31との間の領域に設けてもよい。
【0044】
[第9実施形態]
カスコード接続された第1チップ30及び第2チップ20を含む第1~第4実施形態の半導体装置は、図15に示すように、電源回路のハーフブリッジ回路に用いることができる。
【0045】
ハーフブリッジ回路は、ハイサイドデバイス101と、ローサイドデバイス102とを有する。ハイサイドデバイス101及びローサイドデバイス102のそれぞれは、カスコード接続された第1チップ30及び第2チップ20を含む。
【0046】
ハイサイドデバイス101の第2チップ20の第2ドレイン電極と、ローサイドデバイス102の第1チップ30の第1ドレイン電極とが互いに接続されている。また、ハイサイドデバイス101の第2チップ20の第2ドレイン電極と、ローサイドデバイス102の第1チップ30の第1ドレイン電極との接続部120は、負荷Lに接続される。負荷Lは、ハイサイドデバイス101とローサイドデバイス102との接続部120と、ハイサイドデバイス101の第1チップ30の第1ドレイン電極(第1端子11)との間に接続される。接続部120は、ハイサイドデバイス101における第2端子に対応し、ローサイドデバイス102における第1端子に対応する。
【0047】
ハイサイドデバイス101の第2チップ20の第2ドレイン電極と接続部120(第2端子)との間の寄生インダクタンスをLss1とする。ハイサイドデバイス101の第1チップ30の基板容量Cbdと、接続部120(第2端子)との間の寄生インダクタンスをLss2とする。
【0048】
ハイサイドデバイス101は、第1チップ30の基板容量Cbdと、寄生インダクタンスLss2との間に直列接続された抵抗部R1を含む。
【0049】
ローサイドデバイス102の第2チップ20の第2ドレイン電極と第2端子12との間の寄生インダクタンスをLss1とする。ローサイドデバイス102の第1チップ30の基板容量Cbdと、第2端子12との間の寄生インダクタンスをLss2とする。
【0050】
ローサイドデバイス102は、第1チップ30の基板容量Cbdと、寄生インダクタンスLss2との間に直列接続された抵抗部R2を含む。
【0051】
次に、図15に示す回路を用いたシミュレーションの結果について説明する。
【0052】
ハイサイドデバイス101及びローサイドデバイス102が共にオフ状態のデッドタイムから、ローサイドデバイス102をターンオンさせたときのローサイドデバイス102のドレイン・ソース間電圧Vdsとドレイン電流Idを計算した。第1チップ30は、ノーマリオン型のHEMTであり、第2チップ20は、ノーマリオフ型のp型チャネルMOSFETである。ハイサイドデバイス101の第1端子11の電位は400V、接続部120及びローサイドデバイス102の第2端子12の電位は0V、寄生インダクタンスLss1は0.2nH、寄生インダクタンスLss2は0.02nH、負荷Lのインダクタンスは200μHとした。
【0053】
図16(a)は、ローサイドデバイス102の第2チップ20のゲートに挿入したゲート抵抗値Rgを30Ω、ハイサイドデバイス101の基板容量Cbdと寄生インダクタンスLss2のラインに挿入した抵抗部R1の抵抗値R1及び抵抗部R2の抵抗値R2を0ΩとしたときのVdsの波形図であり、図16(b)は、そのときのIdの波形図である。
【0054】
図17(a)は、上記Rgを30Ω、上記R1、R2を2.5ΩとしたときのVdsの波形図であり、図17(b)は、そのときのIdの波形図である。
【0055】
図18(a)は、上記Rgを30Ω、上記R1、R2を5ΩとしたときのVdsの波形図であり、図18(b)は、そのときのIdの波形図である。
【0056】
図19(a)は、上記Rgを100Ω、上記R1、R2を0ΩとしたときのVdsの波形図であり、図19(b)は、そのときのIdの波形図である。
【0057】
図16(a)~図18(b)の結果より、ゲート抵抗Rgが同じ(30Ω)条件において、基板容量Cbdと寄生インダクタンスLss2のラインに挿入した抵抗部(スナバ抵抗)R1及びR2の抵抗値を高くするほど、ドレイン電流Idのリンギングを抑制できた。スナバ抵抗R1及びR2を設けずに、ゲート抵抗Rgでドレイン電流Idのリンギングを抑制するには、図19(b)の結果に示すように、ゲート抵抗Rgを大きく(100Ω)する必要がある。しかしながら、ゲート抵抗Rgを大きくすると、スイッチング損失が増加し、回路効率の低下をまねく。
【0058】
図20は、図15の回路における前述したローサイドデバイス102をターンオンさせたときのゲート抵抗Rgと、ハイサイドデバイス101の抵抗部(スナバ抵抗)R1の抵抗値R1と、スイッチング損失Eonとの関係を示すグラフである。
【0059】
スイッチング損失Eonは、ハイサイドデバイス101の第1チップ30における損失、ローサイドデバイス102の第1チップ30における損失、ハイサイドデバイス101の抵抗部(スナバ抵抗)R1における損失、及びローサイドデバイス102の抵抗部(スナバ抵抗)R2における損失の合計である。
【0060】
ゲート抵抗Rgが同じ条件においては、抵抗値R1が大きくなると、スナバ抵抗R1における損失のため、スイッチング損失Eonは大きくなる傾向がある。スナバ抵抗R1における損失があっても、スナバ抵抗R1を挿入することでドレイン電流のリンギングを抑制できるためゲート抵抗Rgを小さくできる。結果的に、スイッチング損失Eonを低減できる。例えば、図20の結果より、スナバ抵抗R1を15Ωにすることでリンギングを抑制し、ゲート抵抗Rgを5Ωまで下げることができれば、スイッチング損失Eonを小さくすることができる。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
1~3、5~7…半導体装置、11…第1端子、12…第2端子、13…ダイパッド、20…第2チップ、22…第2ドレイン電極、23…第2ソース電極、24…第2ゲート電極、30…第1チップ、31…基板、32…第1ドレイン電極、33…第1ソース電極、34…第1ゲート電極、51…接合部材、61…チップ抵抗器、62…抵抗部、63…抵抗層、R…抵抗部、Cbd…基板容量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20