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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】組み込まれた核酸を評価するための方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20180101AFI20240814BHJP
   C12Q 1/6806 20180101ALI20240814BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20240814BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20240814BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
C12Q1/68 ZNA
C12Q1/6806 Z
C12N5/0783
C12Q1/686 Z
C12N5/10
【請求項の数】 51
(21)【出願番号】P 2021506661
(86)(22)【出願日】2019-08-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 US2019046048
(87)【国際公開番号】W WO2020033916
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-08-09
(31)【優先権主張番号】62/716,972
(32)【優先日】2018-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516316897
【氏名又は名称】ジュノー セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ブリッグス エイドリアン ランガム
【審査官】斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/050884(WO,A1)
【文献】特表2017-533703(JP,A)
【文献】国際公開第2012/114978(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/021629(WO,A1)
【文献】特開2016-063803(JP,A)
【文献】MARIA P. SERRA; ET AL,MODULATION OF OAT ARGININE DECARBOXYLASE GENE EXPRESSION AND GENOME ORGANIZATION IN TRANSGENIC TRYPANOSOMA CRUZI EPIMASTIGOTES,FEBS JOURNAL,英国,2006年02月,VOL:273,NR:3,PAGE(S):628-637,https://doi.org/10.1111/j.1742-4658.2005.05098.x
【文献】YE, G.-N. et al.,Tobacco (Nicotiana tobaccum) nuclear transgenics with high copy number can express NPTII driven by the chloroplast psbA promoter,Plant Cell Reports,1996年,Vol. 15, No. 7,P. 479-483
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
C12N
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、導入遺伝子配列のゲノム組み込みを評価するための方法:
(a)10キロベース(kb)よりも大きいかまたは約10キロベース(kb)よりも大きいデオキシリボ核酸(DNA)の高分子量画分を、1つまたは複数の細胞より単離されたDNAから分離する工程であって、該1つまたは複数の細胞が、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列を含む少なくとも1つの操作された細胞を含むか、またはそれを含む疑いがある、工程であり、(a)における分離する工程の前に、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドが、前記1つまたは複数の細胞のうちの少なくとも1つの操作された細胞中に導入されている、工程;および
(b)該高分子量画分から、該1つまたは複数の細胞のゲノム中に組み込まれた導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程であって、前記導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって行われる、工程。
【請求項2】
(a)における分離する工程の前に、デオキシリボ核酸(DNA)を、前記1つまたは複数の細胞から単離する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(b)における導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程が、前記1つまたは複数の細胞における二倍体ゲノム当たりのまたは細胞当たりの、該導入遺伝子配列の質量、重量、またはコピー数を決定することを含み、任意で、該コピー数が、前記細胞の集団中での二倍体ゲノム当たりのまたは細胞当たりの平均(average)または平均(mean)コピー数である、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記1つまたは複数の細胞が、細胞の集団を含み、該集団のうちの複数の細胞が、前記組換えタンパク質をコードする前記導入遺伝子配列を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの操作された細胞が、前記導入遺伝子配列を含む前記ポリヌクレオチドの導入後に、96時間超、72時間超、または48時間超にわたり、25℃よりも高い温度で、任意で37℃±2℃でまたは約37℃±2℃でインキュベートされていない、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記1つまたは複数の細胞が、(a)におけるDNAの高分子量画分を分離する工程の前に、凍結保存されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記1つまたは複数の細胞が、細胞株である、
前記1つまたは複数の細胞が、対象由来のサンプルから得られた初代細胞である、および/または
前記1つまたは複数の細胞が、免疫細胞である、
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記1つまたは複数の細胞が、免疫細胞である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
以下の工程を含む、対象由来の生物学的サンプルにおいて導入遺伝子配列を評価するための方法:
(a)10キロベース(kb)よりも大きいかまたは約10キロベース(kb)よりも大きいデオキシリボ核酸(DNA)の高分子量画分を、対象由来の生物学的サンプル中に存在する1つまたは複数の細胞より単離されたDNAから分離する工程であって、該生物学的サンプルが、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列を含む少なくとも1つの操作された細胞を含むか、またはそれを含む疑いがある、工程であり、(a)における分離する工程の前に、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドが、前記1つまたは複数の細胞のうちの少なくとも1つの操作された細胞中に導入されている、工程; および
(b)該高分子量画分から、該生物学的サンプルの全てまたは一部分における導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程であって、前記導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって行われる、工程。
【請求項10】
(b)における導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程が、前記生物学的サンプルの全てまたは一部分における該導入遺伝子配列の質量、重量、またはコピー数を決定することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記生物学的サンプルが、前記導入遺伝子配列を含む前記少なくとも1つの操作された細胞を含む組成物が投与された対象から得られる、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記生物学的サンプルが、組織サンプルまたは体液サンプルである、
前記生物学的サンプルが組織サンプルであり、該組織が腫瘍である、
前記生物学的サンプルが腫瘍生検材料である、および/または
前記生物学的サンプルが体液サンプルであり、該体液サンプルが、血液または血清サンプルである、
請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
(a)における分離する工程の前に、
前記方法が、DNAを、前記生物学的サンプル中に存在する1つまたは複数の細胞から単離する工程を含む、
請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記生物学的サンプルにおける前記1つまたは複数の細胞が、免疫細胞を含む、請求項9~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記免疫細胞が、T細胞、任意で、CD3+、CD4+、および/またはCD8+ T細胞、またはNK細胞である、請求項8または14に記載の方法。
【請求項16】
前記分離する工程が、パルスフィールドゲル電気泳動またはサイズ排除クロマトグラフィーによって行われる、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記高分子量画分が、15キロベース(kb)よりも大きいかまたは約15キロベース(kb)よりも大きい、17.5キロベース(kb)よりも大きいかまたは約17.5キロベース(kb)よりも大きい、または、20キロベース(kb)よりも大きいかまたは約20キロベース(kb)よりも大きい、請求項9~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記導入遺伝子配列が、前記組換えタンパク質をコードする核酸配列に機能的に連結された調節エレメントを含む、請求項9~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記導入遺伝子配列の少なくとも一部分に相補的であるか、またはそれを特異的に増幅することができる1つまたは複数のプライマーを用いて、前記PCRが行われる、請求項9~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記1つまたは複数のプライマーが、調節エレメントの配列に相補的であるか、またはそれを特異的に増幅することができる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
以下の工程を含む、導入遺伝子配列のゲノム組み込みを評価するための方法:
(a)パルスフィールドゲル電気泳動によって、10キロベース(kb)よりも大きいかまたは約10キロベース(kb)よりも大きいデオキシリボ核酸(DNA)の高分子量画分を、細胞の集団より単離されたDNAから分離する工程であって、該細胞の集団が、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列を各々が含むかまたはそれを含む疑いがある複数の操作された細胞を含む、工程であり、(a)における分離する工程の前に、前記組換えタンパク質をコードする前記導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドが、前記細胞の集団のうちの前記複数の操作された細胞の少なくとも1つ中に導入されている、工程;および
(b)該高分子量画分から、該細胞の集団のうちの該複数の操作された細胞のゲノム中に組み込まれた該導入遺伝子配列の二倍体ゲノム当たりのまたは細胞当たりの、平均(average)または平均(mean)コピー数を決定する工程であって、前記導入遺伝子配列の二倍体ゲノム当たりのまたは細胞当たりの、平均(average)または平均(mean)コピー数を決定する工程が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって行われる、工程。
【請求項22】
前記細胞の集団が、前記導入遺伝子配列を含む前記ポリヌクレオチドの、前記複数の操作された細胞の少なくとも1つ中への導入後に、96時間超、72時間超、または48時間超にわたり、25℃よりも高い温度で、任意で37℃±2℃でまたは約37℃±2℃でインキュベートされていない、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記細胞の集団が、(a)におけるDNAの高分子量画分を分離する工程の前に、凍結保存されている、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記高分子量画分が、15キロベース(kb)よりも大きいかまたは約15キロベース(kb)よりも大きい、17.5キロベース(kb)よりも大きいかまたは約17.5キロベース(kb)よりも大きい、または20キロベース(kb)よりも大きいかまたは約20キロベース(kb)よりも大きい、請求項1~8および21~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記導入遺伝子配列が、前記組換えタンパク質をコードする核酸配列に機能的に連結された調節エレメントを含む、請求項1~8および21~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記導入遺伝子配列の少なくとも一部分に相補的であるか、またはそれを特異的に増幅することができる1つまたは複数のプライマーを用いて、前記PCRが行われる、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記1つまたは複数のプライマーが、調節エレメントの配列に相補的であるか、またはそれを特異的に増幅することができる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記導入遺伝子配列の量を決定する工程が、前記1つまたは複数の細胞から単離されたDNAの質量または重量当たりの、任意で、前記1つまたは複数の細胞から単離されたDNA 1マイクログラム当たりの、該導入遺伝子配列の質量、重量、またはコピー数を評価することを含むか、または
前記導入遺伝子配列の量を決定する工程が、前記1つもしくは複数の細胞当たりの、任意で、CD3+、CD4+、および/もしくはCD8+細胞当たりの、ならびに/または前記組換えタンパク質を発現する細胞当たりの、該導入遺伝子配列の質量、重量、またはコピー数を評価することを含む、
請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程が、前記生物学的サンプルにおける二倍体ゲノム当たりのまたは細胞当たりの、該導入遺伝子配列の質量、重量、またはコピー数を評価することを含み、任意で、該コピー数が、前記生物学的サンプルにおける前記1つまたは複数の細胞中での二倍体ゲノム当たりのまたは細胞当たりの平均(average)または平均(mean)コピー数であるか、
前記導入遺伝子配列の量を決定する工程が、前記生物学的サンプルの体積当たりの、任意で、前記生物学的サンプル1マイクロリットル当たりのまたは1ミリリットル当たりの、該導入遺伝子配列の質量、重量、またはコピー数を評価することを含むか、または
前記導入遺伝子配列の量を決定する工程が、対象の体重または体表面積当たりの、該導入遺伝子配列の質量、重量、またはコピー数を評価することを含む、
請求項9~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記導入遺伝子配列の量を決定する工程が、前記高分子量画分における該導入遺伝子配列の質量、重量、またはコピー数を評価すること、および、該質量、重量、またはコピー数を、前記高分子量画分における参照遺伝子の質量、重量、もしくはコピー数に対して、または標準曲線に対して正規化することを含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記単離されたDNAにおける参照遺伝子のコピー数が、参照遺伝子の少なくとも一部分に相補的であるか、またはそれを特異的に増幅することができる1つまたは複数のプライマーを用いたPCRによって決定される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記導入遺伝子配列が、完全なウイルスgagタンパク質をコードしないか、および/または
前記導入遺伝子配列が、完全なHIVゲノム、複製可能なウイルスゲノム、ならびに/または、任意でNef、Vpu、Vif、Vpr、および/もしくはVpxであるアクセサリー遺伝子を含まない、
請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記ポリヌクレオチドの導入が、該ポリヌクレオチドを含むウイルスベクターの形質導入によって行われ、前記ウイルスベクターが、レトロウイルスベクター、ガンマレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、または任意でAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、またはAAV8ベクターの中から選択される、AAVベクターであるか、または
前記ポリヌクレオチドの導入が、物理的送達法によって、任意でエレクトロポレーションによって行われる、
請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記組換えタンパク質が組換え受容体である、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記組換え受容体が、疾患もしくは状態に関連する抗原、または疾患もしくは状態に関連する病変の環境の細胞において発現している抗原に特異的に結合する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記組換え受容体が、組換えT細胞受容体(TCR)または機能的非T細胞受容体である、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記組換え受容体がキメラ抗原受容体(CAR)である、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記疾患もしくは状態ががんである、および/または
前記抗原が、αvβ6インテグリン(avb6インテグリン)、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3、B7-H6、炭酸脱水酵素9(CA9、別名CAIXまたはG250)、がん精巣抗原、がん/精巣抗原1B(CTAG、別名NY-ESO-1およびLAGE-2)、がん胎児性抗原(CEA)、サイクリン、サイクリンA2、C-Cモチーフケモカインリガンド1(CCL-1)、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD123、CD133、CD138、CD171、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4)、上皮成長因子タンパク質(EGFR)、タイプIII上皮成長因子受容体変異(EGFR vIII)、上皮糖タンパク質2(EPG-2)、上皮糖タンパク質40(EPG-40)、エフリンB2、エフリン受容体A2(EPHa2)、エストロゲン受容体、Fc受容体様5(FCRL5;別名Fc受容体ホモログ5またはFCRH5)、胎児アセチルコリン受容体(胎児AchR)、葉酸結合タンパク質(FBP)、葉酸受容体α、ガングリオシドGD2、O-アセチル化GD2(OGD2)、ガングリオシドGD3、糖タンパク質100(gp100)、グリピカン-3(GPC3)、Gタンパク質共役受容体クラスCグループ5メンバーD(GPRC5D)、Her2/neu(受容体チロシンキナーゼerb-B2)、Her3(erb-B3)、Her4(erb-B4)、erbB二量体、ヒト高分子量黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、B型肝炎表面抗原、ヒト白血球抗原A1(HLA-A1)、ヒト白血球抗原A2(HLA-A2)、IL-22受容体アルファ(IL-22Rα)、IL-13受容体アルファ2(IL-13Rα2)、キナーゼ挿入ドメイン受容体(kdr)、カッパ軽鎖、L1細胞接着分子(L1-CAM)、L1-CAMのCE7エピトープ、ロイシンリッチリピート含有8ファミリーメンバーA(Leucine Rich Repeat Containing 8 Family Member A:LRRC8A)、Lewis Y、黒色腫関連抗原(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A6、MAGE-A10、メソテリン(MSLN)、c-Met、マウスサイトメガロウイルス(CMV)、ムチン1(MUC1)、MUC16、ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)リガンド、メラン(melan)A(MART-1)、神経細胞接着分子(NCAM)、腫瘍胎児抗原、メラノーマ優先発現抗原(PRAME)、プロゲステロン受容体、前立腺特異抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、サバイビン、トロホブラスト(Trophoblast)糖タンパク質(TPBG、別名5T4)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、チロシナーゼ関連タンパク質1(TRP1、別名TYRP1またはgp75)、チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP2、別名ドパクロムトートメラーゼ、ドパクロムデルタイソメラーゼ、またはDCT)、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)、血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGFR2)、Wilms Tumor 1(WT-1)、病原体特異的もしくは病原体発現抗原、またはユニバーサルタグに関連する抗原、および/またはビオチン化分子、および/またはHIV、HCV、HBV、もしくは他の病原体によって発現される分子から選択される、
請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記CARが、前記抗原に特異的に結合する細胞外抗原認識ドメインと、ITAMを含む細胞内シグナル伝達ドメインとを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記ITAMを含む細胞内シグナル伝達ドメインが、CD3-ゼータ(CD3ζ)鎖、任意でヒトCD3-ゼータ鎖の細胞内ドメインを含む、および/または
前記細胞内シグナル伝達ドメインが、共刺激シグナル伝達領域をさらに含み、任意で、前記共刺激シグナル伝達領域が、CD28または4-1BB、任意でヒトCD28またはヒト4-1BBのシグナル伝達ドメインを含む、
請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記参照遺伝子がハウスキーピング遺伝子である、
前記参照遺伝子が、アルブミンをコードする遺伝子(ALB)である、および/または
前記参照遺伝子が、リボヌクレアーゼPタンパク質サブユニットp30をコードする遺伝子(RPP30)である、
請求項30または31に記載の方法。
【請求項42】
前記PCRが、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)、デジタルPCR、またはドロップレットデジタルPCRである、請求項1~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
以下の工程を含む、組み込まれていない残りの導入遺伝子配列を評価するための方法:
(1)DNAの高分子量画分における導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定するために、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法を行い、それによって、該導入遺伝子配列のゲノム組み込みを評価する工程;
(2)該高分子量画分の分離を伴わずに、単離されたDNAにおける該導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程;
(3)(1)において決定された量と(2)において決定された量とを比較し、それによって、組み込まれていない残りの組換え配列の量を決定する工程。
【請求項44】
前記導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程が、前記1つまたは複数の細胞における二倍体ゲノム当たりのまたは細胞当たりの、該導入遺伝子配列の質量、重量、またはコピー数を決定することを含み、任意で、該コピー数が、細胞の集団中での二倍体ゲノム当たりのまたは細胞当たりの平均(average)または平均(mean)コピー数である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記1つまたは複数の細胞が細胞の集団を含み、該集団のうちの複数の細胞が、前記組換えタンパク質をコードする前記導入遺伝子配列を含むか、またはそれを含む疑いがある、請求項43または44に記載の方法。
【請求項46】
前記量を比較する工程が、
(2)において決定されたコピー数から、(1)において決定されたコピー数を減算すること、または
(1)において決定されたコピー数対(2)において決定されたコピー数の比を決定すること
を含む、請求項44または45に記載の方法。
【請求項47】
(2)における存在、不在、または量を決定する工程が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって行われる、請求項43~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記PCRが、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)、デジタルPCR、またはドロップレットデジタルPCRである、および/または
前記導入遺伝子配列の少なくとも一部分に相補的であるか、またはそれを特異的に増幅することができる1つまたは複数のプライマーを用いて、前記PCRが行われる、
請求項43~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
(2)における存在、不在、または量を決定する工程が、前記高分子量画分の分離を伴わずに、前記単離されたDNAにおける前記導入遺伝子配列の質量、重量、またはコピー数を評価すること、および、前記高分子量画分の分離を伴わずに、該質量、重量、またはコピー数を、前記単離されたDNAにおける参照遺伝子の質量、重量、もしくはコピー数に対して、または標準曲線に対して正規化することを含み、任意で、
前記方法が、前記単離されたDNAにおける参照遺伝子の質量、重量、またはコピー数を決定する工程を含み、該単離されたDNAにおける参照遺伝子の質量、重量、またはコピー数を決定する工程が、該参照遺伝子の少なくとも一部分に相補的であるか、またはそれを特異的に増幅することができる1つまたは複数のプライマーを用いたPCRによって行われる、
請求項43~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記参照遺伝子がハウスキーピング遺伝子である、
前記参照遺伝子が、アルブミンをコードする遺伝子(ALB)である、および/または
前記参照遺伝子が、リボヌクレアーゼPタンパク質サブユニットp30をコードする遺伝子(RPP30)である、
請求項49に記載の方法。
【請求項51】
(1)における存在、不在、または量を決定する工程と、(2)における存在、不在、または量を決定する工程とが、同じプライマーまたは同じプライマーのセットを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって行われる、または
前記組み込まれていない残りの組換え配列が、ベクタープラスミド、直鎖状相補DNA(cDNA)、自己組み込み体(autointegrant)、または末端反復配列(LTR)サークルのうちの1つまたは複数を含む、請求項43~50のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年8月9日付で出願された「METHODS FOR ASSESSING INTEGRATED NUCLEIC ACIDS」という名称の米国特許仮出願第62/716,972号からの優先権を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が組み入れられる。
【0002】
配列表の参照による組み入れ
本出願は、電子形式の配列表と共に出願されている。配列表は、2019年8月3日付で作成された、735042016840SeqList.txtという名称のファイルとして提供されており、これはサイズが53.2キロバイトである。配列表の電子形式の情報は、参照によりその全体が組み入れられる。
【0003】
分野
本開示は、いくつかの局面では、遺伝子操作された細胞、例えば、細胞療法において用いられる遺伝子操作された細胞の、ゲノム中に組み込まれた核酸配列を評価するための方法に関する。細胞は、概して、ポリヌクレオチドの導入を介して、および、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列などの、ポリヌクレオチド中のある特定の配列の、細胞のゲノム中への組み込みを介して、組換え受容体などの組換えタンパク質を発現するように遺伝子操作されている。いくつかの局面において、提供される方法は、組み込まれた核酸と、組み込まれていない残りの核酸とを区別するために用いることができる。
【背景技術】
【0004】
背景
細胞を遺伝子操作するように導入された核酸のコピー数を決定する方法が、例えば、疾患および状態を処置するための養子細胞療法に利用可能である。養子細胞療法(キメラ抗原受容体(CAR)および/または他の組換え抗原受容体などの、関心対象の疾患または障害に特異的な組換え受容体を発現する細胞の投与を含むものを含む)には、対象への細胞の投与の前に、組み込まれた核酸、および場合によっては、組み込まれていない残りの核酸の時宜を得たかつ正確な評価を要する場合がある。改善されたアプローチが必要とされる。そのような必要を満たす方法およびキットが、提供される。
【発明の概要】
【0005】
概要
導入遺伝子配列のゲノム組み込みを評価するための方法が、本明細書において提供される。任意のいくつかの態様において、方法は、以下の工程を含む:(a)10キロベース(kb)よりも大きいかまたは約10キロベース(kb)よりも大きいデオキシリボ核酸(DNA)の高分子量画分を、1つまたは複数の細胞より単離されたDNAから分離する工程であって、該1つまたは複数の細胞が、組換えタンパク質をコードする核酸配列を含む導入遺伝子配列を含む少なくとも1つの操作された細胞を含むか、またはそれを含む疑いがある、工程;および(b)該高分子量画分から、該1つまたは複数の細胞のゲノム中に組み込まれた導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程。
【0006】
以下の工程を含む、導入遺伝子配列のゲノム組み込みを評価するための方法が、本明細書において提供される:(a)10キロベース(kb)よりも大きいかまたは約10キロベース(kb)よりも大きいデオキシリボ核酸(DNA)の高分子量画分を、1つまたは複数の細胞より単離されたDNAから分離する工程であって、該1つまたは複数の細胞が、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列を含む少なくとも1つの操作された細胞を含むか、またはそれを含む疑いがある、工程;および(b)該1つまたは複数の細胞のゲノム中に組み込まれた導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程。
【0007】
以下の工程を含む、導入遺伝子配列のゲノム組み込みを評価するための方法もまた、本明細書において提供される:(a)10キロベース(kb)よりも大きいかまたは約10キロベース(kb)よりも大きいデオキシリボ核酸(DNA)の高分子量画分を、1つまたは複数の細胞より単離されたDNAから分離する工程であって、該1つまたは複数の細胞が、組換えタンパク質をコードする核酸配列を含む導入遺伝子配列を含む少なくとも1つの操作された細胞を含むか、またはそれを含む疑いがある、工程;および(b)該高分子量画分における導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程。
【0008】
任意のいくつかの態様において、高分子量画分における導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程は、それによって、1つまたは複数の細胞のゲノム中に組み込まれた導入遺伝子配列を評価する。
【0009】
以下の工程を含む、導入遺伝子配列のゲノム組み込みを評価するための方法もまた、本明細書において提供される:(a)10キロベース(kb)よりも大きいかまたは約10キロベース(kb)よりも大きいデオキシリボ核酸(DNA)の高分子量画分を、1つまたは複数の細胞より単離されたDNAから分離する工程であって、該1つまたは複数の細胞が、組換えタンパク質をコードする核酸配列を含む導入遺伝子配列を含む少なくとも1つの操作された細胞を含むか、またはそれを含む疑いがある、工程;および(b)該高分子量画分における導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程であって、該高分子量画分における導入遺伝子配列が、該1つまたは複数の細胞のゲノム中に組み込まれている導入遺伝子配列に相当する、工程。
【0010】
提供される任意のいくつかの態様において、高分子量画分における導入遺伝子配列は、1つまたは複数の細胞のゲノム中に組み込まれている導入遺伝子配列に相当する。提供される任意のいくつかの態様において、(b)における1つまたは複数の細胞のゲノム中に組み込まれた導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程は、高分子量画分における導入遺伝子配列の質量、重量、またはコピー数を決定することを含む。
【0011】
提供される任意のいくつかの態様において、方法は、分離する工程の前に、デオキシリボ核酸(DNA)を1つまたは複数の細胞から単離する工程を含む。提供される任意のいくつかの態様において、導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程は、1つまたは複数の細胞における二倍体ゲノム当たりのまたは細胞当たりの、導入遺伝子配列の質量、重量、またはコピー数を決定することを含む。
【0012】
提供される任意のいくつかの態様において、1つまたは複数の細胞は、細胞の集団を含み、該集団のうちの複数の細胞は、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列を含む。提供される任意のいくつかの態様において、1つまたは複数の細胞は、細胞の集団を含み、該集団のうちの複数の細胞は、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列を含む疑いがある。
【0013】
提供される任意のいくつかの態様において、コピー数は、細胞の集団中での二倍体ゲノム当たりのまたは細胞当たりの平均(average)または平均(mean)コピー数である。
【0014】
提供される任意のいくつかの態様において、分離する工程の前に、1つまたは複数の細胞のうちの少なくとも1つの操作された細胞を結果としてもたらすように、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドが、細胞中に、例えば、細胞の集団の細胞中に、導入されている。提供される任意のいくつかの態様において、少なくとも1つの操作された細胞は、導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドの導入後に、96時間超にわたり、25℃よりも高い温度で、任意で37℃±2℃でまたは約37℃±2℃でインキュベートされていない。提供される任意のいくつかの態様において、少なくとも1つの操作された細胞は、導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドの導入後に、72時間超にわたり、25℃よりも高い温度で、任意で37℃±2℃でまたは約37℃±2℃でインキュベートされていない。提供される任意のいくつかの態様において、少なくとも1つの操作された細胞は、導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドの導入後に、48時間超にわたり、25℃よりも高い温度で、任意で37℃±2℃でまたは約37℃±2℃でインキュベートされていない。
【0015】
提供される任意のいくつかの態様において、1つまたは複数の細胞は、DNAの高分子量画分を分離する工程の前に、凍結保存されている。提供される任意のいくつかの態様において、1つまたは複数の細胞は、細胞株である。提供される任意のいくつかの態様において、1つまたは複数の細胞は、対象由来のサンプルから得られた初代細胞である。提供される任意のいくつかの態様において、1つまたは複数の細胞は、免疫細胞である。提供される任意のいくつかの態様において、免疫細胞は、T細胞またはNK細胞である。提供される任意のいくつかの態様において、T細胞は、CD3+、CD4+、および/またはCD8+ T細胞である。
【0016】
対象由来の生物学的サンプルにおいて導入遺伝子配列を評価するための方法が、本明細書において提供される。任意のいくつかの態様において、提供される方法は、以下の工程を含む:(a)10キロベース(kb)よりも大きいかまたは約10キロベース(kb)よりも大きいデオキシリボ核酸(DNA)の高分子量画分を、対象由来の生物学的サンプル中に存在する1つまたは複数の細胞より単離されたDNAから分離する工程であって、該生物学的サンプルが、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列を含む少なくとも1つの操作された細胞を含むか、またはそれを含む疑いがある、工程;および(b)該高分子量画分における導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定し、それによって、該生物学的サンプルの全てまたは一部分に存在する導入遺伝子配列を評価する工程。
【0017】
以下の工程を含む、対象由来の生物学的サンプルにおいて導入遺伝子配列を評価するための方法が、本明細書において提供される:(a)10キロベース(kb)よりも大きいかまたは約10キロベース(kb)よりも大きいデオキシリボ核酸(DNA)の高分子量画分を、対象由来の生物学的サンプル中に存在する1つまたは複数の細胞より単離されたDNAから分離する工程であって、該生物学的サンプルが、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列を含む少なくとも1つの操作された細胞を含むか、またはそれを含む疑いがある、工程;および(b)該高分子量画分における導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定し、それによって、該生物学的サンプルの全てまたは一部分に存在する導入遺伝子配列を評価する工程。
【0018】
以下の工程を含む、対象由来の生物学的サンプルにおいて導入遺伝子配列を評価するための方法が、本明細書において提供される:(a)10キロベース(kb)よりも大きいかまたは約10キロベース(kb)よりも大きいデオキシリボ核酸(DNA)の高分子量画分を、対象由来の生物学的サンプル中に存在する1つまたは複数の細胞より単離されたDNAから分離する工程であって、該生物学的サンプルが、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列を含む少なくとも1つの操作された細胞を含むか、またはそれを含む疑いがある、工程;および(b)該生物学的サンプルの全てまたは一部分における導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程。
【0019】
提供される任意のいくつかの態様において、(b)における導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程は、生物学的サンプルの全てまたは一部分における導入遺伝子配列の質量、重量、またはコピー数を決定することを含む。
【0020】
提供される任意のいくつかの態様において、分離する工程の前に、生物学的サンプル中に存在する1つまたは複数の細胞からDNAを単離する。提供される任意のいくつかの態様において、生物学的サンプルは、導入遺伝子配列を含む少なくとも1つの操作された細胞を含む組成物が投与された対象から得られる。提供される任意のいくつかの態様において、生物学的サンプルは、組織サンプルまたは体液サンプルである。提供される任意のいくつかの態様において、生物学的サンプルは組織サンプルであり、該組織は腫瘍である。いくつかの態様において、組織サンプルは腫瘍生検材料である。提供される任意のいくつかの態様において、生物学的サンプルは体液サンプルであり、該体液サンプルは、血液または血清サンプルである。
【0021】
提供される任意のいくつかの態様において、分離する工程の前に、1つまたは複数の細胞のうちの少なくとも1つの操作された細胞を結果としてもたらすように、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドが、細胞中に、例えば、細胞の集団の細胞中に、導入されている。
【0022】
提供される任意のいくつかの態様において、生物学的サンプルにおける1つまたは複数の細胞は、免疫細胞を含む。いくつかの態様において、免疫細胞は、T細胞またはNK細胞である。いくつかの態様において、T細胞は、CD3+、CD4+、および/またはCD8+ T細胞である。
【0023】
提供される任意のいくつかの態様において、分離する工程は、パルスフィールドゲル電気泳動またはサイズ排除クロマトグラフィーによって行われる。いくつかの態様において、分離する工程は、パルスフィールドゲル電気泳動によって行われる。
【0024】
また、導入遺伝子配列のゲノム組み込みを評価するための方法も、本明細書において提供される。任意のいくつかの態様において、方法は、以下の工程を含む:(a)パルスフィールドゲル電気泳動によって、10キロベース(kb)よりも大きいかまたは約10キロベース(kb)よりも大きいデオキシリボ核酸(DNA)の高分子量画分を、細胞の集団より単離されたDNAから分離する工程であって、該細胞の集団が、組換えタンパク質をコードする核酸配列を含む導入遺伝子配列を各々が含むか、またはそれを含む疑いがある、複数の操作された細胞を含む、工程;および(b)該高分子量画分における導入遺伝子配列の配列の二倍体ゲノム当たりのまたは細胞当たりの、平均(average)または平均(mean)コピー数を決定し、それによって、該細胞の集団のうちの複数の操作された細胞のゲノム中に組み込まれた導入遺伝子配列を評価する工程。
【0025】
また、導入遺伝子配列のゲノム組み込みを評価するための方法も、本明細書において提供される。任意のいくつかの態様において、方法は、以下の工程を含む:(a)パルスフィールドゲル電気泳動によって、10キロベース(kb)よりも大きいかまたは約10キロベース(kb)よりも大きいデオキシリボ核酸(DNA)の高分子量画分を、細胞の集団より単離されたDNAから分離する工程であって、該細胞の集団が、組換えタンパク質をコードする核酸配列を含む導入遺伝子配列を各々が含むか、またはそれを含む疑いがある、複数の操作された細胞を含む、工程;および(b)該高分子量画分から、該細胞の集団のうちの複数の操作された細胞のゲノム中に組み込まれた導入遺伝子配列の二倍体ゲノム当たりのまたは細胞当たりの、平均(average)または平均(mean)コピー数を決定する工程。
【0026】
以下の工程を含む、導入遺伝子配列のゲノム組み込みを評価するための方法が、本明細書において提供される:(a)パルスフィールドゲル電気泳動によって、10キロベース(kb)よりも大きいかまたは約10キロベース(kb)よりも大きいデオキシリボ核酸(DNA)の高分子量画分を、細胞の集団より単離されたDNAから分離する工程であって、該細胞の集団が、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列を各々が含むか、またはそれを含む疑いがある、複数の操作された細胞を含む、工程;および(b)該細胞の集団のうちの複数の操作された細胞のゲノム中に組み込まれた導入遺伝子配列の二倍体ゲノム当たりのまたは細胞当たりの、平均(average)または平均(mean)コピー数を決定する工程。
【0027】
提供される任意のいくつかの態様において、分離する工程の前に、細胞の集団のうちの複数の操作された細胞の少なくとも1つを結果としてもたらすように、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドが、例えば、細胞の集団の、細胞中に導入されている。提供される任意のいくつかの態様において、細胞の集団は、導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドの少なくとも1つの操作された細胞中への導入後に、96時間超にわたり、25℃よりも高い温度で、任意で37℃±2℃でまたは約37℃±2℃でインキュベートされていない。提供される任意のいくつかの態様において、細胞の集団は、導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドの少なくとも1つの操作された細胞中への導入後に、72時間超にわたり、25℃よりも高い温度で、任意で37℃±2℃でまたは約37℃±2℃でインキュベートされていない。提供される任意のいくつかの態様において、細胞の集団は、導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドの少なくとも1つの操作された細胞中への導入後に、48時間超にわたり、25℃よりも高い温度で、任意で37℃±2℃でまたは約37℃±2℃でインキュベートされていない。提供される任意のいくつかの態様において、細胞の集団は、DNAの高分子量画分を分離する工程の前に、凍結保存されている。
【0028】
提供される任意のいくつかの態様において、高分子量画分は、15キロベース(kb)よりも大きいか、または約15キロベース(kb)よりも大きい。提供される任意のいくつかの態様において、高分子量画分は、17.5キロベース(kb)よりも大きいか、または約17.5キロベース(kb)よりも大きい。提供される任意のいくつかの態様において、高分子量画分は、20キロベース(kb)よりも大きいか、または約20キロベース(kb)よりも大きい。
【0029】
任意のいくつかの態様において、導入遺伝子配列は、組換えタンパク質をコードする核酸配列に連結された調節エレメントを含む。
【0030】
提供される任意のいくつかの態様において、導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって行われる。提供される任意のいくつかの態様において、PCRは、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)、デジタルPCR、またはドロップレットデジタルPCRである。提供される任意のいくつかの態様において、PCRはドロップレットデジタルPCRである。提供される任意のいくつかの態様において、PCRは、導入遺伝子配列の少なくとも一部分に相補的であるか、またはそれを特異的に増幅することができる1つまたは複数のプライマーを用いて行われる。任意のいくつかの態様において、1つまたは複数のプライマーは、調節エレメントの配列に相補的であるか、またはそれを特異的に増幅することができる。
【0031】
提供される任意のいくつかの態様において、導入遺伝子配列の量を決定する工程は、1つまたは複数の細胞から単離されたDNAの質量または重量当たりの、任意で1つまたは複数の細胞から単離されたDNA 1マイクログラム当たりの、導入遺伝子配列の質量、重量、またはコピー数を評価することを含む。提供される任意のいくつかの態様において、導入遺伝子配列の量を決定する工程は、1つまたは複数の細胞から単離されたDNA 1マイクログラム当たりの、導入遺伝子配列のマイクログラムでの質量または重量を評価することを含む。提供される任意のいくつかの態様において、導入遺伝子配列の量を決定する工程は、1つもしくは複数の細胞当たりの、任意で、CD3+、CD4+、および/もしくはCD8+細胞当たりの、ならびに/または組換えタンパク質を発現する細胞当たりの、導入遺伝子配列の質量、重量、またはコピー数を評価することを含む。
【0032】
提供される任意のいくつかの態様において、導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程は、生物学的サンプルにおける二倍体ゲノム当たりのまたは細胞当たりの、導入遺伝子配列の質量、重量、またはコピー数を評価することを含む。提供される任意のいくつかの態様において、コピー数は、生物学的サンプルにおける1つまたは複数の細胞中の二倍体ゲノム当たりのまたは細胞当たりの、平均(average)または平均(mean)コピー数である。
【0033】
提供される任意のいくつかの態様において、導入遺伝子配列の量を決定する工程は、生物学的サンプルの体積当たりの、任意で生物学的サンプル1マイクロリットル当たりのまたは1ミリリットル当たりの、導入遺伝子配列の質量、重量、またはコピー数を評価することを含む。提供される任意のいくつかの態様において、導入遺伝子配列の量を決定する工程は、対象の体重または体表面積当たりの、導入遺伝子配列の質量、重量、またはコピー数を評価することを含む。提供される任意のいくつかの態様において、導入遺伝子配列の量を決定する工程は、高分子量画分における導入遺伝子配列の質量、重量、またはコピー数を評価すること、および、該質量、重量、またはコピー数を、高分子量画分における参照遺伝子の質量、重量、もしくはコピー数に対して、または標準曲線に対して正規化することを含む。提供される任意のいくつかの態様において、参照遺伝子はハウスキーピング遺伝子である。提供される任意のいくつかの態様において、参照遺伝子は、アルブミンをコードする遺伝子(ALB)である。提供される任意のいくつかの態様において、参照遺伝子は、リボヌクレアーゼPタンパク質サブユニットp30をコードする遺伝子(RPP30)である。提供される任意のいくつかの態様において、単離されたDNAにおける参照遺伝子のコピー数は、参照遺伝子の少なくとも一部分に相補的であるか、またはそれを特異的に増幅することができる1つまたは複数のプライマーを用いたPCRによって行われる。
【0034】
提供される任意のいくつかの態様において、導入遺伝子配列は、完全なウイルスgagタンパク質をコードしない。提供される任意のいくつかの態様において、導入遺伝子配列は、完全なHIVゲノム、複製可能なウイルスゲノム、ならびに/または、任意でNef、Vpu、Vif、Vpr、および/もしくはVpxであるアクセサリー遺伝子を含まない。
【0035】
提供される任意のいくつかの態様において、ポリヌクレオチドの導入は、該ポリヌクレオチドを含むウイルスベクターの形質導入によって行われる。提供される任意のいくつかの態様において、ウイルスベクターは、レトロウイルスベクターまたはガンマレトロウイルスベクターである。提供される任意のいくつかの態様において、ウイルスベクターはレンチウイルスベクターである。いくつかの態様において、ウイルスベクターは、任意でAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、またはAAV8ベクターの中から選択される、AAVベクターである。
【0036】
提供される任意のいくつかの態様において、ポリヌクレオチドの導入は、物理的送達法によって、任意でエレクトロポレーションによって行われる。
【0037】
提供される任意のいくつかの態様において、組換えタンパク質は組換え受容体である。提供される任意のいくつかの態様において、組換え受容体は、疾患もしくは状態に関連する抗原、または疾患もしくは状態に関連する病変の環境の細胞において発現している抗原に特異的に結合する。提供される任意のいくつかの態様において、疾患もしくは状態はがんである。提供される任意のいくつかの態様において、抗原は、αvβ6インテグリン(avb6インテグリン)、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3、B7-H6、炭酸脱水酵素9(CA9、別名CAIXまたはG250)、がん精巣抗原、がん/精巣抗原1B(CTAG、別名NY-ESO-1およびLAGE-2)、がん胎児性抗原(CEA)、サイクリン、サイクリンA2、C-Cモチーフケモカインリガンド1(CCL-1)、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD123、CD133、CD138、CD171、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4)、上皮成長因子タンパク質(EGFR)、タイプIII上皮成長因子受容体変異(EGFR vIII)、上皮糖タンパク質2(EPG-2)、上皮糖タンパク質40(EPG-40)、エフリンB2、エフリン受容体A2(EPHa2)、エストロゲン受容体、Fc受容体様5(FCRL5;別名Fc受容体ホモログ5またはFCRH5)、胎児アセチルコリン受容体(胎児AchR)、葉酸結合タンパク質(FBP)、葉酸受容体α、ガングリオシドGD2、O-アセチル化GD2(OGD2)、ガングリオシドGD3、糖タンパク質100(gp100)、グリピカン-3(GPC3)、Gタンパク質共役受容体クラスCグループ5メンバーD(GPRC5D)、Her2/neu(受容体チロシンキナーゼerb-B2)、Her3(erb-B3)、Her4(erb-B4)、erbB二量体、ヒト高分子量黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、B型肝炎表面抗原、ヒト白血球抗原A1(HLA-A1)、ヒト白血球抗原A2(HLA-A2)、IL-22受容体アルファ(IL-22Rα)、IL-13受容体アルファ2(IL-13Rα2)、キナーゼ挿入ドメイン受容体(kdr)、カッパ軽鎖、L1細胞接着分子(L1-CAM)、L1-CAMのCE7エピトープ、ロイシンリッチリピート含有8ファミリーメンバーA(Leucine Rich Repeat Containing 8 Family Member A:LRRC8A)、Lewis Y、黒色腫関連抗原(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A6、MAGE-A10、メソテリン(MSLN)、c-Met、マウスサイトメガロウイルス(CMV)、ムチン1(MUC1)、MUC16、ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)リガンド、メラン(melan)A(MART-1)、神経細胞接着分子(NCAM)、腫瘍胎児抗原、メラノーマ優先発現抗原(PRAME)、プロゲステロン受容体、前立腺特異抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、サバイビン、トロホブラスト(Trophoblast)糖タンパク質(TPBG、別名5T4)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、チロシナーゼ関連タンパク質1(TRP1、別名TYRP1またはgp75)、チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP2、別名ドパクロムトートメラーゼ、ドパクロムデルタイソメラーゼ、またはDCT)、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)、血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGFR2)、Wilms Tumor 1(WT-1)、病原体特異的もしくは病原体発現抗原、またはユニバーサルタグに関連する抗原、および/またはビオチン化分子、および/またはHIV、HCV、HBV、もしくは他の病原体によって発現される分子から選択される。提供される任意のいくつかの態様において、組換え受容体は、組換えT細胞受容体(TCR)または組換え機能的非T細胞受容体である。
【0038】
提供される任意のいくつかの態様において、組換え受容体はキメラ抗原受容体(CAR)である。提供される任意のいくつかの態様において、CARは、抗原に特異的に結合する細胞外抗原認識ドメインと、ITAMを含む細胞内シグナル伝達ドメインとを含む。提供される任意のいくつかの態様において、ITAMを含む細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3-ゼータ(CD3ζ)鎖、任意でヒトCD3-ゼータ鎖の細胞内ドメインを含む。提供される任意のいくつかの態様において、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達領域をさらに含む。いくつかの態様において、共刺激シグナル伝達領域は、CD28または4-1BB、任意でヒトCD28またはヒト4-1BBのシグナル伝達ドメインを含む。
【0039】
以下の工程を含む、組み込まれていない残りの導入遺伝子配列を評価するための方法が、本明細書において提供される:(a)提供される態様のいずれかの方法を行って、DNAの高分子量画分における導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定し、それによって、導入遺伝子配列のゲノム組み込みを評価する工程;(b)高分子量画分の分離を伴わずに単離されたDNAにおける導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程;および(c)(a)において決定された量と(b)において決定された量とを比較し、それによって、組み込まれていない残りの組換え配列の量を決定する工程。
【0040】
提供される任意のいくつかの態様において、導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程は、1つまたは複数の細胞における二倍体ゲノム当たりのまたは細胞当たりの、導入遺伝子配列の質量、重量、またはコピー数を決定することを含む。提供される任意のいくつかの態様において、1つまたは複数の細胞は、細胞の集団を含み、該集団のうちの複数の細胞は、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列を含む。提供される任意のいくつかの態様において、1つまたは複数の細胞は、細胞の集団を含み、該集団のうちの複数の細胞は、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列を含む疑いがある。提供される任意のいくつかの態様において、コピー数は、細胞の集団中での二倍体ゲノム当たりのまたは細胞当たりの平均(average)または平均(mean)コピー数である。
【0041】
提供される任意のいくつかの態様において、量を比較する工程は、(b)において決定されたコピー数から、(a)において決定されたコピー数を減算することを含む。提供される任意のいくつかの態様において、量を比較する工程は、(a)において決定されたコピー数対(b)において決定されたコピー数の比を決定することを含む。
【0042】
提供される任意のいくつかの態様において、(b)における存在、不在、または量を決定する工程は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって行われる。提供される任意のいくつかの態様において、PCRは、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)、デジタルPCR、またはドロップレットデジタルPCRである。提供される任意のいくつかの態様において、PCRはドロップレットデジタルPCRである。提供される任意のいくつかの態様において、PCRは、導入遺伝子配列の少なくとも一部分に相補的であるか、またはそれを特異的に増幅することができる1つまたは複数のプライマーを用いて行われる。
【0043】
提供される任意のいくつかの態様において、(b)における存在、不在、または量を決定する工程は、高分子量画分の分離を伴わずに単離されたDNAにおける導入遺伝子配列の質量、重量、またはコピー数を評価すること、および、該質量、重量、またはコピー数を、高分子量画分の分離を伴わずに単離されたDNAにおける参照遺伝子の質量、重量、もしくはコピー数に対して、または標準曲線に対して正規化することを含む。提供される任意のいくつかの態様において、参照遺伝子はハウスキーピング遺伝子である。提供される任意のいくつかの態様において、参照遺伝子は、アルブミンをコードする遺伝子(ALB)である。提供される任意のいくつかの態様において、参照遺伝子は、リボヌクレアーゼPタンパク質サブユニットp30をコードする遺伝子(RPP30)である。
【0044】
提供される任意のいくつかの態様において、単離されたDNAにおける参照遺伝子の質量、重量、またはコピー数を決定する工程は、参照遺伝子の少なくとも一部分に相補的であるか、またはそれを特異的に増幅することができる1つまたは複数のプライマーを用いたPCRによって行われる。
【0045】
提供される任意のいくつかの態様において、(a)における存在、不在、または量を決定する工程と、(b)における存在、不在、または量を決定する工程とは、同じプライマーまたは同じプライマーのセットを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって行われる。
【0046】
提供される任意のいくつかの態様において、組み込まれていない残りの組換え配列は、ベクタープラスミド、直鎖状相補DNA(cDNA)、自己組み込み体(autointegrant)、または末端反復配列(LTR)サークルのうちの1つまたは複数を含む。
[本発明1001]
以下の工程を含む、導入遺伝子配列のゲノム組み込みを評価するための方法:
(a)10キロベース(kb)よりも大きいかまたは約10キロベース(kb)よりも大きいデオキシリボ核酸(DNA)の高分子量画分を、1つまたは複数の細胞より単離されたDNAから分離する工程であって、該1つまたは複数の細胞が、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列を含む少なくとも1つの操作された細胞を含むか、またはそれを含む疑いがある、工程;
(b)該高分子量画分から、該1つまたは複数の細胞のゲノム中に組み込まれた導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程。
[本発明1002]
(a)における分離する工程の前に、デオキシリボ核酸(DNA)を、前記1つまたは複数の細胞から単離する、本発明1001の方法。
[本発明1003]
(b)における導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程が、前記1つまたは複数の細胞における二倍体ゲノム当たりのまたは細胞当たりの、該導入遺伝子配列の質量、重量、またはコピー数を決定することを含む、本発明1001または本発明1002の方法。
[本発明1004]
前記1つまたは複数の細胞が、細胞の集団を含み、該集団のうちの複数の細胞が、前記組換えタンパク質をコードする前記導入遺伝子配列を含む、本発明1001~1003のいずれかの方法。
[本発明1005]
前記コピー数が、前記細胞の集団中での二倍体ゲノム当たりのまたは細胞当たりの平均(average)または平均(mean)コピー数である、本発明1003または本発明1004の方法。
[本発明1006]
(a)における分離する工程の前に、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドが、前記1つまたは複数の細胞のうちの少なくとも1つの操作された細胞中に導入されている、本発明1001~1005のいずれかの方法。
[本発明1007]
前記少なくとも1つの操作された細胞が、前記導入遺伝子配列を含む前記ポリヌクレオチドの導入後に、96時間超にわたり、25℃よりも高い温度で、任意で37℃±2℃でまたは約37℃±2℃でインキュベートされていない、本発明1006の方法。
[本発明1008]
前記少なくとも1つの操作された細胞が、前記導入遺伝子配列を含む前記ポリヌクレオチドの導入後に、72時間超にわたり、25℃よりも高い温度で、任意で37℃±2℃でまたは約37℃±2℃でインキュベートされていない、本発明1006の方法。
[本発明1009]
前記少なくとも1つの操作された細胞が、前記導入遺伝子配列を含む前記ポリヌクレオチドの導入後に、48時間超にわたり、25℃よりも高い温度で、任意で37℃±2℃でまたは約37℃±2℃でインキュベートされていない、本発明1006の方法。
[本発明1010]
前記1つまたは複数の細胞が、(a)におけるDNAの高分子量画分を分離する工程の前に、凍結保存されている、本発明1001~1009のいずれかの方法。
[本発明1011]
前記1つまたは複数の細胞が、細胞株である、本発明1001~1010のいずれかの方法。
[本発明1012]
前記1つまたは複数の細胞が、対象由来のサンプルから得られた初代細胞である、本発明1001~1010のいずれかの方法。
[本発明1013]
前記1つまたは複数の細胞が、免疫細胞である、本発明1001~1012のいずれかの方法。
[本発明1014]
前記免疫細胞が、T細胞またはNK細胞である、本発明1013の方法。
[本発明1015]
前記T細胞が、CD3+、CD4+、および/またはCD8+ T細胞である、本発明1014の方法。
[本発明1016]
以下の工程を含む、対象由来の生物学的サンプルにおいて導入遺伝子配列を評価するための方法:
(a)10キロベース(kb)よりも大きいかまたは約10キロベース(kb)よりも大きいデオキシリボ核酸(DNA)の高分子量画分を、対象由来の生物学的サンプル中に存在する1つまたは複数の細胞より単離されたDNAから分離する工程であって、該生物学的サンプルが、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列を含む少なくとも1つの操作された細胞を含むか、またはそれを含む疑いがある、工程; および
(b)該高分子量画分から、該生物学的サンプルの全てまたは一部分における導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程。
[本発明1017]
(b)における導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程が、前記生物学的サンプルの全てまたは一部分における該導入遺伝子配列の質量、重量、またはコピー数を決定することを含む、本発明1016の方法。
[本発明1018]
分離する工程の前に、DNAを、前記生物学的サンプル中に存在する1つまたは複数の細胞から単離する、本発明1016または本発明1017の方法。
[本発明1019]
前記生物学的サンプルが、前記導入遺伝子配列を含む前記少なくとも1つの操作された細胞を含む組成物が投与された対象から得られる、本発明1016~1018のいずれかの方法。
[本発明1020]
前記生物学的サンプルが、組織サンプルまたは体液サンプルである、本発明1016~1019のいずれかの方法。
[本発明1021]
前記生物学的サンプルが組織サンプルであり、該組織が腫瘍である、本発明1020の方法。
[本発明1022]
前記組織サンプルが腫瘍生検材料である、本発明1020または本発明1021の方法。
[本発明1023]
前記生物学的サンプルが体液サンプルであり、該体液サンプルが、血液または血清サンプルである、本発明1020の方法。
[本発明1024]
(a)における分離する工程の前に、前記組換えタンパク質をコードする前記導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドが、前記1つまたは複数の細胞のうちの前記少なくとも1つの操作された細胞中に導入されている、本発明1016~1023のいずれかの方法。
[本発明1025]
前記生物学的サンプルにおける前記1つまたは複数の細胞が、免疫細胞を含む、本発明1016~1024のいずれかの方法。
[本発明1026]
前記免疫細胞が、T細胞またはNK細胞である、本発明1025の方法。
[本発明1027]
前記T細胞が、CD3+、CD4+、および/またはCD8+ T細胞である、本発明1026の方法。
[本発明1028]
前記分離する工程が、パルスフィールドゲル電気泳動またはサイズ排除クロマトグラフィーによって行われる、本発明1001~1027のいずれかの方法。
[本発明1029]
前記分離する工程が、パルスフィールドゲル電気泳動によって行われる、本発明1001~1028のいずれかの方法。
[本発明1030]
以下の工程を含む、導入遺伝子配列のゲノム組み込みを評価するための方法:
(a)パルスフィールドゲル電気泳動によって、10キロベース(kb)よりも大きいかまたは約10キロベース(kb)よりも大きいデオキシリボ核酸(DNA)の高分子量画分を、細胞の集団より単離されたDNAから分離する工程であって、該細胞の集団が、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列を各々が含むかまたはそれを含む疑いがある複数の操作された細胞を含む、工程;および
(b)該高分子量画分から、該細胞の集団のうちの該複数の操作された細胞のゲノム中に組み込まれた該導入遺伝子配列の二倍体ゲノム当たりのまたは細胞当たりの、平均(average)または平均(mean)コピー数を決定する工程。
[本発明1031]
(a)における分離する工程の前に、前記組換えタンパク質をコードする前記導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドが、前記細胞の集団のうちの前記複数の操作された細胞の少なくとも1つ中に導入されている、本発明1030の方法。
[本発明1032]
前記細胞の集団が、前記導入遺伝子配列を含む前記ポリヌクレオチドの、前記少なくとも1つの操作された細胞中への導入後に、96時間超にわたり、25℃よりも高い温度で、任意で37℃±2℃でまたは約37℃±2℃でインキュベートされていない、本発明1031の方法。
[本発明1033]
前記細胞の集団が、前記導入遺伝子配列を含む前記ポリヌクレオチドの、前記少なくとも1つの操作された細胞中への導入後に、72時間超にわたり、25℃よりも高い温度で、任意で37℃±2℃でまたは約37℃±2℃でインキュベートされていない、本発明1031の方法。
[本発明1034]
前記細胞の集団が、前記導入遺伝子配列を含む前記ポリヌクレオチドの、前記少なくとも1つの操作された細胞中への導入後に、48時間超にわたり、25℃よりも高い温度で、任意で37℃±2℃でまたは約37℃±2℃でインキュベートされていない、本発明1031の方法。
[本発明1035]
前記細胞の集団が、(a)におけるDNAの高分子量画分を分離する工程の前に、凍結保存されている、本発明1030~1034のいずれかの方法。
[本発明1036]
前記高分子量画分が、15キロベース(kb)よりも大きいかまたは約15キロベース(kb)よりも大きい、本発明1001~1035のいずれかの方法。
[本発明1037]
前記高分子量画分が、17.5キロベース(kb)よりも大きいかまたは約17.5キロベース(kb)よりも大きい、本発明1001~1035のいずれかの方法。
[本発明1038]
前記高分子量画分が、20キロベース(kb)よりも大きいかまたは約20キロベース(kb)よりも大きい、本発明1001~1035のいずれかの方法。
[本発明1039]
前記導入遺伝子配列が、前記組換えタンパク質をコードする核酸配列に機能的に連結された調節エレメントを含む、本発明1001~1038のいずれかの方法。
[本発明1040]
前記導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって行われる、本発明1001~1039のいずれかの方法。
[本発明1041]
前記PCRが、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)、デジタルPCR、またはドロップレットデジタルPCRである、本発明1040の方法。
[本発明1042]
前記PCRがドロップレットデジタルPCRである、本発明1040または本発明1041の方法。
[本発明1043]
前記導入遺伝子配列の少なくとも一部分に相補的であるか、またはそれを特異的に増幅することができる1つまたは複数のプライマーを用いて、前記PCRが行われる、本発明1040~1042のいずれかの方法。
[本発明1044]
前記1つまたは複数のプライマーが、調節エレメントの配列に相補的であるか、またはそれを特異的に増幅することができる、本発明1043の方法。
[本発明1045]
前記導入遺伝子配列の量を決定する工程が、前記1つまたは複数の細胞から単離されたDNAの質量または重量当たりの、任意で、前記1つまたは複数の細胞から単離されたDNA 1マイクログラム当たりの、該導入遺伝子配列の質量、重量、またはコピー数を評価することを含む、本発明1001~1044のいずれかの方法。
[本発明1046]
前記導入遺伝子配列の量を決定する工程が、1つまたは複数の細胞から単離されたDNA 1マイクログラム当たりの、導入遺伝子配列のマイクログラムでの質量または重量を評価することを含む、本発明1045の方法。
[本発明1047]
前記導入遺伝子配列の量を決定する工程が、前記1つもしくは複数の細胞当たりの、任意で、CD3+、CD4+、および/もしくはCD8+細胞当たりの、ならびに/または前記組換えタンパク質を発現する細胞当たりの、該導入遺伝子配列の質量、重量、またはコピー数を評価することを含む、本発明1001~1044のいずれかの方法。
[本発明1048]
前記導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程が、前記生物学的サンプルにおける二倍体ゲノム当たりのまたは細胞当たりの、該導入遺伝子配列の質量、重量、またはコピー数を評価することを含む、本発明1016~1044のいずれかの方法。
[本発明1049]
前記コピー数が、前記生物学的サンプルにおける前記1つまたは複数の細胞中での二倍体ゲノム当たりのまたは細胞当たりの平均(average)または平均(mean)コピー数である、本発明1048の方法。
[本発明1050]
前記導入遺伝子配列の量を決定する工程が、前記生物学的サンプルの体積当たりの、任意で、前記生物学的サンプル1マイクロリットル当たりのまたは1ミリリットル当たりの、該導入遺伝子配列の質量、重量、またはコピー数を評価することを含む、本発明1016~1044のいずれかの方法。
[本発明1051]
前記導入遺伝子配列の量を決定する工程が、対象の体重または体表面積当たりの、該導入遺伝子配列の質量、重量、またはコピー数を評価することを含む、本発明1016~1044のいずれかの方法。
[本発明1052]
前記導入遺伝子配列の量を決定する工程が、前記高分子量画分における該導入遺伝子配列の質量、重量、またはコピー数を評価すること、および、該質量、重量、またはコピー数を、前記高分子量画分における参照遺伝子の質量、重量、もしくはコピー数に対して、または標準曲線に対して正規化することを含む、本発明1001~1048のいずれかの方法。
[本発明1053]
前記参照遺伝子がハウスキーピング遺伝子である、本発明1052の方法。
[本発明1054]
前記参照遺伝子が、アルブミンをコードする遺伝子(ALB)である、本発明1052または本発明1053の方法。
[本発明1055]
前記参照遺伝子が、リボヌクレアーゼPタンパク質サブユニットp30をコードする遺伝子(RPP30)である、本発明1052または本発明1053の方法。
[本発明1056]
前記単離されたDNAにおける参照遺伝子のコピー数が、参照遺伝子の少なくとも一部分に相補的であるか、またはそれを特異的に増幅することができる1つまたは複数のプライマーを用いたPCRによって行われる、本発明1052~1055のいずれかの方法。
[本発明1057]
前記導入遺伝子配列が、完全なウイルスgagタンパク質をコードしない、本発明1001~1006のいずれかの方法。
[本発明1058]
前記導入遺伝子配列が、完全なHIVゲノム、複製可能なウイルスゲノム、ならびに/または、任意でNef、Vpu、Vif、Vpr、および/もしくはVpxであるアクセサリー遺伝子を含まない、本発明1001~1057のいずれかの方法。
[本発明1059]
前記ポリヌクレオチドの導入が、該ポリヌクレオチドを含むウイルスベクターの形質導入によって行われる、本発明1006~1015、1024~1029、および1031~1057のいずれかの方法。
[本発明1060]
前記ウイルスベクターが、レトロウイルスベクターまたはガンマレトロウイルスベクターである、本発明1059の方法。
[本発明1061]
前記ウイルスベクターがレンチウイルスベクターである、本発明1059または本発明1060の方法。
[本発明1062]
前記ウイルスベクターが、任意でAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、またはAAV8ベクターの中から選択される、AAVベクターである、本発明1059の方法。
[本発明1063]
前記ポリヌクレオチドの導入が、物理的送達法によって、任意でエレクトロポレーションによって行われる、本発明1006~1015、1024~1029、および1031~1057のいずれかの方法。
[本発明1064]
前記組換えタンパク質が組換え受容体である、本発明1001~1063のいずれかの方法。
[本発明1065]
前記組換え受容体が、疾患もしくは状態に関連する抗原、または疾患もしくは状態に関連する病変の環境の細胞において発現している抗原に特異的に結合する、本発明1064の方法。
[本発明1066]
前記疾患もしくは状態ががんである、本発明1065の方法。
[本発明1067]
前記抗原が、αvβ6インテグリン(avb6インテグリン)、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3、B7-H6、炭酸脱水酵素9(CA9、別名CAIXまたはG250)、がん精巣抗原、がん/精巣抗原1B(CTAG、別名NY-ESO-1およびLAGE-2)、がん胎児性抗原(CEA)、サイクリン、サイクリンA2、C-Cモチーフケモカインリガンド1(CCL-1)、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD123、CD133、CD138、CD171、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4)、上皮成長因子タンパク質(EGFR)、タイプIII上皮成長因子受容体変異(EGFR vIII)、上皮糖タンパク質2(EPG-2)、上皮糖タンパク質40(EPG-40)、エフリンB2、エフリン受容体A2(EPHa2)、エストロゲン受容体、Fc受容体様5(FCRL5;別名Fc受容体ホモログ5またはFCRH5)、胎児アセチルコリン受容体(胎児AchR)、葉酸結合タンパク質(FBP)、葉酸受容体α、ガングリオシドGD2、O-アセチル化GD2(OGD2)、ガングリオシドGD3、糖タンパク質100(gp100)、グリピカン-3(GPC3)、Gタンパク質共役受容体クラスCグループ5メンバーD(GPRC5D)、Her2/neu(受容体チロシンキナーゼerb-B2)、Her3(erb-B3)、Her4(erb-B4)、erbB二量体、ヒト高分子量黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、B型肝炎表面抗原、ヒト白血球抗原A1(HLA-A1)、ヒト白血球抗原A2(HLA-A2)、IL-22受容体アルファ(IL-22Rα)、IL-13受容体アルファ2(IL-13Rα2)、キナーゼ挿入ドメイン受容体(kdr)、カッパ軽鎖、L1細胞接着分子(L1-CAM)、L1-CAMのCE7エピトープ、ロイシンリッチリピート含有8ファミリーメンバーA(Leucine Rich Repeat Containing 8 Family Member A:LRRC8A)、Lewis Y、黒色腫関連抗原(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A6、MAGE-A10、メソテリン(MSLN)、c-Met、マウスサイトメガロウイルス(CMV)、ムチン1(MUC1)、MUC16、ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)リガンド、メラン(melan)A(MART-1)、神経細胞接着分子(NCAM)、腫瘍胎児抗原、メラノーマ優先発現抗原(PRAME)、プロゲステロン受容体、前立腺特異抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、サバイビン、トロホブラスト(Trophoblast)糖タンパク質(TPBG、別名5T4)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、チロシナーゼ関連タンパク質1(TRP1、別名TYRP1またはgp75)、チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP2、別名ドパクロムトートメラーゼ、ドパクロムデルタイソメラーゼ、またはDCT)、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)、血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGFR2)、Wilms Tumor 1(WT-1)、病原体特異的もしくは病原体発現抗原、またはユニバーサルタグに関連する抗原、および/またはビオチン化分子、および/またはHIV、HCV、HBV、もしくは他の病原体によって発現される分子から選択される、本発明1065または本発明1066の方法。
[本発明1068]
前記組換え受容体が、組換えT細胞受容体(TCR)または組換え機能的非T細胞受容体である、本発明1064~1067のいずれかの方法。
[本発明1069]
前記組換え受容体がキメラ抗原受容体(CAR)である、本発明1064~1068のいずれかの方法。
[本発明1070]
前記CARが、前記抗原に特異的に結合する細胞外抗原認識ドメインと、ITAMを含む細胞内シグナル伝達ドメインとを含む、本発明1069の方法。
[本発明1071]
前記ITAMを含む細胞内シグナル伝達ドメインが、CD3-ゼータ(CD3ζ)鎖、任意でヒトCD3-ゼータ鎖の細胞内ドメインを含む、本発明1070の方法。
[本発明1072]
前記細胞内シグナル伝達ドメインが、共刺激シグナル伝達領域をさらに含む、本発明1070または本発明1071の方法。
[本発明1073]
前記共刺激シグナル伝達領域が、CD28または4-1BB、任意でヒトCD28またはヒト4-1BBのシグナル伝達ドメインを含む、本発明1072の方法。
[本発明1074]
以下の工程を含む、組み込まれていない残りの導入遺伝子配列を評価するための方法:
(1)DNAの高分子量画分における導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定するために、本発明1001~1015および1028~1073のいずれかの方法を行い、それによって、該導入遺伝子配列のゲノム組み込みを評価する工程;
(2)該高分子量画分の分離を伴わずに、単離されたDNAにおける該導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程;
(3)(1)において決定された量と(2)において決定された量とを比較し、それによって、組み込まれていない残りの組換え配列の量を決定する工程。
[本発明1075]
前記導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程が、前記1つまたは複数の細胞における二倍体ゲノム当たりのまたは細胞当たりの、該導入遺伝子配列の質量、重量、またはコピー数を決定することを含む、本発明1074の方法。
[本発明1076]
前記1つまたは複数の細胞が細胞の集団を含み、該集団のうちの複数の細胞が、前記組換えタンパク質をコードする前記導入遺伝子配列を含むか、またはそれを含む疑いがある、本発明1074または本発明1075の方法。
[本発明1077]
前記コピー数が、細胞の集団中での二倍体ゲノム当たりのまたは細胞当たりの平均(average)または平均(mean)コピー数である、本発明1075または本発明1076の方法。
[本発明1078]
前記量を比較する工程が、(2)において決定されたコピー数から、(1)において決定されたコピー数を減算することを含む、本発明1075~1077のいずれかの方法。
[本発明1079]
前記量を比較する工程が、(1)において決定されたコピー数対(2)において決定されたコピー数の比を決定することを含む、本発明1075~1077のいずれかの方法。
[本発明1080]
(2)における存在、不在、または量を決定する工程が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって行われる、本発明1074~1079のいずれかの方法。
[本発明1081]
前記PCRが、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)、デジタルPCR、またはドロップレットデジタルPCRである、本発明1080の方法。
[本発明1082]
前記PCRがドロップレットデジタルPCRである、本発明1080または本発明1081の方法。
[本発明1083]
前記導入遺伝子配列の少なくとも一部分に相補的であるか、またはそれを特異的に増幅することができる1つまたは複数のプライマーを用いて、前記PCRが行われる、本発明1080~1082のいずれかの方法。
[本発明1084]
(2)における存在、不在、または量を決定する工程が、前記高分子量画分の分離を伴わずに、前記単離されたDNAにおける前記導入遺伝子配列の質量、重量、またはコピー数を評価すること、および、前記高分子量画分の分離を伴わずに、該質量、重量、またはコピー数を、前記単離されたDNAにおける参照遺伝子の質量、重量、もしくはコピー数に対して、または標準曲線に対して正規化することを含む、本発明1074~1083のいずれかの方法。
[本発明1085]
前記参照遺伝子がハウスキーピング遺伝子である、本発明1084の方法。
[本発明1086]
前記参照遺伝子が、アルブミンをコードする遺伝子(ALB)である、本発明1084または本発明1085の方法。
[本発明1087]
前記参照遺伝子が、リボヌクレアーゼPタンパク質サブユニットp30をコードする遺伝子(RPP30)である、本発明1084または本発明1085の方法。
[本発明1088]
前記単離されたDNAにおける参照遺伝子の質量、重量、またはコピー数を決定する工程が、該参照遺伝子の少なくとも一部分に相補的であるか、またはそれを特異的に増幅することができる1つまたは複数のプライマーを用いたPCRによって行われる、本発明1084~1087のいずれかの方法。
[本発明1089]
(1)における存在、不在、または量を決定する工程と、(2)における存在、不在、または量を決定する工程とが、同じプライマーまたは同じプライマーのセットを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって行われる、本発明1074~1088のいずれかの方法。
[本発明1090]
前記組み込まれていない残りの組換え配列が、ベクタープラスミド、直鎖状相補DNA(cDNA)、自己組み込み体(autointegrant)、または末端反復配列(LTR)サークルのうちの1つまたは複数を含む、本発明1074~1089のいずれかの方法。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)によって、15 kb、17.5 kb、または20 kbの閾値よりも上の高分子量DNA画分を分離する前(プレ-ゲル;標準的なベクターコピー数(VCN)アッセイ)または分離した後(組み込まれたベクターコピー数(iVCN)アッセイ)の、ドロップレットデジタルPCR(ddPCR)によって評価したコピー数を示す。コピー数は、組み込まれた導入遺伝子配列(「導入遺伝子」)、パッケージングプラスミド(水疱性口内炎インディアナウイルスGタンパク質(「VSVg」)をコードするウイルスパッケージングプラスミド)、またはゲノム対照(リボヌクレアーゼPタンパク質サブユニットp30をコードする遺伝子(「RRP30」))の一部分を特異的に増幅するプライマーを用いて評価した。評価は、形質導入された細胞由来のサンプルにおいて、またはCARプラスミドおよびVSVgプラスミドを添加した、形質導入されていない対照において行った。各遺伝子のコピー数を、二倍体ゲノムの数に対して(cp/二倍体ゲノム;参照としてアルブミン遺伝子に特異的なプライマーを用いる)、または50 ngのゲノムDNA当たりに正規化した。
図2図2A~2Bは、CARをコードする導入遺伝子配列を含有するレンチウイルス調製物を形質導入されたJurkat T細胞(図2A)またはヒト対象から単離された初代T細胞(図2B)についての、様々な時点(形質導入の前(「プレ」)、形質導入後5分、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、および96時間、または操作プロセスの完了時「完了」)での導入遺伝子配列の、標準的なベクターコピー数(VCN)アッセイ(高分子量DNAおよび低分子量DNAの両方を含有する、PFGEに供されなかったゲノムDNAサンプル)ならびに組み込まれたベクターコピー数(iVCN)アッセイ(PFGE後の高分子量DNAサンプル中)によって評価したコピー数を図示する。各遺伝子のコピー数を、二倍体ゲノムの数に対して(cp/二倍体ゲノム;参照としてアルブミン遺伝子に特異的なプライマーを用いる)正規化した。
図3A】(1)抗CD3/抗CD28抗体コンジュゲート常磁性ビーズ(「ビーズ」)、(2)106細胞当たり4.0μgの濃度の抗CD3/抗CD28 Fabコンジュゲートオリゴマーストレプトアビジンムテイン試薬、または(3)106細胞当たり0.8μgの濃度の抗CD3/抗CD28 Fabコンジュゲートオリゴマーストレプトアビジンムテイン試薬とのインキュベーションによって刺激した、2人の異なるヒト対象(ドナーAおよびドナーB)由来の初代T細胞を用いて、形質導入後に血清もしくは増殖因子を含まない基礎培地(「基礎」)、またはIL-2、IL-5、およびIL-15を含有する無血清培地(「完全」)においてインキュベートした、例示的な拡大増殖させないT細胞組成物製造プロセスの3、4、または5日目に評価した組み込まれたコピー数を示す。
図3B】iVCNによって決定されたコピー数と、(フローサイトメトリーによって、CD3+細胞の中でのCD3+/活性化Cas3-/CAR+細胞のパーセンテージにより決定された)CAR発現細胞のパーセンテージとの間の相関を図示する。
図4A図4A~4Eは、表E1に示すような、異なる刺激試薬および収集時間を使用する様々な例示的な拡大増殖させるかまたは拡大増殖させないT細胞組成物製造プロセス中の、(PFGEを伴わない)標準的なVCNおよび(PFGEを伴う)iVCNによって評価した二倍体ゲノム当たりのコピー数(図4A)、組み込まれた導入遺伝子の割合(図4B)、組み込まれていない導入遺伝子の割合(図4C)、二倍体ゲノム当たりの組み込まれていない導入遺伝子コピー数(図4D)、ならびにCAR+細胞当たりの組み込まれたコピー数(図4E)を図示する。
図4B図4Aの説明を参照のこと。
図4C図4Aの説明を参照のこと。
図4D図4Aの説明を参照のこと。
図4E図4Aの説明を参照のこと。
図5】キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように様々なドナー由来の初代T細胞を操作する例示的な操作プロセスにおける様々な時点にわたる、(PFGEを伴わない)標準的なVCNおよび(PFGEを伴う)iVCNによって評価した二倍体ゲノム当たりのコピー数、組み込まれていない導入遺伝子コピー数、組み込まれていない導入遺伝子の割合、および組み込まれた導入遺伝子の割合を図示する。評価した時点には、材料の解凍(TMAT;0日目)、活性化(AMAT;1日目)、形質導入(XMAT;2日目)、または培養の開始後の様々な時(接種+1~接種+6;プロセスの3~8日目に相当する)を含む、拡大増殖させるプロセスの0日目から8日目が含まれる。
図6】HT1080ヒト線維芽細胞細胞株における、形質導入後12、24、48、または72時間での、細胞当たりの(PFGEを伴わない)標準的なVCNおよび(PFGEを伴う)iVCNによって評価した、二倍体ゲノム当たりのコピー数を示す。
図7-1】図7Aは、拡大増殖させるプロセス(〇)または拡大増殖させないプロセス(●)を用いて、CARを発現するように操作された異なるヒトドナー由来の初代T細胞から作製された細胞組成物における、(PFGEを伴わない)標準的なVCNおよび(PFGEを伴う)iVCNによって評価した総細胞の中での細胞当たりのコピー数の間の関係を示す。図7B~7Cは、標準的なVCN(図7B)またはiVCN(図7C)によって評価した細胞組成物における細胞当たりのコピー数と、フローサイトメトリーによって評価した生CD45+細胞の中でのCAR発現CD3+細胞のパーセンテージ(%CD3+CAR+)により示す、CARの表面発現との関係を示す。
図7-2】図7-1の説明を参照のこと。
【発明を実施するための形態】
【0048】
詳細な説明
遺伝子操作された細胞のゲノム中に組み込まれた核酸配列の組み込みを評価するための方法が、本明細書において提供される。いくつかの局面において、方法は、核酸配列、例えば、細胞の遺伝子操作に用いられる導入遺伝子配列などの、存在、不在、および/または量を決定するために用いられる。いくつかの局面において、方法は、細胞、例えば、細胞療法において用いられる遺伝子操作された細胞などのゲノムにおける導入遺伝子配列の組み込みを評価するために用いることができる。いくつかの局面において、細胞は、細胞のゲノム中に組み込まれることになる、核酸配列、例えば、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列など、を含有するポリヌクレオチドの導入によって、組換え受容体などの組換えタンパク質を発現するように遺伝子操作される。いくつかの局面において、提供される方法は、組み込みを評価し、組み込まれた核酸および組み込まれていない残りの核酸の存在、不在、または量を区別し、かつ/または決定するために用いることができる。
【0049】
いくつかの局面において、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列を含有するポリヌクレオチドは、様々な送達法、例えば、ウイルス形質導入、またはエレクトロポレーションなどの物理的送達法を用いて、細胞中に導入される。いくつかの態様において、養子細胞療法のために操作された細胞などの、操作された細胞は、導入遺伝子配列によってコードされる組換えタンパク質の発現のレベルの決定、および/または細胞のゲノム中に組み込まれている、例えば、細胞のゲノム中に安定に組み込まれている導入遺伝子配列のコピーの数の決定など、様々な特徴および特性について、モニターまたは評価される必要がある。いくつかの態様において、操作された細胞は、組み込まれていない残りの核酸の存在、不在、および/または量についてモニターされる必要がある。いくつかの局面において、そのような評価は、操作プロセスまたは製造プロセス中の1つまたは複数の時点で行うことができる。特に、養子細胞療法など、細胞療法における使用のための操作された細胞および細胞組成物については、導入遺伝子配列の存在、不在、量、コピー数、および/または発現の効率的なかつ正確な決定が、操作された細胞の妥当なかつ正確な特徴決定および定義を確実にするため、投薬を正確に決定するため、ならびに対象に投与される場合の細胞組成物の有効性および安全性を確実にするために重要である。組み込まれた核酸および組み込まれていない残りの核酸の存在、不在、量、コピー数、および/または発現の効率的なかつ正確な評価についてのそのような要求を満たすための改善された方法が、必要とされる。
【0050】
場合によっては、操作プロセスもしくは製造プロセスの早い段階中に、および/または、時宜を得たかつ信頼できる様式で短縮されているかもしくは省略されている製造プロセス中に、評価が行われる必要があり得る。例示的な短縮されたかまたは省略された製造プロセスには、拡大増殖させない製造プロセス、例えば、形質導入後に細胞の拡大増殖のためのインキュベーションを含まないか、またはより短いかもしくはより省略されたインキュベーションを含む、プロセスが含まれる。いくつかの局面において、ある特定の短縮されたかまたは省略されたプロセスは、細胞を実質的に拡大増殖させないか、または細胞を最小限のみ拡大増殖させる条件下での、細胞のインキュベーションを含んでもよい。場合によっては、そのようなプロセスは、例えば形質導入による、組換えまたは異種ポリヌクレオチドの導入後に96、72、または48時間以下の、25℃よりも高い温度で、任意で37℃±2℃でまたは約37℃±2℃での細胞のインキュベーションを含んでもよい。
【0051】
場合によっては、細胞のゲノム中に組み込まれた導入遺伝子配列の存在、不在、および/または量を決定することは、特に早い時点で、または、拡大増殖させないプロセス、例えば、組み込みのための核酸配列の導入後に、より短いインキュベーション、培養、もしくは拡大増殖の期間を有するプロセス、または操作された細胞の特徴もしくは特性の評価の前、もしくは凍結保存の前に、より短いインキュベーション、培養、もしくは拡大増殖の期間を有するプロセスを用いると、困難であり得る。いくつかの局面において、操作プロセスもしくは製造プロセスの早い段階中に、または拡大増殖させないプロセスにおいて、細胞より単離されたDNAから決定された存在、不在、または量は、反応または細胞中に存在する核酸の組み込まれていない種の存在のゆえに、過大評価を結果としてもたらす可能性がある。いくつかの局面において、提供される態様は、対象に対する細胞の投与の前の、組み込まれた核酸、場合によっては、組み込まれていない残りの核酸の、存在、不在、または量の、特異的決定を可能にする。
【0052】
提供される態様は、操作された細胞または細胞組成物を効率的にかつ正確に評価する要求に対して、改善された解決法をもたらす。特に、省略されたかまたは拡大増殖させないプロセスを用いて操作された細胞について、または操作プロセスにおける早い時点で、改善された方法が必要とされる。いくつかの局面において、提供される態様は、例えば、約10キロベース(kb)よりも大きい、DNAの高分子量画分の細胞からの分離、および該高分子量画分における導入遺伝子配列の存在、不在、または量を評価する工程を含むアッセイ法が、サンプルにおける組み込まれた導入遺伝子配列を確実に検出することができるという、本明細書に、例えば、実施例3-5に記載される観察に基づく。組み込まれていない残りの配列から分離される組み込まれた導入遺伝子配列を含有する、提供される方法は、特に、省略された拡大増殖させないプロセス中に、利点をもたらすことが見出される。
【0053】
いくつかの局面において、提供される態様は、ゲノムDNAを含有し得る大きなまたは高分子量の核酸配列を、エピソーマルプラスミド、自己組み込み体、または他のフラグメントなどの組み込まれていないかまたは残りの分子を含有し得る、より小さなまたは低分子量の核酸分子から分離するかまたは単離する方法に基づく。いくつかの局面において、高分子量核酸分子はまた、ゲノム中に組み込まれている導入遺伝子配列も含む。提供される態様は、(例えば、細胞のゲノム中に組み込まれた)組み込まれた配列を、組み込まれていない残りの配列から区別するために用いることができ、したがって、製造の早い段階でまたは拡大増殖させないプロセスにおいてさえ、組み込まれた配列の正確なかつ信頼できる決定を可能にするという利点を提供する。
【0054】
いくつかの局面において、提供される方法は、特に、操作プロセスもしくは製造プロセス中の早い時点で、または拡大増殖させない、短縮されたかもしくは速められた操作プロセスもしくは製造プロセスについて、組み込まれた核酸のコピー数の効率的なかつ信頼できる決定を可能にし、それによって、細胞療法における使用または投与のための細胞の特徴決定の正確性および信頼性を改善する。いくつかの局面において、提供される態様は、特定の時点で、例えば、拡大増殖させない、短縮されたかまたは速められた操作プロセスまたは製造プロセスの最中またはその終わりに、エピソーマルプラスミド、自己組み込み体、または他のフラグメントなどの組み込まれていないかまたは残りの分子のコピー数を含まずに、組み込まれたコピー数を正確に決定する利点をもたらす。
【0055】
いくつかの局面において、提供される態様は、画分の分離後の高分子量画分におけるコピー数評価が、特に、導入遺伝子配列のフリーの組み込まれていないコピーを保持し得る、拡大増殖させないプロセスを用いて作製された細胞について、安定に組み込まれた導入遺伝子配列のコピー数を正確に決定することを結果としてもたらし得るという知見に基づく。それに比べ、組み込まれた導入遺伝子配列対組み込まれていない導入遺伝子配列を区別しない、高分子量の事前の分離を伴わないコピー数決定は、特に、より短い拡大増殖させないプロセスの最中およびその後の、安定に組み込まれた導入遺伝子配列の数の正確な決定において限定されている。本明細書に、例えば、実施例3-5に記載されるように、省略された拡大増殖させないプロセス中に、高分子量フラグメントの分離を使用しない方法(例えば、ベクターコピー数(VCN)アッセイと称される)は、組み込まれていない残りの種(例えば、エピソーマルプラスミド、自己組み込み体、または他のフラグメント)もまた検出され、計数され得るため、組み込まれた導入遺伝子配列の偽陽性または過大評価を結果としてもたらし得る。本明細書で提供される態様は、既存のVCNアッセイに起因し得る偽陽性または過大評価を伴わない、効率的なかつ正確な決定を可能にするため、様々な利点を提供する。
【0056】
また、提供される方法を行うために用いることができるキットおよび製造物品も、提供される。
【0057】
本出願において言及される、特許文書、科学論文、およびデータベースを含む全ての刊行物は、各々個々の刊行物が個別に参照により組み入れられるのと同じ程度まで、全ての目的で、それらの全体が参照により組み入れられる。本明細書に示されている定義が、参照により本明細書に組み入れられる特許、出願、公開された出願、および他の刊行物に示されている定義と相反するかまたは別の形で整合しない場合は、参照により本明細書に組み入れられる定義よりも、本明細書に示されている定義が優先される。
【0058】
本明細書において用いられる各セクションの見出しは、編集上の目的を有するにすぎず、記載される内容を限定するものと解釈されるべきではない。
【0059】
I. 組み込まれた核酸を評価するための方法
導入遺伝子配列、例えば、細胞の遺伝子操作において用いられる、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列の、ゲノム組み込みを評価するための方法(場合によっては、組み込まれたベクターコピー数(iVCN)アッセイと呼ばれ得る)が、本明細書において提供される。いくつかの態様において、方法は、核酸配列、例えば、組換え受容体などの組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列の、存在、不在、および/または量を決定するために用いられる。いくつかの態様において、方法は、1つまたは複数の細胞、例えば、組換えタンパク質をコードする核酸配列を含む導入遺伝子配列を含む少なくとも1つの操作された細胞を含むか、またはそれを含む疑いがある、1つまたは複数の遺伝子操作された細胞のゲノム中に組み込まれた導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程を含む。いくつかの局面において、提供される方法は、細胞操作プロセス、例えば、細胞のゲノム中に組み込まれ得る導入遺伝子配列を含有するポリヌクレオチドを導入するために用いられるプロセスの前、その最中、またはその後の様々な時点で、組み込みを評価するために使用することができる。いくつかの局面において、提供される方法はまた、操作された細胞が投与された対象から得られた生物学的サンプルを評価して、生物学的サンプルにおいて導入遺伝子配列の存在、不在、および/または量を検出するかまたは決定するために使用することができる。
【0060】
いくつかの局面において、提供される方法は、組み込みを評価するため、ならびに、組み込まれた核酸および/または組み込まれていない残りの核酸、例えば、ベクタープラスミド、直鎖状相補DNA(cDNA)、自己組み込み体、または末端反復配列(LTR)サークルのうちの1つまたは複数を区別する、かつ/またはその存在、不在、および/もしくは量を決定するために用いることができる。いくつかの局面において、提供される態様は、デオキシリボ核酸(DNA)を、操作された細胞が投与された対象などの対象由来の生物学的サンプルから単離する工程を含む、対象由来の生物学的サンプルにおいて導入遺伝子配列の存在、不在、コピー数を評価するための方法を含む。
【0061】
いくつかの態様において、デオキシリボ核酸(DNA)の高分子量画分、例えば、10キロベース(kb)よりも大きいかまたは約10キロベース(kb)よりも大きいDNA種を、1つまたは複数の細胞から単離されたDNAから分離する工程を含む、導入遺伝子配列のゲノム組み込みを評価するための方法が提供される。いくつかの局面において、そのような分離は、パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)などの方法によって行うことができる。いくつかの局面において、1つまたは複数の細胞は、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列を含む少なくとも1つの操作された細胞を含有するか、またはそれを含有する疑いがある。いくつかの局面において、導入遺伝子配列は、細胞のゲノム中に組み込まれているか、または組み込まれようとしている。いくつかの態様において、導入遺伝子配列は、組換えタンパク質をコードする核酸配列、ならびに、調節エレメント、例えば、プロモーター、転写および/もしくは転写後調節エレメントもしくは応答エレメント、またはマーカー、例えば、サロゲートマーカーを含む、他の構成成分またはエレメントを含む。いくつかの局面において、方法は、1つまたは複数の細胞のゲノム中に組み込まれた導入遺伝子配列の存在、不在、または量を、例えば、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)、デジタルPCR(dPCR)、またはドロップレットデジタルPCR(ddPCR)などの定量的方法によって決定する工程を含む。
【0062】
いくつかの態様において、以下の工程を含む、導入遺伝子配列のゲノム組み込みを評価するための方法が提供される:パルスフィールドゲル電気泳動によって、10キロベース(kb)よりも大きいかまたは約10キロベース(kb)よりも大きいデオキシリボ核酸(DNA)の高分子量画分を、細胞の集団より単離されたDNAから分離する工程であって、該細胞の集団が、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列を各々が含むか、またはそれを含む疑いがある、複数の操作された細胞を含む、工程;および、該細胞の集団のうちの複数の操作された細胞のゲノム中に組み込まれた導入遺伝子配列の二倍体ゲノム当たりの、平均(average)または平均(mean)コピー数を決定する工程。
【0063】
いくつかの態様において、分離する工程の前に、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドが、細胞の集団のうちの複数の操作された細胞の少なくとも1つ中に導入されている。
【0064】
いくつかの局面において、提供される方法は、高分子量画分などの特定の画分を、操作された細胞より単離された総DNA中に存在するDNAの他の分子または種から分離する工程を含む。いくつかの局面において、方法は、例えば、約10キロベース(kb)またはそれよりも大きいサイズのDNAを含有する、高分子量画分を分離する工程を含む。いくつかの局面において、分離工程は、電気泳動ベースの方法などの、サイズまたは分子量に基づいて核酸を分離するための方法を用いて行われる。いくつかの局面において、方法はまた、単離されたDNAから高分子量画分を分離する工程の前に、DNAを1つまたは複数の細胞から単離する工程も含む。
【0065】
いくつかの局面において、方法は、1つまたは複数の細胞のゲノム中に組み込まれた導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程を含む。いくつかの局面において、方法は、分離された画分のうちの1つまたは複数における、例えば、高分子量画分における、導入遺伝子配列の存在、不在、および/または量を決定する工程を含む。いくつかの局面において、方法は、高分子量画分における導入遺伝子配列の存在、不在、および/または量を決定する工程を含む。いくつかの局面において、方法は、高分子量画分から、1つまたは複数の細胞のゲノム中に組み込まれた導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程を含む。いくつかの局面において、決定する工程は、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)または関連した方法などの、核酸配列を検出し、かつ/または定量する方法に基づくことができる。いくつかの局面において、提供される方法により、組み込まれた導入遺伝子配列を、細胞中もしくはその近く、および/または解析サンプル中に存在し得る組み込まれていない導入遺伝子配列から区別することが可能になる。
【0066】
いくつかの態様において、方法は、デオキシリボ核酸(DNA)を、細胞のゲノム中への組み込みのための条件下で導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドが導入されている細胞から単離する工程、および、10キロベース(kb)よりも大きいかまたは約10キロベース(kb)よりも大きい高分子量画分を、単離されたDNAから分離する工程を含む。いくつかの態様において、方法は、10キロベース(kb)よりも大きいかまたは約10キロベース(kb)よりも大きい高分子量画分を、細胞より単離されたデオキシリボ核酸(DNA)から分離する工程を含み、該分離する工程の前に、細胞は、細胞のゲノム中への導入遺伝子配列の組み込みのための条件下で、導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドが導入されている。いくつかの局面において、提供される方法は、分離された高分子量画分における導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程を含む。
【0067】
いくつかの局面において、以下の工程を含む、対象由来の生物学的サンプルにおいて導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定するための方法もまた提供される:デオキシリボ核酸(DNA)を、対象由来の生物学的サンプルから単離する工程;10キロベース(kb)よりも大きいかまたは約10キロベース(kb)よりも大きい高分子量画分を、単離されたDNAから分離する工程;および、高分子量画分における導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程。いくつかの局面において、生物学的サンプルは、導入遺伝子配列を含む操作された細胞が投与された対象から得られる。
【0068】
いくつかの局面において、組み込まれていない残りの導入遺伝子配列を評価するための方法もまた提供される。いくつかの態様において、方法は、デオキシリボ核酸(DNA)を、細胞のゲノム中への組み込みのための条件下で導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドが導入されている細胞から単離する工程、および、10キロベース(kb)よりも大きいかまたは約10キロベース(kb)よりも大きい高分子量画分を、単離されたDNAから分離する工程;該高分子量画分における導入遺伝子配列のコピー数を決定し、それによって、導入遺伝子配列のゲノム組み込みを評価する工程を含む、方法のいずれかの工程を行うことを含む。
【0069】
いくつかの局面において、方法はまた、高分子量画分の分離を伴わずに単離されたDNAにおける導入遺伝子配列のコピー数を決定し、それによって、導入遺伝子配列の総コピー数を決定する工程も含む。いくつかの局面において、方法は、高分子量画分の評価によって決定されたコピー数を、(例えば、画分の分離を伴わずに)単離されたDNA全体の評価によって決定されたコピー数から減算することによって、組み込まれていない残りの導入遺伝子配列のコピー数を決定する工程を含む。いくつかの局面において、方法は、決定されたコピー数由来の、高分子量画分の評価によって決定されたコピー数を、(例えば、画分の分離を伴わずに)単離されたDNA全体の評価によって決定されたコピー数で割ることによって、組み込まれていない残りの導入遺伝子配列の比率を決定する工程を含む。いくつかの態様において、組み込まれていない残りの導入遺伝子配列は、ベクタープラスミド、直鎖状相補DNA(cDNA)、自己組み込み体、または末端反復配列(LTR)サークルのうちの1つまたは複数を含む。
【0070】
A. 高分子量画分の分離
いくつかの局面において、提供される態様は、操作された細胞から得られたデオキシリボ核酸(DNA)などの核酸を、その分子量またはサイズに基づいて分離する工程を含む。いくつかの局面において、方法はまた、あるサイズまたは分子量の範囲内に入るDNA分子を分離するかまたは単離する工程も含む。いくつかの局面において、組み込まれた導入遺伝子配列または組み込まれていない導入遺伝子配列の特定のタイプは、典型的な範囲のサイズまたは分子量を有することができる。いくつかの局面において、特定のサイズまたは分子量の範囲を、その範囲内のサイズまたは分子量を有するDNA分子を分離するかまたは単離するために用いることができる。いくつかの局面において、特定のサイズまたは分子量の範囲内の導入遺伝子配列の存在、不在、または量。
【0071】
いくつかの態様において、例えば、閾値よりも大きいか、またはあるサイズもしくは分子量の範囲内であるDNA分子を含有する高分子量画分が、分離されるかまたは単離される。いくつかの態様において、高分子量画分は、主として、染色体DNAまたはゲノムDNAなどの大きなDNA分子を含有し、プラスミド、組み込まれていないDNAフラグメント、直鎖状相補DNA(cDNA)、自己組み込み体、末端反復配列(LTR)サークル、またはゲノム中に組み込まれていない他の残りの種もしくは分子などの、サイズが閾値よりも小さい分子を、少量含有するか、またはほぼ全く含有しない。いくつかの態様において、高分子量画分は、主として、染色体DNAまたはゲノムDNAなどの大きなDNA分子を含有し、プラスミド、組み込まれていないDNAフラグメント、直鎖状相補DNA(cDNA)、自己組み込み体、末端反復配列(LTR)サークル、またはゲノム中に組み込まれていない他の残りの種もしくは分子などの、サイズが閾値よりも小さい分子を含まない。いくつかの態様において、高分子量画分における導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程によって、検出された導入遺伝子配列は、操作された細胞のゲノム中に組み込まれているものに相当し、組み込まれていない導入遺伝子配列の検出を最小化する。
【0072】
いくつかの態様において、高分子量画分は、サイズが10キロベース(kb)よりも大きいかまたは約10キロベース(kb)よりも大きいDNA分子を含む。いくつかの態様において、高分子量画分は、サイズが10、11、12、12.5、13、14、15、16、17、17.5、18、19、20、25、もしくは30キロベース(kb)もしくはそれ以上よりも大きいか、または約10、11、12、12.5、13、14、15、16、17、17.5、18、19、20、25、もしくは30キロベース(kb)もしくはそれ以上よりも大きいDNA分子を含む。いくつかの態様において、高分子量画分は、サイズが10、12.5、15、17.5、もしくは20キロベース(kb)もしくはそれ以上よりも大きいか、または約10、12.5、15、17.5、もしくは20キロベース(kb)もしくはそれ以上よりも大きいDNA分子を含む。いくつかの局面において、高分子量画分は、ゲノムDNAまたはゲノムDNAフラグメントを含有し、DNAサンプル中に存在し得る組み込まれていないかまたは残りの核酸種を、排除するかまたは分離する。いくつかの局面において、高分子量画分、例えば、約10、11、12、12.5、13、14、15、16、17、17.5、18、19、20、25、もしくは30キロベース(kb)またはそれ以上などの閾値よりも上であるDNAサンプル。いくつかの態様において、閾値は、10、12.5、15、17.5、もしくは20キロベース(kb)もしくはそれ以上よりも大きいか、または約10、12.5、15、17.5、もしくは20キロベース(kb)もしくはそれ以上よりも大きい。いくつかの態様において、高分子量画分は、15キロベース(kb)よりも大きいか、または約15キロベース(kb)よりも大きい。いくつかの態様において、高分子量画分は、17.5キロベース(kb)よりも大きいか、または約17.5キロベース(kb)よりも大きい。いくつかの態様において、高分子量画分は、20キロベース(kb)よりも大きいか、または約20キロベース(kb)よりも大きい。
【0073】
いくつかの局面において、閾値は、導入されたポリヌクレオチドのサイズの約1、1.5、2、2.5、3、3.5、もしくは4倍であるか、または1、1.5、2、2.5、3、3.5、もしくは4倍であるか、または1、1.5、2、2.5、3、3.5、もしくは4倍よりも上である。例えば、いくつかの局面において、導入遺伝子配列を含有する導入されたポリヌクレオチドが、10 kbであるかまたは約10 kbである場合は、閾値は、導入されたポリヌクレオチドのサイズのおよそ2倍の、20 kbであるかまたは20 kbよりも上である。いくつかの局面において、高分子量画分を分離するための閾値を用いて、直鎖状相補DNA(cDNA)、自己組み込み体、末端反復配列(LTR)サークル、またはゲノム中に組み込まれていない他の残りの低分子量種もしくは分子などの、組み込まれていない配列を、高分子量種から分離することができる。
【0074】
いくつかの局面において、高分子量画分は、主として、導入遺伝子配列の組み込みの完了前または完了後に、製造プロセス中および/または操作された細胞中に存在し得る、組み込まれていないかつ/または残りのDNA分子よりも大きいDNA分子を含有する。いくつかの局面において、高分子量画分における導入遺伝子配列の存在、不在、および/または量を決定する工程のおかげで、導入遺伝子配列を含有する組み込まれていないかまたは残りの核酸分子のコピー数を勘定に含まずに、組み込まれた配列のコピー数を、正確に決定することができる。場合によっては、導入遺伝子配列を含有する組み込まれていないかまたは残りの核酸分子のコピー数が含まれることが、コピー数の過大評価または不正確な決定を結果としてもたらし得る。いくつかの局面において、特に、操作プロセスもしくは製造プロセスの早い段階中に、または拡大増殖させないプロセスもしくは短縮されたプロセスであるプロセスにおいて、組み込まれていないかまたは残りの分子の存在は、決定されるコピー数に影響を及ぼし得る。
【0075】
いくつかの態様において、方法は、例えば、閾値よりも小さいDNA分子を含有する、低分子量画分を分離するかまたは単離する工程を含む。いくつかの態様において、低分子量画分は、プラスミド、組み込まれていないDNAフラグメント、直鎖状相補DNA(cDNA)、自己組み込み体、末端反復配列(LTR)、またはゲノム中に組み込まれていない他の残りの種もしくは分子などの、サイズが閾値よりも小さいDNA分子を含有し得る。いくつかの局面において、低分子量画分における導入遺伝子配列の存在、不在、または量を、決定することができる。場合によっては、例えば、操作の進行を判定するため、および/または導入遺伝子配列を細胞中に導入するのに用いられた残りのベクターなどの、残りの核酸のコピー数を評価するために、組み込まれていないかまたは残りのDNA分子の存在、不在、および/または量が、製造または操作の様々な段階で決定される必要があり得る。
【0076】
いくつかの態様において、低分子量画分は、20キロベース(kb)よりも小さいかまたは約20キロベース(kb)よりも小さいDNA分子を含む。いくつかの態様において、高分子量画分は、サイズが20、19、18、17.5、17、16、15、14、13、12.5、12、11、もしくは10キロベース(kb)もしくはそれ以下よりも小さいか、または約20、19、18、17.5、17、16、15、14、13、12.5、12、11、もしくは10キロベース(kb)もしくはそれ以下よりも小さいDNA分子を含む。
【0077】
いくつかの態様において、高分子量画分または低分子量画分は、電気泳動、マイクロフルイディクス、またはクロマトグラフィーベースの方法を用いて、分離するかまたは単離することができる。いくつかの態様において、高分子量画分は、パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)またはサイズ排除クロマトグラフィーを用いて、分離するかまたは単離することができる。
【0078】
いくつかの態様において、高分子量画分は、パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)を用いて、分離されるかまたは単離される。いくつかの局面において、PFGEは、染色体DNAまたはゲノムDNAなどの、より大きな核酸分子の分解能を改善するために、電気泳動システムに交流電圧勾配を導入することを含む。いくつかの局面において、電気泳動システムの電圧は、3つの方向:ゲルの中心軸を通る1つ、およびいずれかの端で60度の角度で通る2つの間で周期的に切り換えられる。いくつかの局面において、PFGEによって核酸分子を分離するかまたは単離するための例示的なシステムおよび方法には、例えば、US 9599590;US 2017/0240882;またはUS 2017/0254774に記載されるものが含まれる。
【0079】
いくつかの態様において、高分子量画分は、電気泳動ベースの方法を用いて、分離されるかまたは単離される。いくつかの局面において、電気泳動は、電場の存在下での分離マトリックスを通した移動度を介して、電荷および/またはサイズによって生体分子を分離する。いくつかの態様において、電気泳動システムは、サイズまたは分子量に基づいて、核酸分子を含む特定の分析物を分画する、解析する、および収集するために用いることができる。いくつかの局面において、画分は、複数の分子のサブセットであるか、またはそれを含む。いくつかの局面において、画分は、サイズもしくは分子量によって、または、いくつかの局面においては、電場の印加によって本開示の緩衝液組成物を通して移動するように駆動された場合に、複数の他の分子または画分よりも速いかまたは遅い速度で移動するようにさせる任意の物理的特性(すなわち、電気泳動移動度)によって、定義するかまたは決定することができる。
【0080】
いくつかの局面において、PFGEなどの電気泳動は、器具またはシステムを用いて行うことができる。いくつかの局面において、器具またはシステムは、自動システムまたはハイスループットシステムである。PFGEを行うための例示的なシステムには、例えば、US 9599590;US 2017/0240882;もしくはUS 2017/0254774に記載されるもの、または、Pippin Prep、Blue Pippin、もしくはPippin HT(Sage Science);CHEF Mapper(登録商標) XA System、CHEF-DR(登録商標) III Variable Angle System、CHEF-DR II System(Bio-Rad);およびBiometra Rotaphor 8 System(Analytik Jena AG)などの、市販されている器具もしくはシステムが含まれる。
【0081】
いくつかの局面において、評価のための例示的なサンプルは、核酸、オリゴヌクレオチド、DNA分子、RNA分子、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの局面において、サンプルは、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。いくつかの局面において、サンプルは、養子細胞療法のために操作された細胞の溶解物などの、全細胞溶解物、または細胞溶解物のDNAもしくはタンパク質画分であることができる。
【0082】
いくつかの局面において、提供される態様は、養子細胞療法のために操作された細胞などの細胞からの、核酸分子の単離、分離、および解析を含む。いくつかの局面において、提供される態様は、遺伝子操作または製造プロセスの様々な段階または工程を経験した細胞からの、核酸分子の単離、分離、および解析を含む。いくつかの局面において、核酸分子は、リボヌクレオシド(アデノシン、グアノシン、ウリジン、もしくはシチジン;「RNA」)またはデオキシリボヌクレオシド(デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシチミジン、もしくはデオキシシチジン;「DNA」)、または、ホスホロチオアートおよびチオエステルなどの、それらの任意のホスホエステルアナログの、いずれかの一本鎖形態、または二本鎖ヘリックスにおける、リン酸エステルポリマー形態を含む。いくつかの局面において、核酸分子、特にDNAまたはRNA分子は、分子の一次構造および二次構造のみを指し、いずれかの特定の三次構造に限定はしない。いくつかの局面において、核酸分子は、直鎖状または環状のDNA分子(例えば、制限フラグメント)、プラスミド、および染色体において見出される二本鎖DNAを含むことができる。
【0083】
いくつかの態様において、サンプル由来の核酸は、ゲノムDNA、二本鎖DNA(dsDNA)、一本鎖DNA(ssDNA)、コードDNA(または相補DNA、cDNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、短干渉RNA(siRNA)、短ヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、一本鎖RNA、二本鎖RNA(dsRNA)、モルフォリノ、RNA干渉(RNAi)分子、ミトコンドリア核酸、葉緑体核酸、ウイルスDNA、ウイルスRNA、および別々の遺伝物質を有する他のオルガネラを含むことができる。いくつかの局面において、サンプル由来の核酸はまた、修飾された、合成の、または天然に存在しないヌクレオチド、構造エレメント、または他の代替的な/修飾された核酸化学物質、例えば、イノシンなどの塩基アナログ、インターカレーター(米国特許第4,835,263号)、およびマイナーグルーブバインダー(米国特許第5,801,115号)を含有する、核酸アナログも含むことができる。
【0084】
いくつかの態様において、高分子量画分または低分子量画分を単離するかまたは分離する工程の前に、サンプルを、正味の負電荷を付与する、ペプチドもしくはタンパク質を変性させる、またはDNAもしくはRNA分子を消化する試薬と、電気泳動システムにおける評価前に混合することができる。いくつかの局面において、サンプルを、検出の目的で、サンプルまたはその画分に蛍光特性、磁気特性、または放射性特性を付与する剤と混合することができる。いくつかの例において、dsDNAサンプルを、エチジウムブロマイドと混合して、電気泳動カセットにアプライし、サンプルの画分を、超高輝度緑色LEDを用いて検出する。
【0085】
いくつかの局面において、電気泳動システムなどの核酸サンプルを分離するかまたは単離するためのシステムは、自動かつ/またはハイスループットであることができる。いくつかの局面において、電気泳動システムは、電気泳動カセットなどの、使い捨ての消耗品または試薬を利用することができる。
【0086】
B. 核酸の存在、不在、または量の決定
いくつかの局面において、方法は、サンプル、例えば、操作された細胞を含む細胞の集団などの、1つまたは複数の細胞由来のデオキシリボ核酸(DNA)を含有するサンプルにおいて、導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程を含む。いくつかの局面において、方法は、サンプル、例えば、遺伝子操作または製造の1つまたは複数の段階または工程を経験している1つまたは複数の細胞由来のDNAを含有するサンプルにおいて、導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程を含む。いくつかの局面において、導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程は、核酸配列、例えば、特定のDNAの配列の存在、不在、または量を決定するための方法を用いて行うことができる。特に、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)または関連した方法などの、核酸配列を定量するために用いられる方法を、DNAを含有するサンプルにおける、または、DNAを含有するサンプルから分離されているかまたは単離されている、高分子量画分などの特定の画分における、導入遺伝子配列のコピー数の決定において使用することができる。いくつかの態様において、導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程は、例えば、核酸分子を定量するための下記の例示的なアッセイのいずれか1つを用いた、コピー数を決定することを含む。
【0087】
いくつかの局面において、特定の配列の存在、不在、および/または量は、導入遺伝子配列の全てまたは一部分に特異的に結合するかまたはそれを認識することができるプローブまたはプライマーを用いて、検出することができる。いくつかの態様において、コピー数は、導入遺伝子配列の一部分を特異的に検出することができるプローブ、または導入遺伝子配列の一部分を特異的に増幅することができるプライマー配列を用いて、決定することができる。いくつかの局面において、プローブまたはプライマーの配列は、細胞にとって異種、外因性、またはトランスジェニックである導入遺伝子配列の一部分などの、導入遺伝子配列の一部分を特異的に検出するか、結合するか、または認識することができる。いくつかの局面において、プローブまたはプライマーの配列は、細胞のゲノム中に組み込まれることになるか、または組み込まれる導入遺伝子配列の一部分などの、導入遺伝子配列の一部分を特異的に検出するか、結合するか、または認識することができる。いくつかの態様において、qPCRまたは他の核酸ベースの方法に用いられるプライマーまたはプローブは、組換えタンパク質、ならびに/または、調節エレメント、例えば、プロモーター、転写および/もしくは転写後調節エレメントもしくは応答エレメント、またはマーカー、例えば、サロゲートマーカーを含む、プラスミドおよび/もしくはベクターの他の構成成分もしくはエレメントをコードする核酸の結合、認識、および/または増幅に特異的である。いくつかの態様において、プライマーまたはプローブは、組換えタンパク質、および/または、転写後調節エレメントを含む調節エレメントなどの他の構成成分もしくはエレメントをコードする核酸配列に結合することができる。任意のいくつかの態様において、1つまたは複数のプライマーは、調節エレメント、例えば、組換えタンパク質をコードする核酸配列に機能的に連結された調節エレメントの配列に相補的であるか、またはそれを特異的に増幅することができる。いくつかの局面において、プローブまたはプライマーは、定量的PCR(qPCR)、デジタルPCR(dPCR)、またはドロップレットデジタルPCR(ddPCR)などの、導入遺伝子配列の存在、不在、および/または量を決定するための例示的な方法に用いることができる。
【0088】
いくつかの局面において、存在、不在、または量を決定する工程は、1つもしくは複数の細胞における、または1つもしくは複数の細胞を含有する生物学的サンプルにおける、導入遺伝子配列の量の決定、例えば、導入遺伝子配列の質量、重量、濃度、またはコピー数を決定することを含む。いくつかの局面において、核酸配列の存在、不在、もしくは量を決定する工程、または導入遺伝子配列の質量、重量、濃度、もしくはコピー数を評価する工程は、細胞の集団の一部分または生物学的サンプルの一部分において行うことができ、正規化し、平均し、かつ/または外挿して、サンプル全体または細胞の集団全体における存在、不在、または量を決定することができる。いくつかの局面において、導入遺伝子配列の量は、導入遺伝子配列の質量、重量、濃度、またはコピー数を含むことができる。いくつかの局面において、質量、重量、濃度、またはコピー数は、平均の質量、重量、濃度、またはコピー数である。いくつかの局面において、質量、重量、濃度、またはコピー数は、単位当たりの、例えば、細胞当たりの、二倍体ゲノム当たりの、体積当たりの、質量またはその等価物当たりの、平均の質量、重量、濃度、またはコピー数であるか、または、その他の方法で、単位当たりになるように正規化されるか、外挿されるか、または平均されている。
【0089】
いくつかの態様において、導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程は、1つまたは複数の細胞における二倍体ゲノム当たりのまたは細胞当たりの、導入遺伝子配列の質量、重量、濃度、またはコピー数を決定することを含む。いくつかの態様において、1つまたは複数の細胞は、細胞の集団を含み、該集団のうちの複数の細胞は、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列を含む。提供される任意のいくつかの態様において、1つまたは複数の細胞は、細胞の集団を含み、該集団のうちの複数の細胞は、組換えタンパク質、例えば組換え受容体をコードする核酸配列を含む、導入遺伝子配列を含む疑いがある。いくつかの態様において、コピー数は、細胞の集団中での二倍体ゲノム当たりのまたは細胞当たりの平均(average)または平均(mean)コピー数である。
【0090】
いくつかの局面において、コピー数を決定する工程は、1つもしくは複数の細胞中または生物学的サンプル中に存在する、導入遺伝子配列のコピーの数を決定することを含む。いくつかの局面において、コピー数は、平均(average)または平均(mean)コピー数として表現することができる。いくつかの局面において、特定の組み込まれた導入遺伝子のコピー数は、細胞当たりの(導入遺伝子配列を含有する)組み込み体の数を含む。いくつかの局面において、特定の組み込まれた導入遺伝子のコピー数は、二倍体ゲノム当たりの(導入遺伝子配列を含有する)組み込み体の数を含む。いくつかの局面において、導入遺伝子配列のコピー数は、細胞当たりの組み込まれた導入遺伝子配列の数として表現される。いくつかの局面において、導入遺伝子配列のコピー数は、細胞の特定のタイプ当たりの、例えば、特定の表現型マーカーを発現する細胞当たりの、または導入された導入遺伝子によってコードされる組換えタンパク質を発現する細胞当たりの、組み込まれた導入遺伝子配列の数として表現される。いくつかの局面において、導入遺伝子配列のコピー数は、二倍体ゲノム当たりの組み込まれた導入遺伝子配列の数として表現される。いくつかの局面において、1つまたは複数の細胞は、細胞の集団を含み、該集団のうちの複数の細胞は、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列を含む。いくつかの態様において、コピー数は、細胞の集団中での二倍体ゲノム当たりのまたは細胞当たりの平均(average)または平均(mean)コピー数である。
【0091】
いくつかの態様において、導入遺伝子配列の量を決定する工程は、1つまたは複数の細胞から単離されたDNAの質量または重量当たりの、導入遺伝子配列の質量、重量、濃度、またはコピー数を評価することを含む。いくつかの局面において、導入遺伝子配列の質量、重量、濃度、またはコピー数は、1つまたは複数の細胞、例えば、対象から得られた生物学的サンプルにおける、または操作プロセスを経験中である1つもしくは複数の細胞における、1つまたは複数の細胞から単離されたDNA 1マイクログラム当たりで表現される。いくつかの態様において、導入遺伝子配列の量を決定する工程は、1つまたは複数の細胞から単離されたDNA 1マイクログラム当たりの、導入遺伝子配列のマイクログラムでの質量または重量を評価することを含む。
【0092】
いくつかの態様において、導入遺伝子配列の量を決定する工程は、1つもしくは複数の細胞当たりの、任意で、CD3+、CD4+、および/もしくはCD8+細胞当たりの、ならびに/または組換えタンパク質を発現する細胞当たりの、導入遺伝子配列の質量、重量、濃度、またはコピー数を評価することを含む。いくつかの態様において、導入遺伝子配列の量を決定する工程は、1つもしくは複数の細胞当たりの、任意で、特定の表現型マーカーを発現する細胞当たりの、例えば、任意で、CD3+、CD4+、および/もしくはCD8+細胞当たりの、生細胞、活性化カスパーゼ陰性細胞(例えば、aCas3-)、もしくはCD45+細胞当たりの、ならびに/または組換えタンパク質を発現する細胞当たりの、導入遺伝子配列の質量、重量、濃度、またはコピー数を評価することを含む。いくつかの局面において、細胞上に発現している表面マーカーまたは表現型は、細胞ベースの方法を用いて、例えば、フローサイトメトリーまたは免疫染色によって決定することができる。いくつかの局面において、組換えタンパク質を発現する細胞は、細胞ベースの方法を用いて、例えば、フローサイトメトリーまたは免疫染色によって決定することができる。いくつかの局面において、導入遺伝子配列の量は、CD3+、CD4+、および/もしくはCD8+細胞などの特定の細胞の数に対して、ならびに/または組換えタンパク質を発現する細胞当たりに、またはサンプルにおける細胞の総数当たりもしくは操作プロセスを経験している細胞の総数当たりなどの細胞の総数当たりに、正規化することができる。いくつかの局面において、導入遺伝子配列の量は、特定の表現型マーカーを発現する細胞、例えば、CD3+、CD4+、および/もしくはCD8+細胞、生細胞、活性化カスパーゼ陰性細胞(例えば、aCas3-)、もしくはCD45+細胞などの特定の細胞の数に対して、ならびに/または組換えタンパク質を発現する細胞当たりに(例えば、CAR発現細胞当たりに)、またはサンプルにおける細胞の総数当たりもしくは操作プロセスを経験している細胞の総数当たりなどの細胞の総数当たりに、正規化することができる。
【0093】
いくつかの態様において、導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程は、生物学的サンプルにおける二倍体ゲノム当たりのまたは細胞当たりの、導入遺伝子配列の質量、重量、濃度、またはコピー数を評価することを含む。いくつかの態様において、コピー数は、生物学的サンプルにおける1つまたは複数の細胞中の二倍体当たりのまたは細胞当たりの、平均(average)または平均(mean)コピー数である。
【0094】
いくつかの態様において、導入遺伝子配列の量を決定する工程は、生物学的サンプルの体積当たりの、任意で生物学的サンプル1マイクロリットル当たりのまたは1ミリリットル当たりの、導入遺伝子配列の質量、重量、濃度、またはコピー数を評価することを含む。
【0095】
いくつかの態様において、導入遺伝子配列の量を決定する工程は、対象の体重または体表面積当たりの、導入遺伝子配列の質量、重量、濃度、またはコピー数を評価することを含む。
【0096】
いくつかの態様において、導入遺伝子配列の量を決定する工程は、高分子量画分における導入遺伝子配列の質量、重量、濃度、またはコピー数を評価すること、および、該質量、重量、濃度、またはコピー数を、高分子量画分における参照遺伝子の質量、重量、濃度、もしくはコピー数に対して、または導入遺伝子配列の既知の量、濃度、質量、重量、濃度、もしくはコピー数を含有するサンプルに基づく標準曲線などの標準曲線に対して正規化することを含む。
【0097】
いくつかの態様において、決定されたコピー数は、正規化値として表現される。いくつかの態様において、決定されたコピー数は、ゲノム当たりのまたは細胞当たりの、導入遺伝子配列のコピーの数として定量される。いくつかの局面において、T細胞などの典型的な体細胞は、二倍体ゲノムを含有するため、ゲノム当たりの値は、二倍体ゲノム当たりの導入遺伝子配列のコピーとして表現される。いくつかの局面において、決定されたコピー数は、細胞のゲノムにおける公知の参照遺伝子のコピー数に対して正規化することができる。いくつかの局面において、参照遺伝子は、RRP30(リボヌクレアーゼPタンパク質サブユニットp30をコードする)、18S rRNA(18SリボソームRNA)、28S rRNA(28SリボソームRNA)、TUBA(α-チューブリン)、ACTB(β-アクチン)、β2M(β2-マイクログロブリン)、ALB(アルブミン)、RPL32(リボソームタンパク質L32)、TBP(TATA配列結合タンパク質)、CYCC(シクロフィリンC)、EF1A(伸長因子1α)、GAPDH (グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ)、HPRT(ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ)、またはRPII(RNAポリメラーゼII)である。いくつかの態様において、決定されたコピー数は、DNA 1マイクログラム当たりの導入遺伝子配列のコピーとして定量される。
【0098】
いくつかの局面において、コピー数は、複数または集団の操作された細胞などの、複数または集団の細胞由来の、平均(average)もしくはは平均(mean)または中央コピー数である。いくつかの局面において、コピー数は、複数または集団の操作された細胞などの、複数または集団の細胞由来の、平均(average)または平均(mean)コピー数である。いくつかの局面において、平均(average)または平均(mean)コピー数は、操作プロセスもしくは製造プロセスの1つもしくは複数の工程を経験している複数もしくは集団の細胞などの、複数もしくは集団の細胞から、または対象への投与のための細胞組成物などの細胞組成物において、決定される。いくつかの局面において、正規化された平均コピー数は、例えば、二倍体ゲノムに2コピーで存在する既知遺伝子などの、参照遺伝子に対して正規化された導入遺伝子配列の平均(average)または平均(mean)コピー数として決定される。いくつかの局面において、典型的には二倍体ゲノム当たりに2コピーで存在する参照遺伝子に対する正規化は、二倍体細胞などの細胞におけるコピー数に対応し得る。したがって、いくつかの局面では、正規化された平均(average)または平均(mean)コピー数は、複数または集団の細胞、例えば、典型的には二倍体ゲノムを有するT細胞の間での、検出された導入遺伝子配列の平均(average)または平均(mean)コピー数に対応し得る。
【0099】
いくつかの態様において、導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって行われる。いくつかの態様において、PCRは、下記のいずれかなどの、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)、デジタルPCR、またはドロップレットデジタルPCRである。いくつかの態様において、導入遺伝子配列の存在、不在、または量は、ドロップレットデジタルPCRによって決定される。いくつかの態様において、PCRは、導入遺伝子配列の少なくとも一部分に相補的であるか、またはそれを特異的に増幅することができる1つまたは複数のプライマー、および場合によっては、参照遺伝子の少なくとも一部分に相補的であるか、またはそれを特異的に増幅することができる1つまたは複数のプライマーを用いて行う。
【0100】
いくつかの局面では、画分の1つもしくは複数において、および/または複数のもしくは集団の操作された細胞から単離された総DNAなどの、特定のサンプルにおいて決定された導入遺伝子配列の存在、不在、および/または量を、例えば、下記のセクションI.C.に記載されるように、組み込まれていないかまたは残りの分子の比率または数などの、関心対象の特定の比または比率を算出するための基礎として用いることができる。
【0101】
1. 定量的PCR(qPCR)
いくつかの態様において、操作された細胞のゲノム中への組み込みについての、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列などの導入遺伝子配列の存在、不在、または量は、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR;場合によっては、リアルタイムPCRとしても公知)によって決定される。
【0102】
いくつかの局面において、qPCRは、リアルタイムで、各サイクル後の産物の定量を伴い、反応が進行しながら測定される増幅産物の蓄積を検出するために用いることができる。したがって、いくつかの局面では、qPCRを、サンプルにおいて、導入遺伝子配列などの特定の核酸配列のコピー数を決定するために用いることができる。いくつかの局面において、qPCRは、産物DNAの量の増加と共に増加した蛍光を生じる、各反応ウェルにおける蛍光レポーター分子を使用する。いくつかの局面において、使用される蛍光化学物質は、DNA結合色素、および蛍光標識された配列特異的なプライマーまたはプローブを含む。いくつかの局面において、qPCRは、各サンプルを指定された波長で照射して、励起された蛍光体によって放射される蛍光を検出する能力を有する、専用のサーマルサイクラーを使用する。いくつかの局面において、測定される蛍光は、アンプリコンの総量に比例し;経時的な蛍光の変化が、各サイクルにおいて生成されたアンプリコンの量を算出するために用いられる。
【0103】
いくつかの局面において、qPCRにより、幅広いダイナミックレンジにわたって精度および高感度を伴う、特定のDNA(増幅標的配列、例えば、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列)のコピーの初期数の決定が可能になる。いくつかの局面において、qPCRは、定性的(配列の存在もしくは不在)または定量的(コピー数)である結果を生じることができる。
【0104】
2. デジタルPCR(dPCR)
いくつかの態様において、操作された細胞のゲノム中への組み込みについての、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列などの、導入遺伝子配列の存在、不在、または量は、デジタルポリメラーゼ連鎖反応(dPCR)を用いて決定される。いくつかの局面において、dPCRにより、高い精度および感度を伴う、導入遺伝子配列などの特定の配列の存在、不在、または量の決定が可能になる。
【0105】
いくつかの態様において、dPCRは、核酸を検出し、かつ定量するための方法であり、標的核酸分子の正確な定量解析および高感度の検出を可能にする。いくつかの局面において、dPCRは、連続した個々のPCR反応(またはパーティション)へのDNAの限界希釈を含む。いくつかの局面において、限界希釈は、評価される鋳型核酸、例えば、導入遺伝子配列のランダムな分布に基づく、ナノフルイディクスおよびエマルジョン化学でのパーティショニングの原理、ならびに陽性パーティションの所与の比率について存在するDNAの量を測定するポアソン統計を使用することができる。いくつかの局面において、dPCRは、一般に線形であり、かつ高感度で、非常に少量のDNAを検出するかまたは定量することができる。いくつかの局面において、dPCRにより、標準曲線を伴わない単一分子計数法を用いた、DNAサンプルの絶対的定量が可能になり、絶対的定量は、ウェル当たり単一のパーティションについてのPCRから得ることができる(Pohl et al., (2004) Expert Rev. Mol. Diagn. 4(1), 41-47を参照されたい)。
【0106】
いくつかの局面において、dPCR法を、何千ものパーティションなどの複数のパーティションを作製して、複数の個々のPCR反応を並行して行うために用いることができる。いくつかの局面において、サンプルは、サンプル内の個々の核酸分子が多くの別々の領域内に局在化され、濃縮されるように、パーティショニングされる。マイクロウェルプレート、キャピラリー、マイクロフルイディクスもしくはナノフルイディクス、油エマルジョン、エマルジョン化学、および/または核酸結合表面を有する小型化されたチャンバーのアレイを、サンプルをパーティショニングするために用いることができる。dPCRを行うための例示的な組成物は、鋳型核酸(例えば、操作された細胞から単離されたDNA)、蛍光消光プローブ、プライマー、ならびにDNAポリメラーゼ、dNTPs、MgCl2、および最適濃度の反応緩衝液を含有するPCRマスターミックスを含むことができる。PCR溶液を、より小さな反応に分け、次いで、PCRを個別に行わせる。サンプルのパーティショニングにより、分子集団がポアソン分布に従うことを仮定し、したがって多数の標的分子が単一のパーティションに存在する可能性を説明することによって、異なる分子の数を推定することができる。
【0107】
いくつかの局面において、dPCRは、デジタル法による結果の解析を含む(結果として生じたシグナルが、二進値:「0」または「1」を有するため)。いくつかの局面において、dPCRを、大量に解析するため、様々なサンプルを同時に解析するために用いることができ、多数の評価を、同時に行うことができる。いくつかの局面において、デジタルPCRについて、配列の平均コピー数に希釈されるように調製された(例えば、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列を潜在的に含有する)サンプル配列鋳型を含む各パーティションは、0.5~1である。ポアソン分布で現れるシグナルに対して、信頼可能な定量の結果を得るために、希釈は重要である。各ウェルにおいて、試験される配列(例えば、導入遺伝子配列の一部分)に特異的な増幅プライマーおよび蛍光プローブを、分配して、エマルジョンPCRを行う。いくつかの局面において、1の配列コピー数を有するサンプルは、ウェル中に分配されて、増幅後にシグナルを示すため、蛍光シグナルを示すウェルは、「1」の値として計数され、配列のコピーを含有しないサンプルは、ウェル中に分配されて、増幅がないことによりシグナルを示さないため、シグナルを示さないウェルは、「0」として計数される。ポアソンの小数法則を用いて、サンプル内の標的分子の分布を、正確に見積もることができ、PCR産物における標的配列の絶対的定量が可能になる。
【0108】
dPCRのための例示的な市販されている器具またはシステムには、Raindrop(商標) Digital PCR System(Raindance(商標) Technologies);QX200(商標) Droplet Digital(商標) PCR System(Bio-Rad);BioMark(商標) HD SystemおよびqdPCR 37K(商標) IFC(Fluidigm Corporation)、ならびにQuantStudio(商標) 3D Digital PCR System(Life Technologies(商標))が含まれる(例えば、Huggett et al. (2013) Clinical Chemistry 59: 1691-1693;Shuga, et al. (2013) Nucleic Acids Research 41(16): e159;Whale et al. (2013) PLoS One 3: e58177を参照されたい)。
【0109】
3. ドロップレットデジタルPCR(ddPCR)
いくつかの態様において、操作された細胞のゲノム中への組み込みについての、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列などの導入遺伝子配列の存在、不在、または量は、ドロップレットデジタルポリメラーゼ連鎖反応(ddPCR)を用いて決定される。ddPCRは、水-油エマルジョン化学を通して、PCR溶液をより小さな反応に分けるかまたはパーティショニングして、数々のドロップレットを作製する、デジタルPCRのタイプである。いくつかの局面において、油中水型ドロップレットを作製するために、特定の界面活性剤を用いることができる。(例えば、Hindson et al., (2011) Anal Chem 83(22): 8604-8610;Pinheiro et al., (2012) Anal Chem 84, 1003-1011を参照されたい)。いくつかの局面において、各々個々のドロップレットを、その後、個々の反応として行わせる。いくつかの局面において、PCRサンプルを、ナノリットルサイズのサンプル中にパーティショニングして、油滴中にカプセル化する。いくつかの局面において、油滴は、ウェルの各々に対して真空を適用するドロップレットジェネレーターを用いて作られる。例示的な場合には、20μLのサンプル体積から、個々の反応についておよそ20,000個の油滴を作ることができる。
【0110】
いくつかの局面において、PCR後に、各ドロップレットを、解析するかまたは読み取って、元のサンプルにおけるPCR陽性ドロップレットの割合を決定する(例えば、蛍光シグナルに基づいて各ドロップレットに割り当てられた二進法の「0」または「1」)。次いで、データを、ポアソン統計を用いて解析して、元のサンプルにおける標的DNA濃度を決定する。ドロップレット当たりの標的分子のコピー(CPD)のポアソン分布は、関数CPD=-ln(1-p)によって表される、蛍光ドロップレットの割合(p)に基づいて決定することができる。このモデルは、少なくとも1つの標的分子を含有するサンプルの数が増加するにつれて、1つよりも多い標的分子を含有するサンプルの確立が増加すると、予測することができる。
【0111】
C. 例示的な応用
いくつかの局面において、提供される方法は、核酸配列の組み込みおよび/または操作された細胞の特徴決定を評価するための種々の応用について、操作された細胞および操作された細胞を含有する細胞組成物を評価するために用いることができる。例えば、方法は、導入遺伝子配列などの核酸の組み込み、および/または操作された細胞を特徴決定するために、操作後に、製剤化の前に、投与の前におよび/もしくは投与、ならびに/または操作プロセスもしくは製造プロセスの様々な段階および/もしくは時点で用いることができる。いくつかの態様において、方法は、1つまたは複数の操作された細胞を含有する細胞組成物において用いることができる。
【0112】
いくつかの態様において、提供される方法は、操作された細胞または操作された細胞を含有する細胞組成物が、注入のために放出される、対象への投与の用意ができている、および/または対象に投与される前を含む、製造プロセス中の1つまたは複数の段階または時点で行うことができる。いくつかの態様において、操作された細胞または細胞組成物は、例えば、操作された細胞または細胞組成物の一部分、画分、および/またはサンプルに対して、提供される方法の1つまたは複数の評価が行われた後に、注入のために放出され、対象への投与の用意ができ、および/または対象に投与される。特定の態様において、操作された細胞または細胞組成物は、細胞が、1つまたは複数の方法の完了後に、安全である、例えば、無菌および/もしくはフリーである、かつ/または所望の生物学的特徴を有する、例えば、組み込まれた導入遺伝子配列の必要とされる閾値コピー数よりも少なくまたは多くを含有すると判定された後に、注入のために放出され、対象への投与の用意ができ、および/または対象に投与される。
【0113】
いくつかの局面において、導入遺伝子配列を含有するポリヌクレオチドは、ウイルス形質導入などの様々な送達法を用いて、細胞中に導入される。いくつかの態様において、養子細胞療法のために操作された細胞などの、操作された細胞は、導入遺伝子配列によってコードされる組換えタンパク質の発現のレベルの決定、および/または細胞のゲノム中に組み込まれている、例えば、細胞のゲノム中に安定に組み込まれている導入遺伝子配列のコピーの数の決定など、様々な特徴および特性について、モニターまたは評価される必要がある。いくつかの局面において、そのような評価は、操作プロセスまたは製造プロセス中の1つまたは複数の時点で行うことができる。
【0114】
いくつかの態様において、提供される方法を、治療のための、疾患または状態を有する対象などの、対象に対する操作された細胞または細胞組成物の投与後に、薬物動態パラメータおよび/または操作された細胞の生物学的利用能を評価するかまたは決定するために用いることができる。いくつかの局面において、提供される方法は、組換え受容体などの組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列が導入された操作された細胞などの、操作された細胞の持続性、拡大増殖、および/または数を特徴決定するための代理として用いることができる。
【0115】
いくつかの局面において、下記は、提供される方法の例示的な応用である。いくつかの局面において、操作された細胞または操作された細胞組成物を評価するかまたは特徴決定するための、方法の変形および/または他の方法との組み合わせもまた、細胞療法のための操作された細胞の特性および特徴を決定するために用いることができる。
【0116】
1. 導入遺伝子配列の組み込みの評価
いくつかの局面において、組換え受容体などの組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列などの、導入遺伝子配列のゲノム組み込みを評価するための方法が提供される。いくつかの局面において、提供される方法は、例えば、遺伝子操作用の、細胞中への組み込みのための条件下での導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドの導入後に、細胞のゲノム中への導入遺伝子配列の組み込みのタイミング、程度、または進行を評価するために用いることができる。いくつかの態様において、いくつかの局面において、提供される方法は、細胞中への組み込みのための条件下での導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドの導入後に、操作プロセスまたは製造プロセスの1つまたは複数の工程または段階の最中または後に、細胞のゲノム中への導入遺伝子配列の組み込みのタイミング、程度、または進行を評価するために用いることができる。いくつかの局面において、組み込まれた導入遺伝子配列の評価されたコピー数は、複数または集団の細胞における組み込まれた導入遺伝子配列の平均コピー数である。
【0117】
いくつかの態様において、方法は、以下の工程を含む:(a)10キロベース(kb)よりも大きいかまたは約10キロベース(kb)よりも大きいデオキシリボ核酸(DNA)の高分子量画分を、1つまたは複数の細胞より単離されたDNAから分離する工程であって、該1つまたは複数の細胞が、組換えタンパク質をコードする核酸配列を含む導入遺伝子配列を含む少なくとも1つの操作された細胞を含むか、またはそれを含む疑いがある、工程;(b)該高分子量画分から、該1つまたは複数の細胞のゲノム中に組み込まれた導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程。いくつかの態様において、高分子量画分における導入遺伝子配列は、1つまたは複数の細胞のゲノム中に組み込まれている導入遺伝子配列に相当する。
【0118】
いくつかの態様において、方法は、以下の工程を含む:(a)10キロベース(kb)よりも大きいかまたは約10キロベース(kb)よりも大きいデオキシリボ核酸(DNA)の高分子量画分を、1つまたは複数の細胞より単離されたDNAから分離する工程であって、該1つまたは複数の細胞が、組換えタンパク質をコードする核酸配列を含む導入遺伝子配列を含む少なくとも1つの操作された細胞を含むか、またはそれを含む疑いがある、工程;および(b)該高分子量画分における導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定し、それによって、該1つまたは複数の細胞のゲノム中に組み込まれた導入遺伝子配列を評価する工程。
【0119】
任意のいくつかの態様において、高分子量画分における導入遺伝子配列は、1つまたは複数の細胞のゲノム中に組み込まれている導入遺伝子配列に相当する。提供される任意のいくつかの態様において、(b)における1つまたは複数の細胞のゲノム中に組み込まれた導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程は、高分子量画分における導入遺伝子配列の質量、重量、またはコピー数を決定することを含む。
【0120】
また、導入遺伝子配列のゲノム組み込みを評価するための方法が、本明細書において提供される。任意のいくつかの態様において、方法は、以下の工程を含む:(a)パルスフィールドゲル電気泳動によって、10キロベース(kb)よりも大きいかまたは約10キロベース(kb)よりも大きいデオキシリボ核酸(DNA)の高分子量画分を、細胞の集団より単離されたDNAから分離する工程であって、該細胞の集団が、組換えタンパク質をコードする核酸配列を含む導入遺伝子配列を各々が含むか、またはそれを含む疑いがある、複数の操作された細胞を含む、工程;および(b)該高分子量画分における導入遺伝子配列の配列の二倍体ゲノム当たりのまたは細胞当たりの、平均(average)または平均(mean)コピー数を決定し、それによって、該細胞の集団のうちの複数の操作された細胞のゲノム中に組み込まれた導入遺伝子配列を評価する工程。
【0121】
また、導入遺伝子配列のゲノム組み込みを評価するための方法も、本明細書において提供される。任意のいくつかの態様において、方法は、以下の工程を含む:(a)パルスフィールドゲル電気泳動によって、10キロベース(kb)よりも大きいかまたは約10キロベース(kb)よりも大きいデオキシリボ核酸(DNA)の高分子量画分を、細胞の集団より単離されたDNAから分離する工程であって、該細胞の集団が、組換えタンパク質をコードする核酸配列を含む導入遺伝子配列を各々が含むか、またはそれを含む疑いがある、複数の操作された細胞を含む、工程;および(b)該高分子量画分から、該細胞の集団のうちの複数の操作された細胞のゲノム中に組み込まれた導入遺伝子配列の二倍体ゲノム当たりのまたは細胞当たりの、平均(average)または平均(mean)コピー数を決定する工程。
【0122】
いくつかの局面において、組み込まれた核酸配列のコピー数は、細胞または複数もしくは集団の細胞から得られたデオキシリボ核酸(DNA)サンプルの高分子量画分中に存在する、導入遺伝子配列の全てまたは一部分などの、特定の核酸配列のコピー数の評価によって決定することができる。いくつかの局面において、高分子量画分は、ゲノムDNAまたはゲノムDNAフラグメントを含有し、DNAサンプル中に存在し得る組み込まれていないかまたは残りの核酸種を、排除するかまたは分離する。いくつかの局面において、高分子量画分、例えば、約10、11、12、12.5、13、14、15、16、17、17.5、18、19、20、25、もしくは30キロベース(kb)またはそれ以上などの閾値よりも上であるDNAサンプル。いくつかの態様において、閾値は、10、12.5、15、17.5、もしくは20キロベース(kb)もしくはそれ以上よりも大きいか、または約10、12.5、15、17.5、もしくは20キロベース(kb)もしくはそれ以上よりも大きい。いくつかの態様において、高分子量画分は、15キロベース(kb)よりも大きいか、または約15キロベース(kb)よりも大きい。いくつかの態様において、高分子量画分は、17.5キロベース(kb)よりも大きいか、または約17.5キロベース(kb)よりも大きい。いくつかの態様において、高分子量画分は、20キロベース(kb)よりも大きいか、または約20キロベース(kb)よりも大きい。
【0123】
いくつかの態様において、方法は、デオキシリボ核酸(DNA)を、細胞のゲノム中への組み込みのための条件下で導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドが導入されている細胞から単離する工程、および、10キロベース(kb)よりも大きいかまたは約10キロベース(kb)よりも大きい高分子量画分を、単離されたDNAから分離する工程を含む。いくつかの態様において、方法は、10キロベース(kb)よりも大きいかまたは約10キロベース(kb)よりも大きい高分子量画分を、細胞より単離されたデオキシリボ核酸(DNA)から分離する工程を含み、該分離する工程の前に、細胞は、細胞のゲノム中への導入遺伝子配列の組み込みのための条件下で、導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドが導入されている。いくつかの局面において、提供される方法は、分離された高分子量画分における導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程を含む。
【0124】
いくつかの態様において、方法は、デオキシリボ核酸(DNA)を、細胞のゲノム中への組み込みのための条件下で導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドが導入されている細胞から単離する工程;10キロベース(kb)よりも大きいかまたは約10キロベース(kb)よりも大きい高分子量画分を、単離されたDNAから分離する工程;高分子量画分における導入遺伝子配列の存在、不在、またはコピー数を決定する工程を含む。
【0125】
いくつかの局面において、組み込まれた導入遺伝子配列の割合は、(PFGE後のddPCR、例えば、本明細書に記載される組み込まれたベクターコピー数(iVCN)アッセイによって決定されるような)組み込まれたコピー数を、(PFGEを伴わないddPCRによって、例えば、標準的なベクターコピー数(VCN)アッセイによって決定されるような)総コピー数で割ることによって決定される。いくつかの局面において、例えば、参照遺伝子のコピー数に対して正規化されたか、またはタンパク質発現を検出する方法によって検出されるような組換え受容体発現と比較された、例えば、フローサイトメトリーによって評価されるような集団中のCAR+細胞の数と比較された、他の測定単位を、比較または正規化のために用いることができる。
【0126】
いくつかの局面において、組換え受容体などの組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列などの、導入遺伝子配列のゲノム組み込みを評価するための方法が提供される。いくつかの局面において、組換え受容体などの組換えタンパク質をコードする核酸配列を含有する、導入遺伝子配列のゲノム組み込みを評価するための方法が提供される。いくつかの局面において、組換えタンパク質をコードする核酸配列に連結されている、調節エレメント、例えば、プロモーター、転写および/もしくは転写後調節エレメントもしくは応答エレメント、またはマーカー、例えば、サロゲートマーカーを含む導入遺伝子配列などの、導入遺伝子配列のゲノム組み込みを評価するための方法が提供される。任意のいくつかの態様において、導入遺伝子配列は、組換えタンパク質をコードする核酸配列に連結された調節エレメントを含む。いくつかの局面において、提供される方法は、例えば、遺伝子操作用の、細胞中への組み込みのための条件下での導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドの導入後に、例えば、細胞のゲノム中への導入遺伝子配列の組み込みによる、遺伝子操作のタイミング、程度、または進行を評価するために用いることができる。いくつかの局面において、組み込まれた導入遺伝子配列の評価されるコピー数は、複数または集団の細胞における組み込まれた導入遺伝子配列の平均コピー数である。いくつかの態様において、細胞は、導入遺伝子配列をコードするポリヌクレオチドが導入されている細胞の集団中に存在し、方法は、集団における複数の細胞に対して行われる。
【0127】
いくつかの局面において、提供される方法は、導入遺伝子配列が導入される細胞のゲノム中への導入された導入遺伝子配列の組み込みなどの、遺伝子操作のタイミング、程度、または進行を決定し、比較するために、様々な時点、工程、もしくは段階で、または様々な異なるサンプルを用いて、行うことができる。いくつかの局面において、提供される方法は、例えば、導入遺伝子配列をコードするポリヌクレオチドの導入後の様々な時点でDNAサンプルが得られるタイムコース実験を介して、導入遺伝子配列組み込みのタイミングおよび程度を評価するために用いることができる。いくつかの局面において、方法は、操作された細胞組成物のための操作プロセスまたは製造プロセスの様々な段階で行うことができる。例えば、提供される方法は、拡大増殖させる操作プロセスまたは拡大増殖させない操作プロセスの様々な段階で行うことができる。
【0128】
いくつかの局面において、ポリヌクレオチドの導入は、本明細書におけるセクションII.CおよびII.Dに記載される方法などの、本明細書に記載される方法のいずれかによって行われる。いくつかの局面において、ポリヌクレオチドの導入は、ウイルス形質導入によって行われる。いくつかの局面において、ポリヌクレオチドの導入は、物理的送達法によって、任意でエレクトロポレーションによって行われる。
【0129】
いくつかの局面において、方法は、組み込みの大部分または実質的に全てが完了する時点を決定するために用いることができる。いくつかの局面において、この時点を、例えば、本明細書で提供される方法に従って、養子細胞療法のために操作された細胞組成物などの、操作された細胞組成物において、組み込まれたコピー数を評価するために用いることができる。いくつかの局面において、方法を、組み込みの大部分もしくは実質的に全てが完了していない、かつ/または組み込まれていない残りの配列が細胞もしくは細胞組成物中に存在する時点を決定するために用いることができる。
【0130】
いくつかの局面において、方法は、組み込みの大部分または実質的に全てが完了する、導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドの導入後の細胞のインキュベーションの適した長さを決定するために用いることができる。いくつかの局面において、方法は、組み込みを最大化することができるインキュベーションの適した長さの決定により、操作された細胞の消耗がさらに低減することを可能にする。いくつかの局面において、細胞または集団もしくは複数の細胞は、導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドの細胞中への導入後に、48、54、60、66、または72時間超にわたり、25℃よりも高い温度でインキュベートされない。いくつかの局面において、細胞は、導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドの細胞中への導入後に、72時間超にわたり、25℃よりも高い温度でインキュベートされない。いくつかの局面において、細胞は、導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドの細胞中への導入後に、72時間超にわたり、約30℃よりも高く、かつ約40度よりも低い温度でインキュベートされない。
【0131】
いくつかの態様において、細胞は、ポリヌクレオチドの導入、ならびに導入遺伝子配列の存在、不在、および/または量の決定の後に、凍結保存されない。
【0132】
いくつかの局面において、以下の工程を含む、導入遺伝子配列のゲノム組み込みを評価するための方法が提供される:10キロベース(kb)よりも大きいかまたは約10キロベース(kb)よりも大きい高分子量画分を、細胞より単離されたデオキシリボ核酸(DNA)から分離する工程であって、該分離する工程の前に、細胞が、ウイルス形質導入による細胞のゲノム中への導入遺伝子配列の組み込みのための条件下で、導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドが導入されており、かつ該細胞が、導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドの細胞中への導入後に、48、54、60、66、または72時間超にわたり、25℃よりも高い温度でインキュベートされない、工程;および、該高分子量画分における導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程。
【0133】
いくつかの局面において、以下の工程を含む、導入遺伝子配列のゲノム組み込みを評価するための方法が提供される:デオキシリボ核酸(DNA)を、ウイルス形質導入による細胞のゲノム中への組み込みのための条件下で、導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドが導入されている細胞から単離する工程であって、該細胞が、導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドの細胞中への導入後に、48、54、60、66、または72時間超にわたり、25℃よりも高い温度でインキュベートされない、工程;10キロベース(kb)よりも大きいかまたは約10キロベース(kb)よりも大きい高分子量画分を、単離されたDNAから分離する工程;および、該高分子量画分における導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程。
【0134】
2. 組み込まれていない残りのDNAの数の評価
いくつかの局面において、また、組み込まれていない残りの導入遺伝子配列を評価するための方法も提供される。いくつかの態様において、方法は、以下の工程を含む、方法のいずれかの工程を行うことを含む:デオキシリボ核酸(DNA)を、細胞のゲノム中への組み込みのための条件下で、導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドが導入されている細胞から単離する工程、および、例えば10キロベース(kb)よりも大きいかまたは約10キロベース(kb)よりも大きい、本明細書に記載される閾値よりも上のDNAサンプルなどの、高分子量画分を、単離されたDNAから分離する工程;該高分子量画分における導入遺伝子配列の質量、重量、濃度、またはコピー数を決定し、それによって、導入遺伝子配列のゲノム組み込みを評価する工程。
【0135】
いくつかの局面において、組み込まれていない残りの導入遺伝子配列を評価するための方法が提供される。いくつかの態様において、方法は、DNAの高分子量画分における導入遺伝子配列の質量、重量、濃度、またはコピー数を決定するために、本明細書に記載されるような導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定するための工程を行うことを含む。いくつかの態様において、方法はまた、高分子量画分の分離を伴わずに単離されたDNAにおける導入遺伝子配列の質量、重量、濃度、またはコピー数を決定し、それによって、導入遺伝子配列の総コピー数を決定する工程も含む。いくつかの態様において、方法は、高分子量画分において決定された質量、重量、濃度、またはコピー数を、高分子量画分の分離を伴わずに単離されたDNA全体において決定された質量、重量、濃度、またはコピー数と比較し、それによって、組み込まれていない残りの組換え配列の質量、重量、濃度、またはコピー数を決定する工程を含む。
【0136】
いくつかの態様において、比較する工程は、高分子量画分の分離を伴わずに決定された質量、重量、濃度、またはコピー数から、高分子量画分について決定された質量、重量、濃度、またはコピー数を減算することを含む。いくつかの態様において、比較する工程は、高分子量画分について決定された質量、重量、濃度、またはコピー数対、高分子量画分の分離を伴わずに決定された質量、重量、濃度、またはコピー数の比を決定することを含む。
【0137】
いくつかの態様において、高分子量DNAの分離を伴わないコピー数の決定は、本明細書に、例えばセクションI.Bに記載されるいずれかなどの、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって行われる。いくつかの態様において、高分子量DNAの分離を伴わないコピー数の決定は、例えば、Charrier et al., Gene Therapy (2011) 18, 479-487;Christodoulou et al., Gene Therapy (2016) 23, 113-118;Zhao et al., Human Gene Therapy Methods (2017) 28(4): 205-214;およびMilone et al., Molecular Therapy: Methods & Clinical Development (2018) 8:210-221に記載される方法を用いて行われる。いくつかの局面において、高分子量DNAの分離を伴わないコピー数は、標準的なベクターコピー数(VCN)アッセイを含む。
【0138】
いくつかの態様において、PCRは、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)、デジタルPCR、またはドロップレットデジタルPCRである。いくつかの態様において、PCRはドロップレットデジタルPCRである。いくつかの態様において、PCRは、導入遺伝子配列の少なくとも一部分に相補的であるか、またはそれを特異的に増幅することができる1つまたは複数のプライマーを用いて行われる。任意のいくつかの態様において、1つまたは複数のプライマーは、ゲノム中に組み込まれるかまたは組み込まれることになる、導入遺伝子中の配列の全てまたは一部分に相補的であるか、またはそれを特異的に増幅することができる。いくつかの態様において、1つまたは複数のプライマーは、組換えタンパク質をコードする核酸配列の一部分に相補的であるか、またはそれを特異的に増幅することができる。いくつかの態様において、1つまたは複数のプライマーは、組換えタンパク質をコードする核酸配列に機能的に連結されている調節エレメントの配列に相補的であるか、またはそれを特異的に増幅することができる。いくつかの態様において、1つまたは複数のプライマーは、組換えタンパク質をコードする核酸配列に機能的に連結されている調節エレメントの配列に相補的であるか、またはそれを特異的に増幅することができる。いくつかの態様において、1つまたは複数のプライマーは、組換えタンパク質をコードする核酸配列に機能的に連結されている転写後調節エレメントの配列に相補的であるか、またはそれを特異的に増幅することができる。いくつかの態様において、1つまたは複数のプライマーは、組換えタンパク質をコードする核酸配列に機能的に連結されているウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)の配列に相補的であるか、またはそれを特異的に増幅することができる。
【0139】
いくつかの態様において、高分子量画分の分離を伴わずにコピー数を決定する工程は、高分子量画分の分離を伴わずに単離されたDNAにおける導入遺伝子配列のコピー数を評価すること、および、量または濃度を、高分子量画分の分離を伴わずに単離されたDNAにおける参照遺伝子に対して、または例えば、既知のコピー数の標準曲線に対して正規化することを含む。いくつかの態様において、参照遺伝子はハウスキーピング遺伝子である。いくつかの態様において、参照遺伝子は、アルブミンをコードする遺伝子(ALB)である。いくつかの態様において、参照遺伝子は、リボヌクレアーゼPタンパク質サブユニットp30(RPP30)をコードする遺伝子である。
【0140】
いくつかの態様において、単離されたDNAにおける参照遺伝子のコピー数は、参照遺伝子の少なくとも一部分に相補的であるか、またはそれを特異的に増幅することができる1つまたは複数のプライマーを用いたPCRによって行われる。
【0141】
いくつかの態様において、高分子量画分におけるコピー数を決定する工程と、高分子量画分の分離を伴わずにコピー数を決定する工程とは、同じプライマーまたは同じプライマーのセットを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって行われる。
【0142】
いくつかの局面において、方法はまた、高分子量画分の分離を伴わずに単離されたDNAにおける導入遺伝子配列のコピー数を決定し、それによって、導入遺伝子配列の総コピー数を決定する工程も含む。いくつかの局面において、方法は、高分子量画分の評価によって決定されたコピー数を、(例えば、画分の分離を伴わずに)単離されたDNA全体の評価によって決定されたコピー数から減算することによって、組み込まれていない残りの導入遺伝子配列のコピー数を決定する工程を含む。いくつかの局面において、方法は、決定されたコピー数由来の、高分子量画分の評価によって決定されたコピー数を、(例えば、画分の分離を伴わずに)単離されたDNA全体の評価によって決定されたコピー数で割ることによって、組み込まれていない残りの導入遺伝子配列の比率を決定する工程を含む。いくつかの態様において、組み込まれていない残りの導入遺伝子配列は、ベクタープラスミド、直鎖状相補DNA(cDNA)、自己組み込み体、または末端反復配列(LTR)サークルのうちの1つまたは複数を含む。
【0143】
いくつかの局面において、組み込まれた導入遺伝子配列の割合は、組み込まれた導入遺伝子配列の割合は、(PFGE後のddPCR、例えば、本明細書に記載される組み込まれたベクターコピー数(iVCN)アッセイによって決定されるような)組み込まれたコピー数を、(PFGEを伴わないddPCRによって、例えば、標準的なベクターコピー数(VCN)アッセイによって決定されるような)総コピー数で割ることによって決定することができる。いくつかの態様において、組み込まれていない導入遺伝子配列の割合は、1-(組み込まれた導入遺伝子配列の割合)として決定することができる。いくつかの局面において、組み込まれていない導入遺伝子配列コピー数は、組み込まれたコピー数を総コピー数から減算することによって決定することができる。
【0144】
3. 操作された細胞が投与された対象由来のサンプルにおける導入遺伝子配列の量の評価
いくつかの局面において、また、対象由来の生物学的サンプルにおいて導入遺伝子配列の存在、不在、または量を評価するための方法も提供される。いくつかの局面において、対象は、操作された細胞、例えば、例えば養子細胞療法のために導入遺伝子配列を含有するポリヌクレオチドの細胞中への導入によって操作された免疫細胞が、投与されている。いくつかの局面において、方法は、デオキシリボ核酸(DNA)を、対象由来の生物学的サンプルから単離する工程;10キロベース(kb)よりも大きいかまたは約10キロベース(kb)よりも大きい高分子量画分を、単離されたDNAから分離する工程;および、該高分子量画分における導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程を含む。いくつかの局面において、生物学的サンプルは、導入遺伝子配列を含む操作された細胞が投与された対象から得られる。いくつかの局面において、導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程は、対象から得られた生物学的サンプルにおけるコピー数を決定することなどの、コピー数を決定することを含む。
【0145】
対象由来の生物学的サンプルにおいて導入遺伝子配列を評価するための方法が、本明細書において提供される。任意のいくつかの態様において、提供される方法は、以下の工程を含む:(a)10キロベース(kb)よりも大きいかまたは約10キロベース(kb)よりも大きいデオキシリボ核酸(DNA)の高分子量画分を、対象由来の生物学的サンプル中に存在する1つまたは複数の細胞より単離されたDNAから分離する工程であって、該生物学的サンプルが、組換えタンパク質をコードする核酸配列を含む導入遺伝子配列を含む少なくとも1つの操作された細胞を含むか、またはそれを含む疑いがある、工程;および(b)該高分子量画分における導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定し、それによって、生物学的サンプルの全てまたは一部分に存在する導入遺伝子配列を評価する工程。
【0146】
以下の工程を含む、対象由来の生物学的サンプルにおいて導入遺伝子配列を評価するための方法が、本明細書において提供される:(a)10キロベース(kb)よりも大きいかまたは約10キロベース(kb)よりも大きいデオキシリボ核酸(DNA)の高分子量画分を、対象由来の生物学的サンプル中に存在する1つまたは複数の細胞より単離されたDNAから分離する工程であって、該生物学的サンプルが、組換えタンパク質をコードする核酸配列を含む導入遺伝子配列を含む少なくとも1つの操作された細胞を含むか、またはそれを含む疑いがある、工程;および(b)該高分子量画分における導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定し、それによって、生物学的サンプルの全てまたは一部分に存在する導入遺伝子配列を評価する工程。
【0147】
いくつかの態様において、対象由来の生物学的サンプルにおいて導入遺伝子配列を評価するための提供される方法は、以下の工程を含む:10キロベース(kb)よりも大きいかまたは約10キロベース(kb)よりも大きいデオキシリボ核酸(DNA)の高分子量画分を、対象由来の生物学的サンプル中に存在する1つまたは複数の細胞より単離されたDNAから分離する工程であって、該生物学的サンプルが、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列を含む少なくとも1つの操作された細胞を含むか、またはそれを含む疑いがある、工程;および、該生物学的サンプルの全てまたは一部分における導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程。いくつかの態様において、分離する工程の前に、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドが、1つまたは複数の細胞のうちの少なくとも1つの操作された細胞中に導入されている。いくつかの態様において、導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程は、生物学的サンプルの全てまたは一部分における導入遺伝子配列の質量、重量、濃度、またはコピー数を決定することを含む。
【0148】
いくつかの態様において、方法を、投与された細胞の薬物動態(PK)パラメータまたは薬力学(PD)パラメータを決定するための基礎として用いることができる。いくつかの局面において、PKパラメータまたはPDパラメータは、例えば本明細書で提供される方法に従う、例えば、導入遺伝子配列の存在、不在、または量を評価する、核酸ベースの方法に基づいて測定することができる。いくつかの局面において、PKパラメータまたはPDパラメータは、例えば、細胞の表面上の組換えタンパク質の発現または細胞表面表現型または活性を検出することによる、細胞特性または表現型の測定に基づいて測定することができる。いくつかの局面において、核酸ベースの方法および細胞ベースの方法の組み合わせを含む、種々の方法を用いることができる。いくつかの態様において、方法は、高分子量画分を分離する工程の前に、DNAを、生物学的サンプル中に存在する1つまたは複数の細胞から単離する工程を含む。
【0149】
いくつかの態様において、生物学的サンプルは、導入遺伝子配列を含む少なくとも1つの操作された細胞を含む組成物が投与された対象から得られる。いくつかの態様において、生物学的サンプルは、組織サンプルもしくは体液サンプル、または本明細書に記載される対象から得られた任意の他のサンプルである。いくつかの態様において、生物学的サンプルは組織サンプルであり、該組織は腫瘍である。いくつかの態様において、組織サンプルは腫瘍生検材料である。いくつかの態様において、生物学的サンプルは体液サンプルであり、該体液サンプルは、血液または血清サンプルである。
【0150】
いくつかの態様において、生物学的サンプルにおける1つまたは複数の細胞は、本明細書に記載される任意の免疫細胞またはその集団を含む、免疫細胞を含む。いくつかの態様において、免疫細胞は、T細胞またはNK細胞である。いくつかの態様において、T細胞は、CD3+、CD4+、および/もしくはCD8+ T細胞、または特定の表現型を含む任意のそのような細胞である。
【0151】
いくつかの局面において、導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定するの方法のいずれか、および本明細書に記載される配列の質量、重量、濃度、またはコピー数を決定する正規化法または定量法のいずれかを用いることができる。
【0152】
いくつかの局面において、提供される方法は、T細胞、例えば、T細胞ベースの治療法のために投与されるT細胞の曝露、数、濃度、持続性、および増殖を評価するための基礎として用いることができる。いくつかの態様において、本明細書において提供される方法における、細胞の曝露、もしくは長期の拡大増殖、および/もしくは持続性、ならびに/または細胞、例えば、免疫療法、例えばT細胞療法のために投与される細胞の細胞表現型もしくは機能的活性の変化は、インビトロまたはエクスビボでのT細胞の特徴の評価によって測定することができる。いくつかの態様において、そのようなアッセイを、例えば組換え受容体を発現する操作されたT細胞での細胞療法を施与する前または後に、免疫療法、例えばT細胞療法に用いられるT細胞の機能を決定するかまたは確認するために用いることができる。
【0153】
いくつかの局面において、曝露、数、濃度、持続性、および増殖は、薬物動態パラメータに関連する。場合によっては、薬物動態を、投与後の、最大(ピーク)血清濃度(Cmax)、ピーク時間(すなわち、最大血漿濃度(Cmax)が生じる時;Tmax)、最小血漿濃度(すなわち、治療剤、例えばCAR+ T細胞の投薬の間の最小血漿濃度;Cmin)、排出半減期(T1/2)、および曲線下面積(すなわち、時間対、治療剤の操作された細胞の血漿濃度をプロットすることによって作製された曲線下面積)などのパラメータの測定によって評価することができる。投与後の血漿における、特定の治療剤、例えば、操作された細胞の濃度は、提供される方法を用いて測定することができる。例えば、いくつかの局面において、組み込まれた導入遺伝子配列のコピー数を、対象由来の血液サンプルなどのサンプルにおいて評価することができる。いくつかの局面において、フローサイトメトリーベースの方法などの、PKを決定するための他の方法、またはイムノアッセイ、ELISA、もしくはクロマトグラフィー/質量分析ベースのアッセイなどの他のアッセイを、1つまたは複数の薬物動態パラメータを決定するために、組み合わせてまたは並行して用いることができる。総細胞数を検出する、かつ/または外挿するための他の方法には、Brentjens et al., Sci Transl Med. 2013 5(177)、Park et al, Molecular Therapy 15(4):825-833 (2007)、Savoldo et al., JCI 121(5):1822-1826 (2011)、Davila et al., (2013) PLoS ONE 8(4):e61338、Davila et al., Oncoimmunology 1(9):1577-1583 (2012)、Lamers, Blood 2011 117:72-82、Jensen et al., Biol Blood Marrow Transplant 2010 September; 16(9): 1245-1256、Brentjens et al., Blood 2011 118(18):4817-4828に記載されるものが含まれる。
【0154】
いくつかの態様において、投与された細胞、例えば、操作された細胞組成物の薬物動態(PK)は、投与された細胞の利用能、例えば、生物学的利用能を評価するために決定される。いくつかの態様において、「曝露」は、治療剤、例えば、操作された細胞の、ある一定の期間にわたる、治療剤の投与後の血漿(血液または血清)における身体曝露を指すことができる。いくつかの態様において、曝露は、治療剤、例えば、操作された細胞の用量の投与後に、薬物動態解析によって決定されるような治療剤濃度-時間曲線下面積(AUC)として示すことができる。場合によっては、AUCは、細胞療法において投与された細胞について、または対応するその単位において、細胞*日/μLで表現される。いくつかの態様において、AUCは、患者集団、例えば、サンプル患者集団における平均AUC、例えば、1つまたは複数の患者由来の平均AUCとして測定される。いくつかの態様において、全身曝露は、ある一定の期間内、例えば、0日目から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、21、28日目もしくはそれ以上まで、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15週もしくはそれ以上まで、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、24、48ヶ月もしくはそれ以上までの、曲線下面積(AUC)を指す。いくつかの態様において、AUCは、治療剤、例えば、操作された細胞の投与後の0日目から28日目までのAUC(AUC0-28)として、サンプル患者集団などの患者集団由来の平均AUCなどの、全ての測定されたデータ、および測定された薬物動態(PK)パラメータから外挿されるデータを含んで、測定される。いくつかの態様において、経時的な曝露、例えば、AUC0-28などのある一定の期間にわたるAUCを決定するために、多数の測定値またはパラメータの評価、例えば、経時的な細胞濃度、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、21、もしくは28日ごと、またはそれ以上ごとに採取された測定値を用いて、治療剤濃度-時間曲線が作製される。
【0155】
いくつかの態様において、T細胞の投与後、ならびに治療法の施与の前、その最中、および/またはその後の、対象における導入遺伝子配列の存在、不在、および/または量が検出される。いくつかの態様において、T細胞の投与後、ならびに治療法の施与の前、その最中、および/またはその後の、対象における組換え受容体を発現する細胞(例えば、T細胞ベースの治療法のために投与されたCAR発現細胞)の存在、不在、および/または量が検出される。いくつかの局面において、導入遺伝子配列の組み込みを評価するための本明細書に記載される方法のいずれかを、対象の血液または血清または臓器または組織サンプル(例えば、疾患部位、例えば、腫瘍サンプル)における組換えタンパク質を発現する細胞(例えば、T細胞ベースの治療法のために投与された組換え受容体を発現する細胞)の量を評価するために用いることができる。いくつかの局面において、持続性は、二倍体ゲノム当たりの、サンプルの、例えば、血液もしくは血清の体積もしくは面積当たりの、総DNA 1マイクログラム当たりの、組み込まれた導入遺伝子配列のコピーとして、または、サンプルの、例えば、血液もしくは血清1マイクロリットル当たりの、またはサンプル1マイクロリットル当たりの末梢血単核細胞(PBMC)もしくは白血球もしくはT細胞の総数当たりの、操作された細胞(例えば、組換え受容体発現細胞)の数として定量される。
【0156】
いくつかの態様において、提供される方法のいずれかに用いられるプライマーまたはプローブは、組換え受容体、ならびに/または、調節エレメント、例えば、プロモーター、転写および/もしくは転写後調節エレメントもしくは応答エレメント、またはマーカー、例えば、サロゲートマーカーを含む、プラスミドおよび/もしくはベクターの他の構成成分もしくはエレメントをコードする核酸の結合、認識、および/または増幅に特異的である。いくつかの態様において、プライマーは、調節エレメントに特異的であることができる。いくつかの態様において、プライマーは、組換えタンパク質をコードする核酸配列に機能的に連結された調節エレメントに特異的である。いくつかの態様において、プライマーは、組換えタンパク質、例えば組換え受容体をコードする核酸配列に機能的に連結されている、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)の全てまたは一部分の増幅に特異的である。
【0157】
いくつかの態様において、導入遺伝子配列細胞は、操作された細胞の投与後4、14、15、27、もしくは28日で、または少なくとも4、14、15、27、もしくは28日で、対象において検出される。いくつかの態様において、細胞は、操作された細胞の投与後、2、4、もしくは6週で、または3、6、もしくは12、18、もしくは24、もしくは30、もしくは36ヶ月で、または1、2、3、4、5年もしくはそれ以上で、または、少なくとも2、4、もしくは6週で、または3、6、もしくは12、18、もしくは24、もしくは30、もしくは36ヶ月で、または1、2、3、4、5年もしくはそれ以上で検出される。
【0158】
いくつかの態様において、ピークレベルおよび/もしくはAUCが評価され、かつ/またはサンプルは、遺伝子操作された細胞の投与の開始後少なくとも8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、もしくは21日である時に、対象から得られる。いくつかの態様において、ピークレベルおよび/もしくはAUCが評価され、かつ/またはサンプルは、遺伝子操作された細胞の投与の開始後、それぞれ両端を含めて、11~22日もしくは約11~22日、12~18日もしくは約12~18日、または14~16日もしくは約14~16日である時に、対象から得られる。
【0159】
拡大増殖および/または持続性を示す、養子細胞療法のために投与された、操作された細胞の曝露、例えば、数または濃度は、導入遺伝子配列の最大コピー数、または対象が曝露される細胞の最大数もしくは濃度、ある特定の数もしくはパーセンテージよりも上の検出可能な細胞もしくは細胞の持続期間、導入遺伝子配列のコピー数についての曲線下面積(AUC)、経時的な細胞の数もしくは濃度、および/またはそれらの組み合わせ、およびそれらの指標に関して述べられてもよい。そのような結果は、腫瘍サンプルなどの特定のサンプル、例えば、血液、血清、血漿、もしくは組織における核酸もしくはDNAの総量と比較して、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列のコピー数を検出するための提供される方法、および/または、組換えタンパク質に特異的な抗体を一般に用いる、受容体を発現する細胞を検出するフローサイトメトリーアッセイを用いて、評価されてもよい。細胞ベースのアッセイがまた、機能的な細胞、例えば、疾患もしくは状態の、または組換え受容体である組換えタンパク質によって認識される抗原を発現する細胞に結合することができるか、および/またはそれを中和することできるか、および/またはそれに対する応答、例えば、細胞傷害応答を誘導することができる細胞の、数またはパーセンテージまたは濃度を検出するために用いられてもよい。
【0160】
いくつかの局面において、細胞に対する対象の曝露の増加は、細胞の拡大増殖の増加を含む。いくつかの態様において、受容体発現細胞、例えばCAR発現細胞は、T細胞、例えばCAR発現T細胞の投与後に、対象において拡大増殖する。
【0161】
いくつかの態様において、受容体を発現する細胞は、操作された細胞の投与後、少なくとも20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、もしくは60日またはそれ以上で、操作された細胞の投与後、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、もしくは24週間もしくはそれ以上、または約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、もしくは24週間もしくはそれ以上、例えば、提供される方法またはフローサイトメトリーベースの検出法によって、対象の血清、血漿、血液、または組織、例えば、腫瘍サンプルにおいて検出可能である。
【0162】
いくつかの局面において、記載される方法のいずれかによって測定されるような、例えば、末梢血または骨髄または他の区画における、100細胞当たりの、組み込まれた導入遺伝子配列の質量、重量、濃度、またはコピー数は、操作された細胞の投与後、約1週、約2週、約3週、約4週、約5週、もしくは少なくとも約6週、または少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12ヶ月、または少なくとも2もしくは3年で、少なくとも0.01、少なくとも0.1、少なくとも1、または少なくとも10であることができる。いくつかの態様において、ゲノムDNA 1マイクログラム当たりの導入遺伝子配列のコピー数は、操作された細胞の投与後、約1週、約2週、約3週、もしくは少なくとも約4週、またはそのような投与後、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12ヶ月、または少なくとも2もしくは3年の時に、少なくとも100、少なくとも1000、少なくとも5000、または少なくとも10,000、または少なくとも15,000、または少なくとも20,000である。
【0163】
いくつかの局面において、操作された細胞における導入された導入遺伝子配列は、対象、血漿、血清、血液、組織、および/またはその疾患部位、例えば、腫瘍部位において、細胞の投与後、例えば、T細胞の投与の開始後、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約12ヶ月、少なくとも約1年、少なくとも約2年、少なくとも約3年、または3年よりも長い時に、記載される方法によって検出可能であり得る。いくつかの態様において、操作された細胞の投与後に経時的に、対象の体液、血漿、血清、血液、組織、臓器、および/または疾患部位、例えば、腫瘍部位における組換えタンパク質細胞の濃度についての曲線下面積(AUC)が測定される。
【0164】
II. 導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドを導入するための方法
いくつかの態様において、組み込まれた核酸を評価するための提供される方法は、遺伝子操作された細胞に関連して、かつ遺伝子操作された細胞を作製するための操作プロセスまたは製造プロセス中の1つまたは複数の時に、用いられるかまたは行われる。いくつかの局面において、提供される方法がそれに対して実行されるかまたは行われる細胞または複数の細胞は、遺伝子操作されているか、または遺伝子操作のプロセス中である細胞を含み、養子細胞療法などの細胞療法において用いることができる。いくつかの態様において、提供される方法がそれに対して実行されるかまたは行われる細胞または複数の細胞は、操作の様々な工程または段階にある細胞を含む。いくつかの局面において、細胞は、例えば、組換えタンパク質をコードする配列を含む導入遺伝子配列を含有するポリヌクレオチドの導入によって、組換えタンパク質を発現するように操作されている、T細胞などの免疫細胞を含む。いくつかの局面において、提供される方法は、操作された細胞のゲノムにおけるそのような導入遺伝子配列の組み込みを評価するために用いられる。
【0165】
いくつかの局面において、操作プロセスまたは製造プロセスは、T細胞などの免疫細胞を含む、細胞の刺激、活性化、形質導入、拡大増殖、培養、または増殖を含む、1つまたは複数の工程を含む。いくつかの態様において、組み込まれた核酸を評価するための提供される方法は、遺伝子操作されたT細胞などの、遺伝子操作された細胞を作製するかまたは産生するためのプロセスの一部として、行うことができる。
【0166】
いくつかの局面において、提供される態様は、例えば、拡大増殖させない製造プロセスを用いる、短縮されているか、省略されているか、または拡大増殖工程を含まない操作プロセスまたは製造プロセスにおいて使用される。いくつかの局面において、短縮されたかまたは省略された製造プロセスは、組換え受容体をコードする核酸の導入後に、短縮されたかもしくは省略された拡大増殖工程を含むか、または拡大増殖工程を含まない。いくつかの局面において、短縮されたかまたは省略された製造プロセスは、細胞が、導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドの少なくとも1つの操作された細胞中への導入後に、96時間超にわたり、25℃よりも高い温度で、任意で37℃±2℃でまたは約37℃±2℃でインキュベートされていない、プロセスを含む。
【0167】
いくつかの態様において、提供される方法は、細胞療法のための細胞または細胞組成物の製造、作製、または産生に関与する1つまたは複数の工程またはプロセスを経験している細胞に関連して用いられる。いくつかの局面において、提供される方法は、細胞を操作するために用いられる導入遺伝子配列などの、核酸の組み込みを評価するために用いることができる。いくつかの態様において、細胞療法は、組換え受容体、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)などの組換えタンパク質を発現するように操作された、T細胞などの細胞の投与を含む。いくつかの態様において、1つまたは複数の工程は、細胞の単離、分離、選択、活性化もしくは刺激、形質導入、培養、拡大増殖、洗浄、懸濁、希釈、濃縮、および/または製剤化を含む。
【0168】
いくつかの態様において、細胞療法を作製するかまたは産生する方法は、細胞を対象から単離する工程、調製する工程、処理する工程、1つのまたは刺激条件下で培養する工程を含む。いくつかの態様において、方法は、以下の順序で行われる処理工程を含む:細胞、例えば初代細胞を、最初に、生物学的サンプルから単離する、例えば、選択するかまたは分離する;選択された細胞を、任意で、刺激試薬の存在下で単離された細胞を刺激する工程の後に、形質導入のためのウイルスベクター調製物(例えば、組み込みのための導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドを含有するウイルス調製物)とインキュベートする;例えば、細胞を拡大増殖させるために、形質導入された細胞を培養すること;形質導入された細胞を組成物に製剤化すること、および組成物を生体医用材料容器の中に導入すること。
【0169】
いくつかの態様において、製造または操作するための方法は、(a) 細胞を含有する生体サンプル(例えば、全血サンプル、バフィーコートサンプル、末梢血単核細胞(PBMC)サンプル、未分画T細胞サンプル、リンパ球サンプル、白血球サンプル、アフェレーシス産物、または白血球アフェレーシス産物)を洗浄する工程; (b) 例えば、免疫親和性に基づく分離のための選択試薬または免疫親和性試薬との細胞のインキュベーションにより、サンプルから細胞の所望の細胞サブセットまたは集団(例えば、CD4+および/またはCD8+ T細胞)を単離する工程、例えば選択する工程; (c) 例えば単離された、例えば選択された細胞を、組換え受容体をコードするウイルスベクター粒子と共にインキュベートすることにより、組換え受容体、例えばCARをコードする作用物質を、単離されたまたは選択された細胞に導入する工程; (d) 例えば記述されている方法を用いて、細胞を培養する工程(culturing)、培養する工程(cultivating)、または拡大増殖する工程; ならびに(e) 例えば薬学的に許容される緩衝液、凍結保存剤または他の適当な培地中に、形質導入された細胞を製剤化する工程、の1つまたは複数を含むことができる。いくつかの態様において、本方法はさらに、(f) ウイルスベクター粒子との細胞のインキュベーションの前、間および/または後に実施することができる刺激条件に細胞を曝露することにより細胞を刺激する工程、を含むことができる。いくつかの態様において、例えば細胞の希釈、濃縮および/または緩衝液交換のための、洗浄または懸濁工程の1つまたは複数のさらなる工程は、上記の工程のいずれかの前または後に実行することもできる。いくつかの局面において、結果的に得られる操作された細胞組成物は、1つまたは複数の生体医用培養容器に導入される。
【0170】
いくつかの態様において、遺伝子操作された細胞を調製または産生するための提供される方法は、例えば、養子細胞療法における臨床使用のための細胞の調製における1つの、複数の、または全ての工程が、細胞を無菌条件に曝露することなく、および無菌室またはキャビネットを用いる必要なく実行されるように実行される。そのようなプロセスのいくつかの態様において、細胞は、全て閉鎖システム内で、単離され、分離または選択され、形質導入され、洗浄され、任意で活性化または刺激され、および製剤化される。そのようなプロセスのいくつかの局面において、細胞は、閉鎖システムから発現され、1つまたは複数の生体材料容器に導入される。いくつかの態様において、本方法は自動化された方法で実行される。いくつかの態様において、閉鎖されたシステムまたは装置とは別に、1つまたは複数の工程が実行される。
【0171】
いくつかの態様において、閉鎖システムは、細胞療法を製造、作製または産生するための方法の1つまたは複数の他の処理工程を実行するために用いられる。いくつかの態様において、形質導入および操作に関連する処理工程、例えば、単離、選択および/または濃縮、処理、インキュベーションの1つもしくは複数または全て、ならびに製剤化工程は、統合型もしくは自己完結型のシステムで、および/または自動化されたもしくはプログラム可能な方法でシステム、装置、または機器を用いて実行される。いくつかの局面において、システムまたは機器は、システムまたは装置と通信するコンピュータおよび/またはコンピュータプログラムを含み、これにより、ユーザーは、処理、単離、操作、および製剤化工程の結果をプログラムする、制御する、評価する、ならびに/または処理、単離、操作、および製剤化工程の様々な局面を調整することが可能になる。一例を挙げれば、システムは、WO2009/072003、US 20110003380、またはWO2016/073602に記述されているシステムである。
【0172】
A.細胞の単離または選択
いくつかの態様において、提供される方法によって評価されるかまたは解析される細胞または細胞組成物などの、操作される細胞は、初代細胞である。いくつかの態様において、細胞は、免疫細胞または濃縮された免疫細胞である。いくつかの態様において、細胞は、T細胞であるか、またはT細胞が濃縮されている。いくつかの態様において、提供される方法を用いて評価されるかまたは解析されることになる細胞は、T細胞であるか、またはT細胞が濃縮されている。いくつかの態様において、細胞は、CD4+ T細胞または濃縮されたCD4+ T細胞である。いくつかの態様において、細胞は、CD8+ T細胞または濃縮されたCD8+ T細胞である。いくつかの態様において、細胞療法を製造する、作製する、または産生するためのプロセスは、プロセスのその後の工程を行う前に、総T細胞、例えば、CD3+またはCD4+/CD8+ T細胞を、ヒト対象より得られたサンプルから単離するかまたは選択する工程を含む。
【0173】
いくつかの態様において、操作または製造するための方法は、特定の疾患もしくは状態を有する対象、または細胞療法を必要とする対象、または細胞療法が施される対象などの対象から得られるかまたはそのような対象に由来するものなどの生体サンプルからの、細胞またはその組成物の単離の工程を含む。いくつかの局面において、対象は、細胞が単離、処理、および/または操作される、養子細胞療法などの特定の治療的介入を必要とする患者である対象などの、ヒトである。したがって、いくつかの態様における細胞は初代細胞、例えば、初代ヒト細胞である。いくつかの態様において、細胞はCD4+およびCD8+ T細胞を含む。いくつかの態様において、細胞はCD4+またはCD8+ T細胞を含む。サンプルは、組織、体液および対象から直接採取された他のサンプルを含む。生物学的サンプルは、生物学的供給源から直接得られるサンプルまたは処理されたサンプルであり得る。生物学的サンプルは、それら由来の処理されたサンプルを含む、体液、例えば血液、血漿、血清、脳脊髄液、滑液、尿および汗、組織および器官サンプルを含むがこれらに限定されない。
【0174】
いくつかの局面において、サンプルは、血液もしくは血液由来サンプルである、またはアフェレーシスもしくは白血球アフェレーシス産物であるもしくはそれ由来である。例示的なサンプルは、全血、末梢血単核細胞(PBMC)、白血球、骨髄、胸腺、組織生検、腫瘍、白血病、リンパ腫、リンパ節、腸関連リンパ組織、粘膜関連リンパ組織、脾臓、他のリンパ組織、肝臓、肺、胃、腸、結腸、腎臓、膵臓、乳房、骨、前立腺、頸部、精巣、卵巣、扁桃腺もしくは他の器官、および/またはそれら由来の細胞を含む。サンプルは、細胞療法、例えば養子細胞療法に関して、自己および同種源由来の細胞を含む。
【0175】
いくつかの例において、細胞は対象の循環血から、例えばアフェレーシスまたは白血球アフェレーシスによって得られる。サンプルは、いくつかの局面において、T細胞、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球、赤血球および/または血小板を含むリンパ球を含み、いくつかの局面において、赤血球および血小板以外の細胞を含む。
【0176】
いくつかの態様において、対象から回収された血液細胞は、例えば血漿画分を除去するためおよび細胞をその後の処理工程のための適当な緩衝液または培地に入れるために洗浄される。いくつかの態様において、細胞は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄される。いくつかの態様において、洗浄溶液は、カルシウムおよび/もしくはマグネシウムならびに/または多くのもしくは全ての二価カチオンを含まない。いくつかの局面において、洗浄工程は、半自動化「フロースルー」型遠心分離装置(例えば、Cobe 2991細胞処理装置、Baxter)を製造元の指示に従って用いて達成される。いくつかの局面において、洗浄工程は、タンジェンシャルフロー濾過(TFF)を製造元の指示に従って用いて達成される。いくつかの態様において、細胞は、洗浄後に様々な生体適合性緩衝液、例えばCa++/Mg++非含有PBSに再懸濁される。特定の態様において、血液細胞サンプルの成分は除去され、細胞は培養培地に直接再懸濁される。
【0177】
いくつかの態様において、調製方法は、分離、選択および/または濃縮、および/または形質導入と遺伝子操作のためのインキュベーションの前または後のいずれかに、細胞を凍結する、例えば凍結保存するための工程を含む。ある態様では、凍結とその後の解凍工程により、細胞集団中の顆粒球およびある程度の単球が除去される。ある態様では、例えば血漿および血小板を除去する洗浄工程の後に、細胞を凍結溶液中に懸濁する。いくつかの局面における様々な公知の凍結溶液および凍結パラメータのどれを使用してもよい。次に、これを培地で1:1に希釈し、DMSOとHSAの最終濃度をそれぞれ10%と4%にする。その後、細胞を一般的に毎分1℃の速度で-80℃へと凍結させ、液体窒素貯蔵タンクの気相に保存する。
【0178】
いくつかの態様において、細胞または集団の分離は、1つ以上の調製および/または非アフィニティベースの細胞分離工程を含む。ある例では、細胞を洗浄し、遠心分離し、かつ/または1つまたは複数の試薬の存在下でインキュベーションして、例えば、不要な成分を除去し、所望の成分を濃縮し、特定の試薬に感受性のある細胞を溶解または除去する。ある例では、細胞を、密度、付着性、サイズ、特定の成分に対する感受性および/または耐性などの、1つ以上の特性に基づいて分離する。ある態様では、該方法は、赤血球を溶解することによる末梢血からの白血球の調製およびパーコールまたはフィコール勾配による遠心分離などの、密度に基づく細胞分離法を含む。
【0179】
いくつかの態様において、選択工程の少なくとも一部は、細胞と選択試薬とのインキュベーションを含む。選択試薬(複数可)とのインキュベーションは、例えば選択方法の一部として、1つ以上の異なる細胞タイプを選択するための1つまたは複数の選択試薬を使用して、表面マーカー、例えば表面タンパク質、細胞内マーカー、または核酸などの、1つ以上の特定の分子の細胞内または細胞上での発現または存在に基づいて行うことができる。いくつかの態様において、そのようなマーカーに基づいて分離するための選択試薬(複数可)を使用する公知の方法はどれも使用することができる。ある態様では、選択試薬(複数可)は、アフィニティまたはイムノアフィニティに基づいた分離をもたらす。例えば、いくつかの局面における選択は、1つ以上のマーカー、通常は細胞表面マーカー、の細胞の発現または発現レベルに基づいて細胞および細胞集団を分離するための試薬(複数可)とのインキュベーション、例えば、そのようなマーカーに特異的に結合する抗体または結合パートナーとのインキュベーション、続いて、一般的には洗浄工程、および抗体または結合パートナーに結合しなかった細胞からの抗体または結合パートナーに結合した細胞の分離を含む。いくつかの態様において、このプロセスの選択および/または他の局面は、WO 2015/164675に記載される通りである。
【0180】
前記プロセスのいくつかの局面では、ある量の細胞を、所望のアフィニティに基づくある量の選択試薬と混合する。イムノアフィニティに基づいた選択は、分離しようとする細胞と、該細胞上のマーカーに特異的に結合する分子、例えば固体表面(例えば、粒子)上の抗体または他の結合パートナーとの間の好ましいエネルギー相互作用をもたらす任意のシステムまたは方法を用いて実施することができる。ある態様では、そうした方法は、細胞のマーカーに特異的な選択試薬(例えば、抗体)でコーティングされた粒子、例えば磁性ビーズなどのビーズ、を用いて実施される。粒子(例えば、ビーズ)は、チューブまたはバッグなどの容器内で、振とうまたは混合しながら、エネルギー的に有利な相互作用を促進するのに役立つ一定の細胞密度対粒子(例えば、ビーズ)比で、細胞とインキュベーションまたは混合される。他の場合には、該方法は、選択の全てまたは一部が、例えば遠心回転下で、遠心チャンバーの内部キャビティ内で行われる、細胞の選択を含む。ある態様では、細胞と、イムノアフィニティに基づいた選択試薬などの選択試薬とのインキュベーションは、遠心チャンバー内で行われる。特定の態様では、単離または分離は、WO2009/072003、US 20110003380、または WO2016/073602に記載されるようなシステムである。
【0181】
いくつかの態様において、そのような選択工程またはその一部(例えば、抗体でコーティングされた磁性ビーズなどの粒子とのインキュベーション)を遠心チャンバーのキャビティ内で行うことにより、ユーザーは、各種溶液の量、処理中の溶液の追加、そのタイミングなどの特定のパラメータを制御することができ、これは他の利用可能な方法と比べて利点を提供し得る。例えば、インキュベーション中のキャビティ内の液体量を減らすことができると、キャビティ内の細胞の総数に影響を与えることなく、選択に使用した粒子(例えば、ビーズ試薬)の濃度、およびそれゆえに溶液の化学ポテンシャルを、高めることができる。これはひいては、処理中の細胞と選択に用いた粒子との間のペアワイズ相互作用を増強できる。いくつかの態様において、例えば、本明細書に記載のシステム、回路、および制御と関連する場合、チャンバー内でインキュベーション工程を実施することにより、ユーザーはインキュベーション中の所望の時点(複数可)で溶液の撹拌を行うことができ、これもまた、相互作用を改善し得る。
【0182】
いくつかの態様において、選択工程の少なくとも一部は遠心チャンバー内で行われ、これは細胞と選択試薬とのインキュベーションを含む。そのようなプロセスのいくつかの局面では、ある量の細胞は、所望のアフィニティに基づくある量の選択試薬と混合されるが、該選択試薬の量は、メーカーの指示に従って同数および/または同量の細胞を選択するためにチューブまたは容器で同様の選択を行う時に通常使用する量よりもはるかに少ない。いくつかの態様において、メーカーの指示に従って同数および/または同量の細胞をチューブまたは容器内でのインキュベーションで選択するために使用される同じ選択試薬(複数可)の量のわずか5%、10%、15%、20%、25%、50%、60%、70%、または80%にすぎない選択試薬(複数可)の量が使用される。
【0183】
いくつかの態様において、選択、例えば細胞のイムノアフィニティに基づいた選択のために、細胞は、選択緩衝液も含む組成物中で、チャンバーのキャビティ内において選択試薬とインキュベーションされる;該選択試薬は、例えば、濃縮または枯渇が望まれる細胞上の表面マーカーに特異的に結合するが、該組成物中の他の細胞には結合しない分子、例えば抗体であり、それは、必要に応じて、ポリマーまたは表面などの足場、例えば磁性ビーズなどのビーズに結合されていてよく、例えば、選択試薬はCD4およびCD8に特異的なモノクローナル抗体に結合された磁性ビーズである。いくつかの態様において、上述したように、選択試薬は、チューブ内で振とうまたは回転しながら選択を行う場合に同数または同量の細胞を選択するのとほぼ同じまたは同様の効率を達成するために通常使用されるか、または必要とされる選択試薬の量と比較して、実質的により少ない(例えば、該量のわずか5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%または80%にすぎない)量で、該チャンバーのキャビティ内の細胞に添加される。いくつかの態様において、インキュベーションは、例えば10mL~200mL、例えば少なくとも10mL、20mL、30mL、40mL、50mL、60mL、70mL、80mL、90mL、100mL、150mLもしくは200mL、または約少なくとも10mL、20mL、30mL、40mL、50mL、60mL、70mL、80mL、90mL、100mL、150mLもしくは200mL、または10mL、20mL、30mL、40mL、50mL、60mL、70mL、80mL、90mL、100mL、150mLもしくは200mL、または約10mL、約20mL、約30mL、約40mL、約50mL、約60mL、約70mL、約80mL、約90mL、約100mL、約150mLもしくは約200mLの試薬のインキュベーションにより目標体積を達成するために、細胞および選択試薬に選択緩衝液を添加して行われる。ある態様では、選択緩衝液と選択試薬を事前に混合してから細胞に添加する。ある態様では、選択緩衝液と選択試薬を別々に細胞に添加する。ある態様では、選択インキュベーションは定期的な穏やかな混合条件を用いて行われ、これはエネルギー的に有利な相互作用を促進するのに役立ち、それにより、高い選択効率を達成しながら、より少ない総選択試薬の使用を可能にする。
【0184】
いくつかの態様において、選択試薬とのインキュベーションの全持続時間は、5分~6時間または約5分~6時間、例えば30分~3時間、例えば少なくとも30分、60分、120分もしくは180分、または約少なくとも30分、60分、120分もしくは180分である。
【0185】
いくつかの態様において、インキュベーションは一般に、混合条件下で、例えば一般に比較的低い力または速度でのスピニング(回転)の存在下で行われ、例えば600rpm~1700rpmまたは約600rpm~1700rpm(例えば、600rpm、1000rpm、1500rpmもしくは1700rpm、または約600rpm、約1000rpm、約1500rpmもしくは約1700rpm、または少なくとも600rpm、1000rpm、1500rpmもしくは1700rpm)の、細胞のペレット化に使用される速度よりも低い速度で、または例えば80g~100gまたは約80g~100g(例えば、80g、85g、90g、95gもしくは100g、または約80g、85g、90g、95gもしくは100g、または少なくとも80g、85g、90g、95gもしくは100g)の、サンプルへのまたはチャンバーもしくは他の容器の壁へのRCF(遠心力)で実施される。いくつかの態様において、スピンは、そのような低速でのスピンとそれに続く休止期間の繰り返される間隔とを用いて、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10秒間のスピンおよび/または休止、例えば、約1または2秒のスピンおよびその後の約5、6、7または8秒間の休止を用いて、実施される。
【0186】
いくつかの態様において、そのようなプロセスは、チャンバーが一体化されている完全に閉鎖されたシステム内で行われる。いくつかの態様において、このプロセス(およびいくつかの局面では1つ以上の追加の工程、例えば、アフェレーシスサンプルなどの細胞含有サンプルを洗浄する事前の洗浄工程)は、自動プログラムを用いて単一の閉鎖システムで洗浄および結合工程が完了するように、自動化された方法で実施され、結果として、細胞、試薬、その他の成分が適切なタイミングで該チャンバー内に引き込まれ、かつ該チャンバーから押し出されて、遠心分離が行われる。
【0187】
いくつかの態様において、細胞と選択試薬および/または試薬類とのインキュベーションおよび/または混合の後、インキュベーションされた細胞は、特定の試薬または試薬類の有無に基づいて細胞を選択するための分離工程にかけられる。ある態様では、分離は、細胞と選択試薬とのインキュベーションが行われたのと同じ閉鎖システムで行われる。ある態様では、選択試薬とのインキュベーション後、選択試薬が結合している細胞を含む、インキュベーションされた細胞は、細胞をイムノアフィニティに基づいて分離するためのシステムに移される。ある態様では、イムノアフィニティ分離用のシステムは、磁気分離カラムであるか、またはそれを含む。
【0188】
そのような分離工程は、試薬(例えば、抗体または結合パートナー)に結合した細胞がさらなる使用のために維持される正選択、および/または抗体もしくは結合パートナーに結合しなかった細胞が維持される負選択に基づき得る。いくつかの例において、両方の画分が、さらなる使用のために維持される。いくつかの局面において、負選択は、異種集団内である細胞型を特異的に特定する抗体が利用可能でない場合に特に有用であり得、分離は、望まれる集団以外の細胞により発現されるマーカーに基づき最適に実施される。
【0189】
いくつかの態様において、プロセスの工程は、インキュベーションされた細胞の負および/または正の選択をさらに含み、例えば、アフィニティに基づいた選択を行うことができるシステムまたは装置を使用する。ある態様では、分離は、正の選択による特定の細胞集団の濃縮、または負の選択による特定の細胞集団の枯渇により行われる。ある態様では、正または負の選択は、それぞれ、正または負に選択された細胞に発現された(marker)、または比較的高いレベルで発現された(markerhigh)1つまたは複数の表面マーカーに特異的に結合する、1つまたは複数の抗体もしくは他の結合作用物質と細胞とをインキュベーションすることによって達成される。
【0190】
分離は、特定の細胞集団または特定のマーカーを発現する細胞の100%濃縮または除去を必要とするものではない。例えば、特定型の細胞、例えばあるマーカーを発現する細胞の正選択または濃縮は、そのような細胞の数またはパーセンテージの増加を表すが、それはそのマーカーを発現しない細胞が完全に存在しないことを必要とするものではない。同様に、特定型の細胞、例えばあるマーカーを発現する細胞の負選択、除去または排除は、そのような細胞の数またはパーセンテージの減少を表すが、全てのそのような細胞が完全に除去されることを必要とするものではない。
【0191】
いくつかの例において、1回の工程から正または負選択された画分を、別の分離工程、例えば後続の正または負選択に供する、複数回の分離工程が実施される。いくつかの例において、1回の分離工程は、複数のマーカーを同時に発現する細胞を、例えば、各々が負選択の標的となるマーカーに特異的な複数の抗体または結合パートナーと共に細胞をインキュベートすることによって、排除し得る。同様に、様々な細胞型において発現される複数の抗体または結合パートナーと共に細胞をインキュベートすることによって、複数の細胞型が同時に正選択され得る。
【0192】
例えば、いくつかの局面では、T細胞の特定の亜集団、例えば、1つまたは複数の表面マーカーについて陽性の細胞、またはそのような表面マーカーを高レベルで発現する細胞、例えば、CD28+、CD62L+、CCR7+、CD27+、CD127+、CD4+、CD8+、CD45RA+、および/またはCD45RO+ T細胞は、正または負の選択技術により分離される。ある態様では、そのような細胞は、これらのマーカーに特異的に結合する1つまたは複数の抗体もしくは結合パートナーとのインキュベーションによって選択される。ある態様では、抗体または結合パートナーを、磁性ビーズまたは常磁性ビーズなどの固相支持体またはマトリックスに、例えば直接的または間接的に結合させて、選択を行うことができる。例えば、CD3+, CD28+ T細胞は、抗CD3/抗CD28結合磁性ビーズ(例えば、DYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 T Cell Expander、および/またはExpACT(登録商標)ビーズ)を用いて、正に選択され得る。
【0193】
いくつかの態様において、非T細胞、例えばB細胞、単球または他の白血球において発現されるマーカー、例えばCD14の負選択によって、T細胞がPBMCサンプルから分離される。いくつかの局面において、CD4+またはCD8+選択工程は、CD4+ヘルパーおよびCD8+細胞傷害性T細胞を分離するために使用される。そのようなCD4+またはCD8+集団はさらに、1つまたは複数のナイーブ、メモリーおよび/またはエフェクターTサブ集団において発現されるかまたは相対的に高い程度発現されるマーカーについての正または負選択によってサブ集団に分類され得る。
【0194】
いくつかの態様において、CD8+細胞はさらに、例えばそれぞれのサブ集団に関連する表面抗原に基づく正または負選択によって、ナイーブ、セントラルメモリー、エフェクターメモリーおよび/またはセントラルメモリー幹細胞について濃縮される、またはそれらを排除される。いくつかの態様において、セントラルメモリーT(TCM)細胞の濃縮は、効能を高めるために、例えば投与後の長期間の生存、拡大増殖および/または生着を改善するために実施され、それは、いくつかの局面において、そのようなサブ集団において特に確実である。Terakura et al. (2012) Blood.1:72-82; Wang et al. (2012) J Immunother. 35(9):689-701を参照のこと。いくつかの態様において、TCM濃縮CD8+ T細胞およびCD4+ T細胞の混合は、効果をさらに向上させる。
【0195】
態様において、メモリーT細胞は、CD8+末梢血リンパ球のCD62L+およびCD62L-の両サブセットに存在する。PBMCは、例えば抗CD8および抗CD62L抗体を用いて、CD62L-CD8+および/もしくはCD62L+CD8+画分について濃縮され得るまたはそれらを排除され得る。
【0196】
いくつかの態様において、セントラルメモリーT(TCM)細胞についての濃縮は、CD45RO、CD62L、CCR7、CD28、CD3および/またはCD127の陽性または高い表面発現に基づき、いくつかの局面において、それはCD45RAおよび/またはグランザイムBを発現するまたは高度に発現する細胞についての負選択に基づく。いくつかの局面において、TCM細胞について濃縮されたCD8+集団の単離は、CD4、CD14、CD45RAを発現する細胞の排除およびCD62Lを発現する細胞についての正選択または濃縮によって実施される。1つの局面において、セントラルメモリーT(TCM)細胞についての濃縮は、CD4発現に基づいて選択された細胞の陰性の画分から出発し、これがCD14およびCD45RAの発現に基づく負選択およびCD62Lに基づく正選択に供されることによって実施される。そのような選択は、いくつかの局面において、同時に実施され、他の局面においては、任意の順で順次実施される。いくつかの局面において、CD8+細胞集団またはサブ集団を調製するのに使用したのと同じCD4発現ベースの選択設定が、CD4+細胞集団またはサブ集団を生成するためにも使用され、したがってCD4ベースの分離からの陽性および陰性の両画分が維持され、任意で1回または複数回のさらなる正または負選択工程を行った後に、この方法の後続の工程において使用される。ある態様では、CD4+細胞集団の選択とCD8+細胞集団の選択は、同時に行われる。ある態様では、CD4+細胞集団の選択とCD8+細胞集団の選択は、任意の順序で、連続して行われる。ある態様では、細胞を選択する方法は、公開された米国特許出願第US20170037369号に記載される方法を含むことができる。ある態様では、選択されたCD4+細胞集団と選択されたCD8+細胞集団は、選択工程後に組み合わせることができる。いくつかの局面では、選択されたCD4+細胞集団と選択されたCD8+細胞集団は、バッグなどの容器内で組み合わされる。
【0197】
特定の例では、PBMCのサンプルまたは他の白血球サンプルがCD4+細胞の選択に供され、この場合には、負画分と正画分の両方が保持される。次に、その負画分は、CD14およびCD45RAまたはCD19の発現に基づいて負の選択に供され、かつCD62LまたはCCR7などのセントラルメモリーT細胞に特徴的なマーカーに基づいて正の選択に供される;この場合、正の選択と負の選択は任意の順序で行われる。
【0198】
CD4+ Tヘルパー細胞は、細胞表面抗原を有する細胞集団を特定することによって、ナイーブ細胞、セントラルメモリー細胞およびエフェクター細胞に分類されてもよい。CD4+リンパ球は、標準的な方法によって取得され得る。いくつかの態様において、ナイーブCD4+ Tリンパ球は、CD45RO-、CD45RA+、CD62L+、またはCD4+ T細胞である。いくつかの態様において、セントラルメモリーCD4+細胞は、CD62L+およびCD45RO+である。いくつかの態様において、エフェクターCD4+細胞は、CD62L-およびCD45RO-である。
【0199】
1つの例において、負選択によりCD4+細胞について濃縮するために、モノクローナル抗体カクテルは典型的に、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DRおよびCD8に対する抗体を含む。いくつかの態様において、抗体または結合パートナーは、正および/または負選択により細胞を分離できるよう、固体支持体またはマトリックス、例えば磁気ビーズまたは常磁性ビーズに結合される。例えば、いくつかの態様において、細胞および細胞集団は、(Methods in Molecular Medicine, vol. 58: Metastasis Research Protocols, Vol. 2: Cell Behavior In Vitro and In Vivo, p 17-25 Edited by: S. A. Brooks and U. Schumacher (著作権) Humana Press Inc., Totowa, NJで概説されている)免疫磁気(または親和性磁気)分離技術を用いて分離または単離される。
【0200】
いくつかの局面において、分離される細胞の、インキュベートされたサンプルまたは組成物は、小さな、磁化可能なまたは磁気反応性の材料、例えば磁気反応粒子または微粒子、例えば常磁性ビーズ(例えば、DynabeadsまたはMACS(登録商標)ビーズ)を含む選択試薬と共にインキュベートされる。磁気反応性材料、例えば粒子は、通常、分離が望まれる、例えば負または正選択されることが望まれる、細胞、細胞群または細胞集団に存在する分子、例えば表面マーカーに特異的に結合する結合パートナー、例えば抗体に、直接的または間接的に付着される。
【0201】
いくつかの態様において、磁気粒子またはビーズは、特異的結合メンバー、例えば抗体または他の結合パートナーに結合された磁気反応性材料を含む。磁気分離方法において使用される多くの磁気反応性材料が周知であり、例えば、参照により本明細書に組み入れられるMoldayの米国特許第4,452,773号および欧州特許明細書EP 452342 Bに記載されるものがある。コロイド状のサイズ指定された粒子、例えばOwenの米国特許第4,795,698号およびLibertiらの米国特許第5,200,084号に記載されるものもまた使用される。
【0202】
インキュベーションは通常、磁気粒子またはビーズに付着された、抗体もしくは結合パートナーまたはそのような抗体もしくは結合パートナーに特異的に結合する分子、例えば二次抗体もしくは他の試薬が、サンプル中の細胞上に存在する場合に細胞表面分子に特異的に結合する条件下で、実施される。
【0203】
特定の態様において、磁気反応性粒子は、一次抗体もしくは他の結合パートナー、二次抗体、レクチン、酵素またはストレプトアビジンでコーティングされる。特定の態様において、磁気粒子は、1つまたは複数のマーカーに特異的な一次抗体のコーティングを通じて細胞に付着される。特定の態様において、ビーズではなく細胞が、一次抗体または結合パートナーによって標識され、次いで細胞型特異的な二次抗体または他の結合パートナー(例えばストレプトアビジン)でコーティングされた磁気粒子が添加される。特定の態様において、ストレプトアビジンコーティングされた磁気粒子が、ビオチニル化された一次または二次抗体と組み合わせて使用される。
【0204】
いくつかの局面において、分離以下の手順で達成される:サンプルは磁場に置かれ、磁気反応性または磁化可能粒子が付着された細胞は、磁石に誘引され、非標識細胞から分離される。正選択の場合、磁石に誘引される細胞が維持され、負選択の場合、誘引されない細胞(非標識細胞)が維持される。いくつかの局面において、同じ選択工程の間に正および負選択の組み合わせが実施され、正および負画分が維持され、さらに処理されるかまたはさらなる分離工程に供される。
【0205】
いくつかの態様において、親和性ベースの選択は、磁気活性化細胞選別(MACS)(Miltenyi Biotech, Auburn, CA)を通じた選択である。磁気活性化細胞選別(MACS)(例えば、CliniMACS)システムは、磁化粒子が付着した細胞の高純度選択を実現する。特定の態様において、MACSは、外部磁場の適用後に非標的種および標的種が順次溶出される様式で動作する。すなわち、磁化粒子に付着した細胞はその場で維持され、非付着種が溶出する。次いで、この第1の溶出工程が完了した後に、磁場内で捕捉され溶出を妨げられていた種が、溶出し回収され得るように何らかの様式で自由にされる。特定の態様において、非標的細胞は、標識され、異種細胞集団から排除される。
【0206】
いくつかの態様において、磁気反応性粒子は、その後にインキュベート、培養および/または改変される細胞に付着したまま維持され、いくつかの局面において、粒子は、患者に投与するための細胞に付着したまま維持される。いくつかの態様において、磁化可能または磁気反応性粒子は、細胞から除去される。細胞から磁化可能粒子を除去する方法は公知であり、例えば、競合する非標識抗体、磁化可能粒子または切断可能なリンカーにコンジュゲートされた抗体等の使用を含む。いくつかの態様において、磁化可能粒子は、生分解性である。
【0207】
いくつかの態様において、細胞療法を製造する、作製する、または産生するためのプロセスは、組換え受容体、例えばCARを細胞中に導入する工程の前に、CD4+細胞およびCD8+細胞を、別々に単離し、次いで一緒に混合する工程を含む。いくつかの態様において、CD4+細胞およびCD8+細胞を、遺伝子操作された細胞を産生するための、組換え受容体をコードする作用物質の導入および/またはその後の処理工程の1つもしくは複数の前に、1:5~5:1のCD4+ T細胞対CD8+ T細胞比、例えば、1:3~3:1、1:2~2:1で、または1:1もしくは約1:1のCD4+細胞対CD8+細胞比で混合する。
【0208】
いくつかの態様において、細胞療法を製造する、作製する、または産生するためのプロセスは、CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞を別々に単離する工程、ならびに、選択または単離されたCD4+ T細胞に対して1つまたは複数のその後の工程を別々に行うこと、および選択または単離されたCD8+ T細胞に対して1つまたは複数のその後の工程を別々に行うことを含む。そのような態様の局面において、組換え受容体、例えばCARで遺伝子操作されたCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞の別々の組成物などの、形質導入された細胞は、細胞を製剤化する工程の前に、単一組成物として一緒に組み合わせることができる。そのような態様の他の局面において、形質導入された細胞、例えば、組換え受容体、例えばCARで遺伝子操作されたCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞の別々の組成物などの、形質導入された細胞は、例えば、対象に対する別々の投与のために、別々に製剤化される。
【0209】
B. 細胞の活性化および刺激
いくつかの態様において、提供される方法によって評価されるかまたは解析される細胞などの、細胞を製造するかまたは操作するための方法は、選択された細胞集団などの、単離された細胞を刺激する工程を含む。インキュベーションは、例えば形質導入による、組み込みのための導入遺伝子配列を含有するポリヌクレオチドの導入などの、ポリヌクレオチドの導入の前であってもよく、またはそれに関連していてもよい。いくつかの態様において、刺激は、例えば、形質導入の前に、細胞の活性化および/または増殖を結果としてもたらす。
【0210】
いくつかの態様において、製造または操作は、選択された細胞などの、細胞のインキュベーションのための工程を含み、該インキュベーション工程は、細胞の培養(culture)、培養(cultivation)、刺激、活性化、および/または増殖を含むことができる。いくつかの態様において、組成物または細胞を、刺激条件または刺激剤の存在下でインキュベートする。そのような条件には、集団における細胞の増殖、活性化、および/もしくは生存を誘導するように、抗原曝露を模倣するように、かつ/または組換え抗原受容体の導入などの遺伝子操作のために細胞をプライミングするように、設計された条件が含まれる。
【0211】
いくつかの態様において、刺激および/または活性化のための条件は、特定の培地、温度、酸素含有量、二酸化炭素含有量、時間、作用物質、例えば、栄養素、アミノ酸、抗生物質、イオン、ならびに/または刺激因子、例えばサイトカイン、ケモカイン、抗原、結合パートナー、融合タンパク質、組換え可溶性受容体、および細胞を活性化するように設計された任意の他の作用物質のうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0212】
いくつかの態様において、刺激条件または刺激剤は、TCR複合体の細胞内シグナル伝達ドメインを刺激するかまたは活性化することができる1つまたは複数の作用物質、例えばリガンドを含む。いくつかの局面において、作用物質は、T細胞におけるTCR/CD3細胞内シグナル伝達カスケードをオンにするか、または開始し、例えば、一次シグナルを送達するのに、例えば、ITAM誘導性シグナルの活性化を開始するのに適した作用物質であり、例えば、TCR構成成分に特異的なもの、例えば抗CD3である。いくつかの態様において、刺激条件は、T細胞共刺激受容体に特異的なもの、例えば、抗CD28または抗4-1BBなどの、共刺激シグナルを促進する1つまたは複数の作用物質を含む。いくつかの態様において、そのような作用物質および/またはリガンドは、ビーズなどの固体支持体に結合していてもよく、および/または1つまたは複数のサイトカインであってもよい。刺激剤の中には、抗CD3/抗CD28ビーズ(例えば、DYNABEADS(登録商標) M-450 CD3/CD28 T Cell Expander、および/またはExpACT(登録商標)ビーズ)がある。任意で、拡大増殖方法は、(例えば、少なくとも約0.5 ng/mLの濃度で)培養培地に抗CD3および/または抗CD28抗体を加える工程をさらに含んでもよい。いくつかの態様において、刺激剤は、IL-2、IL-7、および/またはIL-15を含む。いくつかの局面において、IL-2濃度は、少なくとも約10単位/mL、少なくとも約50単位/mL、少なくとも約100単位/mL、または少なくとも約200単位/mLである。
【0213】
条件は、特定の培地、温度、酸素含有量、二酸化炭素含有量、時間、作用物質、例えば栄養素、アミノ酸、抗生物質、イオンおよび/または刺激因子、例えばサイトカイン、ケモカイン、抗原、結合パートナー、融合タンパク質、組換え可溶性受容体、および細胞を活性化するよう設計された任意の他の作用物質の1つまたは複数を含み得る。
【0214】
いくつかの局面において、インキュベーションは、Riddellらに対する米国特許第6,040,177号、Klebanoff et al.(2012) J Immunother. 35(9): 651-660、Terakuraet al. (2012) Blood.1:72-82および/またはWang et al. (2012) J Immunother. 35(9):689-701に記載されるような技術に従って実施される。
【0215】
いくつかの態様において、1つまたは複数の刺激条件または刺激剤の存在下でのインキュベーションの少なくとも一部は、WO2016/073602に記載されるような、例えば遠心回転下で、遠心チャンバーの内部キャビティで行われる。いくつかの態様において、遠心チャンバーで行われるインキュベーションの少なくとも一部は、刺激および/または活性化を誘導するための試薬(複数可)と混合することを含む。いくつかの態様において、選択された細胞などの細胞を、遠心チャンバー内で刺激条件または刺激剤と混合する。そのようなプロセスのいくつかの局面では、ある量の細胞を、細胞培養プレートまたは他のシステムで同様の刺激を行う時に通常使用される量よりもはるかに少ない量の1つまたは複数の刺激条件または刺激剤と混合する。
【0216】
いくつかの態様において、刺激剤は、遠心チャンバー内で混合せずに、チューブまたはバッグ内で定期的に振とうまたは回転しながら選択を行う場合に同数または同量の細胞を選択するのとほぼ同じまたは同様の効率を達成するために通常使用されるか、または必要とされる刺激剤の量と比較して、実質的に少ない(例えば、該量のわずか5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%または80%にすぎない)量で、チャンバーのキャビティ内の細胞に添加される。いくつかの態様において、インキュベーションは、例えば10mL~200mL、例えば少なくとも10mL、20mL、30mL、40mL、50mL、60mL、70mL、80mL、90mL、100mL、150mLもしくは200mL、または約少なくとも10mL、20mL、30mL、40mL、50mL、60mL、70mL、80mL、90mL、100mL、150mLもしくは200mL、または10mL、20mL、30mL、40mL、50mL、60mL、70mL、80mL、90mL、100mL、150mLもしくは200mL、または約10mL、約20mL、約30mL、約40mL、約50mL、約60mL、約70mL、約80mL、約90mL、約100mL、約150mLもしくは約200mLの試薬のインキュベーションにより目標体積を達成するために、細胞および刺激剤にインキュベーション緩衝液を添加して行われる。ある態様では、インキュベーション緩衝液と刺激剤を事前に混合してから細胞に添加する。ある態様では、インキュベーション緩衝液と刺激剤を別々に細胞に添加する。いくつかの態様において、刺激インキュベーションは定期的な穏やかな混合条件を用いて行われ、これはエネルギー的に有利な相互作用を促進するのに役立ち、それにより、細胞の刺激および活性化を達成しながら、より少ない総刺激剤の使用を可能にする。
【0217】
いくつかの態様において、インキュベーションは一般に、混合条件下で、例えば一般に比較的低い力または速度でのスピニング(回転)の存在下で行われ、例えば600rpm~1700rpmまたは約600rpm~1700rpm(例えば、少なくとも600rpm、1000rpm、1500rpmもしくは1700rpm、または約600rpm、約1000rpm、約1500rpmもしくは約1700rpm、または600rpm、1000rpm、1500rpmもしくは1700rpm)などの、細胞のペレット化に使用される速度より低い速度で、または例えば80g~100gまたは約80g~100g(例えば、少なくとも80g、85g、90g、95gもしくは100g、または約80g、約85g、約90g、約95gもしくは100g、または80g、85g、90g、95gもしくは100g)の、サンプルへのまたは該チャンバーもしくは他の容器の壁へのRCFで実施される。いくつかの態様において、スピンは、そのような低速でのスピンとそれに続く休止期間との繰り返される間隔を用いて、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10秒間のスピンおよび/または休止、例えば約1または2秒のスピンおよびその後の約5、6、7または8秒間の休止を用いて、実施される。
【0218】
いくつかの態様において、例えば刺激剤とのインキュベーションの全持続時間は、1時間~96時間、1時間~72時間、1時間~48時間、4時間~36時間、8時間~30時間または12時間~24時間、あるいは約1時間~96時間、約1時間~48時間、約4時間~36時間、約8時間~30時間または約12時間~24時間、例えば、少なくとも6時間、12時間、18時間、24時間、36時間もしくは72時間、または約少なくとも6時間、12時間、18時間、24時間、36時間もしくは72時間である。いくつかの態様において、さらなるインキュベーションは、1時間~48時間、4時間~36時間、8時間~30時間または12時間~24時間の間、あるいは約1時間~48時間、約4時間~36時間、約8時間~30時間または約12時間~24時間の間である(両端の時間を含む)。
【0219】
C. 導入遺伝子配列を含有するポリヌクレオチドの導入
いくつかの態様において、提供される方法は、導入遺伝子配列をコードするポリヌクレオチドの導入によって操作された細胞を評価するために行うことができる。いくつかの態様において、細胞、例えば、提供される方法によって評価されるかまたは解析される細胞を、製造するかまたは操作するための方法は、組換え受容体などの組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列を含有するポリヌクレオチドの導入のための工程を含む。いくつかの態様において、操作された細胞は、細胞のゲノム中への導入遺伝子配列の組み込みのための条件下で、導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドが導入されている。細胞における、導入遺伝子配列、例えば、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列を含有するポリヌクレオチドの導入は、多数の様々な送達法のいずれかを用いて行われてもよい。いくつかの局面において、導入遺伝子配列の組み込みのための条件は、例えば、細胞、例えば免疫細胞のゲノム中への導入遺伝子配列の組み込みのためのウイルス形質導入システムを用いる、本明細書に記載されるいずれかを含む。
【0220】
いくつかの局面において、組換え受容体などの組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列を含有するポリヌクレオチドは、ベクターに含まれ得る。いくつかの局面において、そのようなベクターには、レンチウイルスシステムおよびガンマレトロウイルスシステム、ならびにPiggyBacまたはSleeping Beautyベースの遺伝子移入システムなどのトランスポゾンベースのシステムを含む、ウイルスシステムおよび非ウイルスシステムが含まれる。例示的な方法には、ウイルス、例えば、レトロウイルスまたはレンチウイルス、形質導入、トランスポゾン、およびエレクトロポレーションを介したものを含む、細胞中への核酸の導入または送達のための方法が含まれる。
【0221】
いくつかの態様において、ポリヌクレオチドの導入は、例えば、細胞を、例えば、サイトカインまたは活性化マーカーの発現によって測定されるような、増殖、生存、および/または活性化などの応答を誘導する刺激物と組み合わせることにより、最初に細胞を刺激することによって、ならびにその後続く、活性化された細胞の形質導入、および臨床応用に十分な数への培養における拡大増殖によって達成される。
【0222】
いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは、直鎖状もしくは環状DNAまたは直鎖状RNAなどの、直鎖状または環状の核酸分子であり、核酸分子を細胞中に送達するための方法のいずれかを用いて送達することができる。特定の態様において、ポリヌクレオチドは、例えば、非ウイルスベクターとしてまたは非ウイルスベクター内で、ヌクレオチド形態で細胞中に導入される。いくつかの態様において、非ウイルスベクターは、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、一過性細胞圧縮もしくはスクイージング(例えば、Lee, et al. (2012) Nano Lett 12: 6322-27に記載される)、脂質媒介トランスフェクション、ペプチド媒介送達、例えば、細胞貫通ペプチド、またはそれらの組み合わせなどであるがこれらに限定されない、遺伝子送達のための任意の適したかつ/または公知の非ウイルス法による形質導入および/またはトランスフェクションに適している、ポリヌクレオチド、例えば、DNAまたはRNAポリヌクレオチドであるか、またはそれを含む。
【0223】
いくつかの態様において、組換え核酸は、エレクトロポレーションを介してT細胞中に移入される(例えば、Chicaybam et al, (2013) PLoS ONE 8(3): e60298およびVan Tedeloo et al. (2000) Gene Therapy 7(16): 1431-1437を参照されたい)。いくつかの態様において、組換え核酸は、遺伝子転位を介してT細胞中に移入される(例えば、Manuri et al. (2010) Hum Gene Ther 21(4): 427-437;Sharma et al. (2013) Molec Ther Nucl Acids 2, e74;およびHuang et al. (2009) Methods Mol Biol 506: 115-126を参照されたい)。免疫細胞に遺伝物質を導入して発現させる他の方法には、リン酸カルシウムトランスフェクション(例えば、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York. N.Y.に記載されている通り)、プロトプラスト融合、カチオン性リポソーム媒介トランスフェクション、タングステン粒子促進性微粒子銃(Johnston, Nature, 346: 776-777 (1990))、およびリン酸ストロンチウムDNA共沈(Brash et al., Mol. Cell Biol., 7: 2031-2034 (1987))が含まれる。
【0224】
組換え産物をコードする核酸の移入のための他のアプローチおよびベクターは、例えば、国際特許出願公開番号WO2014055668、および米国特許第7,446,190号に記載されるものである。
【0225】
いくつかの態様において、細胞、例えばT細胞は、拡大増殖中または拡大増殖後のいずれかに、例えば、T細胞受容体(TCR)またはキメラ抗原受容体(CAR)などの組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列を含有するポリヌクレオチドを含有するウイルス調製物を、形質導入されてもよい。所望の受容体のポリヌクレオチドの導入のためのこのトランスフェクションは、例えば、任意の適したレトロウイルスベクターで行うことができる。次いで、遺伝子改変された細胞集団を、初期刺激(例えば、抗CD3/抗CD28刺激)から解放し、続いて、例えば、新規に導入された受容体を介した、第2のタイプの刺激で刺激することができる。この第2のタイプの刺激には、ペプチド/MHC分子の形態での抗原刺激、遺伝子導入された受容体の同族(架橋)リガンド(例えば、CARの天然リガンド)、または(例えば、受容体内の定常領域を認識することによって)新たな受容体のフレームワーク内に直接結合する任意のリガンド(抗体など)が含まれ得る。例えば、Cheadle et al, "Chimeric antigen receptors for T-cell based therapy" Methods Mol Biol. 2012; 907:645-66またはBarrett et al., Chimeric Antigen Receptor Therapy for Cancer Annual Review of Medicine Vol. 65: 333-347 (2014) を参照されたい。
【0226】
場合によっては、細胞、例えばT細胞が活性化されることを必要としないベクターが用いられてもよい。いくつかのそのような場合には、細胞は、活性化の前に選択されかつ/または形質導入されてもよい。したがって、細胞は、細胞の培養の前にまたはその後に、場合によっては、培養の少なくとも一部分と同時にまたはその最中に、操作されてもよい。
【0227】
いくつかの局面において、細胞は、さらに、サイトカインまたは他の因子の発現を促進するように操作される。追加の核酸のうち、例えば、導入のための遺伝子は、移入された細胞の生存能および/または機能を促進することなどによって、治療の有効性を改善する遺伝子;インビボでの生存または局在を評価するなどのために、細胞の選択および/または評定用の遺伝マーカーを提供する遺伝子;例えば、細胞をインビボでネガティブ選択の影響を受けやすくすることによって、安全性を向上させる遺伝子であり、これらは、Lupton S. D. et al., Mol. and Cell Biol., 11:6 (1991);およびRiddell et al., Human Gene Therapy 3:319-338 (1992)に記載されている;また、ドミナントポジティブ選択可能マーカーとネガティブ選択可能マーカーとの融合に由来する二機能性選択可能融合遺伝子の使用を記載している、WO 1992/008796およびWO 1994/028143も参照されたい。例えば、Riddellらの米国特許第6,040,177号の14~17欄を参照されたい。
【0228】
いくつかの態様において、導入は、組成物の1つまたは複数の細胞を、組換えタンパク質、例えば組換え受容体をコードする核酸分子と接触させることによって行われる。いくつかの態様において、接触は、スピノキュレーション(例えば、遠心接種)などの遠心分離で実施することができる。そのような方法には、WO2016/073602に記載されるような方法のいずれかが含まれる。例示的な遠心チャンバーには、A-200/FおよびA-200遠心チャンバーを含む、Sepax(登録商標)およびSepax(登録商標)2システムでの使用のためのもの、ならびにそのようなシステムでの使用のための様々なキットを含む、Biosafe SAによって製造販売されているものが含まれる。例示的なチャンバー、システム、ならびに処理計測器およびキャビネットは、例えば、米国特許第6,123,655号、米国特許第6,733,433号、およびUS 2008/0171951、およびWO 00/38762に記載されており、これらの各々の内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。そのようなシステムでの使用のための例示的なキットには、製品名CS-430.1、CS-490.1、CS-600.1、またはCS-900.2としてBioSafe SAにより販売されている使い捨てキットが含まれるが、これらに限定されない。
【0229】
いくつかの態様において、システムは、他の計測器と共に含まれ、かつ/または他の計測器に付随して配置され、該他の計測器には、システムにおいて行われる形質導入工程および1つまたは複数の様々な他の処理工程、例えば、本明細書またはWO2016/073602に記載されるような遠心チャンバーシステムと共にまたはそれに関連して行うことができる1つまたは複数の処理工程の局面を操縦し、自動化し、制御し、かつ/またはモニターするための計測器が含まれる。いくつかの態様におけるこの計測器は、キャビネット内に含有される。いくつかの態様において、計測器は、制御回路を含有するハウジング、遠心分離機、カバー、モーター、ポンプ、センサー、ディスプレイ、およびユーザーインターフェースを含む、キャビネットを含む。例示的な装置は、米国特許第6,123,655号、米国特許第6,733,433号、およびUS 2008/0171951に記載されている。
【0230】
いくつかの態様において、システムは、一連の容器、例えば、バッグ、チューブ、ストップコック、クランプ、コネクター、および遠心チャンバーを含む。いくつかの態様において、バッグなどの容器は、形質導入されることになる細胞およびウイルスベクター粒子を、同じバッグまたは別々のバッグなどの同じ容器または別々の容器中に含有する、1つまたは複数のバッグなどの容器を含む。いくつかの態様において、システムは、さらに、チャンバー中に引き込まれる希釈液および/もしくは洗浄液などの媒体、ならびに/または、方法中に構成成分および/もしくは組成物を希釈し、再懸濁し、かつ/もしくは洗浄するための他の構成成分を含有する、1つまたは複数のバッグなどの容器を含む。容器は、入力ライン、希釈液ライン、洗浄ライン、廃棄物ライン、および/または出力ラインに対応する位置などの、システムにおける1つまたは複数の位置に接続することができる。
【0231】
いくつかの態様において、チャンバーは、遠心分離機に付随し、その遠心分離機は、チャンバーの、例えばその回転軸周りの回転を実施することができる。回転は、細胞の形質導入に関連したインキュベーションの前、その最中、および/もしくはその後に、ならびに/または他の処理工程の1つもしくは複数において行ってもよい。したがって、いくつかの態様において、様々な処理工程の1つまたは複数は、例えば、特定の力での、回転下で行われる。チャンバーは、典型的には、チャンバーが遠心分離中に垂直に位置し、側壁および軸が垂直またはほぼ垂直であり、1つまたは複数の末端壁が水平またはほぼ水平であるように、垂直またはほぼ垂直の回転が可能である。
【0232】
いくつかの態様において、細胞、ウイルス粒子、および試薬を含有する組成物を、一般に相対的に低い力または速度で、例えば細胞をペレット化するために用いられるよりも低い速度で、例えば600 rpm~1700 rpmまたは約600 rpm~1700 rpm(例えば、600 rpm、1000 rpm、もしくは1500 rpmもしくは1700 rpm、または約600 rpm、1000 rpm、もしくは1500 rpmもしくは1700 rpm、または少なくとも600 rpm、1000 rpm、1500 rpmもしくは1700 rpm)で、回転させることができる。いくつかの態様において、回転は、例えば、チャンバーまたはキャビティの内壁または外壁で測定されるような、100 g~3200 gまたは約100 g~3200 g(例えば、100 g、200 g、300 g、400 g、500 g、1000 g、1500 g、2000 g、2500 g、3000 g、もしくは3200 g、または約100 g、200 g、300 g、400 g、500 g、1000 g、1500 g、2000 g、2500 g、3000 g、もしくは3200 g、または少なくとも100 g、200 g、300 g、400 g、500 g、1000 g、1500 g、2000 g、2500 g、3000 g、もしくは3200 g、または少なくとも約100 g、200 g、300 g、400 g、500 g、1000 g、1500 g、2000 g、2500 g、3000 g、もしくは3200 g)の力、例えば、相対遠心力で行われる。用語「相対遠心力」またはRCFは、回転軸と比較して空間の特定の点で、地球の重力に対して物体または物質(例えば、細胞、サンプル、もしくはペレット、および/または回転されるチャンバーもしくは他の容器における一地点)に与えられる有効な力であると、一般に理解されている。値は、重力、回転速度、および回転半径(回転軸からRCFが測定されている物体、物質、または粒子までの距離)を考慮して、周知の公式を用いて決定され得る。
【0233】
D. 核酸およびベクター
いくつかの態様において、提供される方法を用いて評価されるかまたは解析される細胞は、遺伝子操作されている免疫細胞を含む。いくつかの態様において、細胞、例えばT細胞は、組換え受容体などの組換えタンパク質を発現するように遺伝子操作される。いくつかの態様において、操作は、組換えタンパク質またはその一部分もしくは構成成分をコードする導入遺伝子配列を含有する1つまたは複数のポリヌクレオチドを導入することによって行われる。いくつかの局面において、例えば、導入遺伝子配列を含有する、ポリヌクレオチドの一部分は、細胞、例えば、操作されている細胞のゲノム中への配列の組み込みのために導入される。いくつかの局面において、ポリヌクレオチドは、操作される細胞中へのポリヌクレオチドの導入のために、ウイルスベクターなどのベクターに含まれる。
【0234】
いくつかの態様において、導入遺伝子配列を含有するポリヌクレオチドは、ベクター分子に含まれ得る。いくつかの態様において、ウイルスは、DNAウイルス(例えば、dsDNAまたはssDNAウイルス)である。いくつかの態様において、ウイルスは、RNAウイルス(例えば、ssRNAウイルス)である。例示的なウイルスベクター/ウイルスには、例えば、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、および単純ヘルペスウイルス、または本明細書の他所に記載されるウイルスのいずれかが含まれる。ポリヌクレオチドを、例えば、複製起点、プロモーター、および抗生物質耐性をコードする遺伝子などの追加の配列を有するベクター分子の一部として、細胞中に導入することができる。さらに、ポリヌクレオチドを、裸の核酸として、リポソーム、ナノ粒子、もしくはポロキサマーなどの物質と複合体形成した核酸として、導入することができ、またはウイルス(例えば、アデノウイルス、AAV、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、およびインテグラーゼ欠損レンチウイルス(IDLV))によって送達することができる。
【0235】
いくつかの態様において、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列などの、導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドは、例えば、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、およびヒト免疫不全ウイルス(HIV)に由来するベクターなどの組換え感染性ウイルス粒子を用いて、細胞中に移入される。いくつかの態様において、組換え核酸は、ガンマレトロウイルスベクター(例えば、Koste et al. (2014) Gene Therapy 2014 Apr 3. doi: 10.1038/gt.2014.25;Carlens et al. (2000) Exp Hematol 28(10): 1137-46;Alonso-Camino et al. (2013) Mol Ther Nucl Acids 2, e93;Park et al., Trends Biotechnol. 2011 November 29(11): 550-557を参照されたい)またはHIV-1由来のレンチウイルスベクターなどの組換えレンチウイルスベクターまたはレトロウイルスベクターを用いて、T細胞中に移入される。
【0236】
いくつかの態様において、レトロウイルスベクター、例えば、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)、骨髄増殖性肉腫ウイルス(MPSV)、マウス胚性幹細胞ウイルス(MESV)、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)、脾フォーカス形成ウイルス(SFFV)、またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)に由来するレトロウイルスベクターは、末端反復配列(LTR)を有する。いくつかの態様において、レトロウイルスには、任意の鳥類または哺乳類の細胞供給源に由来するものが含まれる。レトロウイルスは、典型的には広宿主性であり、これは、それらが、ヒトを含むいくつかの種の宿主細胞に感染できることを意味する。いくつかの態様において、発現されることになる遺伝子は、レトロウイルスのgag、pol、および/またはenv配列に置き換わる。多数の実例となるレトロウイルスシステムが、記載されている(例えば、米国特許第5,219,740号;第6,207,453号;第5,219,740号;Miller and Rosman (1989) BioTechniques 7:980-990;Miller, A.D. (1990) Human Gene Therapy 1:5-14;Scarpa et al. (1991) Virology 180:849-852;Burns et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:8033-8037;およびBoris-Lawrie and Temin (1993) Cur. Opin. Genet. Develop. 3:102-109)。
【0237】
レンチウイルス形質導入の方法は、公知である。例示的な方法は、例えば、Wang et al. (2012) J. Immunother. 35(9): 689-701;Cooper et al. (2003) Blood. 101:1637-1644;Verhoeyen et al. (2009) Methods Mol Biol. 506: 97-114;およびCavalieri et al. (2003) Blood. 102(2): 497-505に記載されている。
【0238】
他の局面において、ポリヌクレオチドは、ウイルス遺伝子移入法および/または非ウイルス遺伝子移入法によって送達される。いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは、アデノ随伴ウイルス(AAV)を介して細胞に送達される。AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、およびそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない、任意のAAVベクターを用いることができる。いくつかの場合には、AAVは、キャプシドセロタイプとの比較において非相同セロタイプであるLTR(例えば、AAV5、AAV6、またはAAV8キャプシドを有するAAV2 LTR)を含む。いくつかの態様において、作用物質を含有するポリヌクレオチドおよび/またはポリヌクレオチドは、組換えAAVによって送達される。いくつかの態様において、AAVは、宿主細胞、例えば、本明細書に記載されるような標的細胞のゲノム中に、そのゲノムを組み込むことができる。別の態様において、AAVは、自己相補的アデノ随伴ウイルス(scAAV)、例えば、互いにアニーリングして二本鎖DNAを形成する鎖を両方ともパッケージングするscAAVである。開示される方法において用いられ得るAAVセロタイプには、AAV1、AAV2、改変されたAAV2(例えば、Y444F、Y500F、Y730F、および/またはS662Vで改変)、AAV3、改変されたAAV3(例えば、Y705F、Y731F、および/またはT492Vで改変)、AAV4、AAV5、AAV6、改変されたAAV6(例えば、S663Vおよび/またはT492Vで改変)、AAV7、AAV8、AAV 8.2、AAV9、AAV.rh10、改変されたAAV.rh10、AAV.rh32/33、改変されたAAV.rh32/33、AAV.rh43、改変されたAAV.rh43、AAV.rh64R1、改変されたAAV.rh64R1が含まれ、AAV2/8、AAV2/5、およびAAV2/6などのシュードタイプのAAVもまた、開示される方法において用いることができる。
【0239】
いくつかの態様において、導入遺伝子配列は、ベクターに含有されるか、または1つもしくは複数のベクター中にクローニングされ得る。いくつかの態様において、1つまたは複数のベクターを、宿主細胞、例えば、操作用の細胞を形質転換するか、またはトランスフェクトするために用いることができる。例示的なベクターには、導入、増殖、および拡大増殖のため、または発現のため、またはその両方のために設計された、プラスミドおよびウイルスベクターなどのベクターが含まれる。いくつかの局面において、ベクターは、発現ベクター、例えば組換え発現ベクターである。いくつかの態様において、組換え発現ベクターは、標準的な組換えDNA技術を用いて調製することができる。
【0240】
いくつかの態様において、ベクターは、pUCシリーズ(Fermentas Life Sciences)、pBluescriptシリーズ(Stratagene, LaJolla, Calf.)、pETシリーズ(Novagen, Madison, Wis.)、pGEXシリーズ(Pharmacia Biotech, Uppsala, Sweden)、またはpEXシリーズ(Clontech, Palo Alto, Calif.)であり得る。場合によっては、λG10、λGT11、λZapII(Stratagene)、λEMBL4、およびλNM1149などのバクテリオファージベクターもまた、用いることができる。いくつかの態様において、植物発現ベクターを用いることができ、pBI01、pBI101.2、pBI101.3、pBI121、およびpBIN19(Clontech)が含まれる。いくつかの態様において、動物発現ベクターには、pEUK-Cl、pMAM、およびpMAMneo(Clontech)が含まれる。
【0241】
いくつかの態様において、ベクターは、レトロウイルスベクターなどのウイルスベクターである。いくつかの態様において、導入遺伝子配列および/または追加のポリペプチドは、レトロウイルスベクターもしくはレンチウイルスベクターを介して、またはトランスポゾンを介して、細胞中に導入される(例えば、Baum et al. (2006) Molecular Therapy: The Journal of the American Society of Gene Therapy. 13:1050-1063;Frecha et al. (2010) Molecular Therapy 18:1748-1757;およびHackett et al. (2010) Molecular Therapy 18:674-683を参照されたい)。
【0242】
いくつかの態様において、組換えタンパク質、例えば組換え受容体、および/または追加のポリペプチドをコードする1つまたは複数の導入遺伝子配列またはベクターは、拡大増殖中または拡大増殖後のいずれかに、細胞、例えばT細胞中に導入されてもよい。導入遺伝子配列またはベクターのこの導入は、例えば、任意の適したレトロウイルスベクターで行うことができる。次いで、結果として生じた遺伝子改変された細胞を、初期刺激(例えば、抗CD3/抗CD28刺激)から解放し、続いて、(例えば、新規に導入された組換えタンパク質、例えば組換え受容体を介した)第2のタイプの刺激で刺激することができる。この第2のタイプの刺激には、ペプチド/MHC分子の形態での抗原刺激、遺伝子導入された受容体の同族(架橋)リガンド(例えば、CARの天然抗原および/もしくはリガンド)、または(例えば、受容体内の定常領域を認識することによって)新たな受容体のフレームワーク内に直接結合する任意のリガンド(抗体など)が含まれ得る。例えば、Cheadle et al, "Chimeric antigen receptors for T-cell based therapy" Methods Mol Biol. 2012; 907:645-66またはBarrett et al., Chimeric Antigen Receptor Therapy for Cancer Annual Review of Medicine Vol. 65: 333-347 (2014) を参照されたい。
【0243】
場合によっては、細胞、例えばT細胞が活性化されることを必要としないベクターが用いられてもよい。いくつかのそのような場合には、細胞は、活性化または刺激の前に、選択され、かつ/または形質導入されてもよい。したがって、細胞は、細胞の培養の前にまたはその後に、場合によっては、培養の少なくとも一部分と同時にまたはその最中に操作されてもよい。
【0244】
1. 形質導入のためのウイルスベクター粒子の調製
いくつかの態様において、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列などの、導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドは、組換え感染性ウイルス粒子を用いて細胞中に移入される。いくつかの局面において、ポリヌクレオチドは、ウイルス形質導入を介して導入される。いくつかの局面において、導入遺伝子配列は、ウイルスベクターに含まれる。ウイルスベクターゲノムは、典型的には、パッケージングまたはプロデューサー細胞株中にトランスフェクトすることができる、プラスミド形態で構築される。そのような例のいずれかにおいて、組換え受容体などの組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列は、一般的にはウイルスゲノムの非必須領域などの、ウイルスベクターの領域に、挿入されるかまたは配置される。いくつかの態様において、複製欠損のウイルスを産生するために、導入遺伝子配列は、ある特定のウイルス配列の代わりに、ウイルスゲノム中に挿入される。
【0245】
種々の公知の方法のいずれかを用いて、そのゲノムがウイルスベクターゲノムのRNAコピーを含有するレトロウイルス粒子を産生することができる。いくつかの態様において、少なくとも2つの構成成分が、ウイルスベースの遺伝子送達システムの作製に関与している:第1に、構造タンパク質およびウイルスベクター粒子を作製するために必要な酵素を包含する、パッケージングプラスミド、ならびに第2に、ウイルスベクター自体、すなわち、移入される遺伝物質。これらの構成成分の一方または両方の設計には、バイオセーフティセーフガード(biosafety safeguard)が導入され得る。
【0246】
いくつかの態様において、パッケージングプラスミドは、エンベロープタンパク質以外の全てのレトロウイルス(例えば、HIV-1)タンパク質を含有することができる(Naldini et al., 1998)。他の態様において、ウイルスベクターは、病原性に関連する遺伝子、例えば、vpr、vif、vpu、およびnef、ならびに/またはHIVの主要なトランスアクチベーターであるTatなどの、追加のウイルス遺伝子を欠くことができる。いくつかの態様において、HIVベースのレンチウイルスベクターなどのレンチウイルスベクターは、親ウイルスの3つの遺伝子:gag、pol、およびrevのみを含み、これが、組換えによる野生型ウイルスの再構成の可能性を低減させるか、または排除する。
【0247】
いくつかの態様において、ウイルスベクターゲノムは、該ウイルスベクターゲノムから転写されたウイルスゲノムRNAをウイルス粒子中にパッケージングするために必要な構成成分を全て含有する、パッケージング細胞株中に導入される。あるいは、ウイルスベクターゲノムは、例えば、組換えタンパク質をコードする、関心対象の1つまたは複数の導入遺伝子配列に加えて、ウイルス構成成分をコードする1つまたは複数の遺伝子を含んでもよい。しかし、いくつかの局面では、標的細胞におけるゲノムの複製を阻止するために、複製に必要とされる内因性ウイルス遺伝子は、除去され、パッケージング細胞株において別々に提供される。
【0248】
いくつかの態様において、パッケージング細胞株には、粒子を作製するために必要な構成成分を含有する1つまたは複数のプラスミドベクターがトランスフェクトされる。いくつかの態様において、パッケージング細胞株には、LTR、シス作用性パッケージング配列、および関心対象の配列、すなわち、CARなどの抗原受容体をコードする核酸を含むウイルスベクターゲノムを含有するプラスミド;ならびに、Gag、pol、および/またはrevなどのウイルスの酵素成分および/または構造成分をコードする1つまたは複数のヘルパープラスミドがトランスフェクトされる。いくつかの態様において、レトロウイルスベクター粒子を作製する様々な遺伝的構成成分を分離するために、複数のベクターが利用される。いくつかのそのような態様において、パッケージング細胞に別々のベクターを提供することにより、さもなければ複製可能なウイルスを作製する可能性がある組換え事象の機会が低減する。いくつかの態様において、レトロウイルス構成成分の全てを有する単一のプラスミドベクターを用いることができる。
【0249】
いくつかの態様において、レトロウイルスベクター粒子、例えばレンチウイルスベクター粒子は、宿主細胞の形質導入効率を高めるためにシュードタイプ化される。例えば、レンチウイルスベクター粒子などのレトロウイルスベクター粒子は、ある態様では、VSV-G糖タンパク質によりシュードタイプ化される;この糖タンパク質は、形質導入が可能な細胞の種類を拡大増殖する広い細胞宿主域を提供する。いくつかの態様において、パッケージング細胞株は、異種指向性、多指向性、または両指向性エンベロープ、例えば、シンドビスウイルスエンベロープ、GALVまたはVSV-Gを含むように、非天然エンベロープ糖タンパク質をコードするプラスミドまたはポリヌクレオチドをトランスフェクトされる。
【0250】
いくつかの態様において、パッケージング細胞株は、ウイルスのゲノムRNAをレンチウイルスベクター粒子にパッケージングするためにトランスで必要とされる、ウイルスの調節タンパク質および構造タンパク質などの、構成要素を提供する。いくつかの態様において、パッケージング細胞株は、レンチウイルスタンパク質を発現しかつ機能的なレンチウイルスベクター粒子を産生することができる、任意の細胞株であってよい。いくつかの局面では、適切なパッケージング細胞株として、293 (ATCC CCL X)、293T、HeLa (ATCC CCL 2)、D17 (ATCC CCL 183)、MDCK (ATCC CCL 34)、BHK (ATCC CCL-10)およびCf2Th (ATCC CRL 1430)細胞が挙げられる。
【0251】
いくつかの態様において、パッケージング細胞株はウイルスタンパク質(複数可)を安定して発現する。例えば、いくつかの局面では、gag、pol、revおよび/または他の構造遺伝子を含むが、LTRおよびパッケージング成分を含まない、パッケージング細胞株を構築することができる。いくつかの態様において、パッケージング細胞株は、異種タンパク質をコードする核酸分子および/またはエンベロープ糖タンパク質をコードする核酸を含むウイルスベクターゲノムと共に、1つ以上のウイルスタンパク質をコードする核酸分子により一過性にトランスフェクトされ得る。
【0252】
いくつかの態様において、ウイルスベクターとパッケージングプラスミドおよび/またはヘルパープラスミドは、トランスフェクションまたは感染を介して、パッケージング細胞株に導入される。パッケージング細胞株は、ウイルスベクターゲノムを含むウイルスベクター粒子を産生する。トランスフェクションまたは感染の方法は周知である。非限定的な例として、リン酸カルシウム法、DEAE-デキストラン法、リポフェクション法、エレクトロポレーションおよびマイクロインジェクションが挙げられる。
【0253】
組換えプラスミドとレトロウイルスのLTRおよびパッケージング配列が特別な細胞株に(例えば、リン酸カルシウム沈殿により)導入されると、そのパッケージング配列は、組換えプラスミドのRNA転写物がウイルス粒子へとパッケージングされることを可能にし、その後ウイルス粒子は培地に分泌され得る。いくつかの態様における組換えレトロウイルスを含む培地は、その後回収され、必要に応じて濃縮されて、遺伝子導入に使用される。例えば、いくつかの局面では、パッケージングプラスミドと導入用ベクターのパッケージング細胞株への同時トランスフェクションの後、ウイルスベクター粒子は培養培地から回収されて、当業者が使用する標準的な方法により力価を測定される。
【0254】
いくつかの態様において、レトロウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクターは、レンチウイルス粒子の生成を可能にするプラスミドの導入により、例示的なHEK 293T細胞株などの、パッケージング細胞株において産生され得る。いくつかの態様において、パッケージング細胞は、gagおよびpolをコードするポリヌクレオチド、および組換え受容体、例えばCARなどの抗原受容体をコードするポリヌクレオチドをトランスフェクトされ、かつ/または該ポリヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、パッケージング細胞株は、任意でおよび/または追加的に、revタンパク質をコードするポリヌクレオチドをトランスフェクトされ、かつ/または該ポリヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、パッケージング細胞株は、任意でおよび/または追加的に、VSV-Gなどの非天然エンベロープ糖タンパク質をコードするポリヌクレオチドをトランスフェクトされ、かつ/または該ポリヌクレオチドを含む。いくつかのそのような態様では、細胞(例えば、HEK 293T細胞)のトランスフェクションの約2日後、細胞上清は組換えレンチウイルスベクターを含んでおり、それを回収して、力価を測定することができる。
【0255】
回収および/または産生されたレトロウイルスベクター粒子は、記載された方法を用いて標的細胞を形質導入するために使用され得る。標的細胞に入ると、ウイルスRNAは逆転写され、核に移送され、宿主ゲノムに安定して組み込まれる。ウイルスRNAの組み込みから1日または2日後、組換えタンパク質、例えばCARなどの抗原受容体の発現を検出することができる。
【0256】
E. 細胞の培養および/または拡大増殖
いくつかの態様において、提供される方法を用いて評価されるかまたは解析される細胞、例えば、操作された細胞は、ポリヌクレオチドの導入後に細胞の培養および/もしくは拡大増殖のための工程を含まない操作もしくは製造の方法、または、例えば拡大増殖させない製造プロセスを用いる、短縮されているかもしくは省略されている操作プロセスもしくは製造プロセスを用いて作製される。いくつかの局面において、短縮されたかまたは省略された製造プロセスは、組換え受容体をコードする核酸の導入後に、短縮されたかもしくは省略された拡大増殖工程を含むか、または拡大増殖工程を含まない。いくつかの局面において、導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドの細胞中への導入後に、細胞を、拡大増殖のための短縮されたかもしくは省略されたインキュベーション工程に供するか、または拡大増殖工程に供さず、例えば、拡大増殖させない製造プロセスに供する。いくつかの局面において、提供される方法は、拡大増殖させない、短縮されたかまたは省略された製造プロセス中の1つまたは複数の時点で行われる。
【0257】
いくつかの態様において、提供される方法を用いて評価されるかまたは解析される細胞、例えば、操作された細胞は、操作された細胞を培養する、例えば、増殖および/または拡大増殖を促進する条件下で細胞を培養するための1つまたは複数の工程を含むことができる、操作または製造の方法を用いて作製される。いくつかの態様において、提供される方法は、操作された細胞を培養する、例えば、増殖および/または拡大増殖を促進する条件下で細胞を培養するための、1つまたは複数の工程を含む。いくつかの態様において、例えば、ウイルス形質導入を介した、ポリヌクレオチドの導入のためのプロセスの少なくとも一部中に、および/またはポリヌクレオチドの導入に続いて、例えば細胞の培養または拡大増殖のために、細胞を培養する。いくつかの局面において、提供される方法を、例えば、ウイルス形質導入を介した、ポリヌクレオチドの導入後の1つまたは複数の時に、例えば、細胞の培養または拡大増殖中の1つまたは複数の時点で、行うことができる。
【0258】
いくつかの局面において、導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドの細胞中への導入後に、細胞を続いて、培養のためのバッグなどの容器に移す。いくつかの態様において、細胞の培養または拡大増殖のための容器は、灌流バッグなどのバイオリアクターバッグである。いくつかの態様において、閉鎖されながら、接続されながら、かつ/またはバイオリアクターの制御下で培養される細胞は、バイオリアクターなしで培養される細胞、例えば、混合、揺動、振動、および/または灌流を伴わないなどの静置条件下で培養される細胞よりも迅速に、培養中の拡大増殖を経験する。
【0259】
いくつかの態様において、提供される方法は、遺伝子操作された細胞を培養するための、例えば、増殖および/または拡大を促進する条件下で細胞を培養するための、1つまたは複数の工程を含む。いくつかの態様において、遺伝子操作の工程、例えば、形質導入またはトランスフェクションによって組換えポリペプチドを細胞に導入する工程の後に、増殖および/または拡大を促進する条件下で、遺伝子操作された細胞を培養する。特定の態様では、細胞を刺激条件下でインキュベーションして、組換えポリヌクレオチド(例えば、組換え受容体をコードするポリヌクレオチド)を形質導入またはトランスフェクトした後に、該細胞を培養する。いくつかの態様において、培養により、濃縮されたT細胞の1つまたは複数の培養組成物が生成される。
【0260】
いくつかの態様において、遺伝子操作された細胞は、例えば供給口から、添加された細胞を培養するための細胞培地および/または細胞を投入することができる、容器内で培養される。該細胞は、例えば細胞の拡大および/または増殖のために細胞の培養が望まれる、任意の細胞供給源からのものであってよい。
【0261】
いくつかの局面では、培養培地は、T細胞などの細胞の成長、培養、拡大または増殖を支持するように適合された培養培地である。いくつかの局面では、培地は、塩類、アミノ酸類、ビタミン類、糖類またはそれらの任意の組み合わせの混合物を含む液体であり得る。いくつかの態様において、培養培地はさらに、例えば、培養中の細胞の、培養、拡大または増殖を刺激するための、1つまたは複数の刺激条件または刺激剤を含む。ある態様では、刺激条件はIL-2、IL-7またはIL-15から選択される1つまたは複数のサイトカインであるか、またはそれを含む。ある態様では、サイトカインは組換えサイトカインである。いくつかの態様において、培養またはインキュベーション中の培養培地中の1つまたは複数のサイトカインの濃度は、独立して、1IU/mL~1500IU/mLまたは約1IU/mL~1500IU/mL、例えば、1IU/mL~100IU/mL、2IU/mL~50IU/mL、5IU/mL~10IU/mL、10IU/mL~500IU/mL、50IU/mL~250IU/mL、100IU/mL~200IU/mL、50IU/mL~1500IU/mL、100IU/mL~1000IU/mLもしくは200IU/mL~600IU/mL、または約1IU/mL~100IU/mL、約2IU/mL~50IU/mL、約5IU/mL~10IU/mL、約10IU/mL~500IU/mL、約50IU/mL~250IU/mL、約100IU/mL~200IU/mL、約50IU/mL~1500IU/mL、約100IU/mL~1000IU/mLもしくは約200IU/mL~600IU/mLである。いくつかの態様において、1つまたは複数のサイトカインの濃度は、独立して、少なくとも1IU/mL、5IU/mL、10IU/mL、50IU/mL、100IU/mL、200IU/mL、500IU/mL、1000IU/mLもしくは1500IU/mL、または少なくとも約1IU/mL、5IU/mL、10IU/mL、50IU/mL、100IU/mL、200IU/mL、500IU/mL、1000IU/mLもしくは1500IU/mLである。
【0262】
いくつかの局面では、遺伝子操作された細胞および培養培地の導入後、該細胞を少なくともある期間にわたり培養する、例えば、インキュベーションする。いくつかの態様において、刺激条件は一般に、ヒトTリンパ球などの初代免疫細胞の成長に適した温度、例えば、少なくとも約25℃、一般には少なくとも約30℃、一般には37℃または約37℃を含む。いくつかの態様において、25~38℃、例えば30~37℃、例えば37℃±2℃または約37℃±2℃の温度で細胞をインキュベーションする。いくつかの態様において、培養(例えば、培養または拡大増殖)が所望のまたは閾値の細胞密度、細胞数または細胞量をもたらすまで、インキュベーションをある期間にわたって実施する。いくつかの態様において、インキュベーションは、24時間超、48時間超、72時間超、96時間超、5日間超、6日間超、7日間超、8日間超、9日間超、もしくはそれ以上、または約24時間超、約48時間超、約72時間超、約96時間超、約5日間超、約6日間超、約7日間超、約8日間超、約9日間超、もしくはそれ以上、または、24時間、48時間、72時間、96時間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、もしくはそれ以上、または約24時間、約48時間、約72時間、約96時間、約5日間、約6日間、約7日間、約8日間、約9日間、もしくはそれ以上である。
【0263】
いくつかの態様において、細胞は、細胞培養物中の二酸化炭素の目標量を維持する条件下でインキュベーションされる。いくつかの局面では、これにより、成長中の細胞の最適な培養、拡大および増殖が確実になる。いくつかの局面では、二酸化炭素(CO2)の量は、前記気体の10%~0%(v/v)、例えば該気体の8%~2%(v/v)であり、例えば、5%(v/v)または約5%(v/v)のCO2量である。
【0264】
いくつかの態様において、細胞は、バイオリアクターに接続して使用されるバッグなどの容器を用いてインキュベーションされる。場合によっては、バイオリアクターを動かしたり、揺らしたりすることができ、これは、ある局面では、酸素移動を高める可能性がある。バイオリアクターを動かすことには、水平軸に沿った回転、垂直軸に沿った回転、バイオリアクターの傾いたまたは傾斜した水平軸に沿った揺れ運動、またはそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。ある態様では、インキュベーションの少なくとも一部は、揺動しながら行われる。揺動速度および揺動角度は、所望の撹拌を達成するように調整され得る。いくつかの態様において、揺動角度は、20°、19°、18°、17°、16°、15°、14°、13°、12°、11°、10°、9°、8°、7°、6°、5°、4°、3°、2°もしくは1°、またはおよそ20°、およそ19°、およそ18°、およそ17°、およそ16°、およそ15°、およそ14°、およそ13°、およそ12°、およそ11°、およそ10°、およそ9°、およそ8°、およそ7°、およそ6°、およそ5°、およそ4°、およそ3°、およそ2°もしくはおよそ1°である。ある特定の態様では、揺動角度は6~16°である。他の態様では、揺動角度は7~16°である。他の態様では、揺動角度は8~12°である。いくつかの態様において、揺動速度は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40rpmである。いくつかの態様において、揺動速度は4~12rpm、例えば4~6rpm(両端の速度を含む)である。細胞培養物の拡大増殖の少なくとも一部は、例えば5°~10°(例えば6°)の角度、例えば5~15RPM(例えば6RPMまたは10RPM)の速度での揺れ運動を用いて行われる。いくつかの態様において、CD4+細胞とCD8+細胞は、それらがそれぞれ閾値の量または細胞密度に到達するまで、それぞれ別々に拡大増殖される。
【0265】
いくつかの態様において、インキュベーションの少なくとも一部は、静止状態で実施される。いくつかの態様において、インキュベーションの少なくとも一部は、例えば、培養中に使用済み培地を排出しかつ新鮮な培地を追加するために、灌流して行われる。ある態様では、この方法は、例えば供給口から、新鮮な培地を細胞培養物に灌流させる工程を含む。いくつかの態様において、灌流中に追加される培地は、1つまたは複数の刺激剤、例えば、IL-2、IL-7および/またはIL-15などの1つまたは複数の組換えサイトカインを含有する。ある態様では、灌流中に追加される培地は、静止インキュベーション中に使用された培地と同じ培地である。
【0266】
いくつかの態様において、インキュベーションに続いて、前記容器(例えば、バッグ)は、細胞療法剤を製造、作製、または産生するための1つ以上の他の処理工程を実施するためのシステムに再接続され、例えば、遠心チャンバーを含むシステムに再接続される。いくつかの局面では、培養された細胞は、その培養細胞の製剤化のために、バッグから該チャンバーの内部キャビティに移される。
【0267】
いくつかの態様において、インキュベーションは、培養、例えば、培養または拡大増殖が、所望のまた閾値の密度、数、または用量の細胞を結果としてもたらすまでの期間にわたって行われる。いくつかの態様において、閉鎖されながら、接続されながら、かつ/またはバイオリアクターの制御下で培養される細胞は、21日、14日、10日、8日、7日、6日、5日、4日、3日、2日、60時間、48時間、36時間、24時間、または12時間以内に、閾値の拡大増殖、細胞数、および/または密度に達するか、またはそれを達成する。いくつかの態様において、インキュベーションは、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、5日、6日、7日、8日、9日もしくはそれ以上よりも長く、または約12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、5日、6日、7日、8日、9日もしくはそれ以上よりも長く行われるか、または、約12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、5日、6日、7日、8日、9日もしくはそれ以上、または12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、5日、6日、7日、8日、9日もしくはそれ以上である。いくつかの局面において、インキュベーションは、短縮されるかまたは省略され、核酸の導入後、例えば、12時間、24時間、48時間、72時間、もしくは96時間未満、または約12時間、24時間、48時間、72時間、もしくは96時間未満であるか、または、約12時間、24時間、48時間、72時間、もしくは96時間、または12時間、24時間、48時間、72時間、もしくは96時間である。いくつかの局面において、インキュベーションは、細胞のゲノム中への導入遺伝子配列の送達および組み込みを可能にするのに十分である。
【0268】
いくつかの態様において、細胞を、短縮されたかもしくは省略された時間にわたって培養するか、または拡大増殖させない製造プロセスに供する。いくつかの局面において、細胞を、例えば、形質導入またはエレクトロポレーションを介した核酸の導入後、1、2、3、4、5、6、もしくは7日間未満、または約1、2、3、4、5、6、もしくは7日間未満培養する。いくつかの態様において、細胞を、それぞれ両端を含めて、約2~3日間、3~4日間、4~5日間、5~6日間、もしくは6~7日間、またはそれ以下にわたって培養する。
【0269】
いくつかの局面において、方法を、組み込みの大部分または実質的に全てが完了する、導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドの導入後の細胞のインキュベーションの適した長さを決定するために用いることができる。いくつかの局面において、方法により、組み込みを最大化することができるが、操作された細胞の消耗を低減させる、インキュベーションの適した長さの決定が可能になる。いくつかの局面において、細胞または集団もしくは複数の細胞は、導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドの細胞中への導入後に、48、54、60、66、または72時間超にわたり、25℃よりも高い温度でインキュベーションされない。いくつかの局面において、細胞は、導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドの細胞中への導入後に、72時間超にわたり、25℃よりも高い温度でインキュベートされない。いくつかの局面において、細胞は、導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドの細胞中への導入後に、72時間超にわたり、約30℃よりも高く、かつ約40℃よりも低い温度でインキュベートされない。
【0270】
F. 評価のための例示的な細胞
いくつかの局面において、提供される方法は、拡大増殖させるかまたは拡大増殖させない製造プロセスを含む、細胞操作プロセスの工程のいくつかまたは全てに供されている、複数の細胞または単一の単離された細胞に対して、行うかまたは実施することができる。いくつかの態様において、提供される方法は、細胞操作プロセスの1つまたは複数の時点の最中またはその後などの、1つまたは複数の時点にわたって行われる。いくつかの態様において、提供される方法は、拡大増殖工程を含むか、または拡大増殖工程を含まないか、または短縮されたかもしくは省略されたプロセスである操作プロセスまたは製造プロセスを含む、細胞操作プロセスまたは細胞製造プロセスの完了後に行われる。いくつかの態様において、提供される方法は、細胞療法が施与されている対象由来のサンプルにおいて行うことができる。いくつかの局面において、サンプルは、細胞療法の施与後に得られた、対象の血液または血清または臓器または組織サンプル(例えば、疾患部位、例えば腫瘍サンプル)を含むことができる。
【0271】
いくつかの態様において、提供される方法に従って操作され、評価される細胞は、初代細胞である。いくつかの態様において、細胞は、免疫細胞または濃縮された免疫細胞である。いくつかの態様において、細胞は、T細胞であるか、またはT細胞が濃縮されている。いくつかの態様において、細胞は、CD4+ T細胞または濃縮されたCD4+ T細胞である。いくつかの態様において、細胞は、CD8+ T細胞または濃縮されたCD8+ T細胞である。いくつかの態様において、細胞は、遺伝子操作された細胞、または遺伝子操作された細胞の濃縮された集団を含む。いくつかの態様において、細胞は、1つまたは複数の工程または製造プロセスもしくは操作プロセスの工程にある細胞などの、遺伝子操作されることになるか、または遺伝子操作されているか、または遺伝子操作された細胞を含む。いくつかの態様において、細胞は、遺伝子操作されることになるかまたは遺伝子操作されている細胞の濃縮された集団を含む。いくつかの態様において、細胞は、遺伝子操作されたT細胞、または遺伝子操作されたT細胞の濃縮された集団を含む。いくつかの態様において、細胞は、組換え受容体またはその一部分などの、組換えタンパク質を発現するように操作される。いくつかの態様において、組換え受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)であるか、またはそれを含む。いくつかの態様において、細胞は、以前に凍結保存されている。いくつかの態様において、細胞は、以前に凍結保存されていない。いくつかの態様において、方法は、凍結保存の前の細胞に対して行うことができる。いくつかの態様において、方法は、細胞または細胞組成物の対象への投与の前の細胞に対して行うことができる。いくつかの態様において、細胞は、腫瘍細胞を特異的に標的とする。
【0272】
いくつかの態様において、細胞を、短縮されたかもしくは省略された時間にわたって培養するか、または拡大増殖させない製造プロセスに供する。いくつかの局面において、細胞を、例えば、形質導入またはエレクトロポレーションを介した、組換えタンパク質をコードする核酸の導入後、1、2、3、4、5、6、もしくは7日間未満、または約1、2、3、4、5、6、もしくは7日間未満にわたって培養する。いくつかの態様において、細胞を、それぞれ両端を含めて、約2~3日間、3~4日間、4~5日間、5~6日間、もしくは6~7日間、またはそれ以下にわたって培養する。いくつかの局面において、細胞を、例えば、形質導入またはエレクトロポレーションを介した核酸の導入後、0、1、2、3、4、5、6、もしくは7日から選択される1つまたは複数の時点で評価する。
【0273】
いくつかの局面において、提供される方法は、拡大増殖を伴わないが、ポリヌクレオチドの導入後の1つまたは複数の時に行うことができ、例えば、操作された細胞は、導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドの導入後に、96、72、または48時間超にわたり、25℃よりも高い温度で、任意で37℃±2℃でまたは約37℃±2℃でインキュベートされていない。
【0274】
特定の態様において、本明細書で提供される方法に従う組み込まれた導入遺伝子配列および/または組み込まれていない導入遺伝子配列の評価などの、1つまたは複数の評価は、例えば細胞療法のために、操作された細胞が、注入のために放出される、対象への投与の用意ができている、および/または対象に投与される前に行われる。特定の態様において、操作された細胞は、例えば、操作された細胞の一部分、画分、および/またはサンプルに対して、1つまたは複数の評価が行われた後に、注入のために放出され、対象への投与の用意ができ、および/または対象に投与される。特定の態様において、操作された細胞は、該操作された細胞が、1つまたは複数の評価の完了後に、安全である、例えば、無菌および/もしくはフリーである、かつ/または所望の生物学的特徴を有すると判定された後に、注入のために放出され、対象への投与の用意ができ、および/または対象に投与される。
【0275】
いくつかの局面において、導入遺伝子配列を含有するポリヌクレオチドは、ウイルス形質導入などの様々な送達法を用いて、細胞中に導入される。いくつかの態様において、養子細胞療法のために操作された細胞などの、操作された細胞は、導入遺伝子配列によってコードされる組換えタンパク質の発現のレベルの決定、および/または細胞のゲノム中に組み込まれている、例えば、細胞のゲノム中に安定に組み込まれている導入遺伝子配列のコピーの数の決定など、様々な特徴および特性について、モニターまたは評価される必要がある。いくつかの局面において、そのような評価は、操作プロセスまたは製造プロセス中の1つまたは複数の時点で行うことができる。
【0276】
III. 導入遺伝子配列
いくつかの局面において、提供される態様は、導入遺伝子の組み込みの評価に関連して用いられる。いくつかの局面において、例えば、上記のセクションIIに記載されるポリヌクレオチド配列を導入するための方法のいずれかを用いる、操作のために細胞中に導入されるポリヌクレオチドは、細胞のゲノム中に組み込まれることになる導入遺伝子配列を含有する。いくつかの局面において、ポリヌクレオチドの導入遺伝子配列部分は、細胞のゲノム中に組み込まれるように設計される。場合によっては、導入遺伝子配列は、細胞のゲノム中に組み込まれるポリヌクレオチドの一部分を指すことができる。
【0277】
いくつかの局面において、導入遺伝子配列(キメラ配列、キメラDNA、または組換えDNAとも呼ばれる)は、異なる生物、異なる遺伝子、または異なるバリアントなどの、異なる供給源由来の構成要素を組み合わせることによって人工的に形成されている核酸配列を含む。いくつかの局面において、導入遺伝子配列は、例えば、異なる供給源由来の異なる核酸分子またはフラグメントの人工的な組み合わせによって、分子生物学的マニピュレーションを受けている。いくつかの態様において、導入遺伝子配列は、導入遺伝子配列を含有するポリヌクレオチドが導入される細胞のゲノム配列と比較して、異なる起源由来である配列の少なくともいくらかの一部分を含有する。例えば、導入遺伝子配列の少なくとも一部分は、細胞にとって異種、外因性、またはトランスジェニックであり、該細胞は、場合によっては、操作された細胞の投与についての候補である対象から単離された初代細胞である。
【0278】
いくつかの局面において、細胞中に組み込まれる導入遺伝子配列は、細胞のゲノム中に挿入されるかまたは組み込まれる、コード配列および/もしくは非コード配列ならびに/またはその部分的コード配列を含む。いくつかの局面において、組み込みは、ランダム、セミランダム、または標的化であることができる。いくつかの局面において、導入遺伝子配列は、互いに連結された異なる起源由来のフラグメントなどの、天然に存在しない配置を含む、核酸配列フラグメントを含有することができる。いくつかの局面において、導入遺伝子配列は、天然に存在する配列ではない。いくつかの態様において、導入遺伝子配列は、完全なウイルスgagタンパク質をコードしない。いくつかの態様において、導入遺伝子配列は、完全なHIVゲノム、複製可能なウイルスゲノム、ならびに/または、任意でNef、Vpu、Vpx、Vif、および/もしくVprであるアクセサリー遺伝子を含まない。いくつかの局面において、導入遺伝子配列は、例えば、本明細書に記載されるポリヌクレオチドを導入するための方法に従って、細胞中に導入されるポリヌクレオチドに含有される。いくつかの局面において、導入遺伝子配列は、1つまたは複数の組換えタンパク質の全てまたは一部分をコードする。いくつかの局面において、導入遺伝子配列によってコードされる組換えタンパク質は、キメラ抗原受容体(CAR)または組換えT細胞受容体(TCR)などの、組換え受容体である。いくつかの態様において、導入遺伝子配列は、1つまたは複数の追加の組換えタンパク質をコードする。
【0279】
いくつかの局面において、導入遺伝子配列はまた、1つまたは複数の非コード調節または制御エレメント、例えば、プロモーター、エンハンサー、転写後調節エレメント(PRE)、イントロン、インスレーター、ポリアデニル化シグナル、転写終結配列、Kozakコンセンサス配列、マルチシストロニックエレメント(例えば、内部リボソーム進入部位(IRES)、2A配列)、メッセンジャーRNA(mRNA)の非翻訳領域(UTR)に対応する配列、およびスプライスアクセプターまたはドナー配列も含有する。
【0280】
いくつかの局面において、組み込まれることになる導入遺伝子配列の任意の一部分を、本明細書で提供される方法のいずれかにおいて導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定するために検出することができる。いくつかの局面において、組み込まれた異種、外因性、またはトランスジェニックの配列を、特異的に検出し、細胞のいずれかの類似した内因性ゲノム配列から区別することができるように、検出される導入遺伝子配列の一部分は、細胞にとって異種、外因性、またはトランスジェニックである配列内にある一部分であることができる。いくつかの局面において、本明細書に、例えば上記のセクションIに記載されるいずれかなどの、存在、不在、または量を決定するための方法は、導入遺伝子配列の一部分を特異的に検出することができるプローブ、または導入遺伝子配列の一部分を特異的に増幅することができるプライマー配列を用いて行うことができる。いくつかの局面において、プローブまたはプライマーの配列は、細胞にとって異種、外因性、またはトランスジェニックである導入遺伝子配列の一部分などの、導入遺伝子配列の一部分を特異的に検出するか、結合するか、または認識することができる。いくつかの局面において、プローブまたはプライマーの配列は、ゲノム中に組み込まれる導入遺伝子配列の一部分などの、導入遺伝子配列の一部分を特異的に検出するか、結合するか、または認識することができる。いくつかの態様において、導入遺伝子配列は、ウイルスgagタンパク質をコードしない。
【0281】
いくつかの態様において、導入遺伝子配列は、コードされる組換えタンパク質、例えば組換え受容体の発現を制御するように機能的に連結されている、1つまたは複数のプロモーターを含有する。いくつかの例では、導入遺伝子配列は、コードされる組換えタンパク質の発現を制御するように機能的に連結された2つ、3つ、またはそれ以上のプロモーターを含有する。いくつかの態様において、導入遺伝子配列は、適切であるように、かつ導入遺伝子配列がDNAベースかまたはRNAベースかを考慮に入れて、導入遺伝子配列が導入されることになる宿主のタイプ(例えば、細菌、真菌、植物、または動物)に特異的である、転写および翻訳開始および終結コドンなどの調節配列を含有することができる。いくつかの態様において、導入遺伝子配列は、調節/制御エレメント、例えば、プロモーター、エンハンサー、転写後調節エレメント(PRE)、イントロン、ポリアデニル化シグナル、Kozakコンセンサス配列、内部リボソーム進入部位(IRES)、2A配列、およびスプライスアクセプターまたはドナーを含有することができる。いくつかの態様において、導入遺伝子配列は、組換えタンパク質および/または1つもしくは複数の追加のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に機能的に連結された、非天然プロモーターを含有することができる。いくつかの態様において、プロモーターは、RNA pol I、pol II、またはpol IIIプロモーターの中から選択される。いくつかの態様において、プロモーターは、RNAポリメラーゼII(例えば、CMV、SV40初期領域、またはアデノウイルス主要後期プロモーター)によって認識される。別の態様において、プロモーターは、RNAポリメラーゼIII(例えば、U6またはH1プロモーター)によって認識される。いくつかの態様において、プロモーターは、非ウイルスプロモーターまたはウイルスプロモーター、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40プロモーター、RSVプロモーター、およびマウス幹細胞ウイルスの末端反復配列に見出されるプロモーターであることができる。他の公知のプロモーターもまた、企図される。
【0282】
いくつかの態様において、プロモーターは、構成的プロモーターであるかまたはそれを含む。例示的な構成的プロモーターには、例えば、シミアンウイルス40初期プロモーター(SV40)、サイトメガロウイルス最初期プロモーター(CMV)、ヒトユビキチンCプロモーター(UBC)、ヒト伸長因子1αプロモーター(EF1α)、マウスホスホグリセリン酸キナーゼ1プロモーター(PGK)、およびCMV初期エンハンサーとカップリングされたニワトリβ-アクチンプロモーター(CAGG)が含まれる。いくつかの態様において、構成的プロモーターは、合成プロモーターまたは改変されたプロモーターである。いくつかの態様において、プロモーターは、改変されたMoMuLV LTRのU3領域を骨髄増殖性肉腫ウイルスエンハンサーと共に含有する合成プロモーターである、MNDプロモーターであるか、またはそれを含む(Challita et al. (1995) J. Virol. 69(2):748-755を参照されたい)。いくつかの態様において、プロモーターは組織特異的プロモーターである。別の態様において、プロモーターはウイルスプロモーターである。別の態様において、プロモーターは非ウイルスプロモーターである。いくつかの態様において、例示的なプロモーターには、ヒト伸長因子1α(EF1α)プロモーターもしくはその改変された形態、またはMNDプロモーターが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0283】
いくつかの態様において、プロモーターは、調節されたプロモーター(例えば、誘導性プロモーター)である。いくつかの態様において、プロモーターは、誘導性プロモーターまたは抑制性プロモーターである。いくつかの態様において、プロモーターは、Lacオペレーター配列、テトラサイクリンオペレーター配列、ガラクトースオペレーター配列、もしくはドキシサイクリンオペレーター配列を含むか、またはそのアナログであるか、または、Lacリプレッサーもしくはテトラサイクリンリプレッサー、またはそのアナログが結合するかまたは認識することができる。いくつかの態様において、導入遺伝子配列は、調節エレメント、例えばプロモーターを含まない。
【0284】
いくつかの局面において、導入遺伝子配列は、コードされる組換えタンパク質の発現を増強することができる調節エレメント、例えば、シス作用性転写後調節エレメントなどの、転写後調節エレメント(PRE)を含有する。いくつかの局面において、導入遺伝子配列は、組換えタンパク質をコードするヌクレオチド配列に機能的に連結された、コードされる組換えタンパク質の発現を増強することができる調節エレメント、例えば、転写後調節エレメント(PRE)を含有する。いくつかの態様において、調節エレメントは、ウイルス転写後調節エレメントまたはその改変された形態、例えば、ウッドチャック肝炎ウイルス(WHV)またはB型肝炎ウイルス(HBV)などの肝炎ウイルスに由来するPRE、例えば、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)、B型肝炎ウイルス転写後調節エレメント(HBVPRE)などの肝炎転写後調節エレメント(HPRE)である。WPREおよびHBVPREを含む、肝炎ウイルス由来のPREは、一般に、核からの転写後RNA輸送を容易にすることによって、それに機能的に連結されたコード配列の発現を促進する、例えば、増強することができる。PRE内に含有されるシス作用性の配列またはエレメントによって形成される二次構造および三次構造が、そのような機能を促進することができる。例えば、野生型肝炎ウイルス由来のPREは、一般に、αサブエレメントおよびβサブエレメントを含み、これらは各々独立して、完全なPRE転写後活性に影響を及ぼし、かつ/またはそれに関与するステムループ構造を形成する(Smith et al. (1998) Nucleic Acids Research, 26:4818-4827)。WPREなどのいくつかの野生型非ヒト肝炎ウイルスPREはまた、転写後活性をさらに増強することができるγサブエレメントも含む。そのようなサブエレメントは、例えば、CRM1依存性および/または非依存性の輸送機構との相互作用を介して、核からのRNA輸送を促進する、細胞タンパク質に対する結合部位を提供する、RNA、例えば、組換えおよび/もしくは異種RNA、転写物の総量を増加させる、RNA安定性を増加させる、ポリアデニル化転写物の数を増加させる、かつ/またはそのような転写物におけるポリアデニル化尾部のサイズを増大させる構造を有する、RNAを有し得るかまたはコードし得る。いくつかの態様において、転写後調節エレメントは、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)である。
【0285】
場合によっては、組換えタンパク質、例えば組換え受容体をコードする核酸配列は、シグナルペプチドをコードするシグナル配列を含有する。いくつかの局面において、シグナル配列は、天然のポリペプチドに由来するシグナルペプチドをコードし得る。他の局面において、シグナル配列は、異種または非天然のシグナルペプチド、例えば、SEQ ID NO: 24に示されるヌクレオチド配列によってコードされる、SEQ ID NO: 25に示されるGMCSFRアルファ鎖の例示的なシグナルペプチドをコードし得る。場合によっては、組換えタンパク質、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)などの組換え受容体をコードする核酸配列は、シグナルペプチドをコードするシグナル配列を含有する。非限定的な例示的なシグナルペプチドには、例えば、SEQ ID NO: 25に示され、かつSEQ ID NO: 24に示されるヌクレオチド配列によってコードされるGMCSFRアルファ鎖シグナルペプチド、またはSEQ ID NO: 26に示されるCD8アルファシグナルペプチドが含まれる。
【0286】
いくつかの態様において、導入遺伝子配列は、1つまたは複数の追加のポリペプチド、例えば、1つもしくは複数のマーカーおよび/または1つもしくは複数のエフェクター分子をコードする核酸配列を含有する。いくつかの態様において、1つまたは複数のマーカーには、形質導入マーカー、サロゲートマーカー、および/または選択マーカーが含まれる。例えば、1つまたは複数の追加のポリペプチドをコードする、導入される追加の核酸配列の中には、移入された細胞の生存能および/または機能を促進することなどによって、治療の有効性を改善することができる核酸配列;インビボでの生存または局在を評価するなどのために、細胞の選択および/または評定用の遺伝マーカーを提供する核酸配列;例えば、細胞をインビボでネガティブ選択の影響を受けやすくすることによって、安全性を向上させる核酸配列が含まれ、これらは、Lupton S. D. et al., Mol. and Cell Biol., 11:6 (1991);およびRiddell et al., Human Gene Therapy 3:319-338 (1992)に記載されている;また、ドミナントポジティブ選択可能マーカーとネガティブ選択可能マーカーとの融合に由来する二機能性選択可能融合遺伝子の使用を記載している、WO 1992008796およびWO 1994028143、ならびに米国特許第6,040,177号も参照されたい。
【0287】
いくつかの態様において、マーカーは、形質導入マーカーまたはサロゲートマーカーである。形質導入マーカーまたはサロゲートマーカーは、組換えタンパク質、例えば組換え受容体をコードする核酸配列の配列が導入されている細胞を検出するために用いることができる。いくつかの態様において、形質導入マーカーは、細胞の改変を示すか、または確認することができる。いくつかの態様において、サロゲートマーカーは、組換えタンパク質、例えば、CARなどの組換え受容体と、細胞表面上に共発現するようにされているタンパク質である。特定の態様において、そのようなサロゲートマーカーは、活性をほとんど有さないかまたは全く有さないように改変されている表面タンパク質である。ある特定の態様において、サロゲートマーカーは、組換えタンパク質、例えば組換え受容体をコードする同じ導入遺伝子配列上にコードされる。いくつかの態様において、組換えタンパク質、例えば組換え受容体をコードする核酸配列は、任意で、内部リボソーム進入部位(IRES)、または自己切断ペプチドもしくはリボソームスキッピングを引き起こすペプチド、例えば2A配列をコードする核酸によって分離されて、マーカーをコードする核酸配列に機能的に連結される。場合によっては、外来性マーカー遺伝子を、細胞の検出または選択を可能にするため、ならびに場合によってはまた、細胞除去および/または細胞自殺を促進するために、遺伝子操作された細胞に関連して利用してもよい。
【0288】
例示的なサロゲートマーカーには、細胞表面ポリペプチドのトランケート形態、例えば、非機能的であり、かつ、シグナルもしくは細胞表面ポリペプチドの完全長形態によって通常は伝達されるシグナルを伝達しないか、もしくは伝達することができず、かつ/または内部移行しないか、もしくは内部移行することができないトランケート形態が含まれ得る。例示的なトランケート型細胞表面ポリペプチドには、成長因子または他の受容体のトランケート形態、例えば、トランケート型ヒト上皮成長因子受容体2(tHER2)、トランケート型上皮成長因子受容体(tEGFR、SEQ ID NO: 7または16に示される例示的なtEGFR配列)、または前立腺特異的膜抗原(PSMA)もしくはその修飾形態、例えばトランケート型PSMA(tPSMA)が含まれる。いくつかの局面において、tEGFRは、抗体セツキシマブ(Erbitux(登録商標))または他の治療用抗EGFR抗体もしくは結合分子によって認識されるエピトープを含有し得、これらを、tEGFR構築物およびコードされる外因性タンパク質で操作されている細胞を同定するかもしくは選択するために、かつ/またはコードされる外因性タンパク質を発現する細胞を除去するかもしくは分離するために用いることができる。米国特許第8,802,374号およびLiu et al., Nature Biotech. 2016 April; 34(4): 430-434を参照されたい。いくつかの局面において、マーカー、例えばサロゲートマーカーには、CD34の全部もしくは一部(例えば、トランケート形態)、NGFR、CD19もしくはトランケート型CD19、例えば、トランケート型非ヒトCD19が含まれる。トランケート型EGFR(例えば、tEGFR)についての例示的なポリペプチドは、SEQ ID NO: 7もしくは16に示されるアミノ酸の配列、またはSEQ ID NO: 7もしくは16に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸の配列を含む。
【0289】
いくつかの態様において、マーカーは、検出可能なタンパク質、例えば、蛍光タンパク質、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)、高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)、例えばスーパーフォールドGFP(sfGFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、例えばtdTomato、mCherry、mStrawberry、AsRed2、DsRedまたはDsRed2、シアン色蛍光タンパク質(CFP)、青緑色蛍光タンパク質(BFP)、高感度青色蛍光タンパク質(EBFP)、および黄色蛍光タンパク質(YFP)、ならびに、種バリアント、単量体バリアント、蛍光タンパク質のコドン最適化、安定化、かつ/または高感度バリアントを含む、それらのバリアントであるか、またはそれを含む。いくつかの態様において、マーカーは、酵素、例えば、ルシフェラーゼ、大腸菌(E. coli)由来のlacZ遺伝子、アルカリホスファターゼ、分泌型胚性アルカリホスファターゼ(SEAP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)であるか、またはそれを含む。例示的な発光レポーター遺伝子には、ルシフェラーゼ(luc)、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β-グルクロニダーゼ(GUS)、またはそれらのバリアントが含まれる。いくつかの局面において、酵素の発現は、酵素の発現および機能的活性時に検出され得る基質の添加によって検出することができる。
【0290】
いくつかの態様において、マーカーは選択マーカーである。いくつかの態様において、選択マーカーは、外因性の作用物質または薬物に対する耐性を付与するポリペプチドであるか、またはそれを含む。いくつかの態様において、選択マーカーは抗生物質耐性遺伝子である。いくつかの態様において、選択マーカーは、哺乳動物細胞に抗生物質耐性を付与する抗生物質耐性遺伝子である。いくつかの態様において、選択マーカーは、ピューロマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ブラスチシジン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、Geneticin耐性遺伝子、もしくはZeocin耐性遺伝子、またはその改変された形態であるか、またはそれを含む。
【0291】
組換えタンパク質、例えば組換え受容体、および/または本明細書に記載される追加のポリペプチドのいずれかは、任意の組み合わせ、配向、または配置の、組換えタンパク質、例えば組換え受容体をコードする1つまたは複数の核酸配列を含有する、1つまたは複数の導入遺伝子配列によってコードされ得る。例えば、1つ、2つ、3つ、またはそれ以上の導入遺伝子配列は、1つ、2つ、3つ、またはそれ以上の異なるポリペプチド、例えば、組換え受容体、またはその一部分もしくは構成成分、ならびに/または1つもしくは複数の追加のポリペプチド、例えば、マーカーおよび/もしくはエフェクター分子をコードすることができる。いくつかの態様において、1つの導入遺伝子配列は、組換えタンパク質、例えば、CARなどの組換え受容体、またはその一部分もしくは構成成分をコードする核酸配列、および1つまたは複数の追加のポリペプチドをコードする核酸配列を含有する。いくつかの態様において、1つのベクターまたは構築物が、組換えタンパク質、例えば、CARなどの組換え受容体、またはその一部分もしくは構成成分をコードする核酸配列を含有し、別々のベクターまたは構築物が、1つまたは複数の追加のポリペプチドをコードする核酸配列を含有する。いくつかの態様において、組換えタンパク質、例えば組換え受容体をコードする核酸配列、および1つまたは複数の追加のポリペプチドをコードする核酸配列は、2つの異なるプロモーターに機能的に連結される。いくつかの態様において、組換えタンパク質、例えば組換え受容体をコードする核酸は、1つまたは複数の追加のポリペプチドをコードする核酸の上流に存在する。いくつかの態様において、組換えタンパク質、例えば組換え受容体をコードする核酸は、1つまたは複数の追加のポリペプチドをコードする核酸の下流に存在する。
【0292】
ある特定の場合には、1つの導入遺伝子配列が、2つ以上の異なるポリペプチド鎖、例えば、組換えタンパク質、例えば組換え受容体、ならびに1つまたは複数の追加のポリペプチド、例えば、マーカーおよび/またはエフェクター分子をコードする核酸配列を含有する。いくつかの態様において、2つ以上の異なるポリペプチド鎖、例えば、組換えタンパク質、例えば組換え受容体、および1つまたは複数の追加のポリペプチドをコードする核酸配列は、2つの別々の導入遺伝子配列中に存在する。例えば、2つの別々の導入遺伝子配列を提供して、各々を、細胞における発現のために細胞中に個別に移入するか、または導入することができる。いくつかの態様において、マーカーをコードする核酸配列および組換えタンパク質、例えば組換え受容体をコードする核酸配列は、細胞のゲノム内の異なる場所に存在するか、または挿入される。いくつかの態様において、マーカーをコードする核酸配列、および組換えタンパク質、例えば組換え受容体をコードする核酸配列は、2つの異なるプロモーターに機能的に連結される。
【0293】
導入遺伝子配列が第1および第2の核酸配列を含有する態様などの、いくつかの態様において、異なるポリペプチド鎖の各々をコードするコード配列は、同じであるかまたは異なることができるプロモーターに、機能的に連結させることができる。いくつかの態様において、核酸分子は、2つ以上の異なるポリペプチド鎖の発現を駆動する、プロモーターを含有することができる。いくつかの態様において、そのような核酸分子は、マルチシストロニック(バイシストロニックまたはトリシストロニック、例えば、米国特許第6,060,273号を参照されたい)であることができる。いくつかの態様において、組換えタンパク質、例えば組換え受容体をコードする核酸配列、および1つまたは複数の追加のポリペプチドをコードする核酸配列は、同じプロモーターに機能的に連結され、任意で、内部リボソーム進入部位(IRES)、または自己切断ペプチドもしくはリボソームスキッピングを引き起こすペプチド、例えば2Aエレメントをコードする核酸によって分離される。例えば、例示的なマーカー、および任意でリボソームスキッピング配列の配列は、PCT公開番号WO2014031687に開示されるようないずれかであることができる。
【0294】
いくつかの態様において、転写単位は、IRESを含有するバイシストロニック単位として操作することができ、これにより、単一のプロモーターからのメッセージによる(例えば、組換えタンパク質、例えば組換え受容体、および追加のポリペプチドをコードする)遺伝子産物の共発現が可能になる。あるいは、場合によっては、単一のオープンリーディングフレーム(ORF)に、自己切断ペプチド(例えば、2A配列)またはプロテアーゼ認識部位(例えば、フーリン)をコードする配列によって互いに分離された、(例えば、マーカーをコードする、および組換えタンパク質、例えば組換え受容体をコードする)2つまたは3つの遺伝子を含有するRNAの発現を、単一のプロモーターが指令してもよい。したがって、ORFは、翻訳中(2Aの場合)または翻訳後のいずれかに、個々のタンパク質にプロセシングされる、単一のポリペプチドをコードする。場合によっては、T2Aなどのペプチドは、2AエレメントのC末端でのペプチド結合の合成をリボソームにスキップさせることができ(リボソームスキッピング)、これは、2A配列の末端と下流の次のペプチドとの間の分離をもたらす(例えば、de Felipe, Genetic Vaccines and Ther. 2:13 (2004)およびde Felipe et al. Traffic 5:616-626 (2004)を参照されたい)。様々な2Aエレメントが、公知である。本明細書に開示される方法およびシステムにおいて用いることできる2A配列の例は、非限定的に、米国特許公開番号20070116690に記載されるような、口蹄疫ウイルス(F2A、例えば、SEQ ID NO: 21)、ウマ鼻炎ウイルスA(E2A、例えば、SEQ ID NO: 20)、Thosea asignaウイルス(T2A、例えば、SEQ ID NO: 6または17)、およびブタテッショウウイルス-1(P2A、例えば、SEQ ID NO: 18または19)由来の2A配列。
【0295】
A. 組換え受容体
いくつかの態様において、導入遺伝子配列の組み込みについて評価される細胞または細胞組成物は、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列を含有する。いくつかの態様において、導入遺伝子配列は、組換え受容体、および上記のような他のエレメントをコードする核酸配列を含む。いくつかの態様において、組み込まれた導入遺伝子配列によってコードされる組換えタンパク質は、組換え受容体である。いくつかの局面において、導入遺伝子配列は、組換え受容体またはその一部分をコードする。いくつかの態様において、本明細書に、例えばセクションIに記載されるように扱われる、処理される、操作される、かつ/または産生される細胞は、組換え受容体、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)、またはT細胞受容体(TCR)などの組換えタンパク質を含有するかもしくは発現するか、またはそれを含有するかもしくは発現するように操作される。ある特定の態様において、記載される製造また操作のための方法は、導入遺伝子配列の組み込みのおかげで、組換え受容体などの組換えタンパク質を発現するかまたは含有するように操作される細胞、または細胞を含有する、かつ/もしくは細胞が濃縮された集団もしくは組成物を産生し、かつ/または産生することができる。いくつかの態様において、T細胞、またはT細胞の集団もしくは組成物が、扱われ、処理され、操作され、かつ/または産生される。
【0296】
いくつかの局面において、コードされる組換え受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)または組換えT細胞受容体(TCR)である。組換え受容体の中には、キメラ受容体、抗原受容体、およびキメラ受容体または抗原受容体の1つまたは複数の構成成分を含有する受容体がある。組換え受容体には、リガンド結合ドメインまたはその結合フラグメント、および細胞内シグナル伝達ドメインまたは領域を含有するものが含まれ得る。いくつかの態様において、操作された細胞によってコードされる組換え受容体には、機能的非TCR抗原受容体、キメラ抗原受容体(CAR)、キメラ自己抗体受容体(CAAR)、組換えT細胞受容体(TCR)、および多重鎖(multi-chain)組換え受容体の1つまたは複数のポリペプチド鎖を含む、前述のいずれかの領域、ドメイン、または構成成分が含まれる。CARなどの組換え受容体は、一般に、1つまたは複数の細胞内シグナル伝達成分に、いくつかの局面ではリンカーおよび/または膜貫通ドメインを介して連結された、細胞外抗原(またはリガンド)結合ドメインを含む。いくつかの態様において、操作された細胞から発現される例示的な組換え受容体には、場合によっては、異なる構成成分、ドメイン、または領域を含有する、2つ以上の受容体ポリペプチドを含有する多重鎖受容体が含まれる。いくつかの局面において、組換え受容体は、機能的組換え受容体を共に構成する2つ以上のポリペプチドを含有する。いくつかの局面において、多重鎖受容体は、機能的組換え受容体を共に構成する2つのポリペプチドを含む、二重鎖受容体である。いくつかの態様において、組換え受容体は、2つの異なる受容体ポリペプチド、例えば、TCRアルファ(TCRα)とTCRベータ(TCRβ)鎖;またはTCRガンマ(TCRγ)とTCRデルタ(TCRδ)鎖を含むTCRである。いくつかの態様において、組換え受容体は、ポリペプチドの1つまたは複数が、別の受容体ポリペプチドの発現、活性、または機能を調節するか、改変するか、または制御する、多重鎖受容体である。いくつかの局面において、多重鎖受容体は、受容体の特異性、活性、抗原(もしくはリガンド)結合、機能、および/または発現の空間的または時間的な調節または制御を可能にする。
【0297】
1. キメラ抗原受容体(CAR)
いくつかの態様において、コードされる組換え受容体は、特定の抗原(またはマーカーもしくはリガンド)、例えば特定の細胞タイプの表面に発現される抗原、に対する特異性を有するキメラ抗原受容体(CAR)である。いくつかの態様において、該抗原はポリペプチドである。いくつかの態様において、該抗原は炭水化物または他の分子である。いくつかの態様において、該抗原は、正常または非標的細胞もしくは組織と比較して、疾患または状態の細胞(例えば、腫瘍または病原性細胞)上に選択的に発現されるか、または過剰発現される。他の態様では、該抗原は正常細胞に発現され、かつ/または遺伝子操作された細胞に発現される。
【0298】
特定の態様では、キメラ受容体などの組換え受容体は、細胞内シグナル伝達領域を含み、それは、T細胞において一次活性化シグナルを誘導することができる細胞質(細胞内)領域などの、細胞質シグナル伝達ドメインまたは領域(細胞内シグナル伝達ドメインまたは領域とも交換可能に呼ばれる)、例えば、T細胞受容体(TCR)成分の細胞質シグナル伝達ドメインまたは領域(例えば、CD3ゼータ(CD3ζ)鎖のゼータ鎖の細胞質シグナル伝達ドメインまたは領域、またはその機能的バリアントもしくはシグナル伝達部分)を含み、かつ/またはそれは免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を含む。
【0299】
いくつかの態様において、キメラ受容体はさらに、リガンド(例えば、抗原)抗原に特異的に結合する細胞外リガンド結合ドメインを含む。いくつかの態様において、キメラ受容体は、抗原に特異的に結合する細胞外抗原認識ドメインを含むCARである。いくつかの態様において、抗原などのリガンドは、細胞の表面に発現されるタンパク質である。いくつかの態様において、CARはTCR様CARであり、抗原はプロセシングされたペプチド抗原、例えば、細胞内タンパク質のペプチド抗原であり、これは、TCRと同様に、主要組織適合性複合体(MHC)分子の状況下にあって細胞表面で認識される。
【0300】
例示的な抗原受容体(例えば、CAR)、および遺伝子操作により該受容体を細胞に導入する方法は、例えば、以下に記載されているものを含む:国際特許出願公開番号WO200014257、WO2013126726、WO2012/129514、WO2014031687、WO2013/166321、WO2013/071154、WO2013/123061、米国特許出願公開番号:US2002131960、US2013287748、US20130149337、米国特許番号:6,451,995、7,446,190、8,252,592、8,339,645、8,398,282、7,446,179、6,410,319、7,070,995、7,265,209、7,354,762、7,446,191、8,324,353、8,479,118、およびヨーロッパ特許出願番号EP2537416、および/またはSadelain et al., Cancer Discov. 2013 April; 3(4): 388-398; Davila et al. (2013) PLoS ONE 8(4): e61338; Turtle et al., Curr. Opin. Immunol., 2012 October; 24(5): 633-39; Wu et al., Cancer, 2012 March 18(2): 160-75。いくつかの局面では、抗原受容体は、米国特許第7,446,190号に記載されるCAR、および国際特許出願公開番号WO/2014055668 A1に記載されるものを含む。CARの例には、前述の刊行物、例えば、WO2014031687、US 8,339,645、US 7,446,179、US 2013/0149337、米国特許第7,446,190号、米国特許第8,389,282号、Kochenderfer et al., 2013, Nature Reviews Clinical Oncology, 10, 267-276 (2013); Wang et al. (2012) J. Immunother. 35(9): 689-701; およびBrentjens et al., Sci Transl Med. 2013 5(177)のいずれかに開示されるCARが含まれる。また、WO2014031687、US 8,339,645、US 7,446,179、US 2013/0149337、米国特許第7,446,190号、および米国特許第8,389,282号も参照されたい。
【0301】
いくつかの態様において、CARは、特定の抗原(またはマーカーもしくはリガンド)、例えば、養子免疫療法の標的となる特定の細胞タイプに発現される抗原(例えば、がんマーカー)、および/または抑制応答(dampening response)を誘発することを目的とした抗原(例えば、正常または非罹患細胞タイプで発現される抗原)、に対する特異性を示すように構築される。したがって、CARは一般に、その細胞外部分に、1つ以上の抗原結合分子、例えば、1つ以上の抗原結合フラグメント、ドメイン、もしくは部分、または1つ以上の抗体可変ドメイン、および/または抗体分子を含む。いくつかの態様において、CARは、抗体分子の抗原結合部分(複数可)、例えば、モノクローナル抗体(mAb)の可変重鎖(VH)と可変軽鎖(VL)から誘導される一本鎖抗体フラグメント(scFv)を含む。
【0302】
いくつかの態様において、抗体またはその抗原結合部分は、抗原受容体などの組換え受容体の一部として、細胞上に発現される。抗原受容体の中には、キメラ抗原受容体(CAR)などの、機能的非TCR抗原受容体がある。一般に、ペプチド-MHC複合体に対するTCR様特異性を示す抗体または抗原結合フラグメントを含むCARは、TCR様CARと呼ばれることもある。いくつかの態様において、TCR様CARのMHC-ペプチド複合体に特異的な細胞外抗原結合ドメインは、いくつかの局面ではリンカーおよび/または膜貫通ドメイン(複数可)を介して、1つまたは複数の細胞内シグナル伝達成分に連結される。いくつかの態様において、そのような分子は、典型的には、TCRなどの天然の抗原受容体を介したシグナル、および任意で、共刺激受容体と組み合わせたそのような受容体を介したシグナルをまねたり、そのようなシグナルに近づいたりすることができる。
【0303】
いくつかの態様において、キメラ受容体(例えば、CAR)などの組換え受容体は、抗原(またはリガンド)に結合する、例えば特異的に結合する、リガンド結合ドメインを含む。キメラ受容体によって標的化される抗原の中には、疾患、状態、または養子細胞療法により標的化される細胞タイプの状況下で発現される抗原がある。疾患および状態の中には、増殖性、腫瘍性、および悪性の疾患および障害があり、例えば、血液のがん、免疫系のがん、例えば、リンパ腫、白血病、および/または骨髄腫、例えばB細胞性、T細胞性、および骨髄性白血病、リンパ腫、および多発性骨髄腫が含まれる。
【0304】
いくつかの態様において、抗原(またはリガンド)はポリペプチドである。いくつかの態様において、それは炭水化物または他の分子である。いくつかの態様において、該抗原(またはリガンド)は、正常または非標的細胞もしくは組織と比較して、疾患または状態の細胞(例えば、腫瘍または病原性細胞)上に選択的に発現されるか、または過剰発現される。他の態様では、該抗原は正常細胞上に発現され、かつ/または遺伝子操作された細胞上に発現される。
【0305】
いくつかの態様において、CARは、細胞の表面に発現された、インタクトの抗原などの、抗原を特異的に認識する抗体または抗原結合フラグメント(例えば、scFv)を含む。
【0306】
いくつかの態様において、抗原(またはリガンド)は腫瘍抗原またはがんマーカーである。いくつかの態様において、抗原(またはリガンド)は、以下であるか、または以下を含む:αvβ6インテグリン(avb6インテグリン)、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3、B7-H6、炭酸脱水酵素9(CA9、別名CAIXまたはG250)、がん精巣抗原、がん/精巣抗原1B(CTAG、別名NY-ESO-1およびLAGE-2)、がん胎児性抗原(CEA)、サイクリン、サイクリンA2、C-Cモチーフケモカインリガンド1(CCL-1)、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD123、CD133、CD138、CD171、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4)、上皮成長因子タンパク質(EGFR)、タイプIII上皮成長因子受容体変異(EGFR vIII)、上皮糖タンパク質2(EPG-2)、上皮糖タンパク質40(EPG-40)、エフリンB2、エフリン受容体A2(EPHa2)、エストロゲン受容体、Fc受容体様5(FCRL5;別名Fc受容体ホモログ5またはFCRH5)、胎児アセチルコリン受容体(胎児AchR)、葉酸結合タンパク質(FBP)、葉酸受容体α、ガングリオシドGD2、O-アセチル化GD2(OGD2)、ガングリオシドGD3、糖タンパク質100(gp100)、グリピカン-3(GPC3)、Gタンパク質共役受容体クラスCグループ5メンバーD(GPRC5D)、Her2/neu(受容体チロシンキナーゼerb-B2)、Her3(erb-B3)、Her4(erb-B4)、erbB二量体、ヒト高分子量黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、B型肝炎表面抗原、ヒト白血球抗原A1(HLA-A1)、ヒト白血球抗原A2(HLA-A2)、IL-22受容体α(IL-22Rα)、IL-13受容体α2(IL-13Rα2)、キナーゼ挿入ドメイン受容体(kdr)、カッパ軽鎖、L1細胞接着分子(L1-CAM)、L1-CAMのCE7エピトープ、ロイシンリッチリピート含有8ファミリーメンバーA(Leucine Rich Repeat Containing 8 Family Member A:LRRC8A)、Lewis Y、黒色腫関連抗原(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A6、MAGE-A10、メソテリン(MSLN)、c-Met、マウスサイトメガロウイルス(CMV)、ムチン1(MUC1)、MUC16、ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)リガンド、メラン(melan)A(MART-1)、神経細胞接着分子(NCAM)、がん胎児抗原、メラノーマ優先発現抗原(PRAME)、プロゲステロン受容体、前立腺特異抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、サバイビン、トロホブラスト(Trophoblast)糖タンパク質(TPBG、別名5T4)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、チロシナーゼ関連タンパク質1(TRP1、別名TYRP1またはgp75)、チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP2、別名ドパクロムトートメラーゼ、ドパクロムデルタイソメラーゼまたはDCT)、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)、血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGFR2)、Wilms Tumor 1(WT-1)、病原体特異的または病原体発現抗原、またはユニバーサルタグに関連する抗原、および/またはビオチン化分子、および/またはHIV、HCV、HBVもしくは他の病原体によって発現される分子。いくつかの態様における該受容体によって標的化される抗原には、B細胞悪性腫瘍に関連する抗原、例えば、多くの公知のB細胞マーカーのいずれかが含まれる。いくつかの態様において、抗原は、CD20、CD19、CD22、ROR1、CD45、CD21、CD5、CD33、Igκ、Igλ、CD79a、CD79bまたはCD30であるか、またはそれを含む。
【0307】
いくつかの態様において、CARは、BCMA、例えばヒトBCMAに特異的な抗BCMA CARである。マウス抗ヒトBCMA抗体およびヒト抗ヒト抗体などの抗BCMA抗体を含むキメラ抗原受容体、ならびにそのようなキメラ受容体を発現する細胞は、以前に記載されている。Carpenter et al., Clin Cancer Res., 2013, 19(8):2048-2060;WO 2016/090320;WO2016/090327;WO2010104949A2およびWO2017173256を参照されたい。いくつかの態様において、抗BCMA CARは、WO 2016/090320またはWO2016090327に記載される抗体に由来する可変重鎖(VH)および/または可変軽鎖(VL)領域を含む、scFvなどの抗原結合ドメインを含む。いくつかの態様において、scFvなどの抗原結合ドメインは、SEQ ID NO: 30に示されるVHおよびSEQ ID NO: 31に示されるVLを含む。いくつかの態様において、scFvなどの抗原結合ドメインは、SEQ ID NO: 32に示されるVHおよびSEQ ID NO: 33に示されるVLを含む。いくつかの態様において、scFvなどの抗原結合ドメインは、SEQ ID NO: 34に示されるVHおよびSEQ ID NO: 35に示されるVLを含む。いくつかの態様において、scFvなどの抗原結合ドメインは、SEQ ID NO: 27に示されるVHおよびSEQ ID NO: 28に示されるVLを含む。いくつかの態様において、scFvなどの抗原結合ドメインは、SEQ ID NO: 41に示されるVHおよびSEQ ID NO: 42に示されるVLを含む。いくつかの態様において、scFvなどの抗原結合ドメインは、SEQ ID NO: 43に示されるVHおよびSEQ ID NO: 44に示されるVLを含む。いくつかの態様において、scFvなどの抗原結合ドメインは、SEQ ID NO: 45に示されるVHおよびSEQ ID NO: 46に示されるVLを含む。いくつかの態様において、VHまたはVLは、前述のVHまたはVL配列のいずれかに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を有し、かつBCMAへの結合を保持する。いくつかの態様において、VH領域はVL領域のアミノ末端側である。いくつかの態様において、VH領域はVL領域のカルボキシ末端側である。
【0308】
いくつかの態様において、scFvおよび/またはVHドメインは、FMC63に由来する。FMC63は一般に、ヒト起源のCD19を発現するNalm-1および-16細胞に対して作製されたマウスモノクローナルIgG1抗体を指す(Ling, N. R., et al. (1987). Leucocyte typing III. 302)。いくつかの態様において、FMC63抗体は、それぞれSEQ ID NO: 50、51に示されるCDR-H1およびCDR-H2、およびSEQ ID NO: 52または66に示されるCDR-H3、ならびにSEQ ID NO: 47に示されるCDR-L1、SEQ ID NO: 48または67に示されるCDR-L2、およびSEQ ID NO: 49または68に示されるCDR-L3配列を含む。いくつかの態様において、FMC63抗体は、SEQ ID NO: 53のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)およびSEQ ID NO: 54のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0309】
いくつかの態様において、scFvは、SEQ ID NO:47のCDR-L1とSEQ ID NO:48のCDR-L2とSEQ ID NO:49のCDR-L3を含む可変軽鎖、および/またはSEQ ID NO:50のCDR-H1とSEQ ID NO:51のCDR-H2とSEQ ID NO:52のCDR-H3を含む可変重鎖を含む。いくつかの態様において、scFvは、SEQ ID NO:53に示される可変重鎖領域およびSEQ ID NO:54に示される可変軽鎖領域を含む。いくつかの態様において、可変重鎖と可変軽鎖はリンカーにより連結されている。いくつかの態様において、リンカーはSEQ ID NO:29に示される。いくつかの態様において、scFvは、順に、VH、リンカー、およびVLを含む。いくつかの態様において、scFvは、順に、VL、リンカー、およびVHを含む。いくつかの態様において、scFvは、SEQ ID NO:69に示されるヌクレオチドの配列、またはSEQ ID NO:69に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を示す配列によりコードされる。いくつかの態様において、scFvは、SEQ ID NO:55に示されるアミノ酸の配列、またはSEQ ID NO:55に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を示す配列を含む。
【0310】
いくつかの態様において、scFvは、SJ25C1に由来する。SJ25C1は、ヒト起源のCD19を発現するNalm-1および-16細胞に対して作製されたマウスモノクローナルIgG1抗体である(Ling, N. R., et al. (1987). Leucocyte typing III. 302)。いくつかの態様において、SJ25C1抗体は、それぞれSEQ ID NO: 59~61に示されるCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3配列と、それぞれSEQ ID NO: 56~58に示されるCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3配列を含む。いくつかの態様において、SJ25C1抗体は、SEQ ID NO: 62のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)およびSEQ ID NO: 63のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの態様において、scFvは、SEQ ID NO:56のCDR-L1配列とSEQ ID NO:57のCDR-L2配列とSEQ ID NO:58のCDR-L3配列を含む可変軽鎖、および/またはSEQ ID NO:59のCDR-H1配列とSEQ ID NO:60のCDR-H2配列とSEQ ID NO:61のCDR-H3配列を含む可変重鎖を含む。いくつかの態様において、scFvは、SEQ ID NO:62に示される可変重鎖領域およびSEQ ID NO:63に示される可変軽鎖領域を含む。いくつかの態様において、可変重鎖と可変軽鎖はリンカーにより連結されている。いくつかの態様において、リンカーはSEQ ID NO:64に示される。いくつかの態様において、scFvは、順に、VH、リンカー、およびVLを含む。いくつかの態様において、scFvは、順に、VL、リンカー、およびVHを含む。いくつかの態様において、scFvは、SEQ ID NO:65に示されるアミノ酸の配列、またはSEQ ID NO:65に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を示す配列を含む。
【0311】
いくつかの態様において、CARは、CD20に特異的な抗CD20 CARである。いくつかの態様において、scFvは、CD20に特異的な抗体または抗体フラグメントに由来するVHおよびVLを含む。いくつかの態様において、CD20に結合する抗体または抗体フラグメントは、リツキシマブであるか、またはリツキシマブに由来する抗体であり、例えば、リツキシマブscFvである。
【0312】
いくつかの態様において、CARは、CD22に特異的な抗CD22 CARである。いくつかの態様において、scFvは、CD22に特異的な抗体または抗体フラグメントに由来するVHおよびVLを含む。いくつかの態様において、CD22に結合する抗体または抗体フラグメントは、m971であるか、またはm971に由来する抗体であり、例えば、m971 scFvである。
【0313】
いくつかの態様において、CARは、GPRC5Dに特異的な抗GPRC5D CARである。いくつかの態様において、scFvは、GPRC5Dに特異的な抗体または抗体フラグメントに由来するVHおよびVLを含む。いくつかの態様において、GPRC5Dに結合する抗体または抗体フラグメントは、国際特許出願、公開番号WO 2016/090329およびWO 2016/090312に記載される抗体または抗体フラグメントに由来するVHおよびVLであるか、またはそれらを含む。
【0314】
いくつかの態様において、抗体は、2つの抗体ドメインまたは領域、例えば重鎖可変(VH)領域と軽鎖可変(VL)領域、をつなぐ1つ以上のリンカーを含む、scFvなどの抗原結合フラグメントである。リンカーは、典型的には、ペプチドリンカー、例えば、柔軟性および/または可溶性のペプチドリンカーである。リンカーの中には、グリシンおよびセリンおよび/または場合によってはスレオニンに富むリンカーがある。いくつかの態様において、リンカーは、溶解性を改善できるリシンおよび/またはグルタミン酸などの荷電残基をさらに含む。いくつかの態様において、リンカーは、1個または複数のプロリンをさらに含む。いくつかの局面では、グリシンおよびセリン(および/またはスレオニン)に富むリンカーは、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のそのようなアミノ酸を含む。いくつかの態様において、それらは少なくとも50%、55%、60%、70%、もしくは75%、または少なくとも約50%、55%、60%、70%、もしくは75%のグリシン、セリン、および/またはスレオニンを含む。いくつかの態様において、リンカーは、実質的に完全にグリシン、セリン、および/またはスレオニンから構成される。リンカーは一般に、約5~約50アミノ酸長、典型的には10~30または約10~約30、例えば、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30、いくつかの例では、10~25アミノ酸長である。例示的なリンカーには、配列GGGGS(4GS; SEQ ID NO:36)またはGGGS(3GS; SEQ ID NO:37)の様々な数の反復、例えば、そのような配列の2、3、4、および5反復を有するリンカーが含まれる。例示的なリンカーとして、
に示される配列を有するか、またはそれからなるものが挙げられる。
【0315】
いくつかの態様において、抗原は、病原体特異的抗原もしくは病原体発現抗原であるか、またはそれを含む。いくつかの態様において、抗原は、ウイルス抗原(例えば、HIV、HCV、HBVなどのウイルス抗原)、細菌抗原、および/または寄生虫抗原である。いくつかの態様において、CARは、TCR様抗体、例えば、細胞表面にMHC-ペプチド複合体として提示される、腫瘍関連抗原などの、細胞内抗原を特異的に認識する抗体または抗原結合フラグメント(例えば、scFv)を含む。いくつかの態様において、MHC-ペプチド複合体を認識する抗体またはその抗原結合部分は、抗原受容体などの、組換え受容体の一部として細胞上に発現させることができる。抗原受容体の中には、キメラ抗原受容体(CAR)などの、機能的非TCR抗原受容体がある。一般的に、ペプチド-MHC複合体に対するTCR様特異性を示す抗体または抗原結合フラグメントを含むCARは、TCR様CARともいうことができる。
【0316】
「主要組織適合性複合体」(MHC)への言及は、ポリペプチドのペプチド抗原(細胞内機構によってプロセシングされたペプチド抗原を含む)と場合により複合体化し得る、多型ペプチド結合部位または結合溝を含むタンパク質、一般的には糖タンパク質を指す。いくつかの場合には、MHC分子は、TCRなどのT細胞上の抗原受容体またはTCR様抗体によって認識されるコンフォメーションで抗原を提示するために、例えばペプチドとの複合体、すなわちMHC-ペプチド複合体として、細胞表面にディスプレイまたは発現され得る。一般的に、MHCクラスI分子は、場合により3つのαドメインを含む膜貫通α鎖と、非共有結合したβ2ミクログロブリンを有する、ヘテロ二量体である。一般的に、MHCクラスII分子は、2つの膜貫通糖タンパク質αおよびβで構成され、両方とも通常は膜にまたがっている。MHC分子は、ペプチドを結合するための抗原結合部位(複数可)および適切な抗原受容体による認識に必要な配列を含む、MHCの有効な部分を含み得る。いくつかの態様において、MHCクラスI分子は、細胞質ゾルに由来するペプチドを細胞表面に送達する;この場合には、MHC-ペプチド複合体はT細胞、例えば一般にはCD8+ T細胞によって認識されるが、場合によってはCD4+ T細胞によって認識される。いくつかの態様において、MHCクラスII分子は、小胞系(vesicular system)に由来するペプチドを細胞表面に送達する;この場合には、それらは通常CD4+ T細胞によって認識される。一般に、MHC分子は、マウスではH-2、ヒトではヒト白血球抗原(HLA)と総称される、連鎖している遺伝子座のグループによってコードされる。それゆえ、一般的に、ヒトMHCはヒト白血球抗原(HLA)と称されることもある。
【0317】
用語「MHC-ペプチド複合体」または「ペプチド-MHC複合体」またはその変形は、一般に、MHC分子の結合溝または裂け目に収まったペプチドの非共有結合的相互作用などによる、ペプチド抗原とMHC分子の複合体または会合を指す。いくつかの態様において、MHC-ペプチド複合体は、細胞の表面上に存在するか、または提示される。いくつかの態様において、MHC-ペプチド複合体は、抗原受容体、例えば、TCR、TCR様CAR、またはその抗原結合部分によって特異的に認識され得る。
【0318】
いくつかの態様において、ポリペプチドの、ペプチド抗原またはエピトープなどのペプチドは、例えば抗原受容体による認識のために、MHC分子と会合することができる。一般に、ペプチドは、ポリペプチドまたはタンパク質などのより長い生体分子に由来するか、またはそのフラグメントに基づく。いくつかの態様において、ペプチドは、典型的には約8~約24アミノ酸長である。いくつかの態様において、ペプチドは、MHCクラスII複合体での認識のために、9~22または約9~22アミノ酸の長さを有する。いくつかの態様において、ペプチドは、MHCクラスI複合体での認識のために、8~13または約8~13アミノ酸の長さを有する。いくつかの態様において、MHC-ペプチド複合体などの、MHC分子との関連でペプチドが認識されると、TCRまたはTCR様CARなどの抗原受容体は、T細胞応答、例えば、T細胞増殖、サイトカイン産生、細胞傷害性T細胞応答または他の応答を誘導するT細胞への活性化シグナルをもたらすか、または引き起こす。
【0319】
いくつかの態様において、TCR様抗体または抗原結合部分は、公知であるか、または公知の方法により作製することができる(例えば、米国特許出願公開番号US 2002/0150914; US 2003/0223994; US 2004/0191260; US 2006/0034850; US 2007/00992530; US20090226474; US20090304679; および国際PCT公開番号WO 03/068201を参照されたい)。
【0320】
いくつかの態様において、MHC-ペプチド複合体に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分は、特定のMHC-ペプチド複合体を含む有効量の免疫原で宿主を免疫することによって作製され得る。いくつかの場合では、MHC-ペプチド複合体のペプチドは、MHCに結合することができる抗原、例えば、腫瘍抗原、例えば、ユニバーサル腫瘍抗原、骨髄腫抗原、または以下に記載される他の抗原、のエピトープである。いくつかの態様において、次いで、免疫応答を誘発するために、有効量の免疫原が宿主に投与される;その場合、免疫原は、MHC分子の結合溝内のペプチドの三次元表現に対する免疫応答を引き出すのに十分な期間にわたってその三次元形態を保持する。その後、宿主から回収された血清をアッセイして、MHC分子の結合溝内のペプチドの三次元表現を認識する所望の抗体が産生されているかどうかを判定する。いくつかの態様において、産生された抗体をアッセイして、該抗体がMHC-ペプチド複合体をMHC分子単独、関心対象のペプチド単独、およびMHCと無関係のペプチドとの複合体から区別し得ることを確認することができる。その後、所望の抗体を単離することができる。
【0321】
いくつかの態様において、MHC-ペプチド複合体に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分は、ファージ抗体ライブラリーなどの、抗体ライブラリーディスプレイ法を使用することによって取得することができる。いくつかの態様において、変異型Fab、scFvまたは他の抗体形態のファージディスプレイライブラリーが作製され、例えば、該ライブラリーではそのメンバーがCDR(複数可)の1つまたは複数の残基で変異している。例えば、米国特許出願公開番号US20020150914; US2014/0294841; およびCohen CJ. et al. (2003) J Mol. Recogn. 16:324-332を参照されたい。
【0322】
本明細書における用語「抗体」は、最も広い意味で用いられ、以下を含むポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を含む:インタクトの抗体および機能的な(抗原結合)抗体フラグメント、例えば、フラグメント抗原結合(Fab)フラグメント、F(ab')2フラグメント、Fab'フラグメント、Fvフラグメント、組換えIgG(rIgG)フラグメント、抗原に特異的に結合できる可変重鎖(VH)領域、一本鎖抗体フラグメント、例えば一本鎖可変フラグメント(scFv)、および単一ドメイン抗体(例えば、sdAb、sdFv、ナノボディ)フラグメント。この用語は、免疫グロブリンの遺伝子操作されたおよび/またはその他の方法で改変された形態、例えば、イントラボディ、ペプチボディ、キメラ抗体、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、およびヘテロコンジュゲート抗体、多重特異性、例えば、二重特異性抗体、ダイアボディ、トリアボディ、およびテトラボディ、タンデムジscFv、タンデムトリscFvを包含する。特に明記しない限り、用語「抗体」は、その機能的な抗体フラグメントを包含すると理解されるべきである。この用語はまた、IgGおよびそのサブクラス、IgM、IgE、IgA、ならびにIgDなどの、任意のクラスまたはサブクラスの抗体を含む、インタクトまたは完全長の抗体も包含する。
【0323】
用語「相補性決定領域」および「CDR」は、「超可変領域」または「HVR」と同義語であり、場合によっては、抗原特異性および/または結合親和性を付与する抗体可変領域内のアミノ酸の非連続配列を指すことが知られている。一般に、各重鎖可変領域には3つのCDRがあり(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)、各軽鎖可変領域には3つのCDRがある(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3)。「フレームワーク領域」および「FR」は、場合によっては、重鎖および軽鎖の可変領域の非CDR部分を指すことが知られている。一般に、各完全長重鎖可変領域には4つのFRがあり(FR-H1、FR-H2、FR-H3、およびFR-H4)、各完全長軽鎖可変領域には4つのFRがある(FR-L1、FR-L2、FR-L3、およびFR-L4)。
【0324】
所与のCDRまたはFRの正確なアミノ酸配列の境界は、多数の周知のスキームのいずれかを用いて簡単に決定することができ、それらのスキームには、以下に記載されるものが含まれる:Kabat et al. (1991), "Sequences of Proteins of Immunological Interest," 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD(「Kabat」ナンバリングスキーム);Al-Lazikani et al., (1997) JMB 273,927-948(「Chothia」ナンバリングスキーム);MacCallum et al., J. Mol. Biol. 262:732-745 (1996), "Antibody-antigen interactions: Contact analysis and binding site topography," J. Mol. Biol. 262, 732-745."(「Contact」ナンバリングスキーム);Lefranc MP et al., "IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor variable domains and Ig superfamily V-like domains," Dev Comp Immunol, 2003 Jan;27(1):55-77(「IMGT」ナンバリングスキーム);Honegger A and Pluckthun A, "Yet another numbering scheme for immunoglobulin variable domains: an automatic modeling and analysis tool," J Mol Biol, 2001 Jun 8;309(3):657-70(「Aho」ナンバリングスキーム);およびMartin et al., "Modeling antibody hypervariable loops: a combined algorithm," PNAS, 1989, 86(23):9268-9272(「AbM」ナンバリングスキーム)。
【0325】
所与のCDRまたはFRの境界は、特定に用いられるスキームに応じて異なることがある。例えば、Kabatスキームは構造的アラインメントに基づいており、一方、Chothiaスキームは構造的情報に基づいている。KabatスキームおよびChothiaスキームの両方の番号付けは、最も一般的な抗体領域配列の長さに基づいており、挿入文字、例えば「30a」に対応する挿入、および欠失が、いくつかの抗体に現れる。これらの2つのスキームは、ある特定の挿入および欠失(「インデル(indel)」)を異なる位置に配置し、結果として異なった番号付けをもたらす。Contactスキームは、複合体結晶構造の解析に基づいており、多くの点でChothiaナンバリングスキームと類似している。AbMスキームは、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアによって用いられたものに基づく、Kabat定義とChothia定義の間の妥協案である。
【0326】
以下の表1は、それぞれ、Kabat、Chothia、AbM、およびContactスキームによって特定されるCDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、およびCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3の例示的な位置境界を列記する。CDR-H1については、残基の番号付けが、KabatナンバリングスキームおよびChothiaナンバリングスキームの両方を用いて列記される。FRはCDR間に位置し、例えば、FR-L1はCDR-L1の前に位置し、FR-L2はCDR-L1とCDR-L2の間に位置し、FR-L3はCDR-L2とCDR-L3の間に位置する、といった具合である。示されるKabatナンバリングスキームは、H35AおよびH35Bに挿入を配置するため、示されるKabatナンバリング規則を用いて番号付けされた場合のChothia CDR-H1ループの終わりは、ループの長さに応じてH32とH34の間で異なることに留意されたい。
【0327】
(表1)様々なナンバリングスキームによるCDRの境界
1 - Kabat et al. (1991), "Sequences of Proteins of Immunological Interest," 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD
2 - Al-Lazikani et al., (1997) JMB 273,927-948
【0328】
したがって、他に指定されない限り、所与の抗体またはその領域、例えばその可変領域の、「CDR」または「相補性決定領域」または個々の指定されたCDR(例えば、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)は、前述のスキームまたは他の公知のスキームのいずれかによって定義されるような相補性決定領域(または具体的な相補性決定領域)を包含すると理解されるべきである。例えば、特定のCDR(例えば、CDR-H3)が、所与のVHまたはVL領域のアミノ酸配列中に対応するCDRのアミノ酸配列を含有することが述べられている場合、そのようなCDRは、前述のスキームまたは他の公知のスキームのいずれかによって定義されるような、対応するCDR(例えば、CDR-H3)の配列を可変領域内に有することが理解される。いくつかの態様において、具体的なCDR配列が指定される。提供される抗体の例示的なCDR配列は、様々なナンバリングスキームを用いて記載されるが、提供される抗体は、他の前述のナンバリングスキームまたは当業者に公知の他のナンバリングスキームのいずれかに従って記載されるようなCDRを含み得ることが理解される。
【0329】
同様に、他に指定されない限り、所与の抗体またはその領域、例えばその可変領域の、「FR」または個々の指定されたFR(例えば、FR-H1、FR-H2、FR-H3、FR-H4)は、公知のスキームのいずれかによって定義されるようなフレームワーク領域(または具体的なフレームワーク領域)を包含すると理解されるべきである。いくつかの場合には、Kabat、Chothia、AbM、もしくはContactの方法、または他の公知のスキームによって定義されるようなCDRなどの、特定のCDR、FR、複数のFR、または複数のCDRの特定のためのスキームが指定される。他の場合には、CDRまたはFRの特定のアミノ酸配列が示される。
【0330】
いくつかの態様において、抗原結合タンパク質、抗体、およびその抗原結合フラグメントは、完全長抗体の抗原を特異的に認識する。いくつかの態様において、抗体の重鎖および軽鎖は、完全長であるか、または抗原結合部分(Fab、F(ab')2、Fv、もしくは一本鎖Fvフラグメント(scFv))であることができる。他の態様では、抗体重鎖定常領域は、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgD、およびIgEから選択され、特に、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4、より詳しくは、IgG1(例えば、ヒトIgG1)から選択される。別の態様では、抗体軽鎖定常領域は、例えば、カッパまたはラムダ、特にカッパから選択される。
【0331】
提供される抗体の中には、抗体フラグメントがある。「抗体フラグメント」は、インタクトの抗体が結合する抗原に結合するインタクト抗体の一部分を含む、インタクト抗体以外の分子を指す。抗体フラグメントの例には、Fv、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2;ダイアボディ;直鎖状抗体;可変重鎖(VH)領域、一本鎖抗体分子、例えばscFvおよび単一ドメインVH単一抗体;ならびに抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体が含まれるが、これらに限定されない。特定の態様では、抗体は、可変重鎖領域および/または可変軽鎖領域を含む一本鎖抗体フラグメント、例えばscFvである。
【0332】
用語「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体が抗原に結合する際に関与する抗体重鎖または軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれ、VHおよびVL)は一般に、類似した構造を有し、各ドメインは、4つの保存されたフレームワーク領域(FR)および3つのCDRを含む。例えば、Kindt et al. Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., page 91 (2007)を参照されたい。単一のVHまたはVLドメインは、抗原結合特異性を付与するのに十分であり得る。さらに、特定の抗原に結合する抗体は、それぞれ、相補的なVLまたはVHドメインのライブラリーをスクリーニングするために、抗原に結合する抗体由来のVHまたはVLドメインを用いて、単離されてもよい。例えば、Portolano et al., J. Immunol. 150:880-887 (1993);Clarkson et al., Nature 352:624-628 (1991)を参照されたい。
【0333】
提供されるCARに含まれる抗体の中には、抗体フラグメントがある。「抗体フラグメント」または「抗原結合フラグメント」は、インタクトの抗体が結合する抗原に結合するインタクト抗体の一部分を含む、インタクト抗体以外の分子を指す。抗体フラグメントの例には、Fv、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2;ダイアボディ;直鎖状抗体;重鎖可変(VH)領域、一本鎖抗体分子、例えばscFv、およびVH領域のみを含む単一ドメイン抗体;ならびに抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、提供されるCARにおける抗原結合ドメインは、可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)領域を含む抗体フラグメントであるか、またはそれを含む。特定の態様では、抗体は、重鎖可変(VH)領域および/または軽鎖可変(VL)領域を含む一本鎖抗体フラグメント、例えばscFvである。
【0334】
用語「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体が抗原に結合する際に関与する抗体重鎖または軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれ、VHおよびVL)は一般に、類似した構造を有し、各ドメインは、4つの保存されたフレームワーク領域(FR)および3つのCDRを含む。例えば、Kindt et al. Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., page 91 (2007)を参照されたい。単一のVHまたはVLドメインは、抗原結合特異性を付与するのに十分であり得る。さらに、特定の抗原に結合する抗体は、それぞれ、相補的なVLまたはVHドメインのライブラリーをスクリーニングするために、抗原に結合する抗体由来のVHまたはVLドメインを用いて、単離されてもよい。例えば、Portolano et al., J. Immunol. 150:880-887 (1993);Clarkson et al., Nature 352:624-628 (1991)を参照されたい。
【0335】
単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全てもしくは一部分、または軽鎖可変ドメインの全てもしくは一部分を含む抗体フラグメントである。ある特定の態様では、単一ドメイン抗体はヒト単一ドメイン抗体である。いくつかの態様において、CARは、抗原、例えば、腫瘍細胞もしくはがん細胞などの、標的とされる細胞または疾患のがんマーカーまたは細胞表面抗原、例えば、本明細書に記載されるかまたは公知の標的抗原のいずれかに特異的に結合する抗体重鎖ドメインを含む。
【0336】
抗体フラグメントは、インタクトの抗体のタンパク質分解消化および組換え宿主細胞による産生を含むがこれらに限定されない、様々な技術によって作製することができる。いくつかの態様において、抗体は、組換えにより産生されるフラグメント、例えば、合成リンカー、例えばペプチドリンカーによって連結された2つ以上の抗体領域もしくは鎖を有する、かつ/または天然に存在するインタクトの抗体の酵素消化によっては産生され得ないフラグメントなどの、天然には存在しない配置を含むフラグメントである。いくつかの態様において、抗体フラグメントはscFvである。
【0337】
「ヒト化」抗体は、全てまたは実質的に全てのCDRアミノ酸残基が非ヒトCDRに由来し、全てまたは実質的に全てのFRアミノ酸残基がヒトFRに由来する抗体である。ヒト化抗体は、任意で、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部分を含んでもよい。非ヒト抗体の「ヒト化形態」は、親の非ヒト抗体の特異性および親和性を保持しながら、典型的にはヒトに対する免疫原性を低減させるためにヒト化を受けている、非ヒト抗体のバリアントを指す。いくつかの態様において、ヒト化抗体におけるいくつかのFR残基は、例えば、抗体の特異性または親和性を回復させるかまたは改善するために、非ヒト抗体(例えば、CDR残基が由来する抗体)からの対応する残基で置換される。
【0338】
したがって、いくつかの態様において、TCR様CARなどのキメラ抗原受容体は、抗体または抗体フラグメントを含む細胞外部分を含む。いくつかの態様において、その抗体またはフラグメントにはscFvが含まれる。いくつかの局面では、キメラ抗原受容体は、抗体またはフラグメントを含む細胞外部分と細胞内シグナル伝達領域を含む。いくつかの態様において、細胞内シグナル伝達領域は、細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様において、細胞内シグナル伝達ドメインは、一次シグナル伝達ドメイン、T細胞で一次活性化シグナルを誘導できるシグナル伝達ドメイン、T細胞受容体(TCR)成分のシグナル伝達ドメイン、および/または免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を含むシグナル伝達ドメインであるか、またはそれを含む。
【0339】
いくつかの態様において、CAR、例えばその抗体部分などの、組換え受容体はさらに、スペーサーを含み、該スペーサーは、免疫グロブリン定常領域またはそのバリアントもしくは修飾バージョンの少なくとも一部、例えば、IgG4ヒンジ領域などのヒンジ領域、および/またはCH1/CLおよび/またはFc領域であっても、それを含んでもよい。いくつかの態様において、組換え受容体はさらに、スペーサーおよび/またはヒンジ領域を含む。いくつかの態様において、定常領域または部分は、ヒトIgG、例えばIgG4またはIgG1、のものである。いくつかの局面では、定常領域の部分は、抗原認識成分(例えば、scFv)と膜貫通ドメインとの間のスペーサー領域として機能する。スペーサーは、スペーサーがない場合と比較して、抗原結合後の細胞の応答性を増加させる長さのものであり得る。
【0340】
いくつかの例では、スペーサーは、12アミノ酸または約12アミノ酸の長さであるか、またはわずか12アミノ酸の長さであるにすぎない。例示的なスペーサーには、以下が含まれる:少なくとも約10~229アミノ酸、約10~200アミノ酸、約10~175アミノ酸、約10~150アミノ酸、約10~125アミノ酸、約10~100アミノ酸、約10~75アミノ酸、約10~50アミノ酸、約10~40アミノ酸、約10~30アミノ酸、約10~20アミノ酸、または約10~15アミノ酸を有するもの(上記範囲のいずれかの両端間の任意の整数を含む)。いくつかの態様において、スペーサー領域は、約12アミノ酸以下、約119アミノ酸以下、または約229アミノ酸以下を有する。例示的なスペーサーには、IgG4ヒンジ単独、CH2およびCH3ドメインに連結されたIgG4ヒンジ、またはCH3ドメインに連結されたIgG4ヒンジが含まれる。例示的なスペーサーには、限定するものではないが、Hudecek et al. (2013) Clin. Cancer Res., 19:3153; Hudecek et al. (2015) Cancer Immunol Res. 3(2): 125-135または国際特許出願公開番号WO2014031687; 米国特許第8,822,647号またはUS2014/0271635に記載されるものが含まれる。いくつかの態様において、スペーサーは、免疫グロブリンヒンジ領域、CH2およびCH3領域の配列を含む。いくつかの態様において、ヒンジ、CH2およびCH3の1つまたは複数は、全部または一部がIgG4またはIgG2に由来する。いくつかの場合には、ヒンジ、CH2およびCH3はIgG4に由来する。いくつかの局面では、ヒンジ、CH2およびCH3の1つまたは複数はキメラであり、IgG4およびIgG2に由来する配列を含む。いくつかの例では、スペーサーは、IgG4/2キメラヒンジ、IgG2/4 CH2、およびIgG4 CH3領域を含む。
【0341】
いくつかの態様において、スペーサーは、全部または一部がIgG4および/またはIgG2に由来することができる。いくつかの態様において、スペーサーは、IgG4、IgG2、ならびに/またはIgG2およびIgG4に由来するヒンジ、CH2、および/またはCH3配列のうちの1つまたは複数を含有するキメラポリペプチドであることができる。いくつかの態様において、スペーサーは、1つまたは複数のドメインに、1つまたは複数の単一アミノ酸変異などの変異を含有することができる。いくつかの例では、アミノ酸改変は、IgG4のヒンジ領域におけるセリン(S)のプロリン(P)による置換である。いくつかの態様において、アミノ酸改変は、グリコシル化の不均一性を低減させるためのアスパラギン(N)のグルタミン(Q)による置換、例えば、SEQ ID NO: 70に示されるIgG4重鎖定常領域配列のCH2領域中の177位に対応する位置(Uniprotアクセッション番号P01861;EUナンバリングによる297位およびSEQ ID NO: 4に示されるヒンジ-CH2-CH3スペーサー配列の79位に対応する位置)でのN→Q置換、またはSEQ ID NO: 71に示されるIgG2重鎖定常領域配列のCH2領域中の176位に対応する位置(Uniprotアクセッション番号P01859;EUナンバリングによる297位に対応する位置)でのN→Q置換である。
【0342】
いくつかの局面では、スペーサーは、IgG4またはIgG1のヒンジのみなどの、IgGのヒンジ領域のみ、例えば、SEQ ID NO: 1に示されるヒンジのみのスペーサーを含有し、SEQ ID NO: 2に示される配列によってコードされる。他の態様では、スペーサーは、CH2および/またはCH3ドメインに連結されたIgヒンジ、例えば、IgG4ヒンジである。いくつかの態様において、スペーサーは、例えばSEQ ID NO: 3に示される、CH2およびCH3ドメインに連結されたIgヒンジ、例えば、IgG4ヒンジである。いくつかの態様において、スペーサーは、例えばSEQ ID NO: 4に示される、CH3ドメインのみに連結されたIgヒンジ、例えば、IgG4ヒンジである。いくつかの態様において、スペーサーは、グリシン-セリンリッチ配列または他の柔軟性のリンカー、例えば、公知の柔軟性リンカーであるか、またはそれを含む。いくつかの態様において、定常領域または一部分は、IgDのものである。いくつかの態様において、スペーサーは、SEQ ID NO: 5に示される配列を有する。いくつかの態様において、スペーサーは、SEQ ID NO: 1、3、4、および5のいずれかに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上、または少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸の配列を有する。
【0343】
抗原認識ドメインは一般に、1つまたは複数の細胞内シグナル伝達構成成分、例えば、CARの場合であればTCR複合体などの抗原受容体複合体を介する刺激または活性化を模倣し、かつ/または別の細胞表面受容体を通してシグナル伝達するシグナル伝達構成成分などに、連結される。したがって、いくつかの態様において、抗原結合構成成分(例えば、抗体)は、1つまたは複数の膜貫通ドメインおよび細胞内シグナル伝達領域に連結される。いくつかの態様において、膜貫通ドメインは細胞外ドメインに融合される。1つの態様では、受容体、例えばCAR中のドメインの1つに天然で付随している膜貫通ドメインが使用される。場合によっては、膜貫通ドメインは、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限に抑えるために、同じまたは異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインへのそのようなドメインの結合を回避するように選択され、またはアミノ酸置換によって修飾される。
【0344】
膜貫通ドメインはいくつかの態様において、天然供給源または合成供給源のいずれかに由来する。供給源が天然である場合、ドメインはいくつかの局面において、任意の膜結合型タンパク質または膜貫通タンパク質に由来する。膜貫通領域には、T細胞受容体のアルファ、ベータ、またはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD 16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD 134、CD137、CD 154に由来する(すなわち、少なくともその膜貫通領域を含む)ものが含まれる。あるいは、膜貫通ドメインはいくつかの態様において合成による。いくつかの局面において、合成膜貫通ドメインは、主に、ロイシンおよびバリンなどの疎水性残基を含む。いくつかの局面において、合成膜貫通ドメインの各末端には、フェニルアラニン、トリプトファン、およびバリンのトリプレットが見出されるであろう。いくつかの態様において、連結はリンカー、スペーサー、および/または膜貫通ドメインによる。
【0345】
細胞内シグナル伝達領域には、天然抗原受容体を介するシグナル、共刺激受容体と組み合わされたそのような受容体を介するシグナル、および/または共刺激受容体のみを介するシグナルを模倣するか、またはそれらに近似するものが含まれる。いくつかの態様において、短いオリゴペプチドリンカーまたはポリペプチドリンカー、例えば2~10アミノ酸長のリンカー、例えばグリシンおよびセリン(例えば、グリシン-セリンダブレット)を含有するものなどが存在し、CARの膜貫通ドメインと細胞質シグナル伝達ドメインとの間の連結を形成する。
【0346】
受容体、例えばCARは、一般に、少なくとも1つの細胞内シグナル伝達構成成分または細胞内シグナル伝達構成成分群を含む。いくつかの態様において、受容体は、TCR複合体の細胞内構成成分、例えばT細胞活性化および細胞傷害性を媒介するTCR CD3鎖など、例えばCD3ゼータ鎖を含む。したがって、いくつかの局面において、ROR1結合抗体は1つまたは複数の細胞シグナル伝達モジュールに連結される。いくつかの態様において、細胞シグナル伝達モジュールは、CD3膜貫通ドメイン、CD3細胞内シグナル伝達ドメイン、および/または他のCD膜貫通ドメインを含む。いくつかの態様において、受容体、例えばCARは、Fc受容体γ、CD8、CD4、CD25、またはCD16などの1つまたは複数の付加的な分子の一部をさらに含む。例えば、いくつかの局面において、CARは、CD3-ゼータ (CD3-ζ) またはFc受容体γとCD8、CD4、CD25、またはCD16とのキメラ分子を含む。
【0347】
いくつかの態様において、CARの連結時に、CARの細胞質ドメインまたは細胞内シグナル伝達領域は、免疫細胞、例えばCARを発現するように操作されたT細胞、の正常なエフェクター機能または応答の少なくとも1つを活性化する。例えば、状況によっては、CARは、細胞溶解活性またはTヘルパー活性などといったT細胞の機能、例えばサイトカインまたは他の因子の分泌などを誘導する。いくつかの態様において、例えば、抗原受容体構成成分または共刺激分子の細胞内シグナル伝達領域の切断された部分が、エフェクター機能シグナルを伝達するのであれば、インタクトな免疫刺激鎖の代わりにそれが使用される。いくつかの態様において、例えば1つまたは複数の細胞内ドメインを含む、細胞内シグナル伝達領域は、T細胞受容体 (TCR) の細胞質配列を含み、いくつかの局面では、天然状況においてそのような受容体と協調して作用して抗原受容体会合後にシグナル伝達を開始させる共受容体の細胞質配列、および/またはそのような分子の任意の派生物もしくは変種の細胞質配列、および/または同じ機能的能力を有する任意の合成配列も、含む。
【0348】
天然のTCRの状況において、完全な活性化は一般に、TCRを介するシグナル伝達のみならず、共刺激シグナルも必要とする。したがって、いくつかの態様において、完全な活性化を促進するために、二次シグナルまたは共刺激シグナルを生成するための構成成分もまたCARに含まれる。他の態様において、CARは、共刺激シグナルを生成するための構成成分を含まない。いくつかの局面では、同じ細胞中で付加的なCARが発現され、二次シグナルまたは共刺激シグナルを生成するための構成成分を提供する。
【0349】
T細胞活性化は、いくつかの局面において、2つのクラスの細胞質シグナル伝達配列:TCRを介する抗原依存性一次活性化を開始するもの(一次細胞質シグナル伝達配列);および抗原非依存的様式で作用して二次シグナルまたは共刺激シグナルを提供するもの(二次細胞質シグナル伝達配列)によって媒介されると説明される。いくつかの局面において、CARは、そのようなシグナル伝達構成成分の一方または両方を含む。
【0350】
いくつかの局面において、CARは、TCR複合体の一次活性化を調節する一次細胞質シグナル伝達配列を含む。刺激様式で作用する一次細胞質シグナル伝達配列は、免疫受容体チロシン活性化モチーフまたはITAMとして公知であるシグナル伝達モチーフを含有し得る。ITAM含有一次細胞質シグナル伝達配列の例には、TCRもしくはCD3ゼータ、FcRガンマ、またはFcRベータに由来するものが含まれる。いくつかの態様において、CAR中の細胞質シグナル伝達分子は、CD3ゼータ由来の、細胞質シグナル伝達ドメイン、その一部、または配列を含有する。
【0351】
いくつかの態様において、CARは、CD28、4-1BB、OX40、DAP10、およびICOSなどの共刺激受容体のシグナル伝達領域および/または膜貫通部分を含む。いくつかの局面では、同じCARが、シグナル伝達領域と共刺激構成成分の両方を含む。
【0352】
いくつかの態様において、シグナル伝達領域が1つのCAR内に含まれる一方で、共刺激構成成分は、別の抗原を認識する別のCARによって提供される。いくつかの態様において、CARは、いずれも同じ細胞上に発現される活性化または刺激CAR、および共刺激CARを含む(WO2014/055668を参照されたい)。
【0353】
ある特定の態様において、細胞内シグナル伝達領域は、CD3(例えば、CD3-ゼータ)細胞内ドメインに連結されたCD28膜貫通およびシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様において、細胞内シグナル伝達領域は、CD3ゼータ細胞内ドメインに連結されたキメラCD28およびCD137(4-1BB、TNFRSF9)共刺激ドメインを含む。
【0354】
いくつかの態様において、CARは、細胞質部分において、1つまたは複数の、例えば2つまたはそれ以上の、共刺激ドメインおよび活性化ドメイン、例えば一次活性化ドメインを包含する。例示的なCARは、CD3-ゼータ、CD28、および4-1BBの細胞内構成成分を含む。
【0355】
場合により、CARは、第1世代CAR、第2世代CAR、および/または第3世代CARと称される。いくつかの局面において、第1世代CARは、抗原結合時にCD3鎖誘導性シグナルを単に提供するものであり;いくつかの局面において、第2世代CARは、そのようなシグナルおよび共刺激シグナルを提供するもの、例えばCD28またはCD137などの共刺激受容体からの細胞内シグナリングドメインを含むものであり;いくつかの局面において、第3世代CARは、異なる共刺激受容体の複数の共刺激ドメインを含むものである。
【0356】
いくつかの態様において、キメラ抗原受容体は、本明細書に記載の抗体またはフラグメントを含有する細胞外部分を含む。いくつかの局面において、キメラ抗原受容体は、本明細書に記載の抗体またはフラグメントを含有する細胞外部分、および細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様において、抗体またはフラグメントはscFvまたは単一ドメインVH抗体を含み、細胞内ドメインはITAMを含有する。いくつかの局面において、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3-ゼータ (CD3ζ) 鎖のゼータ鎖のシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様において、キメラ抗原受容体は、細胞外ドメインと細胞内シグナル伝達領域との間に配置された膜貫通ドメインを含む。
【0357】
いくつかの局面では、膜貫通ドメインはCD28の膜貫通部分を含む。細胞外ドメインと膜貫通ドメインは直接または間接的に連結され得る。いくつかの態様において、細胞外ドメインと膜貫通ドメインは、本明細書に記載されるような、スペーサーによって連結される。いくつかの態様において、キメラ抗原受容体は、例えば膜貫通ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインの間に、T細胞共刺激分子の細胞内ドメインを含む。いくつかの局面において、T細胞共刺激分子はCD28または4-1BBである。
【0358】
いくつかの態様において、CARは、抗体、例えば抗体フラグメント、CD28の膜貫通部分またはその機能的変異体であるかまたはそれを含む膜貫通ドメイン、およびCD28のシグナル伝達部分またはその機能的変異体とCD3ゼータのシグナル伝達部分またはその機能的変異体を含む細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様において、CARは、抗体、例えば抗体フラグメント、CD28の膜貫通部分またはその機能的変異体であるかまたはそれを含む膜貫通ドメイン、および4-1BBのシグナル伝達部分またはその機能的変異体とCD3ゼータのシグナル伝達部分またはその機能的変異体を含む細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかのそのような態様では、該受容体は、ヒトIg分子などのIg分子の一部を含むスペーサー、例えばIgG4ヒンジなどのIgヒンジを含むスペーサー、例えばヒンジのみのスペーサーをさらに含む。
【0359】
いくつかの態様において、該受容体、例えばCAR、の膜貫通ドメイン、は、ヒトCD28の膜貫通ドメインまたはその変異体、例えばヒトCD28の27アミノ酸膜貫通ドメイン(アクセッション番号:P10747.1)であるか、またはSEQ ID NO: 8に示されるアミノ酸配列またはSEQ ID NO: 8に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上、または少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含む膜貫通ドメインである;いくつかの態様において、組換え受容体の膜貫通ドメイン含有部分は、SEQ ID NO: 9に示されるアミノ酸配列またはそれに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上、または少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0360】
いくつかの態様において、キメラ抗原受容体はT細胞共刺激分子の細胞内ドメインを含む。いくつかの局面において、T細胞共刺激分子はCD28または4-1BBである。
【0361】
いくつかの態様において、細胞内シグナル伝達領域は、ヒトCD28の細胞内共刺激シグナル伝達ドメインまたはその機能的変異体もしくは部分、例えば、その41アミノ酸ドメインおよび/または天然CD28タンパク質の186-187位にLLからGGへの置換を有するそのようなドメインを含む。いくつかの態様において、細胞内シグナル伝達ドメインは、SEQ ID NO: 10または11に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO: 10または11に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上、または少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含むことができる。いくつかの態様において、細胞内領域は、4-1BBの細胞内共刺激シグナル伝達ドメインまたはその機能的変異体もしくは部分、例えば、ヒト4-1BBの42アミノ酸細胞質ドメイン(アクセッション番号Q07011.1)またはその機能的変異体もしくは部分、例えば、SEQ ID NO: 12に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO: 12に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上、または少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含む。
【0362】
いくつかの態様において、細胞内シグナル伝達領域は、ヒトCD3鎖、任意でCD3ゼータ刺激シグナル伝達ドメインまたはその機能的変異体、例えば、ヒトCD3ζのアイソフォーム3の112アミノ酸細胞質ドメイン(アクセッション番号:P20963.2)または米国特許第7,446,190号または米国特許第8,911,993号に記載されるCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様において、細胞内シグナル伝達領域は、SEQ ID NO: 13、14または15に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO: 13、14または15に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上、または少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含む。
【0363】
いくつかの局面では、スペーサーは、IgGのヒンジ領域のみ、例えばIgG4またはIgG1のヒンジのみ、例えばSEQ ID NO:1に示されるヒンジのみのスペーサーを含む。他の態様では、スペーサーは、CH2および/またはCH3ドメインに連結されたIgヒンジ、例えばIgG4ヒンジである。いくつかの態様において、スペーサーは、例えばSEQ ID NO:3に示される、CH2およびCH3ドメインに連結されたIgヒンジ、例えばIgG4ヒンジである。いくつかの態様において、スペーサーは、例えばSEQ ID NO:4に示される、CH3ドメインのみに連結されたIgヒンジ、例えばIgG4ヒンジである。いくつかの態様において、スペーサーは、グリシン-セリンリッチ配列または他の柔軟性のリンカー、例えば公知の柔軟性リンカーであるか、またはそれを含む。
【0364】
2. T細胞受容体(TCR)
いくつかの態様において、コードされる受容体は、腫瘍、ウイルスまたは自己免疫タンパク質の抗原などの、標的ポリペプチドのペプチドエピトープまたはT細胞エピトープを認識する、T細胞受容体(TCR)またはその抗原結合部分である。
【0365】
いくつかの態様において、「T細胞受容体」または「TCR」は、可変α鎖およびβ鎖(それぞれ、TCRαおよびTCRβとしても知られる)もしくは可変γ鎖およびδ鎖(それぞれ、TCRαおよびTCRβとしても知られる)、またはその抗原結合部分を含み、かつMHC分子に結合されたペプチドに特異的に結合することができる分子である。いくつかの態様において、TCRはαβ型である。典型的には、αβ型およびγδ型で存在するTCRは一般に構造的に類似しているが、それらを発現するT細胞は異なる解剖学的位置または機能をもつ可能性がある。TCRは細胞の表面上に、または可溶性の形態で存在し得る。一般に、TCRはT細胞(またはTリンパ球)の表面に見られ、そこでは一般的に主要組織適合性複合体(MHC)分子に結合した抗原の認識に関与している。
【0366】
特に明記しない限り、用語「TCR」は、完全なTCRだけでなく、その抗原結合部分または抗原結合フラグメントを包含すると理解されるべきである。いくつかの態様において、TCRは、αβ型またはγδ型のTCRを含めて、インタクトまたは完全長のTCRである。いくつかの態様において、TCRは完全長のTCRに満たない抗原結合部分であるが、それは、MHC-ペプチド複合体に結合するなど、MHC分子に結合した特定のペプチドに結合する。いくつかの場合には、TCRの抗原結合部分またはフラグメントは、完全長またはインタクトのTCRの構造ドメインの一部のみを含んでいてよいが、完全なTCRが結合するMHC-ペプチド複合体などのペプチドエピトープに結合することができる。いくつかの場合には、抗原結合部分は、特定のMHC-ペプチド複合体に結合するための結合部位を形成するのに十分なTCRの可変ドメイン、例えば、TCRの可変α鎖および可変β鎖を含む。一般に、TCRの可変鎖は、ペプチド、MHCおよび/またはMHC-ペプチド複合体の認識に関与する相補性決定領域を含む。
【0367】
いくつかの態様において、TCRの可変ドメインは超可変ループまたは相補性決定領域(CDR)を含み、これらは一般に、抗原認識ならびに結合能および結合特異性に対する主要な寄与因子である。いくつかの態様において、TCRの1つのCDRまたはその組み合わせは、所与のTCR分子の抗原結合部位の全てまたは実質的に全てを形成する。TCR鎖の可変領域内の様々なCDRは一般に、フレームワーク領域(FR)によって分離されており、このFRは通常、CDRと比較して、TCR分子間でより少ない可変性(変動性)を示す(例えば、Jores et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. U.S.A. 87:9138, 1990; Chothia et al., EMBO J. 7:3745, 1988を参照されたい;また、Lefranc et al., Dev. Comp. Immunol. 27:55, 2003も参照されたい)。いくつかの態様において、CDR3は、抗原結合または特異性に関与する主要なCDRであるか、または抗原認識にとって、および/またはペプチド-MHC複合体のプロセシングされたペプチド部分との相互作用にとって、所与のTCR可変領域の3つのCDRの中で最も重要である。ある状況下では、α鎖のCDR1は、特定の抗原ペプチドのN末端部分と相互作用することができる。ある状況下では、β鎖のCDR1は、該ペプチドのC末端部分と相互作用することができる。ある状況下では、CDR2は、MHC-ペプチド複合体のMHC部分との相互作用またはMHC部分の認識に最も強く寄与するか、またはそれに関与する主要なCDRである。いくつかの態様において、β鎖の可変領域は、さらなる超可変領域(CDR4またはHVR4)を含むことができ、これは一般に、スーパー抗原の結合に関与し、抗原認識には関与しない(Kotb (1995) Clinical Microbiology Reviews, 8:411-426)。
【0368】
いくつかの態様において、TCRはまた、定常ドメイン、膜貫通ドメイン、および/または短い細胞質テイルを含むことができる(例えば、Janeway et al., Immunobiology: The Immune System in Health and Disease, 3rd Ed., Current Biology Publications, p. 4:33, 1997を参照されたい)。いくつかの局面では、TCRの各鎖は、1つのN末端免疫グロブリン可変ドメイン、1つの免疫グロブリン定常ドメイン、膜貫通領域、およびC末端の短い細胞質テイルを保有することができる。いくつかの態様において、TCRは、シグナル伝達を媒介するのに関与するCD3複合体の不変タンパク質と会合する。
【0369】
いくつかの態様において、TCR鎖は1つまたは複数の定常ドメインを含む。例えば、所与のTCR鎖(例えば、α鎖またはβ鎖)の細胞外部分は、2つの免疫グロブリン様ドメイン、例えば、可変ドメイン(例えば、VαまたはVβ;典型的にはKabatナンバリング(Kabat et al., “Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Dept. Health and Human Services, Public Health Service National Institutes of Health, 1991, 5th ed.)に基づいてアミノ酸1-116)、および細胞膜に隣接する定常ドメイン(例えば、α鎖定常ドメインつまりCα、典型的にはKabatナンバリングに基づいて117-259位、またはβ鎖定常ドメインつまりCβ、典型的にはKabatナンバリングに基づいて117-295位)を含むことができる。例えば、場合により、2本の鎖によって形成されるTCRの細胞外部分は、2つの膜近位定常ドメインと、2つの膜遠位可変ドメインを含み、その可変ドメインにはそれぞれCDRが含まれる。TCRの定常ドメインは短い接続配列を含んでもよく、その場合には、システイン残基がジスルフィド結合を形成し、それによってTCRの2本の鎖を連結する。いくつかの態様において、TCRは、α鎖とβ鎖のそれぞれに追加のシステイン残基をもつことができ、その結果、TCRは定常ドメインに2つのジスルフィド結合を含むようになる。
【0370】
いくつかの態様において、TCR鎖は膜貫通ドメインを含む。いくつかの態様において、膜貫通ドメインは正に帯電している。いくつかの場合には、TCR鎖は細胞質テイルを含む。場合によっては、この構造は、TCRを、CD3およびそのサブユニットなどの他の分子と会合させることができる。例えば、膜貫通領域と共に定常ドメインを含むTCRは、該タンパク質を細胞膜に固定して、CD3シグナル伝達装置または複合体の不変サブユニットと会合し得る。CD3シグナル伝達サブユニット(例えば、CD3γ、CD3δ、CD3ε、およびCD3ζ鎖)の細胞内テイルは、TCR複合体のシグナル伝達能力に関与する1つまたは複数の免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフつまりITAMを含む。
【0371】
いくつかの態様において、TCRは、2本の鎖αとβ(または任意でγとδ)のヘテロ二量体であるか、または一本鎖TCR構築物であり得る。いくつかの態様において、TCRは、1つまたは複数のジスルフィド結合などによって連結された2本の別個の鎖(α鎖とβ鎖、またはγ鎖とδ鎖)を含むヘテロ二量体である。
【0372】
いくつかの態様において、TCRは、Vα、Vβ鎖の配列などの、公知のTCR配列から作製することができ、それらの実質的に完全長のコード配列は容易に入手可能である。細胞源から、V鎖配列を含めて、完全長TCR配列を取得する方法はよく知られている。いくつかの態様において、TCRをコードする核酸は、例えば、所与の細胞内のまたは細胞から単離された、TCRをコードする核酸のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、または公開されているTCR DNA配列の合成によって、様々なソースから取得可能である。
【0373】
いくつかの態様において、TCRは、生物学的供給源から、例えば細胞から、例えばT細胞(例えば細胞傷害性T細胞)、T細胞ハイブリドーマ、または他の公表されている供給源から得られる。いくつかの態様において、T細胞はインビボ単離された細胞から得ることができる。いくつかの態様において、TCRは胸腺で選択されたTCRである。いくつかの態様において、TCRはネオエピトープ制限TCRである。いくつかの態様において、T細胞は、培養したT細胞ハイブリドーマまたはクローンであり得る。いくつかの態様において、TCRまたはその抗原結合部分もしくはその抗原結合フラグメントは、TCRの配列の知識から合成的に作製され得る。
【0374】
いくつかの態様において、TCRは、標的ポリペプチド抗原またはその標的T細胞エピトープに対する候補TCRのライブラリーのスクリーニングから同定または選択されたTCRから作製される。TCRライブラリーは、対象から単離されたT細胞(PBMC、脾臓または他のリンパ器官に存在する細胞を含む)からのVαおよびVβのレパートリーの増幅によって作製され得る。場合によっては、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)からT細胞を増幅することができる。いくつかの態様において、TCRライブラリーは、CD4+またはCD8+細胞から作製され得る。いくつかの態様において、TCRは、正常または健常な対象のT細胞源、すなわち正常TCRライブラリーから増幅することができる。いくつかの態様において、TCRは、罹患した対象のT細胞源、すなわち罹患TCRライブラリーから増幅することができる。いくつかの態様において、縮重プライマーは、ヒトから得られたT細胞などのサンプルにおけるRT-PCRなどによって、VαおよびVβの遺伝子レパートリーを増幅するために使用される。いくつかの態様において、scTvライブラリーは、増幅産物がリンカーによって分離されるようにクローン化またはアセンブルされたナイーブVαおよびVβライブラリーから組み立てることができる。対象と細胞の供給源に応じて、該ライブラリーはHLAアレル特異的であり得る。あるいは、いくつかの態様において、TCRライブラリーは、親または足場TCR分子の突然変異誘発または多様化によって作製することができる。いくつかの局面では、TCRは、例えばα鎖またはβ鎖の、突然変異誘発などによる定方向進化に供される。いくつかの局面では、TCRのCDR内の特定の残基が変更される。いくつかの態様において、選択されたTCRは、親和性成熟によって改変され得る。いくつかの態様において、ペプチドに対するCTL活性を評価するためのスクリーニングなどによって、抗原特異的T細胞を選択することができる。いくつかの局面では、TCR、例えば抗原特異的T細胞上に存在するTCRは、例えば、抗原に対する特定の親和性または結合力などの結合活性によって、選択することができる。
【0375】
いくつかの態様において、遺伝子操作された抗原受容体には、組換えT細胞受容体(TCR)および/または天然に存在するT細胞からクローン化されたTCRが含まれる。いくつかの態様において、標的抗原(例えば、がん抗原)に対する高親和性T細胞クローンが同定され、患者から単離されて、細胞に導入される。いくつかの態様において、標的抗原に対するTCRクローンは、ヒト免疫系遺伝子(例えば、ヒト白血球抗原系、つまりHLA)により操作されたトランスジェニックマウスにおいて作製されてきた。例えば、腫瘍抗原については、Parkhurst et al. (2009) Clin Cancer Res. 15:169-180およびCohen et al. (2005) J Immunol. 175:5799-5808を参照されたい。いくつかの態様において、標的抗原に対するTCRを単離するために、ファージディスプレイが使用される(例えば、Varela-Rohena et al. (2008) Nat Med. 14:1390-1395およびLi (2005) Nat Biotechnol. 23:349-354を参照されたい)。
【0376】
いくつかの態様において、TCRまたはその抗原結合部分は、改変または操作されたものである。いくつかの態様において、改変された特性を有するTCR、例えば、特定のMHC-ペプチド複合体に対する親和性がより高いTCRを作製するために、定方向進化法が使用される。いくつかの態様において、定方向進化は、以下を含むがこれらに限定されないディスプレイ法によって達成される:酵母ディスプレイ(Holler et al. (2003) Nat Immunol, 4, 55-62; Holler et al. (2000) Proc Natl Acad Sci U S A, 97, 5387-92)、ファージディスプレイ(Li et al. (2005) Nat Biotechnol, 23, 349-54)、またはT細胞ディスプレイ(Chervin et al. (2008) J Immunol Methods, 339, 175-84)。いくつかの態様において、ディスプレイアプローチには、既知の親または基準TCRを操作または改変することが含まれる。例えば、いくつかの場合には、野生型TCRが、CDRの1個または複数の残基を変異させた変異型TCRを作製するためのテンプレートとして使用され、所望の標的抗原に対するより高い親和性などの、望ましい改変特性を備えた変異体が選択される。
【0377】
いくつかの態様において、関心対象のTCRの産生または作製に使用するための標的ポリペプチドのペプチドは知られているか、または当業者により容易に同定され得る。いくつかの態様において、TCRまたはその抗原結合部分の作製に使用するのに適したペプチドは、関心対象の標的ポリペプチド、例えば以下に記載する標的ポリペプチドなど、におけるHLA制限モチーフの存在に基づいて決定され得る。いくつかの態様において、ペプチドは、利用可能なコンピュータ予測モデルを用いて同定される。いくつかの態様において、MHCクラスI結合部位を予測するための、そのようなモデルには、ProPred1(Singh and Raghava (2001) Bioinformatics 17(12):1236-1237)およびSYFPEITHI(Schuler et al. (2007) Immunoinformatics Methods in Molecular Biology, 409(1): 75-93 2007を参照)が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、MHC拘束性エピトープはHLA-A0201である;これは、全白人の約39~46%に発現されるため、TCRまたは他のMHC-ペプチド結合分子の調製に使用するためのMHC抗原の適切な選択を表している。
【0378】
コンピュータ予測モデルを使用したHLA-A0201結合モチーフおよびプロテアソームと免疫プロテアソームの切断部位は、公知である。MHCクラスI結合部位を予測するための、そのようなモデルには、ProPred1(Singh and Raghava, ProPred: prediction of HLA-DR binding sites. BIOINFORMATICS 17(12):1236-1237 2001に詳述される)およびSYFPEITHI(Schuler et al. SYFPEITHI, Database for Searching and T-Cell Epitope Prediction. Immunoinformatics Methods in Molecular Biology, vol 409(1): 75-93 2007を参照)が含まれるが、これらに限定されない。
【0379】
いくつかの態様において、TCRまたはその抗原結合部分は、1つ以上の特性、例えば結合特性が変更されている、組換えにより作製された天然タンパク質またはその変異形態であり得る。いくつかの態様において、TCRは、様々な動物種の1つ、例えば、ヒト、マウス、ラット、または他の哺乳動物に由来することができる。TCRは細胞結合形態であっても可溶性形態であってもよい。いくつかの態様において、提供される方法の目的のために、TCRは、細胞の表面上に発現される細胞結合形態である。
【0380】
いくつかの態様において、TCRは完全長TCRである。いくつかの態様において、TCRは抗原結合部分である。いくつかの態様において、TCRは二量体TCR(dTCR)である。いくつかの態様において、TCRは一本鎖TCR(sc-TCR)である。いくつかの態様において、dTCRまたはscTCRは、WO 03/020763、WO 04/033685、WO2011/044186に記載される構造を有する。
【0381】
いくつかの態様において、TCRは膜貫通配列に対応する配列を含む。いくつかの態様において、TCRは細胞質配列に対応する配列を含む。いくつかの態様において、TCRはCD3とのTCR複合体を形成することができる。いくつかの態様において、dTCRまたはscTCRを含めて、TCRはどれも、T細胞の表面に活性TCRを生成するシグナル伝達ドメインに連結され得る。いくつかの態様において、TCRは細胞の表面に発現される。
【0382】
いくつかの態様において、dTCRは、TCRα鎖可変領域配列に対応する配列がTCRα鎖定常領域細胞外配列に対応する配列のN末端に融合している第1のポリペプチドと、TCRβ鎖可変領域配列に対応する配列がTCRβ鎖定常領域細胞外配列に対応する配列のN末端に融合している第2のポリペプチドとを含み、第1および第2のポリペプチドはジスルフィド結合によって連結されている。いくつかの態様において、その結合は、天然の二量体αβTCRに存在する天然の鎖間ジスルフィド結合に対応し得る。いくつかの態様において、その鎖間ジスルフィド結合は、天然のTCRには存在しない。例えば、いくつかの態様において、1個または複数のシステインをdTCRポリペプチド対の定常領域細胞外配列に組み込むことができる。場合によっては、天然および非天然の両方のジスルフィド結合が望ましいかもしれない。いくつかの態様において、TCRは、膜に固定するための膜貫通配列を含む。
【0383】
いくつかの態様において、dTCRは、可変αドメイン、定常αドメイン、および定常αドメインのC末端に結合した第1の二量体化モチーフを含むTCRα鎖と、可変βドメイン、定常βドメイン、および定常βドメインのC末端に結合した第1の二量体化モチーフを含むTCRβ鎖とを含み、この場合には、第1および第2の二量体化モチーフが容易に相互作用して、第1の二量体化モチーフのアミノ酸と第2の二量体化モチーフのアミノ酸の間に共有結合を形成することによりTCRα鎖とTCRβ鎖を連結する。
【0384】
いくつかの態様において、TCRはscTCRである。一般的に、scTCRは公知の方法を用いて作製することができ、例えば、Soo Hoo, W. F. et al. PNAS (USA) 89, 4759 (1992); Wuelfing, C. and Plueckthun, A., J. Mol. Biol. 242, 655 (1994); Kurucz, I. et al. PNAS (USA) 90 3830 (1993); 国際公開PCT番号WO 96/13593、WO 96/18105、WO99/60120、WO99/18129、WO 03/020763、WO2011/044186; およびSchlueter, C. J. et al. J. Mol. Biol. 256, 859 (1996)を参照されたい。いくつかの態様において、scTCRは、TCR鎖同士の会合を容易にするために導入された非天然ジスルフィド鎖間結合を含む(例えば、国際公開PCT番号WO 03/020763を参照されたい)。いくつかの態様において、scTCRは、非ジスルフィド結合型のトランケートされたTCRであり、そのC末端に融合した異種ロイシンジッパーが鎖会合を促進する(例えば、国際公開PCT番号WO99/60120を参照されたい)。いくつかの態様において、scTCRは、TCRβ可変ドメインにペプチドリンカーを介して共有結合されたTCRα可変ドメインを含む(例えば、国際公開PCT番号WO99/18129を参照されたい)。
【0385】
いくつかの態様において、scTCRは、TCRα鎖可変領域に対応するアミノ酸配列によって構成された第1のセグメント、TCRβ鎖定常ドメイン細胞外配列に対応するアミノ酸配列のN末端に融合したTCRβ鎖可変領域配列に対応するアミノ酸配列によって構成された第2のセグメント、および第1のセグメントのC末端を第2のセグメントのN末端に連結するリンカー配列を含む。
【0386】
いくつかの態様において、scTCRは、α鎖細胞外定常ドメイン配列のN末端に融合したα鎖可変領域配列によって構成された第1のセグメントと、β鎖細胞外定常および膜貫通配列のN末端に融合したβ鎖可変領域配列によって構成された第2のセグメントと、任意で、第1のセグメントのC末端を第2のセグメントのN末端に連結するリンカー配列、を含む。
【0387】
いくつかの態様において、scTCRは、β鎖細胞外定常ドメイン配列のN末端に融合したTCRβ鎖可変領域配列で構成された第1のセグメントと、α鎖細胞外定常および膜貫通配列のN末端に融合したα鎖可変領域配列によって構成された第2のセグメントと、任意で、第1のセグメントのC末端を第2のセグメントのN末端に連結するリンカー配列、を含む。
【0388】
いくつかの態様において、第1および第2のTCRセグメントを連結するscTCRのリンカーは、TCR結合特異性を保持しながら、単一のポリペプチド鎖を形成することができる任意のリンカーであり得る。いくつかの態様において、リンカー配列は、例えば、式-P-AA-P-で表すことができ、ここで、Pはプロリンであり、AAは、アミノ酸がグリシンとセリンであるアミノ酸配列を表す。いくつかの態様において、第1および第2のセグメントは、その可変領域配列がそのような結合のために正しく配向されるように対合される。それゆえ、いくつかの場合には、リンカーは、第1のセグメントのC末端と第2のセグメントのN末端の間、またはその逆の間の距離にまたがるのに十分な長さがあるが、標的リガンドへのscTCRの結合をブロックまたは低減させるほど長すぎない。いくつかの態様において、リンカーは、10~45アミノ酸または約10~45アミノ酸、例えば10~30アミノ酸または26~41アミノ酸残基、例えば29、30、31または32アミノ酸を含み得る。いくつかの態様において、リンカーは、式-PGGG-(SGGGG)5-P-を有し、ここで、Pはプロリン、Gはグリシン、Sはセリンである(SEQ ID NO:22)。いくつかの態様において、リンカーは、配列
を有する。
【0389】
いくつかの態様において、scTCRは、α鎖の定常ドメインの免疫グロブリン領域の残基を、β鎖の定常ドメインの免疫グロブリン領域の残基に連結する、共有ジスルフィド結合を含む。いくつかの態様において、天然TCR中の鎖間ジスルフィド結合は存在しない。例えば、いくつかの態様において、1個または複数のシステインを、scTCRポリペプチドの第1および第2のセグメントの定常領域細胞外配列に組み込むことができる。場合によっては、天然および非天然の両方のジスルフィド結合が望ましいかもしれない。
【0390】
導入された鎖間ジスルフィド結合を含むdTCRまたはscTCRのいくつかの態様において、天然のジスルフィド結合は存在しない。いくつかの態様において、天然の鎖間ジスルフィド結合を形成している天然システインの1個または複数は、セリンまたはアラニンなどの別の残基に置き換えられる。いくつかの態様において、導入されたジスルフィド結合は、第1および第2のセグメントの非システイン残基をシステインに変異させることによって形成することができる。TCRの非天然ジスルフィド結合の例は、公開された国際PCT番号WO2006/000830に記載されている。
【0391】
いくつかの態様において、TCRまたはその抗原結合フラグメントは、標的抗原に対する平衡結合定数が10-5~10-12Mまたは約10-5~10-12M(およびその間の全ての個々の値と範囲)の親和性を示す。いくつかの態様において、標的抗原はMHC-ペプチド複合体またはリガンドである。
【0392】
いくつかの態様において、α鎖およびβ鎖などのTCRをコードする核酸(複数可)は、PCR、クローニングまたは他の適切な手段で増幅して、適切な発現ベクター(複数可)にクローン化することができる。発現ベクターは、任意の適切な組換え発現ベクターとすることができ、適切な宿主を形質転換またはトランスフェクトするために使用される。適切なベクターには、増殖と拡大のために、または発現のために、またはその両方のためにデザインされたもの、例えばプラスミドおよびウイルスなど、が含まれる。
【0393】
いくつかの態様において、組換え発現ベクターは、標準的な組換えDNA技術を用いて作製することができる。いくつかの態様において、ベクターは、ベクターを導入しようとする宿主のタイプ(例えば、細菌、真菌、植物または動物)に固有の調節配列、例えば転写および翻訳の開始および終止コドンを含むことができ、必要に応じて、該ベクターがDNAベースかRNAベースかを考慮する。いくつかの態様において、ベクターは、TCRまたは抗原結合部分(または他のMHC-ペプチド結合分子)をコードするヌクレオチド配列に機能的に連結された非天然プロモーターを含むことができる。いくつかの態様において、プロモーターは、非ウイルスプロモーターまたはウイルスプロモーター、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40プロモーター、RSVプロモーター、およびマウス幹細胞ウイルスの長末端反復に見られるプロモーターであり得る。その他の公知のプロモーターも考えられる。
【0394】
いくつかの態様において、T細胞クローンが得られた後、TCRαおよびβ鎖を単離して、遺伝子発現ベクターにクローニングする。いくつかの態様において、TCRαおよびβ遺伝子は、両方の鎖が共発現するように、ピコルナウイルスの2Aリボソームスキップペプチドを介して連結される。いくつかの態様において、TCRの遺伝子導入は、レトロウイルスもしくはレンチウイルスベクター、またはトランスポゾンを介して達成される(例えば、Baum et al. (2006) Molecular Therapy: The Journal of the American Society of Gene Therapy. 13:1050-1063; Frecha et al. (2010) Molecular Therapy: The Journal of the American Society of Gene Therapy. 18:1748-1757; およびHackett et al. (2010) Molecular Therapy: The Journal of the American Society of Gene Therapy. 18:674-683を参照されたい)。
【0395】
いくつかの態様において、TCRをコードするベクターを作製するために、関心対象のTCRを発現するT細胞クローンから単離された全cDNAからα鎖およびβ鎖をPCR増幅して、発現ベクターにクローニングする。いくつかの態様において、α鎖とβ鎖を同じベクターにクローニングする。いくつかの態様において、α鎖とβ鎖を異なるベクターにクローニングする。いくつかの態様において、作製されたα鎖とβ鎖は、レトロウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクターに組み込まれる。
【0396】
3. キメラ自己抗体受容体(CAAR)
いくつかの態様において、コードされる組換え受容体はキメラ自己抗体受容体(CAAR)である。いくつかの態様において、CAARは自己抗体に特異的である。いくつかの態様において、CAARを発現するように操作されたT細胞などの、CAARを発現する細胞は、正常な抗体発現細胞ではなく、自己抗体発現細胞に特異的に結合して、それを死滅させるために使用することができる。いくつかの態様において、CAAR発現細胞は、自己免疫疾患などの、自己抗原の発現に関連する自己免疫疾患を治療するために使用できる。いくつかの態様において、CAAR発現細胞は、最終的に自己抗体を産生して細胞表面に自己抗体を提示するB細胞を標的とし、これらのB細胞を治療的介入のための疾患特異的標的としてマークすることができる。いくつかの態様において、CAAR発現細胞は、抗原特異的キメラ自己抗体受容体を使用して疾患原因のB細胞を標的とすることにより、自己免疫疾患における病原性B細胞を効率的に標的とし、かつ殺傷するために使用できる。いくつかの態様において、組換え受容体は、米国特許出願公開第US 2017/0051035号に記載されるような、CAARである。
【0397】
いくつかの態様において、CAARは、自己抗体結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達領域を含む。いくつかの態様において、細胞内シグナル伝達領域は細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様において、細胞内シグナル伝達ドメインは、一次シグナル伝達ドメイン、T細胞で一次活性化シグナルを誘導することができるシグナル伝達ドメイン、T細胞受容体(TCR)成分のシグナル伝達ドメイン、および/または免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を含むシグナル伝達ドメインであるか、またはそれを含む。いくつかの態様において、細胞内シグナル伝達領域は、二次または共刺激シグナル伝達領域(二次細胞内シグナル伝達領域)を含む。
【0398】
いくつかの態様において、自己抗体結合ドメインは、自己抗原またはそのフラグメントを含む。自己抗原の選択は、標的とされる自己抗体のタイプに依存し得る。例えば、自己抗原は、それが特定の疾患状態(例えば、自己抗体媒介自己免疫疾患などの自己免疫疾患)と関連する標的細胞(例えば、B細胞)上の自己抗体を認識するので、選択され得る。いくつかの態様において、自己免疫疾患には尋常性天疱瘡(pemphigus vulgaris:PV)が含まれる。例示的な自己抗原には、デスモグレイン1(Dsg1)およびDsg3が含まれる。
【0399】
4. マルチターゲティング
いくつかの態様において、細胞および方法は、それぞれが同じまたは異なる抗原を認識し、典型的にはそれぞれが異なる細胞内シグナル伝達構成成分を含む、2種またはそれ以上の遺伝子操作された受容体を細胞上に発現させるなどのマルチターゲティング戦略を含む。そのようなマルチターゲティング戦略は、例えば、WO2014055668 (例えば、オフターゲット細胞、例えば正常細胞上には個々に存在するが、処置されるべき疾患または状態の細胞上にのみ共に存在する2種類の異なる抗原を標的とする、活性化CARと共刺激CARとの組み合わせを記載している)、およびFedorov et al., Sci. Transl. Medicine, 5(215) (December, 2013)(活性化CARおよび阻害性CARを発現する細胞、例えば、活性化CARが、正常細胞または非罹患細胞と処置されるべき疾患または状態の細胞との両方に発現されるある抗原に結合し、阻害性CARが、正常細胞または処置が望ましくない細胞にのみ発現される別の抗原に結合する細胞などを記載している)に記載されている。
【0400】
例えば、いくつかの態様において、細胞は、一般的に、第1受容体によって認識される抗原、例えば第1抗原に特異的に結合した際に、細胞に対して活性化または刺激シグナルを誘導することができる第1の遺伝子操作された抗原受容体(例えば、CARまたはTCR)を発現する受容体を含む。いくつかの態様において、細胞は、一般的に、第2受容体によって認識される第2抗原に特異的に結合した際に、免疫細胞に対して共刺激シグナルを誘導することができる第2の遺伝子操作された抗原受容体(例えば、CARまたはTCR)、例えばキメラ共刺激受容体をさらに含む。いくつかの態様において、第1抗原と第2抗原は同じである。いくつかの態様において、第1抗原と第2抗原は異なる。
【0401】
いくつかの態様において、第1および/または第2の遺伝子操作された抗原受容体(例えば、CARまたはTCR)は、細胞に対して活性化または刺激シグナルを誘導することができる。いくつかの態様において、受容体は、ITAMまたはITAM様モチーフを含有する細胞内シグナル伝達構成成分を含む。いくつかの態様において、第1受容体によって誘導される活性化は、免疫応答の開始をもたらす、細胞におけるシグナル伝達またはタンパク質発現の変化、例えばITAMリン酸化および/もしくはITAM媒介性シグナル伝達カスケードの開始など、免疫シナプスの形成および/もしくは結合した受容体の近傍での分子(例えば、CD4もしくはCD8等)のクラスター化、1種もしくは複数種の転写因子、例えばNF-κBおよび/もしくはAP-1などの活性化、ならびに/またはサイトカインなどの因子の遺伝子発現の誘導、増殖、および/もしくは生存を伴う。
【0402】
いくつかの態様において、第1および/または第2受容体は、CD28、CD137 (4-1 BB) 、OX40、および/またはICOSなどの共刺激受容体の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様において、第1および2受容体は、異なる共刺激受容体の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。1つの態様において、第1受容体はCD28共刺激シグナル伝達領域を含有し、第2受容体は4-1BB共刺激シグナル伝達領域を含有し、またはその逆である。
【0403】
いくつかの態様において、第1および/または第2受容体は、ITAMまたはITAM様モチーフを含有する細胞内シグナル伝達ドメインおよび共刺激受容体の細胞内シグナル伝達ドメインの両方を含む。
【0404】
いくつかの態様において、第1受容体はITAMまたはITAM様モチーフを含有する細胞内シグナル伝達ドメインを含有し、第2受容体は共刺激受容体の細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。同じ細胞内での活性化または刺激シグナルと共刺激シグナルとの組み合わせは、免疫応答、例えば強力でかつ持続的な免疫応答など、例えば、遺伝子発現の増加、サイトカインおよび他の因子の分泌、ならびに細胞死滅などのT細胞媒介性エフェクター機能などをもたらすものである。
【0405】
いくつかの態様において、第1受容体のみの連結によっても第2受容体のみの連結によっても、強力な免疫応答は誘導されない。いくつかの局面において、一方の受容体のみが連結された場合には、細胞は寛容化する、もしくは抗原に対して応答しなくなる、または阻害される、および/または増殖するように、もしくは因子を分泌するように、もしくはエフェクター機能を実行するように誘導されない。しかしながら、いくつかのそのような態様において、第1抗原および第2抗原を発現する細胞に遭遇した際など、複数の受容体が連結された場合には、例えば、1種もしくは複数種のサイトカインの分泌、増殖、持続、および/または標的細胞の細胞傷害性死滅などの免疫エフェクター機能の実行によって示されるような、完全な免疫活性化または刺激などの望ましい応答が達成される。
【0406】
いくつかの態様において、2種類の受容体はそれぞれ、受容体の一方がその抗原に結合することで細胞が活性化されるかまたは応答が誘導され、第2の阻害性受容体がその抗原に結合することで、その応答を抑制するかまたは減衰させるシグナルが誘導されるように、細胞に対して活性化シグナルおよび阻害シグナルを誘導する。例として、活性化CARと阻害性CARまたはiCARとの組み合わせがある。このような戦略を使用することができ、例えばこの場合、活性化CARは、疾患または状態において発現されるが、正常細胞上でも発現される抗原と結合し、阻害性受容体は、正常細胞上で発現されるが、疾患または状態の細胞上では発現されない別の抗原に結合する。
【0407】
いくつかの態様において、特定の疾患または状態と関連した抗原が、一過性に(例えば、遺伝子操作と関連した刺激時に)または恒久的に非罹患細胞上で発現され、かつ/または操作された細胞自体において発現される場合に、マルチターゲティング戦略が用いられる。そのような場合、2つの別々の、かつ個々に特異的な抗原受容体の連結を必要とすることによって、特異性、選択性、および/または有効性が改善され得る。
【0408】
いくつかの態様において、複数種の抗原、例えば第1抗原および第2抗原は、標的とされる細胞、組織、または疾患もしくは状態において、例えばがん細胞などにおいて発現される。いくつかの局面において、細胞、組織、疾患、または状態は多発性骨髄腫または多発性骨髄腫細胞である。いくつかの態様において、複数種の抗原のうちの1種または複数種は一般に、細胞療法で標的とすることが望ましくない細胞、例えば正常なもしくは非罹患の細胞もしくは組織、および/または操作された細胞自体においても発現される。そのような態様では、細胞の応答を達成するために複数種の受容体の連結を必要とすることによって、特異性および/または有効性が達成される。
【0409】
IV. 投与の方法
いくつかの局面では、操作された細胞、例えば、導入遺伝子配列が組み込まれている細胞を、例えば、本明細書で提供される方法を用いて評価されている、操作された細胞または操作された細胞を含有する組成物のいずれかを投与することを含む、処置の方法に関連して用いることができる。いくつかの局面では、提供される方法を、投与の前に、例えば、操作プロセスもしくは製造プロセスの1つもしくは複数の工程中に組み込まれた核酸(例えば、導入遺伝子配列)の存在、不在、および/もしくは量を試験するために、ならびに/または製剤化後試験、投与のための放出に向けた、かつ/もしくは対象に投与される用意ができている評価のために、操作された細胞または細胞組成物を試験する、評定する、特徴決定する、かつ/または評価するために用いることができる。
【0410】
いくつかの態様において、本明細書に記載される態様を用いて評価されるかまたは評定される、組換え受容体を発現する操作された細胞またはそれを含む組成物は、種々の治療、診断、および予防の適応症において有用である。例えば、操作された細胞または操作された細胞を含む組成物は、対象における種々の疾患および障害を処置するのに有用である。方法および使用には、例えば、腫瘍またはがんなどの疾患、状態、または障害を有する対象に対する、操作された細胞またはそれを含有する組成物の投与を含む、治療上の方法および使用が含まれる。いくつかの態様において、本明細書で提供される態様を用いて評価されるかまたは評定される操作された細胞または組成物が、疾患または障害の処置を達成するのに有効な量で投与される。使用には、そのような方法および処置における、およびそのような治療法を行うための薬の調製における、操作された細胞または組成物の使用が含まれる。いくつかの態様において、方法、例えば、治療法は、評価されたかまたは評定された操作された細胞、またはそれを含む組成物を、疾患または状態を有するか、または有する疑いがある対象に投与することによって行われる。いくつかの態様において、これらの方法は、それによって、対象における疾患または状態または障害を処置する。
【0411】
いくつかの局面では、操作された細胞または操作された細胞組成物を、疾患または障害を有する対象などの対象に投与することができる。養子細胞療法のための細胞の投与の方法は、公知であり、提供される方法および組成物に関連して用いられてもよい。例えば、養子T細胞療法は、例えば、Gruenbergらの米国特許出願公開番号2003/0170238;Rosenbergの米国特許第4,690,915号;Rosenberg (2011) Nat Rev Clin Oncol. 8(10):577-85に記載されている。例えば、Themeli et al. (2013) Nat Biotechnol. 31(10): 928-933;Tsukahara et al.(2013) Biochem Biophys Res Commun 438(1): 84-9;Davila et al. (2013) PLoS ONE 8(4): e61338を参照されたい。
【0412】
処置されるべき疾患または状態は、抗原の発現が疾患、状態、または障害の病因に関係があるおよび/または関連している、例えば、原因、増悪、その他が、そのような疾患、状態、または障害と関連している、任意のものである。疾患および状態の例には、悪性細胞もしくは細胞形質転換と関係がある疾患もしくは状態(例えば、がん)、自己免疫性もしくは炎症性疾患、または感染症、例えば、最近、ウイルス、もしくはその他の病原体により引き起こされる感染症が含まれる。処置されるべき様々な疾患および状態に関係がある抗原を含む抗原の例は上述の通りである。特定の態様において、キメラ抗原受容体または遺伝子組換えTCRは、疾患または状態に関係がある抗原に特異的に結合する。
【0413】
疾患、状態および障害の中には、固形腫瘍、血液悪性腫瘍、および黒色腫を含み、限局性および転移性腫瘍を含む腫瘍、感染症、例えばウイルスまたは他の病原体(例えばHIV、HCV、HBV、CMV、HPV)による感染、および寄生虫症、ならびに自己免疫疾患および炎症性疾患がある。いくつかの態様において、疾患、障害または状態は、腫瘍、がん、悪性腫瘍、新生物、または他の増殖性疾患もしくは障害である。そのような疾患には、限定するものではないが、以下が含まれる:白血病、リンパ腫、例えば、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性(またはリンパ芽球性)白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、有毛細胞白血病(HCL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯(Marginal zone)リンパ腫、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、未分化大細胞型リンパ腫(ALCL)、濾胞性リンパ腫、難治性濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)および多発性骨髄腫(MM)。いくつかの態様において、疾患または状態は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、成人ALL、慢性リンパ芽球性白血病(CLL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の中から選択されるB細胞悪性腫瘍である。いくつかの態様において、疾患または状態はNHLであり、NHLは、アグレッシブ(中悪性度)NHL、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)・NOS(非特定型)(デノボおよび低悪性度から進展)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL)、T細胞/組織球に富む大細胞型B細胞リンパ腫(TCHRBCL)、バーキットリンパ腫、マントル細胞リンパ腫(MCL)、および/または濾胞性リンパ腫(FL)、任意で濾胞性リンパ腫グレード3B(FL3B)からなる群より選択される。
【0414】
いくつかの態様において、疾患または状態は、感染性の疾患または状態であり、例えば、ウイルス性、レトロウイルス性、細菌性、および原虫性感染症、免疫不全ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタインバーウイルス(EBV)、アデノウイルス、BKポリオーマウイルスを含むが、これらに限定されない。いくつかの態様において、疾患または状態は、自己免疫性または炎症性の疾患または状態であり、例えば、関節リウマチ(RA)などの関節炎、I型糖尿病、全身性エリテマトーデス(SLE)、炎症性腸疾患、乾癬、強皮症、自己免疫性甲状腺疾患、グレーブス病、クローン病、多発性硬化症、喘息、および/または移植に関連する疾患もしくは状態である。
【0415】
いくつかの態様において、疾患または障害に関連する抗原は、以下であるか、または以下を含む:αvβ6インテグリン(avb6インテグリン)、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3、B7-H6、炭酸脱水酵素9(CA9、別名CAIXまたはG250)、がん精巣抗原、がん/精巣抗原1B(CTAG、別名NY-ESO-1およびLAGE-2)、がん胎児性抗原(CEA)、サイクリン、サイクリンA2、C-Cモチーフケモカインリガンド1(CCL-1)、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD123、CD133、CD138、CD171、上皮成長因子タンパク質(EGFR)、切断型上皮成長因子タンパク質(tEGFR)、タイプIII上皮成長因子受容体変異(EGFR vIII)、上皮糖タンパク質2(EPG-2)、上皮糖タンパク質40(EPG-40)、エフリンB2、エフリン受容体A2(EPHa2)、エストロゲン受容体、Fc受容体様5(FCRL5;別名Fc受容体ホモログ5またはFCRH5)、胎児アセチルコリン受容体(胎児AchR)、葉酸結合タンパク質(FBP)、葉酸受容体α、ガングリオシドGD2、O-アセチル化GD2(OGD2)、ガングリオシドGD3、糖タンパク質100(gp100)、グリピカン-3(GPC3)、Gタンパク質共役受容体クラスCグループ5メンバーD(GPRC5D)、Her2/neu(受容体チロシンキナーゼerb-B2)、Her3(erb-B3)、Her4(erb-B4)、erbB二量体、ヒト高分子量黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、B型肝炎表面抗原、ヒト白血球抗原A1(HLA-A1)、ヒト白血球抗原A2(HLA-A2)、IL-22受容体α(IL-22Rα)、IL-13受容体α2(IL-13Rα2)、キナーゼ挿入ドメイン受容体(kdr)、カッパ軽鎖、L1細胞接着分子(L1-CAM)、L1-CAMのCE7エピトープ、ロイシンリッチリピート含有8ファミリーメンバーA(LRRC8A)、Lewis Y、黒色腫関連抗原(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A6、MAGE-A10、メソテリン(MSLN)、c-Met、マウスサイトメガロウイルス(CMV)、ムチン1(MUC1)、MUC16、ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)リガンド、メラン(melan)A(MART-1)、神経細胞接着分子(NCAM)、がん胎児抗原、メラノーマ優先発現抗原(PRAME)、プロゲステロン受容体、前立腺特異抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、サバイビン、トロホブラスト(Trophoblast)糖タンパク質(TPBG、別名5T4)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、チロシナーゼ関連タンパク質1(TRP1、別名TYRP1またはgp75)、チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP2、別名ドパクロムトートメラーゼ、ドパクロムデルタイソメラーゼまたはDCT)、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)、血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGFR2)、Wilms Tumor 1(WT-1)、病原体特異的または病原体発現抗原、またはユニバーサルタグに関連する抗原、および/またはビオチン化分子、および/またはHIV、HCV、HBVもしくは他の病原体によって発現される分子。いくつかの態様における該受容体によって標的化される抗原は、B細胞悪性腫瘍に関連する抗原、例えば、いくつかの公知のB細胞マーカーのいずれかを含む。いくつかの態様において、抗原は、CD20、CD19、CD22、ROR1、CD45、CD21、CD5、CD33、Igκ、Igλ、CD79a、CD79bまたはCD30であるか、またはそれを含む。いくつかの態様において、抗原は、ウイルス抗原(例えば、HIV、HCV、HBV由来のウイルス抗原)、細菌抗原、および/または寄生虫抗原などの、病原体特異的または病原体発現抗原であるか、またはそれを含む。
【0416】
いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメント(例えば、scFvまたはVHドメイン)は、CD19などの抗原を特異的に認識する。いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、CD19に特異的に結合する抗体または抗原結合フラグメントに由来するか、またはそのバリアントである。いくつかの態様において、細胞療法、例えば養子T細胞療法は、細胞療法を受ける予定の対象から、またはそのような対象に由来するサンプルから細胞が単離され、かつ/またはその他の方法で調製される自家移植によって行われる。したがって、いくつかの局面では、細胞は、処置および該細胞を必要とする対象、例えば患者に由来し、単離および処理後に同じ対象に投与される。
【0417】
いくつかの態様において、疾患または状態はB細胞悪性腫瘍である。いくつかの態様において、B細胞悪性腫瘍は白血病またはリンパ腫である。いくつかの態様において、疾患または状態は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、成人ALL、慢性リンパ芽球性白血病(CLL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、またはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)である。いくつかの場合には、疾患または状態はNHLであり、例えば、アグレッシブ(中悪性度)NHL、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)・NOS(非特定型)(デノボおよび低悪性度から進展)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL)、T細胞/組織球に富む大細胞型B細胞リンパ腫(TCHRBCL)、バーキットリンパ腫、マントル細胞リンパ腫(MCL)、および/または濾胞性リンパ腫(FL)、任意で濾胞性リンパ腫グレード3B(FL3B)であるNHLを含む。いくつかの局面では、CARなどの組換え受容体は、該疾患または状態に関連する抗原、またはB細胞悪性腫瘍に関連する病変の環境の細胞に発現される抗原に特異的に結合する。いくつかの態様における該受容体によって標的化される抗原には、B細胞悪性腫瘍に関連する抗原、例えば、多くの公知のB細胞マーカーのいずれかが含まれる。いくつかの態様において、該受容体によって標的化される抗原は、CD20、CD19、CD22、ROR1、CD45、CD21、CD5、CD33、Igκ、Igλ、CD79a、CD79b、CD30、またはそれらの組み合わせである。
【0418】
いくつかの態様において、疾患または状態は、骨髄腫、例えば多発性骨髄腫である。いくつかの局面では、CARなどの組換え受容体は、該疾患または状態に関連する抗原、または多発性骨髄腫に関連する病変の環境の細胞に発現される抗原に特異的に結合する。いくつかの態様における該受容体によって標的化される抗原には、多発性骨髄腫に関連する抗原が含まれる。いくつかの局面では、該抗原、例えば第2のまたは追加の抗原(疾患特異的抗原および/または関連抗原など)は、多発性骨髄腫で発現され、例えば、B細胞成熟抗原(BCMA)、Gタンパク質共役受容体クラスCグループ5メンバーD(GPRC5D)、CD38(環状ADPリボースヒドロラーゼ)、CD138(シンデカン-1、シンデカン、SYN-1)、CS-1(CS1、CD2サブセット1、CRACC、SLAMF7、CD319、および19A24)、BAFF-R、TACIおよび/またはFcRH5である。他の例示的な多発性骨髄腫抗原には、CD56、TIM-3、CD33、CD123、CD44、CD20、CD40、CD74、CD200、EGFR、β2-ミクログロブリン、HM1.24、IGF-1R、IL-6R、TRAIL-R1、およびアクチビン受容体タイプIIA(ActRIIA)が含まれる。Benson and Byrd, J. Clin. Oncol. (2012) 30(16): 2013-15; Tao and Anderson, Bone Marrow Research (2011):924058; Chu et al., Leukemia (2013) 28(4):917-27; Garfall et al., Discov Med. (2014) 17(91):37-46を参照されたい。いくつかの態様において、該抗原には、リンパ系腫瘍、骨髄腫、エイズ関連リンパ腫、および/または移植後リンパ球増殖症に存在するもの、例えばCD38、が含まれる。そのような抗原に対する抗体または抗原結合フラグメントは知られており、例えば、米国特許第8,153,765号、第8,603477号、第8,008,450号;米国特許出願公開第US20120189622号または第US20100260748号;および/または国際PCT公開番号WO2006099875、WO2009080829、WO2012092612またはWO2014210064に記載されるものが含まれる。いくつかの態様において、そのような抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、scFv)は、多重特異性抗体、多重特異性キメラ受容体、例えば多重特異性CAR、および/または多重特異性細胞に含まれる。
【0419】
いくつかの態様において、疾患または障害は、Gタンパク質共役受容体クラスCグループ5メンバーD(GPRC5D)の発現、および/またはB細胞成熟抗原(BCMA)の発現に関連している。
【0420】
いくつかの態様において、疾患または障害はB細胞関連障害である。提供される方法の提供される任意のいくつかの態様において、BCMAに関連する疾患または障害は、自己免疫疾患または障害である。提供される方法の提供される任意のいくつかの態様において、自己免疫疾患または障害は、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、炎症性腸疾患、関節リウマチ、ANCA関連血管炎、突発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫性血小板減少症、シャーガス病、グレーブス病、ウェゲナー肉芽腫症、結節性多発性動脈炎、シェーグレン症候群、尋常性天疱瘡、強皮症、多発性硬化症、乾癬、IgA腎症、IgM多発性神経炎、血管炎、真性糖尿病、レイノー症候群、抗リン脂質症候群、グッドパスチャー病、川崎病、自己免疫性溶血性貧血、重症筋無力症、または進行性糸球体腎炎である。
【0421】
いくつかの態様において、疾患または障害はがんである。いくつかの態様において、がんはGPRC5D発現がんである。いくつかの態様において、がんは形質細胞悪性腫瘍であり、該形質細胞悪性腫瘍は、多発性骨髄腫(MM)または形質細胞腫である。いくつかの態様において、がんは多発性骨髄腫(MM)である。いくつかの態様において、がんは再発性/難治性多発性骨髄腫である。
【0422】
いくつかの態様において、細胞療法、例えば養子T細胞療法は、細胞療法を受ける予定であるかまたは最終的に細胞療法を受ける対象以外の対象、例えば第1対象から細胞が単離され、かつ/またはその他の方法で調製される同種移植によって行われる。そのような態様において、この細胞は次いで、同じ種の異なる対象、例えば第2対象に投与される。いくつかの態様において、第1対象と第2対象は遺伝子的に同一である。いくつかの態様において、第1対象と第2対象は遺伝子的に類似している。いくつかの態様において、第2対象は第1対象と同じHLAクラスまたはスーパータイプを発現する。
【0423】
細胞は、任意の適切な手段によって投与することができ、例えば、ボーラス注入によって、注射、例えば静脈内または皮下注射、眼内注射、眼周囲注射、網膜下注射、硝子体内注射、経中隔注射、強膜下注射、脈絡膜内注射、前房内注射、結膜下(subconjectval)注射、結膜下(subconjuntival)注射、テノン嚢下注射、球後注射、球周囲注射、または後強膜近傍(posterior juxtascleral)送達によって投与される。いくつかの態様において、それらは、非経口、肺内、および鼻腔内、局所治療が望ましい場合は病変内投与によって投与される。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与が含まれる。いくつかの態様において、投与量は、細胞の単回ボーラス投与によって投与される。いくつかの態様において、それは、例えばせいぜい3日間にわたる、細胞の複数回ボーラス投与によって、または細胞の連続注入投与によって投与される。いくつかの態様において、細胞用量の投与または任意の追加の療法、例えば、リンパ球除去療法、介入療法および/または併用療法は、外来通院による送達を介して行われる。
【0424】
疾患の予防または治療の場合、適切な投与量は、治療する疾患のタイプ、細胞または組換え受容体のタイプ、疾患の重症度および経過、細胞が予防または治療目的で投与されるか、以前の治療、対象の病歴および細胞に対する反応、ならびに主治医の裁量に依存し得る。組成物および細胞は、いくつかの態様において、一度にまたは一連の治療にわたって対象に適切に投与される。
【0425】
いくつかの態様において、細胞は、併用処置の一部として、例えば、別の治療的介入、例えば抗体または操作された細胞または受容体または作用物質など、例えば細胞毒性剤または治療剤などと同時に、または任意の順序で逐次的に、投与される。細胞はいくつかの態様において、1種または複数種の付加的な治療剤と、または別の治療的介入と関連して、同時にまたは任意の順序で逐次的に共投与される。状況によっては、細胞は、細胞集団が1種もしくは複数種の付加的な治療剤の効果を増強するように、またはその逆になるように、十分に近い時間内に別の治療法と共投与される。いくつかの態様において、細胞は、1種または複数種の付加的な治療剤の前に投与される。いくつかの態様において、細胞は、1種または複数種の付加的な治療剤の後に投与される。いくつかの態様において、1種または複数種の付加的な作用物質には、例えば持続性を増強するための、IL-2などのサイトカインが含まれる。いくつかの態様において、本方法は、化学療法剤の投与を含む。
【0426】
いくつかの態様において、例えば投与前に腫瘍組織量を減らすための、化学療法剤、例えばコンディショニング化学療法剤を、対象に投与する。
【0427】
いくつかの局面における免疫枯渇(例えば、リンパ球除去)療法による対象のプレコンディショニングは、養子細胞療法(ACT)の効果を改善することができる。
【0428】
したがって、いくつかの態様において、細胞療法を開始する前に、プレコンディショニング剤、例えばリンパ球除去剤または化学療法剤(例えば、シクロホスファミド、フルダラビン、またはそれらの組み合わせ)を対象に投与する。例えば、細胞療法の開始の少なくとも2日前に、例えば少なくとも3、4、5、6、または7日前に、プレコンディショニング剤を対象に投与することができる。いくつかの態様において、細胞療法の開始のせいぜい7日前までに、例えば6、5、4、3、または2日前までに、プレコンディショニング剤を対象に投与する。
【0429】
いくつかの態様において、対象は、20mg/kg~100mg/kgまたは約20mg/kg~100mg/kg、例えば40mg/kg~80mg/kgまたは約40mg/kg~80mg/kgの用量のシクロホスファミドでプレコンディショニングされる。いくつかの局面では、対象は60mg/kgまたは約60mg/kgのシクロホスファミドでプレコンディショニングされる。いくつかの態様において、シクロホスファミドは、単回投与されるか、または毎日、隔日、または3日ごとの投与など、複数回投与される。いくつかの態様において、シクロホスファミドは、1日1回、1日または2日間投与される。いくつかの態様において、リンパ球除去剤がシクロホスファミドを含む場合、対象はシクロホスファミドを約または100mg/m2~500mg/m2、例えば約または200mg/m2~400mg/m2または250mg/m2~350mg/m2の用量で投与される。ある場合には、対象は約300mg/m2のシクロホスファミドを投与される。いくつかの態様において、シクロホスファミドは、単回投与されるか、または毎日、隔日、または3日ごとの投与など、複数回投与される。いくつかの態様において、シクロホスファミドは、例えば1~5日間、例えば3~5日間、毎日投与される。ある場合には、対象は、細胞療法を開始する前に、約300mg/m2のシクロホスファミドを3日間毎日投与される。
【0430】
いくつかの態様において、リンパ球除去剤がフルダラビンを含む場合、対象はフルダラビンを1mg/m2~100mg/m2または約1mg/m2~100mg/m2、例えば、約または10mg/m2~75mg/m2、15mg/m2~50mg/m2、20mg/m2~40mg/m2、または24mg/m2~35mg/m2の用量で投与される。ある場合には、対象は約30mg/m2のフルダラビンを投与される。いくつかの態様において、フルダラビンは、単回投与されるか、または毎日、隔日、または3日ごとの投与など、複数回投与される。いくつかの態様において、フルダラビンは、例えば1~5日間、例えば3~5日間、毎日投与される。ある場合には、対象は、細胞療法を開始する前に、約30mg/m2のフルダラビンを3日間毎日投与される。
【0431】
いくつかの態様において、リンパ球除去剤は、シクロホスファミドとフルダラビンの組み合わせなどの、薬剤の組み合わせを含む。したがって、薬剤の組み合わせは、上記のような任意の用量または投与スケジュールでのシクロホスファミドと、上記のような任意の用量または投与スケジュールでのフルダラビンを含み得る。例えば、いくつかの局面では、対象は、初回投与またはその後の投与の前に、60mg/kg(約2g/m2)のシクロホスファミドおよび3~5回の25mg/m2のフルダラビンを投与される。
【0432】
細胞の投与後、操作された細胞集団の生物学的活性はいくつかの態様において、例えばいくつかの公知の方法のいずれかによって測定される。評価するパラメータには、例えばイメージングによるインビボでの、または例えばELISAもしくはフローサイトメトリーによるエクスビボでの、抗原に対する操作されたT細胞もしくは天然T細胞または他の免疫細胞の特異的結合が含まれる。ある特定の態様において、標的細胞を破壊する操作された細胞の能力は、例えばKochenderfer et al., J. Immunotherapy, 32(7): 689-702 (2009) およびHerman et al. J. Immunological Methods, 285(1): 25-40 (2004) に記載されている細胞傷害性アッセイなどの、任意の公知の適切な方法を用いて測定され得る。ある特定の態様において、細胞の生物学的活性は、CD107a、IFNγ、IL-2、およびTNFなどの1種または複数種のサイトカインの発現および/または分泌をアッセイすることによって測定される。いくつかの局面において、生物学的活性は、腫瘍量または腫瘍負荷量の減少などの臨床転帰を評価することによって測定される。
【0433】
ある特定の態様において、操作された細胞は、それらの治療有効性または予防有効性が増加するように、いくつもの方法でさらに改変される。例えば、集団によって発現される操作されたCARまたはTCRは、ターゲティング部分に直接的に、またはリンカーを介して間接的にコンジュゲートされ得る。化合物、例えばCARまたはTCRをターゲティング部分にコンジュゲートする実践は、公知である。例えば、Wadwa et al., J.Drug Targeting 3:1 1 1 (1995) および米国特許第5,087,616号を参照されたい。
【0434】
いくつかの態様において、細胞は、併用療法の一部として、例えば、抗体、遺伝子操作された細胞もしくは受容体、または薬剤(例えば、細胞傷害薬または治療薬)などの、別の治療的介入と同時に、または任意の順序で連続して、投与される。いくつかの態様における細胞は、1つ以上の追加の治療薬と一緒に、または別の治療的介入に関連して、同時にまたは任意の順序で連続して、共投与される。ある状況では、細胞は、細胞集団が1つ以上の追加の治療薬の効果を増強するかまたはその逆であるように時間的に十分に接近して、別の療法と共投与される。ある態様では、細胞を1つ以上の追加の治療薬の前に投与する。ある態様では、細胞を1つ以上の追加の治療薬の後に投与する。いくつかの態様において、1つ以上の追加の治療薬は、例えば持続性を高めるために、IL-2などのサイトカインを含む。
【0435】
A. 投薬
いくつかの態様において、1回量の細胞は、提供される方法、および/または提供される製造物品もしくは組成物に従って、対象に投与される。いくつかの態様において、該用量のサイズまたは投与のタイミングは、対象における特定の疾患または状態に応じて決定される。場合によっては、提供される明細記述を考慮して、特定の疾患のための該用量のサイズまたは投与のタイミングを経験的に決定することができる。
【0436】
いくつかの態様において、該用量の細胞は、2×105細胞/kg~2×106細胞/kgまたは約2×105細胞/kg~約2×106細胞/kg、例えば、4×105細胞/kg~1×106細胞/kgもしくは約4×105細胞/kg~約1×106細胞/kg、または6×105細胞/kg~約8×105細胞/kgもしくは約6×105細胞/kg~約8×105細胞/kgを含む。いくつかの態様において、該用量の細胞は、対象の体重1キログラム当たりわずか2×105の細胞(例えば、CAR発現細胞などの抗原発現細胞)(細胞/kg)を含み、例えば、わずか3×105細胞/kgもしくはわずか約3×105細胞/kg、わずか4×105細胞/kgもしくはわずか約4×105細胞/kg、わずか5×105細胞/kgもしくはわずか約5×105細胞/kg、わずか6×105細胞/kgもしくはわずか約6×105細胞/kg、わずか7×105細胞/kgもしくはわずか約7×105細胞/kg、わずか8×105細胞/kgもしくはわずか約8×105細胞/kg、わずか9×105細胞/kgもしくはわずか約9×105細胞/kg、わずか1×106細胞/kgもしくはわずか約1×106細胞/kg、またはわずか2×106細胞/kgもしくはわずか約2×106細胞/kgを含む。いくつかの態様において、該用量の細胞は、対象の体重1キログラム当たり少なくとも2×105または少なくとも約2×105または2×105または約2×105の細胞(例えば、CAR発現細胞などの抗原発現細胞)(細胞/kg)を含み、例えば、少なくとも3×105細胞/kgもしくは少なくとも約3×105細胞/kgもしくは3×105細胞/kgもしくは約3×105細胞/kg、少なくとも4×105細胞/kgもしくは少なくとも約4×105細胞/kgもしくは4×105細胞/kgもしくは約4×105細胞/kg、少なくとも5×105細胞/kgもしくは少なくとも約5×105細胞/kgもしくは5×105細胞/kgもしくは約5×105細胞/kg、少なくとも6×105細胞/kgもしくは少なくとも約6×105細胞/kgもしくは6×105細胞/kgもしくは約6×105細胞/kg、少なくとも7×105細胞/kgもしくは少なくとも約7×105細胞/kgもしくは7×105細胞/kgもしくは約7×105細胞/kg、少なくとも8×105細胞/kgもしくは少なくとも約8×105細胞/kgもしくは8×105細胞/kgもしくは約8×105細胞/kg、少なくとも9×105細胞/kgもしくは少なくとも約9×105細胞/kgもしくは9×105細胞/kgもしくは約9×105細胞/kg、少なくとも1×106細胞/kgもしくは少なくとも約1×106細胞/kgもしくは1×106細胞/kgもしくは約1×106細胞/kg、または少なくとも2×106細胞/kgもしくは少なくとも約2×106細胞/kgもしくは2×106細胞/kgもしくは約2×106細胞/kgを含む。
【0437】
特定の態様では、細胞、または細胞のサブタイプの個々の集団は、対象に、10万~1000億または約10万~約1000億の細胞の範囲、および/または対象の体重1キログラム当たりの細胞のその量で投与され、例えば、10万~500億または約10万~約500億の細胞(例えば、500万もしくは約500万の細胞、2500万もしくは約2500万の細胞、5億もしくは約5億の細胞、10億もしくは約10億の細胞、50億もしくは約50億の細胞、200億もしくは約200億の細胞、300億もしくは約300億の細胞、400億もしくは約400億の細胞、または前述の値のいずれか2つによって定義された範囲)、100万~500億または約100万~約500億の細胞(例えば、500万もしくは約500万の細胞、2500万もしくは約2500万の細胞、5億もしくは約5億の細胞、10億もしくは約10億の細胞、50億もしくは約50億の細胞、200億もしくは約200億の細胞、300億もしくは約300億の細胞、400億もしくは約400億の細胞、または前述の値のいずれか2つによって定義された範囲)、例えば、1000万~1000億または約1000万~約1000億の細胞(例えば、2000万もしくは約2000万の細胞、3000万もしくは約3000万の細胞、4000万もしくは約4000万の細胞、6000万もしくは約6000万の細胞、7000万もしくは約7000万の細胞、8000万もしくは約8000万の細胞、9000万もしくは約9000万の細胞、100億もしくは約100億の細胞、250億もしくは約250億の細胞、500億もしくは約500億の細胞、750億もしくは約750億の細胞、900億もしくは約900億の細胞、または前述の値のいずれか2つによって定義される範囲)、場合によっては、1億~500億または約1億~約500億の細胞(例えば、1億2000万もしくは約1億2000万の細胞、2億5000万もしくは約2億5000万の細胞、3億5000万もしくは約3億5000万の細胞、4億5000万もしくは約4億5000万の細胞、6億5000万もしくは約6億5000万の細胞、8億もしくは約8億の細胞、9億もしくは約9億の細胞、30億もしくは約30億の細胞、300億もしくは約300億の細胞、450億もしくは約450億の細胞)、またはこれらの範囲の中間の任意の値および/または対象の体重1キログラム当たりで投与される。投与量は、疾患もしくは障害および/または患者および/または他の治療に特有の属性に応じて変化し得る。
【0438】
いくつかの態様において、細胞の投与量が患者の体表面積または体重に関連したりそれに基づくことのないよう、細胞の投与量は均一用量または固定用量である。いくつかの態様において、そのような値は、組換え受容体発現細胞の数を指す;他の態様では、それらは、投与されるT細胞またはPBMCまたは総細胞の数を指す。
【0439】
いくつかの態様において、例えば、対象がヒトである場合、該用量は、約5×108未満の総組換え受容体(例えば、CAR)発現細胞、T細胞、または末梢血単核細胞(PBMC)を含み、例えば、1×106~5×108の範囲、例えば、例えば、2×106、5×106、1×107、5×107、1×108、1.5×108、もしくは5×108のそのような細胞を含み、1×106~5×108または約1×106~約5×108の範囲のそのような細胞を含み、例えば、2×106、5×106、1×107、5×107、1×108、1.5×108、もしくは5×108、または約2×106、約5×106、約1×107、約5×107、約1×108、約1.5×108、もしくは約5×108、または前述の値のいずれか2つの間の範囲のそのような総細胞を含む。いくつかの態様において、例えば、対象がヒトである場合、該用量は、1×106または約1×106より多く、かつ2×109または約2×109より少ない総組換え受容体(例えば、CAR)発現細胞、T細胞、または末梢血単核細胞(PBMC)を含み、例えば、2.5×107~1.2×109または約2.5×107~約1.2×109の範囲のそのような細胞、例えば、2.5×107、5×107、1×108、1.5×108、8×108、もしくは1.2×109、または約2.5×107、約5×107、約1×108、約1.5×108、約8×108、もしくは約1.2×109、または前述の値のいずれか2つの間の範囲のそのような総細胞を含む。
【0440】
いくつかの態様において、遺伝子操作された細胞の該用量は、以下を含む:1×105~5×108または約1×105~約5×108の総CAR発現(CAR+)T細胞、1×105~2.5×108または約1×105~約2.5×108の総CAR発現T細胞、1×105~1×108または約1×105~約1×108の総CAR発現T細胞、1×105~5×107または約1×105~約5×107の総CAR発現T細胞、1×105~2.5×107または約1×105~約2.5×107の総CAR発現T細胞、1×105~1×107または約1×105~約1×107の総CAR発現T細胞、1×105~5×106または約1×105~約5×106の総CAR発現T細胞、1×105~2.5×106または約1×105~約2.5×106の総CAR発現T細胞、1×105~1×106または約1×105~約1×106の総CAR発現T細胞、1×106~5×108または約1×106~約5×108の総CAR発現T細胞、1×106~2.5×108または約1×106~約2.5×108の総CAR発現T細胞、1×106~1×108または約1×106~約1×108の総CAR発現T細胞、1×106~5×107または約1×106~約5×107の総CAR発現T細胞、1×106~2.5×107または約1×106~約2.5×107の総CAR発現T細胞、1×106~1×107または約1×106~約1×107の総CAR発現T細胞、1×106~5×106または約1×106~約5×106の総CAR発現T細胞、1×106~2.5×106または約1×106~約2.5×106の総CAR発現T細胞、2.5×106~5×108または約2.5×106~約5×108の総CAR発現T細胞、2.5×106~2.5×108または約2.5×106~約2.5×108の総CAR発現T細胞、2.5×106~1×108または約2.5×106~約1×108の総CAR発現T細胞、2.5×106~5×107または約2.5×106~約5×107の総CAR発現T細胞、2.5×106~2.5×107または約2.5×106~約2.5×107の総CAR発現T細胞、2.5×106~1×107または約2.5×106~約1×107の総CAR発現T細胞、2.5×106~5×106または約2.5×106~約5×106の総CAR発現T細胞、5×106~5×108または約5×106~約5×108の総CAR発現T細胞、5×106~2.5×108または約5×106~約2.5×108の総CAR発現T細胞、5×106~1×108または約5×106~約1×108の総CAR発現T細胞、5×106~5×107または約5×106~約5×107の総CAR発現T細胞、5×106~2.5×107または約5×106~約2.5×107の総CAR発現T細胞、5×106~1×107または約5×106~約1×107の総CAR発現T細胞、1×107~5×108または約1×107~約5×108の総CAR発現T細胞、1×107~2.5×108または約1×107~約2.5×108の総CAR発現T細胞、1×107~1×108または約1×107~約1×108の総CAR発現T細胞、1×107~5×107または約1×107~約5×107の総CAR発現T細胞、1×107~2.5×107または約1×107~約2.5×107の総CAR発現T細胞、2.5×107~5×108または約2.5×107~約5×108の総CAR発現T細胞、2.5×107~2.5×108または約2.5×107~約2.5×108の総CAR発現T細胞、2.5×107~1×108または約2.5×107~約1×108の総CAR発現T細胞、2.5×107~5×107または約2.5×107~約5×107の総CAR発現T細胞、約5×107~約5×108の総CAR発現T細胞、約5×107~約2.5×108の総CAR発現T細胞、約5×107~約1×108の総CAR発現T細胞、1×108~5×108または約1×108~約5×108の総CAR発現T細胞、1×108~2.5×108または約1×108~約2.5×108の総CAR発現T細胞、2.5×108~5×108または約2.5×108~約5×108の総CAR発現T細胞。いくつかの態様において、遺伝子操作された細胞の該用量は、2.5×107~1.5×108または約2.5×107~約1.5×108の総CAR発現T細胞、例えば、5×107~1×108または約5×107~約1×108の総CAR発現T細胞を含む。
【0441】
いくつかの態様において、遺伝子操作された細胞の該用量は、少なくとも1×105もしくは約1×105のCAR発現細胞、少なくとも2.5×105もしくは約2.5×105のCAR発現細胞、少なくとも5×105もしくは約5×105のCAR発現細胞、少なくとも1×106もしくは約1×106のCAR発現細胞、少なくとも2.5×106もしくは約2.5×106のCAR発現細胞、少なくとも5×106もしくは約5×106のCAR発現細胞、少なくとも1×107もしくは約1×107のCAR発現細胞、少なくとも2.5×107もしくは約2.5×107のCAR発現細胞、少なくとも5×107もしくは約5×107のCAR発現細胞、少なくとも1×108もしくは約1×108のCAR発現細胞、少なくとも1.5×108もしくは約1.5×108のCAR発現細胞、少なくとも約5×106のCAR発現細胞、少なくとも1×107もしくは少なくとも約1×107のCAR発現細胞、少なくとも2.5×107もしくは少なくとも約2.5×107のCAR発現細胞、少なくとも5×107もしくは少なくとも約5×107のCAR発現細胞、少なくとも1×108もしくは少なくとも約1×108のCAR発現細胞、少なくとも2.5×108もしくは少なくとも約2.5×108のCAR発現細胞、または少なくとも5×108もしくは少なくとも約5×108のCAR発現細胞を含む。
【0442】
いくつかの態様において、細胞療法は、それぞれ両端を含めて、1×105~5×108もしくは約1×105~約5×108の総組換え受容体発現細胞、総T細胞、もしくは総末梢血単核細胞(PBMC)、5×105~1×107もしくは約5×105~約1×107の総組換え受容体発現細胞、総T細胞、もしくは総末梢血単核細胞(PBMC)、または1×106~1×107もしくは約1×106~約1×107の総組換え受容体発現細胞、総T細胞、もしくは総末梢血単核細胞(PBMC)の数の細胞を含む用量の投与を含む。いくつかの態様において、細胞療法は、少なくとも1×105または少なくとも約1×105の総組換え受容体発現細胞、総T細胞、または総末梢血単核細胞(PBMC)、例えば、少なくとも1×106または少なくとも1×106、少なくとも1×107または少なくとも約1×107、少なくとも1×108または少なくとも約1×108のそのような細胞の、細胞の数を含む細胞の用量の投与を含む。いくつかの態様において、その数は、CD3発現細胞またはCD8発現細胞、場合によってはまた、組換え受容体発現(例えば、CAR発現)細胞の総数を基準にする。いくつかの態様において、細胞療法は、それぞれ両端を含めて、1×105~5×108または約1×105~約5×108のCD3発現もしくはCD8発現総T細胞またはCD3発現もしくはCD8発現組換え受容体発現細胞、5×105~1×107または約5×105~約1×107のCD3発現もしくはCD8発現総T細胞またはCD3発現もしくはCD8発現組換え受容体発現細胞、あるいは1×106~1×107または約1×106~約1×107のCD3発現もしくはCD8発現総T細胞またはCD3発現もしくはCD8発現組換え受容体発現細胞の数の細胞を含む用量の投与を含む。いくつかの態様において、細胞療法は、それぞれ両端を含めて、1×105~5×108もしくは約1×105~約5×108の総CD3発現/CAR発現もしくはCD8発現/CAR発現細胞、5×105~1×107もしくは約5×105~約1×107の総CD3発現/CAR発現もしくはCD8発現/CAR発現細胞、または1×106~1×107もしくは約1×106~約1×107の総CD3発現/CAR発現もしくはCD8発現/CAR発現細胞の数の細胞を含む用量の投与を含む。
【0443】
いくつかの態様において、該用量のT細胞には、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、またはCD4+およびCD8+ T細胞が含まれる。
【0444】
いくつかの態様において、例えば、対象がヒトである場合、該用量のCD8+ T細胞(CD4+およびCD8+ T細胞を含む用量を含む)は、1×106~5×108または約1×106~約5×108の総組換え受容体(例えば、CAR)発現CD8+細胞を含み、例えば、5×106~1×108または約5×106~約1×108の範囲のそのような細胞、例えば、1×107、2.5×107、5×107、7.5×107、1×108、1.5×108、または5×108のそのような総細胞、または前述の値のいずれか2つの間の範囲を含む。いくつかの態様において、患者は複数回の投与を受け、各用量または総用量は前述の値のいずれかの範囲内であり得る。いくつかの態様において、細胞の該用量は、1×107~0.75×108または約1×107~約0.75×108の総組換え受容体発現CD8+ T細胞、1×107~5×107または約1×107~約5×107の総組換え受容体発現CD8+ T細胞、1×107~0.25×108または約1×107~約0.25×108の総組換え受容体発現CD8+ T細胞の投与を含む。いくつかの態様において、細胞の該用量は、1×107、2.5×107、5×107、7.5×107、1×108、1.5×108、2.5×108、もしくは5×108、または約1×107、約2.5×107、約5×107、約7.5×107、約1×108、約1.5×108、約2.5×108、もしくは約5×108の総組換え受容体発現CD8+ T細胞の投与を含む。
【0445】
いくつかの態様において、細胞、例えば組換え受容体発現T細胞の用量は、対象に1回量として投与されるか、または2週間、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年またはそれ以上の期間内に1回だけ投与される。
【0446】
養子細胞療法との関係において、所定の「用量」の投与は、単一の組成物としての細胞の所定の量もしくは数の投与および/または中断のない単回投与(例えば、単回注射または連続注入としての投与)を包含し、さらに、分割用量または複数の組成物としての細胞の所定の量もしくは数の投与(特定の期間、例えばせいぜい3日間にわたって、複数の個別の組成物または注入として提供される)を包含する。したがって、いくつかの状況では、該用量は、単一時点で投与または開始される、指定された数の細胞の単回投与または連続投与である。しかしながら、状況によっては、該用量は、1日1回3日間もしくは2日間など、せいぜい3日間にわたる複数回の注射または注入として、あるいは1日にわたる複数回の注入により投与される。
【0447】
したがって、いくつかの局面では、該用量の細胞は単一の薬学的組成物として投与される。いくつかの態様において、該用量の細胞は複数の組成物(集合的に該用量の細胞を含有する)として投与される。
【0448】
いくつかの態様において、用語「分割用量」は、2日以上にわたって投与されるように分割された用量を指す。このタイプの投薬は、本方法により包含され、1回量であるとみなされる。
【0449】
したがって、細胞の用量は、分割用量として、例えば経時的に投与される分割用量として、投与され得る。例えば、いくつかの態様において、該用量を2日間または3日間にわたって対象に投与することができる。代表的な分割投与法には、初日に該用量の25%を投与し、2日目に該用量の残り75%を投与することが含まれる。他の態様では、該用量の33%を初日に投与して、残り67%を2日目に投与してもよい。いくつかの局面では、該用量の10%を初日に投与し、該用量の30%を2日目に投与し、該用量の60%を3日目に投与する。いくつかの態様において、分割用量が3日を超えて広がることはない。
【0450】
いくつかの態様において、該用量の細胞は、例えば第1および第2の、任意でそれ以上の、複数の組成物または溶液の投与によって投与され、各組成物または溶液は該用量の一部の細胞を含有する。いくつかの局面では、それぞれが異なる細胞の集団および/またはサブタイプを含有する複数の組成物は、任意で一定期間内に、別々にまたは独立して投与される。例えば、細胞の集団またはサブタイプは、それぞれCD8+およびCD4+ T細胞、および/またはそれぞれCD8+およびCD4+濃縮集団、例えば、それぞれが組換え受容体を発現するように遺伝子操作された細胞を個別に含むCD4+および/またはCD8+ T細胞、を含むことができる。いくつかの態様において、該用量の投与は、1回量のCD8+ T細胞または1回量のCD4+ T細胞を含む第1の組成物の投与と、該用量のCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞の他方を含む第2の組成物の投与を含む。
【0451】
いくつかの態様において、前記組成物または用量の投与、例えば、複数の細胞組成物の投与は、細胞組成物の別々の投与を含む。いくつかの局面では、別々の投与は、同時に、または任意の順序で連続して行われる。いくつかの態様において、該用量は第1の組成物および第2の組成物を含み、第1の組成物と第2の組成物を0~12時間間隔もしくは約0~約12時間間隔で、0~6時間間隔もしくは約0~約6時間間隔で、または0~2時間間隔もしくは約0~約2時間間隔で投与する。いくつかの態様において、第1の組成物の投与開始と第2の組成物の投与開始を、2時間以内もしくは約2時間以内、1時間以内もしくは約1時間以内、30分以内もしくは約30分以内、15分以内もしくは約15分以内、10分以内もしくは約10分以内、または5分以内もしくは約5分以内の間隔で行う。いくつかの態様において、第1の組成物の投与の開始および/または完了と、第2の組成物の投与の完了および/または開始を、2時間以内もしくは約2時間以内、1時間以内もしくは約1時間以内、30分以内もしくは約30分以内、15分以内もしくは約15分以内、10分以内もしくは約10分以内、または5分以内もしくは約5分以内の間隔で行う。
【0452】
いくつかの態様において、第1の組成物、例えば、該用量の第1の組成物は、CD4+ T細胞を含む。いくつかの態様において、第1の組成物、例えば、該用量の第1の組成物は、CD8+ T細胞を含む。いくつかの態様において、第1の組成物は、第2の組成物の前に投与される。
【0453】
いくつかの態様において、細胞の該用量または組成物は、規定されたまたは目標の比率の組換え受容体を発現するCD4+細胞と組換え受容体を発現するCD8+細胞、および/またはCD4+細胞とCD8+細胞を含み、この比は、任意で約1:1であるか、または約1:3~約3:1であり、例えば約1:1である。いくつかの局面では、異なる細胞集団の目標のまたは所望の比率(例えば、CD4+:CD8+比またはCAR+ CD4+:CAR+ CD8+比、例えば1:1)での組成物または用量の投与は、該集団の一方を含む細胞組成物の投与、次いで該集団の他方を含む別個の細胞組成物の投与を含み、その場合、該投与を目標または所望の比率で行う。いくつかの局面では、規定された比率での細胞の用量または組成物の投与は、T細胞療法の拡大増殖、持続性および/または抗腫瘍活性の改善につながる。
【0454】
いくつかの態様において、対象は、細胞の複数回の用量、例えば、2回以上の用量または複数回の連続用量を受け取る。いくつかの態様において、2回の用量が対象に投与される。いくつかの態様において、対象は連続用量を受け取り、例えば、初回用量の約4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20または21日後に2回目の用量を投与される。いくつかの態様において、初回用量の後に複数回の連続用量が投与され、その連続用量の投与後に1回または複数回の追加の用量が投与されるようにする。いくつかの局面では、追加の用量で対象に投与される細胞の数は、初回用量および/または連続用量と同じであるか、または同様である。いくつかの態様において、1回または複数回の追加の用量は、前の用量よりも多い。
【0455】
いくつかの局面では、初回用量および/または連続用量のサイズは、以下のような、1つまたは複数の基準に基づいて決定される:以前の治療(例えば化学療法)に対する対象の反応、対象における疾病負荷、例えば、腫瘍の量、大きさ、サイズ、または転移の程度、範囲、もしくはタイプ、ステージ(病期)、および/または毒性の結果(例えば、CRS、マクロファージ活性化症候群、腫瘍崩壊症候群、神経毒性)を発症する対象の可能性もしくは発生率、ならびに/または投与される細胞および/もしくは組換え受容体に対する宿主免疫反応。
【0456】
いくつかの局面では、初回用量の投与と連続用量の投与との間の期間は、約9~約35日、約14~約28日、または15~27日である。いくつかの態様において、連続用量の投与は、初回用量の投与から約14日以上で約28日未満の時点である。いくつかの局面では、初回用量と連続用量との間の期間は、約21日である。いくつかの態様において、その連続用量の投与後に、1回または複数回の追加の用量、例えば連続用量が投与される。いくつかの局面では、1回または複数回の追加の連続用量は、前回の用量の投与から少なくとも約14日で約28日未満に投与される。いくつかの態様において、追加の用量は、前回の投与から約14日未満に投与され、例えば、前回の投与の4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13日後に投与される。いくつかの態様において、用量は、前回の投与から約14日未満には投与されず、かつ/または前回の投与から約28日を超えて投与されない。
【0457】
いくつかの態様において、細胞、例えば組換え受容体発現細胞、の用量は、T細胞の初回用量およびT細胞の連続用量を含む2回の用量(例えば、2回量)を含み、ここで、初回の用量と2回目の用量の一方または両方は、T細胞の分割用量の投与を含む。
【0458】
いくつかの態様において、細胞の前記用量は一般に、疾病負荷を軽減するのに効果的な、十分な量である。
【0459】
いくつかの態様において、前記細胞は、細胞もしくは細胞タイプ(複数可)の所望の用量もしくは数、および/または細胞タイプの所望の比率を含む、所望の投与量で投与される。したがって、いくつかの態様での細胞の投与量は、細胞の総数(または体重1kg当たりの数)、および個々の集団またはサブタイプの所望の比、例えばCD4+対CD8+比、に基づいている。いくつかの態様において、細胞の投与量は、個々の集団中の細胞のまたは個々の細胞タイプの所望の総数(または体重1kg当たりの数)に基づいている。いくつかの態様において、投与量は、例えば、総細胞の所望の数、所望の比率、個々の集団中の細胞の所望の総数などの、そのような特徴の組み合わせに基づいている。
【0460】
いくつかの態様において、細胞の集団またはサブタイプ、例えばCD8+およびCD4+ T細胞は、総細胞の所望の用量(例えば、T細胞の所望の用量)の許容差(tolerated difference)で、または許容差の範囲内で投与される。いくつかの局面では、所望の用量は、細胞の所望の数、または細胞が投与される対象の体重の単位当たりの細胞の所望の数、例えば細胞数/kgである。いくつかの局面では、所望の用量は、細胞の最小数または体重の単位当たりの細胞の最小数であるか、それを上回る数である。いくつかの局面では、所望の用量で投与される総細胞の中で、個々の集団またはサブタイプは、所望の出力比(例えば、CD4+対CD8+比)で、またはそれに近い比率で存在し、例えば、そのような比率の一定の許容差または誤差の範囲内で存在する。
【0461】
いくつかの態様において、前記細胞は、細胞の個々の集団またはサブタイプの1つまたは複数の所望の用量(例えば、CD4+細胞の所望の用量および/またはCD8+細胞の所望の用量)の許容差の範囲内で投与される。いくつかの局面では、所望の用量は、サブタイプまたは集団の細胞の所望の数、または細胞が投与される対象の体重の単位当たりのそのような細胞の所望の数、例えば細胞数/kgである。いくつかの局面では、所望の用量は、集団またはサブタイプの細胞の最小数、あるいは体重の単位当たりの集団またはサブタイプの細胞の最小数であるか、それを上回る数である。
【0462】
したがって、いくつかの態様において、投与量は、総細胞の所望の固定用量および所望の比率に基づき、かつ/または個々のサブタイプもしくはサブ集団の1つまたは複数、例えばそれぞれ、の所望の固定用量に基づく。こうして、いくつかの態様において、投与量は、T細胞の所望の固定もしくは最小用量およびCD4+対CD8+細胞の所望の比率に基づき、かつ/またはCD4+および/またはCD8+細胞の所望の固定もしくは最小用量に基づく。
【0463】
いくつかの態様において、細胞は、複数の細胞集団またはサブタイプ、例えばCD4+およびCD8+細胞またはサブタイプ、の所望の出力比の許容範囲内で投与される。いくつかの局面では、所望の比は、特定の比であるか、ある範囲の比であり得る。例えば、いくつかの態様において、所望の比(例えば、CD4+対CD8+細胞の比)は、1:5~5:1または約1:5~約5:1(または約1:5以上かつ約5:1以下)、1:3~3:1または約1:3~約3:1(または約1:3以上かつ約3:1以下)、例えば、2:1~1:5または約2:1~約1:5(または約1:5以上かつ約2:1以下)、例えば、5:1、4.5:1、4:1、3.5:1、3:1、2.5:1、2:1、1.9:1、1.8:1、1.7:1、1.6:1、1.5:1、1.4:1、1.3:1、1.2:1、1.1:1、1:1、1:1.1、1:1.2、1:1.3、1:1.4、1:1.5、1:1.6、1:1.7、1:1.8、1:1.9、1:2、1:2.5、1:3、1:3.5、1:4、1:4.5、もしくは1:5、または約5:1、約4.5:1、約4:1、約3.5:1、約3:1、約2.5:1、約2:1、約1.9:1、約1.8:1、約1.7:1、約1.6:1、約1.5:1、約1.4:1、約1.3:1、約1.2:1、約1.1:1、約1:1、約1:1.1、約1:1.2、約1:1.3、約1:1.4、約1:1.5、約1:1.6、約1:1.7、約1:1.8、約1:1.9、約1:2、約1:2.5、約1:3、約1:3.5、約1:4、約1:4.5、もしくは約1:5である。いくつかの局面では、許容差は、所望の比の約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%以内である(これらの範囲内の任意の値を含む)。
【0464】
特定の態様では、細胞の数および/または濃度は、組換え受容体(例えば、CAR)発現細胞の数を指す。他の態様では、細胞の数および/または濃度は、投与される全ての細胞、T細胞、または末梢血単核細胞(PBMC)の数または濃度を指す。
【0465】
いくつかの局面では、用量のサイズは、以下のような、1つまたは複数の基準に基づいて決定される:以前の治療(例えば化学療法)に対する対象の反応、対象における疾病負荷、例えば、腫瘍の量、大きさ、サイズ、または転移の程度、範囲、もしくはタイプ、ステージ(病期)、および/または毒性の結果(例えば、CRS、マクロファージ活性化症候群、腫瘍崩壊症候群、神経毒性)を発症する対象の可能性もしくは発生率、ならびに/または投与される細胞および/もしくは組換え受容体に対する宿主免疫反応。
【0466】
いくつかの態様において、前記方法はまた、キメラ抗原受容体(CAR)を発現する細胞の1回または複数回の追加の用量を投与し、かつ/またはリンパ球除去療法を施す工程を含み、かつ/または該方法の1つまたは複数の工程は繰り返される。ある態様では、1回または複数回の追加の用量は、初期用量と同じである。ある態様では、1回または複数回の追加の用量は、初期用量と異なり、例えば、初期用量よりも高く、例えば、初期用量よりも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍またはそれ以上高いか、または初期用量よりも低く、例えば、初期用量よりも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍またはそれ以上低い。いくつかの態様において、1回または複数回の追加の用量の投与は、初期治療または以前の治療に対する対象の反応、対象における疾病負荷、例えば、腫瘍の量、大きさ、サイズ、または転移の程度、範囲、もしくはタイプ、ステージ(病期)、および/または毒性の結果(例えば、CRS、マクロファージ活性化症候群、腫瘍崩壊症候群、神経毒性)を発症する対象の可能性もしくは発生率、ならびに/または投与される細胞および/もしくは組換え受容体に対する宿主免疫反応に基づいて決定される。
【0467】
B. 投与された細胞の評価
場合によっては、提供される方法を、例えば、導入遺伝子配列が組み込まれている細胞を含有する、操作された細胞または細胞組成物の投与後に、対象由来のサンプルにおける操作された細胞の存在、不在、または数を決定するために用いることができる。いくつかの局面では、提供される方法を、本明細書に、例えば上記のセクションIIに記載される方法を用いて作製されたものなどの、操作された細胞または細胞組成物が投与された対象から得られた特定のサンプルにおける導入遺伝子配列の存在、不在、または量を評価するために用いることができる。いくつかの局面では、提供される方法を、投与された、操作された細胞の薬物動態(PK)パラメータまたは薬力学(PD)パラメータを評価するために用いることができる。いくつかの態様において、薬物動態パラメータには、投与後の、最大(ピーク)血清濃度(Cmax)、ピーク時間(すなわち、最大血漿濃度(Cmax)が生じる時;Tmax)、最小血漿濃度(すなわち、治療剤、例えばCAR+ T細胞の投薬の間の最小血漿濃度;Cmin)、排出半減期(T1/2)、および曲線下面積(すなわち、時間対、治療剤CAR+ T細胞の血漿濃度をプロットすることによって作製された曲線下面積;AUC)が含まれる。
【0468】
いくつかの局面では、例示的な態様は、薬物動態パラメータ、例えば、操作された細胞または操作された細胞を含有する組成物が投与された対象から得られたサンプルにおける、例えば、血液における、CAR+ T細胞の数もしくは濃度、および/または対象由来のサンプルに存在する導入遺伝子配列の量もしくは濃度の評価および/またはモニタリングを含む。いくつかの局面では、例示的な態様は、薬物動態パラメータ、例えば、血液におけるCAR+ T細胞の数または濃度の評価および/またはモニタリングを含む。いくつかの態様において、方法は、例えば、上記のセクションI.C.3に記載されるような、血液における導入遺伝子配列の存在、不在、および/または量の決定による、血液におけるCAR+ T細胞の数および/または濃度のモニタリングを含む。
【0469】
V. キットおよび製造物品
また、本明細書で提供される方法を行うための試薬、例えば、組み込まれた導入遺伝子配列の存在、不在、および/または量を評価するための試薬を含有するキットおよび製造物品などの、キットおよび製造物品も提供される。いくつかの局面において、キットまたは製造物品はまた、操作された細胞を作製する操作プロセスまたは製造プロセスにおける使用のための試薬および/または核酸も含有することができる。
【0470】
いくつかの態様において、キットは、サンプルから核酸を単離するため、ならびに/またはサイズもしくは分子量に基づいて核酸を分離するかもしくは単離するため、ならびに/または組み込まれた導入遺伝子配列の存在、不在、および/もしくは量を決定するために必要とされる、試薬および/または消耗品を含有することができる。いくつかの態様において、キットは、パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)のための試薬および消耗品などの、DNAの高分子量画分または低分子量画分を分離するかまたは単離するための試薬および/または消耗品を含有する。いくつかの態様において、キットは、DNAの高分子量画分または低分子量画分を分離するかまたは単離する工程を行うためのマトリックスまたはゲル、またはマトリックスもしくはゲルを含有するカートリッジを含有する。いくつかの態様において、1つもしくは複数のプローブおよび/または1つもしくは複数のプライマー、例えば、導入遺伝子配列の全てまたは一部分に特異的なプライマーのペアを含むキットが提供される。いくつかの局面において、プローブおよび/またはプライマーは、導入遺伝子配列の全てまたは一部分に特異的に結合するか、またはそれを認識するか、またはそれを検出することができる。いくつかの局面において、キットは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に、例えば、定量的PCR(qPCR)、デジタルPCR(dPCR)、またはドロップレットデジタルPCR(ddPCR)に必要とされる、試薬および消耗品を含有することができる。
【0471】
いくつかの態様において、キットは、任意で、他の構成成分、例えば、PCRプライマー、PCR試薬、例えばポリメラーゼ、緩衝液、ヌクレオチド、追加のアッセイ、例えば、細胞内サイトカイン染色、フローサイトメトリー、クロマチン免疫沈降、および/または追加の解析のための試薬を含有する。いくつかの態様において、追加のアッセイのための試薬には、特定の分子の発現またはレベルを測定するインビトロアッセイを行うための構成成分が含まれる。場合によっては、インビトロアッセイは、イムノアッセイ、アプタマーベースのアッセイ、組織学的もしくは細胞学的アッセイ、またはmRNA発現レベルアッセイである。いくつかの態様において、インビトロアッセイは、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、イムノブロッティング、免疫沈降、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫染色、フローサイトメトリーアッセイ、表面プラズモン共鳴(SPR)、化学発光アッセイ、ラテラルフローイムノアッセイ、阻害アッセイ、および結合力アッセイの中から選択される。いくつかの局面において、試薬は、分子に特異的に結合する結合試薬である。場合によっては、結合試薬は、抗体もしくはその抗原結合フラグメント、アプタマー、または核酸プローブである。キットの様々な構成成分は、別々の容器中に存在してもよく、またはある特定の適合性の構成成分は、単一の容器にあらかじめ組み合わされていてもよい。いくつかの態様において、キットは、さらに、キットの構成成分を用いて提供される方法を実施するための説明書を含有する。
【0472】
VI. 定義
特に定義されない限り、本明細書で用いられる専門用語、表記、ならびに他の技術用語および科学用語または用語法は全て、特許請求される主題が関係する技術分野の当業者によって一般に理解されているものと同じ意味を有することが意図される。場合によっては、一般に理解されている意味を有する用語を、明確にするためにおよび/またはすぐに参照できるように本明細書において定義するが、本明細書にそのような定義を含めることは、当技術分野において一般に理解されているものとの実質的な相違を表すと必ずしも解釈されるべきではない。
【0473】
本明細書で用いられる場合、用語「導入遺伝子」または「導入遺伝子配列」(場合によっては、キメラ、組換え、異種、外因性配列、またはキメラ、組換え、異種、外因性DNAとも呼ばれる)は、異なる生物、異なる遺伝子、または異なるバリアントなどの、異なる供給源由来の構成要素を組み合わせることによって人工的に形成されている核酸配列を指す。いくつかの局面において、導入遺伝子配列は、例えば、異なる供給源由来の異なる核酸分子またはフラグメントの人工的な組み合わせによって、分子生物学的マニピュレーションを受けている。いくつかの態様において、導入遺伝子配列は、導入遺伝子配列を含有するポリヌクレオチドが導入される細胞のゲノム配列と比較して、異なる起源由来である配列の少なくともいくらかの一部分を含有する。場合によっては、導入遺伝子配列の少なくとも一部分は、導入遺伝子配列が導入される細胞にとって異種、外因性、またはトランスジェニックであり、コード配列および/または非コード配列を含むことができる。いくつかの局面において、導入遺伝子配列は、導入遺伝子配列が導入される細胞のゲノム中に組み込まれる配列を指すことができる。
【0474】
本明細書で用いられる場合、単数形「1つの (a)」、「1つの (an)」、および「その」は、特に文脈によって明白に指示されていない限り、その対象物の複数形も含む。例えば、「1つの (a)」または「1つの (an)」は、「少なくとも1つの」または「1つまたは複数の」を意味する。本明細書に記載される局面および変形は、局面および変形「からなる」ならびに/または局面および変形「から本質的になる」を含むと理解される。
【0475】
本明細書で用いられる「約」という用語は、当業者にとっては明白な、各値に関する通常の誤差範囲を指す。本明細書において「約」のついた値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータそのものに向けられた態様を含む(および記載する)。例えば、「約X」に言及する記載は「X」の記載を含む。
【0476】
本開示を通して、特許請求される主題の様々な局面は、範囲形式で提示される。範囲形式での記載は、単に便宜上および簡潔化のためであり、特許請求される主題の範囲に対する確固たる限定として解釈されるべきでないことが、理解されるべきである。したがって、範囲の記載は、可能な部分範囲およびその範囲内の個々の数値を全て具体的に開示しているとみなされるべきである。例えば、ある値域が提供される場合、その範囲の上限値と下限値の間の各介在値、およびその規定範囲内の任意の他の規定値または介在値が、特許請求される主題内に包含されることが理解される。これらのより小さな範囲の上限値および下限値は、独立的にそのより小さな範囲内に含まれてよく、これらもまた、規定範囲における任意の具体的に除外される限界値に従って、特許請求される主題内に包含される。規定範囲が限界値の一方または両方を含む場合、それら含まれた限界値の一方または両方を除外する範囲もまた、特許請求される主題内に含まれる。このことは、範囲の幅とは無関係に適用される。
【0477】
本明細書で使用する場合、組成物は、細胞を含めて、2つ以上の産物、物質、または化合物の任意の混合物を指す。それは、溶液、懸濁液、液体、粉末、ペースト、水性、非水性、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。
【0478】
本明細書で用いられる場合、細胞または細胞の集団が特定マーカーに関して「陽性」であるという記述は、特定マーカー、典型的には表面マーカーが、細胞上または細胞中に検出可能な程度に存在することを指す。表面マーカーに言及する場合、本用語は、フローサイトメトリーによって、例えばマーカーに特異的に結合する抗体で染色し該抗体を検出することによって、検出される表面発現の存在を指し、この場合、染色は、アイソタイプ一致対照を他の点では同一の条件下で用いて同じ手順を行って検出される染色を実質的に上回るレベルで、および/またはそのマーカーに関して陽性であることが公知である細胞のレベルと実質的に類似するレベルで、および/またはそのマーカーに関して陰性であることが公知である細胞のレベルよりも実質的に高いレベルで、フローサイトメトリーによって検出可能である。
【0479】
本明細書で用いられる場合、細胞または細胞の集団が特定マーカーに関して「陰性」であるという記述は、特定マーカー、典型的には表面マーカーが、細胞上または細胞中に実質的に検出可能な程度に存在しないことを指す。表面マーカーに言及する場合、本用語は、フローサイトメトリーによって、例えばマーカーに特異的に結合する抗体で染色し該抗体を検出することによって、検出される表面発現の非存在を指し、この場合、染色は、アイソタイプ一致対照を他の点では同一の条件下で用いて同じ手順を行って検出される染色を実質的に上回るレベルで、および/またはそのマーカーに関して陽性であることが公知である細胞のレベルよりも実質的に低いレベルで、および/またはそのマーカーに関して陰性であることが公知である細胞のレベルと比較して実質的に類似するレベルで、フローサイトメトリーによって検出されない。
【0480】
本明細書で用いられる「ベクター」という用語は、それが連結されている別の核酸を増殖させることができる核酸分子を指す。本用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、およびそれが導入された宿主細胞のゲノム中に組み込まれたベクターを含む。ある特定のベクターは、それらが機能的に連結されている核酸の発現を指示することができる。そのようなベクターは、本明細書において「発現ベクター」と称される。
【0481】
本明細書で使用する場合、アミノ酸配列(参照ポリペプチド配列)に関して使用する時の「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」および「同一性パーセント」とは、配列をアラインメントさせて、必要に応じて、最大の配列同一性パーセントを達成するためにギャップを導入した後、保存的置換を配列同一性の一部とみなさないで、参照ポリペプチド配列のアミノ酸残基と同一である候補配列(例えば、対象の抗体またはフラグメント)のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定するためのアラインメントは、様々な周知の方法で、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR社)ソフトウェアなどの公開されているコンピュータソフトウェアを使用して、達成することができる。比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要とされるアルゴリズムを含めて、配列をアラインメントするための適切なパラメータを決定することができる。
【0482】
いくつかの態様において、「機能的に連結される」とは、適切な分子(例えば、転写アクチベータータンパク質)が調節配列に結合した場合に遺伝子発現を可能にするような、DNA配列、例えば、異種核酸および調節配列などの構成成分の会合を含み得る。したがって、これは、記載される構成成分が、その意図される様式で機能するのを可能にする関係にあることを意味する。
【0483】
アミノ酸の置換は、ポリペプチド中のあるアミノ酸を別のアミノ酸で置き換えることを含む。置換は、保存的アミノ酸置換であっても、非保存的アミノ酸置換であってもよい。アミノ酸の置換は、対象となる結合分子(例えば抗体)に導入されるか、または所望の活性(例えば、抗原結合の保持/改善、免疫原性の低下、またはADCCもしくはCDCの改善)についてスクリーニングされる産物に導入することができる。
【0484】
アミノ酸は一般に、次の共通の側鎖特性に従ってグループに分けることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖の向きに影響を与える残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0485】
いくつかの態様において、保存的置換には、これらのクラスのうちのあるクラスのメンバーを同じクラスの別のメンバーと交換することが含まれる。いくつかの態様において、非保存的アミノ酸置換には、これらのクラスのうちのあるクラスのメンバーを別のクラスのメンバーと交換することが含まれる。
【0486】
本明細書で使用する場合、「対象」は、哺乳動物、例えばヒトまたは他の動物であり、典型的にはヒトである。
【0487】
VII.例示的態様
提供される態様には以下が含まれる:
1. 以下の工程を含む、導入遺伝子配列のゲノム組み込みを評価するための方法:
(a)10キロベース(kb)よりも大きいかまたは約10キロベース(kb)よりも大きいデオキシリボ核酸(DNA)の高分子量画分を、1つまたは複数の細胞より単離されたDNAから分離する工程であって、該1つまたは複数の細胞が、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列を含む少なくとも1つの操作された細胞を含むか、またはそれを含む疑いがある、工程;
(b)該1つまたは複数の細胞のゲノム中に組み込まれた導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程。
2. 分離する工程の前に、デオキシリボ核酸(DNA)を、前記1つまたは複数の細胞から単離する、態様1に記載の方法。
3. 導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程が、前記1つまたは複数の細胞における二倍体ゲノム当たりのまたは細胞当たりの、該導入遺伝子配列の質量、重量、またはコピー数を決定することを含む、態様1または態様2に記載の方法。
4. 前記1つまたは複数の細胞が、細胞の集団を含み、該集団のうちの複数の細胞が、前記組換えタンパク質をコードする前記導入遺伝子配列を含む、態様1~3のいずれかに記載の方法。
5. 前記コピー数が、前記細胞の集団中での二倍体ゲノム当たりのまたは細胞当たりの平均(average)または平均(mean)コピー数である、態様4に記載の方法。
6. 分離する工程の前に、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドが、前記1つまたは複数の細胞のうちの少なくとも1つの操作された細胞中に導入されている、態様1~5のいずれかに記載の方法。
7. 前記少なくとも1つの操作された細胞が、前記導入遺伝子配列を含む前記ポリヌクレオチドの導入後に、96時間超にわたり、25℃よりも高い温度で、任意で37℃±2℃でまたは約37℃±2℃でインキュベートされていない、態様6に記載の方法。
8. 前記少なくとも1つの操作された細胞が、前記導入遺伝子配列を含む前記ポリヌクレオチドの導入後に、72時間超にわたり、25℃よりも高い温度で、任意で37℃±2℃でまたは約37℃±2℃でインキュベートされていない、態様6に記載の方法。
9. 前記少なくとも1つの操作された細胞が、前記導入遺伝子配列を含む前記ポリヌクレオチドの導入後に、48時間超にわたり、25℃よりも高い温度で、任意で37℃±2℃でまたは約37℃±2℃でインキュベートされていない、態様6に記載の方法。
10. 前記1つまたは複数の細胞が、DNAの高分子量画分を分離する工程の前に、凍結保存されている、態様1~9のいずれかに記載の方法。
11. 前記1つまたは複数の細胞が、細胞株である、態様1~10のいずれかに記載の方法。
12. 前記1つまたは複数の細胞が、対象由来のサンプルから得られた初代細胞である、態様1~11のいずれかに記載の方法。
13. 前記1つまたは複数の細胞が、免疫細胞である、態様12に記載の方法。
14. 前記免疫細胞が、T細胞またはNK細胞である、態様13に記載の方法。
15. 前記T細胞が、CD3+、CD4+、および/またはCD8+ T細胞である、態様14に記載の方法。
16. 以下の工程を含む、対象由来の生物学的サンプルにおいて導入遺伝子配列を評価するための方法:
(a)10キロベース(kb)よりも大きいかまたは約10キロベース(kb)よりも大きいデオキシリボ核酸(DNA)の高分子量画分を、対象由来の生物学的サンプル中に存在する1つまたは複数の細胞より単離されたDNAから分離する工程であって、該生物学的サンプルが、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列を含む少なくとも1つの操作された細胞を含むか、またはそれを含む疑いがある、工程; および
(b)該生物学的サンプルの全てまたは一部分における導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程。
17. (b)における導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程が、前記生物学的サンプルの全てまたは一部分における該導入遺伝子配列の質量、重量、またはコピー数を決定することを含む、態様16に記載の方法。
18. 分離する工程の前に、DNAを、前記生物学的サンプル中に存在する1つまたは複数の細胞から単離する、態様16に記載の方法。
19. 前記生物学的サンプルが、前記導入遺伝子配列を含む前記少なくとも1つの操作された細胞を含む組成物が投与された対象から得られる、態様16~18のいずれかに記載の方法。
20. 前記生物学的サンプルが、組織サンプルまたは体液サンプルである、態様16~19のいずれかに記載の方法。
21. 前記生物学的サンプルが組織サンプルであり、該組織が腫瘍である、態様20に記載の方法。
22. 前記組織サンプルが腫瘍生検材料である、態様21に記載の方法。
23. 前記生物学的サンプルが体液サンプルであり、該体液サンプルが、血液または血清サンプルである、態様20に記載の方法。
24. 分離する工程の前に、前記組換えタンパク質をコードする前記導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドが、前記1つまたは複数の細胞のうちの前記少なくとも1つの操作された細胞中に導入されている、態様16~23のいずれかに記載の方法。
25. 前記生物学的サンプルにおける前記1つまたは複数の細胞が、免疫細胞を含む、態様16~24のいずれかに記載の方法。
26. 前記免疫細胞が、T細胞またはNK細胞である、態様25に記載の方法。
27. 前記T細胞が、CD3+、CD4+、および/またはCD8+ T細胞である、態様26に記載の方法。
28. 前記分離する工程が、パルスフィールドゲル電気泳動またはサイズ排除クロマトグラフィーによって行われる、態様1~27のいずれかに記載の方法。
29. 前記分離する工程が、パルスフィールドゲル電気泳動によって行われる、態様1~28のいずれかに記載の方法。
30. 以下の工程を含む、導入遺伝子配列のゲノム組み込みを評価するための方法:
(a)パルスフィールドゲル電気泳動によって、10キロベース(kb)よりも大きいかまたは約10キロベース(kb)よりも大きいデオキシリボ核酸(DNA)の高分子量画分を、細胞の集団より単離されたDNAから分離する工程であって、該細胞の集団が、組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列を各々が含むかまたはそれを含む疑いがある複数の操作された細胞を含む、工程;および
(b)該細胞の集団のうちの該複数の操作された細胞のゲノム中に組み込まれた該導入遺伝子配列の二倍体ゲノム当たりのまたは細胞当たりの、平均(average)または平均(mean)コピー数を決定する工程。
31. 分離する工程の前に、前記組換えタンパク質をコードする前記導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドが、前記細胞の集団のうちの前記複数の操作された細胞の少なくとも1つ中に導入されている、態様30に記載の方法。
32. 前記細胞の集団が、前記導入遺伝子配列を含む前記ポリヌクレオチドの、前記少なくとも1つの操作された細胞中への導入後に、96時間超にわたり、25℃よりも高い温度で、任意で37℃±2℃でまたは約37℃±2℃でインキュベートされていない、態様31に記載の方法。
33. 前記細胞の集団が、前記導入遺伝子配列を含む前記ポリヌクレオチドの、前記少なくとも1つの操作された細胞中への導入後に、72時間超にわたり、25℃よりも高い温度で、任意で37℃±2℃でまたは約37℃±2℃でインキュベートされていない、態様31に記載の方法。
34. 前記細胞の集団が、前記導入遺伝子配列を含む前記ポリヌクレオチドの、前記少なくとも1つの操作された細胞中への導入後に、48時間超にわたり、25℃よりも高い温度で、任意で37℃±2℃でまたは約37℃±2℃でインキュベートされていない、態様31に記載の方法。
35. 前記細胞の集団が、DNAの高分子量画分を分離する工程の前に、凍結保存されている、態様30~34のいずれかに記載の方法。
36. 前記高分子量画分が、15キロベース(kb)よりも大きいかまたは約15キロベース(kb)よりも大きい、態様1~35のいずれかに記載の方法。
37. 前記高分子量画分が、17.5キロベース(kb)よりも大きいかまたは約17.5キロベース(kb)よりも大きい、態様1~35のいずれかに記載の方法。
38. 前記高分子量画分が、20キロベース(kb)よりも大きいかまたは約20キロベース(kb)よりも大きい、態様1~35のいずれかに記載の方法。
39. 前記導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって行われる、態様1~38のいずれかに記載の方法。
40. 前記PCRが、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)、デジタルPCR、またはドロップレットデジタルPCRである、態様39に記載の方法。
41. 前記PCRがドロップレットデジタルPCRである、態様39または態様40に記載の方法。
42. 前記導入遺伝子配列の少なくとも一部分に相補的であるか、またはそれを特異的に増幅することができる1つまたは複数のプライマーを用いて、前記PCRが行われる、態様39~41のいずれかに記載の方法。
43. 前記導入遺伝子配列の量を決定する工程が、前記1つまたは複数の細胞から単離されたDNAの質量または重量当たりの、任意で、前記1つまたは複数の細胞から単離されたDNA 1マイクログラム当たりの、該導入遺伝子配列の質量、重量、またはコピー数を評価することを含む、態様1~42のいずれかに記載の方法。
44. 前記導入遺伝子配列の量を決定する工程が、1つまたは複数の細胞から単離されたDNA 1マイクログラム当たりの、導入遺伝子配列のマイクログラムでの質量または重量を評価することを含む、態様43に記載の方法。
45. 前記導入遺伝子配列の量を決定する工程が、前記1つもしくは複数の細胞当たりの、任意で、CD3+、CD4+、および/もしくはCD8+細胞当たりの、ならびに/または前記組換えタンパク質を発現する細胞当たりの、該導入遺伝子配列の質量、重量、またはコピー数を評価することを含む、態様1~42のいずれかに記載の方法。
46. 前記導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程が、前記生物学的サンプルにおける二倍体ゲノム当たりのまたは細胞当たりの、該導入遺伝子配列の質量、重量、またはコピー数を評価することを含む、態様16~42のいずれかに記載の方法。
47. 前記コピー数が、前記生物学的サンプルにおける前記1つまたは複数の細胞中での二倍体ゲノム当たりのまたは細胞当たりの平均(average)または平均(mean)コピー数である、態様46に記載の方法。
48. 前記導入遺伝子配列の量を決定する工程が、前記生物学的サンプルの体積当たりの、任意で、前記生物学的サンプル1マイクロリットル当たりのまたは1ミリリットル当たりの、該導入遺伝子配列の質量、重量、またはコピー数を評価することを含む、態様16~42のいずれかに記載の方法。
49. 前記導入遺伝子配列の量を決定する工程が、対象の体重または体表面積当たりの、該導入遺伝子配列の質量、重量、またはコピー数を評価することを含む、態様16~42のいずれかに記載の方法。
50. 前記導入遺伝子配列の量を決定する工程が、前記高分子量画分における該導入遺伝子配列の質量、重量、またはコピー数を評価すること、および、該質量、重量、またはコピー数を、前記高分子量画分における参照遺伝子の質量、重量、もしくはコピー数に対して、または標準曲線に対して正規化することを含む、態様1~42のいずれかに記載の方法。
51. 前記参照遺伝子がハウスキーピング遺伝子である、態様50に記載の方法。
52. 前記参照遺伝子が、アルブミンをコードする遺伝子(ALB)である、態様50または態様51に記載の方法。
53. 前記参照遺伝子が、リボヌクレアーゼPタンパク質サブユニットp30をコードする遺伝子(RPP30)である、態様50または態様51に記載の方法。
54. 前記単離されたDNAにおける参照遺伝子のコピー数が、参照遺伝子の少なくとも一部分に相補的であるか、またはそれを特異的に増幅することができる1つまたは複数のプライマーを用いたPCRによって行われる、態様50~53のいずれかに記載の方法。
55. 前記導入遺伝子配列が、完全なウイルスgagタンパク質をコードしない、態様1~54のいずれかに記載の方法。
56. 前記導入遺伝子配列が、完全なHIVゲノム、複製可能なウイルスゲノム、ならびに/または、任意でNef、Vpu、Vif、Vpr、および/もしくはVpxであるアクセサリー遺伝子を含まない、態様1~55のいずれかに記載の方法。
57. 前記ポリヌクレオチドの導入が、該ポリヌクレオチドを含むウイルスベクターの形質導入によって行われる、態様6~15、24~29、および31~55のいずれかに記載の方法。
58. 前記ウイルスベクターが、レトロウイルスベクターまたはガンマレトロウイルスベクターである、態様57に記載の方法。
59. 前記ウイルスベクターがレンチウイルスベクターである、態様57または態様58に記載の方法。
60. 前記ウイルスベクターが、任意でAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、またはAAV8ベクターの中から選択される、AAVベクターである、態様57に記載の方法。
61. 前記ポリヌクレオチドの導入が、物理的送達法によって、任意でエレクトロポレーションによって行われる、態様6~15、24~29、および31~55のいずれかに記載の方法。
62. 前記組換えタンパク質が組換え受容体である、態様1~61のいずれかに記載の方法。
63. 前記組換え受容体が、疾患もしくは状態に関連する抗原、または疾患もしくは状態に関連する病変の環境の細胞において発現している抗原に特異的に結合する、態様62に記載の方法。
64. 前記疾患もしくは状態ががんである、態様63に記載の方法。
65. 前記抗原が、αvβ6インテグリン(avb6インテグリン)、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3、B7-H6、炭酸脱水酵素9(CA9、別名CAIXまたはG250)、がん精巣抗原、がん/精巣抗原1B(CTAG、別名NY-ESO-1およびLAGE-2)、がん胎児性抗原(CEA)、サイクリン、サイクリンA2、C-Cモチーフケモカインリガンド1(CCL-1)、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD123、CD133、CD138、CD171、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4)、上皮成長因子タンパク質(EGFR)、タイプIII上皮成長因子受容体変異(EGFR vIII)、上皮糖タンパク質2(EPG-2)、上皮糖タンパク質40(EPG-40)、エフリンB2、エフリン受容体A2(EPHa2)、エストロゲン受容体、Fc受容体様5(FCRL5;別名Fc受容体ホモログ5またはFCRH5)、胎児アセチルコリン受容体(胎児AchR)、葉酸結合タンパク質(FBP)、葉酸受容体α、ガングリオシドGD2、O-アセチル化GD2(OGD2)、ガングリオシドGD3、糖タンパク質100(gp100)、グリピカン-3(GPC3)、Gタンパク質共役受容体クラスCグループ5メンバーD(GPRC5D)、Her2/neu(受容体チロシンキナーゼerb-B2)、Her3(erb-B3)、Her4(erb-B4)、erbB二量体、ヒト高分子量黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、B型肝炎表面抗原、ヒト白血球抗原A1(HLA-A1)、ヒト白血球抗原A2(HLA-A2)、IL-22受容体アルファ(IL-22Rα)、IL-13受容体アルファ2(IL-13Rα2)、キナーゼ挿入ドメイン受容体(kdr)、カッパ軽鎖、L1細胞接着分子(L1-CAM)、L1-CAMのCE7エピトープ、ロイシンリッチリピート含有8ファミリーメンバーA(Leucine Rich Repeat Containing 8 Family Member A:LRRC8A)、Lewis Y、黒色腫関連抗原(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A6、MAGE-A10、メソテリン(MSLN)、c-Met、マウスサイトメガロウイルス(CMV)、ムチン1(MUC1)、MUC16、ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)リガンド、メラン(melan)A(MART-1)、神経細胞接着分子(NCAM)、腫瘍胎児抗原、メラノーマ優先発現抗原(PRAME)、プロゲステロン受容体、前立腺特異抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、サバイビン、トロホブラスト(Trophoblast)糖タンパク質(TPBG、別名5T4)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、チロシナーゼ関連タンパク質1(TRP1、別名TYRP1またはgp75)、チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP2、別名ドパクロムトートメラーゼ、ドパクロムデルタイソメラーゼ、またはDCT)、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)、血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGFR2)、Wilms Tumor 1(WT-1)、病原体特異的もしくは病原体発現抗原、またはユニバーサルタグに関連する抗原、および/またはビオチン化分子、および/またはHIV、HCV、HBV、もしくは他の病原体によって発現される分子から選択される、態様63または態様64に記載の方法。
66. 前記組換え受容体が、T細胞受容体(TCR)または機能的非T細胞受容体である、態様62~65のいずれかに記載の方法。
67. 前記組換え受容体がキメラ抗原受容体(CAR)である、態様62~66のいずれかに記載の方法。
68. 前記CARが、前記抗原に特異的に結合する細胞外抗原認識ドメインと、ITAMを含む細胞内シグナル伝達ドメインとを含む、態様67に記載の方法。
69. 前記ITAMを含む細胞内シグナル伝達ドメインが、CD3-ゼータ(CD3ζ)鎖、任意でヒトCD3-ゼータ鎖の細胞内ドメインを含む、態様68に記載の方法。
70. 前記細胞内シグナル伝達ドメインが、共刺激シグナル伝達領域をさらに含む、態様68または態様69に記載の方法。
71. 前記共刺激シグナル伝達領域が、CD28または4-1BB、任意でヒトCD28またはヒト4-1BBのシグナル伝達ドメインを含む、態様70に記載の方法。
72. 以下の工程を含む、組み込まれていない残りの導入遺伝子配列を評価するための方法:
(a)DNAの高分子量画分における導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定するために、態様1~15および28~71のいずれかに記載の方法を行い、それによって、該導入遺伝子配列のゲノム組み込みを評価する工程;
(b)該高分子量画分の分離を伴わずに、単離されたDNAにおける該導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程;
(c)(a)において決定された量と(b)において決定された量とを比較し、それによって、組み込まれていない残りの組換え配列の量を決定する工程。
73. 前記導入遺伝子配列の存在、不在、または量を決定する工程が、前記1つまたは複数の細胞における二倍体ゲノム当たりのまたは細胞当たりの、該導入遺伝子配列の質量、重量、またはコピー数を決定することを含む、態様72に記載の方法。
74. 前記1つまたは複数の細胞が細胞の集団を含み、該集団のうちの複数の細胞が、前記組換えタンパク質をコードする前記導入遺伝子配列を含む、態様72または態様73に記載の方法。
75. 前記コピー数が、細胞の集団中での二倍体ゲノム当たりのまたは細胞当たりの平均(average)または平均(mean)コピー数である、態様74に記載の方法。
76. 前記コピー数を比較する工程が、(a)において決定されたコピー数から、(b)において決定されたコピー数を減算することを含む、態様72~75のいずれかに記載の方法。
77. 前記コピー数を比較する工程が、(a)において決定されたコピー数対(b)において決定されたコピー数の比を決定することを含む、態様72~75のいずれかに記載の方法。
78. (b)における存在、不在、または量を決定する工程が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって行われる、態様72~77のいずれかに記載の方法。
79. 前記PCRが、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)、デジタルPCR、またはドロップレットデジタルPCRである、態様78に記載の方法。
80. 前記PCRがドロップレットデジタルPCRである、態様78または態様79に記載の方法。
81. 前記導入遺伝子配列の少なくとも一部分に相補的であるか、またはそれを特異的に増幅することができる1つまたは複数のプライマーを用いて、前記PCRが行われる、態様78~80のいずれかに記載の方法。
82. (b)における存在、不在、または量を決定する工程が、前記高分子量画分の分離を伴わずに、前記単離されたDNAにおける前記導入遺伝子配列の質量、重量、またはコピー数を評価すること、および、前記高分子量画分の分離を伴わずに、該質量、重量、またはコピー数を、前記単離されたDNAにおける参照遺伝子の質量、重量、もしくはコピー数に対して、または標準曲線に対して正規化することを含む、態様72~81のいずれかに記載の方法。
83. 前記参照遺伝子がハウスキーピング遺伝子である、態様72に記載の方法。
84. 前記参照遺伝子が、アルブミンをコードする遺伝子(ALB)である、態様82または態様83に記載の方法。
85. 前記参照遺伝子が、リボヌクレアーゼPタンパク質サブユニットp30をコードする遺伝子(RPP30)である、態様82または態様83に記載の方法。
86. 前記単離されたDNAにおける参照遺伝子の質量、重量、またはコピー数を決定する工程が、該参照遺伝子の少なくとも一部分に相補的であるか、またはそれを特異的に増幅することができる1つまたは複数のプライマーを用いたPCRによって行われる、態様82~85のいずれかに記載の方法。
87. (a)における存在、不在、または量を決定する工程と、(b)における存在、不在、または量を決定する工程とが、同じプライマーまたは同じプライマーのセットを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって行われる、態様72~86のいずれかに記載の方法。
88. 前記組み込まれていない残りの組換え配列が、ベクタープラスミド、直鎖状相補DNA(cDNA)、自己組み込み体(autointegrant)、または末端反復配列(LTR)サークルのうちの1つまたは複数を含む、態様72~87のいずれかに記載の方法。
【実施例
【0488】
VIII. 実施例
以下の実施例は、例証の目的でのみ含まれ、本発明の範囲を限定するようには意図されない。
【0489】
実施例1:パルスフィールドゲル電気泳動を伴う、組換えタンパク質を発現するように操作された細胞における組み込まれた導入遺伝子コピー数を評価する方法
組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列を含有するウイルスベクターを形質導入された細胞におけるベクターコピー数を評価するための方法において、高分子量DNAを分離する戦略として、パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)の使用を検討した。
【0490】
Jurkat T細胞株に、組換えタンパク質、この場合にはキメラ抗原受容体(CAR)をコードする導入遺伝子配列を含有するレンチウイルス調製物を形質導入した。細胞を3日間培養し、次いで、ゲノムDNAを細胞から単離した。対照として、導入遺伝子配列をコードするレンチウイルスが形質導入されていない細胞から、ゲノムDNAを単離し、その単離されたゲノムDNAに、既知量の、組換えタンパク質をコードするプラスミドおよび水疱性口内炎インディアナウイルスGタンパク質(VSVg)をコードする非組み込み型ウイルスパッケージングプラスミドを添加した。
【0491】
DNAサンプルを、BluePippin(Sage Science, Beverly, MA)装置を用いた自動パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)に供して、高分子量DNA種を、15 kb、17.5 kb、または20 kbの閾値よりも下の低分子量の非染色体DNA種から分離した。
【0492】
ドロップレットデジタルPCR(ddPCR)などの例示的な定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)法を、導入遺伝子配列に特有の配列に特異的なプライマーを用いて(「導入遺伝子」)、高分子量DNAサンプルに対して行った。比較のために、形質導入された細胞における、細胞の染色体中に組み込まれていると予想されない添加されたDNAまたは残りのパッケージングプラスミドを検出するためのVSVgコード配列に特異的なプライマーで(「パッケージングプラスミド」)、および全てのサンプルにおけるゲノムDNAを検出するためのハウスキーピング遺伝子に特異的なプライマー(例えば、リボヌクレアーゼPタンパク質サブユニットp30をコードする遺伝子(RRP30)に対するプライマー;「ゲノム対照」)でもddPCRを行った。アルブミン(ALB)遺伝子に特異的なプライマーを、正規化のための対照として用いた。反応はまた、PFGEに供さなかったDNAサンプル(プレ-ゲル)に対しても行った。ddPCRのために、サンプルを、各プライマーセットおよびプローブを含有する混合物に添加し、ドロップレットジェネレーターを用いてドロップレットを生成させ、生成されたドロップレットをPCRプレートに移して、以下のPCR条件下で増幅を行った:95℃ 10分;2℃/秒のランプ速度で[94℃ 30秒;60℃ 1分]×39サイクル;98℃ 10分;および4℃無期限。増幅後に、ドロップレットからのシグナルを、ドロップレットリーダー上で測定した。各遺伝子のコピー数を、二倍体ゲノムの数に対して(cp/二倍体ゲノム、参照としてアルブミン(ALB)遺伝子に特異的なプライマーでの増幅を用いる)、または50 ngのゲノムDNA当たりに正規化した。
【0493】
図1に示すように、添加されたCARコードプラスミドおよびVSVgパッケージングプラスミドを含有した形質導入されていないサンプルでは、導入遺伝子配列およびVSVg配列が、PFGEを行っていないサンプル(プレ-ゲル)において検出されただけであった。対照的に、ゲノム対照配列は、15 kb、17.5 kb、もしくは20 kb、またはそれよりも大きい高分子量DNAのためのPFGEに供された全てのサンプルにおいて検出された。この結果は、分離されたDNAのPCR増幅前のPFGEにより、組み込まれていない、より低い分子量のプラスミドの分離が達成されたことを実証した。
【0494】
形質導入されたサンプルでは、導入遺伝子配列が、PFGEの前のサンプル(プレ-ゲル)および15 kb、17.5 kb、または20 kbよりも上のPFGEに供されたサンプルの両方において検出された(図1、下のパネル)。VSVgパッケージングプラスミド配列は、プレ-ゲルサンプルにおいて見出され、より高い分子量のDNAにおいてはほとんど検出不可能であった。ウイルス産生からの残りのプラスミド配列に恐らく由来するこれらの配列は、細胞のゲノム中に組み込まれると予想されなかった。染色体DNAを含むゲノムDNAもまた、全てのサンプルにおいて検出され:RRP30ハウスキーピング遺伝子のコピー数は、全てのサンプルにおいて二倍体ゲノム当たりおよそ2コピーであることが観察された。
【0495】
PFGEを含むアッセイにより、組み込まれていない低分子量核酸種を除去しながら、組み込まれた配列またはゲノム配列の検出が可能になった。したがって、本結果により、単離されたDNAからの導入遺伝子配列のPCR増幅の前の、高分子量DNAを分離するためのPFGEの使用が、ゲノム中に組み込まれている導入遺伝子配列のコピー数の特異的決定を容易にするための、組み込まれたベクターコピー数(iVCN)アッセイとして用いられ得ることが示される。
【0496】
実施例2:細胞製造プロセス中の様々な時点での、パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)を伴うかまたは伴わないドロップレットデジタルPCR(ddPCR)によって評価した導入遺伝子コピー数の比較
qPCRによるベクターコピー数解析の前に、PFGEによる高分子量種の分離を含む、実施例1に記載されるiVCN法を用いて、Jurkat T細胞株および初代T細胞の両方において細胞操作プロセス中の様々な時点で、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする例示的な導入遺伝子配列の組み込まれたコピー数を評価した。方法を、パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)による高分子量DNA種と低分子量DNA種との分離を含まなかった、標準的なベクターコピー数(VCN)アッセイと比較した。
【0497】
研究のために、ゲノムDNAを、細胞から調製して、(1)概して上記の実施例1に記載されるような、15 kbよりも大きい分離のための閾値およびPippinHT(Sage Science, Beverly, MA)装置を用いたiVCN法(「iVCN」)、または(2)ゲノムDNAが最初にPFGEによって分離されなかった標準的なVCN法(「VCN」)のいずれかによる、導入遺伝子配列コピー数の評価に供した。両方のアッセイにおいて、導入遺伝子コピー数を、導入遺伝子に特有の配列に特異的なプライマーを用いたddPCRによって決定し、参照遺伝子(例えば、アルブミン(ALB)遺伝子)に特異的なプライマーを用いて決定される、二倍体ゲノムに対して正規化した。
【0498】
A. Jurkat細胞株
Jurkat T細胞に、概して上記の実施例1に記載されるように、CARをコードする導入遺伝子配列を含有するレンチウイルス調製物を形質導入した。細胞のサンプルを、形質導入の前(「プレ」)、形質導入後5分、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、および96時間で取得し、導入遺伝子コピー数の解析のために用いた。
【0499】
図2Aに示すように、Jurkat細胞を操作するプロセスにおける様々な時点にわたる、ゲノムにおける組み込まれたコピー数(iVCN)を検出するためのPFGEを伴う導入遺伝子コピー数評価は、導入遺伝子の組み込みが、これらの細胞において6時間頃まで検出可能ではなく、約48時間まで増加し、その時に、検出されるコピー数が概して定常状態に達したことを示した。対照的に、標準的なVCN法によって細胞における導入遺伝子のコピー数を検出した、PFGEを伴わない導入遺伝子コピー数評価は、ずっとより早い時点で始まる導入遺伝子配列の実質的な検出を実証した。この知見は、細胞操作後のこれらの早い時点での、プロデューサープラスミド、直鎖状もしくは環状の相補DNA(cDNA)、または自己組み込み体などの、標準的なVCN法による非組み込み型導入遺伝子配列の検出と一貫している。PFGEを伴わずに決定された導入遺伝子コピー数は、その後、96時間頃の(PFGEを伴う)iVCN組み込まれたコピー数評価によって検出されたレベルに類似したレベルまで減少し、これは、導入遺伝子組み込みは、およそ48時間までに完了したが、PFGEを伴わない標準的なVCN法は、これらの細胞において96時間頃までまたは形質導入後に、正確ではなかったことを示している。
【0500】
B. 初代細胞操作
ヒト対象由来の初代T細胞を、例示的な操作プロセスを用いて、CARを発現するように操作した。CD4+細胞およびCD8+細胞の別々の組成物を、白血球アフェレーシスサンプルより単離されたPBMCから選択し、選択された細胞組成物を凍結保存した。続いて、CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞の別々の組成物を、解凍し、1:1の生CD4+ T細胞対生CD8+ T細胞の比で混合した。混合された組成物のおよそ300×106個のT細胞(150×106個のCD4+ T細胞および150×106個のCD8+ T細胞)を、抗CD3抗体および抗CD28抗体が結合した常磁性ポリスチレン被覆ビーズの存在下で、1:1のビーズ対細胞の比で、組換えIL-2、IL-7、およびIL-15を含有する無血清培地において、18~30時間刺激した。
【0501】
インキュベーション後に、刺激された細胞組成物由来のおよそ100×106個の生細胞を、洗浄し、組換えIL-2、IL-7、およびIL-15を含有する無血清培地に再懸濁した。細胞に、およそ1600 gで60分間のスピノキュレーションによって、抗BCMA CARをコードするレンチウイルス調製物を形質導入した。スピノキュレーション後に、細胞を、洗浄し、組換えIL-2、IL-7、およびIL-15を含有する無血清培地に再懸濁して、約18~30時間、約37℃でインキュベートした。抗BCMA CARは、BCMAに特異的なscFv抗原結合ドメイン、CD28膜貫通領域、4-1BB共刺激シグナル伝達領域、およびCD3-ゼータ由来の細胞内シグナル伝達ドメインを含有していた。
【0502】
次いで、細胞を、バイオリアクター(例えば、揺動運動バイオリアクター)に移すことによって、インキュベーションおよび形質導入の工程中に用いたものの2倍の濃度のサイトカインを含有する約500 mLの培地中で、拡大増殖のために培養した。設定生細胞密度が達成された時に、灌流を開始し、連続的な混合を伴う半連続灌流によって培地を交換した。約3×109細胞の閾値数の細胞(TNC)が達成されるまで、細胞をバイオリアクター中で培養し、これは、典型的には6~7日の拡大増殖を含むプロセスで生じた。抗CD3および抗CD28抗体コンジュゲート常磁性ビーズを、磁場への曝露によって細胞組成物から除去した。次いで、細胞を収集し、凍結保護剤と配合した。
【0503】
上記のようなiVCN法および標準的なVCN法によるDNAの解析のために、細胞のサンプルを、形質導入の前(「プレ」)、形質導入後24時間、48時間、72時間、96時間、120時間で、および操作プロセスの完了時(「完了」)に取得した。
【0504】
図2Bに示すように、PFGE後に決定された(iVCN)導入遺伝子コピー数は、形質導入後約24時間まで検出されず、約48~72時間まで増加した。PFGEを伴わないアッセイ(VCN)において、導入遺伝子コピー数は、早い時点(24および48時間)ではるかにより高かったが、その後、96時間頃に、組み込まれたコピー数評価(iVCN)によって検出されたレベルに類似したレベルまで減少した。両方のアッセイにおいて、評価されたコピー数は、形質導入後96時間またはそれ以上で得られたサンプルにおいて類似していた。
【0505】
本結果により、PFGEを伴うベクターコピー数の評価(iVCN)が、形質導入後の複数の時点での一貫した導入遺伝子組み込みのタイミングを明らかにすることが確認される。本知見により、さらに、PFGEを含まない標準的なVCN法による評価は、ゲノム中への組み込みが起こる前の時に、細胞における導入遺伝子配列を検出し得ることが示され、したがって、標準的なVCN法は、形質導入後4日未満のサンプルについてベクターコピー数を評価するのには全く適切ではない可能性があることが実証された。
【0506】
実施例3:様々な拡大増殖させない製造プロセス中の、パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)を伴う組み込まれた導入遺伝子コピー数の評価
キメラ抗原受容体(CAR)をコードする導入遺伝子のコピー数を、T細胞組成物の遺伝子操作を生じるための例示的なプロセス中の様々な時点で、概して実施例1および2に記載されるようなiVCN法およびVCN法を用いて評価した。例示的なプロセスは、形質導入後に拡大増殖工程を含まず、刺激試薬、培養培地、および回収時間が異なっていた。
【0507】
各プロセスのために、CD4+初代ヒトT細胞およびCD8+初代ヒトT細胞の別々の組成物を、2人の異なるヒト対象(ドナーAおよびドナーB)から、ヒト白血球アフェレーシスサンプルより単離されたPBMCから選択した。選択された細胞を、凍結保存し、その後解凍して、1:1の生CD4+ T細胞対生CD8+ T細胞の比で混合した。混合された細胞組成物を、以下のような刺激試薬とのインキュベーションによって刺激した:(1)抗CD3/抗CD28抗体コンジュゲート常磁性ビーズ(「ビーズ」)、(2)106細胞当たり4.0μgの濃度の抗CD3/抗CD28 Fabコンジュゲートオリゴマーストレプトアビジンムテイン試薬、または(3)106細胞当たり0.8μgの濃度の抗CD3/抗CD28 Fabコンジュゲートオリゴマーストレプトアビジンムテイン試薬。インキュベーションは、組換えサイトカインを含む無血清培地において、およそ18~30時間行った。
【0508】
次いで、細胞を洗浄し、CARをコードする導入遺伝子配列を含有するレンチウイルス調製物を、スピノキュレーションによって形質導入した。次いで、細胞を、血清も、増殖因子も、組換えサイトカインも含まない基礎培地(「基礎」)、または組換えIL-2、IL-5、およびIL-15サイトカインを含有する無血清培地(「完全」)とインキュベートした。ビーズ試薬とのインキュベーションの開始後の96時間後に、細胞を、磁場に曝露して、常磁性ビーズを除去した。オリゴマー刺激試薬とのインキュベーションの開始後の24時間、48時間、または96時間後に、細胞を、10分間ビオチンに曝露して、オリゴマーストレプトアビジン試薬を解離させ、除去した。細胞を洗浄し、凍結保護剤と配合した。
【0509】
細胞を解凍し、回収された細胞から、ゲノムDNAを調製した。導入遺伝子コピー数の評価のために、導入遺伝子配列に特異的なプライマーを用いたddPCRを、上記の実施例1および2に記載されるように、15 kbよりも大きい高分子量画分用のPFGEに供されたDNAに対して行った。細胞サンプルをまた、CAR、CD3、および活性化カスパーゼ3(aCas3)の発現について染色するフローサイトメトリーによっても評価した。
【0510】
結果を、図3A~3Bに示す。図3Aに示すように、オリゴマー試薬を用いて刺激された細胞について、iVCNによって測定された組み込まれた導入遺伝子コピー数は、刺激の開始後に24時間または48時間インキュベーションが行われたサンプルにおいて増加したが、さらには増加しなかった。(PFGEを伴わない)標準的なVCNによって測定された導入遺伝子コピー数は、刺激の開始後約96時間まで、iVCNによって測定された組み込まれた導入遺伝子コピー数よりも実質的に高いままであった。この結果は、(PFGEを伴わない)標準的なVCN法が、このプロセスにおいて96時間の時点まで正確ではなかったという知見と一貫している。ビーズ試薬を用いて刺激された細胞について、96時間で、より高い組み込まれたコピー数が、完全培地とインキュベートされた細胞と比較して、基礎培地とインキュベートされた細胞について観察された。図3Bに示すように、組み込まれた導入遺伝子コピー数は、(フローサイトメトリーによって、CD3+細胞の中でのCD3+/活性化Cas3-/CAR+細胞のパーセンテージにより決定された)CAR発現細胞のパーセンテージと相関していた。この結果は、特に、細胞を操作するためのプロセスにおける、インキュベーションの時間、培地、または試薬を含む様々なパラメータの影響を評価する場合の、組み込まれたコピー数を評価するためのiVCNアッセイの有用性をさらに裏付ける。
【0511】
実施例4:様々な細胞製造プロセス中の、パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)を伴うかまたは伴わないドロップレットデジタルPCR(ddPCR)によって評価した、組み込まれた導入遺伝子コピー数と組み込まれていない導入遺伝子コピー数との比較
キメラ抗原受容体(CAR)をコードする組み込まれた導入遺伝子および組み込まれていない導入遺伝子の数を、T細胞組成物の遺伝子操作を生じるための様々な例示的なプロセス中に得られた、パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)を伴うかまたは伴わないDNAサンプルに対するddPCRによって評価した。
【0512】
A. T細胞を操作するための例示的なプロセス
例示的なプロセスには、操作された細胞が細胞拡大増殖に供されたプロセス(拡大増殖させるプロセス)および細胞を拡大増殖させなかったプロセス(拡大増殖させないプロセス)が含まれた。
【0513】
1)拡大増殖させるプロセス‐抗CD3/抗CD28ビーズ
概して実施例2.Bに記載されるような拡大増殖させるプロセスを、行った。
【0514】
2)拡大増殖させないプロセス‐抗CD3/抗CD28ビーズ
抗CD3/抗CD28抗体コンジュゲートビーズを用いた拡大増殖させないプロセスを、実施例3に記載されるのと同様に行った。CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞を選択し、1:1の比で混合して、およそ600×106個のT細胞(300×106個のCD4+ T細胞および300×106個のCD8+ T細胞)を含有するインプット組成物を作製した。混合されたインプット細胞組成物を、18~30時間、抗CD3/抗CD28抗体コンジュゲートビーズの存在下で、1:1のビーズ対細胞の比で、組換えIL-2、IL-7、およびIL-15を含有する無血清培地において細胞をインキュベートすることによって、刺激した。刺激後に、細胞を洗浄し、組換えIL-2、IL-7、およびIL-15を含有する無血清培地に再懸濁した。次いで、細胞に、およそ693 gで30分間のスピノキュレーションによって、拡大増殖させるプロセスにおいて用いたのと同じ抗BCMA CARをコードするレンチウイルスベクターを形質導入した。
【0515】
1つのアームにおいて、スピノキュレーション後に、細胞を、血清を含まず、かつ増殖因子または組換えサイトカインが加えられていない基礎培地(基礎培地)に再懸濁し、約37.0℃でインキュベーターにて、抗CD3/抗CD28ビーズでの刺激の開始後に約96時間インキュベートさせた。もう1つのアームにおいて、スピノキュレーション後に、細胞を、増殖因子または組換えサイトカインが加えられていない基礎培地(基礎培地)に再懸濁し、約37.0℃でインキュベーターにて、抗CD3/抗CD28ビーズでの刺激の開始後に約72時間インキュベートさせた以外は、同様のプロセスを行った。
【0516】
3)拡大増殖させないプロセス‐抗CD3/抗CD28 Fabオリゴマー試薬
抗CD3/抗CD28 Fabオリゴマー試薬を用いた拡大増殖させないプロセスを、実施例3に記載されるのと同様に行った。CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞を選択し、1:1の比で混合して、およそ600×106個のT細胞(300×106個のCD4+ T細胞および300×106個のCD8+ T細胞)を含有するインプット組成物を作製した。混合されたインプット細胞組成物由来の細胞を、実施例2に記載されるように生成された480μg(または1×106細胞当たり0.8μg)の抗CD3/抗CD28 Fabコンジュゲートオリゴマーストレプトアビジンムテイン試薬とのインキュベーションによって刺激し、これは、組換えIL-2、IL-7、およびIL-15を含有する無血清培地において18~30時間行った。刺激後に、細胞に、693 gで30分間のスピノキュレーションによって、拡大増殖させるプロセスにおいて用いたのと同じ抗BCMA CARをコードするレンチウイルスベクターを形質導入した。
【0517】
プロセスの1つのアームにおいて、スピノキュレーション後に、細胞を洗浄し、血清を含まず、増殖因子または組換えサイトカインが加えられていない基礎培地(基礎培地)に再懸濁し、約37.0℃でインキュベーターにてインキュベートした。形質導入の開始後約24時間(刺激の開始後およそ48時間)で、1.0 mM D-ビオチンを、インキュベーション中に加え、細胞と混合して、抗CD3および抗CD28 Fab試薬をオリゴマーストレプトアビジン試薬から解離させた。細胞を、さらに、約48時間(刺激の開始後96時間)インキュベートし、次いで、洗浄して、凍結保護剤と配合した。
【0518】
プロセスのもう1つのアームにおいて、スピノキュレーション後に、細胞を洗浄し、血清を含まず、増殖因子または組換えサイトカインが加えられていない基礎培地(基礎培地)に再懸濁し、約37.0℃でインキュベーターにてインキュベートした。形質導入の開始後約24時間で、1.0 mM D-ビオチンを、インキュベーション中に加え、細胞と混合して、抗CD3および抗CD28 Fab試薬をオリゴマーストレプトアビジン試薬から解離させた。細胞を、さらに、追加的な24時間(刺激の開始後72時間)インキュベートし、次いで、洗浄して、凍結保護剤と配合した。
【0519】
4)プロセスの概要
表E1は、モック空ベクターを用いたプロセスに加えて、上記のプロセスの特性を要約する。
【0520】
(表E1)プロセスの概要
【0521】
B. 導入遺伝子コピー数の評価
細胞を解凍し、回収された細胞から、ゲノムDNAを調製した。組み込まれた導入遺伝子コピー数の評価のために、導入遺伝子配列に特異的なプライマーを用いたddPCRを、実施例1および2に記載されるように、10 kbよりも大きい高分子量画分用のPFGEに供されたDNAに対して行った(「iVCN」)。比較のために、導入遺伝子配列に特異的なプライマーを用いたddPCRをまた、PFGEに供されなかったDNAに対しても行った(「VCN」、高分子量DNAおよび低分子量DNAの両方)。細胞サンプルをまた、フローサイトメトリーによっても評価した。
【0522】
結果を、図4A~4Eに示す。図4Aに示すように、より短い拡大増殖させないプロセスの各々は、(PFGEを伴う)iVCNによって測定されたコピー数よりも高かった、(PFGEを伴わない)VCNによって測定されたコピー数を示した細胞を作製し、これは、これらのより短いプロセスによって操作されたサンプル中に、組み込まれていない導入遺伝子配列が存在したことを示している。iVCNを用いたコピー数を、VCNを用いたコピー数で割ることによって決定された、組み込まれた導入遺伝子の割合は、拡大増殖させないプロセスを用いて作製された細胞において、実質的により低かった(図4B)。同様に、1-組み込まれた導入遺伝子の割合として決定された、組み込まれていない導入遺伝子の割合は、拡大増殖させないプロセスを用いて作製された細胞において、実質的により高かった(図4C)。図4Dに示すように、VCNからiVCNを減算することによって決定された、組み込まれていない導入遺伝子コピー数は、より短いプロセスを用いて作製された細胞において、平均で約0.8~1.3であった。PFGEを伴わない標準的なVCNを用いて、CAR+細胞当たりの導入遺伝子コピー数を、図4Eに示す。この結果は、細胞を操作するためのプロセスにおける、組み込まれた導入遺伝子コピー数および組み込まれていない導入遺伝子コピー数を評価するためのiVCN法の有用性をさらに裏付ける。
【0523】
実施例5:様々な拡大増殖させる細胞製造プロセス中の、組み込まれた導入遺伝子コピー数と組み込まれていない導入遺伝子コピー数との比較
パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)を伴うかまたは伴わないDNAにおける導入遺伝子コピー数を、形質導入後に細胞を拡大増殖させる工程を含んだ、T細胞を遺伝子操作するためのプロセスにおける様々な時点で、ddPCRによって評価した。
【0524】
実施例2.Bに記載されるように、異なるヒトドナー由来の初代T細胞を、CARを発現するように操作した。材料の解凍(TMAT;0日目)、活性化(AMAT;1日目)、形質導入(XMAT;2日目)、または細胞を拡大増殖させるための培養の開始後の様々な時(接種+1~接種+6;プロセスの3~8日目に相当する)を含んで、拡大増殖させるプロセスの0日目から開始して8日目まで毎日、サンプルを取得した。細胞サンプルから、ゲノムDNAを調製した。組み込まれた導入遺伝子コピー数の評価のために、導入遺伝子配列に特異的なプライマーを用いたddPCRを、実施例1および2に記載されるように、高分子量画分用のPFGEに供されたDNAに対して行った(「iVCN」)。比較のために、導入遺伝子配列に特異的なプライマーを用いたddPCRをまた、PFGEに供されなかったDNAに対しても行った(「VCN」、高分子量DNAおよび低分子量DNAの両方)。組み込まれていない導入遺伝子コピー数、組み込まれた導入遺伝子の割合、および組み込まれていない導入遺伝子の割合もまた、概して上記の実施例4に記載されるように決定した。
【0525】
代表的な結果を、図5に示す。示すように、形質導入の日または形質導入後の早い時点(例えば、接種+1、接種+2)で、PFGEに供されていないゲノムDNAサンプルから決定された、標準的なVCN法によって決定されたコピー数は、組み込まれていない導入遺伝子の実質的な画分を含んでいた。形質導入後のより後の時点で、(PFGEを伴う)iVCNおよび(PFGEを伴わない)標準的なVCNによって決定されたコピー数は、ほぼ同じであり、これは、導入遺伝子の組み込まれていないコピーが、これらの時点ではもはや細胞中に存在しなかったことを示している。
【0526】
実施例6:線維芽細胞における導入遺伝子組み込みの評価
レンチウイルス形質導入を介して線維芽細胞細胞株に導入された導入遺伝子の組み込みを、パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)に供されたゲノムDNAに対するddPCRによる導入遺伝子コピー数の解析によって評価した。
【0527】
HT1080ヒト線維肉腫細胞株(ATCC(登録商標)CCL-121(商標))に、組換えタンパク質、この場合はキメラ抗原受容体(CAR)をコードする導入遺伝子配列を含有するレンチウイルス調製物を形質導入した。形質導入後に、細胞を培養し、形質導入後12、24、48、または72時間で回収した。回収された細胞から、ゲノムDNAを調製した。概して上記の実施例1および2に記載されるように、導入遺伝子コピー数を、PFGE後の高分子量DNAサンプルにおいて(「iVCN」)、およびPFGEに供されなかったDNAサンプルにおいて(「VCN」、高分子量DNAおよび低分子量DNAの両方)、導入遺伝子に特異的なプライマーを用いたddPCRによって決定した。
【0528】
図6に示すように、HT1080線維芽細胞細胞株中への導入遺伝子組み込みは、形質導入後24時間までに完了した。線維芽細胞細胞株において組み込みが完了するタイミングは、上記の実施例に示されるような、Jurkat細胞および初代ヒトT細胞を含むT細胞において観察されたものよりも速かった。この結果により、ある特定の細胞型は、細胞のゲノム中へのより速いレンチウイルス組み込みを受けることが明らかになる。
【0529】
実施例7:投与される操作されたT細胞の導入遺伝子配列の量および薬物動態パラメータを決定するための、組換え受容体発現T細胞の評価
ddPCRおよびPFGEを使用する例示的な方法を用いて、操作されたT細胞が投与された対象において、キメラ抗原受容体(CAR)などの組換えタンパク質をコードする導入遺伝子配列の量を評価する。
【0530】
増殖性の疾患または障害、例えば、がんなどの疾患または障害を有する対象に、がん細胞などの、疾患または障害に関連する細胞によって発現されている特定の抗原を標的とすることができる組換え受容体などの、組換えタンパク質を発現する、T細胞などの操作された細胞を投与する。いくつかの例において、組換え受容体は、がん細胞によって発現されるか、またはがん細胞に関連する抗原などの、がん抗原に特異的であるキメラ抗原受容体(CAR)である。いくつかの局面において、治療用T細胞組成物を、例えば、上記の実施例1~6に記載されるような拡大増殖させるプロセスまたは拡大増殖させないプロセスを用いることによる、単離された初代CD4+ヒトT細胞および/またはCD8+ヒトT細胞などの、単離された初代ヒトT細胞中への、組換え受容体をコードする導入遺伝子配列の導入によって生成させる。対象に、操作された細胞を含む治療用T細胞組成物を投与する。
【0531】
細胞組成物の投与後の様々な時点で、操作された細胞が投与された対象由来の生物学的サンプル中に存在する導入遺伝子配列の量を、本明細書に記載されるような方法を用いて決定して、組み込まれた導入遺伝子コピー数を評価する。いくつかの局面において、対象の血液または血清または臓器または組織サンプル(例えば、疾患部位、例えば、腫瘍サンプル)における細胞を、治療用T細胞組成物の投与の前、その最中、および/またはその後に取得する。サンプルから、ゲノムDNAを調製する。いくつかの局面において、生物学的サンプル中に存在する導入遺伝子配列の量を、概して上記の実施例1および2に記載されるように、PFGE後の高分子量DNAサンプルから(「iVCN」)、導入遺伝子の一部分を特異的に増幅することができるプライマーを用いたddPCRによって決定する。いくつかの局面において、コピー数をまた、PFGEに供されなかったDNAサンプルから(「VCN」、高分子量DNAおよび低分子量DNAの両方)、同じプライマーを用いたddPCRによって評価する。いくつかの局面において、いくつかの事例における細胞サンプルをまた、組換えタンパク質、例えば、CARの発現について染色するフローサイトメトリーによって評価して、組換えタンパク質、例えば、サンプルにおけるCAR発現細胞の比率を決定することもできる。
【0532】
いくつかの例において、生物学的サンプルにおける導入遺伝子配列の量を、DNA 1マイクログラムなどのDNAの量当たりの、または、例えば血液もしくは血清の、サンプルのマイクロリットルなどのサンプルの体積当たりの、または、総末梢血単核細胞(PBMC)もしくは白血球もしくはT細胞当たりなどの細胞の総数当たりの、任意で、体積当たりの、例えば、サンプル1マイクロリットル当たりの、または、二倍体T細胞ゲノム当たりもしくはCAR発現細胞当たりなどの細胞当たりの、任意で、体積当たりの、例えば、サンプル1マイクロリットル当たりの、組換えタンパク質、例えば、CARをコードする組み込まれた導入遺伝子のコピーとして定量する。iVCN法に基づいて、またはフローサイトメトリーなどの他の方法によって決定することができる例示的な薬物動態(PK)パラメータには、導入遺伝子配列のまたは組換えタンパク質を発現する特定の細胞の最大(ピーク)血漿濃度(Cmax)、例えば、CD3+CAR+細胞、CD4+CAR+細胞、およびもしくはCD8+CAR+ T細胞のCmax;Cmaxが達成される時点(Tmax)、例えば、導入遺伝子配列、CD3+CAR+細胞、CD4+CAR+細胞、およびもしくはCD8+CAR+ T細胞のTmax、ならびにまたは投与後の特定の時間についての曲線下面積(AUC)、例えば、導入遺伝子配列、CD3+CAR+細胞、CD4+CAR+細胞、およびもしくはCD8+CAR+ T細胞のAUC0-28が含まれる。
【0533】
実施例8:細胞製造プロセス中の組換え受容体の表面発現に対する、標準的なVCNアッセイおよびiVCNアッセイの相関
上記のベクターコピー数(VCN)アッセイおよびiVCNアッセイを用いて、レンチウイルス形質導入によってT細胞中に導入された、組換え受容体、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする導入遺伝子のコピー数を決定し、その結果を、CARの表面発現に関連づけた。この研究においては、抗CD3/抗CD28 Fabコンジュゲートオリゴマーストレプトアビジンムテイン試薬で細胞が活性化され、その後、形質導入と、回収前の組換えサイトカインの添加を含まない基礎培地(サイトカインフリー培地)中での短いインキュベーションとが続く改変を伴って、概して実施例2.Bに記載されるような拡大増殖させるプロセス、または概して実施例4.A.3に記載されるような拡大増殖させないプロセスのいずれかを用いてCARを発現するように操作された、異なるヒトドナー由来の初代T細胞から作製された細胞組成物に対して、アッセイを行った。
【0534】
短縮された拡大増殖させないプロセスにおけるまたは拡大増殖させるプロセスにおける操作のためのプロセスの終わりに、細胞サンプルから、ゲノムDNAを調製した。VCNアッセイおよびiVCNアッセイを、>15 kbの分離のための閾値およびPippinHT(Sage Science, Beverly, MA)装置を用いて実施例1に記載されるように(「iVCN」)、または(2)ゲノムDNAが最初にPFGEによって分離されなかった標準的なVCN法(「VCN」)で行った。
【0535】
本結果により、VCNアッセイを用いて評価された導入遺伝子コピー数は、概して、iVCNによって評価された導入遺伝子コピー数と相関していたことが示された(図7A)。しかし、拡大増殖させないプロセスを用いて製造された細胞について、VCNによって得られた値は、iVCNによって得られた値よりも高く、これは、拡大増殖させないプロセスを用いて生成された細胞を含有するサンプル中に存在し得る組み込まれていない導入遺伝子配列を検出するVCNアッセイと一貫していた。対照的に、拡大増殖させるプロセスを用いて製造された細胞について、VCNによって得られた値とiVCNによって得られた値とは、ほぼ同一であった(ほぼVCN=iVCNの線)。これらの差は、拡大増殖させるプロセスと比較してより短い拡大増殖させないプロセスにおいて、サンプル中の導入遺伝子配列のフリーの組み込まれていないコピーがより多く存在することによる可能性が高い。これらの結果は、高分子量DNAおよび低分子量DNAの両方を検出することができる標準的なVCNアッセイが、導入遺伝子導入後の早期、例えば、導入遺伝子配列のフリーの組み込まれていないコピーがサンプル中に依然として存在し得る、T細胞を操作するための短縮されたプロセスにおいて、細胞を評価するために用いられる場合に特に、iVCNアッセイと比較して限界を有するという知見と一貫している。
【0536】
CARの表面発現に対するiVCNアッセイまたはVCNアッセイの相関の程度を評価するために、拡大増殖させないプロセスまたは拡大増殖させるプロセス由来の細胞サンプルを、CD3、CD45、およびCARの発現についてのフローサイトメトリーによって評価して、生CD45+細胞の中でのCD3+CAR+細胞のパーセンテージを決定した。図7Bに示すように、VCNアッセイは、拡大増殖させないプロセスによって操作されたサンプルについてよりも、拡大増殖させるプロセスによって操作されたサンプルについて、CAR+細胞のパーセンテージに対するより良好な相関を示し、これは、表面CAR発現に寄与しなかった、組み込まれていないCAR DNA配列が存在することによる可能性が高い。図7Cに示すように、iVCNは、拡大増殖させないプロセスまたは拡大増殖させるプロセスのいずれかによって操作されていた細胞間で、CARの発現に対して同様の相関を示した。全てのサンプルについて、CAR発現と細胞当たりのコピー数との相関は、VCNアッセイによって決定された細胞当たりのコピー数(R2=0.5903)と比較して、iVCNアッセイによるものが、より高かった(R2=0.8952)。
【0537】
本結果は、導入遺伝子配列のフリーの組み込まれていないコピーを保持し得る、拡大増殖させないプロセスを用いて生成された細胞について特に、安定に組み込まれた導入遺伝子配列のコピー数を正確に決定するためのiVCNアッセイの有用性を裏付ける。組み込まれた導入遺伝子配列対組み込まれていない導入遺伝子配列を区別しないVCNアッセイは、特に、より短い拡大増殖させないプロセス中またはその後に、安定に組み込まれた導入遺伝子配列の数を正確に決定することにおいて限定されている。
【0538】
本発明は、例えば、本発明の様々な局面を例証するために提供される特定の開示される態様に、範囲が限定されるようには意図されない。記載される組成物および方法の様々な改変は、本明細書における説明および教示から明らかになるであろう。そのような変形は、本開示の真の範囲および精神から逸脱することなく実施されてもよく、本開示の範囲内に入るように意図される。
【0539】
配列
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5
図6
図7-1】
図7-2】
【配列表】
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