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特許7538112水素ガス供給装置および水素ガス供給方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】水素ガス供給装置および水素ガス供給方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/00 20060101AFI20240814BHJP
   B01D 53/047 20060101ALI20240814BHJP
   B01J 4/00 20060101ALI20240814BHJP
   C01B 3/56 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
C01B3/00 Z
B01D53/047
B01J4/00 102
C01B3/56 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021509439
(86)(22)【出願日】2020-03-24
(86)【国際出願番号】 JP2020012942
(87)【国際公開番号】W WO2020196491
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2019061869
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(72)【発明者】
【氏名】前原 和巳
(72)【発明者】
【氏名】立石 大作
(72)【発明者】
【氏名】福岡 玄義
(72)【発明者】
【氏名】清家 匡
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103998851(CN,A)
【文献】特開2017-160084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00-6/34
B01J 4/00-7/02
B01D 53/02-52/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガスを圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機により圧縮された水素ガスを蓄圧する蓄圧器と、
前記圧縮機と前記蓄圧器との間に配置され、前記圧縮機から吐出される水素ガスに混在する不純物を吸着する第1吸着剤を有する第1吸着部と、
前記圧縮機と前記第1吸着部との間の第1ガス供給配管に配置される第1弁と、
前記第1吸着部と前記蓄圧器との間の第2ガス供給配管に配置された第2弁と、
前記第1ガス供給配管における前記第1弁と前記第1吸着部との間から分岐され、前記圧縮機の上流側に接続される戻り配管と、
前記戻り配管に配置され、前記不純物を吸着する第2吸着剤を有する第2吸着部と、
前記戻り配管における前記第2吸着部の上流側に配置される第3弁と、
前記第1弁、前記第2弁、および前記第3弁の開閉を制御する制御装置と、
を備える、水素ガス供給装置。
【請求項2】
前記圧縮機の運転停止時に、前記制御装置は、前記第1弁、および前記第2弁を閉じるように制御した状態で、前記第3弁を開くように制御する、請求項1記載の水素ガス供給装置。
【請求項3】
前記第1ガス供給配管における前記第1弁と前記第1吸着部との間から分岐されたベントラインと、前記ベントラインに配置される第4弁と、をさらに備え、
前記制御装置は、前記第1弁および前記第2弁を閉じるように制御した状態で、前記第3弁および前記第4弁を開くように制御する、請求項1又は2記載の水素ガス供給装置。
【請求項4】
前記圧縮機に水素ガスを供給する水素製造装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記第4弁を開いて所定時間経過後に、前記第3弁を閉じ、前記第1弁を開き、運転停止中の前記圧縮機を介して前記水素製造装置から供給される水素ガスを前記第1吸着部に供給するように制御する、請求項3記載の水素ガス供給装置。
【請求項5】
前記第1吸着剤と前記第2吸着剤は、少なくとも硫黄およびハロゲンのいずれか一方の吸着能を有する、請求項1から4のいずれかに記載の水素ガス供給装置。
【請求項6】
圧縮機により水素ガスを圧縮する工程と、
前記圧縮機により圧縮された水素ガスを蓄圧器に蓄圧する工程と、
前記圧縮機と前記蓄圧器との間に配置された第1吸着剤を有する第1吸着部を用いて、前記圧縮機から吐出される水素ガスに混在する不純物を前記第1吸着剤に吸着させる工程と、
前記圧縮機と前記第1吸着部との間の第1ガス供給配管に配置される第1弁と、前記第1吸着部と前記蓄圧器との間の第2ガス供給配管に配置された第2弁とを閉じるように制御した状態で、前記第1ガス供給配管における前記第1弁と前記第1吸着部との間から分岐され、前記圧縮機の上流側に接続される戻り配管に配置される第3弁を開くように制御することで、前記戻り配管に配置された第2吸着剤を有する第2吸着部を用いて前記不純物を前記第2吸着剤に吸着させる工程と、
を備える、水素ガス供給方法。
【請求項7】
水素ガスを圧縮し、水素ガスを蓄圧する蓄圧器側に圧縮された水素ガスを供給する圧縮機と、
前記圧縮機の吐出口と前記蓄圧器との間に配置され、前記圧縮機から吐出される水素ガス中の不純物を吸着するための第1の吸着剤が配置された第1の吸着部と、
前記圧縮機の吐出口と前記第1の吸着部のガス入口との間に配置された第1の弁と、
前記第1の吸着部のガス出口と前記蓄圧器との間に配置された第2の弁と、
前記第1の弁と前記吸着部のガス入口との間で分岐され、前記圧縮機の吸込み側に繋がる戻り配管と、
前記戻り配管の途中に配置され、前記圧縮機から吐出される水素ガス中の不純物を吸着するための第2の吸着剤が配置された第2の吸着部と、
前記戻り配管の途中であって、前記第1の吸着部のガス入口と前記第2の吸着部のガス入口との間に配置された第3の弁と、
を備える水素ガス供給装置。
【請求項8】
前記圧縮機と前記第1の吸着部とを前記第1の弁で遮断した状態で、前記第1の吸着部内の圧縮された水素ガスを前記第3の弁を開にして前記戻り配管に流すと共に、前記第1の吸着剤から脱離した不純物を前記第2の吸着剤で吸着する請求項7記載の水素ガス供給装置。
【請求項9】
前記第1の弁と前記第1の吸着部のガス入口との間で分岐されるベントラインと、
前記ベントラインの途中に配置された第4の弁と、
をさらに備え、
前記第4の弁を開にすることにより、前記第1の吸着部内を高圧から低圧に減圧すると共に前記第1の吸着剤から脱離した不純物を前記ベントラインに放出する請求項7又は8記載の水素ガス供給装置。
【請求項10】
水素製造装置から前記水素ガスが前記圧縮機に供給され、
前記圧縮機が休止し、前記第1の吸着部内が低圧に減圧された状態で、前記第1及び第4の弁を開にすることにより、休止中の前記圧縮機を介して前記水素製造装置から供給される水素ガスをパージガスとして前記第1の吸着部に導入する請求項9記載の水素ガス供給装置。
【請求項11】
前記不純物は、前記圧縮機内で混入する不純物である請求項7~10いずれかに記載の水素ガス供給装置。
【請求項12】
圧縮機により水素ガスを圧縮し、水素ガスを蓄圧する蓄圧器側に圧縮された水素ガスを供給する工程と、
前記圧縮機の吐出口と水素ガスを蓄圧する蓄圧器との間に配置された、第1の吸着剤が配置された第1の吸着部を用いて、前記圧縮機から吐出される水素ガス中の不純物を前記第1の吸着剤に吸着させる工程と、
前記圧縮機の吐出側であって前記第1の吸着部のガス入口側で分岐され、前記圧縮機の吸込み側に繋がる戻り配管の途中に配置される、第2の吸着剤が配置された第2の吸着部を用いて、前記圧縮機と前記第1の吸着部とを遮断した状態で、前記第1の吸着部内の圧縮された水素ガスを前記戻り配管に流すと共に、前記第1の吸着から脱離した不純物を前記第2の吸着に吸着させる工程と、
を備える水素ガス供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年3月27日に日本国に出願されたJP2019-061869(出願番号)を基礎出願とする優先権を主張する出願である。JP2019-061869に記載された内容は、本出願にインコーポレートされる。
【0002】
本発明は、水素ガス供給装置および水素ガス供給方法に関し、例えば、水素ステーションに配置される水素ガス供給装置および水素ガス供給方法に関する。
【背景技術】
【0003】
自動車の燃料として、従来のガソリンを始めとした燃料油の他に、近年、クリーンなエネルギー源として水素燃料が注目を浴びている。これに伴い、水素燃料を動力源とする燃料電池自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle)の開発が進められている。FCV用の水素ステーションには、水素製造拠点となる水素出荷センターやオンサイト水素ステーション(以下オンサイトST)と、水素製造拠点(水素出荷センターやオンサイトST等)より水素を受入れて販売するオフサイト水素ステーション(以下オフサイトST)がある。水素ガスは、水素製造装置(HPU:Hydrogen Product Unit)等により製造される。水素ステーションには、水素ガスを急速にFCVに充填するために、水素ガスを高圧に圧縮する圧縮機と、この圧縮機により高圧に圧縮された水素ガスを蓄圧する複数の蓄圧器(多段蓄圧器)を配置する。このような水素ステーションは、蓄圧器内の圧力とFCVの燃料タンクの圧力との差圧を大きく保つように、使用する蓄圧器を適宜切り替えながら充填することで、蓄圧器から燃料タンクへ水素ガスを急速充填する。
【0004】
ここで、FCV用燃料として高純度に精製された水素ガスを圧縮機で圧縮する際に、圧縮機の構成部品等から発生する硫黄やハロゲン等の不純物が水素ガスに混入してしまい、水素ガスの品質が規格から外れてしまうといった問題があった。かかる問題に対して、圧縮機の下流側に吸着剤を装填した吸着塔を配置して、不純物を排除することが検討されている。しかし、圧縮機は、蓄圧器に水素が規定量充填された後は運転を停止し、吸込み側圧力まで圧縮機内を減圧するため、吸着剤に吸着された不純物が脱離して圧縮機側(1次側)に拡散してしまうといった問題があった。さらに、水素ガスをできるだけ無駄にしないことが望ましい。
【0005】
ここで、水素製造の過程において、吸着剤を用いて不純物を吸着させる手法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-167629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の一態様は、圧縮機の下流側に配置される吸着剤に吸着された、水素ガスの不純物が圧縮機側に拡散することを抑制しながら水素ガスを効率的に利用可能な装置および方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の水素ガス供給装置は、
水素ガスを圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機により圧縮された水素ガスを蓄圧する蓄圧器と、
前記圧縮機と前記蓄圧器との間に配置され、前記圧縮機から吐出される水素ガスに混在する不純物を吸着する第1吸着剤を有する第1吸着部と、
前記圧縮機と前記第1吸着部との間の第1ガス供給配管に配置される第1弁と、
前記第1吸着部と前記蓄圧器との間の第2ガス供給配管に配置された第2弁と、
前記第1ガス供給配管における前記第1弁と前記第1吸着部との間から分岐され、前記圧縮機の上流側に接続される戻り配管と、
前記戻り配管に配置され、前記不純物を吸着する第2吸着剤を有する第2吸着部と、
前記戻り配管における前記第2吸着部の上流側に配置される第3弁と、
前記第1弁、前記第2弁、および前記第3弁の開閉を制御する制御装置と、
を備える。
【0009】
また、圧縮機の運転停止時に、前記制御装置は、前記第1弁、および前記第2弁を閉じるように制御した状態で、前記第3弁を開くように制御すると好適である。
【0010】
また、第1ガス供給配管における前記第1弁と前記第1吸着部との間から分岐されたベントラインと、前記ベントラインに配置される第4弁と、をさらに備え、
前記制御装置は、前記第1弁および前記第2弁を閉じるように制御した状態で、前記第3弁および前記第4弁を開くように制御すると好適である。
【0011】
また、圧縮機に水素ガスを供給する水素製造装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記第4弁を開いて所定時間経過後に、前記第3弁を閉じ、前記第1弁を開き、運転停止中の前記圧縮機を介して前記水素製造装置から供給される水素ガスを前記第1吸着に供給するように制御すると好適である。
【0012】
また、第1吸着剤と第2吸着剤は、少なくとも硫黄およびハロゲンのいずれか一方の吸着能を有すると好適である。
【0013】
本発明の一態様の水素ガス供給方法は、
圧縮機により水素ガスを圧縮する工程と、
前記圧縮機により圧縮された水素ガスを蓄圧器に蓄圧する工程と、
前記圧縮機と前記蓄圧器との間に配置された第1吸着剤を有する第1吸着部を用いて、前記圧縮機から吐出される水素ガスに混在する不純物を前記第1吸着剤に吸着させる工程と、
前記圧縮機と前記第1吸着部との間の第1ガス供給配管に配置される第1弁と、前記第1吸着部と前記蓄圧器との間の第2ガス供給配管に配置された第2弁とを閉じるように制御した状態で、前記第1ガス供給配管における前記第1弁と前記第1吸着部との間から分岐され、前記圧縮機の上流側に接続される戻り配管に配置される第3弁を開くように制御することで、前記戻り配管に配置された第2吸着剤を有する第2吸着部を用いて前記不純物を前記第2吸着剤に吸着させる工程と、
を備える。
【0014】
本発明の他の態様の水素ガス供給装置は、
水素ガスを圧縮し、水素ガスを蓄圧する蓄圧器側に圧縮された水素ガスを供給する圧縮機と、
圧縮機の吐出口と蓄圧器との間に配置され、圧縮機から吐出される水素ガス中の不純物を吸着するための第1の吸着剤が配置された第1の吸着と、
圧縮機の吐出口と第1の吸着のガス入口との間に配置された第1の弁と、
第1の吸着のガス出口と蓄圧器との間に配置された第2の弁と、
第1の弁と吸着のガス入口との間で分岐され、圧縮機の吸込み側に繋がる戻り配管と、
戻り配管の途中に配置され、圧縮機から吐出される水素ガス中の不純物を吸着するための第2の吸着剤が配置された第2の吸着と、
戻り配管の途中であって、第1の吸着のガス入口と第2の吸着のガス入口との間に配置された第3の弁と、
を備える
【0015】
また、圧縮機と前記第1の吸着とを前記第1の弁で遮断した状態で、前記第1の吸着内の圧縮された水素ガスを前記第3の弁を開にして前記戻り配管に流すと共に、前記第1の吸着剤から脱離した不純物を前記第2の吸着剤で吸着すると好適である。
【0016】
また、第1の弁と前記第1の吸着のガス入口との間で分岐されるベントラインと、
前記ベントラインの途中に配置された第4の弁と、
をさらに備え、
前記第4の弁を開にすることにより、前記第1の吸着内を高圧から低圧に減圧すると共に前記第1の吸着剤から脱離した不純物を前記ベントラインに放出すると好適である。
【0017】
また、水素製造装置から前記水素ガスが前記圧縮機に供給され、
前記圧縮機が休止し、前記第1の吸着内が低圧に減圧された状態で、前記第1及び第4の弁を開にすることにより、休止中の前記圧縮機を介して前記水素製造装置から供給される水素ガスをパージガスとして前記第1の吸着に導入すると好適である。
【0018】
また、不純物は、前記圧縮機内で混入する不純物であると好適である。
【0019】
本発明の他の態様の水素ガス供給方法は、
圧縮機により水素ガスを圧縮し、水素ガスを蓄圧する蓄圧器側に圧縮された水素ガスを供給する工程と、
圧縮機の吐出口と水素ガスを蓄圧する蓄圧器との間に配置された、第1の吸着剤が配置された第1の吸着部を用いて、圧縮機から吐出される水素ガス中の不純物を第1の吸着剤に吸着させる工程と、
圧縮機の吐出側であって第1の吸着部のガス入口側で分岐され、圧縮機の吸込み側に繋がる戻り配管の途中に配置される、第2の吸着剤が配置された第2の吸着部を用いて、圧縮機と第1の吸着部とを遮断した状態で、第1の吸着部内の圧縮された水素ガスを戻り配管に流すと共に、第1の吸着から脱離した不純物を第2の吸着に吸着させる工程と、
を備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様によれば、圧縮機の下流側に配置される吸着剤に吸着された、水素ガスの不純物が圧縮機側に拡散することを抑制しながら吸着塔内に残った水素ガスを効率的に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施の形態1における水素ステーションの水素ガス供給システムの構成を示す構成図の一例である。
図2】実施の形態1における制御回路の内部構成の一例を示す構成図である。
図3】実施の形態1における圧縮機の内部構成の一例と、吸着塔制御バルブシステムの構成の一例とを示す構成図である。
図4】実施の形態1における水素ガス供給方法の一例の要部工程を示すフローチャート図である。
図5】実施の形態1における多段蓄圧器を用いて水素燃料の差圧充填を行う場合の充填の仕方を説明するための図である。
図6】実施の形態1における蓄圧工程時における吸着塔制御バルブシステムの動作を説明するための図である。
図7】実施の形態1における吸着塔減圧/再生工程時における吸着塔制御バルブシステムの動作の一例を説明するための図である。
図8】実施の形態1における吸着塔減圧/再生工程時における吸着塔制御バルブシステムの動作の他の一例を説明するための図である。
図9】実施の形態1におけるパージ制御工程時における吸着塔制御バルブシステムの動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0022】
図1は、実施の形態1における水素ステーションの水素ガス供給システムの構成を示す構成図の一例である。図1において、水素ガス供給システム500は、水素ステーション102内に配置される。水素ガス供給システム500は、水素製造装置300、多段蓄圧器101、ディスペンサ30(計量機)、圧縮機40、吸着塔70(第1の吸着塔)、吸着塔制御バルブシステム110、吸着塔75(第2の吸着塔)、及び制御回路100を備えている。圧縮機40、吸着塔70、吸着塔制御バルブシステム110、吸着塔75、及びこれらを繋ぐ配管等により、多段蓄圧器101、及び/或いはディスペンサ30へと水素ガスを供給する水素ガス供給装置の一例が構成される。図1の例では、水素ステーション102内に水素製造装置300が配置され、オンサイトSTの一例が示されている。但し、これに限るものではない。別の場所で製造された高純度の水素ガスが水素トレーラーによって水素ステーション102内に運ばれ、図示しないカードル或いは中間蓄圧器に一時的に蓄圧されるように構成される場合(オフサイトST)であっても良い。
【0023】
多段蓄圧器101は、複数の蓄圧器10,12,14により構成される。図1の例では、3つの蓄圧器10,12,14により多段蓄圧器101が構成される。図1の例では、例えば、蓄圧器10が、使用下限圧力が低い1stバンクとして作用する。蓄圧器12が、例えば、使用下限圧力が中間の2ndバンクとして作用する。蓄圧器14が、例えば、使用下限圧力が高い3rdバンクとして作用する。但し、これに限るものではない。1stバンクから3rdバンクに使用する各蓄圧器は、必要に応じて入れ替える。
【0024】
また、図1において、圧縮機40の吸込側は、バルブ328を介して水素製造装置300の吐出側と配管により接続される。
【0025】
圧縮機40の吐出口と多段蓄圧器101との間に吸着塔70が配置される。吸着塔70内には、圧縮機40から吐出される水素ガス中の不純物を吸着するための吸着剤(第1の吸着剤)が配置される。吸着塔70用の吸着剤としては、圧縮機40の構成部品等から発生する硫黄およびハロゲンに対する吸着能が高いものが望ましく、例えば活性炭が配置される。吸着剤は一層で構成されてるものに限るものではなく、種類の異なる複数層で構成されていても構わない。
【0026】
圧縮機40の吐出側であって吸着塔70のガス出入口側には、吸着塔制御バルブシステム110が配置される。吸着塔制御バルブシステム110は、吸着塔70を密閉可能な複数の遮断弁71,72,73,74(複数の弁)により構成される。遮断弁71(第1の弁)は、圧縮機40の吐出口と吸着塔70のガス入口との間に配置される。遮断弁72(第2の弁)は、吸着塔70のガス出口と多段蓄圧器101との間に配置される。言い換えれば、圧縮機40の吐出側は、吸着塔制御バルブシステム110のうち遮断弁71を介して吸着塔70のガス入口側と配管76により接続される。吸着塔70のガス出口側(下流側)は、吸着塔制御バルブシステム110のうち遮断弁72を介して多段蓄圧器101側及び/或いはディスペンサ30側へと配管により接続される。また、遮断弁71と吸着塔70のガス入口との間で圧縮機40の吸込み側に繋がる戻り配管92が分岐される。
【0027】
戻り配管92の途中には吸着塔75が配置される。吸着塔75内には、圧縮機40から吐出される水素ガス中の不純物を吸着するための吸着剤(第2の吸着剤)が配置される。吸着塔75用の吸着剤としては、圧縮機40の構成部品等から発生する硫黄およびハロゲンに対する吸着能が高いものが好ましく、例えば活性炭が配置される。吸着剤は一層で構成されるものに限るものではなく、種類の異なる複数層で構成されていても構わない。吸着塔75は、低圧(例えば、0.6MPa)下で使用されるため、吸着塔70よりも大型に形成される。吸着塔75は吸着塔70より容量が大きいため、吸着剤の搭載量も多くできる。そのため、再生されるたびに吸着塔70から放出される不純物を吸着塔75で繰り返し除去できる。なお、吸着塔70の吸着剤は、再生せずに吸着性能が劣化したら交換すればよい。吸着剤の搭載量が多いため、長寿命化を図ることができる。戻り配管92の途中であって、吸着塔70のガス入口と吸着塔75のガス入口との間に吸着塔制御バルブシステム110のうちの遮断弁74(第3の弁)が配置される。
【0028】
また、圧縮機40の吐出口と吸着塔70のガス入口との間に配置される遮断弁71と吸着塔70のガス入口との間でベントライン90(ベント配管)が分岐される。ベントライン90の途中には吸着塔制御バルブシステム110のうちの遮断弁73(第4の弁)が配置される。
【0029】
吸着塔70の下流側は、遮断弁72及びバルブ21を介して蓄圧器10と配管により接続される。同様に、吸着塔70の下流側は、遮断弁72及びバルブ23を介して蓄圧器12と配管により接続される。同様に、吸着塔70の下流側は、遮断弁72及びバルブ25を介して蓄圧器14と配管により接続される。同様に、吸着塔70の下流側は、遮断弁72及びバルブ28を介してディスペンサ30と配管により接続される。
【0030】
また、蓄圧器10は、バルブ22を介してディスペンサ30と配管により接続される。また、蓄圧器12は、バルブ24を介してディスペンサ30と配管により接続される。また、蓄圧器14は、バルブ26を介してディスペンサ30と配管により接続される。
【0031】
また、水素製造装置300の吐出圧は、圧力計318によって計測される。また、蓄圧器10内の圧力は、圧力計11によって計測される。蓄圧器12内の圧力は、圧力計13によって計測される。蓄圧器14内の圧力は、圧力計15によって計測される。
【0032】
また、ディスペンサ30内には、流量調整弁29、流量計27、冷却器32(プレクーラー)、及び圧力計17が配置される。多段蓄圧器101或いは圧縮機40から供給される水素ガスは、流量計27によって流量が計測されると共に、流量調整弁29によって流量が調整される。そして、水素ガスは、冷却器32によって、所定温度(例えば、-40℃)に冷却される。よって、ディスペンサ30は、冷却された水素ガスを、水素ガスを動力源とする燃料電池自動車であるFCV200に搭載された燃料タンク202に例えば差圧を利用して充填する。また、ディスペンサ30からFCV200へ充填される水素ガスの充填出口の出口圧力(燃料充填出口圧力)は、圧力計17によって計測される。また、ディスペンサ30内或いは近辺には、制御回路34が配置され、水素ステーション102に到来したFCV200(水素ガスを動力源とする燃料電池自動車)内の車載器204と通信可能に構成される。例えば、赤外線を用いて無線通信可能に構成される。
【0033】
FCV200には、ディスペンサ30から供給された燃料としての水素ガスが受け口(レセプタクル)から燃料通路を介して燃料タンク202に注入される。燃料タンク202内の圧力と温度は、燃料タンク202内、或いは燃料通路に設けた圧力計206及び温度計205によって計測される。
【0034】
水素製造装置300で製造された水素ガスは、低圧(例えば、0.6MPa)の状態で圧縮機40の吸込側に供給される。よって、圧縮機40の吸込側の1次側圧力PINは、通常時は低圧になる。圧縮機40は、制御回路100による制御のもと、水素製造装置300から低圧で供給される水素ガスを圧縮しながら多段蓄圧器101の各蓄圧器10,12,14に供給する。多段蓄圧器101からFCV200へ水素ガスを供給する際にその供給量が不足している場合、若しくは多段蓄圧器101が復圧中である場合、圧縮機40は、制御回路100による制御のもと、水素製造装置300から低圧で供給される水素ガスを圧縮しながらディスペンサ30を介して直接FCV200へ水素ガスを供給する場合もあり得る。
【0035】
圧縮機40は、水素ガスを圧縮し、水素ガスを蓄圧する蓄圧器側に圧縮された水素ガスを供給する。具体的には、圧縮機40は、多段蓄圧器101の各蓄圧器10,12,14内が所定の高圧(例えば、82MPa)になるまで圧縮する。言い換えれば、圧縮機40は、吐出側の2次側圧力POUTが所定の高圧(例えば、82MPa以上)になるまで圧縮する。圧縮機40が水素ガスを供給する相手が蓄圧器10,12,14、及びディスペンサ30のいずれにするかは、それぞれの配管上に配置された、対応するバルブ21,23,25,28の開閉を制御回路100が制御することによっていずれかに決定されればよい。或いは、2以上の蓄圧器に同時に供給するように制御しても良い。
【0036】
なお、上述した例では、圧縮機40の吸込側に水素ガスを供給する圧力PINが所定の低圧(例えば、0.6MPa)に減圧制御されている場合を示したがこれに限るものではない。所定の低圧(例えば、0.6MPa)よりも高い圧力の状態で圧縮機40の吸込側に与えて圧縮しても良い。かかる場合には、圧縮機40として、吸込側の圧力PIN(1次側圧力)を一定の圧力(例えば、0.6MPa)に固定して使用する往復圧縮機ではなく、吸込側の圧力PIN(1次側圧力)を可変に対応可能なタイプの高圧圧縮機を採用する。例えば、吸込側の圧力PIN(1次側圧力)が例えば20MPa以下のブースター多段昇圧型の圧縮機を用いると好適である。
【0037】
多段蓄圧器101に蓄圧された水素ガスは、ディスペンサ30内の冷却器32によって冷却され、ディスペンサ30から水素ステーション102内に到来したFCV200に供給される。
【0038】
図2は、実施の形態1における制御回路100の内部構成の一例を示す構成図である。制御回路100は、制御装置として機能する。図2において、制御回路100内には、通信制御回路50、メモリ51、受信部52、終了圧演算部54、フロー計画部56、システム制御部58、復圧制御部61、供給制御部63、圧力受信部66、HPU制御部67、及び磁気ディスク装置等の記憶装置80,82,84が配置される。復圧制御部61は、バルブ制御部60、及び圧縮機制御部62を有する。供給制御部63は、ディスペンサ制御部64及びバルブ制御部65を有する。受信部52、終了圧演算部54、フロー計画部56、システム制御部58、復圧制御部61(バルブ制御部60、圧縮機制御部62)、供給制御部63(ディスペンサ制御部64、バルブ制御部65)、圧力受信部66、及びHPU制御部67といった各部は、処理回路を含み、その処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、或いは、半導体装置等が含まれる。例えば、処理回路として、CPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、または、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)を用いてもよい。また、各部は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。受信部52、終了圧演算部54、フロー計画部56、システム制御部58、復圧制御部61(バルブ制御部60、圧縮機制御部62)、供給制御部63(ディスペンサ制御部64、バルブ制御部65)、圧力受信部66、及びHPU制御部67内に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度メモリ51に記憶される。
【0039】
また、記憶装置80内には、FCV200に搭載された燃料タンク202の圧力、温度、及び燃料タンク202の容積といったFCV情報と、FCV情報から演算される水素ガスの残量と、燃料タンク202に充填すべき最終圧、及び最終温度といった充填情報との相関関係を示す変換テーブル81が格納される。また、記憶装置80内には、変換テーブル81から得られる結果を補正する補正テーブル83が格納される。
【0040】
水素ガス供給システム500では、水素製造装置300により高純度に精製された水素ガスを圧縮機40で圧縮する際に、圧縮機40の構成部品等から発生する硫黄やハロゲン等の不純物が水素ガスに混入してしまったとしても、圧縮機40の下流側に配置した吸着塔70で不純物を排除することができるのに加えて、吸着塔制御バルブシステム110、戻り配管92、及び吸着塔75を用いて、吸着塔70内の吸着剤に吸着された不純物が脱離して圧縮機40側(1次側)に拡散してしまうことを抑制(FCV等に供給される水素ガスの品質が規格(例えばISO規格)から外れるのを抑制)しながら、吸着塔70内に残った水素ガスを効率的に利用することができる。つまり、水素ガス供給システム500は、水素ガスの無駄を省きつつ、FCV等に供給される水素ガスの品質が規格(例えばISO規格)から外れるのを抑制することができる。
【0041】
図3は、実施の形態1における圧縮機の内部構成の一例と、吸着塔制御バルブシステムの構成の一例とを示す構成図である。図3において、水素製造装置300から圧縮機40の吸込口までの構成および遮断弁72から多段蓄圧器101(及びディスペンサ30)までの構成については記載を省略している。図3の例では、圧縮機40として、5段の圧縮機構を備えた多段圧縮機を示している。圧縮機40内の各段の圧縮機構間には、圧縮された水素ガスを冷却するクーラーがそれぞれ配置される。また、1段目の圧縮機構の吸込側には、スナッパーが配置される。スナッパーは、水素製造装置300から供給される水素ガスの脈動を緩和するアキュームタンク(バッファ)として機能する。また、ベントライン90(ベント配管)の途中には、オリフィス91(しぼり機構)が配置される。オリフィス91により、ベントライン90の開放による急激な圧力変動を低減できる。また、戻り配管92は、圧縮機40の吸込み側として、例えばスナッパーに接続する。戻り配管92の途中には、オリフィス93(しぼり機構)が配置される。オリフィス93により、戻り配管92へ水素ガスを流す場合の急激な圧力変動を低減できる。また、圧縮機40の構成によっては、各圧縮機構を駆動するピストン等の可動部が配置されるシリンダ内で硫黄成分等の不純物が生じる場合もあり得る。そこで図3の例に示すように、かかるシリンダ内の圧力を開放すると共に、シリンダ内で生じた不純物を吸着塔75で吸着除去するために、シリンダリークラインを吸着塔75のガス入口と遮断弁74との間で戻り配管92に接続しても良い。また、圧縮機40内には、圧縮機40の最終段の圧縮機構の吐出側と、1段目の圧縮機構の吸込側のスナッパーとを接続する減圧配管42が流量調整弁41を介して接続される。
【0042】
図4は、実施の形態1における水素ガス供給方法の一例の要部工程を示すフローチャート図である。図4において、実施の形態1における水素ガス供給方法は、FCV充填工程(102)と、蓄圧工程(S104)と、吸着塔減圧/再生工程(S121)と、圧縮機休止及びHPUアイドリング運転工程(S122)と、圧縮機内減圧工程(S124)と、パージ制御工程(S128)と、いう一連の工程を実施する。蓄圧工程(S104)は、内部工程として、圧縮機運転およびHPU定格運転工程(S106)と、バルブ制御工程(S108)と、吸着工程(S110)と、判定工程(S112)と、いう一連の工程を実施する。なお、水素のパージ制御工程(S128)は毎回実施する必要は無く、例えば、図4の各工程のサイクルに対して、数回のサイクルに対して1度実施すればよい。もちろん、毎回実施しても構わない。
【0043】
FCV充填工程(102)として、FCV200に水素ガスを供給し、FCV200内の燃料タンク202に水素ガスを充填する。一例として、具体的には、以下のように動作する。なお、ここでは、多段圧縮機101に規定圧力(例えば、82MPa)の水素ガスが蓄圧されている状態から説明する。
【0044】
FCV200が水素ステーション102に到来すると、水素ステーション102の作業員或いはFCV200のユーザが、ディスペンサ30のノズル44を、FCV200の燃料タンク202の受け口(レセプタクル)に接続(嵌合)し、固定する。FCV200が水素ステーション102内に到来し、ユーザ或いは水素ステーション102の作業員によってディスペンサ30のノズル44がFCV200の燃料タンク202の受け口(レセプタクル)に接続、固定されると、車載器204と制御回路34(中継器)との通信が確立される。
【0045】
次に、車載器204と制御回路34との通信が確立されると、車載器204からは、燃料タンク202の現在の圧力、温度、及び燃料タンク202の容積といったFCV情報が、リアルタイムで出力(発信)される。FCV情報は、制御回路34を中継して、制御回路100に送信される。制御回路100内では、受信部52が、通信制御回路50を介してかかるFCV情報を受信する。FCV情報は、車載器204と制御回路34との通信が確立されている間、常時或いは所定のサンプリング間隔(例えば、10m秒~数秒)で、モニタリングされる。受信されたFCV情報は、受信時刻の情報と共に、記憶装置80に記憶される。
【0046】
終了圧演算部54は、記憶装置80から変換テーブル81を読み出し、受信された燃料タンク202の受信初期時の圧力Pa、温度Ti、燃料タンク202の容積V、及び外気温度T’に対応する最終圧PFを演算し、予測する。また、終了圧演算部54は、記憶装置80から補正テーブル83を読み出し、変換テーブル81によって得られた数値を必用に応じて補正する。変換テーブル81のデータだけでは、得られた結果に誤差が大きい場合に、実験或いはシミュレーション等により得られた結果に基づいて補正テーブル83を設ければよい。演算された最終圧PFは、システム制御部58に出力される。
【0047】
次に、フロー計画部56は、多段蓄圧器101を用いて、FCV200の燃料タンク202に水素ガスを差圧供給(充填)するための充填制御フロー計画を作成する。フロー計画部56は、燃料タンク202の圧力が最終圧PFになるための蓄圧器の選択(蓄圧器10,12,14の選択)と多段蓄圧器101の切り換えタイミングを含む充填制御フローの計画を作成する。作成された充填制御フロー計画の制御データは、記憶装置82に一時的に格納される。充填制御フローの計画を行う場合に、フロー計画部56は、外部温度に応じて、圧力上昇率を設定し、かかる圧力上昇率に対応する充填速度を演算する。さらに、急激な温度上昇を抑えるために充填途中からかかる外部温度に応じて決まる圧力上昇率に対応する充填速度を演算する。外部温度に応じて決まる圧力上昇率は、変換テーブル81のデータに予め組み込まれている。これらの条件で充填制御フローが計画され、最終圧PFに到達する充填開始からの時間t(終了時間1)(到達時間)が得られる。
【0048】
そして、作成された充填制御フローに沿って、ディスペンサ30(計量機)から水素ガスを動力源とするFCV200に搭載された燃料タンク202に水素ガスを充填する。具体的には、以下のように動作する。
【0049】
図5は、実施の形態1における多段蓄圧器を用いて水素燃料の差圧充填を行う場合の充填の仕方を説明するための図である。図5において縦軸は圧力を示し、横軸は時間を示す。FCV200に水素燃料の差圧充填を行う場合、通常、予め、多段蓄圧器101の各蓄圧器10,12,14は、同じ圧力P0(例えば、82MPa)に蓄圧されている。一方、水素ステーション102に到来したFCV200の燃料タンク202は圧力Paになっている。かかる状態からFCV200の燃料タンク202に充填を開始する場合について説明する。
【0050】
まず、1stバンクとなる例えば蓄圧器10から燃料タンク202に充填を開始する。具体的には、以下のように動作する。供給制御部63は、システム制御部58による制御のもと、供給部106を制御して、FCV200の燃料タンク202に蓄圧器10から水素燃料を供給させる。具体的には、システム制御部58は、ディスペンサ制御部64、及びバルブ制御部65を制御する。ディスペンサ制御部64は、通信制御回路50を介してディスペンサ30の制御回路34と通信し、ディスペンサ30の動作を制御する。具体的には、まず、制御回路34は、ディスペンサ30内の流量調整弁29の開度を演算された充填速度Mになるように調整する。そして、バルブ制御部65は、通信制御回路50を介して、バルブ22,24,26に制御信号を出力し、各バルブの開閉を制御する。具体的には、バルブ22を開にして、バルブ24,26を閉に維持する。これにより、蓄圧器10から燃料タンク202に水素燃料が供給される。蓄圧器10と燃料タンク202との差圧によって蓄圧器10内に蓄圧された水素燃料は燃料タンク202側へと調整された充填速度で移動し、燃料タンク202の圧力は点線Ptに示すように徐々に上昇していく。それに伴い、蓄圧器10の圧力(「1st」で示すグラフ)は徐々に減少する。そして、1stバンクの使用下限圧力に到達した、充填開始から時間T1が経過した時点で、蓄圧器10から2ndバンクとなる例えば蓄圧器12に使用する蓄圧器が切り替えられる。具体的には、バルブ制御部65は、通信制御回路50を介して、バルブ22,24,26に制御信号を出力し、各バルブの開閉を制御する。具体的には、バルブ22を閉、バルブ24を開にして、バルブ26を閉に維持する。これにより、蓄圧器12と燃料タンク202との差圧が大きくなるため、充填速度が速い状態を維持できる。
【0051】
そして、2ndバンクとなる例えば蓄圧器12と燃料タンク202との差圧によって蓄圧器12内に蓄圧された水素燃料は燃料タンク202側へと、同じく調整された充填速度で移動し、燃料タンク202の圧力は点線Ptに示すように徐々にさらに上昇していく。それに伴い、蓄圧器12の圧力(「2nd」で示すグラフ)は徐々に減少する。そして、2ndバンクの使用下限圧力に到達した、充填開始から時間T2が経過した時点で、蓄圧器12から3rdバンクとなる例えば蓄圧器14に使用する蓄圧器が切り替えられる。具体的には、バルブ制御部65は、通信制御回路50を介して、バルブ22,24,26に制御信号を出力し、各バルブの開閉を制御する。具体的には、バルブ24を閉、バルブ26を開にして、バルブ22を閉に維持する。これにより、蓄圧器14と燃料タンク202との差圧が大きくなるため、充填速度が速い状態を維持できる。
【0052】
そして、3rdバンクとなる例えば蓄圧器14と燃料タンク202との差圧によって蓄圧器14内に蓄圧された水素燃料は燃料タンク202側へと調整された充填速度で移動し、燃料タンク202の圧力は点線Ptに示すように徐々にさらに上昇していく。それに伴い、蓄圧器14の圧力(「3rd」で示すグラフ)は徐々に減少する。そして、3rdバンクとなる蓄圧器14によって燃料タンク202の圧力が演算された最終圧PF(例えば65~81MPa)になるまで充填する。
【0053】
以上のように、1stバンクから順に水素ガスを燃料タンク202に充填していくことになる。上述した例では、水素ステーション102に到来するFCV200の燃料タンク202の圧力P1が予め設定された低圧バンクとなる蓄圧器10の使用下限圧力程度よりも十分に低い圧力であった場合を示している。一例としては、満充填(満タン)時の例えば1/2以下といった十分に低い状態の場合を示している。かかる場合には、FCV200の燃料タンク202の圧力を最終圧力PFに急速充填するためには、例えば3本の蓄圧器10,12,14が必要である。但し、水素ステーション102に到来するFCV200は、燃料タンク202の圧力が十分に低い場合に限るものではない。燃料タンク202の圧力が満充填時の例えば1/2より高い場合、例えば2本の蓄圧器10,12で足りる場合もあり得る。さらに、燃料タンク202の圧力が高い場合、例えば1本の蓄圧器10で足りる場合もあり得る。いずれにしても、蓄圧器10,12,14の間で使用する蓄圧器を切り替えることになる。
【0054】
FCV200の燃料タンク202への水素ガスの充填(供給)が終了すると、ディスペンサ30のノズル44をFCV200の燃料タンク202の受け口(レセプタクル)から外し、ユーザは、例えば充填量に応じた料金を支払って、水素ステーション102から退場することになる。
【0055】
蓄圧工程(S104)として、圧縮機40により水素ガスを圧縮し、水素ガスを蓄圧する蓄圧器側に圧縮された水素ガスを供給する。具体的には、以下のように動作する。
【0056】
圧縮機運転およびHPU定格運転工程(S106)として、多段蓄圧器101によりFCV200への水素充填が開始され、多段蓄圧器101内のいずれかの蓄圧器内の圧力が低下した場合、及び/或いは多段蓄圧器101からの水素供給ではFCV200への充填量が不足している場合、HPU制御部67の制御のもと、水素製造装置300がアイドリング運転から定格運転(例えば100%負荷運転)へと移行し、水素ガス製造量を増加させる。その際、バルブ制御回路60は、開放弁319を閉に、バルブ328を開にしておく。そして、圧縮機制御部62の制御のもと、圧縮機40が運転を開始し、水素製造装置300から供給された低圧の水素ガスを圧縮し、吐出する。
【0057】
バルブ制御工程(S108)として、バルブ制御回路60は、蓄圧器側に圧縮された水素ガスを供給するべく、吸着塔制御バルブシステム110を制御する。
【0058】
図6は、実施の形態1における蓄圧工程時における吸着塔制御バルブシステムの動作を説明するための図である。図6において、バルブ制御回路60は、遮断弁73,74を閉に制御し、遮断弁71,72を閉から開に制御する。
【0059】
吸着工程(S110)として、吸着剤が配置された吸着塔70を用いて、圧縮機40から吐出される水素ガス中の不純物を吸着塔70内の吸着剤に吸着させる。そして、不純物が吸着され、高純度となった水素ガスを吸着塔70のガス出口から多段蓄圧器101側へと供給する。
【0060】
また、バルブ制御部60は、バルブ21,22,23,24,25,26,28が閉じた状態から、例えば、バルブ25を開にする。
【0061】
そして、圧縮機40の運転によって、低圧(例えば0.6MPa)から圧縮され、吸着塔70内の吸着剤によって不純物が吸着された水素ガスを蓄圧器14の圧力が所定の圧力P0(例えば、82MPa)になるまで蓄圧器14に水素ガスを充填することで蓄圧器14を蓄圧(復圧)する。
【0062】
次に、バルブ制御部60は、バルブ25を閉じて、代わりにバルブ23を開にする。
【0063】
そして、同様に、蓄圧器12の圧力が所定の圧力P0(例えば、82MPa)になるまで蓄圧器12に水素ガスを充填することで蓄圧器12を蓄圧(復圧)する。
【0064】
次に、バルブ制御部60は、バルブ23を閉じて、代わりにバルブ21を開にする。
【0065】
そして、同様に、蓄圧器10の圧力が所定の圧力P0(例えば、82MPa)になるまで蓄圧器10に水素ガスを充填することで蓄圧器10を蓄圧(復圧)する。
【0066】
判定工程(S112)として、システム制御部58は、多段蓄圧器101のすべての蓄圧器10,12,14が所定の圧力P0(例えば、82MPa)まで蓄圧されたかどうかを判定する。まだ所定の圧力P0(例えば、82MPa)まで蓄圧されていない場合には、蓄圧を継続する。所定の圧力P0(例えば、82MPa)まで蓄圧された場合には、次の工程に進む。ここでは、多段蓄圧器101のすべての蓄圧器10,12,14が十分に蓄圧されるまで蓄圧を継続する場合を一例として示したが、これに限るものではない。いずれかの蓄圧器10,12,14が十分に蓄圧された段階で蓄圧工程(S104)を終了しても構わない。
【0067】
以上により、蓄圧器10,12,14を所定の圧力P0(例えば、82MPa)になるまで蓄圧できる。これにより、多段蓄圧器101によるFCV200への差圧充填の準備をしておく。
【0068】
吸着塔減圧/再生工程(S121)として、圧縮機40と吸着塔70とを遮断弁71で遮断した状態で、吸着塔70内の圧縮された水素ガスを、遮断弁74を開にして戻り配管92に流すことで、吸着塔70内を高圧から低圧に減圧する。さらに、吸着塔70内の圧縮された水素ガスを、遮断弁74を開にして戻り配管92に流すことで、吸着塔70内の吸着剤から脱離した不純物を吸着塔75内の吸着剤で吸着する。
【0069】
図7は、実施の形態1における吸着塔減圧/再生工程時における吸着塔制御バルブシステムの動作の一例を説明するための図である。図7において、バルブ制御部60は、遮断弁71,72が開であって、遮断弁73,74が閉の状態から、遮断弁71,72を閉にし、遮断弁74を開にする。これにより、圧縮機40と吸着塔70とが遮断弁71で遮断される。そして、吸着塔70内に残っている高圧の水素ガスが戻り配管92を介して圧縮機40の吸込み側に戻される。その際、戻り配管92にはオリフィス93が配置されているため、急激な圧力変動を抑制し、吸着塔70等の構成部品の損傷、或いは活性炭等の吸着剤の粉砕等を抑制できる。また、吸着塔75のガス入口側の圧力上昇を抑制でき、吸着塔70の使用圧力に比べて大幅に低圧下で吸着塔75を使用できる。吸着塔70内が減圧されることで、吸着していた不純物が吸着剤から脱離する。そして、内部の水素ガスの流れに乗じて戻り配管92に拡散する。このままでは、せっかく除去した不純物が圧縮機40の吸込み側に戻されてしまう。そこで、実施の形態1では、吸着塔70内の吸着剤から脱離した不純物を吸着塔75内の吸着剤で吸着する。これにより、吸着塔70の吸着剤を再生(リフレッシュ)できる。よって、吸着塔70を小型化し、吸着剤の搭載量が少量であった場合でも、吸着剤の吸着性能の寿命を長くすることできる。同時に、吸着塔70内の水素ガス中の不純物が吸着塔75内の吸着剤で吸着され、高純度となった水素ガスを圧縮機40の吸込み側に戻し再利用できる。
【0070】
図8は、実施の形態1における吸着塔減圧/再生工程時における吸着塔制御バルブシステムの動作の他の一例を説明するための図である。図8において、バルブ制御部60は、遮断弁71,72が開であって、遮断弁73,74が閉の状態から、遮断弁71,72を閉にし、遮断弁73,74を開にしても良い。これにより、戻り配管92に加えて、さらに、ベントライン90に吸着塔70内の水素ガスが放出する。これにより、吸着塔70内を高圧から低圧に減圧すると共に吸着塔70内の吸着剤から脱離した不純物をベントライン90に放出する。戻り配管92に加えて、さらに、ベントライン90を使用するかどうかは、適宜設定すればよい。ベントライン90を使用することで再利用できる水素ガス量は低減するが、吸着塔70内の減圧にかかる時間を短縮できる。
【0071】
或いは、遮断弁73,74を同時に開にする場合に限るものではなく、遮断弁73と遮断弁74を開にする動作に時間差を設けても良い。どちらを先に開にしても構わない。
【0072】
圧縮機休止及びHPUアイドリング運転工程(S122)として、HPU制御部67の制御のもと、水素製造装置300を定格運転(例えば100%負荷運転)からアイドリング運転(例えば30%負荷運転)へと移行し、水素ガス製造量を低減する。バルブ制御回路60は、開放弁319を閉から開に、バルブ328を開から閉に制御して、圧縮機40への水素ガスの供給を停止する。アイドリング運転により製造される少量の水素ガスは、開放弁319が開になったことで大気中に放出される。そして、圧縮機制御部62の制御のもと、圧縮機40が運転を休止(停止)する。よって、圧縮機40が完全に停止した状態である運転停止時には、遮断弁71,72が閉じられているように制御される。
【0073】
圧縮機内減圧工程(S124)として、圧縮機制御部62の制御のもと、流量調整弁41が所定の開度で流量を調整しながら、減圧配管42を介して、圧縮機40内が圧縮機40の吸込み側の圧力まで減圧される。
【0074】
ここで、圧縮機40の吐出側が減圧された場合でも、圧縮機40の吐出口と吸着塔70のガス入口との間は遮断弁71により遮断されているので、吸着塔70内の吸着剤から脱離した不純物が圧縮機40側(1次側)に拡散してしまうことを防止或いは抑制できる。
【0075】
パージ制御工程(S128)として、制御装置100は、遮断弁73を開いて所定時間経過後に、遮断弁74を閉じ、遮断弁71を開き、運転停止中の圧縮機40を介して水素製造装置300から供給される水素ガスを吸着塔70に供給するように制御する。具体的には、圧縮機40が休止(停止)し、吸着塔70内が低圧に減圧された状態で、休止中の圧縮機40を介して水素製造装置300から供給される水素ガスをパージガスとして吸着塔70に導入する。ここで、「所定時間」とは、例えば、密閉空間(遮断弁71,72,73,74で閉じられた空間)の圧力が水素製造装置300からの供給圧力以下になると想定される時間が相当する。配管径と配管長さ、吸着塔70の堆積、密閉時の圧力等から、密閉空間分のガス量とそれらが排出される時間が計算できる。
【0076】
図9は、実施の形態1における水素のパージ制御工程時における吸着塔制御バルブシステムの動作を説明するための図である。アイドリング運転中の水素製造装置300では、製造量は少ないものの高純度の水素ガスは製造され続けている。従来、アイドリング運転中の水素製造装置300で製造された水素ガスは圧縮機40には供給されずに、開放弁319を介してベントラインから放出されていた。そこで、図9の例では、バルブ制御部60は、遮断弁71,73を開にし、遮断弁72,74を閉にすると共に、開放弁319を閉じ、バルブ328を開に制御する。これにより、アイドリング運転中の水素製造装置300で製造された水素ガスは停止中の圧縮機40内を通って、吸着塔70内に供給されると共に、ベントライン90から放出される。この水素ガスをパージガスとして利用して、吸着塔70内に導入することで、吸着剤の再生を加速できる。硫黄やハロゲン等の不純物は、例えば、圧縮機40の運転時のピストンの駆動により生じるピストンリング等の摺動により発生すると想定される。よって、圧縮機40が休止(停止)中は硫黄やハロゲン等の不純物は発生していないと考えられ、高純度を維持した水素ガスをパージガスとして利用できる。また、アイドリング運転中の水素製造装置300で製造された水素ガスをパージガスとして利用することで、従来廃棄していた水素ガスを活用できる。
【0077】
そして、次のFCV200が水素ステーション102に到来した場合には、FCV充填工程(102)に戻り、FCV充填工程(102)から圧縮機内減圧工程(S124)(或いはパージ制御工程(S128))までの各工程を繰り返す。
【0078】
以上のように、実施の形態1によれば、圧縮機40の下流側に配置される吸着剤に吸着された、水素ガスの不純物が圧縮機40側に拡散することを抑制しながら吸着塔70内に残った水素ガスを効率的に利用できる。さらに、吸着塔70内の吸着剤を再生でき、吸着塔70内の吸着剤の吸着性能を長寿命化することできる。よって、吸着塔70をさらに小型化することもできる。
【0079】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。本発明は、例えば、電気分解による水素製造装置にも適用できる。
【0080】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。
【0081】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての水素製造装置の運転方法及び水素製造装置の制御装置は、本発明の範囲に包含される。
【産業上の利用可能性】
【0082】
水素ガス供給装置および水素ガス供給方法に関し、例えば、水素ステーションに配置される水素ガス供給装置および水素ガス供給方法に利用できる。
【符号の説明】
【0083】
10,12,14 蓄圧器
11,13,15,17,318 圧力計
21,22,23,24,25,26,28,328 バルブ
27 流量計
29 流量調整弁
30 ディスペンサ
31 センサ
32 冷却器
34 制御回路
40 圧縮機
41 流量調整弁
42 減圧配管
44 ノズル
50 通信制御回路
51 メモリ
52 受信部
54 終了圧演算部
56 フロー計画部
58 システム制御部
60,65 バルブ制御部
61 復圧制御部
62 圧縮機制御部
63 供給制御部
64 ディスペンサ制御部
66 圧力受信部
67 HPU制御部
70,75 吸着塔
71,72,73,74 遮断弁
76 配管
80,82,84 記憶装置
81 変換テーブル
83 補正テーブル
90 ベントライン
92 戻り配管
91,93 オリフィス
100 制御回路
101 多段蓄圧器
102 水素ステーション
106 供給部
110 吸着塔制御バルブシステム
200 FCV
202 燃料タンク
204 車載器
205 温度計
206 圧力計
300 水素製造装置
319 開放弁
500 水素ガス供給システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9