(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】腫瘍アシドーシス画像化のためのデュアルモダリティUPSナノプローブ
(51)【国際特許分類】
C08F 293/00 20060101AFI20240814BHJP
A61K 49/00 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
C08F293/00
A61K49/00
(21)【出願番号】P 2021513995
(86)(22)【出願日】2019-09-13
(86)【国際出願番号】 US2019050977
(87)【国際公開番号】W WO2020056233
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-09-12
(32)【優先日】2018-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508152917
【氏名又は名称】ザ ボード オブ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティー オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】THE BOARD OF REGENTS OF THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ガオ ジンミン
(72)【発明者】
【氏名】フアン ギャング
(72)【発明者】
【氏名】チョウ ティアン
(72)【発明者】
【氏名】スマー バラン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】サン シャンカイ
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-526753(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0290997(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 293/00
A61K 49/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
のポリマーであって、
式中、
R
1は、水素、アルキル
(C≦12)、シクロアルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、置換シクロアルキル
(C≦12)、または
であり;
nは、1~500の整数であり;
R
2およびR
2'は、各々独立して、水素、アルキル
(C≦12)、シクロアルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、または置換シクロアルキル
(C≦12)より選択され;
R
3およびR
11は、各々独立して、式:
の基であり、
式中、
n
xは、1~10であり;
X
1、X
2、およびX
3は、各々独立して、水素、アルキル
(C≦12)、シクロアルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、または置換シクロアルキル
(C≦12)より選択され;かつ
X
4およびX
5は、各々独立して、アルキル
(C≦12)、シクロアルキル
(C≦12)、アリール
(C≦12)、ヘテロアリール
(C≦12)、もしくはこれらの基のいずれかの置換型より選択されるか、またはX
4およびX
5は一緒になり、かつアルカンジイル
(C≦12)、アルコキシジイル
(C≦12)、アルキルアミノジイル
(C≦12)、もしくはこれらの基のいずれかの置換型であり;
wは、0~150の整数であり;
xは、1~150の整数であり;
R
4は、式:
の基であり、
式中、
n
yは、1~10であり;
Y
1、Y
2、およびY
3は、各々独立して、水素、アルキル
(C≦12)、シクロアルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、または置換シクロアルキル
(C≦12)より選択され;かつ
Y
4は、色素または蛍光クエンチャーであり;
yは、1~6の整数であり;
R
5は、式:
の基であり、
式中、
n
zは、1~10であり;
Y
1'、Y
2'、およびY
3'は、各々独立して、水素、アルキル
(C≦12)、シクロアルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、または置換シクロアルキル
(C≦12)より選択され;かつ
Y
4'は、金属キレート基であり;
Lは、共有結合であるか;またはアルカンジイル
(C≦12)、アレーンジイル
(C≦12)、-アルカンジイル
(C≦12)-アレーンジイル
(C≦12)-NC(S)-、-アルカンジイル
(C≦12)-アレーンジイル
(C≦12)-C(O)-、もしくはこれらの基のいずれかの置換型であり;
zは、1~6の整数であり;かつ
R
6は、水素、ハロ、ヒドロキシ、アルキル
(C≦12)、または置換アルキル
(C≦12)であり、
R
11、R
3、R
4、およびR
5は、ポリマー内において任意の順序で現れ得る、
ポリマー。
【請求項2】
前記式中、
R
1が、水素、アルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、または
であり;
nが、10~500の整数であり;
R
2およびR
2'が、各々独立して、水素、アルキル
(C≦12)、または置換アルキル
(C≦12)より選択され;
R
3およびR
11が、各々独立して、式:
の基であり、
式中、
X
1、X
2、およびX
3は、各々独立して、水素、アルキル
(C≦12)、または置換アルキル
(C≦12)より選択され;かつ
X
4およびX
5は、各々独立して、アルキル
(C≦12)、アリール
(C≦12)、ヘテロアリール
(C≦12)、もしくはこれらの基のいずれかの置換型より選択されるか、またはX
4およびX
5は一緒になり、かつアルカンジイル
(C≦8)、アルコキシジイル
(C≦8)、アルキルアミノジイル
(C≦8)、もしくはこれらの基のいずれかの置換型であり;
xが、1~100の整数であり;
wが、0~100の整数であり;
R
4が、式:
の基であり、
式中、
Y
1、Y
2、およびY
3は、各々独立して、水素、アルキル
(C≦12)、または置換アルキル
(C≦12)より選択され;かつ
Y
4は、色素または蛍光クエンチャーであり;
yが、1~6の整数であり;
R
5が、式:
の基であり、
式中、
Y
1'、Y
2'、およびY
3'は、各々独立して、水素、アルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)より選択され;かつ
Y
4'は金属キレート基であり;
Lは、共有結合であるか;またはアルカンジイル
(C≦12)、アレーンジイル
(C≦12)、-アルカンジイル
(C≦12)-アレーンジイル
(C≦12)-NC(S)-、-アルカンジイル
(C≦12)-アレーンジイル
(C≦12)-C(O)-、もしくはこれらの基のいずれかの置換型であり;
zが、1~6の整数であり;かつ
R
6が、水素、ハロ、アルキル
(C≦12)、または置換アルキル
(C≦12)であり、
R
11、R
3、R
4、およびR
5が、ポリマー内において任意の順序で現れ得る、
前記式
によってさらに定義される、請求項1記載のポリマー。
【請求項3】
前記式中、
R
1が、水素、アルキル
(C≦8)、置換アルキル
(C≦8)、または
であり;
nが10~200の整数であり;
R
2およびR
2'が、各々独立して、水素、アルキル
(C≦8)、または置換アルキル
(C≦8)より選択され;
R
3およびR
11が、各々独立して、式:
の基であり、
式中、
X
1、X
2、およびX
3は、各々独立して、水素、アルキル
(C≦8)、または置換アルキル
(C≦8)より選択され;かつ
X
4およびX
5は、各々独立して、アルキル
(C≦12)、アリール
(C≦12)、ヘテロアリール
(C≦12)、もしくはこれらの基のいずれかの置換型より選択されるか、またはX
4およびX
5は一緒になり、かつアルカンジイル
(C≦8)もしくは置換アルカンジイル
(C≦8)であり;
xが、1~100の整数であり;
wが、0~100の整数であり;
R
4が、式:
の基であり、
式中、
Y
1、Y
2、およびY
3は、各々独立して、水素、アルキル
(C≦8)、または置換アルキル
(C≦8)より選択され;かつ
Y
4は、色素または蛍光クエンチャーであり;
yが、1~6の整数であり;
R
5が、式:
の基であり、
式中、
Y
1'、Y
2'、およびY
3'は、各々独立して、水素、アルキル
(C≦8)、置換アルキル
(C≦8)より選択され;かつ
Y
4'は金属キレート基であり;
Lは、共有結合であるか;またはアルカンジイル
(C≦12)、アレーンジイル
(C≦12)、-アルカンジイル
(C≦12)-アレーンジイル
(C≦12)-NC(S)-、-アルカンジイル
(C≦12)-アレーンジイル
(C≦12)-C(O)-、もしくはこれらの基のいずれかの置換型であり;
zが、1~6の整数であり;かつ
R
6が、水素、ハロ、アルキル
(C≦6)、または置換アルキル
(C≦6)であり、
R
11、R
3、R
4、およびR
5が、ポリマー内において任意の順序で現れ得る、
前記式
によってさらに定義される、請求項1または請求項2記載のポリマー。
【請求項4】
R
5が、式:
によってさらに定義され、
式中、
Y
1'は、水素、アルキル
(C≦8)、置換アルキル
(C≦8)より選択され;
Y
4'は金属キレート基であり;かつ
Lは、共有結合であるか;またはアルカンジイル
(C≦12)、アレーンジイル
(C≦12)、-アルカンジイル
(C≦12)-アレーンジイル
(C≦12)-NC(S)-、-アルカンジイル
(C≦12)-アレーンジイル
(C≦12)-C(O)-、もしくはこれらの基のいずれかの置換型である、
請求項1~3のいずれか一項記載のポリマー。
【請求項5】
Y
4'が、DOTA
(2,2’,2’’,2’’’-(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトライル)四酢酸)、TETA
(N1,N1’-(エタン-1,2-ジイル)ジ(エタン-1,2-ジアミン))、Diamsar
(1,8-ジアミノ-3,6,10,13,16,19-ヘキサアザビシクロ[6,6,6]-エイコサン)、NOTA
(2,2’,2’’-(1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-トリイル)三酢酸)、NETA
({4-[2-(ビス-カルボキシ-メチルアミノ)-5-(4-ニトロフェニル)-エンチル]-7-カルボキシメチル-[1,4,7]トリ-アゾナン-1-イル}酢酸)、TACN-TM
(1,4,7-トリス(2-メルカプトエチル)-1,4,7-トリアザシクロノナン)、DTPA
(N,N’-{[(カルボキシメチル)アザンジイル]ジ(エタン-2,1-ジイル)}ビス[N-(カルボキシメチル)グリシン])、TRAP
(3,3’,3’’-(((1,4,7-トリアゾナン-1,4,7-トリイル)トリス(メチレン))トリス(ヒドロキシホスホリル))トリプロパン酸)、NOPO
(3-(((4,7-ビス((ヒドロキシ(ヒドロキシメチル)ホスホリル)メチル)-1,4,7-トリアゾナン-1-イル)メチル)(ヒドロキシ)ホスホリル)プロパン酸)、AAZTA
(1,4-ビス(カルボキシメチル)-6-[ビス(カルボキシメチル)]アミノ-6-メチルペルヒドロ-1,4-ジアゼピン)、DATA
((6-ペンタン酸)-6-(アミノ)メチル-1,4-ジアゼピントリアセテート)、HBED
(N,N’-ジ(2-ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン-N,N’-二酢酸)、SHBED
(ジナトリウム-N,N’-ビス(2-ヒドロキシ-5-スルホベンジル)-エチレンジアミン二酢酸)、BPCA
(2,2’,2’’,2’’’-(((エタン-1,2-ジイルビス(オキシ))ビス(2,1-フェニレン))ビス(アザントリイル))テトラアセテート)、CP256
(N-アセチル-(トリス(6-メチル-3-ヒドロキシピリジン-4-オン))、DFO
(N’-[5-(アセチル-ヒドロキシ-アミノ)ペンチル]-N-[5-[3-(5-アミノペンチル-ヒドロキシ-カルバモイル)プロパノイルアミノ]ペンチル]-N-ヒドロキシ-ブタンジアミド)、PCTA
(3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-3,6,9-三酢酸)、HEHA
(1,4,7,10,13,16-ヘキサアザシクロヘキサデカン-N,N’,N’’,N’’’,N’’’’,N’’’’’-六酢酸)、PEPA
(1,4,7,10,13-ペンタアザシクロペンタデカン-N,N’,N’’,N’’’,N’’’’-五酢酸)、またはその誘導体である、請求項4記載のポリマー。
【請求項6】
前記金属キレート基が、
である、請求項5記載のポリマー。
【請求項7】
前記金属キレート基が、金属イオンと結合して、金属錯体を形成する、請求項5または6記載のポリマー。
【請求項8】
前記金属錯体が、
である、請求項7記載のポリマー。
【請求項9】
R
3およびR
11が、
より選択される、請求項1~8のいずれか一項記載のポリマー。
【請求項10】
R
3が、
である、請求項1~9のいずれか一項記載のポリマー。
【請求項11】
第1ポリマーのミセルを含むpH応答性システムであって、該第1ポリマーが、請求項1~10のいずれか一項記載の式
(I)のポリマーであり、Y
4が色素であり、かつ該ミセルが、pH転移点および発光スペクトルを有する、pH応答性システム。
【請求項12】
(a)請求項11記載の1つまたは複数のミセルを含むpH応答性システムを、腫瘍と接触させる工程;
(b)1つまたは複数のPETまたはSPECT画像スキャンを収集する工程;および
(c)1つまたは複数の光画像スキャンを収集する工程であって、光シグナルの検出が、該ミセルの1つがそのpH転移点に達しかつ解離したことを示す、工程
を含む、腫瘍の存在を決定するために患者を画像化する方法であって、
該1つまたは複数のPETまたはSPECT画像スキャンおよび該1つまたは複数の光画像スキャンが、腫瘍の同定をもたらす、
方法。
【請求項13】
前記金属キレート基が
64Cuイオンと結合している、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記金属キレート基が窒素含有大員環である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記窒素含有大員環が、
である、請求項14記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2018年9月15日に出願された、米国仮出願第62/731,848号の優先権の恩典を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、国立衛生研究所によって与えられた助成金番号R01 CA192221の下で政府支援によってなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
1.分野
本開示は、一般に、分子および細胞生物学、癌画像化、ナノテクノロジー、蛍光センサー、ならびに陽電子放出トポグラフィー(positron emission topography)用のセンサーの分野に関する。より詳細には、本開示は、pH変化の検出のためのナノプラットフォームに関する。
【背景技術】
【0004】
2.関連技術の説明
癌は、正常組織との様々な遺伝学的および組織学的差異を示す(Vogelstein et al., 2013)。これらの差異についての分子特徴付けは、患者を個別療法に対して分類するために有用である。しかし、この戦略は広い診断ツールとして役立たない場合があり、何故ならば、遺伝子/表現型バイオマーカーは一部の患者において発現され、また、正常組織とのかなりの重複が存在するためである(Jacobs et al., 2000およびPaik et al., 2000)。無秩序エネルギー論は、多くのタイプの癌にわたって生じる癌の顕著な特徴である(Hanahan and Weinberg, 2011)。癌細胞中のグルコース代謝の上昇は好気的解糖と長い間関連付けられており、ここで、癌細胞はグルコースを優先的に取り込み、それを乳酸に変換する(Heiden et al., 2009)。肺癌患者において13C標識グルコースを使用するより最近の研究は、成長および増殖のための癌細胞機構としての解糖に加えての酸化的リン酸化の加速をさらに実証する(Hensley et al., 2016)。グルコース代謝の臨床的意義は、18F-フルオロデオキシグルコース(FDG)陽電子放出断層撮影(PET; Zhu et al., 2011)の広い使用によって明らかであり、ここで、PET検出のためには、放射標識グルコース類似体であるFDGは、過剰発現されるグルコース輸送体によって選択的に取り込まれ、そしてヘキソキナーゼによるリン酸化後に癌細胞内部に捕らえられる(Som et al., 1980)。
【0005】
広い臨床採用にもかかわらず、FDGは、腫瘍および正常組織中のFDG取り込みの可変レベルならびに腫瘍サイズに依存する比較的高い偽陰性率を含む、十分に記載された多くの潜在的欠陥を有する(Cook et al., 2004、Purohit et al., 2014、Truong et al., 2014、Culverwell et al., 2011、Truong et al., 2005、Bhargava et al., 2011、Blodgett et al., 2011、およびFukui et al., 2005)。FDGの高い生理学的取り込みは、典型的に、脳、心臓、腎臓、および尿路において生じ、これらの組織に隣接する領域からの腫瘍シグナルを覆い隠す(Truong et al., 2014)。頭頸部癌において、ワルダイエル輪(鼻咽頭、口蓋および舌扁桃)、唾液腺、横紋筋、褐色脂肪、または炎症/感染における高いFDG取り込みは全て、偽陽性シグナルに寄与する(Cohade et al., 2003およびPerkins et al., 2013)。1 cm未満の腫瘍について、周囲の正常組織にわたる腫瘍中のFDGの不十分な蓄積は、しばしば、偽陰性をもたらす(Cook et al., 2004、Purohit et al., 2014、Blodgett et al., 2011、およびGould et al., 2001)。さらに、高代謝性脳実質付近の頭蓋底腫瘍、またはFDG集積を示す(FDG-avid)扁桃組織中の口腔咽頭癌および鼻咽頭癌は、偽陰性診断を生じさせ得る(Harvey et al., 2010、Schoder, 2013、Castaigne et al., 2006、およびSchmalfuss, 2012)。正常および腫瘍組織の両方についての、FDG取り込みの変動性、滞留における重複、および代謝の時間ゆらぎは、癌検出におけるFDG PETの正確度を著しく制限する。
【0006】
以前に報告されたのは、近赤外蛍光画像化による広範囲の固形癌の広域検出のためのインドシアニングリーン(ICG)符号化超pH感受性(UPS)ナノプローブであった(Zhao et al., 2016)。この光学トレーサーは、ポリマーの疎水性部分へコンジュゲートされた色素の蛍光をクエンチおよびアンクエンチするために、ポリマーの相転移を利用する。この光出力は不連続であり、中間値を有さずに全てオンまたはオフであり、腫瘍検出において高い特異性および感受性をもたらす。しかし、ポリマーの相転移挙動を、蛍光以外の応答または出力を発生させるのに利用できるかどうかは不明であった。
【0007】
種々の腫瘍タイプにわたる改善された感受性および特異性を有する癌検出に向けての、広くかつ癌特異的な戦略の開発に関する満たされていない臨床的必要性に起因して、腫瘍の画像化のためのpH応答性システムを作製することができる新しいポリマーは、診断および画像化プロトコルの開発にとって価値がある。
【発明の概要】
【0008】
概要
いくつかの局面において、本開示は、以下の式:
のポリマーを提供し、
式中、
R
1は、水素、アルキル
(C≦12)、シクロアルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、置換シクロアルキル
(C≦12)、または
であり;
nは、1~500の整数であり;
R
2およびR
2'は、各々独立して、水素、アルキル
(C≦12)、シクロアルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、または置換シクロアルキル
(C≦12)より選択され;
R
3およびR
11は、各々独立して、式:
の基であり、
式中、
n
xは、1~10であり;
X
1、X
2、およびX
3は、各々独立して、水素、アルキル
(C≦12)、シクロアルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、または置換シクロアルキル
(C≦12)より選択され;かつ
X
4およびX
5は、各々独立して、アルキル
(C≦12)、シクロアルキル
(C≦12)、アリール
(C≦12)、ヘテロアリール
(C≦12)、もしくはこれらの基のいずれかの置換型より選択されるか、またはX
4およびX
5は一緒になり、かつアルカンジイル
(C≦12)、アルコキシジイル
(C≦12)、アルキルアミノジイル
(C≦12)、もしくはこれらの基のいずれかの置換型であり;
wは、0~150の整数であり;
xは、1~150の整数であり;
R
4は、式:
の基であり、
式中、
n
yは、1~10であり;
Y
1、Y
2、およびY
3は、各々独立して、水素、アルキル
(C≦12)、シクロアルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、または置換シクロアルキル
(C≦12)より選択され;かつ
Y
4は、色素または蛍光クエンチャーであり;
yは、1~6の整数であり;
R
5は、式:
の基であり、
式中、
n
zは、1~10であり;
Y
1'、Y
2'、およびY
3'は、各々独立して、水素、アルキル
(C≦12)、シクロアルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、または置換シクロアルキル
(C≦12)より選択され;かつ
Y
4'は金属キレート基であり;
Lは、共有結合であるか;またはアルカンジイル
(C≦12)、アレーンジイル
(C≦12)、-アルカンジイル
(C≦12)-アレーンジイル
(C≦12)-NC(S)-、-アルカンジイル
(C≦12)-アレーンジイル
(C≦12)-C(O)-、もしくはこれらの基のいずれかの置換型であり;
zは、1~6の整数であり;かつ
R
6は、水素、ハロ、ヒドロキシ、アルキル
(C≦12)、または置換アルキル
(C≦12)であり、
R
11、R
3、R
4、およびR
5は、ポリマー内において任意の順序で現れ得る。
【0009】
いくつかの態様において、ポリマーは前記式によって定義され、
前記式中、
R
1は、水素、アルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、または
であり;
nは、10~500の整数であり;
R
2およびR
2'は、各々独立して、水素、アルキル
(C≦12)、または置換アルキル
(C≦12)より選択され;
R
3およびR
11は、各々独立して、式:
の基であり、
式中、
X
1、X
2、およびX
3は、各々独立して、水素、アルキル
(C≦12)、または置換アルキル
(C≦12)より選択され;かつ
X
4およびX
5は、各々独立して、アルキル
(C≦12)、アリール
(C≦12)、ヘテロアリール
(C≦12)、もしくはこれらの基のいずれかの置換型より選択されるか、またはX
4およびX
5は一緒になり、かつアルカンジイル
(C≦8)、アルコキシジイル
(C≦8)、アルキルアミノジイル
(C≦8)、もしくはこれらの基のいずれかの置換型であり;
xは、1~100の整数であり;
wは、0~100の整数であり;
R
4は、式:
の基であり、
式中、
Y
1、Y
2、およびY
3は、各々独立して、水素、アルキル
(C≦12)、または置換アルキル
(C≦12)より選択され;かつ
Y
4は、色素または蛍光クエンチャーであり;
yは、1~6の整数であり;
R
5は、式:
の基であり、
式中、
Y
1'、Y
2'、およびY
3'は、各々独立して、水素、アルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)より選択され;かつ
Y
4'は金属キレート基であり;
Lは、共有結合であるか;またはアルカンジイル
(C≦12)、アレーンジイル
(C≦12)、-アルカンジイル
(C≦12)-アレーンジイル
(C≦12)-NC(S)-、-アルカンジイル
(C≦12)-アレーンジイル
(C≦12)-C(O)-、もしくはこれらの基のいずれかの置換型であり;
zは、1~6の整数であり;かつ
R
6は、水素、ハロ、アルキル
(C≦12)、または置換アルキル
(C≦12)であり、
R
11、R
3、R
4、およびR
5は、ポリマー内において任意の順序で現れ得る。
【0010】
いくつかの態様において、ポリマーは前記式によってさらに定義され、
前記式中、
R
1は、水素、アルキル
(C≦8)、置換アルキル
(C≦8)、または
であり;
nは10~200の整数であり;
R
2およびR
2'は、各々独立して、水素、アルキル
(C≦8)、または置換アルキル
(C≦8)より選択され;
R
3およびR
11は、各々独立して、式:
の基であり、
式中、
X
1、X
2、およびX
3は、各々独立して、水素、アルキル
(C≦8)、または置換アルキル
(C≦8)より選択され;かつ
X
4およびX
5は、各々独立して、アルキル
(C≦12)、アリール
(C≦12)、ヘテロアリール
(C≦12)、もしくはこれらの基のいずれかの置換型より選択されるか、またはX
4およびX
5は一緒になり、かつアルカンジイル
(C≦8)もしくは置換アルカンジイル
(C≦8)であり;
xは、1~100の整数であり;
wは、0~100の整数であり;
R
4は、式:
の基であり、
式中、
Y
1、Y
2、およびY
3は、各々独立して、水素、アルキル
(C≦8)、または置換アルキル
(C≦8)より選択され;かつ
Y
4は、色素または蛍光クエンチャーであり;
yは、1~6の整数であり;
R
5は、式:
の基であり、
式中、
Y
1'、Y
2'、およびY
3'は、各々独立して、水素、アルキル
(C≦8)、置換アルキル
(C≦8)より選択され;かつ
Y
4'は金属キレート基であり;
Lは、共有結合であるか;またはアルカンジイル
(C≦12)、アレーンジイル
(C≦12)、-アルカンジイル
(C≦12)-アレーンジイル
(C≦12)-NC(S)-、-アルカンジイル
(C≦12)-アレーンジイル
(C≦12)-C(O)-、もしくはこれらの基のいずれかの置換型であり;
zは、1~6の整数であり;かつ
R
6は、水素、ハロ、アルキル
(C≦6)、または置換アルキル
(C≦6)であり、
R
11、R
3、R
4、およびR
5は、ポリマー内において任意の順序で現れ得る。
【0011】
いくつかの態様において、R
1は水素である。他の態様において、R
1は、アルキル
(C≦6)、例えばメチルである。さらに他の態様において、R
1は、
である。いくつかの態様において、R
2は、アルキル
(C≦6)、例えばメチルである。いくつかの態様において、R
2'は、アルキル
(C≦6)、例えばメチルである。いくつかの態様において、R
3またはR
11は、式:
によってさらに定義され、
式中、
X
1は、水素、アルキル
(C≦8)、または置換アルキル
(C≦8)より選択され;かつ
X
4およびX
5は、各々独立して、アルキル
(C≦12)、アリール
(C≦12)、ヘテロアリール
(C≦12)、もしくはこれらの基のいずれかの置換型より選択されるか、またはX
4およびX
5は一緒になり、かつアルカンジイル
(C≦8)もしくは置換アルカンジイル
(C≦8)である。
【0012】
いくつかの態様において、X1は、アルキル(C≦6)、例えばメチルである。いくつかの態様において、X4は、アルキル(C≦8)、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはペンチルである。いくつかの態様において、X4はn-プロピルである。他の態様において、X4はイソプロピルである。他の態様において、X4はエチルである。いくつかの態様において、X5は、アルキル(C≦8)、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはペンチルである。いくつかの態様において、X5はn-プロピルである。他の態様において、X5はイソプロピルである。他の態様において、X5はエチルである。いくつかの態様において、R3とR11は同じ基ではない。
【0013】
いくつかの態様において、R
4は、式:
によってさらに定義され、式中、Y
1は、水素、アルキル
(C≦8)、または置換アルキル
(C≦8)より選択され;かつY
4は、色素または蛍光クエンチャーである。いくつかの態様において、Y
1は、アルキル
(C≦6)、例えばメチルである。いくつかの態様において、Y
4は色素である。いくつかの態様において、Y
4は蛍光色素である。いくつかの態様において、蛍光色素は、クマリン、フルオレセイン、ローダミン、キサンテン、BODIPY(登録商標)、Alexa Fluor(登録商標)、またはシアニン色素である。いくつかの態様において、蛍光色素は、インドシアニングリーン、AMCA-x、マリーナブルー(Marina Blue)、PyMPO、ローダミングリーン(Rhodamine Green)(商標)、テトラメチルローダミン、5-カルボキシ-X-ローダミン、Bodipy493、Bodipy TMR-x、Bodipy630、シアニン3.5、シアニン5、シアニン5.5、またはシアニン7.5である。いくつかの態様において、蛍光色素はインドシアニングリーンである。
【0014】
いくつかの態様において、Y4は、蛍光クエンチャー、例えば、QSY7、QSY21、QSY35、BHQ1、BHQ2、BHQ3、TQ1、TQ2、TQ3、TQ4、TQ5、TQ6、またはTQ7である。いくつかの態様において、各R11は、ブロックを形成するように連続的に組み込まれている。いくつかの態様において、各R3は、ブロックを形成するように連続的に組み込まれている。いくつかの態様において、各R11はブロックとして存在し、かつ各R3はブロックとして存在する。他の態様において、各R11および各R3は、ポリマー内にランダムに組み込まれている。
【0015】
いくつかの態様において、R
5は、式:
によってさらに定義され、
式中、
Y
1'は、水素、アルキル
(C≦8)、置換アルキル
(C≦8)より選択され;
Y
4'は金属キレート基であり;かつ
Lは、共有結合であるか;またはアルカンジイル
(C≦12)、アレーンジイル
(C≦12)、-アルカンジイル
(C≦12)-アレーンジイル
(C≦12)-NC(S)-、-アルカンジイル
(C≦12)-アレーンジイル
(C≦12)-C(O)-、もしくはこれらの基のいずれかの置換型である。
【0016】
いくつかの態様において、Y
1'は、アルキル
(C≦6)、例えばメチルである。いくつかの態様において、Lは共有結合である。他の態様において、Lは、アルカンジイル
(C≦12)、置換アルカンジイル
(C≦12)、アレーンジイル
(C≦12)、または置換アレーンジイル
(C≦12)である。さらに他の態様において、Lは、-アルカンジイル
(C≦12)-アレーンジイル
(C≦12)-NC(S)-である。さらなる態様において、Lは、-アルカンジイル
(C≦12)-ベンゼンジイル-NC(S)-、例えば、-CH
2-1,4-ベンゼンジイル-NC(S)-である。いくつかの態様において、Y
4'は、DOTA、TETA、Diamsar、NOTA、NETA、TACN-TM、DTPA、TRAP、NOPO、AAZTA、DATA、HBED、SHBED、BPCA、CP256、DFO、PCTA、HEHA、PEPA、またはその誘導体である。いくつかの態様において、Y
4'は金属キレート基であり、ここで、金属キレート基は窒素含有大員環である。さらなる態様において、窒素含有大員環は、式:
の化合物であり、
式中、
R
7、R
8、R
9、R
10、R
7'、R
8'、およびR
9'は、各々独立して、水素、アルキル
(C≦12)、アシル
(C≦12)、-アルカンジイル
(C≦12)-アシル
(C≦12)、もしくはこれらの基のいずれかの置換型より選択される;または
R
7は、R
8、R
9、もしくはR
10のうちの1つと一緒になり、かつアルカンジイル
(C≦6)である;または
R
8は、R
7、R
9、もしくはR
10のうちの1つと一緒になり、かつアルカンジイル
(C≦6)である;または
R
9は、R
7、R
8、もしくはR
10のうちの1つと一緒になり、かつアルカンジイル
(C≦6)である;または
R
10は、R
7、R
8、もしくはR
9のうちの1つと一緒になり、かつアルカンジイル
(C≦6)である;または
R
7'は、R
8'もしくはR
9'のうちの1つと一緒になり、かつアルカンジイル
(C≦6)である;または
R
8'は、R
7'もしくはR
9'のうちの1つと一緒になり、かつアルカンジイル
(C≦6)である;または
R
9'は、R
7'もしくはR
8'のうちの1つと一緒になり、かつアルカンジイル
(C≦6)であり;かつ
a、b、c、d、a'、b'、およびc'は、各々独立して、1、2、3、または4より選択される。
【0017】
いくつかの態様において、a、b、c、d、a'、b'、およびc'は、各々独立して、2または3より選択される。
【0018】
いくつかの態様において、金属キレート基は、
である。
【0019】
いくつかの態様において、金属キレート基は、金属錯体を形成するように金属イオンと結合している。いくつかの態様において、金属イオンは、放射性核種または放射性金属である。いくつかの態様において、金属イオンはPETまたはSPECT画像化に適している。いくつかの態様において、金属イオンは遷移金属イオンである。いくつかの態様において、金属イオンは、銅イオン、ガリウムイオン、スカンジウムイオン、インジウムイオン、ルテチウムイオン、イッテルビウムイオン、ジルコニウムイオン、ビスマスイオン、鉛イオン、アクチニウムイオン、またはテクネチウムイオンである。いくつかの態様において、金属イオンは、
99mTc、
60Cu、
61Cu、
62Cu、
64Cu、
86Y、
90Y、
89Zr、
44Sc、
47Sc、
66Ga、
67Ga、
68Ga、
111In、
177Lu、
225Ac、
212Pb、
212Bi、
213Bi、
111In、
114mIn、
114In、
186Re、または
188Reより選択される同位体である。いくつかの態様において、遷移金属イオンは銅(II)イオンである。いくつかの態様において、銅(II)イオンは
64Cu
2+イオンである。いくつかの態様において、金属錯体は、
である。
【0020】
いくつかの態様において、nは75~150である。さらなる態様において、nは100~125である。いくつかの態様において、xは1~99である。さらなる態様において、xは、1~5、5~10、10~15、15~20、20~25、25~30、30~35、35~40、40~45、45~50、50~55、55~60、60~65、65~70、70~75、75~80、80~85、85~90、90~95、95~100、100~105、105~110、110~115、115~120、120~125、125~130、130~135、135~140、140~145、145~150、150~155、155~160、160~165、165~170、170~175、175~180、180~185、185~190、190~195、195~199、またはその中で導き出せる任意の範囲である。いくつかの態様において、yは1、2、3、4、または5である。いくつかの態様において、yは1または2である。いくつかの態様において、yは1である。いくつかの態様において、zは1、2、3、4、または5である。いくつかの態様において、zは1または2である。いくつかの態様において、zは2である。いくつかの態様において、各R11、R3、R4、およびR5は、ポリマー内において任意の順序で現れ得る。他の態様において、各R11、R3、R4、およびR5は、式Iに記載される順序で現れる。いくつかの態様において、wは0である。
【0021】
いくつかの態様において、ポリマーは標的指向部分をさらに含む。さらなる態様において、標的指向部分は、小分子、抗体、抗体断片、またはシグナル伝達ペプチドである。いくつかの態様において、R
3およびR
11は、
より選択される。
【0022】
【0023】
いくつかの態様において、ポリマーは6.9のpH転移を有する。いくつかの態様において、ポリマーはUPS6.9である。
【0024】
別の局面において、本開示は、本明細書に開示されるようなポリマーのミセルを提供する。
【0025】
別の局面において、本開示は、第1ポリマーのミセルを含むpH応答性システムであって、ここで、第1ポリマーが本開示のポリマーであり、ここで、Y4が色素であり、かつここで、ミセルがpH転移点および発光スペクトルを有する、pH応答性システムを提供する。いくつかの態様において、ミセルは、本明細書に開示されるようなポリマーである第2ポリマーをさらに含み、ここで、Y4は蛍光クエンチャーである。いくつかの態様において、第2ポリマーは、Y4が蛍光クエンチャーである以外は第1ポリマーと同じ式を有する。いくつかの態様において、ミセルは、本開示の第2ポリマーを含む組成物を含み、ここで、第2ポリマーは、第1ポリマーと異なる式を有する。いくつかの態様において、第2ポリマー上のY4は、第1ポリマー上のY4と異なる色素である。いくつかの態様において、ミセルは1~6種の追加のポリマーをさらに含み、但し、各ポリマーは独特であり、各ポリマーは、第1ポリマーおよび第2ポリマーと異なる。いくつかの態様において、pH転移点は3~9である。さらなる態様において、pH転移点は4~8、例えば6.9である。いくつかの態様において、発光スペクトルは400~850 nmである。いくつかの態様において、システムは1 pH単位未満のpH応答(ΔpH10~90%)を有する。さらなる態様において、pH応答は0.25 pH単位未満である。なおさらなる態様において、pH応答は0.15 pH単位未満である。いくつかの態様において、蛍光シグナルは、25より大きい蛍光活性化比率を有する。さらなる態様において、蛍光活性化比率は50より大きい。
【0026】
別の局面において、本開示は、細胞内環境または細胞外環境のpHを画像化する方法であって、
(a)本開示のpH応答性システムを環境と接触させる工程;および
(b)環境からの1つまたは複数のシグナルを検出する工程であって、ここで、シグナルの検出は、ミセルがそのpH転移点に達しかつ解離したことを示す、工程
を含む、方法を提供する。
【0027】
いくつかの態様において、1つまたは複数のシグナルのうちの少なくとも1つは陽電子放出である。いくつかの態様において、1つまたは複数のシグナルのうちの少なくとも1つは、光シグナル、例えば、蛍光シグナルである。いくつかの態様において、細胞内環境を画像化する場合に、細胞は、pH応答性システムと、pH応答性システムの取り込みを引き起こすのに適した条件下で接触される。いくつかの態様において、細胞内環境は細胞の一部分である。さらなる態様において、細胞の一部分はリソソームまたはエンドソームである。いくつかの態様において、細胞外環境は、腫瘍または血管細胞のものである。いくつかの態様において、細胞外環境は血管内または血管外である。いくつかの態様において、腫瘍環境のpHの画像化は、1つまたは複数の癌関与リンパ節またはセンチネルリンパ節の画像化を含む。さらなる態様において、1つまたは複数の癌関与リンパ節またはセンチネルリンパ節の画像化は、腫瘍の手術切除および腫瘍転移の病期分類を可能にする。いくつかの態様において、腫瘍環境のpHの画像化は、腫瘍のサイズおよび境界の決定を可能にする。さらなる態様において、腫瘍環境のpHの画像化は、手術中のより正確な腫瘍の除去を可能にする。
【0028】
いくつかの態様において、方法は、
(a)細胞を関心対象の化合物と接触させる工程;
(b)環境における1つまたは複数のシグナルを検出する工程;および
(c)細胞を関心対象の化合物と接触させた後に1つまたは複数のシグナルの変化が生じたか否かを判定する工程
をさらに含む。
【0029】
いくつかの態様において、1つまたは複数のシグナルのうちの少なくとも1つは光シグナルである。いくつかの態様において、1つまたは複数のシグナルのうちの少なくとも1つは陽電子放出である。いくつかの態様において、関心対象の化合物は、薬物、抗体、ペプチド、タンパク質、核酸、または小分子である。
【0030】
さらに別の局面において、本開示は、関心対象の化合物を標的細胞へ送達する方法であって、
(a)関心対象の化合物を、本開示のポリマーのpH応答性システムによって被包する工程;および
(b)標的細胞のpHがpH応答性システムの解離および化合物の放出をトリガーする条件下で、標的細胞をpH応答性システムと接触させる工程であって、それによって関心対象の化合物を送達する、工程
を含む、方法を提供する。
【0031】
いくつかの態様において、関心対象の化合物は細胞の中へ送達される。他の態様において、関心対象の化合物は細胞へ送達される。いくつかの態様において、関心対象の化合物は、薬物、抗体、ペプチド、タンパク質、核酸、または小分子である。いくつかの態様において、方法は、pH応答性システムを患者に投与する工程をさらに含む。
【0032】
さらに別の局面において、本開示は、患者における腫瘍を切除する方法であって、
(a)本開示のpH応答性システムの有効量を患者に投与する工程;
(b)患者について1つまたは複数のシグナルを検出する工程であって、ここで、1つまたは複数のシグナルが腫瘍の存在を示す、工程;および
(c)腫瘍を手術により切除する工程
を含む、方法を提供する。
【0033】
いくつかの態様において、1つまたは複数のシグナルのうちの少なくとも1つは光シグナルである。いくつかの態様において、1つまたは複数のシグナルのうちの少なくとも1つは陽電子放出である。いくつかの態様において、1つまたは複数のシグナルは腫瘍の境界を示す。いくつかの態様において、腫瘍を90%切除する。さらなる態様において、腫瘍を95%切除する。なおさらなる態様において、腫瘍を99%切除する。いくつかの態様において、腫瘍は固形腫瘍である。いくつかの態様において、固形腫瘍は癌に由来する。いくつかの態様において、癌は、乳癌、頭頸部癌、または脳の癌である。いくつかの態様において、癌は頭頸部扁平上皮癌である。いくつかの態様において、pH応答性システムは、式:
のポリマーから構成され、式中、xは30~150の整数であり、yは1または2であり、zは1または2であり;x、y、およびzはポリマー全体にわたってランダムに分布し;ICGは蛍光色素インドシアニングリーンである。
【0034】
さらに別の局面において、本開示は、患者におけるエンドソーム/リソソームpH拘束を起こしやすい癌を処置する方法であって、その必要がある患者に、本開示のpH応答性システムを投与する工程を含む、方法を提供する。いくつかの態様において、癌は、肺癌、例えば、非小細胞肺癌である。いくつかの態様において、方法は、アポトーシスを誘導するのに十分である。
【0035】
さらに別の局面において、本開示は、腫瘍アシドーシス経路を同定する方法であって、
(a)本開示の1つまたは複数のミセルを含むpH応答性システムを細胞または細胞環境と接触させる工程;
(b)細胞をpH調節経路の阻害剤と接触させる工程;
(c)細胞または細胞環境からのシグナルを検出する工程であって、シグナルの検出が、ミセルの1つがそのpH転移点に達しかつ解離したことを示す、工程;および
(d)シグナルと腫瘍アシドーシス経路の改変とを相互に関連付ける工程
を含む、方法を提供する。
【0036】
いくつかの態様において、シグナルは、光シグナル、例えば、蛍光である。いくつかの態様において、シグナルは陽電子放出である。いくつかの態様において、pH調節経路の阻害剤は、モノカルボン酸輸送体の阻害剤、炭酸脱水酵素の阻害剤、アニオン交換輸送体の阻害剤、Na+-重炭酸交換輸送体の阻害剤、Na+/H+交換輸送体の阻害剤、またはV-ATPアーゼの阻害剤である。いくつかの態様において、1つまたは複数のミセルは、ポリマー骨格へ結合された2つ以上のフルオロフォアを有するポリマーを含む。さらなる態様において、方法は、異なるフルオロフォアまたは異なるR3基を有する2種以上のポリマーを含む1つのミセルを含む。いくつかの態様において、ミセルは、異なるフルオロフォアおよび異なるR3基を有する2種以上のポリマーを含む。
【0037】
さらに別の局面において、本開示は、
(a)本開示の1つまたは複数のミセルを含むpH応答性システムを腫瘍と接触させる工程;
(b)1つまたは複数のPETまたはSPECT画像スキャンを収集する工程;および
(c)1つまたは複数の光画像スキャンを収集する工程であって、ここで、光シグナルの検出が、ミセルの1つがそのpH転移点に達しかつ解離したことを示す、工程
を含む、腫瘍の存在を決定するために患者を画像化する方法であって、1つまたは複数のPETまたはSPECT画像スキャンおよび1つまたは複数の光画像スキャンが、腫瘍の同定をもたらす、方法を提供する。いくつかの態様において、光画像スキャンは、PETまたはSPECT画像スキャンの前に収集される。他の態様において、光画像スキャンは、PETまたはSPECT画像スキャンの後に収集される。さらに他の態様において、光画像スキャンは、PETまたはSPECT画像スキャンと同時に収集される。いくつかの態様において、画像スキャンはPET画像スキャンである。他の態様において、画像スキャンはSPECT画像スキャンである。いくつかの態様において、金属キレート基は
64Cuイオンと結合している。いくつかの態様において、金属キレート基は窒素含有大員環である。いくつかの態様において、窒素含有大員環は、
であり、式中、R
7、R
8、R
9、R
10、R
7'、R
8'、R
9'、a、b、c、d、a'、b'、およびc'は、上記に定義される通りである。いくつかの態様において、窒素含有大員環は、
である。
【0038】
いくつかの局面において、本開示は、癌処置療法の有効性を判定する方法であって、
(a)本開示の1つまたは複数のミセルを含むpH応答性システムを、腫瘍を有する患者に投与する工程;
(b)1つまたは複数のPETまたはSPECT画像スキャンを収集する工程;
(c)1つまたは複数の光画像スキャンを収集する工程であって、ここで、光シグナルの検出が、ミセルの1つがそのpH転移点に達しかつ解離したことを示す、工程;
(d)癌処置療法を投与する工程;
(e)癌処置療法の有効性を判定するために工程(a)~(c)を繰り返す工程
を含む、方法を提供する。
【0039】
いくつかの態様において、癌処置療法は、化学療法または放射線療法である。いくつかの態様において、化学療法は、腫瘍アシドーシス経路を調節する化学療法剤の投与を含む。
【0040】
さらに別の局面において、本開示は、その必要がある患者における疾患または障害を処置または予防する方法であって、本明細書に記載されるポリマー、ミセル、またはpH応答性システムを患者に投与する工程を含む、方法を提供する。いくつかの態様において、ポリマー、ミセル、またはpH応答性システムは、放射性核種、例えば、90Yまたは177Luを含む。いくつかの態様において、ポリマー、ミセル、またはpH応答性システムは、第2の治療剤をさらに含む。
【0041】
本明細書において使用される場合、「pH応答性システム」、「ミセル」、「pH応答性ミセル」、「pH感受性ミセル」、「pH活性化可能ミセル」、および「pH活性化可能ミセル(pHAM)ナノ粒子」は、本明細書では交換可能に使用され、1つまたは複数のブロックコポリマーを含むミセルを示し、これはpH(例えば、あるpH超過または未満)に依存して解離する。非限定的な例として、あるpHにおいて、ブロックコポリマーは実質的にミセル形態である。pHが変化する(例えば、減少する)につれて、ミセルは解離し始め、そして、pHがさらに変化する(例えば、さらに減少する)につれて、ブロックコポリマーは実質的に解離(非ミセル)形態で存在する。
【0042】
本明細書において使用される場合、「pH転移範囲」は、それを超えるとミセルが解離するpH範囲を示す。
【0043】
本明細書において使用される場合、「pH転移値」(pHt)は、ミセルの半数が解離するpHを示す。
【0044】
本明細書に記載される任意の方法または組成物は、本明細書に記載される任意の他の方法または組成物に関して実施され得ることが意図される。
【0045】
用語「含む(comprise)」(および「含む(comprises)」および「含むこと(comprising)」等の含むの任意の形態)、「有する(have)」(および「有する(has)」および「有すること(having)」等の有するの任意の形態)、「含有する(contain)」(および「含有する(contains)」および「含有すること(containing)」等の含有するの任意の形態)、ならびに「包含する(include)」(および「包含する(includes)」および「包含すること(including)」等の包含するの任意の形態)は、オープンエンドの連結動詞である。結果として、1つまたは複数の記載された工程または要素を「含む」、「有する」、「含有する」、または「包含する」方法、組成物、キット、またはシステムは、それらの記載の工程または要素を有するが、それらの工程または要素のみを有することに限定されず;それは、記載されていない要素または工程を有してもよい(即ち、カバーしてもよい)。同様に、1つまたは複数の記載された特徴を「含む」、「有する」、「含有する」、または「包含する」方法、組成物、キット、またはシステムの要素は、それらの特徴を有するが、それらの特徴のみを有することに限定されず;それは、記載されていない特徴を有してもよい。
【0046】
本発明の方法、組成物、キット、およびシステムのいずれかの任意の態様が、記載された工程および/または特徴を含む/包含する/含有する/有するのではなく、記載された工程および/または特徴からなるまたはそれらから本質的になってもよい。従って、請求項のいずれにおいても、用語「からなる」または「から本質的になる」を、そうでなければオープンエンドの連結動詞を使用していたものから所定の請求項の範囲を変更するために、上記に記載のオープンエンドの連結動詞のいずれかの代わりに用いてもよい。
【0047】
本開示のポリマーは様々なプロトン化状態で描写され得る。当業者によって認識されるように、分子は、異なるpH値にて異なるプロトン化状態で存在する。1つのプロトン化状態での分子の描写は、その分子がそのpH値または別のpH値にてそのプロトン化状態でのみ存在することを意味しない。従って、本発明のポリマーは、全ての実現可能なプロトン化状態を包含するように意図される。例えば、アミンは、プロトン化または非プロトン化のいずれかとして示され得、またはカルボン酸基は、遊離酸またはカルボキシレートのいずれかとして描写され得る。
【0048】
特許請求の範囲における用語「または」の使用は、本開示は選択肢ならびに「および/または」のみを指す定義をサポートしているが、選択肢のみを指すことが明確に示されない限りまたは選択肢が相互に排他的でない限り、「および/または」を意味するために使用される。本出願全体にわたって、用語「約」は、値が、その値を決定するために用いられる装置または方法についての誤差の標準偏差を含むことを示すために用いられる。長年の特許法に従って、単語「1つの(a)」および「1つの(an)」は、特許請求の範囲または明細書において単語「含む」と共に使用される場合、特段の記載が無い限り、1つまたは複数を意味する。
【0049】
[本発明1001]
式:
のポリマーであって、
式中、
R
1
は、水素、アルキル
(C≦12)
、シクロアルキル
(C≦12)
、置換アルキル
(C≦12)
、置換シクロアルキル
(C≦12)
、または
であり;
nは、1~500の整数であり;
R
2
およびR
2
'は、各々独立して、水素、アルキル
(C≦12)
、シクロアルキル
(C≦12)
、置換アルキル
(C≦12)
、または置換シクロアルキル
(C≦12)
より選択され;
R
3
およびR
11
は、各々独立して、式:
の基であり、
式中、
n
x
は、1~10であり;
X
1
、X
2
、およびX
3
は、各々独立して、水素、アルキル
(C≦12)
、シクロアルキル
(C≦12)
、置換アルキル
(C≦12)
、または置換シクロアルキル
(C≦12)
より選択され;かつ
X
4
およびX
5
は、各々独立して、アルキル
(C≦12)
、シクロアルキル
(C≦12)
、アリール
(C≦12)
、ヘテロアリール
(C≦12)
、もしくはこれらの基のいずれかの置換型より選択されるか、またはX
4
およびX
5
は一緒になり、かつアルカンジイル
(C≦12)
、アルコキシジイル
(C≦12)
、アルキルアミノジイル
(C≦12)
、もしくはこれらの基のいずれかの置換型であり;
wは、0~150の整数であり;
xは、1~150の整数であり;
R
4
は、式:
の基であり、
式中、
n
y
は、1~10であり;
Y
1
、Y
2
、およびY
3
は、各々独立して、水素、アルキル
(C≦12)
、シクロアルキル
(C≦12)
、置換アルキル
(C≦12)
、または置換シクロアルキル
(C≦12)
より選択され;かつ
Y
4
は、色素または蛍光クエンチャーであり;
yは、1~6の整数であり;
R
5
は、式:
の基であり、
式中、
n
z
は、1~10であり;
Y
1
'、Y
2
'、およびY
3
'は、各々独立して、水素、アルキル
(C≦12)
、シクロアルキル
(C≦12)
、置換アルキル
(C≦12)
、または置換シクロアルキル
(C≦12)
より選択され;かつ
Y
4
'は、金属キレート基であり;
Lは、共有結合であるか;またはアルカンジイル
(C≦12)
、アレーンジイル
(C≦12)
、-アルカンジイル
(C≦12)
-アレーンジイル
(C≦12)
-NC(S)-、-アルカンジイル
(C≦12)
-アレーンジイル
(C≦12)
-C(O)-、もしくはこれらの基のいずれかの置換型であり;
zは、1~6の整数であり;かつ
R
6
は、水素、ハロ、ヒドロキシ、アルキル
(C≦12)
、または置換アルキル
(C≦12)
であり、
R
11
、R
3
、R
4
、およびR
5
は、ポリマー内において任意の順序で現れ得る、
ポリマー。
[本発明1002]
前記式中、
R
1
が、水素、アルキル
(C≦12)
、置換アルキル
(C≦12)
、または
であり;
nが、10~500の整数であり;
R
2
およびR
2
'が、各々独立して、水素、アルキル
(C≦12)
、または置換アルキル
(C≦12)
より選択され;
R
3
およびR
11
が、各々独立して、式:
の基であり、
式中、
X
1
、X
2
、およびX
3
は、各々独立して、水素、アルキル
(C≦12)
、または置換アルキル
(C≦12)
より選択され;かつ
X
4
およびX
5
は、各々独立して、アルキル
(C≦12)
、アリール
(C≦12)
、ヘテロアリール
(C≦12)
、もしくはこれらの基のいずれかの置換型より選択されるか、またはX
4
およびX
5
は一緒になり、かつアルカンジイル
(C≦8)
、アルコキシジイル
(C≦8)
、アルキルアミノジイル
(C≦8)
、もしくはこれらの基のいずれかの置換型であり;
xが、1~100の整数であり;
wが、0~100の整数であり;
R
4
が、式:
の基であり、
式中、
Y
1
、Y
2
、およびY
3
は、各々独立して、水素、アルキル
(C≦12)
、または置換アルキル
(C≦12)
より選択され;かつ
Y
4
は、色素または蛍光クエンチャーであり;
yが、1~6の整数であり;
R
5
が、式:
の基であり、
式中、
Y
1
'、Y
2
'、およびY
3
'は、各々独立して、水素、アルキル
(C≦12)
、置換アルキル
(C≦12)
より選択され;かつ
Y
4
'は金属キレート基であり;
Lは、共有結合であるか;またはアルカンジイル
(C≦12)
、アレーンジイル
(C≦12)
、-アルカンジイル
(C≦12)
-アレーンジイル
(C≦12)
-NC(S)-、-アルカンジイル
(C≦12)
-アレーンジイル
(C≦12)
-C(O)-、もしくはこれらの基のいずれかの置換型であり;
zが、1~6の整数であり;かつ
R
6
が、水素、ハロ、アルキル
(C≦12)
、または置換アルキル
(C≦12)
であり、
R
11
、R
3
、R
4
、およびR
5
が、ポリマー内において任意の順序で現れ得る、
前記式
によってさらに定義される、本発明1001のポリマー。
[本発明1003]
前記式中、
R
1
が、水素、アルキル
(C≦8)
、置換アルキル
(C≦8)
、または
であり;
nが10~200の整数であり;
R
2
およびR
2
'が、各々独立して、水素、アルキル
(C≦8)
、または置換アルキル
(C≦8)
より選択され;
R
3
およびR
11
が、各々独立して、式:
の基であり、
式中、
X
1
、X
2
、およびX
3
は、各々独立して、水素、アルキル
(C≦8)
、または置換アルキル
(C≦8)
より選択され;かつ
X
4
およびX
5
は、各々独立して、アルキル
(C≦12)
、アリール
(C≦12)
、ヘテロアリール
(C≦12)
、もしくはこれらの基のいずれかの置換型より選択されるか、またはX
4
およびX
5
は一緒になり、かつアルカンジイル
(C≦8)
もしくは置換アルカンジイル
(C≦8)
であり;
xが、1~100の整数であり;
wが、0~100の整数であり;
R
4
が、式:
の基であり、
式中、
Y
1
、Y
2
、およびY
3
は、各々独立して、水素、アルキル
(C≦8)
、または置換アルキル
(C≦8)
より選択され;かつ
Y
4
は、色素または蛍光クエンチャーであり;
yが、1~6の整数であり;
R
5
が、式:
の基であり、
式中、
Y
1
'、Y
2
'、およびY
3
'は、各々独立して、水素、アルキル
(C≦8)
、置換アルキル
(C≦8)
より選択され;かつ
Y
4
'は金属キレート基であり;
Lは、共有結合であるか;またはアルカンジイル
(C≦12)
、アレーンジイル
(C≦12)
、-アルカンジイル
(C≦12)
-アレーンジイル
(C≦12)
-NC(S)-、-アルカンジイル
(C≦12)
-アレーンジイル
(C≦12)
-C(O)-、もしくはこれらの基のいずれかの置換型であり;
zが、1~6の整数であり;かつ
R
6
が、水素、ハロ、アルキル
(C≦6)
、または置換アルキル
(C≦6)
であり、
R
11
、R
3
、R
4
、およびR
5
が、ポリマー内において任意の順序で現れ得る、
前記式
によってさらに定義される、本発明1001または本発明1002のポリマー。
[本発明1004]
R
1
が水素である、本発明1001~1003のいずれかのポリマー。
[本発明1005]
R
1
がアルキル
(C≦6)
である、本発明1001~1003のいずれかのポリマー。
[本発明1006]
R
1
がメチルである、本発明1005のポリマー。
[本発明1007]
R
1
が、
である、本発明1001~1003のいずれかのポリマー。
[本発明1008]
R
2
がアルキル
(C≦6)
である、本発明1001~1007のいずれかのポリマー。
[本発明1009]
R
2
がメチルである、本発明1008のポリマー。
[本発明1010]
R
2
'がアルキル
(C≦6)
である、本発明1001~1009のいずれかのポリマー。
[本発明1011]
R
2
'がメチルである、本発明1010のポリマー。
[本発明1012]
R
3
またはR
11
が、式:
によってさらに定義され、
式中、
X
1
は、水素、アルキル
(C≦8)
、または置換アルキル
(C≦8)
より選択され;かつ
X
4
およびX
5
は、各々独立して、アルキル
(C≦12)
、アリール
(C≦12)
、ヘテロアリール
(C≦12)
、もしくはこれらの基のいずれかの置換型より選択されるか、またはX
4
およびX
5
は一緒になり、かつアルカンジイル
(C≦8)
もしくは置換アルカンジイル
(C≦8)
である、
本発明1001~1011のいずれかのポリマー。
[本発明1013]
X
1
がアルキル
(C≦6)
である、本発明1012のポリマー。
[本発明1014]
X
1
がメチルである、本発明1013のポリマー。
[本発明1015]
X
4
がアルキル
(C≦8)
である、本発明1012~1014のいずれかのポリマー。
[本発明1016]
X
4
が、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはペンチルである、本発明1015のポリマー。
[本発明1017]
X
4
がエチルである、本発明1016のポリマー。
[本発明1018]
X
4
がプロピルである、本発明1016のポリマー。
[本発明1019]
X
5
がアルキル
(C≦8)
である、本発明1012~1018のいずれかのポリマー。
[本発明1020]
X
5
が、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはペンチルである、本発明1019のポリマー。
[本発明1021]
X
5
がプロピルである、本発明1020のポリマー。
[本発明1022]
R
3
とR
11
が同じ基ではない、本発明1021のポリマー。
[本発明1023]
R
4
が、式:
によってさらに定義され、
式中、
Y
1
は、水素、アルキル
(C≦8)
、または置換アルキル
(C≦8)
より選択され;かつ
Y
4
は、色素または蛍光クエンチャーである、
本発明1001~1022のいずれかのポリマー。
[本発明1024]
Y
1
がアルキル
(C≦6)
である、本発明1023のポリマー。
[本発明1025]
Y
1
がメチルである、本発明1024のポリマー。
[本発明1026]
Y
4
が色素である、本発明1023~1025のいずれかのポリマー。
[本発明1027]
Y
4
が蛍光色素である、本発明1026のポリマー。
[本発明1028]
前記蛍光色素が、クマリン、フルオレセイン、ローダミン、キサンテン、BODIPY(登録商標)、Alexa Fluor(登録商標)、またはシアニン色素である、本発明1027のポリマー。
[本発明1029]
前記蛍光色素が、インドシアニングリーン、AMCA-x、マリーナブルー(Marina Blue)、PyMPO、ローダミングリーン(Rhodamine Green)(商標)、テトラメチルローダミン、5-カルボキシ-X-ローダミン、Bodipy493、Bodipy TMR-x、Bodipy630、シアニン3.5、シアニン5、シアニン5.5、またはシアニン7.5である、本発明1028のポリマー。
[本発明1030]
前記蛍光色素がインドシアニングリーンである、本発明1029のポリマー。
[本発明1031]
Y
4
が蛍光クエンチャーである、本発明1023~1025のいずれかのポリマー。
[本発明1032]
前記蛍光クエンチャーが、QSY7、QSY21、QSY35、BHQ1、BHQ2、BHQ3、TQ1、TQ2、TQ3、TQ4、TQ5、TQ6、またはTQ7である、本発明1031のポリマー。
[本発明1033]
各R
11
が、ブロックを形成するように連続的に組み込まれている、本発明1001~1032のいずれかのポリマー。
[本発明1034]
各R
3
が、ブロックを形成するように連続的に組み込まれている、本発明1001~1033のいずれかのポリマー。
[本発明1035]
各R
11
がブロックとして存在し、かつ各R
3
がブロックとして存在する、本発明1001~1034のいずれかのポリマー。
[本発明1036]
各R
11
および各R
3
が、ポリマー内にランダムに組み込まれている、本発明1001~1032のいずれかのポリマー。
[本発明1037]
R
5
が、式:
によってさらに定義され、
式中、
Y
1
'は、水素、アルキル
(C≦8)
、置換アルキル
(C≦8)
より選択され;
Y
4
'は金属キレート基であり;かつ
Lは、共有結合であるか;またはアルカンジイル
(C≦12)
、アレーンジイル
(C≦12)
、-アルカンジイル
(C≦12)
-アレーンジイル
(C≦12)
-NC(S)-、-アルカンジイル
(C≦12)
-アレーンジイル
(C≦12)
-C(O)-、もしくはこれらの基のいずれかの置換型である、
本発明1001~1036のいずれかのポリマー。
[本発明1038]
Y
1
'がアルキル
(C≦6)
である、本発明1037のポリマー。
[本発明1039]
Y
1
'がメチルである、本発明1038のポリマー。
[本発明1040]
Lが共有結合である、本発明1037~1039のいずれかのポリマー。
[本発明1041]
Lが、アルカンジイル
(C≦12)
、置換アルカンジイル
(C≦12)
、アレーンジイル
(C≦12)
、または置換アレーンジイル
(C≦12)
である、本発明1037~1039のいずれかのポリマー。
[本発明1042]
Lが、-アルカンジイル
(C≦12)
-アレーンジイル
(C≦12)
-NC(S)-である、本発明1037~1039のいずれかのポリマー。
[本発明1043]
Lが、-アルカンジイル
(C≦12)
-ベンゼンジイル-NC(S)-である、本発明1042のポリマー。
[本発明1044]
Lが、-CH
2
-1,4-ベンゼンジイル-NC(S)-である、本発明1043のポリマー。
[本発明1045]
Y
4
'が、DOTA、TETA、Diamsar、NOTA、NETA、TACN-TM、DTPA、TRAP、NOPO、AAZTA、DATA、HBED、SHBED、BPCA、CP256、DFO、PCTA、HEHA、PEPA、またはその誘導体である、本発明1037~1044のいずれかのポリマー。
[本発明1046]
Y
4
'が金属キレート基であり、該金属キレート基が窒素含有大員環である、本発明1037~1044のいずれかのポリマー。
[本発明1047]
前記窒素含有大員環が、式:
の化合物であり、
式中、
R
7
、R
8
、R
9
、R
10
、R
7
'、R
8
'、およびR
9
'は、各々独立して、水素、アルキル
(C≦12)
、アシル
(C≦12)
、-アルカンジイル
(C≦12)
-アシル
(C≦12)
、もしくはこれらの基のいずれかの置換型より選択される;または
R
7
は、R
8
、R
9
、もしくはR
10
のうちの1つと一緒になり、かつアルカンジイル
(C≦6)
である;または
R
8
は、R
7
、R
9
、もしくはR
10
のうちの1つと一緒になり、かつアルカンジイル
(C≦6)
である;または
R
9
は、R
7
、R
8
、もしくはR
10
のうちの1つと一緒になり、かつアルカンジイル
(C≦6)
である;または
R
10
は、R
7
、R
8
、もしくはR
9
のうちの1つと一緒になり、かつアルカンジイル
(C≦6)
である;または
R
7
'は、R
8
'もしくはR
9
'のうちの1つと一緒になり、かつアルカンジイル
(C≦6)
である;または
R
8
'は、R
7
'もしくはR
9
'のうちの1つと一緒になり、かつアルカンジイル
(C≦6)
である;または
R
9
'は、R
7
'もしくはR
8
'のうちの1つと一緒になり、かつアルカンジイル
(C≦6)
であり;かつ
a、b、c、d、a'、b'、およびc'は、各々独立して、1、2、3、または4より選択される、
本発明1046のポリマー。
[本発明1048]
a、b、c、d、a'、b'、およびc'が、各々独立して、2または3より選択される、本発明1047のポリマー。
[本発明1049]
前記金属キレート基が、
である、本発明1045のポリマー。
[本発明1050]
前記金属キレート基が、金属錯体を形成するように金属イオンと結合している、本発明1037~1049のいずれかのポリマー。
[本発明1051]
前記金属イオンが、放射性核種または放射性金属である、本発明1050のポリマー。
[本発明1052]
前記金属イオンが、PETまたはSPECT画像化に適している、本発明1050のポリマー。
[本発明1053]
前記金属イオンが遷移金属イオンである、本発明1050のポリマー。
[本発明1054]
前記金属イオンが、銅イオン、ガリウムイオン、スカンジウムイオン、インジウムイオン、ルテチウムイオン、イッテルビウムイオン、ジルコニウムイオン、ビスマスイオン、鉛イオン、アクチニウムイオン、レニウムイオン、またはテクネチウムイオンである、本発明1050のポリマー。
[本発明1055]
前記金属イオンが、
99m
Tc、
60
Cu、
61
Cu、
62
Cu、
64
Cu、
86
Y、
90
Y、
89
Zr、
44
Sc、
47
Sc、
66
Ga、
67
Ga、
68
Ga、
111
In、
177
Lu、
225
Ac、
212
Pb、
212
Bi、
213
Bi、
111
In、
114m
In、
114
In、
186
Re、または
188
Reより選択される同位体である、本発明1054のポリマー。
[本発明1056]
前記遷移金属イオンが銅(II)イオンである、本発明1053のポリマー。
[本発明1057]
銅(II)イオンが
64
Cu
2+
イオンである、本発明1056のポリマー。
[本発明1058]
前記金属錯体が、
である、本発明1057のポリマー。
[本発明1059]
nが75~150である、本発明1001~1058のいずれかのポリマー。
[本発明1060]
nが100~125である、本発明1059のポリマー。
[本発明1061]
xが1~99である、本発明1001~1060のいずれかのポリマー。
[本発明1062]
xが、1~5、5~10、10~15、15~20、20~25、25~30、30~35、35~40、40~45、45~50、50~55、55~60、60~65、65~70、70~75、75~80、80~85、85~90、90~95、95~100、100~105、105~110、110~115、115~120、120~125、125~130、130~135、135~140、140~145、145~150、150~155、155~160、160~165、165~170、170~175、175~180、180~185、185~190、190~195、195~199、またはその中で導き出せる任意の範囲である、本発明1061のポリマー。
[本発明1063]
yが1、2、3、4、または5である、本発明1001~1062のいずれかのポリマー。
[本発明1064]
yが1または2である、本発明1063のポリマー。
[本発明1065]
yが1である、本発明1064のポリマー。
[本発明1066]
zが1、2、3、4、または5である、本発明1001~1065のいずれかのポリマー。
[本発明1067]
zが1または2である、本発明1066のポリマー。
[本発明1068]
zが2である、本発明1067のポリマー。
[本発明1069]
各R
11
、R
3
、R
4
、およびR
5
が、ポリマー内において任意の順序で現れ得る、本発明1001~1068のいずれかのポリマー。
[本発明1070]
各R
11
、R
3
、R
4
、およびR
5
が、式Iに記載される順序で現れる、本発明1001~1068のいずれかのポリマー。
[本発明1071]
wが0である、本発明1001~1070のいずれかのポリマー。
[本発明1072]
標的指向部分をさらに含む、本発明1001~1071のいずれかのポリマー。
[本発明1073]
前記標的指向部分が、小分子、抗体、抗体断片、またはシグナル伝達ペプチドである、本発明1072のポリマー。
[本発明1074]
R
3
およびR
11
が、
より選択される、本発明1001~1073のいずれかのポリマー。
[本発明1075]
R
3
が、
である、本発明1001~1075のいずれかのポリマー。
[本発明1076]
6.9のpH転移を有する、本発明1001~1075のいずれかのポリマー。
[本発明1077]
UPS
6.9
である、本発明1001~1074のいずれかのポリマー。
[本発明1078]
本発明1001~1076のいずれかのポリマーの、ミセル。
[本発明1079]
第1ポリマーのミセルを含むpH応答性システムであって、該第1ポリマーが、本発明1001~1077のいずれかの式を有し、Y
4
が色素であり、かつ該ミセルが、pH転移点および発光スペクトルを有する、pH応答性システム。
[本発明1080]
前記ミセルが、本発明1001~1077のいずれかの式を有する第2ポリマーをさらに含み、Y
4
が蛍光クエンチャーである、本発明1079のpH応答性システム。
[本発明1081]
第2ポリマーが、Y
4
が蛍光クエンチャーである以外は第1ポリマーと同じ式を有する、本発明1080のpH応答性システム。
[本発明1082]
前記ミセルが、本発明1001~1077のいずれかの式を有する第2ポリマーを含む組成物を含み、第2ポリマーが、第1ポリマーと異なる式を有する、本発明1079のpH応答性システム。
[本発明1083]
第2ポリマー上のY
4
が、第1ポリマー上のY
4
と異なる色素である、本発明1082のpH応答性システム。
[本発明1084]
前記ミセルが、1~6種の追加のポリマーをさらに含み、但し、各ポリマーが独特であり、各ポリマーは、第1ポリマーおよび第2ポリマーと異なる、本発明1082のpH応答性システム。
[本発明1085]
前記pH転移点が3~9である、本発明1079~1084のいずれかのpH応答性システム。
[本発明1086]
前記pH転移点が4~8である、本発明1085のpH応答性システム。
[本発明1087]
前記pH転移点が6.9である、本発明1085のpH応答性システム。
[本発明1088]
前記発光スペクトルが400~850 nmである、本発明1079~1087のいずれかのpH応答性システム。
[本発明1089]
1 pH単位未満のpH応答(ΔpH
10~90%
)を有する、本発明1079~1088のいずれかのpH応答性システム。
[本発明1090]
前記pH応答が0.25 pH単位未満である、本発明1089のpH応答性システム。
[本発明1091]
前記pH応答が0.15 pH単位未満である、本発明1090のpH応答性システム。
[本発明1092]
蛍光シグナルが、25より大きい蛍光活性化比率を有する、本発明1079~1091のいずれかのpH応答性システム。
[本発明1093]
前記蛍光活性化比率が50より大きい、本発明1092のpH応答性システム。
[本発明1094]
細胞内環境または細胞外環境のpHを画像化する方法であって、
(a)本発明1079~1093のいずれかのpH応答性システムを、該環境と接触させる工程;および
(b)該環境からの1つまたは複数のシグナルを検出する工程であって、該シグナルの該検出は、前記ミセルがそのpH転移点に達しかつ解離したことを示す、工程
を含む、方法。
[本発明1095]
1つまたは複数のシグナルのうちの少なくとも1つが陽電子放出である、本発明1094の方法。
[本発明1096]
1つまたは複数のシグナルのうちの少なくとも1つが光シグナルである、本発明1094の方法。
[本発明1097]
少なくとも1つの光シグナルが蛍光シグナルである、本発明1094または本発明1095の方法。
[本発明1098]
細胞内環境を画像化する場合に、細胞が、前記pH応答性システムと、前記pH応答性システムの取り込みを引き起こすのに適した条件下で接触させられる、本発明1094~1097のいずれかの方法。
[本発明1099]
細胞内環境が細胞の一部分である、本発明1094~1098のいずれかの方法。
[本発明1100]
細胞の一部分がリソソームまたはエンドソームである、本発明1099の方法。
[本発明1101]
細胞外環境が、腫瘍または血管細胞のものである、本発明1094または本発明1098の方法。
[本発明1102]
腫瘍が脳、頭部、頸部、または乳房に位置している、本発明1101の方法。
[本発明1103]
細胞外環境が血管内または血管外である、本発明1094~1097のいずれかの方法。
[本発明1104]
腫瘍環境のpHの画像化が、1つまたは複数の癌関与リンパ節またはセンチネルリンパ節の画像化を含む、本発明1103の方法。
[本発明1105]
1つまたは複数の癌関与リンパ節またはセンチネルリンパ節の画像化が、腫瘍の手術切除および腫瘍転移の病期分類を可能にする、本発明1104の方法。
[本発明1106]
腫瘍環境のpHの画像化が、腫瘍のサイズおよび境界の決定を可能にする、本発明1101~1103のいずれかの方法。
[本発明1107]
腫瘍環境のpHの画像化が、手術中のより正確な腫瘍の除去を可能にする、本発明1106の方法。
[本発明1108]
(a)細胞を関心対象の化合物と接触させる工程;
(b)環境における1つまたは複数のシグナルを検出する工程;および
(c)細胞を関心対象の化合物と接触させた後に該1つまたは複数のシグナルの変化が生じたか否かを判定する工程
をさらに含む、本発明1094の方法。
[本発明1109]
1つまたは複数のシグナルのうちの少なくとも1つが光シグナルである、本発明1108の方法。
[本発明1110]
1つまたは複数のシグナルのうちの少なくとも1つが陽電子放出である、本発明1108の方法。
[本発明1111]
前記関心対象の化合物が、薬物、抗体、ペプチド、タンパク質、核酸、または小分子である、本発明1108の方法。
[本発明1112]
(a)関心対象の化合物を、本発明1001~1077のポリマーのpH応答性システムによって被包する工程;および
(b)標的細胞を、該pH応答性システムと、該標的細胞のpHが該pH応答性システムの解離および該化合物の放出をトリガーする条件下で接触させる工程であって、それによって該関心対象の化合物を送達する、工程
を含む、関心対象の化合物を標的細胞へ送達する方法。
[本発明1113]
前記関心対象の化合物が、細胞の中へ送達される、本発明1112の方法。
[本発明1114]
前記関心対象の化合物が、細胞へ送達される、本発明1112の方法。
[本発明1115]
前記関心対象の化合物が、薬物、抗体、ペプチド、タンパク質、核酸、または小分子である、本発明1112~1114のいずれかの方法。
[本発明1116]
前記pH応答性システムを患者に投与する工程を含む、本発明1112~1115のいずれかの方法。
[本発明1117]
(a)本発明1079~1093のいずれかのpH応答性システムの有効量を患者に投与する工程;
(b)該患者について1つまたは複数のシグナルを検出する工程であって、該1つまたは複数のシグナルが腫瘍の存在を示す、工程;および
(c)腫瘍を手術により切除する工程
を含む、患者における腫瘍を切除する方法。
[本発明1118]
1つまたは複数のシグナルのうちの少なくとも1つが光シグナルである、本発明1117の方法。
[本発明1119]
1つまたは複数のシグナルのうちの少なくとも1つが陽電子放出である、本発明1117の方法。
[本発明1120]
1つまたは複数のシグナルが、腫瘍の境界を示す、本発明1117の方法。
[本発明1121]
腫瘍が90%切除される、本発明1117または本発明1120の方法。
[本発明1122]
腫瘍が95%切除される、本発明1121の方法。
[本発明1123]
腫瘍が99%切除される、本発明1122の方法。
[本発明1124]
腫瘍が固形腫瘍である、本発明1117~1123のいずれかの方法。
[本発明1125]
固形腫瘍が癌に由来する、本発明1124の方法。
[本発明1126]
癌が、乳癌、頭頸部癌、または脳の癌である、本発明1125の方法。
[本発明1127]
癌が頭頸部扁平上皮癌である、本発明1126の方法。
[本発明1128]
前記pH応答性システムが、式:
のポリマーから構成され、
式中、xは30~150の整数であり、yは1または2であり、zは1または2であり;x、y、およびzはポリマー全体にわたってランダムに分布し;ICGは蛍光色素インドシアニングリーンである、
本発明1117~1127のいずれかの方法。
[本発明1129]
患者におけるエンドソーム/リソソームpH拘束を起こしやすい癌を処置する方法であって、その必要がある患者に、本発明1079~1093のいずれかのpH応答性システムを投与する工程を含む、方法。
[本発明1130]
癌が肺癌である、本発明1129の方法。
[本発明1131]
癌が非小細胞肺癌である、本発明1130の方法。
[本発明1132]
アポトーシスを誘導するのに十分である、本発明1129~1131のいずれかの方法。
[本発明1133]
(a)本発明1079~1093の1つまたは複数のミセルを含むpH応答性システムを、細胞または細胞環境と接触させる工程;
(b)該細胞をpH調節経路の阻害剤と接触させる工程;
(c)該細胞または該細胞環境からのシグナルを検出する工程であって、該シグナルの該検出が、該ミセルの1つがそのpH転移点に達しかつ解離したことを示す、工程;および
(d)該シグナルと腫瘍アシドーシス経路の改変とを相互に関連付ける工程
を含む、腫瘍アシドーシス経路を同定する方法。
[本発明1134]
シグナルが光シグナルである、本発明1133の方法。
[本発明1135]
シグナルが陽電子放出である、本発明1133の方法。
[本発明1136]
pH調節経路の阻害剤が、モノカルボン酸輸送体の阻害剤、炭酸脱水酵素の阻害剤、アニオン交換輸送体の阻害剤、Na
+
-重炭酸交換輸送体の阻害剤、Na
+
/H
+
交換輸送体の阻害剤、またはV-ATPアーゼの阻害剤である、本発明1133の方法。
[本発明1137]
前記1つまたは複数のミセルが、ポリマー骨格へ結合された2つ以上のフルオロフォアを有するポリマーを含む、本発明1133または本発明1136の方法。
[本発明1138]
異なるフルオロフォアまたは異なるR
3
基を有する2種以上のポリマーを含む1つのミセルを含む、本発明1133~1137のいずれかの方法。
[本発明1139]
前記ミセルが、異なるフルオロフォアおよび異なるR
3
基を有する2種以上のポリマーを含む、本発明1138の方法。
[本発明1140]
(a)本発明1079~1093の1つまたは複数のミセルを含むpH応答性システムを、腫瘍と接触させる工程;
(b)1つまたは複数のPETまたはSPECT画像スキャンを収集する工程;および
(c)1つまたは複数の光画像スキャンを収集する工程であって、光シグナルの検出が、該ミセルの1つがそのpH転移点に達しかつ解離したことを示す、工程
を含む、腫瘍の存在を決定するために患者を画像化する方法であって、
該1つまたは複数のPETまたはSPECT画像スキャンおよび該1つまたは複数の光画像スキャンが、腫瘍の同定をもたらす、
方法。
[本発明1141]
光画像スキャンが、PETまたはSPECT画像スキャンの前に収集される、本発明1140の方法。
[本発明1142]
光画像スキャンが、PETまたはSPECT画像スキャンの後に収集される、本発明1140の方法。
[本発明1143]
光画像スキャンが、PETまたはSPECT画像スキャンと同時に収集される、本発明1140の方法。
[本発明1144]
画像スキャンがPET画像スキャンである、本発明1140~1143のいずれかの方法。
[本発明1145]
画像スキャンがSPECT画像スキャンである、本発明1140~1143のいずれかの方法。
[本発明1146]
前記金属キレート基が
64
Cuイオンと結合している、本発明1140~1145のいずれかの方法。
[本発明1147]
前記金属キレート基が窒素含有大員環である、本発明1146の方法。
[本発明1148]
前記窒素含有大員環が、
であり、
式中、R
7
、R
8
、R
9
、R
10
、R
7
'、R
8
'、R
9
'、a、b、c、d、a'、b'、およびc'は、上記に定義される通りである、
本発明1147の方法。
[本発明1149]
前記窒素含有大員環が、
である、本発明1148の方法。
[本発明1150]
(a)本発明1079~1093の1つまたは複数のミセルを含むpH応答性システムを、腫瘍を有する患者に投与する工程;
(b)1つまたは複数のPETまたはSPECT画像スキャンを収集する工程;
(c)1つまたは複数の光画像スキャンを収集する工程であって、光シグナルの検出が、該ミセルの1つがそのpH転移点に達しかつ解離したことを示す、工程;
(d)癌処置療法を投与する工程;
(e)該癌処置療法の有効性を判定するために工程(a)~(c)を繰り返す工程
を含む、癌処置療法の有効性を判定する方法。
[本発明1151]
癌処置療法が、化学療法または放射線療法である、本発明1150の方法。
[本発明1152]
化学療法が、腫瘍アシドーシス経路を調節する化学療法剤の投与を含む、本発明1151の方法。
[本発明1153]
その必要がある患者における疾患または障害を処置または予防する方法であって、本発明1001~1093のいずれかのポリマー、ミセル、またはpH応答性システムを該患者に投与する工程を含む、方法。
[本発明1154]
前記ポリマー、ミセル、またはpH応答性システムが、放射性核種を含む、本発明1153の方法。
[本発明1155]
放射性核種が
90
Yまたは
177
Luである、本発明1154の方法。
[本発明1156]
放射性核種が
177
Luである、本発明1155の方法。
[本発明1157]
放射性核種が
90
Yである、本発明1155の方法。
[本発明1158]
前記ポリマー、ミセル、またはpH応答性システムが、第2の治療剤をさらに含む、本発明1153~1157のいずれかの方法。
本開示の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、詳細な説明および具体例は、本開示の具体的な態様を示しているが、例示のためのみに与えられていると理解されるべきであり、何故ならば、本開示の精神および範囲内における様々な変更および改変がこの詳細な説明から当業者に明らかになるためである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
本特許または出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含んでいる。カラー図面を有する本特許または出願公報の写しは、請求および必要な費用の支払いによって特許庁より提供されるであろう。
【0051】
以下の図面は本明細書の一部を形成し、本開示のある局面をさらに実証するために含まれている。本開示は、本明細書に示される具体的な態様の詳細な説明と組み合わせてこれらの図面の1つまたは複数を参照することによってよりよく理解され得る。
【0052】
【
図1】
図1A~1Cは、UPS
6.9ナノプローブの合成および特徴付けを示す。
図1Aは、NOTA-およびICG-コンジュゲートPEG-b-PEPAブロックコポリマーの図式的合成を示す。
図1Bは、遠心分離精製前および後のUPS
6.9ナノプローブのラジオ-TLCクロマトグラムを示す。標識効率は、現像溶離剤として食塩水を用いるインスタント薄層クロマトグラフィー(ITLC)によって測定し、95%を超えることが示された。
図1Cは、pH 7.4および6.5 (それぞれ、pH転移閾値より上および下)でのUPS
6.9ナノプローブの動的光散乱解析を示す。
【
図2】
図2Aおよび2Bは、
64Cu-PEG-PLAナノプローブの合成および特徴付けを示す。
図2Aは、NOTA-コンジュゲートPEG-b-PLAブロックポリマーの図式的合成を示す。
図2Bは、異なるpHにおけるサイズおよびサイズ分布の測定についてのPEG-b-PLAナノプローブの動的光散乱解析を示す。
【
図3】
図3A~3Dは、UPS
6.9ナノプローブのオール・オア・ナッシングプロトン分布を示す。
図3Aは、UPS
6.9のpH滴定曲線が、食塩溶液中において可逆的かつシャープなpH転移を示したことを示す。
図3Bは、pH滴定座標に沿ったUPS
6.9の可逆的な流体力学的サイズ変化を示す。
図3Cは、UPSコポリマーによるプロトン結合協同性の定量化が38のヒル係数をもたらすことを示す。
図3Dは、50%のプロトン化度でのUPS
6.9のユニマーおよびミセルの荷電状態の定量化を示す。プロトンは多岐に分布しており、ここで、ユニマーは高荷電であり(約90%)、ミセルはほぼ中性であった。
【
図4】
図4A~4Eは、血清タンパク質結合によるUPSナノプローブの不可逆的な捕捉、およびpH活性化後の癌細胞による取り込みを示す。
図4Aは、癌細胞のリソソーム内部でのUPSトレーサーの隔離をもたらす、UPSトレーサーの酸活性化タンパク質結合および膜付着の図式的説明を示す。
図4Bは、血清タンパク質の非存在下での可逆的な蛍光変化と比較しての、血清タンパク質の存在下での(7.4へのpH逆転後でさえの)ユニマー状態のUPSトレーサーの不可逆的な拘束を示す。
図4Cは、経時的にpH 6.5および7.4で
64Cu-UPS
6.9および
64Cu-PEG-PLAナノ粒子(両方とも25μg/mLで)と共にインキュベートされたHN5細胞のオートラジオグラフィー画像を示す。
図4Dは、UPS
6.9の細胞による取り込みが、pH 7.4よりもpH 6.5で、同様に
64Cu-PEG-PLAトレーサーのどのpHよりも、有意により高く見られたことを示す。データは平均値 ± s.d (n = 3)で示される;他の群と比較して**P<0.01。
図4Eは、共焦点顕微鏡法が、HN5細胞とのインキュベーション後、UPS
6.9が5分で細胞膜へほぼ結合され、続いて60分でリソソームに共局在化したことを示したことを示す。スケールバー = 50μm。
【
図5】経時的にpH 6.5および7.4で
64Cu-UPS
6.9および
64Cu-PEG-PLAナノ粒子(両方とも25μg/mLで)と共にインキュベートされたHN5細胞のオートラジオグラフィー画像を示す。
【
図6】HN5腫瘍中の
64Cu-UPS
6.9蓄積の時空間的特徴付けを示す。
64Cu-UPS
6.9ナノセンサー(0.1 mCi)を、尾静脈を通して注射した。30分、3時間、および24時間で、HN5腫瘍を取り出し、
64Cu-UPS
6.9の組織分布をオートラジオグラフィーによって解析した。H&E組織学スライドもまた腫瘍境界決定のために提供した。スケールバーは2.5 mmである。
【
図7】
図7A~7Cは、「捕捉および組み込み」戦略が、巨視的(動物)および微視的(細胞以下)レベルの両方で脳腫瘍のバイナリー検出を可能にしたことを示す。
図7Aは、
64Cu-UPS
6.9によるC57BL/6マウス中の同所性73Cマウス脳腫瘍のPET画像化を示す。
図7Bは、脳腫瘍スライドのH&E、GFP蛍光、オートラジオグラフィー(AR)およびICG蛍光画像化の相関は、UPSナノプローブによる癌特異的画像化を支持することを示す。スケールバーはH&E画像において2.5 mmであり、
図7B中の全ての画像に適用される。
図7Cは、脳腫瘍中のUPSトレーサーの蛍光顕微鏡解析を示す。GPFシグナルとのICGの共局在化は、血液腫瘍関門の有効な横断およびGFP標識73C脳癌細胞中のUPSの取り込みを示す。スケールバー = 50μm。
【
図8】
64Cu-UPS
6.9によるGFPトランスフェクト73C膠芽腫同所性腫瘍モデルのPET画像化、続いて、組織学と相互に関連付けられた、脳スライドの蛍光画像化を示す。スケールバーは2.5 mmである。
【
図9】
図9A~9Cは、PETによる腫瘍アシドーシスシグナルの非侵襲性デジタル化を示す。
図9Aは、i.v.投与された
64Cu-UPSトレーサーによる様々な小さな腫瘍小結節(10~20 mm
3)の癌特異的検出を示す。同所性HN5およびFdDu頭頸部癌ならびに4T1トリプルネガティブ乳癌が明確に可視化された。肝臓および脾臓は、UPS取り込みについての他の主要臓器である。FDG-PET画像は、頭頸部領域(BR、脳;BF、褐色脂肪)おいて高い偽性率を示した。
図9Bは、異なる腫瘍モデルにおける
64Cu-UPS
6.9についてのCNR比のPET定量化を示す。
図9Cは、それぞれ、
64Cu-UPS
6.9、FDGおよび
64Cu-PEG-PLAが投与されたHN5担持マウスについてのCNR比のPET定量化を示す。データは、個々のデータ点プラス平均値 ± s.d (n = 3)として示される;他の群と比較して**P<0.01。
【
図10】
図10A~10Cは、
64Cu-UPS
6.9ナノプローブの投与から24時間後の大きなPETコントラストを伴うHN5同所性腫瘍の検出を示す。
図10Aは、HN5同所性腫瘍モデルのPET/CT画像化を示す。
図10Bは、HN5腫瘍スライドのH&Eおよびオートラジオグラフィー画像化の相関が、
64Cu-UPS
6.9ナノプローブによる癌特異性を示したことを示す。
図10Cは、静脈内注射から24時間後の
64Cu-UPS
6.9の異なる臓器(n = 3)中のPETシグナルによって定量化された体内分布プロファイルを示す。スケールバーは、H&Eおよび拡大画像において、それぞれ、2.5 mmおよび500μmである。
【
図11】
図11A~11Cは、
64Cu-UPS
6.9ナノプローブの投与から24時間後の大きなPETコントラストを伴うFaDu同所性腫瘍の検出を示す。
図11Aは、FaDu同所性腫瘍モデルのPET/CT画像化を示す。
図11Bは、FaDu腫瘍スライドのH&Eおよびオートラジオグラフィー画像化の相関が、
64Cu-UPS
6.9ナノプローブによる癌特異性を示したことを示す。
図11Cは、静脈内注射から24時間後の
64Cu-UPS
6.9の異なる臓器(n = 3)中のPETシグナルによって定量化された体内分布プロファイルを示す。スケールバーは、H&Eおよび拡大画像において、それぞれ、2.5 mmおよび500μmである。
【
図12】
図12A~12Cは、
64Cu-UPS
6.9ナノプローブの投与から24時間後の大きなPETコントラストを伴う4T1同所性腫瘍の検出を示す。
図12Aは、4T1同所性腫瘍モデルのPET/CT画像化を示す。
図12Bは、4T1腫瘍スライドのH&Eおよびオートラジオグラフィー画像化の相関が、
64Cu-UPS
6.9ナノプローブによる癌特異性を示したことを示す。
図12Cは、静脈内注射から24時間後の
64Cu-UPS
6.9の異なる臓器(n = 3)中のPETシグナルによって定量化された体内分布プロファイルを示す。スケールバーは、H&Eおよび拡大画像において、それぞれ、2.5 mmおよび250μmである。
【
図13】
図13Aおよび13Bは、HN5同所性腫瘍モデルのFDG-PET/CT画像化を示す。
図13Aは、4T1同所性腫瘍モデルのPET/CT画像化を示す。
図13Bは、静脈内注射から1時間後のFDGの異なる臓器(n = 3)中のPETシグナルによって定量化された体内分布プロファイルを示す。
【
図14】
図14A~14Cは、
64Cu-PEG-b-PLAナノプローブの投与から24時間後のより少ないPETコントラストを伴うHN5同所性腫瘍の検出を示す。
図14Aは、HN5同所性腫瘍モデルのPET/CT画像化を示す。
図14Bは、HN5腫瘍スライドのH&Eおよびオートラジオグラフィー画像化の相関が、
64Cu-PEG-b-PLAナノプローブによる小さな腫瘍コントラストを示したことを示す。
図14Cは、静脈内注射から24時間後の
64Cu-PEG-b-PLAナノプローブの異なる臓器(n = 3)中のPETシグナルによって定量化された体内分布プロファイルを示す。スケールバーは、H&E画像において2.5 mmである。
【
図15】pH閾値トレーサーによるバイナリー応答(0および1)の階段関数へと腫瘍アシドーシスシグナルの永続的な時空間的ゆらぎを変換するための捕捉および組み込みアルゴリズムについての概略図を示す。
【
図16】
64Cu-UPSおよびFDGによる小さな同所性HN5腫瘍(約20 mm
3)のPET/CT画像化を示す。画像はプローブの静脈内注射から24時間後に撮影した。黄色の矢印はHN5腫瘍の位置を示す。SUVスケールが両方の画像に適用される。
【
図17】
図17A~17Cは、微調整可能なpH転移を有する
64Cu-UPSプローブを示す。
図17Aは、PEG-b-(PR-ICG-NOTA)コポリマーの合成スキームを示す。
図17Bは、異なるPR組成物についてのPSプローブのpH応答を示す。
図17Cは、DPAのモルパーセンテージの関数としての転移pHが、所定のpH転移を有する
64Cu-UPSの合理的設計のための標準曲線を確立することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
例示的な態様の説明
いくつかの局面において、本開示は、特定の転移pHより上で分解するpH応答性ナノ粒子を形成することができるポリマーを提供する。いくつかの態様において、これらのポリマーは、0.2 pH単位未満の所望のpH転移点(ΔpH10~90%)の特定の調整を可能にするだけでなく、約pH4~約pH8のpH転移点の範囲についてのpHプローブを創り出す、異なるモノマーの混合物を含む。広範囲のpH転移点は、小胞輸送、腫瘍のpHeの画像化、特定の組織への薬物化合物の送達、腫瘍組織を切除する外科医の能力を向上させるための腫瘍の可視化の改善、またはエンドソーム/リソソームの成熟もしくは発達の研究が挙げられるが、これらに限定されない、広範囲な適用を可能にする。いくつかの局面において、本開示のポリマーは、金属キレート基および色素または蛍光クエンチャーを含む。いくつかの局面において、金属キレート基は、陽電子を放出する放射性核種のような、放射性核種をキレート化する。いくつかの局面において、本開示は、上述のようにpH応答性システムにおいてこれらのポリマーを使用する方法を提供する。本開示のポリマーおよび結果として生じるpH応答性システムの追加の使用方法は、参照により本明細書に組み入れられるWO 2013/152059およびWO 2015/188157に記載されている。いくつかの態様において、本発明の化合物は、それらが、本明細書に記載される適応症における使用のためであるかまたはその他のためであるかに関わらず、先行技術において公知の化合物と比べて、より効果的であり得る、より低毒性であり得る、より長時間作用性であり得る、より強力であり得る、より少ない副作用を生じさせ得る、より容易に吸収され得る、より代謝的に安定であり得る、より親油性であり得る、より親水性であり得る、かつ/またはより良い薬物動態プロファイル(例えば、より高い経口バイオアベイラビリティおよび/もしくはより低いクリアランス)を有し得る、かつ/または、他の有用な薬理学的、物理学的、もしくは化学的特性を有し得るという利点を有する。
【0054】
A.化学的定義
化学基の文脈において使用される場合、「水素」は-Hを意味し;「ヒドロキシ」は-OHを意味し;「カルボキシ」は-C(=O)OH(-COOHまたは-CO2Hとも記載)を意味し;「ハロ」は、独立して-F、-Cl、-Brまたは-Iを意味し;「アミノ」は-NH2を意味し;「ニトロ」は-NO2を意味し;「シアノ」は-CNを意味し;一価の文脈において「ホスフェート」は-OP(O)(OH)2またはその脱プロトン化形態を意味し;二価の文脈において「ホスフェート」は-OP(O)(OH)O-またはその脱プロトン化形態を意味し;「メルカプト」は-SHを意味し;「チオ」は=Sを意味し;「スルホニル」は-S(O)2-を意味し;「スルフィニル」は-S(O)-を意味する。
【0055】
化学式の文脈において、記号「-」は単結合を意味し;「=」は二重結合を意味し;「≡」は三重結合を意味する。記号
は、任意選択の結合であり、存在する場合は単結合または二重結合である。記号
は単結合または二重結合である。従って、式
は、
を包含する。また、そのような環の原子は一つも2つ以上の二重結合の部分を形成しないことが理解される。さらに、共有結合の記号「-」は、1または2個の立体的原子を接続している場合、好ましい立体化学を示すものではない。むしろ、それは全ての立体異性体およびその混合物を含むものである。記号
は、結合にわたって垂直にひかれた場合(例えば、メチルについての
)は、その基の結合点を示す。結合点を一義的に特定することにおいて読者を助けるために、結合点は典型的により大きな基に対してのみこのように特定されることが注意される。記号
は、くさびの太い端部に結合した基が「紙面から出る」場合の単結合を意味する。記号
は、くさびの太い端部に結合した基が「紙面の中に入る」場合の単結合を意味する。記号
は、二重結合の周囲のジオメトリー(例えば、EまたはZ)が定義されていない場合の単結合を意味する。このため、両方の選択肢、ならびにその組み合わせが意図されている。本出願で示される構造の原子上の定義されていない原子価はいずれも、その原子に結合した水素原子を暗に表す。炭素原子上の太い点は、その炭素に結合した水素は紙の平面から外側に配向されていることを示している。
【0056】
基「R」が環系上の「浮遊基」として、例えば、式:
で描写される場合、安定な構造が形成される限りにおいて、Rは、描写された、暗示された、または明確に定義された水素を包含する、環原子のいずれかと結合した任意の水素原子と置き換わってもよい。基「R」は、縮合環系上の「浮遊基」として、例えば、式:
で描写される場合、特に断らない限り、Rは縮合環のどちらかの環原子のいずれかと結合した任意の水素原子と置き換わってもよい。置き換わることができる水素としては、安定な構造が形成される限りにおいて、描写された水素(例えば、上記の式の窒素と結合した水素)、暗示された水素(例えば、示されていないが存在すると理解される上記の式の水素)、明確に定義された水素、および、その存在が環原子との同一性に依存している任意選択の水素(例えば、基Xが-CH-に等しい場合、Xに結合した水素)が挙げられる。描写された例において、Rは、縮合環系の5員環または6員環のいずれかに存在してもよい。上記の式において、括弧内に包含される基「R」直後の下付き文字「y」は、数値変数を表す。特に指定が無い限り、この変数は0、1、2、または2より大きい全ての整数であることができ、環または環系の置換可能な水素原子の最大数にのみ限定される。
【0057】
以下の基およびクラスについて、以下の括弧内下付き文字は以下のように基/クラスをさらに定義する:「(Cn)」は、基/クラスの炭素原子の正確な数(n)を定義する。「(C≦n)」は基/クラスで存在し得る炭素原子の最大数(n)を定義し、最小数は問題の基について可能な限り小さいものであり、例えば、基「アルケニル(C≦8)」またはクラス「アルケン(C≦8)」の炭素原子の最小数は2であることが理解される。例えば、「アルコキシ(C≦10)」は、1~10個の炭素原子を有するアルコキシ基を指定する。(Cn-n')は、その基において、最小数(n)および最大数(n')の炭素原子の両方を定義する。同様に、「アルキル(C2-10)」は2~10個の炭素原子を有するアルキル基を指定する。
【0058】
本明細書で使用される用語「飽和した」は、そのように修飾された化合物または基は、炭素-炭素二重結合を持たず、また炭素-炭素三重結合を持たないが、以下のものは除く。飽和基の置換型において、1つまたは複数の炭素酸素二重結合または炭素窒素二重結合は存在してもよい。また、そのような結合が存在する場合、ケト-エノール互変異性またはイミン/エナミン互変異性の一部として現れて得る炭素-炭素二重結合は除外されない。
【0059】
用語「脂肪族」は、「置換された」という修飾語句無しに使用される場合、そのように修飾された化合物/基が、非環状または環状であるが、非芳香族炭化水素化合物または基であることを意味する。脂肪族化合物/基では、炭素原子は、直鎖、分岐鎖また非芳香族環(脂環式)で一緒に結合され得る。脂肪族化合物/基は飽和されていてもよく、即ち単結合(アルカン/アルキル)で結合していてもよく、または、1つもしくは複数の二重結合(アルケン/アルケニル)でまたは1つもしくは複数の三重結合(アルキン/アルキニル)で不飽和化されていてもよい。
【0060】
用語「アルキル」は、「置換された」という修飾語句無しに使用される場合、結合点として炭素原子を有し、直鎖または分岐の非環式構造を有し、そして炭素および水素以外の原子を持たない、一価の飽和の脂肪族基を指す。基-CH3 (Me)、-CH2CH3 (Et)、-CH2CH2CH3 (n-Prまたはプロピル)、-CH(CH3)2 (i-Pr、iPrまたはイソプロピル)、-CH2CH2CH2CH3 (n-Bu)、-CH(CH3)CH2CH3 (sec-ブチル)、-CH2CH(CH3)2 (イソブチル)、-C(CH3)3 (tert-ブチル、t-ブチル、t-BuまたはtBu)、および-CH2C(CH3)3 (neo-ペンチル)は、アルキル基の非限定的な例である。用語「アルカンジイル」は、「置換された」という修飾語句無しに使用される場合、結合点として1個または2個の飽和炭素原子を有し、直鎖または分岐の非環式構造を有し、炭素-炭素二重結合または三重結合を持たず、そして炭素および水素以外の原子を持たない、二価の飽和の脂肪族基を指す。基、-CH2- (メチレン)、-CH2CH2-、-CH2C(CH3)2CH2-、および-CH2CH2CH2-は、アルカンジイル基の非限定的な例である。用語「アルキリデン」は、「置換された」という修飾語句無しに使用される場合、二価基=CRR'を指し、ここで、RおよびR'は独立して水素またはアルキルである。アルキリデン基の非限定的な例としては、=CH2、=CH(CH2CH3)、および=C(CH3)2が挙げられる。「アルカン」は、化合物H-Rを指し、ここで、Rはアルキルであり、この用語は上記に定義されている。これらの用語のいずれかが「置換された」という修飾語と共に使用される場合、1つまたは複数の水素原子は、独立して、-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH2、-NO2、-CO2H、-CO2CH3、-CN、-SH、-OCH3、-OCH2CH3、-C(O)CH3、-NHCH3、-NHCH2CH3、-N(CH3)2、-C(O)NH2、-OC(O)CH3、または-S(O)2NH2によって置き換えられている。下記の基:-CH2OH、-CH2Cl、-CF3、-CH2CN、-CH2C(O)OH、-CH2C(O)OCH3、-CH2C(O)NH2、-CH2C(O)CH3、-CH2OCH3、-CH2OC(O)CH3、-CH2NH2、-CH2N(CH3)2、および-CH2CH2Clは、置換アルキル基の非限定的な例である。用語「ハロアルキル」は、置換アルキルの一部であり、1つまたは複数の水素がハロ基で置換されており、炭素、水素およびハロゲンを除いて他の原子は存在しない。基、-CH2Clは、ハロアルキルの非限定的な例である。用語「フルオロアルキル」は、置換アルキルの一部であり、ここで、1つまたは複数の水素がフルオロ基で置換されており、炭素、水素およびフッ素を除いて他の原子は存在しない。基、-CH2F、-CF3、および-CH2CF3は、フルオロアルキル基の非限定的な例である。
【0061】
用語「シクロアルキル」は、「置換された」という修飾語句無しに使用される場合、結合点としての炭素原子を有し、直鎖または分岐のシクロまたは環状の構造を有し、炭素-炭素二重結合または三重結合は無く、そして炭素および水素以外の原子は持たない、一価の飽和脂肪族基を指す。本明細書において使用される場合、シクロアルキル基は、結合点が環系である限り、環系に結合する1つまたは複数の分岐アルキル基(炭素数制限が許すなら)を含んでもよい。シクロアルキル基の非限定的な例として、-CH(CH
2)
2 (シクロプロピル)、シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシルが挙げられる。用語「シクロアルカンジイル」は、「置換された」という修飾語句無しに使用される場合、結合点としての1個または2個の炭素原子を有し、直鎖または分岐のシクロまたは環状の構造を有し、炭素-炭素二重結合または三重結合は無く、そして炭素および水素以外の原子は持たない、二価の飽和脂肪族基を指す。
は、シクロアルカンジイルの非限定的な例である。用語「シクロアルキリデン」は、「置換された」という修飾語句無しに使用される場合、二価基=CRR'を指し、ここで、RおよびR'は一緒になって少なくとも2個の炭素を有するシクロアルカンジイル基を形成する。アルキリデン基の非限定的な例としては、=C(CH
2)
2および=C(CH
2)
5が挙げられる。「シクロアルカン」は化合物H-Rを指し、ここで、Rはシクロアルキルであり、この用語は上記に定義されている。これらの用語のいずれかが「置換された」という修飾語と共に使用される場合、1つまたは複数の水素原子は、独立して、-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH
2、-NO
2、-CO
2H、-CO
2CH
3、-CN、-SH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-C(O)CH
3、-NHCH
3、-NHCH
2CH
3、-N(CH
3)
2、-C(O)NH
2、-OC(O)CH
3、または-S(O)
2NH
2によって置き換えられている。下記の基:-C(OH)(CH
2)
2、
は、置換シクロアルキル基の非限定的な例である。
【0062】
用語「アリール」は、「置換された」という修飾語句無しに使用される場合、結合点としての芳香族炭素原子を有し、該炭素原子は1つまたは複数の6員芳香族環構造の一部を形成し、ここで、環原子は全て炭素であり、かつここで、基は炭素および水素以外の原子からならない、一価の不飽和芳香族基を指す。1個を超える環が存在する場合、環は縮合していても、縮合していなくてもよい。本明細書において使用される場合、この用語は、第1の芳香環または存在する追加の芳香環に結合する1つまたは複数のアルキルまたはアラルキル基(炭素数制限が許すなら)の存在を除外しない。アリール基の非限定的な例として、フェニル(Ph)、メチルフェニル、(ジメチル)フェニル、-C
6H
4CH
2CH
3 (エチルフェニル)、ナフチル、およびビフェニルから誘導される一価の基が挙げられる。用語「アレーンジイル」は、「置換された」という修飾語句無しに使用される場合、結合点としての2個の芳香族炭素原子を有し、該炭素原子は1つまたは複数の6員芳香族環構造の一部を形成し、ここで、環原子は全て炭素であり、かつここで、一価基は炭素および水素以外の原子からならない、二価の芳香族基を指す。本明細書において使用される場合、この用語は、第1の芳香環または存在する追加の芳香環に結合する1つまたは複数のアルキル、アリール、またはアラルキル基(炭素数制限が許すなら)の存在を除外しない。1個を超える環が存在する場合、環は縮合していても、縮合していなくてもよい。非縮合環は、1つまたは複数の下記のもの:共有結合、アルカンジイル、またはアルケンジイル基(炭素数制限が許すなら)を介して接続されていてもよい。アレーンジイル基の非限定的な例として、
が挙げられる。「アレーン」は、化合物H-Rを指し、ここで、Rはアリールであり、その用語は上記に定義されている。ベンゼンおよびトルエンはアレーンの非限定的な例である。これらの用語のいずれかが「置換された」という修飾語と共に使用される場合、1つまたは複数の水素原子は、独立して、-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH
2、-NO
2、-CO
2H、-CO
2CH
3、-CN、-SH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-C(O)CH
3、-NHCH
3、-NHCH
2CH
3、-N(CH
3)
2、-C(O)NH
2、-OC(O)CH
3、または-S(O)
2NH
2によって置き換えられている。
【0063】
用語「ヘテロアリール」は、「置換された」という修飾語句無しに使用される場合、結合点としての芳香族炭素原子または窒素原子を有し、該炭素原子または窒素原子は1つまたは複数の芳香族環構造の一部を形成し、ここで、環原子の少なくとも1つは窒素、酸素または硫黄であり、かつここで、ヘテロアリール基は炭素、水素、芳香族窒素、芳香族酸素および芳香族硫黄以外の原子からならない、一価の芳香族基を指す。1個を超える環が存在する場合、環は縮合していても、縮合していなくてもよい。本明細書において使用される場合、用語は、芳香環または芳香環系に結合する1つまたは複数のアルキル、アリール、および/またはアラルキル基(炭素数制限が許すなら)の存在を除外しない。ヘテロアリール基の非限定的な例としては、フラニル、イミダゾリル、イドリル、インダゾリル(Im)、イソオキサゾリル、メチルピリジニル、オキサゾリル、フェニルピリジニル、ピリジニル、ピロリル、ピリミジニル、ピラジニル、キノリル、キナゾリル、キノキサリニル、トリアジニル、テトラゾリル、チアゾリル、チエニル、およびトリアゾリルが挙げられる。用語「N-ヘテロアリール」は、結合点として窒素原子を有するヘテロアリール基を指す。用語「ヘテロアレーンジイル」は、「置換された」という修飾語句無しに使用される場合、2個の結合点としての、2個の芳香族炭素原子、2個の芳香族窒素原子、または1個の芳香族炭素原子および1個の芳香族窒素原子を有し、該原子は1つまたは複数の芳香族環構造の一部を形成し、ここで、環原子の少なくとも1つは窒素、酸素または硫黄であり、かつここで、二価基は炭素、水素、芳香族窒素、芳香族酸素および芳香族硫黄以外の原子からならない、二価の芳香族基を指す。1個を超える環が存在する場合、環は縮合していても、縮合していなくてもよい。非縮合環は、1つまたは複数の下記のもの:共有結合、アルカンジイル、またはアルケンジイル基(炭素数制限が許すなら)を介して接続されていてもよい。本明細書において使用される場合、用語は、芳香環または芳香環系に結合する1つまたは複数のアルキル、アリール、および/またはアラルキル基(炭素数制限が許すなら)の存在を除外しない。ヘテロアレーンジイル基の非限定的な例として、
が挙げられる。「ヘテロアレーン」は、化合物H-Rを指し、ここで、Rはヘテロアリールである。ピリジンおよびキノリンはヘテロアレーンの非限定的な例である。これらの用語が「置換された」という修飾語と共に使用される場合、1つまたは複数の水素原子は、独立して、-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH
2、-NO
2、-CO
2H、-CO
2CH
3、-CN、-SH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-C(O)CH
3、-NHCH
3、-NHCH
2CH
3、-N(CH
3)
2、-C(O)NH
2、-OC(O)CH
3、または-S(O)
2NH
2によって置き換えられている。
【0064】
用語「アシル」は、「置換された」という修飾語句無しに使用される場合、基-C(O)Rを指し、ここで、Rは水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキルまたはヘテロアリールであり、それらの用語は上記に定義されている。基、-CHO、-C(O)CH3 (アセチル、Ac)、-C(O)CH2CH3、-C(O)CH2CH2CH3、-C(O)CH(CH3)2、-C(O)CH(CH2)2、-C(O)C6H5、-C(O)C6H4CH3、-C(O)CH2C6H5、-C(O)(イミダゾリル)は、アシル基の非限定的な例である。「チオアシル」は、-C(O)Rの酸素原子が硫黄原子で置き換えられて(-C(S)R)いる以外、同様に定義される。用語「アルデヒド」は、水素原子の少なくとも1つが-CHO基で置き換えられている、上記に定義されるような、アルカンに対応する。これらの用語のいずれかが「置換された」という修飾語と共に使用される場合、1つまたは複数の水素原子(もしあれば、カルボニルまたはチオカルボニル基に直接結合した水素を含む)は、独立して、-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH2、-NO2、-CO2H、-CO2CH3、-CN、-SH、-OCH3、-OCH2CH3、-C(O)CH3、-NHCH3、-NHCH2CH3、-N(CH3)2、-C(O)NH2、-OC(O)CH3、または-S(O)2NH2によって置き換えられている。基、-C(O)CH2CF3、-CO2H (カルボキシル)、-CO2CH3 (メチルカルボキシル)、-CO2CH2CH3、-C(O)NH2 (カルバモイル)、および-CON(CH3)2は、置換アシル基の非限定的な例である。
【0065】
用語「アルコキシ」は、「置換された」という修飾語句無しに使用される場合、基-ORを指し、ここで、Rはアルキルであり、その用語は上記に定義されている。アルコキシ基の非限定的な例として、-OCH3 (メトキシ)、-OCH2CH3 (エトキシ)、-OCH2CH2CH3、-OCH(CH3)2 (イソプロポキシ)、および-OC(CH3)3 (tert-ブトキシ)が挙げられる。用語「シクロアルコキシ」、「アルケニルオキシ」、「シクロアルケニルオキシ」、「アルキニルオキシ」、「アリールオキシ」、「アラルコキシ」、「ヘテロアリールオキシ」、「ヘテロシクロアルコキシ」、および「アシルオキシ」は、「置換された」という修飾語句無しに使用される場合、-ORとして定義される基を指し、ここで、Rは、それぞれ、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルおよびアシルである。用語「アルコキシジイル」は、-O-アルカンジイル-、-O-アルカンジイル-O-、または-アルカンジイル-O-アルカンジイル-の二価基を指す。用語「アルキルチオ」、「シクロアルキルチオ」、および「アシルチオ」は、「置換された」という修飾語句無しに使用される場合、基-SRを指し、ここで、Rは、それぞれ、アルキル、シクロアルキル、およびアシルである。用語「アルコール」は、水素原子の少なくとも1つがヒドロキシ基で置き換えられている、上記に定義されるような、アルカンに対応する。用語「エーテル」は、水素原子の少なくとも1つがアルコキシまたはシクロアルコキシ基で置き換えられている、上記に定義されるような、アルカンに対応する。これらの用語のいずれかが「置換された」という修飾語と共に使用される場合、1つまたは複数の水素原子は、独立して、-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH2、-NO2、-CO2H、-CO2CH3、-CN、-SH、-OCH3、-OCH2CH3、-C(O)CH3、-NHCH3、-NHCH2CH3、-N(CH3)2、-C(O)NH2、-OC(O)CH3、または-S(O)2NH2によって置き換えられている。
【0066】
用語「アルキルアミノ」は、「置換された」という修飾語句無しに使用される場合、基-NHRを指し、ここで、Rはアルキルであり、その用語は上記に定義されている。アルキルアミノ基の非限定的な例として、-NHCH3および-NHCH2CH3が挙げられる。用語「ジアルキルアミノ」は、「置換された」という修飾語句無しに使用される場合、基-NRR'を指し、ここで、RおよびR'は、それぞれ独立して、同一または異なるアルキル基であり得、またはRおよびR'は、一緒になってアルカンジイルを表すことができる。ジアルキルアミノ基の非限定的な例として、-N(CH3)2、-N(CH3)(CH2CH3)、およびN-ピロリジニルが挙げられる。用語「アルコキシアミノ」、「シクロアルキルアミノ」、「アルケニルアミノ」、「シクロアルケニルアミノ」、「アルキニルアミノ」、「アリールアミノ」、「アラルキルアミノ」、「ヘテロアリールアミノ」、「ヘテロシクロアルキルアミノ」、および「アルキルスルホニルアミノ」は、「置換された」という修飾語句無しに使用される場合、-NHRとして定義される基を指し、ここで、Rは、それぞれ、アルコキシ、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、およびアルキルスルホニルである。アリールアミノ基の非限定的な例は-NHC6H5である。用語「アミド」(アシルアミノ)は、「置換された」という修飾語句無しに使用される場合、-NHRを指し、ここで、Rはアシルであり、その用語は上記に定義されている。アミド基の非限定的な例は-NHC(O)CH3である。用語「アルキルイミノ」は、「置換された」という修飾語句無しに使用される場合、二価基=NRを指し、ここで、Rはアルキルであり、その用語は上記に定義されている。用語「アルキルアミノジイル」は、-NH-アルカンジイル-、-NH-アルカンジイル-NH-、または-アルカンジイル-NH-アルカンジイル-の二価基を指す。これらの用語のいずれかが「置換された」という修飾語と共に使用される場合、1つまたは複数の水素原子は、独立して、-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH2、-NO2、-CO2H、-CO2CH3、-CN、-SH、-OCH3、-OCH2CH3、-C(O)CH3、-NHCH3、-NHCH2CH3、-N(CH3)2、-C(O)NH2、-OC(O)CH3、または-S(O)2NH2によって置き換えられている。基-NHC(O)OCH3および-NHC(O)NHCH3は置換アミド基の非限定的な例である。
【0067】
B.細胞外pHE
本開示はまた、細胞または細胞群の細胞外pH(pHe)の画像化に関する。特に、細胞外環境は、腫瘍細胞のものであり得る。癌細胞がグルコースを優先的に取り込み、それを乳酸に変換する好気的解糖(別名、Warburg効果)が、腫瘍組織の存在を決定する方法として、腫瘍細胞のpHeの画像化への強い関心を再燃させた(Heiden et al., 2009)。Warburg効果の臨床的関連性は、腫瘍診断のためのおよび治療反応をモニターするための、2-18F-デオキシグルコース(FDG)の広い臨床用途により既に明らかになっている。腫瘍微小環境において、乳酸は、癌細胞膜で上昇するモノカルボン酸輸送体により、優先的に細胞外空間で蓄積される(Halestrap & Prince 1999)。腫瘍における細胞外pH(pHe)の結果として生じる酸性化は、腫瘍の浸潤および転移の増大のための細胞外マトリックスの再構成を促進する。最近、Barberおよび共同研究者が、別の「癌の顕著な特徴」として腫瘍における無調節pHを記述した(Webb et al., 2011)。
【0068】
30の異なるヒト癌細胞株由来の268の腫瘍における代表的なpHe研究(Volk et al., 1993)を含む、多くの以前の研究が、腫瘍微小環境におけるpHeを定量化するために行われてきた(Gillies et al., 1994; Gillies et al., 2004; van Sluis et al., 1999およびVolk et al., 1993)。血液pH(7.4)に比べて、全ての腫瘍のpHeは、6.71~7.01の範囲で、平均6.84の酸性である。腫瘍pHeの酸性度は持続的であるが、腫瘍特異的画像化のためにそれを活用することは、比較的小さなpH差(即ち、<1 pH単位)のために困難であり、このため、極めて狭いpH転移範囲を有するプローブが、本出願について特に興味深いものである。
【0069】
いくつかの態様において、本開示は、感染症、瘻孔、潰瘍、糖尿病または他の疾患からのケトアシドーシス、低酸素症、代謝性アシドーシス、呼吸性アシドーシス、毒素の摂取、中毒、骨代謝回転、変性疾患、創傷、および熱傷、放射線または他の原因による組織損傷を含むがこれらに限定されない、細胞内または細胞外pHに影響を与えるかまたは影響される生理学的および/または病理学的プロセスを画像化することができるpH応答性システムにおいて使用され得る、ポリマーおよびミセルを提供する。
【0070】
C.腫瘍境界の手術用画像化
外科的切除における端部での癌細胞の存在により規定される陽性腫瘍境界は、術後のHNSCC患者の腫瘍再発および生存の最も重要な指標である(Woolgar & Triantafyllou 2005; McMahon et al., 2003; Ravasz et al., Atkins et al., 2012およびIczkowski & Lucia 2011)。いくつかの態様において、正常な生理pHの環境とは異なる細胞外pH環境を示す癌細胞はいずれも、本明細書に開示されるpH応答性システムを用いて画像化することができる。さらに、pH応答性色素において使用される色素を改変することにより、様々な異なる市販の手術画像化システムを用いて腫瘍の境界を測定することができる。これらのシステムとしては、観血的手術(例えば、SPY Elite(登録商標))、顕微手術(Carl Zeiss, Leica)、腹腔鏡検査(Olympus, Karl Storz)、およびロボット手術(da Vinci(登録商標))用のシステムが挙げられるが、これらに限定されない。これらの臨床システムの多くは、手術中のリアルタイム画像化を可能にする高速取得時間を有する。さらに、本明細書に開示される混合ポリマー、および混合ポリマーを作製するために使用される個々のモノマーのいずれかのホモポリマーは、手術中の腫瘍の画像化のためのpH応答性システムにおいて使用することができる。
【0071】
D.ブロックコポリマーおよび蛍光色素
本明細書に開示されるpH応答性ミセルおよびナノ粒子は、ブロックコポリマーおよび蛍光色素を含む。ブロックコポリマーは、親水性ポリマーセグメントおよび疎水性ポリマーセグメントを含む。疎水性ポリマーセグメントはpH感受性である。例えば、疎水性ポリマーセグメントは、pH感受性にするイオン化可能アミン基を含むことができる。ブロックコポリマーは、これらのイオン化可能ブロックコポリマーの超分子自己組織化に基づいてpH活性化可能ミセル(pHAM)ナノ粒子を形成する。より高いpHでは、ブロックコポリマーはミセルに集合し、一方より低いpHで、疎水性ポリマーセグメント中のアミン基のイオン化がミセルの解離をもたらす。イオン化基は、異なるpHで微調整可能な親水性/疎水性ブロックとして機能することができ、ミセルの動的自己組織化に直接影響を与えることができる。
【0072】
診断またはpHモニターの用途のために、標識部分をブロックコポリマーへコンジュゲートしてもよい。いくつかの態様において、標識(例えば、蛍光標識)は、pHがミセル形成に有利に働く場合、ミセルの内側に隔離される。ミセル中における隔離は(例えば、蛍光の消光により)標識シグナルの減少をもたらす。特定のpH条件は、ミセルの急速なプロトン化と解離に導いてユニマーとし、これにより標識を露出させて、標識シグナルを増加させることができる(例えば、蛍光発光の増加)。本開示のミセルは、以下のような、診断適用における1つまたは複数の利点を提供し得る:(1)以前のミセル組成物についての数時間または数日とは対照的に、特定のpH環境(例えば、酸性環境)下での短時間内(例えば、数分内)のミセルの解離(および標識シグナルの急速増加);(2)画像化ペイロードの増加;(3)標識の所望の部位(例えば、腫瘍または特定のエンドサイトーシス区画)への選択的ターゲティング;(4)長時間の血液循環;(5)特定の狭いpH範囲内での応答性(例えば、特定の細胞小器官のターゲティングのため);および(6)高いコントラスト感度および特異性。例えば、ミセルは、正常な生理的条件(例えば、血液循環、細胞培養条件)下では最小のバックグラウンドシグナルを伴ってサイレントのままであり得る(または、オフ状態にあり得る)が、ミセルが目的の分子標的(例えば、細胞外腫瘍環境または細胞内細胞小器官)に到達した場合、画像化シグナルは大きく増幅され得る。
【0073】
多数の蛍光色素が当技術分野において公知である。本開示のある局面において、蛍光色素はpH感受性色素である。いくつかの態様において、蛍光色素は、活性化時のシグナル変化の増加を得るために、蛍光クエンチャーと対にされる。蛍光色素は、直接またはリンカー部分を介してコポリマーへコンジュゲートされ得る。当技術分野において公知の方法が、蛍光色素を、例えば、疎水性ポリマーへコンジュゲートするために使用され得る。いくつかの態様において、蛍光色素はアミド結合を介して疎水性ポリマーのアミンへコンジュゲートされ得る。
【0074】
ブロックコポリマー、ならびに蛍光色素および金属キレート基へコンジュゲートされたブロックコポリマーの例として、以下:
が挙げられ、
式中、R
1は、水素、アルキル
(C≦12)、シクロアルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、置換シクロアルキル
(C≦12)、または
であり;nは、1~500の整数であり;R
2およびR
2'は、各々独立して、水素、アルキル
(C≦12)、シクロアルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、または置換シクロアルキル
(C≦12)より選択され;R
3およびR
11は、各々独立して、式:
の基であり、式中、n
xは、1~10であり;X
1、X
2、およびX
3は、各々独立して、水素、アルキル
(C≦12)、シクロアルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、または置換シクロアルキル
(C≦12)より選択され;かつX
4およびX
5は、各々独立して、アルキル
(C≦12)、シクロアルキル
(C≦12)、アリール
(C≦12)、ヘテロアリール
(C≦12)、もしくはこれらの基のいずれかの置換型より選択されるか、またはX
4およびX
5は一緒になり、かつアルカンジイル
(C≦12)、アルコキシジイル
(C≦12)、アルキルアミノジイル
(C≦12)、もしくはこれらの基のいずれかの置換型であり;wは、0~150の整数であり;xは、1~150の整数であり;R
4は、式:
の基であり、式中、n
yは、1~10であり;Y
1、Y
2、およびY
3は、各々独立して、水素、アルキル
(C≦12)、シクロアルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、または置換シクロアルキル
(C≦12)より選択され;かつY
4は、色素または蛍光クエンチャーであり;yは、1~6の整数であり;R
5は、式:
の基であり、式中、n
zは、1~10であり;Y
1'、Y
2'、およびY
3'は、各々独立して、水素、アルキル
(C≦12)、シクロアルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、または置換シクロアルキル
(C≦12)より選択され;かつY
4'は金属キレート基であり;Lは、共有結合であるか;またはアルカンジイル
(C≦12)、アレーンジイル
(C≦12)、-アルカンジイル
(C≦12)-アレーンジイル
(C≦12)-NC(S)-、-アルカンジイル
(C≦12)-アレーンジイル
(C≦12)-C(O)-、もしくはこれらの基のいずれかの置換型であり;zは、1~6の整数であり;かつR
6は、水素、ハロ、ヒドロキシ、アルキル
(C≦12)、または置換アルキル
(C≦12)であり、ここで、R
11、R
3、R
4、およびR
5は、ポリマー内において任意の順序で現れ得る。いくつかの態様において、長いポリマー内のR
11、R
3、R
4、およびR
5の各モノマーは、ポリマー内において任意の順序で現れ得る。いくつかの態様において、ポリマーの特定の組成(各R
3、R
4、およびR
5モノマーのモル分率)は、そのポリマーを用いて製造されるナノ粒子の特定のpH転移点に関係する。
【0075】
E.ミセルシステムおよび組成物
本明細書に開示されるシステムおよび組成物は、異なるpHレベルに調整された単一のミセルまたは一連のミセルを利用する。さらに、ミセルは狭いpH転移範囲を有する。いくつかの態様において、ミセルは約1 pH単位未満のpH転移範囲を有する。様々な態様において、ミセルは約0.9 pH単位未満の、約0. 8pH単位未満の、約0.7 pH単位未満の、約0.6 pH単位未満の、約0.5pH単位未満の、約0.4 pH単位未満の、約0.3 pH単位未満の、約0.25 pH単位未満の、約0.2 pH単位未満の、または約0.1 pH単位未満のpH転移範囲を有する。狭いpH転移範囲は、有利なことに、pHの微妙な変化でフルオロフォアの完全なターンオンをもたらし得るより鋭いpH応答性を提供する。
【0076】
従って、pH誘導ミセル化およびミセルコア中におけるフルオロフォアの消光を有する単一または一連のpH調節可能な多色蛍光ナノ粒子は、pH転移(ポリマーを介して)、蛍光発光、または蛍光クエンチャー使用の独立制御メカニズムを提供する。蛍光波長は、例えば、紫色から近IR発光範囲(400~820 nm)まで微調整することができる。それらの蛍光オン/オフ活性化は、小分子pHセンサーと比較して遥かにより狭い0.25 pH単位以下で達成することができる。いくつかの態様において、蛍光オン/オフ活性化についてのより狭い範囲は、範囲が0.2 pH単位以下となるように達成することができる。いくつかの態様において、その範囲は、0.15 pH単位以下である。さらに、蛍光クエンチャーの使用は、会合および非会合ナノ粒子間の差が会合ナノ粒子の50倍より大きくなるように、蛍光活性化を増加させることもできる。いくつかの態様において、蛍光活性化は、会合ナノ粒子と比べて75倍を超えてより高い。この多色pH調節可能かつ活性化可能蛍光ナノプラットフォームは、癌、リソソーム蓄積症、および神経障害に関連する、エンドサイトーシス細胞小器官中のpH調節、受容体サイクリング、およびエンドサイトーシス輸送等の基本的な細胞生理的プロセスを調査するための価値あるツールを提供する。
【0077】
ミセルのサイズは、典型的にはナノメートルスケール(即ち、直径約1 nm~1μm)である。いくつかの態様において、ミセルは約10~約200 nmのサイズを有する。いくつかの態様において、ミセルは約20~約100 nmのサイズを有する。いくつかの態様において、ミセルは約30~約50 nmのサイズを有する。
【0078】
F.標的指向部分
ミセルおよびナノ粒子は標的指向部分をさらに含んでもよい。標的指向部分は、ナノ粒子またはミセルを、例えば、特定の細胞表面受容体、細胞表面マーカー、または細胞小器官(例えば、核、ミトコンドリア、小胞体、葉緑体、アポプラスト、またはペルオキシソーム)へ標的指向させるために使用することができる。このような標的指向部分は、受容体リサイクリング、マーカーリサイクリング、細胞内pH調節、エンドサイトーシス輸送の研究において有利である。
【0079】
標的指向部分は、例えば、抗体または抗体断片(例えば、Fab'断片)、タンパク質、ペプチド(例えば、シグナルペプチド)、アプタマー、または小分子(例えば、葉酸)であり得る。当技術分野において公知の方法を用いて、標的指向部分を、ブロックコポリマーへコンジュゲートする(例えば、親水性ポリマーセグメントへコンジュゲートする)ことができる。標的指向部分の選択は個々の標的に依存する。例えば、抗体、抗体断片、小分子、または結合パートナーが、細胞表面受容体および細胞表面マーカーを標的とするためにより適切であり得るが、一方、ペプチド、特にシグナルペプチドも、細胞小器官を標的とするためにより適切であり得る。
【0080】
G.蛍光検出
本開示の様々な局面は、蛍光シグナルの増加を検出することによるミセル解離の直接的または間接的な検出に関する。蛍光色素からの蛍光シグナルを検出するための技術は当業者に公知である。例えば、下記の実施例に記載される蛍光共焦点顕微鏡法はこのような技術の一つである。
【0081】
例えば、フローサイトメトリーは、蛍光シグナルを検出するために使用することができる別の技術である。フローサイトメトリーは、液体試料中の細胞または他の粒子、例えばマイクロスフェア、の分離を伴う。フローサイトメトリーの基本的工程は、液体流がセンシング領域を通過するように、装置を通っての流体試料の方向を規定することを含む。粒子は、センサーのそばを1つずつ通過するべきであり、サイズ、屈折、光散乱、不透明性、粗さ、形状、蛍光等に基づいて分類され得る。
【0082】
本明細書に記載される測定は、1つまたは複数の細胞画像を解析し、複数の検出波長でのおよび/または複数の時点での蛍光発光の大きさを示す数値等の1つまたは複数の細胞特性を決定するための、画像処理を含むことができる。
【0083】
H.キット
本開示はまたキットを提供する。本明細書に開示される成分のいずれかをキット中に組み込むことができる。ある態様において、キットは、上述のpH応答性システムまたは組成物を含む。
【0084】
キットは、成分を入れることができる、好ましくは、適切に等分され得る、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、注射器または他の容器を概して含む。キット中に2種以上の成分が存在する場合、キットはまた、追加の成分が別に入れられ得る、第2、第3または他の追加の容器を概して含有する。しかし、成分の様々な組み合わせが1つの容器中に含まれてもいてもよい。いくつかの態様において、シリーズ中のミセル集団の全てが単一の容器中で組み合わされる。他の態様において、シリーズ中のミセル集団の一部または全てが別々の容器中に提供される。
【0085】
本開示のキットはまた、典型的に、商品販売のため厳重に密封した様々な容器を含有する包装を含む。このような包装は、所望の容器が保持される、ボール紙または射出もしくはブロー成形プラスチック包装を含み得る。キットはまた、キット成分を使用するための説明書を含んでもよい。説明書は、実施することができるバリエーションを含んでもよい。
【0086】
I.SPECTおよびPET
放射線核種画像化様式(陽電子放出断層撮影法(PET);単光子放出コンピューター断層撮影法(SPECT))は、放射線核種標識化放射線トレーサーの位置および濃度をマッピングする診断断面画像化技術である。CTおよびMRIは、腫瘍の位置および程度についてかなり解剖学的情報を提供するが、これらの画像化様式は、浮腫、放射線壊死、グレーディング、またはグリオーシスから侵襲性病変を的確に見分けることができない。PETおよびSPECTは、代謝活性を測定することによって腫瘍を位置付けおよび特徴付けするために使用することができる。
【0087】
PETおよびSPECTは、細胞生存率等の細胞レベルでの情報に関する情報を提供する。PETでは、患者は、陽電子を発する弱放射性物質を摂取するかまたは注入され、陽電子は、物質が体を通って移動する際にモニターされ得る。1つの一般的な適用において、例えば、患者は、結合された陽電子放射体を有するグルコースが与えられ、患者の脳は、様々な働きを行う際にモニターされる。脳は働くとともにグルコースを使用するので、PET画像は、脳の活性がどこで高いかを示す。
【0088】
単光子放出コンピューター断層撮影、即ちSPECTは、PETに密接に関係している。これら2つの主要な相違は、陽子発生物質の代わりに、SPECTは低エネルギー光子を発する放射性トレーサーを使用することである。SPECTは、冠動脈疾患を診断するために有用であり、既におよそ250万のSPECT心臓研究が毎年米国で行われている。
【0089】
画像化するためのPET放射線医薬品は、一般的に、11C、13N、15O、18F、82Rb、62Cu、および68Ga等の陽電子放射体で標識される。SPECT放射線医薬品は、一般的に、99mTc、201Tl、および67Ga等の陽電子放射体で標識される。脳画像化に関して、PETおよびSPECT放射線医薬品は、血液脳関門透過性(BBB)、脳灌流および代謝受容体結合、ならびに抗原抗体結合に従って分類される(Saha et al., 1994)。血液脳関門SPECT薬剤、例えば、99mTcO4-DTPA、201Tl、および[67Ga]クエン酸塩は正常脳細胞により除去されるが、変更されたBBBのため腫瘍細胞に入る。SPECT灌流薬剤、例えば、[123I]IMP、[99mTc]HMPAO、[99mTc]ECDは親油性薬剤であり、従って、正常脳に拡散する。重要な受容体結合SPECT放射性医薬品としては、[123I]QNE、[123I]IBZM、および[123I]イオマゼニルが挙げられる。これらのトレーサーは特定の受容体へ結合し、受容体関連疾患の評価において重要である。
【実施例】
【0090】
J.実施例
以下の実施例は本開示の好ましい態様を実証するために含まれる。以下の実施例に開示される技術は、本開示の実施において十分に機能することが本発明者によって見出された技術を示し、従って、その実施のための好ましいモードを構成すると考えられ得ることが、当業者によって認識されるべきである。しかし、当業者は、本開示に照らし、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、開示される具体的な態様において多くの変更を行い、同様または類似の結果を依然として得ることができることを認識するべきである。
【0091】
実施例1:デュアルモダリティpH応答性ナノプローブの合成および評価
A.
64Cu-UPS
6.9の合成
1,4,7-トリアザシクロノナン-N,N',N''-トリス酢酸(NOTA)-およびICG-コンジュゲートポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(エチルプロピルアミノエチルメタクリレート)コポリマー(6.9でのpH転移についてのUPS
6.9としても公知)を、原子移動ラジカル重合法によって合成した(
図1A;Tsarevsky et al., 2007)。1コポリマー当たりのNOTAおよびICGの平均数は、それぞれ、2および1であると決定された。ポリマー合成後、NOTAへの
64Cuキレート化を、効率的な銅結合について完全に解離されたユニマーを保証するために37℃およびpH 6.5で15分間行った(95%、
図1B)。
64Cu標識後、溶液を炭酸ナトリウム緩衝液中においてpH 7.4へ戻し、ミセルナノ粒子(32.7 ± 1.6 nm)を形成した(
図1C)。未結合
64CuCl
2の除去は、100 kDの分子量カットオフで、3回、遠心膜濾過によって達成した。pHを転移pH未満に低下させることは、ユニマー(8.4 ± 0.2 nm)へのミセル解離をもたらした。比較のために、同様のサイズ(32.0 ± 2.4 nm)を有するNOTA-コンジュゲートポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(D,L-乳酸) (PEG-PLA)ナノ粒子も、非pH感受性ナノセンサー対照として合成した(
図2)。色素または蛍光金属キレート基に加えて異なるアルキル化アミノ部分を含む追加のUPS化合物を調製し、それらのpH転移を、ポリマー中に存在するモノマーの各タイプのパーセンテージの関数として評価および記録した。例えば、UPSポリマー中におけるジエチルアミノ部分を含むモノマーおよびジイソプロピルアミノ部分を含むモノマーの割合を変えることは、pH転移を調節し、pH転移の微調整を可能にした(
図17A~C)。
【0092】
B.生物学的環境における
64Cu-UPS
6.9の不可逆的活性化
食塩水溶液(無タンパク質)中において、UPS
6.9コポリマーは、狭いpHスパン(<0.2 pH、
図3Aおよび3B)にわたって「可逆的な」ミセル集合/分解を受ける。プロトン化プロセスは、38のヒル係数で非常に協同的である(
図3C)。pH滴定座標に沿って、相分離(即ち、ミセル化)は、ミセル中の中性コポリマーに対して、溶液中の高プロトン化ユニマーからなる双安定状態溶液を与えた(
図3D)。中間状態を有さないこのオール・オア・ナッシングプロトン化表現型は、正の協同性の顕著な特徴である(Lopez-Fontal et al., 2016およびWilliamson, 2008)。中性PEG化ミセルおよびポリカチオン性ユニマーの相違する物理的性質は、生物学的システム中における捕捉および組み込み機構の分子的基盤を構成する。
【0093】
生物学的環境において、血清タンパク質結合は、PEG化ミセルのpH活性化での解離ユニマー状態のUPSコポリマーを「不可逆的に」拘束することができる(
図4A)。40 mg/mlヒト血清アルブミン(HSA)の存在または非存在下でのUPS
6.9ナノプローブの可逆性を調べた(
図4B)。結果は、HSAの非存在下で、UPS
6.9蛍光強度は、複数回、pHが6.5から7.4へ逆転された後、ベースレベルへ戻ったことを示す。対照的に、HSAの存在下で、蛍光強度は、pH逆転後、オン状態で維持された。これらのデータは、ナノプローブ応答が、新鮮な緩衝溶液と比較して、生物学的環境において大幅に異なり得ることを示唆している。この不可逆性特徴は、安定化された出力への、持続的であるが流動的な腫瘍アシドーシスシグナルの捕捉に寄与する。
【0094】
C.癌細胞による
64Cu-UPS
6.9の不可逆的な捕捉および取り込み
酸性pHが癌細胞内部でのナノプローブ取り込みに影響を与え得るかどうかを調べるために、
64Cu-UPS
6.9を、pH 6.5および7.4でDMEM培地中においてHN5頭頸部癌細胞と共にインキュベートした。生理学的環境を模倣するために、40 mg/mLヒト血清アルブミンを培地に添加した。比較のために、
64Cu-PEG-PLAナノ粒子を非pH感受性対照として使用した。HN5細胞を、同じ用量のいずれかのナノ粒子(25μg/mL)と共に異なる期間インキュベートした。次いで、放射性培地を、トレーサーを含まない培地で交換および洗浄した。96ウェルプレートからのHN5細胞のオートラジオグラフィー画像は、
64Cu-UPS
6.9のpH依存性取り込みを示す。pH 6.5で、増加した量の陽電子シグナルが経時的に検出され、pH 7.4での細胞による取り込みと比べて、1時間でおよそ5倍の、細胞による取り込みの増加がもたらされた(
図4Cおよび4D、ならびに
図5)。対照的に、
64Cu-PEG-PLAミセルと共にインキュベートされたHN5細胞は、放射能シグナルにおいて観察可能なpH依存性を示さず、細胞による取り込みは両方のpHで低いままであり、PEG化ミセルナノ粒子のステルス特性と一致した(Moghimi et al., 2003)。レーザー走査共焦点顕微鏡法を使用し、pH 6.5でのアルブミン含有培地中におけるインキュベーションから5および60分後のUPS
6.9 (放射線被曝を回避するために
64Cuを含まない)の分布を調べた。HN5細胞を、それぞれ、Hoechst (青色)、抗F-117アクチン(青緑色)および抗LAMP1 (緑色)によって、核、細胞膜およびリソソームについて染色した。抗ポリ(エチレングリコール)抗体を、UPS
6.9コポリマーを標識するために使用した。データは、細胞表面上におけるコポリマーの初期付着、続いての60分でのHN5細胞内部でのインターナリゼーションを示す。画像オーバーレイは、インターナライズされたUPS
6.9斑点がリソソームと共局在化したことを示す(
図4E)。
【0095】
D.HN5腫瘍における
64Cu-UPS
6.9のインビボ捕捉および組み込み
インビボでの同所性HN5腫瘍における
64Cu-UPS
6.9分布の時空間的特徴付けは、捕捉および組み込み機構をさらに立証した。HN5癌細胞を、SCIDマウスの頭頸部領域中のオトガイ下間隙中に接種した。腫瘍が20~30 mm
3まで成長した後、
64Cu-UPS
6.9トレーサー(0.1 mCi)を、尾静脈を通して注射した。30分、3時間、および24時間で、動物を屠殺し、腫瘍を取り出し、30μm薄片へ切除した。オートラジオグラフィー解析は、30分および3でのHN5腫瘍中における(大部分は腫瘍周辺部での)
64Cu-UPS
6.9の初期の散在的捕捉、続いての24時間での腫瘍全体にわたる増加したトレーサー蓄積が、H&E組織学によって立証されたことを示す(
図6)。
【0096】
E.脳腫瘍の
64Cu-UPS
6.9活性化バイナリー検出
脳の癌は、早期発見のための広く受け入れられている方法がない癌の最も致死的な型の1つである(Wen and Kesari, 2008)。症状が生じている場合の遅い診断は、しばしば、不良な予後および生存をもたらす(Omuro and DeAngelis, 2013)。正常脳組織中のグルコースの高い生理学的取り込みのために、従来の代謝PETトレーサーFDGは脳腫瘍画像化のために使用することができない(Fink et al., 2015)。神経膠腫検出についての
64Cu-UPS
6.9の実行可能性を調べるために、p53
-/-、PTEN
-/-、BRAF
V600E突然変異を有する緑色蛍光タンパク質(GFP)トランスフェクトマウス星状細胞(73C)が移植された同所性腫瘍異種移植モデルの評価を行った。
64Cu-UPS
6.9の静脈内投与後24時間で、PET画像化は、暗い正常脳組織バックグラウンド上における小さなサイズの脳腫瘍(約10 mm
3)の鮮やかな照明を示した(
図7Aおよび
図8)。
64Cu-UPS
6.9の組織による取り込みが、73C腫瘍および正常脳組織について、それぞれ、3.1 ± 1.6および0.54 ± 0.3 %ID/gと測定された。コントラスト・ノイズ比(CNR;バックグラウンドノイズによって割られる腫瘍および正常組織間のシグナル強度の差として計算される)は、15.1 ± 6.8であると決定された。正常脳組織において、血液脳関門は、脳実質の外側で
64Cu-UPS
6.9のPEG化ミセル形態を維持するのに有効であった。対照的に、腫瘍アシドーシスは
64Cu-UPS
6.9を活性化することができ、陽電子シグナルの有意な増加をもたらした。オートラジオグラフィーおよびインドシアニングリーン蛍光による脳腫瘍スライド(厚さ8μm)のその後の調査は、H&E組織学およびGFP蛍光と顕微鏡的に相関した(
図7B)。共焦点顕微鏡データは、UPSトレーサーが、73C神経膠腫中において血液脳関門を横断し、多くのGFP標識脳癌細胞中に蓄積し得ることを説明する(
図7C中のオーバーレイ画像)。これらのデータは、巨視的レベルおよび微視的レベルの両方でバイナリー腫瘍画像化アウトカムを達成するために脳癌細胞中にUPSトレーサーを不可逆的に捕らえる実行可能性を裏付けている。
【0097】
F.
64Cu-UPS
6.9による複数の腫瘍タイプの非侵襲性画像化
一連の幅広い癌を画像化するための
64Cu-UPS
6.9の実行可能性を調べるために、追加の頭/頸部および乳房腫瘍小結節のPET画像化を評価した。
64Cu-UPS
6.9トレーサー(0.1 mCi)を腫瘍担持マウスの尾静脈中に注射した。結果は、同所性HN5およびFaDu頭頸部腫瘍、ならびに4T1トリプルネガティブ乳房腫瘍中における潜在性小結節(10~20 mm
3)の明白な検出を示す(腫瘍検出のロバスト性を実証する三連での報告について
図9Aおよび
図10~12)。組織による取り込みは、
64Cu-UPS
6.9トレーサーのi.v.注射から18~24時間後のHN5、FaDuおよび4T1腫瘍中において、それぞれ、9.9 ± 2.5、6.5 ± 2.5および5.7 ± 1.2 %ID/gであった。コントラスト・ノイズ比は、HN5、FaDuおよび4T1腫瘍(各腫瘍タイプについてn = 3)において、それぞれ、54.3 ± 8.7、33.5 ± 3.7および34.6 ± 12.1であった(
図9B)。HN5腫瘍中においてFDG (0.15 mCi)および
64Cu-PEG-PLA (0.12 mCi)を使用するPET画像化は、あまり顕著でない画像化アウトカムを示した。FDG-PET実験において、HN5腫瘍コントラスト(5.4 ± 0.7 %ID/g)にもかかわらず、脳(7.9 ± 1.6 %ID/g)、褐色脂肪(8.1 ± 1.3 %ID/g)、緊張した筋肉(6.3 ± 0.3 %ID/g)中のFDGの非特異的取り込みは、腫瘍診断を複雑にした偽陽性シグナルを生じさせた(
図9Aおよび9C、
図13、ならびに
図16)。高バックグラウンドノイズはまた、CNR値を1.7 ± 0.6へ低下させた。
64Cu-PEG-PLA研究において、僅かな割合(2.0 ± 0.2 %ID/g)の腫瘍による取り込みが、i.v.注射から18~24時間後にHN5腫瘍中において観察された。
64Cu-PEG-PLAのCNR値(4.4 ± 1.0、
図9Cおよび
図14)は、
64Cu-UPS
6.9 (54.3 ± 8.7)よりも有意に低い。これらの結果は、従来の
64Cu-PEG-PLAミセルプローブの低いCNR値によって示されるように、漏出性腫瘍血管系を通しての受動的標的指向は、高い腫瘍コントラストを生じさせるために十分ではないことを実証する。
【0098】
G.考察
生物学的プロセスは、空間および時間における永続的な変化を伴って動的かつ複雑である。結果として生じる時空間的不均質性は、病的状態を正確に診断することを困難にする。以前に、ICGベースの超pH感受性(UPS)ナノプローブが、蛍光画像化による癌検出について報告された(Zhao et al., 2016)。腫瘍境界のバイナリー蛍光描写が達成され、これは、正確な癌手術をもたらし、腫瘍担持マウスにおける生存を延長した。主機構は、pH依存性相転移現象と、ポリマーの疎水性セグメントへコンジュゲートされたフルオロフォアのクエンチングおよびアンクエンチングとのカップリングであると考えられた。本開示において、
64Cu PET官能性部分を、蛍光ナノ粒子製剤中へ組み込んだ。特に、PET官能性部分はまたポリマーの疎水性セグメントへコンジュゲートした。オン/オフ蛍光レポーターとは異なり、陽電子シグナルは常に「オン」であり、クエンチすることができず、従って、蛍光と類似しているシグナルの相転移ベースの変化は予想されなかった。予想に反して、陽電子シグナルは、蛍光出力と同様のバックグラウンドシグナル抑制および腫瘍活性化のバイナリーパターンを示した(
図7および
図9)。これは光学画像化の光透過制限を克服した一方、陽電子シグナルの予測されないパターンについての機構は興味深かった。明らかに、EPR効果単独に起因する受動的蓄積は、HN5腫瘍における
64Cu-UPSと比べての
64Cu-PEG-PLAの比較的低いCNRによって示されたように、高い腫瘍コントラストをもたらすために十分ではなかった。
【0099】
理論によって束縛されることを望まないが、
64Cu-UPSトレーサーによる癌検出の改善された感受性および特異性は、アシドーシス腫瘍環境における「捕捉および組み込み」に起因すると考えられる(
図15)。大抵の生物学的シグナルと同様に、腫瘍アシドーシスは、空間および時間における高い腫瘍内不均質性を伴って動的である。可逆的小分子pHセンサー(Gillies et al., 1994およびGillies et al., 2004)は、バックグラウンド活性化および不完全な腫瘍活性化をもたらす広いpH応答に起因して、高い腫瘍コントラストを示さない。加えて、それらのシグナル出力は、腫瘍代謝およびpHにおける一時的なゆらぎを伴って変動する。比較して、閾値pH (例えば、多様な腫瘍によって容易に達成可能な、6.9 (Volk et al., 1993)未満でのUPSナノプローブのバイナリーかつ不可逆的な活性化は、腫瘍アシドーシスシグナルの時空間的ゆらぎを安定なバイナリー陽電子出力へ永久に変換することができる。この場合における相転移応答の鋭さは、腫瘍のような酸性組織中における
64Cu保持ポリマーの特異的な滞留または捕捉へ変換され、一方、捕捉はバックグラウンド正常組織中において抑制される。より具体的には、異なる時点(t
1, t
2,… t
n)で、腫瘍の種々の領域が、前方画像中の緑色スポットによって示されるように、pH閾値(6.9)未満に酸性化され得る(
図15)。この一時的なアシドーシスシグナルは、次に、腫瘍部位で循環している
64Cu-UPSミセルをポリカチオン性ユニマーへと活性化し、これらは不可逆的に捕捉され、ポリマーシグナルの安定な跡を残す(後方画像中の赤色スポット)。不可逆的な捕捉は、実験的に立証されたように、
64Cu-UPSについて経時的に用量蓄積を増加させた(
図6)。さらに、癌細胞のリソソーム内部でのポリマーの拘束は、拡散によって引き起こされるシグナルぼやけを回避し、これは、24時間後でさえ、腫瘍および正常組織境界でのシャープなコントラストを説明し得る。インタクトなミセルは、血液循環を通して腫瘍部位ならびに正常組織からクリアランスされる。
64Cu-UPSは、pHに応答してのバイナリー活性化を新規の組織滞留出力と連結することによって、バックグラウンドを抑制し、一方、1 (腫瘍)または0 (筋肉/脳)出力によって近似されるような腫瘍シグナルの最大増幅を可能にする。データは、
64Cu-UPSトレーサーが、正常な脳および扁桃組織中に見られる高いシグナルによってFDG画像化が典型的に覆い隠される、脳、頭部および頸部を含む種々の解剖学的部位(
図7および
図9)中の広範囲の潜在性癌タイプを検出することができたことを示している。前述したように、FDGも、グルコース輸送体を通してのFDG取り込みおよびヘキソキナーゼによるリン酸化後の癌細胞中における拘束によって腫瘍コントラストを増加させるために、捕捉および組み込み機構を用いる。しかし、
64Cu-UPSとは異なり、このプロセスは可逆的であり、バックグラウンド抑制を伴ってバイナリーではない。FDGのかなりの用量蓄積が腫瘍中に観察されたが(例えば、HN5腫瘍中5.4 ± 0.7 %ID/g)、健康な組織中のFDGの高い生理学的取り込み(例えば、脳、褐色脂肪および横紋筋において、それぞれ、7.9 ± 1.6、8.1 ± 1.3 %および6.3 ± 0.3 %ID/g)は、腫瘍の癌特異的検出を妨げる。
64Cu-UPSについて、相転移の独特なバイナリー出力をアシドーシスシグナルの捕捉とカップリングすることは、潜在性疾患のより癌特異的な検出を可能にする(
図9)。腫瘍アシドーシスに加えて、他の因子、例えば、漏出性腫瘍血管系、破壊された血液脳関門(73C神経膠腫検出の場合のような)、上昇したミクロ飲作用(micropinocytosis)、および損なわれたリンパ管もまた、
64Cu-UPSによる周囲の正常組織に対しての腫瘍のロバストなコントラストに寄与し得る。一方、細網内皮系(例えば、肝臓および脾臓)中の
64Cu-UPSの高い取り込みは、これらの臓器中における癌の検出におけるこの薬剤の使用を排除し得る。
【0100】
要約すれば、癌検出の精度を改善するために腫瘍アシドーシスシグナルを不連続の出力へ捕捉および統合するpH (プロトン)トランジスター様ナノ粒子について、分子機構が決定された。これは、UPSナノ粒子のトランジスター様バイナリー挙動へカップリングされた、第2の出力、組織滞留を示す。概念のインパクトは、PET画像化による脳、頭頸部、および乳房中の小さな潜在性疾患(10~20 mm3または3~4 mm)の非侵襲性検出によって説明される。1つのUPSナノプラットフォーム中におけるPET機能および蛍光機能の両方の組み込みは、2つの直交画像化様式にさらに相乗作用を与え、これは、PETによる腫瘍量の初期全身評価、続いての局所介入(例えば、生検または手術)のための高分解能蛍光画像化を潜在的に可能にする。画像診断に加えて、バイナリー用量滞留におけるUPS技術についてのこの第2の出力はまた、放射性核種(例えば、177Luおよび90Y)または増加した曲線下面積(AUC)を有する薬物の腫瘍標的送達において治療的利益を提供し得る。提案された化学積分アルゴリズムは、プレシジョン・メディシンの設計について分子協同性原理(Li et al., 2018)を組み入れるための戦略的洞察力を作ると同時に、早期癌検出および監視に直ちに影響を与えることが予想される。
【0101】
実施例2:合成方法および追加データ
A.ICG-およびNOTA-コンジュゲートUPS6.9ナノプローブならびにNOTA-PEG-b-PLAナノ粒子の合成
ポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(エチルプロピルアミノエチルメタクリレート) (PEG-b-PEPA)コポリマーを、原子移動ラジカル重合法を使用して、報告された手順に従って合成した(Zhao et al., 2016)。ポリマーを次いでメタノール中に溶解し、ICG-Sulfo-OSuを先ず添加し、NHS-エステル化学(Ma et al., 2014)を介してAMA (1:1モル比)と1時間反応させた。次に、p-SCN-Bn-NOTAを添加し、残りのAMA (4:1 モル比)と室温で一晩反応させた。コンジュゲートされていないICGおよびNOTAを、10 kDaでの分子量カットオフを有するMillipore限外濾過膜によって除去した。UPS6.9ナノプローブを、溶媒蒸発法(Wang et al., 2014)によって生成し、さらなる使用のために5 mg/mlへ濃縮した。
【0102】
NOTAコンジュゲートPEG-b-PLAブロックコポリマーを、公表された手順(Blanco et al., 2010)に従って開環重合によって合成した。簡潔には、D,L-ラクチドの重合を、高分子開始剤としてFmoc-アミン-PEG5K-ヒドロキシルおよび触媒としてSn(Oct)2を使用して110℃で行った。Fmocの脱保護をDMF中20%ピペリジンによって行った。エーテル中に3回沈殿させてポリマーを精製した後、固体ポリマーをDMF中に懸濁させ、室温で一晩、p-SCN-Bn-NOTAと反応させた。コンジュゲートされていないNOTAを、10 kDaでの分子量カットオフを有するMillipore限外濾過膜によって除去した。
【0103】
B.UPS6.9またはPEG-b-PLAナノプローブの64Cu標識
UPS6.9またはPEG-b-PLAコポリマー上のNOTAへの64Cu2+のキレート化を、37℃で15分間、4 M酢酸アンモニウム緩衝液でpHを6.0~6.5へ調節することによって達成した。ミセル形成を、2 M炭酸ナトリウムで溶液pHを7.4へ調節することによって行った。未結合64CuCl2の除去を、3回、100 kDの分子量カットオフで遠心膜濾過によって達成した。遠心濾過前および後に、1μLのミセル溶液を、8μL DI H2Oおよび1μLの50 mMジエチレントリアミンペンタアセテート(DTPA)と5分間混合した。混合物の2μLアリコートを、次いで、TLCプレート上にスポッティングし、移動相(PBS)で溶出した。標識効率をラジオ-TLCによって決定した。
【0104】
C.pH滴定および透析
UPS6.9ポリマーを、先ず、2.5 mL 0.1 M HCl中に溶解し、DI水で2.0 mg/mLへ希釈した。塩化ナトリウムを添加し、塩濃度を150 mMへ調節した。撹拌しながら少量(1μLずつ)の4.0 M NaOH 溶液を添加することによって、pH滴定を行った。3~11の範囲にわたるpH増加を、総添加体積のNaOHとしてモニタリングした。完全プロトン化状態および完全脱プロトン化状態(それぞれ、100および0%に等しいプロトン化度)を、pH滴定曲線の一次微分の2つの極値点によって決定した。pH値を、微小電極を備えるMettler Toledo pHメーターを使用して測定した。次に、プロトン化度50%を有するUPS6.9ポリマーを、対応する体積の4.0 M NaOHを添加することによって得た。10 mLのポリマー溶液を、約5 mL濾過サンプルまで、100 kDaでの分子量カットオフを有する超遠心分離管を使用して遠心分離した。残留層および濾液層の両方におけるポリマー量およびプロトン化度を定量するために、pH滴定を行った。実験を3回繰り返し、データを平均値 ± s. d.で示す。
【0105】
D.細胞培養
インビボ腫瘍モデルのために使用した癌細胞株は、HN5、FaDu、ヒト頭頸部癌、4T1乳癌、p53-/-、PTEN-/-、およびBRAFV600E突然変異を有する初代マウス星状細胞(73C)を含む。HN5およびFaDu細胞株はMichael Storyの研究室から得;4T1はDavid Boothman研究室から得;73CはWoo-Ping Ge研究室から得た。全ての細胞株を使用前にマイコプラズマ汚染について検査した。汚染についての陰性状態をBiotool製のマイコプラズマ検出キットによって確認した。10%ウシ胎仔血清および抗生物質を含むDMEMまたはRPMI中において、細胞を培養した。
【0106】
E.動物モデル
この研究に関する動物プロトコルは、Institutional Animal Care and Use Committeeによって検討および承認された。雌性NOD-SCIDマウス(6~8週)を、UT Southwestern Medical Center Breeding Coreから購入した。同所性頭頸部腫瘍について、HN5およびFaDu(1マウス当たり2×106)をオトガイ下三角領域中へ注射した。接種から1週間後、腫瘍サイズ20~100 mm3を有する動物を画像化研究のために使用した。同所性マウス4T1乳房腫瘍モデルを、乳房脂肪体中への4T1(1マウス当たり5×105)細胞の注射によってBalB/Cマウスにおいて確立した。GFPトランスフェクト73Cマウス膠芽腫腫瘍モデルを、73C神経膠腫細胞をマウスの左半球に頭蓋内移植することによって確立した。神経膠腫(直径2~4 mm)がマウスにおいて2週間以内に形成された。
【0107】
F.細胞取り込みアッセイ
1.5×104 HN5癌細胞を、ナノプローブインキュベーション前に、0.2 mL DMEM培地を含有する96ウェルプレートの個々のウェル(各時点についてn = 3)中へ播種して一晩インキュベートした。40 mg/mLヒト血清アルブミンを含有するpH 6.5またはpH 7.4 DMEM培地のいずれかに分散された20μg/mL 64Cu-UPS6.9または64Cu-PEG-PLAを、HN5細胞と共にインキュベートした。特定の時点で、細胞ウェルを冷PBS緩衝液で3回洗浄し、捕らえられなかったナノプローブを全て除去した。最後に、96ウェルプレートをPerkin Elmerストレージフォスファスクリーン上に一晩曝露し、次いで、64Cuトレーサー定量化のためにTyphoonイメージャーを使用して画像化した。共焦点画像化のために、ナノプローブインキュベーション後、細胞を、RTで10分間、PBS中4%パラホルムアルデヒドで固定し、そして4℃で10分間、PBS中0.1% Triton X-100で透過処理した。細胞を、次いで、核、細胞膜、およびリソソームについて、それぞれ、Hoechst 33342、抗F-アクチン、および抗LAMP1によって染色した。抗ポリ(エチレングリコール)抗体を、UPS6.9コポリマーを標識するために使用した。
【0108】
G.インビボPET/CT画像化
64Cu-UPS6.9について、各マウスに、尾静脈注射を介して食塩水150μL中ナノプローブ約100μCiを静脈内投与し、注射から18~24時間後に、PET/CT画像を、15分間かけてSiemens Inveon PET/CT Multi-Modality Systemにおいて取得した。FDG実験について、マウスをPET画像化前に12時間絶食させた。各マウスに、尾静脈注射を介して食塩水150μL中FDG 150μCiを静脈内投与した。注射から1時間後に、PET/CT画像を、15分間かけて取得した。マウスを画像化の期間中2%イソフルラン下にて画像化ベッド上に鎮静させた。58μmの焦点で80 kVおよび500μAにて行われたCTデータ取得の直後に、15分間静的PETスキャンを行った。Fourier Rebinning and Ordered Subsets Expectation Maximization 3D (OSEM3D)アルゴリズムを使用して、PET画像を再構成した。再構成されたCTおよびPET画像を、Inveon Research Workplace (IRW)ソフトウェアを使用して融合および解析した。3D Ordered Subsets Expectation Maximization (OSEM3D/MAP)アルゴリズムを使用して、PET画像を次いで単一のフレームへ再構成した。組織を含有する全ての平面中に腫瘍を含むCTに基づいて、関心領域(ROI)を手動で描いた。標的活性を、組織1グラム当たりの注射用量のパーセンテージ(%ID/g)として定量的に計算した。
【0109】
H.エクスビボオートラジオグラフィーおよび組織学
PET画像化直後、マウスを屠殺し、腫瘍ならびに主要臓器(例えば、脳、肝臓、脾臓、心臓、腎臓、筋肉など)を採取および凍結した。切片スライドを各標本から調製した。スライドを先ずPerkin Elmerストレージフォスファスクリーン上に曝露し、次いで、64Cuトレーサー定量化のためにTyphoonイメージャーを使用して画像化し、続いて、ICGシグナルについて800 nmフィルターを備えるLICOR Odysseyフラットベッドスキャナーを使用して蛍光画像化を行い、最後に、H&E染色を腫瘍の組織学的相関のために行った。
【0110】
I.統計解析
データを平均値 ± s.d.として表す。予測される効果量を検出するために適切な検出力(>85%、0.05の有意性で)を保証するようにサンプルサイズを選択し、効果量は予備データまたは同様の実験での以前の経験に基づいて推定された。P値の計算についての対応のある、両側スチューデントt-検定を使用して、群間の差を評価した。
【0111】
予測的実施例3:治療剤の有効性を判定するための64Cu-UPSを使用する、組織炎症の結果としての偽陽性診断の克服
非癌性組織炎症(例えば、細菌感染症または手術もしくは放射線からの組織傷害)は、偽陽性PET結果を頻繁に引き起こし、患者の不安、および付随する病的状態を伴う不必要な検査に寄与する。炎症細胞は代謝エネルギーの主要な供給源としてグルコースを使用し、従って、増加したグルコースの取り込みおよび高率の解糖は、炎症組織の特徴である(Hess et al., 2014)。この研究において、組織炎症部位での64Cu-UPSの画像化アウトカムを調べるために、リポ多糖(LPS)誘発、腫瘍フリー動物モデルを設定する。LPS誘発炎症モデルは、FDG-PETによって急性肺傷害(de Prost et al., 2014およびZhou et al., 2013)、アテローム性動脈硬化症(Rudd et al., 2010)、および関節炎(Hsieh et al., 2011)を研究するために広く使用されてきた。ある研究において、LPS刺激は、マクロファージ中においてFDG取り込みを2.5倍増加させることが示された(Tavakoli et al., 2013)。この研究において、LPSは、C57BL/6免疫担当マウスの右後肢筋肉中へ注射される(PBS 20μL中50μg;低用量は強い全身性炎症を回避するために使用される)。注射後2~4時間で、血清を収集し、炎症性サイトカイン(例えば、TNF-αおよびIL-10)を分析する。全身サイトカインレベルが高い場合、LPS用量を減らす。1および7日目に、腫瘍画像化研究について以前記載されたようなプロトコルに従ってFDGおよび64Cu-UPSを使用して、動物を画像化する。PET画像の定量的比較のために、LPS注射無しの左後肢を対照として使用する。%ID/gおよびSUVの値を決定する。画像化後、肢の筋肉をホルマリン中に固定し、切片化する。炎症細胞(例えば、組織浸潤性マクロファージ)の密度を、組織切片中において推定し、それをFDGおよび64Cu-UPSシグナル強度と相関させる。FDGは、浸潤性炎症細胞中の高率のグルコース取り込みに起因して、炎症組織中において強いシグナルをもたらすことが予想される。対照的に、64Cu-UPSシグナルは、健康なリンパ系によるプロトンの速いクリアランスおよび炎症部位でのナノプローブの限られた血管外漏出に起因して(血管透過性・滞留性亢進効果(extended permeation and retention effect)としても公知の、より漏れやすい血管系および損傷したリンパ管を有する腫瘍とは異なって;Fang et al., 2011およびMaeda et al., 2000)、低いことが予想される。
【0112】
組織炎症は炎症細胞の高解糖率を通して64Cu-UPSを活性化し得ることが可能である。LPS注射部位中における64Cu-UPSシグナルの持続が観察される場合、タウリンクロラミン(TauCl)の投与の研究が開始され、これは、LPS刺激後のマクロファージ中のFDGシグナルを無効にすることが示された(Kim et al., 2009)。TauClはアポトーシス後に活性化好中球から生成および放出され、これは、炎症性メディエーター(例えばTNF-α;Kim et al., 2014およびMarcinkiewicz et al. 2014)の産生を阻害することによって抗炎症特性を発揮する。炎症細胞中の64Cu-UPSシグナルを特異的に減少させることができるかどうかを評価するために、TauClを試験する。
【0113】
予測的実施例4:非侵襲性ツールとして64Cu-UPSプローブを使用する、他の療法の有効性のモニタリング
近年において、FDG-PETは、放射線または化学放射線療法を受ける患者における治療反応をモニターするためにますます使用されるようになった(Challapalli et al. 2016およびWeber, 2005)。FDG-PETの顕著な臨床的弱点は、療法から生じる偽陽性(例えば、放射線誘発組織炎症)、または処置後の縮小している腫瘍の偽陰性である。64Cu-UPS-PETは、選択された頭頸部癌モデル中における放射線および/または化学療法の抗腫瘍有効性をモニタリングするための正確な画像化方法を提供すると仮定される。アシドーシス経路を標的とする小分子阻害剤の抗腫瘍有効性を予測する64Cu-UPS-PETの実行可能性を調べる。成功裏に実証されるならば、64Cu-UPS-PETは、化学放射線療法を含むがこれに限定されない既存の療法または新規の小分子腫瘍アシドーシス阻害剤に対する腫瘍反応を、療法過程における初期段階で予測し、それによって、効果のない療法の副作用および費用を減らす可能性を有する。
【0114】
様々な頭頸部腫瘍は化学放射線療法に対して異なる感受性を有し得る。64Cu-UPS-PET応答に依存して、療法の強度を増加または減少させ、抗腫瘍有効性および処置病的状態に対するその効果を調べる。他方では、化学放射線が64Cu-UPS-PET診断において高レベルの偽陽性/陰性を誘導するならば、機構を特定し、そして偽性率を最小限にするために軽減戦略を開発する。
【0115】
本明細書において開示され、特許請求された組成物および方法は全て、本開示を考慮することにより過度の実験なしに作製、実施することができる。本開示の組成物および方法を特定の態様の観点から説明したが、本開示の概念、精神および範囲から逸脱することなく、組成物および方法に対して、ならびに本明細書に記載の方法の工程または工程の順序に対して、変更を適用してもよいことが当業者に明らかであろう。より具体的には、化学的および生理学的の両方に関連するある薬剤を本明細書に記載の薬剤の代わりに使用してもよく、一方、同一または同様の結果が達成されるであろうことが明らかであろう。当業者に明らかなこのような同様の置換および改変は全て、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の精神、範囲および概念の内にあると見なされる。
【0116】
参考文献
下記の参考文献は、本明細書に記載されるものを補う例示的な手順またはその他の詳細をそれらが提供する程度まで、参照により本明細書に具体的に組み入れられる。