(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】低濃度リステリアの検出および計数方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/04 20060101AFI20240814BHJP
C12Q 1/06 20060101ALI20240814BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20240814BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20240814BHJP
C12Q 1/6841 20180101ALI20240814BHJP
【FI】
C12Q1/04
C12Q1/06
C12M1/34 A
C12Q1/686 Z
C12Q1/6841 Z
(21)【出願番号】P 2021535310
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(86)【国際出願番号】 EP2019086742
(87)【国際公開番号】W WO2020128008
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-16
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(73)【特許権者】
【識別番号】521266653
【氏名又は名称】センシリスト エーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】スクジャーダル、タラン
(72)【発明者】
【氏名】マティセン-ファゲレング、トーン
(72)【発明者】
【氏名】フェグリ、アグネテ
(72)【発明者】
【氏名】コフィッショ-セウォルヌ-カジョー、アイザック
【審査官】鳥居 敬司
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-525825(JP,A)
【文献】国際公開第2013/145283(WO,A1)
【文献】特開2008-035789(JP,A)
【文献】特表2001-510054(JP,A)
【文献】Test Rhamnose Code 355-3669,BIO-RAD,2011年05月31日,pp.1-2,https://www.bio-rad.com/webroot/web/pdf/fsd/literature/Technical_Sheets/TS_Test%20Rhamnose_V0_03-15-11.pdf
【文献】SIGMA-ALDRICH,53707 HiCrome(TM) Listeria Agar Base, modified (Listeria Hicrome(TM) Agar Base, modified),Product Information,2013年,pp.1-2,https://www.sigmaaldrich.com/deepweb/assets/sigmaaldrich/product/documents/272/285/53707dat.pdf
【文献】BD(TM) PALCAM Listeria Agar,[ONLINE],2003年06月,pp.1-4,https://legacy.bd.com/europe/regulatory/Assets/IFU/HB/CE/PA/PA-254539.pdf
【文献】International Journal of Food Microbiology,1989年,Vol.8, No.4,pp.299-316
【文献】Journal of Food Protection,1998年,Vol.61, No.9,pp.1199-1202
【文献】Journal of Food Protection,1999年,Vol. 62, No. 3,pp. 244-251
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00-1/70
C12M 1/00-1/42
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中のラムノース発酵リステリア属菌を検出する方法であって、
i)
培養基において、リステリア菌を含む可能性のある試料の懸濁液を調製する工程であって、
前記
培養基は、
ラムノースと、
抗生物質と、
pH変色指示薬と、
LiClとを含有し、
前記抗生物質は、ナリジクス酸、セフタジジム、ポリミキシンB硫酸塩、シクロヘキシミド、およびアンホテリシンBのうちの3つ、4つ、または5つすべてであり、
ii) リステリア菌の増殖を可能にする条件下で前記懸濁液をインキュベートする工程、および
iii)
前記懸濁液の色の変化を検出することにより、陽性試料を同定する工程と、
を含むか、またはこれらからなる方法。
【請求項2】
ラムノース発酵リステリア属菌の計数をさらに含み、当該方法は、
前記工程ii)の前に、ia) 前記工程i)で調製した前記懸濁液をマルチウェルトレイに移す工程と、
iv) 前記工程iii)の後に実行され、前記試料中の前記リステリアの濃度を計算する工程と、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程iii)の後に実行され、前記試料中の前記リステリアの濃度を計算する工程である前記工程iv)は、最確数法を用いることにより行う、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
リステリア・モノサイトゲネスの存在を確認する工程をさらに含み、当該工程は、請求項1の工程iii)または請求項2の工程iv)の後に実行される、請求項1
から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
リステリア・モノサイトゲネスの存在を確認する工程は、工程iii)で同定した陽性試料を第2の増殖培地に接種することにより行う、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
リステリア・モノサイトゲネスの存在を確認する工程は、分子法を用いることにより行われ、前記分子法は、ポリメラーゼ連鎖反応、in situハイブリダイゼーション、酵素結合免疫吸着法、全ゲノムシーケンス、又は分析プロファイルインデックスである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記ラムノース発酵リステリア属菌を含む可能性のある試料は、工程i)が実行される前、および/または工程i)の
培養基中において、当該試料を小片に分割することによって得られる、請求項1~
6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記抗生物質は、ナリジクス酸、セフタジジム、ポリミキシンB硫酸塩、シクロヘキシミド、およびアンホテリシンBのうちの4つまたは5つすべてである、請求項1~
7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記pH変色指示薬は、フェノールレッドである、請求項1~
8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記LiClは、約5~17g/lの量で存在する、請求項1~
9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記ラムノースは、約5~17g/lの量で存在する、請求項1~
10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記試料は、食品試料、環境試料、または動物からの試料である、請求項1~
11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記食品試料は、生
肉または加工肉
である、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記食品試料は、鶏肉製品または魚製品、あるいは野菜またはインスタント食品である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記環境試料は、水試料、汚れ試料、または食品産業の環境試料であ
って、前記食品産業の環境試料は、表面拭い取り検体である、請求項
12に記載の方法。
【請求項16】
前記方法は、閉鎖系で行われる、請求項1~1
5のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
ラムノース発酵リステリア属菌を増殖および/または検出するための培養基であって、 a) 約5~15g/lの濃度のラムノースと、
b) ナリジクス酸、セフタジジム、ポリミキシンB硫酸塩、シクロヘキシミド、およびアンホテリシンBのうちの3つ、4つ又は5つすべての抗生物質と、
c) pH変色指示薬と、
d) 約5~15g/lの濃度のLiClと、
を含有する培養基。
【請求項18】
試料中のラムノース発酵リステリア属菌を検出および/または計数するためのキットであって、
a) ラムノース、
ナリジクス酸、セフタジジム、ポリミキシンB硫酸塩、シクロヘキシミド、およびアンホテリシンBのうちの3つ、4つ又は5つすべての抗生物質、
pH変色指示薬、および
LiClを含有するか、またはこれら
からなる培養基を含有する容器と、
b) リステリア菌を含む可能性のある試料を培養するための容器またはマルチウェルトレイと
、
を備えるキット。
【請求項19】
陽性試料を同定するためのカラーチャートを備える、請求項18に記載のキット。
【請求項20】
使用説明書、請求項18または19に記載のキット。
【請求項21】
請求項1~
16のいずれか
に記載の方法による試料中のコロニー形成単位の検出および計数に基づいて、リステリアの増殖予測を表示するコンピュータ実装の計算機であって、
c) 入力デバイスと、
b) 出力デバイスと、
d) ダウンロード可能またはメモリ内蔵のソフトウェアとを備え、
前記ソフトウェアは、0.04cfu/g~1cfu/gの範囲で前記試料中に見つけられたコロニー形成単位の数の入力を受け付ける、計算機。
【請求項22】
前記リステリア菌は、リステリア・モノサイトゲネスである、請求項1~16のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記リステリア菌は、リステリア・モノサイトゲネスである、請求項17に記載の培養基、または請求項18~20のいずれかに記載のキット。
【請求項24】
前記リステリア菌は、リステリア・モノサイトゲネスである、請求項21に記載の計算機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中のリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)等のリステリア菌を検出および/または計数する方法および手段に関する。本方法は、リステリア菌を含む可能性のある試料を選択的増殖培地で培養することを備え、リステリアのより迅速かつ高感度の検出を可能にする。
【0002】
背景技術
リステリア・モノサイトゲネスは、毎年何千ものリステリア症の症例を引き起こす食品媒介性病原体である。ヨーロッパだけでも、毎年約1500件の症例が報告されている(EFSA2018)。サルモネラ症やカンピロバクター症と比較して、リステリア症は、症例数がより少ないが致死率はより高い。
リステリア・モノサイトゲネスは、リステリア症という疾病の原因となる病原菌の一種である。これは、酸素の存在下または非存在下で生存することができる、グラム陽性の通性嫌気性細菌である。この病原菌は、宿主の細胞内で増殖および繁殖することができ、最も毒性の高い食品媒介性病原体の1つである。高リスク患者のリステリア症感染症は致命的となる場合がある。
【0003】
L.モノサイトゲネスは遍在する細菌である。すなわち、土壌、水、食品、食品生産環境、動物、ヒト等、数多くの様々な箇所に存在する。この細菌は、高い衛生基準を有しHACCPシステムを導入している工場であっても、食品生産施設に容易に病原巣を形成する。EFSAは、特定カテゴリのインスタント食品におけるL.モノサイトゲネスの含有率が0.5~6%であると報告している。含有率は魚介類製品で最も高い(EFSA2018)。
リステリア・モノサイトゲネスは、0℃や-1.5℃まで低下させた低温度であっても増殖する能力があり、これにより通常の冷蔵温度での増殖が可能になるため、人間用の食料品における制御から逃れる能力が非常に高い。
【0004】
リステリアによる疾病の感染リスクが最も高い人々は、特に高齢者、免疫力が低下している人々、妊婦(胎児)である。1gあたり100~1000のコロニー形成単位(cfu)というわずかな細菌であっても、高リスクグループでは病気を引き起こす可能性があり、感染は致命的であり、妊婦の場合は流産を引き起こすことさえある。健康な人はリステリア・モノサイトゲネスの影響を通常受けないが、大量の場合は通常無害な軽度の症状を引き起こす可能性がある。過去数十年の間に、ノルウェーでは毎年20~50例のリステリア症が記録されている。これは、住民の数を揃えて測定した場合、ヨーロッパの他の地域とほぼ同一の頻度である。
【0005】
リステリア症の結果は非常に深刻であり、最悪の場合、死に至る可能性があり、社会的費用は非常に高くなる。リステリア・モノサイトゲネスは、宿主の脳、脊髄膜、および/または血流に感染する可能性がある。
リステリア症は人間にとって非常に深刻な病気であるという事実、リステリア菌は比較的頻繁に食品に発生するという事実、ならびに食品中のリステリア・モノサイトゲネスの数を疾患を生じさせる数よりも下方に抑えることが比較的簡単な手段でできるという事実を組み合わせると、立法時およびノルウェーの魚の購入者を含む顧客に関してリステリア・モノサイトゲネスが強く着目されている。
【0006】
リステリアは、定性的または定量的に分析できる。ISOの方法11290-1(定性)および11290-2(定量)は、法律で標準化されている方法である。ただし、これらの方法の検出限界はそれぞれ1cfu/25gおよび10cfu/gであり、汚染が発生しやすい処理工程、例えば、製品を市場に出荷する前に行われる食肉化処理や切り身化加工の際の分析に十分な意味を持たせるものではない。水産物の取引に従事する人々は、ISOの方法の制限について以下のように述べている。「本方法が血圧を測定するためのものであったならば、血圧が1000未満であるというような結果を得るようなものだ。この情報は有用となるほど十分な意味を有しない。同様に、0.04~10cfu/gの範囲のリステリア濃度を測定する方法が必要である。」
【0007】
リステリアは、冷蔵保存中に食品内で増殖可能である。消費者が食品を食べるときにどれほどの濃度に到達しているかは、製品状況、保存状況、処理状況、および食べる消費者の感染リスクによって異なる。サラダとして冷たい状態で用いられることを前提とした加熱処理肉や、寿司や刺身として用いられる魚等の一部の製品では、初期濃度が2cfu/gを超えると、合理的に予見可能な条件下で、健康な消費者の食品健康リスクを発現するレベルに達する可能性がある。ただし、感染リスクの高い消費者の場合、初期濃度は0.2cfu/g未満である必要がある。他の製品では、より高い濃度であってもよいが、ほとんどの場合、食品安全の観点から許容できる濃度は0.2~5cfu/gである。ISOの方法では、これらの濃度が区別できない。多くのプレートを適用するか、試料をろ過するか、培養液中のより高濃度の試料を他の方法で取得しない限り、10cfu/g未満のレベルを計数できないためである。
【0008】
最近、ISOの方法の改定が行われた(2017)。以前のバージョン(1997)からの変更点を以下に示す。
ISO112902:1998と比較した主な変更点は、以下の通りである。
・リステリア・モノサイトゲネスの計数に関して、以下のような改良が加えられた。
・一次懸濁液が、緩衝ペプトン水、サプリメントを含有するか含有しないハーフフレーザーブイヨン、およびISO6887で言及されているすべての適切な希釈剤(すべての部分)を含む。
・蘇生工程が削除された。
・確認のための顕微鏡的外観検査、カタラーゼ検査、CAMP検査が任意となった。
・新規の性能特性が含まれた。
・さらに、リステリア属菌の計数が範囲に含まれるようになり、それに応じてタイトルが変更された。
10cfu/g未満のL.モノサイトゲネス濃度の計数については、その重要性が分かっているにもかかわらず、これらの改定では扱われていない。
ISOの定性方法11290-1は、増殖するのに最適な条件下でリステリアを選択寒天培地に接種する工程と、その後、試料中にリステリアが存在するかどうかを定性的に決定する確認工程とを含む。ただし、この定性方法では、試料中の実際の細菌数を特定することはできず、細菌数が多い試料と少ない試料とを区別することさえできない。このISOの定性方法は、研究所が試料を受け取ってから完了までに1週間かかる。
【0009】
ISOの定量方法11290-2では、10gの試料が分析される。この定量アッセイの問題の1つとして、検出限界が1gあたり10cfuであり、これでは不十分であることが挙げられる。したがって、定性検査が陽性であるが定量検査が陰性である場合、製品のリステリア菌は1gあたり10cfu未満であると結論付けることはできるが、例えば5cfuしかないか、まったくないかを結論付けることはできない。
【0010】
ISOの定量方法11290-2は、試料の段階的な希釈液を選択的増殖培地であるALOAに接種する第1の工程と、ラムノース検査、キシロース検査、グラム検査、およびカタラーゼ検査による確認を行う第2の工程とを含む。ALOA培地の選択圧として塩化リチウムが用いられ、変色指示薬を用いて推定コロニーが示される。ラムノースとキシロースによる確認は、これらの糖を利用できる細菌はごくわずかであることに基づいている。したがって、ISOの定量方法は、選択寒天プレート培地で2日間試料を培養する工程と、その後に確認を行う工程とを含む。このISOの方法は、研究所が試料を受け取ってから完了までに5日かかる。
【0011】
通常、上記2つのISOの方法が組み合わせられて用いられる。しかしながら、生サーモンにおけるリステリアの問題の場合は、安全であると見なされるのに魚がリステリアを全く含まない必要があるとは限らないため、これら2つの方法の組み合わせは十分ではない。製品バッチ内にもかなりのばらつきがある場合があり、採取した試料は必ずしもバッチ全体を代表するものではない。
【0012】
現行方法の問題点の1つは、分析できる試料の量が少ないことである。つまり、検査する試料に細菌が不均一に分布していると、細菌が見落とされ、試料がリステリア菌に対して陰性であると評価される可能性がある。
【0013】
ヨーロッパの食品法には、インスタント食品に含まれるL.モノサイトゲネスの食品安全基準がある。これの本質は、L.モノサイトゲネスの濃度が貯蔵寿命の間いつでも100cfu/gを超えてはならないということである(EU規則2073/2005)。一部の国ではL.モノサイトゲネスについてはゼロトレランスであり、低濃度リステリアの計数が難しいということも少なくとも部分的にはあって、この選択肢はいくつかの国で議論されている。しかし、1)食品中のL.モノサイトゲネス含有率が比較的高いこと、2)生産施設からのL.モノサイトゲネス除去が困難であること、および3)濃度が高くなった場合にリステリア症の可能性が高まることのすべてを組み合わせて考えると、ゼロトレランスは現実的ではない。
【0014】
100cfu/gという濃度は、食品の安全性と実際の生産との間の合理的なトレードオフと考えられる。分析方法の感度と正確度が必要な濃度範囲のL.モノサイトゲネスを検出および計数するのに十分であり、細菌がバッチ内で十分に均一に分布しておりバッチから採取した試料には実際に代表的な濃度の細菌が含まれているという条件下であれば、この制限値はリステリア症の症例を回避するのに十分であると意見が一致している。
【0015】
残念ながら、これらの条件はいずれも満たされていない。商業生産で自然に汚染された食品を用いた研究では、処理中にわずか(通常は100gあたり1個ないし1gあたり2個)のL.モノサイトゲネス菌が製品に移行することが示されている。これらの細菌は増殖してその場に残り、貯蔵中に食品中にクラスターを形成する。EU規則2073/2005の微生物基準で指定されている試料採取計画では、それぞれ25gの試料が5~10個と指定されているが、この小さな試料サイズで濃度の不均一性をカバーできるかどうかは疑問である。第二に、食品の試料採取は主に処理レベルで実行される。つまり、L.モノサイトゲネスの濃度は1gあたり10cfuをはるかに下回っている。現行の参考ISOの方法(ISO11290-1および11290-2)の検出レベルは、定性分析では1cfu/25g、計数では10cfu/gである。これは、定性分析では陽性であるが計数では陰性である試料には、1gあたり0.04~9.9cfuの範囲が含まれていることを意味する。これは広範囲であり、その結果、一部の食品提供者、顧客、および管轄当局は、リスクが最小限である食品の損失に繋がるとしても、検出時の食品の回収の制限(0.04cfu/g=1cfu/25g)を設定している。これらの濃度が高すぎて貯蔵寿命の終わりまでに100cfu/gの制限を超えないことを保証できない場合でも、制限を10cfu/gに設定している人々もいる。
【0016】
まとめると、製品が市場に出荷される前にプロセスレベルで試料採取を行う必要がある場合、インスタント食品でのL.モノサイトゲネスの食品安全基準の順守は困難であり、0.04~10cfu/gの範囲におけるより正確な方法が必要である。
【0017】
したがって、食品試料および設備表面からの試料採取に用いられた拭い取り検体中のリステリア・モノサイトゲネス等のリステリアを検出するための、より多くの試料量を処理可能であり、より迅速であり、感度がより高い分析が必要である。
【0018】
したがって、本発明の目的は、本明細書に記載の問題の1つまたは複数を克服するか、または少なくとも軽減することである。
【0019】
概要
本明細書は、試料中のリステリア・モノサイトゲネス等のラムノース発酵リステリア属菌を検出する方法であって、
i) ラムノース、1つ以上の抗生物質、pH変色指示薬、およびLiClを含有する第1の培養基中の、リステリア菌を含む可能性のある試料の懸濁液を調製する工程と、
ii) リステリア菌の増殖を可能にする条件下で上記懸濁液をインキュベートする工程と、
iii) 陽性試料を同定する工程と、
を含むか、またはこれらからなる方法に関する。
【0020】
上記方法は、ラムノース発酵リステリア属菌の計数をさらに含んでもよく、当該方法は、
ia) 上記工程i)で調製した上記懸濁液をマルチウェルトレイに移す工程と、
iv) 上記工程iii)の後に実行され、最確数法を用いる等して上記試料中の上記リステリアの濃度を計算する工程と、
を含む。
【0021】
したがって、リステリア・モノサイトゲネス等のラムノース発酵リステリア属菌の数を計数する方法は、
i) ラムノース、1つ以上の抗生物質、pH変色指示薬、およびLiClを含有する第1の培養基中の、リステリア菌を含む可能性のある試料の懸濁液を調製する工程と、
ia) 上記工程i)で得られた上記懸濁液をマルチウェルトレイに移す工程と、
ii) リステリア菌の増殖を可能にする条件下で上記懸濁液をインキュベートする工程と、
iii) 陽性試料を同定する工程と、
iv) 最確数法を用いる等して上記試料中の上記リステリアの濃度を計算する工程と、
を含むか、またはこれらからなる。
【0022】
本明細書の方法は、工程iii)で同定した陽性試料をALOA培地等の第2の増殖培地に接種する等し、ポリメラーゼ連鎖反応、in situハイブリダイゼーション、ELISA(酵素結合免疫吸着法)、VITEC、またはAPI(分析プロファイルインデックス)等の分子法を用いて、リステリア・モノサイトゲネスと他のリステリア属菌とを区別することによってリステリア・モノサイトゲネスの存在を確認する工程をさらに含んでいてもよい。この確認工程は、定性方法における工程iii)の後および定量方法における工程iv)の後に実行される。
【0023】
上記ラムノース発酵リステリア属菌を含む可能性のある試料は、工程i)が実行される前、および/または工程i)の第1の培養基において、上記試料を均質化、薄切り、および/またはみじん切り等により小片に分割することによって処理されてもよい。
【0024】
上記抗生物質は、ナリジクス酸、セフタジジム、ポリミキシンB硫酸塩、シクロヘキシミド、およびアンホテリシンBのうちの1つ以上であってもよく、好ましくは上記抗生物質のうちのいずれか2つ以上の組み合わせであってもよい。
上記pH変色指示薬は、フェノールレッドであってもよい。
上記LiClは、約5~17g/l、例えば約7~13g/l、例えば約10g/lの量で存在してもよい。
上記ラムノースは、約5~17g/l、例えば約7~13g/l、例えば約10g/lの量で存在してもよい。
上記試料は、食品試料、環境試料、または組織試料または糞便試料等のヒト等の動物からの試料であってもよい。
上記食品試料は、生または加工肉、鶏肉または魚製品、あるいは野菜またはインスタント食品であってもよい。
環境試料は、表面拭い取り検体等の、水試料、汚れ試料、または食品産業の環境試料であってもよい。
上記方法は、閉鎖系で行われてもよい。
【0025】
また、本明細書は、リステリア・モノサイトゲネス等のラムノース発酵リステリア属菌を増殖および/または検出するための培養基であって、
a) 約5~15g/l、例えば約7~13g/l、例えば約10g/lの濃度のラムノースと、
b) 1つ以上の抗生物質、例えば、ナリジクス酸、セフタジジム、ポリミキシンB硫酸塩、シクロヘキシミド、アンホテリシンBのうちの1つ以上の抗生物質、好ましくは少なくとも2つの抗生物質と、
c) フェノールレッド等のpH変色指示薬と、
d) 約5~17g/l、例えば約7~13g/l、例えば約10g/lの濃度のLiClと、
を含有する培養基に関する。
【0026】
また、本明細書は、試料中のリステリア・モノサイトゲネス等のラムノース発酵リステリア属菌を検出および/または計数するためのキットであって、
a) ラムノース、1つ以上の抗生物質、pH変色指示薬、およびLiClを含有するか、またはこれらから構成される培養基を含有する容器と、
b) リステリア菌を含む可能性のある試料を培養するための容器またはマルチウェルトレイと、
c) 任意で、陽性試料を同定するためのカラーチャートと、
d) 任意で、使用説明書と、
を備えるキットに関する。
【0027】
上記培養基および上記キットの培養基の成分の濃度は、本明細書に記載の第1の培養基の成分の濃度と同様である。
【0028】
また、本明細書は、本明細書に記載の方法によって行われる、試料中のコロニー形成単位の検出および計数に基づいて、リステリア・モノサイトゲネス等のリステリアの増殖予測を表示するコンピュータ実装の計算機を開示し、該計算機は、
a) キーボードまたはマイク等の入力デバイスと、
a) ディスプレイ、コンピュータまたは携帯電話画面、あるいはスピーカー等の出力デバイスと、
b) スマートフォン上またはウェブページ上のアプリ等の、ダウンロード可能またはメモリ内蔵のソフトウェアとを備え、
上記ソフトウェアは、0.04cfu/g~1cfu/gの範囲で上記試料中に見つけられたコロニー形成単位の数の入力を受け付ける。
【0029】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明、図面、実施例、および特許請求の範囲から明らかになろう。
【0030】
定義
最確数(MPN)は、x倍希釈(15倍、10倍、または2倍希釈等)で液体培地の増殖を複製することにより、試料中に生存している微生物の濃度を推定するために用いられる方法である。最確数は、土壌、水、農産物中の微生物数を推定するために用いることができ、プレートカウントの計数方法に干渉する粒子状物質を含む試料で特に有用である。
【0031】
コロニー形成単位(cfu)は、試料中に生存している微生物または菌細胞の数を推定するために用いられる単位である。「生存している」とは、制御された条件下で二分裂を介して増殖する能力として定義される。コロニー形成単位で数えるには、微生物を培養して生存している細胞のみを数える必要がある。細胞培養におけるコロニーを視覚的に外観から認識するには、かなりの増殖が必要である。
【0032】
「培養すること」や「培養」等は、微生物または細胞の増殖を支援するように設計された固体または液体である増殖培地または培養基中で生細胞を増殖または維持することを指す。増殖培地または培養基は、意図されたそれぞれの微生物または細胞が増殖するのに不可欠かつ適切な栄養素を含む。
【0033】
ALOA(OttavianiとAugustiによるリステリア用寒天培地)培地は、リステリア・モノサイトゲネスを選択的かつ差次的に単離するための選択的発色寒天培地である。この培地はISOの方法に記載されている。
【0034】
ポリメラーゼ連鎖反応、すなわちPCRは、ポリメラーゼとの繰り返し反応を伴う、DNA配列の複数のコピーを作成する方法である。
【0035】
in situハイブリダイゼーション、すなわちISHは、組織学的セクション内における核酸の特定のセグメントの正確な位置確認を可能にする技術である。ISHの根底にある基礎は、組織学的標本内に適切に保存されている場合、レポーター分子が結合している核酸の相補鎖を適用することにより、核酸を検出できることにある。
【0036】
「第1の培養基」という用語は、本明細書の文脈において、ラムノース、1つ以上の抗生物質、pH変色指示薬、およびLiClを含有する培地を意味する。第1の培養基の一例は、本明細書の他の場所に開示されているように、「SensiList broth(SensiList培地、SensiList培養液)」である。
【0037】
「ラムノース発酵リステリア属菌」とは、本明細書では、ラムノースを発酵させることができるリステリア属菌を意味する。このような細菌の例には、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes、L.モノサイトゲネス)、リステリア・イノキュア(Listeria innocua、L.イノキュア)、およびリステリア・ウェルシメリ(Listeria welshimeri、L.ウェルシメリ)が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1は、本明細書に開示の方法の工程の概要を示す。本方法が定性的に用いられた場合の工程を左側に、定量的に用いられた場合の工程を右側に示す。
【
図2】
図2は、SensiList brothの感度検査に用いられるスタッキングパターンを示す。
【
図3】
図3は、本明細書の方法による感度検査の結果を示す。
【
図4】
図4は、SensiList brothの安定性検査の結果を示す。
【
図5】
図5は、生産施設にL.モノサイトゲネスが存在する会社で実施された検査の結果を示す。試料1、3、5、および6は、生産環境の試料である。インキュベート後、3番および5番は黄色に変わった。試料2および4は100gのサーモン試料であった。
【
図7】
図7は、実施例3の推定陽性試料の結果を示す。
【0039】
詳細な説明
本発明者らは、ラムノース発酵リステリア属菌を検出および/または計数する新規な方法を開発した。本方法は感度が高く、少なくとも既存の方法と同一程度に正確であり、迅速に実行され、一般的なISOの方法よりも検出限界が低い。この方法により、非常に少量のリステリア・モノサイトゲネスやリステリア・イノキュア等のラムノース発酵リステリア属菌を、サーモンや鶏肉等の食品試料や表面拭い取り検体等の大規模な試料またはプールされた試料で検出および計数することができる。
【0040】
本明細書の方法の原理は、リステリア菌を含む可能性のある試料を、リステリア・モノサイトゲネスやリステリア・イノキュア等のラムノース発酵リステリア属菌に選択的な培養(増殖)培地に接種することにある。これらの細菌は両方とも、ラムノースを発酵させて、培養基のpHを下げる有機酸にすることができる。反応は、培養基中にフェノールレッド等のpH指示薬が存在することによる培養物の色の変化として検出される。培養物の色の変化はL.モノサイトゲネスおよびL.イノキュアに限定されたリステリア属菌の検出に十分である。次に、L.モノサイトゲネスに選択的なALOA培地で細菌を増殖させる等して、L.モノサイトゲネスとL.イノキュアとを区別するための確認研究を行うことができる。培養基はさらに、リステリア菌に対する選択圧を可能にするLiClと、試料の種類およびそのような試料に存在することが知られているリステリアではない細菌に応じて選択された抗生物質とをさらに含む。
【0041】
したがって、本明細書は、試料中のリステリア・モノサイトゲネス等のラムノース発酵リステリア属菌を検出する方法を開示し、該方法は、
i) ラムノース、1つ以上の抗生物質、pH変色指示薬、およびLiClを含有する第1の培養基中の、リステリア菌を含む可能性のある試料の懸濁液を調製する工程と、
ii) リステリア菌の増殖を可能にする条件下で上記懸濁液をインキュベートする工程と、
iii) 陽性試料(すなわち、リステリア属菌を含有する試料)を同定する工程と、
を含むか、またはこれらからなる。
試料中のラムノース発酵リステリア属菌の数を定量分析しようとする場合、上記の方法は、
ia) 工程i)で得られた上記懸濁液をマルチウェルトレイに移す追加の工程と、
iv) 最確数法を用いる等して上記試料中の上記リステリア属菌の濃度を計算する工程と、
を含む。したがって、試料中のリステリアを検出および計数する方法は、
i) ラムノース、1つ以上の抗生物質、pH変色指示薬、およびLiClを含有する第1の培養基中の、リステリア菌を含む可能性のある試料の懸濁液を調製する工程と、
ia) 上記工程i)で得られた上記懸濁液をマルチウェルトレイに移す工程と、
ii) リステリア菌の増殖を可能にする条件下で上記懸濁液をインキュベートする工程と、
iii) 陽性試料(すなわち、リステリア属菌を含有する試料)を同定する工程と、
iv) 最確数法を用いる等して上記試料中の上記リステリアの濃度を計算する工程と、
を含むか、またはこれらからなる。
【0042】
上記の方法で同定された陽性試料、すなわち、ラムノース発酵リステリア属菌を含有する試料中におけるリステリア・モノサイトゲネスの存在を確認するために、この方法は、定性方法における工程iv)の後および定性方法における工程ii)の後に実行される追加の工程としてこの確認工程を含む。確認工程は、例えば、陽性試料をALOA培地に接種し、PCR、in situハイブリダイゼーション、ELISA、VITEC、および/またはAPI等の分子法を用いることによって実行されてもよい。
【0043】
順序が異なり、異なる工程で用いられる培地の組成物も異なるものの、基本的に同一の方法工程がISO11290-1および2の方法で用いられているため、ISOの方法の複数の工程を、本方法の同一の工程に統合することができる。これにより、本明細書の方法の選択性は、ISOの方法の選択性と非常に似たものとなる。ただし、本明細書の方法は、ISO参照の方法よりも分析の第1の工程に組み込まれた選択性が高いため、推定陽性試料が少なくなり、リステリア・モノサイトゲネス等のリステリア菌の陽性試料をより迅速に同定できるようになる。
【0044】
本明細書の方法では、125gまでの試料を1cfu/試料の検出限界、すなわち1cfu/125gの検出限界で定量的に分析し、1cfu/25gから約2000cfu/gまでの濃度範囲で正確に計数することができる。ISO11290-1および11290-2の方法では、試料サイズは定性方法で最大25g、定量方法で最大10gに制限される。さらに、ISOの方法の検出限界は、より濃縮された試料を取得するように方法を改良しない限り、10cfu/gである。本明細書の方法の選択性と特異性は、今日用いられている参照ISOの方法(ISO11290-1および11290-2)と同一である。つまり、本明細書の方法における偽陰性および偽陽性の数は上記参照方法の通りである。
【0045】
本明細書の方法は、食品(サーモンや鶏肉等)および生産施設の表面から物質を収集するために用いられる拭い取り検体の分析に適している。さらに、この方法には、試料採取と計数を生産施設で行い、確認および全ゲノムシーケンス等を用いたさらなる特性評価を外部研究所で行うことができるという利点がある。
【0046】
本明細書の方法の別の利点は、試料採取と試料調製が一般の人によって実行されてもよいので、食品生産者または監査人がこの業務を担当できることを保証することである。陰性試料はその場で評価し、推定陽性試料は確認のために研究所に送ることもできる。
【0047】
本明細書に開示の方法は、(本明細書の他の場所で説明されているように、2つの方法工程を追加することにより)定性および定量の両方で用いることができ、プールされた試料にも用いることができるため、1つの分析を用いてEU規則2073/2005基準に準拠した検査を実施できる。プールされた試料は、一般に、偽陽性の異常増殖により偽陰性を示す可能性が高くなるが、定量的に用いた場合、本明細書の方法には当てはまらない。その場合、溶液は多くのウェルに分散されることによって、溶液全体を一度に分析した場合のようにL.モノサイトゲネスと偽陽性とが同一のチャンバー内に存在する可能性が低くなる。したがって、本明細書に記載の工程ia)およびiv)等の工程があることにより偽陽性の数が減少するので、これらの工程は非常に有利である。
【0048】
本明細書の方法は、研究所への輸送中の試料が不適切な温度条件にさらされた場合でも、正確な計数を確実にできる。試料の準備と計数の開始を試料採取と一緒に実行可能なためである。施設での試料採取と外部研究所での試料準備の間の不適切な温度条件は、食品中のリステリア濃度の過大評価に繋がることが多く、したがって不必要な廃棄、リコール、および誤った決定に繋がるため、これは重要である。
【0049】
InSite Listeria 検査(Hygiena、英国ワトフォード)やPath-Chek Hygiene Listeria 検査(Microgen Bioproducts Ltd.、英国キャンバリー)等、リステリア菌を検出する他の迅速な方法と比較して、本明細書に記載の方法における偽陰性の頻度は低い。(Bjorn C.T. Schirmer, Solveig Langsrud, Trond Moretro, Therese Hagtvedt, Even Heir, 2012. Performance of two commercial rapid methods for sampling and detection of Listeria in small-scale cheese producing and salmon processing environments. Journal of Microbiological Methods, Volume 91, Issue 2, Pages 295-300, ISSN 0167-7012, https://doi.org/10.1016/j.mimet.2012.08.013.)
【0050】
ISOの方法は法律で標準として規定されており、新規の方法は、方法の効果確認に関連する特異性やその他の特性の点で、これらの方法に匹敵するものである必要がある。分析方法のユーザにとって、方法は費用効果が高く、結果を迅速に提供するものでなくてはならない。出荷、リコール、および追加のクリーニング等の決定に結果が影響する場合、これは特に重要である。したがって、適切な選択性と感度を備えた、これらの基準を満たす代替方法が必要である。
【0051】
ISOの方法はいくつかの工程で構成されている。第1の工程は、培養液での試料の均質化であり、その後、培養液での培養(定性)または特殊な増殖培地を用いた寒天プレートでの培養(定量方法)が続く。これらの増殖培地は、以下を取得するために、何年にもわたっていくつかの工程で開発および最適化されてきた。
・偽陰性を回避するために、ストレスを受けた細胞を回復させること
・培地上でも増殖して寒天プレート上のリステリア菌を覆う可能性のある細菌を除去することにより、選択性を向上させること
【0052】
ISOの方法の増殖培地は、10cfu/gまでの計数に適しており、寒天プレート等の開放系を用いることができる研究所施設に最適である。これは、より低い濃度が必要であり、閉鎖分析系を用いる必要がある業界には当てはまらない。最確数(MPN)法を用いた培養液での計数は可能であるが、陽性ウェルと陰性ウェルとの違いを読み取る方法が必要である。ISOの方法で選択的濃縮に用いられる培養液では、それができない。このため、MPN手法による低レベルの計数を用いる必要がある場合は、他の増殖培地が必要である。
【0053】
ISOの方法の第1の工程の増殖培地は、10cfu/gまでのリステリア・モノサイトゲネスの検出および計数に適しているが、推定陽性コロニーの確認が必要である。確認工程の1つではラムノース培養液が用いられる。というのも、L.モノサイトゲネスがラムノースを発酵させて酸を生成し、その生成がpH指示薬の色の変化として検出できるためである。ISOの方法では、食品中の細菌とは異なり、インキュベート温度での増殖にすでに適応している分離株の単一コロニーのみがこの方法で検査されるため、ラムノース培養液(ISOの方法の後の段階で最初に用いられる)には選択圧がない。したがって、培養液はストレス回復を促進する必要はない。
【0054】
本明細書の方法(「SensiList」方法)では、一次増殖培地として改良したラムノース培養液を用い、MPN法と組み合わせて0.2cfu/gまでの濃度を計数できるようにしている。このため、ラムノース培養液は、反復工程で以下を取得するように設計および適合されている。
・L.モノサイトゲネスの選択性(偽陽性および偽陰性菌の回避)
・0.2~100cfu/g食品材料の範囲での定量に適した検出限界
・細菌のストレス回復
・陽性結果と陰性結果の明確な差異
・バイオセキュリティを確保するために、系を閉鎖する必要がある。
・方法の費用効果を高める培地の価格
【0055】
リステリア以外にもラムノースを利用できる多くの細菌がある。これらは、少なくとも本方法で偽陽性シグナルを与える濃度までは増殖してはならない。したがって、ISOの方法の初期増殖培地で用いられる抗生物質およびLiClのような他の選択圧成分が、本明細書の方法の初期濃縮工程で用いられるラムノース培養液に追加されている。
【0056】
第1の培養基で用いられるantibioticum/抗生物質は、他のラムノース発酵細菌による偽陽性結果を低減または回避するために選択される。したがって、用いられる特定の抗生物質は、試料の種類ごとに異なる場合がある。偽陽性結果をもたらす可能性のある微生物は、データベースや市販の食品試料で検索できる。したがって、当業者は、特定の試料種類に理論的に存在するラムノース発酵細菌に用いられる抗生物質を容易に適合させることができる。したがって、第1の培養基で用いられるantibioticum/抗生物質は、試料種類およびそのような試料種類に存在する可能性のあるリステリア菌以外のラムノース発酵菌に特に適合できる。
【0057】
本明細書の「SensiList」培養液のレシピに記載されている抗生物質のリストは、特に魚の試料に適合している。
【0058】
ストレスを受けた細胞の回復には、細胞がその代謝を増殖様式に適応させるのに十分な栄養価があり、良好な状態である必要がある。リステリア属菌は、非増殖モードで亜致死状態に耐えることができるが、そのようなモードを用いて細菌を検出することはできない。したがって、培地に選択圧を発生させる成分は、回復条件と選択条件との間で最適になるように調整される。さらに、ストレス回復のための栄養を供給するために、肉抽出物のような栄養価の高い培地成分が低濃度で培養液に添加されている。これは、生産設備や水の拭い取り検体のように、有機物をほとんど含まない試料にとって特に重要である。
【0059】
本明細書の方法の検出原理は、pH指示薬の色を変える酸へとラムノースを発酵させることである。十分に高い酸の生産を得るために、細菌は栄養とエネルギー源としてラムノースを用いる必要があるが、試料を含む培養液中の他の有機物質の量は低くなくてはならない。というのも、そうでなければ、細菌がこれらを栄養とエネルギー源として用いてしまうからである。さらに、ラムノースの量は、十分な細菌と酸の生成を可能にするために十分に多くなければならない。培養液は、これらの側面のバランスをとるために最適化および検査されている。ラムノースの量およびラムノースの濃度の両方、ならびに最終的に生成される酸の濃度が、L.モノサイトゲネスの検出に重要であることがわかっている。この方法は、水分を多く含む場所からの拭い取り検体も含め、すべての試料が正しく検出されるように最適化されている。
【0060】
本明細書の方法は、ISOの方法(ISO11290-1および11290-2)と同一の原理に基づいているが、方法の工程の順序が異なり、培地が改良されている。これらの改良を実行することにより、驚くべきことに、方法の感度を維持し、さらには増加させながら試料サイズを増やすことができ、ISOの方法と比較して試料中のより少ない量の細菌をも検出することができる。さらに、試料採取から結果が得られるまでの時間が大幅に短縮された。
【0061】
本明細書の方法は、用いられる工程、異なる工程で用いられる培地、および工程の順序の両方に関して、ISOの方法とは異なる。以下の表1および表2に、ISOの方法と本明細書の方法との類似点および相違点をいくつか示す(リステリア・モノサイトゲネスはL.モノと略す)。
【表1】
【表2】
【0062】
リステリア・モノサイトゲネスをリステリア・イノキュアおよび他のラムノース発酵細菌による他の可能性のある偽陽性と区別するために、陽性試料(すなわち、フェノールレッドがpH指示薬として用いられる場合は黄色および橙色のウェル)をALOA培地に接種して、特徴ゾーンを有するコロニーがリステリア・モノサイトゲネスの陽性結果を示すようにしてもよい。
【0063】
本明細書の方法は、ISOの方法よりも高速である。陰性試料の場合は試料採取後最大2日、従来の確認検査を用いた場合は結果が確認されるまで3日かかる。PCRによる確認には数時間しかかからない。比較のために、計数のためのISOの方法(つまりISO11290-2)の第1の工程は、試料の段階希釈を選択的増殖培地に接種することであり、2番目の工程はラムノースでの確認である。この方法は最大5日かかる。ISO検出方法(ISO11290-1、検出レベル1cfu/25g)には、次の手順がある。選択培養液で2日間試料を培養した後、選択的寒天に接種する。その後の確認には、研究所が試料を受け取ってから1週間かかる。また、より大きな試料サイズを用いることができるため、例えば、10個のプールされた試料(各10g)を1つのキットで処理することが可能である。これにより、食品プロバイダーの分析コストも削減される。
【0064】
培養基
本明細書の方法の工程i)~工程iii)で用いられる第1の培養基(例として、本明細書ではいわゆる「SensiList broth」とする)は、3つの手法を用いてリステリア・モノサイトゲネスおよびリステリア・イノキュアに対して選択的となる。
ラムノースは、第1の培養基で炭素源およびエネルギー源として用いられる。L.モノサイトゲネスやL.イノキュア等のごくわずかな細菌のみがラムノースを利用できる。L.ウェルシメリもラムノースを発酵させる可能性があるが、L.イノキュアおよびL.モノサイトゲネスと比較して、食品中に非常に稀なリステリア属菌である。この細菌がラムノース含有培地で増殖する場合でも、本明細書の方法の特異性は十分に高く、少なくとも現在利用可能な方法と同一程度高いと考えられる。
【0065】
本明細書の方法では、ラムノースの選択性は、本明細書の方法における細菌を濃縮する第1の工程(工程ii))に既に用いられている。
【0066】
ラムノースは、少なくとも5g/l、例えば約5~17g/l、例えば約7~13g/l、例えば約5g/l、約6g/l、約7g/l、約8g/l、約9g/l、約10g/l、約11g/l、約12g/l、約13g/l、約14g/l、約15g/l、約16g/l、または約17g/l、通常約10g/lの濃度で第1の培養基中に存在する。分析グレードのラムノースは高価な成分であり、本明細書の方法で必要なラムノース培養液の量はISOの方法に比べて多いため、ラムノースの価格は検出だけでなく、キットの価格においても重要である。したがって、大幅に安価な食品グレードのラムノースを本明細書の方法で用いるために検査したところ、この品質のラムノースは分析グレードと同一の結果をもたらし、したがってこの方法を実施するための価格を下げることが分かった。
【0067】
塩化リチウム(LiCl)も第1の培養基に添加される。この成分は、リステリアの選択的濃縮培養基(ISOの方法等で選択的濃縮培養基および診断用寒天プレート培地としてそれぞれ用いられるフレーザー培養液およびALOAプレートを含む)の選択圧を増加させることが分かっている。塩化リチウムは、少なくとも約5g/l、例えば約5~17g/l、例えば約7~13g/l、例えば約5g/l、約6g/l、約7g/l、約8g/l、約9g/l、約10g/l、約11g/l、約12g/l、約13g/l、約14g/l、約15g/l、約16g/l、or約17g/l、通常約10g/lの量で存在する。
【0068】
本明細書の他の場所で説明されているように、他のグラム陽性菌の増殖を最小限に抑えるために抗生物質が添加される。本明細書の方法での使用に適した抗生物質には、ナリジクス酸、セフタジジム、ポリミキシンB硫酸塩、シクロヘキシミド、およびアンホテリシンBのうちの1つ以上が含まれる。好ましくは、上記抗生物質のうちのいずれか2つ以上の組み合わせ、例えば3つ、4つ、さらに好ましくは5つすべての組み合わせが用いられる。抗生物質は、通常、以下のSensiList brothのレシピで指定されているような通常の濃度で用いられる。抗生物質の必要性は、分析する試料に必要な選択圧によって異なる。さらに、記載された第1の培養基で用いられる抗生物質が、同様の作用様式を有する他の抗生物質に変更されても同一の特異性が期待される。
【0069】
上記の3つの手法を用いることにより、L.モノサイトゲネスおよびL.イノキュア以外の細菌(ならびに試料中に存在する他のラムノース発酵細菌)の増殖を最小限に抑える選択圧が達成される。L.モノサイトゲネスとL.イノキュアと他のラムノース発酵細菌とを区別できるようにするために、ALOA寒天培地等の診断用寒天培地への接種を行ったり、特定のL.モノサイトゲネス遺伝子のポリメラーゼ連鎖反応またはin situハイブリダイゼーション分析を実行したり、ELISA、VITEC、API等の方法を用いたり、MaldiToff検査を実行したりといったさらなる確認が必要である。
【0070】
さらに、第1の培養基は、相中の迅速な増殖およびストレス回復を開始するために、有機炭素源およびエネルギー源を含み得る。細菌にとって好ましい浸透圧条件を得るために、塩化ナトリウムを添加してもよい。
【0071】
第1の培養基にはpH指示薬も含まれている。発酵はpHを下げるプロセスである。したがって、ラムノースを発酵させることができる細菌が試料中に存在する場合、これらは第1の培養基に存在するラムノースを発酵させ、培養基のpHを低下させる。このpHの変化は、第1の培養基にpH指示薬を含めることで検出される。したがって、第1の培養基での試料のインキュベート中の培養物の色の変化は、リステリア・モノサイトゲネスやリステリア・イノキュア等のラムノース発酵リステリア属菌が試料中に存在することを示している。本明細書の方法で用いるのに適したpH指示薬は、リステリア菌が試料中に存在すると色が赤色から黄色に変化するフェノールレッドであるが、フェノールレッドと同様のpHで色が変化する他のpH指示薬を用いてもよい。
【0072】
第1の培養基は、既製の製品を用いてもよいし、単一の成分から調製してもよい。フェノールレッド培養液およびラムノースは、121℃でオートクレーブ滅菌することができる。抗生物質は滅菌ろ過され、オートクレーブ後に添加される。
【0073】
第1の培養基は、次のような様々な方法で調製できる。
-すべての成分を、すぐに用いることができる培養基に混合する(該培養基の滅菌のためにオートクレーブを行う場合、抗生物質(通常はフィルター滅菌された抗生物質)を加える前に行う)
-ラムノースおよびフェノールレッド基礎培地を1つの溶液として調製し、使用直前、ただしオートクレーブ後に抗生物質を添加する。抗生物質は一般に増殖培地の他の成分よりも安定性が低いため、後で添加することにより培養基の貯蔵寿命が延ばされ、偽陽性の可能性を最小限に抑えられる。
-ラムノースおよびフェノールレッド培地を含む濃縮培養基(5~15倍の濃度、例えば10倍の濃縮)を調製し、使用前に水で希釈してもよい。この場合、培地のカラメル化反応を避けるため、オートクレーブではなく、培養基の滅菌ろ過を行う必要がある。
【0074】
第1の培養基は、好ましくは液体である。
【0075】
すべての場合において、培養液はキットに直接入れることも、大容量でフラスコやバッグに別々に入れることもできる。
【0076】
第1の培養基は、
a) 約5~15g/l、例えば約7~13g/l、例えば約10g/lの濃度のラムノースと、
b) 1つ以上の抗生物質、例えばナリジクス酸、セフタジジム、ポリミキシンB硫酸塩、シクロヘキシミド、アンホテリシンBのうちの1つ以上、好ましくはこれらのうちの少なくとも2つの抗生物質と、
c) フェノールレッド等のpH変色指示薬と、
d) 約5~15g/l、例えば約7~13g/l、例えば約10g/lの濃度のLiClと、
を含有するか、またはこれらからなる。
【0077】
良好な選択圧を提供する第1の培養基の一例を以下に示す。この培地は、本明細書では「SensiList broth」と表記する。
SensiList brothのレシピ、
1%ラムノース培地の準備:
フェノールレッド基礎培地 15g
ラムノース 10g
LiCl 10g
蒸留水 1000ml
これらの成分を蒸留水に溶解させる。15分間118℃で滅菌する。抗生物質を加える前に冷却する。
抗生物質の準備: ナリジクス酸 10mg/ml
ポリミキシンB 200000IE/ml
アンホテリシンB 2mg/ml
セフタジジム 2mg/ml
これらの抗生物質を蒸留水に溶解させて指定された濃度にする。滅菌ろ過による滅菌を行う。
SensiList brothの完成:
1%ラムノース培地 1L
ナリジクス酸(10mg/ml) 2ml
ポリミキシンB(200.000IE/ml) 0.3835ml
アンホテリシンB(2mg/ml) 5ml
セフタジジム(2mg/ml) 4ml
これらの抗生物質を1%ラムノース希釈液に加える。よく混合する。
pH 7.4±0.2
【0078】
SensiList brothは、魚試料中のリステリア菌の検出および計数に特に有用である。
【0079】
ラムノースおよびLiClの両方が(抗生物質と組み合わせされて)存在するため、本明細書の方法における第1の培養工程ii)でリステリア菌に対して得られる選択圧は、同一の結果を達成するのに2つの培養工程を用いるISOの定量方法および定性方法よりも高いものとなる。
【0080】
本明細書の方法における工程iii)で、ラムノース発酵リステリア属菌の存在が陽性であると同定された試料中のリステリア・モノサイトゲネスの有無を確認するため、陽性試料をALOA培地等の第2の増殖培地に接種することができる。これにより、L.モノサイトゲネスをL.イノキュアと区別できる。前者がはっきりとした沈殿域を形成するのに対して、後者はそうではないからである。ALOA培地は、し、L.モノサイトゲネスとL.イノキュアとを区別できるようにする、酵素ホスファチジルイノシトール特異的ホスホリパーゼCの特異的精製基質を含有する。前者は基質を代謝するときにコロニーの周囲に不透明なハローを形成するからである。ALOA培地は、好ましくは、寒天培地等の固体培地である。
【0081】
試料および試料準備
試料は、リステリア・モノサイトゲネス等のリステリア菌の有無を検査する対象となるいかなる試料であってもよい。試料は、例えば食品試料、環境試料、または糞便試料であってもよい。
【0082】
食品試料は、例えば、生の食品の試料、または加工肉、鶏肉、または魚製品(サーモン、野菜、またはインスタント食品等)の試料である。環境試料は、水試料、例えば、出液タンク、解凍タンク、洗浄水、海水からの水試料、汚れ試料、または、表面拭い取り検体や設備表面試料等の食品産業の環境試料であってもよい。
【0083】
食品試料、通常10~125gのサイズの食品試料を、例えば、緩衝ペプトン水(BPW)または生理食塩水に1:1の比率で添加し、ストマッカーバッグ内で手またはストマッカーで均質化してから、第1の培養基に移してもよく、例えば均質化された試料と培養基との比率が1:10となるように第1の培養基に移してもよい。あるいは、試料を第1の培養基で直接均質化することもできる。
【0084】
リステリア菌を含む可能性のある布(乾燥または緩衝剤を添加したもの)等の環境拭い取り検体を第1の培養基に直接添加し、インキュベート中そのままにしておくことができる。それ以外の手順は、食品試料の場合と同一である。
【0085】
洗浄水、冷却水、出液水等を含む処理水等の水試料を第1の培養基に加えることができる。食品試料に関しては、検出レベルを下げると同時に、容量を抑えてインキュベーター内のスペースを抑えるために、濃縮した第1の培養基を用いることができる。例えば、1cfu/100mlの検出限界を得るために、10倍濃縮の第1の培養基11mlを水試料100mlに加えることができる。インキュベートおよび推定陽性試料の検出の手順は、食品試料の場合と同一である。
【0086】
検出および/または計数の方法
上記のように、すべての異なる種類の試料について、本明細書に開示の方法は、それに含まれる工程に応じて定性的または定量的に実行することができる。
【0087】
試料中のリステリア・モノサイトゲネス等のラムノース発酵リステリア属菌を検出する方法(すなわち定性方法)は、
iv) ラムノース、1つ以上の抗生物質、pH変色指示薬、およびLiClを含有する第1の培養基中の、リステリア菌を含む可能性のある試料の懸濁液を調製する工程と、
v) リステリア菌の増殖を可能にする条件下で上記懸濁液をインキュベートする工程と、
vi) 陽性試料を同定する工程と
を含むか、またはこれらからなる。
【0088】
上記のように、この方法は、ラムノース発酵リステリア属菌の計数をさらに含んでもよく、上記方法は、
ia) 上記工程i)で調製された懸濁液をマルチウェルトレイに移す工程と、
iv) 上記工程iii)の後に実行され、最確数法を用いる等して上記試料中の上記リステリアの濃度を計算する工程と、
を含む。
【0089】
したがって、リステリア・モノサイトゲネス等のラムノース発酵リステリア属菌の数を計数する方法(すなわち、定量方法)は、
i) ラムノース、1つ以上の抗生物質、pH変色指示薬、およびLiClを含有する第1の培養基中の、リステリア菌を含む可能性のある試料の懸濁液を調製する工程と、
ia) 上記工程i)で得られた上記懸濁液をマルチウェルトレイに移す工程と、
ii) リステリア菌の増殖を可能にする条件下で上記懸濁液をインキュベートする工程と、
iii) 陽性試料を同定する工程と、
iv) 最確数法を用いる等して上記試料中の上記リステリアの濃度を計算する工程と、
を含むか、またはこれらからなる。
【0090】
本明細書の方法は、工程iii)で同定した陽性試料をALOA培地等の第2の増殖培地に接種する等し、ポリメラーゼ連鎖反応、in situハイブリダイゼーション、ELISA、VITEC、および/またはAPI等の分子法を用いて、リステリア・モノサイトゲネスを他のリステリア属菌と区別することによってリステリア・モノサイトゲネスの存在を確認する工程をさらに備えていてもよい。この工程は、定性方法における工程iii)の後および定量方法における工程iv)の後に実行される。
【0091】
試料中のリステリア菌の存在の定性分析および定量分析の両方について、本明細書の方法の第1の工程では、本明細書の他の場所に記載されているように、第1の培養基中のリステリア菌を含む可能性のある試料の懸濁液を調製する。
【0092】
試料は、約30℃等の25~38℃の温度も用いることができる場合でも、通常約37℃の温度でインキュベートし、培養物の色は1日後と2日後に観察する。フェノールレッドをpH指示薬として用いた場合の赤色から黄色または橙色への色の変化は、推定陽性試料を示す。色はそのまま読んでもよく、カラーチャートと比較してカラーコードを見つけてもよい。
【0093】
定性方法を実行する場合は、ラムノース発酵リステリア属菌を含む可能性のある試料の懸濁液をインキュベートして、第1の培養基(すなわち、第1の培養基中のラムノース発酵リステリア属菌を含む可能性のある試料の懸濁液)中の試料のインキュベートの間の色の変化の有無を観察すればよい。色の変化が観察される場合は、リステリア・モノサイトゲネスまたはリステリア・イノキュア等のラムノース発酵リステリア属菌が試料中に存在するため、試料はラムノース発酵リステリア属菌が陽性である。色の変化が観察されない場合は、ラムノース発酵リステリア属菌が試料中に存在しないため、試料はリステリア菌に対して陰性である。
【0094】
ラムノース発酵リステリア属菌の濃度を計数するために実施される定量方法については、第1の培養基中の元の試料、すなわちラムノース発酵リステリア属菌を含む可能性のある試料の懸濁液を、IDEXXのQuanti-Tray2000等の定量トレイ(quantitray)等のマルチウェルトレイ(プレート)に移す。上記のような条件下でのインキュベート中、ラムノース発酵リステリア属菌を含むウェルは、第1の培養基にpH指示薬が存在するために色が変化する。元の試料中のラムノース発酵リステリア属菌の最も可能性の高い濃度は、MPN(最確数)法を用いて推定できる。例えば、試料中のラムノース発酵リステリア属菌の濃度の推定に定量トレイが用いられ、ラムノース発酵リステリア属菌を含む可能性のある試料の懸濁液の総量が100mlであり、試料サイズが5gである場合、検出限界は1cfu/5g試料になり、これは0.2cfu/g試料の平均濃度に相当する。ラムノース発酵リステリア属菌の濃度が高い場合、例えば100cfu/gの場合、5gの試料を含む100mlの溶液に500個の細菌が存在する。これは5cfu/mlに相当する。その場合、定量トレイの1mlウェルのほとんどが黄色に変わり、0.1mlウェルの最大50%が黄色に変わる可能性がある。ラムノース発酵リステリア属菌の濃度が2倍になると、+0.1mlウェルの最大100%が黄色に変わる。この濃度を超えると、すべてのウェルが黄色になり、有効な計数の上限に達する。96個の1mlウェルの定量トレイおよび96個の0.1mlウェルの定量トレイを用いた計数の最小および最大制限は、1cfu/5g(つまり、0.2cfu/g)から200cfu/gの範囲になる。試料と第1の培養基との間に別の比率を適用すると、検出限界を調整できる。
【0095】
本明細書の方法は、非常に低レベルのリステリア・モノサイトゲネスおよびラムノース発酵リステリア属菌を、大容量の試料またはプールされた試料で検出および計数することを可能にする。試料サイズは100gまで高くすることができ、検出レベルは5cfu/100g食品、つまり1cfu/20g食品まで低くすることができる。試料サイズが大きい場合、例えば、10個のプールされた試料(各10g)を1つのキットで用いることが可能である。これにより、食品プロバイダーの分析コストも削減される。また、食品中のリステリアの不均一な分布による問題を克服するためには、可能な試料サイズを大きくして、大きな試料またはプールされた試料を可能にすることが重要な要素である。
【0096】
濃縮されたリステリア陽性試料が生産施設または試料を取り扱う人に細菌を漏出させないように系を閉鎖することが(閉じた系に)できるので、本明細書の方法で行われる分析は生産施設で行うことができる。系を閉鎖するということは、試料を第1の培養基に加えた後、方法が定量的か定性的かに関わらず、容器(フラスコ、バッグ、ビーカー、マルチトレイ等)が密閉され、培地中で増殖している可能性がある細菌が、空気、試料を取り扱う人、試料に触れる表面と接触しないことを意味する。均質化や切断等の試料準備は、閉鎖系内で行うことができる。リステリア菌は酸素なしで増殖できるため、ガス交換は必要ない。系の閉鎖は、例えば、特定のツール等でのみ系を開放することができるように、蓋やプラスチックフィルム等で試料を密封することで実現できる。ただし、L.モノサイトゲネスの存在について推定陽性試料の確認は、培養液を含む容器を開ける必要があるため、リステリア分析用に分類された研究所で行わなくてはならない。
【0097】
L.モノサイトゲネスの存在を確認/検査するために、あらゆる種類の試料を研究所に送ることができる。試料が推定陽性である場合、つまり、第1の培養基で試料を培養した後に色が黄色に変わった場合は、細菌を維持するために輸送中は温度を低く保つ必要がある。試料が第1の培養基に入れられた直後に送られる場合、輸送中の増殖は試料が研究所に到着した後の検出時間を短縮するので、冷却は望ましくない。
【0098】
L.モノサイトゲネスの確認には、いくつかの方法を用いることができる。
-ALOA寒天上でのゾーンの形成。L.モノサイトゲネスはゾーンを形成するが、L.イノキュアはゾーンを形成しない。
-L.モノサイトゲネスを検出するためのPCR分析。実際、この検査は試料が黄色になる前に実行できる。というのも、黄色に変色するレベルをpHが下回るほど細胞数が高くなる前に、PCR反応が陽性になる前の細胞数に達するからである。
-特定のL.モノサイトゲネス遺伝子のin situハイブリダイゼーション分析、
-ELISA、VITEC、API、MaldiToff検査、全ゲノムシーケンス等、その他の識別方法。
【0099】
以上のことから明らかなように、本明細書の方法では、定性方法および定量方法の両方で、推定の陽性および陰性の結果を1~2日で得ることができ、陽性の結果は、ISOの方法の5日または7日(それぞれ定量方法および定性方法の場合)とは対照的に最大1日で確認できる。さらに、本方法の利点は、研究所で実行する必要がなく、試料が採取されたその場で(例えば、工場内で)実行できることである。
【0100】
キット
また、本明細書は、試料中のリステリア・モノサイトゲネス等のラムノース発酵リステリア属菌を検出するためのキットに関し、該キットは、
a) ラムノース、1つ以上の抗生物質、pH変色指示薬、およびLiClを含有するか、またはこれらから構成される培養基を含有する容器と、
b) リステリア菌を含む可能性のある試料を培養するための容器またはマルチウェルトレイと、
c) 任意で、陽性試料を同定するためのカラーチャートと、
d) 任意で、使用説明書と、
を備える。
【0101】
キット内の培養基の成分の濃度は、第1の培養基について本明細書の他の場所に開示されている通りである。第1の培養基は、固体であってもよいが、好ましくは液体である。
【0102】
コンピュータ実装の計算機
また、本明細書は、試料中のコロニー形成単位の検出および計数に基づいて、リステリア・モノサイトゲネス等のリステリアの増殖予測を表示するコンピュータ実装の計算機に関し、該計算機は、
a) キーボードまたはマイク等の入力デバイスと、
a) ディスプレイ、コンピュータまたは携帯電話画面、あるいはスピーカー等の出力デバイスと、
b) スマートフォン上またはウェブページ上のアプリ等の、ダウンロード可能またはメモリ内蔵のソフトウェアと、
を備える。
【0103】
入力デバイスでは、コロニー形成単位の数は、0.04cfu/gから10cfu/gの範囲、特に0.04cfu/gから1cfu/gの範囲で、試料で見つかった任意の数に設定される。従来技術では、低範囲でそのような詳細な設定はできない。
【0104】
計算機には、試料のpHや試料の種類(生サーモン、生魚、寿司、鶏肉、牛肉等)等のパラメータを入力できる。さらに、生産現場、店舗、家庭用冷蔵庫の温度および保存時間、ならびに室温および冷蔵外の時間の長さ等のパラメータも入力できる。入力に基づいて、計算機は保存されたモデルから計算を行い、グラフまたは数値で、最高の増殖、最も可能性の高い増殖、最も可能性の低い増殖の日数等の様々な予測を表示し、これらを法定限界、曝露された消費者が罹患し得る病気に対する限界、および健康な成人が罹患し得る病気に対する限界と対比させてプロットする。
【0105】
計算機は、食品の種類ごとに1つのアプリケーションとして実装してもよく、ユーザが選択できる統合計算機として実装してもよい。
【0106】
本発明は、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定しない以下の実施例にさらに記載される。
【0107】
実験セクション
実験セクション
1 実施例1 SensiList brothの開発および検査
1.1 SensiList broth
以下の培養基の内容物を、上記のように「SensiList broth」という。
【0108】
1.2 SensiList brothの感度
SensiList brothの選択性と感度に関する最初の研究は、生産会社から直接入取したサーモン試料を用いて実施された。サーモン片に、0、2、20、または200cfu/gのリステリア・モノサイトゲネスを接種した。接種物質として、単一株または5株の混合株のいずれかを用いた。試料はすぐに用いるか、用いるまで凍結保存した。
これらの研究では、SensiList brothのLiClおよびラムノースの濃度を調整した。
【0109】
結果を比較するために、SensiListの方法およびISOの方法の両方で試料を分析した。2つの方法でより低い検出レベルを可能にするためにISOの方法を適合させた。まず、5倍以上のプレートを用いて、より大量の試料懸濁液を接種した。この手法は日常業務では実行できないが、本明細書の方法の感度を検証するために用いた。次に、ISOの方法で説明されているように寒天培地に接種する前に少量の希釈剤を加えることにより、5倍濃度の試料懸濁液を用いた。
【0110】
本明細書の方法による分析:サーモンの試料を以下に説明するように調製し(製品試料)、SensiList broth(培養液)に入れた。定性試料(存在/非存在)の場合、試料および培養液を100mlまたは500mlフラスコに入れた。最確数法(MPN)で計数するために、試料を含む培養液を滅菌ガラス管(1ml~10ml)または49個の大きなウェルと24個の小さなウェルを有するIDEEXXのQuantitray2000に全部で100ml入れた。培養液を以下に記載するようにインキュベートし、培養液の色を1日後および2日後に観察した。滅菌針を用いて液滴をALOAプレートに移すことにより、すべてのウェルをさらに分析した。典型的なゾーンを有する青緑色のコロニーはL.モノサイトゲネスに対して推定陽性であり、ゾーンを有さない青緑色のコロニーはL.イノキュアに対して推定陽性であった。他の色のコロニーは陰性であった。青緑色のコロニーは、ISO 11290-1に従って、グラム染色とカタラーゼで確認した。
【0111】
研究は、2、20、または200cfu/gのL.モノサイトゲネスを接種した3通りのサーモンを用いて約10回繰り返した。いくつかの実験では、
図2に示すように、1つのリステリア陽性試料(約2×2×2cmの立方体)を同一のサイズの9つの陰性試料と一緒に配置し、異なる編成で積み重ねた。その目的は、以下3つの標本抽出(sampling)手順において陽性試料が検出されたかどうかを調査することであった。i)スタック内のすべての試料を分析する。ii)試料を培養液と振とうした後に培養液をインキュベートし、培養液を分析する。iii)魚から出た水を分析する。
【0112】
1.3 SensiList brothの選択性
偽陽性菌と陰性菌を2つの方法で検索した。
1.リステリア診断およびキットの検査で陽性および陰性対照株として用いられる株を選択した。
2.様々な供給元のサーモンをオスロ地域の店から購入し、ラムノースを利用できるすべての細菌を増殖させるために、抗生物質およびLiClを含まないSensiList brothで培養した。インキュベート中に培養液の色が赤色から黄色に変化したチューブを血液寒天培地とALOA寒天培地に接種し、細菌を単離した。単離株は、1)SensiList broth中の抗生物質組成物を調合し、2)培養液の安定性を検査するために、後の実験で用いた。
【0113】
1.4 PCRによる推定陽性試料の確認
PCRによる確認は、以下の方法で試験した。
DNeasy(R) Blood&Tissueキット(Qiagen)を用いて、増殖培養液で培養されたリステリア・モノサイトゲネス(菌株VI58361、血清型1/2a)からDNAを抽出した。これらの増殖培地としては、SensiList broth、LiClや抗生物質を含まないSensiList broth、および抗生物質を含まないSensiList brothを用いた。さらに、ハーフフレーザー培地および緩衝ペプトン水を対照として用いた。L.モノサイトゲネスのコロニーを寒天プレートから異なる培地に移した。供給元の手順に従ってキットを用いてDNAを抽出し、Nanodrop(DNA濃度測定用分光光度計、ThermoFischer製)を用いてDNA濃度を測定した。
【0114】
単離したDNAを、DNA抽出およびPCR用のBioRadiQ-Check(R) リステリア・モノサイトゲネスIIキットを用いて、遺伝子マーカーORF2819、ORF2110、lmo1118、lmo0737、plcA、およびprsについてqPCR(定量PCR)で分析した。
【0115】
1.5 SensiList brothの安定性
異なる処方のSensiList brothの安定性を次のようにチェックした。
SensiList brothの4つの処方は、1年間の保存中に数回分析を実行するのに十分な大きさの量で調製された。用いた処方は、LiClおよび抗生物質を含まないSensiList broth、LiClを含むが抗生物質を含まないSensiList broth、使用直前に抗生物質を添加したSensiList broth、およびそのままの状態のSensiList brothであった。実験は、処方ごとに3つの独立したバッチで繰り返した。
【0116】
実験は、L.モノサイトゲネスグループの単一株(8株)、他のリステリア属菌(2株)、偽陽性結果をもたらす可能性のある他の細菌を用いて実施した。後者の菌株は、サーモンを用いた独自の実験(上記を参照)、ISOの方法の検査に用いられた菌株、およびL.モノサイトゲネスの他のキットで偽陽性結果をもたらす菌株に基づいて選択した。菌株については、以下で詳しく説明する。
A. リステリア・モノサイトゲネス菌株
a. ISOの方法に従ってALOA培地の検査に用いた2株
i. L.モノサイトゲネス血清型4bVI60847(WDCM00021/ATCC13932)
ii. L.モノサイトゲネス血清型1/2a、VI51285(WDCM00109/CCUG15527)
B. SensiList brothの実験に用いたL.モノサイトゲネス菌株
a. VI 51503
b. VI 58363(00EB250LM)
c. VI 58365(00EB254LM)
d. VI 59994
e. VI 59998
f. VI 58366
C. ISOの方法に従ってALOA培地の検査に用いたリステリア・イノキュア
a. VI 51284(WDCM00017/CCUG 15531)
D. ISOの方法に従ってALOA培地の検査に用いたリステリア・イワノヴィ(Listeria ivanovii)
a. VI 51040(ATCC 19119)
E. 他の菌株
a. ALOA培地の検査に用いたもの
i. エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)(VI 52179)
ii. 大腸菌(E. coli)VI 51656(WDCM00013/CCUG 17620)
b. カンジダ・アルビカンス(C. albicans)VI06652(ATCC10231)
F. 抗生物質を用いない場合に、SensiListの初期版で偽陽性結果をもたらすサーモンからの18株
a. ハフニア・アルベイ(Hafnia alvei)、5株:VI 54910、VI 54914、VI 54918、VI 54924、VI 54927
b. シトロバクター属菌(Citrobacter sp)、5株:VI 54915、VI 54916、VI 54928、VI 54931、VI 54940
c. エロモナス属菌(Aeromonas sp)、2株:VI 54922、VI 54926
d. エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)、2株、VI 54935、VI 54941
e. アルガリゲネス・フェカリス(Alcaligenes faecalis)、1株:VI 54929
f. エンテロコッカス・フェカリス、1株:VI 54946
g. バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、1株:VI 54948
h. 不確実な識別であるがおそらくマクロコッカス(Macrococcus)、1株:VI 54952
G. 他のキットで偽陽性結果をもたらす2株
a. カルノバクテリウム・マルタロマチカム(Carnobacterium maltaromaticum)、VI 61406
b. エンテロコッカス・カセリフラブス(Enterococcus casseliflavus)、VI 61407
H. ラムノースを発酵させることができる菌株
a. ラクトバチルス・ラムノースス(Lactobacillus rhamnosus)、VI 60846
【0117】
食品試料の代表的なストレス条件に適応させるために、リステリア・モノサイトゲネス株を培養し、7℃で7日間低温適応させた。偽陽性試料を与える可能性のある他の菌株を37℃で一晩培養し、BHI培地に移した。最悪のシナリオを考慮して、様々な温度を適用した。偽陰性結果を検出するために、L.モノサイトゲネス菌株に現実的なストレスを与える必要がある一方、偽陽性株には、インキュベート中に培養液で増殖するための最良のオプションを与える必要がある。
【0118】
SensiList brothの処方(0.9ml)を96ウェルボックス(種類)に接種(0.1ml)した。以下のトレイ1に示すように、この混合物を、トレイ内で8工程を通じて10倍に希釈し、菌株ごとに1つのカラムを作成した。すべての菌株を検査するには、培地処方ごとに3つのトレイが必要であった。37℃でのインキュベート前にボックスを覆い、インキュベートの1日後および2日後に色の変化を観察した。
【表3】
【0119】
1.6 本明細書の方法を用いた分析用試料の処理
1.6.1 食品(food product)試料
10~125gの試料を緩衝ペプトン水(BPW)に1:1の比率で加え、バッグ内で手またはストマッカーで均質化した。均質化した溶液10mlをSensiList broth90mlに加えた。試料全体を37℃でインキュベートし、1日後と2日後に色を観察した。赤色から黄色の溶液への変化は、推定陽性試料を示す。色はそのまま読んでもよく、カラーチャートと比較してカラーコードを見つけてもよい。例えば、www.gjoco.noのカラーチャートcolor Y50Rを用いて陽性結果を示すことができる。
【0120】
上記のように調製した場合、検査溶液は5gの製品(product)を含むことになる。溶液全体に含まれているため、1cfu/5gの検出レベルになる。別の検出レベルが必要な場合は、試料と培養液の間に別の比率を適用すればよい。いくつかの例を以下に示す。例えば、5つの25g試料で測定される微生物規格基準の欠如を満たすために5×25gの試料をプールして得られた試料等の大量の試料が必要な場合、濃縮溶液として培養液を加えることによって総量を抑えることができる。例えば、125gの試料+125mlのBPW+6倍濃度の50mlのSensiList brothでは、総量が300mlに抑えられる。これは、色の変化を観察するのに十分な高液体画分であるが、定量分析の一部の食品では、より高い希釈係数が必要になる。
【表4】
【0121】
1.6.2 生産環境試料からの拭い取り検体
様々な種類の布である拭い取り検体は、乾燥させるか、バッファーを加えて、SensiList brothに直接追加し、インキュベート中に容器に残しておくことができる。それ以外の手順は、食品の場合と同一である。
【0122】
1.6.3 水試料
洗浄水、冷却水、出液水等の処理水をSensiList brothに加えることができる。製品試料に関しては、検出レベルを下げると同時に、容量を抑えてインキュベーター内のスペースを抑えるために、培養液を濃縮して用いることができる。例えば、1cfu/100mlの検出限界を得るために、10倍のSensiList broth11mlを水試料100mlに加えることができる。インキュベートおよび推定陽性試料の検出の手順は、食品試料の場合と同一である。
【0123】
1.6.4 計数方法-定量分析
試料のすべてのカテゴリは、定性的または定量的に実行できる。試料中のリステリア濃度を計数するために、上記のSensiList broth溶液の液体画分を、例えば培養液が96個の小さなウェルと大きなウェルに分けられている定量トレイに移す。全量(100ml)にリステリア菌が1つ含まれている場合、ウェルの1つは黄色に変わり、他のウェルは赤色のままになる。最も可能性の高い濃度は、MPN法を用いて推定できる。100mlの溶液に5gの試料が含まれている場合、検出限界は1cfu/5g試料になり、これは0.2cfu/g試料の平均濃度に相当する。リステリア菌の濃度が高い場合、例えば100cfu/gの場合、5gの試料を含む100mlの溶液に500個の細菌が存在する。これは5cfu/mlに相当する。その場合、1mlのウェルはすべて黄色になり、0.1mlのウェルの最大50%が黄色に変わる可能性がある。リステリアの濃度が2倍になると、+0.1mlウェルの最大100%が黄色に変わる。この濃度を超えると、すべてのウェルが黄色になり、有効な計数の上限に達する。その場合、96個の1mlウェルおよび96個の0.1mlウェルの定量トレイにおける計数の下限および上限は、1cfu/5g~200cfu/gの範囲になる。
検出限界は、試料とSensiList brothとの別の比率を用いて調整できる。
【0124】
1.7 人工的および自然に汚染された試料を用いた本明細書の方法の検査
1.7.1 ケース1:人工的および自然に汚染されたサーモン
接種された試料から出てきた解凍水は、SensiListおよび改良後のISOの方法で分析した。手順は上記で説明されており、調査の目的は結果の章に記載する。
1.7.2 ケース2:汚染された加熱処理した鶏肉
試料に低濃度のL.モノサイトゲネスを接種し、上記の食品試料プロトコルに従って分析した。
1.7.3 ケース3:自然に汚染された肉や乳製品、いくつかの動物種からの加工製品
試料は、上記の食品試料プロトコルに従って分析した。
1.7.4 ケース4:クリーニング後の生産表面検査用拭い取り検体
試料は、上記の環境試料のプロトコルに従って接種および分析した。
1.7.5 ケース5:生産会社での検査
フラスコに入れた状態のSensiList brothを、サーモンの食肉化処理および切り身を行う施設に送付した。短い説明書およびカラーマップも提供した。同社は通常の手順に従って試料を採取し、SensiList brothに加え、37℃でインキュベートした。インキュベート後、会社は写真を撮影し、結果について話し合うためにそれらを本発明者らに送った。さらに、会社は、確認のために試料を地元の研究所に送った。
【0125】
1.8 結果
1.9 方法の開発
1.9.1 方法の正確度および感度-検出レベル
濃度200cfu/gおよび20cfu/gに対して、接種濃度と本明細書の方法およびISOの方法で計数された濃度との間には良好な相関関係があった。2cfu/gのサーモンの場合、L.モノサイトゲネスは本明細書の方法でのみ検出できた。標準的な手順に従って実行した場合のISOの方法の検出レベルは10cfu/gであるため、これは予想どおりである。すべての濃度について、推定陽性濃度を確認した。
サーモン片全体の均質化が必要かどうか、または試料をSensiList brothで振とうするだけで十分かどうかを調べるために、方法の感度をさらに検査した。非常に低濃度のL.モノサイトゲネス(0.2~20cfu/g)で正確な接種レベルを得るために、1つの陽性試料を9つの陰性試料と混合した。試料と培養液が1:2.5の比率で混合されたため、培養液の理論濃度は10分の1になる。結果を
図3に示す。
L.モノサイトゲネスは、最低濃度であっても、接種されたすべての試料について、本明細書の方法で検出できた。ISOの方法では、最高濃度(20cfu/g)のみが検出できた。培養液を一晩培養した後、ISOの方法による分析では、濃度2cfu/g以上のすべての試料が検出できたが0.2cfu/gの3つの試料のうち検出できたのは1つのみであったのに対し、本明細書の方法ではサーモン片を培養液とともに振とうした直後にL.モノサイトゲネスが検出された。この観察結果の最も可能性の高い説明は、ISOの方法では少量(0.1~1.0mlの溶液)のみが接種され、本明細書の方法では培養液全体が分析されることであった。
【0126】
1.9.2 偽陽性および偽陰性菌
より高い感度を得るためにISOの方法の改良版(「材料および方法」を参照)を用いて、上記と同様の実験をリステリア菌株およびサーモン試料の様々な混合物で実施した。すべての場合において、方法間には良好な相関関係があったが、ここでも、本明細書の方法が最も感度の高い方法であることがわかった。ただし、L.イノキュアを含む試料では、L.イノキュア単独の試料で、またはL.モノサイトゲネスと混合した試料で、本明細書の方法では、ISOの方法と比較して確認された陽性よりも高い濃度の推定陽性を得た。これは、L.イノキュアがラムノースを発酵させることもでき、L.モノサイトゲネスと同様に抗生物質やLiClに対して耐性があるためである。したがって、L.モノサイトゲネスをL.イノキュアから分離するには、確認工程が必要である。
菌株1~18は、偽陽性であり、魚の惣菜店で購入したサーモンから得られた。これらの菌株を、Malditoff技術により、ハフニア・アルベイ、シトロバクター属菌、エロモナス属菌、エンテロバクター・クロアカ、アルガリゲネス・フェカリス、エンテロコッカス・フェカリス、バチルス・セレウス、マクロコッカス(後者は不確実)として同定した。菌株19~24はL.モノサイトゲネスであった。結論は、検査した抗生物質は偽陽性結果を回避するのに十分であったということであった。
【0127】
1.9.3 SensiList brothの安定性
検査菌株を、様々な処方のSensiList brothで1年間培養した。新鮮なbroth中の菌株および約1年間保存された培養液中の菌株すべてについて、SensiList brothでの48時間インキュベート後の結果を以下に示す。すべてのL.モノサイトゲネス(トレイA列1~7およびトレイC列8)株およびL.イノキュア(トレイA、列8)株は、予想通りすべての処方で陽性結果を示した。しかし、他の菌株は、LiClおよび/または抗生物質を含まない処方でのみ偽陽性結果を示した。抗生物質を含むすべての処方は、抗生物質が、使用直前に添加されたか、1年間培養液に存在していたため、3つのバッチすべてで、完全な培養液が安定していて正確であることを示す、正確な結果が得られた。結果を
図4に示す。
【0128】
1.9.4 推定陽性結果の確認
SensiList brothを用いたすべての実験で、ALOAへの接種とISOの方法で説明されている確認検査で正確な結果が得られた。
PCR技術による確認でも正確な結果が得られた。DNA単離用の市販のキットは、すべての検査ケースで、PCR分析を実行するのに十分な量と質のDNAを提供した。適用されるqPCR法は、分子血清型とも呼ばれるジェノセログループの決定に用いられる方法と同一である。以下の菌株の1つの結果を以下の表に示す。SensiList brothのすべての処方で、同一の遺伝子が正確なシグナルを発した。検査菌株が血清型IIaであるため、陰性シグナル(0としてマーク)は陰性である。
L.モノサイトゲネスを検出するための他のPCR法を用いることもできたが、リステリア・モノサイトゲネスおよび血清型の両方が識別できるため、この方法を選択した。血清型の検査は通常、別の分析で行われる。本方法では、その分析を確認工程として用いることにより、アウトブレイクへのリンクまたは他の単離株との類似性を調べるための確認と十分な特性評価が試料の一次分析で既に得られている。
【表5】
【0129】
2 実施例2 食品試料中のリステリアを検出する本明細書の方法の有用性の実証
2.1 ケース1:
人工的および自然に汚染されたサーモン
上記の研究はサーモンを用いて行った。結果はすべての場合に良好であった。
さらに、冷凍および解凍したサーモン片を用いた研究を行った。出てきた解凍水は、ISO(ALOA)法および本明細書の方法で試料として採取した。L.モノサイトゲネスの2つの異なる混合物を適用し、濃度2cfu/gおよび20cfu/gで接種した。インキュベートでは、2つの温度を検査した。結果を以下の表5に示す。分析されたすべての試料のうち、ISOの方法では6つの陰性結果が得られたが、本明細書の方法では、接種された試料のうちで1つの陰性結果しか得られなかった。すべての不一致は、最低の接種レベルで観察された。魚の凍結保存時間が長くなると計数が低下するのは、凍結保存中に生きている細菌が減少するためと思われる。
この実験の結論は、本明細書の方法が、新鮮なサーモンおよび冷凍サーモンからの低濃度のリステリア菌の検出および定量に適しているということである。
【表6】
【0130】
2.2 ケース2:汚染された加熱処理した鶏肉
加熱処理した鶏肉にL.モノサイトゲネスを接種し、本明細書の方法と、検出レベルが1cfu/gになるように試料の希釈率を下げた改良後のISO(ALOA)で分析した。目的は、第一に、鶏肉がSensiList brothに干渉して偽陽性結果をもたらしたかどうか、そして第二に、濃度が正しく推定されたかどうかを調査することであった。結果を以下に示す。
本明細書の方法はすべての場合に正確な検出をもたらしたが、改良後のISOの方法は1つの偽陰性結果をもたらした。これは、本明細書の方法の感度の方が高いことが原因である可能性が最も高い。
結論は、加熱処理した鶏肉は本明細書の方法に干渉しなかったということであった。
【0131】
また、本明細書の方法では、改良後のISOの方法と比較して正確な計数、定量トレイを用いた0.2cfu/gまでの正確な計数、および1~3cfu/全試料さまでの正確な検出が可能であった。表6を参照のこと。
【表7】
【0132】
2.3 ケース3:自然に汚染された肉や乳製品、いくつかの動物種からの加工製品
自然に汚染された食品試料は、食品中のL.モノサイトゲネスに関するヨーロッパの参照研究所から入手した。試料は凍結されており、リステリア菌は保存中に死滅した可能性がある。ただし、試料を用いて、最初に食品マトリックスと本明細書の方法との干渉、2番目に通常の背景細菌叢との干渉、3番目に計数レベルを検査した。
この場合も、本明細書の方法との比較に有用である十分に低い検出レベルを得るために、改良後のISOの方法を用いた。
結果を下の表に示す。
【0133】
概して、改良後のISOの方法との間には良好な相関関係があった。本明細書の方法では、おそらく感度が高いため、ISOの方法よりも1つ多い試料(鶏肉入り麺)でL.モノサイトゲネスを検出した。測定濃度は0.4cfu/gであった。
本明細書の方法で偽陽性または陰性結果をもたらす、検査された食品マトリックスへの干渉は観察されなかった。
試料の1つにはL.ウェルシメリが含まれていた。これにより、SensiListおよびALOAで偽陽性結果が得られた。結果は、リステリアの検出および計数のための本明細書の方法および従来技術の方法の両方で偽陽性結果が得られる可能性があることを示している。しかし、L.ウェルシメリは、L.イノキュアおよびL.モノサイトゲネスと比較して、食品中で非常に稀なリステリア属菌であり、本明細書の方法の特異性は、少なくとも現在利用可能な方法と同一程度には十分に高いと考えられている。
この研究からの結論は、本明細書の方法が自然に汚染された試料に対して真の結果をもたらしたということであった。複雑な食品マトリックスとの有意な負の干渉は観察されなかった。表7を参照のこと。
【表8】
【0134】
2.4 ケース4:クリーニング後の生産表面検査用拭い取り検体
生産設備表面検査用の拭い取り検体を3つの工場から入手した。拭い取り検体は中和液とともに供給する。検査は、材料、中和液、または洗浄液からの残留物が、例えば、可能性のある偽陰性結果をもたらしかねない増殖阻害化合物の導入または緩衝容量の増加によって、本明細書の方法に干渉する可能性があるかどうかを調査するために実施した。
会社から入手した試料には、L.モノサイトゲネスを0、15、または1500cfu/拭い取り検体の量で接種した。拭い取り検体をSensiList brothに入れ、溶液を定量トレイに移し、上記のようにインキュベートした。
接種を行わなかった拭い取り検体のいずれも、推定陽性結果をもたらさなかった。15cfuのL.モノサイトゲネスを接種した拭い取り検体では、96個のウェルのうち4~9個のウェルが黄色に変わり、L.モノサイトゲネスが陽性であることが確認できた。1500cfuを接種した拭い取り検体では、58~96個のウェルが黄色に変わった。いくつかの場合では、いくつかのウェルは赤色から橙色に変わったが、黄色には変わらなかった。色の変化は、推定陽性結果を得るには不十分であった。
この研究からの結論は、本明細書の方法は、生産環境の試料採取に用いられる拭い取り検体中のL.モノサイトゲネスの検出について正確な結果をもたらし、計数は十分であるということであった。
【0135】
2.5 ケース5:サーモン生産会社における生産試料の検査
サーモン加工会社が「スラック」から処理水とタンポンとの試料を採取し、SensiList brothに挿入した。試料は社内で培養し、確認のために地元の研究所に送った。第1の培養後の結果を
図4に示す。
同社によれば、試料採取と色の変化の読み取りは簡単であった。試料の確認により、黄色のフラスコにはL.イノキュアが含まれ、赤いフラスコにはリステリア属菌が含まれていなかったことが示された。
水および「スラック」/排水試料は、吸水性物質(タンポン)で採取した。これらは干渉を与えなかった。
サーモンの試料はそれぞれ100gであった。
図5に示す調査の結論は、SensiListは会社での使用に十分な程度にユーザにとって使い勝手が良いというものであった。推定陽性結果は、研究所の結果と一致した。
【0136】
実施例3 食品グレードのラムノースと分析グレードのラムノースとの比較
ラムノースは稀な炭水化物であり、比較的高価である。本明細書による第1の培養基はこの成分を用いており、大量に含むため、この成分は方法およびキットの価格に大きな影響を与える。分析グレードのラムノースの代わりに食品グレードのラムノースを用いることができるかどうかを確認するために、SensiList brothを2つのバージョンで準備し、比較した。比較は、2つの大規模試験で実施した。
1.培養液の安定性検査で用いたものと同一の菌株を用いた単細胞培養。定性方法を適用した。
2.魚の食肉化処理および加工を行う2つの会社からの自然に汚染された試料と汚染されていない試料。試料は、水、湿った拭い取り検体、乾いた拭い取り検体、魚肉であった。定性方法および定量方法の両方を適用した。SensiList brothで培養した後、確認用に3つの寒天培地を用いた。確認用培地は、血液寒天培地、Rapid L'mono、およびALOAであった。
【0137】
結果
単一株の検査では、すべての場合において、分析グレードのラムノースおよび食品グレードのラムノースの両方で正確な識別が得られた。
魚生産施設からの試料については、試料間に良好な相関関係があり、食品グレードのラムノースおよび分析グレードのラムノースの両方で陽性と陰性とが正しく判定されたことを意味する。ただし、いくつかの逸脱があった。これは、L.モノサイトゲネスの濃度が非常に低い、つまり、L.モノサイトゲネスの濃度が試料全体あたり6cfuを超えることはなかったことが原因である可能性が最も高い。このような低濃度では、リステリアが2つの培養液のどちらに移されたのかがランダムである場合、リステリアを含む培養液のみが陽性結果をもたらす可能性があることを意味する。
ある会社の結果の概要、経時的に採取された試料を以下に示す。×印は陰性試料を示し、Posは検出されたことを意味する。すべての濃度は非常に低かった。より少ない希釈剤を用いることによって2cfu/gの計数のための検出レベルを取得するというISOの方法に対する以前の改定は、これらの試料中のリステリアを検出するのに十分ではない。
【表9】
【0138】
3つの試料の結果を
図6に示す。左側のボックスは、20mlの水の場合において1つのL.モノサイトゲネス試料が検出できる定性方法を表す。左側の試料のみが陽性であった。同一の試料を定量方法で分析した(右パネル)。この場合、100mlの試料(10mlの水と90mlのSensiList broth)を定量トレイに移した。赤色から黄色に色が変わったのは1つのみであった。これは、水中のL.モノサイトゲネスの濃度が1cfu/10mlである可能性が最も高いことを意味する。24時間のインキュベート後に結果を得た。
SensiListの方法(つまり、本明細書の方法)はすべての試料でうまく機能したが、特に非常に湿った試料と魚肉では希釈率を考慮する必要がある。これは、一方では、SensiList brothの希釈によるものである。pHが生成される酸の量に関連し、ひいてはラムノースの濃度に関連するためである。一方、魚肉のように、ラムノース以外の炭素源やエネルギー源の相対量が多いと、ラムノースではなくこれらの成分で細菌が増殖し、十分な量の酸が生成されない可能性がある。十分に高い割合の培養液が用いられている場合、これらの課題は両方とも、SensiList brothで簡単に補うことができる。
推定陽性試料の結果を
図7に示す。2つのウェルは黄色、いくつかのウェルは橙色、ほとんどのウェルは赤色であった。特異性を検査するために、各ウェルからの物質を3つの異なる増殖培地に移した。黄色のウェルのみが血液寒天培地で溶血を起こし、ALOA寒天培地でL.モノサイトゲネスの典型的なゾーンを示した。橙色と赤色のウェルは、L.モノサイトゲネスではない細菌の増殖を示さなかったか、増殖しなかった。したがって、ラムノース培養液を用いたSensiListの感度と選択性は、分析グレードのラムノースで以前に検出されたものと同一程度良好であった。
【0139】
本発明はその詳細な説明と併せて説明されてきたが、前述の説明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を説明することを意図し、限定するものではないことを理解されたい。その他の局面、利点、および変更は、以下の特許請求の範囲内にある。
明示的にそうでないと記載されていない限り、本明細書に記載されている好ましい特徴のそれぞれは、本明細書に記載されている他のすべての好ましい特徴と組み合わせて用いることができる。
【0140】
参考文献
Vitullo et al., Real-time PCRs assay for serogrouping Listeria monocytogenes and differentiation from other Listeria spp., Molecular and Cellular Probes, Volume 27, Issue 1, February 2013, Pages 68-70.
Bjorn C.T. Schirmer, Solveig Langsrud, Trond Moretro, Therese Hagtvedt, Even Heir, 2012. Performance of two commercial rapid methods for sampling and detection of Listeria in small-scale cheese producing and salmon processing environments. Journal of Microbiological Methods, Volume 91, Issue 2, Pages 295-300, ISSN 0167-7012, https://doi.org/10.1016/j.mimet.2012.08.013