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特許7538128マルチブーム航空機及びその翼の幾何学的ねじれを制御するシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】マルチブーム航空機及びその翼の幾何学的ねじれを制御するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B64C 39/04 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
B64C39/04
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021538868
(86)(22)【出願日】2019-09-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 BY2019000013
(87)【国際公開番号】W WO2020056481
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-08-23
(31)【優先権主張番号】16/133,227
(32)【優先日】2018-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521111087
【氏名又は名称】ウアヴォス ホールディングス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ストラツィラタウ、 アリアクセイ
(72)【発明者】
【氏名】バチュラ、 ツィマフェイ
(72)【発明者】
【氏名】ティトシク、 ユーリ
(72)【発明者】
【氏名】シュピレウスキ、 ビアチャスラウ
【審査官】西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0349266(US,A1)
【文献】米国特許第02063030(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0308161(US,A1)
【文献】米国特許第08333348(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0213309(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 39/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調節可能な翼の幾何学的ねじれを有するマルチブーム航空機であって、
少なくとも1つの翼と、
前記翼の少なくとも1つに対して横方向に配置された少なくとも3つのブームと
を含み、
前記ブームの各々は、少なくとも1つのアクチュエータを含み、
前記少なくとも1つの翼は、前記少なくとも1つの翼の少なくとも一部が実質的に前記少なくとも1つの翼に沿って延びる軸を中心に前記アクチュエータを用いて旋回され得るように、前記アクチュエータを用いて前記ブームに取り付けられる、航空機。
【請求項2】
前記少なくとも1つの翼は互いに実質的に平行に配置された2つの翼を含み、
前記2つの翼の一方は、前記ブームに剛に取り付けられ、
前記2つの翼の他方は、前記他方の翼の少なくとも一部が実質的に前記他方の翼に沿って延びる軸を中心に前記アクチュエータを用いて旋回され得るように、前記アクチュエータを用いて前記ブームに取り付けられる、請求項1に記載の航空機。
【請求項3】
前記少なくとも1つの翼は互いに実質的に平行に配置された2つの翼を含み、
前記2つの翼は各々、対応する翼の少なくとも一部が実質的に対応する翼に沿って延びる軸を中心に前記アクチュエータを用いて旋回され得るように、前記アクチュエータを用いて前記ブームに取り付けられる、請求項1に記載の航空機。
【請求項4】
前記アクチュエータはサーボモータによって作動される、請求項1に記載の航空機。
【請求項5】
請求項1に記載の航空機の翼の幾何学的ねじれを制御するシステムであって、
前記翼の最適形状を決定する翼形状最適化モジュールと、
前記少なくとも1つの翼の変形を測定する手段と、
前記少なくとも1つのアクチュエータを作動させるように構成された作動モジュールと、
前記少なくとも1つの翼の変形を測定する手段からデータを受信し、前記データに基づいて対応する翼の現在の形状を決定し、前記対応する翼の現在の形状を前記翼の最適形状と比較し、比較の結果に基づいて、前記対応する翼の迎え角の分布を変更する必要があるか否かを判定し、空気力学的力の再分配により、翼の現在の形状を有する翼がその最適形状を得やすいように、前記作動モジュールにコマンドを送信して前記少なくとも1つのアクチュエータを作動させるように構成された解析モジュールと
を含むシステム。
【請求項6】
前記作動モジュールはサーボモータを含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記変形を測定する手段は、前記翼の少なくとも1つの変形が最大であるか又は最大であると予想される前記翼のセクションに設置される、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記変形を測定する手段は、対応する翼の全長にわたって散在している光ファイバ変形センサ、対応する翼の全長にわたって散在している姿勢指示器、対応する翼の全長にわたって散在しているビデオカメラから選択される少なくとも1つである、請求項5に記載のシステム。
【請求項9】
請求項6に記載の翼の幾何学的ねじれを制御するシステムを用いて、請求項1に記載の航空機の翼の少なくとも1つの翼の幾何学的ねじれを制御する方法であって、
(i)翼形状最適化モジュールを用いて、現在の飛行条件及び飛行任務に応じて、前記少なくとも1つの翼の最適形状を決定するステップと、
(ii)前記少なくとも1つの翼の変形を測定する手段を用いて、対応する翼の現在の変形値を決定するステップと、
(iii)得られた対応する翼の現在の変形値を前記解析モジュールに送信するステップと、
(iv)受信した対応する翼の現在の変形値に基づいて、前記解析モジュールを用いて対応する翼の現在の形状を決定するステップと、
(v)前記解析モジュールを用いて、対応する翼の現在の形状を対応する翼の決定された最適形状と比較し、
対応する翼の現在の形状が対応する翼の最適形状と異なると判定された場合、
前記作動モジュールを用いて少なくとも1つのアクチュエータを作動させ、前記翼の少なくとも1つの少なくとも一部を旋回させ、それにより結果として生じる少なくとも対応する翼における翼の幾何学的ねじれの変化が少なくとも対応する翼の少なくとも一部の迎え角の再分配をもたらし、空気力学的力の再分配により、現在の形状を有する翼が最適形状を得やすくなるステップと
を含む方法。
【請求項10】
ピッチを変更するために、ステップ(v)において、前記翼の少なくとも1つの少なくとも一部は、結果として生じる翼幅に沿った迎え角が当初の迎え角に対して大きくなるように、又は結果として生じる翼幅に沿った迎え角が当初の迎え角に対して小さくなるように旋回される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
バンクを変更するために、ステップ(v)において、前記翼の少なくとも1つの少なくとも一部は、前記翼の半分の迎え角が当初の迎え角に対して大きくなるように、又は前記翼の半分の迎え角が当初の迎え角に対して小さくなるように旋回される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
翼のV字型を変更するために、ステップ(v)において、前記翼の少なくとも1つの少なくとも一部は、対応する翼の左側部分の迎え角及び対応する翼の右部分の迎え角が対応する翼の中央部分の迎え角に対して大きくなるように、又は対応する翼の左側部分の迎え角及び対応する翼の右側部分の迎え角が対応する翼の中央部分の迎え角に対して小さくなるように旋回される、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、翼を使用して揚力を発生させるマルチブーム航空機を制御する方法、そのような航空機の翼の幾何学的ねじれを変更する方法、及びそのような航空機の設計に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機の重要なパラメータの1つは、揚抗比、すなわち、翼が発生させる揚力の量を、翼が一定の迎え角で生成する抗力で割ったものである。揚抗比は、滑空距離、航続距離、航続時間、燃料消費、上昇性能などの航空機性能に影響を与える。
【0003】
翼のアスペクト比が大きいほど、揚抗比は大きくなる。このため、翼のアスペクト比を可能な限り大きくすることにより、航空機の揚抗比、ひいては航空機の性能を高めることができる。
【0004】
翼のアスペクト比は、航空機をいわゆる大気衛星(アトモサット、擬似衛星)として利用する場合に主要な役割を果たす。これらは、長距離飛行耐久性(高高度長航続時間、HALE)を有する高高度を飛行する航空機である。大気衛星は、気象データの収集、通信(中継器)、地図作成、防衛などの任務に適していることが期待される。これらの任務を行うために、大気衛星は、少なくとも数週間、好ましくは数か月から数年の間、飛行している必要がある。
【0005】
現在、大気衛星はソーラーパネルによって電力を供給されると予想されている。ソーラーパネルを取り付けることができる航空機の表面積が大きいほど、航空機が受け取るエネルギーが多くなり、航空機が割り当てられた任務を行う時間が長くなる。太陽放射が利用可能な間に生成されるエネルギーは、航空機によって、第一に、モータ、制御システム、及びペイロードに電力を供給し、第二に、いわゆるバッファバッテリにエネルギーを蓄積するために使用される。航空機はその後、太陽放射が利用できないときに、バッファバッテリに蓄積されたエネルギーを使用することができる。太陽放射が利用できない期間にエネルギーを節約するために、大気衛星は、制御システム及びペイロード(センサ、中継器など)の動作のためにのみエネルギーが消費される滑空モード(エンジンを切った状態)をアクティブにすることができる。
【0006】
そのため、大気衛星の高い翼アスペクト比が、第一に、可能な限り最大の揚抗比を提供し、第二に、可能な限り多くのソーラーパネル(光起電力パネル)を取り付けるために大きな表面積の翼を作ることを可能にする。
【0007】
動作中、航空機の翼は荷重にさらされ、曲げ変形及びねじれ変形を受ける。古典的な空力配置によれば、質量を中心に集中させ、軸受面を対称に配置すると、曲げモーメントは、翼の全長に沿って延びる耐荷重要素(翼桁)によって得られる。外板は、ねじれ変形から翼を保護する。古典的な空力配置に従って作られた航空機の重量が長さ寸法の3乗に比例して増加すると、翼のアスペクト比の特定の閾値で航空機は破壊される。
【0008】
1920年代に、理論的には翼のアスペクト比を所望の値まで上げることを可能にする解決策が提案された。特許文献1で、その発明者は、複数の胴体に接続された超高翼アスペクト比の翼を有する巨大な航空機の構成を提案した。航空機の空重量、輸送品の重量及び全てのエンジンの重量を含む、そのような航空機の全ての荷重は、飛行中に翼に作用する荷重が翼幅に沿って均等に分布するように、翼幅に沿ってより均等に分布していたと推定される。昇降舵は機体端に配置されている。エンジンプロペラは、昇降舵と同じように、翼の前方、後方、又は交互に配置されることになっていた。その結果、航空機は、剛性結合によって機械的に相互接続された複数の航空機と同等であった。発明者によれば、そのような配置は、曲げ変形及びねじり変形を最小化し、所望の翼アスペクト比を提供する。しかしながら、そのような航空機の翼が硬い場合、空力外乱によって生じる飛行中の荷重が航空機の破壊を引き起こす可能性がある。
【0009】
許容可能な変形の閾値を超えたことによる航空機の破壊の問題に対処するために、例えば、特許文献2に開示されているような適応可撓性ベアリング表面(モーフィング構造)を使用することが提案された。そのような翼は環境条件に応じて適応的に変形することが期待された。そのような翼は、駆動される可動フレームコンポーネント及び/又は弾性複合材料を含んでいた。この構成の欠点は、使用される材料の強度が不十分であり、製造及び制御が複雑であることである。
【0010】
航空機の空間姿勢は、バンク(航空機の縦軸を中心とする航空機の回転)、ピッチ(航空機の横軸を中心とする航空機の旋回)、ヨー(航空機の垂直軸を中心とする航空機の回転)の3つの角度座標によって決まることが知られている。
【0011】
通常、ヨー制御(コース制御)には、その垂直軸を中心に回転可能な面である方向舵が用いられる。方向舵は、典型的には、翼の後方の安定板に取り付けられる。
【0012】
通常、バンク制御には、その水平軸を中心に回転可能な面(補助翼)が用いられる。典型的には、補助翼は、翼パネルの後縁に対称的に取り付けられる。
【0013】
一般に、ピッチ制御には、その水平軸を中心に回転可能な面である昇降舵が用いられる。古典的な空力配置に従って作られた航空機用の昇降舵は、安定板の後縁に配置され、尾翼のコンポーネントである。先尾翼機では、昇降舵は水平先尾翼のコンポーネントである。無尾翼機又は全翼機では、昇降舵は補助翼(いわゆるエレボン)と組み合わされ、翼パネルの後縁に配置される。
【0014】
航空機のもう1つの重要なパラメータは、翼のV字型(上反角、下反角)であり、これはとりわけ、航空機の上反角の安定性に影響を与える。
【0015】
従来、航空機構造は、外部荷重下で構造形状が変化しないように、可能な限り堅くロバストに作られている。可動制御装置は、固定された構造部品に旋回可能に取り付けられる。特に、幾何学的な翼のねじれ、すなわち、翼に沿った入射角の変化とV字型は、航空機の設計段階で設定され、飛行中一定に保たれる。
【0016】
柔軟な翼を有し、複数のブームで作られた大気衛星X-HALE(例えば、リンクwww.youtube.com/watch?v=qQbUJaQ94x0、アクセス日2018年7月25日を参照)が知られている。この航空機の翼には、航空機の使用中の空力パラメータの変化をスキャンするために飛行パラメータを監視するセンサが取り付けられている。
【0017】
前記X-HALE大気衛星は、請求項に係る発明のプロトタイプとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】英国特許第172980号明細書
【文献】米国特許出願公開第2011/0038727号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明による装置及び方法は、上記のプロトタイプの更なる開発であり、その既知の欠点及び他の既知の技術的解決策に対処することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の本質は以下の通りである。
【0021】
第一に、翼の幾何学的ねじれを変更するように構成されたマルチブーム航空機であって、少なくとも1つの翼と、翼の少なくとも1つに対して横方向に配置された少なくとも3つのブームとを含み、各ブームは、少なくとも1つのアクチュエータを含み、前記少なくとも1つの翼は、対応する翼の少なくとも一部が実質的に対応する翼に沿って延びる軸の周りでアクチュエータによって旋回され得るように、前記ブームに取り付けられる、航空機が特許請求されている。
【0022】
第二に、そのような航空機の翼の幾何学的ねじれを制御するシステムであって、翼形状最適化モジュールと、少なくとも1つの翼の変形を測定する手段と、解析モジュールと、作動モジュールとを含むシステムが特許請求されている。
【0023】
第三に、そのような航空機の翼の少なくとも1つの翼の幾何学的ねじれを、翼の幾何学的ねじれを制御する前記システムを用いて制御する方法であって、
(i)翼形状最適化モジュールによって、現在の飛行条件及び飛行任務に応じて、少なくとも1つの翼の最適形状を決定するステップと、
(ii)少なくとも1つの翼の変形を測定する手段によって、対応する翼の現在の変形値を得るステップと、
(iii)得られた対応する翼の現在の変形値を解析モジュールに送信するステップと、
(iv)解析モジュールによって、対応する翼の現在の形状を決定するステップと、
(v)解析モジュールによって、対応する翼の現在の形状を対応する翼の事前に決定された最適形状と比較し、
対応する翼の現在の形状が対応する翼の前記最適形状と異なる場合、作動モジュールによって少なくとも1つのアクチュエータを作動させて、前記翼の少なくとも1つの少なくとも一部を旋回させ、それにより結果として得られる少なくとも対応する翼における翼の幾何学的ねじれの変化が少なくとも対応する翼の少なくとも一部の迎え角の再分配をもたらし、空気力学的力の再分配により、翼の現在の形状を有する翼がその最適形状を得やすくなるステップと
を含む方法が特許請求されている。
【0024】
第四に、翼の幾何学的ねじれを変更するように構成されマルチブーム航空機であって、翼と、翼に対して横方向に配置された少なくとも3つのブームとを含み、各ブームは昇降舵を有する水平安定板を備えている航空機が特許請求されている。翼は、前記ブームの各々と翼との接続点で前記ブームに剛結合されている。各昇降舵は、ブームと翼との接続点で対応するブームから伝達される力を実質的に他のブームから独立して変更するために、他の昇降舵から独立してその位置を変更するように構成されている。
【0025】
第五に、そのような航空機の翼の幾何学的ねじれを制御するシステムであって、翼形状最適化モジュールと、少なくとも1つの翼の変形を測定する手段と、解析モジュールと、作動モジュールとを含むシステムが特許請求されている。
【0026】
第六に、そのような航空機の翼の幾何学的ねじれを、翼の幾何学的ねじれを制御する前記システムを用いて制御する方法であって、
(i)翼形状最適化モジュールによって、現在の飛行条件及び飛行任務に応じて、少なくとも1つの翼の最適形状を決定するステップと、
(ii)少なくとも1つの翼の変形を測定する手段によって、対応する翼の現在の変形値を得るステップと、
(iii)得られた対応する翼の現在の変形値を解析モジュールに送信するステップと、
(iv)解析モジュールによって、対応する翼の現在の形状を決定するステップと、
(v)解析モジュールによって、対応する翼の現在の形状を対応する翼の事前に決定された最適形状と比較し、
対応する翼の現在の形状が対応する翼の前記最適形状と異なる場合、作動モジュールによって水平安定板の少なくとも1つの昇降舵を作動させて、前記水平安定板を備えたブームによって前記ブームと翼との接続点で翼に伝達される力を変更しかつ前記翼の少なくとも一部の翼の幾何学的ねじれをそれぞれ変更し、それにより結果として得られる翼全体の翼の幾何学的ねじれの変化が翼の少なくとも一部の迎え角の再分配をもたらし、空気力学的力の再分配により、翼の現在の形状を有する翼がその最適形状を得やすくなるステップと
を含む方法が特許請求されている。
【0027】
図面を参照して本発明の好ましいが限定的ではない実施形態をさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明による航空機の第1の好ましい実施形態を示す。
図2】本発明による航空機の第2の好ましい実施形態を示す。
図3図3a及び図3bは、本発明による航空機の第2の実施形態の変形例を示す。
図4】本発明による航空機の別の実施形態を示す。
図5】航空機の翼の幾何学的ねじれを制御するシステムを模式的に示す。
図6】航空機の翼の幾何学的ねじれを制御する方法を概略的に示す。
図7】本発明による航空機の別の実施形態である。
図8】本発明による航空機の実施形態の1つによる航空機の翼の幾何学的ねじれを制御するシステムの概略図である。
図9】本発明の実施形態の1つによる航空機の翼の幾何学的ねじれを制御する方法を概略的に示す。
図10】本発明による航空機の実施形態の1つによる航空機のバンク角を制御するスキームを示す。
図11】本発明による航空機の実施形態の1つによる航空機のV字型を制御するスキームを示す。
【0029】
読者の見やすさと本発明のより良い理解のために、航空機の翼とブーム(胴体)は概略的に図に示されている。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の第1の実施形態。
【0031】
図1は、本発明の好ましい実施形態の1つを示す。ここで、翼(1)は、翼(1)に対して横方向に配置されたブーム(2)すなわち胴体に接続されている。本発明のこの実施形態によれば、固定安定板を含む水平尾翼(3)が各ブーム(2)に取り付けられる。
【0032】
翼(1)は、ブーム(2)に接続され、アクチュエータ(4)を用いて、翼(1)のスパンの線に沿って延びる軸を中心に翼(1)の少なくとも一部が旋回の軸となるように構成される。可能な旋回方向を図1に矢印で示す。アクチュエータ(4)は、ブーム(2)に取り付けられ、サーボモータ又は当業者に周知の他のドライバによって作動させることができる。
【0033】
ブーム(2)の最適な数は少なくとも3つであり、翼(1)は対応するアクチュエータ(4)を用いて各ブーム(2)に接続される。アクチュエータ(4)は、翼(1)の特定の部分を翼(1)の他の部分から独立して旋回させるときに、アクチュエータ(4)が互いに独立して作動できるように作られる。したがって、翼(1)の少なくとも1つの部分は、水平軸を中心に旋回することができ、一方、他の部分、特に、前記少なくとも1つの部分から離れた部分は、実質的に又はほぼ静止したままであることができる。
【0034】
アスペクト比が大きいと、翼(1)は十分に柔軟になり、曲げ変形及びねじり変形をサポートすることができ、すなわち、翼(1)に沿った翼の幾何学的ねじれの分布の変化を、破壊することなく高い範囲内でサポートすることができる。
【0035】
翼(1)は十分な弾性を有するので、アクチュエータ(4)の作用点における翼(1)の回転によって生じる変形は、翼(1)に沿ってアクチュエータ(4)の作用点に隣接するゾーン(領域、部分)までさらに広がる。その結果、翼の幾何学的ねじれ、すなわち翼(1)に沿った幾何学的ねじれ分布が変更される。翼の幾何学的ねじれの制御可能な変更は、翼(1)に沿った迎え角の制御可能な分配を引き起こす。迎え角の制御可能な変更(幾何学的ねじれの制御可能な変更)は、航空機に作用する空気力学的力の再分配をもたらす。したがって、航空機の空間姿勢を制御するだけでなく、外部条件(作用)によって生じる飛行中の変形を無効にするか又は補償することが可能となる。
【0036】
本発明の第2の実施形態。
【0037】
図2は、本発明の別の好ましい実施形態を示す。ここで、水平尾翼表面の寸法は、この表面を全てのブーム(2)に同時に取り付けることができるようなものであり、この表面は実質的に、第1の翼(1)の後方に平行に配置された第2の翼(1’)である。このようにして、航空機のタンデム配置が形成される。第2の翼(1’)は、第1の翼(1)と全く同じであることができ、又は第1の翼(1)とは異なる寸法、輪郭などを有することができる。
【0038】
本発明の第1の実施形態と比較したタンデム配置の利点は、構造的な剛性が向上することである。構造部品の弾性的性質によって引き起こされる翼(1、1’)の一方への深刻な外部衝撃は、翼(1、1’)の2番目のものまで拡大する。航空機は、破壊的な外部作用に対してより抵抗力があるだろう。このような理由で、所定の設計強度で、各翼(1、1’)に対する、したがって翼(1、1’)の重量に対する剛性要件をある程度低減することができる。
【0039】
ソーラーパネルを動力源とする航空機では、ソーラーパネルの設置に適した航空機の表面積を可能な限り大きくすることが望まれる。航空機の所定の強度及びソーラーパネルの所定の表面積を有すると、タンデム航空機の比重量は、単翼機(単葉機)の比重量よりも低くなる。したがって、タンデム配置のペイロード重量も、第1の実施形態による航空機のペイロード重量よりも大きくすることができる。
【0040】
タンデム航空機の別の利点は、所定の表面積を有することにより、タンデム航空機の翼幅が単翼機の翼幅よりも小さいことである。したがって、タンデム機は、他の条件が同じであれば、単翼機と比較して、より小さい半径の円の周りを移動することができ、より高い操縦性を有する。
【0041】
第2の翼(1’)は、図3aに示すように、ブーム(2)に堅固にかつ旋回不能に接続することができる。
【0042】
代替的に、第2の翼(1’)は、例えば第2の翼(1’)全体に対して同一にかつ同期的に第2の翼(1’)の迎え角を変更するために、アクチュエータ(4)を介してブーム(2)に接続することができる。この実施形態では、水平尾翼の表面は、安定板又は昇降舵として作用する(図3b)。
【0043】
また、第2の翼(1’)は、第1の翼(1)と同様にブーム(2)に固定することができる。すなわち、各ブーム(2)は、翼(1’)の特定の部分を翼(1’)の他の部分から独立して実質的に翼(1’)に沿って延びる軸の周りで旋回させることによって互いに独立して動作するように構成されたアクチュエータ(4)を用いて第2の翼(1’)に接続されている(図3b)。
【0044】
一般的に言えば、この方法に従って、航空機には、翼幅の線に沿って延びる軸を中心に各ブーム(2)に対して独立して旋回するように構成された任意の数の翼(1、1’、1’’・・・)を設けることができる(図4)。
【0045】
アスペクト比の大きい翼(1、1’、1’’・・・)は、高強度の構造材料で作られている。そのような翼は、本発明の目的を達成するのに適した任意の平面形状を有することができる。翼は、静的な翼の幾何学的ねじれ及び/又は空気力学的な翼のねじれを有することができ、又はそれらのどちらも有さないことができる。必ずしもではないが、好ましくは、翼の重量は、翼幅全体にわたって均等に分散させるべきである。また、翼は関節継ぎ手なしで作られ、曲がると翼の弾性に応じて翼全体に翼の変形が広がることが好ましい。
【0046】
本発明による航空機の実施形態のいずれにおいても、ブーム(2)、すなわち胴体は、エンジンとプロペラの組み合わせ、着陸装置、ペイロード、制御システムコンポーネントなどを配置するために使用される。また、本発明の可能な実施形態によれば、ブーム(2)は、水平尾翼及び/又は垂直尾翼、フィン及び安定板を支えることができる。
【0047】
各アクチュエータ(4)は、他のアクチュエータ(4)から独立して動作するように個々の駆動ユニットによって作動される。アクチュエータ(4)は、レバー型アクチュエータであることができる。駆動ユニットは、電気式、油圧式、又は空気圧式であることができる。より好ましくは、駆動ユニットはサーボモータの形態で作られる。駆動ユニット及びアクチュエータの特定の実施形態は、当業者に周知であり、本発明の目的を表すものではない。
【0048】
航空機の動力ユニットは、プロペラを駆動する少なくとも1つのモータを含む。滑空モードでは、プロペラブレードを折り畳んで空気抵抗を減らすことができる。動力ユニットの概念及び配置オプションは、当業者に周知であり、本発明の目的を表すものではない。
【0049】
本発明による航空機の記載された実施形態のいずれか1つは、設計者の選択により、ヨー制御を行う(ヨー姿勢を変更する)ために、少なくとも1つの翼(1、1’、1’’・・・)のパネルに取り付けられた1つ以上の方向舵及び/又はスポイラーをさらに備えることができる。方向舵及び/又はスポイラーの構成及び配置オプションは、当業者に周知であり、本発明の目的を表すものではない。
【0050】
設計者は、少なくとも1つの翼の先端に配置されたスポイラーを航空機にさらに装備することを決定することができる。ここで、スポイラーはスピードブレーキとしてのみ機能し、揚力には影響しない。
【0051】
翼の幾何学的ねじれ及び翼の変形は、航空機の翼の幾何学的ねじれを制御するシステム(図5)を用いて制御され、このシステムは、翼形状最適化モジュールと、少なくとも1つの翼の変形を測定する手段と、解析モジュールと、作動モジュールとを含む。
【0052】
翼形状最適化モジュールは、特定の時点で、現在の飛行条件、飛行任務、及びそれを超えると航空機が破壊される翼の最大許容(閾値)変形に基づいて、航空機の少なくとも1つの翼の最適形状を定めるように設計される。閾値変形は、特に、例えば、乱流ゾーンを通過するとき、上昇流、強風などの外部作用の影響下で起こり得る。一般に、翼の許容変形は、翼の構成によって定められ、当業者は、これらの値を測定又は計算する方法が分かるであろう。特に、飛行任務は、航空機の姿勢及びバンク角、ならびに翼のV字型の変更を必要とする可能性がある。
【0053】
変形を測定する手段は変形センサである。前記センサは、慣性位置センサ(姿勢指示器)、様々な歪センサを含むことができる。変形センサの好ましい変形例の1つは、ブラッグ格子を用いた光ファイバ歪センサを含む。変形を測定する手段は、光学式マークによって変形を解析するデバイスを含むことができる。例えば、そのような手段は、ビデオカメラ及び翼に配置された特定のマークであり得る。しかしながら、一般に、使用される歪センサの種類は設計者が選択する。
【0054】
最大効率を提供するために、変形センサは、測定値が最大であるか又は最大であると予想される翼のセクション、例えば、(予想される)最大変形のゾーン、(予想される)最大応力のゾーン、計算又は試行によって予め決定することができる(予想される)最大変位のゾーンに設置される。
【0055】
好ましくは、翼の幾何学的ねじれを制御するシステムは、少なくとも2つの独立したシステム又はタイプの変形を測定する手段を含む。これは主に、いずれか1つのタイプの変形を測定する手段が故障した場合の耐故障性を確実にするために重要である。しかしながら、任務に応じて、設計者は、1つのタイプの変形を測定する手段のみ、例えば、歪センサのみ又は姿勢指示器のみを利用できる。
【0056】
適切な動作を可能にするために、対応する翼の複数の点、好ましくは対応する翼の少なくとも3つの点で変形データを収集することが必要である。
【0057】
変形を測定する手段は、ブーム(2)に接続された各翼に取り付けられ、翼幅の線に沿って延びる軸を中心に各ブーム(2)に対して独立して旋回する。
【0058】
解析モジュールは、変形を測定する手段によって決定された変形値を受信し、受信した変形値に基づいて少なくとも1つの翼(1、1’、1’’・・・)の現在の形状を決定し、少なくとも1つの翼(1、1’、1’’・・・)の現在の形状を翼形状最適化モジュールによって決定されたこの翼の最適形状と比較し、対応する翼の現在の形状がこの翼の最適形状と異なる場合、空気力学的力の再分配により、翼の現在の形状が最適形状を得やすいように、少なくとも1つのアクチュエータを作動させるコマンドを作動モジュールに送信するにように構成される。一般に、解析モジュールは、翼幅の線に沿って延びる軸を中心に各ブーム(2)に対して独立して旋回するようにブーム(2)に接続されている各翼(1、1’、1’’・・・)に取り付けられた変形を測定する手段からのデータを処理する。
【0059】
作動モジュールは、アクチュエータを作動させるように構成される。
【0060】
以下、簡単にするために、各翼(1、1’、1’’・・・)を条件付きで複数の部分、すなわち翼の半分と翼のもう半分、又は左翼部分、中央翼部分及び右翼部分に分割することができる。
【0061】
翼の異なる部分で幾何学的ねじれ角の関係を変更することにより、航空機を制御し、翼の特定の屈撓又は形状を変更又は維持することができる。
【0062】
ピッチ角は、翼幅に沿った翼の各点における翼の迎え角が当初の迎え角に対して大きくなるように、又は翼幅に沿った翼の各点における翼の迎え角が当初の迎え角に対して小さくなるように、翼幅全体の翼の幾何学的ねじれを変更することによって変更することができる。
【0063】
バンク角は、翼の半分の迎え角が当初の迎え角に対して小さくなるように、又は前記半分の迎え角が当初の迎え角に対して大きくなるように、翼の幾何学的ねじれを変更することによって変更することができる。このタスクの翼の制御されたセクション(部分)の最小数は2である。
【0064】
翼のV字型を制御するために、右翼部分の迎え角及び左翼部分の迎え角が中央翼部分の迎え角に対して変更されるように、翼の幾何学的ねじれが変更される。例えば、翼のV字型を小さくするために、右翼部分の迎え角及び左翼部分の迎え角は中央翼部分の迎え角に対して小さくされ、又は、翼のV字型を大きくするために、右翼部分の迎え角及び左翼部分の迎え角は中央翼部分の迎え角に対して大きくされる。このV字型の制御は、少なくとも3つの制御された翼セクション(部分)を有する航空機で行うことができる。
【0065】
翼の形状最適化によって飛行中の変形及び航空機の空間的位置を無効にすることを目的として、マルチブーム航空機の翼の幾何学的ねじれの分布を制御するために、
(i)翼形状最適化モジュールを用いて、現在の飛行条件及び飛行任務に応じて、少なくとも1つの翼の最適形状を決定するステップと、
(ii)少なくとも1つの翼の変形を測定する手段を用いて、対応する翼の現在の変形値を決定するステップと、
(iii)得られた対応する翼の現在の変形値を解析モジュールに送信するステップと、
(iv)受信した対応する翼の現在の変形値に基づいて、解析モジュールを用いて対応する翼の現在の形状を決定するステップと、
(v)解析モジュールを用いて、対応する翼の現在の形状を対応する翼の事前に決定された最適形状と比較し、
対応する翼の現在の形状が対応する翼の前記最適形状と異なると判定された場合、作動モジュールを用いて少なくとも1つのアクチュエータを作動させ、前記翼の少なくとも1つの少なくとも一部を旋回させ、それにより結果として得られる少なくとも対応する翼における翼の幾何学的ねじれの変化が少なくとも対応する翼の少なくとも一部の迎え角の再分配をもたらし、空気力学的力の再分配により、翼の現在の形状を有する翼が最適形状を得やすくなるステップと
を実行する(図6)。
【0066】
飛行任務がピッチの変更を含む場合、ステップ(v)において、前記翼の少なくとも1つの少なくとも一部は、結果として生じる翼幅に沿った迎え角が当初の迎え角に対して大きくなるように、又は結果として生じる翼幅に沿った迎え角が当初の迎え角に対して小さくなるように旋回される。
【0067】
飛行任務がバンク角の変更を含む場合、ステップ(v)において、前記翼の少なくとも1つの少なくとも一部は、翼の半分の迎え角が当初の迎え角に対して大きくなるように、又は翼の半分の迎え角が当初の迎え角に対して小さくなるように旋回される。
【0068】
飛行任務が翼のV字型の変更を含む場合、ステップ(v)において、前記翼の少なくとも1つの少なくとも一部は、対応する翼の左部分の迎え角及び右部分の迎え角が対応する翼の中央部分の迎え角に対して大きくなるように、又は対応する翼の左部分の迎え角及び対応する翼の右部分の迎え角が対応する翼の中央部分の迎え角に対して小さくなるように旋回される。
【0069】
各翼の変形データは、所定の時間間隔で収集及び解析される。設計者は、各翼の変形データが収集され、制御システムがこれらのデータを解析してアクチュエータを制御する頻度を設定する。翼の変形を常に監視することが望ましく、翼の変形の2つの連続する測定間の時間間隔は、翼の幾何学的ねじれを制御するシステムに含まれる手段、センサ、接続部などの技術特性のみに基づいて定められる。
【0070】
一般的に言えば、航空機を操縦する方法は、マルチブーム航空機だけでなく、「先尾翼機」、「トリデム」(互いに平行に配置された3つの翼を有する航空機)などの他の既知の航空機構成にも適合させることができる。
【0071】
一般に、変形を測定する手段は、任意の数の翼に取り付けることができる。航空機の特定の動作条件を考慮して、このアプローチを適用するか否かを決定するのは設計者である。変形を測定する手段を1つの最大の翼にのみ設置するのが実用的である。しかしながら、他のオプションも可能である。
【0072】
また、翼幅の線に沿って延びる軸を中心に各ブーム(2)に対して旋回可能に1つの翼のみをブーム(2)に連結することは、実用的でありかつ一般に十分である。この場合、他の翼は、ブーム(2)に剛結合することが推奨される。しかしながら、他のオプションも可能である。
【0073】
実際には、本発明の最も良く制御された実施形態は以下の通りである。
・1つの翼のみを有するマルチブーム航空機であって、翼は翼幅の線に沿って延びる軸を中心に各ブーム(2)に対して独立して旋回するようにアクチュエータ(4)を用いてブーム(2)に接続され、各ブーム(2)には昇降舵のない安定板である水平尾翼が取り付けられている航空機(図2)。
・前翼と後翼とを有するタンデム配置のマルチブーム航空機であって、前翼は翼幅の線に沿って延びる軸を中心に各ブーム(2)に対して独立して旋回するようにアクチュエータ(4)を用いてブーム(2)に接続され、後翼は剛に固定され、前翼は後翼よりも大きい航空機(図3)。
【0074】
前記2つの最も良く制御された実施形態では、制御された幾何学的ねじれを有する翼は、翼の幾何学的ねじれを制御するシステムからのコマンドの実行の結果として、実質的に即時に空気力学的力を変更し、回転を開始及び終了するときに、パネル(翼の端部)の空気力学的抵抗の差に基づいて所望の方向にヨー回転モーメントを生成する。これにより、方向舵を使用して地上走行する必要性が減少し、損失が減少する。
【0075】
図7は、本発明による航空機の別の実施形態の概略図である。上述の実施形態とは対照的に、この実施形態では、高アスペクト比の翼(1)がブーム(2)に剛に取り付けられ、各ブーム(2)が昇降舵を有する水平尾翼(3)を有し、これにより昇降舵を用いて高度を調節することが可能である。特に各昇降舵の位置を制御することにより、水平尾翼(3)の位置を変更する場合、それぞれの制御力は、対応するブーム(2)を介して、翼(1)のこのブーム(2)に剛結合された部分に伝達される。翼(1)のこの部分に生じる変形は、発生する翼(1)全体の迎え角を変更する傾向がある。なぜなら、この変形は、翼(1)の柔軟性及び弾性の性質により、翼(1)と対応するブーム(2)とのこの特定の接続点に隣接するゾーン(領域)まで、すなわち翼(1)の特定の部分まで翼(1)に沿って広がるからである。その結果として、翼の幾何学的ねじれ、すなわち翼(1)に沿った幾何学的ねじれの分布と、それに応じて、翼(1)に沿った迎え角の分布が変更される。
【0076】
上述の実施形態と同様に、図7に示す航空機では、翼の幾何学的ねじれ及び翼の変形は、航空機の翼の幾何学的ねじれを制御するシステム(図8)によって制御され、このシステムは、翼形状最適化モジュールと、少なくとも1つの翼の変形を測定する手段と、解析モジュールと、作動モジュールとを含む。
【0077】
翼形状最適化モジュールは、特定の時点で、現在の飛行条件、飛行任務、及びそれを超えると航空機が破壊される最大許容(閾値)翼変形に基づいて、航空機の翼の最適形状を定めるように設計される。特に、飛行任務は、航空機の姿勢及びバンク角、ならびに翼のV字型の変更を必要とする可能性がある。
【0078】
変形を測定する手段は、変形センサ、例えば、慣性位置センサ又は姿勢指示器、様々な歪センサ、ブラッグ格子を用いた光ファイバ歪センサなどである。変形を測定する手段は、光学的マークを使用して変形を解析するデバイス、例えば、ビデオカメラ及び翼の特定のマークを含むことができる。上述の実施形態と同様に、歪センサのタイプは、設計者によって選択される。歪センサは、測定値が最大になると予想される翼のセクション(部分)、例えば、起こり得る最大変形のゾーン、(予想される)最大応力のゾーン、(予想される)最大変位のゾーンに設置される。システムの耐故障性を確実にするために、翼の幾何学的ねじれを制御するシステムは、少なくとも2つの独立したシステム又はタイプの変形を測定する手段を含むことが好ましい。
【0079】
適切な動作を可能にするために、対応する翼の少なくとも3点で変形データを収集することが好ましい。
【0080】
解析モジュールは、変形を測定する手段によって決定された変形値を受信し、受信した変形値に基づいて翼(1)の現在の形状を決定し、翼(1)の現在の形状を翼形状最適化モジュールによって決定されたこの翼の最適形状と比較し、翼の現在の形状がこの翼の最適形状と異なる場合、空気力学的力の再分配により、翼の現在の形状を有する翼が最適形状を得やすいように、少なくとも1つの昇降舵を作動させるコマンドを作動モジュールに送信するように構成される。一般に、解析モジュールは、ブーム(2)に接続された翼(1)に取り付けられた変形を測定する手段からのデータを処理する。
【0081】
作動モジュールは、ブーム(2)の尾翼の各昇降舵を作動させるように構成される。
【0082】
本発明による航空機の最初の2つの実施形態に関してなされた上記の開示と同様に、簡単かつ簡便にするために、以下に説明する第3の実施形態(図7)では、翼(1)を複数の部分、すなわち翼の半分と翼のもう半分、又は左翼部分、中央翼部分及び右翼部分に分割することができる。
【0083】
翼の異なる部分の幾何学的ねじれ角の関係を変更することにより、航空機を制御し、翼の特定の屈撓又は形状を変更又は維持することができる。
【0084】
翼形状の最適化によって飛行中の変形を無効にし又は補償しかつ前記航空機の空間的姿勢を制御することを目的とするマルチブーム航空機の翼の幾何学的ねじれの分布の制御は、
(i)翼形状最適化モジュールを用いて、現在の飛行条件及び飛行任務に応じて翼の最適形状を決定するステップと、
(ii)翼の変形を測定する手段を用いて、対応する翼の現在の変形値を決定するステップと、
(iii)得られた現在の変形値を解析モジュールに送信するステップと、
(iv)受信した翼の現在の変形値に基づいて、解析モジュールを用いて翼の現在の形状を決定するステップと、
(v)解析モジュールを用いて、翼の現在の形状を翼の事前に決定された最適形状と比較し、
翼の現在の形状が翼の前記最適形状と異なると判定された場合、作動モジュールを用いて少なくとも1つの昇降舵を作動し、この昇降舵を備えたブームによってこのブームと翼との接続点で翼に伝達される力を変更しかつ翼の少なくとも一部の翼の幾何学的ねじれをそれぞれ変更し、それにより結果として得られる翼全体の翼の幾何学的ねじれの変化が翼の少なくとも一部の迎え角の再分配をもたらし、空気力学的力の再分配により、翼の現在の形状を有する翼が最適形状を得やすくなるステップと
を用いて行われる(図11)。
【0085】
飛行任務がピッチの変更を含む場合、ステップ(v)において、少なくとも1つの昇降舵は、結果として生じる翼幅に沿った迎え角が当初の迎え角に対して大きくなるように、又は結果として生じる翼幅に沿った迎え角が当初の迎え角に対して小さくなるように旋回される(図7)。
【0086】
飛行任務がバンク角の変更を含む場合、ステップ(v)において、1つの昇降舵の少なくとも一部は、翼の半分の迎え角が当初の迎え角に対して大きくなるように、又は翼の半分の迎え角が当初の迎え角に対して小さくなるように旋回される(図8)。
【0087】
飛行任務が翼のV字型の変更を含む場合、ステップ(v)において、少なくとも1つの昇降舵は、対応する翼の左側部分の迎え角及び対応する翼の右側部分の迎え角が対応する翼の中央部分の迎え角に対して大きくなるように、又は対応する翼の左側部分の迎え角及び対応する翼の右側部分の迎え角が対応する翼の中央部分の迎え角に対して小さくなるように旋回される(図9)。
【0088】
翼の変形データは、所定の時間間隔で収集及び解析される。設計者は、前記変形データが収集され、制御システムがこれらのデータを解析してアクチュエータを制御する頻度を設定する。翼の変形を常に監視することが望ましく、翼の変形の2つの連続する測定間の時間間隔は、翼の幾何学的ねじれを制御するシステムに含まれる手段、センサ、接続部などの技術特性のみに基づいて定められる。
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11