(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】流れ管理の流体力学的ダクトが表面波管理の水平壁部分と共にその船首に取り付けられた船舶
(51)【国際特許分類】
B63B 1/06 20060101AFI20240814BHJP
B63B 1/32 20060101ALI20240814BHJP
B63B 1/40 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
B63B1/06 A
B63B1/32 A
B63B1/40 A
(21)【出願番号】P 2021550309
(86)(22)【出願日】2020-02-28
(86)【国際出願番号】 GR2020000016
(87)【国際公開番号】W WO2020174256
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2023-02-22
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GR
(73)【特許権者】
【識別番号】521380373
【氏名又は名称】ペトロマノラキス、エマニュエル イー.
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ペトロマノラキス、エマニュエル イー.
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-522778(JP,A)
【文献】特公昭50-012674(JP,B1)
【文献】特表2015-536872(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0149747(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 1/06
B63B 1/32
B63B 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
その船首に流れ管理の流体力学的ダクトを有する船舶であって、
前記ダクトが、前記船舶の前記船首(8)の中心線(CL)の両側に延在する水平壁部分(2)及び
底部で前記水平壁部分(2)に接続される一対の側壁部分(5)から構成され、
前記側壁部分(5)及び前記水平壁部分(2)が、翼部分を有し、
前記側壁部分(5)が、前記船首の両側において上方に延在し、前記ダクトの外側の流れとは完全に区別された前記ダクト内の流れの領域を水平壁部分(2)と共に形成し、
前記ダクトが、
前記船舶の航行中に使用され、翼部分を有する少なくとも1つの追加の水平壁部分(1)をさらに備え、
前記追加の水平壁部分(1)が、前記水平壁部分(2)の上方の水線
(WL)の領域において固定配置されるように配置され、
前記水平壁部分(2)が、
前記水線(WL)の下方で前記ダクトの底部において固定配置されるように配置され、
前記船首の両側において上向きに延在し且つ前記水平壁部分(2)の端部及び前記追加の水平壁部分
(1)の端部で接続される前記側壁部分(5)と共に、
前記水線の下方の前記ダクトの底部の前記水平壁部分(2)と、前記水線の領域における前記追加の水平壁部分
(1)との組み合わせが、造波抵抗の累積的に増加した低減と前記船舶の推進のための定格馬力及び燃料消費量の低減とを提供する円周方向に閉じたダクトを画定
し、
翼部分を有する前記追加の水平壁部分(1)が、前記追加の水平壁部分の前縁に入射する流れの流入速度の増加を実現するために、海によって生成された表面波のベクトルと協働するように、前記追加の水平壁部分(1)の前縁が前記水平壁部分(2)の前縁に対して後方に位置し、前記追加の水平壁部分(1)のサイズが前記水平壁部分(2)のサイズよりも小さく、
前記追加の水平壁部分(1)が、前記追加の水平壁部分(1)の前縁を通る流れの速度の増加の結果として生成される波エネルギーの吸収を生成することを特徴とする、船舶。
【請求項2】
前記追加の水平壁部分が、前記船舶が積載状態にあるときに前記積載状態の水線(WL1)の領域において動作するように配置され且つ表面波の管理を提供するように適合された水平壁部分(1)であり、
前記水平壁部分(1)が、前記船首において前方垂線(6)の上流及び前に船首波が現れる広い船首構成を有する船舶については前記水線(WL1)の上方に配置され、前記船首及びその下流において前方垂線(6)上に船首波が現れる狭い船首構成を有する船舶については前記水線(WL1)の上方に配置される、請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記流体力学的ダクトが、前記水平に延在する壁部分(1)と(2)との間の中間の水平に延在する壁部分(3)を備え、
前記船舶が積載状態にあるとき、前記ダクトが、
前記ダクトの上部の表面波を管理する水平に延在する壁部分(1)であって、前記船首の前方垂線(6)の上流及び前に船首波が現れる広い船首構成を有する船舶については前記積載状態の水線(WL1)の上方に配置され、前記船首の前記前方垂線(6)上及び前記船首の下流に船首波が現れる狭い船首構成を有する船舶については前記積載状態の水線(WL1)の下方に配置される、前記水平に延在する壁部分(1)と、
前記水平に延在する壁部分(1)と(2)との間に位置し、前記ダクトの底部に及ぼされる圧力を管理するように適合された、前記中間の水平に延在する壁部分(3)と、
層流調節を提供するように適合された、前記中間の水平に延在する壁部分(3)の下方に位置する水平に延在する壁部分(2)と、によって動作する、請求項1に記載の船舶。
【請求項4】
前記流体力学的ダクトが、前記水平に延在する壁部分(1)の下方に配置された中間の水平に延在する壁部分(3)と、前記水平に延在する壁部分(3)の下方及び前記水平に延在する壁部分(2)の上方に配置された追加の水平に延在する壁部分(4)とを備え、
前記船舶が積載状態にあるとき、前記ダクトが、
前記ダクトの上部の表面波を管理する前記水平に延在する壁部分(1)であって、前記船首において前方垂線(6)の上流及び前に船首波が現れる広い船首構成を有する船舶については前記積載状態の水線(WL1)の上方に配置され、前記船首及びその下流において前記前方垂線(6)上に船首波が現れる狭い船首構成を有する船舶については前記積載状態の水線(WL1)の下方に配置される、前記水平に延在する壁部分(1)と、
前記ダクトの底部に及ぼされる圧力を管理するように適合された水平に延在する壁部分(3)と、
前記水平に延在する壁部分(3)の下方に位置し且つ層流調節を提供するように適合された前記水平に延在する壁部分(4)と、によって動作する、請求項1に記載の船舶。
【請求項5】
前記流体力学的ダクトが、前記水平に延在する壁部分(1)の下方に配置された追加の水平に延在する壁部分(3)と、前記水平に延在する壁部分(3)と(2)との間において前記水平に延在する壁部分(3)の下方に配置された追加の水平に延在する壁部分(4)とを備え、前記船舶が無積載状態にあるとき、前記水平に延在する壁部分(1)及び(3)が水の外側にあり、
前記ダクトが、
前記ダクトの上部の表面波を管理する前記水平に延在する壁部分(4)であって、前記船首において前方垂線(6)の上流及び前に船首波が現れる広い船首構成を有する船舶については前記無積載状態の水線(WL2)の上方に配置され、前記船首及びその下流において前記前方垂線(6)上に船首波が現れる狭い船首構成を有する船舶の場合、前記無積載状態の水線(WL2)の下方に配置される、前記水平に延在する壁部分(4)と、
前記ダクトの底部に及ぼされる圧力を管理するように適合された前記水平に延在する壁部分(2)と、によって動作する、請求項1に記載のその船首に流れ管理の流体力学的ダクトを有する船舶。
【請求項6】
前記流体力学的ダクトの前記側壁部分(5)が、
前記水線の特定の各レベルにおいて前記船舶の前記船首(8)の側壁から一定の等距離に維持された前記側壁部分(5)の後縁と平行なまま前記船舶の前記船首(8)の側壁の構成にしたがうように、
または、固定または可変のずれ角で前記船舶の前記船首(8)の前記側壁からずれるように、
または、その長さの一部が、前記ダクトの高さの上部または下部のいずれかに沿って固定または可変のずれ角でずれるように前記側壁部分(5)が配置され、前記船首の前記側壁の構成にしたがって且つそれらに平行のまま前記船舶の前記船首(8)の前記側壁から前記固定距離に前記側壁部分(5)の別の部分が配置される、ように配置される、請求項1に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体力学の技術分野、特に船舶航行中の水流を管理するためにその船首に取り付けられた流体力学的ダクトを備えた船舶であって、ダクトが、2つの側壁部分から構成され、1つの側壁部分が、船舶の船首の両側にあり、2つの側壁部分が、水平にまたは特定の傾斜で延在する少なくとも1つの下部壁部分及び1つの上部壁部分と接続され、ダクトの内部の船舶の船首における水流が、ダクトの外部の流れと区別され、そのような区別が、造波及び摩擦抵抗の低減をもたらし、結果として船舶の推進に必要な燃料消費の低減をもたらす、船舶に関する。さらに、水平に延在する上部壁部分は、海面上の波ベクトルと協働して作用し、この水平に延在する上部壁部分の前縁に入射する波の速度を増加させ、そのような海面での波の速度の増加は、流速のさらなる増加及び船首に及ぼされる圧力の降下をもたらし、その結果、船舶によってその推進において遭遇される抵抗の減少につながる。船舶の推進中に最適に低減された抵抗を達成し、結果として燃料消費の低減を達成する範囲で、提案された流体力学的ダクトを設計する際に、船舶の船首幾何学的形状(従来のまたは球根状船首)及び積載要件が考慮される。
【背景技術】
【0002】
流れ管理の流体力学的ダクト、特に船舶の推進中に造波抵抗に直面するものは、過去数十年における一連の国際出願及び数十の国内特許の付与の主題であった。国際公開第1992/22456号パンフレットでは、そのようなダクトの最初の設計が提案され、国際公開第1996/26104号パンフレットでは、このダクトが、水平壁部分に接続された2つの側壁部分を有し、そのような壁部分が全て翼部分を有することが提案された。その後、国際公開第2013/011332号パンフレット及び国際公開第2014/091259号パンフレットは、その性能を最大化するためのこのダクトの著しい構造改善を提案した。
【0003】
あらゆる種類の船舶の造船分野において、エネルギー消費量の低減は、環境問題への意識の高まり及び気候変動によって引き起こされる危険な現象の出現と相まって、ますます大幅な重要性を得ていることは周知である。さらに、造波抵抗及び摩擦抵抗が、船舶の推進中の燃料消費のレベルを決定する本質的な要因を構成することが知られており、この要因の重要性は、船舶によって遭遇されるそのような抵抗の低減を達成し、船舶が遭遇する水の固体塊を介した推進力を改善するための一貫した広範な努力によって証明されている。例として、船舶の船首における船体の一部の球根または球状構成は、造波抵抗を低減するために、特に船首波の高さを低減する範囲で、過去に広く使用されてきた。しかしながら、船舶の前面、すなわち船舶の推進中に水と接触する船首の表面積はかなり広い面積であり、推進抵抗は、船舶の速度の二乗の増強された値に比例するため、推進抵抗を解消し、そのような馬力が船舶の速度の3乗に比例するため、船舶の設計された定格速度で船舶の推進を提供するのに必要な馬力の増加がさらに増強される。
【0004】
推進抵抗の低減、すなわち、船舶の船首前面に及ぼされる圧力によって生成される造波エネルギーの低減を達成するこの問題に対処するために、船舶の船首に取り付けられたダクトの追加は、上述したように、国際公開第92/22456号パンフレット(E.E.Petromanolakis)に開示されており、そのようなダクトは、船舶の水線の上方及び下方で高さ内に延在し、船舶の推進中の造波抵抗の低減を、船舶がダクトを通って水塊に衝突し、船舶の前面船首面全体を通らないために、達成される船首に及ぼされる圧力の低減によって達成することを目的としている。そのようなダクト、船首に作用する圧力のダンパ、及び結果として船舶の推進に必要な燃料消費量の低減の改善されたバージョンは、上述したように、後続の国際公開第96/26104号パンフレット(E.E.Petromanolakis)に開示されており、そのような改善されたダクトは、翼部分を有する壁を有し、その周りの水の流れに関してダクトを通る流れの区別を最大化し、そのような区別の増強は、燃料節約の有益な増加をもたらす。
【0005】
その後、ギリシャ特許出願公開第20110100430号明細書及び後続の国際公開第2013/011332号パンフレットによれば、ダクトは、水平壁部分への流れの入射角ゼロに対応する低圧中心が第1の船首波の発生領域内に位置し、水平壁部分との接続領域内のその側壁部分の低圧中心が、水平壁部分の低圧中心の間の選択された位置に、その前縁までまたは僅かに前方に配置されるように配置されることが提案されている。さらにまた、ダクトの設計を最適化する範囲で、水平壁部分及び側壁部分の構造的特性における選択的な組み合わせが提案されており、壁部分の幾何学的形状の揚力係数(CL)及び抗力係数(CD)パラメータの決定要因が研究されており、ダクトの水平壁部分及び側壁部分の双方について揚力係数CLと抗力係数CDとの比CL/CDの最適化を得て、船舶の特定の公称航行速度及び船首の幾何学的形状に対応して側壁部分の揚力係数の最適化された比をさらに得ることを目的とする解決策が提案されている。上記で提案されたダクトのパラメトリック設計は、性能の著しい改善をもたらし、そのような改善は、異なるタイプの船舶モデル(コンテナ、バルクキャリア、ヨット及びフリゲート)に対して首尾よく行われた試験によって確認されている。
【0006】
さらにまた、後続のギリシャ特許出願公開第20120100643号明細書及びその優先権を主張した国際公開第2014/091259号パンフレットは、各特定の船首の構成及び幾何学的形状に関連する情報と相関があり、さらに船舶の様々な積載要件と相関があるダクトのパラメトリック設計を提案している。逆に、船首の設計は、その中に最適化されたダクトを取り付ける範囲で実施されるように提案され、その焦点は、馬力推進要件及び燃料消費に関する改善された結果の達成にある。具体的には、水平壁部分が、上部極限位置と下部極限位置との間で垂直に移動するように適合されており、側壁部分が、水線を通過する垂直に変位可能な水平面によって取られた任意の位置において、水線を通過する水平面に沿った側壁部分の水平断面を、幾何学的形状、特に船首の側壁から固定距離に維持される側壁部分の各水平断面の後縁を伴って船首のフレアに追従させる構成を有し、そのような固定距離が、各特定の水線レベルに対応する側壁部分の後縁から船首の側面までの垂線によって画定される、ダクトの配置が提案されている。
【0007】
船舶の船首に取り付けられたダクトの上述した研究努力は、船舶の経済的に有利な推進に寄与しており、また、船首の加速された垂直移動の低減を達成し、それによってより高い平均巡航速度をもたらしている。上述した最後の特許出願では、例外的に有益な結果が得られ、ダクトのパラメトリック設計が、ダクトが取り付けられる船舶の船首の特定のパラメトリック設計と相関がある。
【0008】
船舶の航行中に水線の下方に完全に浸漬された船舶の船首に取り付けられた提案された流体力学的ダクトを使用することにより、ダクトは、水平に延在する壁部分及び2つの側壁部分から構成され、ダクトの外側の流れと比較してダクト内の流れの最適に有利な区別を達成し、したがって船首に及ぼされる圧力の低減を達成するという目標が達成され、その結果、造波抵抗、すなわち船舶の航行中の抵抗は、その後の燃料消費の所望の低減と共に低減されることが十分に証明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第1992/22456号パンフレット
【文献】国際公開第1996/26104号パンフレット
【文献】国際公開第2013/011332号パンフレット
【文献】国際公開第2014/091259号パンフレット
【文献】国際公開第92/22456号パンフレット
【文献】国際公開第96/26104号パンフレット
【文献】ギリシャ特許出願公開第20110100430号明細書
【文献】ギリシャ特許出願公開第20120100643号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、水線の下方のダクト及びその開放上端の浸漬は、海面に生成される波の管理を無効にし、それによって造波抵抗の不完全な管理をもたらし、船舶の船首に取り付けられる提案された流体力学的ダクトの制限された全体的な効率をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明の目的は、ダクトの浸漬された水平壁部分の上方に配置された追加の少なくとも1つの上部水平壁部分を備えた流体力学的ダクトであって、前記追加の少なくとも1つの水平壁部分が、水線の領域に配置され、追加の上部水平壁部分の前縁に入射する流速の増加による波エネルギーの吸収を生成するように適合される、流体力学的ダクトを提案することである。上述した追加の少なくとも1つの上部水平壁部分の導入は、ダクトの外側の流れからダクトの内側の流れの区別を拡大することをもたらし、これは、ダクトの底部近くの下部水平壁部分と、水線近くに配置された水平壁部分との組み合わせをもたらし、造波抵抗の累積的に増加した減少を提供し、そのような造波抵抗の減少は、それに応じて減少した馬力及び船舶の推進のための燃料消費を必要とし、ダクトの効率におけるそのような上述した改善は、乱流海及び増強された造波の条件下で著しく強化される、水線の領域における上述した追加の上部壁部分を備える。
【0012】
本発明のさらなる目的は、水線の領域における、好ましくは、船首波が船首中心線の上流に現れる広い船首を有する低速船舶の場合は水線の上方の、及び船首波が船首中心線上またはその下流に現れる狭い船首を有する高速船舶の場合は船首中心線の下方の流体力学的ダクトの追加の少なくとも1つの上部水平壁部分の有利な配向を提案することである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、上述した少なくとも1つの上部水平壁部分の前縁に入射する流れの入口速度の増加を達成するために、海によって生成される表面波のベクトルと協働するように適合されることができ、それによって入口流れのさらなる増加、したがってそれに及ぼされる圧力のさらなる低減を達成し、すなわち、船舶の改善された推進を達成するように、翼部分の技術的特性(翼弦長、厚さ、キャンバなど)を有する流体力学的ダクトの追加の少なくとも1つの上部水平壁部分を提案することである。
【0014】
本発明の別の目的は、航行速度及び船首の構成の基準を考慮した上述した少なくとも1つの上部水平壁部分のパラメータの決定、ならびにその上の流れの入射角の変更のための船舶の長手方向に沿った前進または後退の能力を有する前記上部水平壁部分の提案である。
【0015】
本発明の目的はまた、流体力学的ダクトの上部水平壁部分の翼部分の可変パラメータを提案することであり、そのような変動は、船舶の航行速度の変化及び船首の構成の変化に関連する。
【0016】
本発明の別の目的は、ダクトの性能を改善する範囲で、ダクトの水平に延在する延長部及び側壁部分の延長部の可能性を提供することであり、そのような延長部は、上述した壁部分の前縁を前方に望ましく延長するように適合され、それによって、例えば、船首波の高さの変化をもたらす気象条件の変化及び/または船舶の航行速度の変更に起因して、必要なときに造波抵抗に対する閉鎖されたダクトの効果を拡大する被覆シートを用いて達成される。
【0017】
本発明の別の目的は、ダクトの側壁部分の配置であって、
本発明の第1の実施形態によれば、それらの水平断面が、船首のフレアの幾何学的形状にしたがい、側壁部分の各水平部分の後縁が、船首の側壁から固定距離に維持されており、そのような固定距離が、各特定の断面に対応する側壁部分の後縁から船首の側面までの垂線によって画定され、
特定の状況下で有利な効果を生み出すことができる本発明の第2の実施形態によれば、側壁部分が、船首の側壁に対して特定の傾斜でずれ、
ダクトの底部の下部水平壁部分から水線までのダクトの高さ全体にわたって、
又は、ダクトの高さの上部または下部のいずれかに部分的に沿って、側壁部分が船首の側壁からずれる場合、ダクトの高さ全体にわたってまたはその一部に沿って、船首の側壁からの側壁部分の距離が徐々に増加することに起因して形成される結果として生じる渦が、前記追加の少なくとも1つの水平壁部分の存在に起因して形成されるベクトルの効果の増加に起因して打ち消されて減衰されることができ、船首側壁から前記固定距離に配置されるかまたは船首側壁から徐々にずれる側壁部分の適切な組み合わせが、前記ダクトが装備されている船舶の推進中の定格馬力の低減及び燃料消費の低減によって提供される流体力学的ダクトの向上した効率の達成、ならびに船首の望ましくない垂直方向の動きの最適化をもたらす、ダクトの側壁部分の配置を提案することである。
【0018】
さらに、船舶の喫水は、その積載レベルに応じて大幅に変更され、無積載の船舶は、最小の喫水を示し、完全積載状態の船舶は、最大の喫水を示すことが認められる。
【0019】
前述に基づいて、船首に取り付けられた提案された流体力学的ダクトが船舶の任意の積載条件に適しているために、本発明の別の目的は、全てのレベルでその側壁から固定距離を維持するか、またはそれらの底部からそれらの上部までの長さ全体にわたってまたは底部から上部までのそのような長さの一部に沿って部分的にこれらの側壁から徐々にずれる船首の構成にしたがう連続的な側壁部分と、側壁部分の下部で接続されることによって円周方向に閉じた第1の下部ダクト部分を形成する第1の対の水平壁部分と、側壁部分の上部で接続されることによって円周方向に閉じた第2の上部ダクト部分を形成する別の第2の対の水平壁部分とのレイアウトにおけるそのようなダクトであって、第1の下部ダクト部分が、船首における流れを管理するように適合され、無積載の船舶の推進中の波抵抗の低減という上述した有利な効果を提供する一方で、第2の上部ダクト部分が、船首における流れを管理するように適合され、上述した第1のダクト部分の助けを借りて、完全積載状態での船舶の推進中の波抵抗の低減という上述した有利な効果を提供する、ダクトを提案することである。
【0020】
本発明のさらなる目的は、下部及び上部を有する本発明の円周方向に閉じた流体力学的ダクトであって、ダクトが3つの水平壁部分を備え、水平に延在する中間壁部分が、船舶が無積載状態にあるときに表面波を管理するように適合された壁部分を構成する、流体力学的ダクトを提案することである。
【0021】
本発明の別の目的は、水平に延在する壁部分のうちの少なくとも1つの垂直方向に沿った垂直変位の可能性を提供することであり、具体的には、これがその積載量及び消耗品の消費に依存する船舶の喫水の変化する条件下でダクトの最適化された有益な影響を提供する表面波管理のための有利な位置に配置されるように、表面波を処理するように適合されたものにそのような能力を提供することである。
【0022】
本発明の別の目的は、流体力学的ダクトの上部及び/または水平に延在する下部壁部分が、船舶の対称軸の両側の水線の水平レベルに対して、上方または下方に、一定の傾斜で配向される実施形態を提案することである。
【0023】
本発明の別の目的は、水平または特定の傾斜で延在するダクトの下部壁部分の下方に平行に延在する少なくとも1つ以上の追加の壁部分であって、この少なくとも1つ以上の壁部分が、下側水平または傾斜壁部分と同じまたは異なる翼部分を有し、下部壁部分と下方にある追加の壁部分との間の空間が、側壁部分によって覆われ、提案される追加の1つ以上の壁部分の目的が、本発明のダクトへの流入流の速度の増加であり、したがって、ダクトの外側の流れからのダクト内の流れの特性のさらなる多様化の向上である、少なくとも1つ以上の追加の壁部分を提案することである。
【0024】
本発明の別の目的は、提案された円周方向に閉じたダクトがバルブを有する船舶内に取り付けられ、水平に延在する下部壁部分が、バルブ構成が上述した円周方向に閉じたダクト内に収容されるように配置され、そのような配置が、本発明のバルブ及びダクトの組み合わされた効果に起因して向上した効率を提供する実施形態を提案することである。本明細書では、バルブを備えた船舶が、その公称速度の限界内で移動するときに、その航行効率の一定の改善を示すが、Fnの同時変化により、その公称速度のこれらの限界を下回る著しく低下した効率を提示することが観察されたことに特に留意されたい。したがって、本発明の目的は、ダクトが設計された公称速度(経済的速度)よりも遅い速度を含むFnの全ての値においてその有利な効果を提供することがわかっているため、船舶の航行速度とは無関係に適切な効率を保証する範囲で、船舶の船首に取り付けられた本発明のダクトとバルブとの上述した組み合わせを提案することである。
【0025】
より具体的には、本発明の目的は、下部水平壁部分がバルブ本体のいずれかの側にその選択された高さで延在する実施形態、及び下部水平壁がバルブ本体の上面によって置換されている別の実施形態において、船舶の船首のバルブと本発明の流体力学的ダクトとの組み合わせであって、その一方で、上述した実施形態のいずれにおいても、表面波管理を提供するように適合された上部水平壁部分が、水線の領域においてバルブ本体の上方に適切に配置される、組み合わせを提案することである。
【0026】
したがって、本発明の主な目的は、従来技術の上述した欠点及び欠陥を効率的に解消し、船舶の速度、船舶の船首の幾何学的形状、ならびにその様々な積載条件の機能的に相互依存するパラメータと併せて、ダクト性能の最適化を可能にする、船舶の船首に取り付けられた流体力学的ダクトの構造設計パラメータを提案することである。
【0027】
本発明のこれらの及び他の目的、特徴及び利点は、好ましい実施形態の詳細な説明において明らかになるであろう。
【0028】
本発明は、それが例示的且つ非限定的な方法で提示されている添付の図面を参照することによって当業者に完全に開示される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】ダクトが、水平壁部分と、水線の上方に延在するように示されている一対の側壁部分とを備える、従来技術の流体力学的ダクトが取り付けられた船舶の船首の部分斜視図を示している。
【
図2】ダクトが、下部水平壁部分と、上部水平壁部分と、水線の上方に延在するように示されている側壁部分とから構成されている、本発明の流体力学的ダクトが取り付けられた船舶の船首の一部の斜視図を示している。
【
図3】下部、上部、及び中間の水平に延在する壁部分と、水平壁部分の端部に接続され且つ船首の側壁から一定のずれ角で上方に延在するにつれてずれている側方部分とを備える、本発明の流体力学的ダクトを有する船舶の船首の断面図を示している。
【
図4】一対の水平壁部分、すなわち下部及び上部水平壁部分を備え、上部水平壁部分が水線の上方に配置される低速船舶に特に使用されることが意図される、本発明の流体力学的ダクトを有する船舶の船首の一部の側面図を示している。
【
図5】一対の水平壁部分、すなわち、下部及び上部水平壁部分を備え、上部水平壁部分が水線の下方に配置される高速船舶に特に使用されるように意図される、本発明の流体力学的ダクトを有する船舶の船首の一部の側面図を示している。
【
図6a】低速船舶の船首に設置するためのいくつかの代替的な指標となる実施形態における本発明の流体力学的ダクトの断面図を示している。
【
図6b】低速船舶の船首に設置するためのいくつかの代替的な指標となる実施形態における本発明の流体力学的ダクトの断面図を示している。
【
図6c】低速船舶の船首に設置するためのいくつかの代替的な指標となる実施形態における本発明の流体力学的ダクトの断面図を示している。
【
図6d】低速船舶の船首に設置するためのいくつかの代替的な指標となる実施形態における本発明の流体力学的ダクトの断面図を示している。
【
図7a】高速船舶の船首に設置するためのいくつかの代替的な指標となる実施形態における本発明の流体力学的ダクトの断面図を示している。
【
図7b】高速船舶の船首に設置するためのいくつかの代替的な指標となる実施形態における本発明の流体力学的ダクトの断面図を示している。
【
図7c】高速船舶の船首に設置するためのいくつかの代替的な指標となる実施形態における本発明の流体力学的ダクトの断面図を示している。
【
図7d】高速船舶の船首に設置するためのいくつかの代替的な指標となる実施形態における本発明の流体力学的ダクトの断面図を示している。
【
図8】船舶のノット単位の公称速度に対する船舶の推進力についての定格馬力KWの図を示しており、線a)は、船首に流体力学的ダクトがない船舶の場合を示し、線b)は、船首に従来技術の流体力学的ダクトを有する船舶の場合を示し、線c)は、本発明の流体力学的ダクトが船首に取り付けられた船舶の場合を示している。
【
図9a】流体力学的ダクトが球根状船首を有する船舶内に設けられ、下側水平壁部分がバルブの上面である、本発明の実施形態の斜視図を示している。
【
図9b】下側水平壁部分が、バルブ本体の両側の選択された高さで延在する、流体力学的ダクトと球根状船首との組み合わせの別の実施形態を示している。上部水平表面波管理壁部分は、いずれの場合も、水線近くのバルブ本体の上方に位置する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の例示的な好ましい実施形態は、添付の図面を参照して以下に提示される。
【0031】
図1は、船舶の船首8の側壁近くに延在する一対の側壁部分5を備える従来技術の流体力学的ダクトを示しており、これらの側壁部分5の下端は、水平に延在する壁部分2の端部に接続されている。
【0032】
図2は、本発明の円周方向に閉じた流体力学的ダクトの例示的な実施形態を示しており、これはさらに、それらの底部において従来技術の水平に延在する壁部分2に接続された一対の側壁部分5の上述した構造要素に対して、端部がまた上方に延在する側壁部分5に接続された別の水平に延在する壁部分1を備え、水平に延在する上部壁部分1は、船舶の航行中の海面における波の効率的な管理の範囲で、水線(WL)の領域に配置されている。
【0033】
提案された水平に延在する上部壁部分1は、海面における波のベクトルと協働して、この水平に延在する壁部分1の前縁を通って流れる波の速度の増加を生み出し、そのような速度の増加は、船舶の移動において遭遇する圧力降下及び抵抗の望ましい低下をもたらす。提案された水平に延在する壁部分1の表面波管理の効果は特に重要であり、穏やかな海の条件下では、流れベクトルは、一般に、船首波の表面に平行に延在するが、乱流海の条件下では、流れベクトルは、変化する勾配において複数の変化する方向を有し、そのような変化する流れベクトルは、互いに相殺する傾向がある垂直に沿って延在するベクトル成分を含むが、それらの存在は、船舶の移動方向に延在するベクトル成分の強度の低下をもたらすため、その効率は、乱流海の条件下では著しく増加する。したがって、乱流海の条件下では、船舶の移動方向に延在し、且つ低減された強度を有する流れベクトルと水平に延在する上部壁部分1との協働は、本発明の流体力学的ダクトの実質的に改善された性能をもたらす。
【0034】
表面波の管理の水平に延在する壁部分1を含まない従来技術の流体力学的ダクトに対する本発明の流体力学的ダクトの改善された性能は、乱流海(4ビューフォート)の条件下での船舶速度(ノット)に対する消費動力(KW)が示されている
図8の図から明らかにされる。
図8は、ダクトを有しない裸船体を有する船舶の場合(曲線a)、表面波の管理の上部壁部分を有しない従来技術のダクトを備えた船舶の場合(曲線b)、及び本発明の場合、すなわち、表面波の管理の上部壁部分をさらに備えるダクトを備えた船舶の場合(曲線c)を示している。上記の図は、バルクキャリア(バルクキャリアSea Horse 35)のモデル船舶を用いてポツダムモデル係留地で行われた試験から得られたものである。この馬力線図は、13.5ノットの航行速度における裸船体の船舶(曲線a)に対して14.70%の割合で電力消費の低減を提供する本発明のダクト(曲線c)による改善を明確に示している。従来技術のダクト(曲線b)はまた、裸船体(曲線a)の同じ船舶と比較して改善を示すが、13.5ノットの同じ速度で航行する船舶では6.70%の割合で実質的に減少した。したがって、上記の例示的な図は、本発明に開示されているように、表面波の管理の追加の水平に延在する壁部分を備えた流体力学的ダクトの効率の改善を明確に示している。
【0035】
本明細書で上述したように、流体力学的ダクトの性能の著しい改善は、船舶が比較的高い速度限界で航行する乱流海条件下で得られる。これに関して、上述した試験におけるモデルの航行速度は、実際に上限の範囲内であり、すなわち13.5ノットの値を有していたことに留意されたい。本明細書では、本発明の流体力学的ダクトのような船首上の波抵抗の管理を提供することができ、それによって同時の燃料削減を達成しない手段がない場合、低減した燃料消費量を有するために、船舶をその可能な速度よりも遅い速度で、例えば、本試験の船舶の場合、11~12.5ノット程度のより低い速度で航行させるように決定されることができることに何度も留意されたい。この低減は、実際に燃料及びコストの一定の節約をもたらす。しかしながら、この節約は、船舶の運航コストの増加のために部分的に消滅し、また、チャーターは必然的に長期間の配送期間を伴うため、上述した低速ではチャーターの競争力を失わせる可能性がある。
【0036】
さらに、様々な理由により、特定の積荷の迅速な配送、または新たな貨物の割り当てを行うための特定の港への加速された到着のいずれかのために、船舶の加速された航行の要求を有することが可能である。これらの場合、本発明の流体力学的ダクトの存在は、最大定格速度での船舶の航行を可能にし、高い航行速度に起因する燃料消費の増加のバランスをとる大幅な燃料節約を提供する。したがって、船舶に本発明のダクトを設けることは、著しく限られた期間内に得られる燃料節約のために非常に効率的であることが証明されている有利に有益な投資を構成することは明らかである。
【0037】
図4及び
図5は、本発明の流体力学的ダクトが、それぞれ特に低速船舶及び高速船舶に使用されるように意図される下部水平壁部分2及び上部水平壁部分1を備える船舶の船首8の一部の側面図を示している。
【0038】
図4及び
図5は、例示的に船首波7の展開を示しており、低速船舶用の
図4の上部水平壁部分1は、水線(WL)の上方に配置され、高速船舶用の
図5の上部壁部分1は、水線(WL)の下方に配置されることに留意されたい。本発明において、低速船舶は、船首波が船首において前方垂線6の前に、すなわち上流に現れる、広い船首構成を有する船舶を含むことを意味する一方で、高速船舶は、船首波が船首において前方垂線6の上及び後に、すなわち下流に現れる、狭い船首構成を有する船舶を含むことを意味する。低速船舶及び高速船舶のそれぞれについての上述した構成において、水平に延在する上部壁部分1は、例示的には水平成分及び垂直成分において分析される
図4及び
図5の船首波7の表面上に例示的に示されている海面の船首波7のベクトルと協働して、船首波を低減する範囲で有益に作用する。
【0039】
図6a~
図6d及び
図7a~
図7dは、それぞれ、低速及び高速船舶用の本発明のダクトの例示的な実施形態を示している。船舶を設計する際に選択される公称速度は、船首の幾何学的形状に関連しており、通常は低い値に設定され、例として、ばら積み船、一般貨物、タンカーなどの一般に広い船首構成を有する船舶では16ノット未満である一方で、例えば、16ノットを超えて最大約30ノットまでのより高い公称速度値は、乗客船、ヨット、またはコンテナ輸送船舶などの一般に狭い船首構成を有する船舶で選択される。
【0040】
図6a~
図6d及び
図7a~
図7dのそれぞれは、本発明の流体力学的ダクトの断面図を示しており、船首の中心線(CL)、中心線(CL)の両側の側壁部分5を示し、完全積載船舶(積載状態)に起因する水線(WL1)及び無積載船舶(無積載状態)に起因する水線(WL2)を示している。本発明のダクトの例示的な実施形態を以下に要約する。
【0041】
図6a及び
図7aは、それぞれ低速及び高速の積載状態において船舶に使用されるように意図された本発明のダクトを表している。これらの実施形態では、船首に及ぼされる圧力の管理は、浸漬された下部壁部分2によって行われる一方で、表面波管理は、低速船舶の場合は積載状態の水線(WL1)の上方に(
図6a)、高速船舶の場合は水線(WL1)の下方に(
図7a)それぞれ位置する上部壁部分1によって行われる。船舶が無積載状態にあるとき、水平に延在する壁部分1及び2の双方が水の外側に位置し、この状態では、ダクトは、明らかに船舶の航行パラメータにいかなる影響も及ぼさない。
【0042】
図6b及び
図7bは、それぞれ低速及び高速の積載状態において船舶に使用されるように意図された本発明のダクトを表している。これらの実施形態では、船首に及ぼされる圧力の管理は、浸漬された下部壁部分2によって行われる一方で、表面波管理は、低速及び高速のそれぞれの船舶の場合の水線(WL1)の上方及び下方に位置する上部壁部分1によって行われる。船舶が無積載状態にあるとき、壁部分1は、水線のはるか上方で水の外側に位置する一方で、水平壁部分2は、低速船舶及び高速船舶の無積載状態の水線(WL2)の上方及び下方の近くにそれぞれ位置する。したがって、この実施形態では、壁部分2は、表面波の管理を担っており、したがって、この実施形態のダクトは、積載及び無積載の双方の状態で表面波を管理することができる。
【0043】
それぞれ低速及び高速船舶についての
図6c及び
図7cでは、本発明のダクトは、無積載船舶及び完全積載船舶の双方の状態で完全に動作することができる。この場合のダクトは、上部壁部分1と下部壁部分2との間に、一対の中間壁部分3及び4を備える。この実施形態におけるダクトは、水平に延在する壁部分1及び3を利用することによって、積載状態の船舶に対して完全に動作可能であり、壁部分1は、表面波の管理を提供し、完全に浸漬された壁部分3は、ダクトを通る船首に衝突する海流によって及ぼされる圧力の処理を行う。この積載状態の船舶の場合、下方にある壁部分4及び2は、流れの乱流を打ち消し、より滑らかな流れを提供する作用を提供する。この実施形態におけるダクトは、水平に延在する壁部分4及び2を利用することによって、無積載状態の船舶に対して完全に動作可能なままであり、壁部分4は、表面波の管理を提供し、完全に浸漬された壁部分2は、ダクトを通る船首に衝突する海流によって及ぼされる圧力の処理を行う。無積載状態の船舶のこの場合、壁部分4及び2の上方にある壁部分1及び3は、水の外側に位置する。
【0044】
最後に、
図6d及び
図7dは、それぞれ、低速及び高速船舶で使用される本発明のダクトの別の実施形態を示している。この実施形態のダクトは、壁部分1と壁部分2との間に、水平に延在する中間壁部分3を備える。船舶が積載状態にあるとき、ダクトは、表面波管理及びダクトに入る流れによって及ぼされる圧力の管理をそれぞれ提供する水平に延在する壁部分1及び3によって完全に動作可能であり、下方にある壁部分2は、打ち消す流れの乱流を提供し、より滑らかな流れを達成する。無積載状態では、壁部分1、3、及び2は、低速船舶用の水の外側に位置し(
図6d)、壁部分2は、無積載状態の水線(WL2)の近くに位置し、本発明に開示されている表面波の管理を行う。それぞれ高速船舶の無積載状態(
図7d)では、壁部分1及び3は、水の外側に位置する一方で、壁部分2は、無積載状態の水線(WL2)近くで水に浸漬されたままであり、表面波の管理を担う。
【0045】
図3の船舶の船首の断面図に示されている流体力学的ダクトは、下部水平壁部分(AB)、上部水平壁部分(EF)及び中間水平壁部分(CD)を備える上述した
図6d及び
図7dに示されているタイプのものであり、側壁部分5は、壁部分(AB)、(CD)及び(EF)の端部で接続されており、これらの側壁部分5は、一定のずれ角を呈する船舶の船首8の側壁から上方にずれて延在する。本発明の好ましい実施形態によれば、側壁部分5は、船首の側壁の構成にしたがうように構成され、それによって船首側壁に平行に延在するが、側壁5が船首側壁からずれている
図3に示す実施形態は、ダクトを通過する流れを強化することが望ましい条件下で、2つ以上の水平に延在する壁部分のダクトと組み合わせて有利な結果を提供し、ずれに起因するそのような条件下で生じる渦を生成する望ましくない損失が、水平に延在する壁部分の余分な長さのベクトルの強化された作用によって補償される。
【0046】
側壁部分5のずれは、側壁部分5の一部が船首の側壁から一定のずれを示す構成で延在する一方で、側壁部分5の別の部分が船首の側壁に対して上述した平行な向きを維持する構成で延在するように変更されることができる。例として、側壁部分5の部分(AC)及び(BD)は、船首の側壁の構成にしたがうことができる一方で、点(C)及び(D)の上方に延在する側壁部分5の部分は、船首の側壁からずれるように配置されてもよく、またはその逆であってもよく、側壁部分の部分(AC)及び(BD)は、船首側壁からずれてもよく、点(C)及び(D)の上方に位置する部分は、船首の構成にしたがい、船首側壁と平行に維持される。一般に、船首側壁に対する側壁部分のずれた向き及び平行な向きの任意の組み合わせが可能であり、船舶の航行の仕様及び特性によってもたらされる要件に対応して様々な状況下で好ましい。本明細書では、
図6dまたは
図7dに示される実施形態に関連する上述した組み合わせは、
図6aまたは
図7a、
図6bまたは
図7b及び
図6cまたは
図7cの実施形態において同様に適用可能であることに留意されたい。
【0047】
図9a及び
図9bは、バルブ9と組み合わせて船舶の船首に取り付けられた本発明の流体力学的ダクトの実施形態を示している。特に、
図9aは、流体力学的ダクトが球根状船首に設けられ、下側水平壁部分がバルブ本体9の上面である、本発明の実施形態の斜視図を示しているのに対して、
図9bは、下側水平壁部分2が、バルブ本体9の両側の選択された高さで延在する、流体力学的ダクトと球根状船首との組み合わせの別の実施形態を示している。側壁部分5は、いずれの場合も、バルブ9及び/または船首の側壁の両側に延在し、上部水平表面波管理壁部分1は、いずれの場合も、水線近くにおいてバルブ本体9の上方に位置する。
【0048】
本明細書では、本発明の説明は、限定的ではなく例示的な実施形態を参照することによって提示されたことに留意されたい。したがって、構造及びアセンブリの形状、サイズ、構成、寸法、材料、補助機構及び構成要素、ならびに様々な船首幾何学的形状及び様々な公称航行速度を有する異なるタイプの船舶と機能的に相互依存して船舶の船首に取り付けられた流体力学的ダクトの設計パラメータに関する任意の変更または変形は、以下の特許請求の範囲に要約されるように、本発明の目的及び範囲の一部と見なされる。