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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】狭帯域光観察を利用する医療機器
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/06 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
A61B1/06 510
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021560370
(86)(22)【出願日】2020-04-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-02
(86)【国際出願番号】 US2020026589
(87)【国際公開番号】W WO2020206261
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-03-10
(31)【優先権主張番号】62/829,078
(32)【優先日】2019-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521440840
【氏名又は名称】エヌエスブイ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パタック、ソハム
(72)【発明者】
【氏名】シャストリ、アンキタ
(72)【発明者】
【氏名】ダーマ、ビピン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】シャストリ、カルペンデュ
(72)【発明者】
【氏名】イェラマーティー、ラオ
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-069063(JP,A)
【文献】特開2015-188590(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0287063(US,A1)
【文献】国際公開第2014/192563(WO,A1)
【文献】特開2008-272333(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療光学機器と併せてデジタル撮像を行う際に有用な照明源であって、前記照明源は、
観察中の生体構造の関心領域(ROI)からの反射光を受信し、それからデジタル画像を作成するように位置決めされた受光素子と、
前記ROIの第1の吸光度ピークに関連する第1の中心波長λ狭帯域の光を放射するように特別に形成された少なくとも1つの狭帯域の第1の波長のLEDであって、前記少なくとも1つの狭帯域の第1の波長のLEDの通電が、前記ROIを照らすように制御され、前記第1の中心波長λ の反射光が、前記第1の中心波長λ で前記ROIにおける正常領域と異常領域との間に高いコントラストを示す第1のデジタル画像を作成するために、前記受光素子に向けられる、少なくとも1つの狭帯域の第1の波長のLEDと、
前記ROIの第2の吸光度ピークに関連する第2の中心波長λ狭帯域の光を放射するように特別に形成された少なくとも1つの狭帯域の第2の波長のLEDであって、前記少なくとも1つの狭帯域の第2の波長のLEDの通電が、前記ROIを照らすように制御され、前記第2の中心波長λ の反射光が、前記第2の中心波長λ で前記ROIにおける正常領域と異常領域との間に高いコントラストを示す第2のデジタル画像を作成するために、前記受光素子に向けられる、少なくとも1つの狭帯域の第2の波長のLEDと
を備え、
前記少なくとも1つの狭帯域の第1の波長のLED及び前記少なくとも1つの狭帯域の第2の波長のLEDは、検査を行う個人によって制御可能であり、前記検査中の特定の時点における高いコントラストの画像の取り込みを可能にし、
各狭帯域の第1の波長のLED及び各狭帯域の第2の波長のLEDは、30nm以下のFWHMを示す、照明源。
【請求項2】
前記照明源は、前記ROIの代替の照明のための白色光源を更に備える、請求項1に記載の照明源。
【請求項3】
前記受光素子は、CMOS検出器及び波長依存フィルタの組み合わせを備える、請求項に記載の照明源。
【請求項4】
前記少なくとも1つの狭帯域の第1の波長のLEDは、前記ROIの選択された領域を照らすように配置された複数の別個のLEDを備える、請求項1に記載の照明源。
【請求項5】
前記少なくとも1つの狭帯域の第2の波長のLEDは、前記ROIの選択された領域を照らすように配置された複数の別個のLEDを備える、請求項1に記載の照明源。
【請求項6】
前記照明源は、前記生体構造の一般的な部分の検査のために使用される白色光源を更に備える、請求項1に記載の照明源。
【請求項7】
異なる波長の前記LEDは、中央に配置された受光素子の周囲の画定された位置のアレイに互いに近接して配置されている、請求項1に記載の照明源。
【請求項8】
前記照明源は、血管系を表示するための光学システムと併せて利用され、前記第1及び第2の中心波長は、ヘモグロビンの第1及び第2の吸光度ピークに近接するように選択される、請求項1に記載の照明源。
【請求項9】
前記少なくとも1つの狭帯域の第1の波長のLEDは、波長λ≒540nmで動作し、少なくとも1つの狭帯域の緑色のLEDと呼ばれ、前記少なくとも1つの狭帯域の第2の波長のLEDは、波長λ≒415nmで動作し、少なくとも1つの狭帯域の青色のLEDと呼ばれる、請求項に記載の照明源。
【請求項10】
前記少なくとも1つの狭帯域の緑色のLEDは、波長λ≒540nmで全て動作する複数の狭帯域の緑色のLEDを備える、請求項に記載の照明源。
【請求項11】
前記少なくとも1つの狭帯域の青色のLEDは、波長λ≒415nmで全て動作する複数の狭帯域の青色のLEDを備える、請求項に記載の照明源。
【請求項12】
前記少なくとも1つの狭帯域の緑色のLEDは、波長λ≒540nmで全て動作する複数の狭帯域の緑色のLEDを備え、前記少なくとも1つの狭帯域の青色のLEDは、波長λ≒415nmで全て動作する複数の狭帯域の青色のLEDを備える、請求項に記載の照明源。
【請求項13】
前記照明源は、ダーマトスコープと併せて利用され、前記第1及び第2の中心波長は、皮膚色素の第1及び第2の吸光度ピークに近接するように選択される、請求項1に記載の照明源。
【請求項14】
前記少なくとも1つの狭帯域の第1の波長のLEDは、波長λ≒625nmで動作し、少なくとも1つの狭帯域の赤色のLEDと呼ばれ、前記少なくとも1つの狭帯域の第2の波長のLEDは、波長λ≒580nmで動作し、少なくとも1つの狭帯域の黄色のLEDと呼ばれる、請求項1に記載の照明源。
【請求項15】
前記少なくとも1つの狭帯域の赤色のLEDは、波長λ≒625nmで全て動作する複数の狭帯域の赤色のLEDを備える、請求項1に記載の照明源。
【請求項16】
前記少なくとも1つの狭帯域の黄色のLEDは、波長λ≒580nmで全て動作する複数の狭帯域の黄色のLEDを備える、請求項1に記載の照明源。
【請求項17】
前記少なくとも1つの狭帯域の赤色のLEDは、波長λ≒625nmで全て動作する複数の狭帯域の赤色のLEDを備え、前記少なくとも1つの狭帯域の黄色のLEDは、波長λ≒580nmで全て動作する複数の狭帯域の黄色のLEDを備える、請求項1に記載の照明源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2019年4月4日に出願された米国仮出願第62/829,078号の利益を主張し、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、関心領域の視覚的撮像を利用する医療機器の改善、より具体的には、フィルタされた白色光を使用することなく、高いコントラストのデジタル画像の表示(及び取り込み)を可能にする、特定の事前画定された波長で放射する狭帯域の光源の利用に関する。
【背景技術】
【0003】
適する診断の進行を支援するために選択された標本の画像分析を利用する幾つかのタイプの医療手順がある。ダーマトスコープは、例えば、病変の構造及び形態の分析、又は診断を決定する際にメラノサイトに関連する特定の色素沈着特性を利用してもよい。コルポスコープは、患者の状態を評価する際に血管系の分析を広く利用することが知られている。これらは、医療の分野における撮像解析の使用の2つの特定の領域にすぎない。
【0004】
ダーマトスコープは、拡大光学システム、検査される領域を照らす光源(できれば反射を可能な限り少なくする)、及び光源に電気エネルギーを供給するための電源を含む。医療検査中に、ダーマトスコープは、通常、光学システムを通して観察される、皮膚にガラス製の接触板と共に配置される。特定の実施形態においては、ガラス様の屈折率を有するダーマトスコープのオイル又は別の液体が、皮膚とダーマトスコープ又は接触板との間に配置される。幾つかの実施形態は、検査される領域が特殊な照明構成の下で表示される場合にのみ幾つかの医療診断が可能であるので、偏光照明を使用する。
【0005】
光学コルポスコープは、白色光源を内蔵する双眼顕微鏡と、支持機構に取り付けられた対物レンズとを備える。様々なレベルの拡大が、より進行した前癌性又は癌性病変の存在を示す、特定の血管パターンを検出及び識別するために、多くの場合に必要である。コルポスコープ検査中に、酢酸及びヨウ素の溶液が、通常、異常な領域の視覚化を改善するために子宮頸部の表面に塗布される。コルポスコープにおいては、子宮頸部組織の異常は、「スウェーデンスコア」として知られているもので多くの場合に評価される。このスコアは、(1)「良好及び正常」、(2)「不在」、又は(3)「下等若しくは異常」という3つのカテゴリのうちの1つに該当するように評価及び判断されることができる、血管パターンのような子宮頸部組織の重要な特性を具体的に考慮する。場合によっては、異なる色のフィルタが、正常の白色光を使用することによっては見にくい血管パターンを強調するために使用される。このタイプの血管系撮像はまた、様々な口腔癌に関連する前癌病変の存在に対する口腔粘膜及び粘膜下組織を観察する場合に有用である。
【0006】
しかし、これらのフィルタのために画定された標準の波長又はスペクトル帯域幅はないので、様々な臨床設定で、様々な波長、おそらく様々な帯域幅でいわゆる緑色の光を透過する「緑色のフィルタ」が適用される場合がある。このようなフィルタを使用すると、場合によっては効果の低い画像が生成され、又は異なる品質の異なる画像間のコンセンサスが低下する場合がある。加えて、白色光の上に配置された緑色のフィルタは、必然的に光の透過を減少させ、取り込まれた画像は、多くの場合に本来より暗く見える。
【0007】
近年、デジタル撮像及び撮像に関連する様々なソフトウェア/アルゴリズム技術における進歩が、これらの試みにおいて画像の品質を改善させ、画像を取り込むために偏光又は特定のフィルタを使用するニーズを減少させた。これらの技術は、最先端技術における進歩と考えられる一方、画像の作成及び保存のプロセスの後に適用される。最初に作成された画像の品質、解像度、及び詳細を改善するニーズが残っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
先行技術に残っているニーズが、血管系分析のためのデジタル撮像、より具体的には、フィルタを使用することなく、狭帯域のデジタル撮像を可能にする、特定の事前画定された波長で放射する光源の利用に関連する本発明によって対処される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、カラーベースのフィルタの使用を排除し、代わりに、検査される身体の領域に存在する特定の対象の生体分子の吸収スペクトルに基づいて、対象の波長(例えば、「緑色」、「青色」、「赤色」、「黄色」、等)で動作するように具体的に形成された個別の発光ダイオード(LED)からなる照明源を提供することが提案される。有利には、LEDは、適する診断を提供する能力が医療専門家による検査のために高いコントラストの画像を作成する能力に依存する、これらの医療撮像の目的に適切な高強度の狭帯域のビームを生成するように構成されてもよい。
【0010】
一例示的な実施形態においては、本発明は、医療光学機器と併せてデジタル撮像を行う際に有用な照明源の形態を取る。照明源は、観察中の生体構造の関心領域(ROI)に存在する生体分子の第1の吸光度ピークに関連する第1の中心波長λで動作する少なくとも1つの狭帯域のLEDと、観察中の生体構造の関心領域(ROI)に存在する同じ生体分子又は異なる生体分子の何れかの第2の吸光度ピークに関連する第2の中心波長λで動作するおそらく別の狭帯域のLEDとを備える(ROIにおける生体分子が2つの別個の吸光度ピークを有する場合、例えば、ヘモグロビン)。LEDは、ROIにおける特定の特徴のセットと周囲の物質との間のコントラストを高める方法で制御され、ROIの高いコントラストのデジタル画像の生成を可能にする。
【0011】
本発明の照明源はまた、一般的な観察の目的のために以前のように使用される従来の白色光源を、特定のROIの高いコントラストの画像を作成するニーズがある場合に活性化される1つ以上の狭帯域のLEDと共に含んでもよい。狭帯域のLEDを「オン」にし、「オフ」にすることは、検査を行う個人によって制御されてもよく、第1の波長のLEDが、高いコントラストの画像を取り込むニーズがある特定の時間に通電され、(他のLEDが)おそらく検査中の別の時点において通電される。取り込まれた高いコントラストの画像は、後の時点における分析のために、遠隔地の個人等によってデジタル化され、保存されてもよい。
【0012】
本発明の他の及び更なる実施形態及び特徴が、以下の議論の過程で、添付の図面を参照することによって明らかになるであろう。
【0013】
次に、同様の要素が幾つかの図において同様の参照番号を含む、図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】光学撮像を行うために使用される医療機器の例を描写する。
図2】本発明に従って形成された例示的な照明源の簡略化された等角図である。
図3図2の照明源のブロック図の側面図である。
図4】本発明の照明源内の狭帯域のLEDの例示的な配置の正面図である。
図5】本発明の照明源内の狭帯域のLEDの代替の配置の正面図である。
図6】本発明の原理に従って形成された照明源内の狭帯域のLEDの更に別の配置を示す。
図7】白色光で取り込まれた先行技術のデジタル画像の複写写真である。
図8図7に示されるのと同じROIの複写写真であり、この場合、ROIに存在する生体分子の吸光度ピークに関連する特定の波長の狭帯域のLEDで照らされている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上記のように、選択された標本の鮮明で高いコントラストの画像は、診断所見、特に前癌及び癌検診を行う際に不可欠である。本発明の原理によれば、観察中の生体構造の一部(すなわち、「関心領域」又はROI)の非常に高いコントラストの画像生成するために、特定の所定の波長で動作する狭帯域の光源を使用することが提案される。
【0016】
図1は、光学撮像を行うために使用され、本発明のLEDベースのシステムを含むように形成されてもよい照明源を含む、例示的なタイプの医療機器を示す。特に、図1は、子宮頸部の検査で(例えば、子宮頸部の血管系を観察するために)使用される例示的なコルポスコープ1の側面図を描写する。図1に示される特定の機器が、かなりコンパクト(この結果、ポータブル)である一方、多くのコルポスコープシステムは、検査室に配置された要素の大きい組み合わせである。ダーマトスコープ2がまた図1に示される。このタイプの医療機器は、皮膚を表示するために使用される(多くの場合に、ダーマトスコープを接触させる前に、あるタイプのオイル又はローションが皮膚の表面に塗布される)。
【0017】
図1に示されるような医療機器は、通常、「関心領域」(以下、「ROI」と呼ばれる)を明確に見るために検査を行う医療専門家を支援するための「白色光」(完全可視スペクトル)源の使用に基づく。しかし、特定の波長の光が、血管、皮膚色素、粘液、等の視覚化を改善するのを援助することができることが何年も前から知られている。例えば、「緑色」又は「青色」の光での子宮頸部の撮像は、ヘモグロビン(血管の主成分)の吸収スペクトルが約415nm(「青色」のフィルタ光)及び約540nm(「緑」のフィルタ光)の波長のスペクトルの可視部分にピークを含むので、白色光での照明より下にある血管系の高いコントラストの画像を生成することが分かっている。同様の緑色/青色のフィルタがまた、前癌病変の存在に対する口腔粘膜及び粘膜下組織の観察で使用される。皮膚の表面(又は表面直下の組織層)の異常な病変又はメラノサイトは、「赤色」のフィルタ光(約625nmの波長)又は「黄色」のフィルタ光(約580nmの波長)を使用することによってより区別されてもよい。
【0018】
先行技術においては、医用画像装置は、ROIの色を変更するために、標準的な白色光源と組み合わせて様々な「カラー」フィルタを利用した。上記のように、これらのフィルタのために画定された標準の波長又はスペクトル帯域幅はないので、様々な臨床設定で、様々な波長、おそらく様々な帯域幅でいわゆる緑色の光を透過する「緑色」のフィルタ(「緑色」を一例として使用)が適用される場合がある。その上、これらのフィルタの多くは、スペクトル応答が広すぎて正常組織と異常組織との間の境界を明確に表現する画像を作成することができない広帯域デバイス(例えば、50nmを超える帯域幅)である場合がある。その結果、このようなフィルタを使用すると、場合によっては効果の低い画像が生成され、又は異なる品質の異なる画像間のコンセンサスが低下する場合がある。加えて、これらのフィルタの白色光源と組み合わせた利用は、必然的に透過ビームの強度を減少させ、取り込まれた画像は、多くの場合に本来より暗く見える。
【0019】
本発明の原理によれば、このようなカラーベースのフィルタの使用を排除し、代わりに、対象の波長(例えば、「緑色」、「青色」、「赤色」、「黄色」、等)で動作するように具体的に形成された個別の発光ダイオード(LED)からなる照明源を提供することが提案される。有利には、LEDは、適する診断を提供する能力が医療専門家による検査のために高いコントラストの画像を作成する能力に依存する、これらの医療撮像の目的に適切な高強度の狭帯域のビームを生成するように構成されてもよい。
【0020】
コルポスコープのための照明源として使用される場合には、本発明のLEDベースの光源は、「緑色」及び「青色」と呼ばれる具体的に画定された波長で放射する1つ以上のLEDを利用する。LEDによって放射された緑色及び青色の波長は、血管によって吸収され、一方、ヘモグロビンを欠く周囲の組織によって反射される。これは、画像に出現する血管のコントラストを増加させる。ヘモグロビンの吸光度ピーク周辺の青色の光及び緑色の光の帯域幅(すなわち、約30nmのオーダー、又はそれ以下の帯域幅)が狭くなるほど、結果として生じる画像の血管のコントラストが大きくなる。組織と血管との間の高いコントラストは、特定のパターンが組織異常の既知の指標である、血管パターンの視覚化を大幅に改善する。従って、このレベルの明瞭さでデジタル画像を作成(及びその後保存)する能力は、前癌及び癌の診断所見のために(口腔粘膜及び粘膜下組織も同様に観察するために)不可欠なニーズである。
【0021】
以下でまた議論されるように、2つの異なる波長がROI内の異なる深さまで浸透する限り、これらのLEDのための照明の順序を制御することによって(例えば、「緑色」の露光とそれに続く「青色」の露光)、組織内の様々なレベルの血管系における変動が識別されてもよく、「3次元」の撮像結果を提供する。
【0022】
ダーマトスコープのために照明源として使用される場合には、「赤色」及び「黄色」の光ビームの波長は、医療に関連する色素(例:メラノサイト)の吸光度ピークと一致することが知られている。
【0023】
本発明の原理によれば、使用される別個のLEDの数、及び照明源内でのそれらの相対的な配置が、高品質で高いコントラストの画像が十分な明るさ及び明瞭さで取り込まれるように、狭帯域の照明の明るさを個別に操作する能力を提供する。
【0024】
本発明の特定の実施形態において、光学診断ツールは、特定の明確に画定された波長で動作する照明源の集合で特定のROIを照らすために利用される。多くの場合に、第1のLEDのセット(第1の画定された波長λで全て動作する)及び第2のLEDのセット(第2の画定された波長λで全て動作する)は、これらの範囲のための撮像システムの一部として使用される。LEDは、高いコントラストの結果を生成するために、特にROI内の正常領域と異常領域との間の境界を示すのを支援するために、狭い帯域幅を示すように特に選択される。例えば、30nmの半値全幅(FWHM)を示すλ≒540nmの「緑色」の波長で動作するLED、及び12nmの半値全幅を示すλ≒450nmの「青色」の波長で動作するLEDが使用されることができる。FWHMは、出力放射が最大放射値の半分を下回る、所与の中心波長からの距離を画定する十分に理解された性能指数である。好ましくは、所与のLEDの中心波長は、異なる機器を使用して収集された画像が同様の品質になることを保証するために、狭い範囲内に維持される。
【0025】
図2は、図1に示されるような医療機器内で利用される、本発明に従って形成された例示的な照明源10の簡略化された等角図である。この特定の構成においては、照明源10は、含まれるLEDからの狭帯域のビームが放射され、ROIに向けられる一対の対向する開口部12、14を含むように形成される。中央開口部16は、ROIからの戻り光を取り込む光検出配置を含む。例えば、光検出配置は、CCDカメラの形態、好ましくは、LEDの波長の外側の迷光を遮断するための適切なフィルタリングを有するCMOS検出器の形態を取ってもよい。以下で詳細に議論されるように、1つ以上のLEDが、各開口部12及び14に位置してもよい(ほとんどの場合、白色光源がLEDと同じ場所に設置される)。追加の開口部が、本発明の原理に従って狭帯域光観察のために複数のLEDのセットが使用されることを可能にするために、中央開口部16の周囲の異なる位置に配置されてもよい。
【0026】
図3は、照明源10の例示的な構成のブロック図の側面図であり、この図は、特定のROIに関連して使用されているものとして示される。この例においては、第1の狭帯域のLED32(第1の具体的に画定された波長λで動作する)は、開口部12と整列して位置決めされる。照明源10がコルポスコープシステムの一部である場合には、第1の狭帯域のLED32は、30nmのFWHM値で、中心波長λ≒540nmで放射する「緑色」のLEDであってもよい。照明源10がダーマトスコープの一部である場合には、第1の狭帯域のLED32は、16nmのFWHM値で、中心波長λ≒625nmで放射する「赤色」のLEDであってもよい。レンズ要素33が、第1のLED32からの出力を超えて位置決めされ、第1のLED32からの狭帯域の出力をROIに向けて集束させることを可能にするために使用される。
【0027】
また、第2の具体的に画定された波長で動作し、機器10の開口部14の後ろに位置決めされた第2の狭帯域のLED34が、図3に示される。照明源10がコルポスコープの一部である場合には、第2の狭帯域のLED34は、12nmのFWHM値で、中心波長λ≒415nmで放射する「青色」のLEDであってもよい。照明源10がダーマトスコープの一部である場合には、第2の狭帯域のLED34は、22nmのFWHM値で、中心波長λ≒580nmで放射する「黄色」のLEDであってもよい。レンズ要素35が、第2のLED34からの出力を超えて位置決めされ、第2のLED34からの狭帯域の出力をROIに向けて集束させることを可能にするために使用される。
【0028】
従来の白色光源31がまた図3に示され、白色光源31を含めることは任意であるが、ほとんどの場合、検査の一部のためにROIを照らし、そして、必要に応じて狭帯域のLED32、34を通電するために、医療機器が白色光源31を利用するので、好ましいことが理解されるべきである。実際、LED32及び34を「オン」にし、「オフ」にすることは、通常、検査を行う個人の制御下にあり、検査手順中の特定の時点における高いコントラストの画像の取り込みを可能にする。上記のように、狭帯域のLEDの活性化は、第1の波長のLED32がある期間通電され、そして、第2の波長のLED34が異なる期間通電されるように制御されてもよく、別個の活性化が、異なる波長によって浸透された異なる深さに関連する表面下の要素の追加の撮像の明瞭さを提供してもよい。
【0029】
図4に、中央開口部16の後ろに位置決めされるような受光素子40が示され、レンズ要素39が、受光素子40の入口に配置される。医療機器の光学撮像特性に従って、ROIから照明源10に向かって反射して戻される照明が、受光素子40によって取り込まれ、当技術分野で周知の(そして現在も進化している)様々なタイプの分析を使用して処理される。受光素子40は、例えば、適切な波長のフィルタリングを有するCCDベースのカメラ又はCMOS検出器を備えてもよい。
【0030】
図4は、図3に示されるようなLED32及び34の特定の配置の正面図である。図5は、中央開口部16の周りに配置された開口部の対を利用する代替の照明システム50の正面図である。この特定の構成においては、第1の開口部52が円形形態の照明システム50の周りの0°の位置に配置され、第2の開口部54が180°の位置に設置される。開口部の第2の対が、開口部52及び54に直交して配置され、一方の開口部56が90°の位置に配置され、残りの開口部58が270°の位置に配置される。この特定の構成においては、第1の波長(λ)のLED32-1及び32-2が、(それぞれ)開口部52及び54の後ろに配置され、第2の波長(λ)のLED34-1及び34-2が、(それぞれ)開口部56及び58の後ろに配置される。
【0031】
図6は、更に異なる配置を示す。ここで、照明システム60は、図5に示されるような同じ4つの開口部52、54、56、及び58のセットを維持するが、この場合、図5の配置に対して、上記で画定されたような4つの象限位置の各々において、LEDの(λ、λ)対を使用するように構成される。第1の対は、(LED32、LED34)として識別され、第2の対は、(LED32、LED34)として識別され、第3の対は、(LED32、LED34)として識別され、第4の対は、(LED32、LED34)として識別される。
【0032】
これらの実施形態の各々においては、特定のスイッチングシーケンスが、別個のLEDの照明を制御するために使用されてもよく、上記のように、LEDが「オン」にされ、「オフ」にされる時間を制御するのは、通常、検査を行う個人である。しかし、LEDのシーケンスのコンピュータベースの制御がまた、特定の用途において実装されてもよいことが理解されるべきである。
【0033】
例示的なROIのより高品質でより鮮明な画像を提供する狭帯域の波長固有のLEDの能力は、図7(従来の白色光源を使用して取り込まれた)に表示された先行技術のデジタル画像の複写写真を、本発明の教示に従って照明源として緑色のLEDを使用して取り込まれた図8に表示されたデジタル画像と比較することによって示される。図8のより高いコントラストの結果は、ROIの詳細な血管系、特に(例えば)比較領域Aにおいて明らかである。
【0034】
上記のように、本発明に従って形成された例示的なLEDベースの照明源はまた、ROIの様々な他の詳細を取り込むために依然として重要であるので、高い可能性で標準の白色照明源を含むことに留意されるべきである。例示的な手順においては、例えば、白色照明源は、血管系、皮膚の色素沈着、粘膜、等が詳細に撮像される必要がある特定の期間中に、(おそらく臨床医によって制御されるように)活性化された狭帯域のLEDベースの照明源と共に、ほとんどの検査のために使用されてもよい。
【0035】
一般的に、狭帯域の照明システムの詳細及び実施形態の説明が、例示の目的のために提示されたが、網羅的であり、又は開示された実施形態に限定されることが意図されない。多くの変更及び変形が、説明された実施形態の範囲及び精神から逸脱することなく、当業者には明らかであろう。本明細書で使用される用語は、実施形態の原理、実際の適用、又は先行技術に見られる技術に対する技術的改善を最も良く説明するために選択された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8