(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】アミューズメントパークの乗り物用抗力誘起マット
(51)【国際特許分類】
A63G 21/18 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
A63G21/18
(21)【出願番号】P 2021565812
(86)(22)【出願日】2020-05-07
(86)【国際出願番号】 US2020031868
(87)【国際公開番号】W WO2020227527
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-04-12
(32)【優先日】2019-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511077292
【氏名又は名称】ユニバーサル シティ スタジオズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】オズボーン バイロン トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンス エリック アラン
(72)【発明者】
【氏名】ロペス ペドロ
(72)【発明者】
【氏名】ウォルトン ライアン デール
(72)【発明者】
【氏名】マジダリ デイヴィッド ジェラルド
【審査官】岸 智史
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-109589(JP,U)
【文献】特開2003-103061(JP,A)
【文献】米国特許第04451240(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第00014281(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63G 1/00-33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗力誘起マットであって、
乗客を収容するように構成された主本体であって、前記乗客に面するように構成された乗客面と、スライド面に面するように構成された対向面とを含む、主本体と、
前記対向面内に定められたサイプアレイと、
を備え、
前記サイプアレイは、前記主本体の第1の側縁から前記主本体の第2の側縁まで延びる複数のサイプを含み、前記抗力誘起マットが非加圧状態のときに前記複数のサイプの各サイプのサイプ壁が互いに接触し、前記抗力誘起マットが加圧されると、前記サイプ壁が互いに離れて、前記乗客面上の前記乗客によって前記サイプアレイに加えられる力に基づいて、前記主本体と前記スライド面との間に選択的に摩擦を誘起する、抗力誘起マット。
【請求項2】
前記主本体は、前記主本体の乗客面に結合された1又は2以上のハンドルを含み、前記サイプアレイは、前記乗客が前記ハンドルを把持したときに乗客の前腕から前記主本体を介して伝達される圧力を受けるように構成された領域の前記対向面内に定められる、
請求項1に記載の抗力誘起マット。
【請求項3】
前記複数のサイプの各サイプは、前記主本体の厚さの10%~25%の範囲で延びる、
請求項1に記載の抗力誘起マット。
【請求項4】
前記複数のサイプの少なくとも1つのサイプ壁は、前記乗客によって抗力誘起マットが前記スライド面に対して加圧されることに応答して、前記スライド面に少なくとも部分的に接触するように構成されている、
請求項1に記載の抗力誘起マット。
【請求項5】
前記複数のサイプの各サイプの前記サイプ壁が、第1のサイプ壁、第2のサイプ壁、及びこれらの間に延在する内側プロファイルを含み、前記第1のサイプ壁、前記第2のサイプ壁、及び前記内側プロファイルが、加硫、焼灼、又は溶融されている、
請求項1に記載の抗力誘起マット。
【請求項6】
前記複数のサイプの各サイプは、直線形状、ジグザグ形状、又は矢印形状を含む、
請求項1に記載の抗力誘起マット。
【請求項7】
前記複数のサイプが第1の方向に沿って配置されており、前記抗力誘起マットは、前記第1の方向に交差する第2の方向に沿って配置された追加の複数のサイプを備える、
請求項1に記載の抗力誘起マット。
【請求項8】
前記複数のサイプは、前記乗客の予想される肘位置に対応する前記対向面の部分内に定められ、前記抗力誘起マットにより、前記乗客は、前記対向面の部分にかかる重量を調整することにより、前記主本体と前記スライド面との間に誘起される摩擦を調整することが可能となる、
請求項1に記載の抗力誘起マット。
【請求項9】
前記サイプアレイは、前記複数のサイプの各サイプの内端に形成された貫通孔を含み、前記サイプアレイは、射出成形プロセスを介して前記主本体内に形成される、
請求項1に記載の抗力誘起マット。
【請求項10】
前記乗客面を有する第1の層と、
前記対向面を有する第2の層であって、前記複数のサイプが前記第2の層の全厚にわたって延びる、第2の層と、
前記第1の層と前記第2の層との間に配置され、前記第2の層から前記第1の層への前記複数のサイプの伝播を防止する可撓性膜と、
を備える、請求項1に記載の抗力誘起マット。
【請求項11】
抗力誘起マットであって、
乗客を収容するように構成された主本体であって、前記乗客に面するように構成された乗客面と、スライド面に面するように構成された対向面とを含む、主本体と、
前記対向面内に定められたサイプアレイと、
を備え、
前記サイプアレイは、前記主本体の第1の側縁から前記主本体の第2の側縁まで延びる、第1の方向に沿って配置された複数のサイプを含み、前記抗力誘起マットは、前記第1の方向に交差する第2の方向に沿って配置された追加の複数のサイプを備えて、前記乗客によって前記サイプアレイに加えられる力に基づいて
サイプ壁の他のサイプ壁との接触状態を変更することによって、前記主本体と前記スライド面との間に選択的に摩擦を誘起する、
抗力誘起マット。
【請求項12】
前記複数のサイプの各サイプは、前記サイプアレイが非加圧状態のときに互いに接触するように構成されたサイプ壁を含む、
請求項11に記載の抗力誘起マット。
【請求項13】
前記サイプアレイは、前記複数のサイプの各サイプの内端に形成された貫通孔を含む、
請求項11に記載の抗力誘起マット。
【請求項14】
前記主本体は、前記主本体の乗客面に結合された1又は2以上のハンドルを含み、前記サイプアレイは、前記乗客が前記ハンドルを把持したときに乗客の前腕から前記主本体を介して伝達される圧力を受けるように構成された領域の前記対向面内に定められる、
請求項11に記載の抗力誘起マット。
【請求項15】
前記複数のサイプの各サイプは、直線形状、ジグザグ形状、又は矢印形状を含む、
請求項11に記載の抗力誘起マット。
【請求項16】
抗力誘起マットであって、
乗客を収容するように構成された主本体であって、前記乗客に面するように構成された乗客面を有する第1の層と、スライド面に面するように構成された対向面を有する第2の層とを含み、前記第2の層の全厚にわたって複数のサイプが延びる、主本体と、
前記第1の層と前記第2の層との間に配置され、前記第2の層から前記第1の層への前記複数のサイプの伝播を防止する可撓性膜と、
前記対向面内に定められたサイプアレイと、
を備え、
前記サイプアレイは、前記主本体の第1の側縁から前記主本体の第2の側縁まで延び、上記乗客によって前記サイプアレイに加えられる力に基づいて
サイプ壁の他のサイプ壁との接触状態を変更することによって、前記主本体と前記スライド面との間に選択的に摩擦を誘起する前記複数のサイプを含む、
抗力誘起マット。
【請求項17】
前記サイプアレイは、前記複数のサイプの各サイプの内端に形成された貫通孔を含み、前記サイプアレイは、射出成形プロセスを介して前記主本体内に形成される、
請求項16に記載の抗力誘起マット。
【請求項18】
前記主本体は、前記主本体の乗客面に結合された1又は2以上のハンドルを含み、前記サイプアレイは、前記乗客が前記ハンドルを把持したときに乗客の前腕から前記主本体を介して伝達される圧力を受けるように構成された領域の前記対向面内に定められる、
請求項16に記載の抗力誘起マット。
【請求項19】
前記抗力誘起マットが非加圧状態のときに前記複数のサイプの各サイプのサイプ壁が互いに接触し、前記抗力誘起マットが加圧されると、前記サイプ壁が互いに離れる、
請求項16に記載の抗力誘起マット。
【請求項20】
前記複数のサイプの各サイプは、直線形状、ジグザグ形状、又は矢印形状を含む、
請求項16に記載の抗力誘起マット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年5月9日に出願され、「DRAG-INDUCING MAT FOR AMUSEMENT PARK RIDES」と題された米国仮出願第62/845,797号の優先権及び利益を主張するものであり、本仮出願は、あらゆる目的で引用により全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本開示は、一般に、アミューズメントパークの分野に関する。より具体的には、本開示の実施形態は、アミューズメントパーク体験を提供するのに利用される装置に関する。
【背景技術】
【0003】
ウォーターパークは、バンパー又はラフトライド、ウォータースライド、ログライド、ウォーターコースター、及びレイジーリバーを含む、様々な乗り物体験をパーク来場者に提供することに努めている。ウォーターパークのアトラクションは、乗り物車両の有無及び/又はタイプによって分類することができる。例えば、子供用のバンパーラフトライドは、ゴム製の柔らかい可膨張性ラフトで実施することができ、ウォーターコースターライドは、非水ローラーコースターと同様の肩掛けハーネスの拘束具を提供する金属製車両又はかご型乗り物車両で実施することができる。ウォータースライド又はシュートなどの他の乗り物は、どのようなタイプの乗り物も有していない場合がある。すなわち、パーク来場者は、何れかのタイプの拘束具内に囲まれることなく乗り物に参加している。ウォーターシュートを滑り降りる来場者は、同程度の速度で走行する車両内で生成できる感覚に対して強化されたスピード感を有することができるので、このような乗り物は、来場者に楽しさを提供することができる。しかしながら、マットなどの乗り物車両で実施された乗り物により、来場者は車両なしの乗り物よりもウォータースライドに沿ってより高い速度を達成することを可能にすることができる。
【0004】
このセクションは、以下に記載及び/又は特許請求される本技術の様々な態様に関連することができる技術の様々な態様を読者に紹介することを意図している。ここでの議論は、本開示の様々な態様のより良い理解を容易にする背景情報を読み手に提供するのに役立つと考えられる。従って、これらの記載は、先行技術の自認ではなく、この観点に照らして読まれるべきであることを理解されたい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最初に請求項に記載された本発明の範囲内にある一部の実施形態について以下で要約する。これらの実施形態は、本開示の範囲を限定することを意図するものではなく、開示された特定の実施形態の概要を提供することのみを意図している。実際に、本開示は、以下に記載される実施形態と類似した又は異なるものとすることができる様々な形態を包含することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態は、乗客を収容するように構成された主本体を含む抗力誘起マットに向けられている。主本体は、乗客に面するように構成された乗客面と、スライド面に面するように構成された対向面とを含む。抗力誘起マットはまた、対向面内に定められたサイプアレイを含む。サイプアレイは、乗客によってサイプアレイに印加された力に基づいて、主本体とスライド面との間に選択的に摩擦を誘起するために、主本体の第1の側縁から主本体の第2の側縁まで延びる複数のサイプを含む。
【0007】
一実施形態は、抗力誘起マットを形成する方法に向けられている。本方法は、切断組立体に隣接してマットを位置決めするステップを含む。マットは、乗客面と、対向面とを有する主本体を含む。本方法はまた、切断組立体に対してマットを相対的に移動させて、対向面内にサイプアレイを定めるステップを含む。サイプアレイは、主本体の第1の側縁から主本体の第2の側縁まで延びる複数のサイプを含む。更に、本方法は、乗車中に少なくとも1つのハンドルを把持する乗客の前腕が乗客面から対向面内に定められたサイプアレイに力を伝達することを可能にする位置で、主本体の乗客面に少なくとも1つのハンドルを結合することによって、抗力誘起マットを形成するステップを含む。
【0008】
一実施形態は、ウォーターライドシステムのスライド上に複数の乗客を収容するように構成された複数の抗力誘起マットを含むウォーターライドシステムに向けられている。複数の抗力誘起マットの各抗力誘起マットは、スライド接面と、乗客接面と、乗客接面に結合された少なくとも1つのハンドルとを有するそれぞれの主本体を含む。複数の抗力誘起マットは、複数の抗力誘起マットの第1のセットを含み、誘起マットは各々、それぞれの主本体のスライド接面の第1の側縁から第2の側縁まで定められた第1のそれぞれのサイプアレイを含む。第1のそれぞれのサイプアレイは、複数の乗客のそれぞれの乗客によって加圧されたときに、第1の量の抗力を誘起するように構成されている。複数の抗力誘起マットはまた、それぞれの主本体の第1の側縁から第2の側縁まで定められた第2のそれぞれのサイプアレイを各々が含む複数の抗力誘起マットの第2のセットを含む。第2のそれぞれのサイプアレイは、複数の乗客のうちのそれぞれの乗客によって加圧されたときに、第1の量の抗力とは異なる第2の量の抗力を誘起するように構成されている。
【0009】
本開示のこれら及び他の特徴、態様、並びに利点は、図面全体を通じて同様の参照符号が同様の要素を示す添付図面を参照しながら以下の詳細な説明を読むと更に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本技術の実施形態による、サイプアレイを有する抗力誘起マットを含むウォーターパークアトラクションの斜視図である。
【
図2】本技術の実施形態による、横方向サイプがその上に設けられた
図1の抗力誘起マットの一実施形態の底面図である。
【
図3】本技術の実施形態による、破線又は短い横方向サイプがその上に設けられた
図1の抗力誘起マットの一実施形態の底面図である。
【
図4】本技術の実施形態による、矢印形のサイプがその上に設けられた
図1の抗力誘起マットの一実施形態の底面図である。
【
図5】本技術の実施形態による、矢印形のサイプ及び横方向サイプがその上に設けられた
図1の抗力誘起マットの一実施形態の底面図である。
【
図6】本技術の実施形態による、ジグザグ形のサイプがその上に設けられた
図1の抗力誘起マットの一実施形態の底面図である。
【
図7】本技術の実施形態による、横方向サイプ及び長手方向サイプがその上に設けられた
図1の抗力誘起マットの一実施形態の底面図である。
【
図8】
図8は、本技術の実施形態による、
図1の抗力誘起マットを形成するための切断形成プロセスの一実施形態の図である。
【
図9】本技術の実施形態による、
図1の抗力誘起マットを形成するための射出成形プロセスの一実施形態の図である。
【
図10】本技術の実施形態による、
図9の射出成形プロセスによって形成された抗力誘起マットの一実施形態の側面図である。
【
図11】本技術の実施形態による、積層された主本体を有する
図1の抗力誘起マットの一実施形態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、添付の図面及び図に示された特定の実施形態を詳細に参照する。以下の詳細な説明では、本開示の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細事項が記載されている。しかしながら、当業者であれば、実施形態はこれらの具体的な詳細事項がなくても実施可能であることは明らかであろう。他の例では、周知の方法、手順、構成要素は、実施形態の態様を不必要に不明瞭にしないように、詳細には説明されていない。
【0012】
本明細書で使用される用語は、単に特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、限定を意図するものではない。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を有する実施形態を含む。また、本明細書で使用される「及び/又は」という用語は、関連する記載の項目のうちの1又は2以上の項目の何れか又は全ての可能な組み合わせを意味し、これを包含していることが理解されるだろう。本明細書内で使用する場合に、用語「含む」、「備える」及び/又は「備えている」という用語は、そこに述べた特徴部、完全体、ステップ、動作、要素及び/又は構成部品の存在を明示しているが、1つ又はそれ以上の他の特徴部、完全体、ステップ、動作、要素、構成部品及び/又はそれらの群の存在又は付加を排除するものではない。更に、本明細書で使用される場合、用語「if」は、文脈に応じて、「when」又は「upon」、或いは「in response to determining」又は「in response to detecting」を意味するものと解釈することができる。
【0013】
本開示は、アミューズメントパークの乗り物と組み合わせて使用することができる抗力誘起マットを提供する。アミューズメントパークの乗り物のウォータースライド及び/又はシュートは、典型的には、乗客が最初に脚を入れるように設計することができ、これは、ウォータースライドのターンに従って乗客を整列させ、ウォータースライドの終わりでプールへのファーストレッグ(legs-first)進入を提供する。しかしながら、一部のウォータースライド又はシュートは、マットレーサー又はマット(例えば、乗客が前向きに滑り降りることができる構造)と共に使用するように設計されている。ラフト又は他の乗り物とは対照的に、マットは、乗客への拘束が最小限であり、乗客はスライドの表面をより近くに感じることができ、その結果、車両ベースの乗り物と比較して、比較的低速度でより速くより強くスリルを感じる。加えて、マットは、乗客の顔から水を逸らすシールドを提供することができ、その結果、乗客は、マットなしのファーストレッグ乗り物と同程度の浸漬レベルで乗り物を楽しむことができる。後述するように、本実施形態は、ヘッドファースト(head-first)又はフットファーストのウォータースライドに好適なものを含む、様々なタイプのマットを含む。
【0014】
本明細書では、このような特徴を有していないマットと比較して、乗客がウォータースライド上で達成し得る最高速度の改善された制御を可能にする、効率的に構築可能な特徴を有する抗力誘起マットが提供される。例えば、抗力誘起マットは、抗力誘起マットの底面内に定められ、抗力誘起マットとウォータースライドの表面及び/又は水との間の摩擦を増加させるサイプを含むことができる。現在認識されるように、サイプは、底面内のカット又はスリットであり、抗力誘起マットの抗力、グリップ、トラクション、及び摩擦のユーザー調整可能レベルを改善することができる。理解されるように、抗力誘起マットの所望の性能を提供するために、サイプの何れかの適切な構成及び深さを作成することができる。例えば、一実施形態では、サイプは、底面に沿って横方向に延びて、互いに実質的に平行に離間して配置することができるが、後述するように、本明細書ではサイプの他の配置も考慮される。従って、サイプは、抗力誘起マットとウォータースライドとの間の接触表面積を増大させ、乗客がウォータースライドに沿った降下をより正確に制御することを可能にする。幾つかの実施形態では、乗客は、乗客がウォータースライドを体験したいと望む速度に応じて、より多数のサイプ又はより少数のサイプを有する抗力誘起マットを選択することができ、追加のサイプを有する抗力誘起マットは、より多くの速度制御を提供する。更に、サイプは抗力誘起マットの全幅に沿って形成することができ、これにより、組立ライン又は他の建設プロセスにおいて、ブレード又は熱線を全幅にわたって移動させ、効率的にサイプを形成することができる。他の実施形態では、成形抗力誘起マットが製造される前に、ブレード又はバッフルを射出成形金型内に埋め込むことによって、サイプを形成することができる。更に、抗力誘起マットは、耐久性を向上させるために、加硫プロセス、応力集中(例えば、応力集中部)を制御又は低減するためのサイプの下部プロファイルの丸み付け、リップストップとして抗力誘起マット内に柔軟なシートを提供する、及びその他などにより強化することができる。このように、抗力誘起マット及びその中のサイプは、迅速に形成、強化され、異なるタイプの乗客用にカスタマイズされ、アミューズメントパークの乗り物内でのユーザー体験を向上させることができる。サイプは、極めて狭く(例えば、1mm幅未満)、従って、抗力誘起マットが平坦及び/又は非加圧状態のときにはほとんど気にならないものとすることができる。しかしながら、マットへの乗客の加圧に起因して、サイプが拡大する、及び/又は相対的に移動することがある。従って、何れかの適切な体重の乗客は、能動的又は受動的にマットを加圧することなどにより、サイプに開口部を露出させることによってウォータースライドの抗力を増大させることができる。
【0015】
開示された実施形態は、一般的に、ウォーターライド、ウォータースライド、又はウォーターコンポーネントを含む乗り物の関連で説明されているが、本明細書で提供されるような抗力誘起マットは、他の関連で及び非水ベースの乗り物と共に使用できることを理解されたい。例えば、抗力誘起マットは、水を保持しないスライドで使用することができる。更に、水に加えて又は水の代わりに、抗力誘起マットは、発泡体、他の液体、雪及びその他を利用する乗り物と共に使用することができる。一例として、本明細書で開示される抗力誘起マットは、雪そりとして実装することができる。また、マットの特定の構造(例えば、材料、形状、サイズ)は、所望の最終用途に応じて実施することができる。更に、抗力誘起マットは、レッグファースト又はヘッドファーストの何れかの向きで乗客を収容するように実装することができる。
【0016】
上記の概要を念頭に置きながら、
図1は、抗力誘起マット12を備えたウォーターライドシステム10の斜視図である。一実施形態では、ウォーターライドシステム10は、抗力誘起マット12をウォータースライド14又はシュートと共に使用することを容易にするように実施することができる。抗力誘起マット12は、乗客20を支持する主本体16を含む。乗客20は、一般的に、主本体16の乗客支持面22(例えば、上面、乗客接面、乗客面)上に載っており、一方、主本体16の下面24(例えば、対向面、スライド接面)は、乗り物面28(例えば、ウォータースライド14のスライド面)又は水30の一方又は両方に直接接触している。このようにして、乗客20は、車両なしウォーターライドシステム上で達成可能な速度と比較して増大した速度でウォータースライド14を通過する間、乗り物面28に対して衝撃緩衝を受ける。また、抗力誘起マット12は、1又は2以上のハンドル31など、乗客の快適性又は制御のための追加機能を含むことができる。本実施形態では、2つのハンドル31が各々、乗客支持面22の第1の部分32と第2の部分33との間に固定されており、これにより、主本体16の一部とシールド構造を形成して、水が乗客20の顔に接触するのを阻止している。抗力誘起マット12の主本体16は、発泡体(例えば、クローズドセル)、プラスチック、又はゴムなどの比較的柔軟な材料、或いは比較的剛体材料を含む、何れかの適切な材料から形成することができる。
【0017】
更に、乗客20の速度を制御するために、主本体16の下面24は、下面24と乗り物面28及び水30の一方又は両方との間の摩擦を増大させる抗力誘起マット12のサイプアレイを介してテクスチャ化されている。実際に、抗力誘起マット12は、水30に対する抗力と乗り物面28に対する動摩擦の両方を引き起こす可能性があることを理解されたい。後述するように、サイプアレイは、主本体16の接続領域34に配置されており、乗客20がハンドル31を保持している間、乗客の肘及び前腕を介して、及び幾つかの実施形態ではハンドル31自体を介して力を作用する。抗力誘起マット12の乗客支持面22からサイプアレイに近接する主本体16に加えられる力(乗客20がハンドル31を把持しているときに乗客の肘によって加えられる力など)は、サイプアレイのサイプを開かせ、ウォータースライド14との摩擦接触に利用できる表面積を増大させることができる。しかしながら、サイプアレイは、代替的又は追加的に、乗客の膝の下の二次接続領域36(典型的には追加の力が加えられる)又は主本体16の何れかの他の適切な部分に形成することができる。
【0018】
理解されるように、抗力誘起マット12は、乗客20が、抗力誘起マット12をそれぞれより強く又はより柔らかく加圧することによって、乗り物面28に沿って乗客の速度を選択的に減少又は増大させることを可能にすることができる。実際に、乗客20は、様々な乗客位置の間を移動することによって、抗力誘起マット12の速度を調整することができる。例えば、乗客20が肘から離昇する、腰から体重をかける、膝から体重をかける(膝の下にサイプアレイ50が形成されていない抗力誘起マット12を使用する場合)及びその他など、サイプアレイ50及び/又は接続領域34にかかる乗客の体重が少ない場合には、速度を増大することができる。或いは、より多くの乗客の体重がサイプアレイ50及び/又は接続領域34にかかる場合、又はより多くの乗客の体重が二次接続領域36にかかる場合、又は乗客20が乗り物面28又はその水30に対してサイプアレイ50を更に係合させる他の適切な位置をとる場合には、速度が低下させることができる。このため、抗力誘起マット12により、乗客20が乗り物面28に沿って降下することを選択的に制御可能になり、乗客の楽しみの向上に寄与する。
【0019】
図2は、抗力誘起マット12の主本体16の下面24内に形成されているサイプアレイ50の一実施形態を示す、抗力誘起マット12の底面図である。現在認識されるように、サイプアレイ50は、上述した乗り物面28及び水30に対する抗力誘起マット12のグリップを改善又は増大させる1又は2以上のサイプとすることができる。図示の実施形態では、サイプアレイ50は、抗力誘起マット12の横軸56に平行に定められる主本体16の全幅54にわたって実質的に直線状に各々が延びる、4つの横方向サイプ52(例えば、横方向に延びるサイプ、直線状のサイプ)を含む。しかしながら、何れかの適切な数の横方向サイプ52は、2、3、4、5、6、7、8、又はそれよりも多いようなサイプアレイ50内に含めることができることを理解されたい。更に、本明細書で使用される場合、実質的に直線状であると記述される要素は、その要素が完全に真っ直ぐであることの5%以内であることを示す。更に、横方向サイプ52は、抗力誘起マット12の長手方向軸58に対して互いに等しい間隔で示されているが、幾つかの実施形態では、代替的に、横方向サイプ52は、乗客20によって加えられる予想圧力に基づいてより近くに集まることができ、又はより離間して配置してもよい。サイプアレイ50は、抗力誘起マット12の上部60に配置されたハンドル31の近くにある主本体16の接続領域34内に配置される。従って、乗客20が標準的な乗車の間に抗力誘起マット12に加えることができる局所的な圧力に起因して、サイプアレイ50は、乗客20の速度制御を容易にするために、ウォータースライド14に対する抗力誘起マット12の抵抗を増大させる。例として、乗り物体験中に、乗客20は、第1の横方向サイプ52の第1の壁を乗り物面28に接触させるように圧力をかけることができ、第1の横方向サイプ52の第2の壁は、それ自体の下に折り畳まれ、これによって隣接する第2の横方向サイプ52の対向する壁が乗り物面28に接触することが可能となる。実際に、サイプアレイ50は、印加された圧力に応答して何れかの適切な方法で選択的に開くことができる。
【0020】
以下でより詳細に議論するように、横方向サイプ52は、剃刀又はブレードの幅を有する小さなカット(例えば、1mm未満、0.1mm未満)とすることができ、これは、抗力誘起マット12の垂直軸62に平行に、主本体16内に切り込まれるか、又は一体的に成形することができる。すなわち、各横方向サイプ52は、抗力誘起マット12が乗客20によって加圧されていないときに、各横方向サイプ52のサイプ壁が主に互いに接触するようなサイズにすることができる(例えば、横方向サイプ52が存在しないような外観を提供する、1mm未満の幅のギャップを形成する、0.1mm未満の幅のギャップを形成するなど)。更に、数センチメートルの幅を有する大きな溝を含むことができる従来のマットと比較して、横方向サイプ52の幅が無視できるか又はゼロに近いことで、材料の摩耗が減少し、抗力誘起マット12の使用可能期間が改善されるとともに、下面24の接触表面積を選択的に調整することができる。実際に、サイプアレイ50は、これらの従来のマットと比較して、より少ないユーザーの努力でより優れた速度制御などの改善された性能を提供することが現在認識されている。場合によっては、サイプアレイ50はまた、上述した主本体16の全幅54の全部又は一部にわたって深さを変化させ、使用中の横方向サイプ52の開きを強化又は制御することができる。サイプアレイ50は更に、幾つかの実施形態では目には見えないか又はほとんど見えず、抗力誘起マット12の美観を向上させることができる。後述するように、抗力誘起マット12は、抗力誘起マット12の耐久性を高めるために、追加の特徴を含む、及び/又は特定の処理を受けることができる。
【0021】
サイプアレイ50の特定の形状及び位置は、複数の乗車環境に対してカスタマイズ可能である。すなわち、本明細書で認識されるように、抗力誘起マット12のサイプアレイ50は、抗力を増大させ、抗力誘起マット12の速度制御を改善する多くの適切な形態の1つをとることができる。本明細書に記載されるサイプアレイ50は各々、サイプの何れかの適切な数、深さ、及びサイジングを含むことができ、これらサイプは、それぞれの抗力誘起マット12に沿って一定又は可変とすることができることを理解されたい。更に、サイプアレイ50の様々な特徴は、本明細書で説明された複数の実施形態から組み合わせることができ、明確にするために1つの図を参照して説明することができることを理解されたい。実際に、サイプアレイ50の何れかの適切な構成及び深さを利用して、抗力誘起マット12の性能の目標レベルを達成することができる。例えば、
図13は、サイプアレイ50が千鳥状の破線の配置を有する抗力誘起マット12の底面図である。すなわち、複数の短い横方向サイプ82(例えば、短い横方向に延びるサイプ)を各々が有する4つのライン80が、下面24内に形成されており、ここで、隣接するライン80の短い横方向サイプ82は、互いに相対的に千鳥状又はオフセットされている。幾つかの実施形態では、各短い横方向サイプ82は、主本体16の全幅54の同じ幅の部分84に沿って延びている。しかしながら、他の実施形態では、各ライン80の短い横方向サイプ82は、全幅54の個別の幅部分84に沿って延びることができ、接続領域34内でより中心に配置されたライン80の短い横方向サイプ82が、接続領域34内でより遠隔に配置されたものよりも長くなるようにする。
【0022】
更に、
図4は、矢印又はシェブロン配列のサイプアレイ50を有する抗力誘起マット12の底面図である。図示の実施形態では、サイプアレイ50は、4つの矢印形のサイプ90を含み、各々が、抗力誘起マット12の主本体16の第1の側面91から第2の側面92まで延びる。矢印形のサイプ90は各々、主本体16の長手方向に延びる中心線94(例えば、長手方向軸線58に平行)と交差し且つハンドル31の方に向いた頂点93を含むことができる。更に、
図5に示された抗力誘起マット12の実施形態では、サイプアレイ50は、逆方向(例えば、ハンドル31から離れる方向)に向いた頂点93と、同様に横方向サイプ52とを各々有する矢印状サイプ90を含む。2つの異なるタイプのサイプを含むことで、抗力誘起マット12により、乗客20が自分の速度を更に精緻化可能にすることができるようになる。特定の実施形態において、矢印状サイプ90と横方向サイプ52は、垂直軸62に平行な方向に定められる同じ又は異なる深さを有することができる点を理解されたい。更に、
図6の実施形態に示されるように、サイプアレイ50は、代替的に、下面24に沿って延びるジグザグ形のサイプ95を含むことができる。サイプアレイ50に所望の密度をもたらすために、各ジグザグ形サイプ95は、ジグザグ形サイプ95の隣接する山部97と谷部98の間の長手方向軸58に沿って定められる何れかの適切なサイプ寸法96を有することができる。実際、所望のレベルの速度制御を可能にするために、ウォータースライド14の各乗客20は、所望の密度のサイプアレイ50を有する抗力誘起マット12を選択することができる。
【0023】
更に、
図7のサイプアレイ50の実施形態に示されるように、長手方向サイプ100(例えば、長手方向に延びるサイプ)が、抗力誘起マット12の主本体16の遠位側部分102に形成することができる。長手方向サイプ100は、主本体16の上端104から下端106までなど、長手方向軸線58に平行な方向に沿って延びる。従って、本実施形態では、長手方向サイプ100は、横方向サイプ52を横断又は交差している。すなわち、全幅54にわたって横軸56に平行な方向に沿って延びる横方向サイプ52に加えて、長手方向サイプ100は、横方向サイプ52に対して交差するように、又は垂直に延びて主本体16の全長110を横断し、これにより、ウォータースライド14に沿った抗力誘起マット12の移動に抵抗するために、抗力誘起マット12の表面積を更に調整又は拡大することを可能にすることができる。この組み合わされた実施形態は、サイプ及び関連する抗力の更なる拡大のために、予想される肘接触の領域の近くに高密度のサイプグリッド112を作成することができる。幾つかの実施形態では、長手方向サイプ100及び/又は横方向サイプ52はセグメント化されて、千鳥状及び/又は破線状の複数のサイプを形成することができる。
【0024】
上述のように、サイプアレイ50のこれらの実施形態は、実施可能な配置の一部に過ぎず、これらは、乗客20に所望の速度制御を可能にするような何れかの適切な方法で再配置、カスタマイズ、個別化、又は組み合わせることができることを理解されたい。実際に、他の実施形態では、ディンプル又は他の表面積増大特徴部及びテクスチャは、サイプアレイ50と組み合わせることができる。加えて、ウィッカービル、スポイラー、又は他の空力抵抗構成要素は、本明細書で検討するサイプアレイ50と組み合わせることができる。更に、サイプアレイ50は、抗力誘起マット12の乗客制御を容易にするために特に配置することができる。例えば、肘を介して抗力誘起マット12に寄りかかる、又は力を加える乗客20は、サイプアレイ50の位置決めに起因して、腰を介して力を加える乗客と比較して、より多くの抗力を誘起することにより乗り物速度を低下させることができる。実際に、上述のように、乗客20は、サイプアレイ50の選択された部分に係合して抗力を誘起する何れかの適切な乗客位置に移動することによって、抗力誘起マット12の速度を制御することができる。
【0025】
更に、抗力誘起マット12に設けることができる多種多様なサイプアレイ50を考慮すると、ウォーターライドシステム10は、異なる乗客品質及び/又は乗客体験を各々対象とした抗力誘起マット12の様々なセットを含むことができることを理解されたい。例えば、抗力誘起マット12は、第1の高さを有する乗客20に対応する第1の長さを有する第1のセットと及び第2の異なる高さを有する乗客20に対応する第2の異なる長さを有する第2のセットなど、様々なサイズのセットで形成することができ、ここでサイプアレイ50は、個々の抗力誘起マット12に適合するような(例えば、長さ、幅、及び/又は高さを)サイズにされ及び/又は調整される。加えて、抗力誘起マット12のセットは、低密度のサイプアレイ50で設計された抗力誘起マット12の高速セット(例えば、
図2、3、及び/又は4の抗力誘起マット12)を含み、高密度のサイプアレイ50を有する低速セットの抗力誘起マット12(例えば、
図5、6、及び/又は7の抗力誘起マット12)と比較して、速度の増大を提供する、及び/又は抗力量の減少を誘起することができる。別の例として、長さが短い抗力誘起マット12を、長さが長い抗力誘起マット12よりも高密度のサイプアレイ50と共に形成することができ、これにより短い抗力誘起マット12を使用する潜在的に軽量の乗客20の速度を更に制御することが可能となる。何れの場合においても、抗力誘起マット12の様々なセットを選択できる可能性を乗客20に提示することにより、乗客20の個々の希望に対してより楽しめる乗り物体験を提供し目標とすることができる。
【0026】
抗力誘起マット12の動作及び特徴に関する上記の理解を念頭に置いて、抗力誘起マット12の効率的な構築性及び耐久性に関する本明細書の議論をよりよく理解することができる。
図8は、抗力誘起マット12のサイプアレイ50を形成するための切断プロセス118の一実施形態を示す斜視図である。実際に、切断組立体121又は機械のブレード120(例えば、剃刀、加熱ブレード、熱線)を使用して、切断組立体121に隣接して配置されたマット122(例えば、平坦又は平滑なマット、抗力誘起マット12の前駆体)の下面24内に横方向サイプ52を形成することができる。幾つかの実施形態では、横方向サイプ52又は他のサイプタイプが、主本体16の全幅54にわたって延びることができるので、マット122がブレードに対して相対的に(例えば、横方向、長手方向、垂直方向に)移動するときに、ブレード120は静止位置に保持することができる。他の実施形態では、ブレード120は、マット122に対して相対的に移動することができる。例えば、複数の短い横方向サイプ82を有するライン80を形成するために、ブレード120は、マット122が移動するにつれて、垂直方向切断軸130に平行な方向に沿って脈動又は移動することができる。或いは、シェブロン配列又はジグザグ形サイプ95を有するサイプアレイ50を形成するために、マット122がブレード120に対して横方向に移動するときに、ブレード120は、マット122の下面24と平行な平面132に沿って位置を調整することができる。更に、ブレード120が加熱されるか又は熱線に置き換えられた実施形態では、マット122に提供される熱は、強度及び耐久性の改善のため、望ましくは下面24内のサイプアレイ50を溶融又は焼灼することができる。加えて、本明細書で論じるこれら又は他のプロセスによって製造されたサイプアレイ50を加硫して、応力集中部を低減し、負荷状態でのサイプの開放を制御することができることが現在認識されている。
【0027】
更に、幾つかの実施形態では、サイプアレイ50は、複合マットが個々のマット122にセグメント化される前に、複合マットの表面に形成され、これによって、複数の抗力誘起マット12の効率的な形成を容易にすることができる。加えて、切断組立体121は、一度に複数のサイプを同時に形成するために複数のブレード120を含むことができる。また、他の実施形態では、熱線又は比較的小さいサイズの他の切断装置を切断組立体121で使用してサイプアレイ50を形成するか、又は引き裂きを避けるためにサイプのエッジを焼灼することができることを理解されたい。更に、幾つかの実施形態では、サイプアレイ50の各サイプは、切断組立体121を複数のブレード120又は熱線と共に実装するなどにより同時に切断することができる。
【0028】
何れにしても、サイプアレイ50は、望ましくは抗力誘起マット12の主本体16の第1の側面91から第2の側面92まで延びて、主本体16の全ての利用可能な空間を用いて、乗客20のための制御可能な摩擦インデューサとして効率的に動作するサイプアレイ50を含むようにすることができる。次いで、結果として得られる抗力誘起マット12の側面140を見ると、横方向サイプ52は各々、主本体16の全厚144の一部であるサイプ深さ142(例えば、垂直軸62に平行な方向に沿って定められる)を有する。幾つかの実施形態では、サイプ深さ142が主本体16の全厚144の10パーセントから25パーセントの間であるときに、サイプアレイ50によって提供される抵抗と抗力誘起マット12の材料強度との間に望ましい平衡が見出される。このように、所望のサイプアレイ50が形成されると、ハンドル31を乗客支持面22に結合して、抗力誘起マット12を形成することができる。
【0029】
図9は、抗力誘起マット12を形成するための成形プロセス160を示す概略図である。例えば、本実施形態の射出成形金型162は、抗力誘起マット12のための所望の外側境界を定める内側面164を含む。ブレードなどのバッフル166が射出成形金型162内に埋め込まれ、サイプアレイ50が抗力誘起マット12の主本体16の材料170と一体的に形成可能になることに留意されたい。すなわち、バッフル166は、射出成型金型162の全幅に沿って射出成型金型162のチャンバ172内に突出し、主本体16が形成される材料170の後続の適用により、抗力誘起マット12の下面24の全幅54に沿ってサイプアレイ50が形成されるようになる。従って、抗力誘起マット12(例えば、ハンドル31なし)は、射出成形金型162から取り出され、ウォータースライド14内で使用することができる。
【0030】
更に、幾つかの実施形態において、主本体16の全厚144に沿った横方向サイプ52の潜在的な伝播を抑制又は低減するために、射出成形金型162の特定のバッフル166又は各バッフル166は、球根状端部176を含むことができる。従って、
図10の抗力誘起マット12の側面図に示されるように、横方向サイプ52の内端部(例えば、下面24とは反対側の横方向サイプ52の端部)に貫通孔200が形成される。貫通孔200は、横方向サイプ52を更に延伸する可能性がある力を吸収し、これによって横方向サイプ52の引き裂きを抑制するクッション又はリップストップとして機能することができる。すなわち、貫通孔200の丸みのある輪郭(例えば、内側輪郭)は、他の場合には抗力誘起マット12の早期摩耗に寄与する可能性がある抗力誘起マット12内の応力集中部を低減することができる。貫通孔200の丸みのある輪郭、及びそこから延びるサイプ壁は、追加の弾力性のため加硫、溶融、又は焼灼することができる。貫通孔200は、提供する増大した表面積に起因して、貫通孔200のない実施形態と比較して、抗力誘起マット12の抗力を更に増大させることができる。幾つかの実施形態では、貫通孔200は、サイプアレイ50の1つのサイプ、2つのサイプ、又は全てのサイプに設けられてもよい。更に、貫通孔200は、サイプアレイ50に対する何れかの適切なサイズ又は高さを有することができ、貫通孔200は、射出成形以外の別のプロセスによって形成することができる。幾つかの実施形態では、サイプアレイ50の遠位端又はエッジもまた丸みを帯びていてもよい。
【0031】
抗力誘起マット12はまた、明確にするために横方向サイプ52を含むサイプアレイ50の実施形態を参照して議論される、構造的強度及び/又は速度制御特性を改善するための他の特徴を含むことができる。例えば、射出成形金型162を介して構成される場合、射出成形金型162は、側面140と下面24との間の主本体16の頂点にて材料170の堆積物210を形成するような形状にすることができる。従って、図示されるように、材料170の堆積物210は、そうでなければ抗力誘起マット12を引き裂く可能性のある力を低減するためのクッションとして動作することができる。同様に、接着フィルム212が、抗力誘起マット12の望ましくない動き又は引き裂きを低減するために、側面140に適用することができる。他の実施形態では、堆積物210、接着フィルム212、及び/又は焼きばめ材料などの他の材料が、サイプアレイ50の各横方向サイプ52及び/又は他のサイプで利用できることを理解されたい。すなわち、堆積物210、接着フィルム212及びその他は、各横方向サイプ52の横方向端部と主本体16の横方向側面91,92との間の接合部に形成されて、抗力誘起マット12に追加の強度を提供することができる。
【0032】
図11は、積層された主本体230を有する抗力誘起マット12の側面図である。例えば、材料の第1の層232は、材料の第2の層234に結合して結果として得られるむ積層された主本体230を形成することができ、この主本体は、上述の乗客支持面22及び下面24を含む。サイプアレイ50は、第2の層234内に形成され、所望のサイプ深さ(例えば、全厚144の10%~25%)に基づいて、第1の層232に対して比例することができる。このように、積層された主本体230は、横方向サイプ52の第1の層232への伝播を防止する。更に、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(BoPET)シート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シート、又は他の材料シートのような強靭で可撓性の膜236が第1の層232と第2の層234との間に配置して積層され、第2の層234から第1の層232への横方向サイプ52の伝播を防止することができる。可撓性膜236は、第1の層232の第1の材料及び/又は第2の層234の第2の材料(これらは同じ材料であっても異なっていてもよい)よりも強靱であるか、又は引き裂きに対してより弾力性がある何れかの適切な材料で形成できることを理解されたい。可撓性膜236は、何れかの適切な接着剤又は対応する材料によって第1の層232の内面と第2の層234の内面との間に結合することができ、代替として、射出成形プロセスを介して層232,234間に一体的に形成することができる。更に、可撓性膜236の厚さは、層232,234の相対的な厚さよりも小さいようなサイズにすることができ、これによって、横方向サイプ52の意図しない伝播を阻止又は防止するために、可撓性膜236のより弾性のある材料の利用を節減することができる。しかしながら、抗力誘起マット12の他の実施形態は、可撓性膜236をその中に配置されることなく積層された主本体230を含むことができる。
【0033】
更に、上述したように、各横方向サイプ52は、抗力誘起マット12が加圧されていないときに、主に互いに接触している(例えば、互いに接触している、ほぼ接触している、第2の層234の残りの部分と区別できない)サイプ壁240又は内壁を含む。次に、抗力誘起マット12が加圧されると、サイプ壁240が開いて(例えば、互いに折り畳まれる、互いに離れる)、上述のように、乗り物面28に部分的又は完全に接触することができる。上述したように、サイプ壁240は、耐久性を更に向上させるために、加硫、焼灼、又は溶融することができる。
【0034】
このように、開示された抗力誘起マット12の技術的効果には、抗力誘起マット12とウォータースライド14との間に発生する摩擦の改善されたカスタマイズ可能な乗客20の制御が含まれる。例えば、抗力誘起マット12は、乗客20を受ける乗客支持面22を有する主本体16と、切断、成形、又は他の方法でそこに定められるサイプアレイ50を有する下面24と、を含む。サイプアレイ50は、下面24の全幅54に沿って延びて、横方向サイプ52、短い横方向サイプ82のライン80、矢印状サイプ90、ジグザグ形サイプ95、及び/又は長手方向のサイプ100を含むことができる。何れの場合でも、サイプアレイ50の各サイプは、著しく小さい幅を有するように形成されて、乗客20による加圧がない状態で、各サイプのサイプ壁240が主に互いに接触することが可能になる。従って、乗客20が抗力誘起マット12に力を加えると、サイプアレイ50は、サイプ壁240の少なくとも一部がウォータースライド14の乗り物面28に接触できるように選択的に開いて、その間に追加の摩擦を発生させ、ウォーターライドシステム10の乗客20の楽しみを向上させる増大した速度制御に寄与することができる。抗力誘起マット12の様々な特徴は、効率的に構築され、摩耗を低減して利用することができるので、抗力誘起マット12は更に、実質的なコスト支出なしで、ウォーターライドシステム10の動作を更に改善する。例えば、抗力誘起マット12に、リップストップとして可撓性膜236を含むことができる積層された主本体230を設けることで、横方向サイプ52の意図しない伝播を防止することにより、抗力誘起マット12の摩耗を低減することができる。更に、抗力誘起マット12は、内部又は外部応力を低減し、これによってサイプの開きを制御するために加硫及び/又は焼灼することができる。このように、互いに接触しない壁を有する広くて可視の溝を含むことができる従来のマットと比較して、本開示の抗力誘起マット12は、サイプアレイ50の選択的に増大可能な表面積に基づいて、乗客の楽しさの改善及び速度制御の向上を提供することができる。
【0035】
本明細書では、本開示の特定の特徴のみについて例示し説明してきたが、当業者であれば多くの修正形態及び変更が想起されるであろう。従って、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の技術的思想の範囲内にある全てのこのような修正及び変更を保護することが意図されていることを理解されたい。特定の開示された実施形態は、アミューズメントパーク又はテーマパークの関連で開示されているが、特定の実施形態は、他の用途にも関連することができることを理解されたい。更に、開示された実施形態の特定の要素は、互いに組み合わせるか交換することができることを理解されたい。
【0036】
本明細書で提示され特許請求される技術は、本発明の技術分野を明らかに改善する実際的な性質の有形物及び具体的な実施例を参照し適用され、このため抽象的、無形、又は純粋に理論的なものではない。更に、本明細書の最後に添付される何れかの特許請求の範囲が、「・・・[機能]を[実行]する手段」又は「・・・[機能]を[実行]するステップ」として指定される1又は2以上の要素を含む場合、このような要素は、米国特許法第112条(f)項に基づいて解釈すべきであることが意図される。しかしながら、他の何らかの様式で指定された要素を含む何れかの請求項については、このような要素は、米国特許法第112条(f)項に基づいて解釈すべきではないことが意図される。
【符号の説明】
【0037】
10 ウォーターライドシステム
12 抗力誘起マット
14 ウォータースライド
16 主本体
20 乗客
22 乗客支持面
24 下面
28 乗り物面
30 水
31 ハンドル
32 第1の部分
33 第2の部分
34 接続領域
36 二次接続領域