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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】電動弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
F16K31/04 K
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022005501
(22)【出願日】2022-01-18
(65)【公開番号】P2023104487
(43)【公開日】2023-07-28
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100213757
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 詩人
(72)【発明者】
【氏名】小池 亮司
(72)【発明者】
【氏名】中川 大樹
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-135984(JP,A)
【文献】特開2008-180475(JP,A)
【文献】特開2017-211032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主弁室および主弁ポートを構成する弁本体と、前記主弁ポートの主弁座との間の開口面積を調節する主弁体と、前記主弁体内に形成された副弁室において軸線方向に移動可能に設けられるとともに、前記主弁体に設けられた副弁ポートの副弁座との間の開口面積を調節する副弁体と、前記主弁体および前記副弁体を進退駆動する駆動部と、を備えた電動弁であって、
前記弁本体において前記軸線方向の一方側の端部に前記主弁ポートが配置され、前記駆動部は、前記軸線方向の他方側から前記主弁体および前記副弁体に対して駆動力を付与するように配置され、
前記副弁体は、前記軸線方向の一方側の先端にニードル部を有し、
前記ニードル部は、前記副弁ポートに挿入されるとともに、前記副弁ポートとの隙間によって絞り部を構成し、
前記主弁体は、前記主弁室と前記副弁室とを連通する連通路が形成された筒部を有し、
前記筒部の内周面又は外周面に沿うとともに前記連通路を覆う位置に、前記主弁体を弁閉方向に付勢する付勢ばねが配置されていることを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記筒部の外周面と前記付勢ばねの内周面との間隙、又は、前記筒部の内周面と前記付勢ばねの外周面との間隙は、前記連通路の有効直径以下であることを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記主弁体が前記主弁座に着座した際の前記付勢ばねのコイル間隙は、前記連通路の有効直径よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の電動弁。
【請求項4】
前記主弁ポートと同軸に設けられるとともに前記主弁体をガイドするガイド孔を有するガイド部材を備え、
前記筒部は、前記ガイド孔内に摺動可能に配置されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の電動弁。
【請求項5】
前記付勢ばねは、前記筒部の外側に配置されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の電動弁。
【請求項6】
前記主弁体は、前記主弁座側において拡径されたフランジ部を有し、
前記付勢ばねは、弁閉方向の力を前記フランジ部に対して付与することを特徴とする請求項5に記載の電動弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動弁として、主弁体部及び副弁体部を備え、小流量制御状態又は大流量制御状態とすることが可能な流量調整弁が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された流量調整弁では、弁体主部の内外を連通する連通孔を覆うように消音部材が設けられている。この消音部材は、弾性体により構成され、復元状態において弁体主部に保持されるようになっており、組み立て作業工数の抑制が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-56472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたように追加的に消音部材を設ける構成では、流体が副弁ポートを通過する際の騒音を低減することができる一方で、部品点数の増加によってコストが増大しやすい。即ち、低コストで騒音を抑制することは困難であった。
【0005】
本発明の目的は、流体が副弁ポートを通過する際の騒音を低コストで抑制することができる電動弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動弁は、主弁室および主弁ポートを構成する弁本体と、前記主弁ポートの主弁座との間の開口面積を調節する主弁体と、前記主弁体内に形成された副弁室において軸線方向に移動可能に設けられるとともに、前記主弁体に設けられた副弁ポートの副弁座との間の開口面積を調節する副弁体と、を備えた電動弁であって、前記主弁体は、前記主弁室と前記副弁室とを連通する連通路が形成された筒部を有し、前記筒部の内周面又は外周面に沿う位置に、前記主弁体を弁閉方向に付勢する付勢ばねが配置されていることを特徴とする。
【0007】
以上のような本発明によれば、連通路を覆う位置に付勢ばねが配置されていることで、流体が連通路を通過する際、連通路の上流側又は下流側において、付勢ばねを構成するコイル(ばねのうち一周分の部分)同士の間を流体が通過することとなる。これにより、圧力損失を生じさせて流体の速度を低下させ、流体が副弁ポートを通過する際の騒音を低減することができる。このとき、付勢ばねによって主弁体を弁閉方向に付勢することで、軸線方向における主弁体の動作を安定化させることができる。即ち、付勢ばねは、騒音低減および動作の安定化という2つの作用を有するものである。従って、本発明によれば、騒音低減のための部材と、動作の安定化のための部材と、を独立に設ける構成と比較して、部品点数を削減して低コスト化することができる。
【0008】
この際、本発明の電動弁では、前記筒部の外周面と前記付勢ばねの内周面との間隙、又は、前記筒部の内周面と前記付勢ばねの外周面との間隙は、前記連通路の有効直径以下であることが好ましい。このような構成によれば、付勢ばねを連通路に対して充分に近接して配置することができ、連通路に流入する流体又は連通路から流出した流体は、付勢ばねにより流れの向きが変えられるので、流体の速度が低下しやすく、騒音を低減させやすい。尚、連通路の断面が円の場合、連通路の有効直径は円の直径となり、円以外の形状の場合、この断面と面積が等しい円の直径が、有効直径となる。
【0009】
また、本発明の電動弁では、前記主弁体が前記主弁座に着座した際の前記付勢ばねのコイル間隙は、前記連通路の有効直径よりも小さいことが好ましい。このような構成によれば、圧力損失を大きくして流体の速度を低減させやすく、より騒音を低減させやすい。尚、コイル間隙とは、軸線方向に隣り合うコイル同士の間隔を意味する。
【0010】
また、本発明の電動弁では、前記主弁ポートと同軸に設けられるとともに前記主弁体をガイドするガイド孔を有するガイド部材を備え、前記筒部は、前記ガイド孔内に摺動可能に配置されることが好ましい。このような構成によれば、付勢ばねによって付勢される主弁体が、ガイド孔に摺動してガイドされることから、主弁体の傾きを抑制し、弁閉性能を向上させることができる。
【0011】
また、本発明の電動弁では、付勢ばねは、前記筒部の外側に配置されていることが好ましい。このような構成によれば、付勢ばねが筒部の内側に配置される構成と比較して、付勢ばねを大径化することができる。これにより、倒れ等の軸線方向以外の変形が付勢ばねに生じることを抑制し、弁閉性能を向上させることができる。
【0012】
また、本発明の電動弁では、前記主弁体は、前記主弁座側において拡径されたフランジ部を有し、前記付勢ばねは、弁閉方向の力を前記フランジ部に対して付与することが好ましい。このような構成によれば、主弁体に対して直接的に付勢力を付与することにより、付勢力を伝達しやすくし、弁閉性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電動弁によれば、流体が副弁ポートを通過する際の騒音を低コストで抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一例である実施形態にかかる電動弁を示す断面図である。
図2】前記電動弁の要部を拡大して示す断面図である。
図3】前記電動弁の要部を拡大して示す部分断面図である。
図4】本発明の変形例にかかる電動弁の要部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態の電動弁1は、例えばパッケージエアコンやルームエアコン等の空気調和機の冷凍サイクルシステムに用いられるものであって、図1に示すように、弁本体2と、ガイド部材3と、主弁体4と、副弁体5と、駆動部6と、第1消音部材7と、第2消音部材8と、付勢ばね9と、を備える。主弁体4及び副弁体5は所定の軸線方向に沿って移動するように設けられており、以下では、この軸線方向をZ方向とし、Z方向に直交する2方向をX方向及びY方向とし、Z方向における上下は図1を基準とする。また、Z方向における下側に向かう方向が弁閉方向となり、上側に向かう方向が弁開方向となる。
【0016】
弁本体2は、例えば黄銅やステンレス等により略円筒形状に形成された弁ハウジングであって、その内側に主弁室2Rを有している。弁本体2は、その側面においてX方向の一方側に開口した第1ポート21と、Z方向下側に開口した第2ポート22と、を有する。第1ポート21には、X方向に沿って延びる第1継手管11が接続され、第2ポート22には、Z方向に沿って延びる第2継手管12が接続され、第1継手管11及び第2継手管12は主弁室2Rに連通する。第1継手管11及び第2継手管12は、例えばろう付け等によって弁本体2に対して固着されればよい。
【0017】
弁本体2の下端部には、Z方向を軸線方向として主弁室2R側に(上側に向かって)突出した円筒状の主弁座23が形成され、この主弁座23の内側が主弁ポート23aとなっており、主弁ポート23aと第2ポート22とが連通する。即ち、第2継手管12が主弁ポート23aを介して主弁室2Rに導通される。本実施形態では、電動弁1は、第1ポート21を一次側とするとともに第2ポート22を二次側とし、第1継手管11から主弁室2Rに流入した流体(冷媒)が第2継手管12から流出するように使用されるものとするが、電動弁1は、双方向に流体が流れ得るサイクルに組み込まれてもよい。
【0018】
ガイド部材3は、弁本体2の上端の開口部に取り付けられるものであって、弁本体2の内周面内に圧入される圧入部31と、圧入部31の内側に位置する略円柱状のガイド部32と、ガイド部32の上部に延設されたホルダ部33と、ホルダ部33の上方に設けられたストッパ部34と、ガイド部32の外周に位置するリング状のフランジ部35と、を有している。圧入部31、ガイド部32、ホルダ部33及びストッパ部34は樹脂製の一体品として構成されている。また、フランジ部35は、例えば、黄銅やステンレス等により構成された金属板であり、このフランジ部35は、インサート成形により樹脂製の圧入部31及びホルダ部33と共に一体に設けられている。
【0019】
ガイド部材3は、弁本体2に組み付けられ、フランジ部35において弁本体2の上端部に溶接等により固定されている。また、ガイド部材3には、Z方向を軸線方向とし主弁ポート23aと同軸に設けられた円筒形状のガイド孔32aがガイド部32に形成され、ガイド孔32aと同軸の挿通孔33aがホルダ部33の中心に形成されている。また、ストッパ部34の中心には、ガイド孔32a及び挿通孔33aと同軸の雌ねじ部(ねじ孔)34aが形成されている。
【0020】
図2に示すように、ガイド部材3は、ガイド部32の下端部に、外径が他の部分よりも小さく形成された縮径部36を有し、縮径部36の外側に付勢ばね9が配置される。縮径部36と、その上側の部分と、の間には段差部37が形成されており、この段差部37のうち下側(主弁座23側)を向いた面に対して付勢ばね9の上端部が当接するようになっている。
【0021】
主弁体4は、主弁ポート23aの主弁座23との間の開口面積を調節するものである。主弁体4は、ガイド部32のガイド孔32a内に配置されることでZ方向に沿ってガイドされるものであって、全体がZ方向を軸線方向とする円筒状に形成されている。主弁体4は、有底円筒状に形成された外側筒状部41と、外側筒状部41の内側に配置された円筒状の内側筒状部42と、主弁座23に対して接近又は離隔する主弁部43と、を一体に有する。
【0022】
外側筒状部41は、円筒状の筒部411と、筒部411の下端部に設けられた底部412と、を有する。筒部411は、ガイド孔32a内に摺動可能に配置されてガイドされる部分となる。底部412は、XY平面に沿って延在している。有底円筒状の外側筒状部41の内部が副弁室4Rとなる。筒部411の内側に後述する押え部材73が設けられ、押え部材73の内周面がニードルガイド孔として機能する。このニードルガイド孔内には、後述する弁軸51に固着されたガイド用ボス部53が挿通されるとともに、この筒部411の上端にはリング状のリテーナ44が嵌合または溶接等により固着されている。尚、図示の例では、ガイド孔32aの上端部とリテーナ44との間にばね部材を配置可能な形状を有しているが、このような形状となっていなくてもよい。
【0023】
内側筒状部42は、底部412の中央部から主弁ポート23aとは反対側(上側)に向かって延びており、副弁体5が接近又は離隔する副弁座部である。内側筒状部42の内側には、貫通孔である副弁ポート42aが形成されている。内側筒状部42の外側には、円環状の環状空間421が形成されている。
【0024】
外側筒状部41の筒部411には、その内外を連通する複数(例えば8個)の連通路411Aが形成されている。8個の連通路411Aは、Z方向を中心とする周方向において等間隔で並んで形成され、環状空間421と連通している。筒部411に連通路411Aが形成されていることにより、主弁室2Rと副弁室4Rと副弁ポート42aと主弁ポート23aとが連通するようになっている。尚、図示の例では、筒部411のうち下端部(即ち底部412との境界部分)に連通路411Aが形成されているが、「筒部に連通路が形成されている」とは、連通路のうち少なくとも一部が筒部に形成されていることを意味し、連通路が筒部以外の部分に跨るような形状も含むものとする。
【0025】
また、外側筒状部41のうち、Z方向を中心とする周方向において連通路411Aが形成された位置には、連通路411Aに連続し環状空間421の下面に連続する傾斜面413が形成されている。即ち、図2のように連通路411Aを通るような断面図では傾斜面413が現れるが、連通路411Aを通らない断面では、傾斜面413は現れない。傾斜面413は、連通路411Aの下面から、内周側に向かうにしたがって上側に向かうように傾斜し、環状空間421の下面に接続される。これにより、径方向から見た際に、連通路411Aと環状空間421とは重なりを有しつつ、環状空間421が上側に若干オフセットして配置されている。
【0026】
主弁部43は、外側筒状部41の筒部411を下側に延長するように略円筒状に形成されている。主弁部43は、全閉状態において主弁座23に対して着座(当接)するように設けられている。
【0027】
主弁体4は、主弁部43を含む部分(主弁座23側の部分)が拡径され、フランジ部45が形成されている。主弁体4は、フランジ部45の上側に、フランジ部45よりも外径が小さい縮径部46を有し、縮径部46の外側に付勢ばね9が配置される。フランジ部45と、縮径部46と、の間には段差部47が形成されており、この段差部47のうち上側(主弁座23と反対側)を向いた面に対して付勢ばね9の下端部が当接するようになっている。
【0028】
このように、弁本体2に固定されたガイド部材3の段差部37の下面と、主弁体4の段差部47の上面と、の間に付勢ばね9が配置され、主弁体4は、付勢ばね9によって弁閉方向に付勢される。即ち、付勢ばね9は、主弁体4のうちフランジ部45に弁閉方向の力を付与する。付勢ばね9は、常に自然状態から圧縮された状態で段差部37の下面と段差部47の上面との間に配置される。
【0029】
副弁体5は、ニードル弁であって、後述するロータ軸61の下端部に設けられており、ロータ軸61側に連なる弁軸51と、弁軸51の下端に連なるニードル部52と、を一体に有している。副弁体5は、弁軸51に固着されたガイド用ボス部53をさらに有している。ガイド用ボス部53は弁軸51と別体として固着されているが、ガイド用ボス部53は弁軸51と一体に形成されたものであってもよい。ガイド用ボス部53は、押え部材73によって形成されるニードルガイド孔内に摺動可能に挿通されている。
【0030】
駆動部6は、弁本体2の上端に固定されたケース24の内外に設けられたものであって、ステッピングモータ6Aと、ステッピングモータ6Aの回転により副弁体5を進退させるねじ送り機構6Bと、ステッピングモータ6Aの回転を規制するストッパ機構6Cと、を有する。ケース24は、弁本体2に対して例えば溶接等によって気密に固定されている。
【0031】
ステッピングモータ6Aは、ロータ軸61と、ケース24の内部に回転可能に配設されたマグネットロータ62と、ケース24の外周においてマグネットロータ62に対して対向配置されたステータコイル63と、その他、図示しないヨークや外装部材等により構成されている。ロータ軸61はブッシュを介してマグネットロータ62の中心に取り付けられ、このロータ軸61におけるガイド部材3側の外周には雄ねじ部61aが形成されている。この雄ねじ部61aはガイド部材3の雌ねじ部34aに螺合されており、これにより、ガイド部材3はロータ軸61をZ方向に沿った軸線上に支持している。そして、ガイド部材3の雌ねじ部34aとロータ軸61の雄ねじ部61aとが、ねじ送り機構6Bを構成している。
【0032】
第1消音部材7は、弁軸51及びニードル部52が通過可能なように全体として円環状に形成され、連通路411Aから副弁ポート42aまでの流路に配置される。第1消音部材7は、線状部材がランダムに屈曲されることで三次元的なメッシュ状に形成されたフィルタである。第1消音部材7は、例えばデミスターであればよい。このようにメッシュ状に形成された第1消音部材7は、流路を細分化するように機能し、流体(冷媒)は、細分化されつつ第1消音部材7を通過する。即ち、気液混合状態の流体が第1消音部材7を通過すると、気泡が細分化される。このとき、第1消音部材7は、線状部材がランダムに屈曲されていることから、流体が通過可能な通過部として様々な大きさの通過可能面積のものを有する。また、流体が第1消音部材7内を所定の通過方向に沿って通過する際、通過方向位置によって通過可能面積が変化する。これにより、様々な大きさの気泡が細分化されるようになっている。
【0033】
第1消音部材7は、一対の固定部材71A,71Bと押え部材73とによって主弁体4の筒部411内に固定される。第1消音部材7は、一対の固定部材71A,71BによってZ方向から挟み込まれ、且つ、固定部材71Aの上側に押え部材73が配置される。第1消音部材7と固定部材71A,71Bと押え部材73とが、内側筒状部42とリテーナ44とによってZ方向から挟み込まれるとともに、固定部材71A,71Bの外周縁が筒部411の内周面に接触し、第1消音部材7と固定部材71A,71Bと押え部材73とが固定される。このとき、第1消音部材7は、環状空間421とZ方向に並ぶように上側に配置される。一対の固定部材71A,71Bには、それぞれ、Z方向に延びる複数の貫通孔が形成されている。これにより、環状空間421と、第1消音部材7が配置された空間と、が連通され、第1消音部材7が配置された空間と、副弁室4Rと、が連通される。即ち、環状空間421から副弁室4Rに流体が流れ込む際には、必ず第1消音部材7を通過するようになっている。押え部材73は、全体が筒状に形成されることにより、上記のように第1消音部材7を押えるための押え部として機能するとともに、上端部において内径が小さくなった(縮径された)係合部731を有し、係合部731において、副弁体5のガイド用ボス部53と係合可能になっている。また、押え部材73は、例えばPPS樹脂等の摺動部材によって構成されている。これにより、例えば金属製(ステンレス製)のガイド用ボス部53が、押え部材73の内周面に対して摺動した際や、係合部731と係合した際に、摺動抵抗を抑制することができるようになっている。
【0034】
尚、本実施形態では、固定部材71A及び固定部材71Bを用いて第1消音部材7を主弁体4の筒部411内に固定しているが、いずれか一方のみを用いてもよいし、固定部材71A,71Bを用いずに押え部材73のみで第1消音部材7を固定してもよい。
【0035】
第2消音部材8は、副弁ポート42aから主弁ポート23aまでの流路に配置されたものであって、即ち、第1ポート21を一次側とした場合に第1消音部材7よりも下流側に配置されている。第2消音部材8は、第1消音部材7と同様に、線状部材がランダムに屈曲されることで三次元的なメッシュ状に形成されたフィルタであり、例えばデミスターであればよい。第1消音部材7の方が、第2消音部材8よりも高い密度を有していることが好ましいが、これに限定されず、両者の密度が同等であってもよいし、第2消音部材8の方が第1消音部材7よりも高い密度を有していてもよい。ここで、密度とは、体積当たりの質量であり、密度が高いほど気泡を細分化する性能が高くなる。
【0036】
第2消音部材8は、円筒状の主弁部43の内側に嵌合する(隙間なく埋められる)ように配置されていることで、Z方向において副弁ポート42aに対向している。これにより、副弁ポート42aを通過した流体が主弁ポート23aに流れ込む際には、必ず第2消音部材8を通過するようになっている。第2消音部材8は、例えばリング状の部材を介し、主弁部43の下端部によって加締められて固定されればよい。
【0037】
ここで、電動弁1における主弁体4及び副弁体5の開閉動作の詳細について説明する。ステッピングモータ6Aの駆動によってマグネットロータ62及びロータ軸61が回転すると、ロータ軸61の雄ねじ部61aとガイド部材3の雌ねじ部34aとのねじ送り機構6Bにより、ロータ軸61がZ方向に沿って移動する。これにより、副弁体5がZ方向に進退移動して副弁ポート42aに対して接近又は離隔し、副弁ポート42aの弁開度が制御される(小流量制御)。また、副弁体5のガイド用ボス部53が押え部材73の係合部731に係合し、主弁体4は副弁体5と共に移動して、主弁座23に対して接近又は離隔する(大流量制御)。これにより、第1継手管11から第2継手管12に向かって流れる冷媒の流量が制御される。なお、本実施形態では、副弁体5がZ方向に進退移動して副弁ポート42aを有する副弁座部に最も接近した状態においても、副弁体5が副弁座部には当接(着座)せず、副弁体5と副弁座部との間に間隙が形成されて副弁ポート42aを流体が通過可能となっているが、副弁体5が副弁座部に着座する構成であってもよい。
【0038】
ガイド部材3のストッパ部34の外周面には、雄ねじ状のガイド溝34bが形成され、このガイド溝34bには、スライダ64が設けられている。スライダ64は、マグネットロータ62に当接し、マグネットロータ62の回転に伴ってガイド溝34bに沿って回転かつ上下動する。そして、スライダ64は、ガイド溝34bの上端または下端に当接することで、マグネットロータ62の回転を規制するストッパ機構6Cを構成している。このストッパ機構6Cにより、ロータ軸61およびマグネットロータ62の最下端位置および最上端位置が規制される。
【0039】
次に、主弁体4と付勢ばね9との関係および主弁室2Rから副弁室4Rに流体が流れ込む際の挙動について、図2,3を参照しつつ説明する。まず、付勢ばね9は、筒部411の外周面411Bに沿うとともに、連通路411Aを覆う位置に配置される。即ち、付勢ばね9は、筒部411の外側に配置されている。ここで、「付勢ばね9が連通路411Aを覆う」とは、付勢ばね9を筒状であると仮定した際に、連通路411Aが隠されるような位置関係を意味する。連通路411Aは、段差部47よりも上側に位置している。また、付勢ばね9の軸線方向はZ方向に沿っており、筒部411と同軸に配置されている。
【0040】
付勢ばね9は、1本の線材が螺旋状に屈曲されたものであり、複数のコイル91によって構成されている。1つのコイル91とは、巻線の一周分を指す。付勢ばね9において、Z方向に並んだコイル91同士が、所定の間隔を開けて並んでおり、この隙間をコイル間隙Cと呼ぶ。コイル間隙Cとは、隣り合う2つのコイル91において、上側のコイル91の下端部と、下側のコイル91の上端部と、の間隔を意味する。
【0041】
本実施形態では、連通路411Aは断面円状となっている。主弁体4が主弁座23に着座した際の付勢ばね9のコイル間隙Cは、連通路411Aの内径(直径)Dよりも小さい。主弁体4が主弁座23から離座すると付勢ばね9が圧縮されてコイル間隙Cは小さくなることから、主弁体4の位置に関わらず、コイル間隙Cは常に内径Dよりも小さくなる。尚、連通路411Aは、断面円状のものに限定されない。連通路411Aの断面形状が円以外の場合、主弁体4が主弁座23に着座した際の付勢ばね9のコイル間隙は、連通路411Aの有効直径よりも小さければよい。連通路411Aの有効直径とは、連通路411Aの断面と面積が等しい円の直径である。例えば連通路411Aの断面が正方形状である場合、この正方形と等しい面積を有する円の直径が、有効直径となる。また、筒部411の外周面411Bと付勢ばね9の内周面との間隙は、連通路411Aの内径D(即ち有効直径)以下となっている。
【0042】
筒部411の外周面411Bに沿うとともに連通路411Aを覆う位置に付勢ばね9が設けられていることから、流体が連通路411Aを通過して主弁室2Rから副弁室4Rに向かう際、この流体は隣り合うコイル91同士の間を通過することになる。このように流体がコイル91同士の間を通過する際、流路断面積が小さくなることから、流速は一時的に上昇する。流体がコイル91同士の間を通過した後、再び流路断面積が大きくなることから流速は低下する。このように、流路断面積が一旦小さくなった流路を流体が通過することにより、圧力損失が生じる。従って、流体の流速は、コイル91同士の間を通過した後において通過前よりも低くなる。コイル間隙Cが小さいほどこのような圧力損失が大きくなり、最終的な流速が低下しやすい。さらに、コイル91と連通路411Aとが重なっている(XY平面に沿う方向から見た際にコイル91によって連通路411Aが隠される)ほど、圧力損失が大きくなる。
【0043】
上記のように、付勢ばね9が設けられていることで、流体は減速されて副弁室4Rに流入する。流体が副弁ポート42aと副弁体5との間を通過する際、流体が副弁体5に作用することで、副弁体5は振動する。このときの振動の励起力は、流体の流速に応じたものとなる。従って、流体が減速されることで、副弁体5の振動が抑制されるとともに、流体の通過音が低下する。
【0044】
小流量制御時における電動弁1では、以下に説明するように消音部材7,8が作用する。まず、第1ポート21から主弁室2Rに流体が流れ込む。この流体は、気泡を含んで気液混合状態となる場合があり、以下では、気泡を含んでいるものとして説明する。主弁室2Rに流れ込んだ流体は、付勢ばね9のコイル91同士の間および連通路411Aを介して、副弁室4R内に流体が流れ込む。このとき、連通路411Aを通過した流体は、環状空間421内で循環した後に固定部材71Bの貫通孔と、第1消音部材7と、固定部材71Aの貫通孔と、を通過して副弁室4R内に到達する。流体が連通路411Aを通過して環状空間421に向かう際、流れの方向は、XY平面に沿った方向となる。一方で、流体が環状空間421から第1消音部材7に向かう際、流れの方向はZ方向に沿ったものとなる。即ち、流れの方向が略直角に曲げられることとなり、付勢ばね9のコイル91同士の間を通過した流体の流速がさらに低下するようになっている。
【0045】
上記のように流体が第1消音部材7を通過することで、気泡が細分化される。そして、この流体は副弁ポート42aを通過して流れが絞られた後、第2消音部材8を通過して主弁ポート23aに向かう。このとき、第2消音部材8の方が第1消音部材7より密度が低いことが好ましく、このような構成によれば、流体が第2消音部材8において滞留しにくくなる。
【0046】
以上の本実施形態によれば、連通路411Aを覆う位置に付勢ばね9が配置されていることで、流体が連通路411Aを通過する際、連通路の上流においてコイル91同士の間を流体が通過し、圧力損失を生じさせて流体の速度を低下させ、流体が副弁ポート42aを通過する際の騒音を低減することができる。このとき、付勢ばね9によって主弁体4を弁閉方向に付勢することで、軸線方向における主弁体4の動作を安定化させることができる。即ち、付勢ばね9は、騒音低減および動作の安定化という2つの作用を有するものであり、動作の安定化のために他のばね部材が設けられていないことから、部品点数を削減して低コスト化することができる。
【0047】
また、筒部411の外周面411Bと付勢ばね9の内周面との間隙が連通路411Aの内径D以下であることで、付勢ばね9を連通路411Aに対して充分に近接して配置することができ、連通路411Aに流入する流体又は連通路から流出した流体は、付勢ばね9により流れの向きが変えられるので、流体の速度が低下しやすく、騒音を低減させやすい。
【0048】
また、主弁体4が主弁座23に着座した際の付勢ばね9のコイル間隙Cが連通路411Aの内径Dよりも小さいことで、圧力損失を大きくして流体の速度を低減させやすく、より騒音を低減させやすい。
【0049】
また、筒部411がガイド孔32a内に摺動可能に配置されていることで、付勢ばね9によって付勢される主弁体4が、ガイド孔32aに摺動してガイドされ、主弁体4の傾きを抑制して弁閉性能を向上させることができる。
【0050】
また、付勢ばね9が筒部411の外側に配置されていることで、付勢ばね9が筒部411の内側に配置される構成と比較して、付勢ばね9を大径化することができる。これにより、倒れ等の軸線方向以外の変形が付勢ばね9に生じることを抑制し、弁閉性能を向上させることができる。
【0051】
また、付勢ばね9が、主弁体4のうちフランジ部45に対して弁閉方向の力を付与することで、主弁体4に対して直接的に付勢力を付与することができ、付勢力を伝達しやすくして弁閉性能を向上させることができる。
【0052】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。例えば、前記実施形態では、付勢ばね9が筒部411の外周面411Bに沿うように筒部411の外側に設けられるものとしたが、図4に示す変形例のように、付勢ばね9が筒部411の内周面411Cに沿うように筒部411の内側に設けられる構成としてもよい。
【0053】
図4に示す変形例では、底部412の上面のうち内側筒状部42の外側の領域に円状の凹部414が形成されており、付勢ばね9の下端部が凹部414内に配置されるようになっている。副弁体5におけるガイド用ボス部53の下側には、ばね受け部材100が設けられている。ばね受け部材100は、例えば略中央に貫通孔を有するワッシャであって、全体がフッ素樹脂等の摺動部材によって形成されている。ばね受け部材100は、中央部分が外周縁部分よりも下側に突出しており、この外周縁部分と中央部分との間には段差部101が形成され、段差部101の下面に対して付勢ばね9の上端部が当接する。この変形例においては、付勢ばね9は、自然状態から圧縮された状態で副弁体5と主弁体4との間に設けられ、主弁体4に弁閉方向の力を付与する。また、付勢ばね9は、連通路411Aを内側から覆う位置に設けられている。
【0054】
ばね受け部材100が摺動部材によって形成されていることで、ばね受け部材100と副弁体5との間における摺動抵抗が低減され、ばね受け部材100が副弁体5に対して回転しやすい構成となっている。従って、マグネットロータ62の回転に伴い副弁体5が回転した場合に、この回転力がばね受け部材100に伝達されにくく、付勢ばね9に対して捩じる力が加わりにくい。尚、ばね受け部材のうち少なくとも上面(副弁体5に対する摺動面)が摺動部材によって形成されていても、同様の効果が期待できる。また、付勢ばねと副弁体との間に摩擦力が生じにくい場合には、別体のばね受け部材が設けられずに、付勢ばねが副弁体に直接接触する構成としてもよい。
【0055】
図4に示す変形例では、主弁体4及びガイド部材3の外周面が前記実施形態同様に付勢ばね9を保持可能な形状を有しているが、このような形状は採用されなくてもよい。また、図4に示す変形例では副弁室4Rに消音部材が設けられていないが、例えば付勢ばね9の内側に消音部材を設けてもよい。また、筒部411の内周面411Cと付勢ばね9の外周面との間隙は、連通路411Aの内径D以下であるものとする。
【0056】
前記実施形態においては連通路411Aの上流側において付勢ばね9によって流速が低下するのに対し、図4に示す変形例においては連通路411Aの下流側において付勢ばね9によって流速が低下する。これにより、この変形例においても流体が副弁ポート42aを通過する際の騒音を低減することができる。
【0057】
また、前記実施形態では、筒部411の外周面411Bと付勢ばね9の内周面との間隙が連通路411Aの内径D以下であり、主弁体4が主弁座23に着座した際の付勢ばね9のコイル間隙Cが連通路411Aの内径Dよりも小さいものとしたが、これらの寸法の関係は上記に限定されない。例えば、付勢ばねと筒部とを近接して配置しにくい場合や、連通路の有効直径が小さい場合には、筒部の外周面又は内周面と付勢ばねとの間隙が、連通路の有効直径よりも大きくてもよい。また、例えば連通路の有効直径が小さい場合には、コイル間隙が連通路の有効直径以上であってもよい。
【0058】
また、前記実施形態では、筒部411がガイド孔32a内に摺動可能に配置されているものとしたが、主弁体のうち筒部以外の部分がガイドされる構成としてもよいし、主弁体の動作が安定している場合には、主弁体がガイドされない構成としてもよい。
【0059】
また、前記実施形態では、付勢ばね9は、筒部411の外側に配置され、主弁体4のうちフランジ部45に対して弁閉方向の力を付与するものとしたが、主弁体のうち付勢ばねの力が加わる部分の構造はこれに限定されない。例えば、付勢ばねが筒部の外側に配置される構造においても、図4の変形例のように主弁体の上面に凹部が形成され、この凹部内に付勢ばねの端部が配置されてもよい。このような構成によれば、付勢ばねが外れてしまうことを抑制することができる。
【0060】
また、前記実施形態では、消音部材7,8が設けられているものとしたが、いずれか一方の消音部材のみが設けられていてもよいし、消音部材が設けられない構成としてもよい。
【0061】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
1…電動弁、2…弁本体、23…主弁座、23a…主弁ポート、2R…主弁室、4…主弁体、3…ガイド部材、32a…ガイド孔、411…筒部、411A…連通路、411B…外周面、411C…内周面、42…内側筒状部(副弁座)、42a…副弁ポート、4R…副弁室、45…フランジ部、5…副弁体、9…付勢ばね
図1
図2
図3
図4