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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】全固体電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/058 20100101AFI20240814BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240814BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240814BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20240814BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240814BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20240814BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M10/0562
H01M10/052
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/131
H01M4/36 C
H01M4/36 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022043564
(22)【出願日】2022-03-18
(65)【公開番号】P2023137378
(43)【公開日】2023-09-29
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 浩
(72)【発明者】
【氏名】伊東 裕介
(72)【発明者】
【氏名】矢部 裕城
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 出
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-081790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/058
H01M 10/0562
H01M 10/052
H01M 4/525
H01M 4/505
H01M 4/131
H01M 4/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電要素と、
拘束部材と、
を含み、
前記拘束部材は、前記発電要素に、0.5MPa以下の圧力を加えており、
前記発電要素は、正極層と固体電解質層と負極層を含み、
前記固体電解質層は、前記正極層と前記負極層との間に介在しており、
前記正極層は、複合粒子を含み、
前記複合粒子は、正極活物質粒子と、被覆層とを含み、
前記被覆層は、前記正極活物質粒子の表面の少なくとも一部を被覆しており、
前記被覆層は、硫化物固体電解質を含
前記正極活物質粒子は、下記式(I):
Li a Ni x Me 1-x 2 (I)
により表される化学組成を有し、
上記式(I)中、
Meは、Co、Mn、およびAlからなる群より選択される少なくとも1種を含み、
xは、0.5≦x≦1の関係を満たし、
aは、0<a<1の関係を満たし、
90%のSOCの時、上記式(I)中のaが0.30以上となるように構成されている、
全固体電池。
【請求項2】
前記正極活物質粒子の前記表面のうち、50~95%が前記被覆層により被覆されている、
請求項1に記載の全固体電池。
【請求項3】
前記発電要素は、正極集電体をさらに含み、
前記正極集電体は、前記正極層に接着されており、
前記正極集電体と前記正極層との間の剥離強度は、0.05N/cm以上である、
請求項1または請求項2に記載の全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全固体電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2014-154407号公報(特許文献1)は、活物質と硫化物固体電解質とを含む複合粒子を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-154407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
全固体電池(以下「電池」と略記され得る。)においては、固体同士の接触界面、すなわち活物質と硫化物固体電解質(Sulfide Solid Electrolyte,SSE)との接触界面を維持することが求められる。活物質とSSEとの間で接触不良(ミクロレベルの界面剥離等)が発生すると、界面抵抗が増大し、電池性能が低下し得る。
【0005】
電池は発電要素を含む。発電要素は活物質とSSEとを含む。接触界面を維持するため、例えば、拘束部材の使用が考えられる。拘束部材が発電要素に圧力を加えることにより、活物質とSSEとが密着し得る。これにより接触不良の発生頻度が低減することが期待される。拘束部材が発電要素に加える圧力は、「拘束圧」とも記される。
【0006】
ただし電池内の各部材は、拘束圧に耐え得る強度を有することが求められる。高強度の部材は、大きい体積を有する傾向がある。また、拘束圧が高くなる程、拘束部材の体積も増大し得る。すなわち拘束圧が高くなる程、電池のエネルギー密度が低下する可能性がある。
【0007】
本開示の目的は、低い拘束圧の下で駆動し得る全固体電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本開示の技術的構成および作用効果が説明される。ただし本明細書の作用メカニズムは推定を含む。作用メカニズムは本開示の技術的範囲を限定しない。
【0009】
1.全固体電池は、発電要素と拘束部材とを含む。拘束部材は、発電要素に、0.5MPa以下の圧力を加えている。発電要素は、正極層と固体電解質層と負極層を含む。固体電解質層は、正極層と負極層との間に介在している。正極層は、複合粒子を含む。複合粒子は、正極活物質粒子と、被覆層とを含む。被覆層は、正極活物質粒子の表面の少なくとも一部を被覆している。被覆層は、硫化物固体電解質を含む。
【0010】
従来、20MPa程度の拘束圧が発電要素に加えられている。本開示においては、拘束圧が0.5MPa以下に低減される。本開示の新知見によると、0.5MPa以下の拘束圧の下では、正極活物質粒子とSSEとの間で接触不良が発生しやすくなる。正極活物質粒子は、充電時に収縮し得る。低い拘束圧の下では、SSEが正極活物質粒子の収縮挙動に追随できず、接触不良が発生し得ると考えられる。
【0011】
本開示においては、正極活物質粒子がSSEで被覆される。正極活物質粒子がSSEで被覆されていることにより、0.5MPa以下の拘束圧の下でも、SSEが正極活物質粒子の収縮挙動に追随することが期待される。
【0012】
2.上記「1.」に記載の全固体電池において、正極活物質粒子は、例えば下記式(I)により表される化学組成を有していてもよい。
LiaNixMe1-x2 (I)
上記式(I)中、Meは、Co、Mn、およびAlからなる群より選択される少なくとも1種を含む。xは、0<x≦1の関係を満たす。aは、0<a<1の関係を満たす。
【0013】
上記式(I)の化学組成を有する正極活物質粒子は、充電時に収縮しやすい傾向がある。
【0014】
3.上記「2.」に記載の全固体電池において、上記式(I)中のxが、例えば0.5≦x≦1の関係を満たしていてもよい。
【0015】
上記式(I)において、x(Ni組成比)が0.5以上である材料は、「ハイニッケル材料」とも記される。ハイニッケル材料は、充電時の収縮量が大きい傾向がある。
【0016】
4.上記「2.」または「3.」に記載の全固体電池は、例えば90%のSOCの時、上記式(I)中のaが0.30以上となるように構成されていてもよい。
【0017】
充電時、LiaNixMe1-x2からLiが離脱する。すなわち、充電深度が深くなる程、aは小さくなる。aが0.30未満になると、LiaNixMe1-x2の収縮量が急激に大きくなり得る。電池のSOCが90%の時、aが0.30以上であることにより、正極活物質粒子の収縮挙動が緩やかな範囲で、電池の運用が可能となる。
【0018】
5.上記「1.」~「4.」のいずれか1つに記載の全固体電池において、正極活物質粒子の表面のうち、例えば50~95%が被覆層により被覆されていてもよい。
【0019】
正極活物質粒子の表面のうち、被覆層により被覆されている領域の比率は、「被覆率」とも記される。正極活物質粒子の体積変化により、被覆層内で応力が発生し得る。被覆率が50%以上であることにより、被覆層内で応力が分散し、クラック等の発生が低減することが期待される。被覆層は、主にイオン伝導パスを形成し得る。その半面、被覆層は、電子伝導パスの形成を阻害し得る。被覆率が95%以下である時、イオン伝導パスと電子伝導パスとのバランスが良い傾向がある。
【0020】
6.上記「1.」~「5.」のいずれか1つに記載の全固体電池において、発電要素は、正極集電体をさらに含んでいてもよい。正極集電体は、正極層に接着されている。正極集電体と正極層との間の剥離強度は、0.05N/cm以上であってもよい。
【0021】
0.5MPa以下の拘束圧の下では、正極層と正極集電体との接触抵抗が増大し得る。正極層と正極集電体との接触抵抗が増大することにより、電池性能が低下する可能性もある。正極集電体と正極層との間の剥離強度が、0.05N/cm以上であることにより、接触抵抗の増大が軽減されることが期待される。
【0022】
以下、本開示の実施形態(以下「本実施形態」と略記され得る。)、および本開示の実施例(以下「本実施例」と略記され得る。)が説明される。ただし、本実施形態および本実施例は、本開示の技術的範囲を限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本実施形態における全固体電池を示す概略断面図である。
図2図2は、本実施形態における複合粒子を示すが概念図である。
図3図3は、正極活物質粒子の収縮挙動を示すグラフである。
図4図4は、接触抵抗と剥離強度との関係を示すグラフである。
図5図5は、サイクル試験時の拘束圧およびSSE被覆の影響を表すグラフである。
図6図6は、サイクル試験時の上限SOCおよびSSE被覆の影響を表すグラフである。
図7図7は、サイクル試験時の上限SOCおよび正極活物質粒子のNi組成比の影響を表すグラフである。
図8図8は、サイクル試験時の上限SOC、正極活物質粒子のNi組成比、およびSSE被覆の影響を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<用語の定義等>
「備える」、「含む」、「有する」、および、これらの変形(例えば「から構成される」等)の記載は、オープンエンド形式である。オープンエンド形式は必須要素に加えて、追加要素をさらに含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。「からなる」との記載はクローズド形式である。ただしクローズド形式であっても、通常において付随する不純物であったり、本開示技術に無関係であったりする付加的な要素は排除されない。「実質的に…からなる」との記載はセミクローズド形式である。セミクローズド形式においては、本開示技術の基本的かつ新規な特性に実質的に影響しない要素の付加が許容される。
【0025】
「してもよい」、「し得る」等の表現は、義務的な意味「しなければならないという意味」ではなく、許容的な意味「する可能性を有するという意味」で使用されている。
【0026】
単数形で表現される要素は、特に断りの無い限り、複数形も含む。例えば「粒子」は「1つの粒子」のみならず、「粒子の集合体(粉体、粉末、粒子群)」も意味し得る。
【0027】
例えば「m~n%」等の数値範囲は、特に断りのない限り、上限値および下限値を含む。すなわち「m~n%」は、「m%以上n%以下」の数値範囲を示す。また「m%以上n%以下」は「m%超n%未満」を含む。さらに数値範囲内から任意に選択された数値が、新たな上限値または下限値とされてもよい。例えば、数値範囲内の数値と、本明細書中の別の部分、表中、図中等に記載された数値とが任意に組み合わされることにより、新たな数値範囲が設定されてもよい。
【0028】
全ての数値は用語「約」によって修飾されている。用語「約」は、例えば±5%、±3%、±1%等を意味し得る。全ての数値は、本開示技術の利用形態によって変化し得る近似値であり得る。全ての数値は有効数字で表示され得る。測定値は、複数回の測定における平均値であり得る。測定回数は、3回以上であってもよいし、5回以上であってもよいし、10回以上であってもよい。一般に測定回数が多い程、平均値の信頼性が向上することが期待される。測定値は有効数字の桁数に基づいて、四捨五入により端数処理され得る。測定値は、例えば測定装置の検出限界等に伴う誤差等を含み得る。
【0029】
化合物が化学量論的組成式(例えば「LiCoO2」等)によって表現されている場合、該化学量論的組成式は該化合物の代表例に過ぎない。化合物は、非化学量論的組成を有していてもよい。例えば、コバルト酸リチウムが「LiCoO2」と表現されている時、特に断りのない限り、コバルト酸リチウムは「Li/Co/O=1/1/2」の組成比に限定されず、任意の組成比でLi、CoおよびOを含み得る。さらに、微量元素によるドープ、置換等も許容され得る。
【0030】
正極活物質に関して下記略号が使用される場合がある。
「LCO」は「LiCoO2」を示す。
「NCA」は「LiNi0.8Co0.15Al0.052」を示す。
「NCM-111」は「LiNi1/3Co1/3Mn1/32」を示す。
「NCM-523」は「LiNi0.5Co0.2Mn0.32」を示す。
「NCM-622」は「LiNi0.6Co0.2Mn0.22」を示す。
「NCM-721」は「LiNi0.7Co0.2Mn0.12」を示す。
「NCM-811」は「LiNi0.8Co0.1Mn0.12」を示す。
【0031】
幾何学的な用語(例えば「平行」、「垂直」、「直交」等)は、厳密な意味に解されるべきではない。例えば「平行」は、厳密な意味での「平行」から多少ずれていてもよい。本明細書における幾何学的な用語は、例えば、設計上、作業上、製造上等の公差、誤差等を含み得る。各図中の寸法関係は、実際の寸法関係と一致しない場合がある。本開示技術の理解を助けるために、各図中の寸法関係(長さ、幅、厚さ等)が変更されている場合がある。さらに一部の構成が省略されている場合もある。
【0032】
「D50」は、体積基準の粒度分布において、粒子径が小さい方からの頻度の累積が50%に達する粒子径と定義される。D50は、レーザ回折式粒度分布測定装置により測定され得る。
【0033】
「SOC(state of charge)」は、電池の満充電容量に対する、その時点の充電容量の百分率を示す。
【0034】
電流の時間率が記号「C」によって表される場合がある。1Cの電流は、満充電容量を1時間で流し切る。充放電条件に関して「CC(constant current)」は定電流方式を示し、「CV(constant voltage)」は定電圧方式を示し、「CCCV(constant current - constant voltage)」は定電流定電圧方式を示す。CCCVに関して「CC電流」は、CC充電時(またはCC放電時)の電流を示し、「CV電圧」はCV充電時(またはCV放電時)の電圧を示す。CV充電またはCV放電は、電流が「終止電流」まで減衰した時点で終了する。CC充電またはCC放電は、電圧が「終止電圧」に到達した時点で終了する。
【0035】
「拘束圧」は、下記式(II)により求まる。
σ=E/ε (II)
σは、拘束圧を示す。
εは、拘束部材が取り付けられる前後の電池の厚さの変化量(変形量)を示す。
Eは、電池のヤング率を示す。
【0036】
「被覆率」は、次の手順で測定される。複合粒子の断面SEM(Scanning Electron Microscope)画像が20枚準備される。例えば、正極層の断面SEM画像において、複合粒子の断面SEM画像が20枚取得されてもよい。断面SEM画像において、正極活物質粒子の輪郭線の長さ(L0)が測定される。正極活物質粒子の輪郭線のうち、SSEによって被覆されている部分の長さ(L1)が測定される。L1がL0で除された値の百分率が被覆率である。20個の複合粒子について、それぞれ、被覆率が測定される。20個の被覆率の算術平均が「被覆率」とみなされる。
【0037】
「剥離強度」は、次の手順で測定される。発電要素から試験片が切り出される。試験片は、正極集電体と正極層とを含む。「JIS Z 0237:粘着テープ・粘着シート試験方法」に記載される「テープ背面を試験板とした引きはがし粘着力試験方法」により、正極集電体が正極層から引きはがされる。引きはがし角度は90°である。これにより粘着力が測定される。粘着力(N)が試験片の幅(cm)で除されることにより、剥離強度(N/cm)が求まる。
【0038】
<全固体電池>
本開示において、「全固体電池」とは、固体電解質層(少なくとも固体電解質を含有する層)を備える電池をいう。図1は、本実施形態における全固体電池を示す概略断面図である。電池100は、発電要素50と、拘束部材70とを含む。電池100は、外装体90をさらに含んでいてもよい。外装体90は、発電要素50を収納している。外装体90は、例えば、金属製のケース等であってもよいし、金属箔ラミネートフィルム製のパウチ等であってもよい。
【0039】
電池100は、1個の発電要素50を単独で含んでいてもよい。電池100は、複数個の発電要素50を含んでいてもよい。複数個の発電要素50は、例えば、直列回路を形成していてもよいし、並列回路を形成していてもよい。複数個の発電要素50は、一方向に積層されていてもよい。発電要素50は、正極層10と固体電解質層30と負極層20とを含む。
【0040】
《正極層》
正極層10は、例えば10~200μmの厚さを有していてもよい。図2は、本実施形態における複合粒子を示すが概念図である。正極層10は、複合粒子5を含む。複合粒子5は、正極活物質粒子1と、被覆層2とを含む。複合粒子5は、正極活物質粒子1と、SSEとの粒子複合化処理により形成され得る。例えば、メカノフュージョン法により複合粒子5が形成されてもよい。
【0041】
正極活物質粒子1は、複合粒子5のコアである。正極活物質粒子1は、例えば、1~30μmのD50を有していてもよいし、1~10μmのD50を有していてもよい。正極活物質粒子1は任意の成分を含み得る。正極活物質粒子1は、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn24、Li(NiCoMn)O2、Li(NiCoAl)O2、およびLiFePO4からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。例えば「Li(NiCoMn)O2」における「(NiCoMn)」は、括弧内の組成比の合計が1であることを示す。合計が1である限り、個々の成分量は任意である。Li(NiCoMn)O2は、例えばLi(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2、Li(Ni0.5Co0.2Mn0.3)O2、Li(Ni0.8Co0.1Mn0.1)O2等を含んでいてもよい。
【0042】
正極活物質粒子1は、例えば、一般式「LiaNixMe1-x2(0<a<1、0<x≦1、Me=Co、Mn、Al)」により表されてもよい。該化合物は、充電時に収縮しやすい傾向がある。
【0043】
Meは、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、およびアルミニウム(Al)からなる群より選択される少なくとも1種を含む。Meは、例えば、CoおよびAlからなっていてもよい。すなわちMeは、Mnを含んでいなくてもよい。
【0044】
xは、例えば0.2≦x≦1の関係を満たしていてもよいし、0.3≦x≦1の関係を満たしていてもよいし、0.4≦x≦1の関係を満たしていてもよいし、0.5≦x≦1の関係を満たしていてもよいし、0.6≦x≦1の関係を満たしていてもよいし、0.7≦x≦1の関係を満たしていてもよいし、0.8≦x≦1の関係を満たしていてもよいし、0.9≦x≦1の関係を満たしていてもよい。ハイニッケル材料(0.5≦x)は、充電時の収縮量が大きい傾向がある。
【0045】
図3は、正極活物質粒子の収縮挙動を示すグラフである。グラフの横軸は、LiaNixMe1-x2のa(Li組成比)を示す。グラフの縦軸は、結晶格子定数から求まる体積変化率(ΔV/V0)を示す。体積変化率の符号が負(-)である時、正極活物質粒子1は収縮挙動を示す。体積変化率の符号が正(+)である時、正極活物質粒子1は膨張挙動を示す。
【0046】
充電深度が深くなる程、aは小さくなる。aが0.30未満の領域において、LiaNixMe1-x2の収縮挙動が顕著であることがわかる。またNCM-111(x=1/3)に比して、NCM-523等(0.5≦x)は、収縮挙動が顕著であることがわかる。下記表1に、aと体積変化率との関係の一例が示される。
【0047】
【表1】
【0048】
例えば、電池100のSOCが90%の時、aが0.30以上であるように、電池100が設計されていてもよい。これにより、正極活物質粒子1の収縮挙動が緩やかな範囲(ΔV/V0≦2.7%)で、電池100の運用が可能になり得る。正極活物質粒子1の収縮が緩やかな範囲で、電池100の運用されることにより、抵抗増加率の低減が期待される。例えば、電池100のSOCが100%の時、aが0.22以上であるように、電池100が設計されていてもよい。例えば、電池100のSOCが80%の時、aが0.37以上であるように、電池100が設計されていてもよい。例えば、電池100のSOCが10~90%の範囲において、体積変化率の絶対値(|ΔV/V0|)が1~2.7%になるように、電池100が設計されていてもよい。
【0049】
なお、正極活物質粒子1に表面処理が施されていてもよい。例えば、正極活物質粒子1の表面がバッファ層により被覆されていてもよい。バッファ層は、例えば、5~50nmの厚さを有していてもよい。バッファ層は、例えば、LiNbO3等を含んでいてもよい。
【0050】
(被覆層)
被覆層2は、複合粒子5のシェルである。被覆層2は、例えば、0.5~5μmの厚さを有していてもよいし、1~3μmの厚さを有していてもよい。被覆層2は、正極活物質粒子1の表面の少なくとも一部を被覆している。被覆率は、例えば、30~100%であってもよい。被覆率は、例えば、50~95%であってもよい。被覆率が50%以上であることにより、被覆層2内で応力が分散し、クラック等の発生が低減することが期待される。被覆率が95%以下である時、イオン伝導パスと電子伝導パスとのバランスが良い傾向がある。
【0051】
被覆層2は、SSEを含む。SSEは粒子状であってもよい。SSEは、例えば、0.5~5μmのD50を有していてもよいし、1~3μmのD50を有していてもよい。SSEは、Liイオン伝導体である。SSEは、リチウム(Li)と硫黄(S)とを含む。SSEは、例えば、リン(P)、酸素(O)、珪素(Si)等をさらに含んでいてもよい。SSEは、例えばハロゲン等をさらに含んでいてもよい。SSEは、例えばヨウ素(I)、臭素(Br)等をさらに含んでいてもよい。SSEは、例えばガラスセラミックス型であってもよいし、アルジロダイト型であってもよい。
【0052】
SSEは、例えば、LiI-LiBr-Li3PS4、Li2S-SiS2、LiI-Li2S-SiS2、LiI-Li2S-P25、LiI-Li2O-Li2S-P25、LiI-Li2S-P25、LiI-Li3PO4-P25、Li2S-P25、およびLi3PS4からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。例えば、「LiI-LiBr-Li3PS4」は、LiIとLiBrとLi3PS4とが任意のモル比で混合されることにより生成されたSSEを示す。例えば、メカノケミカル法によりSSEが生成されてもよい。「Li2S-P25」はLi3PS4を含む。Li3PS4は、Li2SとP25とが「Li2S/P25=75/25(モル比)」で混合されることにより生成され得る。
【0053】
(その他の成分)
正極層10は、複合粒子5に含まれるSSEに加えて、別途、SSE(「追加SSE」とも記される)をさらに含んでいてもよい。追加SSEは、正極層10内にイオン伝導パスを形成し得る。追加SSEの配合量は、100体積部の複合粒子5に対して、例えば1~200体積部であってもよい。追加SSEは、複合粒子に含まれるSSEと同種であってもよいし、異種であってもよい。
【0054】
正極層10は、例えば導電材をさらに含んでいてもよい。導電材は、正極層10内に電子伝導パスを形成し得る。導電材の配合量は、100質量部の複合粒子5に対して、例えば0.1~10質量部であってもよい。導電材は、任意の成分を含み得る。導電材は、例えば、カーボンブラック、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ(CNT)およびグラフェンフレークからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0055】
正極層10は、例えばバインダをさらに含んでいてもよい。バインダの配合量は、100質量部の複合粒子5に対して、例えば0.1~10質量部であってもよい。バインダは任意の成分を含み得る。バインダは、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF-HFP)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0056】
《正極集電体》
発電要素50は、正極集電体11をさらに含んでいてもよい。正極集電体11は、正極層10に接着されている。正極集電体11は、例えば、Al箔、Al合金箔等を含んでいてもよい。正極集電体11は、炭素材料で被覆されていてもよい。炭素材料は例えばカーボンブラック等を含んでいてもよい。正極集電体11は、例えば、5~50μmの厚さを有していてもよい。
【0057】
正極集電体11は、例えば、接着剤により正極層10と接着されていてもよい。例えば、ホットメルト系接着剤等が使用されてもよい。ホットメルト系接着剤は、例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体等を含んでいてもよい。正極集電体11は、ホットプレス加工により、正極層10に接着されてもよい。プレス温度は、例えば、130~170℃であってもよい。プレス温度は、例えば、150℃であってもよい。プレス圧は、例えば0.5~5MPaであってもよい。プレス圧は、例えば1MPaであってもよい。
【0058】
図4は、接触抵抗と剥離強度との関係を示すグラフである。0.5MPa以下の拘束圧の下では、正極集電体11と正極層10との間の接触抵抗が増大しやすい傾向がある。正極集電体11と正極層10との間の剥離強度が高いことにより、接触抵抗の増大が軽減されることが期待される。剥離強度は、例えば、0.05N/cm以上であってもよい。剥離強度が0.05N/cm以上であることにより、接触抵抗が安定する傾向がある。剥離強度は、例えば、0.5N/cm以上であってもよい。剥離強度は、例えば、0.05~0.5N/cm以上であってもよい。
【0059】
《負極層》
負極層20は、例えば10~200μmの厚さを有していてもよい。負極層20は、負極活物質粒子とSSEとを含む。負極層20は、例えば導電材、バインダ等をさらに含んでいてもよい。負極層20と正極層10との間で、SSEは同種であってもよいし、異種であってもよい。負極活物質粒子は、任意の成分を含み得る。負極活物質粒子は、例えば、黒鉛、Si、酸化珪素〔SiOx(0<x<2)〕、およびLi4Ti512からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。導電材は任意の成分を含み得る。導電材は例えばVGCF等を含んでいてもよい。バインダは任意の成分を含み得る。バインダは、例えば、SBR等を含んでいてもよい。
【0060】
《負極集電体》
発電要素50は、負極集電体21をさらに含んでいてもよい。負極集電体21は、負極層20に接着されている。負極集電体21は、例えば、銅(Cu)箔、Ni箔等を含んでいてもよい。負極集電体21は、例えば、5~50μmの厚さを有していてもよい。
【0061】
《固体電解質層》
固体電解質層30は、例えば1~30μmの厚さを有していてもよい。固体電解質層30は、正極層10と負極層20との間に介在している。固体電解質層30は、正極層10を負極層20から分離している。固体電解質層30は「セパレータ層」とも記される。固体電解質層30は、SSEを含む。固体電解質層30はバインダをさらに含んでいてもよい。バインダは任意の成分を含み得る。バインダは、例えばPVdF、PVdF-HFP、SBR等を含んでいてもよい。固体電解質層30と正極層10との間で、SSEは同種であってもよいし、異種であってもよい。固体電解質層30と負極層20との間で、SSEは同種であってもよいし、異種であってもよい。
【0062】
《拘束部材》
拘束部材70は、発電要素50に圧力(拘束圧)を加えている。拘束圧は、発電要素50の厚さ方向に加えられている。発電要素50の厚さ方向は、正極層10、固体電解質層30および負極層20の積層方向と平行である。拘束部材70は、外装体90の外部に配置されていてもよい。拘束部材70は、外装体90を介して、発電要素50に圧力を加えていてもよい。
【0063】
拘束圧は、0.5MPa以下である。拘束圧が0.5MPa以下であることにより、電池100の小型化、軽量化、高エネルギー密度化等が期待される。拘束圧は、例えば、0.1MPa以下であってもよい。拘束圧は、ゼロより大きい。拘束圧は、例えば、0.01MPa以上であってもよいし、0.1MPa以上であってもよい。拘束圧は、例えば、0.1~0.5MPaであってもよいし、0.01~0.1MPaであってもよい。
【0064】
拘束部材70は、発電要素50を加圧し得る限り、任意の構造を有し得る。拘束部材70は、例えば、単一の部材から構成されていてもよいし、複数の部材から構成されていてもよい。拘束部材70は、例えば、第1プレート71と、第2プレート72と、ボルト73と、ナット74とを含んでいてもよい。発電要素50および外装体90は、第1プレート71と第2プレート72との間に配置される。第1プレート71および第2プレート72には、貫通穴が設けられている。例えば、平面視において各プレートの四隅に貫通穴が設けられていてもよい。貫通穴にボルト73が挿し通される。ボルト73にナット74が螺合される。ナット74が締め付けられることにより、第1プレート71と第2プレート72とが発電要素50を加圧する。すなわち拘束圧(σ)が発生する。拘束圧の大きさは、例えばナット74の締め付けトルク等により調整され得る。拘束部材70は、例えば、金属製であってもよいし、樹脂製であってもよい。拘束部材70は、例えば、ステンレス鋼(SUS)製であってもよい。
【実施例
【0065】
<試験電池の製造>
《正極の準備》
正極活物質粒子が準備された。転動流動造粒コーティング装置において、正極活物質粒子とLiNbO3とが混合されることにより、正極活物質粒子に表面処理が施された。
【0066】
下記材料が準備された。
SSE:LiI-LiBr-Li2S-P25(ガラスセラミックス型、D50:2.5μm)
導電材:VGCF
バインダ:SBR
分散媒:テトラリン
正極集電体:Al箔(厚さ:15μm)
【0067】
90体積部の正極活物質粒子と、10体積部のSSEとが、乾式粒子複合化装置(製品名「NOB-MINI」、ホソカワミクロン社製)により、混合されることにより、複合粒子が準備された。混合条件は下記のとおりである。
【0068】
混合中の混合物の温度:50℃
ブレードと壁との間のギャップ:1mm
回転数:3000rpm
処理時間:1分
【0069】
4質量部の複合粒子と、0.094質量部の導電材と、1.024質量部のSSEと、0.017質量部のバインダと、2.77質量部の分散媒とが、超音波ホモジナイザー(製品名「UH-50」、SMT社製)により混合されることにより、正極ペーストが準備された。
【0070】
ブレード式アプリケータにより、正極ペーストが正極集電体の表面に塗工された。塗工後、ホットプレート(設定温度:100℃)上において、正極ペーストが30分間乾燥されることにより、正極層が形成された。以上より正極が準備された。
【0071】
《負極の準備》
下記材料が準備された。
負極活物質粒子:Li4Ti512
SSE:LiI-LiBr-Li2S-P25(ガラスセラミックス型、D50:2.5μm)
導電材:VGCF
バインダ:SBR
分散媒:テトラリン
負極集電体:Cu箔(厚さ:22μm)
【0072】
3質量部の負極活物質粒子と、0.033質量部の導電材と、0.039質量部のバインダと、3.71質量部の分散媒とが、超音波ホモジナイザー(製品名「UH-50」、SMT社製)により30分間混合された。30分間混合後、1質量部のSSEが追加された。SSEの追加後、混合物がさらに30分間混合されることにより、負極ペーストが準備された。
【0073】
ブレード式アプリケータにより、負極ペーストが負極集電体の表面に塗工された。塗工後、ホットプレート(設定温度:100℃)上において、負極ペーストが30分間乾燥されることにより、負極層が形成された。負極層の目付量は、正極の充電比容量に対する、負極の充電比容量の比が、1.15となるように調整された。正極の充電比容量は、185mAh/gであった。以上より負極が準備された。
【0074】
《固体電解質層の準備》
下記材料が準備された。
SSE:LiI-LiBr-Li2S-P25(ガラスセラミックス型、D50:2.5μm)
バインダ:SBR溶液(質量濃度:5%、溶媒:ヘプタン)
分散媒:ヘプタン
【0075】
ポリプロピレン製の容器内において、SSEとバインダと分散媒とが、超音波ホモジナイザー(製品名「UH-50」、SMT社製)により30秒間混合された。混合後、容器が振とう機にセットされた。容器が振とう機により3分間振とうされることにより、固体電解質ペーストが準備された。
【0076】
《組立》
正極にプレス加工が施された。プレス加工後、ダイコータにより、正極層の表面に固体電解質ペーストが塗工された。塗工後、ホットプレート(設定温度:100℃)上において、固体電解質ペーストが30分間乾燥されることにより、固体電解質層が形成された。以上より第1ユニットが準備された。ロールプレスにより、第1ユニットにプレス加工が施された。プレス圧は、2tоn/cm2であった。
【0077】
負極にプレス加工が施された。プレス加工後、ダイコータにより、負極層の表面に固体電解質ペーストが塗工された。塗工後、ホットプレート(設定温度:100℃)上において、固体電解質ペーストが30分間乾燥されることにより、固体電解質層が形成された。以上より第2ユニットが準備された。ロールプレスにより、第2ユニットにプレス加工が施された。プレス圧は、2tоn/cm2であった。
【0078】
金属箔の表面に、固体電解質ペーストが塗工された。塗工後、ホットプレート(設定温度:100℃)上において、固体電解質ペーストが30分間乾燥されることにより、固体電解質層が形成された。
【0079】
金属箔に支持された固体電解質層が、第1ユニットの表面(固体電解質層の表面)に転写された。打ち抜き加工により、第1ユニットおよび第2ユニットの平面形状が調整された。第1ユニットの固体電解質層と、第2ユニットの固体電解質層とが対面するように、第1ユニットと第2ユニットとが積層された。これにより発電要素が形成された。発電要素にホットプレス加工が施された。プレス温度は160℃であった。プレス圧は2tоn/cm2であった。
【0080】
外装体(Alラミネートフィルム製のパウチ)が準備された。発電要素が外装体に封入された。拘束部材が準備された。拘束圧が発生するように、外装体の外側に拘束部材が取り付けられた。以上より、試験電池が製造された。
【0081】
上記手順により、No.1~5に係る試験電池が製造された。各試験電池の構成上の差異は、下記表2に示される。
【0082】
【表2】
【0083】
<評価>
下記手順により、No.1~5に係る試験電池が評価された。
【0084】
《初期抵抗》
下記CCCV充電とCCCV放電との一巡が2回繰り返された。
【0085】
CCCV充電:CC電流=0.33C、CV電圧=2.7V、終止電流=0.01C
CCCV放電:CC電流=0.33C、CV電圧=1.5V、終止電流=0.01C
【0086】
下記CCCV充電により、試験電池の充電状態が調整された。
【0087】
CCCV充電:CC電流=0.33C、CV電圧=2.0V、終止電流=0.01C
【0088】
充電状態の調整後、8.0mA/cm2の電流により、試験電池が10秒間放電された。電圧変化量が、放電電流で除されることにより、初期抵抗が求められた。
【0089】
《サイクル試験/抵抗増加率》
下記第1サイクル条件または第2サイクル条件により、充放電サイクル(CC充電とCC放電との一巡)が150回繰り返された。充放電サイクル後、初期抵抗の測定条件と同一条件で、耐久後抵抗が測定された。耐久後抵抗が初期抵抗で除されることにより、抵抗増加率(百分率)が求められた。サイクル試験中、正極活物質粒子とSSEとの間で接触不良が発生すると、抵抗増加率が高くなると考えられる。
【0090】
第1サイクル条件
周囲温度:60℃
CC充電:電流=5C、終止電圧=2.5V(上限SOC=80%)
CC放電:電流=1C、終止電圧=1.5V
【0091】
第2サイクル条件
周囲温度:60℃
CC充電:電流=5C、終止電圧=2.6V(上限SOC=90%)
CC放電:電流=1C、終止電圧=1.5V
【0092】
<結果>
図5は、サイクル試験時の拘束圧およびSSE被覆の影響を表すグラフである。SSE被覆がない場合、低拘束圧(0.5MPa)にすると、抵抗増加率が高い傾向がある。SSE被覆がない場合、高拘束圧(20MPa)にすると、抵抗増加率が僅かに改善している。
【0093】
SSE被覆がある場合、低拘束圧(0.5MPa)にしても、抵抗増加率が低い傾向がある。さらに低拘束圧(0.1MPa)にしても、抵抗増加率の上昇は僅かである。
【0094】
図6は、サイクル試験時の上限SOCおよびSSE被覆の影響を表すグラフである。SSE被覆がない場合、上限SOCが80%から90%に上昇すると、抵抗増加率が6.5%上昇している。
【0095】
SSE被覆がある場合、上限SOCが80%から90%に上昇しても、抵抗増加率の上昇は、2.4%である。
【0096】
図7は、サイクル試験時の上限SOCおよび正極活物質粒子のNi組成比の影響を表すグラフである。Ni組成比が0.5以上である場合(NCA)、上限SOCが80%から90%に上昇すると、抵抗増加率が上昇する傾向がみられる。
【0097】
Ni組成比が0.5未満である場合(NCM-111)、上限SOCが80%から90%に上昇しても、抵抗増加率の上昇は僅かである。
【0098】
図7の結果から、Ni組成比が0.5以上である場合(ハイニッケル材料の場合)、SOCが高くなると、正極活物質粒子の収縮が顕著であるため、接触不良が発生しやすいと考えられる。
【0099】
図8は、サイクル試験時の上限SOC、正極活物質粒子のNi組成比、およびSSE被覆の影響を表すグラフである。NCM-111において、SSE被覆がない場合、上限SOCが80%から90%に上昇しても、抵抗増加率の上昇は僅かである。
【0100】
NCM-111において、SSE被覆がある場合、抵抗増加率が、却って増大している。NCM-111は、NCAに比して、電子伝導性が3桁程度低い傾向がある。電子伝導性が低いNCM-111に対して、SSE被覆が施されることにより、電子伝導性がいっそう低下し、抵抗増加率が高くなっている可能性がある。
【0101】
本実施形態および本実施例は、全ての点で例示である。本実施形態および本実施例は、制限的ではない。本開示の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内における全ての変更を包含する。例えば、本実施形態および本実施例から、任意の構成が抽出され、それらが任意に組み合わされることも当初から予定されている。
【符号の説明】
【0102】
1 正極活物質粒子、2 被覆層、5 複合粒子、10 正極層、11 正極集電体、20 負極層、21 負極集電体、30 固体電解質層、50 発電要素、70 拘束部材、71 第1プレート、72 第2プレート、73 ボルト、74 ナット、90 外装体、100 電池(全固体電池)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8