(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】ノイズ低減具及びワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20240814BHJP
H01F 1/375 20060101ALI20240814BHJP
H01F 1/117 20060101ALI20240814BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
H05K9/00 K
H01F1/375
H01F1/117
H02G3/04
(21)【出願番号】P 2022064953
(22)【出願日】2022-04-11
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 一輝
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 香織
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 仁
【審査官】五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-145073(JP,A)
【文献】特開2015-188023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
H01F 1/375
H01F 1/117
H02G 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回可能なシート状又は帯状の磁性体を備え、
前記磁性体は、巻回形状で内側に配置される一方の平面に対して、前記巻回形状の巻回軸方向に軸線方向を合わせた電線を巻回軸の軸周りに並べて配置し、
前記磁性体におけ
る前記一方の平面に
、前記軸線方向に対する直交方向で互いに間隔を空けて1本ずつ並べた複数本の前記電線を貼り付けて、前記電線同士の前記間隔を保たせる
接着剤を設け、
前記接着剤は、前記一方の平面における前記巻回軸方向の両端部のそれぞれにて、前記巻回軸方向に直交する方向へと延在させることを特徴としたノイズ低減具。
【請求項2】
複数本の電線と、
それぞれの前記電線から出た放射ノイズの外部への放出を低減させるノイズ低減具と、
を備え、
前記ノイズ低減具は、巻回可能なシート状又は帯状の磁性体を備え、
前記磁性体は、巻回形状で内側に配置される一方の平面に対して、前記巻回形状の巻回軸方向に軸線方向を合わせた電線を巻回軸の軸周りに並べて配置し、
前記磁性体におけ
る前記一方の平面に
、前記軸線方向に対する直交方向で互いに間隔を空けて1本ずつ並べた複数本の前記電線を貼り付けて、前記電線同士の前記間隔を保たせる
接着剤を設け、
前記接着剤は、前記一方の平面における前記巻回軸方向の両端部のそれぞれにて、前記巻回軸方向に直交する方向へと延在させることを特徴としたワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノイズ低減具及びワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
ノイズ低減具は、磁性材料から成る部材であり、ノイズ電流の流れる電線に取り付けて、その電線から出た放射ノイズの外部への放出を低減させる磁性体を構成部品として備える。例えば、下記の特許文献1には、ノイズ対策として、一纏めに束ねられた複数本の電線に対してシート状の磁性体を簀巻き状に巻き付け、この磁性体でその複数本の電線の中のノイズ電流の流れる電線から出た放射ノイズの外部への放出を低減させる、というノイズ低減具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のノイズ低減具は、一纏めに束ねた複数本の電線に1枚のシート状の磁性体を巻き付けるので、電線同士の間隔を確保することが難しい。つまり、このノイズ低減具においては、ノイズ電流の流れる或る電線と当該電線から出た放射ノイズの影響を受ける可能性のある他の電線との間で互いの距離を保つことが難しい。
【0005】
そこで、本発明は、電線間の距離を保ち得るノイズ低減具及びワイヤハーネスを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るノイズ低減具は、巻回可能なシート状又は帯状の磁性体を備え、前記磁性体は、巻回形状で内側に配置される一方の平面に対して、前記巻回形状の巻回軸方向に軸線方向を合わせた電線を巻回軸の軸周りに並べて配置し、前記磁性体における前記一方の平面に、前記軸線方向に対する直交方向で互いに間隔を空けて1本ずつ並べた複数本の前記電線を貼り付けて、前記電線同士の前記間隔を保たせる接着剤を設け、前記接着剤は、前記一方の平面における前記巻回軸方向の両端部のそれぞれにて、前記巻回軸方向に直交する方向へと延在させることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係るワイヤハーネスは、複数本の電線と、それぞれの前記電線から出た放射ノイズの外部への放出を低減させるノイズ低減具と、を備え、前記ノイズ低減具は、巻回可能なシート状又は帯状の磁性体を備え、前記磁性体は、巻回形状で内側に配置される一方の平面に対して、前記巻回形状の巻回軸方向に軸線方向を合わせた電線を巻回軸の軸周りに並べて配置し、前記磁性体における前記一方の平面に、前記軸線方向に対する直交方向で互いに間隔を空けて1本ずつ並べた複数本の前記電線を貼り付けて、前記電線同士の前記間隔を保たせる接着剤を設け、前記接着剤は、前記一方の平面における前記巻回軸方向の両端部のそれぞれにて、前記巻回軸方向に直交する方向へと延在させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るノイズ低減具及びワイヤハーネスは、それぞれの電線から出た放射ノイズの外部への放出を低減させることができる。そして、このノイズ低減具及びワイヤハーネスは、それぞれの電線の間で従来のものよりも距離を保つことができるので、その間での放射ノイズの影響を軽減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態のノイズ低減具が組み付けられたワイヤハーネスを軸線方向に見た模式図である。
【
図2】
図2は、実施形態のノイズ低減具が組み付けられたワイヤハーネスを側方から見た模式図である。
【
図3】
図3は、実施形態のノイズ低減具を模式的に示す斜視図である。
【
図4】
図4は、巻回前の実施形態のノイズ低減具を電線と共に模式的に示す平面図である。
【
図5】
図5は、実施形態のノイズ低減具を一方の平面側から見た模式図である。
【
図6】
図6は、実施形態のノイズ低減具における接着剤の別形態を一方の平面側から見た模式図である。
【
図7】
図7は、変形例のノイズ低減具が組み付けられたワイヤハーネスを軸線方向に見た模式図である。
【
図8】
図8は、変形例のノイズ低減具を模式的に示す斜視図である。
【
図9】
図9は、巻回前の変形例のノイズ低減具を電線と共に模式的に示す平面図である。
【
図10】
図10は、変形例のノイズ低減具を一方の平面側から見た模式図である。
【
図11】
図11は、変形例のノイズ低減具における接着剤の別形態を一方の平面側から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係るノイズ低減具及びワイヤハーネスの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
[実施形態]
本発明に係るノイズ低減具及びワイヤハーネスの実施形態の1つを
図1から
図6に基づいて説明する。
【0012】
図1から
図6に示す符号1は、本実施形態のノイズ低減具を示す。このノイズ低減具1は、ノイズ電流の流れる複数本の電線Weに取り付けて、それぞれの電線Weから出た放射ノイズの外部への放出を低減させると共に、それぞれの電線Weの間での放射ノイズの影響を軽減させる。
図1及び
図2に示す符号WHは、そのノイズ低減具1が複数本の電線Weに組み付けられたワイヤハーネスを示す。ノイズ低減具1は、電線Weの長さに応じて1つ又は複数設ける。
【0013】
このワイヤハーネスWHは、例えば、BEV(Battery Electric Vehicle)やPHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)等の電気自動車(図示略)に車載される。具体的な一例として、このワイヤハーネスWHは、電気自動車の駆動用二次電池と補機用二次電池との間にて、この間に介在するDC/DCコンバータと補機用二次電池との間を物理的且つ電気的に接続させる。このワイヤハーネスWHは、補機用二次電池を充電する際に、駆動用二次電池から補機用二次電池への給電を担っている。
【0014】
また、このワイヤハーネスWHは、例えば、電気自動車の駆動用二次電池と補機用二次電池への充電を行うための充電システム(図示略)に用いられる。
【0015】
この充電システムは、業務用や家庭用に拘わらず、普通充電用又は急速充電用として構成されたものである。この充電システムは、外部電源と、この外部電源から電力供給される充電器本体と、この充電器本体から車両側に給電するためのコネクタ付き充電ケーブルと、を備える。コネクタ付き充電ケーブルは、その給電に際して作業者に使用されるものであり、少なくとも複数本の電力線(電線We)が設けられている充電ケーブルと、この充電ケーブルの一方の端末に取り付けられた充電コネクタと、を備える。ここで、充電システムについては、その給電に際して車両と充電器本体との間で通信しながら充電制御を行うものもある。この場合の充電ケーブルには、その通信を担う通信信号線も設けられている。
【0016】
例えば、この充電システムを急速充電用として構成する場合には、外部電源に三相交流電源が用いられ、その交流電圧を直流電圧に変換するAC/DCコンバータが充電器本体の筐体内に収容されている。この場合のコネクタ付き充電ケーブルは、その変換後の電力を車両側に供給する。
【0017】
コネクタ付き充電ケーブルは、充電器本体に対して予め組み付けられたものであり、この充電器本体と共に充電器を構成するものであってもよい。このコネクタ付き充電ケーブルについては、充電する際に充電器本体側から車両側に引き回し、充電コネクタを電気自動車のコネクタ(車両側コネクタ)に対して物理的且つ電気的に接続させる。
【0018】
一方、コネクタ付き充電ケーブルは、車両の荷室に収容されるなどする単独の部品であり、充電ケーブルの他方の端末に電源側コネクタが取り付けられたものであってもよい。この場合には、充電器本体が充電器を構成する。このコネクタ付き充電ケーブルについては、充電する際に、電源側コネクタを充電器本体のコネクタに対して物理的且つ電気的に接続させると共に、充電コネクタを車両側コネクタに対して物理的且つ電気的に接続させる。
【0019】
この充電システムには、充電器本体の筐体内に、AC/DCコンバータ側と充電ケーブル側とを電気接続させる内部充電ケーブルが設けられている。この内部充電ケーブルは、少なくとも複数本の内部電力線(電線We)を備え、この内部電力線によってAC/DCコンバータ側と充電ケーブル側とを電気接続させる。よって、この充電システムにおいては、この内部充電ケーブルにおける複数本の内部電力線(電線We)にノイズ低減具1を取り付けたものが本実施形態のワイヤハーネスWHとなる。尚、充電に際して先の通信を行う場合、内部充電ケーブルには、内部通信信号線も設けられている。また、この充電システムにおいては、コネクタ付き充電ケーブルの充電ケーブルにおける複数本の電力線(電線We)にノイズ低減具1を取り付けたものが本実施形態のワイヤハーネスWHとなる。
【0020】
以下、本実施形態のノイズ低減具1及びワイヤハーネスWHについて具体的に説明する。
【0021】
ノイズ低減具1は、巻回可能なシート状又は帯状の磁性体10を備える(
図1から
図6)。この磁性体10は、強磁性材料で柔軟性を持たせて成形される。その強磁性材料としては、フェライト等が用いられる。
【0022】
この磁性体10は、巻回形状で内側に配置される一方の平面11aに対して、その巻回形状の巻回軸方向に軸線方向を合わせた電線Weを巻回軸の軸周りに並べて配置する(
図1)。
【0023】
このノイズ低減具1においては、シート状又は帯状の磁性体10の一方の平面11aに対して、軸線方向を合わせた複数本の電線Weを当該軸線方向に対する直交方向で一方の平面11aに沿わせて1本ずつ並べる。そして、このノイズ低減具1においては、この磁性体10を一方の平面11aを内側にしてそれぞれの電線Weと一緒に簀巻き状に巻いていく(
図1)。これにより、このノイズ低減具1においては、巻回形状の径方向で隣り合う電線Weの間に磁性体10が介在することになり、かつ、その電線Weの間で間隔を取ることができる。よって、このノイズ低減具1は、それぞれの電線Weから出た放射ノイズの外部への放出を低減させるだけでなく、径方向で隣り合う電線Weの間での放射ノイズの影響を軽減させることができる。
【0024】
ここで、このノイズ低減具1においては、巻回軸の軸周りでそれぞれの電線Weを見てみると、この軸周りで隣り合う電線We同士の間隔が近いものもあれば遠いものもある。このため、このノイズ低減具1においては、磁性体10の一方の平面11aに対して、軸線方向を合わせた複数本の電線Weを当該軸線方向に対する直交方向で互いに間隔を空けて1本ずつ並べることが望ましい。そして、その際、このノイズ低減具1においては、電線We同士の間隔を保つために、例えば、磁性体10の一方の平面11aに設けた接着剤(例えば、後述する接着剤22)を介して、この一方の平面11aにそれぞれの電線Weを貼り付けておくことが望ましい。このノイズ低減具1においては、この磁性体10を一方の平面11aを内側にしてそれぞれの電線Weと一緒に簀巻き状に巻いていく(
図1)。これにより、このノイズ低減具1においては、巻回形状の径方向で隣り合う電線Weの間に磁性体10が介在することになり、かつ、その電線Weの間で間隔を取ることができる。更に、このノイズ低減具1においては、複数本の電線Weが巻回軸の軸周りに互いに間隔を空けて並べて配置されるので、その軸周りで隣り合う電線Weの間に間隔を設けることができる。よって、このノイズ低減具1は、それぞれの電線Weから出た放射ノイズの外部への放出を低減させるだけでなく、径方向で隣り合う電線Weの間での放射ノイズの影響を軽減させることができ、かつ、巻回軸の軸周りで隣り合う電線Weの間での放射ノイズの影響を軽減させることができる。
【0025】
また、このノイズ低減具1は、磁性体10の巻回形状を保つべく、例えば、巻回形状の磁性体10に巻き付ける結束バンドを巻回軸方向の長さに応じて1つ又は複数備えてもよい(図示略)。
【0026】
また、このノイズ低減具1は、磁性体10の巻回形状を保つべく、その結束バンドに替えて又はその結束バンドと共に接着剤を用いてもよい。
【0027】
例えば、
図5に示すノイズ低減具1は、磁性体10における巻回形状で巻回軸方向に沿う両端部14a,14bの内の最外方に位置する端部14bの一方の平面11aに、磁性体10の他方の平面11bに接着させる接着剤21を設けている。
【0028】
また、例えば、
図6に示すノイズ低減具1は、磁性体10における巻回形状で巻回軸方向に直交するそれぞれの端部14c,14dの一方の平面11aに、少なくとも磁性体の他方の平面11bに接着させる接着剤22を設けている。このため、このノイズ低減具1は、その接着剤22によって、一方の平面11aに対する電線Weの位置ずれ抑止機能と保持機能を持たせることができる。このノイズ低減具1は、その保持機能によって、シート状又は帯状の磁性体10の巻回作業を終えるまでの組付け作業性を向上させることができる。
【0029】
以上示したように、本実施形態のノイズ低減具1は、それぞれの電線Weから出た放射ノイズの外部への放出を低減させることができる。そして、このノイズ低減具1は、それぞれの電線Weの間で距離を保つことができる。このため、このノイズ低減具1は、一纏めに束ねた複数本の電線Weにシート状の磁性体を簀巻き状に巻き付けたものと比較して、それぞれの電線Weの間での放射ノイズの影響を軽減させることができる。また更に、このノイズ低減具1は、電線径の異なる電線Weや長さの異なる電線Weが混在していたとしても、これらの複数本の電線Weに対して適用することができる。そして、本実施形態のワイヤハーネスWHは、このノイズ低減具1を具備するものであり、このノイズ低減具1によって得られるものと同様の効果を奏することができる。
【0030】
[変形例]
図7から
図11に示す符号2は、本変形例のノイズ低減具を示す。このノイズ低減具2は、前述した実施形態のノイズ低減具1と同じように、ノイズ電流の流れる複数本の電線Weに取り付けて、それぞれの電線Weから出た放射ノイズの外部への放出を低減させると共に、それぞれの電線Weの間での放射ノイズの影響を軽減させる。本変形例のワイヤハーネスWHは、このノイズ低減具2が複数本の電線Weに組み付けられたものである。ノイズ低減具2は、電線Weの長さに応じて1つ又は複数設ける。
【0031】
本変形例のノイズ低減具2は、巻回可能なシート状又は帯状の磁性体50を備える(
図7から
図11)。この磁性体50は、実施形態の磁性体10と同じように、フェライト等の強磁性材料で柔軟性を持たせて成形され、複数本の電線Weと一緒に簀巻き状に巻かれていく。
【0032】
この磁性体50は、巻回形状で内側に配置される一方の平面51aに、電線Weを巻回形状の巻回軸方向に軸線方向を合わせて1本ずつ収容可能な電線We毎の溝部52を有する(
図7から
図11)。
【0033】
このノイズ低減具2においては、シート状又は帯状の磁性体50に対して溝部52毎に電線Weを1本ずつ収容する(
図9)。そして、このノイズ低減具2においては、この磁性体50を一方の平面51aを内側にしてそれぞれの電線Weと一緒に簀巻き状に巻いていく(
図6)。これにより、このノイズ低減具2においては、それぞれの電線Weの間で間隔を取ることができる。よって、このノイズ低減具2は、それぞれの電線Weから出た放射ノイズの外部への放出を低減させるだけでなく、それぞれの電線Weの間での放射ノイズの影響を軽減させることができる。
【0034】
更に、このノイズ低減具2は、全ての溝部52(溝幅や溝深さ)を均等な形状に形成することによって、電線径の同じ電線Weであれば溝部52への収容場所を規定する必要がないので、磁性体50と電線Weの間の組付け作業性を向上させることができる。
【0035】
ここで、磁性体50においては、溝部52の溝深さを電線Weの電線径よりも深くすることが望ましい。これにより、この磁性体50においては、隣り合う溝部52に収容されたそれぞれの電線Weの間に電線径よりも高い山部53が介在することになる(
図7から
図9)。よって、このノイズ低減具2は、そのそれぞれの電線Weの間での放射ノイズの影響をより軽減させることができる。
【0036】
また、溝部52は、電線Weを嵌め込んで両隣の山部53で挟み込ませる形状に形成してもよい。これにより、このノイズ低減具2においては、電線Weを溝部52に嵌め込んでおくことによって、シート状又は帯状の磁性体50の巻回作業を終えるまで、溝部52の中に電線Weを収めたまま保持させることができる。これにより、このノイズ低減具2は、巻回作業を終えるまでの組付け作業性を向上させることができる。
【0037】
また、このノイズ低減具2は、磁性体50の巻回形状を保つべく、例えば、巻回形状の磁性体50に巻き付ける結束バンドを巻回軸方向の長さに応じて1つ又は複数備えてもよい(図示略)。
【0038】
また、このノイズ低減具2は、磁性体50の巻回形状を保つべく、その結束バンドに替えて又はその結束バンドと共に接着剤を用いてもよい。
【0039】
例えば、
図10に示すノイズ低減具2は、磁性体50における巻回形状で巻回軸方向に沿う両端部54a,54bの内の最外方に位置する端部54bの一方の平面51aに、磁性体10の他方の平面51bに接着させる接着剤61を設けている。
【0040】
また、例えば、
図11に示すノイズ低減具2は、磁性体50における巻回形状で巻回軸方向に直交するそれぞれの端部54c,54dの一方の平面51aに、少なくとも磁性体の他方の平面51bに接着させる接着剤62を設けている。この磁性体50においては、溝部52の中の壁面にまで接着剤62を設けておくことによって、この溝部52の中で接着剤62によって電線Weを保持することもできる。このため、このノイズ低減具2は、その溝部52の中の接着剤62によって、この溝部52に対する電線Weの位置ずれ抑止機能と保持機能を持たせることができる。このノイズ低減具2は、その保持機能によって、電線Weを溝部52に嵌め込まずとも、シート状又は帯状の磁性体50の巻回作業を終えるまでの組付け作業性を向上させることができる。尚、図示の便宜上、図中では、接着剤62を一点鎖線で表している。
【0041】
以上示したように、本変形例のノイズ低減具2は、それぞれの電線Weから出た放射ノイズの外部への放出を低減させることができる。そして、このノイズ低減具2は、溝部52によって、それぞれの電線Weの間で距離を保つことができる。このため、このノイズ低減具2は、一纏めに束ねた複数本の電線Weにシート状の磁性体を簀巻き状に巻き付けたものと比較して、それぞれの電線Weの間での放射ノイズの影響を軽減させることができる。また更に、このノイズ低減具2は、溝部52の中に収容できる電線径の電線Weであれば、電線径の異なる電線Weや長さの異なる電線Weが混在していたとしても、これらの複数本の電線Weに対して適用することができる。そして、本変形例のワイヤハーネスWHは、このノイズ低減具2を具備するものであり、このノイズ低減具2によって得られるものと同様の効果を奏することができる。
【0042】
ここまで説明してきた実施形態のノイズ低減具1及びワイヤハーネスWH並びに変形例のノイズ低減具2及びワイヤハーネスWHは、その効果を簡素且つ安価な構成で得ることができるので、先の電気自動車や充電システム(普通充電用であるのか急速充電用であるのかに拘わらず)に適用することによって、電気自動車や充電システムの普及に寄与するものとなる。
【0043】
更に、充電システムは、普通充電用として構成されたものよりも急速充電用として構成されたものの方でノイズの発生する可能性が高くなる。従って、実施形態のノイズ低減具1及びワイヤハーネスWH並びに変形例のノイズ低減具2及びワイヤハーネスWHは、特に急速充電用の充電システムや当該充電システムを用いた急速充電が可能な電気自動車において有用なものとなる。
【符号の説明】
【0044】
1,2 ノイズ低減具
10,50 磁性体
11a,51a 一方の平面
11b,51b 他方の平面
52 溝部
14a,14b,14c,14d,54a,54b,54c,54d 端部
21,22,61,62 接着剤
We 電線
WH ワイヤハーネス