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特許7538175パルスレーザ光を用いた基板の加工、特に分離のための方法
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  • 特許-パルスレーザ光を用いた基板の加工、特に分離のための方法 図1
  • 特許-パルスレーザ光を用いた基板の加工、特に分離のための方法 図2
  • 特許-パルスレーザ光を用いた基板の加工、特に分離のための方法 図3
  • 特許-パルスレーザ光を用いた基板の加工、特に分離のための方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】パルスレーザ光を用いた基板の加工、特に分離のための方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 33/09 20060101AFI20240814BHJP
   C03C 15/00 20060101ALI20240814BHJP
   B28D 5/00 20060101ALI20240814BHJP
   B23K 26/38 20140101ALI20240814BHJP
【FI】
C03B33/09
C03C15/00 Z
B28D5/00 Z
B23K26/38 Z
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022084208
(22)【出願日】2022-05-24
(62)【分割の表示】P 2019558349の分割
【原出願日】2018-04-06
(65)【公開番号】P2022116133
(43)【公開日】2022-08-09
【審査請求日】2022-06-10
(31)【優先権主張番号】102017110542.5
(32)【優先日】2017-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】399007154
【氏名又は名称】エル・ピー・ケー・エフ・レーザー・アンド・エレクトロニクス・ソシエタス・ヨーロピア
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(72)【発明者】
【氏名】オストホルト・ローマン
(72)【発明者】
【氏名】アンブロジウス・ノルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ドゥンカー・ダーニエール
(72)【発明者】
【氏名】シュノール・アルネ
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/010954(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00-26/70
B28D 1/00-7/04
C03B 23/00-35/26
40/00-40/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ誘導ディープエッチングを用いた、ガラスからなる平坦な基板の加工のための方法であって、レーザ光が加工ラインに沿って移動され、個別パルスが、空間レーザパルス間隔(d)で前記基板上に向けられ、次いで異方性の材料除去が、エッチングによって或るエッチング速度(R)と或るエッチング期間(t)で実行される当該方法において、
エッチング浴における異方性材料除去が、レーザ光によって改質された場所で行われ、
加工パラメータが、条件:
a)レーザパルス間隔dが1~μmであり、
b)0.086(d=3μm、R*t=35μm)>d/(R*t)>0.025(d=1μm、R*t=40μm)
にしたがって調節されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記基板の初期厚さ(D)と、エッチング速度(R)とエッチング期間(t)とから成る積との比は、3よりも大きく:
D/(R*t)>3
であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基板の初期厚さ(D)と、エッチング速度(R)とエッチング期間(t)とから成る積との比は、5よりも大きく:
D/(R*t)>5
であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記基板の初期厚さ(D)と、エッチング速度(R)とエッチング期間(t)とから成る積との比は、8よりも大きく:
D/(R*t)>8
であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記基板の初期厚さ(D)と、エッチング速度(R)とエッチング期間(t)とから成る積との比は、10よりも大きく:
D/(R*t)>10
であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記基板の初期厚さ(D)と、エッチング速度(R)とエッチング期間(t)とから成る積との比は、12よりも大きく:
D/(R*t)>12
であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ガラスは、石英ガラスであることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ誘導ディープエッチングを用いた特に平らな基板の特に分離するための方法に関し、パルスレーザ光が空間レーザパルス間隔でもって基板上に直接向けられ、及び続いて異方性の材料除去が、エッチングによってエッチング速度とエッチング期間でもって実行される。
【背景技術】
【0002】
レーザ誘導ディープエッチングを用いたガラスの精密加工のための一般的な方法は、LIDE(レーザ誘導ディープエッチング)という名称で知られるようになった。この場合、LIDE法は、高速で非常に正確な孔(微細孔ガラス基板=TGV)及び構造の導入を可能にすることができ、及び従って、マイクロシステム技術における原材料としてガラスがより多く使用されるための前提条件を作成する。
【0003】
レーザ誘導ディープエッチングの場合(例えば特許文献1及び特許文献2)、レーザパルス又はパルス列を用いて透明な材料が光軸に沿って細長い領域の上に、透明な材料、即ちガラス板の全体の厚さに渡って非常に多くの改質がなされる。その結果、その後の湿式化学エッチングでの改質は異方性のエッチングである。レーザパルスが、適切な空間間隔でもって輪郭に沿って材料上に照射される場合、材料が異方性の材料除去間中に輪郭に沿って分離される。
【0004】
この場合、レーザーエネルギー入力は、変換による反応及び改質のきっかけ若しくは作動に使用し、この作用が、後に続く方法ステップではじめて所望の材料分離に対して実施される若しくは使用される。
【0005】
分離プロセスは、改質に基づき及び場合によっては後に続く異方性材料除去に基づき、エッチングプロセスによって行われるので、分離プロセスに対して連続的ではなくて、平面化に影響を及ぼす除去プロセスを使用することができ、プロセスに対する要求は非常に低くなる。特に、材料除去は影響する期間で、前記方法であらかじめ処理され及びそれに応じて改質される全ての領域に対して、定量的に及び定性的に同時に実施することができる。その結果、複数の凹部又は穿孔部の製造のために必要な時間は、全体的にはるかに短縮される。
【0006】
個々のパルスの互いに離間して作用した箇所を原理的に連結することによって、及びその後エッチングプロセスによって接続した結果、切断面が発生するので、この切断面は平坦ではない。むしろ、接続された穴に似た波形若しくはミシン目が生じる。
【0007】
この基本的に望ましくない不均一な切断表面は、レーザパルス間隔によって調整でき、一般に、レーザパルス間隔が小さいと、低い表現度での波若しくは隆起になると考えられている。
【0008】
従って、この方法の場合での二つの基本的な目的は、一方では大きなレーザパルス間隔による高速処理進行ステップと、他方では可能な限り滑らかで平坦なコースが切断面のコースに近似することとが矛盾している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2014/161534号
【文献】国際公開第2016/04144号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の根底にある課題は、これら二つの目的を最適な方法で達成する若しくは一致させ、作製する可能性を提供することである。これらの課題は、請求項1の特徴に基づいた方法でもって本発明に応じて解決される。本発明の別の構成は、従属請求項で引用している。
【課題を解決するための手段】
【0011】
つまり、本発明によれば、加工パラメータが以下の規定:
1>d/(R*t)>10-5
好ましくは状況に応じて:
1>d/(R*t)>10-3
d=レーザパルス間隔、R=エッチング速度、及びt=エッチング期間、によって決定される場合に、この方法が企図されている。
【0012】
これにより、LIDE法に従って切断された基板又は構成要素の機械加工された側面は、粗さが減少する。その際、本発明は、可能な限り滑らかな表面のためのパルス間隔が、例えば可能な限り小さくなるように選択されるのではなくて、先述の規定(独語:Vorschrift)にしたがって決定する必要があり、パルス間隔及びエッチング期間の粗さの依存に関する驚くべき知見に基づいている。
【0013】
特に、パルス間隔に依存する表面の粗さは、典型的に約1μmから3μmの局所的な最小値を有する。これらの最小値の位置は、基板材料、使用される化学エッチング並びに別のプロセスパラメータに依存している。
【0014】
本発明に基づき、レーザ光によって改質された場所で、エッチング浴における異方性材料除去が可能になる。その結果、大きなアスペクト比(切断間隙幅bの基板の厚さD)でもって構造が次の条件12>D/b>1で発生できる。この場合、基板の厚さDと比較して、エッチング速度R及びエッチング期間tの積で表される湿式化学エッチングによる材料除去はわずかである。好ましくは、D/(R*t)>3を適応する。特に好ましくはD/(R*t)>12を適応する。使用される基板材料は、レーザ誘導ディープエッチングで使用される波長に対して透過性であるガラスが好ましい。特に高アスペクト比及び低い粗さは、石英ガラスでもって実現できる。
【0015】
本発明は様々な実施形態を可能にする。その基本原理をさらに明確にするために、そのうちの一つが図で示されており、及び以下で説明される。それらは、それぞれ概略図で示される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】異なるレーザパルス間隔(d)及びエッチング期間(t)の図である。
図2】レーザパルス間隔(d=3μm)及びエッチング期間(t=35分)の場合での切断面の表面プロファイルの図である。
図3】レーザパルス間隔(d=10μm)及びエッチング期間(t=35分)の場合での切断面の表面プロファイルの図である。
図4】異なる材料除去の場合でのレーザパルス間隔(d)及び粗さRaの比率である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、レーザパルス間隔d及びエッチング期間t(一定のエッチング速度Rの場合)の関数として、切断面の異なった波紋若しくは粗さがどのように発生するかを概略的に示す。予想どおり、粗さは減少し、パルス間隔dが小さく、及びエッチング期間tが長く選択される。
【0018】
これらは、切断面の表面プロファイルを用いて図2及び3で説明される。同じエッチング期間t=35分及び同じエッチング速度R、即ち同じ積R*tの場合、及びそれに関連した湿式化学エッチングによる同様の材料除去は、大きく異なる表面で二つのレーザパルス間隔d=3μm(図2)及びd=10μm(図3)の場合に発生する。
【0019】
図4は、異なる材料除去(エッチング除去)のためのレーザパルス間隔d(ピッチ)の粗さRa(粗さ)の関係を示す。およそ2~3μmのレーザパルス間隔dの場合には、粗さRaの局所的な最小値はおよそ0.05~0.08μmに達する。これは、材料除去に、エッチング速度とエッチング時間の積に、わずかに影響する。
図1
図2
図3
図4