(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】荷役搬送車
(51)【国際特許分類】
B60D 1/36 20060101AFI20240814BHJP
B61B 13/00 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
B60D1/36
B61B13/00 A
(21)【出願番号】P 2022097135
(22)【出願日】2022-06-16
【審査請求日】2022-10-19
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【氏名又は名称】後藤 高志
(72)【発明者】
【氏名】天井 雅康
(72)【発明者】
【氏名】伊賀上 高輔
【審査官】大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-209828(JP,A)
【文献】実公平07-032166(JP,Y2)
【文献】特開2006-213144(JP,A)
【文献】特開2000-231411(JP,A)
【文献】特開2004-249775(JP,A)
【文献】特開平04-328008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60D 1/36
B61B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
牽引車と、
台車と、
前記牽引車に設けられ、前記牽引車から側方に延びるフック位置と前記牽引車から後方に延びる牽引位置とに左右に回転可能な牽引フックと、
前記台車に設けられた被牽引フックと、
前記台車に設けられ、前記台車の右方および左方のうちいずれか一方のみに配置され、前記牽引フックを前記被牽引フックに導くガイド溝が形成されたガイドレールと、
を備え
、
前記牽引フックは、前記ガイドレールの前記ガイド溝に係合する係合部を有し、
前記ガイド溝は、前記台車の後方に行くほど幅が広くなる導入溝を有している、荷役搬送車。
【請求項2】
前記牽引車に設けられ、前記牽引フックに対して前記フック位置に向かう回転力を与える牽引フック回転力付与部材を備えている、請求項1に記載の荷役搬送車。
【請求項3】
前記牽引フック回転力付与部材は、前記牽引フックを前記フック位置に向けて付勢するばねを有している、請求項2に記載の荷役搬送車。
【請求項4】
前記牽引車に設けられ、前記牽引フックの少なくとも一部を上方または下方に移動させることにより前記牽引フックと前記被牽引フックとの連結を解除させる駆動装置を備えている、請求項1に記載の荷役搬送車。
【請求項5】
前記牽引車は、車輪と、前記車輪を駆動する駆動装置と、前記駆動装置を制御するコンピュータと、を有する自動運転車である、請求項1に記載の荷役搬送車。
【請求項6】
前記牽引車は、前進可能かつ後進不能に構成されている、請求項1に記載の荷役搬送車。
【請求項7】
他の台車と、
前記台車の後方に延び、前記台車と前記他の台車とを連結する連結具と、を備え、
前記連結具は、前記台車および前記他の台車の一方または両方に左右に回転可能に接続されている、請求項1に記載の荷役搬送車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牽引車と牽引車によって牽引される台車とを備えた荷役搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば工場における物品の搬送等の用途に、牽引車と牽引車によって牽引される台車とを備えた荷役運搬車が用いられている。牽引車は、物品を積んだ台車に連結された後、台車を牽引することにより物品を搬送する。
【0003】
牽引車が走りながら台車と連結できれば、連結に要する時間を短縮することができる。特開2000-231411号公報には、牽引車が台車の前方を走行することにより、牽引車と台車とを自動的に連結させる装置が開示されている。上記牽引車には、側方に突出する左右に回転可能な牽引レバーが設けられている。上記台車には、前方に突出する被連結具が固定されている。牽引車が台車の前方を通過するときに、牽引車の牽引レバーは台車の被連結具に引っ掛かる。これにより、牽引車と台車とが連結される。連結後、牽引車の走行に伴って牽引レバーは後方に回転する。台車は、牽引車に牽引されることによって旋回した後、牽引車に続いて走行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、台車の前方に十分なスペースを確保し難い場合がある。例えば、牽引車が牽引すべき台車の数は、1台に限らず、2台以上となる場合がある。このような場合、2台以上の台車を予め連結しておくことが好ましい。ところが、2台以上の台車を連結した場合、それら台車の全長は長くなる。直列に接続された2台以上の台車の前方に、牽引車の走行スペースを確保することが難しい場合がある。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、台車の前方に牽引車の走行スペースを確保し難い場合であっても、牽引車の走行に伴って牽引車と台車とを自動的に連結することができる荷役搬送車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示される荷役搬送車は、牽引車と、台車と、前記牽引車に設けられた牽引フックと、前記台車に設けられた被牽引フックと、前記台車に設けられたガイドレールとを備える。前記牽引フックは、前記牽引車から側方に延びるフック位置と前記牽引車から後方に延びる牽引位置とに左右に回転可能である。前記ガイドレールは、前記台車の右方および左方のうちいずれか一方のみに配置されている。前記ガイドレールには、前記牽引フックを前記被牽引フックに導くガイド溝が形成されている。
【0008】
上記荷役搬送車によれば、牽引フックが牽引車の側方に延び、かつ、台車の側方にガイドレールが設けられているので、牽引車がガイドレールの側方を通り過ぎることにより、牽引フックがガイドレールに導かれて被牽引フックに引っ掛かる。これにより、牽引車と台車とは自動的に連結される。台車の前方に牽引車の走行スペースを確保する必要がないので、台車の前方に牽引車の走行スペースを確保し難い場合であっても、牽引車の走行に伴って牽引車と台車とを自動的に連結することができる。ガイドレールのガイド溝が牽引フックを被牽引フックに導くので、牽引車と台車とを確実に連結することができる。
【0009】
前記荷役搬送車は、前記牽引車に設けられ、前記牽引フックに対して前記フック位置に向かう回転力を与える牽引フック回転力付与部材を備えていてもよい。
【0010】
このことにより、連結前に牽引フックをフック位置に自動的に位置付けることができる。また、連結解除後に、牽引フックをフック位置に自動的に戻すことができる。
【0011】
前記牽引フック回転力付与部材は、前記牽引フックを前記フック位置に向けて付勢するばねを有していてもよい。
【0012】
このことにより、電動モータ等の駆動装置を用いなくても、牽引フックをフック位置に自動的に位置付けることができる。
【0013】
前記牽引フックは、前記ガイドレールの前記ガイド溝に係合する係合部を有していてもよい。前記ガイド溝は、前記台車の後方に行くほど幅が広くなる導入溝を有していてもよい。
【0014】
前記導入溝は後方に行くほど幅が広くなっているので、牽引車がガイドレールの側方を通り過ぎるときに、牽引フックの係合部は導入溝に係合しやすい。牽引フックがガイドレールに係合しやすいため、牽引フックと被牽引フックとをより確実に連結させることができる。
【0015】
前記荷役搬送車は、前記牽引車に設けられ、前記牽引フックの少なくとも一部を上方または下方に移動させることにより前記牽引フックと前記被牽引フックとの連結を解除させる駆動装置を備えていてもよい。
【0016】
このことにより、牽引フックと被牽引フックとの連結を自動的に解除することができる。
【0017】
前記牽引車は、車輪と、前記車輪を駆動する駆動装置と、前記駆動装置を制御するコンピュータと、を有する自動運転車であってもよい。
【0018】
このことにより、牽引車と台車との連結、および、牽引車および台車の移動を自動化することができる。
【0019】
前記牽引車は、前進可能かつ後進不能に構成されていてもよい。
【0020】
牽引車は台車の側方を前進するだけで、台車に自動的に連結される。そのため、牽引車が後進不能であっても、牽引車と台車とを自動的に連結させることができる。牽引車として後進不能な車両を利用することができる。
【0021】
前記荷役搬送車は、他の台車と、前記台車の後方に延び、前記台車と前記他の台車とを連結する連結具と、を備えていてもよい。前記連結具は、前記台車および前記他の台車の一方または両方に左右に回転可能に接続されていてもよい。
【0022】
このことにより、牽引車は、直列に並んだ前記台車および前記他の台車の側方を通過することにより、前記台車に自動的に連結される。前記台車と他の台車とは左右に回転可能な連結具によって連結されているので、牽引車が前記台車を牽引すると、他の台車は前記台車に続いて走行する。牽引車は、直列に並んだ2台以上の台車を牽引することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、台車の前方に牽引車の走行スペースを確保し難い場合であっても、牽引車の走行に伴って牽引車と台車とを自動的に連結することができる荷役搬送車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】一実施形態に係る荷役搬送車の連結前の平面図である。
【
図5】
図3において牽引フックを後方から見た図である
【
図6A】連結途中の係合ピンおよび被牽引フックの平面図である。
【
図6B】連結途中の牽引車の一部および台車の平面図である。
【
図6C】連結途中の牽引車および台車の平面図である。
【
図6D】連結途中の係合ピンおよびフック部の平面図である。
【
図6E】連結途中の係合ピンおよびフック部の平面図である。
【
図6F】牽引車が台車を牽引しているときの荷役搬送車の平面図である。
【
図7】係合ピンとフック部との連結を解除するときの側面図である。
【
図8A】棚の側方に配置された台車と牽引車とが連結するときの荷役搬送車の平面図である。
【
図8B】牽引車が台車を他の棚の側方に搬送したときの荷役搬送車の平面図である。
【
図8C】他の棚に物品を移動させるときの台車の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る荷役搬送車100の平面図である。以下の説明では特に断らない限り、符号F、Rr、L、Rは、それぞれ前方、後方、左方、右方を表すものとする。
【0026】
図1に示すように、荷役搬送車100は、牽引車1と、台車2と、台車2の後方に配置された他の台車5と、を備えている。牽引車1が牽引する台車の数は特に限られないが、本実施形態では2台である。牽引車1には、牽引フック3が設けられている。台車2には、被牽引フック4が設けられている。牽引車1と台車2とは、牽引フック3および被牽引フック4により連結される。台車2と台車5とは、連結具6により連結される。台車2の側方には、牽引フック3を被牽引フック4に導くためのガイドレール7が備えられている。
【0027】
牽引車1は、手動運転される車両であってもよいが、本実施形態では自動運転車である。
図2に示すように、牽引車1は、車輪13と、車輪13を駆動する電動モータ12と、電動モータ12に電力を供給する二次電池(図示せず)と、コンピュータ14と、検出センサ15と、を有している。コンピュータ14は、電動モータ12を制御することにより、牽引車1の走行、停止、左折、および右折を制御する。また、コンピュータ14は、後述する電動シリンダ36(
図5参照)を制御する。牽引車1は、前進および後進が可能に構成されていてもよいが、本実施形態では、前進は可能であるが後進ができないように構成されている。検出センサ15は、例えば、路面に形成した誘導線(図示せず)を検出する。コンピュータ14は、検出センサ15から検出信号を受け取り、電動モータ12を制御する。このようにして、牽引車1は自動運転される。
【0028】
台車2は、牽引されることによって走行する車両であり、走行のための駆動源を備えていない車両である。台車2は、荷台23Aを有する車体23と、車輪25と、を備えている。荷台23Aには物品9が積載される。
【0029】
台車5は台車2と異なる構成を有していてもよいが、ここでは同一の構成を有している。台車5は、荷台53Aを有する車体53と、車輪55と、を備えている。荷台53Aには物品9が積載される。
【0030】
図1に示すように、ガイドレール7は、台車2の車両前後方向に延びている。
図3に示すように、ガイドレール7には、牽引フック3を被牽引フック4に導くためのガイド溝7aが形成されている。牽引車1が台車2の側方を前進する際に、牽引フック3の後述する係合ピン3b(
図5参照)がガイド溝7aに係合することにより、牽引フック3は被牽引フック4に導かれる。ガイド溝7aは、後方に行くほど幅が広くなる導入溝7bを有している。導入溝7bは、ガイド溝7aの後部を形成している。ガイド溝7aが導入溝7bを有することにより、台車2の側方を通るときの牽引車1の位置が左右方向に多少ずれても、牽引フック3の係合ピン3bをより確実にガイド溝7aに導入することができる。
【0031】
図4に示すように、本実施形態では、ガイドレール7の前後方向の長さは、台車2の前後方向の長さと等しくなっている。しかし、ガイドレール7の前後方向の長さはこれに限定されない。ガイドレール7の前後方向の長さは、台車2の前後方向の長さより長くてもよく、短くてもよい。
図3に示すように、ガイドレール7は左側壁7cおよび右側壁7dを有する。左側壁7cおよび右側壁7dは、ガイドレールの底壁7eから上方に延びている。左側壁7cおよび右側壁7dの高さは、係合ピン3bが左側壁7cまたは右側壁7dに接触することにより係合溝7bから外れないだけの高さを有していることが好ましい。係合ピン3bがガイド溝7aを通る際に、係合ピン3bと左側壁7cとは側方から見て重なる位置にあり、係合ピン3bと右側壁7dとは側方から見て重なる位置にある。
図4に示すように、ここでは、左側壁7cの一部が台車2に固定されている。ただし、台車2とガイドレール7の固定方法は特に限定されない。ガイドレール7は台車2に直接的に固定されていてもよく、他の部材を介して間接的に固定されていてもよい。ガイドレール7の材料は特に制限されず、金属材料、樹脂材料などであってもよい。
【0032】
図4に示すように、牽引フック3は、牽引車1の接続部31に左右に回転可能に接続されている。牽引フック3は、牽引車1の車両左右方向に延びるフック位置と、牽引車1の車両前後方向の後方に延びる牽引位置とに左右に回転可能である。なお、
図4は、牽引フック3がフック位置にあるときを表している。牽引フック3は、牽引バー34と、係合ピン3bと、係合ピン3bを昇降させる電動シリンダ36とを有している。接続部31には、第1連結軸33を支持する第1連結金具32が固定されている。
図5は、フック位置にある牽引フック3を後方から見た図である。
図5に示すように、第1連結軸33は、第1連結金具32の鉛直方向に延びる孔32aと、牽引バー34の鉛直方向に延びる孔34aとに挿入されている。第1連結軸33は上下方向に延びている。牽引バー34の根元部は、第1連結軸33に回転可能に連結されている。
【0033】
電動シリンダ36は、牽引バー34の先端部に固定されている。係合ピン3bは電動シリンダ36に固定されている。係合ピン3bは電動シリンダ36から下方に延びている。電動シリンダ36は、コンピュータ14と電気的に接続されており、コンピュータ14によって制御される。電動シリンダ36は係合ピン3bを昇降させる。電動シリンダ36は、牽引フック3の一部である係合ピン3bを上方および下方に移動させる駆動装置の一例である。
【0034】
図4に示すように、牽引車1には第1回転力付与部材35が設けられている。第1回転力付与部材35は、牽引フック3に対してフック位置に向かう回転力を付与する部材である。本実施形態では、第1回転力付与部材35は、牽引バー34および第1連結金具32に固定されている。本実施形態では、第1回転力付与部材35は、牽引フック3をフック位置に向けて付勢するばね35Aを有している。
【0035】
被牽引フック4は、フック部41と、フックガイド42と、固定バー43と、を備えている。被牽引フック4は、台車2の前方に配置されている。フックガイド42の一端はガイドレール7に固定されており、他端はフック部41に固定されている。固定バー43の一端は台車2に固定されており、他端はフック部41に固定されている。
【0036】
図4に示すように、フック部41は、上方から見てC字型に形成されている。フック部41には、外れ止め用のバー41cが取り付けられている。バー41cは、係合ピン3bがフック部41から抜けることを防ぐ。バー41cは、軸41dによってフック部41に連結されている。軸41dには、図示しないばねが設けられている。このばねは、バー41cがフック部41の開口部41bを閉じる方向にバー41cを付勢している。よって、牽引車1と台車2とが連結された状態で係合ピン3bが後方に移動することがあっても、係合ピン3bが開口部41bを通じてフック部41から抜けることが防止される。
【0037】
フックガイド42は、係合ピン3bをフック部41に案内するものである。前述したように、牽引車1の前進に伴って、係合ピン3bはガイド溝7aを通る。係合ピン3bは、ガイド溝7aを通過した後、フックガイド42に接触する。牽引車1が更に前進すると、係合ピン3bはフックガイド42に接触したまま、フックガイド42に沿って前進する。そして、係合ピン3bは、フック部41の開口部41bに導かれ、バー41cを前方に押すことによってフック部41の内側に入る。
【0038】
固定バー43の一端は台車2に固定され、他端はフック部41に固定されている。固定バー43はフック部41を支持している。
【0039】
図1に示すように、台車2と台車5とは、連結具6によって連結されている。連結具6は、台車5を台車2に対して左右に回転可能に連結している。連結具6は、台車2および台車5の何れか一方に左右に回転可能に接続されていてもよく、両方に左右に回転可能に接続されていてもよい。
【0040】
以上、本実施形態に係る荷役搬送車100の構成について説明した。次に荷役搬送車100の動作について説明する。ここで、
図6A~
図6Fは、本実施形態に係る牽引車1と台車2との連結方法を説明するための図である。なお、
図6A、
図6Dおよび
図6Eでは、簡略化のために、牽引フック3のうち係合ピン3bのみを図示している。
【0041】
図1に示すように、ここでは、台車2および台車5が予め連結具6によって連結され、壁80の後方に待機しているものとする。壁80と台車2との間の距離が短いので、台車2の前方には十分なスペースがない。そのため、牽引車1が台車2の前方を通過することによって台車2と連結することは難しい。本実施形態では以下に説明するように、牽引車1は、台車2および台車5の側方を通過することによって台車2と連結する。
【0042】
前述したように、牽引フック3はフック位置に付勢されている。そのため、
図1に示すように、牽引車1と台車2とが連結される前に、牽引フック3は左方に延びている。なお、本実施形態では、フック位置は牽引フック3が牽引車1から側方に突出した位置である。
【0043】
牽引車1が前進して台車2の側方を通過すると、牽引フック3の係合ピン3bはガイドレール7に接近し、導入溝7bからガイド溝7aに進入する。
図6Aに示すように、導入溝7bから進入した係合ピン3bは、ガイド溝7aによって前方に導かれる。すなわち、係合ピン3bは、ガイドレール7の左側壁7cおよび右側壁7dにより、ガイド溝7aから外れることを防止される。
【0044】
図6Bに示すように、牽引車1が更に前進すると、係合ピン3bはガイド溝7aを通過し、ガイド溝7aの前方に至る。その後、
図6Cに示すように、係合ピン3bはフックガイド42に沿って前方へ進行する。この際、牽引フック3は第1連結軸33周りに反時計回りに回転する。
【0045】
図6Dに示すように、牽引車1が更に前進すると、係合ピン3bはバー41cに接触する。その後、
図6Eに示すように、係合ピン3bはバー41cを前方に押し、フック部41の内側に進入する。これにより、牽引フック3は被牽引フック4に連結される。
【0046】
図6Fに示すように、台車2が牽引車1に牽引されると、台車2に連結された台車5も牽引される。牽引車1は、台車2および台車5を牽引し、台車2および台車5に積載された物品9(
図2参照)を搬送する。なお、
図6Fは、牽引フック3が牽引位置にある状態を表している。
【0047】
牽引車1が台車2および台車5を所定の搬送位置まで牽引した後、牽引車1と台車2との連結が解除される。
図7に示すように、電動シリンダ36を駆動することによって係合ピン3bを上昇させると、係合ピン6bはフック部41から引き抜かれる。このようにして、牽引フック3と被牽引フック4との連結を解除することができる。連結を解除すると、牽引フック3は、第1回転力付与部材35のばね35Aの付勢力により、牽引位置からフック位置に戻る。これにより、牽引車1は、例えば他の台車と連結可能となる。
【0048】
以上のように、本実施形態によれば、
図1に示すように、牽引車1が台車2の側方を通り過ぎることにより、牽引フック3がガイドレール7に導かれて被牽引フック4に引っ掛かり、牽引車1と台車2とは自動的に連結される。台車2の前方に牽引車1の走行スペースを確保することが難しい場合であっても、牽引車1の走行に伴って、牽引車1と台車2とを自動的に連結することができる。
【0049】
また、本実施形態によれば、牽引車1は前方に走行しながら台車2と連結することができる。牽引車1は、台車2と連結するために停止する必要がない。そのため、牽引車1と台車2との連結に要する時間を短縮することができる。本実施形態に係る荷役運搬車100によれば、物品の搬送に要する時間を短縮することができる。
【0050】
本実施形態によれば、台車2の側方に、牽引フック3を被牽引フック4に導くガイド溝7aが形成されたガイドレール7が配置されている。そのため、牽引車1が台車2の側方を通り過ぎるときに、牽引フック3を被牽引フック4に確実に導くことができる。例えば、牽引車1が比較的大きな速度で走行する場合、牽引フック3の係合ピン3bが左右に振れるおそれがある。しかし、本実施形態によれば、そのような場合であっても、牽引車1と台車2とをより確実に連結することができる。
【0051】
本実施形態によれば、牽引フック3に対してフック位置に向かう回転力を与える第1回転力付与部材35が牽引車1に設けられている。牽引車1および台車2の連結前に、牽引フック3をフック位置に自動的に位置付けることができる。また、牽引車1および台車2の連結解除後に、牽引フック3をフック位置に自動的に戻すことができる。
【0052】
第1回転力付与部材35の構成は特に限定されない。第1回転力付与部材35は、牽引フック3に対してフック位置に向かう回転力を与える駆動装置(例えば電動モータ)を備えていてもよい。しかし、本実施形態によれば、第1回転力付与部材35は、ばね35Aを有している。そのため、高価な駆動装置を用いなくても、牽引フック3をフック位置に自動的に位置付けることができる。
【0053】
本実施形態によれば、牽引フック3は係合ピン3bを有している。ガイド溝7aは、後方に行くほど幅が広くなる導入溝7bを有している。導入溝7bは後方に行くほど幅が広くなっているので、牽引車1がガイドレール7の側方を通り過ぎるときに、牽引フック3の係合ピン3bは導入溝7bに係合しやすい。牽引フック3をガイドレール7に係合させやすいため、牽引フック3と被牽引フック4とをより確実に連結させることができる。
【0054】
本実施形態によると、牽引車1に電動シリンダ36が設けられている。牽引フック3の一部である係合ピン3bを電動シリンダ36によって上方に移動させることにより、牽引車1と台車2との連結を解除することができる。本実施形態によれば、牽引車1と台車2との連結の解除を自動化することができる。
【0055】
本実施形態によると、コンピュータ14が、電動モータ12を制御することで、牽引車1の走行、停止、左折、右折を制御している。牽引車1は自動運転車である。本実施形態によれば、牽引車1が台車2の側方を通過するだけで牽引車1と台車2とを連結することができるので、牽引車1と台車2との連結および物品の搬送を自動的に行うことができる。
【0056】
また、本実施形態によれば、牽引車1が台車2の側方を通過するだけで牽引車1と台車2とを連結することができるので、牽引車1が後進不能であっても、牽引車1と台車2とを自動的に連結させることができる。後進不能な車両は、後進可能な車両に比べて安価となる傾向がある。本実施形態によれば、牽引車1として後進不能な車両を利用することができるので、荷役搬送車100を低コスト化することができる。
【0057】
本実施形態によると、台車2には、連結具6により他の台車5が連結されている。牽引車1は、直列に並んだ台車2および台車5の側方を通過することにより、台車2に自動的に連結される。台車2と台車5とは左右に回転可能な連結具6によって連結されているので、牽引車1が台車2を牽引すると、台車5は台車2に続いて走行する。牽引車1は、予め直列に並んだ2台以上の台車を牽引することができる。
【0058】
以上、一実施形態について説明したが、前記実施形態は例示に過ぎない。他にも様々な実施形態が可能である。
【0059】
前記実施形態では、台車2は壁80の後方に待機していることとした(
図1参照)。しかし、台車2の待機位置は何ら限定されない。例えば、
図8Aに示すように、台車2は棚90の前に待機していてもよい。台車2を棚90に横付けすることにより、棚90から台車2に物品9を載せることが容易となる。棚90から台車2に物品9を載せた後、台車2の向きを変えることなく、牽引車1と台車2とを連結することができる。
【0060】
また、
図8Bに示すように、牽引車1は台車2と連結した後、台車2を他の棚91の前に搬送するようにしてもよい。このように台車2を棚91に横付けすることにより、
図8Cに示すように、台車2から棚91に物品9を移すことが容易となる。その後、棚91から台車2に他の物品を載せ、他の牽引車が台車2の側方を通過することによって台車2と連結し、台車2を他の場所に搬送するようにしてもよい。
【0061】
前記実施形態では、
図1に示すように、牽引フック3は牽引車1から左方に延び、ガイドレール7は台車2の右方に配置されているが、牽引フック3が牽引車1から右方に延び、ガイドレール7が台車2の左方に配置されていてもよい。この場合、牽引車1は台車2の左方を通過することにより、台車2と連結される。
【0062】
牽引車1と台車2との連結を解除する方法は、電動シリンダ36の制御に限られない。電動シリンダ36に代えて、他の駆動装置を用いてもよい。また、牽引フック3の一部を上下移動させるのではなく、牽引フック3の全体を上下移動させてもよい。例えば、牽引フック3の全体を上下移動させる駆動装置を牽引車1が有し、牽引フック3全体を下降させることにより、牽引フック3と被牽引フック4との連結を解除してもよい。
【0063】
前記実施形態では、係合ピン3bが電動シリンダ36から下向きに配置されているが、これに限定されない。例えば、係合ピン3bは電動シリンダ36から上向きに配置されていてもよい。この場合、ガイドレール7のガイド溝7aは下方に開いていればよい。すなわち、ガイドレール7の左側壁7cおよび右側壁7dは底壁7eから下方に延びていればよい。なお、係合ピン3bが電動シリンダ36から上向きに配置されている場合は、電動シリンダ36が係合ピン36bを下方に移動させることにより、牽引フック3と被牽引フック4との連結を解除することができる。
【0064】
第1回転力付与部材35のばね35Aの形態は何ら限定されない。ばね35Aは、例えば、圧縮ばねであってもよく、ガススプリングであってもよい。前記実施形態において、第1回転力付与部材35は、牽引フック3に対してフック位置に向かう回転力を与える牽引フック回転力付与部材の一例である。前記実施形態では、第1回転力付与部材35はばね35Aを有するが、回転力の発生源はばね35Aに限られない。第1回転力付与部材35は、例えば、電動シリンダまたはエアシリンダなどのアクチュエータを有していてもよい。
【0065】
ここに用いられた用語及び表現は、説明のために用いられたものであって限定的に解釈するために用いられたものではない。ここに示されかつ述べられた特徴事項の如何なる均等物をも排除するものではなく、本発明のクレームされた範囲内における各種変形をも許容するものであると認識されなければならない。本発明は、多くの異なった形態で具現化され得るものである。この開示は本発明の原理の実施形態を提供するものと見なされるべきである。それらの実施形態は、本発明をここに記載しかつ/又は図示した好ましい実施形態に限定することを意図するものではないという了解のもとで、実施形態がここに記載されている。ここに記載した実施形態に限定されるものではない。本発明は、この開示に基づいて当業者によって認識され得る、均等な要素、修正、削除、組み合わせ、改良及び/又は変更を含むあらゆる実施形態をも包含する。クレームの限定事項はそのクレームで用いられた用語に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書あるいは本願のプロセキューション中に記載された実施形態に限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0066】
1…牽引車、2…台車、3…牽引フック、3b…係合ピン(係合部)、4…被牽引フック、5…台車、6…連結具、7…ガイドレール、7a…ガイド溝、7b…導入溝、12…電動モータ(駆動装置)、13…車輪、14…コンピュータ、35…第1回転力付与部材(牽引フック回転力付与部材)、35A…ばね、36…電動シリンダ(駆動装置)、100…荷役搬送車