(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
B60K 35/00 20240101AFI20240814BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
B60K35/00
G09F9/00 362
G09F9/00 359
(21)【出願番号】P 2022100786
(22)【出願日】2022-06-23
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 吉寿
(72)【発明者】
【氏名】小川 貴之
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-187429(JP,A)
【文献】特開2017-107050(JP,A)
【文献】特開2018-120029(JP,A)
【文献】特開2012-63524(JP,A)
【文献】特開2010-132207(JP,A)
【文献】特開2008-40091(JP,A)
【文献】特開昭62-137236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00-37/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する上部表示領域および下部表示領域を有し、前記上部表示領域を車両のアイポイントと対向させて配置される画像表示装置と、
前記上部表示領域を車両前方から覆うフード部と、
前記上部表示領域に対して前記アイポイントの側に配置されたコンバイナと、
前記下部表示領域を収容しており、かつ上方に向く開口部を有し、前記開口部が前記画像表示装置に対して前記アイポイントの側に位置している収容部と、
前記開口部を閉塞する透明なカバーと、
前記カバーに対して前記コンバイナの側に配置され、かつ前記カバーと対向する貫通孔を有するパネル部材と、
前記収容部の内部に配置され、かつ前記貫通孔を介して前記コンバイナと対向しており、前記下部表示領域の表示光を前記コンバイナに向けて反射する反射部材と、
前記カバーに配置された遮光性のマスク部と、
を備え、
前記貫通孔の形状は、前記アイポイントへ向かう前記表示光が通過する領域
である通過領域と、前記通過領域よりも外側に広がった拡幅部
と、を有する形状であり、
前記マスク部は、前記カバーにおける前記拡幅部と対向する領域に設けられて
おり、かつ前記通過領域と重ならないように配置されている
ことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記拡幅部の範囲は、前記アイポイントから見て前記パネル部材が前記コンバイナに映り込まないように定められている
請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記拡幅部は、前記アイポイントから見て前記コンバイナに映り込む前記貫通孔の形状が前記コンバイナの形状と対応した形状となるように設けられている
請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記マスク部は、前記カバーにおける前記コンバイナと対向する面とは反対側の面に配置されている
請求項1から3の何れか1項に記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記収容部は、前記車両のインストルメントパネルに収容されており、
前記パネル部材は、前記インストルメントパネルと干渉することなく前記収容部に対して着脱可能である
請求項1から3の何れか1項に記載の車両用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバイナを有する車両用表示装置がある。特許文献1には、表示光を出射する表示装置本体と、該表示装置本体の上部に固定されて表示装置本体から出射される表示光が投影されるコンバイナと、を備えた車両用表示装置が開示されている。特許文献1の車両用表示装置では、表示光は、ハウジングの開口部の表ガラスを介してハウジングの外部へ出射され、コンバイナの表示領域へ照射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
壁面に形成された開口部を介して表示装置からコンバイナに向けて表示光を投影する場合、コンバイナには、表示装置の画像表示領域に加えて画像表示領域を囲む開口部が映ることがある。コンバイナに開口部が映ることによる意匠性の低下を抑制できることが望ましい。
【0005】
本発明の目的は、意匠性の向上を図ることができる車両用表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両用表示装置は、画像を表示する上部表示領域および下部表示領域を有し、前記上部表示領域を車両のアイポイントと対向させて配置される画像表示装置と、前記上部表示領域を車両前方から覆うフード部と、前記上部表示領域に対して前記アイポイントの側に配置されたコンバイナと、前記下部表示領域を収容しており、かつ上方に向く開口部を有し、前記開口部が前記画像表示装置に対して前記アイポイントの側に位置している収容部と、前記開口部を閉塞する透明なカバーと、前記カバーに対して前記コンバイナの側に配置され、かつ前記カバーと対向する貫通孔を有するパネル部材と、前記収容部の内部に配置され、かつ前記貫通孔を介して前記コンバイナと対向しており、前記下部表示領域の表示光を前記コンバイナに向けて反射する反射部材と、前記カバーに配置された遮光性のマスク部と、を備え、前記貫通孔の形状は、前記アイポイントへ向かう前記表示光が通過する領域よりも外側に広がった拡幅部を有する形状であり、前記マスク部は、前記カバーにおける前記拡幅部と対向する領域に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る車両用表示装置は、透明なカバーと、カバーと対向する貫通孔を有するパネル部材と、カバーに配置された遮光性のマスク部と、を有する。貫通孔の形状は、アイポイントへ向かう表示光が通過する領域よりも外側に広がった拡幅部を有する形状であり、マスク部は、カバーにおける拡幅部と対向する領域に設けられている。本発明に係る車両用表示装置によれば、コンバイナに開口部が映ることによる意匠性の低下を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る車両用表示装置の断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る車両用表示装置の斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るパネル部材の側面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るパネル部材の拡大図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る車両用表示装置の正面図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る車両用表示装置の正面図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係るパネル部材の平面図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係るパネル部材およびカバーの平面図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係るカバーの拡大図である。
【
図11】
図11は、実施形態の車両用表示装置による画像表示を示す図である。
【
図12】
図12は、実施形態に係るパネル部材の平面図である。
【
図13】
図13は、実施形態に係るパネル部材およびカバーの平面図である。
【
図14】
図14は、実施形態の車両用表示装置による画像表示を示す図である。
【
図15】
図15は、比較例のパネル部材およびカバーの平面図である。
【
図16】
図16は、比較例の車両用表示装置による画像表示を示す図である。
【
図18】
図18は、実施形態の変形例に係るパネル部材の斜視図である。
【
図19】
図19は、実施形態の変形例に係るパネル部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態に係る車両用表示装置につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
[実施形態]
図1から
図17を参照して、実施形態について説明する。本実施形態は、車両用表示装置に関する。
図1は、実施形態に係る車両用表示装置の断面図、
図2は、実施形態に係る車両用表示装置の斜視図、
図3は、実施形態に係るパネル部材の側面図、
図4は、実施形態に係るパネル部材の拡大図、
図5および
図6は、実施形態に係る車両用表示装置の正面図、
図7は、実施形態に係るパネル部材の平面図、
図8は、実施形態に係るパネル部材およびカバーの平面図、
図9は、実施形態に係るカバーの拡大図、
図10は、実施形態に係るカバーの側面図である。
【0011】
図11は、実施形態の車両用表示装置による画像表示を示す図、
図12は、実施形態に係るパネル部材の平面図、
図13は、実施形態に係るパネル部材およびカバーの平面図、
図14は、実施形態の車両用表示装置による画像表示を示す図である。
【0012】
図1に示すように、車両用表示装置1は、筐体2、画像表示装置3、反射部材4、およびコンバイナ5を有する。車両用表示装置1は、自動車等の車両100に搭載される。本実施形態の車両用表示装置1は、コンバイナ5によってドライバの前方に虚像を表示させることが可能なメータ装置である。例示された車両用表示装置1は、インストルメントパネル120に配置されている。
【0013】
本実施形態の車両用表示装置1は、車両100のアイポイントEPに対して実像および虚像を表示するように構成されている。より詳しくは、車両用表示装置1は、画像表示装置3の上部に表示される画像を実像としてドライバに視認させ、かつ画像表示装置3の下部に表示される画像を虚像としてドライバに視認させる。なお、アイポイントEPは、ドライバの目の位置として予め想定された位置、またはドライバの実際の目の位置である。
【0014】
筐体2は、収容部6、フード部7、およびパネル部材8を有する。収容部6およびフード部7は、一体であってもよく、別の部材であってもよい。収容部6は、インストルメントパネル120に収容される。収容部6は、箱形状を有しており、かつ遮光性を有する。収容部6は、上方に向けて開口する開口部61を有する。開口部61は、収容部6の上部に位置している。開口部61は、画像表示装置3に対して後側X2、すなわちアイポイントEPの側に位置している。
【0015】
開口部61には、透明なカバー62が配置されている。カバー62は、開口部61を閉塞する。カバー62の形状は、収容部6の内方に向けて湾曲した湾曲形状である。カバー62は、外光を遮光壁に向けて反射するように形成されている。例えば、カバー62は、ウインドシールド110を透過した外光をフード部7の壁面又はアイポイント以外の方向に向けて反射する。
【0016】
以下の説明において、車両前後方向Xにおける前側を「前側X1」と称し、車両前後方向Xにおける後側を「後側X2」と称する。また、車両上下方向Zにおける上側を「上側Z1」と称し、車両上下方向Zにおける下側を「下側Z2」と称する。車両用表示装置1によって表示される画像の画像縦方向は、車両上下方向Zに対応している。
【0017】
図2に示すように、本実施形態のパネル部材8は、収容部6に対して着脱可能である。パネル部材8は、カバー62に対してコンバイナ5の側に配置される。パネル部材8は、遮光性の部材であり、例えば、樹脂で成型される。パネル部材8は、インパネ面8a、複数のクリップ8b、および複数の突出部8cを有する。インパネ面8aは、インストルメントパネル120の上面と連続する面を構成する。インパネ面8aは、例えば、インストルメントパネル120の上面と同様の表面加工がなされている。クリップ8bは、パネル部材8における後側X2の縁部に配置された係合部である。クリップ8bは、下側Z2に向けて突出している。突出部8cは、パネル部材8の前端に配置されており、前側X1に向けて突出している。
【0018】
収容部6は、クリップ8bを受け入れる複数の係合部6b、および突出部8cを受け入れる複数の凹部6cを有する。係合部6bは、カバー62に対して後側X2に配置されている。より詳しくは、収容部6は、上側Z1に向けて隆起した支持部60を有する。支持部60は、パネル部材8を下方から支持する。支持部60は、車幅方向Yに沿って収容部6の一端から他端まで延在している。車両前後方向Xにおける支持部60の位置は、カバー62における後側X2の辺の近傍である。係合部6bは、支持部60の両端に配置されている。
【0019】
凹部6cは、カバー62に対して前側X1に配置されている。より詳しくは、収容部6は、フード部7の下側Z2に位置する壁部63を有する。壁部63は、後側X2を向いており、車幅方向Yに沿って延在している。凹部6cは、壁部63の両端に配置されている。
【0020】
図2に示すように、パネル部材8の突出部8cは、収容部6の凹部6cに対し車両前後方向Xに沿って挿入される。また、クリップ8bは、係合部6bに対し車両上下方向Zに沿って挿入される。
図4に示すように、係合部6bは、クリップ8bが挿入可能な凹形状を有している。係合部6bは、クリップ8bを係止する爪等を有している。パネル部材8は、クリップ8bを対応する係合部6bに係合させることによって収容部6に対して固定される。
【0021】
本実施形態の車両用表示装置1は、インストルメントパネル120を取り外すことなくパネル部材8を交換できるように構成されている。すなわち、収容部6が車両100に固定されている状態で、インストルメントパネル120に干渉することなくパネル部材8を収容部6から取り外すこと、およびインストルメントパネル120に干渉することなくパネル部材8を収容部6に取り付けることができる。
【0022】
図2に示すように、パネル部材8は、パネル部材8を板厚方向に貫通する貫通孔80を有する。貫通孔80は、カバー62と対向する位置に配置されている。すなわち、パネル部材8が収容部6に固定された状態で、貫通孔80の全体がカバー62と対向する。パネル部材8は、貫通孔80に隣接した傾斜部81,82を有する。傾斜部81は、貫通孔80に対して車幅方向Yの両側に配置されている。傾斜部82は、貫通孔80に対して前側X1に配置されている。傾斜部81,82は、貫通孔80へ近づくに従って下側Z2へ向かうように傾斜している。
【0023】
画像表示装置3は、画像を表示する装置であり、例えば、TFT-LCD(Thin Film Transistor-Liquid Crystal Display)等の液晶表示装置である。画像表示装置3は、バックライトユニットを有しており、バックライトユニットの光によって表示光を出力する。
図1に示すように、画像表示装置3は、上部表示領域30uおよび下部表示領域30dを有する。上部表示領域30uおよび下部表示領域30dは、表示光を出力する発光領域である。上部表示領域30uは、画像表示装置3の表示面30における上側Z1に位置している。下部表示領域30dは、表示面30における下側Z2に位置している。
【0024】
画像表示装置3は、上部表示領域30uをアイポイントEPと対向させて配置される。画像表示装置3は、例えば、筐体2に固定され、筐体2によって保持される。
図1に示すように、収容部6は、下部表示領域30dを収容して画像表示装置3を保持する。画像表示装置3は、収容部6における前側X1の端部に配置され、かつ表示面30を後側X2に向けている。上部表示領域30uは、収容部6から上方に向けて突出している。上部表示領域30uは、フード部7の内部空間70に収容される。フード部7は、遮光性を有しており、上部表示領域30uを車両前方から覆っている。フード部7は、上部表示領域30uを外光に対して遮蔽できるように形成されている。フード部7は、
図1に示すように、上部表示領域30uを上方から覆う庇部71を有する。
【0025】
図1および
図5に示すように、コンバイナ5は、フード部7の内部空間70を覆うように配置されている。つまり、コンバイナ5は、アイポイントEPから見て内部空間70を遮蔽するように配置されている。例示されたコンバイナ5の形状は、略六角形状である。画像表示装置3の上部表示領域30uは、アイポイントEPから見てコンバイナ5の背後に位置している。言い換えると、コンバイナ5は、上部表示領域30uに対してアイポイントEPの側に配置されている。
【0026】
コンバイナ5は、例えば、ハーフミラーで構成される。コンバイナ5は、入射する光の一部を透過させることができ、かつ入射する光の一部を透過させることができる透明な反射部材である。コンバイナ5は、アイポイントEPと対向する反射面5aを有している。反射面5aには、光を反射するコーティング処理等がなされていてもよい。
【0027】
図1に示すように、反射部材4は、収容部6の内部に配置され、かつ開口部61を介してコンバイナ5の反射面5aと対向している。反射部材4は、収容部6における後側X2の端部に配置されており、下部表示領域30dと対向している。反射部材4は、下部表示領域30dから出力される表示光Ltをコンバイナ5に向けて反射する。コンバイナ5の反射面5aは、下部表示領域30dの表示光LtをアイポイントEPに向けて反射する。アイポイントEPで視認される虚像Viは、反射面5aよりも前側X1の位置で結像する。虚像Viは、下部表示領域30dの虚像であり、下部表示領域30dに表示された画像を含んでいる。
【0028】
図6に示すように、コンバイナ5は、第一領域51および第二領域52を有する。第一領域51は、虚像の表示に用いられる領域である。第二領域52は、実像を透過させる領域である。第一領域51は、コンバイナ5の上部に位置しており、第二領域52は、コンバイナ5の下部に位置している。第一領域51には、画像表示装置3の下部表示領域30dの画像が投影される。第一領域51は、下部表示領域30dの表示光LtをアイポイントEPに向けて反射する。第二領域52は、画像表示装置3の上部表示領域30uからアイポイントEPへ向かう表示光の光路に対応している。第二領域52は、上部表示領域30uの実像をアイポイントEPに向けて透過させる。例示された第一領域51および第二領域52の形状は、矩形である。
【0029】
なお、第一領域51の下端部と第二領域52の上端部とが重なっていてもよい。また、車幅方向Yにおける第一領域51の長さと第二領域52の長さとは異なっていてもよい。第一領域51の形状および第二領域52の形状は、矩形には限定されない。例えば、第一領域51および第二領域52の形状は、コンバイナ5の形状に応じて定められてもよい。
【0030】
コンバイナ5は、端部領域53を有する。端部領域53は、第一領域51および第二領域52に対して車幅方向Yの両側に位置している。本実施形態の車両用表示装置1は、以下に説明するように、端部領域53への構造物の映り込みを制御して意匠性を向上できるように構成されている。
【0031】
図7に示すように、貫通孔80の形状は、コンバイナ5の形状と類似または相似な形状である。例示された貫通孔80の形状は、略六角形である。貫通孔80における車幅方向Yの両端は、外側に向かう凸形状を有しており、屈曲部80vを有している。貫通孔80は、下部表示領域30dの表示光Ltが通過する通過領域80aを有する。通過領域80aの形状は、例えば、矩形または台形である。貫通孔80の通過領域80aを通過する表示光Ltは、コンバイナ5の第一領域51に投影されてアイポイントEPに向けて反射される。車両前後方向Xにおける通過領域80aの幅は、例えば、アイポイントEPの高さ位置が変化しても虚像Viが見切れないように定められる。
【0032】
貫通孔80の形状は、通過領域80aよりも外側に広がった拡幅部80xを有する形状である。拡幅部80xは、通過領域80aに対して車幅方向Yの外側の領域である。つまり、拡幅部80xは、コンバイナ5の端部領域53に対応している。拡幅部80xは、貫通孔80における両端部に設けられている。本実施形態では、貫通孔80がコンバイナ5と対応する形状を有していることにより、拡幅部80xが五角形の形状を有している。
【0033】
図7に例示された傾斜部81は、段差形状を有している。すなわち、傾斜部81は、段差を設けて配置された複数の対向面83を有している。対向面83は、コンバイナ5と対向する面であり、アイポイントEPから見た場合にコンバイナ5に写り込む。車両上下方向Zにおける対向面83の位置は、貫通孔80へ近づくに従って下側Z2へ向かうようにずれている。つまり、傾斜部81は、貫通孔80へ近づくに従って対向面83がコンバイナ5から遠ざかるように形成されている。各対向面83は、貫通孔80の屈曲形状に対応して屈曲しており、屈曲部80vに対応する屈曲部を有している。
【0034】
図8には、収容部6に取り付けられたパネル部材8が示されている。なお、
図8ではフード部7およびコンバイナ5の図示が省略されている。パネル部材8は、カバー62の縁部を覆うように配置される。カバー62には、遮光性のマスク部64が設けられている。マスク部64の色は、例えば、黒であり、光沢や艶のある色であってもよい。マスク部64の色は、ピアノブラックであってもよい。マスク部64は、光を遮る遮光層であり、例えば、カバー62に対して印刷により形成される。マスク部64は、カバー62における拡幅部80xと対向する領域に設けられている。マスク部64は、カバー62における車幅方向Yの両端部に配置されている。例示されたマスク部64の形状は、三角形である。
【0035】
マスク部64は、カバー62に透光領域65を形成する。透光領域65は、光が透過できる領域であり、二つのマスク部64の間の領域である。下部表示領域30dの表示光Ltは、透光領域65を通ってコンバイナ5に投影される。例示された透光領域65の形状は、台形である。ただし、透光領域65の形状は任意である。
【0036】
本実施形態のカバー62には、マスク部64に隣接してグラデーション領域66が設けられている。グラデーション領域66は、マスク部64と透光領域65との境界部に配置されている。グラデーション領域66は、マスク部64から透光領域65へ近づくに従って表示光の透過率が徐々に大きくなるように形成される。グラデーション領域66は、例えば、
図9に示すように多数のドットによる網点印刷で形成される。グラデーション領域66は、マスク部64と透光領域65との境界を目立ちにくくすることができる。マスク部64およびグラデーション領域66は、パネル部材8の通過領域80aと重ならないように配置される。
【0037】
図10に示すように、マスク部64およびグラデーション領域66は、カバー62の内側面62bに配置されている。内側面62bは、下側Z2を向く面であり、収容部6の内部空間を向いている。カバー62の外側面62aは、上側Z1を向く面であり、コンバイナ5と対向する。外側面62aは、平滑な面であり、光沢を有する。内側面62bは、外側面62aと同様の平滑な面であってもよい。
【0038】
図11には、画像が表示されているときのコンバイナ5が示されている。車両用表示装置1は、虚像Viおよび実像Riを表示する。虚像Viは、下部表示領域30dに表示された画像であり、コンバイナ5によってアイポイントEPに向けて反射される。実像Riは、上部表示領域30uに表示された画像であり、アイポイントEPに向けてコンバイナ5を透過する。アイポイントEPから見た場合に虚像Viが結像する位置は、実像Riに対して前側X1の位置である。これにより、ドライバに奥行き感を感じさせることができる。
【0039】
コンバイナ5には、インパネ面8aの虚像8v、および傾斜部81の虚像81vが映っている。本実施形態では、パネル部材8の貫通孔80の形状がコンバイナ5の形状と同様の六角形である。また、傾斜部81がコンバイナ5の屈曲部5bと対応する屈曲形状を有する。よって、虚像81vの形状とコンバイナ5の形状とが調和し、意匠性が向上する。また、インパネ面8aが映り込むことによる違和感が軽減される。
【0040】
また、コンバイナ5には、マスク部64の虚像64vも映る。マスク部64は、収容部6からの光の漏れを規制している。更に、マスク部64が黒色である。よって、虚像64vは黒色の暗い画像となり、アイポイントEPから視認されにくい。虚像Viおよび実像Riが表示される領域の側方が暗くなることで、奥行き感や浮遊感が演出される。また、傾斜部81が段差形状を有することで、虚像81vによって奥行き感が更に向上する。
【0041】
なお、パネル部材8の形状は、
図12に示すように、コンバイナ5にインパネ面8aが映り込まない形状であってもよい。
図12に示す貫通孔80は、コンバイナ5に対応する領域R5を含むように形成されている。
図12に例示された拡幅部80xの形状は、台形である。拡幅部80xは、コンバイナ5に対応する領域R5と重なっている。拡幅部80xは、コンバイナ5に対応する領域R5よりも車幅方向Yの外側まで設けられている。つまり、拡幅部80xの範囲は、アイポイントEPから見てパネル部材8がコンバイナ5に映り込まないように定められている。
図12に例示された拡幅部80xの範囲は、インパネ面8aのうち、少なくとも車幅方向Yの端部8dがコンバイナ5に映らないように設定されている。
【0042】
図13には、
図12に示すパネル部材8が収容部6に取り付けられた状態が示されている。なお、
図13ではフード部7およびコンバイナ5の図示が省略されている。
図13に示すように、カバー62のマスク部64は、拡幅部80xと対向する領域に設けられる。
図13に例示されたマスク部64の形状は、四角形である。マスク部64と透光領域65との境界部には、グラデーション領域66が設けられている。
【0043】
図14には、
図13のマスク部64が映り込んだコンバイナ5が示されている。マスク部64の虚像64vがわずかに見えるが、インパネ面8aの虚像8v(
図11参照)と比較して目立たない。カバー62の外側面62aは、インパネ面8aと異なり平滑な面である。よって、外側面62aがコンバイナ5に映る場合、インパネ面8aがコンバイナ5に映る場合よりも違和感が小さい。コンバイナ5の反射面5aに平滑な外側面62aが映ったとしても異質な感じをドライバに与えにくい。
【0044】
図14に示す車両用表示装置1では、虚像Viや実像Riの側方に大きな空間が存在するように見える。よって、虚像Viや実像Riの浮遊感が向上する。すなわち、広い空間に虚像Viや実像Riが浮かび上がっているような感覚を演出することができる。実像Riは、鳥瞰図によって奥行きを演出している。実像Riにおける車幅方向Yの端部は、虚像64vに向けて暗くなるグラデーションが施されている。これにより、実像Riよりも外側に向けて空間が広がっている感じが生み出される。
【0045】
本実施形態の車両用表示装置1について、複数の評価者による官能評価の結果を説明する。以下の説明では、
図8に示すパネル部材8およびカバー62の組み合わせを「第一構成」と称し、
図13に示すパネル部材8およびカバー62の組み合わせを「第二構成」と称する。また、官能評価では、
図15および
図16を参照して説明する比較例の車両用表示装置200との比較がなされた。
【0046】
図15に示す比較例のパネル部材208では、貫通孔80が拡幅部80xを有していないか、もしくは実施形態と比較して拡幅部が小さい。貫通孔80の端部84は、コンバイナ5に対応する領域R5よりも車幅方向Yの内側に位置している。比較例のパネル部材208には、傾斜部81が設けられていない。また、比較例のカバー62にはマスク部64およびグラデーション領域66は設けられていない。すなわち、カバー62において、貫通孔80から露出している領域の全体が透光領域65である。
【0047】
収容部6の内部へ外光が入り込むことを抑制する観点では、貫通孔80を小さくすることが好ましい。例えば、貫通孔80は、通過領域80aを含む範囲で出来るだけ小さくすることが好ましい。その一方で、貫通孔80を小さくした場合、コンバイナ5に映り込むインパネ面8aの面積が大きくなってしまう。
【0048】
図16に示すように、比較例のパネル部材208を用いた場合、コンバイナ5にはインパネ面8aの虚像8vが映り込んでいる。比較例では、実施形態と比較して、虚像8vの面積が大きい。また、パネル部材208が傾斜部81を有していないことで、貫通孔80のエッジが目立ちやすい。
【0049】
図17には、三名の評価者による評価結果が示されている。この評価では、室内に本実施形態の車両用表示装置1および比較例の車両用表示装置200が設置され、インパネ面8aが室内光によって照らされる状態で評価がなされた。
【0050】
第一構成では比較例に対して統一感が感じられ、枠の違和感がないという評価となった。また、第一構成は比較例に対して奥行き感が感じられるという評価を得た。第二構成は、比較例に対して落ち着き感や高級感があるという評価、見栄えがよいという評価を得た。また、第二構成は、明確な枠が感じられないため違和感がなく、見栄えが良いという評価を得た。更に、第二構成は、浮遊感が強いとの評価を得た。第一構成と第二構成との比較では、奥行き感については第一構成の評価が高く、浮遊感については第二構成の評価が高かった。
【0051】
以上説明したように、本実施形態の車両用表示装置1は、画像表示装置3と、フード部7と、コンバイナ5と、収容部6と、透明なカバー62と、パネル部材8と、反射部材4と、マスク部64と、を有する。画像表示装置3は、画像を表示する上部表示領域30uおよび下部表示領域30dを有し、上部表示領域30uを車両100のアイポイントEPと対向させて配置される。フード部7は、上部表示領域30uを車両前方から覆う。コンバイナ5は、上部表示領域30uに対してアイポイントEPの側に配置されている。
【0052】
収容部6は、下部表示領域30dを収容しており、かつ上方に向く開口部61を有する。開口部61は、画像表示装置3に対してアイポイントEPの側に位置している。開口部61は、カバー62によって閉塞される。パネル部材8は、カバー62に対してコンバイナ5の側に配置され、かつカバー62と対向する貫通孔80を有する。反射部材4は、収容部6の内部に配置され、かつ貫通孔80を介してコンバイナ5と対向する。反射部材4は、下部表示領域30dの表示光Ltをコンバイナ5に向けて反射する。
【0053】
マスク部64は、遮光性を有し、カバー62に配置される。貫通孔80の形状は、アイポイントEPへ向かう表示光Ltが通過する通過領域80aよりも外側に広がった拡幅部80xを有する形状である。マスク部64は、カバー62における拡幅部80xと対向する領域に設けられている。本実施形態のパネル部材8は、拡幅部80xを有することで、コンバイナ5に映り込むインパネ面8aの面積を小さくすることができる。更に、カバー62にマスク部64が設けられていることで、アイポイントEPから見た場合に画像に隣接する部分を暗くすることができる。よって、本実施形態の車両用表示装置1は、コンバイナ5による画像表示の意匠性を向上させることができる。
【0054】
拡幅部80xの範囲は、アイポイントEPから見てパネル部材8がコンバイナ5に映り込まないように定められてもよい。パネル部材8がコンバイナ5に映り込まないことで、意匠性の向上が可能である。拡幅部80xの範囲は、例えば、アイポイントEPから見た場合に画像の側方にパネル部材8が映り込まないように定められてもよい。
【0055】
拡幅部80xは、アイポイントEPから見てコンバイナ5に映り込む貫通孔80の形状がコンバイナ5の形状と対応した形状となるように設けられてもよい。例えば、
図7に示す貫通孔80の形状は、コンバイナ5の形状と対応した六角形である。貫通孔80の形状とコンバイナ5の形状とが対応していることで、意匠性が向上する。
【0056】
本実施形態のマスク部64は、カバー62の内側面62bに配置されている。内側面62bは、カバー62におけるコンバイナ5と対向する面とは反対側の面である。このような構成により、コンバイナ5に映るマスク部64に対する違和感が軽減される。
【0057】
本実施形態の収容部6は、車両100のインストルメントパネル120に収容される。パネル部材8は、インストルメントパネル120と干渉することなく収容部6に対して着脱可能である。ユーザが好みのパネル部材8と交換することが容易となり、意匠性の向上が可能である。
【0058】
なお、カバー62にはグラデーション領域66が設けられなくてもよい。パネル部材8は、収容部6が車両100に固定された状態で着脱できなくてもよい。上部表示領域30uと下部表示領域30dとが別の表示装置であってもよい。
【0059】
[実施形態の変形例]
実施形態の変形例について説明する。
図18および
図19は、実施形態の変形例に係るパネル部材の斜視図である。パネル部材8のインパネ面8aには、インストルメントパネル120の上面と異なる表面加工がなされてもよい。
図18に示すパネル部材8では、インパネ面8aに対してカーボン調の表面加工がなされている。
【0060】
図19に示すように、パネル部材8には、加飾部85が設けられてもよい。加飾部85は、インパネ面8aにおける内側の境界部に配置される。つまり、加飾部85は、インパネ面8aと、インパネ面8aよりも内側の領域とを仕切る。加飾部85は、インパネ面8aがコンバイナ5に映り込むことによる違和感を軽減させることができる。
【0061】
加飾部85は、独立した部材であってもよく、パネル部材8の一部であってもよい。加飾部85の表面には、メッキがなされていてもよい。平面視における加飾部85の形状は、コンバイナ5の形状と対応していることが好ましい。コンバイナ5が六角形である場合、加飾部85の形状は、六角形の輪郭の形状であってもよい。
【0062】
上記の実施形態および変形例に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 車両用表示装置
2:筐体、 3:画像表示装置、 4:反射部材、 5:コンバイナ、 5a:反射面
6:収容部、 6b:係合部、 6c:凹部
7:フード部、 8:パネル部材
8a:インパネ面、 8b:クリップ、 8c:突出部、 8v:虚像
30:表示面、 30d:下部表示領域、 30u:上部表示領域
51:第一領域、 52:第二領域、 53:端部領域
60:支持部、 61:開口部、 62:カバー、 63:壁部、 64:マスク部
65:透光領域、 66:グラデーション領域
70:内部空間、 71:庇部
80:貫通孔、 80a:通過領域、 80x:拡幅部
81,82:傾斜部、 81v:虚像、 83:対向面、 84:端部
100:車両、 110:ウインドシールド、 120:インストルメントパネル
EP:アイポイント
Lt:表示光、 Ri:実像、 Vi:虚像
X:車両前後方向、 X1:前側、 X2:後側
Y:車幅方向
Z:車両上下方向、 Z1:上側、 Z2:下側