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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】前駆体容器
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/455 20060101AFI20240814BHJP
   C23C 16/448 20060101ALI20240814BHJP
   C23C 16/452 20060101ALI20240814BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20240814BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20240814BHJP
   H01L 21/365 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
C23C16/455
C23C16/448
C23C16/452
H01L21/205
H01L21/31 F
H01L21/365
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022138870
(22)【出願日】2022-09-01
(65)【公開番号】P2023038922
(43)【公開日】2023-03-17
【審査請求日】2022-09-01
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】20215940
(32)【優先日】2021-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510275024
【氏名又は名称】ピコサン オーワイ
【氏名又は名称原語表記】PICOSUN OY
【住所又は居所原語表記】Tietotie 3, FI-02150 Espoo, Finland
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【弁理士】
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】ブロムバリ トム
【合議体】
【審判長】粟野 正明
【審判官】井上 猛
【審判官】相澤 啓祐
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/455
C23C 16/448
C23C 16/452
H01L 21/31
H01L 21/205
H01L 21/365
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前駆体物質を収容するための第1のチャンバによって形成された第1の空間と;
第2のチャンバによって形成され、仕切り壁によって前記第1の空間から分離された第2の空間と;
前記仕切り壁を貫通し、前記第1の空間と前記第2の空間とを接続するコンジットと;
前記第1の空間に不活性ガスを供給するために前記第1の空間に設けられるインレットと;
不活性ガスと前駆体物質の混合物を前記第2の空間から排出するために前記第2の空間に設けられるアウトレットと;
を備え、
前記コンジットは、前記第1の空間内の圧力上昇に伴い、前記第1の空間内に収容された前記前駆体物質に前記第2の空間への経路を提供し、
前記仕切り壁は、前記第1の空間から前記第2の空間へのガスの透過を可能にするガス透過壁である、
前駆体容器。
【請求項2】
前記インレット又は前記アウトレットがバルブを備える、請求項1に記載の前駆体容器。
【請求項3】
前記第2の空間を加熱するように構成された、取り付けられた加熱手段を備える、請求項に記載の前駆体容器。
【請求項4】
前記加熱手段は、パルス段階中に、前記第2の空間を前記第1の空間内の温度よりも高い温度に加熱するように構成される、請求項3に記載の前駆体容器。
【請求項5】
前記第1のチャンバが熱伝導率の低い材料からなり、前記第2のチャンバが前記第1のチャンバの前記材料と比較して熱伝導率の高い材料からなる、請求項に記載の前駆体容器。
【請求項6】
前記第2の空間に配置または取り付けられる、気化を増加させる手段を備える、請求項3又は4に記載の前駆体容器。
【請求項7】
前記気化を増加させる手段は超音波源、赤外線源またはマイクロ波源を備える、請求項6に記載の前駆体容器。
【請求項8】
第1のチャンバによって形成される第1の空間と、第2のチャンバによって形成され、ガス透過性の仕切り壁によって前記第1の空間から分離された第2の空間とを備える前駆体容器を取り扱う方法であって、
前記第1の空間に設けられるインレットから不活性ガスを前記第1の空間内に供給することにより、前記第1の空間内の圧力を高めて、前記第1の空間内に収容された前駆体物質を、前記仕切り壁を通過するコンジットに沿って前記第1の空間から前記第2の空間へ移動させることと;
前記ガス透過性の仕切り壁を通して、前記第1の空間から前記第2の空間へ前記不活性ガスを供給することと;
前記不活性ガス及び前記前駆体物質を前記第2の空間からアウトレットに排出することと;
を含む、方法。
【請求項9】
パルス段階において前記第1の空間に前記不活性ガスを通すことを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
パルス段階中に、前記第2の空間を前記第1の空間内の温度よりも高い温度に加熱することを含む、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
エネルギー源を用いて、前記第2の空間内の前駆体物質の蒸発を増加させることを含む、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記エネルギー源は超音波源、赤外線源、またはマイクロ波源を備える、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に前駆体容器に関する。
【発明の背景】
【0002】
このセクションは、有用な背景情報を説明するが、ここで説明されている技術が技術水準を示していることを認めている訳ではないことに注意されたい。
【0003】
CVD (Chemical Vapor Deposition,化学蒸着) やALD (Atomic Layer Deposition,原子層堆積) プロセスでは、基板表面に少なくとも1つの原子層を堆積するために、ある最小量の反応性ガス、前駆体が必要とされる。最適な温度で行われる理想的なALDプロセスでは、前駆体の量が過剰であっても、堆積される薄膜の成長速度に悪影響を与えることはない。しかし、堆積される材料や堆積条件によっては、前駆体化学物質の量が多すぎると堆積速度に影響を与える場合がある。また、化学物質の中には非常に高価なものもあり、過剰に使用すると不要な廃棄物が発生することもある。CVDの場合、前駆体の量はさらに重要である。また、ALDとCVDを組み合わせたプロセス、例えば、パージ工程を伴わないALDの場合においても、前駆体の量はさらに重要である。前駆体ボトル内の化学物質の高さが変化し、化学物質が気化する容積が増減すると、ガスパルスあたりのドーズ量が変化し、膜成長に影響を与える。また、不活性ガス(N2やArなどのキャリアガス)を加えることは、流体の圧力、濃度、および/または流速を、成膜品質に影響を与える程度に大きく変化させることができる。したがって、前駆体容器内のガス体積の変化による問題を軽減する必要があり、さらに、ALD/CVDリアクターのガス供給配置の改善を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明のある実施形態の課題は、改良された前駆体容器を提供すること、又は、少なくとも既存技術に対する代替手段を提供することである。
【0005】
本発明の第1の例示的な捉え方によれば、次のような前駆体容器が提供される。この前駆体容器は、
前駆体物質を収容するための第1のチャンバによって形成された第1の空間と;
第2のチャンバによって形成され、仕切り壁によって前記第1の空間から分離された第2の空間と;
前記仕切り壁を貫通し、前記第1の空間と前記第2の空間とを接続するコンジットと;
を備える。
【0006】
前記コンジットは、前記第1の空間内の圧力上昇に伴い、前記第1の空間内に収容された前記前駆体物質に前記第2の空間への経路を提供し、
前記仕切り壁は、前記第1の空間から前記第2の空間へのガスの透過を可能にするガス透過壁である。
【0007】
実施形態によっては、前駆体物質は液体前駆体物質である。実施形態によっては、液体前駆体物質は熱に敏感(heat sensitive)である。熱に敏感な前駆体物質は、高温で長期間保存されると分解する可能性がある。実施形態によっては、前記前駆体物質は、有機金属化合物、有機金属化合物、有機化合物、シラン、ポリシラン、置換シラン、及び環状シランを含むがこれらに限定されない群から選択されてもよい。
【0008】
実施形態によっては、前記ガス透過性の隔壁は、多孔質焼結アルミニウム円板など、多孔質焼結体である。
【0009】
実施形態によっては、前記前駆体物質が前記第1の空間の全体を占める。実施形態によっては、前記前駆体物質が前記第1の空間の全体を占めず、液体前駆体物質が前記第1の空間内にある高さの液面(液面レベル)を形成する。
【0010】
実施形態によっては、前記コンジットは、前記第1の空間に収容された前記前駆体物質の前記液面レベルより下に延びている。実施形態によっては、前記コンジットはディップチューブなどのチューブである。実施形態によっては、前記コンジットはステンレス製である。
【0011】
実施形態によっては、前記前駆体容器は、前記第1の空間に配置または取り付けられたインレット(入口)を備える。実施形態によっては、前記インレットはバルブを備える。実施形態によっては、前記インレットから前記第1の空間に不活性ガスが供給される。実施形態によっては、前記不活性ガスはキャリアガスである。
【0012】
実施形態によっては、前記液体前駆体物質は前記第1のチャンバ全体を占め、前記液体前駆体物質の液面レベル又はメニスカスが、1つ又は複数のチャンバ壁に直接接触する。他の実施形態では、前記液体前駆体物質は前記第1のチャンバ全体を占有せず、前記液体前駆体物質の液面レベル又はメニスカスと1つ又は複数のチャンバ壁との間にヘッドスペースが存在する。実施形態によっては、前記ヘッドスペースは、前記前駆体物質の液面レベルまたはメニスカスと、前記仕切り壁または前記仕切り壁のコンジットとの間に形成される。
【0013】
実施形態によっては、前記不活性ガスは、前記第1の空間に収容された前記前駆体物質の液面より低い位置で供給される。前駆体物質の液面下に不活性ガスを供給すると、前駆体物質が発泡し、気化する。
【0014】
実施形態によっては、前記不活性ガスは、前記第1の空間に収容された前記前駆体物質の液面より高い位置で供給される。第1の空間に不活性ガスが供給されることにより、第1の空間内の圧力が上昇する。この圧力によって、第1の空間に収容された前駆体物質の少なくとも一部が、コンジットを介して第2の空間に押し出される。第2の空間に押し出される前駆体物質の量は、導入される圧力の強さによって制御されてもよい。実施形態によっては、前記圧力は、導入される不活性ガス(またはインサートガス)の量または流量によって調整される。
【0015】
実施形態によっては、前記第1の空間は第1の温度に、前記第2の空間は第2の温度に維持される。
【0016】
実施形態によっては、前記前駆体容器は、前記第1の空間および/または前記第2の空間を第1および/または第2の温度に加熱するように配された少なくとも1つの加熱手段を備える。実施形態によっては、前記第2の空間を第2の温度に加熱するように加熱手段が配され、前記第2の温度が前記第1の温度よりも暖かいか高いようにする。第1の空間の圧力上昇に伴って、不活性ガスがガス透過性の仕切り壁を通過して第2の空間に流入すると共に、液体前駆体物質が第2の空間に運ばれる。それと同時に第2の空間を第2の温度に加熱すると、前駆体物質の蒸発が促進される。第2容器の第2温度が高くなることと、不活性ガスと液体前駆体との接触・混合が良好であることが複合的に作用し、液体前駆体が液相から気相に気化する。
【0017】
実施形態によっては、前駆体物質の気化を増加させる手段は、前記第2の空間に配置または取り付けられている。実施形態によっては、前記手段は、超音波源、赤外線源、マイクロ波源のうちの少なくとも1つを有する。
【0018】
実施形態によっては、前記前駆体容器は、前記第2の空間に配置または取り付けられたアウトレット(出口)を備える。実施形態によっては、前記アウトレットはバルブを有する。実施形態によっては、不活性ガスと前駆体物質の混合物が、前記第2の空間から前記アウトレットを通じて排出される。
【0019】
実施形態によっては、前記排出された不活性ガスと前駆体物質の混合物は、ALD、MLD(Molecular Layer Deposition,分子層堆積)、ALE(Atomic Layer Etching,原子層エッチング)またはCVDプロセスなど、さらなる使用のために導かれる。
【0020】
実施形態によっては、パルス段階の前(または前駆体物質パルス段階の前)の前記第1の空間の圧力は、前記第2の空間の圧力と同じか実質的に類似している。さらに、実施形態によっては、パルス段階の前に、前記第1の温度と前記第2の温度は同じか実質的に類似している。
【0021】
実施形態によっては、パルス段階の間(または前駆体物質のパルス段階の間)、不活性ガスが前記第1の空間に供給され、前記第1の空間内の圧力が上昇し、この圧力上昇により前駆体物質がコンジットを通って前記第2の空間に押し出される。前記第2の空間は、少なくともパルスの間、前記第1の空間の第1の温度より高い第2の温度に加熱される。前記第2の空間への熱の供給により、温度が第2温度に上昇し、前駆体物質が気化し、使用に供される。パルス段階が終了すると、前駆体物質は重力によって第2の空間から(第1の温度を有する)第1の空間に逆流する。
【0022】
実施形態によっては、パルス段階の間(または前駆体物質のパルス段階の間)、第1の空間の圧力は第2の空間の圧力よりも高くなり、第2の空間の第2の温度は第1の空間の第1の温度よりも高くなる。
【0023】
実施形態によっては、インレットバルブ及びアウトレットバルブはマスフローコントローラを備える。
【0024】
実施形態によっては、前記第1の空間を提供する前記第1のチャンバは、アルミニウムまたは他の高熱伝導性材料で作られている。実施形態によっては、前記第2の空間を提供する前記第2のチャンバは、ステンレス鋼または他の低熱伝導性材料で作られている。従って、実施形態によっては、第1および第2のチャンバは異なる材料で作られている。。
【0025】
実施形態によっては、前記前駆体容器は、原子層堆積(ALD)装置で使用される。この場合において、ALDとの用語は、ALDの亜種を含む。例えば、MLD(Molecular Layer Deposition,分子層堆積)、例えばPEALD(Plasma Enhanced Atomic Layer Deposition,プラズマ改良型ALD)のようなプラズマアシスト型ALD(plasma-assisted ALD)、フラッシュ改良型ALD(flash enhanced ALD)として知られる光改良型ALD(photon-enhanced ALD)等を含む。実施形態によっては、前記前駆体容器は、化学気相成長(CVD)装置または原子層エッチング(ALE)装置で使用される。
【0026】
本発明の第2の例示的な捉え方によれば、次のような方法が提供される。この方法は、第1のチャンバによって形成される第1の空間と、第2のチャンバによって形成され、ガス透過性の仕切り壁によって前記第1の空間から分離された第2の空間とを備える前駆体容器を取り扱う方法であって、
前記第1の空間内の圧力を高めて、前記第1の空間内に収容された前駆体物質を、前記仕切り壁を通過するコンジットに沿って前記第1の空間から前記第2の空間へ移動させることと;
前記ガス透過性の仕切り壁を通して、前記第1の空間から前記第2の空間へガス流を供給することと;
を含む。
【0027】
実施形態によっては、前記方法は、前記第1の空間に不活性ガス流をインレットから通して圧力を増加させることを含む。
【0028】
実施形態によっては、前記方法は、パルス段階において前記第1の空間に不活性ガスを通すことを含む。
【0029】
実施形態によっては、前記方法は、不活性ガスと前駆体物質を前記第2の空間から排出口に排出することを含む。
【0030】
実施形態によっては、前記方法は、パルス段階中に、前記第2の空間を前記第1の空間内の温度よりも高い温度に加熱することを含む。
【0031】
実施形態によっては、前記方法は、超音波源、赤外線源、マイクロ波源などのエネルギー源を用いて、前記第2の空間内の前駆体物質の蒸発を増加させることを含む。
【0032】
本発明の様々な捉え方や実施形態を紹介してきたが、これらは発明の範囲を限定するものではない。上述の実施形態は、本発明の実施にあたり使用され得る特定の態様やステップを説明するために用いられたに過ぎない。実施形態によっては、発明の特定の例示的な捉え方を参照してのみ紹介されるかもしれない。いくつかの実施形態は他の実施形態にも適用可能であることが理解されるべきである。これらの実施形態は適宜組み合わせ可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明を、単なる例示を用いて、かつ添付図面を参照して、以下に説明する。
図1】ある実施形態に従う前駆体容器の概略側面図である。
図2】ある実施形態に従う、図1に開示された前駆体容器のパルス段階における概略側面図である。
図3】ある代替実施形態に従う前駆体容器の概略側面図である。
【詳細説明】
【0034】
以下の説明において、一例として、原子層堆積(Atomic Layer Deposition,ALD)技術及び原子層エッチング(Atomic Layer Etching,ALE)技術が用いられる。
【0035】
ALD成長メカニズムの基本は当業者の知るところである。ALDは、少なくとも2種類の反応性前駆体種を少なくとも1つの基板に連続的に導入することに基づく、特殊な化学的堆積法である。基本的なALD堆積サイクルは4つの逐次的工程、すなわち、パルスA、パージA、パルスB、及びパージB、から構成される。パルスAは第1の前駆体蒸気から構成され、パルスBは別の前駆体蒸気から構成される。パージAおよびパージBでは、反応空間から気体の反応副産物や残留反応物分子をパージ(除去)するために、不活性ガスと真空ポンプが用いられる。堆積シーケンスは少なくとも1回の堆積サイクルにより構成される。所望の厚さの薄膜またはコーティングが生成されるまで堆積サイクルが繰り返されるように、堆積シーケンスが組まれる。堆積サイクルは、簡単にすることも、さらに複雑にすることもできる。例えば、堆積サイクルは、パージステップによって区切られた3回以上の反応物蒸気パルスを含むことができる。また、パージステップのいくつかは省略することもできる。PEALD(Plasma-Enhanced Atomic Layer Deposition,プラズマALD) のようなプラズマアシスト型ALDや、光アシスト型ALD(Photon-Assisted ALD)においては、表面反応に必要な追加のエネルギーをプラズマ又は光子の供給を通じて提供することにより、1つ又は複数の堆積ステップを補助する。または、1つ又は複数の反応前駆体がエネルギーによって代替されることができ、単一前駆体によるALDプロセスに繋がる。従って、パルスシーケンス及びパージシーケンスは個々のケースに応じて異なりうる。これらの堆積サイクルは、論理演算装置またはマイクロプロセッサによって制御される、時間的な堆積シーケンスを形成するものである。ALDによって成長した薄膜は緻密でピンホールがなく、かつ均一の厚さを有する。
【0036】
基板処理工程に関して述べると、通常少なくとも1枚の基板が、時間的に離間した複数の前駆体パルスに反応器(又は反応室)内で曝される。それによって、連続自己飽和表面反応で材料が基板表面に堆積される。本出願の記述において、ALDという用語は、全ての適用可能はALDベース技術や、例えば次のALDの亜類型のような、等価又は密接に関連したあらゆる技術を含むものとする。MLD(Molecular Layer Deposition,分子層堆積)、例えばPEALD(Plasma Enhanced Atomic Layer Deposition,プラズマALD)のようなプラズマアシスト型ALD(plasma-assisted ALD)、フラッシュ改良型ALD(flash enhanced ALD)又は光ALDとして知られる光アシスト型ALD(Photon-Assisted ALD))又は光改良型ALD(photon-enhanced ALD)。
【0037】
しかし、本発明はALD技術に限定されない。本発明は広く様々な基板処理装置に生かすことができ、例えば、化学蒸着(CVD)反応装置や、原子層エッチング(ALE)反応装置のようなエッチング装置に利用することもできる。
【0038】
ALEエッチングメカニズムの基本は当業者の知るところである。ALEにおいては、自己制御的(self-limiting)な連続反応ステップを用いて表面から物質層が除去される。典型的なALEエッチングサイクルは、反応層を形成する改質(modification)ステップと、反応層だけを取り除く除去(removal)ステップとを有する。除去ステップは、層の除去のためにプラズマ種(特にイオン)を用いる。
【0039】
図1は、ある例示的実施形態に従う前駆体容器の概略側面図である。前駆体容器100は、第1の空間を提供する第1のチャンバ104と、仕切り壁107によって第1の空間から分離された第2の空間を提供する第2のチャンバ102と、仕切り壁107を貫通するコンジット(管部)103とから構成される。コンジット103は、第1の空間第2の空間とを接続し、圧力上昇時に、第1の空間内に収容された液体前駆体物質105に第2の空間への経路を提供し、それによって、制御された条件下で、2つの空間間で液体前駆体物質のための流体連通を可能にする。仕切り壁107は、第1の空間から、仕切り壁107によって第1の空間から分離された第2の空間へと、不活性ガスを含むガスを通過させるガス透過性の壁である。実施形態によっては、仕切り壁107は、多孔質円板、好ましくは多孔質焼結Al円板である。不活性ガスはキャリアガスとして機能してもよい。実施形態によっては、前駆体容器100は、第2の空間を加熱するためのヒーター108をさらに備える。実施形態によっては、前駆体容器100は、第1の空間にキャリアガスを供給するように構成されたバルブ106を有するインレット(入口)を備える。実施形態によっては、前駆体容器は、第2の空間からキャリアガスおよび前駆体を供給するように構成されたバルブ101を有するアウトレット(出口)を備える。バルブ101,102は、マスフローコントローラを備えてもよい。実施形態によっては、第1のチャンバ104はステンレス鋼製であり、第2のチャンバ102はアルミニウム製である。実施形態によっては、コンジット103はディップチューブであり、好ましくはステンレス鋼のものである。
【0040】
図2は、ある例に従い、前駆体物質パルス段階で使用中である、図1に開示された前駆体容器の概略側面図である。 前駆体物質105は、第1の空間内で第1の温度で貯蔵されるが、前駆体物質の使用中に(前駆体物質をパルス供給する際に)第2の空間内で第2の温度まで加熱される。前駆体物質105(好ましくは液体前駆体物質)の液面レベル又はメニスカスと、仕切り壁107との間のヘッドスペースの圧力を増加させるために、不活性キャリアガス110が、バルブ106を有する入口から第1の空間に注入される。この圧力は、前駆体物質105をコンジット103を通して第2の空間に押し出し、前駆体物質105''がヒーター108で第2のより高い温度まで加熱されるようにする。同時に、不活性キャリアガス110'が仕切り壁107を通り、前駆体105'を通って流れ、前駆体105'を気化させる。不活性キャリアガス(またはインサートキャリアガス)と前駆体との接触および混合と、高温との複合作用により、前駆体は効果的に気化される。インサートキャリアガスおよび気化した前駆体の混合物109は、バルブ101を有する排出口を通って流れる。
【0041】
パルス期間が終了すると、前駆体物質は重力によって第1の空間に戻る(図示せず)。
【0042】
パルスが印加される前、第1の空間の圧力は第2の空間の圧力と同じか大体同じであり、第1の温度と第2の温度は同じか大体同じである。
【0043】
パルスが印加されると、第1の空間の圧力は第2の空間の圧力よりも高くなり、第2の空間の第2の温度は第1の空間の第1の温度よりも高くなる。
【0044】
図3は、別の例示的実施形態に従う前駆体容器の概略側面図である。前駆体容器300は、第1の空間を提供する第1のチャンバ304と、仕切り壁307によって第1の空間から分離された第2の空間を提供する第2のチャンバ302と、仕切り壁107を貫通するコンジット(管部)303とから構成される。コンジット303は、第1の空間第2の空間とを接続し、圧力上昇時に、第1の空間内に収容されている前駆体物質305を第2の空間に導く経路を提供する。仕切り壁307は、第1の空間から、仕切り壁307によって第1の空間から分離された第2の空間へと、ガスを通過させるガス透過性の壁である。実施形態によっては、仕切り壁307は、多孔質円板、好ましくは多孔質焼結Al円板である。前駆体容器300は更に、第2の空間内の前駆体の気化速度を増加させるための手段315、例えば超音波源、赤外線(IR)源および/またはマイクロ波源を備える。実施形態によっては、手段315は、第2のチャンバ302に取り付けられている(または、配置されている)。
【0045】
実施形態によっては、前駆体容器300は、第2の空間を加熱するためのヒーター308をさらに備える。実施形態によっては、前駆体容器300は、第1の空間にキャリアガスを供給するように構成されたバルブ306を有するインレット(入口)と、第2の空間からキャリアガス及び前駆体を出すように構成されたバルブ301からなるアウトレット(出口)を備える。バルブ301,306は、マスフローコントローラを備えてもよい。
【0046】
実施形態によっては、第1のチャンバ304はステンレス鋼製であり、第2のチャンバ302はアルミニウム製である。実施形態によっては、コンジット303はディップチューブであり、好ましくはステンレス鋼のものである。
【0047】
請求項に係る発明の技術的範囲及び解釈を制限することなく、本明細書に開示された例示的な実施形態の1つ又は複数の技術的効果を以下に列挙する。技術的効果の一つは、より高い温度と、キャリアガスと前駆体との良好な接触及び混合との複合作用により、前駆体が効果的に気化されることである。さらなる技術的効果の一つは、気化するときよりも低い温度で前駆体を保存することができ、従って前駆体の熱分解を低減することができることである。前駆体容器は、コンパクトで、簡便かつ安全である。さらなる技術的効果の一つは、熱分解に敏感な化学物質を長期保管するために、前駆体容器を使用できることである。さらなる技術的効果の一つは、このコンパクトなソリューションにより、敏感な化学物質を安定かつ安全にすることができることである。
【0048】
上の説明は、本発明の特定の実装形態および実施形態の非限定的な例によって、本発明を実施するために本発明者らが現在考えている最良の形態の完全かつ有益な説明を提供したものである。しかしながら、当業者には明らかであるように、上述の実施形態の詳細は本発明を限定するものではなく、本発明の特徴から逸脱することなく同等の手段を用いて、他の実施形態に実装することができる。
【0049】
さらに、以上に開示した本発明の実施形態の特徴は、対応する他の特徴を用いることなく用いられてもよい。然るに、以上の説明は、本発明の原理を説明するための例に過ぎず、それを限定するものではないと捉えるべきである。よって、本発明の範囲は添付の特許請求のみによって制限されるものである。
図1
図2
図3