(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】光照射型の美容器具
(51)【国際特許分類】
A61N 5/06 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
A61N5/06 Z
(21)【出願番号】P 2022182560
(22)【出願日】2022-11-15
(62)【分割の表示】P 2021023588の分割
【原出願日】2017-05-22
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡村 武則
(72)【発明者】
【氏名】吉川 佐葉子
(72)【発明者】
【氏名】山口 大介
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-540014(JP,A)
【文献】特開2009-153606(JP,A)
【文献】特開2015-093109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリップを兼ねる本体ケースの一端に、発光源を備えた照射ヘッドが設けられており、
前記照射ヘッドの投光部を肌面に密着させた状態で、前記発光源を発光させて肌面に美容処理を施す光照射型の美容器具であって、
前記本体ケースを一定量ずつ移動させるシフト手段が前記照射ヘッドに設けられており、
前記シフト手段が、前記本体ケースで回転可能に支持されて肌面に沿って転動するシフト回転体と、前記シフト回転体を回転可能に支持する支持枠体と、前記シフト回転体が所定量転動する毎に停止保持する転動防止構造とを備えており、
前記シフト回転体は、前記投光部を除く前記照射ヘッドの下端面における前記本体ケースの移動方向と直交する左右に配置されており、
前記転動防止構造は、前記支持枠体に設けた固定側節度体と、当該固定側節度体と係脱することによって前記シフト回転体を停止保持する回転側節度体と、で構成されており、
前記シフト回転体と一体に原動ギヤを設け、当該原動ギヤと噛み合う従動ギヤが前記回転側節度体と一体に設けられており、
前記従動ギヤは、支持枠体に固定したギヤ軸で回転自在に支持されており、
前記従動ギヤのギヤ数は、前記原動ギヤのギヤ数より多く設けられており、
前記シフト回転体が転動する距離Rと、前記照射ヘッドの投光部の前後幅Lは、R≦Lの寸法関係であることを特徴とする光照射型の美容器具。
【請求項2】
前記回転側節度体の周面には、部分円弧状のクリック凹部が
1つ形成されており、
前記固定側節度体が前記クリック凹部と係合する部分円弧状のクリック凸部を備えている請求項1に記載の光照射型の美容器具。
【請求項3】
前記
クリック凸部は、前記固定側節度体を前記回転側節度体と係合する向きに移動付勢する板バネ材である請求項2に記載の光照射型の美容器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば肌面に光を照射してむだ毛処理を行う光照射型の美容器具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の美容器具は、例えば特許文献1に公知である。この特許文献1に記載の美容器具では、角笛状に湾曲する本体の湾曲端に、光照射部と除毛部とが設けられている。光照射部は、本体で上下動自在に支持されてばねで押出し付勢される遮光筒部と、遮光筒部の内部に配置される照射ユニット部とを備えている。照射ユニット部は、光源およびリフレクターと、これら両者を支持する基台部などで構成されている。照射ユニット部の下部には、光照射部を冷却するための冷却ファンが配置されている。除毛部は、櫛刃状の固定刃および可動刃を備えたトリマー刃と、可動刃を往復駆動するモーターなどを備えている。美容器具を使用する場合には、遮光筒部の筒端を肌面にあてがった状態で本体を肌面側へ押当てることにより、照射スイッチがオンされて高電圧の電流が光源に供給され、パルス光が肌面に照射される。同様の美容器具は特許文献2にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-239873号公報(段落番号0032~0049、
図1)
【文献】特開2015-73744号公報(段落番号0025、
図1、
図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、転動防止構造にて投光部が新たな照射領域と正対したことを感覚的に認識させ、照射領域の通越し移動を防止し、使い勝手を向上させた光照射型の美容器具を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0005】
グリップを兼ねる本体ケースの一端に、発光源を備えた照射ヘッドが設けられており、照射ヘッドの投光部を肌面に密着させた状態で、発光源を発光させて肌面に美容処理を施す光照射型の美容器具であって、本体ケースを一定量ずつ移動させるシフト手段が照射ヘッドに設けられており、シフト手段が、本体ケースで回転可能に支持されて肌面に沿って転動するシフト回転体と、シフト回転体を回転可能に支持する支持枠体と、シフト回転体が所定量転動する毎に停止保持する転動防止構造とを備えており、シフト回転体が転動する距離Rと、照射ヘッドの投光部の前後幅Lは、R≦Lの寸法関係である。
【0006】
転動防止構造は、シフト回転体に設けた回転側節度体と、支持枠体に設けた固定側節度体と、が係脱することによってシフト回転体を停止保持する。
【0007】
回転側節度体の周面には、部分円弧状のクリック凹部が一定間隔おきに形成されており、固定側節度体がクリック凹部と係合する部分円弧状のクリック凸部を備えている。
【0008】
クリック凸部は、固定側節度体を回転側節度体と係合する向きに移動付勢する板バネ材である。
【発明の効果】
【0009】
グリップを兼ねる本体ケースの一端に、発光源を備えた照射ヘッドが設けられており、照射ヘッドの投光部を肌面に密着させた状態で、発光源を発光させて肌面に美容処理を施す光照射型の美容器具であって、本体ケースを一定量ずつ移動させるシフト手段が照射ヘッドに設けられており、シフト手段が、本体ケースで回転可能に支持されて肌面に沿って転動するシフト回転体と、シフト回転体を回転可能に支持する支持枠体と、シフト回転体が所定量転動する毎に停止保持する転動防止構造とを備えており、シフト回転体が転動する距離Rと、照射ヘッドの投光部の前後幅Lは、R≦Lの寸法関係である構成とすると、転動防止構造にて投光部が新たな照射領域と正対したことを感覚的に認識させ、照射領域の通越し移動を防止し、使い勝手を向上させることができる。
【0010】
転動防止構造は、シフト回転体に設けた回転側節度体と、支持枠体に設けた固定側節度体と、が係脱することによってシフト回転体を停止保持する構成とすると、シフト回転体を的確に停止保持することができる。
【0011】
回転側節度体の周面には、部分円弧状のクリック凹部が一定間隔おきに形成されており、固定側節度体がクリック凹部と係合する部分円弧状のクリック凸部を備えている構成とすると、クリック凸部がクリック凹部に落込み係合してシフト回転体を停止保持することができる。
【0012】
クリック凸部は、固定側節度体を回転側節度体と係合する向きに移動付勢する板バネ材である構成とすると、クリック凸部がクリック凹部に落込み係合してシフト回転体を停止保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例1に係る美容器具の概略を示す縦断側面図である。
【
図2】本発明の実施例1に係る美容器具の要部の縦断正面図である。
【
図5】実施例2に係る美容器具の転動停止構造の縦断側面図である。
【
図6】実施例3に係る美容器具のシフト手段の縦断側面図である。
【
図8】実施例3に係るシフト手段を突出姿勢にした状態の縦断側面図である。
【
図9】実施例4に係る美容器具のシフト手段の縦断正面図である。
【
図10】実施例4に係るシフト手段の縦断側面図である。
【
図11】実施例4に係るシフト手段を作動姿勢にした状態の縦断側面図である。
【
図12】実施例5に係る美容器具のシフト手段の縦断正面図である。
【
図13】実施例6に係る美容器具のシフト手段の分解側面図である。
【
図14】実施例6に係るシフト手段を作動姿勢にした状態の側面図である。
【
図15】実施例7に係る美容器具のシフト手段の縦断正面図である。
【
図16】実施例7に係るシフト手段の縦断側面図である。
【
図17】実施例8に係る美容器具のシフト手段の縦断面図である。
【
図20】実施例9に係る美容器具のシフト手段の縦断側面図である。
【
図21】実施例10に係る美容器具のシフト手段の縦断側面図である。
【
図22】実施例11に係る美容器具のシフト手段の底面図である。
【
図23】実施例11に係るシフト手段の突出構造体の縦断面図である。
【
図24】実施例12に係る美容器具の突出構造体の斜視図である。
【
図25】実施例13に係る美容器具のスタンプ体の斜視図である。
【
図26】実施例14に係る美容器具のスイッチ構造の断面図である。
【
図27】実施例15に係る美容器具のスイッチ構造の断面図である。
【
図28】実施例16に係る美容器具のシフト手段の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施例1)
図1ないし
図4は、本発明に係る光照射型の美容器具の実施例を示す。本発明における前後、左右、上下とは、
図1および
図2に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。
図2に示すように光照射型の美容器具は、グリップを兼ねる本体ケース1の下端(一端)に照射ヘッド2を備えており、本体ケース1の内部に電池3と制御基板4とが設けられている。本体ケース1の前面の上部には、電源スイッチ5が設けられている。本体ケース1の内部で照射ヘッド2の左右には、本体ケース1を一定量ずつ移動させて、肌面における照射領域の重複を減少し、かつ、肌面における照射領域の通越し移動を減少させるシフト手段6が設けられている。シフト手段6は、本体ケース1を厳密に一定量ずつ移動させるものである必要はなく、移動量のばらつきによって照射領域の僅かな重複や、僅かな通越し移動を生じるものであっても、実用上何ら問題はない。因みに、シフト手段6による移動量に関しては、照射領域の僅かな通越し移動を生じるような設定より、照射領域に僅かな重複を生じるような設定であるほうが、未処理の肌面が残らない点で好ましい。
【0015】
照射ヘッド2は、断面が逆V字状の照射ケース10の内部に発光源11とリフレクター12を収容し、照射ケース10の下面開口を透明な防護カバー13で覆って構成されている。発光源11は直線管状のキセノンフラッシュランプからなり、リフレクター12は発光源11から放射された高輝度の光を集光し反射させて、防護カバー13から肌面に向かって放射する。制御基板4には、高電圧の電流を調整する電圧調整回路や、高電圧の電流を充電するコンデンサー14などが設けられており、コンデンサー14に充電された電流を発光源11に供給することにより発光源11が点灯されて、発光時間の短いパルス光が放射される。防護カバー13は、本体ケース1の下端面と面一になっており、防護カバー13の下端面が投光部15となる。
【0016】
シフト手段6は、一対のシフトローラー(シフト回転体)18と、同ローラー18を回転自在に支持する支持枠体19と、シフトローラー18が所定量転動する毎に停止保持する転動停止構造20などで構成される。シフトローラー18は、プラスチック製のローラーからなり、その周面にはスリップを防ぐ浅い溝が形成されている。また、シフトローラー18の一側には後述する回転側節度体28が一体に設けられており、これら両者18・28は支持枠体19に固定したローラー軸21で回転自在に軸支されている。美容器具の外観をすっきりさせて、そのデザイン性を向上するために、シフトローラー18は肌面に密着した状態の投光部15の外郭線内に配置されている。
【0017】
支持枠体19は、本体ケース1に設けたガイド枠22で上下スライド自在に案内支持されており、その上端には点灯スイッチ25をオン操作するスイッチ腕23が一体に設けられている。支持枠体19は、本体ケース1に設けたばね受け座とスイッチ腕23の間に配置した圧縮コイル形の付勢ばね24で押下げ付勢されていて、常態においてはシフトローラー18の周面が投光部15から肌面側へ突出する突出姿勢に保持されている。この状態でシフトローラー18を肌面にあてがい、本体ケース1を付勢ばね24の付勢力に抗して押圧操作することにより、支持枠体19はシフトローラー18の周面が投光部15と略面一になる作動姿勢に切換わって、投光部15を肌面に密着させることができる。支持枠体19が作動姿勢に切換えられた状態では、点灯スイッチ25がスイッチ腕23でオン操作されるので、コンデンサー14に充電された高電圧の電流が発光源11に供給されて発光源11を発光させることができる。投光部15が新たな照射領域まで移動操作されたときの支持枠体19は、付勢ばね24で突出姿勢に保持されて、いつでも光照射を開始できる状態で待機している。つまり、実施例1における支持枠体19は、突出姿勢において光を照射するための待機姿勢に保持されている。
【0018】
転動停止構造20は、シフトローラー18と一体に設けられた回転側節度体28と、支持枠体19に固定される固定側節度体29と、固定側節度体29を回転側節度体28と係合する向きに移動付勢する弾性体30とで構成される。回転側節度体28の周面の4個所には、部分円弧状のクリック凹部31が一定間隔おきに形成されている。また、固定側節度体29は板バネ材で逆凸字状に形成されていて弾性体30を兼ねており、その下面側にクリック凹部31と係合する部分円弧状のクリック凸部32が形成されている。こうした転動停止構造20によれば、シフトローラー18が4分の1回転する毎に、クリック凹部31がクリック凸部32と係合して、シフトローラー18を停止保持する。このとき、
図4に示すように、シフトローラー18が転動する距離Rと、投光部15(防護カバー13)の前後幅Lの関係は(R=L)を満足することが好ましく、必要があれば(R≒L)を満足し、かつ(R<L)を同時に満足できる寸法関係にあってもよい。つまり、移動量のばらつきによって照射領域が僅かに重複する設定であってもよい。
【0019】
美容器具を使用する場合には、電源スイッチ5をオン操作してコンデンサー14に対する高圧電流の充電を開始し、充電完了状態を示すLED(図示していない)が点灯されるのを待つ(約3秒)。LEDが点灯した状態で、シフトローラー18をむだ毛処理が必要な肌面にあてがい、本体ケース1を付勢ばね24のばね力に抗しながら肌面側へ押付けて、投光部15を肌面に密着させる。投光部15が肌面に密着するのと同時に、点灯スイッチ25がスイッチ腕23でオン操作されるので、コンデンサー14に充電された高電圧の電流を供給して発光源11が発光される。また、発光源11が発光することで、発光時間が短い高輝度のパルス光を肌面に照射し、むだ毛の毛根部分に熱的なダメージを与えて、むだ毛が再生するのを阻止することができる。
【0020】
次に、本体ケース1に対する押圧力を解放して投光部15を肌面から浮離れさせ、シフトローラー18を転動させながら本体ケース1を次のむだ毛処理位置へ移動させる。つまり、発光源11を発光させて高輝度のパルス光を肌面に照射する毎に、本体ケース1を一定量ずつ移動させるが、一定量とは投光部15の有効照射面のうち短辺の長さを目標とする。しかし、実際には移動量のばらつきによって照射領域の僅かな重複や、僅かな通越し移動を生じることのほうが多いので、一定量とは照射領域の僅かな重複や、僅かな通越し移動を生じている状態を含むこととする。本体ケース1が移動するのに伴って、クリック凹部31が固定側節度体29を弾性変形させながらクリック凸部32から抜け出し、移動開始からシフトローラー18が4分の1回転した状態で、クリック凸部32がクリック凹部31に落込み係合してシフトローラー18を停止保持させる。この状態で、充電完了状態を示すLEDが点灯していることを確認したのち、再び本体ケース1を付勢ばね24のばね力に抗しながら肌面側へ押付けて、投光部15を肌面に密着させ、発光源11を発光させてむだ毛処理を行う。
【0021】
以後、本体ケース1の移動と、発光源11の発光を繰返し行って、必要な範囲の肌面のむだ毛処理を行う。むだ毛処理が終了したら、電源スイッチ5をオフ操作して、コンデンサー14に対する高圧電流の充電を停止する。シフトローラー18が突出姿勢に切換った状態では、投光部15が肌面から浮離れているので、新たな照射領域へ移動するときに投光部15が肌面に摺接して違和感を与え、あるいは不快な摺接刺激を与えるのを防止できる。
【0022】
本体ケース1が移動操作されるときの移動距離は、照射ヘッド2の照射領域の前後幅と同じか、これより僅かに小さく設定されている。従って、本体ケース1を移動させて肌面に光を照射するとき、前回の照射領域と新たな照射領域が大きく重複して、1回の美容処理における発光源11の照射回数が増加するのを防止できる。従って、発光源11が早期に劣化するのを解消して、美容器具を長期にわたって使用し続けることができる。また、シフトローラー18が4分の1回転する毎に、シフトローラー18を転動停止構造20で停止保持できるので、照射ヘッド2をシフト移動させるときの移動量がばらつくのを減少して通越し移動が生じるのを抑止でき、前回の照射領域と新たな照射領域の間にパルス光が照射されなかった未処理の肌面が残るのを良く防止できる。
【0023】
上記の美容器具によれば、シフトローラー18が所定量回転する毎に回転側節度体28と固定側節度体29が互いに係合して、シフトローラー18を適確に停止保持できる。従って、シフトローラー18の回転量が大小にばらつくのを減少して、むだ毛処理を万遍なく的確に行うことができる。また、シフト回転体を支持枠体19で回転可能に支持したシフトローラー18で構成したので、肌面に沿ってシフトローラー18が転動することで、本体ケース1を肌面に沿って一定量ずつ円滑に移動操作できる。従って、シフト回転体がローラー構造ではない回転体で構成してある場合に比べて、照射ヘッド2の移動量が大小にばらつくのを解消できる。
【0024】
本体ケース1の移動方向と直交する照射ヘッド2の左右両側にシフトローラー18を配置したので、美容器具の全体重量を一対のシフトローラー18で支持した状態で移動でき、照射ヘッド2の移動を安定した状態で適確に行える。また、シフトローラー18を照射領域の左右両側に配置したので、前回の照射領域と新たな照射領域を明確に目視しながらシフトローラー18を適確に回転させることができる。例えば
図6に示すように、シフトローラー18が本体ケース1の前後いずれかに設けてある場合には、照射領域を目視する際の邪魔になるおそれがある。さらに、シフトローラー18を本体ケース1の肌接触面の外郭線内に配置したので、シフト手段6の殆どの部分が本体ケース1で覆われるので、シフト手段6が視認されて繁雑な印象を与えるのを極力避けて、美容器具の外観上のデザイン性を向上できる。
【0025】
(実施例2)
図5に転動停止構造20を変更した実施例2に係る美容器具を示す。この美容器具では、シフトローラー18とは別に回転側節度体28を設け、シフトローラー18と一体に原動ギヤ35を設け、さらに回転側節度体28と一体に従動ギヤ36を設けた。原動ギヤ35と従動ギヤ36のギヤ比は1対2として、シフトローラー18が2回転したときに、回転側節度体28が1回転するように構成した。回転側節度体28と一体の従動ギヤ36は、支持枠体19に固定したギヤ軸37で回転自在に支持されており、回転側節度体28の周面の1か所に限ってクリック凹部31を設けた。この実施例2の美容器具は、実施例1の美容器具と同様にして使用されるが、シフトローラー18が2回転した時点で、クリック凸部32がクリック凹部31に落込み係合してシフトローラー18が停止保持される点が異なる。実施例2における支持枠体19は、実施例1の支持枠体と同様に、突出姿勢において光を照射するための待機姿勢に保持されている。
【0026】
実施例2の美容器具によれば、前回の照射領域から新たな照射領域まで移動する距離を一定とするとき、シフトローラー18の直径を大幅に小さくして、実施例1の美容器具に比べてシフトローラー18を小形化しコンパクト化できる。また、シフトローラー18を本体ケース1の肌接触面の外郭線内に配置する場合には、シフトローラー18を小形化できる分だけ、同ローラー18が目立つのを解消して美容器具の外観上のデザイン性を向上できる。この実施例においても、本体ケース1をシフト手段6で一定量ずつ移動させるが、一定量とは投光部15の有効照射面のうち短辺の長さに相当する距離を目標としており、このことは実施例3以下においても同様とする。その他の点は実施例1と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。実施例3以下においても同様とする。
【0027】
(実施例3)
図6ないし
図8に、シフト手段6および転動停止構造20を変更した本発明の実施例3に係る美容器具を示す。そこでは、本体ケース1の後側(照射ヘッド2の移動方向の一側)に配置したシフトローラー18と、シフトローラー18を回転可能に支持する支持枠体19でシフト手段6を構成した。シフトローラー18は左右に長いローラーからなり、その両側に回転側節度体28が一体に設けられている。回転側節度体28の周面の3個所にはクリック凹部31が一定間隔おきに設けられている。また、固定側節度体29は横臥凸字状に形成されて、本体ケース1の後面下部に固定されている。本体ケース1の上面には、発光源11を点灯するための点灯スイッチ25が設けてある。
【0028】
支持枠体19を突出姿勢、作動姿勢、および格納姿勢に切換え可能とするために、本体ケース1の後面の左右に一対のガイド枠40を設け、このガイド枠40で支持枠体19を上下スライド自在に案内支持されている。支持枠体19は門形に形成されており、上枠の左右両端に張出したスライド片41がガイド枠40でスライド案内される。支持枠体19を突出姿勢、作動姿勢、および格納姿勢の各姿勢で位置保持するために、ガイド枠40と支持枠体19の対向面に位置保持構造が設けられている。位置保持構造は、ガイド枠40の上下3個所に形成した部分球面状のクリック凹部42と、スライド片41の側に設けた部分球面状のクリック凸部43で構成される。
【0029】
実施例3の美容器具は、支持枠体19をシフトローラー18の周面が投光部15よりも僅かに突出する作動姿勢(
図6に示す状態)に切換えて、シフトローラー18が転動停止構造20で停止保持された状態で、点灯スイッチ25をオン操作することにより発光源11を発光させてむだ毛処理を行う。また、本体ケース1が前回の照射領域から新たな照射領域へ移動操作される毎に、点灯スイッチ25を押込み操作することにより発光源11を発光させて、むだ毛処理を断続的に行うことができる。作動姿勢において、シフトローラー18の周面を投光部15よりも僅かに突出させるのは、光照射時にシフトローラー18が柔らかな肌面に沈込んで投光部15を肌面に密着できるからである。また、光照射後には投光部15を肌面から浮離れさせて、シフトローラー18を次の照射領域へ向かって支障なく回転操作できるからである。
【0030】
支持枠体19をシフトローラー18の周面が投光部15より下方に突出する突出姿勢(
図8に示す状態)に切換えた状態では、回転側節度体28が固定側節度体29から分離して、シフトローラー18が自由に回転できる状態となる。この状態のシフトローラー18を肌面に沿って転動させることにより、肌面に転がり刺激や擦り刺激を与えて美容効果を高めることができる。このとき、投光部15は肌面から浮離れているので、シフトローラー18で美容処理を行う際に投光部15が邪魔になるのを防止して、シフトローラー18による美容処理を軽快に行える。支持枠体19をシフトローラー18の周面が投光部15より上方に位置する格納姿勢にした状態では、鼻と唇の間の肌面に光を照射して美容処理を行う際に、シフトローラー18が邪魔になるのを解消して、美容器具の使い勝手を向上できる。以上のように、支持枠体19は、本体ケース1で突出姿勢と作動姿勢の間、および作動姿勢と格納姿勢の間で切換え可能に支持されている。突出姿勢に切換え操作された支持枠体19は、シフトローラー18を美容ローラーとして使用するためのローラー姿勢に保持されている。
【0031】
(実施例4)
図9ないし
図11はシフト手段6および転動停止構造20を変更した実施例4に係る美容器具を示す。そこでは、支持枠体19を本体ケース1に固定した揺動軸45で揺動可能に支持して、支持枠体19を突出姿勢、作動姿勢、および格納姿勢に切換え操作できるようにした。また、支持枠体19を中空ケース状に構成して、その内部に揺動軸45に固定される固定ギヤ46と、固定ギヤ46と噛合う中間ギヤ47と、中間ギヤ47と噛合う終段ギヤ48と、終段ギヤ48に隣接配置される回転側節度体28とを配置した。中間ギヤ47および終段ギヤ48は、それぞれ支持枠体19のケース壁で回転自在に軸支されており、回転側節度体28はシフトローラー18のローラー軸21に固定されている。終段ギヤ48は扇形ギヤとして形成されており、ギヤ歯が形成されていない周面に、三角枠状のクリック凸部32が一体に形成されており、終段ギヤ48自身が固定側節動体29として機能するようにした。シフトローラー18は、実施例3のシフトローラー18と同様に左右に長いローラーからなる。
【0032】
支持枠体19を突出姿勢、作動姿勢、および格納姿勢の各姿勢で位置保持するために、本体ケース1と支持枠体19の対向面に位置保持構造を設けている。
図9に示すように、位置保持構造は、本体ケース1に形成したボール穴49に収容される鋼製のボール50と、圧縮コイル形のばね51と、支持枠体19の側に凹み形成される部分球面状の3個の係合凹部52などで構成されている。支持枠体19を突出姿勢、作動姿勢、格納姿勢の各姿勢に切換えた状態では、ボール50が各係合凹部52に落込み係合するので、支持枠体19を各姿勢に位置保持することができる。本体ケース1の前面には、発光源11を点灯するための点灯スイッチ25が設けてある(
図10参照)。
【0033】
図10に示すように、支持枠体19が突出姿勢に切換えられた状態では、クリック凸部32が回転側節度体28から分離して、シフトローラー18が自由に回転できる状態になっている。この状態のシフトローラー18を肌面に沿って転動させることにより、肌面に転がり刺激や擦り刺激を与えて美容効果を高めることができる。このように、突出姿勢に切換え操作された支持枠体19は、シフトローラー18を美容ローラーとして使用するためのローラー姿勢に保持されている。支持枠体19を突出姿勢から作動姿勢に切換え操作すると、中間ギヤ47は固定ギヤ46と噛合った状態で反時計回転方向へ回転し、終段ギヤ48は時計回転方向へ回転する。そのため、クリック凸部32は徐々に回転側節度体28に接近し、
図11に示すように支持枠体19が作動姿勢に切換った状態では、クリック凸部32がクリック凹部31と係合して、シフトローラー18の転動を阻止している。また、ボール50がふたつ目の係合凹部52に落込み係合して、支持枠体19を作動姿勢に位置保持している。支持枠体19が作動姿勢から格納姿勢に切換えられた状態では、シフトローラー18が本体ケース1に凹み形成した格納凹部53に収容されるので、美容器具の使い勝手を向上できる。
【0034】
上記の状態のシフトローラー18の下周面は照射ヘッド2の投光部15よりも僅かに突出しているので、投光部15を肌面に押付けた状態で点灯スイッチ25を押込み操作することにより発光源11を発光させてむだ毛処理を行うことができる。また、本体ケース1が前回の照射領域から新たな照射領域へ移動操作する毎に、シフトローラー18の転動を転動停止構造20で阻止して、肌面における照射領域が重複するのを防止できる。さらに、転動停止構造20は肌面における照射領域の通越し移動を防止して、むだ毛処理を万遍なく的確に行うことができる。以上のように、実施例4の美容器具においては、支持枠体19が突出姿勢から作動姿勢へ揺動操作されるのに連動して中間ギヤ47および終段ギヤ48が回転駆動されて、固定側節度体29が回転側節度体28と係合してシフトローラー18を停止保持している。
【0035】
(実施例5)
図12はシフト手段6を変更した実施例5に係る美容器具を示す。そこでは、実施例1と同様に支持枠体19で回転自在に支持したシフトローラー18を、支持枠体19に装着したモーター56の回転動力でギヤトレイン57を介して回転駆動して、美容器具を自走できるようにした。ギヤトレイン57は、モーター56の回転動力を減速伝動して、シフトローラー18をゆっくりと回転駆動する。支持枠体19は本体ケース1で上下動可能に案内支持されて、付勢ばね24で押下げ付勢されており、常態においてはシフトローラー18の周面が投光部15から肌面側へ突出する突出姿勢に保持されている。上記のように、この実施例では本体ケース1の内部に、モーター56およびギヤトレイン57を備えた駆動構造を設け、シフトローラー18をモーター56の動力で回転駆動するようにした。また、シフトローラー18を駆動構造で間欠的に回転駆動して、照射ヘッド2の投光部15が新たな照射領域と正対する毎に、シフトローラー18を停止保持させるようにした。さらに、本体ケース1の固定壁に自走スイッチ26を設け、支持枠体19にスイッチ操作腕27を設けて、支持枠体19が作動姿勢から突出姿勢に切換った状態において自走スイッチ26がスイッチ操作腕27でオン操作されて、モーター56を起動できるようにした。また、シフトローラー18が新たな照射領域と正対した状態で、モーター56を停止させるようにした。
【0036】
美容器具を使用する場合には、充電完了状態を示すLEDが点灯されるのを待って、シフトローラー18をむだ毛処理が必要な肌面にあてがい、本体ケース1を付勢ばね24のばね力に抗しながら肌面側へ押付けて、投光部15を肌面に密着させる。投光部15が肌面に密着するのと同時に、点灯スイッチ25がスイッチ腕23でオン操作されるので、コンデンサー14に充電された高電圧の電流を供給して発光源11が発光される。次に、本体ケース1に加わっていた押付け力を解放すると、支持枠体19が作動姿勢から突出姿勢に切換って自走スイッチ26がオン操作されるので、モーター56が起動して本体ケース1を新たな照射領域へ向かって自走させる。さらに、美容器具が新たな照射領域まで移動した時点でモーター56が停止するので、再び本体ケース1を肌面側に押付けて投光部15を肌面に密着させ、発光源11を発光させて美容処理を行う。以後、美容器具の移動と発光源11の発光を交互に行って、必要な範囲の肌面のむだ毛処理を行う。なお、電源スイッチ5をオン操作して美容器具を使用する際に、支持枠体19が突出姿勢に切換って自走スイッチ26がオン操作されている可能性があるが、この場合にモーター56が起動されることはなく、点灯スイッチ25がオン操作され、その次に支持枠体19が突出姿勢に切換って自走スイッチ26がオン操作された場合にのみ、モーター56が起動される。以上のように構成した実施例5に係る美容器具においては、シフトローラー18を回転駆動するモーター56およびギヤトレイン57がシフト手段6として機能しており、さらにモーター56が転動停止構造20として機能している。実施例5における支持枠体19は、実施例1の支持枠体19と同様に、突出姿勢において光を照射するための待機姿勢に保持されている。
【0037】
実施例5の美容器具では、シフトローラー18をモーター56の回転動力を駆動源とする駆動構造で回転駆動することにより、美容器具を自走移動させて投光部15を新たな照射領域に臨ませることができる。従って、ユーザー自身が本体ケース1を移動操作して投光部15を新たな照射領域に臨ませる場合に比べて、投光部15の移動量が大きくばらつくのを解消できる。また、シフトローラー18を駆動構造で間欠的に回転駆動して、照射ヘッド2の投光部が新たな照射領域と正対する毎にシフトローラー18を停止保持するので、シフトローラー18を過不足なく自走移動でき、照射領域が重複し、あるいは照射領域の通越し移動をさらに確実に減少できる。美容器具を使用するときのユーザーは、単に本体ケース1を適正な姿勢に保持しておくだけでよいので、美容処理に要する手間を省いて簡便に美容処理を行える。また、転動停止構造20を省略できるので美容器具の構造を簡素化できる。
【0038】
(実施例6)
図13、
図14はシフト手段6を変更した実施例6に係る美容器具を示す。そこでは、本体ケース1の照射ヘッド2の外面に筒状のキャップ枠59を着脱自在に装着し、キャップ枠59で支持枠体19を突出姿勢と作動姿勢と格納姿勢に切換え可能に支持するようにした。各姿勢に切換えられた支持枠体19は、実施例4で説明した位置保持構造で位置保持される。また、キャップ枠59の後面上部に横臥J字状のローラー収容部60を設けて、固定側節度体29を兼ねるローラー収容部60の遊端に三角枠状のクリック凸部32を設けた。支持枠体19が作動姿勢に切換えられた状態においては、シフトローラー18と同行回転する回転側節度体28のクリック凹部31に先のクリック凸部32が係合しており、この状態のシフトローラー18の周面は照射ヘッド2の投光部15よりも僅かに突出している。本体ケース1の前面には、発光源11を点灯するための点灯スイッチ25が設けてある(
図13参照)。この実施例におけるキャップ枠59は円筒状に形成する必要はなく、断面C字状や、筒壁が複数の縦溝で分断された筒体で形成してあってもよい。
【0039】
美容器具を使用する場合には、実施例4の美容器具と同様に、投光部15を肌面に押付けた状態で点灯スイッチ25を押込み操作することにより発光源11を発光させてむだ毛処理を行うことができる。
図13に示すように、キャップ枠59を本体ケース1から取外し、支持枠体19を突出姿勢に切換えると、シフトローラー18が回転自在となるので、この状態のシフトローラー18を肌面に沿って転動させることにより、肌面に転がり刺激や擦り刺激を与えて美容効果を高めることができる。支持枠体19を格納姿勢に切換えた状態では、シフトローラー18が作動姿勢とは逆に本体ケース1の前面側に位置保持される。
【0040】
実施例6の美容器具によれば、支持枠体19が作動姿勢に切換えられた状態においては、シフトローラー18がローラー収容部60に収容されるので、誤って他物がシフトローラー18に接当して支持枠体19が突出姿勢に切換えられてしまうのをローラー収容部60で防止できる。また、本体ケース1から取外したキャップ枠59を使用して肌面に転がり刺激や擦り刺激を与えることができるので、支持枠体19が本体ケース1に装着された状態のままで転がり刺激を与える場合に比べて、美容処理を手軽にしかも簡便に行える。さらに、支持枠体19は、各姿勢に切換った状態で位置保持構造によって位置保持されるので、ユーザーの明確な意図がない限り支持枠体19の姿勢が変わってしまうのを確実に防止できる。突出姿勢に切換え操作された支持枠体19は、シフトローラー18を美容ローラーとして使用するためのローラー姿勢に保持されている。
【0041】
(実施例7)
図15、
図16にシフト手段6を変更した実施例7の美容器具を示す。そこでは、本体ケース1の下端に配置した中空筒状のシフト回転体18を、支持枠体19で回転自在に軸支した。シフト回転体18は断面が正六角形状に形成されており、その内部に、照射ケース10、発光源11、およびリフレクター12を備えた照射ヘッド2と、同ヘッド2を固定支持するヘッド枠62を設けた。ヘッド枠62は、支持枠体19に設けたローラー軸21と一体化されており、照射ヘッド2を固定支持している。
図16に示すように、シフト回転体18は基枠18aと、各辺部に固定される透明な照射窓板18bを備えており、両側端の軸受部18cが先のローラー軸21で回転可能に支持されている。照射ヘッド2の防護カバー13は下突湾曲状に形成されている。本体ケース1は、支持枠体19で上下動可能に支持されて、付勢ばね24で押上げ付勢されている。
【0042】
使用時には、照射窓板18bを肌面に密着させた状態で、本体ケース1を押下げ操作することにより、点灯スイッチ25がオン状態に切換って発光源11を発光させてむだ毛処理を行う。次に、本体ケース1に対する押圧力を解放して、点灯スイッチ25をオフ状態に切換えた状態で、シフト回転体18を回転させて美容器具を新たな照射領域へ移動させる。美容器具が移動操作されるときは、シフト回転体18が六分の一回転する毎に、照射窓板18bを含む辺部が肌面で受止められて、その状態を保持できる。
【0043】
以上のように、シフト回転体18は、その隣接する頂部の間の辺部(安定周面)63が肌面に接触して転動を阻止するので、シフト回転体18自体が転動停止構造20を兼ねることができる。そのため、転動停止構造20を省略できる分だけ美容器具の構造を簡素化して製造コストを削減できる。また、照射ヘッド2がシフト回転体18の内部に収容されているので、落下衝撃をシフト回転体18で受け止めることができ、落下衝撃によって発光源11が破損するのをよく防止できる。照射ヘッド2がヘッド枠62で固定支持されているので、シフト回転体18が新たな照射領域へ向かって回転移動した場合でも、照射ヘッド2は本体ケース1の延長上に位置しており、両者1・2の位置関係は常に一定になる。そのため美容器具を使用するときは、本体ケース1を肌面に対して直交姿勢にするだけで、投光部15を肌面に正対させて、適正に美容処理を行うことができる。従って、本体ケース1が肌面に対して傾き、しかも投光部15と正対していない照射窓板18bが肌面に接触した状態で、発光源11が発光される誤使用を確実に防止できる。なお、シフト回転体18は円筒状に形成してあってもよい。
【0044】
(実施例8)
図17ないし
図19はシフト手段6を変更した実施例8の美容器具を示す。そこでは、グリップを兼ねる本体ケース1の一端に照射ヘッド2を固定し、その周囲に円筒状のシフトローラー18を配置した。照射ヘッド2を構成する照射ケース10の周面と防護カバー13の周面の断面は、円形に連続する状態で形成されており、照射ケース10の基端が本体ケース1に固定されている。シフトローラー18は、透明な円筒状の照射筒壁64を備えており、同壁64の基端側に固定した節度リング65が、本体ケース1で回転可能に片持ち支持されている。本体ケース1と節度リング65の間には、転動停止構造20が設けられている。
図19において転動停止構造20は、本体ケース1に形成したボール穴66に収容される鋼製のボール67、および圧縮コイル形のばね67aと、節度リング65の内面に凹み形成される4個の係合凹部69で構成されている。
【0045】
美容器具を使用する場合には、本体ケース1を片手で持って、投光部15と正対するシフトローラー18の周面を肌面にあてがい、図示していない点灯スイッチ25をオン操作することにより、発光源11を発光させてむだ毛処理を行う。次に、図示していないコンデンサーに高圧の電流が充電されるのを待って、シフトローラー18を回転させるが、美容器具が新たな照射領域へ移動する毎に、ボール67が係合凹部69に落ち込み係合して、シフトローラー18を停止保持できる。以後は、発光源11の発光と、シフトローラー18の回転移動を交互に行って、肌面の必要な領域にむだ毛処理を施す。
【0046】
(実施例9)
図20はシフト手段6を変更した実施例9の美容器具を示す。そこでは、シフト回転体18を、3個の頂部68を備えた正三角形状に形成した。このシフト回転体18によれば、シフト回転体18が頂部68を乗り越えながら新たな照射領域へ向かって所定量転動する毎に、シフト回転体18の隣接する頂部68の間の辺部(安定周面)63が肌面に接触して転動を阻止できる。このように、シフト回転体18自体が転動停止構造20を兼ねるようにすると、転動停止構造20を省略できる分だけ美容器具の構造を簡素化して製造コストを削減できる。また、シフト回転体18が回転するとき、投光部15が肌面から浮き離れた状態になるので、肌面が投光部15で不必要に擦られるのを解消して肌面を保護できる。さらに、次に説明する、楕円形に形成されたシフト回転体18に比べて、安定した状態でシフト回転体18を停止保持できる。この実施例から理解できるように、シフト回転体18は、3個以上の頂部68を備えた正多角形状に形成することができる。
【0047】
(実施例10)
図21はシフト手段6を変更した実施例10の美容器具を示す。そこでは、シフト回転体18の外形形状を一対の頂部68を備えた楕円形に形成した。このシフト回転体18によれば、シフト回転体18が頂部68を乗り越えながら新たな照射領域へ向かって所定量転動する毎に、シフト回転体18の隣接する頂部68の間の周面(安定周面)63が肌面に接触して転動を阻止できるようにした。安定周面となる周面63は、楕円の短軸と交差する状態で肌面に接触する湾曲半径が大きな周面である。この実施例に係るシフト手段6は、実施例9に係るシフト手段6と同様に、シフト回転体18自体が転動停止構造20を兼ねるので、転動停止構造20を省略できる分だけ美容器具の構造を簡素化して製造コストを削減できる。
【0048】
(実施例11)
図22および
図23はシフト手段6を変更した実施例11の美容器具を示す。そこでは、シフト手段6を、照射ヘッド2の投光部15の周囲隅部寄りに設けた4個の突出構造体70で構成し、同構造体70を圧縮コイル形のばね(弾性体)71で、照射ケース10から進出する向きに押出し付勢した。突出構造体70は丸軸状に形成してあり、その下端に円形の凹み72を形成して、凹み72の周囲にリング状の賦形部73を形成した。
【0049】
美容器具を使用する場合には、ばね71のばね力に抗しながら投光部15を肌面に密着させて発光源11を発光させる。このとき、賦形部73が肌面に食い込んで、肌面にリング状の4個の押付跡が形成されるので、美容器具を新たな照射領域へ移動させる際に、先の押付跡を指標にして投光部15を新たな照射領域に正対させることにより、前回の照射領域と新たな照射領域を過不足なく隣接させることができる。とくにこの実施例では、突出構造体70の中心を、投光部15の長辺の延長線上に位置させているので、前回の照射領域と新たな照射領域を正確に連続させることができる。また、また、投光部15の周囲に複数の突出構造体70を設けるだけであるので、シフト回転体18を移動要素とするシフト手段6に比べて、美容器具の構造を著しく簡素化して低コスト化できる。さらに、突出構造体70をばね71で進出付勢しているので、突出構造体70が肌面に押付けられるとき、弾性体71が弾性変形することで過剰な押付け力を吸収できる。従って、賦形部73が肌面に不必要に食い込むのを解消して、押付跡が深く形成されることに伴う肌面のダメージを極力避けることができる。
【0050】
(実施例12)
図24は突出構造体70を変更した実施例12の美容器具を示す。そこでは、突出構造体70を投光部15の周囲を囲む四角枠状の突リブで形成し、その突端面に網目状の賦形部73を突出形成した。この実施例の突出構造体70は、実施例11で説明した突出構造体70と同様に、投光部15を肌面に密着させて発光源11を発光させるとき、突出構造体70の突端面および賦形部73が肌面に食い込んで、肌面に四角枠状の押付跡と、網目状の押付跡が形成される。美容器具を新たな照射領域へ移動させる際には、先の押付跡を指標にして投光部15を新たな照射領域に正対させるが、このとき、四角枠状の凸リブの内周縁が、四角枠状の押付跡の内周縁と重なる状態で投光部15を新たな照射領域に正対させることにより、前回の照射領域と新たな照射領域を過不足なく隣接させることができる。
【0051】
(実施例13)
図25は突出構造体70を変更した実施例13の美容器具を示す。そこでは、シフト手段6を、投光部15の周囲隅部寄りに設けた4個のスタンプ体74で構成した。スタンプ体74は丸軸状の多孔性ゴム材で形成した賦形部73と、賦形部73に隣接配置したインク吸蔵マット75で構成されており、賦形部73を肌面に押付けることにより、スタンプ跡を連続して形成することができる。インク吸蔵マット75に吸蔵させてある印字用インクは、ティシュペーパーなどで容易に消去できるうえ、肌荒れや湿疹などを生じることのない植物由来の染料系インクからなり、スタンプ跡がかろうじて見える程度にまでインク原液を水で薄めて形成してある。
【0052】
美容器具を使用する場合には、投光部15を肌面に密着させて発光源11を発光させる。このとき、賦形部73が肌面に密着して4個のスタンプ跡が形成されるので、美容器具を新たな照射領域へ移動させる際に、先のスタンプ跡を指標にして投光部15を新たな照射領域に正対させることができる。従って、照射領域が重複し、あるいは照射領域の通越し移動を防止して、万遍なく美容処理を行える。また、投光部15の周囲に複数のスタンプ体74を設けるだけであるので、シフト回転体18を移動要素とするシフト手段6に比べて、美容器具の構造を著しく簡素化して低コスト化できる。スタンプ体74の中心が、実施例11の突出構造体70と同様に、投光部15の長辺の延長線上に位置させているので、前回の照射領域と新たな照射領域を正確に連続させることができる。
【0053】
(実施例14)
図26は発光源11を発光させるためのスイッチ構造を変更した美容器具を示す。そこでは、シフトローラー18と支持枠体19の間に、発光源11への駆動電流の供給を許すスイッチ構造を設けた。具体的には、回転側節度体28のクリック凹部31に導通端子78を埋設固定し、固定側節度体29のクリック凸部32に導通端子78で導通される一対の接触端子79を設けた。そして、これらの端子78・79が導通したことを点灯条件にして、制御回路80が発光源11に高圧の駆動電流を供給して発光するようにした。導通端子78と接触端子79が発光源11を点灯するためのスイッチ81を構成している。こうしたスイッチ構造によれば、シフトローラー18が停止する毎に、発光源11を自動的に発光させて美容処理を行うことができる。
【0054】
上記のスイッチ構造によれば、シフトローラー18が所定量転動して停止するのと同時に、発光源11を自動的に発光できるので、発光源11を点灯するためのスイッチ操作を行う必要がない。従って、美容処理に要する手間をさらに省いて、より簡便に美容処理を行える。また、このスイッチ構造によれば、シフトローラー18が停止する毎に、オン状態に切換って発光源11を発光させることができる。
【0055】
(実施例15)
図27は発光源11を発光させるためのスイッチ構造をさらに変更した実施例15の美容器具を示す。そこでは正三角形状に形成したシフト回転体18の各辺部に、肌面に接触する一対の接触端子79を設けてスイッチ81を構成した。こうしたスイッチ構造によれば、シフト回転体18が所定量転動して停止するのと同時に、一対の接触端子79が肌面を介して導通するので、そのことを点灯条件にして、制御回路80が発光源11に高圧の駆動電流を供給して発光させることができる。従って、実施例14の美容器具と同様に、ユーザーの手間を省いて迅速にむだ毛処理を行うことができる。
【0056】
(実施例16)
図28および
図29はシフト手段6を変更し、さらに発光源11を発光させるためのスイッチ構造を変更した美容器具を示す。そこでは、照射ケース10の投光部15の後辺部側に収容ポケット83を設け、その内部にLED光源84と、集光レンズ85と、CMOSイメージセンサー86を収容し、これらの光学部品とシフト報知構造でシフト手段6を構成した。符号87は投光窓である。シフト報知構造は、光、音、振動の少なくともひとつの報知信号を発信して、照射ケース10が所定量移動したことをユーザーに報知する。
【0057】
美容器具を使用する場合には、投光部15を肌面に密着させて発光源11を発光させる。次に美容器具を新たな照射領域へ移動させるが、このとき、CMOSイメージセンサー86が読み取った画像の違いから照射ケース10の移動量を知ることができるので、照射ケース10が所定量移動した時点で、図示していないシフト報知構造を作動させ、照射ケース10の移動を停止して、投光部15を新たな照射領域に正対させることができる。このように照射ケース10の移動量を光学的に読み取って数量化し、シフト報知構造で報知する美容器具によれば、前回の照射領域と新たな照射領域は過不足なく隣接させることができる。シフト報知構造が作動するのと同時に、発光源11に高圧の駆動電流を供給して発光させることができるので、シフト手段6は発光源11を発光させるためのスイッチ構造を兼ねることができる。このように、シフト報知構造の作動と発光源11の点灯は同時でもよいが、シフト報知構造を作動させたのち、所定時間(例えば0.2秒)が経過した後に発光源11を点灯させるように制御してもよい。その場合には、発光源11が間もなく点灯されることをシフト報知構造で事前に報知できるので、ユーザーは発光に備えて心の準備をし、あるいは発光領域から目をそらすなどの予防措置をとることができる。因みに、シフト報知構造の作動と発光源11の点灯を同時に行う場合には、ユーザーは先のような予防措置をとることができないため、美容器具の取扱いに馴れるまで不快な思いをし、あるいは驚かされることがある。
【0058】
上記構成のシフト手段6によれば、投光部15が所定量移動操作される毎に、シフト報知構造で報知信号を発して投光部15を新たな照射領域と正対させることができる。従って、照射領域が重複し、あるいは照射領域の通越し移動を防止して、万遍なく美容処理を行うことができる。また、光、音、振動のいずれかひとつを確認することで、投光部15が新たな照射領域と正対したことを感覚的に認識できるので、投光部15をゆっくりと移動させる必要もなく速やかに移動操作して、美容器具の使い勝手を向上できる。さらに、投光部15が新たな照射領域と正対する毎に、発光源11に対して駆動電流を供給して発光源11を自動的に発光させることができる。このように、実施例16の美容器具によれば、投光部15が前回の照射領域から新たな照射領域へ移動操作される毎に、発光源11を自動的に発光させることができるので、一連の美容処理を迅速に、しかも軽快に行うことができる。
【0059】
実施例16では、CMOSイメージセンサー86で照射ケース10の移動量を検知して、投光部15が新たな照射領域に移動した場合にシフト報知構造で報知信号を発して、発光源11を自動的に発光させるようにしたが、先のセンサー86に換えてシフトローラー18の回転動作を利用して照射ケース10の移動量を検知することができる。例えば、回転側節度体28の周面に複数個の磁石を等間隔おきに埋設しておき、固定側節度体29を支持する支持枠体19または本体ケース1に、磁石の接近または離反でオン・オフするリードスイッチを設けて、磁石およびリードスイッチとシフト報知構造でシフト手段6を構成することができる。また、シフトローラー18を支持するローラー軸21に設けた磁石保持部や、シフトローラー18の肉壁内に設けた磁石保持部に磁石を固定して、リードスイッチをオン・オフ操作してもよい。但し、ローラー軸21に磁石を設ける場合には、ローラー軸21がシフトローラー18と同行回転できるように支持枠体19で軸支する。美容器具を使用する場合には、回転側節度体28が回転するのに応じてリードスイッチが磁石でオン・オフされるので、その回数を計測してシフト報知構造を作動させることにより、投光部15が新たな照射領域へ移動したことを確認して、発光源11を自動的に発光させることができる。この場合の磁石は、回転側節度体28の周面の一個所のみに埋設してあってもよい。
【0060】
実施例14から実施例16においては、投光部15が所定量移動操作される毎に、発光源11に対して駆動電流を供給するスイッチがオン状態に切換って発光源11を自動的に発光させるようにしたが、その必要はない。例えば、肌面から浮離れていた本体ケース1が照射姿勢に切換った状態において、発光源11に対して駆動電流を供給するスイッチがオン状態に切換って発光源11を発光できるようにしてあってもよい。こうしたスイッチ構造は、実施例1、実施例5、実施例7、実施例9から実施例13の美容器具に適用でき、美容器具を使用する際に発光源11を点灯するためのスイッチ操作を行う必要がないので、ユーザーの手間を省いて迅速にむだ毛処理を行うことができる。シフト回転体18は、ゴムクローラーを転動要素にして構成してあってもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 本体ケース
2 照射ヘッド
6 シフト手段
11 発光源
12 リフレクター
15 投光部
18 シフトローラー(シフト回転体)
18b 照射窓板
18c 軸受部
19 支持枠体
20 転動停止構造
21 ローラー軸
24 付勢ばね
28 回転側節度体
29 固定側節度体
30 弾性体
45 揺動軸
46 固定ギヤ
47 中間ギヤ
48 終段ギヤ
56 モーター
59 キャップ枠
60 ローラー収容部
62 ヘッド枠
63 安定周面(辺部)
68 頂部
70 突出構造体
74 スタンプ体
81 スイッチ