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特許7538202水素含有流動媒体に使用するためのダイアフラムを備えたトランスデューサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】水素含有流動媒体に使用するためのダイアフラムを備えたトランスデューサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 19/06 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
G01L19/06 A
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022192767
(22)【出願日】2022-12-01
(65)【公開番号】P2023094564
(43)【公開日】2023-07-05
【審査請求日】2023-01-18
(31)【優先権主張番号】21217511
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】22203343
(32)【優先日】2022-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】502281471
【氏名又は名称】キストラー ホールディング アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョヴァンニ マストロジャコモ
(72)【発明者】
【氏名】ハンス ベアト メルキ
(72)【発明者】
【氏名】トマス カドノー
【審査官】松山 紗希
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-038538(JP,A)
【文献】特開昭62-180042(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102014104113(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00-23/32
H01L 29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素含有流動媒体(13)の圧力を決定するためのトランスデューサ(1)であって、
前記水素含有流動媒体(13)は、第1の空間(14)内に配置され、
前記トランスデューサ(1)は、前記流動媒体(13)に面する圧力側端部(11)を備え、
前記トランスデューサ(1)は、第2の空間(15)を含むハウジング(7)を備え、
前記トランスデューサ(1)は、測定装置(16)を備え、
前記測定装置(16)は、前記第2の空間(15)内に配置され、
前記圧力側端部(11)において、前記トランスデューサ(1)は、前記水素含有流動媒体(13)を含む前記第1の空間(14)を前記第2の空間(15)から気密に分離するためのダイアフラム(2)を備え、
前記ダイアフラム(2)は、金属材料(3)を含む、前記トランスデューサ(1)において、
前記金属材料(3)は、高合金マルテンサイトからなることを特徴とする、トランスデューサ(1)。
【請求項2】
前記ダイアフラム(2)の前記金属材料(3)は、部分的に凝集性または非凝集性の析出物を伴う高合金マルテンサイトからなることを特徴とする、請求項1に記載の水素含有流動媒体(13)の圧力を決定するためのトランスデューサ(1)。
【請求項3】
前記ダイアフラム(2)の前記金属材料(3)は、部分的に凝集性または非凝集性の析出物を伴う高合金ランセットマルテンサイトからなることを特徴とする、請求項1または2に記載の水素含有流動媒体(13)の圧力を決定するためのトランスデューサ(1)。
【請求項4】
前記金属材料(3)は、耐水素腐食性があり、
前記金属材料(3)は、原子状水素に対して透過性がなく、水素に対する前記ダイアフラムの漏れ速度が10-6mbar・l/s未満であり、
前記ダイアフラムの厚さは、最大で500μmであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の水素含有流動媒体(13)の圧力を決定するためのトランスデューサ(1)。
【請求項5】
前記金属材料(3)中のクロム元素、モリブデン元素、またはニッケル元素のうちの少なくとも1つの質量含有量が、5重量%を超えることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の水素含有流動媒体(13)の圧力を決定するためのトランスデューサ(1)。
【請求項6】
前記ダイアフラム(2)の前記金属材料(3)は、少なくとも10重量%のクロム含有量を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の水素含有流動媒体(13)の圧力を決定するためのトランスデューサ(1)。
【請求項7】
前記ダイアフラム(2)の前記金属材料(3)の平均粒子サイズが20μm未満であり、それにより、前記金属材料(3)は、幾何学的寸法が500μm未満の薄肉ダイアフラム(2)の製造に適したものになっていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の水素含有流動媒体(13)の圧力を決定するためのトランスデューサ(1)。
【請求項8】
前記ダイアフラムの前記金属材料(3)は、30体積%未満の残留オーステナイト含有量、好ましくは0%~10%の残留オーステナイト含有量を有することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の水素含有流動媒体(13)の圧力を決定するためのトランスデューサ(1)。
【請求項9】
前記ダイアフラムの前記金属材料(3)は、1体積%を超える残留オーステナイト含有量を有することを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の水素含有流動媒体(13)の圧力を決定するためのトランスデューサ(1)。
【請求項10】
前記ダイアフラム(2)の前記金属材料(3)は、少なくとも600MPaかつ最大で1500MPaの降伏強度を有することを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の水素含有流動媒体(13)の圧力を決定するためのトランスデューサ(1)。
【請求項11】
前記ダイアフラム(2)の前記金属材料(3)は、少なくとも10重量%のクロム含有量と、少なくとも4重量%のニッケル含有量とを有し、
非金属の重量割合は、0.20重量%未満であるか、または前記ダイアフラム(2)の金属材料(3)は、降伏強度が室温で900MPa以下の焼入れおよび焼戻しグレードの1.4418鋼、または降伏強度が1500MPa以下の析出硬化グレードの1.4534鋼、または降伏強度が1500MPa以下の析出硬化グレードの1.4614鋼、または降伏強度が1500MPa以下のグレードの1.4548鋼であり、
前記材料は、20℃~100℃の間の温度範囲で、10・10-6-1~12・10-6-1の間、好ましくは11.3・10-6-1の熱膨張係数を有することを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の水素含有流動媒体(13)の圧力を決定するためのトランスデューサ(1)。
【請求項12】
前記流動媒体(13)に面する前記金属材料(3)の表面(6)は、波形を有し、
前記波形によって引き起こされるノッチ応力が、1500MPa未満であるか、または前記表面(6)は、少なくとも使用中に前記流動媒体と接触する領域に波形を有し、2つの非平行平面間の移行部が、少なくとも100μmの半径および/または少なくとも30μmのファセットを有することを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の水素含有流動媒体(13)の圧力を決定するためのトランスデューサ(1)。
【請求項13】
前記ダイアフラム(2)は、少なくとも使用中に前記流動媒体(13)と接触する領域に、平均粗さ指数Raが0.8μm未満の表面品質を有することを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の水素含有流動媒体(13)の圧力を決定するためのトランスデューサ(1)。
【請求項14】
前記ダイアフラム(2)の前記金属材料は、38~50HRCのロックウェルCによる硬度を有することを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の水素含有流動媒体(13)の圧力を決定するためのトランスデューサ(1)。
【請求項15】
前記ハウジング(7)と前記ダイアフラム(2)は、材料結合接続部(8)によって接続され、
前記ダイアフラム(2)は、使用中に前記流動媒体(13)と接触する第1の領域(9)を有し、
前記ダイアフラム(2)は、使用中に前記流動媒体(13)と接触しない第2の領域を有し、
前記材料結合接続部部(8)は、前記第2の領域に配置されることを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の水素含有流動媒体(13)の圧力を決定するためのトランスデューサ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素含有流動媒体に使用するためのダイアフラムを備えたトランスデューサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ダイアフラムは、第1の空間に含まれる流動媒体を第2の空間から分離する。圧力測定技術の分野では、トランスデューサは、測定装置(例えば、トランスデューサ要素)を流動媒体(例えば、圧力が決定される気体および/または液体測定媒体)から分離するダイアフラムを備えることが多い。この目的のために、ダイアフラムは通常、第1の寸法と第2の寸法を有する表面を含み、第1および第2の寸法は、長手方向軸に対してほぼ垂直である。ダイアフラムは、長手方向軸に平行に延在する第3の寸法の壁厚とも呼ばれる厚さを有する。
【0003】
以下において、流動媒体は、少なくとも1体積%(体積パーセント)の水素を含む水素含有流動媒体を意味すると理解される。
【0004】
一般的に、ダイアフラムの表面は、第1の空間で流動媒体と接触する領域を含む。圧力トランスデューサの場合、ダイアフラムのこの領域に作用する流動媒体の圧力は、トランスデューサ要素と略称される圧力トランスデューサ要素に可能な限り少ない損失で伝達される。圧力トランスデューサ要素を含む測定装置の感度に対するダイアフラムの影響が大きくなりすぎないことを保証するために、流動媒体に直接さらされるダイアフラムの領域は、可能な限り最も高い程度の弾性または可能な限り最も低い程度の剛性を示す必要がある。しかしながら、剛性の低いこの領域の材料は、測定圧力によって不可逆的に変形しないことが重要である。降伏強度が約400MPa(メガパスカル)の材料を使用する場合、ダイアフラムは不可逆的に変形しないように十分な厚さで製造する必要がある。ダイアフラムは、例えば、ダイアフラムがトランスデューサハウジングに接続されるより厚い領域をさらに含むことができる。より厚いこれらの領域は、ダイアフラムの安定性にも寄与し得る。この場合、より厚い領域は、流動媒体の圧力を圧力トランスデューサ要素に伝達するためには使用されない。
【0005】
金属材料の降伏強度は、DIN EN ISO 6892-1規格に従って決定される。それは、RP0.2.値に対応している。
【0006】
ダイアフラムの表面は、実質的に第1の寸法および第2の寸法に沿って延在し得るが、長手方向軸の方向に部分的に湾曲し得る。
【0007】
ダイアフラムはまた、流動媒体を他のタイプのトランスデューサ要素、例えば温度トランスデューサ要素がダイアフラムによって流動媒体から分離されている温度トランスデューサなどから分離することができる。この場合、流動媒体の温度は、ダイアフラムを介して温度トランスデューサ要素に伝達される。この場合も、ダイアフラムの壁厚は、可能な限り高い熱伝達係数を得るために、可能な限り薄くする必要がある。
【0008】
流動媒体に水素が含まれている場合、ダイアフラムは水素に対して不透過性であり、かつ耐性がなければならない。したがって、室温で約400MPaの降伏強度を有するグレード1.4404のオーステナイト鋼(グレード316Lとしても知られる)またはこれもまた室温で約400MPaの降伏強度を有するニッケル基合金2.4819(C-276としても知られる)などの市販の耐水素性の多結晶金属は、200℃超で耐熱性でもあるダイアフラムによく使用される。これらの材料は、平均粒子サイズが20μmを超えるという特徴がある。これらの粗粒の多結晶金属は、降伏強度が低いために薄肉ダイアフラムを製造できないため、厚さが500μm未満の薄いダイアフラムの材料としては役に立たない。薄いダイアフラムは、急速に不可逆的に変形可能となるであろう。また、ダイアフラムの薄肉領域では結晶粒の数が少ないため、材料は等方的な挙動を示さない。さらに、結晶粒間の粒界に沿った分子状および/または原子状水素の拡散経路は、粗粒領域を介して比較的短い。この方法では、水素が短い経路に沿ってダイアフラムを通って容易に拡散する可能性があるため、これは欠点である。
【0009】
金属および合金の場合、構造という用語は材料の微細構造を指す。例えば、1つの構造はマルテンサイトである。
【0010】
標示1.4404および以下に記載されているその他の材料グレード番号は、DIN EN 10027-2に対応している。
【0011】
分子状および/または原子状の水素が金属材料に浸透すると、これはいわゆる水素脆化につながる。その結果、負荷がかかると材料は脆性破壊の危険性を受ける可能性がある。
【0012】
水素脆化は、金属または金属合金の格子構造への水素の浸透およびその後の取り込みによる、金属または金属合金の延性および強度の変化を意味すると理解される。その結果、水素誘起の割れが発生する可能性があり、水素と接触する用途での水素脆化を受けやすい材料の使用が制限される。
【0013】
強度の高い金属または金属合金は、強度の低い金属よりも水素脆化しやすいことはよく知られている。
【0014】
グレード1.4404鋼(グレード316Lとしても知られる)と合金2.4819(C-276としても知られる)から作製された材料は、一般的に耐食性があると考えられている。それらは低い降伏強度を示すため、降伏強度が高い材料と比較して、より小さな力の印加で塑性変形され得る。この欠点を補うために、ダイアフラムは、500μmを超える厚い厚さで製造されることがよくある。しかしながら、これは、厚いダイアフラムの高い慣性質量のために不利である。さらに、厚いダイアフラムは、剛性も高くなる。
【0015】
既知の一実施形態では、圧力センサは、流体圧力伝達媒体で満たされたダイアフラムの背後の空間を含む。この実施形態では、流体圧力伝達媒体がダイアフラムの変形に対抗するので、ダイアフラムの不可逆的な塑性変形のリスクが低くなる。流体圧力伝達媒体(例えば、圧縮性がほとんどない油)は、ダイアフラムに作用する圧力を、ダイアフラムから離れて配置された測定要素に伝達する。この場合も、ダイアフラムは、できるだけ損失を少なくして圧力を伝達する必要があり、つまり、ダイアフラムは有利には薄く設計する必要がある。被測定流動媒体に水素が含まれていると、時間の経過とともに水素が流体圧力伝達媒体内に蓄積し、体積が増加してダイアフラムを外側に膨らませる。ダイアフラムは、ダイアフラムを通って拡散した水素によって膨張する。これは、一方でダイアフラムを損傷する可能性があり、他方で測定要素付近の圧力条件を変化させる。ダイアフラムを介した分子状および/または原子状水素の拡散は、センサの長期安定性に悪影響を及ぼす。
【0016】
特許文献1は、合金2.4819(C-276としても知られる)から作製されたダイアフラムを備えたトランスデューサを記載している。材料自体は耐食性があると考えられているが、ダイアフラムの厚さが薄いため、水素に対して不透過ではない。特許文献1は、ダイアフラムをコーティングすることによって不十分な水素に対する耐性を達成することを示唆している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】米国特許出願公開第20050109114号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、上述の欠点が減少するようにダイアフラムを改良することである。本発明の別の目的は、原子状および/または分子状水素による腐食に対するダイアフラムの耐性を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この目的は、独立請求項の構成によって達成された。
【0020】
本発明は、水素含有流動媒体の圧力を決定するためのトランスデューサに関するものである。水素含有流動媒体は、第1の空間内に配置される。トランスデューサは、流動媒体に面する圧力側端部を備える。トランスデューサは、第2の空間を含むハウジングを備える。トランスデューサは、測定装置を備える。測定装置は、第2の空間内に配置される。トランスデューサは、圧力側端部において、水素含有流動媒体を含む第1の空間を第2の空間から気密に分離するダイアフラムを備える。ダイアフラムは、金属材料を含む。金属材料は、マルテンサイト構造を有する。本発明によれば、ダイアフラムの金属材料は、高合金マルテンサイトから作製される。
【0021】
ダイアフラムは、水素含有流動媒体を含む空間を別の空間から分離するように設計されている。水素含有流動媒体は、少なくとも1体積%の水素を含み、以下、腐食剤または腐食性流動媒体とも呼ばれる。
【0022】
腐食は一般的に、材料の測定可能な変化であると理解されている。腐食は、様々な物質への曝露の結果として発生する可能性がある。このように、金属材料の腐食は、様々なアルカリまたは酸、水素または酸素などのガス、塩水、およびその他多くの物質と関連して発生することが知られている。しかしながら、この説明の目的のために、特に明記しない限り、腐食は、原子状または分子状の水素による腐食を意味すると理解される。本発明に係るダイアフラムは、水素による腐食に対する感受性が低くなければならない。
【0023】
驚くべきことに、マルテンサイト構造を有する(つまり、マルテンサイトからなる)細粒鋼は、水素脆化に対する感受性が低く、したがって、ある程度の耐水素性を示す。したがって、ダイアフラムの金属材料は、水素腐食に耐性がある。
【0024】
マルテンサイト構造は、平均粒径が20μm未満であることを特徴とするため、厚さが500μm未満の薄肉ダイアフラムの製造に適している。平均粒径が20μm未満であるため、コンポーネントは等方性の物理的特性を示し、ダイアフラムの使用時に有利である。そうでない場合、例えば、ダイアフラムに負荷を掛けたときに、方向性の影響が有害な方法で発生する。また、粗粒材料とは対照的に、ダイアフラムを通る水素の拡散は、細粒材料の多数の粒界によって減少する。水素含有流動媒体との関連でマルテンサイトを使用することは驚くべきことであり、なぜなら、マルテンサイトは、その比較的高い強度のために、水素含有流動媒体と接触して使用するのには一般的に不適切であると考えられているからである。VYTVYTS’KYIVI:「高圧水素中の鉄、ニッケル、およびチタンに基づく合金の強度(Strength of Alloys Based on Iron, Nickel, and Titanium in High-Pressure Hydrogen)」、MATERIALS SCIENCE、KLUWER ACADEMIC PUBLISHERS-CONSULTANTS BUREAU、NE、40巻、6号、2004年11月1日(2004-11-01)、717-730ページ、ISSN:1573-885X、DOI:10.1007/S11003-005-0108-8には、「水素中の破滅的な劣化」が記載されている。
【0025】
ダイアフラム全体を500μm未満の厚さで製造する必要はないことを理解すべきである。したがって、ダイアフラムは、例えば、ダイアフラムがトランスデューサハウジングに接続されるより厚い領域を有することもできる。より厚い領域は、ダイアフラムの安定性にも寄与する可能性がある。しかしながら、ダイアフラムが剛性の低い薄肉領域を含むことが重要である。
【0026】
有利なことには、ダイアフラムの金属材料は、部分的に凝集性または非凝集性の析出物を伴う高合金マルテンサイトである。
【0027】
「高合金」という用語は、Dubbel-Taschenbuch fur den Maschinenbau(機械工学向けペーパーブック)、第14版、Springer-Verlag 1981、第3.1.4章に従って使用され、合金含有量が5重量%(重量パーセント)を超えるマルテンサイトを意味する。合金含有量は、合金元素の質量含有量である。その結果、トランスデューサは全体的な耐食性が向上する。この文脈において、合金元素は、排他的にCr(クロム)、Mo(モリブデン)、またはNi(ニッケル)を意味すると理解される。これらの合金元素は、全体的な耐食性を高める。これにより、水素腐食に対する耐性も向上する。
【0028】
部分的に凝集性の析出物を伴うマルテンサイトまたは非凝集性の析出物を伴うマルテンサイトは、いわゆる析出物が熱処理、時効硬化または粒子硬化とも呼ばれる析出硬化、または粒子硬化によって形成されるマルテンサイトを意味すると理解される。本明細書の意味における部分的に凝集性または非凝集性の析出物は、Werkstoffkunde-Stahl-Band 1、Verein Deutscher Eisenhuttenleute (editor)、Springer Verlag 1984、またはPirlog、Madalina、およびP.K.Pranzas、「小角中性子散乱によるFE-CU合金中の銅析出物の特徴付け(CHARACTERIZATION OF COPPER PRECIPITATES IN FE-CU ALLOYS WITH SMALL-ANGLE NEUTRON SCATTERING)」に記載される。
【0029】
析出物では、合金元素の原子が凝集体と呼ばれる蓄積を形成する。これには、材料の硬度の変化が伴う。材料の硬度といわゆる熱老化時間との関係はよく知られている。これは、多くの場合、材料の硬度が熱老化時間に対してプロットされた図の形態で示される。最大硬度に達し、その後再び減少するグローバルな最大値まで、硬度は、熱老化時間の増加とともに増加する。熱老化時間は、特定の温度での熱処理の継続時間を示す特定の時間である。材料の最大硬度Hmaxは、熱老化時間t(最大硬度)で到達する。この最大硬度Hmaxでは、いわゆる部分的に凝集性の析出物が存在する。熱老化時間が長くなると、非凝集性の析出物が存在する。Metallkunde、E.HornbogenおよびH.Warlimont、第4版、Springer Verlag 2001に記載されているように、優先的に、析出物は材料内の粒界で形成される。
【0030】
非凝集性および部分的に凝集性の析出物は、水素シンクとして機能する。水素は、水素シンクに蓄積する。これにより、蓄積された水素がさらに材料に浸透するのを防ぐ。凝集性の析出物は、粒子内に位置するが、水素は好ましくは、材料中の粒界に沿って移動できるので、水素の移動度は、凝集性の析出物を伴う材料と比較して減少する。
【0031】
ダイアフラムの材料が、部分的に凝集性および/または非凝集性の析出物を伴う高合金ランセットマルテンサイトからなることが特に好ましい。ランセットマルテンサイトは、Werkstoffkunde-Stahl-Band 1、Verein Deutscher Eisenhuttenleute(editor)、Springer Verlag 1984、第B6.4.4章、またはMetallkunde、E.HornbogenおよびH.Warlimont、第4版、Springer Verlag 2001、第15.2章に記載されている材料を意味すると理解されている。その構造において、ランセットマルテンサイトは、層状に配置された平らなランセットを含む。ランセットマルテンサイトは、ブロックマルテンサイトまたはマッシブマルテンサイト、または「ラスマルテンサイト」または「ブロッキーマルテンサイト」または「マッシブマルテンサイト」としても知られている。ランセットマルテンサイトにおける水素の移動度は、ランセットなしのマルテンサイトと比較してさらに低下することが示されている。
【0032】
有利なことには、ダイアフラムの金属材料は、クロム含有量が少なくとも10重量%であり、ニッケル含有量が少なくとも4重量%である。これらの元素の各々の含有量が少ない金属材料は、全体的な腐食に対する耐性が低くなる。非金属の重量割合は、有利には0.20重量%未満である。これは、非金属の重量比率が高くなるとマトリックス欠陥が生じ、材料がより脆くなるため、有利である。これは、ダイアフラムの製造にとって不利である。脆性材料は、不安定な亀裂伝播に対する耐性が低い。
【0033】
有利なことには、ダイアフラムの金属材料は、少なくとも600MPaかつ最大で1500MPaの降伏強度を有する。600MPaを超える高い降伏強度は、金属材料の不可逆的な塑性変形を防ぐ。ダイアフラムの剛性を低く保つために、金属材料の降伏強度は、500μm未満の厚さのダイアフラムの所与の幾何学的形状に対して1500MPaを超えてはならない。通常、圧力トランスデューサのダイアフラムの典型的な直径は、2.0mm~20mmである。
【0034】
有利なことには、ダイアフラムの金属材料は、38~50HRCのロックウェルC硬度を示す。より低い硬度では、材料は、凝集性の析出物を含む。硬度が高すぎると、水素脆化に対する感受性が再び増加する。
【0035】
特に明記しない限り、例えば、降伏強度、剛性、引張強度、硬度などのすべてのパラメータは室温で与えられる。室温とは、20℃の温度を意味すると理解されている。
【0036】
ダイアフラムの金属材料は、平均粒子サイズが20μm未満であることが有利である。その結果、材料は繊細な構造でも等方的な物性を示す。また、粒界に沿った拡散経路は、平均粒子サイズが20μmを超える粗粒構造を有する材料と比較してかなり長くなる。その結果、水素は粒界に沿って材料にほとんど浸透しないか、拡散経路が長いために材料を通って拡散する可能性がある。粒子サイズが小さいため、この材料は薄肉ダイアフラムの製造に適している。さらに、厚さが500μm未満の薄い構造でも数層の粒子を有するため、金属材料はまた、水素に対して密閉されている。同じ理由で、薄い構造は等方的な物理特性を示す。
【0037】
密閉されるという用語は、10-6mbar・l/s(ミリバールリットル/秒)未満のヘリウムの漏れ速度を意味することを意図している。
【0038】
ダイアフラムの金属材料が30体積%(体積パーセント)未満の残留オーステナイト含有量を有する場合、上記の金属材料から作製されたダイアフラムの利点が存在し続けることが示されている。0体積%~10体積%の間の金属材料の残留オーステナイト含有量が好ましい。残留オーステナイト含有量は、規格ASTM E 975に従って決定される。
【0039】
ダイアフラムは、1体積%を超える残留オーステナイト含有量を有する金属材料を含むことが特に有利である。粒界で金属材料を通って拡散する水素は、残留オーステナイトに優先的に蓄積することが示されている。したがって、残留オーステナイトは、水素が保持され、そこから逃げることができない水素シンクである。したがって、残留オーステナイトに保持された水素は、金属材料内により深く拡散することができない。残留オーステナイト含有量が1体積%を超えると、水素の移動度が低下する。これにより、ダイアフラムの耐食性が向上する。ダイアフラムの金属材料内の水素の移動度が低下すると、原子状または分子状の水素の漏れ速度も低下する。
【0040】
ダイアフラムは、原子状または分子状の水素に対して透過性がない材料から作製される。この説明の目的のために、この材料から作製された厚さ500μmのダイアフラムが、原子状水素または分子状水素に対して10-6mbar・l/s未満の漏れ速度を有し、ダイアフラムの厚さが最大500μmである場合、材料は透過性ではない。ダイアフラムの表面サイズは、少なくとも1mmである。これは、水素が第2の空間に蓄積するのを防止するので有利である。第2の空間に水素が蓄積すると、ダイアフラムが膨らむ可能性がある。これはダイアフラムを破損する恐れがある。また、水素富化は、測定要素の周囲の圧力条件を変える第2の空間内の圧力の増加につながる可能性がある。これにより、圧力測定が正しくない可能性がある。
【0041】
金属材料として使用するのに特に有利なのは、室温で900MPa以下の降伏強度を有する、焼入れおよび焼き戻しされたグレード1.4418鋼である。降伏強度が1500MPa以下の析出硬化グレード1.4534鋼も、金属材料として使用するのに特に有利である。さらに金属材料として使用するのに特に有利なのは、1500MPa以下の降伏強度を有する析出硬化グレード1.4614鋼である。さらに有利なのは、1500MPa以下の降伏強度を有するグレード1.4548鋼である。
【0042】
典型的には、金属材料は、20℃~100℃の間の温度範囲において、10・10-6-1~12・10-6-1の間の熱膨張係数を有する。
【0043】
有利なことには、金属材料は、流動媒体に面し、流動媒体の吸着傾向を低く保つために、窪み、穿孔、穴、またはリブがない表面を含む。これにより、表面の欠陥(いわゆる、表面欠陥)が吸着を促進するため、結果的にダイアフラムへの流動媒体の吸着が悪くなる。利点は、流動媒体による表面腐食に対する耐性が向上することである。
【0044】
流動媒体に面する金属材料の表面が波形を示し、この波形によって引き起こされるノッチ応力が1500MPa未満である場合、特に有利である。
【0045】
波形は、表面の隣接するサブセクションの平面からの表面のサブセクションの平面の逸脱として定義される。使用中に流動媒体と直接接触する領域に円形の表面を有するダイアフラムの場合、ダイアフラムの表面の同心円形波形は、ダイアフラムの弾性を増加させることが知られている。しかしながら、選択した半径によっては、そのような波形は材料にノッチ応力をもたらす。ノッチ応力の文脈におけるノッチは、尖っている必要はなく、丸みを帯びた表面、断面の変化、穴などによっても与えられる。したがって、ノッチ応力は、ダイアフラムまたはノッチの幾何学的寸法にそれぞれ依存し、ダイアフラムの金属材料に依存する。ノッチ応力は、幾何学的寸法と材料パラメータ(例えば、引張強度、弾性率、ヤング率、降伏強度(Rp0.2)など)を使用した有限要素解析によって決定される。この決定は、例えば、「機械部品の強度の数学的証明-FKMガイドライン(Rechnerischer Festigkeitsnachweis fur Maschinenbauteile-FKM-Richtlinie)」、VDMA-Verlag発行、第7版 2020年、または「FEMによる構造強度:迅速な理解と適用(Betriebsfestigkeit mit FEM: schnell verstehen & anwenden)」、Stefan EinbockおよびFlorian Mailander、2018年に記載されている。金属材料のノッチ応力が高いと、亀裂が形成されやすくなる。ノッチまたは亀裂は、表面の耐食性に悪影響を及ぼす。流動媒体の腐食性要素は、亀裂を通って材料構造に有害な方法で浸透し、亀裂に沿って材料を損傷する可能性がある。これは、応力腐食割れとも呼ばれる。
【0046】
あるいはまた、厚さが500μm未満の円形ダイアフラムの場合、ダイアフラムの表面は、少なくとも使用中に流動媒体と接触する領域において、有利には、少なくとも100μmの半径および/または少なくとも30μmのファセットを有する2つの非平行な平面間で移行するような波形に設計することができる。これにより、2つの非平行な平面間の移行部の寸法が小さいダイアフラムと比較して、応力腐食割れが減少する。
【0047】
有利なことには、ダイアフラムは、少なくとも使用中に流動媒体と接触する領域において、平均粗さ指数Raが0.8μm未満の表面品質を示す。平均粗さ指数Raは、DIN EN ISO 1302に従って決定される。表面がより高い平均粗さ指数を示す場合、より低い平均粗さ指数を有する表面と比較して、流動媒体の原子または分子が吸着し得る流動媒体にさらされる領域が大きくなる。さらに、0.8μm未満の平均粗さ指数を示す表面は、より高い平均粗さ指数を有する表面と比較して、金属材料の結晶格子内の表面欠陥が少ない。欠陥は表面での吸着と化学反応を促進し、表面の腐食を早める。したがって、0.8μm未満の低い平均粗さ指数は、表面の耐食性を高める。
【0048】
好ましくは、ダイアフラムの金属材料は、無拡散変態によってオーステナイトから生成される。
【0049】
ダイアフラムは、流動媒体に面する側にコーティングを有してもよい。ダイアフラムの様々な実施形態における、ダイアフラムの(特に、金属材料および表面の)特性および特徴に関する前述の説明は、それによってコーティングとはっきりと適合している。コーティングにより、ダイアフラムの耐食性がさらに向上し得る。
【0050】
ダイアフラムは、内側コーティングを含むのに適している。内側コーティングは、流動媒体と接触していないため、ダイアフラムの流動媒体に面する側に存在し得るコーティングとは、物理的および化学的パラメータが異なり得る。したがって、例えば、内側コーティングは、電気的に絶縁するように設計することができる。また、ダイアフラムの流動媒体に面する側のコーティングは、内側コーティングが示す必要のない他の物質に対する耐性を有することもできる。
【0051】
流動媒体の圧力を決定するための測定装置は、例えば、ダイアフラムに加えられた圧力の関数として圧電電荷を生成する少なくとも1つの圧電結晶である。一実施形態では、圧電結晶は、圧電結晶に予圧を加える予圧スリーブ内に配置される。このようにして、負圧と正圧の両方の変化を検出できる。あるいはまた、測定装置は、静電容量の変化として機械的変形を検出する静電容量測定要素を含むこともできる。
【0052】
あるいはまた、測定装置は、電気抵抗の変化として機械的変形を検出する、ピエゾ抵抗型測定要素または歪みゲージストリップ(歪みゲージとも呼ばれる)を備えることもできる。流動媒体の圧力を決定するためのトランスデューサで使用される他の測定装置が当業者には知られている。
【0053】
ダイアフラムは、ハウジングの圧力側端部に配置され、測定装置を流動媒体から気密に分離する。ハウジングとダイアフラムは、材料結合接続部で接続されている。材料結合接続部は、例えば、溶接接続部またははんだ接続部である。接着剤による材料結合接続部も考えることができる。
【0054】
ダイアフラムは、使用中に流動媒体と接触する第1の領域を含む。ダイアフラムは、使用中に流動媒体と接触しない第2の領域を含む。材料結合接続部は、第2の領域に配置される。はんだ付けまたは溶接接合の形態での材料結合接続部には、通常、より多くの数の亀裂または孔がある。材料結合接続部が接着剤によって達成される場合でも、接着剤は流動媒体によって損傷を受ける可能性がある。したがって、接着剤による接続部は、流動媒体にさらされていない第2の領域に有利に配置される。
【0055】
ダイアフラムがコーティングを有する場合、コーティングは、少なくとも第1の領域全体にわたって配置されるが、第2の領域にわたって少なくとも部分的に延在することもできる。
【0056】
本明細書で定義されるように、第2の領域における流動媒体の腐食性成分の濃度が第1の領域における腐食性成分の濃度の1%以下に相当する場合、第2の領域は流動媒体と接触していない。
【0057】
第1および第2の領域は、例えばシール要素によって互いに分離することができる。温度および圧力範囲に関するトランスデューサの用途に応じて、金属シール(例えば、銅シール、1.4404または1.4301グレードの鋼から作製されたシール)、金属合金から作製されたシール要素、または金属合金から作製された金属コーティングシールを使用することができる。特定の温度および圧力範囲では、(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、フルオロエラストマー、またはニトリル化合物から作製された)プラスチックシールも知られている。シール要素には他の材料を使用することもできる。
【0058】
本トランスデューサは、好ましくは、流動媒体が腐食性であり、従来のトランスデューサを使用できない場合に、流動媒体の圧力を決定するために使用される。
【0059】
分子状水素または原子状水素の少なくとも一部を含む流動媒体の圧力を決定するために、本トランスデューサを使用することが特に好ましい。水素は、多くの金属材料でいわゆる水素脆化を引き起こすことが知られており、水素脆化と、熱的および/または機械的応力下での降伏強度の低下につながる。上記のトランスデューサは、これらの欠点を著しく軽減する。
【0060】
トランスデューサについて説明したすべての実施形態は、圧力伝達媒体が第2の空間に配置される一実施形態として設計することができる。しかしながら、説明したすべての実施形態は、第2の空間に圧力伝達媒体を配置せずに設計することもできる。
【0061】
本発明は、流動媒体の温度を決定するためのトランスデューサも含む。トランスデューサは、流動媒体に面する圧力側端部を備える。トランスデューサは、ハウジングを備える。トランスデューサは、流動媒体の温度を決定するための測定装置を備える。測定装置は、ハウジング内部に配置される。トランスデューサは、上記の実施形態のいずれかに従って設計されたダイアフラムを備える。
【0062】
以下において、本発明は、図面を参照して例としてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】本発明に係るダイアフラムの一実施形態を有するトランスデューサの一実施形態の概略断面図を示す。>
図2】壁に配置された図1に係るダイアフラムを有するトランスデューサの断面図の概略部分図を示す。>
図3】所与の温度での材料の熱老化時間に対して硬度をプロットした図の概略表現を示す。
【発明を実施するための形態】
【0064】
図1および2はそれぞれ、ダイアフラム2を備えるトランスデューサ1の一実施形態の概略断面図を示す。トランスデューサ1は、流動媒体13の圧力を決定するのに適している。トランスデューサ1は、流動媒体に面する圧力側端部11を備える。トランスデューサ1は、ハウジング7を備える。測定装置16は、ハウジング7の内部に配置される。
【0065】
ダイアフラム2は、トランスデューサ1の圧力側端部11に配置され、測定装置16を流動媒体13から気密に分離する。
【0066】
一定の縮尺で描かれていない図1の表現では、金属材料3の任意選択のコーティングが一点鎖線として示されている。
【0067】
図2は、ダイアフラムの別の一実施形態を示す。両方の図において、ダイアフラム2の厚さは、より明確にするために一定の縮尺で描かれていない。
【0068】
図1および図2のダイアフラム2は、金属材料3を含み、第1の空間14を第2の空間15から気密に分離する。第1の空間14には流動媒体13が配置されており、流動媒体13の少なくとも1つの物理変数を決定することができる。物理変数は、例えば、圧力および/または温度である。
【0069】
ダイアフラム2は、ダイアフラム2の使用時に流動媒体13と接触する第1の領域9を含む。ダイアフラム2は、図1および図2に示すように、使用中に流動媒体13と接触しない第2の領域10を含む。
【0070】
使用中に流動媒体13と直接接触するダイアフラム2の表面6は、有利には波形を有し、この波形によって引き起こされるノッチ応力は1500MPa未満である。ダイアフラムの表面は、図1および図2に示される。平行でない2つの平面間の移行部は、少なくとも100μmの半径18および/または少なくとも30μmのファセット18を有する。
【0071】
トランスデューサ1のハウジング7とダイアフラム2は、材料結合接続部8によって接続される。ダイアフラム2は、使用中に流動媒体13と接触する第1の領域9を含む。ダイアフラム2は、使用中に流動媒体13と接触しない第2の領域10を含む。第1の領域9および第2の領域10は、トランスデューサ1の使用時に、シール要素12によって互いに分離される。図示される実施形態の各々において、材料結合接続部8は、第2の領域10に配置される。
【0072】
しかしながら、ダイアフラム2の使用時に流動媒体13と接触する領域に材料結合接続部8を配置することも考えられる。この場合、材料結合接続部8は、コーティング4(図示せず)によって完全に覆われていることが有利である。
【0073】
図2は、壁17に挿入された流動媒体13の圧力を決定するためのトランスデューサ1を示す。壁17は、例えば、流動媒体13用の貯蔵タンク、圧縮機、ヒートポンプ、冷凍機、流動媒体13用のパイプ、内燃機関の燃焼室、またはガスタービンの壁17とすることができる。
【0074】
図3は、金属材料(例えば、析出硬化マルテンサイト)と、特定の時効温度での熱時効時間tとの間の関係を概略的に示している。
【0075】
もちろん、本明細書に開示されたトランスデューサ1またはダイアフラム2の実施形態を互いに組み合わせることが可能である。本明細書には、本明細書に記載された実施形態の構成の組み合わせを含む実施形態も明示的に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
1 トランスデューサ
2 ダイアフラム
3 金属材料
6 表面
7 ハウジング
8 材料結合接続部
9 第1の領域
10 第2の領域
11 圧力側端部
12 シール要素
13 流動媒体
14 第1の空間
15 第2の空間
16 測定装置
17 壁部
18 フェーズ(面)/ファセット/曲率
21 薄肉領域
図1
図2
図3