(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】改良された超音波流量測定システム
(51)【国際特許分類】
G01F 1/66 20220101AFI20240814BHJP
G01F 1/667 20220101ALI20240814BHJP
【FI】
G01F1/66 101
G01F1/667 A
(21)【出願番号】P 2022511359
(86)(22)【出願日】2020-08-12
(86)【国際出願番号】 NL2020050507
(87)【国際公開番号】W WO2021034189
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2023-02-20
(32)【優先日】2019-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】596167974
【氏名又は名称】ベルキン ビーブイ
【氏名又は名称原語表記】BERKIN B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】ブルグマン、コーエン アドリアーン ロベルト トム
【審査官】藤澤 和浩
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0222492(US,A1)
【文献】特表2018-529973(JP,A)
【文献】特開2019-039805(JP,A)
【文献】特開2012-027012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/66
G01F 1/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波流量測定システムであって、
―流量を測定すべき流体のための流管(11)と、
―前記流管(11)の外側部分(111)の上に与えられ、前記流管を実質的に取り囲む超音波減衰層(12)と、
―前記流管(11)の外側部分(111)の上に配置され、前記超音波減衰層(12)で覆われた超音波送信器(13)と、
―前記流管(11)の外側部分(111)の上に配置され、前記超音波減衰層(12)で覆われた超音波受信器(14)と、
を備え、
前記流管(11)の材料内での音速は、前記超音波減衰層(12)の材料内での音速より速く、
前記超音波送信器(13)は、送信フェーズでは、前記流体を通して超音波信号を送信するように構成され、
前記超音波受信器(14)は、受信フェーズでは、送信された超音波信号を受信するように構成され、
前記流管(11)と前記超音波減衰層(12)との境界にはストーンリー波が現れ、
前記超音波減衰層(12)は、
―少なくとも部分的には、前記超音波送信器(13)と前記超音波受信器(14)との間に配置される第1減衰部(121)と、
―少なくとも部分的には、前記超音波送信器(13)と前記超音波受信器(14)との間に配置される第2減衰部(122)と、
を備え、
前記超音波減衰層(12)の前記第1減衰部(121)および前記第2減衰部(122)は、セクション、空隙または空間により、前記流管(11)の軸方向(A)に、距離(d)だけ互いに離して配置され、
前記セクション、空隙または空間は、ストーンリー波を防ぐこと、または、ストーンリー波の有効部分が前記超音波送信器(13)から送信された後に前記超音波受信器(14)に到達しないように
し、
前記流管(11)は連続的な流管であることを特徴とする超音波流量測定システム。
【請求項2】
前記距離(d)は、前記第1減衰部(121)のセクション対向第1端面(1211)と、前記第2減衰部(122)のセクション対向第2端面(1212)と、の間で定義され、
前記第2減衰部(122)のセクション対向第2端面(1212)は、前記第1減衰部(121)のセクション対向第1端面(1211)に対向し、
前記距離(d)は、10mm未満であることを特徴とする請求項1に記載の超音波流量測定システム。
【請求項3】
前記第1減衰部(121)のセクション対向第1端面(1211)は平らな表面を持ち、および/または、前記第2減衰部(122)のセクション対向第2端面(1212)は平らな表面を持つことを特徴とする請求項1に記載の超音波流量測定システム。
【請求項4】
前記第1減衰部(121)のセクション対向第1端面(1211)と、前記流管(11)の長さ軸(A)との間で定義される角度(α1)は、135°と45°との間であり、
前記第2減衰部(122)のセクション対向第2端面(1222)と、前記流管(11)の長さ軸(A)との間で定義される角度(α2)は、135°と45°との間であることを特徴とする請求項3に記載の超音波流量測定システム。
【請求項5】
前記第1減衰部(121)のセクション対向第1端面(1211)は、曲がっており、および/または、前記第2減衰部(122)のセクション対向第2端面(1212)は、曲がっていることを特徴とする請求項1に記載の超音波流量測定システム。
【請求項6】
前記超音波減衰層(12)の前記第1減衰部(121)と前記第2減衰部(122)との間に、少なくとも1つの半透過的な音響特性を持つセクション(15)が配置されることを特徴とする請求項1に記載の超音波流量測定システム。
【請求項7】
前記半透過的な音響特性を持つセクション(15)は比較的真空であることを特徴とする請求項6に記載の超音波流量測定システム。
【請求項8】
前記半透過的な音響特性を持つセクション(15)は空気を含むことを特徴とする請求項6に記載の超音波流量測定システム。
【請求項9】
前記半透過的な音響特性を持つセクション(15)は閉鎖セル構造を持つ発泡材を含むことを特徴とする請求項6に記載の超音波流量測定システム。
【請求項10】
前記超音波減衰層(12)の厚さ(t12)は、流管(11)の半径(r11)の6分の1未満であることを特徴とする請求項1に記載の超音波流量測定システム。
【請求項11】
前記超音波受信器(14)と前記第1減衰部(121)のセクション対向第1端面(1211)との間の距離(d142)は0.1mmより大きく、前記超音波受信器(14)と前記第2減衰部(122)のセクション対向第2端面(1212)との間の距離(d141)は0.1mmより大きく、および/または、
前記超音波送信器(13)と前記第1減衰部(121)のセクション対向第1端面(1211)との間の距離(d131)は0.1mmより大きく、前記超音波送信器(13)と前記第2減衰部(122)のセクション対向第2端面(1212)との間の距離(d132)は0.1mmより大きいことを特徴とする請求項1に記載の超音波流量測定システム。
【請求項12】
前記超音波減衰層(12)は、前記第1減衰部(121)と前記第2減衰部(122)との間に配置された第3減衰部(123)を備え、
前記第3減衰部(123)は、前記流管(11)の軸方向(A)に、前記第1減衰部(121)および前記第2減衰部(122)から離して配置されることを特徴とする請求項1に記載の超音波流量測定システム。
【請求項13】
少なくとも1つの第2超音波送信器(16)および/または少なくとも1つの第2超音波受信器(17)を備え、
超音波減衰層(12)は、少なくとも1つのさらなる減衰部(124、125)を備え、
前記さらなる減衰部(124、125)は、前記流管(11)の軸方向(A)に、前記第1減衰部(121)および前記第2減衰部(122)から離して配置され、
前記さらなる減衰部(124、125)は、少なく部分的には、前記超音波受信器(14)または前記超音波送信器(13)のいずれかと、前記第2超音波受信器(17)または前記第2超音波送信器(16)のいずれかとの間に配置されることを特徴とする請求項1に記載の超音波流量測定システム。
【請求項14】
前記第1減衰部(121)のセクション対向第1端面(1211)と前記第2減衰部(122)のセクション対向第1端面(1212)とは同じ平らな表面であることを特徴とする請求項3に記載の超音波流量測定システム。
【請求項15】
前記超音波減衰層(12)の外側部分に配置された外側スリーブ(20)をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の超音波流量測定システム。
【請求項16】
前記超音波減衰層(12)は、封止樹脂または封止材からなることを特徴とする請求項1から15のいずれかに記載の超音波流量測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波流量測定システムに関する。この超音波流量測定システムは、以下を備える。
-流量を測定すべき流体のための流管。
-前記流管の外側部分の上に与えられ、前記流管を実質的に取り囲む超音波減衰層(または超音波減速層)。前記流管の材料内での音速は、前記超音波減衰層の材料内での音速より速い。
-前記流管の外側部分の上に配置され、前記超音波減衰層で覆われた超音波送信器。この超音波送信器は、送信フェーズでは、前記流体を通して超音波信号を送信するように構成される。
-前記流管の外側部分の上に配置され、前記超音波減衰層で覆われた超音波受信器。この超音波受信器は、受信フェーズでは、送信された超音波信号を受信するように構成される。
【背景技術】
【0002】
本出願人の出願に係る国際公開第2017/061870 A1号は、流管と、少なくとも2つの超音波トランスデューサ回路と、少なくとも1つの受信回路と、制御手段と、超音波減衰層と、を備えた超音波フロー測定システムを開示する。流管は、流量を測定すべき流体のためのものである。少なくとも2つの超音波トランスデューサ回路は、流管の外側部分の上に与えられる。この超音波トランスデューサ回路のうちの少なくとも1つ(一方)は、送信フェーズでは、流体を通して超音波信号を送信するように構成された超音波送信器を備える。この超音波トランスデューサ回路のうちの少なくとも1つ(他方)は、受信フェーズでは、送信された超音波信号を受信するように構成された超音波受信器を備える。受信回路は、受信フェーズでは、超音波受信器を読み出すように構成される。制御手段は、前記少なくとも2つの超音波トランスデューサ回路および前記少なくとも1つの受信回路に接続される。この超音波フロー測定システムは、流管の外側ジャケットに与えられた超音波減衰層を備える。超音波減衰層は、流管の外側ジャケットを実質的に覆うように配置され、超音波送信器と超音波受信器の両方に接触する。流管の材料内での音速は、超音波減衰層の材料内での音速を実質的に超える。
【0003】
国際公開第2017/061870 A1号で説明されているように、流管と接触する送信器を使うことにより、超音波は、流管の長さ軸と平行に伝搬する。固体(すなわち流管)と流体(すなわち測定すべき流体、液体または気体)との境界には、ショルテ波が現れる。固体(すなわち流管)と固体(すなわち超音波減衰層)との境界には、ストーンリー波が現れる。流管の材料と超音波受信器の材料とでの音速が異なるため、流体と相互作用しない波は、流体と相互作用する波より遅く受信器に到達する。これにより信号対雑音比が改善され、測定精度が向上する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし測定が行われる環境によっては、国際公開第2017/061870 A1号のシステムで実現される測定は、依然として最適でないことがある。従って、超音波流量測定システムを改良する必要がある。
【0005】
従って本発明の目的は、改良された超音波流量測定システムを提供することにある。より具体的には、本発明の目的は、より高い信号対雑音比の超音波流量測定システムおよび/またはより小型の超音波流量測定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するために、本発明によれば、超音波流量測定システムが与えられる。この超音波流量測定システムでは、超音波減衰層が、第1減衰部と、第2減衰部と、を備える。第1減衰部は、少なく部分的には、超音波送信器と超音波受信器との間に配置される。第2減衰部も、少なく部分的には、超音波送信器と超音波受信器との間に配置される。超音波減衰層の第1減衰部および第2減衰部は、前記流管の軸方向に、所定の距離だけ互いに離して配置される。
【0007】
従って、前記流管の軸方向に見たとき、すなわち超音波送信器から超音波受信器の方向に(またはその逆の方向に)見たとき、超音波減衰層は中断している。言い換えれば、第1減衰部と第2減衰部とは互いに接触しない。さらに別の言い方をすれば、第1減衰部と第2減衰部との間には、セクション、「空隙」または空間が存在する。
【0008】
第2減衰部に対して第1減衰部が分離されていることにより(すなわち、流管の軸方向に沿って、セクション、空隙または空間が存在することにより)、ストーンリー波のような「バルク音波」を防ぐことができる、あるいは、少なくともバルク音波の有効部分が前記超音波送信器(13)から送信された後に前記超音波受信器(14)に到達しないようにすることができる。従って、超音波受信器によって受信された信号の信号対雑音比が改善され、本発明の目的が達成される。
【0009】
さらに、以下で詳述するように、従来技術と同等の信号対雑音比を達成しつつ、従来技術よりも超音波減衰層の厚さおよび/または体積を低減することができる。従って、本発明の超音波流量測定システムは、サイズを最小化できる。
これは、径の小さい(例えば、0.001mmから30mm、あるいは好ましくは0.1mmから10mm)流管を通って流れる微細の流れを測定するときには、明らかに有利である。しかしながら、超音波減衰層がより薄いことは、より径の大きい流管の場合にも有効である。
【0010】
米国特許出願公報第2012/222492 A1号は、超音波流量計を備えたシステムを開示する。この超音波流量計は、流体流路の周りに配置された第1超音波トランスデューサと、流体流路に沿った流体に対する第1超音波トランスデューサの圧力を調整する圧力調整システムと、を含む。本発明は、表面超音波を使うことに注意されたい。本発明の減衰層の重要な機能は、ストーンリー波が形成される固体-固体表面を生成し、ストーンリー波を減衰させ遅延させることにある。ショルテ波は、固体と流体(すなわち、測定対象の流体であって、液体または気体)との境界に発生する。ストーンリー波は、固体(流管)と固体(超音波減衰層)との境界に発生する。流管および超音波減衰層の材料内を伝わる音速の違いに起因して、ストーンリー波のうち少なくとも流体と相互作用しない部分(これは、しばしば一部分のみが減衰されている)は、ショルテ波のうち流体と相互作用する部分に比べて、時間的に遅れて受信器に到達する。これにより、信号対雑音比、すなわち測定精度が改善する。米国特許出願公報第2012/222492 A1号は、トランスデューサが導管内の流体を介して通信することを開示するだけで、表面波を使うことについては開示していない。
【0011】
米国特許出願公報第2014/311253 A1号は、導管(この導管内を微小な量の流体が流れる)の外周面に配置されるリング状の超音波バイブレータと、超音波バイブレータを掴み固定する一対の減衰メンバと、を備えた超音波センサを開示する。リング状の超音波バイブレータは、高周波信号を与えられることにより振動し、振動を受けることにより高周波信号を発生する。さらに、環状の柔軟で均一なマッチングメンバが、超音波バイブレータの内周面と導管の外周面との間に与えられる。このマッチングメンバの導管に沿った幅は、超音波バイブレータの幅より大きい。マッチングメンバの材料内を伝わる音速は、実質的に、導管内を伝わる音速に等しい。米国特許出願公報第2014/311253 A1号においては、「バイブレータ」および「減衰メンバ」が、「環状の柔軟で均一なマッチングメンバ」を用いて導管から分離されている必要がある。これに対し本発明では、トランスデューサと流管とが直接接触し、減衰層と流管とが直接接触している必要がある。米国特許出願公報第2014/311253 A1号の環状の柔軟で均一なマッチングメンバは、トランスデューサと導管との直接接触を許さない。従って、超音波表面波の生成が妨げられる。このようにトランスデューサと導管との直接接触ができないので、「環状の柔軟で均一なマッチングメンバ」は、表面波を使用するデバイスに適さない。
【0012】
好ましくは、測定時に最高の信号対雑音比を得るために、第1減衰部と第2減衰部とはいずれの部分においても互いに接触しない。
【0013】
流量が測定対象である流体は、液体でも、気体でも、それらの混合でもよく、これらは、懸濁液、分散液、溶液、乳状液およびエーロゾルを含む。
【0014】
超音波送信器および超音波受信器は、いずれも減衰層で「覆われる」。すなわち、少なくとも信号を受信および送信する水晶は、超音波減衰層で覆われる(または取り囲まれる)。無論、超音波受信器および超音波送信器に関連する配線等の部品が、超音波減衰層から伸びていてもよい。超音波減衰層は、単一の材料から形成されてもよく、充填材等の複数の材料から形成されてもよく、選択的に複数の層から形成されてもよい。これらの層は、必然的に同心状である。
【0015】
ある実施の形態では、距離は、第1減衰部の第1端面と第2減衰部の第2端面との間で定義される。これらの端面はいずれも、互いに、セクション、空隙または空間に対向する。この距離は、10mm未満であり、例えば9mm以下であり、例えば約8mm以下であり、例えば7mm以下であり、例えば6mm以下である。しかしながら、より大きなデバイスでは、この距離もまたより大きく、例えば約30mm以下、20mm以下、15mm以下である。好ましくは、この距離は5mm未満であり、例えば0.1mmから5mm、例えば約0.1mm、または約0.5mm、または約1mmである。第1減衰部と第2減衰部とは互いに離れており、従って互いに接触しない。従って、それぞれの減衰部の対向する端面間の距離は0mmより大きい。実用上の理由から、この距離は少なくとも0.5mmであり、例えば0.5mm以上5mm以下、または0.5mm以上10mm以下である。
【0016】
送信器と受信器との間の距離が大きいと、信号対雑音比に悪影響を及ぼす。本出願人は、さらに、第1減衰部と第2減衰部との間の距離が大きすぎると、信号対雑音比に悪影響を及ぼすことを見出した。従って、好ましくは、第1減衰部のセクション対向第1端面と、第2減衰部のセクション対向第2端面との間の距離は、送信器と受信器との間の距離の90%未満であり、例えば50%未満である。好ましくは、第1減衰部のセクション対向第1端面と、第2減衰部のセクション対向第2端面との間の距離は、送信器と受信器との間の距離の10%未満であり、さらに好ましくは5%未満、例えば1%未満、さらにそれより小さい。
【0017】
ある実施の形態では、第1減衰部のセクション対向第1端面は実質的に平らであり、および/または、第2減衰部のセクション対向第2端面は実質的に平らである。好ましくは、これらの端面は平らである。こうすると、製造が容易となる。
【0018】
しかしながら代替的な実施の形態では、第1減衰部のセクション対向第1端面は曲がっていてもよく、例えば凸状、凹状、または正弦波状でもよく、および/または、第2減衰部のセクション対向第2端面は曲がっていてもよく、例えば凸状、凹状または正弦波状でもよい。好ましくは、端面の形状は、ほぼ鏡面対称である。例えば、一方の端面が凸状であれば、好ましくは他方の端面は凹状である。この場合、両端面間の距離は、超音波減衰層の全断面でほぼ等しくなる。さらに別の実施の形態では、第1端面と第2端面とは同一の(曲がった)形状である。例えば、両端面はいずれも、凸状、凹状または正弦波状である。
【0019】
端面が平らである実施の形態では、流管の軸方向と第1減衰部のセクション対向第1端面とのなす角は、135°と45°との間であり、特に100°と80°との間であり、および/または、流管の軸方向と第2減衰部のセクション対向第2端面とのなす角は、135°と45°との間であり、特に100°と80°との間である。好ましくは、第2減衰部のセクション対向第2端面と流管の軸方向とのなす角は、第1減衰部のセクション対向第1端面と流管の軸方向とのなす角と、ほぼ等しい。この場合、2つの減衰層間の距離は、全断面で等しくなる。好ましくは、流管の軸方向と第1減衰部のセクション対向第1端面とのなす角は90°であり、流管の軸方向と第2減衰部のセクション対向第2端面とのなす角も90°である。これらの角度が違う場合、好ましくは、測定時に最高の信号対雑音比を得るために、第1減衰部と第2減衰部とはいずれの部分においても互いに接触しない。
【0020】
ある実施の形態では、少なくとも半透過的な音響特性を持つセクション、「空隙」または空間が、超音波減衰層の第1減衰部と第2減衰部との間に配置される。本明細書の文脈において「半透過的な音響特性」という用語は、各セクションが、音響侵入に対して比較的高い抵抗を示すことを意味する。これは例えば、音響信号が第1減衰部から第2減衰部に容易に伝達しないことや、第1減衰部内の音響信号のごく一部(例えば半分未満、あるいは最適には皆無)のみが第2減衰部に伝達する(またはその逆)ことを意味する。これにより、測定システムの信号対雑音比が改善する。特に「少なくとも半透過的な」という用語は、「非透過的な」を含むことに注意する。
【0021】
少なくとも半透過的な音響特性を持つセクションの例は、比較的真空(すなわち、セクションの圧力が大気未満である)、空気のセクションおよび閉鎖セル構造を持つ発泡材のセクションなどである。非透過的な音響特性を持つセクションが(比較的)真空からなる場合および/または空気を含む場合、第1減衰部と第2減衰部との間に「空隙」または「ギャップ」が存在するといえる。(閉鎖セル構造を持つ)発泡材の(または他の材料の)セクションが第1減衰部と第2減衰部との間に存在する場合、「空隙」または「ギャップ」が発泡剤で満たされているといえる。
【0022】
ある実施の形態では、超音波減衰層の厚さは、流管の半径の6分の1未満である。従来技術のシステムでは、適切な測定を可能とする信号対雑音比を得るために、通常、この6という数字は10または20であった。ここで開示する本発明のシステムでは、この数字は6以下と小さい値を取る。これによりより薄い測定システムを実現することができる。超音波受信器および超音波送信器は、好ましくは、常に超音波減衰層で覆われる。使われる送信器/受信器の種類および流管の半径に応じて、超音波減衰層の厚さと流管の半径との比は、より大きくても小さくてもよい。一般には、流管が薄ければ薄いほど、この比は大きくなる。
【0023】
ある実施の形態では、超音波受信器と第1減衰部のセクション対向第1端面との間の距離は0.1mmより大きく、超音波受信器と第2減衰部のセクション対向第2端面との間の距離は0.1mmより大きい、および/または、超音波送信器と第1減衰部のセクション対向第1端面との間の距離は0.1mmより大きく、超音波送信器と第2減衰部のセクション対向第2端面との間の距離は0.1mmより大きい。すなわち、「空隙」(空または充満している)と超音波受信器および超音波送信器の各々との間の距離は、好ましくは0.1mmより大きく、例えば0.5mmより大きく、1mmより大きく、5mmより大きく、および/または10mmより大きい。
【0024】
ある実施の形態では、超音波減衰層は、第1減衰部と第2減衰部との間に配置された第3減衰部を備える。第3減衰部は、流管の軸方向に、第1減衰部および第2減衰部から離して配置される。第3減衰部が、(流管の軸方向に見て)超音波送信器と超音波受信器との間に存在する場合、超音波送信器と超音波受信器との間に2つの「空隙」(空または充満している)が存在するといえる。(2つの減衰部が存在するとき)信号の一部が第1減衰部から第2減衰部に送られる場合、第1減衰部と第2減衰部との間に第3減衰部を与えることにより、信号にとって第2の「障壁」が与えられる。これにより、2つの減衰部だけが存在する場合に比べて、信号のより少ない部分が、第3減衰部を介して、第1減衰部から第2減衰部に(あるいはその逆に)送られる。選択的には、より多くの減衰部(例えば、第4減衰部、第5減衰部等)が、第1減衰部と第2減衰部との間に配置される。
【0025】
ある実施の形態では、超音波流量測定システムは、少なくとも1つの第2超音波送信器および/または少なくとも1つの第2超音波受信器をさらに備える。このとき超音波減衰層は、少なくとも1つのさらなる減衰部を備える。このさらなる減衰部は、流管の軸方向に、第1減衰部および第2減衰部から離して配置される。さらなる減衰部は、少なく部分的には、超音波受信器または超音波送信器のいずれかと、第2超音波受信器または第2超音波送信器のいずれかとの間に配置される。この点については、図面を参照して、後で詳述する。
【0026】
ある実施の形態では、超音波減衰層は、好ましくは暗い色の(例えば黒色の)エポキシ材料で作られる。超音波減衰層は、封止樹脂または封止材(例えばエポキシまたはポリウレタン)で作られてもよい。
【0027】
ある実施の形態では、超音波流量測定システムは、超音波減衰層の外側部分に配置された外側スリーブをさらに備える。例えば、このスリーブが半透過的な音響特性を持つセクションが比較的真空からなる場合、第1減衰部と第2減衰部との間の空間の比較的真空を保持するのに役立つ。さらにこのスリーブは、第1減衰部と第2減衰部との間の空間を、汚染(これは、測定精度を徐々に低下させる原因となる)から防ぐことができる。好ましくは、外側スリーブの厚さは薄い(例えば、超音波減衰層より薄い)。好ましくは、外側スリーブは、低い音響伝達性を持つ。
【0028】
ある実施の形態では、超音波流量測定システムは、システムの受信フェーズにおいて、超音波受信器を読み出すための受信回路をさらに備える。
【0029】
ある実施の形態では、超音波流量測定システムは、受信回路、超音波送信器および超音波受信器に接続された制御手段をさらに備える。
【0030】
ある実施の形態では、超音波送信器および/または超音波受信器は、超音波トランスデューサとして実現される。すなわちこの超音波トランスデューサは、超音波送信器および超音波受信器として動作することができる。これにより、例えば、トランスデューサがどのように動作するかに応じて、2方向の流れを測定することができる。
【0031】
ある実施の形態では、超音波送信器および/または超音波受信器は、(好ましくは流管の全周を覆う)リング状発振器として形成される。これにより、流管内部の流れを流管全体にわたって測定することができる。
【0032】
ある実施の形態では、超音波減衰層は、流管全体を周方向に覆う。特に、超音波トランスデューサ(送信器および受信器)もまた超音波減衰層で覆われる。好ましい実施の形態では、減衰層は円環状である(あるいは、ほぼ三角形、正方形、六角形といった他の幾何学的形状を持つ)。表面は滑らかである必要はない。本出願人は、表面のわずかな異常は性能に悪影響を与えず、表面の粗さがむしろ性能を向上させることもあることを見出した。
【0033】
超音波トランスデューサは、好ましくは、流管の外側ジャケットと音響接触する。例えば超音波トランスデューサは、流管の外側ジャケットに直接接触するか、または超音波トランスデューサ上に音響的伝達層(好ましくは薄い)が与えられる。
【0034】
超音波減衰層は、好ましくは、流管の全周にわたって伸びる。この場合、流管および超音波減衰層は、いわば、より大きな第2の管(これは、超音波減衰層の材料で作られる)で取り囲まれる。この超音波減衰層で形成されたこのより大きな第2の管の内面は、流管(これは最も外側の超音波トランスデューサの間で伸びる)の外側ジャケットの部分と完全に接触する。好ましい実施の形態では、超音波減衰層の厚さは、超音波トランスデューサの位置で、円周方向にほぼ一定である。別の実施の形態では、超音波減衰層の厚さは、第1端面から第2端面にかけて至るところで軸方向にほぼ一定である。
【0035】
ある実施の形態では、流管の材料内での音速は2000m/sより速く、特に2500m/sより速く、より具体的には3000m/s以上7000m/s以下である。
【0036】
ある実施の形態では、超音波減衰層の材料内での音速は1000m/sより速く、特に1500m/sより速く、より具体的には2000m/s以上3000m/s以下である。
【0037】
ある実施の形態では、超音波流量測定システムは、速度が1000m/s以上2000m/s以下の流体の流れを測定するように設計される。この場合、超音波減衰層の材料内での音速は2000m/s以上3000m/s以下であり、流管の材料内での音速は3000m/sより速い。好ましくは、超音波流量測定システムは、超音波減衰層、流管および測定対象流体内での音速が実質的に互いに異なる(例えば、約500m/sの差を持つ、さらには1000m/sの差を持つ)ように設計される。例えば、このシステムが
音速約1800m/sの流体のために設計される場合、超音波減衰層の材料内での音速が約2300m/s、流管の材料内での音速が約3300m/sであってよい。
【0038】
ある実施の形態では、流管の材料内での音速と、超音波減衰層の材料内での音速と、の差は、超音波減衰層の材料内での音速と、測定対象流体内での音速と、の差と同じオーダ(もっといえば、2つの差がほぼ同じ値)であってもよい。例えば、流管の材料内での音速が約4500m/sの場合、超音波減衰層の材料内での音速は約3000m/sであるように設計されてよい。このとき、この測定システムは、音速が1000m/s以上2000m/s以下(より具体的には、約1500m/s)の媒体の測定に適する。
【0039】
ある実施の形態では、超音波送信器および超音波受信器の各々は、超音波トランスデューサである。この超音波トランスデューサは、送信フェーズでは、前記流体を介して超音波信号を送信し、受信フェーズでは、他の超音波トランスデューサからの超音波信号を受信するように構成される。これによりトランスデューサを、交代的に、超音波(この超音波は、別の活性化されていない発振器によって検出される)を送信するように活性化することができる。超音波が上流方向に伝達するのにかかる時間と、新たな超音波が下流方向に伝達するのにかかる時間とは、それらの時間差と合わせて、流速および/または流管内での質量流量を決定するのに使われる。この目的のためには、流量測定システムが、前述の少なくとも1つの受信回路を、前述の少なくとも2つの超音波送信器の1つに選択的に接続するように構成された多重回路を備えると有利である。ある実施の形態では、前述の少なくとも2つの超音波送信器は、超音波信号を交代的に送信するように構成される。そして、前述の多重回路は、前述の少なくとも1つの受信回路の各々を、前述の非送信の超音波トランスデューサの1つに交代的に接続するように構成される。少なくとも1つの受信回路で発生する時間遅延、時間誤差および/または時間オフセットは、流量測定の精度に悪影響を及ぼす。これらの時間遅延、時間誤差および/または時間オフセットを補償することができる。すなわち流量測定システムが、少なくとも1つの受信回路を非送信のトランスデューサの1つに選択的に接続するように構成された多重回路を備える場合、これらの時間遅延、時間誤差および/または時間オフセットを除去することができる。
【0040】
ある実施の形態では、超音波減衰層は、エポキシまたはその複合物を含む。超音波減衰層は、封止材(好ましくは、エポキシ、ポリウレタンまたはその複合物)で作られてもよい。超音波減衰層はまた、エポキシ樹脂硬化物(特に、ビスフェノールa型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラックエポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルアミンエポキシ樹脂からなる群から選んだもの)で作られてもよい。エポキシ樹脂は、単独重合を用いて、または(アミン、無水物、フェノールおよびチオールからなる群から選ばれた)エポキシ硬化剤を用いて硬化されてもよい。ある実施の形態では、超音波減衰層は、封止材(好ましくは、エポキシまたはその混合物、ポリウレタンまたはポリウレタン混合物)であってもよい。流管は、(ステンレス)スチール、テフロン(登録商標)、PEEK、ガラス、セラミック以外の材料を含んでもよい。別の実施の形態では、エポキシは(好ましくは黒に)着色されてもよい。さらに別の実施の形態では、超音波減衰層は、封止材(好ましくは、エポキシまたはその混合物、ポリウレタンまたはポリウレタン混合物)を含んでもよく、および/または複数の層を含んでもよい。これらの層は、例えば、半径方向または軸方向に定義することができる。これらの層は同心状でもよい。受信器または送信器と直接接触し、かつ別の層と直接接触する層があってもよい。代替的な実施の形態では、超音波減衰層は、エポキシまたはその混合物以外の材料で作られてもよい。前述のように、超音波減衰層は、封止材(好ましくは、エポキシまたはその混合物、あるいはポリウレタンまたはポリウレタン混合物)で作られてもよい。
【0041】
流管を作るのに適した材料は、金属、例えば(ステンレス)スチールである。他に流管の材料としては、例えばハステロイ、あるいはテフロン(登録商標)、PEEK、ガラス、セラミック材料などの非金属も考えられる。ある実施の形態では、流管は、金属(例えば、(ステンレス)スチールまたはハステロイなど)または非金属(例えば、テフロン(登録商標)、PEEK、ガラス、セラミック材料など)であり、超音波減衰層は、エポキシまたはその混合物を含まないものである。
【0042】
ある実施の形態では、超音波減衰層は、使用中、超音波減衰層の材料内での音速が、測定対象の流体内での音速を実質的に超えるように設計される。
【0043】
比較的シンプルな(すなわち、比較的製造が容易な)実施の形態では、超音波トランスデューサ(すなわち、超音波受信器および/または超音波送信器)は、ピエゾ素子を備える。このピエゾ素子は、比較的薄いピエゾフィルムを備えてもよい。代替的に、フッ化ポリビニリデンまたはフッ化ポリビニリデン(PVDF)の材料が使われてもよい。PVDFは、非常に強いピエゾ電気効果を持つ。特にPVDFは、材料が振動するように設定されたとき、電圧を発生するのに適する。さらに、PZT素子、すなわち送信器および/または受信器として機能するセラミック結晶を使うことも考えられる。
【0044】
ある実施の形態では、流管、超音波送信器および超音波受信器のアセンブリが、エポキシまたは前述のエポキシ混合物(あるいは、ポリウレタンまたはポリウレタン混合物を含む他の封止材)の中で完全に型取られる。このとき、第1減衰部と第2減衰部との間には距離が置かれ、流管を外界に取り付ける手段はカバーされないままである。これにより、超音波流量測定システムを、比較的簡単かつ安価に製造することができる。前述のアセンブリは、空洞の鋳型管に挿入されてよい。その後、硬化していないエポキシまたはエポキシ混合物(あるいは、ポリウレタンまたはポリウレタン混合物を含む他の封止材)が、前述のアセンブリと鋳型管の内側ジャケットとの間に注がれてよい。硬化後に鋳型管が除去されてよい。
【0045】
ある実施の形態では、少なくとも実質的に流管全体を取り巻いて、超音波トランスデューサ(超音波送信器および超音波受信器)が与えられる。これにより、実質的に回転対称の信号を得ることができるので、流れが完全に均一でない場合にも、流れの実質的な平均値を決定することができる。
【0046】
ある実施の形態では、流管は、当該流管内で均一な流れを生むために、直線の管である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
以下、下記の図面に示されるいくつかの可能な実施の形態を用いて、本発明を詳細に説明する。
【
図1】本発明に係る超音波流量測定システムの模式的な等角図である。ただし、システムの他の部品を明確に示す目的で、超音波減衰層は省略している。
【
図2】本発明に係る超音波流量測定システムの第1の実施の形態の模式的な側面図である。
【
図3】本発明に係る超音波流量測定システムの第2の実施の形態の模式的な側面図である。
【
図4】本発明に係る超音波流量測定システムの第3の実施の形態の模式的な側面図である。
【
図5A】先行技術の超音波流量測定システムで得られた測定値を示すグラフである。
【
図5B】本発明の超音波流量測定システムで得られた測定値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1に、超音波流量測定システム1の実施の形態を示す。ここでは、システム1の他の部品をより明確に示すため、超音波減衰層は省略している。
図1に示されるように、超音波流量測定システム1は、流管11と、第1超音波トランスデューサ13(ここでは、第1超音波送信器である)と、第2超音波トランスデューサ14(ここでは、第1超音波受信器である)と、を備える。超音波流量測定システム1は、第3超音波トランスデューサ16(ここでは、例えば第2超音波受信器である)と、音響伝達層131、141、161(これらはそれぞれ、超音波トランスデューサ13、14、16に関する)と、配線132、142、162(これらはそれぞれ、超音波トランスデューサ13、14、16に関する)と、制御器22と、をさらに備えてもよい。
【0049】
超音波流量測定システム1の流管11は、流量を測定すべき流体のためのものである。流体は、気体、液体またはそれらの混合物であってよい。これらは、懸濁液、分散液、溶液、乳状液およびエーロゾルを含み、流管11を通って流れる。超音波流量測定システム1は、気体の流量を測定するのに最適であってよい。流管11は、入口Iと、出口Oと、外側部分111と、を有する。流管11内の流れの「正常」方向は、入口Iから出口Oに向かう方向である。流管11は好ましくは直線であり、少なくともその一部に超音波流量測定システム1が与えられる。流管11の半径は例えば0.1mm以上10mm以下であり、より具体的には1mm以上10mm以下あるいは0.5mm以上1mm以下である。流管11の軸方向は符号Aで示される。
【0050】
超音波流量測定システム1の流管11は、少なくとも1つの超音波送信器13と、少なくとも1つの超音波受信器14と、を備える。好ましくは、超音波送信器13および超音波受信器14の両方は、より一般的な超音波トランスデューサにより実現される。この超音波トランスデューサの少なくとも2つは、互いに離して設置される。超音波トランスデューサは、少なくとも送信器または受信器のいずれかとして(または同時に両方として)動作する装置である。従って、本明細書で超音波流量測定システム1が少なくとも1つの受信器14および少なくとも1つの送信器13を備えるといったとき、当該システムが少なくとも2つのトランスデューサを備える場合は、システムの使用中、トランスデューサの少なくとも1つは送信モードで(すなわち送信器として)動作し、トランスデューサの少なくとも1つは受信モードで(すなわち受信器として)動作することを意味する。
【0051】
送信フェーズでは(送信モードでは)、流体を通して超音波信号を送信するように構成された超音波送信器13は、流管11の外側部分111上に配置される。超音波送信器13に関係する音響伝達層131は、超音波送信器13の水晶と流管11の外側部分111との間に配置される。これにより音響信号は、送信器を用いて流管11の内側に最適に送信され、内部の流体に到達する。最終的に、流体を用いて音響信号を伝達することができる。さらに、超音波送信器13に関係する配線132は、超音波送信器13と制御器22とを接続する。これにより、制御器22から超音波送信器13に(および/またはその逆)、信号(例えば操縦信号)を送信することができる。物理的配線が図示されるが、代替的に、超音波送信器13と制御器22との間の信号は、無線接続を用いて送信されてもよいことはいうまでもない(これは、制御器22と、任意の受信器/送信器/トランスデューサとの間の信号についても同様である)。
【0052】
超音波受信器14は、受信フェーズでは(受信モードでは)、流管11の外側部分111の上に配置され、超音波送信器13によって送信された(そして流体内を伝達した)超音波信号を、受信するように構成される。超音波受信器14に関係する音響伝達層141は、超音波受信器14の水晶と流管11の外側部分111との間に配置される。これにより流管11内に存在する音響信号を、最適に受信することができる。さらに、超音波受信器14に関係する配線142は、超音波受信器14と制御器22とを接続する。これにより、制御器22から超音波受信器14に(および/またはその逆)、信号(例えば操縦信号または受信測定値に相当する信号)を送信することができる。
【0053】
第3超音波トランスデューサ16(ここでは例えば第2超音波受信器として動作するように構成される)は、流管11の外側部分111の上に配置され、受信フェーズでは(受信モードでは)、超音波送信器13によって送信された(そして流体内で運ばれた)超音波信号を、受信するように構成される。超音波受信器16に関係する音響伝達層161は、超音波受信器16の水晶と流管11の外側部分111との間に配置される。これにより流管11内に存在する音響信号を、最適に受信することができる。さらに、超音波受信器16に関係する配線162は、超音波受信器16と制御器22とを接続する。これにより、制御器22から超音波受信器16に(および/またはその逆)、信号(例えば操縦信号または受信測定値に相当する信号)を送信することができる。有利なことに、2つの超音波受信器14、16を与えることにより、流体の流れをより正確に測定することができる。なぜなら、2つの信号を測定することができ、誤差を最小化できるからである。これは、いかなる信号も本質的に誤差を含むことを意味する。2つの測定を行い、誤差を平均化することにより、より正確な測定値を得ることができる。
【0054】
代替的に、第3超音波トランスデューサ16は、超音波送信器として動作してもよい。これにより、例えば流れの向きが逆転したときや、流体が出口Oから入口Iに向けて流れたときにも、流れを測定することができる。この場合受信器14は、送信器16によって送信された信号を受信してもよい。
【0055】
さらに代替的には、より多くのトランスデューサが与えられてもよい。例えば、1つ以上の(例えば2個、3個、4個、あるいはそれより多くの)送信器が与えられてもよいし、および/または、1つ以上の(例えば2個、3個、4個、あるいはそれより多くの)受信器が与えられてもよい。
【0056】
さらに代替的には、第3トランスデューサが超音波受信器として動作する一方、第1トランスデューサ13および第2トランスデューサ14が超音波送信器として動作してよい。この場合受信器は、第1トランスデューサおよび第2トランスデューサによって送信された信号を受信する。言い換えれば、超音波流量測定システム1は、2つのトランスデューサと、少なくとも1つの(例えば1個、2個または3個の)の受信器と、を備える。
【0057】
制御器22は、トランスデューサ13、14、16の各々と通信するように配置され、超音波流量測定システムの動作を制御する(例えば操作するおよび/または操縦する)ように構成される。
【0058】
図2に移る。同様の部品には同じ符号を付し、再度詳細な説明はしない。
【0059】
図1とは対照的に、
図2には超音波減衰層12を示す。これは例えば、好ましくは暗い色の(例えば黒色の)エポキシ材料で作られる。超音波減衰層12は、流管11の外側部分111の上に与えられ、流管を実質的に取り囲む。超音波減衰層12の厚さt12は、好ましくは流管11の半径r11の6分の1未満である。この点、図面は縮尺通りではない。すなわち本発明の実施の形態では、超音波減衰層12の厚さに対する流管11の半径は、図示されたものより小さくても(あるいは大きくても)よい。流管11の材料内の音速は、超音波減衰層12の材料内の音速より速い。超音波減衰層12は、超音波トランスデューサ13および超音波受信器14の両方を覆う。
【0060】
超音波減衰層12は、第1減衰部121と、第2減衰部122と、を備える。第1減衰部121および第2減衰部122は、流管11の軸方向に、距離dだけ互いに離して配置される。第1減衰部121は、第1端面1211と、第2端面1212と、を備える。第1端面1211は、セクション、空隙または空間に対向する(すなわちセクション対向)。第2減衰部122は、第1端面1221と、第2端面1222と、を備える。第2端面1222は、セクション、空隙または空間に対向する。第1減衰部121のセクション対向第1端面1211は、第2減衰部122のセクション対向第2端面1222と対向する。第1減衰部121のセクション対向第1端面1211は、少なくとも半透過的な音響特性を持つセクション15が間に定義されるように離される。
【0061】
例えば、セクション15は、比較的真空であってもよく、空気を含んでもよく、および/または閉鎖セル構造を持つ発泡材を含んでもよい。
【0062】
第1減衰部121および第2減衰部122の各々は、超音波送信器13および超音波受信器14をそれぞれ取り囲むように配置される。これにより、半透過的な音響特性を持つセクション15は、流管11の軸方向Aに見たとき、超音波送信器13と超音波受信器14との間に配置される。
【0063】
ここでは、すべての減衰部121、122のすべての端面1211、1212、1221、1222は平らな表面を持つ。第1角度α1は、第1減衰部121のセクション対向第1端面1211と、流管11の長さ軸Aとの間で定義される。第2角度α2は、第2減衰部122のセクション対向第2端面1222と、流管11の長さ軸Aとの間で定義される。好ましくはこれらの角度α1およびα2は互いに等しく、約90°である。例えばこれらの角度α1およびα2は、135°と45°との間であり、特に100°と80°との間であり、例えば90°である。
【0064】
第1減衰部121と第2減衰部122との間の距離は、第1減衰部121のセクション対向第1端面1211と第2減衰部122のセクション対向第2端面1222(これは、第1減衰部121のセクション対向第1端面1211に対向する)との間で定義される。好ましくはこの距離は10mm未満であり、例えば5mm未満であり、例えば0.5mm以上5mm以下である。
【0065】
超音波送信器13と半透過的な音響特性を持つセクション15との間の距離は、好ましくは0.1mmより大きく、例えば5mmより大きい。すなわち、超音波送信器13と第1減衰部121のセクション対向第1端面1211と間の距離d131は、好ましくは0.1mmより大きい。同時に、超音波送信器13と第2減衰部122のセクション対向第2端面1222と間の距離d132は、好ましくは0.1mmより大きい。
【0066】
超音波受信器14と半透過的な音響特性を持つセクション15との間の距離は、好ましくは0.1mmより大きい。すなわち、超音波受信器14と第1減衰部121のセクション対向第1端面1211と間の距離d142は、好ましくは0.1mmより大きい。同時に、超音波受信器14と第2減衰部122のセクション対向第2端面1222と間の距離d141は、好ましくは0.1mmより大きい。
【0067】
図3に移る。再び同様の部品には同じ符号を付し、再度詳細な説明はしない。理解を容易にするために、角度および距離は
図3には示さない。しかし、超音波流量測定システム1の異なる部品間で定義される角度および距離は、
図2に示されるものと同様に定義されることはいうまでもない。
【0068】
図3と
図2との違いは、
図3では、第1超音波送信器13と第1超音波受信器12との間に、超音波減衰層12の第3減衰部123が配置される点である。流管11の軸方向Aに見たとき、第3減衰部123は、第1減衰部121からも、第2減衰部122からも離して配置される。言い換えれば、第3減衰部123の第1端面1231は、第2減衰部122のセクション対向第2端面1222と接触しない。そして、第3減衰部123の第2端面1232は、第1減衰部121のセクション対向第1端面1211と接触しない。従ってここでは、半透過的な音響特性を持つ2つのセクション15は、超音波受信器14と超音波送信器13との間に配置される。
【0069】
図3と
図2とのさらなる違いは、
図3では、第3超音波トランスデューサ16が与えられる点である。第3超音波トランスデューサ16は
図1にも示される(
図1を参照して説明もした)。
【0070】
さらなる超音波トランスデューサ16(ここでは第3超音波トランスデューサ16)があることにより(これは、例えば受信器または送信器のいずれかであってもよい)、さらなる減衰部(ここでは第4減衰部124)が与えられる。第4減衰部は、流管11の軸方向Aに見たとき、第1減衰部121および第2減衰部122(および、ここでは第3減衰部123)から離して配置される。これにより第2減衰部122と第4減衰部124との間に、半透過的な音響特性を持つセクション15が定義される。第4減衰部124は、少なくとも部分的に、第3超音波トランスデューサ16と超音波受信器14との間に配置される。これによりセクション15もまた、第3超音波トランスデューサ16と超音波受信器14との間に配置される(流管11の軸方向Aに見たとき)。
【0071】
さらに
図3に示されるように、減衰部の1つ(ここでは第4減衰部124)のセクション対向第2端面1242は(ここでは凸状に)曲がっていてもよい。同様に、減衰部の1つ(ここでは第2減衰部122)のセクション対向第1端面1221も(ここでは凸状に)曲がっていてもよい。セクション対向端面1242、1221のペアの形状は互いに合致する。これにより、セクション対向端面1242とセクション対向端面1221との間の距離dは、超音波減衰層12の任意の断面において一定である。ここでは曲がった形状として凸状または凹状が図示されるが、他の曲がった形状もあり得ることはいうまでもない。
【0072】
さらに
図3には、超音波減衰層12の外側部分に配置された超音波流量測定システム1の外側スリーブ20が示される。外側スリーブ20は、例えばセクション15内に比較的真空ができるように与えられてもよい。
【0073】
図4に移る。再び同様の部品には同じ符号を付し、再度詳細な説明はしない。
【0074】
図4には、4つの超音波トランスデューサ13、14、16、17が示される。しかし本発明に係る超音波流量測定システム1が5つ以上の超音波トランスデューサを備えてもよいことはいうまでもない。4つの超音波トランスデューサは、例えば第1超音波送信器13と、第2超音波送信器17と、第1超音波受信器14と、第2超音波受信器16と、を備える。
図4の実施の形態では、流管11の軸方向Aに見たとき、2つの超音波受信器が2つの超音波送信器に続く。
【0075】
しかし複数の超音波受信器および超音波送信器が「混合して」与えられてもよい。例えば、入口Iから出口Oに向けて見たとき、順に、超音波送信器、超音波受信器、超音波送信器、超音波受信器といった具合である。
【0076】
代替的に、例えば3つの超音波受信器と1つの超音波送信器、または3つの超音波送信器と1つの超音波受信器が与えられてもよい。あるいは、3つの超音波受信器および2つの超音波送信器等が与えられてもよい。
【0077】
好ましくは、2つの隣接する超音波トランスデューサ13、14、16、17の間に、少なくとも1つの半透過的な音響特性を持つセクション15が与えられる。セクション15の各々は、超音波減衰層12の減衰部121、122、124、125の各端面によって定義される。
【0078】
しかし、2つの隣接する超音波トランスデューサが同じタイプである(例えば、両方とも送信器である、あるいは両方とも受信器である)場合、半透過的な音響特性を持つセクション15は本来不要である。一方、2つの隣接する超音波トランスデューサが異なるタイプである(例えば、一方が送信器で他方が受信器である)場合、半透過的な音響特性を持つセクション15は強く推奨される。
【0079】
図4の実施の形態では、第5減衰部125の端面と流管11の軸方向Aとの間の第1角度α1は、90°より小さい。一方、第1減衰部121の端面と流管11の軸方向Aとの間の第2角度α2は、90°より大きい。しかしこれらの角度は違う値であってもよいが、端面間の距離dは一定であることが望ましい。
【0080】
しかし対向する2つの端面間の距離が一定であることは、本来不要である。この点は、例えば端面1222および1211で図示されている。ここでは両方の端面が空隙、空間またはセクションに対向するが、端面は先細りになっている。そして両者の間の距離は、超音波減衰層12の外側の方が内側より大きい。しかし端面1222、1211は、内側においても離れている。
【0081】
セクション対向端面1222、1211は先細りでかつ平らであるが、セクション対向端面は先細りでかつ曲がっていてもよい。これは例えば、第1減衰部121および第3減衰部123のセクション対向端面1221、1242で示される。
【0082】
図5に移る。ここでは、国際公開第2017/061870 A1号に記載された従来の測定システム(
図5a)と本発明に係る実施の形態の測定システム(
図5b)との比較テストが示される。本発明に係る実施の形態の測定システムは、従来技術の装置(これは、
図5aのデータを取得するために使われた装置である)において、超音波送信器と超音波受信器との間に1mmの空隙を設けることによって作成された。通常の電気的設定により、超音波送信器は超音波を送信するように設定され、超音波受信器は超音波送信器からの信号を受信するように設定された。時間に対するカウントが任意単位で記録された。セクション、空間または空隙を持つ超音波流量測定システム(
図5b)の方が、持たないシステム(
図5a)に比べ、著しく信号対雑音比がよいことが見て取れる。
【0083】
以上、本発明の好ましい実施の形態を参照して、本発明が説明されたことを当業者は理解するだろう。しかし本発明はこれらの実施の形態に限定されない。
【0084】
従って本発明は、本発明の思想を逸脱することなくその範囲内で、様々な変形が可能である。追求される本発明の範囲は、添付の請求項で定義される。
【符号の説明】
【0085】
1・・超音波流量測定システム、
11・・流管、
111・・流管の外側部分、
12・・超音波減衰層、
121・・第1減衰部、
1211・・第1減衰部のセクション対向第1端面、
1212・・第1減衰部の第2端面、
122・・第2減衰部、
1221・・第2減衰部の第1端面、
1222・・第2減衰部のセクション対向第2端面、
123・・第3減衰部、
1231・・第3減衰部の第1端面、
1232・・第3減衰部の第2端面、
124・・さらなる減衰部、
1241・・さらなる減衰部の第1端面、
1242・・さらなる減衰部のセクション対向第2端面、
125・・さらなる減衰部、
1251・・さらなる減衰部のセクション対向第1端面、
1252・・さらなる減衰部の第2端面、
13・・第1超音波送信器、
131・・音響伝達層、
132・・配線、
14・・第1超音波受信器、
141・・音響伝達層、
142・・配線、
15・・半透過的な音響特性を持つセクション、
16・・第2超音波受信器、
161・・音響伝達層、
162・・配線、
17・・第1超音波送信器、
172・・配線、
20・・外側スリーブ、
22・・制御器、
A・・流管の軸方向、
O・・流管の出口開口、
I・・流管の入口開口、
d・・第1減衰部の第1端面と第2減衰部の第2端面との間の距離、
d131・・第1減衰部の第1端面と第1送信器との間の距離、
d132・・第2減衰部の第2端面と第1送信器との間の距離、
d141・・第2減衰部の第2端面と第1受信器との間の距離、
d142・・第1減衰部の第1端面と第1受信器との間の距離、
r11・・流管の半径、
t12・・超音波減衰層の厚さ、
α1・・第1減衰部の第1端面と流管の軸方向との間の角度、
α2・・第2減衰部の第2端面と流管の軸方向との間の角度。