(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】画像取得用医療デバイス及び医療システム
(51)【国際特許分類】
A61B 8/12 20060101AFI20240814BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20240814BHJP
A61B 1/045 20060101ALI20240814BHJP
A61B 6/12 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
A61B8/12
A61B1/00 526
A61B1/00 715
A61B1/045 622
A61B6/12
(21)【出願番号】P 2022511706
(86)(22)【出願日】2021-03-05
(86)【国際出願番号】 JP2021008622
(87)【国際公開番号】W WO2021199901
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-10-13
(31)【優先権主張番号】P 2020062154
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山下 泰徳
(72)【発明者】
【氏名】丸山 智司
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/111296(WO,A1)
【文献】特開2017-153621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/12
A61B 1/00
A61B 1/045
A61B 6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項7】
前記制御装置は、前記アンギオ画像平面上での前記画像取得用医療デバイスの軸方向に対する左右の向きと前記断層画像の左右の向きを一致させて前記表示装置に表示させるように前記表示内容を制御する、請求項6に記載の医療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像取得用医療デバイス及び医療システムに関する。
【背景技術】
【0002】
血管および脈管などの管腔器官内に生じる狭窄部または閉塞部の治療では、これらの性状を観察するため、または治療後の状態を観察するため、超音波または光等の検査波を利用して管腔器官の画像が取得される。管腔器官の画像を比較的低コストに取得することを可能にするために、画像センサを備える画像ワイヤを有する医療デバイスが提案されている(特許文献1を参照)。
【0003】
画像ワイヤは、軸方向に延在するワイヤ部と、ワイヤ部に配置され管腔器官の画像を取得する画像センサと、を有する。画像ワイヤは、ケーブル等を介して表示装置を備える制御ユニットに接続されて、制御ユニットとの間で信号の授受を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
医師等の術者は、特許文献1の画像ワイヤを使用して血管等の管腔器官の断層画像を取得することができる。術者は、特許文献1の画像ワイヤを血管内で移動させる際、アンギオ画像(主に、血管の延伸方向における画像ワイヤの造影画像)を取得する。
【0006】
しかしながら、画像ワイヤでは、画像ワイヤの本体部が断層画像に映しだされない。そのため、術者は、アンギオ画像と断層画像の相対的な向きを確認することができないといった課題が生じる。このような課題は、画像センサの内側にガイドワイヤが挿入される電子走査式の画像診断用カテーテルなどにおいても同様に生じ得る。
【0007】
本発明は、アンギオ画像及び断層画像に基づいて先端部の向きを容易に把握することが可能な画像取得用医療デバイス及び医療システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る画像取得用医療デバイスは、軸方向に延在する可撓性を備える本体部と、前記本体部に配置され管腔器官の画像を取得する画像センサと、前記本体部の先端側へ突出するように配置され、アンギオ画像上において前記本体部の先端部の向きを視認可能にする造影部と、を有し、前記画像センサと前記造影部とは軸回転方向における相対的位置が固定されている。
【0009】
本開示に係る医療システムは、アンギオ画像及び管腔器官に挿入可能に構成された画像取得用医療デバイスにより取得された断層画像を表示可能な表示装置と、前記表示装置の表示内容を制御可能な制御装置と、を有し、前記制御装置は、前記断層画像上において、前記画像取得用医療デバイスの先端部の向きを表示するように前記表示内容を制御する。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る画像取得用医療デバイス及び医療システムによれば、術者は、アンギオ画像及び断層画像に映し出された造影部及び断層画像に表示した画像取得用医療デバイスの先端部の向きを視認することにより、アンギオ画像と断層画像の相対的な向きを容易に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】画像取得用医療デバイスを有する医療システムを簡略的に示す図である。
【
図2】画像センサで取得された断層画像の一例を示す図である。
【
図3】画像取得用医療デバイスを使用した手技中に取得されるアンギオ画像の一例を示す図である。
【
図4】画像センサで取得された断層画像の一例を示す図である。
【
図5】画像取得用医療デバイスを使用した手技中に取得されるアンギオ画像の一例を示す図である。
【
図6】画像センサで取得された断層画像の一例を示す図である。
【
図7】画像取得用医療デバイスを使用した手技中に取得されるアンギオ画像の一例を示す図である。
【
図8】変形例に係る医療システムを簡略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみに制限されない。
【0013】
以下の説明において、画像ワイヤ100の手元側(
図1中の上側)を「基端」、体腔内へ挿通される側(
図1中の下側)を「先端」と称す。画像ワイヤ100の基端から先端に向かう方向を「軸方向」と称す。図面の説明による理解を容易にするため、画像ワイヤ100の長さ方向を短縮し、画像ワイヤ100の太さ方向を誇張して模式的に図示しており、長さ方向と太さ方向の比率は実際とは異なる。
【0014】
図1は、画像ワイヤ100を有する医療システム10を示す図、
図2~
図7は、モニター440に表示される断層画像及びアンギオ画像の一例を示す図である。
【0015】
(画像ワイヤ100)
本実施形態では、画像取得用医療デバイスとして画像ワイヤ100を例示する。
【0016】
図1に示すように、画像ワイヤ100は、軸方向に延在する可撓性を備える本体部110と、本体部110に配置され管腔器官の画像を取得する画像センサ120と、本体部110の先端側へ突出するように配置され、アンギオ画像及び画像センサ120により取得される断層画像上において本体部110の先端部の向きを視認可能にする造影部111と、を有する。画像センサ120と造影部111とは軸回転方向における相対位置が固定されている。
【0017】
本体部110は、可撓性を備えるワイヤで構成されている。本体部110の構成材料は、可撓性を有するものであれば特に限定されず、例えば、ステンレス鋼、コバルト系合金、超弾性合金などの各種金属材料を使用することができる。
【0018】
造影部111は、本体部110の軸方向と交差する方向に突出した金属線材で構成されている。造影部111は、本体部110の構成材料として例示した材料と同様の材料で構成することができる。なお、造影部111は、例えば、医療分野において公知のガイドワイヤと同様の構成を有する線材で構成することもできる。造影部111と本体部110は、例えば、溶接により接続することができる。造影部111は、
図1に示すように、本体部110よりも細径に形成することができる。
【0019】
画像ワイヤ100は、先端側に配置された造影部111が柔軟性に富み、造影部111の基端側に位置する本体部110を比較的剛性が高くなるように構成することができる。これにより、画像ワイヤ100は、先端の柔軟性と優れた操作性(押し込み性、トルク伝達性等)とを両立することができる。
【0020】
造影部111は、
図1に示すように、外力が付与されていない自然状態において、本体部110の軸方向と交差する方向へ湾曲した形状付けがなされている。造影部111の先端111aは、画像ワイヤ100のいずれかの側面視において、
図1に示すように、本体部110の軸心から離間した位置に配置される。
【0021】
造影部111の先端111aは、例えば、
図1に示す自然状態において、本体部110の軸心から放射方向外方(径方向外方)に離間した位置で画像センサ120と重ならない位置に配置することができる。ただし、
図8に示す変形例のように、造影部111の先端111aは、例えば、自然状態において、本体部110の軸心から放射方向外方(径方向外方)に離間した位置で画像センサ120と重なる位置に配置することもできる。このように造影部111の先端111aを配置することにより、画像センサ120から放射した検査波(
図1の矢印aで例示)により断層画像を取得する際、造影部111の先端111aを映し出すことができる。
【0022】
造影部111の形状は、本体部110の軸方向と交差する方向へ向けて突出されている限り特に限定されない。造影部111は、例えば、本体部110に対して鈍角や鋭角で直線状に曲がった形状を有してもよい。
【0023】
画像センサ120は、本体部110の先端に配置されている。
【0024】
画像センサ120は、複数のセンサ素子をリング状に配置したフェーズドアレイから構成されている。このようなフェーズドアレイ型の画像センサ120を用いることによって、画像センサ120を回転させることなく、管腔器官の断層画像を周方向の広範囲にわたって一度に取得できる。センサ素子は、特に限定されないが、血管内超音波(IVUS)センサ素子や、光干渉断層法(OCT)センサ素子などである。ただし、画像センサ120に使用されるセンサ素子の種類、配置、個数について特に制限は無い。
【0025】
画像ワイヤ100は、
図1に示すように、本体部110の基端部130に配置された電気的接点部140と、本体部110の基端部130に抜き差し可能に構成され、電気的接点部140と電気的に接続されるコネクタ300と、を有する。
【0026】
電気的接点部140は、複数の端子部141を有する。隣り合う端子部141は、電気的に絶縁されている。画像センサ120のセンサ素子と端子部141とは、対をなして配置されている。対をなすセンサ素子と端子部141とは、信号線142を介して電気的に接続されている。
【0027】
コネクタ300は、ケーブル410を介して電気的接点部140と制御装置400とを電気的に接続する。制御装置400は、コネクタ300及びケーブル410を介して画像センサ120に接続されることにより、画像センサ120との間で電気信号を送受信することが可能になる。
【0028】
(医療システム10)
図1に示すように、医療システム10は、画像ワイヤ100と、制御装置400と、を有する。
【0029】
制御装置400は、前述したようにケーブル410を介して画像ワイヤ100と接続される。
【0030】
ケーブル410は、その一端に画像ワイヤ100に接続するコネクタ300が取り付けられ、他端に制御装置400に接続する他のコネクタ420が取り付けられている。
【0031】
制御装置400は、制御ユニット430と、モニター(「表示装置」に相当する)440と、を有する。
【0032】
制御ユニット430は、CPU、メモリ、入出力部を主体に構成され、医療システム10全体の制御を司る。例えば、制御ユニット430は、画像センサ120に検査波を出射させる制御信号を出力し、画像センサ120からの検出信号を入力し、検出信号に基づいて画像データを取得する。
【0033】
制御ユニット430は、取得した画像データに基づく情報(映像)をモニター440に表示する。本実施形態では、制御ユニット430は、後述するアンギオ画像及び断層画像をモニター440に表示させることができる。
【0034】
次に、
図2~
図6を参照して、造影部111の機能について説明する。
【0035】
図2、
図4、
図5は、モニター440に表示された断層画像の一例を示している。
図3、
図4、
図5は、モニター440に表示されたアンギオ画像の一例を示している。ここでは、モニター440にアンギオ画像を表示する例を示しているが、アンギオ画像はモニター440以外の別の表示装置に表示させるようにしてもよい。制御装置400は、断層画像上において、画像ワイヤ100の先端の向き(造影部111の先端111aの向き)を表示するようにモニター440の表示内容を制御する。なお、医療システム10は、断層画像における造影部111の先端111aの向きを、断層画像上に仮想の点や線、矢印などで示すことができる。
【0036】
図3(A)は、
図2の矢印3A方向(左前斜位45°方向)から取得されるアンギオ画像である。
図3(B)は、
図2の矢印3B方向(右前斜位45°方向)から取得されるアンギオ画像である。
図5(A)は、
図4の矢印5A方向(左前斜位45°方向)から取得されるアンギオ画像である。
図5(B)は、
図4の矢印5B方向(右前斜位45°方向)から取得されるアンギオ画像である。
図7(A)は、
図6の矢印7A方向(左前斜位45°方向)から取得されるアンギオ画像である。
図7(B)は、
図6の矢印7B方向(右前斜位45°方向)から取得されるアンギオ画像である。
【0037】
術者は、管腔器官L(例えば、血管)内で所定の処置を実施するにあたり、画像ワイヤ100で取得した断層画像及びアンギオ画像に基づいて、セカンドガイドワイヤ(例えば、治療用のカテーテルデバイスの移動をガイドするためのガイドワイヤ)の移動方向や向き等を決定することがある。
【0038】
図2は、画像ワイヤ100を管腔器官Lの所定の目標部位(例えば、真腔)Ta付近まで送達した状態である。
【0039】
術者は、断層画像及びアンギオ画像に基づいて、画像ワイヤ100の本体部110の先端部の向きを把握する。具体的には、術者は、
図2の断層画像及び
図3(A)及び
図3(B)に示すアンギオ画像により、造影部111の先端111aの向きを確認する。術者が、例えば、時計回りに画像ワイヤ100を回転させると、
図4の断層画像及び
図5(A)及び
図5(B)に示すアンギオ画像において、造影部111の先端111aの向きが変化する。また、術者が、例えば、反時計回りに画像ワイヤ100を回転させると、
図6の断層画像及び
図7(A)及び
図7(B)に示すアンギオ画像において、造影部111の先端111aの向きが変化する。術者は、例えば、各アンギオ画像において、造影部111の先端111aが本体部110から最も離間した位置に配置された状態(最も長く先端111aが映し出された状態)を視認しつつ、断層画像を視認することにより、画像ワイヤ100の本体部110の先端部の向きを容易に把握することができる。これにより、制御装置400は、断層画像に造影部111が映しだされていなくても断層画像のいずれの方向に造影部111の先端111aが向いているかを把握できる。
【0040】
医療システム10は、アンギオ画像平面上で例えば本体部110の軸方向に対して右に向けて造影部111の先端111aが本体部110から最も離間した位置に配置された状態を制御装置400に認識させ(術者が入力操作するなどの操作により)、そのときの断層画像の回転向きを造影部111の先端111aが右を向くように合わせることにより、アンギオ画像平面上での画像センサ120の軸方向に対する左右の向きと断層画像の左右を一致させることができる。
【0041】
術者は、上記のように画像ワイヤ100を適宜回転させる操作を実施しつつ、回転前後の断層画像及びアンギオ画像を取得する。術者は、取得した断層画像及びアンギオ画像に表示された造影部111の先端111aの向きを確認することにより、本体部110の先端部の向きを容易に把握することができる。術者は、本体部110の先端部の向きを把握することにより、本体部110の先端部と目標部位Taとの相対的な位置関係を確認することができる。術者は、本体部110の先端部と目標部位Taとの相対的な位置関係に基づいて、セカンドガイドワイヤを管腔器官L内で操作することにより、セカンドガイドワイヤを目標部位Taへ容易に誘導することが可能になる。
【0042】
以上、実施形態を通じて画像取得用医療デバイス及び医療システムを説明したが、画像取得用医療デバイス及び医療システムは明細書において説明した内容のみに限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
【0043】
画像取得用医療デバイスは、例えば、電子走査式の画像取得用(画像診断用)カテーテルデバイスで構成することも可能である。
【0044】
本出願は、2020年3月31日に出願された日本国特許出願第2020-062154号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。
【符号の説明】
【0045】
10 医療システム、
100 画像ワイヤ(画像取得用医療デバイス)、
110 本体部、
111 造影部、
111a 造影部の先端、
120 画像センサ、
300 コネクタ、
400 制御装置、
410 ケーブル、
430 制御ユニット、
440 モニター(表示装置)。