(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】創傷ドレッシング材用二重コーティング
(51)【国際特許分類】
A61F 13/00 20240101AFI20240814BHJP
A61L 15/26 20060101ALI20240814BHJP
A61L 15/42 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
A61F13/00 301J
A61F13/00 301A
A61L15/26 110
A61L15/42 110
(21)【出願番号】P 2022535775
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(86)【国際出願番号】 EP2020086387
(87)【国際公開番号】W WO2021122720
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2023-09-25
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515126536
【氏名又は名称】メンリッケ ヘルス ケア アーベー
【氏名又は名称原語表記】MOELNLYCKE HEALTH CARE AB
【住所又は居所原語表記】Gamlestadsvaegen 3c S-40252 Goeteborg Sweden
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヨハニソン,ウルフ
(72)【発明者】
【氏名】ソダーストロム,ベント
(72)【発明者】
【氏名】ゲルゲイ,アンブリット
(72)【発明者】
【氏名】ハルディン,クリスティーナ
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-095476(JP,A)
【文献】国際公開第2015/130471(WO,A1)
【文献】特表2012-529921(JP,A)
【文献】登録実用新案第3207908(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2019/0351094(US,A1)
【文献】特表2018-500137(JP,A)
【文献】特表平11-509462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/00-13/02
A61L15/26
A61L15/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用ドレッシング材(20)であって、
・第1の側(11)及び第2の側(12)を有する多孔質層(10)であって、前記第1の側及び前記第2の側が互いに対向し、前記多孔質層の水平方向に延在する、多孔質層(10)と、
・前記多孔質層(10)の前記第1の側(11)の表面領域の少なくとも一部に沿って、前記多孔質層の前記第1の側から離れて面する第1の表面を有する、第1のコーティング(1)と、
・前記多孔質層(10)の前記第1の側(11)に沿って延在する第2のコーティング(2)であって、貫通開口部(3)のパターンを含み、前記多孔質層(10)の前記第1の側(11)から離れて面する第1の表面を有する、第2のコーティング(2)と、を含み、
前記第1のコーティング(1)は、前記多孔質層(10)の前記第1の側(11)の表面領域のうち、前記第2のコーティング(2)の貫通開口部(3)と一致する少なくともそれらの部分に沿って延在し、
前記第2のコーティング(2)の前記第1の表面は、前記多孔質層(10)の前記第1の側(11)から垂直方向において、前記第1のコーティング(1)の前記第1の表面によって画定される対応する平面(A)よりも遠い平面(B)内に延在し、
前記第2のコーティング(2)が、接着性であるという主要な機能を有し、一方、前記第1のコーティング(1)が、前記多孔質層(10)の前記第1の側を疎水性又はより疎水性にするという主要な機能を有する、医療用ドレッシング材。
【請求項2】
前記多孔質層が吸収層である、請求項1に記載の医療用ドレッシング材。
【請求項3】
(I)前記第2のコーティング(2)における前記貫通開口部(3)の前記パターンが、規則的な幾何学的パターン又はアレイであるか;又は、
(II)前記第2のコーティング(2)が、接着性コーティングであるか;又は、
(III)前記第1のコーティング(1)が、疎水性コーティングであるか;又は、
(IV)前記第2のコーティング(2)が、50g/m
2~500g/m
2のコーティング重量を有する、請求項1~2のいずれか一項に記載の医療用ドレッシング材。
【請求項4】
(I)前記多孔質層(10)が、親水性連続気泡フォームであるか若しくはそれを含み、又はゲル化繊維、水流交絡繊維、及び/若しくは超吸収性繊維の配列であるか若しくはそれを含み、又は繊維の織布若しくは不織布ネットワークであるか若しくはそれを含むか;又は、
(II)前記多孔質層(10)の厚さが、0.5mm~30mmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の医療用ドレッシング材。
【請求項5】
前記第1のコーティング(1)が、前記多孔質層(10)の厚さの10%以上に貫通している、請求項1~4のいずれか一項に記載の医療用ドレッシング材。
【請求項6】
前記医療用ドレッシング材(20)が更なる多孔質層を含み、前記更なる多孔質層が吸収層である、請求項1~5のいずれか一項に記載の医療用ドレッシング材。
【請求項7】
前記多孔質層(10)は、窪み(25)のパターンを含み、前記窪み(25)のパターンは、前記多孔質層の前記第1の側及び前記第2の側の両方に存在し、前記第1の側の前記窪み(25)のパターンは、前記第2の側の窪み(25′)のパターンと同軸であり、前記2つの窪み(25、25′)のパターンは、前記多孔質層の共通部分(10′)によって互いに分離され、前記部分(10′)は、前記多孔質層(10)の残りの部分よりも大きく圧縮されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の医療用ドレッシング材。
【請求項8】
前記多孔質層は、開口部(15)のパターンを含み、前記開口部(15)のパターンは、前記多孔質層(10)の前記第1の側(11)に設けられている、請求項1~7のいずれか一項に記載の医療用ドレッシング材。
【請求項9】
前記多孔質層(10)における前記開口部(15)又は窪み(25)のパターンが、前記第2のコーティング(2)における前記貫通開口部(3)のパターンと実質的に一致する、請求項
7又は8のいずれか一項に記載の医療用ドレッシング材。
【請求項10】
(I)前記医療用ドレッシング材(20)は、貫通開口部(3′)のパターンを含む穿孔層(21)を更に含み、前記穿孔層(21)は、第1の側及び第2の側を有し、前記穿孔層の前記第1の側は、前記多孔質層(10)の前記第1の側(11)から離れて面するように配置され、前記第2のコーティング(2)は、前記穿孔層(21)の前記第1の側に設けられ、前記第2のコーティング(2)における前記貫通開口部(3)の前記パターンは、前記穿孔層(21)における前記貫通開口部(3′)の前記パターンと実質的に一致し、又は(II)前記第1のコーティング(1)は、前記多孔質層(10)の前記第1の側(11)の前記表面領域と直接物理的に接触して提供され、前記第2のコーティング(2)は、前記第1のコーティング(1)と直接物理的に接触して提供される、請求項1~9のいずれか一項に記載の医療用ドレッシング材。
【請求項11】
前記医療用ドレッシング材(20)が、前記多孔質層(10)の前記第2の側(12)に沿って延在する裏打ち層(22)を更に含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の医療用ドレッシング材。
【請求項12】
医療用ドレッシング材の製造方法であって、
細孔又は開口部を有する多孔質層(10)を設けるステップと、
前記多孔質層の第1の側(11)に第1のコーティング(1)を適用するステップと、
前記適用された第1のコーティング(1)が前記多孔質層の前記細孔又は開口部に少なくとも部分的に浸透するように前記多孔質層(10)を圧縮するステップと、
前記多孔質層(10)の前記第1の側(11)の上に第2のコーティング(2)を直接又は間接的に適用するステップと、
第2のコーティング(2)を適用する前記ステップの前に、又は第2のコーティング(2)を適用する前記ステップの間に、又は第2のコーティング(2)を適用する前記ステップの後に、前記第2のコーティング(2)に貫通開口部(3)のパターンを導入するステップと、を含み、
これらのステップの完了後、前記第1のコーティング(1)は、前記多孔質層(10)の前記第1の側(11)の表面領域のうち、前記第2のコーティング(2)に導入された貫通開口部(3)と一致する少なくともそれらの部分に沿って延在する、方法。
【請求項13】
適用される前記第2のコーティング(2)の重量が、適用される前記第1のコーティング(1)の重量よりも30%以上多い、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1のコーティング(1)が、実質的に未硬化の状態で前記多孔質層の前記第1の側に適用される第1のシリコーン組成物であるか、又はそれを含み、前記方法は、前記多孔質層を圧縮する前記ステップの後に前記第1のシリコーン組成物を硬化させるステップを更に含む、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
(I)前記多孔質層(10)が窪みのパターン又は開口部のパターンを含み、又は(II)前記第1のコーティングが貫通ステップを含む方法によって適用され、前記第2のコーティングが転写コーティングステップを含む方法によって適用され、前記貫通開口部のパターンが前記転写コーティングステップ中に導入される、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
医療用ドレッシング材(20)であって、
・第1の側(11)及び第2の側(12)を有する多孔質層(10)であって、前記第1の側及び前記第2の側が互いに対向し、前記多孔質層の水平方向に延在する、多孔質層(10)と、
・前記多孔質層(10)の前記第1の側(11)の表面領域の少なくとも一部に沿って、前記多孔質層の前記第1の側から離れて面する第1の表面を有する、第1のコーティング(1)と、
・前記多孔質層(10)の前記第1の側(11)に沿って延在する第2のコーティング(2)であって、貫通開口部(3)のパターンを含み、前記多孔質層(10)の前記第1の側(11)から離れて面する第1の表面を有する、第2のコーティング(2)と、を含み、
前記第1のコーティング(1)は、前記多孔質層(10)の前記第1の側(11)の表面領域のうち、前記第2のコーティング(2)の貫通開口部(3)と一致する少なくともそれらの部分に沿って延在し、
前記第2のコーティング(2)の前記第1の表面は、前記多孔質層(10)の前記第1の側(11)から垂直方向において、前記第1のコーティング(1)の前記第1の表面によって画定される対応する平面(A)よりも遠い平面(B)内に延在し、
前記第1のコーティング(1)が、前記多孔質層(10)の厚さの10%以上に貫通している、医療用ドレッシング材。
【請求項17】
医療用ドレッシング材(20)であって、
・第1の側(11)及び第2の側(12)を有する多孔質層(10)であって、前記第1の側及び前記第2の側が互いに対向し、前記多孔質層の水平方向に延在する、多孔質層(10)と、
・前記多孔質層(10)の前記第1の側(11)の表面領域の少なくとも一部に沿って、前記多孔質層の前記第1の側から離れて面する第1の表面を有する、第1のコーティング(1)と、
・前記多孔質層(10)の前記第1の側(11)に沿って延在する第2のコーティング(2)であって、貫通開口部(3)のパターンを含み、前記多孔質層(10)の前記第1の側(11)から離れて面する第1の表面を有する、第2のコーティング(2)と、を含み、
前記第1のコーティング(1)は、前記多孔質層(10)の前記第1の側(11)の表面領域のうち、前記第2のコーティング(2)の貫通開口部(3)と一致する少なくともそれらの部分に沿って延在し、
前記第2のコーティング(2)の前記第1の表面は、前記多孔質層(10)の前記第1の側(11)から垂直方向において、前記第1のコーティング(1)の前記第1の表面によって画定される対応する平面(A)よりも遠い平面(B)内に延在し、
前記多孔質層(10)は、窪み(25)のパターンを含み、前記窪み(25)のパターンは、前記多孔質層の前記第1の側及び前記第2の側の両方に存在し、前記第1の側の前記窪み(25)のパターンは、前記第2の側の窪み(25′)のパターンと同軸であり、前記2つの窪み(25、25′)のパターンは、前記多孔質層の共通部分(10′)によって互いに分離され、前記部分(10′)は、前記多孔質層(10)の残りの部分よりも大きく圧縮されている、医療用ドレッシング材。
【請求項18】
前記接着性コーティングがシリコーン系接着性コーティングであるか、又は、
前記疎水性コーティングがシリコーンゲルコーティングである、請求項3に記載の医療用ドレッシング材。
【請求項19】
前記第1のコーティング(1)が、前記多孔質層(10)の厚さの本質的に全体に貫通している、請求項5に記載の医療用ドレッシング材。
【請求項20】
前記第2のコーティング(2)が、前記第1のシリコーン組成物と同じか、又は異なり、実質的に未硬化の状態で前記多孔質層の前記第1の側(11)の上に適用される第2のシリコーン組成物であるか、又はそれを含み、前記方法は、前記第2のシリコーン組成物を硬化させるステップを更に含み、前記第1のシリコーン組成物を硬化させる前記ステップ及び前記第2のシリコーン組成物を硬化させる前記ステップは、同時に行われる、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質層中に創傷滲出液を保持するための改善された能力を有する創傷ドレッシング材、及び創傷ドレッシング材を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
創傷ドレッシング材は、創傷を治癒、保護及び予防するために使用される。創傷ドレッシング材が創傷からの滲出液を吸収し保持する能力は、治癒過程にとって最も重要である。ドレッシング材の流体処理能力はまた、創傷治癒を促進するために最小化されるべきであるドレッシング材交換の頻度に影響を及ぼす。
【0003】
親水性材料、特に親水性連続気泡ポリウレタンフォームなどの親水性フォームは、創傷流体を吸収及び保持するために創傷ドレッシング材において有利に使用される。吸収性繊維アレイ及びネットワーク(例えば、不織布、ゲル化繊維、水流交絡繊維など)もまた、流体管理/流体取り扱いにおいて有利に使用され得る。
【0004】
創傷ドレッシング材が創傷の上に留まり、その周りを封止することを確実にするために、ドレッシング材は、典型的には、創傷及び/又は周囲の皮膚(創傷周囲領域)と物理的に接触する接着剤層を含む。
【0005】
シリコーン系接着剤(特に「軟質」シリコーンゲル)は、原則として、創傷ドレッシング材における皮膚接触表面として特に有用であるとして、当技術分野において公知である。特に、シリコーン系接着剤は、皮膚表面によく接着するが、湿った創面には付着せず(又はあまり付着せず)、したがって、特に他の一般的に使用される接着剤、例えばアクリル接着剤と比較した場合に、ドレッシング材を除去した際に皮膚に痛み及び/又は損傷をほとんど又は全く引き起こさない。
【0006】
シリコーン接着剤層は、ドレッシング材の吸収層の上に直接コーティングとして提供されてもよい。そのようなシリコーンコーティングは、典型的には、創傷接触層を通る流体輸送を促進するために、特に、創傷から、創傷滲出液を吸収し、保持し、究極的には創傷滲出液を運び去る創傷ドレッシング材の部分、例えば多孔質層又は吸収層への創傷滲出液の輸送を促進するために、貫通孔(「穿孔」)のパターン又はアレイを有する。
【0007】
一例として、特許文献1は、吸収性フォーム層を含むドレッシング材を開示しており、この吸収性フォーム層は、一方の側、特にフォーム層の創傷に面する側がシリコーンゲル接着剤でコーティングされている。特許文献1は、一実施形態において、シリコーンゲル層が吸収性フォーム材料の開放細孔内にわずかに延在することを開示している(しかしながら、全ての細孔を「閉じる」ことはない)。この実施形態では、いくつかのフォーム細孔は、前記シリコーンゲルの連続層によって覆われており、これは、吸収された流体が吸収性フォーム層から皮膚又は創傷に自然に逆流するのを防止するのに有利であるが、創傷流体輸送全体は、残りの「開放」細孔に限定される。これは、ドレッシング材の全体的な吸収能力に影響を及ぼすと考えられ得る。
【0008】
このようなフォーム層の流体処理能力を増加させる1つの選択肢は、吸収性フォーム材料に穴を開け、それによって、創傷流体が吸収され得るフォーム材料にチャネルを作製することである。しかしながら、そのようなチャネル又は開口部を提供することは、コーティングされていないフォーム表面の面積が増加するにつれて、吸収された流体の皮膚又は創傷への望ましくない自発的逆流のリスクを増加させることに関連している可能性がある。
【0009】
特許文献2は、シリコーンゲルの層、担体材料の層、及び吸収体を含む創傷ドレッシング材を開示しており、担体材料及びシリコーンゲル層は、少なくとも吸収体の領域内で相互に一致する貫通穿孔を有する。したがって、創傷滲出液は、穿孔を通って輸送することができ、吸収体によって吸収され得る。しかしながら、これらの穿孔の領域では、吸収体は創傷に向かって直接露出しており、これは、吸収された流体が皮膚又は創傷に逆流するリスクの増加に関連している可能性がある。
【0010】
したがって、当技術分野では、上述した欠点のすべて又はいくつかを回避又は最小化する接着剤層を創傷ドレッシング材に提供する必要がある。特に、流体管理を改善し、更に特には、吸収層(例えば、開口部/細孔を有する連続気泡フォーム又は繊維アレイ)から患者の皮膚又は創傷に戻る創傷滲出液の逆流を最小限に抑えるか又は回避する、創傷接触用創傷ドレッシング材が提供されることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】欧州特許出願公開第0855921号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0633758号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来技術の上記及び他の欠点を考慮して、本発明の1つの目的は、創傷の治療のためのドレッシング材及びその製造方法を提供することであり、この創傷ドレッシング材は、上記で概説した欠点に悩まされないか、又はこれらの欠点の一部又は全部を少なくとも最小限にし、特にこの創傷ドレッシング材は、創傷ドレッシング材の一部である吸収層(例えば、連続気泡フォーム体)から患者の皮膚又は創傷に戻る創傷滲出液の逆流を最小限に抑える。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様によれば、これらの目的及び他の目的は、医療用ドレッシング材(20)によって達成され、前記医療用ドレッシング材(20)は、
第1の側(11)及び第2の側(12)を有する多孔質層(10)であって、前記第1の側及び前記第2の側が互いに対向し、前記多孔質層の水平方向に延在する、多孔質層(10)と、
前記多孔質層(10)の前記第1の側(11)の表面領域の少なくとも一部に沿って、任意選択で前記第1の側(11)の本質的に全表面領域に沿って延在する第1のコーティング(1)であって、前記多孔質層の前記第1の側から離れて面する第1の表面を有する、第1のコーティング(1)と、
前記多孔質層(10)の前記第1の側(11)に沿って延在する第2のコーティング(2)であって、貫通開口部(3)のパターンを含み、前記多孔質層(10)の前記第1の側(11)から離れて面する第1の表面を有する、第2のコーティング(2)と、を含み、
前記第1のコーティング(1)は、前記多孔質層(10)の前記第1の側(11)の表面領域のうち、前記第2のコーティング(2)の貫通開口部(3)と一致する少なくともそれらの部分に沿って延在し、
前記第2のコーティング(2)の前記第1の表面は、前記多孔質層(10)の前記第1の側(11)から垂直方向において、前記第1のコーティング(1)の前記第1の表面によって画定される対応する平面(A)よりも遠い平面(B)内に延在する。
【0014】
本発明によれば、「医療用」ドレッシング材は、ヒト又は哺乳動物の皮膚上の任意のタイプの創傷又は損傷又は状態、特に流体の除去、特に創傷滲出液の除去を伴う又は必要とするような創傷又は状態を治療又は予防するために使用されるドレッシング材である。実施形態では、医療用ドレッシング材は創傷ドレッシング材である。本発明によれば、「創傷部位」又は「創傷」という用語は、例えば、とりわけ(これらに限定されないが)慢性創傷、急性創傷、ならびに例えば閉鎖切開及び瘢痕などの術後創傷を含む任意の開放又は閉鎖創傷として理解されるべきである。
【0015】
本発明による「層」は、水平方向(「x」方向及び「y」方向)及び前記水平方向に垂直な垂直方向(「z」方向;一般に「厚さ」と呼ばれる)に連続した広がりを有すると理解されるべきである。実施形態では、前記多孔質層は、垂直方向よりも水平方向に5倍以上、好ましくは10倍以上多く延在する。
【0016】
本発明による「多孔質」層は、多孔質組織を有する、すなわち細孔、チャネル又は開口部を含む層であると理解されるべきであり、その体積は0ではなく、その体積は多孔質体の内部体積を決定するための標準的な方法によって決定することができる。そのような多孔質層の一例は、連続気泡フォーム、すなわち、流体がフォームの一方の側から他方の側に貫通することができるように複数の相互に接続された細孔を含むフォーム、例えばポリウレタンフォームである。本発明の意味における連続気泡フォームはまた、閉じた細孔/気泡を含んでもよく、すなわち、所与のフォームセグメントの全ての細孔が(互いに)接続される必要はない。
【0017】
多孔質層の別の例は、繊維のアレイ、例えば超吸収性繊維のアレイ、又はゲル化繊維(例えばExufiber(登録商標))のアレイ、又は繊維のネットワーク、例えば不織布(例えばFibrella(登録商標))であり、水流交絡繊維を含み、特に不織布ネットワーク中に存在するもの、又は上記のいずれかと互いの、若しくは超吸収性粒子などの他の成分との任意の組み合わせである。
【0018】
本発明に従って使用される「コーティング」という用語は、基材を少なくとも部分的に覆う層を提供するものとして理解されるべきであり、前記層は、基材とは異なる材料であり、前記基材と少なくとも部分的に物理的に接触している。
【0019】
本発明の意味における「コーティング」は、コーティングが基材に沿って延在する基材の全体をコーティングが覆う、又は「オーバーコートする」という意味で「連続的」である必要はない。むしろ、
図1B及び
図1CのSEM写真におそらく最もよく示されているように(また、
図1A、
図2及び
図2Aの図面に概略的に示唆されているように)、コーティング(1)及び(2)の両方が穴を有していてもよく、又は崩壊されていてもよい。特に、多孔質層(10)の表面を(より)疎水性にすることを主目的とするコーティング(1)は、かなり崩壊されていてもよく、実際には、コヒーレントコーティング表面であるよりも多くの穴及び開口部を有していてもよいが、それでも本発明の意味における「コーティング」である。特に、コーティング(1)は、互いに接続されていない複数の部分(すなわち、「ドット」、「アイランド」又は「スポット」)から構成され得る(シリコーンゲルの非接続部分を有する多孔質フォーム「骨格」を示す
図1BのSEM写真を参照)。
図1CのSEMで見ることができるように、コーティング(2)は、典型的には、コーティング(1)よりも少ない穴を有し、コーティングとしてよりコヒーレントである。完全にコヒーレントな/連続的なコーティング(2)は、もちろん、本発明の意味における「コーティング」でもある。
【0020】
本発明の実施形態において、コーティング(1)は、多孔質層(10)の第1の側(11)の本質的に全体にわたって延在する。この実施形態は、多孔質層(10)及び/又はコーティング(2)が、有意な数のそのような「自然な」穴が形成されるようなものである場合(例えば、多孔質層の第1の側が、コーティング(2)がそのような表面に直接適用される場合に「自然な」穴を生じさせる多数のより大きな孔を有する表面を有するため)に特に有利であり、なぜならば、これらの「自然な」穴も(特にそれらが大きい場合)逆流を生じさせる可能性があり、したがって第1のコーティング(1)によって(より)疎水性にされることから利益を得ることができる。明らかに、これらの「自然な」穴の発生は本質的に予想外であり、このことが、より多数のそのような「自然な」穴が第2のコーティング(2)に発生する場合に、本質的に第1の側全体をコーティングすることが有利であるという理由である。
【0021】
本発明に従って使用される基材又は層の「表面」という用語は、前記基材又は層の外縁を画定する基材又は層の部分として理解されるべきである。表面を見る解像度に応じて、表面は、平坦、平滑又は粗く(「フラクタル」)てもよく、又は平坦、平滑又は粗く見えてもよい。表面領域は、それ自体が、基材又は層の「外側」に対する基材又は層の境界、例えば空気に対する境界を定義する「表面」をも有する開口部又は細孔を含み得る。
【0022】
本発明によれば、コーティングが層の全表面領域にわたって「本質的に」延在する場合、これは、目に見える表面(任意の内部表面を除く)の70%以上、好ましくは90%以上がコーティングによって覆われていることを意味すると理解される。上述したように、所与のコーティングが基材の本質的に全て又はその大部分に沿って延在するという事実は、上述したように、及び
図1B及び
図1CのSEM写真に示されるように、コーティング自体が崩壊され得る又は穴を有し得ることを排除するものではない。
【0023】
本発明に従って使用される貫通開口部(「穿孔」)の「パターン」という用語は、任意の規則的な、特に幾何学的に配置されたパターンとして理解されるべきであるが、貫通開口部の任意の不規則なアレイもまた、本発明の意味における「パターン」である。
【0024】
規則的又は不規則的な貫通開口部の前記パターンは、「ランド」又は「ストリング」の形態のシリコーンゲルを多孔質層上に直接コーティングし、これらのランド又はストリングの間に貫通開口部を残すことによって達成することもできる。
【0025】
本発明に従って使用されるコーティングにおける「貫通開口部」という用語は、コーティング又は層における任意の「穴」又は穿孔として理解されるべきである。原則として、コーティングにこれらの貫通開口部を形成する方法に制限は存在しない。
【0026】
上述したように、本発明による任意のコーティングは、コーティング中に予想外に生じる「自然な」穴を有し得る。そのような「自然な」穴の可能な存在に加えて、貫通開口部(3)のパターン、特に規則的なパターンの貫通開口部が意図的に形成される。貫通開口部のパターンのそのような「意図的な」形成は、例えば、窪み又は開口部のアレイ(
図1及び
図2参照)を有する多孔質層をコーティングすることによって達成することができ、前記窪み又は開口部のアレイは、コーティングのステップ、特に転写コーティングのステップ中に貫通開口部のパターンの形成をもたらす。貫通開口部のパターンを有するコーティング(2)を達成するための代替的なアプローチは、とりわけ、コーティングを穿孔ステップ、例えば、超音波穿孔(硬化前、硬化中、又は硬化後)に供すること、又はパターンコーティング法(例えば、移動ノズルを使用して「チェス」コーティングパターンを生成するため)によることを含む。
【0027】
実施形態において、これらの貫通開口部は、本質的に円形の円周を有する。他の実施形態において、円周は、長楕円形又は長方形/正方形であってもよい(例えば、
図3B参照)。
【0028】
本発明に従って使用される「平面」という用語は、コーティングの外面に沿って延在する水平面として理解されるべきである。コーティングが規則的であり、厚さに顕著な変動がない場合、この平面は、コーティングの外側[多孔質層の第1の側(11)から最も離れている]表面と本質的に一致する。コーティングの厚さが不規則である場合、例えば、へこみ、歪みを有するか、又は隆起している場合、平面は、最も外側の[多孔質層の第1の側(11)から最も離れた]歪みによって画定される。
【0029】
本発明に従って使用される「水平」及び「垂直」という用語は、
図1に示されるように、それらの従来の意味で理解されるべきである。本発明による任意のコーティングは、垂直方向よりも水平方向に有意に多く延在する。
【0030】
本発明の実施形態では、ドレッシング材は、貫通開口部(3)のパターンを有する第2のコーティング(2)を含み、このコーティングは、使用時に適用領域(特に創傷部位)と(直接)接触することが意図され、前記第2のコーティング(2)の主な目的は、接着性コーティングを提供することによって医療用ドレッシング材が所定の位置に保持されることを確実にする一方で、同時に、流体(特に創傷滲出液)が前記貫通開口部(3)のパターンを通って多孔質層(10)に輸送されることを一般に可能にすることである。
【0031】
貫通開口部(3)の前記パターンは、コーティングを通る流体輸送を改善するのに有利であるが、前記開口部のパターンは、吸収された液体の望ましくない逆流のリスクを増加させる可能性があり、すなわち、液体(例えば滲出液)は、前記貫通開口部を通って医療用ドレッシング材から、特に多孔質層から漏れ出る(すなわち創傷部位に戻る)可能性がある。
【0032】
本発明は、部分的には、医療用ドレッシング材からの吸収された流体のそのような逆流(又は逆漏れ)、特に創傷ドレッシング材からの創傷滲出液の逆流が、「二重」コーティングシステムによって最小化され得るという認識に基づいており、第1のコーティング(1)は、第2のコーティング(2)によってコーティングされていない多孔質基材の表面領域の少なくともそれらの部分上に、すなわち、多孔質基材又は層の表面領域のその部分がそうでなければ創傷部位に(直接)露出されるであろう貫通開口部の少なくとも前記パターンの領域中に設けられる。この有利な結果を達成するためには、前記第1のコーティングが、第2のコーティングの貫通孔と一致する(すなわち、創傷に曝露される)多孔質基材の表面領域の部分にのみ、又は主に設けられていれば十分であるが、前記第1のコーティングは、多孔質基材の表面領域の他の部分を覆ってもよく、又は前記表面領域のすべてもしくは本質的にすべてを覆ってもよく、これは、実際、加工の観点から有利である。
【0033】
本発明の実施形態において、第1のコーティング(1)は、疎水性材料であるか、又は疎水性材料を含む。それによって、特に第1のコーティングが存在する多孔質層の表面領域の近傍における吸収された液体の存在が最小化される。理論に束縛されるものではないが、前記多孔質層の第1の側を疎水性コーティング、例えばシリコーンゲルでコーティングすることによって多孔質層(10)の表面領域を(より)疎水性にすると、疎水性コーティングは、多孔質層から創傷に戻る創傷滲出液の逆流に対するバリア又は「一方向弁」として作用する、すなわち、流体が創傷から多孔質層に通過することを可能にするが、多孔質層から創傷に(又は皮膚上に)戻る流れを回避又は最小化すると考えられる。
【0034】
本発明によれば、「疎水性」という用語は、IU PAC:Compendium of Chemical Terminology,2nd ed.(the“Gold Book”),compiled by A.D.McNaught and A.Wilkinson,Blackwell Scientific Publications,Oxford(1997),ISBN 0-9678550-9-8において定義されるように理解されるべきであり、一般に、非極性分子を排除する水の傾向から生じる、水性環境における非極性基又は分子の会合を指す。
【0035】
本発明の実施形態では、第1のコーティング(1)及び第2のコーティング(2)は、以下の特性:適用されるコーティングの初期重量、材料組成、粘着性もしくは疎水性、又はそれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つにおいて異なり、好ましくは、前記第1のコーティング(1)は、第2のコーティング(2)よりも小さい重量で適用される。
【0036】
本発明の実施形態では、第2のコーティング(2)は、粘着性又は接着性であるという主要な機能を有し、すなわち、主要な機能は、患者の皮膚への接着を提供することであり、一方、第1のコーティング(2)は、多孔質層(10)の第1の側を疎水性にするという主要な機能を有する。
【0037】
本発明に従って使用される「粘着性」という用語は、5gsmのコーティング重量を有するコーティング上でFINAT試験方法9、ループタック測定によって測定される少なくとも1Nの表面タックとして理解されるべきである。
【0038】
本発明の実施形態において、第2のコーティング(2)における貫通開口部(3)のパターンは、規則的な幾何学的パターン又はアレイであり、好ましくは、貫通開口部(3)の円形、長方形又は台形アレイを表す。
【0039】
本発明の実施形態において、貫通開口部(3)の平均直径は、50μm~5mm、任意選択で100μm~3mm、更に任意選択で500μm~2mmである。
【0040】
本発明の実施形態において、コーティングの平面内でそれぞれの幾何学的中心から測定される貫通開口部(3)の平均間隔は、1mm~10mm、任意選択で2mm~5mmである。
【0041】
本発明の実施形態において、貫通開口部(3)は、第2のコーティング(2)の全表面領域の1%~20%、任意選択で2%~10%を構成する。
【0042】
本発明の実施形態において、第2のコーティング(2)は、接着性コーティング、任意選択でシリコーン系接着性コーティングである。
【0043】
本発明の実施形態において、第1のコーティング(1)はシリコーン系コーティングである。
【0044】
本発明の実施形態において、前記第1のコーティング(1)は、5g/m2~70g/m2、又は10g/m2~50g/m2、又は10g/m2~30g/m2のコーティング重量を有する。
【0045】
本発明の実施形態において、前記第2のコーティング(2)は、50g/m2~500g/m2又は100g/m2~300g/m2のコーティング重量を有する。
【0046】
第1のコーティング(1)は、主要な機能を有さないか、又は実際には、接着特性を提供する任意の機能性を有さないので、その量(最初に適用される重量)は、第2のコーティング(2)のコーティング重量よりも有意に低くなり得る。
【0047】
本発明の実施形態において、前記多孔質層(10)は吸収材料を含み、任意選択で多孔質層(10)は親水性連続気泡フォームであるか、又はそれを含む。
【0048】
本発明によれば、「親水性」という用語は、IU PAC:Compendium of Chemical Terminology,2nd ed.(the“Gold Book”),compiled by A.D.McNaught and A.Wilkinson,Blackwell Scientific Publications,Oxford(1997),ISBN 0-9678550-9-8において定義されるように理解されるべきであり、一般に、極性溶媒と、特に水と、又は他の極性基と相互作用する分子実体又は置換基の能力を指す。
【0049】
多孔質層としてのフォームに関して、「親水性」という用語は、一般に、フォームの透水性又はフォームの水吸引性を指す。細孔を有する材料(例えば、連続気泡フォームなど)又は貫通穴を有する材料との関連において、そのような材料は、材料が水を吸収する場合、一般に「親水性」とみなされる。
【0050】
本発明の実施形態において、前記フォームは、40%圧縮でISO 3386-1に従って測定された1.0~6.0kPaの硬度を有する。
【0051】
本発明の実施形態において、フォームの密度は、ISO 845に従って測定して、20~40kg/m3、任意選択で25~35kg/m3である。
【0052】
本発明の実施形態において、国際公開第2009/126102号パンフレットに記載されている方法に従って測定される25%伸長時のフォームの湿潤弾性率が6kPa超であり、乾燥弾性率が13kPa超である。
【0053】
本発明の実施形態において、前記フォーム中の気泡直径は、Visiocell SS-T.013.4Eに従って測定して、500~1,800μm、好ましくは1,100~1,500μmである。
【0054】
図4A及び
図4Bにおそらく最もよく示されている本発明の多孔質層(10)の代替実施形態では、多孔質層(10)は、繊維のアレイ、特に超吸収性繊維のアレイ、又はゲル化繊維(例えば、Exufiber(登録商標))のアレイであるか、又はそれを含む。
【0055】
本発明によれば、繊維のアレイは、(x-y)平面において、それに垂直な方向(z方向)よりも大きな広がりを有する繊維の任意の配列である。好ましくは、繊維のアレイは、20~500g/m2、好ましくは50~350g/m2の面積重量(「坪量値」)を有する。
【0056】
本発明の多孔質層の更なる代替の実施形態では、多孔質層(10)は、水流交絡繊維、特に不織布ネットワーク中の水流交絡繊維を含む、繊維のネットワーク、特に不織布(例えばFibrella(登録商標))であるか、又はそれを含む。
【0057】
例えば、本発明の実施形態において、多孔質層(10)は、合成安定繊維及び/又は二成分安定繊維及び/又は天然安定繊維及び/又は超吸収性繊維及び/又は超吸収性粒子を含むエアレイド材料であるか、又はそれを含む。
【0058】
本発明によれば、また当業者の広く受け入れられている理解によれば、「不織布」は、繊維又はフィラメントを機械的に、熱的に、又は化学的に絡み合わせることによって互いに結合されたシート又はウェブ構造として定義されるが、(布地に関して従来行われているように)織ること又は編むことによっては結合されない。不織布は、ISO規格9092及びCEN EN 29092によって定義される。不織布基材又はウェブは、典型的には、別個の繊維から、又は溶融プラスチックもしくはプラスチックフィルムから直接作製される平坦な多孔質シートである。
【0059】
本発明の実施形態において、上記実施形態のいずれかにおける前記多孔質層(10)の厚さは、0.5mm~30mm、任意選択で1~15mm、任意選択で1~10mmである。
【0060】
本発明の実施形態において、前記第1のコーティング(1)は、多孔質層(10)の前記第1の側(11)の表面領域と直接物理的に接触して設けられ、前記第2のコーティング(2)は、前記第1のコーティング(1)と直接物理的に接触して設けられる。
【0061】
他の実施形態では、少なくとも1つのさらなる層、例えば穿孔層(
図4A及び
図4Bを参照)が、第1のコーティングと第2のコーティングとの間に配置され、すなわち第2のコーティングが前記第1のコーティングの上に間接的に適用される。
【0062】
本発明の実施形態において、第1のコーティングの第1の表面は、多孔質層の第1の表面と実質的に「同一平面上」にある。
【0063】
本発明の実施形態において、第1のコーティング(1)は、多孔質層(10)の厚さの10%以上貫通しており、任意選択で、第1のコーティング(1)は、多孔質層(10)の厚さの40%以上貫通しており、任意選択で、第1のコーティング(1)は、本質的に多孔質層(10)の厚さ全体に貫通している。
【0064】
多孔質層(10)への第1のコーティング(1)の「貫通深さ」は、とりわけ、1つの多孔質層のみがドレッシング材全体に存在するか否かに依存し、その場合、1つの多孔質層は、ドレッシング材全体の吸収能力を達成する機能を有する。そのような場合、第1のコーティング(1)(のみ)が、10%以上貫通しながら、多孔質層(1)の厚さの50%に貫通することが好ましい場合がある。
【0065】
比較的薄い第1の多孔質層が設けられ、次いで第2の多孔質層が設けられる他のシナリオでは、第1のコーティングが第1の多孔質層の厚さ全体に貫通する場合に有利であり得る。
【0066】
理論に束縛されるものではないが、多孔質層(10)への第1のコーティング(1)の貫通の程度によって、第2のコーティング(2)の貫通開口部(3)を通して創傷に曝露される多孔質層(10)の表面[第1の側(11)]の疎水性の程度を最適化することが可能になることは、本発明者らの理解である。例えば、貫通開口部の直径が比較的大きいか又は比較的間隔が狭い場合、前記多孔質層への第1のコーティングの貫通深さを増加させることによって多孔質層の表面上により高度の疎水性を提供することが有利であり得る。そのようなシナリオでは、第1のコーティングによって完全に貫通される1つの比較的薄い第1の多孔質層を設け、次いで、疎水性にされない第2の多孔質層を設けることも有利であり得る。
【0067】
本発明の実施形態において、おそらく
図1及び
図1Bに最もよく示されるように、前記多孔質層(10)は窪み(25、25′)のパターンを含み、前記窪み(25)のパターンは前記多孔質層(10)の前記第1の側(11)及び前記第2の側(12)の両方に存在し、前記第1の側の前記窪み(25)のパターンは前記第2の側の窪み(25′)のパターンと同軸であり、2つの窪み(25、25′)のパターンは多孔質層の共通部分(10′)によって互いに分離され、前記共通部分(10′)は前記多孔質層(10)の残りの部分よりも高い程度に圧縮される。
【0068】
本発明の実施形態において、前記窪み(25、25′)のパターンは、超音波処理の結果である。
【0069】
本発明の代替実施形態では、おそらく
図2によって最もよく示されるように、前記多孔質層は開口部(15)のパターンを含み、前記開口部(15)のパターンは前記多孔質層(10)の前記第1の側(11)に設けられ、好ましくは前記開口部(15)は前記多孔質層(10)を完全には貫通しない。
【0070】
本発明の実施形態において、前記開口部(15)のパターンは、レーザ処理又は加熱ピンによる処理の結果である。
【0071】
本発明の実施形態において、多孔質層(10)における前記開口部(15)又は窪み(25)のパターンは、前記第2のコーティング(2)における前記貫通開口部(3)のパターンと実質的に一致する。
【0072】
本発明の実施形態において、第1のコーティング(1)は、前記開口部(15)又は窪み(25)を有する前記多孔質層(10)の表面領域の少なくともその部分上に設けられ、又は言い換えれば、前記第1のコーティング(1)が設けられる多孔質層の表面領域の部分は、多孔質層における前記開口部(15)又は窪み(25)を有する表面領域の少なくとも一部である。
【0073】
本発明の実施形態において、
図4A及び
図4Bに示されるように、医療用ドレッシング材(20)は、貫通開口部のパターンを含む穿孔層(21)を更に含み、前記穿孔層(21)は第1の側及び第2の側を有し、穿孔層(21)の第1の側は多孔質層(10)の第1の側(11)から離れて面するように配置され、第2のコーティング(2)は穿孔層(21)の第1の側に設けられ、第2のコーティング(2)における貫通開口部(3)のパターンは穿孔層(21)における貫通開口部(3′)のパターンと実質的に一致する。
【0074】
本発明の実施形態において、(
図4A及び
図4Bにも示されるように)、医療用ドレッシング材は、多孔質層(10)の第2の側(12)上に延在する裏打ち層(22)を更に含む。
【0075】
本発明の第2の態様によれば、上記及び他の目的は、
医療用ドレッシング材の製造方法であって、
細孔又は開口部を有する多孔質層(10)を設けるステップと、
前記多孔質層の第1の側(11)に第1のコーティング(1)を適用するステップと、
前記適用された第1のコーティング(1)が前記多孔質層の前記細孔又は開口部に少なくとも部分的に貫通するように前記多孔質層(10)を圧縮するステップと、
前記多孔質層(10)の前記第1の側(11)の上に第2のコーティング(2)を直接又は間接的に適用するステップと、
第2のコーティング(2)を適用する前記ステップの前に、又は第2のコーティング(2)を適用する前記ステップの間に、又は第2のコーティング(2)を適用する前記ステップの後に、前記第2のコーティング(2)に貫通開口部(3)のパターンを導入するステップと、を含み、
これらのステップの完了後、前記第1のコーティング(1)は、前記多孔質層(10)の前記第1の側(11)の表面領域のうち、前記第2のコーティング(2)に導入された貫通開口部(3)と一致する少なくともそれらの部分に沿って延在する、方法によって達成される。
【0076】
本発明の実施形態において、前記第1のコーティング(1)は、5g/m2~70g/m2、又は10g/m2~50g/m2、又は10g/m2~30g/m2のコーティング重量を有する。
【0077】
本発明の実施形態において、適用される前記第2のコーティング(2)の重量は、適用される第1のコーティング(1)の重量よりも30%以上多く、任意選択で50%以上多い。
【0078】
本発明によれば、第1のコーティング及び第2のコーティングに適用されるシリコーン組成物は、(組成及び化学的性質に関して)同じであっても異なっていてもよい。しかしながら、上で概説したように、量(重量)は一般に異なり、特に、適用される第2のコーティングよりも第1のコーティングの方が少ない。
【0079】
本発明の実施形態において、前記第1のコーティング(1)は、実質的に未硬化の状態で前記多孔質層(10)の前記第1の側(11)上に適用される第1のシリコーン組成物であるか、又はそれを含み、前記方法は、前記多孔質層を圧縮する前記ステップの後に前記第1のシリコーン組成物を硬化させるステップを更に含む。
【0080】
本発明の実施形態では、前記第1のコーティング(1)の前記シリコーンゲルは、未硬化状態のシリコーンゲルとして多孔質層(10)の一方の側に適用され、適用されたシリコーンゲルを有する前記層は、一対のプレスロールを通して工程紙の2つのウェブの間に供給され、そのプレスロールの間で、適用されたシリコーンゲルを有するフォームが圧縮され、任意選択で、工程紙の前記2つのウェブ(層が完全に含浸されている場合、過剰なシリコーンゲルを含む場合がある)が除去され、コーティングされたままの多孔質層(10)がシリコーンゲルの硬化のために加熱される。
【0081】
本発明の一実施形態によれば、本方法は、シリコーンゲルの硬化が、約100℃の温度で約1~5分間、好ましくは約3分間、熱風炉中で行われることを更に特徴とする。
【0082】
本発明の一実施形態によれば、本方法は、プレスロール間の圧力が3~10バール、任意選択で3~7バール、任意選択で2~5バールであることを特徴とする。
【0083】
前記圧力は、有利には、シリコーンゲルコーティング(1)を有する多孔質層(10)への所望の程度の貫通を達成するように調節される。層への貫通の程度の制御は、顕微鏡によって、又は完全な含浸が所望される場合には、フォームウェブが完全に含浸されたときに両方の紙ウェブがシリコーンゲルでコーティングされている工程紙の2つのウェブを検査することによって実施することができる。
【0084】
本発明の実施形態において、前記第2のコーティングは、実質的に未硬化状態のコーティング(1)でコーティングされた前記多孔質層の前記第1の側に適用されるシリコーン組成物であるか、又はそれを含み、前記方法は、前記第1のコーティング上に適用された後に前記第2のシリコーンコーティング(2)を硬化させるステップを更に含む。
【0085】
本発明の実施形態において、前記第1のシリコーンコーティング(1)を硬化させる前記ステップ及び前記第2のシリコーンコーティング(2)を硬化させる前記ステップは、同時に行われる。
【0086】
本発明の実施形態では、前記第1のコーティングは、圧縮ステップ(
図5参照)、すなわち、多孔質層が圧縮されている間に前記第1のコーティングの少なくとも一部が多孔質層(10)の細孔又は開口部に貫通するように十分な圧力が前記第1のコーティング(1)に適用されるステップによって適用され、前記第2のコーティングは、転写コーティングステップ(
図6参照)を含む方法によって適用され、第2のコーティングにおける貫通開口部のパターンは、前記転写コーティングステップ中又はその後に導入される。
【0087】
他のコーティング技術、例えば浸漬技術もまた、特許請求される方法の範囲に含まれる。
【0088】
他の実施形態では、第2のコーティング(2)は、第1のコーティング上に直接適用されるのではなく、別個の層上に適用され、次いで穿孔されてもよく[例えば、
図4Bの穿孔層(21)を参照]、次いで、コーティング(1)で既にコーティングされている多孔質層(10)と一緒に結合される(
図4A~
図4Dを参照)。
【0089】
本発明の実施形態において、ステップ転写コーティングを使用して多孔質層(10)上に第2のコーティング(2)をコーティングするとき、シリコーンゲルはフォーム表面に押し込まれ、加えられる圧力は、所望の量のシリコーンゲルがフォーム表面上に残されて所望の接着特性を提供するように構成される。したがって、転写コーティングに適用される圧力は、ドレッシング材全体の接着特性を調節するために有利に使用され得る。
【0090】
理論に束縛されるものではないが、上記で概説したように、圧縮ステップにおける圧力の印加は、第1のコーティング(1)の多孔質層(10)への十分な貫通を確実にするか又は助け、その後、圧縮されたフォームが膨張すると(印加された圧力が解放されるにつれて)、細孔の内部に形成され得るコーティングの任意の「連続」又は「遮断性」膜の全て又は大部分を破壊し、多孔質層の圧縮及び膨張の終了時に、第1のコーティングは細孔のセル壁上に存在するが、開放セル内又は開放セル間の「遮断」につながるコヒーレント膜を形成しない(コーティング(1)によって被覆/遮断されないが、細孔を構成する壁上の薄いシリコーンゲルコーティングによって疎水性にされる本質的に開放細孔のSEM写真については
図1Cを参照されたい)。
【0091】
対照的に、転写コーティング技術を用いて第2のコーティング(2)を適用することは、多孔質層(10)上に(比較的)小さい圧力を加えるだけであり、それによって、細孔の閉塞を引き起こすことなく、多孔質層の表面上に十分なコーティング重量(所望の接着特性を達成するのに十分な量)を確実にする。
【0092】
本発明の第1の態様による医療用ドレッシング材に関連して上述した全ての実施形態、特徴及び効果は、必要な変更を加えて、本発明の第2の態様による上述した方法に適用することができる。
【0093】
特許請求の範囲において、「含む(comprising)」及び「含む(comprise)」という用語は、他の要素又はステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は、複数の要素又はステップを排除するものではない。
【0094】
特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有効に使用できないことを示すものではない。
【0095】
ここで、本発明の例示的な実施形態を示す添付の図面を参照して、本発明のこれら及び他の態様をより詳細に示す。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【
図1】(窪み点を有する)本発明によるドレッシング材の上面斜視図を示す。
【
図1A】窪み点のパターン及び2つの平面における2つのコーティングの配置を強調した、
図1のドレッシング材の断面図を示す。
【
図1B】含浸コーティングステップにおいて50gsmのシリコーンゲルでコーティングされた連続気泡フォームのSEM写真を示すものであり、シリコーンゲルが細孔内に、また窪み点内にも貫通するように圧力を印加している。シリコーンゲルは、フォームの骨格構造から薄い白色フィルムとして認識可能である。
【
図1C】
図1Bに示したものと同じように、含浸コーティングステップにおいて50gsmのシリコーンゲルでコーティングされ、また既に含浸されたフォームの上に転写コーティングによって100gsmのシリコーンゲルが適用された連続気泡フォームのSEM写真を示すものである。含浸されたシリコーンゲルは、フォームの骨格構造から薄い白色フィルムとして認識可能であり、一方、上部の接着性シリコーン層は、比較的厚いフィルムとして認識可能である。示された穴は、本発明の意味における貫通開口部ではなく、コーティングステップの結果としてフィルムが崩壊している例である。
【
図2】
図2は本発明による別のドレッシング材(創傷に面する側の多孔質層に開口部を有する)の上面斜視図を示す。
図2Aは
図2のドレッシング材の断面図を示し、内側が疎水性コーティング(1)でコーティングされており、外側、すなわち多孔質層(10)の表面が接着性コーティング(2)でコーティングされている、完全には貫通していない開口部を強調している。本明細書においてより詳細に説明するように、コーティング(1)もコーティング(2)も典型的には連続的ではないが、両方のコーティングは崩壊している。コーティングにおけるこれらの「崩壊点」は、第2のコーティングに意図的に導入された貫通開口部(3)と区別されなければならない。
【
図3】
図3Aは多孔質層(10)上の第1のコーティング(1)を「露出させる」前記第2のコーティング中の貫通開口部(3)を含む、最も外側の第2のコーティング(2)に焦点を合わせた本発明によるドレッシング材の底面図[第1の側(11)]を示す。
図3Bは貫通開口部(3)の「チェスボード」コーティングパターンを有する、
図3Aと同様のドレッシング材及び図を示す。
【
図4】
図4Aは本発明によるアイランドドレッシング材の断面図を示し、これは、穿孔層(21)及び裏打ち層(22)、ならびに2つの隣接するが異なる多孔質層10A及び10B(それぞれ、繊維のネットワークのアレイとして及び連続気泡フォームとして実現される)を含む。
図4Bは
図4Aのアイランドドレッシング材の更に詳細な断面図を示す。
図4Cは本発明による、連続気泡フォームとして実現された1つの多孔質層(10)を含む別のアイランドドレッシング材の断面図を示す。
図4Dは本発明による更に別のアイランドドレッシング材の断面図を示し、これは、穿孔層(21)及び裏打ち層(22)、ならびに2つの隣接するが異なる多孔質層10A及び10B(それぞれ、繊維のネットワークのアレイとして及び連続気泡フォームとして実現される)を含む。
【
図5】多孔質層にシリコーンゲルの第1のコーティング(1)を含浸させる製造ラインの例示的な概略を示す。
【
図6】前記第1のコーティング(1)上に第2のコーティング(2)を転写コーティングするための製造ラインの例示的な概略を示す。
【
図7】創傷面から創傷ドレッシング材を除去するのに必要な力に対する本発明によるコーティングの効果を測定するために使用される試験装置の概略図を示す。
【
図8】
図7の装置を用いて行った試験の結果を示す。
【
図9】
図7の装置を用いて行われた試験の別の代表的結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0097】
以下では、上記で開示した第1及び第2の態様による本発明を、図面及び実施例を参照して更に詳細に説明する。
【0098】
図1は、多孔質層の第1の側(11)上に適用される第1のコーティング(1)及び第2のコーティング(2)でコーティングされた本発明によるフォーム層(10)を示す。この「二重にコーティングされた」多孔質層は、使用時に適用領域に面するように適合され、特に創傷領域に面するように適合される。第1のコーティングは、フォーム層(10)の前記第1の側(11)上に直接適用され、また、窪み点の内側を少なくとも部分的にコーティングする(
図1Aの断面図及び
図1BのSEM写真を参照)。第2のコーティング(2)(接着剤層として機能することを意味する)は、第1のコーティング(1)上に(この特定の実施形態では直接)適用され、窪み点内の表面領域の少なくとも一部が第2のコーティングを欠くように、窪み点のパターンと(この特定の実施形態では)実質的に一致する貫通開口部(3)の規則的なアレイを有する。
【0099】
窪み点における表面領域の少なくとも一部は、好ましくは疎水性コーティングである前記第1のコーティングでコーティングされる。多孔性フォーム層の部分、特に、第2のコーティングにおける穿孔(創傷からフォームへの流体輸送の理由から必要に応じて開口貫通部を通る)と整列するために創傷に「露出」する部分をコーティングすることによって、接着剤層を通って更にフォーム層への流体輸送が促進され、同時に、そうでなければ創傷又は皮膚表面に直接「露出」するであろう多孔質層の領域を被覆及び「疎水化」する(すなわち、(より)疎水性にする)コーティング(1)の存在により、フォーム層から創傷への滲出液の逆流及び/又は第2のコーティングの開口部を通る創傷組織の内部成長を低減することができる。
【0100】
図1の例示的なドレッシング材は、フォーム層(10)の2つの対向する側(11)及び(12)にそれぞれ窪み点(25)及び(25′)の規則的なパターンを含む。両側の窪み点は互いに同軸であり、共通の「底」部分(10′)によって互いに分離されており、この底部分は、窪み点の下に位置しない隣接するフォームセグメントよりも強く窪んだフォーム部分を表す。これはおそらく
図1bに最もよく示されている。これらの窪み点は、例えば、フォームの製造の一部として(すなわちインラインで)発生期のフォーム上に「刻印」されてもよく、又は製造後のステップにおいて製造されたままのフォーム上に「刻印」されてもよい。
【0101】
本発明の実施形態において、フォーム層(10)は、層の2つの対向する側に存在する超音波で作製された窪みのパターンを有し、対向する側の窪みは互いに同軸であり、前記層の残りの部分よりも高い程度まで圧縮されている共通の底部によって互いに分離されている。
【0102】
このような層において、層の圧縮は、層の他の領域よりも窪みを取り囲む領域においてより大きくなり、これは、そのような層における流体の拡散及び保持が、窪みのパターンを変えることによって変えられ得ることを意味する。更に、より低い圧迫を有する窪みの間の領域の存在は、これらの窪み点の存在によりドレッシング材全体をより「曲げることができる」ようにすることによって、ドレッシング材本体を患者に適合させる。
【0103】
本発明の実施形態において、多孔質層は、複数のフォームセルを有するフォームであり、各窪みの周囲の領域において、フォームセルのサイズは、前記共通底部から窪みのそれぞれの開口部への方向に、ならびに前記窪みを含む前記層の表面に平行な前記共通底部から外側方向に増加する(及びセル形状が変化する)。
【0104】
本発明の実施形態において、そのような層の所望の適合性を提供するために、窪みのパターンにおける窪みの共通底部は、互いに接続されておらず、前記層の厚さの10%以上、任意選択で前記層の厚さの20%以上だけ互いに離間している。
【0105】
窪みのパターンは、好ましくは、相対的な間隔及び深さの両方に関して規則的であるが、窪みの不規則なパターン又は異なる深さもまた、本発明の範囲内である。
【0106】
本発明の実施形態において、窪みの底部における層(フォーム)材料は、少なくとも部分的に一緒に融合され、その結果、比較的少量の非常に小さいセルのみが共通底部に存在する。
【0107】
好ましい実施形態において、前記多孔質層(10)はポリウレタンフォームから作製されるが、熱硬化性又は熱可塑性材料の他のフォームを代わりに使用することができる。
【0108】
そのような層、特に2つの対向する側に窪みのパターンを有するフォーム層を作製する1つの方法は、前記層を、その外表面から突出する突起のパターンを有するカウンターローラーと超音波溶着装置のホーンとの間に供給し、任意選択で前記層(10)の少なくとも1つの側に1つ又は複数の更なる層(吸収材料の)を適用し、前記層を前記一次層に取り付け、圧縮された熱可塑性プラスチック又は熱硬化性材料の層から個々の創傷パッドを切断するステップを含む。
【0109】
次に、本発明の主要な態様に戻る。
図1bはまた、本発明の原理を示し、それによれば、好ましくは疎水性コーティングである第1のコーティング(1)は、一般に前記第1のコーティング(1)上に適用され、接着剤層であるという主要な機能を有する「外側」の第2のコーティング(2)よりも、フォーム層(10)に「より近く」、したがって創傷からより遠く離れている。結果として、第2のコーティングの外側表面の平均位置を表す平面(B)は、第1のコーティングの外側表面の平均位置を表す平面(A)よりもフォーム(10)の第1の側(11)からより遠く離れている。
【0110】
第1のコーティングが多孔質層を(より)疎水性にするのに適しているべきであること、及び第2のコーティングが接着特性を有するべきであること以外は、第1のコーティング(1)及び第2のコーティング(2)に関して制限は存在しない。
【0111】
本発明の実施形態において、第1又は第2のコーティングは、シリコーンゲルを含むか任意選択でシリコーンゲルからなり、又は第1及び第2のコーティングは、シリコーンゲルを含むか任意選択でシリコーンゲルからなる。
【0112】
本発明の実施形態において、シリコーンゲルは、化学的に架橋されたシリコーンゲル(ポリジメチルシロキサンゲル)、例えば白金触媒2成分付加硬化RTVシリコーンを含む。使用することができるゲルの例は、Wacker-Chemie GmbH(Burghausen,Germany)製のSilGel 612、及びNuSil Technology(Carpinteria,USA)製のMED-6340である。これに関連して有用な接着ゲルの例は、英国特許出願公開第2192142号明細書、英国特許出願公開第2226780号明細書、及び欧州特許出願公開第0300620号明細書にも記載されている。
【0113】
本発明の実施形態において、第2のコーティングは、疎水性ポリウレタンゲルを含むか、又はそれからなってもよい。
【0114】
図2は、ここでは第1及び第2の側を有するフォーム層(10)として実現される多孔質層(10)を含む医療用ドレッシング材の別の実施形態を示し、第1の側は、使用時に適用領域に面するように適合され、好ましくは創傷部位に面するように適合される。この実施形態では、フォーム層(10)は、フォーム層(10)の第1の側(11)に開口部(15)のパターンを含む。開口部は、貫通開口部(すなわち、フォーム層の厚さを完全に貫通する)であってもよく、又は
図2に示されるように、好ましい実施形態では、開口部(15)は、フォーム層の少なくとも一部(のみ)に延在する(すなわち、完全には貫通していない)。フォーム層(10)の第1の側(11)は、コーティング(1)でコーティングされ、次いで、フォーム層の開口部のパターンと実質的に一致する貫通開口部(3)のパターンを有する接着剤層[第2のコーティング(2)]が、フォーム層の各開口部内の表面領域の少なくとも一部が接着剤層を欠くように、前記第1のコーティング上にコーティングされる。
【0115】
図2Aに示されるように、フォーム層(10)の開口部(15)の表面領域の少なくとも一部は、疎水性コーティング[第1のコーティング(1)]でコーティングされ、一方、第2のコーティング(2)は、主にフォーム層(10)の第1の側(11)の外表面上に存在し、任意の第1のコーティングの上にコーティングされる。前記第1のコーティング(1)は、開口部の領域に存在し、フォーム層の第1の側の(他の全体の)外表面上に存在してもよい。また、この実施形態では、接着剤層を通って更にフォーム層への流体輸送が促進されると同時に、創傷滲出液の逆流及び/又は創傷組織の内部成長が最小限に抑えられる。以下の実施例に示されるように、この効果は、乾燥した逆流創傷滲出液による創傷へのドレッシング材の更なる付着を最小限にし、したがって、使用後にドレッシング材を除去するのに必要な力を低下させる、すなわち、更なる創傷の損傷を低下又は回避する。
【0116】
図3A及び
図3Bは、本発明による医療用ドレッシング材のフォーム層(10)(図示せず)の底面図[すなわち、第1の側(11)に向けられた図]を示す。フォーム層は、
図3Aに示されるように円形開口部(又は複数の円形領域)として実現され得る貫通開口部(3)のパターンを含む第2のコーティング(2)でコーティングされ、又は
図3Bに示されるように、第2のコーティングは「チェスボード」パターンで設けることができる。いずれの実施形態においても、第2のコーティング(2)の貫通開口部(3)は、フォーム層(10)の第1の側(11)を「露出」するが、第1のコーティング(1)によってコーティングされる。
【0117】
図4A/4Bは、本発明による医療用ドレッシング材(20)の例示的な実施形態を示し、医療用ドレッシング材は、第1及び第2の側を有する複合多孔質層(10A)及び(10B)を含み、第1の側(11)は、使用時に適用領域に面するように適合され、好ましくは創傷領域に面するように適合される。本実施形態では、多孔質層(10A)は繊維のアレイ又はネットワークであり、多孔質層(10B)は連続気泡フォームである。
【0118】
図4A及び
図4Bに示すように、医療用ドレッシング材は、好ましくは、複合多孔質層(10A)/(10B)の下であるが第1のコーティング(1)の上に配置される穿孔層(21)を含む。前記穿孔層(21)は、第1の側及び第2の側を有し、第2の側は、複合多孔質層の第1の側に面しており、第2のコーティング(2)、すなわち接着性コーティングは、穿孔層(21)の第1の側の穿孔されていない部分上に設けられる。第1のコーティング(1)は、複合フォーム層の第1の表面上の、穿孔層の複数の開口部(3′)と一致する少なくともそれらの領域[これは、接着剤の第2のコーティング(2)の貫通開口部(3)と一致する領域]に設けられる。穿孔層(21)は、任意の適切なサイズ及び形状の複数の貫通開口部(又は貫通穴)を含む。開口部の形状及びサイズは、創傷からフォーム層への所望の程度の液体輸送を達成するように適合させることができる。穿孔層(21)は、例えば、ポリウレタンフィルムから作製され得る。
【0119】
図4Cは、本発明による、連続気泡フォームとして実現された1つの多孔質層(10)を含む別のアイランドドレッシング材の断面図を示す。
【0120】
図4Dは、本発明による更に別のアイランドドレッシング材の断面図を示し、これは、穿孔層(21)及び裏打ち層(22)、ならびに2つの隣接するが異なる多孔質層10A及び10B(それぞれ、繊維のネットワークのアレイとして及び連続気泡フォームとして実現される)を含み、これは、
図4Aの実施形態と同様であるが、ここでは創傷により近いフォーム層を有する。
【0121】
図5は、多孔質層(10)にシリコーンゲルの第1のコーティング(1)を完全に又は部分的に含浸させる方法の例を示す。多孔質層のウェブ(82)(ここでは連続気泡フォームとして実現される)は、紙のロール(84)から供給される紙ウェブ(83)上で輸送される。ノズル(85)を介して適用される第1のコーティングをもたらすシリコーンゲルは、その未硬化状態で、連続気泡フォーム層(10)の第1の側(11)上にある。適用されたシリコーンゲルを有する層(10)は、一対のプレスロール(88)及び(89)を通して、2つのプロセス紙のウェブ、すなわち紙ウェブ(83)と紙ロール(87)からのさらなる紙ウェブ(86)との間に供給される。適用されたシリコーンゲルを有するフォーム層は、フォームの全断面にわたってゲルを分配するためのプレスロール間で圧搾される。使用後、紙ウェブ(86)はロール(870)に巻き取られ、紙ウェブ(83)はロール(840)に巻き取られる。過剰なシリコーンゲルは、存在する場合、これらの紙ウェブを介して、コーティング/含浸フォーム層(10)から除去することができる。この方法により、シリコーンゲルで部分的に又は完全に含浸された層(フォーム)が達成され、ここでゲルはフォームの全部又は一部にわたって均一に分布している。
【0122】
その後、フォームウェブを加熱してシリコーンゲルを硬化させる。シリコーンの硬化は、約100℃の温度で約1~5分間、好ましくは約3分間、ホスト高炉内で実施することができる。
【0123】
プレスロール間の圧力は、例示的に約5バールであってもよく、前記圧力は、制御された含浸のために調節可能である。
【0124】
プレスロールを通るウェブの例示的な速度は、約2~5m/分、好ましくは約3m/分である。
【0125】
図6は、シリコーンゲルの第1のコーティング(1)で既にコーティングされた多孔質層(10)上にシリコーンゲルの第2のコーティング(2)を適用するための例示的な方法を示す。
【0126】
例示的な装置は、薄いプラスチックフィルム(8)が
図6の左から右に搬送されるコンベヤ(図示せず)を含む。未硬化ゲル混合物(2′)の層をフィルム(8)上に配置する。ゲル混合物とは、互いに反応して架橋構造を形成することができるポリマーを含む、硬化後にゲルを形成する成分の混合物を意味する。第1のコーティング(1)で既にコーティングされた吸収性フォーム材料の多孔質層(10)は、ローラー(80)の助けを借りて未硬化ゲル混合物の層(2′)に適用され、次いで層(10)のコーティング(1)上に適用された層(2′)はオーブン(90)に輸送される。第2のコーティングのゲル混合物、又は別の実施形態では第1及び第2のコーティングのゲル混合物は、オーブン(90)を通過する際に硬化され、これにより、第1の(既に又はその後)硬化コーティング(1)でコーティングされたフォーム材料(10)の下側(11)上に硬化ゲルコーティング(2)を形成する。
【0127】
本発明の実施形態において、多孔質層(10)は、繊維のアレイ、特に超吸収性繊維のアレイ、又はゲル化繊維(例えば、Exufiber(登録商標))のアレイであるか、又はそれを含む。
【0128】
本発明によれば、繊維のアレイは、(x-y)平面において、それに垂直な方向(z方向)よりも大きな広がりを有する繊維の任意の配列である。好ましくは、繊維のアレイは、20~500g/m2、好ましくは50~350g/m2の面積重量(「坪量値」)を有する。
【0129】
本発明の実施形態において、多孔質層(10)は、繊維のネットワーク、特に不織布(例えば、Fibrella(登録商標))であるか、又はそれを含み、特に不織布ネットワーク中に存在するような水流交絡繊維を含み、或いは合成安定繊維及び/又は二成分安定繊維及び/又は天然安定繊維及び/又は超吸収性繊維及び/又は超吸収性粒子を含むエアレイド材料であるか、又はそれを含む。
【0130】
本発明によれば、また当業者の広く受け入れられている理解によれば、「不織布」は、繊維又はフィラメントを機械的に、熱的に、又は化学的に絡み合わせることによって互いに結合されたシート又はウェブ構造として定義されるが、(布地に関して従来行われているように)織ること又は編むことによっては結合されない。不織布は、ISO規格9092及びCEN EN 29092によって定義される。不織布基材又はウェブは、典型的には、別個の繊維から、又は溶融プラスチックもしくはプラスチックフィルムから直接作製される平坦な多孔質シートである。
【0131】
本発明の実施形態において、多孔質層(10)は、親水性フォームであるか、又はそれを含む。本発明の実施形態において、多孔質層(10)は、親水性ポリウレタンフォームであるか、又はそれを含む。
【0132】
本発明の実施形態において、多孔質層(10)は、EN 13726-1:2002によって測定される500kg/m3以上、好ましくは600kg/m3以上、より好ましくは700kg/m3の最大吸収能力に対応する自由膨潤吸収能力によって特徴付けられる。本発明の実施形態において、多孔質層は、EN 13726-1:2002によって測定される800~2500kg/m3の、最大吸収能力に対応する自由膨潤吸収能力によって特徴付けられる。
【0133】
本発明の実施形態において、親水性フォーム材料は、標準方法ISO 845:2006に従って測定される、60~180kg/m3、好ましくは80~130kg/m3、より好ましくは90~120kg/m3の密度を有する連続気泡多孔質親水性フォームである。
【0134】
本明細書で使用される場合、「連続気泡(open-cell)」という用語は、フォームの細孔(又はセル)構造を指し、細孔構造内の細孔は、互いに接続され、フォーム材料を通る流体流のための経路を有する相互接続ネットワークを形成する。「実質的に」連続気泡構造は、95%以上、好ましくは99%以上の細孔が少なくとも1つの他の細孔と接続している。
【0135】
本発明の実施形態において、多孔質層(1)は、イソシアネートでキャップされたポリオールもしくはイソシアネートでキャップされたポリウレタンを含むか又はそれらであるプレポリマーから得られる親水性ポリウレタンフォームであるか、又はそれを含む。これらの親水性フォームは、当技術分野で公知の他のフォーム材料と比較して改善された吸収能力を有するので、創傷ドレッシング材において特に有用であることが証明されている。更に、これらのフォームは、第1のコーティング(1)でコーティングすることができ、前記第1のコーティングの存在は、フォームの吸収能力と共に、創傷滲出液がこのフォームに吸収された後に創傷又は患者の皮膚に戻る創傷滲出液の逆流を最小限に抑えるか、又は本質的に回避する。
【0136】
本発明によれば、「プレポリマー」という用語は、IU PAC:Compendium of Chemical Terminology,2nd ed.(the“Gold Book”),compiled by A.D.McNaught and A.Wilkinson,Blackwell Scientific Publications,Oxford(1997),ISBN 0-9678550-9-8において定義されるように理解されるべきであり、一般にポリマー又はオリゴマーを指し、その分子は、反応性基を介してさらなる重合に入ることができ、それによって、最終ポリマーの少なくとも1つのタイプの鎖に2つ以上の構造単位を与えることができる。
【0137】
本発明の実施形態において、プレポリマーは、ポリオールと、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、もしくはイソホロンジイソシアネート(IPDI)、又はそれらの任意の混合物からなる群から選択されるジイソシアネート化合物との間の反応に由来する。
【0138】
本発明の実施形態において、ポリオールは、ポリエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリエステルポリオール、ポリウレタンポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリカーボネートポリオール、及びポリエステルポリカーボネートポリオールからなる群から選択され、中でも、特に、ジオール又は任意選択でトリオール及びテトラオールならびにジカルボン酸又は任意選択でトリカルボン酸及びテトラカルボン酸又はヒドロキシカルボン酸又はラクトンの重縮合物である。
【0139】
例示的な好適なジオールは、エチレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、ならびに1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール及び異性体、ネオペンチルグリコール又はネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートである。更に、トリメチロールプロパン、グリセロール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、トリメチロールベンゼン又はトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートなどのポリオールも本発明の範囲内である。
【0140】
本発明の実施形態において、プレポリマーは、ポリオールと脂肪族であるジイソシアネート化合物との間の反応に由来する。例えば、本発明の実施形態において、ジイソシアネート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)であるか、又はそれを含む。したがって、本発明の実施形態において、プレポリマーは、ヘキサメチレンイソシアネートでキャップされたポリオールもしくはヘキサメチレンイソシアネートでキャップされたポリウレタンであるか、又はそれを含む。
【0141】
本発明の実施形態において、プレポリマーは、ヘキサメチレンイソシアネートでキャップされたポリエチレングリコールであるか、又はそれを含む。
【0142】
本発明の実施形態において、プレポリマーは、前記ポリオールと芳香族であるジイソシアネート化合物との間の反応に由来する。例えば、本発明の実施形態では、ジイソシアネート化合物は、トルエンジイソシアネート(TDI)、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)であるか、又はそれらを含む。したがって、本発明の実施形態において、プレポリマーは、トルエンイソシアネートでキャップされたポリオール又はメチレンジフェニルイソシアネートでキャップされたポリオール又はトルエンイソシアネートでキャップされたポリウレタン又はメチレンジフェニルイソシアネートでキャップされたポリウレタンであるか、或いはそれらを含む。
【0143】
本発明の実施形態において、プレポリマーは、トルエンイソシアネートでキャップされたポリエチレングリコールであるか、又はそれを含む。本発明の実施形態において、プレポリマーは、メチレンジフェニルイソシアネートでキャップされたポリエチレングリコールであるか、又はそれを含む。
【0144】
本発明の実施形態において、多孔質層(10)は、少なくとも1種の抗菌剤を含む。
【0145】
本発明の実施形態において、抗菌剤は銀を含む。本発明の実施形態において、銀は金属銀である。本発明の実施形態において、銀は銀塩である。
【0146】
本発明の実施形態において、銀塩は、硫酸銀、塩化銀、硝酸銀、スルファジアジン銀、炭酸銀、リン酸銀、乳酸銀、臭化銀、酢酸銀、クエン酸銀、カルボキシメチルセルロース(CMC)銀、酸化銀である。本発明の実施形態において、銀塩は硫酸銀である。
【0147】
本発明の実施形態において、抗菌剤は、モノグアニド又はビグアニドを含む。本発明の実施形態において、モノグアニド又はビグアニドは、クロルヘキシジンジグルコネート、クロルヘキシジンジアセテート、クロルヘキシジン二塩酸塩、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)もしくはその塩、又はポリヘキサメチレンモノグアニド(PHMG)もしくはその塩である。本発明の実施形態において、ビグアニドは、PHMB又はその塩である。
【0148】
当業者は、本発明が、本明細書に記載される例示的な実施形態に決して限定されないことを理解する。例えば、本発明による医療用ドレッシング材は、所望の特性を更に最適化するため、及び/又は追加の機能性を達成するために、多孔質層と流体連通する追加の構造層を含むことができる。
【0149】
本発明を以下の実施例で更に説明する。特に明記しない限り、本明細書に記載される全ての実験及び試験は、標準的な実験室条件で、特に室温(20℃)及び標準圧力(1atm)で実施した。特に明記しない限り、パーセンテージに関する全ての表示は、重量パーセントを指すことを意味する。
【0150】
本発明はまた、以下の番号付けされた実施形態に従って、単独で、又は本明細書に記載される他の実施形態と組み合わせて定義され得る。
【0151】
1.医療用ドレッシング材(20)であって、
・第1の側(11)及び第2の側(12)を有する多孔質層(10)であって、前記第1の側及び前記第2の側が互いに対向し、前記多孔質層の水平方向に延在する、多孔質層(10)と、
・前記多孔質層(10)の前記第1の側(11)の表面領域の少なくとも一部に沿って、任意選択で前記第1の側(11)の本質的に全表面領域に沿って延在する第1のコーティング(1)であって、前記多孔質層の前記第1の側から離れて面する第1の表面を有する、第1のコーティング(1)と、
・前記多孔質層(10)の前記第1の側(11)に沿って延在する第2のコーティング(2)であって、貫通開口部(3)のパターンを含み、前記多孔質層(10)の前記第1の側(11)から離れて面する第1の表面を有する、第2のコーティング(2)と、を含み、
前記第1のコーティング(1)は、前記多孔質層(10)の前記第1の側(11)の表面領域のうち、前記第2のコーティング(2)の貫通開口部(3)と一致する部分の少なくとも一部に沿って延在し、
前記第2のコーティング(2)の前記第1の表面は、前記多孔質層(10)の前記第1の側(11)から垂直方向において、前記第1のコーティング(1)の前記第1の表面によって画定される対応する平面(A)よりも遠い平面(B)内に延在する、医療用ドレッシング材。
【0152】
2.前記多孔質層が吸収層であり、任意選択で、前記吸収層が、フォーム材料、繊維のアレイもしくは繊維のネットワーク、又はそれらの任意の組合せを含むか、又はそれらである、実施形態1に記載の医療用ドレッシング材。
【0153】
3.前記第2のコーティング(2)が、接着性であるという主要な機能を有し、一方、前記第1のコーティング(1)が、前記多孔質層(10)の前記第1の側を疎水性又はより疎水性にするという主要な機能を有する、実施形態1又は実施形態2に記載の医療用ドレッシング材。
【0154】
4.前記第2のコーティング(2)における貫通開口部(3)の前記パターンが、規則的な幾何学的パターン又はアレイであり、好ましくは、貫通開口部(3)の円形、長方形、又は台形のアレイを表す、実施形態1~3のいずれかに記載の医療用ドレッシング材。
【0155】
5.前記第2のコーティング(2)は、接着性コーティング、任意選択でシリコーン系接着性コーティングである、実施形態1~4のいずれかに記載の医療用ドレッシング材。
【0156】
6.前記第1のコーティング(1)が疎水性コーティングであり、任意選択で、前記コーティングがシリコーンゲルコーティングである、実施形態1~5のいずれかに記載の医療用ドレッシング材。
【0157】
7.前記第2のコーティング(2)が、50g/m2~500g/m2、任意選択で80g/m2~300g/m2のコーティング重量を有する、実施形態1~6のいずれかに記載の医療用ドレッシング材。
【0158】
8.前記多孔質層(10)が、親水性連続気泡フォームであるか若しくはそれを含み、又はゲル化繊維、水流交絡繊維、及び/若しくは超吸収性繊維のアレイであるか若しくはそれを含み、又は繊維の織布若しくは不織布ネットワークであるか若しくはそれを含む、実施形態1~7のいずれかに記載の医療用ドレッシング材。
【0159】
9.前記多孔質層(10)の厚さが、0.5mm~30mm、任意選択で1mm~15mm、任意選択で1mm~10mmである、実施形態1~8のいずれかに記載の医療用ドレッシング材。
【0160】
10.前記第1のコーティング(1)が、前記多孔質層(10)の厚さの10%以上に貫通しており、任意選択で、前記第1のコーティング(1)が、前記多孔質層(10)の厚さの40%以上に貫通しており、任意選択で、前記第1のコーティング(1)が、前記多孔質層(10)の厚さの本質的に全体に貫通している、実施形態1~9のいずれかに記載の医療用ドレッシング材。
【0161】
11.前記医療用ドレッシング材(20)が更なる多孔質層を含み、前記更なる多孔質層が吸収層であり、任意選択で、前記更なる多孔質層が、フォーム材料、繊維のアレイもしくは繊維のネットワーク、又はそれらの任意の組合せを含むか、又はそれらである、実施形態1~10のいずれかに記載の医療用ドレッシング材。
【0162】
12.前記多孔質層(10)は、窪み(25)のパターン、任意選択で窪み(25)の規則的なパターンを含み、前記窪み(25)のパターンは、前記多孔質層の前記第1の側及び前記第2の側の両方に存在し、前記第1の側の前記窪み(25)のパターンは、前記第2の側の窪み(25′)のパターンと同軸であり、前記2つの窪み(25、25′)のパターンは、前記多孔質層の共通部分(10′)によって互いに分離され、前記部分(10′)は、前記多孔質層(10)の残りの部分よりも大きく圧縮される、実施形態1~11のいずれか一項に記載の医療用ドレッシング材。
【0163】
13.前記窪み(25、25′)のパターンは、超音波処理の結果である、実施形態12に記載の医療用ドレッシング材。
【0164】
14.前記多孔質層は、開口部(15)のパターン、任意選択で開口部(15)の規則的なパターンを含み、前記開口部(15)のパターンは、前記多孔質層(10)の前記第1の側(11)に設けられ、任意選択で、前記開口部(15)は前記多孔質層(10)を完全に貫通しない、実施形態1~11のいずれかに記載の医療用ドレッシング材。
【0165】
15.前記開口部(15)のパターンは、レーザ処理又は加熱ピンによる処理の結果である、実施形態14に記載の医療用ドレッシング材。
【0166】
16.前記多孔質層(10)における前記開口部(15)又は窪み(25)のパターンが、前記第2のコーティング(2)における前記貫通開口部(3)のパターンと実質的に一致する、実施形態12~15のいずれかに記載の医療用ドレッシング材。
【0167】
17.前記医療用ドレッシング材(20)が、貫通開口部(3′)のパターンを含む穿孔層(21)を更に含み、前記穿孔層(21)が、第1の側及び第2の側を有し、前記穿孔層の前記第1の側は、多孔質層(10)の第1の側(11)から離れて面するように配置され、前記第2のコーティング(2)は、前記穿孔層(21)の前記第1の側に設けられ、前記第2のコーティング(2)における前記貫通開口部(3)のパターンは、前記穿孔層(21)における前記貫通開口部(3′)のパターンと実質的に一致する、実施形態1~16のいずれかに記載の医療用ドレッシング材。
【0168】
18.前記第1のコーティング(1)は、多孔質層(10)の前記第1の側(11)の表面領域と直接物理的に接触して設けられ、前記第2のコーティング(2)は、前記第1のコーティング(1)と直接物理的に接触して設けられる、実施形態1~16のいずれかに記載の医療用ドレッシング材。
【0169】
19.前記医療用ドレッシング材(20)が、前記多孔質層(10)の前記第2の側(12)に沿って延在する裏打ち層(22)を更に含む、実施形態1~18のいずれかに記載の医療用ドレッシング材。
【0170】
20.医療用ドレッシング材の製造方法であって、
細孔又は開口部を有する多孔質層(10)を設けるステップと、
前記多孔質層の第1の側(11)に第1のコーティング(1)を適用するステップと、
前記適用された第1のコーティング(1)が前記多孔質層の前記細孔又は開口部に少なくとも部分的に貫通するように前記多孔質層(10)を圧縮するステップと、
前記多孔質層(10)の前記第1の側(11)の上に第2のコーティング(2)を直接又は間接的に適用するステップと、
第2のコーティング(2)を適用する前記ステップの前に、又は第2のコーティング(2)を適用する前記ステップの間に、又は第2のコーティング(2)を適用する前記ステップの後に、前記第2のコーティング(2)に貫通開口部(3)のパターンを導入するステップと、を含み、
これらのステップの完了後、前記第1のコーティング(1)は、前記多孔質層(10)の前記第1の側(11)の表面領域のうち、前記第2のコーティング(2)に導入された貫通開口部(3)と一致する少なくともそれらの部分に沿って延在する、方法。
【0171】
21.適用される前記第2のコーティング(2)の重量が、適用される前記第1のコーティング(1)の重量よりも30%以上多く、任意選択で50%以上多い、実施形態20に記載の方法。
【0172】
22.前記第1のコーティング(1)は、実質的に未硬化の状態で前記多孔質層の前記第1の側に適用される第1のシリコーン組成物であるか、又はそれを含み、前記方法は、前記多孔質層を圧縮する前記ステップの後に前記第1のシリコーン組成物を硬化させるステップを更に含む、実施形態20又は実施形態21に記載の方法。
【0173】
23.前記第2のコーティング(2)が、第1のシリコーン組成物と同じか又は異なり、実質的に未硬化の状態で前記多孔質層の前記第1の側(11)上に適用される第2のシリコーン組成物であるか又はそれを含み、前記方法が、前記第1のコーティング(1)上に適用された後に前記第2のシリコーン組成物を硬化させるステップを更に含む、実施形態22に記載の方法。
【0174】
24.前記第2のコーティング(2)が、前記第1のシリコーン組成物と同じか又は異なり、実質的に未硬化の状態で前記多孔質層の前記第1の側(11)上に適用される第2のシリコーン組成物であるか又はそれを含み、前記方法が、前記第2のシリコーン組成物を硬化させるステップを更に含み、前記第1のシリコーン組成物を硬化させる前記ステップ及び前記第2のシリコーン組成物を硬化させる前記ステップが同時に行われる、実施形態23に記載の方法。
【0175】
25.前記多孔質層(10)が、窪みのパターン又は開口部のパターンを含む、実施形態20~24のいずれかに記載の方法。
【0176】
26.前記第1のコーティングが貫通ステップを含む方法によって適用され、前記第2のコーティングが転写コーティングステップを含む方法によって適用され、前記貫通開口部のパターンが前記転写コーティングステップ中に導入される、実施形態20~25のいずれかに記載の方法。
【0177】
本発明を非限定的な実施例により以下に説明する。
【実施例】
【0178】
(第1及び第2のシリコーンゲルコーティングを有する圧縮多孔質層の調製)
多孔質層(10)の試料は、厚さ5mmの未圧縮連続気泡ポリウレタンフォーム製品、すなわちLyofoam Max 15cm×15cm、Molnlycke Health Care、参照番号603204を、Dukane製の超音波溶接装置DPC(20kHz)のホーンと、その周囲表面の周りに規則的なパターンで延在する円筒形突起の列を有するカウンターローラーとの間の間隙を通して供給することによって製造した。各突起の高さは3mm、直径は1.4mmであった。隣接する突起間の距離は5mm、列間の距離は4.3mmであった。超音波溶接装置5の通過後、圧縮されたフォーム層の厚さは4mmであった。
【0179】
シリコーンゲルコーティングの第1の層は、40gsmのSilGel 612(Wacker製)をポリエチレンコート紙(120g/m
2)(Mondi Silicart製)上に直接適用することによって作製される。圧縮したLyofoam Max製品を未硬化シリコーン層上に適用する。次いで、積層体を、
図5に概略的に示すように、約3バールの圧力でプレスロールに曝露する。次いで、第1のコーティングによって含浸された多孔質層を紙から除去する。
【0180】
ポリエチレンコート紙(120g/m2)(Mondi Silicart製)上に125gsmのSilGel 612を直接適用することによって、シリコーンゲルコーティングの第2の層を作製する。次いで、プレコート層を、第1のコーティングでコーティングされた多孔質層上に適用し、約4ミリバールの低圧を加えて、シリコーンゲルを90℃の温度で5分間硬化させる間、プレコートされた製品を平坦に保つ。プロセス紙は、製品の試験前に除去する。
【0181】
(「二重コーティングされた」多孔質層対単一コーティングされた多孔質層についての低減された「逆流」の測定)
対象となる臨床状況は以下の通りである:穿孔を有するシリコーンゲルコーティングによって「単独で」コーティングされているだけの従来技術による多孔質層では、最初に創傷から離れて輸送された滲出液は多孔質層によって完全には保持されず、少なくとも部分的に創傷領域に「滴り」戻り(「逆流」)、最終的に創傷ドレッシング材と創傷との間の領域で乾燥する。創傷滲出液は、典型的には、電解質、栄養素、タンパク質、タンパク質消化酵素(例えば、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMPs))、成長因子、ならびに種々のタイプの細胞を含み、これらの全て又は一部は、創傷ドレッシング材の接着性コーティングによって既に提供された接着を超えて、ドレッシング材を創傷に(更に)接着する効果を有する。しかしながら、乾燥時のピーク接着が高すぎることは、臨床状況において疼痛を引き起こすので望ましくない。
【0182】
この臨床状況を模倣し、測定することができる性能パラメータを提供するために、以下の試験を開発した。
図7を参照すると、必要な力、すなわち「ドレッシング材」を「皮膚」から除去するためのピーク付着力を決定するために使用される引張試験ヘッド(50)が示されている。
【0183】
1.多孔質層(10)(上記)の試験片を、25±1mm×少なくとも100mm、好ましくは120mmのMDのストリップに切断又は打ち抜く。
2.試験片を23±2℃及び50±5%の制御された湿度で24時間順化させる。
3.両面接着テープを鋼板(52)(5×20cm)上に置く。カラー印刷用紙(100gsm)(3×8cm)を両面接着テープ上に置き、開始マークを約0.5cmで覆い、下に空気を閉じ込めることなく板によく接着させるために紙をカレンダー加工する。得られた「テープ上の紙」(53)は、ヒトの皮膚を模倣することを意味する。
4.ピペットを用いて3mLのウマ血清で試験片(10)を湿らせ、幅20mm、長さ70mmのフィールドをカバーする。ウマ血清が試験片の全幅にわたって分布していないことを確認する(
図7の(10)の影付き領域を参照)。
5.試験片(10)を「テープ上の紙」ストリップ(53)の上に置く。
6.Avanceフォーム、Molnlycke Health Care 参照番号62551(Avanceフォームキット参照番号662252の一部)の25×100mm片を打ち抜き、それを試験片のそれぞれの上に置く。
7.試験片及びAvanceフォームを有する4枚の鋼板を互いに隣接して置く。
8.2枚の鋼板(5×20cm)をAvanceフォームの上に置く。
9.鋼板に重りを置く。鋼板を含む総重量は5420gである。
10.37℃に設定したオーブン内に加圧下で紙及び創傷ドレッシング材によって模倣された創傷表面のアセンブリ全体を置く。
11.24時間後、アセンブリをオーブンから取り出す。
12.重り、鋼板及びAvanceフォームを除去する。
13.鋼板(52)を試験片(10)と共にスライドに置き、試験片の一端を引張試験機クランプ(51)にてクランプする。試験は90°の角度で行った(
図7参照)。
14.引張試験機の設定は以下の通りである。速度100mm/分、ゲージ距離50mm、平均荷重計算値10~60mm。
15.試験を開始し、試験片を鋼板から剥離し、それに必要なピーク力を測定する。
【0184】
当技術分野で知られている「単一コーティングされた」多孔質層(比較例)及び本発明による「二重にコーティングされた」多孔質層に対して行った試験の結果を
図8及び
図9に示す。
図8は、上記の試験に従って測定された平均負荷を示したものである。左側のサンプルは、貫通開口部(3)を有する接着性コーティング(2)(125gsm)のみでコーティングされた多孔質層であり、右側に示されたサンプルは、本発明の実施形態によるものであり、第2のコーティング(125gsm)によって画定される全ての貫通開口部を覆う40gsmの第1のコーティング(1)を有する。「皮膚」から多孔質層を除去するには、望ましくないほど高い平均荷重が必要であることが分かる。
図9は、同じ設定で必要なピーク負荷を示したものである。ここでも、本発明による試料と比較して、当技術分野で知られているように、試料を除去するためにはピーク負荷の4倍超が必要とされる。
【0185】
理論に束縛されるものではないが、単一コーティング系において観察されるより高いピーク付着は、滲出液が乾燥し、ドレッシングがこれらのコーティングされていない領域において表面に「固着」し、したがって、そのような領域のそれぞれについて測定された「ピーク」の増加をもたらす、コーティングされていない領域における逆流によるものであると考えられる。