(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】ビーム走査型モジュラ及びモジュール形スケーラブル衛星ユーザ端末
(51)【国際特許分類】
H04B 1/38 20150101AFI20240814BHJP
H01Q 3/26 20060101ALI20240814BHJP
H01Q 23/00 20060101ALI20240814BHJP
H01Q 25/00 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
H04B1/38
H01Q3/26 Z
H01Q23/00
H01Q25/00
(21)【出願番号】P 2022544738
(86)(22)【出願日】2021-01-19
(86)【国際出願番号】 US2021014025
(87)【国際公開番号】W WO2021150529
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2024-01-19
(32)【優先日】2020-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522292415
【氏名又は名称】ユーティベイト コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】エバディ,シマック
(72)【発明者】
【氏名】ツルコフスキ,ステファン ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】オソリオ,アンドレス フェリペ
(72)【発明者】
【氏名】レダ,アミン
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-523937(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0274055(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0089434(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0231197(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/38 - 1/58
H01Q 3/26
H01Q 23/00
H01Q 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ端末パネル(UTP)であって、
第1のユーザ端末モジュール(UTM)、複数の第2のUTM、及び第3のUTMを備え、第1のユーザ端末モジュール(UTM)、複数の第2のUTM、及び第3のUTMのそれぞれは、
2以上のユーザ端末要素(UTE)を有し、2以上のUTEのそれぞれは、
受信モード又は送信モードで動作可能な1以上のアンテナと、
前記アンテナを介して受信されるアナログ信号を増幅及び移相することにより、修正アナログ信号を生成するように構成される1以上の能動回路であって、前記アンテナを介して送信されるアナログ信号を増幅及び移相するようにさらに構成される1以上の能動回路と
を有し、それぞれのUTM内の前記UTEの前記1以上の能動回路のそれぞれは直列に接続され、
前記UTPは、
前記第1のUTM、前記複数の第2のUTM、及び前記第3のUTMの前記UTEのそれぞれからの前記生成された修正アナログ信号を1以上のアナログ入力又は出力に結合するように構成されるマルチレベルコンバイナ回路と、
前記第1のUTM、前記複数の第2のUTM、及び前記第3のUTMの前記UTEの前記1以上の能動回路のそれぞれの前記アナログ信号の1以上の特性を変えるためのデジタル制御信号を送信するように構成されるコントローラと
を備え、
前記コントローラは、前記第1のUTMの前記UTEの前記1以上の能動回路に電子的に連結され、前記第1のUTMの前記UTEの前記1以上の能動回路は、前記複数の第2のUTMの前記UTEの前記1以上の能動回路と直列に接続され、前記複数の第2のUTMの前記UTEの前記1以上の能動回路は、前記第3のUTMの前記UTEの前記1以上の能動回路と直列に接続され、前記第3のUTMの前記UTEの前記1以上の能動回路は、前記コントローラと直列に接続され、
前記第1のUTM、前記複数の第2のUTM、及び前記第3のUTMのそれぞれは、前記UTMの能動回路のそれぞれの間に配置された1以上のバッファを有し、前記バッファは、ある能動回路から別の能動回路に送られるデジタル制御信号の劣化を補正するように構成される、
ユーザ端末パネル
を備える、システム。
【請求項2】
前記UTMは、集合的にアンテナシステム領域を構成し、所定のスループットを満たすように前記アンテナシステム領域を調整できるように、任意の数のUTMが調整される、請求項1のシステム。
【請求項3】
前記UTPは、指向性ビームにおいてRF信号を出射するように構成され、前記コントローラは、それぞれのUTEにより処理される前記アナログ信号の位相又は振幅を変えるデジタル制御信号を前記第1のUTM、前記複数の第2のUTM、及び前記第3のUTMに送信することにより前記指向性ビームの方向を操作するように構成される、請求項1のシステム。
【請求項4】
前記第1のUTM、前記複数の第2のUTM、及び前記第3のUTMの前記UTEは、衛星の1以上の周波数帯域と整合するように目標周波数域においてアナログ信号を処理するように構成される、請求項1のシステム。
【請求項5】
前記第1のUTM、前記複数の第2のUTM、及び前記第3のUTMの前記UTEは、衛星に送信され、あるいは衛星から受信されるRF信号に対する目標偏波に関して同様の偏波を有する信号を処理するように構成される、請求項1のシステム。
【請求項6】
前記第1のUTM、前記複数の第2のUTM、及び前記第3のUTMの前記UTEは、超小型プッシュオン型(SMP)コネクタを介して前記UTMに着脱自在に連結される、請求項1のシステム。
【請求項7】
前記第1のUTM、前記複数の第2のUTM、及び前記第3のUTMの前記UTEは、矩形、三角形、又は六角形の様々な形状で構成され得る、請求項1のシステム。
【請求項8】
前記コントローラは、前記第3のUTMから戻りデジタル制御信号を受信するようにさらに構成され、前記戻りデジタル制御信号は、前記第3のUTM、前記複数の第2のUTM、及び前記第1のUTMの前記UTEのそれぞれの前記能動回路の状態を提供する、請求項1のシステム。
【請求項9】
前記1以上のバッファは、前記コントローラのクロックレートの変化による前記デジタル制御信号の劣化を補正するように構成される、請求項1のシステム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2020年1月22日に提出された米国仮特許出願第62/964,376号の利益を主張するものであり、当該米国仮特許出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
さらに、本出願は、2020年5月1日に提出された米国仮特許出願第63/019,228号の利益を主張するものであり、当該米国仮特許出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0003】
本開示の態様は、ビーム走査型アンテナアレイシステムの分野及びその解決策に関し、特に高性能ビーム走査用の電子走査型モジュール式アレイアンテナシステムに組込可能な、安価で再利用可能で交換可能なアンテナ素子に関するものである。
【背景】
【0004】
今日、世界の人口の半数を超える人々、多くは発展途上国における人々はインターネットへのアクセス手段がない。実際、40億を超える人々は、第4次産業革命として知られる革新速度の増加により生じる、金融サービスから健康及び教育に至るまで、インターネット接続によって生活を変えるような恩恵を受けられていない。政府、企業、地方団体及び国際団体、及び市民社会の構成員は、より多くの人々がネットワークに接続されるように従事している。不幸なことに、この問題は、極めて大きく、複雑で、多元的である。例えば、インターネット接続を可能にするインフラストラクチャ及び設備は、世界中の多くの場所において、簡単に利用可能とはならず、費用を賄えるものではない。
【概要】
【0005】
本明細書で述べられる1以上の実施形態は、他の利点がある中でも特に、様々な商用・民生ビーム走査通信用途のために構成可能な高性能モジュール式電子走査型アレイアンテナシステムに組み込むことが可能な安価で再利用可能な(又は相互交換可能な)アンテナ素子を提供するためのシステム、装置、及び方法を提供することにより、当該技術における上述の問題又は他の問題のうち1つ以上を解決するものである。
【0006】
一実施形態においては、衛星アンテナシステムは、それぞれ入射衛星電波に応答して到来信号を生成するか、あるいは、衛星又は地上ユニットのような受信器に向けて送出信号を送信するためのアンテナを含むM個のアプリケーションアグノスティックユーザ端末要素(UTE)を含んでいる。それぞれのUTEは、到来信号及び送出信号を処理するための能動回路をさらに含んでいる。UTE能動回路は、M個の能動回路によりなされる処理を制御する制御回路により制御される。ある実施形態においては、M個のUTEが、M個の能動回路のうちのO個からなるデイジーチェーンをそれぞれ含むN個のユーザ端末モジュール(UTM)の中に分配される。
【0007】
デイジーチェーンのステージに沿って生じ得る潜在的な品質劣化と信号減衰を解決するために、それぞれのUTMは、デイジーチェーン内で生じた劣化を補正するために、P個の能動回路ごとの後に置かれるバッファをさらに含む。本明細書で使用される場合には、バッファにより補正される信号劣化は、駆動電流が制限されることによる電圧の劣化及び伝送線路が長くなることによる反射を含んでいる。
【0008】
そのようなシステムの例が
図5について示され説明される。
図5は、Mは256に等しく、NとOは16に等しい衛星アンテナシステムを示している。例示的なUTMは、
図7及び
図8に示されており、これらの図は、NとOが16に等しいモジュールを示している。
【0009】
本明細書に開示されているようなシステムの利点は、そのモジュール型の設計により、与えられた用途のために全アンテナ面積及び対応する信号スループットを調整するためにNを調整できることにある。例えば、自動車用途において用いられることを意図された衛星アンテナシステムについては、バスや航空機又はクルーズ船のような、より需要のある用途に比べて低い数値にMを設定することができる。UTEが過去に設計されており、それらが再利用されている限りにおいて、そのようなシステムにおいてNREコストは最小となる。
【0010】
本出願の付加的な特徴及び利点は、以下の説明で述べられ、一部は以下の説明から自明なものであるか、あるいはそのような実施形態の例を実施することにより理解し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
上述した利点及び特徴と他の利点及び特徴が得られるような方法で述べるために、より具体的な説明が述べられ、添付図面に示されている特定の例を参照することにより説明がなされる。これらの図面が典型的な例だけを示しており、したがって、その範囲を限定するものではないことを理解しつつ、添付図面を用いることによりさらに具体的かつ詳細に実施例が述べられ説明される。
【0012】
【
図1】
図1は、ある実施例による、様々なモジュール型アンテナアレイシステムを含む衛星通信システム例の全般的な概略及び構成を示すブロック図を示している。
【0013】
【
図2A-2B】
図2A及び
図2Bは、ある実施例による、安価なアンテナ(又はユーザ端末)素子を用いて形成される電子走査型アンテナアレイを用いて衛星及び地対地通信リンク(又は接続)を確立するように構成される様々なモジュール型アンテナシステムを含む衛星通信システム例を示すブロック図を示している。
【0014】
【
図3】
図3は、ある実施例による、複数のアンテナ(又はユーザ端末)素子を用いて形成されるアンテナモジュールのモジュール型アーキテクチャ例を示すブロック図を示している。
【0015】
【
図4】
図4は、ある実施例による、複数のアンテナモジュールを用いて形成されるアンテナ(又はユーザ端末)パネルのモジュール型アーキテクチャ例を示すブロック図を示している。
【0016】
【
図5】
図5は、ある実施例による、ある用途のための衛星電波信号を送受信するためのシステム(ビーム走査型アンテナ)の例を示すブロック図を示している。
【0017】
【
図6】
図6は、ある実施例による、ある用途のために衛星と信号を通信するためにビーム走査型アンテナシステムにより行われる動作を示すプロセスフロー図を示している
【0018】
【
図7】
図7は、ある実施例による、ユーザ端末モジュール、ユーザ端末制御モジュール、及び振幅調整バッファの例を示すブロック図を示している。
【0019】
【
図8A】
図8Aは、ある実施例による、複数のユーザ端末モジュールとユーザ端末制御モジュールの例を示すブロック図を示している。
【0020】
【
図8B】
図8Bは、ある実施例による、複数のユーザ端末モジュールとユーザ端末制御モジュールの例を示すブロック図を示している。
【0021】
【
図8C】
図8Cは、ある実施例による、複数のユーザ端末モジュールとユーザ端末制御モジュールの例を示すブロック図を示している。
【0022】
【
図9】
図9は、ある実施例による、ビーム走査型アンテナシャーシの正面及び側面図、平面図、及び斜視図を示している。
【0023】
【
図10】
図10は、ある実施例による、ビーム走査型アンテナにおいて使用されるコントローラボードに接続されるモジュールボード上に搭載されるアンテナボードの断面及び斜視図を示している。
【0024】
【
図11】
図11は、ある実施例による、ビーム走査型アンテナにおいて使用されるモジュールボード上に搭載されるアンテナボードの平面及び斜視図を示している。
【0025】
【
図12】
図12は、ある実施形態による、ビーム走査型アレイシステムを組み立てるために使用される標準的な構成要素及びコネクタを示している。
【0026】
【
図13A-13B】
図13A及び
図13Bは、ある実施例による、アンテナ(又はユーザ端末)素子の例を示すブロック図を示している。
【0027】
【
図14】
図14は、ある実施例による、複数のアンテナ(又はユーザ端末)素子を用いて形成されるアンテナ(又はユーザ端末)モジュールの例を示すブロック図を示している。
【0028】
【
図15】
図15は、ある実施例による、高性能モジュール式デジタル走査型アレイアンテナシステムのための電気的構成の例示概念図を示している。
【0029】
【
図16A-16B】
図16A及び
図16Bは、ある実施例による、3D印刷された金属のみのアンテナを有するパッケージダイに具現化された能動回路を有するアンテナ素子の例を示すブロック図を示している。
【0030】
【
図17】
図17は、ある実施例による、金属パッケージ及び3D印刷アンテナを有するアンテナ素子の例を示すブロック図を示している。
【0031】
【
図18】
図18は、ある実施例による、アンテナ(又はユーザ端末)モジュールを形成するために使用される例示構造を示している。
【0032】
【
図19】
図19は、ある実施例による、アンテナ(又はユーザ端末)モジュールを形成するために使用される例示構造を示している。
【0033】
【0034】
【0035】
【
図22】
図22は、ある実施例による、アンテナ(又はユーザ端末)モジュール構成の例を示している。
【0036】
【
図23】
図23は、ある実施例による、高性能モジュール式電子走査型アレイアンテナシステムのためのビームステアリング回路を示す電気的構成の例示概念図を示している。
【0037】
【
図24】
図24は、ある実施例による、リアルタイム画像撮影用途のための対象範囲及び速度を改善するためのモジュール型衛星ユーザ端末アンテナシステムから構成される複数の地上ユーザ端末を用いた例を示している。
【0038】
【
図25】
図25は、ある実施例による、複数のモジュール型衛星ユーザ端末アンテナシステムから構成される合成開口地上ユーザ端末の例を示している。
【0039】
図面は必ずしも縮尺通りに示されているとは限らない。同様に、本技術の実施形態の一部を説明するために、一部の構成要素及び/又は動作は、異なるブロックに分離され得るし、あるいは単一のブロックに統合され得る。また、本技術は、様々な変形及び別の形態に変更することが可能であるが、特定の実施形態が例として図面に示されており、以下で詳細に述べられる。しかしながら、本発明は、述べられている特定の実施形態に限定されるものではない。逆に、本技術は、添付した特許請求の範囲により規定される技術の範囲内に属するすべての変形例、均等物、及び代替物をカバーすることを意図している。
【好ましい実施形態の詳細な説明】
【0040】
以下に例が述べられる。特定の実施例が述べられるが、これは説明のためだけに行われるものであることは理解すべきである。関連技術における当業者であれば、本開示の主題の精神及び範囲から逸脱することなく、他の構成要素及び構成を用いることができることを理解するであろう。実施例は、システム、プロセス、装置、機械により実現される方法、コンピューティングデバイス、又はコンピュータ読取可能な媒体を含み得る。
【0041】
上述したように、接続を実現するインフラストラクチャ及び機器は、世界中の多くの場所において簡単には入手できず、その費用を賄うこともできない。例えば、インフラストラクチャ及び機器を可能にする無線技術、特に衛星通信は、高性能接続を実現するように高性能走査型アレイアンテナシステムを定期的に利用する。これらの高性能走査型アレイアンテナシステムは、複数のアンテナ素子を用いて構成される高価なカスタマイズされたフェイズドアレイアンテナを利用している。それぞれのアンテナ素子は、典型的には、放射体(又はアンテナ)及び能動回路を含んでいる。従来から、能動回路は、ダイ(例えばシリコンダイ)内に具現化され、個々に放射体(又はアンテナ)とは別に実装されている。設計によっては、放射体(又はアンテナ)と能動回路とを連結するためには、少なくとも2つの、多くの場合、3つ以上の損失の大きい無線周波数(RF)遷移部が必要となる。
それぞれを上下に重ねた場合、これらの損失の大きいRF遷移部により全信号パワーの半分までの例えば3デシベル(dB)までの信号劣化を生じる。
【0042】
衛星通信端末においては、RF信号は、空気中を伝搬し、UTPにより送受信される。アナログ信号は、UTEにより送信され、UTPの入力又は出力となる。UTEを通過するアナログ信号を変えるためにデジタル信号が使用される。
【0043】
UTEの間でRF信号を結合又は分割するために合体供給ネットワークが使用される。合体供給においては、送信モード又は受信モードのいずれかで信号を均一に分配するためにそれぞれの結合点でパワーが同等に分割される。合体供給ネットワークは、UTMレベル及びUTPレベルで信号を結合又は分割するための構成要素を有し得る。
【0044】
遠く離れた衛星から受信される信号は非常に弱いことが多いため、衛星通信端末用途のフェイズドアレイアンテナは、典型的には、アナログ出力を受信、増幅及び結合するために数千個のアンテナ素子を必要としており、これが少なくとも部分的にはアナログ信号の増幅の前に生じるRF損失の原因となっている。これらの数千個のアンテナ素子は、フェイズドアレイアンテナの複雑さとコストを増加させる。これに加えて、それぞれの用途のためのシステムをカスタマイズして設計するために高い非反復エンジニアリング(NRE)コストが生じる。例えば、アンテナ素子は、典型的には、RF信号を取り扱うように構成される高価な多層ベースボード上に組み立てられる。これらの層は、厚さ数センチメートル(cm)(例えば2~3cm)、長さ及び/又は幅は1メートル(m)以上までになり得る。これらの層は、例えば、デジタルルーティング、RFパワー分割などを含み得る。
【0045】
衛星地上アンテナシステムの入手可能性及び購入可能性が限定されることは、それらが製造される方法によってさらに悪化する。従来のアンテナシステムは、特定の用途に対してカスタマイズされて設計されている。そのようなカスタマイズされて設計されたプロジェクトは、典型的には、高価な一度きりのエンジニアリング労力を必要とし、これらがNREコストとなる。また、そのようなアンテナシステムは、典型的には、比較的少量で生産され、このため単位当たりのコストが高くなる。今日入手可能なそのような衛星インターネットシステムの例は、航空機上で使用される衛星インターネットシステムを提供するイリノイ州シカゴのGogo社により作られている。Gogo社のアンテナシステムは、数十万ドルの費用が必要となり得る。これは、今日のドルの価値においては、一軒の家の値段に匹敵する。
【0046】
これに対して、本明細書で述べられている技術は、モジュール型アンテナシステムのためのアンテナ素子に向けられている。より具体的には、本技術は、モジュール式電子走査型アレイアンテナシステムに組み込むことが可能な、安価で再利用可能で交換可能なアンテナ素子及びモジュールに向けられている。本明細書で述べられるアンテナシステムは、1度だけ設計され、大量に製造され、後続の用途に再利用されるアプリケーションアグノスティックなアンテナ素子又はモジュールから構成され得る。そのようなアプローチにより、NREコストが最小限になり、大量生産が容易になり、単位当たりのコストが著しく下がる。実際、本明細書で述べられるアンテナ素子は、例えば、衛星通信用途、5G携帯電話通信用途、自動車レーダ、及びIoT用途などの様々な高性能商用・民生ビーム走査用途に対する様々なサイズ及び性能に構成することができるモジュール式電子走査型アレイアンテナシステムに組み込むことが可能である。
【0047】
ビーム走査型衛星に関連付けられるNREコストを削減するためにUTE又はUTMの設計を有利に再利用することの例として、ある実施形態においては、UTE及びUTMの一方又は両方を1度だけ設計することができ、自動車に置かれるUTE又はUTMの第1の個数、バスに置かれるUE又はUTMの第2の個数、航空機に置かれるUTE又はUTMの第3の個数、及びクルーズ船に置かれるUTE又はUTMの第4の個数のうち1つを含むアンテナシステムを実現することができる。UTE又はUTMの第1の個数、第2の個数、第3の個数、及び第4の個数は累進的に増加する。
【0048】
ある実施例においては、本明細書で述べられている技術は、衛星ユーザ端末用の電子走査型アレイアンテナシステムのコストを著しく下げることにより衛星接続の幅広い活用を可能にする。実際、本明細書で述べられている技術はNREコストを下げ、これにより、大量生産と組み合わさり、1Gbpsよりも速い伝送速度を有し得る100ドルを下回る高性能なユーザ端末が実現される。換言すれば、M個のUTEとN個のUTMのうち少なくとも1つを大量生産することができる。本明細書で使用される場合には、「大量」という用語は、数十万又は数百万という商業的に相当な量を示唆している。「大量」生産される場合には、それぞれのアンテナシステムの製造コストは、商業的に利用可能なパーソナルコンピュータのメーカが提示する平均小売価格に相当し、これは、例えば、上述したように、1軒の家の価格に相当するコストのGogo社の商用無線衛星システムよりも購入可能性が高いものである。したがって、既存の市場に貢献することに加えて、本技術は、現在では高速インターネット接続にアクセスするための費用が十分にないような、新しい、これまでに存在しなかった市場を促進するものでもある。
【0049】
上述したように、従来のアンテナ素子は、少なくとも2つ、多くの場合、3つ以上の損失の大きい無線周波数(RF)遷移部を含んでいる。それぞれを上下に重ねた場合、これらの損失の大きいRF遷移部により全信号パワーの半分までの例えば3デシベル(dB)までの信号劣化を生じる。本明細書で述べられる技術は、損失の大きいRF遷移部を削減するあるいはなくすために、放射体(又はアンテナ)を能動回路に埋め込むか一体化する。
【0050】
他の利点がある中でも、本明細書で述べられるモジュール型アンテナシステム及び解決法は、安価で再利用可能で交換可能でモジュール型の平坦なビームステアリング可能なアンテナを促進する。上述したように、最終形態のファクタを考慮することなく、開示されているUTMを1度だけ設計することができる。そのようなアプローチにより、UTMに関連付けられるNREコストが低減し、例えば、衛星通信用途、5G携帯電話通信用途、自動車レーダ、及びIoT用途などの高性能商用・民生ビーム走査型用途に好適なアンテナシステムを実現することができる。実際、本明細書で述べられているモジュール型アンテナシステム及び解決法は、衛星ユーザ端末用のフェイズドアレイのコストを著しく下げることにより衛星接続の幅広い活用を可能にする。本明細書で述べられている改良点により、モジュール型アンテナ素子を大量に作製することができるので、ビーム走査型アレイアンテナの全体のコストが劇的に減少する。さらに、アレイ設計によりベースボードの複雑さが減少し、さらにシステムの全体のコストが減少する。結果として、本明細書で述べられているシステム及び解決法は、既存の市場に貢献するだけではなく、現在では高速インターネット接続へのアクセス方法がないような、新しい、これまでに存在しなかった市場を実現するものでもある。
【0051】
さらに、本明細書で述べられる設計のモジュール性と再利用可能性とにより、様々な形態のファクタに対して迅速なスケーラビリティが可能となり、商品化までの時間を改善することができる。実際、本明細書で開示されている構築ブロックを用いて数週間で新しいシステム及び解決法を展開することができる。
【0052】
上述したように、開示されている衛星アンテナシステムは、それぞれアプリケーションアグノスティックであり、入射衛星電波に応答して到来信号を生成するか、あるいは、衛星、地上ユニット、複数の衛星、複数の地上ユニット、及びこれらの任意の組み合わせのような受信器に向かって送出信号を送信するためのアンテナを含むM個のユーザ端末モジュール(UTM)を含んでいる。本明細書で使用される場合には、「アプリケーションアグノスティック」という用語は、任意の用途において、例えば、車、バス、又はクルーズ船において同一のUTMを用いることができることを意味している。N個のUTMのM個の能動回路は、M個の能動回路に到来信号及び送出信号を処理させる制御回路により制御される。ある実施形態においては、N個のUTMは、M個の能動回路のうちのO個からなるデイジーチェーンをそれぞれ含むN個のユーザ端末モジュール(UTM)の間で分配される。デイジーチェーンのステージに沿って生じ得る潜在的な品質劣化及び信号減衰を解決するために、バッファが定期的に含められる。例えば、そのような減衰を解決するために、それぞれのUTMは、デイジーチェーン内で生じた劣化(例えば、特性、同様の位相、振幅、周波数、信号パワー、及び信号ノイズ)を補正するために、P個の能動回路ごとに配置されたバッファをさらに含むことができる。システム内のモジュールの数が制限なく変化し得ることに留意すべきである。例えば、
図8Aに示される例では、4つのUTM806A~806Dのそれぞれは、16個の能動回路を含んでおり、制御回路、コントローラボード808に接続されている。
図8Bに示される例では、4つのUTM806A-1から806A-4は、直列にデイジーチェーン接続されており、1つの入力と1つの出力とを有する64個のUTEからなるデイジーチェーンを形成している。他方で、同様に、
図8Cに示される例では、モジュールの4つのスタックは、それぞれ64個の能動回路からなるデイジーチェーンを含んでおり、それぞれのスタックはコントローラボード808に接続される。信号特性を補正するバッファにより、デイジーチェーン接続されるモジュールの数は無制限となる。例えば、4つのUTMはデイジーチェーン接続されているように示されているが、任意の数のモジュール、例えば2個、3個、4個、5個、6個又はそれよりも多くのモジュールをデイジーチェーン接続してもよい。
【0053】
図示されるように、電源505は、UTコントロール508に電力を供給する。ある実施形態(図示せず)における電源505は、UTM506A~506Mのそれぞれにも電力を供給する。ある実施形態(図示せず)においては、UTMのそれぞれにおける要素のそれぞれは、太陽エネルギーを利用しており、モジュールのすべてに電力を分配する必要がない。さらに他の実施形態においては、モジュールのそれぞれのデイジーチェーンに沿って電力が供給される。例えば、次のモジュールに接続される出力とともにそれぞれのモジュールが次のモジュールに電力も供給する。このように、システムは、既存モジュールから入力及び電力を受ける新しいモジュールを追加するためにシステムの大きさを決めることができる。
【0054】
一例においては、Mは256に等しく、Nは16に等しく、Oは16に等しく、Pは2、4、8、又は16のいずれかに等しい。さらに、開示されているUTEは、アプリケーションアグノスティックであり、これは、UTEを1度だけ設計し、複数回再利用できることを意味している。換言すると、M個のUTEは、アプリケーションアグノスティックであり、以前の異なる用途の設計を利用してシステムに関連付けられる設計コストを低減することができる。
【0055】
本明細書で使用される場合には、「電子走査型アレイ」という用語は、アンテナを移動することなく異なる方向に電子的にステアリングすることができる電波ビームを生成する電子走査型アレイ、すなわちアンテナのコンピュータ制御されたアレイを意味する。アレイは、コンピュータ、マイクロコントローラ、又はオンボードプロセッサのいずれかにより制御され得ることを理解すべきである。
【0056】
本明細書で使用される場合には、「ダイ」という用語は、集積回路の文脈で用いられ、その上に機能回路が作製される半導体材料の小さなブロックを意味する。集積回路は、典型的には、電子グレードシリコンからなる単一のウェハ上又はフォトリソグラフィのようなプロセスを介して他の半導体上に大量に製造される。
【0057】
本明細書で使用される場合には、「集積回路実装」という用語は、半導体素子製造の最終段階を意味し、この段階では、半導体材料のブロックが物理的ダメージ及び腐食を防止する支持ケース内にカプセル化される。「パッケージ」として知られるケースは、素子を回路基板に接続する電気的接点を支持する。本明細書で述べられるように、パッケージ材料は、典型的には、RF周波数において非常に損失が大きく、その結果、(例えば、ダイからパッケージの外部環境に)通過するRF信号を劣化させる。
【0058】
衛星と地対地通信を容易にするための様々なモジュール型アンテナシステムを用いた衛星通信システムの例の概要及びアーキテクチャが
図1に関して説明される。様々な例示的な環境が
図2A及び
図2Bに関して説明される。その後、安価なアンテナ素子を用いて構成されるモジュール及びパネルを含む電子走査型アレイアンテナシステムのモジュールアーキテクチャを示す例がそれぞれ
図3及び
図4に関して説明される。その後、アンテナ素子及び例示的なモジュール式電子走査型アレイアンテナシステムの構成要素、動作及びプロセスのより詳細な説明がこれに続く図面に関して行われる。
【0059】
図1は、ある実施例による、様々な例のモジュール型アンテナアレイシステムを含む衛星通信システム100の全般的な概略及び構成を示すブロック図を示している。より具体的には、衛星通信システム100は、安価なアンテナ(又はユーザ端末)素子を用いて構成される電子走査型アンテナアレイを用いて衛星及び地上対地上の通信リンク(又は接続)を確立するように構成される様々な例のモジュール型アンテナシステムを含んでいる。本明細書で述べられるように、様々な例のモジュール型アンテナアレイシステムは、同一の又は類似した設計を再利用することにより、それぞれの新しい設計に関連するNREコストを削減することができる。また、開示されているアンテナ素子は、製造者が前例のないスケールでシステムの総コストを削減することを可能にする。
【0060】
図1の衛星通信システム100には単一の衛星が示されているが、システムは、任意の数の衛星を含むことができることは理解されよう。さらに、様々な種類のモジュール型アンテナアレイシステムが説明のために示されているが、構成は、モジュール型アンテナアレイシステムの例のうち1つ又はすべてを含んでいてもよいことは理解されよう。
【0061】
図1の例に示されるように、衛星通信システム100は、衛星110と、モジュール型ゲートウェイアンテナシステム115、モジュール型衛星ユーザ端末アンテナシステム130及び170、ユーザ端末モジュールUTM134、UTM142、UTM152、UTM162及びUTM172、及びモジュール型無線アンテナシステム140、150及び160を含む様々なモジュール型アンテナアレイシステムとを含んでいる。様々なモジュール型アンテナアレイシステムのそれぞれは、少なくとも1つの電子走査型アレイアンテナを含んでいる。実際には、電子走査型アレイアンテナは、モジュール型であり、このため、本明細書で述べられる、安価で再利用可能で交換可能なアンテナ素子を用いて様々なサイズと性能で形成することが可能である。実際には、本明細書で述べられる交換可能アンテナ素子は、より大きなアンテナ(又はユーザ端末)モジュールに組み込むことが可能である。これらのアンテナ(又はユーザ端末)モジュールは、それ自体、電子走査型アレイアンテナとして個々に構成可能であるか、あるいは、例えば衛星通信のような、より大きな高性能又は高スループットビーム走査用のより大きなアンテナ(又はユーザ端末)パネルに組み込み可能である。本明細書で述べられるように、これらの電子走査型アレイアンテナは、走査型アレイアンテナを構築する能力を促進する同一又は類似の設計及び製造プロセスを利用し、その結果として、走査型アレイアンテナシステムの総コストを劇減させることができる。
【0062】
ある実施形態においては、衛星110は、静止軌道(GO)、例えば赤道静止軌道(GEO)、又は非静止軌道、例えば、低地球周回軌道(LEO)又は中地球周回軌道(MEO)に乗っている。モジュール型ゲートウェイアンテナシステム115は、衛星通信パネル116を含むモジュール型電子走査型アレイアンテナシステムであり得る。実際には、衛星通信パネル116は、複数のアンテナ(又はユーザ端末)モジュールとともに形成されるアンテナ(又はユーザ端末)パネルである。このアンテナモジュールは、複数のアンテナ(又はユーザ端末)素子とともに形成される。
【0063】
図1の例に示されているように、モジュール型ゲートウェイアンテナシステム115及びモジュール型衛星ユーザ端末アンテナシステム130及び170は、衛星110と通信を行う。また、モジュール型衛星ユーザ端末アンテナシステム170は、ユーザ機器175と通信を行う。さらに、モジュール型衛星ユーザ端末アンテナシステム170は、別個のものとして示されているが、ある実施例においては、ユーザ機器175と統合され、あるいは組み合わされて、例えば、統合型衛星送受信器、例えば、衛星110と直接通信するためのアンテナ(又はユーザ端末)素子を有する携帯デバイスのような別個の又は単一のデバイスとすることができる。
【0064】
同様に、モジュール型衛星ユーザ端末アンテナシステム130は、モジュール型無線アンテナシステム140、モジュール型無線アンテナシステム150、及びユーザ機器135とも通信を行う。モジュール型無線アンテナシステム140は、ユーザ機器145と通信を行う。続いて、モジュール型無線アンテナシステム150は、ユーザ機器155及びモジュール型無線アンテナシステム160と通信を行う。モジュール型無線アンテナシステム160は、さらにユーザ機器165と通信を行う。
【0065】
ユーザ機器135、145、155、165及び175は、携帯デバイス、電話、スマートフォン、タブレット、ラップトップコンピュータ、コンピュータ、ウェアラブルデバイス、スマートウォッチ、視聴覚デバイス、モノのインターネット(IoT)デバイス又はモジュール型アンテナアレイシステムと通信することが可能な任意のデバイスのようなユーザデバイスであり得る。さらに、ユーザ機器135、145、155、165、及び175は、1以上のエンドユーザデバイス(図示せず)と通信するために使用されるデバイス(例えばアクセスポイント、スマートセルなど)であり得る。
【0066】
動作中は、様々な例のモジュール型アンテナアレイシステムが、(フォワードアクセスリンクとリターンアクセスリンクとを有する)双方向アクセスリンクを介してユーザ機器と通信する。同様に、モジュール型無線アンテナシステム150は、(フォワードアクセスリンクとリターンアクセスリンクとを有する)双方向アクセスリンクを介してモジュール型無線アンテナシステム160と通信する。例えば、双方向アクセスリンクは都市間リンクであってもよい。この都市間リンクの例が、
図2Aを参照してより詳細に示され、説明される。
【0067】
モジュール型ゲートウェイアンテナシステム115は、インターネット125又は1以上の他の種類の公共ネットワーク、半私設ネットワーク、又は私設ネットワークに対するアクセスを有し得る。
図1の例に示されているように、モジュール型ゲートウェイアンテナシステム115は、インターネット125又は1以上の他の種類の公共ネットワーク、半私設ネットワーク、又は私設ネットワークにアクセスすることが可能なインフラストラクチャ120と通信する。また、モジュール型ゲートウェイアンテナシステム115は、例えば、光ファイバネットワーク又は公共交換電話ネットワーク(図示せず)のような地上回線ネットワークをはじめとする様々な種類の通信バックホールに連結され得る。
【0068】
ある実施例においては、モジュール型ゲートウェイアンテナシステム115は、インフラストラクチャ120を介して他のゲートウェイと通信し得るか、あるいは、インフラストラクチャ120を使うことなく通信するように構成され得る。インフラストラクチャ120は、ネットワークコントロールセンタ(NCC)、衛星コントロールセンタ(SCC)、有線及び/又は無線コアネットワーク、及び/又は衛星通信システム100の動作及び/又は衛星通信システム100との通信を容易にするために使用される他の構成要素又はシステムの全体又は一部を含み得る。
【0069】
衛星110とモジュール型ゲートウェイアンテナシステム115との間の双方向の通信はフィーダリンクと呼ばれ、衛星110とモジュール型衛星ユーザ端末アンテナシステム130及び170との間の通信は双方向のサービスリンクと呼ばれる。
【0070】
図2A及び
図2Bは、ある実施例による、安価なアンテナ(又はユーザ端末)素子を用いて形成される電子走査型アンテナアレイを用いて衛星及び地対地通信リンク(又は接続)を確立するように構成される様々なモジュール型アンテナシステムを含む衛星通信システム200a及び200bの例を示すブロック図を示している。
【0071】
まず、
図2Aの例を参照すると、衛星通信システム200aは、安価なアンテナ(又はユーザ端末)素子を用いて形成される電子走査型アンテナアレイを用いて衛星及び地対地通信リンク(又は接続)を確立するように構成される様々なモジュール型アンテナシステムを含んでいる。より具体的には、
図2Aの例は、都市間接続(例えば都市間リンク250)を提供するための衛星通信パネル212、222、232、5Gユーザ端末モジュールUTM214、UTM224、UTM234a、UTM234b、UT244、UTM214、224、234a、234b、244、254、及びWi-Fiユーザ要素215を含む様々なモジュール型アンテナシステムの利用を示している。
【0072】
図2Bは、特定の領域又は地域において接続を確立又は向上するために、インフラストラクチャ(例えば街灯柱)260が、本明細書で述べられるモジュール型電子走査型アレイアンテナシステムに適合され得る又は組み込まれ得る例を示している。示されているように、システム200bは、街灯柱260、ソーラパネル2616a及び268b、衛星通信(ユーザ端末パネルUTP262、5G UTP264、地対地通信266及び276、(ユーザ機器)UE280、固定式無線270、及びWi-Fi UT266を含んでいる。
【0073】
ある実施例においては、インフラストラクチャ(例えば街灯柱)260は、自立ユニットであり得る。例えば、インフラストラクチャ260は「プラグアンドプレイ」であり得る。これにより、設置後に、固定式無線270システム、例えば、ある町の近隣の家や学校及び範囲内の他の携帯ユーザ機器280に対する接続を提供するためにユニットを直ぐに作動させることができる。
【0074】
図3は、ある実施例による、複数のアンテナ(又はユーザ端末)素子310を用いて形成されるアンテナモジュール300のモジュール型アーキテクチャ例を示すブロック図を示している。より具体的には、
図3の例は、アンテナ(又はユーザ端末)素子310の構成要素例の分解図とともにアンテナモジュール300を示している。アンテナモジュール300は、
図1を参照して示され説明されたアンテナモジュールのいずれかであり得るが、別の構成も考えられる。さらに、アンテナ(又はユーザ端末)素子310及びアンテナ(又はユーザ端末)モジュール300は、本明細書では主に六角形状の要素とともに示されているが、他の形状の要素(例えば、三角形、四角形、円形など)も考えられることは理解できよう。さらなるアンテナ(又はユーザ端末)モジュール構成の例が以下でより詳細に示され説明される。
【0075】
図3の例に示されているように、アンテナ(又はユーザ端末)モジュール300は、構造320上に又は構造320内に配置された複数のアンテナ(又はユーザ端末)素子310を含んでいる。アンテナ(又はユーザ端末)素子310は、アンテナモジュール300を形成するために構造320上に又は構造320内の様々な構成内に配置されていてもよい。さらなる構造の例が以下でより詳細に示され説明される。
【0076】
再び
図3を参照すると、それぞれのアンテナ(又はユーザ端末)素子310は、放射体(又はアンテナ)312及び能動回路314を含んでいる。能動回路314は、ダイ内に具現化され得るもので、例えば、増幅器、RF回路、デジタル-アナログ(D/A)変換器、アナログ-デジタル(A/D)変換器などの様々な構成要素を含み得る。
図3の例には示されていないが、このダイは、従来のアンテナ素子からのダイよりも大きい。実際、ある実施形態においては、ダイは、放射体(又はアンテナ)要素と同一の(又は類似の)占有面積を有している。本明細書で述べられているように、ダイを大きくすることで、従来のアンテナ素子のダイにおいては設計上及び寸法上の制限によりこれまで具現化されてこなかった様々な構成要素(例えば、RF回路、デジタル-アナログ(D/A)変換器、アナログ-デジタル(A/D)変換器など)の統合が容易になる。
【0077】
本明細書で述べられているように、従来から、放射体(又はアンテナ)312と能動回路314を連結するためには、少なくとも2つ、多くの場合、3つ以上の損失の大きい無線周波数(RF)遷移部が必要である。それぞれを上下に重ねた場合、これらの損失の大きいRF遷移部により全信号パワーの半分までの例えば3dBまでの信号劣化を生じる。本明細書で述べられる実施例は、放射体(又はアンテナ)312を能動回路314に埋め込むか、あるいは一体化してこれらの損失の大きいRF遷移部を低減するか、あるいはなくすようにしている。
【0078】
さらに、本明細書で述べられるアンテナ素子は、フェイズドアレイアンテナシステム用の従来のアンテナ素子に比べて、様々な構成要素を能動回路314に一体化している。例えば、本明細書で述べられるアンテナ素子は、RF回路、D/A変換器、及びA/D変換器を能動回路314に一体化している。また、従来のアンテナ素子の様々な構成要素(例えば移相器)はもはや必要なくなる.
【0079】
ある実施例においては、放射体(又はアンテナ)312及び能動回路314は、単一のダイ(例えばシリコンダイ)内に一体化されるか、あるいは埋め込まれ、損失の大きいRF遷移部をなくすために一緒にパッケージされる。本明細書では、単一のダイはアンテナオンチップ(AOC)要素と呼ばれる。AOC素子は、集積回路(IC)として実装され得る特定用途向け集積回路(ASIC)を含み得る。AOC素子例の様々な層及び構成要素が、以下でより詳細に示され説明される。
【0080】
ある実施例においては、アンテナ素子の構成要素をテープ・リールを介して取得可能としつつ、損失の大きい複数のRF遷移部を単一の損失の大きいRF遷移部に低減するために、放射体(又はアンテナ)312及び能動回路314は、密接に一体化されるが、単一のダイ(例えばシリコンダイ)上に載っていない。テープ・リールは、一般的に、表面実装素子(SMD)をポケット(又はキャリア)テープのそれぞれのポケットに充填することによりこれらの表面実装素子を実装するプロセスを意味する。例えば、ユニットは、通常、熱又は圧力によりキャリアテープ内でカバーテープによりシールされる。そして、取り扱いと輸送に便利になるようにキャリアテープをリールの周りに巻くことができる。リールは、最終的に顧客に発送される前はリールボックス内に収容されている。本明細書で述べられるように、テープ・リールを介して構成要素を取得できることにより、モジュールビーム走査型アンテナアレイシステム用のスケールでアンテナ素子を作成及び構築することができるようにするために増える構成要素のコストを低減することができる。
【0081】
さらに、放射体(又はアンテナ)312と能動回路314を単一のダイ上ではないが密接に一体化することで、放射体(又はアンテナ)312を印刷するために3次元(3D)印刷技術を用いることが容易になる。この一体化を図示する例が、以下でより詳細に示され説明される。
【0082】
図4は、ある実施例による、複数のアンテナモジュール300を用いて形成されるアンテナ(又はユーザ端末)パネル400のモジュール型アーキテクチャ例を示すブロック図を示している。より具体的には、
図4の例は、
図3の複数のアンテナモジュール300を用いて形成されるアンテナ(又はユーザ端末)パネル400を示している。アンテナ(又はユーザ端末)パネル400は、
図1を参照して示され説明されたアンテナパネル(例えば、衛星通信パネル112、114、116又は132)のいずれかであり得るが、別の構成も考えられる。さらに、アンテナモジュール300は、本明細書では主に六角形状の要素とともに示されているが、他の形状の要素、例えば、三角形、四角形、円形など、これらの組み合わせ又は変形例も含めて考えられることは理解できよう。
【0083】
開示されている実施形態の他の利点は、それぞれのユーザ端末モジュールを配置するために異なるユーザ端末要素(UTE)を選択できることである。多くのアンテナは共振デバイスであり、この共振デバイスは、比較的狭い周波数帯域で効率的に動作する。アンテナは、接続される無線システムと同一の周波数帯域に同調(整合)させる必要があり、そうでない場合には、受信及び/又は送信が阻害される。開示されている実施形態は、複数のUTEのそれぞれを複数の周波数域のうち1つ以上に同調させることを可能にする。ある実施形態においては、第1のUTM上のUTEにより第1の周波数域で通信される電波信号のスループット及び帯域幅を最大化するために、第1のUTM上のUTEのそれぞれが第1の周波数域に同調される。他の実施形態においては、第1のUTM上のUTEにより電波が通信される様々な周波数域を最大化するために、第1のUTM上のUTEのそれぞれは異なる周波数域に同調される。
【0084】
本明細書で述べられるように、アンテナ(ユーザ端末)パネルは、特定の用途に基づいて複数のアンテナモジュールから形成又は構成され得る。例えば、長距離にわたる通信を必要とする高性能商用・民生ビーム走査用途や高いレベルのスループット(又は帯域幅)を必要とする用途では、より大きなパネルが必要となる場合がある。有利なことに、これらのアンテナ(又はユーザ端末)パネルは、相互交換可能な構築ブロック、例えば、アンテナ(ユーザ端末)モジュール及び/又はアンテナ(ユーザ端末)素子を用いてモジュール式で構成することができるので、カスタム設計を必要としない。
【0085】
図5は、ある実施例による、ある用途のための衛星電波信号を送受信するためのシステム(ビーム走査型アンテナ)の例を示すブロック図を示している。図示されているように、衛星アンテナシステム500は、ユーザ端末(UT)モジュール506A、506Bから506N(Nは16に等しい)までを含む機械的シャーシ504を含んでいる。UTモジュールのそれぞれは、16個のデイジーチェーン接続されたUTEを含んでいる。これらは、UTE310の例であり、それぞれアンテナ312と能動回路314とを含んでいる。他の実施形態においては、例えば
図8B及び
図8Cに示されるように、16個よりも多くのUTEがデイジーチェーン接続される。UTEの能動回路によりなされる処理は、UTコントロール508により制御される。
【0086】
図示されるように、それぞれのコンバイナは4個のUTMから信号を受信するので、16個のUTMは、16個のアナログ信号を第1レベルのRFコンバイナ510A、510Bから510X(Xは4に等しい)に供給する。第2組み合わせレベルのRFコンバイナ512は、第1のレベルからの信号を結合する。他の実施形態においては、より多くのコンバイナ又はより少ないコンバイナが存在することは留意すべきである。また、コンバイナのレベル数は変化し得ることにも留意すべきである。換言すれば、
図5においては2つのレベルのコンバイナが示されているが、他の実施形態においては、より多くのレベル又はより少ないレベルが存在し得る。
【0087】
また、UTアンテナ516A、516Bから516Mまでが示されている。ここで、Mは256に等しく、Nは16に等しく、O及びUTMごとのUTEの数は16に等しい。
【0088】
動作中は、衛星アンテナシステム500は、パーソナルコンピュータ用途のために衛星通信を提供する。その場合には、衛星アンテナシステム500は、衛星通信パネル214を含むものとして示されている衛星210と通信する。
【0089】
ある実施形態においては、M個のUTEのM個のアンテナのそれぞれが、複数の異なる周波数域のうちの1つ以上に同調される。ある実施形態においては、UTモジュールのそれぞれのアンテナのそれぞれは同一である。図示されるように、それぞれのUTEのアンテナから受信された到来信号は、アナログ電圧であり、M個の能動回路のそれぞれは、アナログ電圧を有する出力信号を受信、処理、及び生成し、N個のUTMのそれぞれは、他のUTMからのアナログ信号と結合されるアナログ信号を生成する。受信された電波信号は、RFコンバイナ512からモデム(受信器)514に伝送され、受信器514は、これらの信号をTV又はインターネット受信器のようなデバイス516に供給する。
【0090】
図6は、ある実施例による、ある用途のために衛星と信号を通信するためにビーム走査型アンテナシステムにより行われる動作を示すプロセスフロー図を示している。図示されるように、プロセス600は602から開始する。604では、ビーム走査型アンテナシステムは、M個のアプリケーションアグノスティックUTE(ユーザ端末要素)を提供するものである。それぞれのUTEは、アンテナと能動回路を含んでいるため、動作604においてM個のアンテナとM個の能動回路が提供される。それぞれのアンテナは、入射衛星電波に応答して到来信号を生成するか、あるいは、1以上の衛星、1以上の地上ユニット、及びこれらの任意の組み合わせのような受信器に向かって送出信号を送信する。それぞれの能動回路は、到来信号と送出信号を処理する。
【0091】
604で提供されるUTEは、過去の既存の設計に基づいているものである限り、アプリケーションアグノスティックであり、付加的なNREを伴わないものである。アプリケーションアグノスティックなUTEの使用は、低コストアンテナシステムを実現する手助けとなり、これは開示されている実施形態の利点である。例えば、数百万のUTEをまとめて製造することができ、低コストUTEの供給を構築することができる。
【0092】
動作604において提供するM個のUTEを選択する際に、システムの用途を考慮する場合がある。上述したように、アンテナは、接続する無線システムと同一の周波数に同調(整合)され、そうでない場合には、受信及び/又は送信が阻害される。このため、例えば、Kuバンド又はKaバンドの衛星信号に接続するために使用される場合には、Ku-Ka周波数帯域に同調されたアンテナを使用することができる。
【0093】
動作606においては、システムは、M個の能動回路により行われる処理を制御するために制御回路を使用する。例えば、
図5を参照すると、ユーザ端末コントロール508は、N個のユーザ端末モジュール(UTM)に連結されており、それぞれのUTM上の16個の能動回路により行われる処理を制御する。同様に、
図8Aを参照すると、コントローラボード808は、4つすべてのUTM806A~806Dに連結されており、それぞれのUTM上の16個の能動回路により行われる処理を制御する。
【0094】
ある実施形態は、制御信号を制御回路から能動回路のそれぞれにルーティングするのではなく、能動回路のデイジーチェーンに沿ってデジタル制御信号を送ることによりルーティングするために必要なコストと面積を削減する。特に、ある実施形態においては、デジタル制御信号、クロック、及び電力は、
図7のバッファ710及び712のような入力バッファ及び出力バッファを用いてモジュール間を通過する。そのようなシナリオにおいては、デイジーチェーンの概念を利用してデイジーチェーン内の複数の能動回路を制御するためのコントローラ回路を1つだけ用いることによりシステムコストをさらに削減することができる。
【0095】
そのような一部のシナリオにおいては、デイジーチェーンは、デジタル制御信号、電力、及びクロック信号を通過させる。
図5のコンバイナ510A~510Xのようなコンバイナによりアナログ処理が行われる。ある実施形態においては、UTMのそれぞれからの信号は、デイジーチェーンを介してコントローラに戻り、コントローラは、システムの健全性(すなわち状態信号)を計量するために信号をモニタリングする。
【0096】
図8Bを参照すると、例えば、コントローラボード808は、第1のUTM806A-1に入力を供給するため及び第4のUTM806A-4から出力を受信するためにこれらに連結されている。同様に、
図8Cにおいては、コントローラボード808は、4つの積層UTMのうちの第1のUTM806A-1に入力を供給するため及び4つの積層UTMのうちの第4のUTM806A-4から出力を受信するためにこれらに接続されている。そのような実施形態においては、64個の能動回路のデイジーチェーンが信号処理を行い、制御をそのデイジーチェーンに沿ってルーティングすることができる。
【0097】
UTMのデイジーチェーン化は、制限のないシステムのスケーリングと拡張を可能にすることに留意すべきである。例えば、
図8Cを参照すると、64個の能動回路からなる既存のデイジーチェーンに付加的なUTMを追加してもよい。それぞれのUTMの入力及び出力にバッファがあることにより、バッファが、それぞれのUTMのデイジーチェーン化された能動回路内で起こり得る信号劣化を補正するので、そのようなスケーリングが可能になる。
【0098】
動作608においては、アンテナシステムは、複数のN個のユーザ端末モジュール(UTM)上の複数のM個の能動回路を配置する。N個のUTMのそれぞれは、M個の能動回路のうちのO個からなるデイジーチェーンを含み、それぞれのUTMは、デイジーチェーン内に生じた振幅劣化を補正するためにP個の能動回路ごとの後に置かれるバッファをさらに含んでいる。
【0099】
ある実施形態においては、N個のUTMのそれぞれは、様々な異なる周波数域に同調されたUTEを含み得る。他の実施形態においては、N個のUTMのうち1つ以上は、同一又は類似の周波数に同調されたアンテナを含んでいる。610では、システムは、アンテナ面積及び対応するスループット及びある用途に利用可能な帯域幅が調整可能及びスケーリング可能となるようにMを調整する。これは、アンテナ面積、スループット、及び帯域幅を増加させるためにより多くのUTEを追加することを含み得る。
【0100】
図7は、ある実施例による、ユーザ端末モジュール、ユーザ端末制御モジュール、及びデジタル信号バッファの例を示すブロック図を示している。図示されているように、システム700は、UTコントロール508と
図5のUTM506A~506Nのうち1つの例である。ここで、UTM706は、16個のUTE702A~702Pを含んでいる。UTM706は、バッファ710から到来信号を受信し、処理される信号をUTEのデイジーチェーンを通して供給し、送出信号をバッファ712を通して供給するように構成される。バッファ710及び712は、コントローラボード708に接続されており、コントローラボード708は、パーソナルコンピュータ714のアプリケーションにサービスを提供する。ある実施形態においては、コントローラボード708は、バッファ712から受信された信号の1以上の信号特性をモニタリングすることにより、システムの健全性をモニタリングする。
【0101】
図8A~
図8Cは、ある実施例による、様々な構成において相互接続されるユーザ端末モジュールを示すブロック図を示している。開示されているアンテナシステムにおいて用いられるUTMを目標周波数域、目標偏波、及び目標ビーム方向をはじめとする様々な基準によって選択できることは留意すべきである。例えば、上述したように、Ku-Ka周波数帯域のような特定の周波数域に同調されたUTMを選択することができる。さらに、受信信号の偏波(水平偏波、垂直偏波、左円偏波、又は右円偏波)によりアンテナを選択することができる。
【0102】
図8Aは、ある実施例による、複数のユーザ端末モジュールとユーザ端末制御モジュールの例を示すブロック図を示している。ここで、アンテナシステム800は、4個のUTM806A、806B、806C、806Dを含んでおり、これらのUTMのそれぞれは、それぞれのモジュール上の16個のUTEからなるデイジーチェーンを含んでいる。ここで、4個のUTM(806A、806B、806C、806D)のそれぞれは、コントローラボード808への別個の接続を有しており、これがパーソナルコンピュータ812のアプリケーションにサービスを提供する。
【0103】
図8Bは、ある実施例による、複数のユーザ端末モジュールとユーザ端末制御モジュールの例を示すブロック図を示している。ここで、アンテナシステム800は、
図8CのUTM806A1-4の例である4個のUTM806A1-4を含んでいる。
図8Cは、64個のディープデイジーチェーンのそれぞれを暗黙的に示しており、UTM806A1-4の64個のディープデイジーチェーンが暗黙的に示されている。
図8Cに関して述べられているように、任意の数のUTMが直列にデイジーチェーン接続され得る。付加的なUTMをデイジーチェーンに挿入することによりシステム800のスケーリングを行うことができる。
【0104】
図8Cは、ある実施例によるアンテナシステムの例を示すブロック図を示している。ここで、アンテナシステム800は、16個のUTMを含んでおり、4個のモジュールがそれぞれのデイジーチェーン806Al-4、806Bl-4、806C1-4、及び806D1-4内にある。デイジーチェーンのそれぞれは、デイジーチェーン内のそれぞれのモジュールから16個、合計64個のUTEから構成される。例えば、第1のデイジーチェーンは、モジュール806A-1、806A-2、806A-3及び806-A4を含んでいる。モジュール806A-1は、デイジーチェーン内でコントローラボード808に接続する必要のある唯一のモジュールである。モジュール806A-1の出力がモジュール806A-2の入力に接続される。モジュール806A-2の出力がモジュール806A-3の入力に接続される。モジュール806A-3の出力がモジュール806A-4の入力に接続される。モジュール806A-4の出力は、さらなるモニタリングのためにコントローラボード808に接続され得る。モジュール806A1-4、806Bl-4、806C1-4、及び806D1-4は、重ねられた構成で
図8Cに示されているが、使用の際には、モジュールは、信号を送受信できるようになり得るように、また、他のモジュールによって遮られないように重ならないように配置される。
【0105】
図8Aのシステムと同様に、UTMは、コントローラボード808に対する4つの接続を有している。
図8Aのシステムとは異なり、デイジーチェーンは64個のUTEからなる。複数のUTMをデイジーチェーン接続することにより、4倍の個数のUTEをコントローラボード808により制御することができ、このため、システムの1個のUTE当たりのコストを低減することができる。開示された実施形態によれば、任意の数のUTMが直列にデイジーチェーン接続され得る。付加的なUTMをデイジーチェーンに挿入することによりシステム800のスケーリングを行うことができる。
【0106】
図9は、ある実施例による、ビーム走査型アンテナシャーシの正面及び側面図、平面図、及び斜視図を示している。設計
図900に示されているように、正面図においては、アンテナPCB902、モジュールPCB906、及びUT制御PCB908を含む3つのプリント回路基板(PCB)が重ねられている。また、UTアンテナ素子及び能動回路要素は、本明細書で述べるような動作を行うように構成される。アンテナPCB902及びモジュールPCB906は、
図10に関してさらに図示され述べられるように重ねられている。
【0107】
図10は、ある実施例による、ビーム走査型アンテナにおいて使用されるコントローラボードに接続されるモジュールプリント回路基板の上に搭載されるアンテナプリント回路基板の断面図を示している。図示されるように、断面
図1000は、アンテナPCB1002、モジュールPCB1006、及び制御PCB1008を含んでいる。また、アンテナPCB1002上にUTアンテナ素子が置かれている。同様に、制御PCB1008上の制御回路に制御されるように、モジュールPCB1006上に能動回路要素が置かれ、例えば、
図6に関して述べられたように、本明細書で述べられているような動作を行うように構成される。
【0108】
図11は、ある実施例による、ビーム走査型アンテナにおいて使用されるモジュールボード上に搭載されるアンテナボードの平面及び斜視図を示している。アセンブリ1100は、アンテナボード1102が見えている平面図と、アンテナボード1102及びモジュールボード1106の両方が見えている斜視図の両方において示されている。
【0109】
図12は、ある実施形態による、ビーム走査型アレイシステムを組み立てるために使用される標準的な構成要素及びコネクタを示している。示されているように、構成要素1200は、アンテナ素子1205、SMPコネクタ1210、プリント回路基板1215及びコネクタ1220を含んでいる。なお、実演製品を作るために使用される部品は、最小限の費用で入手できると考えられる。
【0110】
図13A及び
図13Bは、ある実施例による、アンテナ(又はユーザ端末)素子の例を示すブロック図を示している。より具体的には、
図13Aの例は、(例えばフェイズドアレイアンテナシステム用の)アンテナ素子1310のAOC素子1360への遷移部を示している。これにより、放射体は、能動回路を用いてダイ1364中に埋め込まれる。そして、
図13Bは、AOC素子1360のより詳細な図を示している。本明細書で述べられるように、AOC素子1360のダイ1364中の能動回路に放射体を埋め込むか、あるいは組み込むことにより、放射体(又はアンテナ)とアンテナ素子1310内の能動回路とを連結する際に生じる損失の大きいRF遷移部がなくなる。
【0111】
図13Aの例に示されるように、アンテナ素子1310は、アンテナパッケージ1312内に放射体(又はアンテナ)1314を含んでいる。3つの損失の大きいRF遷移部1315a~1315cは、放射体(又はアンテナ)1314をRF(又は能動回路)回路1350に連結している。図示はされていないが、RF(又は能動回路)回路1350は、それぞれのアンテナ素子1310に対する増幅器及び移相器を含んでいる。増幅器は、受信方向RXにおける低雑音増幅器(LNA)又は送信方向TXにおけるパワー増幅器(PA)であり得る。遷移部1345は、例えば、アンテナ素子により受信されたRF信号1302を結合するために、あるいは、RF信号1302の送信の前の位相及び増幅のために、RF(又は能動回路)回路1350をベースボード1320に連結する。
【0112】
図13Aの例には示されていないが、ベースボード1320は、その上に組み上げられた数多くのアンテナ素子1310を含み得る。RF(又は能動回路)回路1350が、1以上のダイ内に具現化され、ベースボード1320上に個々に実装され、組み立てられ得る。さらに、デジタル-アナログ及びアナログ-デジタル(DAC/ADC)変換器1340及びデジタルビーム形成(DBF)回路1330が、1以上のダイ内に具現化され、ベースボード1320上に個々に実装され、組み立てられ得る。
【0113】
本明細書で述べられているように、ベースボード1320は、例えば10~40層の多層ベースボードである。衛星通信端末の用途では、これらの層は、数センチメートル(cm)の厚さ(例えば2~3cm)で、1メートル(m)以上の長さ及び/又は幅を有している。これらの層は、デジタルルーティング、RFパワー分配などを含んでいる。重要なことに、ベースボード1320は、RF信号を取り扱うことができなければならないため、極めて高価なものとなり得る。
【0114】
さらに、アンテナの設計は、典型的には制限的で非効率なものである。例えば、ルーティングする多くの層でひしめいているので、ベースボード内の遷移部を実現するためのスペースが限られている。さらに、アンテナは、典型的には、現在の設計を用いてスケールで作製することができない。実際、現在のフェイズドアレイアンテナシステムのカムタマイズされた性質は、本来的に、システムの費用を増加させるとともにその全体の効率を低下させる、カスタマイズされたアンテナ設計を必要とする。
【0115】
次に、アンテナオンチップ(AOC)素子を参照すると、AOC素子1360は、AOCパッケージ1362内に具現化され、ベースボード1370上に組み立てられているように示されている。
図13Aの例に示されているように、AOC素子1360は、ダイ1364をベースボード1370に連結する遷移部1355を有するAOCパッケージ1362内にダイ1364を含んでいる。上述したように、放射体(又はアンテナ)及び能動回路はダイ1364内で一体化されているので、これらの構成要素を連結するために必要とされる損失の大きいRF遷移部がない。AOCパッケージ1362は、ベースボード1370上に組み立てられている。
【0116】
図13Bは、ある実施例による、AOC素子1360の分解(又はより詳細な)図を示すブロック図を示している。より具体的には、
図13Bの例に示されているように、放射部1366aと能動回路部1366bの両方がダイ1364内に具現化されるか含められている。
【0117】
放射部1366aは、ダイ1364内の任意の数の構成の中に配置(例えば、堆積又は位置決め)可能な放射体(又はアンテナ)を含んでいる。ある実施例においては、放射部1366aは、ダイ1364の側壁及び上壁のうち1つ以上の壁に堆積され得る。放射部1366aは、
図2の放射体212であり得るが、別の構成も考えられる。
【0118】
能動回路部1366bは、例えば、増幅器、RF回路、デジタル-アナログ(D/A)変換器、アナログ-デジタル(A/D)変換器などの様々な構成要素を含んでいる。本明細書で説明されているように、ダイ1364は、従来のダイ(図示せず)よりも十分に大きなサイズ(又は占有面積)を有している。このより大きなダイは、従来のダイ上の能動回路内には設計及び寸法上の制限により以前は含められていなかった様々な構成要素(例えば、RF回路、デジタル-アナログ(D/A)変換器、アナログ-デジタル(A/D)変換器など)を一体化することを容易にするものである。さらに、ダイ1364内にD/A及びA/D変換器を含めることができることにより、従来のアナログだけのパッケージへのデジタル統合化が容易になる。
【0119】
ある実施例においては、AOC素子1360内で放射部1366aと能動回路部1366bとを連結するためにグランド層(図示せず)内の1以上のスロットが使用される。これに代えて、又はこれに加えて、放射部1366aと能動回路部1366bとは、ダイ1364上の様々なモジュール間で共有される1以上の伝送線路部を用いて連結され得る。この種の連結(例えば、共有伝送線路部を介した連結)によって無視できる損失(例えば0.05dB以下)が生じることは理解できよう。
【0120】
ある実施例においては、放射部1366aと能動回路部1366bは間接放射連結を介して連結され得る。
【0121】
図14は、ある実施例による、ベースボード420の第1の側で組み立てられる複数のAOC素子1360を用いて形成されるアンテナ(又はユーザ端末)モジュール1400の例を示すブロック図を示している。より具体的には、
図14の例は、複数のAOC素子1360を用いて形成されるアンテナ(又はユーザ端末)モジュール1400を示している。これにより、放射体は、ダイ1364内の能動回路に埋め込まれる。本明細書で述べられるように、AOC素子1360のダイ1364内の能動回路に放射体を埋め込むか、あるいは組み込むことにより、放射体と能動回路とを連結する際に典型的に生じる損失の大きいRF遷移部がなくなる。
【0122】
図14の例に示されるように、デジタルビーム形成(DBF)回路、すなわちDBF回路1380は、ダイ上に具現化され、実装される。DBF回路1380は、ICとして実装可能なASICを含み得る。DBF回路1380は、ベースボード1370の反対側に組み立てられる。単一のDBF回路1380が示されている。しかしながら、モジュール式走査型アンテナアレイシステムのサイズ及び能力に応じて、複数のDBF回路1380をベースボード1370の反対側に組み立てることができることは理解できよう。
【0123】
上述したように、ダイ1364は、従来のダイよりも十分に大きなサイズを有しているので、AOC素子1360は、RF回路並びにD/A及びA/D変換器をダイ1364に一体化することができる。
図14の例に示されているように、RF回路並びにD/A及びA/D変換器をダイ又はパッケージに一体化することにより、従来のベースボードの複雑さが低減される。例えば、ベースボード1370は、広帯域RF信号を取り扱ったりルーティングしたりする必要がなくなる。実際、ベースボード1370は、低周波数デジタル信号又は狭帯域高周波数LO及びクロック信号のいずれかを取り扱う必要があるだけである。有利なことに、これらの変化により、ベースボードの全体のコストが劇的に減少する。
【0124】
これらの改善により、それぞれのAOC素子1360を大量に作製することができるので、アンテナ(又はユーザ端末)モジュール1400の全体のコストが劇的に減少する。さらに、ベースボード1370の機能が減少しており、従来のベースボードに比べて、複雑さも減少し(例えば、広帯域RF信号及びより少ない/細い層を取り扱う又はルーティングする必要がなくなる)、製造するのがずっと安価になる。また、層がより少なく/細くなることにより、設計上、アンテナ(又はユーザ端末)モジュールがより平坦かつ薄くなる。
【0125】
図15は、ある実施例による、高性能モジュール式電子走査型アレイアンテナシステムのための電気的構成の例示概念図を示している。より具体的には、
図15の例は、複数のAOC素子1360がDBF回路1540に電気的に連結されている多ビーム位相電子走査型アレイアンテナシステムの例を示している。また、ユーザ端末要素1510A,N、LNA(低雑音増幅器)/PA(パワー増幅器)1514a,nとともに、アナログ-デジタル及びデジタル-アナログ変換器1516A,N、アンテナ素子1520、及びコンバイナ1544が示されている。
【0126】
図15の例に示されているように、DBF回路1540は、時間遅延1542を用いて、フェイズドアレイアンテナシステムの従来の移相器とは対照的にビームステアリングを行う。アンテナ(又はユーザ端末)パネル上でビームステアリングを図示している例が、
図15を参照してより詳細に示され、説明される。
【0127】
図16A及び
図16Bは、ある実施例による、それぞれ3D印刷された金属のみのアンテナ1618a及び3D印刷された金属のみのアンテナ1618bを有するアンテナ素子1610a及びアンテナ素子1610bの例を示すブロック図を示している。より具体的には、
図16A及び
図16Bの例は、それぞれ単一の損失の大きいRF遷移部1616a及び1616bに対して損失の大きい遷移部1615a及び1615bを小さくするために、単一のダイ(例えばシリコンダイ)上ではないが、ダイ内に具現化された放射体(又はアンテナ)及び能動回路が密接に一体化されている例を示している。
【0128】
まず、
図16Aの例を参照すると、アンテナ素子1610aは、3D印刷された金属のみのアンテナ1618aがパッケージ1612a上に直接3D印刷されている例を示している。実際、
図16Aの例に示されているように、アンテナ素子1610aは、パッケージ1612a内にダイ1614を含んでいる。3D印刷された金属のみのアンテナ1618aは、パッケージ1612a上に直接3D印刷され、単一の損失の大きいRF遷移部1616aは、アンテナをダイ1614内に具現化された能動回路に連結する。
【0129】
図16Bの例は、
図16Aの例に類似しているが、3D印刷される金属のみのアンテナ1618bをパッケージ1612bに直接3D印刷するのではなく、3D印刷される金属のみのアンテナ1618bが3D印刷された後に、パッケージ1612bが3D印刷された金属のみのアンテナ1618b上で組み立てられる。例えば、3D印刷される金属のみのアンテナ1618bは、別個の固定具内で独立して3D印刷され、パッケージ1612bが、その後、3D印刷された金属のみのアンテナ1618b上に表面実装され得る。
【0130】
先に述べたように、3D印刷に加えて、同一のダイではないが、ダイ内に具現化される放射体(又はアンテナ)と能動回路とを密接に一体化することにより、テープ・リール技術の利用も容易になる。「テープ・リール」は、一般的に、表面実装素子(SMD)をポケット(又はキャリア)テープのそれぞれのポケットに充填することによりこれらの表面実装素子を実装するプロセスを意味する。例えば、ユニットは、通常、熱又は圧力によりキャリアテープ内でカバーテープによりシールされる。そして、取り扱いと輸送に便利になるようにキャリアテープをリールの周りに巻くことができる。リールは、最終的に顧客に発送される前はリールボックス内に収容されている。本明細書で述べられるように、テープ・リールを介して構成要素を取得できることにより、モジュールビーム走査型アンテナアレイシステム用のスケールでアンテナ素子を作成及び構築することができるようにするために増える構成要素のコストを低減することができる。
【0131】
図17は、ある実施例による、金属のみのパッケージ及び3D印刷アンテナを有するアンテナ素子1710の例を示すブロック図を示している。より具体的には、
図17の例は、アンテナ1718をダイ1714内で具現化される能動回路に連結する単一のRF遷移部1716を有している。有利なことに、アンテナ素子1710が誘電体を含んでいない(例えば、金属パッケージ1712に対する遷移部1715は金属であり、信号は金属を通じてのみルーティングされる)ため、単一のRF遷移部1716の結果として生じるRF遷移部の損失がない。
【0132】
有利なことに、金属パッケージ1712は、標準的な実装と比較すると、熱伝導性がより高く、より多くのパワーを扱うことができ、より効率的な放熱特性を呈する。換言すると、例えば、ダイ1714の動作中に生じる熱を金属パッケージ1712及び金属アンテナ1718に効率的に放出することができる。ある実施例においては、3D印刷法を用いてダイ1714を実装することができる。また、金属パッケージ1712は、アンテナの設計に柔軟性を提供するものであり、考えられる最も効率的なアンテナを設計することが可能になる。
【0133】
ある実施例においては、リールが来ると、製造プロセスが、3D印刷製造プロセスを用いて金属のみのアンテナを大量に高速でダイ上に印刷する。その後、ベースボード又はプリント回路基板(PCB)上での最終的な組立のために、アセンブリパッド(信号及びグランド)がダイの反対側に追加される。
【0134】
図18は、ある実施例による、アンテナ(又はユーザ端末)モジュールを形成するために使用される例示構造1800を示している。より具体的には、
図18の例は、7個のアンテナ(又はユーザ端末)素子1810が配置された構造を示している。例示構造1800は
図3の構造320であり得るが、別の構成も考えられる。
図18の例には示されていないが、高性能走査型アレイアンテナシステムを構成するために、例示構造のうち1つ以上をベースボードに固定することができる。
【0135】
図19は、ある実施例による、アンテナ(又はユーザ端末)モジュールを形成するために使用される例示構造1900を示している。例示構造1900は、
図18の例示構造1800と似ているが、アンテナ(又はユーザ端末)素子1918を適切な位置によりしっかりと保持するように設計されている。さらに、
図19の例に示されているように、例示構造1900は、アンテナ(又はユーザ端末)素子1910で完全に占められている。
【0136】
図20A~
図20Cは、ある実施例による、例示アンテナ(又はユーザ端末)モジュール構成を示している。より具体的には、
図20Aの例は、77パーセントの充填効率を示している。すなわち、UTE非占有領域は2個の六角形状UTE310に等しく、UTE占有領域には7個の六角形状UTEが充填されている。
【0137】
図20Bは、7個のアンテナ(又はユーザ端末)素子を有する例示自己反復構成を示している。UTE位相を互い違いにして交差偏波をなくすために、それぞれのUTE310は、隣接するUTEに対して順次回転する。
【0138】
図20Cは、75パーセントの充填効率で12個の要素を備える自己反復構成の他の例を示している。UTE非占有領域は4個の六角形状UTE310に等しく、UTE占有領域には12個の六角形状UTEが充填されている。
【0139】
図21A~
図21Cは、ある実施例による、アンテナ(又はユーザ端末)モジュール構成の追加の例を示している。より具体的には、
図21A~
図21Cの例は、三角形状のアンテナ(又はユーザ端末)素子310から形成される例示アンテナ(又はユーザ端末)モジュール構成を示している。
図21Aは、1個の三角形状アンテナ(又はユーザ端末)素子を示している。
図21Bは、100パーセント充填効率を有する6個の三角形状アンテナ(又はユーザ端末)素子を備えた例示アンテナ(又はユーザ端末)モジュール構成を示している。同様に、
図21Cも、100パーセント充填効率を有する24個の三角形状アンテナ(又はユーザ端末)素子を備えた例示アンテナ(又はユーザ端末)モジュール構成を示している。
【0140】
図22は、ある実施例による、アンテナ(又はユーザ端末)モジュール構成の他の例を示している。より具体的には、
図22の例は、直角三角形状アンテナ(又はユーザ端末)素子310から形成される例示アンテナ(又はユーザ端末)モジュール構成を示している。ある実施形態においては、ユーザ端末モジュール上で高い充填効率を促進するために2以上のアンテナ構成を用いてもよいことは留意すべきである。
【0141】
図23は、ある実施例による、高性能高帯域幅モジュール式電子走査型アレイアンテナシステムのためのビームステアリング回路を示す電気的構成2300の例示概念図を示している。より具体的には、
図23の電気的構成2300は、大きなパネル上の使用又は合成開口使用のためのビームステアリング回路の送信側を示している。
【0142】
本明細書で述べられているように、電気的構成2300は、生成又は受信されるアナログ信号がいくつかのナイキストバンドのうちの1つに見つけられ得るアンダーサンプリングデータを用いた場合に特に有用である。
【0143】
ある実施例においては、例えば、クロックサンプルレートが、注目するアナログ周波数よりも低くなり得る場合には、アナログ信号そのもの上のアナログ移相器に代えて、クロック上のアナログ移相器が使用され得る。これにより、生成又は受信されている周波数に関わらず、アナログ信号の位相制御の微調整が可能となる。ある実施例において、例えば、フェイズドアレイシステムが非常に大きくて一部のアンテナ素子が1クロックサイクルを超えて遅延してしまう場合には、クロック上のアナログ移相器を利用することができない。これに代えて、本明細書で述べられているように、長さ調整可能なFIFOを介して全サイクル分だけデジタルデータを遅延させることができる。この遅延は、アンテナ素子又はモジュールレベルで生じ得るものであり、微調整クロック位相ステアリングに関連して用いることができる粗い調整を提供するものである。このように、要素のアナログデータを1度以下の分解能で360度を十分に超える範囲で任意の位相だけずらすことができる。そのような能力は、高帯域幅及び大アンテナ開口の状況において有利となり得る。
【0144】
図24は、ある実施例による、リアルタイム画像撮影用途のための対象範囲及び速度を改善するためのモジュール型衛星ユーザ端末アンテナシステムから構成される複数の地上ユーザ端末を用いた例を示している。
【0145】
今日、画像撮影は主に衛星のLEOコンステレーションを通じてなされている。しかしながら、画像撮影の対象範囲は、典型的には、どれだけ多くの衛星が含まれているかに依存しており、衛星は、地球の異なる部分をカバーするのに数分から数時間待つ必要がある。すなわち、衛星2410は、地球上の特定の経路を横断し、取得画像を地球に送り返すことできるようになる前に、地上端末2420(例えば、固定ビーム皿形アンテナソリューション又はゲートウェイ)と通信を確立できるまで待つ必要がある。上述したように、典型的には、特定の経路に沿って1個から5個の地上端末2420が存在し、したがって、画像処理にかなりの待ち時間が生じる。
【0146】
本明細書で述べられているように、多くの低コストビーム形成端末を用いて、リアルタイムの画像取得又はほぼリアルタイムの画像取得を容易にするために数少ない高価な固定ビーム皿形アンテナソリューションを置換することができる。
【0147】
図25は、ある実施例による、複数のモジュール型衛星ユーザ端末アンテナシステムから構成される合成開口地上ユーザ端末の例を示している。
【0148】
高品質な画像を取得するためには、衛星は、極めて大きなアンテナサイズを有する必要がある。衛星は、典型的には、合成開口レーダ(SAR)を実施することによりこれを達成している。例えば、小さな衛星は、移動しているときに画像を取得し、その後、大きな開口であったかのようにデータを再統合する。そして、衛星は、非常に大きなファイルを持っており、これを地上で早く受信するためには、極めて大きな地上端末(数メートルの大きさ)が必要となる。例えば、数百万ドルの単位で費用がかかる大型皿形アンテナがこの目的のために使用されることが多い。
【0149】
図25の例は、データを集合的に受信して結合して総合的に大きな地上端末を効果的に作る、数メートル又は任意の距離離れた多くのユーザ端末から構成される合成開口地上ユーザ端末を示している。この構成を利用することにより、ギガバイトのデータを数秒で受信することができ、衛星で取得された画像のライブビデオストリームさえ可能である。
【0150】
あるいは、ある実施例においては、(例えば乗物上の)単一の移動端末が動き回って総合的に大きな端末を作ることができる。
【0151】
当業者により理解されるように、本発明の態様は、システム、方法、又はコンピュータプログラム製品として具現化され得る。したがって、本発明の態様は、完全にハードウェアの実施形態、完全にソフトウェアの実施形態(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)、又はソフトウェアとハードウェアとの組み合わせた実施形態の形を取り得る。これらすべては、本明細書では、概して、「回路」、「モジュール」又は「システム」と呼ばれることがある。さらに、本発明の態様は、具現化されるコンピュータ読取可能なコードを有する1以上のコンピュータ読取可能媒体において具現化されるコンピュータプログラム製品の形を取り得る。
【0152】
ここに含まれる説明及び図は、最良の形態を製造及び使用する方法を当業者に教示するために特定の実施形態を示すものである。発明の原理を説明するために、一部の従来の太陽は簡略又は省略されている。当業者であれば、これらの実施形態から本開示の範囲内に属する変形例を考えられるであろう。また、当業者であれば、上述した特徴を様々な方法で組み合わせて複数の実施形態を形成し得ることを理解するであろう。結果として、本発明は、上記で述べられた特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲及びその均等物によってのみ特定されるものである。