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  • 特許-数値制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】数値制御装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/416 20060101AFI20240814BHJP
   B23Q 15/00 20060101ALI20240814BHJP
   G05B 19/4093 20060101ALI20240814BHJP
   B23B 41/00 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
G05B19/416 E
B23Q15/00 303B
G05B19/4093 J
B23B41/00 J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022545651
(86)(22)【出願日】2021-08-25
(86)【国際出願番号】 JP2021031074
(87)【国際公開番号】W WO2022045162
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2020145552
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】上西 大輔
(72)【発明者】
【氏名】小山田 知弘
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-187799(JP,A)
【文献】特開昭64-027838(JP,A)
【文献】国際公開第2009/001681(WO,A1)
【文献】特開2000-343308(JP,A)
【文献】特開昭62-246408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18 - 19/416
G05B 19/42 - 19/46
B23Q 15/00 - 15/28
B23B 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械の数値制御装置であって、
工具およびワークの前記工具の長手軸に沿う深さ方向の相対移動によって前記ワークに穴をあけるための加工プログラムを記憶する記憶部と、
前記加工プログラムに基づいて前記工具および前記ワークの相対移動を制御し、前記工具を前記ワークに対して復帰点から穴底点まで前記深さ方向に移動させる制御部とを備え、
前記復帰点は、前記工具によって穴あけが開始されるワーク面から前記深さ方向に退避した位置であり、
前記加工プログラムが、前記ワーク面の前記深さ方向の位置であるワーク高さ点の指令を含み、
前記制御部が、
前記復帰点から該復帰点と前記ワーク高さ点との間の途中位置まで切削送り速度よりも速い早送り速度で前記ワークに対して前記工具を前記深さ方向に移動させ、
前記ワークに対する前記工具の前記深さ方向の相対速度を前記途中位置において前記早送り速度から前記切削送り速度に変化させ、
前記途中位置は、前記工具が前記ワーク高さ点に到達するまでに該工具の位置決めがなされるように、前記工作機械の機械制御の応答性に応じて高さを調整可能である数値制御装置。
【請求項2】
前記ワーク高さ点は前記数値制御装置に記憶された数値である請求項1に記載の数値制御装置。
【請求項3】
前記加工プログラムが、位置決め動作、穴あけ動作および引き抜き動作を含む固定サイクルを前記工作機械に複数回実行させ、
前記位置決め動作が、前記工具および前記ワークの前記深さ方向に交差する方向の相対移動によって前記ワークの穴あけ位置を前記工具に対して位置決めする動作であり、
前記穴あけ動作が、前記工具の前記復帰点から前記穴底点までの前記深さ方向の移動によって前記穴あけ位置に穴をあける動作であり、
前記引き抜き動作が、前記穴底点から前記復帰点までの前記工具の前記深さ方向の移動によって前記穴から前記工具を引き抜く動作であり、
前記制御部が、
前記位置決め動作の終了前に前記穴あけ動作を開始することによって、前記復帰点から前記ワーク高さ点までの間において前記工具を第1曲線経路に沿って相対移動させ、
前記引き抜き動作の終了前に次の固定サイクルの前記位置決め動作を開始することによって、前記ワーク高さ点から前記復帰点までの間において前記工具を第2曲線経路に沿って相対移動させる、請求項1または請求項2に記載の数値制御装置。
【請求項4】
前記制御部が、前記深さ方向に前記工具を複数回往復させ所定量ずつ前記穴底点まで穴をあけるステップ加工において、前記ワーク高さ点までまたは前記復帰点と前記ワーク高さ点との間の高さまで前記工具を退避させる、請求項1から請求項3のいずれかに記載の数値制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、数値制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークの穴あけ加工において、固定サイクルを繰り返す加工方法が用いられている(例えば、特許文献1および2参照。)。特許文献1および2では、高速な穴あけ加工を実現するため、ワークに対する工具の相対移動の経路および速度を最適化し非切削時間の短縮を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平09-120310号公報
【文献】特開2017-004300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1において、工具は、ワーク面の上方の加工開始点まで早送りで移動し、加工開始点から穴底まで切削送りで移動するが、非切削時間のさらなる短縮のために、工具の動作のさらなる最適化の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、工作機械の数値制御装置であって、工具およびワークの前記工具の長手軸に沿う深さ方向の相対移動によって前記ワークに穴をあけるための加工プログラムを記憶する記憶部と、前記加工プログラムに基づいて前記工具および前記ワークの相対移動を制御し、前記工具を前記ワークに対して復帰点から穴底点まで前記深さ方向に移動させる制御部とを備え、前記復帰点は、前記工具によって穴あけが開始されるワーク面から前記深さ方向に退避した位置であり、前記加工プログラムが、前記ワーク面の前記深さ方向の位置であるワーク高さ点の指令を含み、前記制御部が、前記復帰点から該復帰点と前記ワーク高さ点との間の途中位置まで切削送り速度よりも速い早送り速度で前記ワークに対して前記工具を前記深さ方向に移動させ、前記ワークに対する前記工具の前記深さ方向の相対速度を前記途中位置において前記早送り速度から前記切削送り速度に変化させ、前記途中位置は、前記工具が前記ワーク高さ点に到達するまでに該工具の位置決めがなされるように、前記工作機械の機械制御の応答性に応じて高さを調整可能である数値制御装置である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】一実施形態に係る工作機械の構成図である。
図2】穴あけ用の固定サイクルプログラムの一例を示す図である。
図3】穴あけ用の固定サイクルによる穴あけ加工の一例を説明する図である。
図4】穴あけ用の固定サイクルプログラムの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、一実施形態に係る数値制御装置について図面を参照して説明する。
図1に示されるように、数値制御装置1は、工具2によってワーク4を加工する工作機械10の数値制御装置である。
工作機械10は、工具2を保持する主軸3と、ワーク4を保持するテーブル5と、主軸3を回転させる主軸モータ6と、主軸3をテーブル5に対してZ方向に移動させるZ軸送りモータ7と、テーブル5を主軸3に対してX方向およびY方向にそれぞれに移動させるX軸送りモータ8およびY軸送りモータ9と、モータ6,7,8,9を制御する数値制御装置1と、を備える。
【0008】
Z方向は、主軸3に保持された工具2の長手軸に沿う方向である。X方向およびY方向は、主軸3に保持された工具2の長手軸に直交する方向であり、相互に直交する。図1の工作機械10において、Z方向は鉛直方向であり、X方向およびY方向は水平方向である。
主軸3は、鉛直方向に配置され、図示しない支持機構によって鉛直方向に移動可能に支持されている。工具2は、主軸3の下端部に主軸3と同軸に保持され、主軸3と一体的に回転し移動する。工具2は、ワーク4に深さ方向(Z方向)に穴4aを開けるドリルである。工具2は、ワーク4を深さ方向に加工する他の種類の工具、例えば、フライスまたはエンドミル等であってもよい。
【0009】
テーブル5は、主軸3の下方に水平に配置されている。テーブル5の上面上に載置されたワーク4は、図示しない治具によってテーブル5に固定されている。
主軸モータ6は、主軸3の上端に接続されたスピンドルモータであり、主軸3の長手軸回りに主軸3を回転させる。
送りモータ7,8,9は、それぞれサーボモータである。
【0010】
数値制御装置1は、記憶部11と、制御部12とを備える。
記憶部11は、例えば、RAM、ROMおよびその他の記憶装置を有し、工具2およびワーク4の相対移動によってワーク4に穴をあけるための加工プログラム11a(図2参照。)を記憶している。
制御部12は、中央演算処理装置のようなプロセッサを有する。制御部12は、加工プログラム11aに基づいて送りモータ7,8,9を制御することによって主軸3およびテーブル5の相対移動を制御し、それにより工具2およびワーク4の相対移動を制御する。
【0011】
図2に示されるように、加工プログラム11aは、穴あけ用の固定サイクルプログラム11bを含む。図3に示されるように、固定サイクルプログラム11bは、位置決め動作、穴あけ動作および引き抜き動作を含む固定サイクルを、工作機械10に複数回実行させるプログラムである。図3において、破線および実線の矢印は、ワーク4に対する工具2の相対移動の経路を示している。図3において、横方向がXY方向であり、縦方向がZ方向である。
【0012】
加工プログラム11aは、W点(ワーク高さ点)、R点(復帰点)およびZ点(穴底点)を指定する指令を含む。W点は、ワーク面4bのZ方向の位置である。ワーク面4bは、工具2によるワーク4の穴あけ(切削)が開始されるワーク4の表面であり、本実施形態においてはワーク4の上面である。R点は、ワーク面4bからZ方向に退避したZ方向の位置であり、例えば、ワーク面4bから1mm~5mmだけ離間した位置である。Z点は、穴4aの底のZ方向の位置であり、ワーク面4bに対してR点とは反対側に位置する。
【0013】
位置決め動作は、テーブル5のXY方向の移動によってワーク4を工具2に対してXY方向に移動させ、ワーク4の穴あけ位置を工具2に対してXY方向に位置決めする動作である。経路a,bが、位置決め動作における工具2の経路である。
穴あけ動作は、主軸3の下降によって工具2の先端2aをR点からZ点までZ方向に移動させ、ワーク4の穴あけ位置に穴をあける動作である。経路b,cが、穴あけ動作における工具2の経路である。
引き抜き動作は、主軸3の上昇によって工具2の先端2aをZ点からR点までZ方向に移動させ、工具2を穴4aから引き抜く動作である。経路d,eが、位置決め動作における工具2の経路である。
【0014】
図2は、固定サイクルを3回繰り返す固定サイクルプログラム11bの例を示している。
「G81」は、穴あけ用の固定サイクルを命令するコードであり、「G99」は、R点復帰を命令するコードであり、「G80」は、固定サイクルのキャンセルを命令するコードである。「X0 Y0」は穴あけ位置のX方向およびY方向の位置決め指令、「Z-10.」はZ点の指令、「R5.」はR点の指令、「W1.」はW点の指令、「F1000」は切削送り速度の指令である。すなわち、R点はZ=5mmに設定され、Z点はZ=-10mmに設定され、W点はZ=1mmに設定されている。2行目および3行目において、指令値が1行目と同一である指令Y,Z,R,W,Fは省略されている。
【0015】
制御部12は、送りモータ7を制御することによって主軸3および工具2のZ方向の移動を制御し、送りモータ8,9を制御することによってテーブル5およびワーク4のXY方向の移動を制御する。
制御部12は、主軸モータ6によって主軸3および工具2を回転させながら送りモータ7,8,9を制御することによって、位置決め動作、穴あけ動作および引き抜き動作を工作機械10に実行させる。
【0016】
ここで、制御部12は、位置決め動作の終了前に穴あけ動作を開始することによって、位置決め動作のワーク4のXY方向の移動と穴あけ動作の工具2のZ方向の移動とを時間的にオーバラップさせる。これにより、工具2の先端2aは、R点からW点までの間において第1曲線経路bに沿って移動する。
また、制御部12は、引き抜き動作の終了前に次の固定サイクルの位置決め動作を開始することによって、引き抜き動作の工具2のZ方向の上昇と位置決め動作のワーク4のXY方向の移動とを時間的にオーバラップさせる。これにより、工具2の先端2aは、W点からR点までの間において第2曲線経路eに沿って移動する。
【0017】
制御部12は、位置決め動作において、ワーク4を早送り速度で移動させ、引き抜き動作において、工具2を早送り速度で移動させる。また、制御部12は、穴あけ動作において、工具2をR点からW点まで早送り速度で移動させ、続いて、工具2をW点からZ点まで切削送り速度で移動させる。
早送り速度は、各送りモータ7,8,9の最高速度である。切削送り速度は、早送り速度よりも遅く、工具2によるワーク4の穴あけ加工に適した速度である。
【0018】
図3において、工具2がワーク4に対して早送り速度で移動する経路a,b,d,eは破線で示され、工具2がワーク4に対して切削送り速度で移動する経路cは実線で示されている。図3において、直線経路dの位置が直線経路cの位置からXY方向にずれているが、実際には2つの直線経路c,dは相互に重複する。
【0019】
次に、数値制御装置1による工作機械10の制御方法について説明する。
固定サイクルプログラム11bを開始すると、制御部12は、1回目の固定サイクルを工作機械10に実行させる。すなわち、制御部12は、送りモータ8,9を制御することによってテーブル5に位置決め動作を開始させ、ワーク4の1つ目の穴あけ位置を工具2に対して位置決めする。
【0020】
続いて、制御部12は、送りモータ7を制御することによって主軸3に穴あけ動作を開始させ、1つ目の穴あけ位置に工具2によって穴をあける。ここで、制御部12は、位置決め動作の終了前に穴あけ動作を開始させることによって、工具2の先端2aを曲線経路bに沿って移動させる。穴あけ動作において、制御部12は、R点からW点までは工具2を早送り速度で移動させ、W点からZ点までは切削送り速度で工具2を移動させる。
穴あけ動作の終了後、制御部12は、送りモータ7を制御することによって主軸3に引き抜き動作を開始させ、穴4aから工具2を引き抜く。
【0021】
続いて、制御部12は、2回目の固定サイクルを工作機械10に実行させる。すなわち、制御部12は、テーブル5に位置決め動作を開始させ、ワーク4の2つ目の穴あけ位置を工具2に対して位置決めする。ここで、制御部12は、1回目の固定サイクルの引き抜き動作の終了前に2回目の固定サイクルの位置決め動作を開始させることによって、工具2の先端2aを曲線経路eに沿って移動させる。
以下、制御部12は、1回目の固定サイクルと同様に2回目の固定サイクルの穴あけ動作および引き抜き動作を実行させ、さらに、3回目の固定サイクルを実行させる。
【0022】
このように、本実施形態によれば、工具2の先端2aがR点からW点に向かってZ方向に移動する期間において、工具2のZ方向の移動とワーク4のXY方向の移動とが時間的にオーバラップし、工具2が曲線経路bに沿って移動する。また、工具2の先端2aがW点からR点に向かってZ方向に移動する期間において、工具2のZ方向の移動とワーク4のXY方向の移動とが時間的にオーバラップし、工具2が曲線経路eに沿って移動する。これにより、位置決め動作が全て終了した後に穴あけ動作を開始し、引き抜き動作が全て終了した後に次の位置決め動作を開始する場合と比較して、工具2がワーク4を切削していない非切削時間が短縮される。
【0023】
また、固定サイクルプログラム11bは、W点の指令を含む点において、従来の穴あけ用の固定サイクルプログラムと異なる。従来の固定サイクルプログラムに従って工具2の移動を制御する従来の数値制御装置は、工具2の先端2aをR点からZ点まで切削送り速度で移動させていた。本実施形態によれば、W点の指令の追加によって、R点からW点までの速度を切削送り速度以外の速度に制御することが可能となり、R点からW点まで早送り速度で工具2を移動させることができる。これにより、非切削時間をさらに短縮することができる。
【0024】
本実施形態において、R点からW点まで工具2を早送り速度で移動させることとしたが、R点からW点までの工具2のZ方向の移動速度は、切削送り速度よりも速く早送り速度よりも遅い任意の速度であってもよい。また、R点からW点までの工具2の移動速度が、切削送り速度と早送り速度との間で変更可能であってもよい。
【0025】
例えば、図4に示されるように、切削送り速度Fおよび早送り速度Fの速度比率を指定する引数Lが固定サイクルプログラム11bに追加されてもよい。Lは、0%~100%の範囲内の値である。工具2の移動速度Fは、下式によって定義される。
F=F×(1-(L/100))+F×L/100
作業者は、Lの値を設定することによって、速度Fを切削送り速度と早送り速度との間の任意の速度に指定することができる。
【0026】
本実施形態において、R点からW点まで工具2を早送り速度で移動させることとしたが、R点からW点までの工具2のZ方向の移動速度は、工具2の先端2aの位置によって早送りから切削送りに段階的に変化させてもよい。
【0027】
例えば、先端2aの位置をZとすると、工具2のZ方向の移動速度Fは、切削送り速度Fおよび早送り速度Fから下式によって定義される。
F=(F×|R-Z|+F×|Z―W|)/|R-W|
先端2aの位置が変化することで、速度Fを早送り速度から切削送り速度へ段階的に変化させることができる。
【0028】
本実施形態において、R点からW点まで工具2を早送り速度で移動させることとしたが、R点からW点までの工具2のZ方向の移動速度は、R点からW点の間の任意の位置で早送りから切削送りに変化させてもよい。
【0029】
例えば、機械制御の応答性に応じてR点とW点との間の中間位置で早送り速度から切削送り速度に変化させてもよい。これによって、機械制御の応答性が低い工作機械において、W点に到達する時点で先端2aの位置決めが正確になされていない場合、W点よりも高い位置でZ方向の移動速度を早送り速度から切削送りに変化させることで、到達タイミングを変化させ、非切削時間の短縮および正確な位置決めが可能である。
【0030】
本実施形態において、制御部12は、工具2がR点とW点との間で曲線経路b,eに沿って移動するように送りモータ7,8,9を制御することとしたが、これに代えて、工具2が直線経路のみに沿ってするように送りモータ7,8,9を制御してもよい。すなわち、制御部12は、位置決め動作の終了後に穴あけ動作を開始させ、引き抜き動作の終了後に次の固定サイクルの位置決め動作を開始させてもよい。
このような制御においても、R点からW点までの工具2のZ方向の移動速度を、切削送り速度よりも速い速度にすることによって、非切削時間を短縮することができる。
【0031】
本実施形態において、W点を固定サイクルプログラム11bに含むこととしたが、記憶メモリに保存するデータテーブル形式としたパラメータによってW点を定義してもよい。また、W点は、所定の固定値であってもよい。
【0032】
例えば、数値制御装置1の記憶部11に予めW点を1.0mmと記憶させ、固定サイクルプログラム11bが指令されたときにW点を呼び出してもよい。
また、W点は、固定サイクルプログラム11bが指令されたときにR点よりも-4.0mmだけワーク4に近い位置に設定される固定値であってもよい。穴あけ加工では、非切削時間短縮のためR点はワーク4の上面から0.5mm~1.0mmだけ離間した位置に設定されることが多い。そのため、W点をR点よりも-4.0mmだけワーク4に近い位置とすることで、W点の指令無しで非切削時間短縮が可能となる。
【0033】
本実施形態において、各穴4aをノンステップ加工によってあけることとしたが、これに代えて、各穴4aをステップ加工であけてもよい。ステップ加工は、工具2をZ方向に複数回往復させ、W点からZ点までの距離を複数回に分けて所定量ずつ切削する方法である。
従来のステップ加工において、工具2は、ワーク4を切削する毎にR点まで戻る。本実施形態において、工具2を、R点ではなく、W点までまたはR点とW点との間の任意の高さまで戻し、W点からまたはR点とW点との間の任意の高さから工具2の次の下降を開始してもよい。これにより、1つの穴4aの加工に要する時間を短縮することができる。
【0034】
本実施形態において、固定サイクルの穴あけ加工について説明したが、固定サイクルを使用しない穴あけ加工に本開示を適用してもよい。すなわち、任意の穴あけ加工用の加工プログラムにW点の指令を追加し、任意の穴あけ加工における穴あけ動作において、工具およびワークを切削送り速度よりも速い速度でR点からW点まで深さ方向に相対移動させてもよい。
【0035】
本実施形態において、工具2がZ方向に移動可能であり、ワーク4がXY方向に移動可能であることとしたが、工具2およびワーク4の相対移動は、工具2およびワーク4のいずれか一方または両方の移動によって達成されればよい。例えば、主軸3がXY方向に移動可能であり、テーブル5がZ方向に移動可能であってもよい。または、主軸3およびテーブル5の一方がX、Y、Zの3方向に移動可能であってもよい。
また、本実施形態において、工具2の移動方向が鉛直方向であり、ワーク4の移動方向が水平方向であることとしたが、工具2およびワーク4の移動方向は、工作機械の仕様に応じて適宜変更可能である。例えば、主軸3が水平に配置される工作機械の場合、工具2の移動方向が水平方向であり、ワーク4の移動方向が鉛直方向であってもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 数値制御装置
2 工具
4 ワーク
4a 穴
4b ワーク面
10 工作機械
11 記憶部
11a 加工プログラム
11b 固定サイクルプログラム
12 制御部
図1
図2
図3
図4