(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】エレクトロニクスのための界面活性剤
(51)【国際特許分類】
H01L 21/308 20060101AFI20240814BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240814BHJP
C11D 1/82 20060101ALI20240814BHJP
C11D 3/34 20060101ALI20240814BHJP
C11D 3/20 20060101ALI20240814BHJP
G03F 7/42 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
H01L21/308 A
H01L21/308 G
H01L21/304 647B
C11D1/82
C11D3/34
C11D3/20
G03F7/42
(21)【出願番号】P 2022547839
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(86)【国際出願番号】 US2020066031
(87)【国際公開番号】W WO2021158301
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2022-10-04
(32)【優先日】2020-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517213094
【氏名又は名称】アドバンシックス・レジンズ・アンド・ケミカルズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ADVANSIX RESINS & CHEMICALS LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100133765
【氏名又は名称】中田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】アシルバサム,エドワード
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特表2023-512408(JP,A)
【文献】特表2022-545010(JP,A)
【文献】特開2012-102320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/308
H01L 21/304
C11D 1/82
C11D 3/34
C11D 3/20
G03F 7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレテクスチャリング剤のための製剤であって、
式Iの少なくとも1つの界面活性剤であって、
【化1】
式中、R
1及びR
2は、同じであっても又は異なっていてもよく、C
1~C
6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基を含み、前記C
1~C
6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの少なくとも1つを含む基を含んでよく、前記C
1~C
6アルキルのアルキル鎖は、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1又は複数の置換基で置換されていてよく、
nは、1~12の整数であり、
式Iの末端窒素は、
さらに置換基R
3
を有してもよく、この場合R
3は、水素、酸素、ヒドロキシル、及びC
1~C
6アルキルから成る群より選択される、界面活性剤、
存在してよく、存在する場合、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンから成る群より選択される、式Iの界面活性剤に付随する対イオン、並びに
1又は複数の溶媒及び1又は複数の消泡剤のうちの少なくとも1つ、
を含む、製剤。
【請求項2】
1又は複数の酸をさらに含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
1又は複数の塩基をさらに含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
1又は複数のキレート剤をさらに含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項5】
エッチング液のための製剤であって、
式Iの少なくとも1つの界面活性剤であって、
【化2】
式中、R
1及びR
2は、同じであっても又は異なっていてもよく、C
1~C
6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基を含み、前記C
1~C
6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの少なくとも1つを含む基を含んでよく、前記C
1~C
6アルキルのアルキル鎖は、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1又は複数の置換基で置換されていてよく、
nは、1~12の整数であり、
式Iの末端窒素は、
さらに置換基R
3
を有してもよく、この場合R
3は、水素、酸素、ヒドロキシル、及びC
1~C
6アルキルから成る群より選択される、界面活性剤、
存在してよく、存在する場合、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンから成る群より選択される、式Iの界面活性剤に付随する対イオン、及び
フッ化水素酸(HF)、
を含む、製剤。
【請求項6】
1又は複数の酸化剤をさらに含む、請求項5に記載の製剤。
【請求項7】
1又は複数の錯化剤をさらに含む、請求項5に記載の製剤。
【請求項8】
フォトレジスト剥離製剤のための製剤であって、
式Iの少なくとも1つの界面活性剤であって、
【化3】
式中、R
1及びR
2は、同じであっても又は異なっていてもよく、C
1~C
6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基を含み、前記C
1~C
6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの少なくとも1つを含む基を含んでよく、前記C
1~C
6アルキルのアルキル鎖は、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1又は複数の置換基で置換されていてよく、
nは、1~12の整数であり、
式Iの末端窒素は、
さらに置換基R
3
を有してもよく、この場合R
3は、水素、酸素、ヒドロキシル、及びC
1~C
6アルキルから成る群より選択される、界面活性剤、
存在してよく、存在する場合、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンから成る群より選択される、式Iの界面活性剤に付随する対イオン、及び
アルカノールアミン、
を含む、製剤。
【請求項9】
スルホキシドをさらに含む、請求項8に記載の製剤。
【請求項10】
スルホンをさらに含む、請求項8に記載の製剤。
【請求項11】
グリコールエーテルをさらに含む、請求項8に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全開示内容が参照により本明細書に援用される2020年2月5日に出願された米国仮特許出願第62/970,356号の優先権を主張するものである。
【0002】
本開示は、エレクトロニクスにおける使用のための界面活性剤に関する。より詳細には、本開示は、エッチング及びフォトレジストコーティングの除去による回路基板の製造における界面活性剤に関する。そのような界面活性剤は、表面活性特性を有するアミノ酸のシロキサン誘導体を含み得る。
【背景技術】
【0003】
界面活性剤(表面活性特性を有する分子)は、回路基板の製造において、洗浄剤、エッチング液、及びフォトレジスト剥離液中に広く用いられている。界面活性剤は、乳化剤、湿潤剤、発泡剤、分散剤、及び/又は広がり性を改善する剤として含まれ得る。
【0004】
界面活性剤は、非イオン性、双性イオン性、カチオン性、又はアニオン性であり得る。原理上は、いかなる界面活性剤のクラス(例:カチオン性、アニオン性、非イオン性、両性)も適するが、製剤は、2種類以上の界面活性剤クラスからの2つ以上の界面活性剤の組み合わせを含み得ることが可能である。
【0005】
多くの場合、界面活性剤は、相対的に非水溶性の疎水性「尾部」基及び相対的に水溶性の親水性「頭部」基を有する両親媒性分子である。これらの化合物は、2つの液体間、気液間、又は固液間の界面などの界面で吸着し得る。相対的に極性の成分と相対的に非極性の成分を含む系では、疎水性の尾部は、相対的に非極性の成分と選択的に相互作用し、一方親水性の頭部は、相対的に極性の成分と選択的に相互作用する。水と油との間の界面の場合、親水性の頭部基は、選択的に水中へ延び、一方疎水性の尾部は、選択的に油中へ延びる。気水界面に添加されると、親水性の頭部基は、選択的に水中へ延び、一方疎水性の尾部は、選択的に気体中へ延びる。界面活性剤が存在すると、水分子間の分子間相互作用の少なくとも一部が乱され、水分子間の相互作用の少なくとも一部が、水分子の少なくとも一部と界面活性剤との間の一般的にはより弱い相互作用に置き換わる。これは、表面張力を低下させる結果となり、界面を安定化させるようにも働き得る。
【0006】
充分に高い濃度では、界面活性剤は、疎水性の尾部が極性溶媒に曝露することを制限するように作用する凝集体を形成する可能性がある。1つのそのような凝集体は、ミセルである。典型的なミセルでは、分子は、界面活性剤の疎水性の尾部が選択的に球の内側に位置し、界面活性剤の親水性の頭部が選択的にミセルの外側に位置した状態の球状に配列され、この場合、頭部がより極性である溶媒と選択的に相互作用する。任意の化合物が表面張力に対して有する効果及びそれがミセルを形成する濃度は、界面活性剤を規定する特徴として有用であり得る。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、プレテクスチャリング剤(pre-texturing agents)、エッチング液、及びフォトレジスト剥離液に用いるための製剤を提供する。これらの製品は、本明細書で開示する1又は複数種類の界面活性剤のクラスからの1又は複数の界面活性剤を含むように製剤され得る。界面活性剤は、乳化剤、湿潤剤、分散剤、及び/又は広がり性を改善する剤として用いられ得る。
【0008】
本開示は、表面活性特性を有するアミノ酸のシロキサン誘導体の形態であるプレテクスチャリング剤、エッチング液、及びフォトレジスト剥離液のための界面活性剤を提供する。アミノ酸は、天然若しくは合成アミノ酸であってよい、又はカプロラクタムを例とするラクタムなどの分子の開環反応を介して得られてもよい。アミノ酸は、異なる種類のシロキサン基で官能化されて、表面活性特性を有する化合物が形成されてもよい。特徴的なことには、これらの化合物は、低い臨界ミセル濃度(CMC)及び/又は液体の表面張力を低下させる能力を有し得る。
【0009】
本開示は、プレテクスチャリング剤のための製剤を提供し、それは、式Iの少なくとも1つの界面活性剤であって、
【0010】
【0011】
式中、R1及びR2は、同じであっても又は異なっていてもよく、C1~C6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基を含み、所望に応じて、C1~C6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの少なくとも1つを含む基を含んでよく、アルキル鎖は、所望に応じて、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1又は複数の置換基で置換されていてよく;nは、1~12の整数であり;末端窒素は、R3でさらに置換されてもよく、この場合R3は、水素、酸素、ヒドロキシル、及びC1~C6アルキルから成る群より選択される、界面活性剤;所望に応じて存在してよく、存在する場合、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンから成る群より選択される、この化合物に付随する対イオン;1又は複数の消泡剤、所望に応じて1又は複数の酸、所望に応じて1又は複数の塩基、所望に応じて1又は複数のキレート剤、及び1又は複数の溶媒、を含む。
【0012】
本開示はさらに、エッチング液のための製剤を提供し、それは、式Iの少なくとも1つの界面活性剤であって、
【0013】
【0014】
式中、R1及びR2は、同じであっても又は異なっていてもよく、C1~C6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基を含み、所望に応じて、C1~C6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの少なくとも1つを含む基を含んでよく、アルキル鎖は、所望に応じて、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1又は複数の置換基で置換されていてよく;nは、1~12の整数であり;末端窒素は、R3でさらに置換されてもよく、この場合R3は、水素、酸素、ヒドロキシル、及びC1~C6アルキルから成る群より選択される、界面活性剤;所望に応じて存在してよく、存在する場合、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンから成る群より選択される、この化合物に付随する対イオン;フッ化水素酸(HF)、1又は複数の溶媒、所望に応じて、1又は複数の酸化剤、及び1又は複数の錯化剤、を含む。
【0015】
本開示はさらに、フォトレジスト剥離液のための製剤を提供し、それは、式Iの少なくとも1つの界面活性剤であって、
【0016】
【0017】
式中、R1及びR2は、同じであっても又は異なっていてもよく、C1~C6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基を含み、所望に応じて、C1~C6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの少なくとも1つを含む基を含んでよく、アルキル鎖は、所望に応じて、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1又は複数の置換基で置換されていてよく;nは、1~12の整数であり;末端窒素は、R3でさらに置換されてもよく、この場合R3は、水素、酸素、ヒドロキシル、及びC1~C6アルキルから成る群より選択される、界面活性剤;所望に応じて存在してよく、存在する場合、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンから成る群より選択される、この化合物に付随する対イオン;アルカノールアミン;スルホキシド又はスルホン化合物;及びグリコールエーテル、を含む。
【0018】
本開示の上述の及び他の特徴、並びにそれらを達成する方法は、以下の実施形態の記述を添付の図面と合わせて参照することによって、より明らかとなり、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、例1bで述べるように、界面活性剤2において塩化物イオンを対イオンとした場合のpH=7で測定した表面張力対濃度のプロットを示す。
【
図2】
図2は、例2bで述べるように、界面活性剤3における表面張力対濃度のプロットを示す。
【
図3】
図3は、例2bで述べるように、界面活性剤3における時間に対する表面張力の変化としての動的表面張力のプロットを示す。
【
図4】
図4は、例3bで述べるように、界面活性剤4における表面張力対濃度のプロットを示す。
【
図5】
図5は、例3bで述べるように、界面活性剤4における時間に対する表面張力の変化としての動的表面張力のプロットを示す。
【
図6】
図6は、例4bで述べるように、界面活性剤5における表面張力対濃度のプロットを示す。
【
図7】
図7は、例4bで述べるように、界面活性剤5における時間に対する表面張力の変化としての動的表面張力のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書で用いられる場合、「これらの終点を用いたいずれかの範囲内」の句は、文字通り、値が列挙の低い値の方にあるか、又は列挙の高い値の方にあるかにかかわらず、その句の前に列挙された値のいずれか2つからのいずれの範囲が選択されてもよいことを意味する。例えば、値の対は、低い方の値2つ、高い方の値2つ、又は低い方の値及び高い方の値、から選択されてよい。
【0021】
本明細書で用いられる場合、「アルキル」の語は、いずれの飽和炭素鎖をも意味し、直鎖であっても又は分岐鎖であってもよい。
本明細書で用いられる場合、「表面活性」の句は、関連する化合物が、それが少なくとも部分的に溶解されている媒体の表面張力及び/又は他の相との界面張力を低下させることができ、したがって、気液界面及び/又は他の界面に少なくとも部分的に吸着し得ることを意味する。「界面活性剤」の用語は、そのような化合物に適用され得る。
【0022】
不正確さの用語に関して、「約」及び「およそ」の用語は、交換可能に用いられてよく、記載された測定値を含み、その記載された測定値に対して合理的に近いいずれの測定値も含む測定値を意味する。記載された測定値に対して合理的に近い測定値は、該当する技術分野の当業者によって理解され、容易に確認される合理的に小さい量の分、記載された測定値から逸脱している。そのような逸脱は、例えば、測定誤差又は性能を最適化するために成される少しの調整に起因すると考えられ得る。該当する技術分野の当業者が、そのような合理的に小さい差異に関する値が容易に確認されるものではないと判断する場合には、「約」及び「およそ」の用語は、記載された値のプラス又はマイナス10%を意味するものと理解されてよい。
【0023】
本開示は、プレテクスチャリング剤、エッチング液、及びフォトレジスト剥離液の製剤を提供する。
I.プレテクスチャリング剤
本開示は、光起電力ウェハの表面のテクスチャリングのための製剤及び方法を提供する。光エネルギーを電気に変換する効率を改善するために、極低反射性シリコン表面が所望される。例えば単結晶シリコンの場合、これは、テクスチャリングと称されるプロセスにおいて、(100)Siウェハの異方性エチングによって表面上にピラミッド構造を形成することで実現される。低反射率を実現するためには、シリコンウェハの表面上において、ピラミッド構造の均一で密な分布が所望される。ピラミッド構造の高さは、10μm未満であり、且つ均一なサイズであることが所望される。ピラミッド構造がより小さく均一であると、やはり効率のロスを防止するためにテクスチャ付与表面上に堆積される不動態化層の良好な被覆が確保される。また、ピラミッド構造がより小さく均一であると、シリコン表面上に印刷される金属接触線がより狭くなり、より多くの光が光-電子変換のためにシリコン表面まで透過可能となることも確保される。
【0024】
本開示のプレテクスチャリング製剤は、本明細書で述べるテクスチャリングプロセスにおいて、シリコンウェハ、基板、又は異なる種類の基板上に堆積されたシリコン膜(基板又はウェハの用語は、本明細書において交換可能に用いられる)を処理するために用いられ得る。本開示のプレテクスチャリング製剤及び/又は方法で処理されたシリコンウェハは、光起電力セルの製造に用いられ得る。本開示のプレテクスチャリング製剤及び/又は方法に掛けられたウェハは、この処理に掛けられていないウェハと比較して、テクスチャリング均一性の改善及び反射率の低減を示し得る。
【0025】
本開示の方法及び/又は製剤で実現され得る追加の有益性としては、以下の1又は複数を含み得る。1)高密度で、平均高さが10μm未満又は8μm未満又は5μm未満又は4μm未満であるピラミッド構造をウェハの表面上に作り出すこと:2)テクスチャ付与表面の反射率の低下;3)ピラミッド構造の形成及び/又は低反射率テクスチャ付与表面の形成に要する時間の短縮;4)テクスチャリングプロセスにおけるイソプロピルアルコール濃度に対するテクスチャリング品質の感受性の低減、及びいくつかの実施形態においては、テクスチャリングが、1若しくは複数のテクスチャリング組成物中にイソプロピルアルコールも、又はテクスチャリングを促進するのに要する他のいかなる添加剤も用いずに実施され得ること;5)本開示のプレテクスチャリング製剤及び/又は方法がテクスチャリングプロセスに用いられる場合、テクスチャリングの品質及びスループットを改善するためのテクスチャリング(エッチング)組成物又はエッチング溶液中への添加剤の必要性が低減又は排除され得ること;6)テクスチャリング工程でエッチングされるシリコンの総量が低減され得ること;7)テクスチャリング組成物(テクスチャリング溶液又はエッチング溶液とも称される)の浴寿命が延長され得ること;8)不動態化層の被覆が改善され得ること;9)ウェハの上面に印刷される金属接触線が狭くなり得ること;並びに10)テクスチャリング前のシリコン表面の濡れ性が高められ得ること。
【0026】
本開示のプレテクスチャリング製剤を用いたプレテクスチャリング、さらには本明細書で述べるテクスチャリングの方法は、既知の方法及び製剤と比較してテクスチャリングの時間を短縮し得る。これは、処理時間を短縮し、したがって、ウェハ処理のスループットを向上させる結果となり得る。さらに、本開示のプレテクスチャリング製剤及び/又は方法が用いられる場合、テクスチャリングプロセスの過程で、経時での変化がほとんどないこと、又は1若しくは複数のテクスチャリング浴中の1若しくは複数のテクスチャリング組成物の濃度に対する感受性をほとんど示さないことが可能であり、そのために、プロセスの堅牢性が改善される結果となり、したがって、プロセスの不具合が発生した場合に、光起電力デバイスの性能を損なうことなく、より長い又はより短いテクスチャリング時間を用いることができる。
【0027】
光起電力単結晶シリコンウェハの加工は、典型的には、いかなる汚染物も除去するために洗浄し、及び典型的には濃アルカリ溶液中で、切断したウェハ(インゴットから切断)のソーダメージを除去する第一の工程、又は複数の工程、続いて、希アルカリ性溶液中でテクスチャリングして、表面の反射率を低減してより多くの光を電気に変換することを可能とすることでウェハの効率を高めるものであるピラミッド構造テクスチャを表面上に生成すること、を含む。多結晶シリコンウェハの場合、加工は、いかなる汚染物質も除去するために洗浄する第一の工程、又は複数の工程、及びそれに直接続いてテクスチャリングを行うこと、を含み得る。出来る限り低い反射率を有することが望ましい。本開示は、ウェハの表面のテクスチャリングを改善するためのプレテクスチャリング製剤及び方法を提供する。本開示は、1若しくは複数の界面活性剤又は溶液中の1若しくは複数の界面活性剤を含むプレテクスチャリング製剤でウェハ表面を処理するための方法を提供する。製剤は、ウェハ表面を修飾して、単結晶シリコンウェハをテクスチャリングする場合に、ピラミッド構造の高い核形成密度をもたらし、その結果、小さいピラミッド構造の所望される均一な分布が得られる。多結晶シリコンウェハの場合、表面修飾は、テクスチャ付与表面の均一性を改善し、その結果、より低い表面反射率をもたらすことができる。
【0028】
本開示によって提供されるプレテクスチャリング製剤は、1又は複数種類の界面活性剤クラスから選択される1又は複数の界面活性剤、1又は複数の消泡剤、所望に応じて1又は複数の酸、所望に応じて1又は複数の塩基、所望に応じて1又は複数のキレート剤、及び1又は複数の溶媒、を含み得る。
【0029】
1.界面活性剤
本開示のプレテクスチャリング剤は、界面活性剤系とも称される1又は複数の界面活性剤を含む。1又は複数の界面活性剤の選択は、ウェハ表面を修飾してピラミッド構造の核を形成し、及びウェハの表面を洗浄する能力に依存し得る。
【0030】
本開示のプレテクスチャリング製剤での使用に適する界面活性剤は、式Iの1又は複数の界面活性剤及び/又は共界面活性剤であって、
【0031】
【0032】
式中、R1及びR2は、同じであっても又は異なっていてもよく、C1~C6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基を含み、所望に応じて、C1~C6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの少なくとも1つを含む基を含んでよく、アルキル鎖は、所望に応じて、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1又は複数の置換基で置換されていてよく;nは、1~12の整数であり;末端窒素は、R3でさらに置換されてもよく、この場合R3は、水素、酸素、ヒドロキシル、及びC1~C6アルキルから成る群より選択される、界面活性剤及び/又は共界面活性剤;並びに所望に応じて存在してよく、存在する場合、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンから成る群より選択される、この化合物に付随する対イオン、を含む。
【0033】
特に、適切な界面活性剤又は共界面活性剤は、本明細書で述べる界面活性剤1~6のいずれか1つ以上を含み得る。
プレテクスチャリング製剤中の界面活性剤系の量は、約0.01重量%以上、約0.1重量%以上、約1重量%以上、約5重量%以上、約10重量%以上、約15重量%以上、又は約20重量%以下、約25重量%以下、約30重量%以下の範囲内、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内であり得る。
【0034】
2.消泡剤
本開示のプレテクスチャリング製剤は、1又は複数の消泡剤/泡止め剤をさらに含み得る。消泡剤は、限定されるものではないが、シリコーン、有機ホスフェート、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールコポリマーを含有するエチレンオキシド/プロピレンオキシド(EO/PO)ベースの消泡剤、アルコール、ホワイト油、又は植物油から選択されてよく、ワックスは、長鎖脂肪アルコール、脂肪酸セッケン、又はエステルである。一部のシリコーン界面活性剤及び本開示の界面活性剤などのいくつかの剤は、消泡剤と界面活性剤の両方として機能し得る。
【0035】
消泡剤は、プレテクスチャリング製剤中に、約0.0001重量%以上、約0.001重量%以上、約0.01重量%以上、約0.1重量%以上、約0.2重量%以上、約0.5重量%以上、又は約1.0重量%以下、約1.5重量%以下、約2.0重量%以下、約3.0重量%以下、約3.5重量%以下、約4.0重量%以下、約4.5重量%以下、約5.0重量%以下の範囲内、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で存在し得る。
【0036】
3.酸
有機酸は、微量金属、有機及び無機残渣の除去を改善するように機能する。有機酸は、限定されるものではないが、シュウ酸、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、グルコン酸、グルタル酸、アスコルビン酸、ギ酸、酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリシン、アラニン、シスチン、スルホン酸、スルホン酸の様々な誘導体、又はこれらの混合物を含む広範な酸から選択され得る。これらの酸の塩が用いられてもよい。また、これらの酸/塩の混合物が用いられてもよい。
【0037】
プレテクスチャリング製剤は、無機酸及び/又はそれらの塩をさらに含み得る。無機塩及び/又はそれらの塩は、他の有機酸及び/又はそれらの塩と組み合わせて用いられ得る。適切な無機酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、フッ化水素酸、スルファミン酸などが挙げられる。また、これらの酸/塩の混合物が用いられてもよい。
【0038】
本開示のプレテクスチャリング組成物は、約0重量%以上、約0.1重量%以上、約5重量%以上、約10重量%以上、又は約15重量%以下、約20重量%以下、約25重量%以下、約30重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量の酸及び/又はそれらの塩(酸/塩)を含み得る。
【0039】
酸及び塩の組み合わせはまた、溶液を所望されるpHレベルで緩衝するためにも用いられ得る。酸/塩がプレテクスチャリング製剤に添加される場合、それらは、約0.2重量%以上、約0.3重量%以上、約0.5重量%以上、約1重量%以上、約3重量%以上、又は約5重量%以下、約7重量%以下、約9重量%以下、約10重量%以下の範囲内、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で存在し得る。
【0040】
4.塩基
本開示のプレテクスチャリング製剤は、1又は複数の塩基をさらに含み得る。適切な塩基としては、限定されるものではないが、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、第四級水酸化アンモニウム、アミン、炭酸グアニジン、及び有機塩基が挙げられる。塩基は、単独で、又は他の塩基と組み合わせて用いられてよい。適切な有機塩基の例としては、限定されるものではないが、ヒドロキシルアミン、エチレングリコール、グリセロール、第一級、第二級、又は第三級脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミン及び複素環式アミンなどの有機アミン、アンモニア水、並びに第四級水酸化アンモニウムが挙げられ、ヒドロキシルアミン(NH2OH)、N-メチルヒドロキシルアミン、N,N-ジメチルヒドロキシルアミン、N,N-ジエチルヒドロキシルアミン、モノエタノールアミン、エチレンジアミン、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール、ジエタノールアミン、N-メチルアミノエタノール、ジプロピルアミン、2-エチルアミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、エチルジエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジベンジルアミン、N-メチルベンジルアミン、ピロール、ピロリジン、ピロリドン、ピリジン、モルホリン、ピラジン、ピペリジン、N-ヒドロキシエチルピペリジン、オキサゾール、チアゾール、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド、(2-ヒドロキシエチル)トリエチルアンモニウムヒドロキシド、(2-ヒドロキシエチル)トリプロピルアンモニウムヒドロキシド、及び(1-ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウムヒドロキシドなどである。
【0041】
プレテクスチャリング製剤は、約0重量%以上、約1重量%以上、約5重量%以上、又は約10重量%以下、約15重量%以下、約20重量%以下の範囲内、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で塩基を含み得る。
【0042】
プレテクスチャリング製剤のpHも、酸及び塩基の濃度を調節することによって制御され得る。pHは、基板の表面への界面活性剤の吸着を制御し、それによってテクスチャリング工程において得られるテクスチャリングの品質を制御するための因子であり得る。
【0043】
5.所望に応じて存在してよいキレート剤
本発明のプレテクスチャリング及び/又はテクスチャリング組成物は、1又は複数のキレート剤をさらに含み得る。キレート剤は、限定されるものではないが、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(NHEDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ジエチルクレントリアミン五酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸(DPTA)、エタノールジグリシネート、クエン酸、グルコン酸、シュウ酸、リン酸、酒石酸、メチルジホスホン酸、アミノトリスメチレンホスホン酸、エチリデン-ジホスホン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、1-ヒドロキシプロピリデン-1,1-ジホスホン酸、エチルアミノビスメチレンホスホン酸、ドデシルアミノビスメチレンホスホン酸、ニトリロトリスメチレンホスホン酸、エチレンジアミンビスメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸、ヘキサジアミンテトラキスメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、及び1,2-プロパンジアミンテテタメチレンホスホン酸(1,2-propanediaminetetetamethylenephosphonic acid)、又はアンモニウム塩、有機アミン塩、マロン酸、コハク酸、ジメルカプトコハク酸、グルタル酸、マレイン酸、フタル酸、フマル酸、トリカルバリル酸、プロパン-1,1,2,3-テトラカルボン酸、ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、ピロメリット酸などのポリカルボン酸、グリコール酸、β-ヒドロキシプロピオン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、ピルビン酸、ジグリコール酸、サリチル酸、没食子酸などのオキシカルボン酸、カテコール、ピロガロールなどのポリフェノール、ピロリン酸、ポリリン酸などのリン酸、8-オキシキノリンなどのヘテロ環式化合物、並びにα-ジピリジルアセチルアセトンなどのジケトンから選択され得る。
【0044】
本開示のプレテクスチャリング製剤は、約0重量%以上、約1重量%以上、約2重量%以上、約3重量%以上、約4重量%以上、約5重量%以上、又は約6重量%以下、約7重量%以下、約8重量%以下、約9重量%以下、約10重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量のキレート剤を含み得る。
【0045】
6.溶媒
プレ製剤は、水、DI水、又は精製水などの水を溶媒として含む水性組成物であってよいが、水の代わりに又は水に加えて、当業者の公知のように、アルコール、グリコール、アセトンなどを含む通常の溶媒を用いることも可能である。プレテクスチャリング製剤は、製剤の総重量に基づいて50重量%超の水を含み得る。
【0046】
7.他の添加剤
界面活性剤を含むプレテクスチャリング組成物はまた、ウェハ表面の洗浄及び/又はテクスチャリング(エッチング)を促進するために、1又は複数の添加剤も含み得る。洗浄添加剤は、例えば、存在する場合、ソーダメージ除去工程の後であっても表面上の残留しているデブリの除去を補助する。所望に応じて、本発明のプレテクスチャリング組成物は、無機若しくは有機酸、塩基、キレート剤、分散剤、及び消泡剤、又はこれらの混合物を含む1又は複数の追加成分を含み得る。酸及び塩基及び他の添加剤は、例えばその洗浄性能を改善するために、プレテクスチャリング組成物に添加され得る。
【0047】
本開示のプレテクスチャリング製剤は、1又は複数の分散剤をさらに含み得る。適切な分散剤としては、本開示の界面活性剤、さらには、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルトリエタノールアミンサルフェート、アクリルアミド-メチルプロパンスルホネート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビットテトラオレエート、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエート、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルアルカノールアミド、ポリビニルピロリドン、ココナッツアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキシド、及び2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインが挙げられる。
【0048】
分散剤は、プレテクスチャリング製剤中に、約0重量%以上、約0.1重量%以上、約0.5重量%以上、約1.0重量%以上、約1.5重量%以上、又は約2.0重量%以下、約2.5重量%以下、約3.0重量%以下、約3.5重量%以下、約4.0重量%以下、約4.5重量%以下、約5.0重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で存在し得る。
【0049】
プレテクスチャリング製剤は、キシリトール、マンノース、グルコースなどの糖又は糖アルコールなど、他の添加剤をさらに含み得る。プレテクスチャリング製剤は、これらの添加剤を、約0重量%以上、約1重量%以上、約10重量%以上、約20重量%以上、又は約30重量%以下、約40重量%以下、約50重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で含有し得る。
【0050】
プレテクスチャリング製剤は、硝酸、過酸化物、及び次亜塩素酸塩などの酸化剤も含み得る。酸化剤は、約0重量%以上、約1重量%以上、約10重量%以上、約20重量%以上、又は約30重量%以下、約40重量%以下、約50重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で存在し得る。
【0051】
プレテクスチャリング製剤はまた、プレテクスチャリング処理組成物又はテクスチャリングエッチング組成物への曝露に起因する腐食から加工設備の材料を保護するために、腐食防止剤も含み得る。
【0052】
適切な腐食防止剤としては、1,2,4-トリアゾール、アミノトリアゾール、ベンゾトリアゾール、トリトリアゾール、メルカプトベンゾチアゾールなどの化合物が挙げられ得る。製剤はまた、化学的に還元性であるアスコルビン酸などの腐食防止剤も含み得る。
【0053】
8.使用方法
本開示のプレテクスチャリング製剤は、単結晶基板(例:Si<100>又はSi<111>)、微結晶シリコン基板、多結晶シリコン基板、歪みシリコン基板、アモルファスシリコン基板、ドープ若しくは未ドープのポリシリコン基板、ガラス、サファイア、又はいずれかの種類のケイ素含有基板であってよいウェハをテクスチャリングする多工程法における少なくとも1つのプレテクスチャリング工程で用いられ得る。基板はまた、金属、ガラス、又はポリマーなどの異なる種類の基板上に堆積されたシリコンの膜であってもよい。テクスチャリング工程の前に行われるプレテクスチャリング工程は、1つの界面活性剤又は2つ以上の界面活性剤の混合物を溶液中に含む本開示の製剤の使用を含む前処理工程である。
【0054】
1又は複数の界面活性剤を含むプレテクスチャリング製剤は、プレテクスチャリング工程及びテクスチャリング工程の後又はその最中に、ウェハの反射率を改善(低下)させるものと考えられる。プレテクスチャリング工程は、界面活性剤を含む本開示のプレテクスチャリング製剤を用い、テクスチャリング工程は、一般的にウェットエッチング液とも称される公知のいずれかのエッチング組成物又はエッチング溶液を用いた標準的ないかなるテクスチャリング又はエッチング工程であってもよい。例えば、テクスチャリング工程は、標準的なテクスチャリング浴中の標準的なテクスチャリング溶液を用い得る。
【0055】
本開示のプレテクスチャリング製剤は、プレテクスチャリング工程で用いられる場合、シリコン表面を洗浄するという追加の有益性を提供し得る。テクスチャリングプロセスの完了後、単結晶シリコンの場合は、高密度で小さいピラミッド構造の形成、多結晶シリコンの場合は、より均一なテクスチャ付与表面の形成を伴ってテクスチャリング品質が向上され、より低い反射率がもたらされる。
【0056】
本開示は、さらに、シリコンウェハを本明細書で開示される1又は複数のプレテクスチャリング製剤で湿潤する工程を含む、シリコンウェハをテクスチャリングする方法、及びシリコンウェハを本明細書に記載されるプレテクスチャリング製剤で湿潤する工程を含む、シリコンウェハをテクスチャリングする方法、シリコンウェハを本明細書に記載されるプレテクスチャリング製剤で湿潤する工程、及び上記ウェハをエッチング組成物で湿潤する工程を含むシリコンウェハをテクスチャリングする方法、を提供する。上述のプレテクスチャリング製剤のいずれが、本開示の方法で用いられてもよい。
【0057】
本開示のテクスチャリングプロセスは、少なくともプレテクスチャリング工程、及び続いてのテクスチャリング工程を含む多工程テクスチャリングプロセスであり得る。多工程テクスチャリングプロセスはまた、1若しくは複数のリンス工程、1若しくは複数の洗浄工程、1若しくは複数の所望に応じて行われるソーダメージ除去工程、及び/又は他の工程も含み得る。ウェハは、ソーダメージ除去工程の前に、テクスチャリング(エッチング)工程の前に、又はソーダメージ除去工程及びテクスチャリング工程の両方の前に、本開示のプレテクスチャリング製剤で湿潤され得る。
【0058】
ウェハは、プレテクスチャリング工程及び/又はテクスチャリング工程の前及び後に、別個のリンス工程でリンスされ得る。湿潤は、室温又は高められた温度で行われてよい。ウェハは、本開示のプレテクスチャリング製剤がウェハに適用される方法に基づいて変動し得る時間にわたって、本開示のプレテクスチャリング製剤で湿潤され得る。
【0059】
II.エッチング液
本開示は、エッチング液の製剤を提供する。半導体産業では、マイクロエレクトロニクスデバイス、シリコンチップ、液晶ディスプレイ、MEMS(マイクロ電気機械システム)、プリント配線板などにおける電子回路及び電子コンポーネントの寸法の縮小並びに密度の増加が急速に進められている。それらの中の集積回路は、層構造又は積層構造とされており、各回路層間の絶縁層の厚さは縮小を続け、フィーチャサイズ(feature sizes)はどんどん小さくなっている。フィーチャサイズが縮小されるに従って、パターンはより小さくなり、デバイスの性能パラメータは、より厳しく、強くなってきた。その結果、これまでは許容可能であった様々な問題が、フィーチャサイズの縮小に起因して、もはや許容することができないものとなってきた、又はますます問題となってきた。
【0060】
高度集積回路の製造において、密度の増加に伴う問題を最小限に抑えるために、及び性能を最適化するために、high-k及びlow-kの両方の絶縁体、並びに組み合わせられたバリア層材料が用いられてきた。
【0061】
タンタル(Ta)及び窒化タンタル(TaN)は、半導体デバイス、液晶ディスプレイ、MEMS(マイクロ電気機械システム)、プリント配線板などに、並びに貴金属、アルミニウム(Al)、及び銅(Cu)配線のグラウンド層やキャップ層として用いられる。半導体デバイスでは、それは、バリア金属、ハードマスク、又はゲート材料として用いられ得る。
【0062】
このような用途のためのデバイスの構築では、Ta及びTaNをエッチングする必要のある場合が多い。Ta及びTaNの様々な種類の使用及びデバイス環境では、これら2つの材料がエッチングされる際に、同時に他の層が接触している又はそうでなければ露出している。このような他の材料(例:金属導電体、誘電体、及びハードマーク(hard marks))の存在下では、Ta及びTaNの高選択性エッチングが、デバイスの歩留まり及び長寿命のために必要とされる。
【0063】
本開示は、半導体デバイス中に存在する金属導電体層、ハードマスク層、及びlow-k誘電体層と比較して選択的にTa及び/又はTaNをエッチングするための、エッチング液用製剤、プロセスを含む。より具体的には、本開示は、銅及びlow-k誘電体層と比較して選択的にTa及び/又はTaNをエッチングするための組成物及びプロセスに関する。
【0064】
本開示のエッチング液製剤は、相対的に高いTa/Cu及び/又はTaN/Cuエッチング選択性を有し得る(すなわち、Cuエッチング速度に対するTaの高いエッチング速度比、及び/又はCuエッチング速度に対するTaNの高いエッチング速度比)。いくつかの実施形態では、エッチング組成物は、約2以上、約3以上、約4以上、約5以上、約6以上、約7以上、約8以上、約9以上、約10以上、約15以上、約20以上、約30以上、約40以上、約50以上、又は約60以下、約70以下、約80以下、約90以下、約100以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内のTa/Cu及び/又はTaN/Cuエッチング選択性を有し得る。
【0065】
本開示のエッチング液製剤は、相対的に高いTa/誘電材料(例:SiO2又はlow-k材料)及び/又はTaN/誘電材料エッチング選択性を有し得る(すなわち、誘電材料エッチング速度に対するTaの高いエッチング速度比、及び/又は誘電材料エッチング速度に対するTaNの高いエッチング速度比)。いくつかの実施形態では、エッチング組成物は、約2以上、約3以上、約4以上、約5以上、約6以上、約7以上、約8以上、約9以上、約10以上、約15以上、約20以上、約30以上、約40以上、約50以上、又は約60以下、約70以下、約80以下、約90以下、約100以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内のTa/誘電材料及び/又はTaN/誘電材料エッチング選択性を有し得る。
【0066】
本開示のエッチング液は、フッ化水素酸(HF)、1又は複数種類の界面活性剤クラスから選択される1又は複数の界面活性剤、1又は複数の溶媒、所望に応じて1又は複数の酸化剤、及び1又は複数の錯化剤を含み得る。
【0067】
1.フッ化水素酸
フッ化水素酸は、エッチングプロセスの過程で、半導体基板上のTa及び/又はTaNの除去を促進及び向上させることができるものと考えられる。
【0068】
フッ化水素酸は、エッチング液製剤中に、約0.1重量%以上、約0.2重量%以上、約0.4重量%以上、約0.5重量%以上、約0.6重量%以上、約0.8重量%以上、約1.0重量%以上、約1.2重量%以上、約1.4重量%以上、約1.5重量%以上、又は約2.0重量%以下、約2.5重量%以下、約3重量%以下、約3.5重量%以下、約4.0重量%以下、約4.5重量%以下、約5.0重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で存在し得る。
【0069】
2.界面活性剤
本開示のエッチング液製剤は、界面活性剤系とも称される1又は複数の界面活性剤を含む。界面活性剤は、エッチング組成物の均質性を促進し得、溶媒中への成分(例:スルホン酸)の溶解を補助し得る。
【0070】
本開示のエッチング液製剤での使用に適する界面活性剤は、式Iの1又は複数の界面活性剤及び/又は共界面活性剤であって、
【0071】
【0072】
式中、R1及びR2は、同じであっても又は異なっていてもよく、C1~C6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基を含み、所望に応じて、C1~C6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの少なくとも1つを含む基を含んでよく、アルキル鎖は、所望に応じて、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1又は複数の置換基で置換されていてよく;nは、1~12の整数であり;末端窒素は、R3でさらに置換されてもよく、この場合R3は、水素、酸素、ヒドロキシル、及びC1~C6アルキルから成る群より選択される、界面活性剤及び/又は共界面活性剤;並びに所望に応じて存在してよく、存在する場合、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンから成る群より選択される、この化合物に付随する対イオン、を含む。
【0073】
特に、適切な界面活性剤又は共界面活性剤は、本明細書で述べる界面活性剤1~6のいずれか1つ以上を含み得る。
界面活性剤は、エッチング液製剤中に、約0.0001重量%以上、約0.01重量%以上、約0.1重量%以上、約0.2重量%以上、約0.3重量%以上、約0.4重量%以上、約0.5重量%以上、又は約0.6重量%以下、約0.7重量%以下、約0.8重量%以下、約0.9重量%以下、約1.0重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で存在し得る。
【0074】
3.溶媒
本開示のエッチング液製剤は、1又は複数の溶媒を含み得る。エッチング組成物は、カルボン酸である第一の溶媒を含み得る。第一の溶媒として用いられるカルボン酸は、エッチングプロセスの過程で、半導体基板上のTa及び/又はTaNの除去を促進及び向上し得る。
【0075】
適切な第一の溶媒は、式:R-COOHで、式中、Rは、H又はC1~C6アルキルであるカルボン酸を含んでよく、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、乳酸、酪酸、吉草酸、及びカプロン酸などである。
【0076】
第一の溶媒は、本開示のエッチング液製剤の主成分であり得る。例えば、第一の溶媒は、エッチング液製剤中に、約70重量%以上、約75重量%以上、約80重量%以上、約85重量%以上、又は約90重量%以下、約95重量%以下、約96重量%以下、約97重量%以下、約98重量%以下、約99重量%以下、約99.9重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で存在し得る。
【0077】
別の選択肢として、本開示のエッチング液製剤は、2つ以上の溶媒を含み得る。例えば、エッチング組成物は、有機溶媒(カルボン酸ではない)及び無機溶媒から成る群より選択される少なくとも1つの第二の溶媒を含み得る。適切な無機溶媒としては、水及び水溶液が挙げられる。水は、脱イオン水及び超純水であってよく、有機汚染物を含有しない、最小抵抗率が約4~約17メガオーム又は少なくとも約17メガオームである水であってよい。
【0078】
少なくとも1つの第二の溶媒(例:水)は、約0.01重量%以上、約0.1重量%以上、約0.5重量%以上、約1重量%以上、約2重量%以上、約4重量%以上、約5重量%以上、又は約6重量%以下、約7重量%以下、約8重量%以下、約9重量%以下、約10重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で存在し得る。
【0079】
第二の溶媒は、カルボン酸ではない有機溶媒であり得る。例えば、有機溶媒は、約0以上、約0.1以上、約0.2以上、約0.3以上、約0.5以上、約1.0以上、約1.5以上、約2.0以上、又は約2.5以下、約3.0以下、約3.5以下、約4.0以下、約4.5以下、約5.0以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の分配係数(logP)を有する疎水性有機溶媒であり得る。
【0080】
本明細書で用いられる場合、分配係数のlogPは、n-オクタノールと水との二相系から得られる。いくつかの実施形態では、有機溶媒は、アルコール又はエーテルであり得る。エーテルは、アルキレングリコールエーテル(例:ジアルキレングリコールエーテル、トリアルキレングリコールエーテル、及びテトラアルキレングリコールエーテル)であり得る。そのような有機溶媒の例としては、ベンジルアルコール、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、及びジプロピレングリコールジメチルエーテルが挙げられる。理論に束縛されるものではないが、疎水性有機溶媒を用いることで、エッチングプロセスの過程においてTa又はTaNの除去を低下させることなくCuの除去を阻害することができるものと考えられる。
【0081】
少なくとも1つの第二の溶媒(例:有機溶媒)は、約0.1重量%以上、約0.2重量%以上、約0.4重量%以上、約0.5重量%以上、約0.6重量%以上、約0.8重量%以上、約1.0重量%以上、約1.5重量%以上、約2.0重量%以上、約2.5重量%以上、約5.0重量%以上、又は約6.0重量%以下、約8.0重量%以下、約10重量%以下、約15重量%以下、約20重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で存在し得る。
【0082】
4.酸化剤
本開示のエッチング液製剤は、所望に応じて、マイクロエレクトロニクス用途での使用に適するいずれかの酸化剤を含んでよい。酸化剤は、半導体基板上のTa及び/又はTaNの除去を促進及び向上し得る。適切な酸化剤としては、限定されるものではないが、酸化性の酸又はその塩(例:硝酸、過マンガン酸、又は過マンガン酸カリウム)、過酸化物(例:過酸化水素、過酸化ジアルキル、過酸化尿素)、過スルホン酸(例:ヘキサフルオロプロパン過スルホン酸、メタン過スルホン酸、トリフルオロメタン過スルホン酸、又はp-トルエン過スルホン酸)及びその塩、オゾン、過炭酸(例:過酢酸)及びその塩、過リン酸及びその塩、過硫酸及びその塩(例:過硫酸アンモニウム又は過硫酸テトラメチルアンモニウム)、過塩素酸及びその塩(例:過塩素酸アンモニウム、過塩素酸ナトリウム、又は過塩素酸テトラメチルアンモニウム)、並びに過ヨウ素酸及びその塩(例:過ヨウ素酸、過ヨウ素酸アンモニウム、又は過ヨウ素酸テトラメチルアンモニウム)が挙げられる。これらの酸化剤は、単独で又は組み合わせて用いられ得る。
【0083】
酸化剤は、エッチング液製剤中に、約0.01重量%以上、約0.02重量%以上、約0.04重量%以上、約0.05重量%以上、約0.06重量%以上、約0.08重量%以上、約0.1重量%以上、約0.15重量%以上、約0.2重量%以上、又は約0.25重量%以下、約0.3重量%以下、約0.35重量%以下、約0.4重量%以下、約0.45重量%以下、約0.5重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で存在し得る。
【0084】
別の選択肢として、本開示のエッチング液製剤は、酸化剤(例:硝酸)を除外し得る。そのような実施形態では、エッチング組成物は、依然として、パターン化半導体基板(例:パターン化ウェハ)において、他の材料(例:金属導電体層、ハードマスク層、及びlow-k誘電体層)と比較してTa及び/又はTaNを選択的にエッチングすることが可能であり得る。
【0085】
5.錯化剤
本開示のエッチング液製剤は、適切ないかなる錯化剤を含んでもよい。錯化剤は、エッチングプロセスの過程で、エッチング組成物に曝露されたCuの除去を阻害しながら、半導体基板上のTa及び/又はTaNの除去を促進し、向上させ得る。適切な錯化剤は、ポリカルボン酸及びヒドロキシカルボン酸から成る群より選択され得る。本明細書で用いられる場合、「ポリカルボン酸」の用語は、2つ以上の(例:2、3、又は4つ)カルボキシル基(COOH)を有する化合物を意味する。適切なポリカルボン酸の例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、及びアジピン酸が挙げられる。本明細書で用いられる場合、「ヒドロキシカルボン酸」の用語は、少なくとも1つの(例:2、3、又は4つ)ヒドロキシル基(OH)及び少なくとも1つの(例:2、3、又は4つ)カルボキシル基(COOH)を有する化合物を意味する。適切なヒドロキシカルボン酸の例としては、クエン酸及び2-ヒドロキシ安息香酸が挙げられる。いくつかの実施形態では、ポリカルボン酸は、ヒドロキシル基を含まない。いくつかの実施形態では、ヒドロキシカルボン酸は、1つだけのヒドロキシル基を含む。
【0086】
錯化剤は、エッチング液製剤中に、約0.1重量%以上、約0.2重量%以上、約0.4重量%以上、約0.5重量%以上、約0.6重量%以上、約0.8重量%以上、約1.0重量%以上、約1.5重量%以上、約2.0重量%以上、約2.5重量%以上、約5.0重量%以上、又は約6.0重量%以下、約6.5重量%以下、約7.0重量%以下、約7.5重量%以下、約8.0重量%以下、約8.5重量%以下、約9.0重量%以下、約9.5重量%以下、約10重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で含まれ得る。
【0087】
6.他の添加剤
本開示のエッチング液製剤は、少なくとも1つのヘキサフルオロシリケート化合物をさらに含み得る。以下で述べるヘキサフルオロシリケート化合物は、エッチングプロセスの過程で、エッチング組成物に曝露された誘電材料(SiO2)の除去を阻害しながら、半導体基板上のTa及び/又はTaNの除去を促進し、向上させ得る。適切なヘキサフルオロシリケート化合物としては、ヘキサフルオロケイ酸(H2SiF6)及びその塩が挙げられる。ヘキサフルオロシリケート化合物の具体例としては、H2SiF6、Na2SiF6、K2SiF6、及び(NH4)2SiF6が挙げられる。
【0088】
ヘキサフルオロシリケート化合物は、エッチング液製剤中に、約0.1重量%以上、約0.2重量%以上、約0.4重量%以上、約0.5重量%以上、約0.6重量%以上、約0.8重量%以上、約1.0重量%以上、約1.2重量%以上、約1.4重量%以上、約1.5重量%以上、又は約2.0重量%以下、約2.5重量%以下、約3重量%以下、約3.5重量%以下、約4.0重量%以下、約4.5重量%以下、約5.0重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で存在し得る。
【0089】
本開示のエッチング液製剤は、少なくとも1つのスルホン酸をさらに含み得る。スルホン酸は、エッチングプロセスの過程で、半導体基板上のTa及び/又はTaNの除去を促進し、向上させ得る。適切なスルホン酸の例としては、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、又はドデシルベンゼンスルホン酸が挙げられる。
【0090】
スルホン酸は、エッチング液製剤中に、約0.1重量%以上、約0.2重量%以上、約0.4重量%以上、約0.5重量%以上、約0.6重量%以上、約0.8重量%以上、約1.0重量%以上、約1.5重量%以上、約2.0重量%以上、約2.5重量%以上、約5.0重量%以上、又は約6.0重量%以下、約6.5重量%以下、約7.0重量%以下、約7.5重量%以下、約8.0重量%以下、約8.5重量%以下、約9.0重量%以下、約9.5重量%以下、約10重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で存在し得る。
【0091】
加えて、本開示のエッチング液製剤は、所望に応じて含まれてよい成分として、pH調節剤、腐食防止剤、追加の界面活性剤、追加の有機溶媒、殺生物剤、及び消泡剤などの追加の添加剤を含有し得る。
【0092】
7.作製方法
本開示のエッチング組成物は、単に成分を一緒に混合することによって調製されてよく、又はキットに入っている2つの組成物をブレンドすることによって調製されてもよい。キット中の第一の組成物は、酸化剤(例:硝酸)の水溶液であり得る。キット中の第二の組成物は、2つの組成物のブレンドによって本開示の所望されるエッチング組成物が得られるように、本開示のエッチング組成物の残りの成分を、所定の比率で濃縮形態で含有し得る。
【0093】
8.使用方法
本開示は、Ta及び/又はTaNを含有する半導体基板(例:Ta及び/又はTaNを含有するフィーチャ)をエッチングする方法を提供する。方法は、Ta及び/又はTaNを含有する半導体基板を本開示のエッチング組成物と接触させて、Ta及び/又はTaNを除去することを含む。方法はさらに、接触工程の後にリンス溶媒によって半導体基板をリンスすること、及び/又はリンス工程の後に半導体基板を乾燥することを含み得る。いくつかの実施形態では、方法は、半導体基板にあるCu又は誘電材料(例:SiO2)を実質的に除去しない。例えば、方法は、半導体基板にあるCu又は誘電材料を、約5重量%を超えて除去しない(例:約3重量%を超えない、又は約1重量%を超えない)。
【0094】
エッチング方法は:1)Ta及び/又はTaNを含有する半導体基板を提供する工程;2)半導体基板を本明細書で述べるエッチング組成物と接触させる工程;3)1又は複数の適切なリンス溶媒で半導体基板をリンスする工程;及び4)所望に応じて、半導体基板を乾燥する工程(例:リンス溶媒を除去し、半導体基板の完全性を損なわない適切ないずれかの手段によって)、を含み得る。
【0095】
この方法においてエッチングされるべきTa及び/又はTaNを含有する半導体基板は、エッチングプロセスの過程でやはり除去され得る有機残渣及び有機金属残渣を、及び加えて様々な金属酸化物を含有し得る。半導体基板(例:ウェハ)は、典型的には、シリコン、シリコンゲルマニウム、GaAsなどの第III族-第V族化合物、又はこれらのいずれかの組み合わせから構築される。半導体基板は、さらに、相互接続フィーチャ(例:金属線及び誘電材料)などの露出した集積回路構造を含み得る。相互接続フィーチャに用いられる金属及び金属合金としては、限定されるものではないが、アルミニウム、銅との合金化アルミニウム、銅、チタン、タンタル、コバルト、シリコン、窒化チタン、窒化タンタル、及びタングステンが挙げられる。半導体基板はまた、層間誘電体、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化チタン、及び炭素ドープ酸化ケイ素の層も含み得る。
【0096】
半導体基板とエッチング組成物との接触は、適切ないかなる方法で行われてもよく、エッチング組成物を槽に入れて、このエッチング組成物中に半導体基板を浸漬させること及び/若しくは沈めること、エッチング組成物を半導体基板上にスプレーすること、エッチング組成物を半導体基板上に流動させること、又はこれらのいずれかの組み合わせなどである。
【0097】
III.フォトレジスト剥離液
本開示は、フォトレジスト剥離液の製剤をさらに提供する。半導体集積回路及び液晶ディプレイのデバイス回路は、非常に微細な構造を有する。微細な回路は、一般に、基板上にコーティングされた絶縁体膜又は導電体金属膜(それぞれ、酸化物膜又はAl合金膜など)上にフォトレジストを均一にコーティングすること、及びフォトレジストを露光、現像して、ある特定のパターンを形成すること、及びパターン化されたフォトレジストをマスクとして用いて金属膜又は絶縁体膜をエッチングし、その後不要なフォトレジストを除去すること、によって製造される。
【0098】
フォトレジスト剥離製剤は、基板からフォトレジストを除去する際に用いられる。一般に、フォトレジスト剥離製剤は、低温及び高温の両方で高い剥離力を有するべきであり、基板上に残渣を残すべきではない。さらに、望ましい剥離液は、金属膜を腐食するべきではなく、同時に、大スケール液晶ディスプレイパネル回路の製造において使用される剥離組成物が大量であることを考慮すると、人間及び環境の両方に対して有害性をほとんど引き起こすべきではない。
【0099】
本開示は、フォトレジストを剥離するための、枚葉式処理法及び浸漬法の両方に適するフォトレジスト剥離製剤を、特に、エアナイフプロセスを用いる枚葉式処理法がフォトレジストの剥離に適用される場合であっても、基板上に不純物を残さない製剤を提供する。
【0100】
本開示はさらに、基板上にコーティングされた様々な種類の膜に対して良好な剥離力を有し、ベアガラスの洗浄時に不純物粒子が形成することを防止するフォトレジスト剥離組成物を提供する。
【0101】
高い空気圧(エアナイフ)を用いた枚葉式処理のフォトレジスト剥離プロセス及び浸漬プロセスの両方に適するものとするために、フォトレジスト剥離製剤は、良好な剥離力を有し、非腐食性であり、基板上に不純物粒子を形成しないことが不可欠である。
【0102】
基板上のいかなる不純物も有効に防止するために、剥離製剤は、酸化インジウムスズ(ITO)膜、アルミニウム、クロム、窒化ケイ素膜、及びアモルファスシリコン膜などの様々なLCD層によって容易に吸収されるべきである。また、剥離製剤は、LCD層との均一に低い表面張力を示すべきである。さらに、低い揮発性及び粘度を有するべきでもある。加えて、LCD層の表面とその表面上に滴下された剥離製剤との間の接触角は、小さく、一定に維持されるべきである。
【0103】
加えて、剥離製剤は、様々な種類のLCD層に対して均一な物理的特性を示すこと、及び剥離製剤は、LCD製造設備内で粒子の存在を検査した場合に、ベアガラス上での不純物粒子の形成を防止することができることが望ましい。
【0104】
本開示のフォトレジスト剥離製剤は、アルカノールアミン、スルホキシド又はスルホン化合物、グリコールエーテル、及び1又は複数種類の界面活性剤クラスから選択される1又は複数の界面活性剤を含む。
【0105】
1.アルカノールアミン
アルカノールアミンは、フォトレジストを基板から剥離する。適切なアルカノールアミンとしては、モノイソプロパノールアミン及びモノエタノールアミンが挙げられる。
【0106】
アルカノールアミンは、フォトレジスト剥離液製剤中に、約5重量%以上、約6重量%以上、約7重量%以上、約8重量%以上、約9重量%以上、又は約10重量%以下、又は約11重量%以下、約12重量%以下、約13重量%以下、約14重量%以下、約15重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で存在する。
【0107】
2.スルホキシド又はスルホン
スルホキシド又はスルホン化合物は、フォトレジストを溶解する溶媒として提供され、それは、剥離組成物とLCD層との間の表面張力を制御する。適切な化合物としては、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホン、又はジメチルスルホンが挙げられる。
【0108】
スルホキシド又はスルホン化合物は、フォトレジスト剥離製剤中に、約35重量%以上、約40重量%以上、又は約45重量%以下、約50重量%以下、約55重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で含まれ得る。
【0109】
3.グリコールエーテル
グリコールエーテルは、上述のスルホキシド又はスルホン化合物と組み合わされて、フォトレジストを溶解し、並びに化合物とLCD層との間の表面張力を制御して、ジメチルスルホキシド及びモノエタノールアミンから成る組成物よりも非常に大きくエアナイフフォトレジスト剥離能力を向上させるように働く。ジメチルスルホキシド単独でも、エアナイフフォトレジスト剥離能力を向上させるように働くが、モノエタノールアミンとの組み合わせは、エアナイフフォトレジスト剥離能力を大きく低下させる。しかし、グリコールエーテルを、ジメチルスルホキシド及びモノエタノールアミンから成る化合物に添加することで、化合物のエアナイフフォトレジスト剥離能力及びフォトレジスト剥離力の両方が高められる。
【0110】
適切なグリコールエーテル化合物としては、エチルジグリコール、メチルジグリコール、又はブチルジグリコールが挙げられる。
グリコールエーテルは、フォトレジスト剥離製剤中に、約35重量%以上、約40重量%以上、又は約45重量%以下、約50重量%以下、約55重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で含まれ得る。
【0111】
4.界面活性剤
1又は複数の界面活性剤が、フォトレジスト剥離液製剤中に含まれ得る。界面活性剤は、ベアグラスをリンスする間に、基板上に不純物粒子の生成及び残留を防止し得る。本開示のフォトレジスト剥離液製剤での使用に適する界面活性剤は、式Iの1若しくは複数の界面活性剤及び/又は共界面活性剤であって、
【0112】
【0113】
式中、R1及びR2は、同じであっても又は異なっていてもよく、C1~C6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基を含み、所望に応じて、C1~C6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの少なくとも1つを含む基を含んでよく、アルキル鎖は、所望に応じて、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1又は複数の置換基で置換されていてよく;nは、1~12の整数であり;末端窒素は、R3でさらに置換されてもよく、この場合R3は、水素、酸素、ヒドロキシル、及びC1~C6アルキルから成る群より選択される、界面活性剤及び/又は共界面活性剤;並びに所望に応じて存在してよく、存在する場合、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンから成る群より選択される、この化合物に付随する対イオン、を含む。
【0114】
特に、適切な界面活性剤又は共界面活性剤は、本明細書で述べる界面活性剤1~6のいずれか1つ以上を含み得る。
フォトレジスト剥離液製剤は、約0.05重量%以上、約0.1重量%以上、約0.2重量%以上、又は約0.3重量%以下、約0.4重量%以下、約0.5重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で1又は複数の界面活性剤を含み得る。
【0115】
5.他の添加剤
本開示のフォトレジスト剥離液製剤はさらに、約1重量%以上、約2重量%以上、約3重量%以上、約4重量%以上、約5重量%以上、又は約6重量%以下、約7重量%以下、約8重量%以下、約9重量%以下、約10重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドを含み得る。
【0116】
フォトレジスト剥離液製剤はまた、約3重量%以上、約4重量%以上、約5重量%以上、約6重量%以上、約7重量%以上、約8重量%以上、約9重量%以上、又は約10重量%以下、約11重量%以下、約12重量%以下、約13重量%以下、約14重量%以下、約15重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で、ベンゼンジオールも含み得る。
【0117】
フォトレジスト剥離製剤はまた、約1重量%以上、約2重量%以上、約3重量%以上、約4重量%以上、約5重量%以上、約6重量%以上、約7重量%以上、約8重量%以上、約9重量%以上、又は約10重量%以下、約11重量%以下、約12重量%以下、約13重量%以下、約14重量%以下、約15重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で、アルキルスルホン酸も含み得る。
【0118】
VI.界面活性剤
本開示は、アミノ酸のシロキサン誘導体の形態である、プレテクスチャリング剤、エッチング液、及びフォトレジスト剥離液で用いるための界面活性剤を提供する。アミノ酸は、天然若しくは合成であってよい、又はカプロラクタムなどのラクタムの開環反応から得られてもよい。本開示の化合物は、表面活性特性を有することが示されており、例えば界面活性剤及び湿潤剤として用いられ得る。特に、本開示は、以下に示される式Iの化合物を提供し:
【0119】
【0120】
式中、R1及びR2は、同じであっても又は異なっていてもよく、C1~C6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基であり、所望に応じて、C1~C6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの1つ以上を含む置換基を含んでよく、アルキル鎖は、所望に応じて、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1又は複数の置換基で置換されていてよく;
nは、1~12の整数であり;
末端窒素は、R3でさらに置換されてもよく、この場合R3は、水素、酸素、ヒドロキシル、及びC1~C6アルキルから成る群より選択され;並びに
所望に応じて存在してよい対イオンが、化合物に付随していてもよく、存在する場合、対イオンは、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンから成る群より選択されてよい。
【0121】
本開示は、さらに、式Iaの化合物を提供し:
【0122】
【0123】
式中、R1及びR2は、同じであっても又は異なっていてもよく、C1~C6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基を含み、所望に応じて、C1~C6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの少なくとも1つを含む基を含んでよく、アルキル鎖は、所望に応じて、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1又は複数の置換基で置換されていてよく;
mは、1~6の整数であり;
末端窒素は、R3でさらに置換されてもよく、この場合R3は、水素、酸素、及びC1~C6アルキルから成る群より選択され、アルキル鎖は、カルボキシル、カルボキシレート、及びスルホネートから成る群より選択される1又は複数の置換基で置換されてもよく;並びに
所望に応じて存在してよい対イオンが、化合物に付随していてもよく、存在する場合、対イオンは、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンから成る群より選択されてよい。
【0124】
本開示は、さらに、式Ibの化合物を提供し:
【0125】
【0126】
式中、R1及びR2は、同じであっても又は異なっていてもよく、C1~C6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基を含み、所望に応じて、C1~C6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの少なくとも1つを含む基を含んでよく、アルキル鎖は、所望に応じて、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1又は複数の置換基で置換されていてよく;
pは、5であり;
末端窒素は、R3でさらに置換されてもよく、この場合R3は、水素、酸素、及びC1~C6アルキルから成る群より選択され、アルキル鎖は、カルボキシル、カルボキシレート、及びスルホネートから成る群より選択される1又は複数の置換基で置換されてもよく;並びに
所望に応じて存在してよい対イオンが、化合物に付随していてもよく、存在する場合、対イオンは、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンから成る群より選択されてよい。
【0127】
本開示によって提供される1つの具体的な化合物は、6-(ジメチルアミノ)-N-(3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)ヘキサンアミド(界面活性剤1)であり、以下の式を有する:
【0128】
【0129】
本開示によって提供される第二の具体的な化合物は、6-(ジメチルアミノ)-N-(3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)ヘキサミニウムクロリド(界面活性剤2)であり、以下の式を有する:
【0130】
【0131】
本開示によって提供される第三の具体的な化合物は、3 6-((3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)アミノ)-N,N,N-トリメチル-6-オキソヘキサン-1-アミニウムヨージド(界面活性剤3)であり、以下の式を有する:
【0132】
【0133】
本開示によって提供される第四の具体的な化合物は、6-((3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)アミノ)-N,N-ジメチル-6-オキソヘキサン-1-アミンオキシド(界面活性剤4)であり、以下の式を有する:
【0134】
【0135】
上記の構造において、「N→O」の表記は、窒素と酸素との間の非イオン性結合相互作用を意味することを意図している。
本開示によって提供される第五の具体的な化合物は、4-((6-((3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)アミノ)-6-オキソヘキシル)ジメチルアンモニオ)ブタン-1-スルホネート(界面活性剤5)であり、以下の式を有する:
【0136】
【0137】
本開示によって提供される第六の具体的な化合物は、5-((6-((3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)アミノ)-6-オキソヘキシル)ジメチルアンモニオ)ペンタン-1-スルホネート(界面活性剤6)であり、以下の式を有する:
【0138】
【0139】
これらの化合物は、様々な方法によって合成され得る。1つのそのような方法は、N-アルキル化又はN-アシル化アミノ酸などのアミノ酸をシロキサンと反応させて、アミノ酸C末端を所望されるシロキサン誘導体に変換することを含む。アミノ酸N末端が、さらにプロトン化、アルキル化、又は酸化されて、第四級アミン又はN-オキシドが例えば得られてもよい。
【0140】
アミノ酸は、天然若しくは合成であってよい、又はカプロラクタムなどのラクタムの開環反応から誘導されてもよい。開環反応は、酸又はアルカリ触媒反応であってよく、酸触媒反応の例を以下のスキーム1に示す。
【0141】
【0142】
アミノ酸は、少なくは1個の又は多くは12個の炭素を、N末端とC末端との間に有し得る。アルキル鎖は、分岐鎖又は直鎖であってよい。アルキル鎖には、窒素、酸素、又は硫黄が介在していてもよい。アルキル鎖は、さらに、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1又は複数の置換基で置換されていてもよい。N末端窒素は、アシル化又は1若しくは複数のアルキル基でアルキル化されていてもよい。例えば、アミノ酸は、6-(ジメチルアミノ)ヘキサン酸であってよい。
【0143】
シロキサンは、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、tert-ブトキシなどの1又は複数のアルコキシ基で置換されていてもよい。シロキサンは、プロピルなどの1又は複数のアルキル基でさらに置換されていてもよく、この場合、アルキル基は、なおさらに、窒素などのアミノ酸へのシロキサンのカップリングを可能とするための適切な官能基で置換されていてもよい。例えば、シロキサンは、3-アミノプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランであってよい。
【0144】
アミノ酸のシロキサン誘導体は、以下のスキーム2に示されるように合成され得る。示されるように、6-アミノヘキサン酸が、還流下、ギ酸中でホルムアルデヒドで処理されて、6-(ジメチルアミノ)ヘキサン酸が得られる。次に、この遊離カルボン酸が、還流トルエン中で3-アミノプロピル(トリスメチルシロキシ)シランにカップリングされて、所望されるシロキサン誘導体が得られる。
【0145】
【0146】
N末端窒素は、水溶性及び表面活性特性を改変又は改善するために、さらに誘導体化されてもよい。サンプル合成スキームを、以下のスキーム3に示し、この場合、N末端窒素は、塩酸で処理されて、対応する塩酸塩が得られる。
【0147】
【0148】
N末端窒素は、アルキル化されてもよい。サンプル合成スキームを、以下に示し、この場合、N末端窒素は、ヨウ化メチルで処理されて、対応する第四級アミン塩が得られる。
【0149】
【0150】
N末端窒素は、以下のサンプル合成スキームのスキーム5に示されるように、還流水中で過酸化水素で処理されて、対応するN-オキシドが得られてもよい。
【0151】
【0152】
本開示の化合物は、表面活性特性を呈する。これらの特性は、様々な方法によって測定し、表され得る。界面活性剤を表し得る1つの方法は、分子の臨界ミセル濃度(CMC)による。CMCは、ミセルを形成する界面活性剤の濃度として定義され得るものであり、それよりも高い濃度では、追加の界面活性剤はすべてミセルに取り込まれる。
【0153】
界面活性剤濃度が上昇するに従って、表面張力は低下する。表面が界面活性剤分子で完全に覆われると、ミセルが形成し始める。この時点が、CMC、さらには最小表面張力を表している。界面活性剤をさらに添加しても、表面張力にさらに影響を与えることはない。CMCは、したがって、界面活性剤濃度の関数として表面張力の変化を観察することによって測定され得る。この値を測定するためのそのような1つの方法は、ウィルヘルミープレート法である。ウィルヘルミープレートは、通常、ワイヤで天秤に取り付けられた薄いイリジウム-白金プレートであり、空気-液体界面に対して垂直に配置される。天秤を用いて、濡れによってプレートに働く力が測定される。次に、この値を用い、式1に従って表面張力(γ)が算出され:
式1:γ=F/l cosθ
式中、lは、濡れ周長(w及びdをそれぞれプレートの厚さ及び幅とした場合に、2w+2d)に等しく、cosθについては、液体とプレートとの間の接触角は、現存文献値がない場合は0と仮定する。
【0154】
界面活性剤の性能を評価するために用いられる別のパラメータは、動的表面張力である。動的表面張力は、特定の表面又は界面の経過時間に対する表面張力の値である。界面活性剤が添加された液体の場合、これは、平衡値と異なり得る。表面が生成された直後は、表面張力は、純液体の表面張力と等しい。上記で述べたように、界面活性剤は、表面張力を低下させるものであるため、表面張力は、平衡値に到達するまで低下する。平衡に到達するのに要する時間は、界面活性剤の拡散速度及び吸着速度に依存する。
【0155】
動的表面張力を測定する1つの方法は、最大泡圧式張力計によるものである。この装置は、キャピラリーによって液体中に形成された気泡の最大内圧を測定する。測定された値は、気泡形成の開始から最大圧力となるまでの時間である、ある特定の表面経過時間での表面張力に相当する。表面張力の表面経過時間に対する依存性は、気泡が生成される速度を変動させることによって測定することができる。
【0156】
表面活性化合物は、接触角によって測定される固体基材上での湿潤能力によっても評価され得る。液滴が、空気などの第三の媒体中で固体表面と接触する場合、液体、気体、及び固体間で三相線が形成される。三相線で役割を果たしており、液滴の接線である表面張力の単位ベクトルと、表面と、の間の角度が、接触角として表される。接触角(湿潤角としても知られる)は、液体による固体の濡れ性の尺度である。完全濡れの場合、液体は固体上に完全に拡がっており、接触角は0°である。濡れ特性は、典型的には、任意の化合物に対して1~100×CMCの濃度で測定されるが、濃度に依存する特性ではないことから、濡れ特性の測定値は、これよりも高い又は低い濃度で測定されてもよい。
【0157】
1つの方法では、光学接触角ゴニオメーターが、接触角の測定に用いられ得る。この装置は、デジタルカメラ及びソフトウェアを用いて、表面上の液体の静止液滴の輪郭形状を分析することによって接触角を求める。
【0158】
本開示の表面活性化合物に対する考え得る用途としては、シャンプー、ヘアコンディショナー、洗剤、スポットフリーリンス溶液、床及びカーペットクリーナー、落書き除去用の洗浄剤、作物保護用の湿潤剤、作物保護用の補助剤、並びにエアロゾルスプレーコーティング用の湿潤剤として用いるための製剤が挙げられる。
【0159】
当業者であれば、化合物間の少しの相違が、著しく異なる界面活性剤特性に繋がり得ることから、異なる基材、異なる用途においては、異なる化合物が用いられ得ることは理解される。
【0160】
以下の限定されない実施形態は、異なる界面活性剤の異なる特性を示すために提供される。以下の表1では、界面活性剤の略称と、それらの対応する化学構造との関連を示している。
【0161】
【0162】
5つの化合物の各々は、表面活性剤として有効であり、数ある用途の中でも、湿潤剤又は発泡剤、分散剤、乳化剤、及び洗剤用として有用である。
界面活性剤1及び2は、発泡剤又は湿潤剤として、様々な表面洗浄製品製剤及びパーソナルケア製品製剤に用いるための候補である。
【0163】
界面活性剤3は、カチオン性である。これらの界面活性剤は、上記で述べた用途、及び表面処理剤などの、パーソナルヘアケア製品などの、いくつかのさらなる特別な用途の両方に有用であり、また、撥水性表面を生成するために用いることもできる。
【0164】
界面活性剤4は、非イオン性であり、シャンプー、洗剤、硬質表面クリーナー、及び様々な他の表面洗浄製剤に用いることができる。
界面活性剤5は、双性イオン性である。これらの界面活性剤は、上記で述べた用途のすべてにおける共界面活性剤として有用である。
【0165】
製剤に用いられる本明細書で開示される化合物の量は、低くは約0.001重量%、約0.05重量%、約0.1重量%、約0.5重量%、約1重量%、約2重量%、若しくは約5重量%、又は高くは約8重量%、約10重量%、約15重量%、約20重量%、若しくは約25重量%、又は上記の値のいずれか2つを用いたいずれかの範囲内であり得る。
【0166】
実施例
核磁気共鳴(NMR)分光法は、Bruker 500MHz分光計で行った。臨界ミセル濃度(CMC)は、ウィルヘルミープレート法により、Pt-Irプレートを備えた張力計(DCAT 11,DataPhysics Instruments GmbH)を用いて23℃で特定した。動的表面張力は、最大泡圧式張力計(Kruss BP100,Kruss GmbH)を用いて23℃で特定した。接触角は、デジタルカメラを備えた光学接触角ゴニオメーター(OCA 15 Pro,DataPhysics GmbH)を用いて特定した。
【0167】
例1a:
6-(ジメチルアミノ)-N-(3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)ヘキサンアミド(界面活性剤1)及び6-((3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)アミノ)-N,N-ジメチル-6-オキソヘキサン-1-アミニウム塩(界面活性剤2)の合成
【0168】
【0169】
6-(ジメチルアミノ)ヘキサン酸(2.00g、12.56mmol、1当量)を、Dean Starkトラップを取り付けた100mLの丸底沸騰フラスコ中のトルエン(50mL)に溶解し、続いて3-アミノプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(5.48mL、13.81mmol、1.1当量)を添加した。反応容器を加熱し、Dean Stark管に水が分離されなくなるまで、24時間にわたって反応物を還流させた。溶媒を真空除去して、界面活性剤1を、黄色オイルとして94%の収率で得た。1H NMR(500MHz,DMSO)δ:0.09(s,27H),0.28-0.31(m,2H),1.12-1.26(m,2H),1.27-1.30(m,4H),1.38-1.41(m,2H),1.94(t,J=7.3Hz,2H),2.00(s,6H),2.06-2.03(m,2H),2.89(dd,J=12.9,6.8Hz,2H)。
【0170】
中性の形態では、界面活性剤1は、ハイドロトロープ剤又は他の界面活性剤の添加なしでは、純水に僅かに可溶性であるが、僅かな酸性条件でプロトン化すると、界面活性となる(界面活性剤2)。酸性条件は、pH範囲が4~7であるいずれの酸又は酸性緩衝剤の添加によって発生させてもよい。界面活性剤2は、非水性溶液中で調製されてもよく、例えば、界面活性剤1の存在下で、トルエン中に気体HClを注入することによる。
【0171】
例1b:
界面活性剤2の臨界ミセル濃度(CMC)の特定
界面活性剤2の臨界ミセル濃度(CMC)を、塩化物対イオンで試験し、約2mmolであると特定した。この界面活性剤で到達可能である最小表面張力のプラトー値は、約23mN/mである。
図1は、これらの結果のプロットであり、表面張力対濃度を示している。
【0172】
例2a:
6-((3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)アミノ)-N,N,N-トリメチル-6-オキソヘキサン-1-アミニウムヨージド(界面活性剤3)の合成
【0173】
【0174】
界面活性剤1(1.00g、2.02mmol、1当量)を、100mLの丸底フラスコ中のアセトニトリル(10mL)に溶解した。次に、Na2CO3(0.26g、2.42mmol、1.2当量)を添加し、この混合物を10分間撹拌した。ヨウ化メチル(0.377mL、6.06mmol、3当量)を添加し、反応物を40℃で24時間加熱した。冷却した反応混合物をろ過し、溶媒を真空除去して、界面活性剤3を、僅かに黄色い固体として定量的収率で得た。-H NMR(500MHz,DMSO)δ0.09(s,27H),0.38-0.42(m,2H),1.23-1.26(m,2H),1.37-1.40(m,2H),1.52-1.55(m,2H),1.65-1.69(m,2H),2.08(t,J=7.4Hz,2H),2.99(dd,J=13,6.9Hz,2H),3.04(s,9H),),3.24-3.33(m,2H)。
【0175】
純生成物は、水に可溶性であり、界面活性剤特性を有する。ハロゲンアニオンは、N-アルキル化反応から直接得ることができ、他の所望される対アニオンは、アニオン交換によって得ることができる。
【0176】
例2b:
界面活性剤3の物理的特性の特定
界面活性剤3に対する臨界ミセル濃度(CMC)を測定した。水中での濃度と共に変化する表面張力から、CMCは、約1.6mmolであると特定した。この界面活性剤で到達することができる最小表面張力のプラトー値は、約20mN/mであり、この界面活性剤が顕著な界面活性を有することを示している。これらの結果を、表面張力対濃度としてプロットして
図2に示す。
【0177】
界面活性剤3の動的表面張力を、新たに作り出された空気-水界面の表面張力の経時での変化を測定する最大泡圧式張力計で特定した。
図3は、表面張力対時間としての結果のプロットを示し、界面活性剤3が、500ms未満で界面を完全に飽和させ、界面吸着という点で極めて高速としていることを示している。
【0178】
界面活性剤3の界面張力及び表面張力の両方を低下させる能力に加えて、界面活性剤のみを含有する製剤は、並外れた湿潤特性も有している。例えば、ポリエチレン及びポリプロピレンなどの疎水性基材は、接触角0°の完全表面濡れを呈する。テフロン(登録商標)などの疎油性及び疎水性基材上では、測定した接触角は極めて低く、10.5°であった(表2)。
【0179】
【0180】
例3a:
6-((3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)アミノ)-N,N-ジメチル-6-オキソヘキサン-1-アミンオキシド(界面活性剤4)の合成
【0181】
【0182】
界面活性剤1(1.00g、2.02mmol、1当量)を、100mLの丸底フラスコ中の蒸留水(80mL)に添加し、続いて50%の過酸化水素(1.15mL、20.2mmol、10当量)を添加した。反応物を12時間還流し、次に真空濃縮した。残渣をアセトンで3回洗浄して、99%の収率で界面活性剤4を得た。1H NMR(500MHz,DMSO)δ0.09(s,27H),0.38-0.44(m,2H),1.21-1.25(m,2H),1.35-1.42(m,2H),1.50-1.55(m,2H),1.71-1.75(m,2H),2.05-2.08(m,2H),2.97-3.00(m,2H),3.01(s,9H),3.11-3.14(m,2H)。
【0183】
例3b:
界面活性剤4の物理的特性の特定
界面活性剤4に対する臨界ミセル濃度(CMC)を測定した。水中での濃度と共に変化する表面張力から、CMCは、約0.49mmolであると特定した。この界面活性剤で到達することができる最小表面張力のプラトー値は、約20mN/mであり、この界面活性剤が顕著な界面活性を有することを示している。これらの結果を、表面張力対濃度としてプロットして
図4に示す。
【0184】
界面活性剤4の動的表面張力を、最大泡圧式張力計で特定した。
図5は、表面張力対時間としての結果のプロットを示し、界面活性剤4が、新たに作り出された空気-水界面を1秒以内で完全に飽和させ、界面吸着という点で高速としていることを示している。
【0185】
界面活性剤4の界面張力及び表面張力の両方を低下させる能力に加えて、1~100×CMCの濃度で界面活性剤4のみを含有する製剤は、並外れた湿潤特性も有している。例えば、10×CMCの濃度の界面活性剤4水溶液は、ポリエチレン及びポリプロピレンなどの疎水性基材上では0°の接触角を、テフロン(登録商標)などの粗油性及び疎水性基材上では10.6°の接触角を呈する。これらの接触角は、同じ基材上での水の接触角と比較して、極めて低い(表3)。
【0186】
【0187】
例4a:
4-((6-((3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)アミノ)-6-オキソヘキシル)ジメチルアンモニオ)ブタン-1-スルホネート(界面活性剤5)の合成
【0188】
【0189】
界面活性剤1(1.00g、2.02mmol、1当量)を、100mLの丸底フラスコ中の酢酸エチル(EtOAc)(30mL)に添加し、続いて1,2-ブタンスルトン(0.27mL、2.2mmol、1.1当量)を添加した。反応物を12時間還流し、その後、溶媒を除去し、得られた白色のワックス状固体をアセトンで洗浄して、50%の収率で界面活性剤5を得た。1H NMR(500MHz,DMSO)δ0.10(s,27H),0.38-0.46(m,2H),1.23-1.27(m,2H),1.37-1.68(m,10H),1.73-1.78(m,2H),2.45-2.48(m,2H),2.97-3.01(m,8H),3.18-3.21(m,2H),3.23-3.27(m,2H)。
【0190】
例4b:
界面活性剤5の物理的特性の特定
界面活性剤5に対する臨界ミセル濃度(CMC)を測定した。水中での濃度と共に変化する表面張力から、CMCは、約0.39mmolであると特定した。この界面活性剤で到達することができる最小表面張力のプラトー値は、約21mN/mであり、この界面活性剤が顕著な界面活性を有することを示している。これらの結果を、表面張力対濃度としてプロットして
図6に示す。
【0191】
界面活性剤5の動的表面張力を、最大泡圧式張力計で特定した。
図7は、表面張力対時間としての結果のプロットを示し、界面活性剤5が、新たに作り出された空気-水界面を1秒以内で完全に飽和させ、界面吸着という点で高速としていることを示している。
【0192】
最後に、10×CMCの濃度の界面活性剤5水溶液は、ポリエチレン及びポリプロピレンなどの疎水性基材上では0°の接触角を、テフロン(登録商標)などの粗油性及び疎水性基材上では10.2°の接触角を呈する。これらの接触角は、同じ基材上での水の接触角と比較して、極めて低い(表4)。
【0193】
【0194】
例5:
プレテクスチャリング剤のための製剤
この例では、プレテクスチャリング剤のための製剤を提供する。製剤の成分を以下の表5に示す。
【0195】
【0196】
例6:
エッチング液のための製剤
この例では、エッチング液として用いるための製剤を提供する。製剤を以下の表6に示す。
【0197】
【0198】
例7:
フォトレジスト剥離液のための製剤
この例では、フォトレジスト剥離液として用いるための製剤を提供する。製剤を以下の表7に示す。
【0199】
【0200】
態様
態様1は、プレテクスチャリング剤のための製剤であり、それは、式Iの少なくとも1つの界面活性剤であって、
【0201】
【0202】
式中、R1及びR2は、同じであっても又は異なっていてもよく、C1~C6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基を含み、所望に応じて、C1~C6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの少なくとも1つを含む基を含んでよく、アルキル鎖は、所望に応じて、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1又は複数の置換基で置換されていてよく;nは、1~12の整数であり;末端窒素は、所望に応じて、R3でさらに置換され、この場合R3は、水素、酸素、ヒドロキシル、及びC1~C6アルキルから成る群より選択される、界面活性剤;所望に応じて存在してよく、存在する場合、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンから成る群より選択される、この化合物に付随する対イオン;並びに1又は複数の溶媒及び1又は複数の消泡剤のうちの少なくとも1つ、を含む。
【0203】
態様2は、プレテクスチャリング剤のための製剤であり、それは、式Iの少なくとも1つの界面活性剤であって、
【0204】
【0205】
式中、R1及びR2は、同じであっても又は異なっていてもよく、C1~C6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基を含み、所望に応じて、C1~C6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの少なくとも1つを含む基を含んでよく、アルキル鎖は、所望に応じて、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1又は複数の置換基で置換されていてよく;nは、1~12の整数であり;末端窒素は、所望に応じて、R3でさらに置換され、この場合R3は、水素、酸素、ヒドロキシル、及びC1~C6アルキルから成る群より選択される、界面活性剤;所望に応じて存在してよく、存在する場合、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンから成る群より選択される、この化合物に付随する対イオン;及び1又は複数の溶媒、を含む。
【0206】
態様3は、1又は複数の酸をさらに含む、態様1又は態様2に記載の製剤である。
態様4は、1又は複数の塩基をさらに含む、態様1~3のいずれか1つに記載の製剤である。
【0207】
態様5は、1又は複数のキレート剤をさらに含む、態様1~4のいずれか1つに記載の製剤である。
態様6は、プレテクスチャリング剤のための製剤であり、それは、
式Iの少なくとも1つの界面活性剤であって、
【0208】
【0209】
式中、R1及びR2は、同じであっても又は異なっていてもよく、C1~C6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基を含み、所望に応じて、C1~C6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの少なくとも1つを含む基を含んでよく、アルキル鎖は、所望に応じて、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1又は複数の置換基で置換されていてよく;nは、1~12の整数であり;末端窒素は、所望に応じて、R3でさらに置換され、この場合R3は、水素、酸素、ヒドロキシル、及びC1~C6アルキルから成る群より選択される、界面活性剤;所望に応じて存在してよく、存在する場合、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンから成る群より選択される、この化合物に付随する対イオン;及び1又は複数の消泡剤、を含む。
【0210】
態様7は、1又は複数の酸をさらに含む、態様6に記載の製剤である。
態様8は、1又は複数の塩基をさらに含む、態様6又は態様7のいずれかに記載の製剤である。
【0211】
態様9は、1又は複数のキレート剤をさらに含む、態様6~8のいずれか1つに記載の製剤である。
態様10は、1又は複数の溶媒をさらに含む、態様6~9のいずれか1つに記載の製剤である。
【0212】
態様11は、エッチング液のための製剤であり、それは、式Iの少なくとも1つの界面活性剤であって、
【0213】
【0214】
式中、R1及びR2は、同じであっても又は異なっていてもよく、C1~C6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基を含み、所望に応じて、C1~C6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの少なくとも1つを含む基を含んでよく、アルキル鎖は、所望に応じて、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1又は複数の置換基で置換されていてよく;nは、1~12の整数であり;末端窒素は、所望に応じて、R3でさらに置換され、この場合R3は、水素、酸素、ヒドロキシル、及びC1~C6アルキルから成る群より選択される、界面活性剤;所望に応じて存在してよく、存在する場合、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンから成る群より選択される、この化合物に付随する対イオン;及びフッ化水素酸(HF)、を含む。
【0215】
態様12は、1又は複数の酸化剤をさらに含む、態様11に記載の製剤である。
態様13は、1又は複数の錯化剤をさらに含む、態様11又は態様12のいずれかに記載の製剤である。
【0216】
態様14は、フォトレジスト剥離製剤のための製剤であり、それは、式Iの少なくとも1つの界面活性剤であって、
【0217】
【0218】
式中、R1及びR2は、同じであっても又は異なっていてもよく、C1~C6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基を含み、所望に応じて、C1~C6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの少なくとも1つを含む基を含んでよく、アルキル鎖は、所望に応じて、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1又は複数の置換基で置換されていてよく;nは、1~12の整数であり;末端窒素は、所望に応じて、R3でさらに置換され、この場合R3は、水素、酸素、ヒドロキシル、及びC1~C6アルキルから成る群より選択される、界面活性剤;所望に応じて存在してよく、存在する場合、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンから成る群より選択される、この化合物に付随する対イオン;及びアルカノールアミン、を含む。
【0219】
態様15は、スルホキシドをさらに含む、態様14に記載の製剤である。
態様16は、スルホンをさらに含む、態様15に記載の製剤である。
態様17は、グリコールエーテルをさらに含む、態様14~16のいずれか1つに記載の製剤である。