(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】ホスホジエステラーゼ5抑制剤を含む、NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病予防または治療用薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/519 20060101AFI20240814BHJP
A61K 31/4985 20060101ALI20240814BHJP
A61K 38/15 20060101ALI20240814BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240814BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
A61K31/519 ZNA
A61K31/4985
A61K38/15
A61P35/02
A61P43/00 121
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2022554735
(86)(22)【出願日】2021-03-11
(86)【国際出願番号】 KR2021003044
(87)【国際公開番号】W WO2021182897
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】10-2020-0030208
(32)【優先日】2020-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514326683
【氏名又は名称】サムスン ライフ パブリック ウェルフェア ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG LIFE PUBLIC WELFARE FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】キム、ウォンソク
(72)【発明者】
【氏名】パク、チェファ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジュヒョン
【審査官】川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】Ann. Oncol.,2016年,Vol. 27,pp. 508-513
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスホジエステラーゼ5抑制剤(phosphodiesterase 5 inhibitor)を含む、NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病予防または治療用薬学的組成物であって、
前記薬学的組成物は、HDAC(Histone deacetylase)抑制剤によるエプスタイン・バール・ウイルス(Epstein barr virus、EBV)の再活性抑制用であり、
前記ホスホジエステラーゼ5抑制剤がシルデナフィル(sildenafil)
、バルデナフィル(vardenafil)、タダラフィル(tadalafil)
及びウデナフィル(udenafil
)からなる群から選択される一つ以上であり、
前記HDAC抑制剤がロミデプシンである、
NK-T(natural killer T cell)細胞リンパ腫またはNK細胞白血病予防または治療用薬学的組成物。
【請求項2】
前記NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病は、エプスタイン・バール・ウイルス陽性NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病である、請求項1に記載のNK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病予防または治療用薬学的組成物。
【請求項3】
前記NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病は、HDAC抑制剤によりエプスタイン・バール・ウイルスが再活性されるものである、請求項1に記載のNK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病予防または治療用薬学的組成物。
【請求項4】
ホスホジエステラーゼ5抑制剤及びHDAC抑制剤を含む、NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病予防または治療用薬学的組成物であって、前記ホスホジエステラーゼ5抑制剤がシルデナフィル(sildenafil)
、バルデナフィル(vardenafil)、タダラフィル(tadalafil)
及びウデナフィル(udenafil
)からなる群から選択される一つ以上であり、前記HDAC抑制剤がロミデプシンである、NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病予防または治療用薬学的組成物。
【請求項5】
前記NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病は、エプスタイン・バール・ウイルス陽性である、請求項4に記載のNK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病予防または治療用薬学的組成物。
【請求項6】
前記NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病は、HDAC抑制剤によりエプスタイン・バール・ウイルスが再活性されるものである、請求項4に記載のNK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病予防または治療用薬学的組成物。
【請求項7】
ホスホジエステラーゼ5抑制剤(phosphodiesterase 5 inhibitor)を含む、NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病に対する抗がん治療補助用組成物であって、前記NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病は、エプスタイン・バール・ウイルス陽性であり、前記ホスホジエステラーゼ5抑制剤がシルデナフィル(sildenafil)
、バルデナフィル(vardenafil)、タダラフィル(tadalafil)
及びウデナフィル(udenafil
)からなる群から選択される一つ以上である、抗がん治療補助用組成物。
【請求項8】
ホスホジエステラーゼ5抑制剤(phosphodiesterase 5 inhibitor)を含む、NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病予防または改善用健康機能食品であって、前記NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病は、エプスタイン・バール・ウイルス陽性であり、前記ホスホジエステラーゼ5抑制剤がシルデナフィル(sildenafil)
、バルデナフィル(vardenafil)、タダラフィル(tadalafil)
及びウデナフィル(udenafil
)からなる群から選択される一つ以上である、健康機能食品。
【請求項9】
ホスホジエステラーゼ5抑制剤及びHDAC抑制剤を含む、NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病予防または改善用健康機能食品であって、前記NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病は、エプスタイン・バール・ウイルス陽性であり、前記ホスホジエステラーゼ5抑制剤がシルデナフィル(sildenafil)
、バルデナフィル(vardenafil)、タダラフィル(tadalafil)
及びウデナフィル(udenafil
)からなる群から選択される一つ以上であり、前記HDAC抑制剤がロミデプシンである、健康機能食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホスホジエステラーゼ5抑制剤を含むNK-T(natural killer T cell)細胞リンパ腫またはNK細胞白血病予防または治療用薬学的組成物、抗がん治療補助用組成物及び健康機能食品に関し、特に、HDAC抑制剤によるエプスタイン・バール・ウイルス(Epstein barr virus、EBV)の再活性を抑制する薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘルペスウイルス(Herpes virus)に属するエプスタイン・バール・ウイルス(Ebstein-Barr virus(EBV))は、90%以上の健常人に感染され、ほとんどのヒトで無症状の潜伏感染を起こすが、骨髄移植後または臓器移植等で免疫系が長期的に低下した個人でEBVは、リンパ細胞増殖性疾患(Lymphoproliferative disease)、バーキットリンパ腫(Burkitt’s lymphoma)、鼻咽頭癌腫(Nasopharyngeal carcinoma(NPC))、ホジキン疾患(Hodgkin’s disease)等の腫瘍を誘発する原因と知られている。EBVと関連性のあるリンパ細胞性疾患として、ホジキンリンパ腫を含めて鼻型(nasal type)リンパ節外NK-T細胞リンパ腫と移植後リンパ増殖性疾患(post-transplant lymphoproliferative disease、PTLD)等がある。リンパ増殖性疾患は、非ホジキンリンパ腫に属し、固形臓器移植あるいは造血幹細胞移植後、供与者のEBVの潜伏と持続的な免疫抑制剤投与の結果でリンパ球性あるいは形質細胞性増殖が起こる多重クローンBリンパ球増殖疾患等の良性疾患から悪性リンパ腫の悪性疾患まで多様な臨床様相を示す疾患であり、臓器移植患者の1-15%で発生する全身に生じる深刻な合併症である。近年は、一部の胃癌にEBV遺伝子が発現するものと判明しており、日本と韓国では全体胃癌の5~10%と知られている。鹿児島大学研究チームは、日本をはじめとする7カ国でEBV陽性である関連胃癌の分布を調査した結果、EBV関連胃癌の頻度(odds ratio)は、日本(1.0)に比してロシア(1.9)、コロンビア(2.5)、チリ(2.7)等の高い比率を示した。
【0003】
既存の治療法としては、免疫抑制剤の減量、抗ウイルス剤の使用、抗がん化学療法、そしてRituximab抗体投与等が施行されてきているが、治療反応率の差があって未だ効果的な治療法は確立されていない状況であり、従って、EBV関連腫瘍の治療及び完治のための新たな治療法開発努力が急がれるものと思料される。
【0004】
EBV感染に対するEBV抗原-特異T細胞(antigen-specific T cells)を利用した養子縁組免疫治療法(adoptive immunotherapy)は、Dr.BrennerグループでEBV抗原-特異CTLを試験管内で誘導して造血幹細胞移植後EBV感染疾患またはEBV-関連リンパ腫、咽喉頭癌等の腫瘍を治療するための研究が進行し、韓国内では本発明者らを含む研究グループで最初にEBV陽性リンパ腫患者及び急性白血病患者を対象に抗原-特異殺細胞T細胞を利用した養子縁組免疫治療を成功したことがある。体外で培養された抗原-特異T細胞を利用した養子縁組免疫治療法(adoptive immunotherapy)は、抗体治療剤の限界を克服できる長所にもかかわらず、腫瘍-関連抗原に対する免疫寛容(immune tolerance)状態を克服し、腫瘍細胞を認識・除去する高-親和性(high avidity)抗原-特異T細胞の試験管内培養技術の蓄積及び抗原-特異T細胞生産の高コストが必要な限界等によって汎用的臨床適用及び産業化に制限になっている。
【0005】
近年、腫瘍患者に対して抗体治療剤、治療用細胞性腫瘍ワクチン及び養子縁組細胞免疫治療法の限界を克服する養子縁組免疫治療法として遺伝子-変形(gene-engineered)T細胞を利用した標的-免疫治療法(targeted immunotherapy)についての研究が盛んに進行している。特に、腫瘍抗原-特異TCR遺伝子を利用した戦略は、個人合わせ型(tailor-made)治療法の限界を克服する既製品(off-the-shelf)段階の汎用的標的-免疫治療法として開発されるものと予想される。しかし、抗原-特異TCR遺伝子を確保するための腫瘍抗原-特異T細胞クローン確保及びTCR遺伝子クローニングの困難さによって韓国内の研究が不完全であり、海外研究者によって現在まで制限的に臨床研究が進行している。
【0006】
一方、ヒストンタンパク質は、細胞核の中で遺伝情報であるDNA鎖を巻いているタンパク質であって、DNAを凝縮しており、アセチル化とメチル化を通して遺伝子発現を増加または調節する機能を果たす。このようなアセチル化及びメチル化が減少し、調節に失敗する場合、癌が発生し得る。ヒストン脱アセチル化酵素であるHDAC(Histone deacetylase)は、ヒストンのアセチル化程度を調節してDNA発現を抑制する機能を果たすところ、HDACが非正常に過発現すると癌が発生し得る。このようにHDACの過発現により癌が誘発され得るところ、このような機序を抑制するために、HDAC抑制剤が抗がん剤として投与される。しかし、リンパ腫患者でHDAC抑制剤はエプスタイン・バール・ウイルス(EBV)の再活性化(reactivation)を誘発し、EBV再活性化が起こった後にはそれ以上治療方案がない実情である。従って、現在、リンパ腫でEBV再活性化を防ぐ治療剤の開発が急がれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明者らは、HDAC抑制剤により誘発されるエプスタイン・バール・ウイルスの再活性を抑制できる物質を研究していた中で、ホスホジエステラーゼ5抑制剤がHDAC抑制剤によるエプスタイン・バール・ウイルスの再活性を抑制することを確認して本発明を完成した。
【0008】
従って、本発明の目的は、ホスホジエステラーゼ5抑制剤(phosphodiesterase 5 inhibitor)を含む、NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病予防または治療用薬学的組成物を提供することである。
【0009】
また、本発明のまた他の目的は、ホスホジエステラーゼ5抑制剤(phosphodiesterase 5 inhibitor)を個体に投与するステップを含む、NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病を治療する方法を提供することである。
【0010】
本発明のまた他の目的は、ホスホジエステラーゼ5抑制剤(phosphodiesterase 5 inhibitor)を含む、NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病に対する抗がん治療補助用組成物を提供することである。
【0011】
本発明のまた他の目的は、ホスホジエステラーゼ5抑制剤(phosphodiesterase 5 inhibitor)を含む、NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病予防または改善用健康機能食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明は、ホスホジエステラーゼ5抑制剤(phosphodiesterase 5 inhibitor)を含む、NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病予防または治療用薬学的組成物であって、前記薬学的組成物は、HDAC(Histone deacetylase)抑制剤によるエプスタイン・バール・ウイルス(Epstein barr virus、EBV)の再活性抑制用である、NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0013】
また、本発明は、ホスホジエステラーゼ5抑制剤及びHDAC抑制剤を含む、NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0014】
前記また他の目的を達成するために、本発明は、ホスホジエステラーゼ5抑制剤(phosphodiesterase 5 inhibitor)を個体に投与するステップを含む、NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病を治療する方法であって、HDAC(Histone deacetylase)抑制剤によるエプスタイン・バール・ウイルス(Epstein barr virus、EBV)の再活性を抑制することを特徴とする、方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、ホスホジエステラーゼ5抑制剤及びHDAC抑制剤を個体に投与するステップを含む、NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病を治療する方法を提供する。
【0016】
前記また他の目的を達成するために、本発明は、ホスホジエステラーゼ5抑制剤(phosphodiesterase 5 inhibitor)を含む、NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病に対する抗がん治療補助用組成物であって、前記NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病は、エプスタイン・バール・ウイルス陽性である、抗がん治療補助用組成物を提供する。
【0017】
前記また他の目的を達成するために、本発明は、ホスホジエステラーゼ5抑制剤(phosphodiesterase 5 inhibitor)を含む、NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病予防または改善用健康機能食品であって、前記NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病は、エプスタイン・バール・ウイルス陽性である、健康機能食品を提供する。
【0018】
また、本発明は、ホスホジエステラーゼ5抑制剤及びHDAC抑制剤を含む、NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病予防または改善用健康機能食品であって、前記NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病は、エプスタイン・バール・ウイルス陽性である、健康機能食品を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るホスホジエステラーゼ5抑制剤を利用すれば、NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病に対する抗がん剤として使用されるHDAC抑制剤によるEBV再活性を抑制でき、HDAC抑制剤の副作用を減少させることができ、抗がん効果を顕著に上昇させることができる。従って、前記効果に基づいて医薬業界分野で広く使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1a】SNK6細胞にロミデプシン(romidepsin)、シルデナフィル(Sildenafil)をそれぞれ単独処理したか同時処理した場合に、処理時間を異にして、BZLF1の発現を確認した図である。
【
図1b】NK92MI細胞にロミデプシン(romidepsin)、シルデナフィル(Sildenafil)をそれぞれ単独処理したか同時処理した場合に、処理時間を異にして、BZLF1の発現を確認した図である。
【
図2a】SNK6細胞にロミデプシン、シルデナフィルをそれぞれ単独処理したか同時処理した場合に、シルデナフィルの処理濃度を異にして、BZLF1の発現を確認した図である。
【
図2b】NK92MI細胞にロミデプシン、シルデナフィルをそれぞれ単独処理したか同時処理した場合に、シルデナフィルの処理濃度を異にして、BZLF1の発現を確認した図である。
【
図3a】NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病細胞株以外のEBV陽性細胞株(Daudi)で、ロミデプシンによるEBV再活性が現れるか否かを、BZLF1のmRNA発現を通して確認した図である。
【
図3b】NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病細胞株以外のEBV陽性細胞株(Daudi)で、ロミデプシンによるEBV再活性が現れるか否かを、BRLF1のmRNA発現を通して確認した図である。
【
図3c】NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病細胞株以外のEBV陽性細胞株(Raji)で、ロミデプシンによるEBV再活性が現れるか否かを、BZLF1のmRNA発現を通して確認した図である。
【
図3d】NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病細胞株以外のEBV陽性細胞株(Raji)で、ロミデプシンによるEBV再活性が現れるか否かを、BRLF1のmRNA発現を通して確認した図である。
【
図3e】NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病細胞株以外のEBV陽性細胞株(1A2)で、ロミデプシンによるEBV再活性が現れるか否かを、BZLF1のmRNA発現を通して確認した図である。
【
図3f】NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病細胞株以外のEBV陽性細胞株(1A2)で、ロミデプシンによるEBV再活性が現れるか否かを、BRLF1のmRNA発現を通して確認した図である。
【
図4a】NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病細胞株以外のEBV陽性細胞株(Daudi)でも、ロミデプシンによるEBV再活性をシルデナフィルが抑制する効果が現れるか否かをEBVコピー数(EBV copy number)を通して確認した図である。
【
図4b】NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病細胞株以外のEBV陽性細胞株(Daudi)でも、ロミデプシンによるEBV再活性をシルデナフィルが抑制する効果が現れるか否かをBZLF1のmRNA発現を通して確認した図である。
【
図4c】NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病細胞株以外のEBV陽性細胞株(Daudi)でも、ロミデプシンによるEBV再活性をシルデナフィルが抑制する効果が現れるか否かをBRLF1のmRNA発現を通して確認した図である。
【
図5a】シルデナフィルがSNK6細胞でHDAC抑制剤によるEBV再活性を抑制するか否かをEBVコピー数(EBV copy number)を通して確認した図である。
【
図5b】シルデナフィルがSNK6細胞でHDAC抑制剤によるEBV再活性を抑制するか否かをBZLF1のmRNA発現を通して確認した図である。
【
図5c】シルデナフィルがSNK6細胞でHDAC抑制剤によるEBV再活性を抑制するか否かをBRLF1のmRNA発現を通して確認した図である。
【
図5d】SNK6細胞でシルデナフィルによるEBV再活性抑制により腫瘍細胞の生存率が減少したことを確認した図である。
【
図6a】シルデナフィルがNK92MI細胞でHDAC抑制剤によるEBV再活性を抑制するか否かをBRLF5のmRNA発現を通して確認した図である。
【
図6b】シルデナフィルがNK92MI細胞でHDAC抑制剤によるEBV再活性を抑制するか否かをBZLF1のmRNA発現を通して確認した図である。
【
図6c】シルデナフィルがNK92MI細胞でHDAC抑制剤によるEBV再活性を抑制するか否かをBRLF1のmRNA発現を通して確認した図である。
【
図6d】SNK6細胞でシルデナフィルによるEBV再活性抑制により腫瘍細胞の生存率が減少したことを確認した図である。
【
図7a】SNK6細胞にPDE5抑制剤であるバルデナフィル(vardenafil)を単独処理したかロミデプシンと同時処理した場合に、前記ロミデプシンによるEBV再活性を前記PDE5抑制剤が抑制する効果が現れるか否かを、BZLF1のmRNA発現を通して確認した図である。
【
図7b】SNK6細胞にPDE5抑制剤であるバルデナフィル(vardenafil)を単独処理したかロミデプシンと同時処理した場合に、前記ロミデプシンによるEBV再活性を前記PDE5抑制剤が抑制する効果が現れるか否かを、BRLF1のmRNA発現を通して確認した図である。
【
図7c】SNK6細胞にPDE5抑制剤であるウデナフィル(udenafil)を単独処理したかロミデプシンと同時処理した場合に、前記ロミデプシンによるEBV再活性を前記PDE5抑制剤が抑制する効果が現れるか否かを、BZLF1のmRNA発現を通して確認した図である。
【
図7d】SNK6細胞にPDE5抑制剤であるウデナフィル(udenafil)を単独処理したかロミデプシンと同時処理した場合に、前記ロミデプシンによるEBV再活性を前記PDE5抑制剤が抑制する効果が現れるか否かを、BRLF1のmRNA発現を通して確認した図である。
【
図7e】SNK6細胞にPDE5抑制剤であるタダラフィル(tadalafil)を単独処理したかロミデプシンと同時処理した場合に、前記ロミデプシンによるEBV再活性を前記PDE5抑制剤が抑制する効果が現れるか否かを、BZLF1のmRNA発現を通して確認した図である。
【
図7f】SNK6細胞にPDE5抑制剤であるタダラフィル(tadalafil)を単独処理したかロミデプシンと同時処理した場合に、前記ロミデプシンによるEBV再活性を前記PDE5抑制剤が抑制する効果が現れるか否かを、BRLF1のmRNA発現を通して確認した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、ホスホジエステラーゼ5抑制剤(phosphodiesterase 5 inhibitor)を含む、NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病予防または治療用薬学的組成物であって、前記薬学的組成物は、HDAC(Histone deacetylase)抑制剤によるエプスタイン・バール・ウイルス(Epstein barr virus、EBV)の再活性抑制用である、NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0022】
本発明において、前記NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病は、エプスタイン・バール・ウイルス陽性NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病であるものであってよく、好ましくは、HDAC抑制剤によりEBVが再活性化されるエプスタイン・バール・ウイルス陽性NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病であってよい。
【0023】
本発明において、前記ホスホジエステラーゼ5抑制剤(phosphodiesterase 5 inhibitor、PDE5抑制剤)は、陰茎の陰核海綿体に血液を供給する血管平滑筋細胞でcGMP特異ホスホジエステラーゼ5型の分解作用を阻害する薬物と知られている。従って、勃起不全の治療に使用され、PDE5は動脈血管壁にも存在するため、肺動脈高血圧の治療効果もあることが公知になっている。しかし、本発明のようにHDAC抑制剤の副作用を抑制できる効果については公知になっていない。
【0024】
本発明において、前記ホスホジエステラーゼ5抑制剤は、シルデナフィル(sildenafil)、ミロデナフィル(mirodenafil)、バルデナフィル(vardenafil)、タダラフィル(tadalafil)、ウデナフィル(udenafil)、ダサンタフィル(dasantafil)及びアバナフィル(avanafil)からなる群から選択された一つ以上であってよく、好ましくは、シルデナフィル、バルデナフィル、タダラフィルまたはウデナフィルであってよいが、これに制限されない。
【0025】
本発明において、前記HDAC抑制剤は、抗がん効果のあるものであってよいが、NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病患者に投与されたとき、EBVの再活性化が誘導されて抗がん効果が阻害されるものであってよい。本発明の前記ホスホジエステラーゼ5抑制剤は、HDAC抑制剤により誘導されるEBVの再活性化を抑制するものであってよい。
【0026】
本発明において、HDAC抑制剤は、ロミデプシン(Romidepsin)、ボリノスタット(Vorinostat)、パノビノスタット(Panobinostat)、ベリノスタット(Belinostat)、エンチノスタット(Entinostat)、モセチノスタット(Mocetinostat)、ジビノスタット(Givinostat)、プラシノスタット(Pactinostat)、キシノスタット(Quisinostat)、アベキシノスタット(Abexinostat)、chr-3996、及びAR-42からなる群から選択された一つ以上であってよい。
【0027】
本発明において、前記薬学的組成物は、HDAC抑制剤によるエプスタイン・バール・ウイルス(Epstein barr virus、EBV)の再活性を抑制する用途に使用されるものであってよい。
【0028】
本発明において使用される用語「予防」は、本発明の組成物の投与で前記エプスタイン・バール・ウイルスの再活性を抑制させるか進行を遅延させる全ての行為を意味する。
【0029】
本発明において使用される用語「治療」は、本発明の組成物の投与でエプスタイン・バール・ウイルス(Epstein barr virus、EBV)の再活性を抑制して、前記ウイルスによる疾患、例えば、リンパ細胞増殖性疾患(Lymphoproliferative disease)、バーキットリンパ腫(Burkitt’s lymphoma)、鼻咽頭癌腫(Nasopharyngeal carcinoma(NPC))、ホジキン疾患(Hodgkin’s disease)等が好転または有益に変更される全ての行為を意味し、臨床的結果を含む有用な結果または好ましい結果を得るための試みを意味する。有用なまたは好ましい臨床的結果は、検出可能であるか可能でなくても、一つ以上の症状または状態の緩和または改善、疾病範囲の縮小、疾病状態の安定化、疾病発生の抑制、疾病拡散の抑制、疾病進行の遅延または遅らせ、疾病発病の遅延または遅らせ、疾病状態の改善または軽減、及び減退(部分または全体)を含むことができ、必ずしもこれに限定されるものではない。また、「治療」は、治療の不在で予測されること以上に患者の生存が延びることを意味し得る。また、「治療」は、疾病進行の抑制、一時的に疾病進行を遅らせることを意味し得、さらに好ましくは、疾病の進行を永遠に停止させることと関連がある。本発明においては、好ましくは、HDAC抑制剤の副作用を抑制してHDAC抑制剤による抗がん効果を増進させて患者の生存を向上させることを意味し得る。
【0030】
本発明の薬学的組成物は、それぞれ常法によって、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾル等の経口型剤形、外用剤、坐剤及び滅菌注射溶液の形態に剤形化して使用され得る。前記薬学組成物に含まれ得る担体、賦形剤及び希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアガム、アルジネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレート及び鉱物油が挙げられる。製剤化する場合は、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤等の希釈剤または賦形剤を使用して調剤される。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤等が含まれ、このような固形製剤は、本発明の抽出物または化合物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、炭酸カルシウム、スクロースまたはラクトース、ゼラチン等を混ぜて調剤される。また、単純な賦形剤以外にマグネシウムステアレート、タルクのような潤滑剤も使用される。経口のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤等が該当するが、よく使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤等が含まれ得る。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、エチルオレートのような注射可能なエステル等が使用され得る。坐剤の基剤としては、ウイテプゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイーン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチン等が使用され得る。
【0031】
本発明の薬学的組成物の投与量は、治療を受ける対象の年齢、性別、体重と、治療する特定疾患または病理状態、疾患または病理状態の深刻度、投与経路及び処方者の判断によって変わるだろう。このような因子に基づいた投与量の決定は、当業者の水準内にあり、一般に、投与量は、0.01mg/kg/日~略2000mg/kg/日の範囲である。さらに好ましい投与量は、0.1mg/kg/日~1000mg/kg/日である。投与は、一日に一度投与してもよく、数回分けて投与してもよい。前記投与量は、いかなる面でも本発明の範囲を限定するものではない。
【0032】
本発明の薬学的組成物は、マウス、家畜、ヒト等の哺乳動物に多様な経路で投与され得る。投与の全ての方式は予想され得るが、例えば、経口、直腸または静脈、筋肉、皮下、子宮内硬膜または脳血管内注射により投与され得る。
【0033】
本発明において、NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病予防または治療用薬学的組成物は、有効成分以外に、抗がん効果の上昇及び補強のために既に安全性が検証され、抗がん活性を有するものと公知になった任意の化合物や天然抽出物をさらに含むことができる。
【0034】
本発明の薬学的組成物を利用すれば、HDAC抑制剤によるEBVの再活性が抑制され、NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病を効果的に予防または治療できる。
【0035】
そこで、本発明は、ホスホジエステラーゼ5抑制剤(phosphodiesterase 5 inhibitor)を個体に投与するステップを含む、NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病を治療する方法であって、HDAC(Histone deacetylase)抑制剤によるエプスタイン・バール・ウイルス(Epstein barr virus、EBV)の再活性を抑制することを特徴とする、方法を提供する。
【0036】
本発明において使用された用語、「個体」は、癌疾患を有している個体であって、好ましくは、HDAC抑制剤が治療効果を示す癌疾患を有しており、本発明によって前記ホスホジエステラーゼ5抑制剤(phosphodiesterase 5 inhibitor)を投与するとき、前記HDAC抑制剤により引き起こされるEBV再活性が抑制され、増進された治療効果を示すことのできるヒトを含む馬、羊、豚、山羊、犬等の哺乳動物を意味するが、好ましくは、ヒトを意味する。
【0037】
また、本発明は、ホスホジエステラーゼ5抑制剤及びHDAC抑制剤を含む、NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0038】
本発明の薬学的組成物を利用すれば、EBVの再活性が抑制され、HDAC抑制剤による抗がん効果が効果的に作用するところ、NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病を効果的に予防または治療できる。
【0039】
併せて、本発明の薬学的組成物は、NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病の予防または治療のために単独で、または手術、放射線治療、ホルモン治療、化学治療及び生物学的反応調節剤を使用する方法と併用して使用することができる。
【0040】
また、本発明は、ホスホジエステラーゼ5抑制剤及びHDAC抑制剤を個体に投与するステップを含む、NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病を治療する方法を提供する。
【0041】
前記NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病を治療する方法において、「個体」は、前述したとおりである。
【0042】
また、本発明は、ホスホジエステラーゼ5抑制剤(phosphodiesterase 5 inhibitor)を含む、NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病に対する抗がん治療補助用組成物であって、前記NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病は、エプスタイン・バール・ウイルス陽性である、抗がん治療補助用組成物を提供する。
【0043】
前記エプスタイン・バール・ウイルス陽性NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病は、HDAC抑制剤によりEBVが再活性化されるものであってよく、前記ホスホジエステラーゼ5抑制剤は、前記EBVの再活性化を抑制してHDAC抑制剤の抗がん治療効果を増進させることを特徴とする。
【0044】
本明細書において使用された用語、「抗がん治療補助用組成物」は、抗がん剤による治療と並行して適用時、前記抗がん剤による副作用を防止して抗がん治療の効果を上昇的に増加させる組成物を意味する。
【0045】
従って、前記抗がん治療補助用組成物は、HDAC抑制剤または他の抗がん剤を利用した癌治療に補助的に使用され得、抗がん補助剤として抗がん剤と共に、同時にまたは順次に投与可能である。
【0046】
併せて、本発明は、ホスホジエステラーゼ5抑制剤(phosphodiesterase 5 inhibitor)を含む、NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病予防または改善用健康機能食品であって、前記NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病は、エプスタイン・バール・ウイルス陽性である、健康機能食品を提供する。
【0047】
また、本発明は、ホスホジエステラーゼ5抑制剤及びHDAC抑制剤を含む、NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病予防または改善用健康機能食品であって、前記NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病は、エプスタイン・バール・ウイルス陽性である、健康機能食品を提供する。
【0048】
前記エプスタイン・バール・ウイルス陽性NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病は、HDAC抑制剤によりEBVが再活性化されるものであってよく、前記ホスホジエステラーゼ5抑制剤は、前記EBVの再活性化を抑制して前記ウイルスによる疾患、例えば、リンパ細胞増殖性疾患(Lymphoproliferative disease)、バーキットリンパ腫(Burkitt’s lymphoma)、鼻咽頭癌腫(Nasopharyngeal carcinoma(NPC))、ホジキン疾患(Hodgkin’s disease)等の疾患の発病を予防するか状態を改善することを特徴とする。
【0049】
本発明に係る健康機能食品は、機能性食品(functional food)、栄養補助剤(nutritional supplement)、健康食品(health food)及び食品添加剤(food additives)等の全ての形態を含む。前記類型の健康機能食品は、当業界に公知になった常法によって多様な形態に製造できる。
【0050】
例えば、健康食品としては、本発明の健康機能食品そのものを顆粒化、カプセル化及び粉末化して摂取するか、茶、ジュース及びドリンクの形態に製造して飲用するようにすることができる。また、本発明の健康機能食品をNK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病に対して改善または治療効果があると知られた公知の物質または活性成分と共に混合して組成物の形態に製造できる。特に、前記公知の物質は、エプスタイン・バール・ウイルスの再活性を引き起こす物質であってよいが、これに制限されるものではない。
【0051】
また、機能性食品としては、飲料(アルコール性飲料を含む)、果実及びその加工食品(例:フルーツ缶詰、瓶詰、ジャム、マーマレード等)、魚類、肉類及びその加工食品(例:ハム、ソーセージコンビーフ等)、パン類及び麺類(例:うどん、そば、ラーメン、スパゲッティ、マカロニ等)、果汁、各種のドリンク、クッキー、飴、乳製品(例:バター、チーズ等)、食用植物油脂、マーガリン、植物性タンパク質、レトルト食品、冷凍食品、各種の調味料(例:味噌、醤油、ソース等)等に本発明の健康機能食品を添加して製造できる。
【0052】
本発明の健康機能食品の好ましい含有量としては、これに限定されないが、例えば、最終的に製造された食品中、0.01~80重量%であってよく、好ましくは、最終的に製造された食品中、0.01~50重量%であってよい。
【0053】
また、本発明の健康機能食品を食品添加剤の形態で使用するためには、粉末または濃縮液の形態に製造して使用することができる。
【0054】
重複する内容は、本明細書の複雑性を考慮して省略し、本明細書において別に定義されていない用語は、本発明の属する技術の分野において通常使用される意味を有するものである。
【0055】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。ただし、下記実施例は、本発明を例示するものであるだけで、本発明の内容が下記実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0056】
実施例1.シルデナフィルのHDAC抑制剤によるEBV再活性化抑制効果確認
NK-T細胞リンパ腫細胞株であるSNK6(出処;ソウル大学校)とNK細胞白血病細胞株であるNK92MI(出処;ソウル大学校)細胞株にHDAC抑制剤であるロミデプシン10nMとPDE5阻害剤であるシルデナフィル100nMを24、48、72時間の間処理した後、各時間毎に細胞を回収した。その後、TRIzol reagent(Ambion、Life technologies)を利用してRNAを抽出し、Omniscript RT kit(Qiagen)を利用してcDNA合成過程を経てreal time PCRを通してEBV再活性過程で発現するmRNAであるBZLF1の発現を確認した、DMSOだけを処理した群を対照群とし、SNK6細胞に対する結果は
図1Aに示し、NK92MI細胞に対する結果は
図1Bに示し、real time PCRで使用したプライマー配列を表1に示した。
【0057】
【0058】
図1A及び
図1Bに示したように、ロミデプシン単独処理時、対照群と比較してSNK6細胞とNK92MI細胞でBZLF1の発現が増加する傾向を確認して、EBV(epstein-Barr virus)が再活性化されることを確認した。これに対して、ロミデプシンとシルデナフィルを72時間共に処理時、ロミデプシン単独処理群と比較してBZLF1の発現が顕著に減少したことを確認して、シルデナフィルがロミデプシンにより増加したEBVの再活性化を抑制することを確認した。
【0059】
実施例2.シルデナフィル濃度別のHDAC抑制剤によるEBV再活性化抑制効果確認
SNK6とNK92MI細胞にシルデナフィルの濃度を10、100または1000nMとしてシルデナフィルを単一処理した群とロミデプシン10nMを同時処理した群を実験群とし、実施例1と同様の方法でBZLF1 mRNAの発現を測定した。処理時間は72時間とし、SNK細胞に対する結果は
図2Aに示し、NK92MI細胞に対する結果は
図2Bに示した。
【0060】
図2A及び
図2Bに示したように、シルデナフィルを併用処理した場合に、ロミデプシンによるEBVの再活性化を抑制する効果が現れることを確認した。
【0061】
実施例3.シルデナフィルのHDAC抑制剤によるEBV再活性化抑制効果のNK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病特異性検証
3.1 ロミデプシンによりEBV再活性が現れる非-NK-T細胞リンパ腫及び非-NK細胞白血病細胞株の選別
SNK6とNK92MI以外のEBV陽性細胞株を収集してロミデプシンによるEBV再活性とシルデナフィルの効果を確認した。EBV陽性細胞株としてバーキットリンパ腫(Burkitt’lymphoma)細胞であるDaudi細胞株(ATCC、CCL-213)とRaji細胞株(ATCC、CCL-86)、リンパ腫細胞である1A2細胞株(ATCC、CRL-8119)にロミデプシン1または10nMを72時間の間処理して、EBV再活性で発現が増加する遺伝子であるBZLF1とBRLF1のmRNA発現を確認した。前記Daudi細胞株のBZLF1 mRNA発現に対する結果は
図3Aに示し、BRLF1のmRNA発現に対する結果は
図3Bに示した。また、前記Raji細胞株のBZLF1 mRNA発現に対する結果は
図3Cに示し、BRLF1のmRNA発現に対する結果は
図3Dに示した。併せて、前記1A2細胞株のBZLF1 mRNA発現に対する結果は
図3Eに示し、BRLF1のmRNA発現に対する結果は
図3Fに示した。
【0062】
図3A乃至
図3Fに示したように、Daudi細胞株でロミデプシン処理によりBZLF1とBRLF1の発現が増加することが確認された。Raji細胞株の場合、BZLF1とBRLF1の発現が増加しておらず、1A2細胞株の場合、BRLF1の発現だけが増加したことを確認した。従って、ロミデプシンによるEBV再活性は、Daudi細胞株でのみ現れることを確認した。
【0063】
3.2 シルデナフィルのHDAC抑制剤によるEBV再活性化抑制効果のNK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病細胞特異性検証
実施例3.1で確認したロミデプシンによるEBV再活性が現れる細胞株であるDaudi細胞株でシルデナフィルとロミデプシンを同時に処理する場合、ロミデプシンによるEBV再活性が抑制されるか否かを確認する実験を遂行した。Daudi細胞株でロミデプシン10nM、シルデナフィル100nMを72時間の間それぞれ単一処理した群と同時に処理した群を実験群とし、DMSOだけを処理した群を対照群とした。EBV再活性により細胞外に分泌されるEBVコピー数(EBV copy number)を測定するために、培地でDNAを抽出してreal time PCRでCt値を測定して基準となるEBV数と比較する方法で、EBVコピー数を測定して
図4Aに示し、実施例3.1と同様の方法でBZLF1 mRNA発現を測定して
図4Bに示し、BRLF1 mRNAを測定して
図4Cに示した。
【0064】
図4A乃至
図4Cに示したように、Daudi細胞株でロミデプシンを単独処理した群とロミデプシンとシルデナフィルを同時に処理した群との間に有意な差が確認されなかった。従って、NK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病細胞でない場合、シルデナフィルによるEBV再活性抑制効果が現れないことを確認した。
【0065】
実施例4.シルデナフィルによるEBV抑制効果確認
SNK6とNK92MI細胞株に10nMのロミデプシンを72時間処理して現れるEBV再活性がシルデナフィル(100nM、72時間)により抑制されることをEBVコピー数、BALF5、BZLF1及びBRLF1発現を通して測定した。また、trypan blue染色を通して生きている細胞を計数して細胞成長を測定した。BALF5は、EBV再活性を通して生産されるウイルスDNA生成する機能を有する遺伝子であり、培地でQIAamp DNA mini kit(Qiagen)を利用してDNAを抽出し、real time quantitative PCRを実施して、BALF5のmRNAを測定した。Real time PCRで使用したBALF5プライマー配列を表2に示した。前記のように確認したSNK6細胞でEBVコピー数を測定した結果は
図5Aに示し、BZLF1 mRNAの発現は
図5Bに示し、BRLF1 mRNAの発現は
図5Cに示し、腫瘍細胞の生存率は
図5Dに示した。また、NK92MI細胞でBRLF5 mRNAの発現は
図6Aに示し、BZLF1 mRNAの発現は
図6Bに示し、BRLF1 mRNAの発現は
図6Cに示し、腫瘍細胞の生存率は
図6Dに示した。
【0066】
【0067】
図5A乃至
図5Dに示したように、SNK6細胞株でロミデプシン単独投与群とロミデプシン及びシルデナフィル投与群を比較したとき、EBVコピー数、BZLF1、BRLF1がロミデプシン及びシルデナフィル投与群で発現が減少したことを確認して、EBVの再活性化が抑制されたことを確認し、NK-T細胞リンパ腫細胞株であるSNK6細胞株の生存能がロミデプシン及びシルデナフィル投与群で減少したことを確認した。
【0068】
また、
図6A乃至
図6Dに示したように、NK92MI細胞株でロミデプシン単独投与群とロミデプシン及びシルデナフィル投与群を比較したとき、BALF5、BZLF1及びBRLF1がロミデプシン及びシルデナフィル投与群で発現が減少したことを確認して、EBVの再活性化が抑制されたことを確認し、NK-T細胞リンパ腫細胞株であるNK92MI細胞株の生存能がトリパンブルー染色結果、ロミデプシン及びシルデナフィル投与群で減少したことを確認した。
【0069】
前記結果からシルデナフィルが腫瘍誘発ウイルスであるEBVを効果的に抑制することを確認した。
【0070】
実施例5.シルデナフィル以外のPDE5抑制剤によるEBV抑制効果確認
併せて、シルデナフィル以外の他のPDE5抑制剤のEBV抑制効果を確認した。
【0071】
SNK6細胞株に10nMのロミデプシンを処理して現れるEBV再活性が、PDE5抑制剤であるバルデナフィル、ウデナフィルまたはタダラフィルにより抑制されることを実施例3.1と同様の方法でBZLF1及びBRLF1 mRNA発現をqPCRで確認して測定した。このとき、バルデナフィルは、100nMで72時間処理し、ウデナフィルは、100nMで48時間処理し、タダラフィルは、1000nMで24時間処理した。バルデナフィル投与実験群のBZLF1 mRNAの発現は
図7Aに示し、BRLF1 mRNAの発現は
図7Bに示した。また、ウデナフィル投与実験群のBZLF1 mRNAの発現は
図7Cに示し、BRLF1 mRNAの発現は
図7Dに示した。併せて、タダラフィル投与実験群のBZLF1 mRNAの発現は
図7Eに示し、BRLF1 mRNAの発現は
図7Fに示した。
【0072】
その結果、前記実施例のロミデプシン及びシルデナフィルを同時に処理した実験群と同様に、バルデナフィル、ウデナフィルまたはタダラフィルとロミデプシンを同時処理した実験群もまたBZLF1及びBRLF1 mRNA発現が減少したことを確認して、EBVの再活性化が抑制されたことを確認した。
【0073】
まとめると、NK-T細胞リンパ腫細胞株とNK細胞白血病細胞株にHDAC抑制剤とホスホジエステラーゼ5抑制剤を同時処理するとき、HDAC抑制剤により引き起こされるエプスタイン・バール・ウイルス(Epstein barr virus、EBV)の再活性が抑制されるので、これを通してHDAC抑制剤の副作用を減少させることができ、抗がん効果を顕著に上昇させることができることを確認した。
【0074】
以下、本発明のホスホジエステラーゼ5抑制剤を含むNK-T細胞リンパ腫またはNK細胞白血病予防または治療用薬学的組成物の製剤例を説明するが、本発明を限定しようとするものではなく、単にこれを具体的に説明しようとするものである。
【0075】
製剤例1.散剤の製造
本発明のホスホジエステラーゼ5抑制剤 10mg
乳糖 1g
前記の成分を混合し、気密布に充填して散剤を製造した。
【0076】
製剤例2.錠剤の製造
本発明のホスホジエステラーゼ5抑制剤 10mg
トウモロコシデンプン 100mg
乳糖 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
前記の成分を混合した後、通常の錠剤の製造方法によって打錠して錠剤を製造した。
【0077】
製剤例3.カプセル剤の製造
本発明のホスホジエステラーゼ5抑制剤 10mg
トウモロコシデンプン 100mg
乳糖 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
前記の成分を混合した後、通常のカプセル剤の製造方法によってゼラチンカプセルに充填してカプセル剤を製造した。
【0078】
製剤例4.丸の製造
本発明のホスホジエステラーゼ5抑制剤 10mg
乳糖 1.5g
グリセリン 1g
キシリトール 0.5g
前記の成分を混合した後、常法によって1丸当たり4gになるように製造した。
【0079】
製剤例5.顆粒の製造
本発明のホスホジエステラーゼ5抑制剤 10mg
大豆抽出物 50mg
ブドウ糖 200mg
デンプン 600mg
前記の成分を混合した後、30%エタノール100mgを添加して摂氏60℃で乾燥して顆粒を形成した後、布に充填した。
【0080】
以上、本発明内容の特定の部分を詳細に記述したが、当業界の通常の知識を有する者にとって、このような具体的な記述は、単に好ましい実施様態であるだけで、これによって本発明の範囲が制限されるのではない点は明らかであるだろう。従って、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とそれらの等価物により定義されるといえるだろう。
【配列表】