(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】印刷配線板および印刷配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20240814BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
H05K3/46 N
H01L23/12 N
H01L23/12 Q
(21)【出願番号】P 2022565351
(86)(22)【出願日】2021-11-24
(86)【国際出願番号】 JP2021042894
(87)【国際公開番号】W WO2022113968
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-05-16
(31)【優先権主張番号】P 2020196813
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 真理
(72)【発明者】
【氏名】石岡 卓
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-265967(JP,A)
【文献】特開2014-167950(JP,A)
【文献】特開2014-67974(JP,A)
【文献】特開2000-216289(JP,A)
【文献】特開平9-18150(JP,A)
【文献】特開2002-359446(JP,A)
【文献】特開2009-231596(JP,A)
【文献】特開2010-135742(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0016768(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/00―3/46
H01L 21/3205
H01L 23/12―23/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層基板を有し、
前記多層基板は、コア層およびビルドアップ層を有し、
前記コア層は複数の絶縁層を有し、
前記ビルドアップ層は、前記コア層の一方の面に積層されており、かつ、前記多層基板の第1面を構成しており、
前記多層基板には、前記コア層および前記ビルドアップ層を厚み方向に貫通するビア導体が設けられており、
前記ビア導体は、フィルドビアおよび該フィルドビアに電気的に接続されたコンフォーマルビアを有し、
該コンフォーマルビアは、前記コア層における前記複数の絶縁層の内2層以上の絶縁層に渡って貫通しており、
前記フィルドビアは、前記厚み方向から見て少なくとも一部が前記コンフォーマルビアと重なっており、かつ、前記コンフォーマルビアに対して前記第1面側
のうち少なくとも前記コア層に位置している、印刷配線板。
【請求項2】
前記フィルドビアは前記ビルドアップ層を
更に貫通している、請求項1に記載の印刷配線板。
【請求項3】
前記厚み方向から見て、前記フィルドビアの幅が前記コンフォーマルビアの幅に等しい、請求項1または請求項2に記載の印刷配線板。
【請求項4】
前記多層基板は、該多層基板を前記厚み方向に貫通する貫通孔を有し、該貫通孔の内壁にはスルーホール導体が設けられており、
前記ビルドアップ層は、前記第1面の一部を構成する表層導体を有し、
前記表層導体は、前記スルーホール導体に電気的に接続されており、
前記スルーホール導体の厚みをt1とし、前記表層導体の厚みをt2としたときに、t1/t2が0.7以上1.0以下である、請求項1~請求項3のいずれか1つに記載の印刷配線板。
【請求項5】
前記表層導体は、前記ビア導体に電気的に接続されている、請求項4に記載の印刷配線板。
【請求項6】
前記ビルドアップ層は、前記コア層よりも導体の体積割合が高い、請求項1~請求項5のいずれか1つに記載の印刷配線板。
【請求項7】
前記フィルドビアは、前記多層基板が有する絶縁体の一部に設けられたビアホールを埋める導体を有し、かつ、該ビアホールの底面に沿う部分が前記コンフォーマルビア側に位置する向きで設けられており、
前記コンフォーマルビアは、前記絶縁体の他の一部に設けられたビアホールの側面および底面に沿って位置する導体を有し、かつ、該底面に沿う部分が前記フィルドビア側に位置する向きで設けられている、請求項1~請求項6のいずれか1つに記載の印刷配線板。
【請求項8】
コア層となるコア層素体
であって、複数の絶縁層を有する前記コア層素体の一方の面から第1ビアホールを形成し、前記コア層素体の他方の面から第2ビアホールを
前記複数の絶縁層の内2層以上の絶縁層に渡って貫通して形成して、ビアホール形成素体を形成する工程と、
前記ビアホール形成素体にめっき処理を施して、前記第1ビアホールに第1フィルドビアを形成するとともに、前記第2ビアホールに、前記第1フィルドビアに電気的に接続されたコンフォーマルビアを形成し、めっきビア形成素体を形成する工程と、
前記めっきビア形成素体のう
ち前記一方の面
および前記他方の面にビルドアップ層となるビルドアップ用シートを積層して、
該ビルドアップ用シートに含まれる絶縁体を前記コンフォーマルビアの凹部に充填して多層基板素体を形成する工程と、
前記多層基板素体の前記一方の面側の表面から、厚み方向から見て前記コンフォーマルビアの少なくとも一部と重なる位置に第3ビアホールを形成して、ビアホール形成多層基板素体を形成する工程と、
厚み方向に該ビアホール形成多層基板素体を貫通する貫通孔を形成する工程と、
前記ビアホール形成多層基板素体にめっき処理を施して、前記第1フィルドビアに電気的に接続された第2フィルドビアを前記第3ビアホールに形成する
ことで、前記ビアホール形成多層基板素体の前記一方の面側の表面から、前記第2フィルドビア、前記第1フィルドビア、前記コンフォーマルビアの順で、厚み方向に連なるスタックビア構造を成すとともに、前記貫通孔の内壁にスルーホール導体を形成する工程と、
を有する、印刷配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、印刷配線板および印刷配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絶縁層により隔てられた複数の導体層を有し、この複数の導体層がビア導体およびスルーホール導体によって電気的に接続されることで立体的な回路を形成している印刷配線板がある。
【0003】
ビア導体としては、絶縁層に設けられたビアホールを埋めるように設けられたフィルドビアと、ビアホールの側面および底面に沿って設けられたコンフォーマルビアとを厚み方向に接続したものがある。コンフォーマルビアの導体がなす凹部には、通常、樹脂などが充填される。特開2003-224364号公報には、印刷配線板の内層にフィルドビアを設け、ビルドアップ層の最外層にコンフォーマルビアを設けることで、各層の平坦性を確保する技術が開示されている。
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様に係る印刷配線板は、多層基板を有する。前記多層基板は、コア層およびビルドアップ層を有し、前記コア層は複数の絶縁層を有する。前記ビルドアップ層は、前記コア層の一方の面に積層されており、かつ、前記多層基板の第1面を構成している。前記多層基板には、前記コア層および前記ビルドアップ層を厚み方向に貫通するビア導体が設けられている。前記ビア導体は、フィルドビアおよび該フィルドビアに電気的に接続されたコンフォーマルビアを有する。該コンフォーマルビアは、前記コア層における前記複数の絶縁層の内2層以上の絶縁層に渡って貫通している。前記フィルドビアは、前記厚み方向から見て少なくとも一部が前記コンフォーマルビアと重なっており、かつ、前記コンフォーマルビアに対して前記第1面側のうち少なくとも前記コア層に位置している。
【0005】
本開示の一態様に係る印刷配線板の製造方法は、コア層となるコア層素体であって、複数の絶縁層を有する前記コア層素体の一方の面から第1ビアホールを形成し、前記コア層素体の他方の面から第2ビアホールを前記複数の絶縁層の内2層以上の絶縁層に渡って貫通して形成して、ビアホール形成素体を形成する工程を有する。また、上記製造方法は、前記ビアホール形成素体にめっき処理を施して、前記第1ビアホールに第1フィルドビアを形成するとともに、前記第2ビアホールに、前記第1フィルドビアに電気的に接続されたコンフォーマルビアを形成し、めっきビア形成素体を形成する工程を有する。また、上記製造方法は、前記めっきビア形成素体のうち前記一方の面および前記他方の面にビルドアップ層となるビルドアップ用シートを積層して、該ビルドアップ用シートに含まれる絶縁体を前記コンフォーマルビアの凹部に充填して多層基板素体を形成する工程を有する。また、上記製造方法は、前記多層基板素体の前記一方の面側の表面から、厚み方向から見て前記コンフォーマルビアの少なくとも一部と重なる位置に第3ビアホールを形成して、ビアホール形成多層基板素体を形成する工程を有する。また、上記製造方法は、厚み方向に該ビアホール形成多層基板素体を貫通する貫通孔を形成する工程を有する。また、上記製造方法は、前記ビアホール形成多層基板素体にめっき処理を施して、前記第1フィルドビアに電気的に接続された第2フィルドビアを前記第3ビアホールに形成することで、前記ビアホール形成多層基板素体の前記一方の面側の表面から、前記第2フィルドビア、前記第1フィルドビア、前記コンフォーマルビアの順で、厚み方向に連なるスタックビア構造を成すとともに、前記貫通孔の内壁にスルーホール導体を形成する工程を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】一実施形態に係る印刷配線板の断面図である。
【
図2】印刷配線板の製造方法を説明する断面図である。
【
図3】印刷配線板の製造方法を説明する断面図である。
【
図4】印刷配線板の製造方法を説明する断面図である。
【
図5】印刷配線板の製造方法を説明する断面図である。
【
図6】印刷配線板の製造方法を説明する断面図である。
【
図7】印刷配線板の製造方法を説明する断面図である。
【
図8】印刷配線板の製造方法を説明する断面図である。
【
図9】印刷配線板の製造方法を説明する断面図である。
【
図10】印刷配線板の製造方法を説明する断面図である。
【
図11】印刷配線板の製造方法を説明する断面図である。
【
図12】比較例の印刷配線板の製造方法を説明する断面図である。
【
図13】比較例の印刷配線板の製造方法を説明する断面図である。
【
図14】比較例の印刷配線板の製造方法を説明する断面図である。
【
図15】比較例の印刷配線板の製造方法を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下で参照する各図は、説明の便宜上、実施形態を説明する上で必要な主要部材のみを簡略化して示したものである。したがって、本開示の印刷配線板1は、参照する各図に示されていない任意の構成部材を備え得る。また、各図中の部材の寸法は、実際の構成部材の寸法および寸法比率などを忠実に表したものではない。
【0008】
〔印刷配線板の構成〕
図1を参照して、本実施形態に係る印刷配線板1の構成を説明する。
印刷配線板1は、ミリ波レーダーなどに用いられるアンテナ、および該アンテナにより受信された信号を伝送する伝送線路などが内蔵された多層アンテナ基板である。以下では、印刷配線板1の厚さ方向をZ方向とするXYZ直交座標系により印刷配線板1の各部の向きを説明する。また、印刷配線板1を構成する各層の+Z方向を向く面を「上面」とも記し、-Z方向を向く面を「下面」とも記す。また、Z方向を印刷配線板1の「厚み方向」とも記す。
【0009】
印刷配線板1は、コア層Cと、コア層Cの上面に積層された第1ビルドアップ層B1と、コア層Cの下面に積層された第2ビルドアップ層B2と、を備えている。すなわち、印刷配線板1は、第2ビルドアップ層B2、コア層Cおよび第1ビルドアップ層B1がこの順に積層された構成の多層基板2を有する。以下では、多層基板2の上面を第1面S1とし、多層基板2の下面(第1面S1の反対側に位置する面)を第2面S2とする。なお、印刷配線板1は、多層基板2以外の構成要素をさらに有していてもよい。
【0010】
コア層Cは、絶縁層11~13と、内部導体層31~33とを有する。
絶縁層11~13は、Z方向に積層されている。詳しくは、絶縁層11の上面に絶縁層12が積層されており、絶縁層11の下面に絶縁層13が積層されている。コア層Cが有する絶縁層の数は3層に限らず、2層以下または4層以上であってもよい。
【0011】
絶縁層11~13の材質としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂、ポリフェニレンオキシド(PPO)樹脂、シアネートエステル樹脂などの有機樹脂などが挙げられる。これらの有機樹脂は2種以上を混合して用いてもよい。ただし、絶縁層11~13の材質はこれらに限定されず、絶縁性を有する他の材質であってもよい。また、絶縁層11~13には、ガラスクロスなどの補強材が配合されていてもよい。また、絶縁層11~13には、水酸化アルミニウム、シリカまたは硫酸バリウムなどの無機充填剤(無機粒子)が配合されてもよい。
【0012】
内部導体層31は、絶縁層12の上面に形成されている。内部導体層32は、絶縁層11と絶縁層12との界面に形成されている。内部導体層33は、絶縁層13の下面に形成されている。内部導体層31~33は、それぞれ配線パターンをなしている。内部導体層31~33の材質は、例えば銅とすることができるが、これに限らない。コア層Cが有する導体層の数は、必ずしも3層でなくてもよく、コア層Cに含まれる絶縁層の数等に応じて2層以下または4層以上としてもよい。
【0013】
第1ビルドアップ層B1は、コア層Cの上面に積層された絶縁層14と、絶縁層14の上面に形成された表層導体40とを有する。第1ビルドアップ層B1の上面が多層基板2の第1面S1を構成する。第1面S1は、表層導体40の表面と、絶縁層14のうち表層導体40から露出している部分の表面とを含む。
第2ビルドアップ層B2は、コア層Cの下面に積層された絶縁層15と、絶縁層15の下面に形成された表層導体40とを有する。第2ビルドアップ層B2の下面が多層基板2の第2面S2を構成する。第2面S2は、表層導体40の表面と、絶縁層15のうち表層導体40から露出している部分の表面とを含む。
【0014】
絶縁層14、15は、絶縁性を有する樹脂と、該樹脂内に埋め込まれたガラスクロス等の補強材とを有する。絶縁層14、15を構成する樹脂の材質としては、例えば、エポキシ樹脂、ビスマレイミド-トリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂、フェノール樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ケイ素樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリフェニレンオキシド(PPO)樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は2種以上を混合してもよい。また、絶縁層14、15には、水酸化アルミニウム、シリカまたは硫酸バリウムなどの無機充填剤、もしくはフェノール樹脂またはメタクリル樹脂などの有機充填材が配合されてもよい。
【0015】
表層導体40は、絶縁層14の上面および絶縁層15の下面に形成されて配線パターンをなしている。表層導体40は、絶縁層14、15の表面に設けられた銅箔41と、銅箔41に積層されためっき層42とを有する。めっき層42の材質は、例えば銅とすることができる。
【0016】
多層基板2には、厚み方向に該多層基板2の一部を貫通するビア導体20が設けられている。詳しくは、ビア導体20は、コア層Cおよび第1ビルドアップ層B1を厚み方向に貫通しており、第2ビルドアップ層B2は貫通していない。ビア導体20は、第1フィルドビア21、コンフォーマルビア22、および第2フィルドビア23を有し、これらのビアが厚み方向に連なるスタックビア構造を有する。このうち第1フィルドビア21およびコンフォーマルビア22がコア層Cを貫通しており、第2フィルドビア23が第1ビルドアップ層B1を貫通している。以下では、第1フィルドビア21および第2フィルドビア23をまとめて「フィルドビア21、23」と記す。フィルドビア21、23およびコンフォーマルビア22の材質は、例えば銅とすることができる。
【0017】
第1フィルドビア21は、絶縁層12に設けられた第1ビアホール21h(
図3参照)を埋める導体と、内部導体層31のうち第1ビアホール21hの開口部に重なる部分とから構成されている。また、内部導体層31の一部により第1フィルドビア21のランドが構成されている。
【0018】
第2フィルドビア23は、絶縁層14に設けられた第3ビアホール23h(
図8参照)を埋める導体と、表層導体40のうち第3ビアホール23hの開口部に重なる部分とから構成されている。また、表層導体40の一部により第2フィルドビア23のランドが構成されている。該ランドは、表層導体40により形成される他の配線パターンに接続されていてもよい。すなわち、第1面S1に設けられている表層導体40は、ビア導体20に電気的に接続されていてもよい。
【0019】
第1フィルドビア21のうち第1ビアホール21hを埋めている部分、および第2フィルドビア23のうち第3ビアホール23hを埋めている部分は、-Z方向側ほど(すなわち、第1ビアホール21hおよび第3ビアホール23hの底面側ほど)断面積が小さくなる円錐台形状を有する。以下では、フィルドビア21のうち第1ビアホール21hの底面に沿う部分、および第2フィルドビア23のうち第3ビアホール23hの底面に沿う部分を「ビア底」と記す。フィルドビア21、23は、ビア底が-Z方向を向くように配置されている。言い換えると、フィルドビア21、23は、ビア底がコンフォーマルビア22側に位置する向きで設けられている。第1フィルドビア21のビア底は、内部導体層32に電気的に接続されている。第2フィルドビア23のビア底は、第1フィルドビア21のビア底とは反対側の面(上面)に電気的に接続されている。したがって、フィルドビア21、23は、Z方向に連なっている。第2フィルドビア23は、厚み方向(Z方向)から見て第1フィルドビア21と重なる位置に設けられている。ただし、この構成に限らず、厚み方向から見て第2フィルドビア23の一部が第1フィルドビア21と重なる構成であってもよい。
【0020】
コンフォーマルビア22は、絶縁層11および絶縁層13にわたって設けられた第2ビアホール22h(
図3参照)の側面および底面に沿って位置する導体を有する。第2ビアホール22hの内壁が形成する空間は、+Z方向側ほど断面積が小さくなる円錐台形状であり、コンフォーマルビア22の導体は、該円錐台の側面および底面に沿った形状を有する。コンフォーマルビア22の導体がなす凹部は、絶縁層15により埋められている。また、内部導体層33の一部によりコンフォーマルビア22のランドが構成されている。該ランドは、内部導体層33により形成される他の配線パターンに接続されていてもよい。
【0021】
以下では、コンフォーマルビア22のうち、第2ビアホール22hの底面に沿う部分を「ビア底」と記す。コンフォーマルビア22は、ビア底が第1フィルドビア21側(+Z方向側)に位置する向きで設けられている。コンフォーマルビア22のビア底は、内部導体層32に電気的に接続されている。したがって、第1フィルドビア21のビア底と、コンフォーマルビア22のビア底とは、内部導体層32を介して対向している。言い換えると、第1フィルドビア21およびコンフォーマルビア22は、ビア底を共有している。
このように、ビア導体20を構成するフィルドビア21、23およびコンフォーマルビア22は相互に電気的に接続されて等電位となっている。
【0022】
コンフォーマルビア22は、厚み方向から見てフィルドビア21、23と重なる位置に設けられている。本実施形態では、厚み方向から見てフィルドビア21、23の全体がコンフォーマルビア22と重なっている。ただし、この構成に限らず、厚み方向から見てフィルドビア21、23の一部がコンフォーマルビア22と重なる構成であってもよい。
【0023】
また、フィルドビア21、23は、コンフォーマルビア22に対して第1面S1側(+Z方向側)に位置している。言い換えると、ビア導体20は、多層基板2の第1面S1側の表層部分に位置する第1ビルドアップ層B1側からコア層C側にかけて、第2フィルドビア23、第1フィルドビア21、コンフォーマルビア22の並びになっている。よって、ビア導体20のうち第1面S1側の端部(多層基板2の表層側の端部)は、第2フィルドビア23となっている。また、ビア導体20のうち第1面S1側とは反対側の端部はコンフォーマルビア22となっており、該端部は多層基板2の内部に位置している。
【0024】
また、厚み方向から見て、フィルドビア21、23の幅Wは、コンフォーマルビア22の幅Wに等しい。ここで、フィルドビア21、23、およびコンフォーマルビア22の幅は、それぞれ第1ビアホール21h、第2ビアホール22h、および第3ビアホール23hの開口部がなす円の直径である。また、該開口部が円とは異なる形状である場合には、フィルドビア21、23、およびコンフォーマルビア22の幅は、該開口部の最大径である。
図1は、該開口部がなす円の中心を通りY方向に垂直な断面であり、該断面においてフィルドビア21、23の幅Wが、コンフォーマルビア22の幅Wに等しくなっている。なお、上記円の中心を通る他の断面においても、フィルドビア21、23の幅Wが、コンフォーマルビア22の幅Wに等しくなっていてもよい。
【0025】
印刷配線板1の多層基板2は、該多層基板2を第1面S1から第2面S2まで貫通する貫通孔50aを有し、該貫通孔50aの内壁にはスルーホール導体50が設けられている。すなわち、スルーホール導体50は、貫通孔50aの内壁に沿う管状の導体である。第1面S1側の表層導体40の一部、および第2面S2側の表層導体40の一部は、スルーホール導体50に電気的に接続されている。言い換えると、第1面S1側の表層導体40の一部は、スルーホール導体50を介して第2面S2側の表層導体40の一部に電気的に接続されている。スルーホール導体50は、内部導体層31~33の一部に電気的に接続されていてもよい。
本実施形態では、スルーホール導体50の厚みをt1とし、表層導体40の厚みをt2としたときに、厚み比t1/t2は0.7以上1.0以下である。あるいは、厚み比t1/t2は0.9以上1.0以下であってもよい。
【0026】
第1ビルドアップ層B1は、回路パターンをなす表面導体40を有していることなどに起因して、コア層Cよりも導体の体積割合が高くなっている。ここで、コア層Cには、第1フィルドビア21、コンフォーマルビア22、およびスルーホール導体50のうち絶縁層11~13の内部に位置する部分が含まれるものとする。また、第1ビルドアップ層B1には、第2フィルドビア23、およびスルーホール導体50のうち絶縁層14の内部に位置する部分が含まれるものとする。
【0027】
以上に説明した構成の印刷配線板1において、ビア導体20は、例えばアンテナにより受信または送信される信号を伝送する導波路として機能させることができる。
また、ビア導体20は、信号を伝送するための導波管の側壁として機能させることもできる。この場合には、厚み方向から見て導波管を囲む位置に複数のビア導体20が設けられる。
スルーホール導体50は、例えば第2面S2側の表層導体40に電源電位が供給される構成において、該電源電位を他の導体層(例えば第1面S1の表層導体40)に供給する接続回路として機能させることができる。この場合において、第1面S1側の表層導体40または内部導体層31~33を介して、スルーホール導体50とビア導体20とを電気的に接続することで、該ビア導体20を、電源電位を供給するための接続回路として機能させることもできる。
ただし、これらは例示であり、ビア導体20およびスルーホール導体50の機能は上記に限らない。
【0028】
〔印刷配線板の製造方法〕
次に、
図2~
図11を参照して、印刷配線板1の製造方法について説明する。
まず、
図2に示すように、コア層Cとなるコア層素体1aを用意する。コア層素体1aは、絶縁層11~13と、絶縁層12の上面に設けられた下地導体31aと、絶縁層11および絶縁層12の界面に設けられた内部導体層32と、絶縁層13の下面に設けられた下地導体33aとを有する。下地導体31a、内部導体層32および下地導体33aは、例えば銅箔である。
【0029】
次に、
図3に示すように、コア層素体1aの上面(一方の面)から第1ビアホール21hを形成し、コア層素体1aの下面(他方の面)から第2ビアホール22hを形成して、ビアホール形成素体1bを形成する。ここでは、例えば下地導体31aをマスクとしてコア層素体1aの上面からレーザを照射することにより第1ビアホール21hを形成する。また、下地導体33aをマスクとしてコア層素体1aの下面からレーザを照射することにより第2ビアホール22hを形成する。第2ビアホール22hは、厚み方向から見て第1ビアホール21hと重なる位置に形成する。第1ビアホール21hの底面には内部導体層32の上面が露出し、第2ビアホール22hの底面には内部導体層32の下面が露出する。
【0030】
次に、
図4に示すように、ビアホール形成素体1bに無電解銅めっき(化学銅めっき)を施して、ビアホール形成素体1bの表面に下地めっき層を形成する。
【0031】
次に、
図5に示すように、ビアホール形成素体1bに電解銅めっきを施して、第1ビアホール21hに第1フィルドビア21を形成するとともに、第2ビアホール22hにコンフォーマルビア22を形成する。これにより、めっきビア形成素体1cが形成される。また、絶縁層12の上面に内部導体層31が形成され、絶縁層13の下面に内部導体層33が形成される。
ここで、第1ビアホール21hは、第2ビアホール22hに比べて深さが浅い。このため、第1ビアホール21hおよび第2ビアホール22hに対して同時にめっき処理を行うと、第1ビアホール21hにはめっき層(導体)が充填されて第1フィルドビア21が形成され、第2ビアホール22hには、その底面および側面にめっき層(導体)が形成されてコンフォーマルビア22が形成される。このように、一度のめっき処理により、ビア底を共有する第1フィルドビア21およびコンフォーマルビア22を形成することができる。また、コンフォーマルビア22は、第2ビアホール22hを導体で完全に埋めなくてもよいため、Z方向の層間が大きい第2ビアホール22hにビアを形成することができる。
【0032】
次に、
図6に示すように、内部導体層31および内部導体層33をパターニングして配線パターンを形成する。例えば、内部導体層31、33の表面にエッチングレジストのパターンを形成した後にエッチングを行って内部導体層31、33の一部を除去し、エッチングレジストを剥離することで配線パターンを形成する。これにより、コア層Cが完成する。
【0033】
次に、
図7に示すように、めっきビア形成素体1cの上面および下面に、ビルドアップ層となるビルドアップ用シートSTを積層して加熱、加圧し、多層基板素体1dを形成する。
ビルドアップ用シートSTは、絶縁層14または絶縁層15となるプリプレグまたは樹脂フィルムと、銅箔41とを有する部材である。ここで、プリプレグは、ガラスクロスに樹脂を含浸させて半硬化させた部材である。樹脂フィルムは樹脂、または樹脂と無機充填剤、有機充填剤を半硬化させた部材である。
このようなビルドアップ用シートSTをめっきビア形成素体1cの両面に積層した状態で、めっきビア形成素体1cを加熱するとともにZ方向に加圧する。これにより、プリプレグまたは樹脂フィルムが一旦溶融した後に固化し、絶縁層14および絶縁層15となってコア層Cの表面に固着する。このとき、ビルドアップ用シートSTに含まれる樹脂(絶縁体)がコンフォーマルビア22の凹部に充填される。
図7では、プリプレグが絶縁層14および絶縁層15となって固着した後のビルドアップ用シートSTが描かれている。
【0034】
次に、
図8に示すように、多層基板素体1dの上面側から、厚み方向から見て第1フィルドビア21およびコンフォーマルビア22と重なる位置に第3ビアホール23hを形成する。これにより、ビアホール形成多層基板素体1eが形成される。ここでは、銅箔41のうち第3ビアホール23hの形成範囲を除去した後に、該銅箔41をマスクとして多層基板素体1dの上面からレーザを照射することにより第3ビアホール23hを形成する。第3ビアホール23hの底面には、第1フィルドビア21の上面が露出している。
【0035】
次に、
図9に示すように、厚み方向にビアホール形成多層基板素体1eを貫通する貫通孔50aを形成する。例えば、ドリル加工により貫通孔50aを穿孔した後にデスミア処理を行う。なお、スルーホール導体50が不要である場合には、
図9に示す貫通孔50aの形成工程は省略される。以下では、貫通孔50aが形成されたビアホール形成多層基板素体1eを「貫通孔形成多層基板素体」とも記す。
【0036】
次に、MSAP(Modified Semi-Additive Process)により表層導体40の回路パターンを形成する。
まず、
図10に示すように、ビアホール形成多層基板素体1e(貫通孔50aが形成されている場合には貫通孔形成多層基板素体)の上面および下面のうち、表層導体40の配線パターンとなる領域を除いた領域にめっきレジスト60を形成する。
【0037】
次に、
図11に示すように、ビアホール形成多層基板素体1eに電解銅めっき(パターンめっき)を施す。この電解銅めっきにより、上面および下面に露出している銅箔41をシード層として、該銅箔41上にめっき層42が形成される。また、この電解銅めっきにより、第3ビアホール23hにめっき層(導体)が充填されて第2フィルドビア23が形成されるとともに、貫通孔50aの内壁にスルーホール導体50が形成される。これにより、めっき形成多層基板素体1fが形成される。
【0038】
次に、めっきレジスト60を除去し、除去後に露出したシード層としての銅箔41をフラッシュエッチングにより除去する。これにより、ビアホール形成多層基板素体1eの上面および下面に表層導体40の回路パターンが形成される。
以上の工程を経て、
図1に示す印刷配線板1が完成する。
【0039】
〔比較例との対比〕
続いて、上述した本実施形態に係る印刷配線板1の製造方法を、
図12~15に示す比較例に係る印刷配線板の製造方法と対比し、本実施形態の製造方法の利点について説明する。
比較例に係る印刷配線板は、本実施形態の印刷配線板1のビア導体20の形成領域に、ビア導体20に代えて非貫通スルーホール導体51(
図15参照)を有している。
【0040】
比較例に係る印刷配線板の製造方法では、まず、
図12に示すように、コア層Cの上面にビルドアップ用シートSTを積層して加熱、加圧し、コア層Cに絶縁層14および銅箔41が積層された基板を形成する。そして、該基板のうち、上記実施形態でビア導体20が形成されていた領域に、ドリル加工により貫通孔51aを形成する。
【0041】
図12に示す比較例の基板は、コア層Cの中心にある絶縁層11に対して上下非対称な形状であるため反りが発生しやすく、製造ラインにおいて機械による自動供給を行うのが困難である。
これに対し、上記実施形態の製造方法では、第1ビアホール21hおよび第2ビアホール22hの形成時にコア層素体1aが絶縁層11を中心に上下対称の形状であるため(
図2、3参照)、反りが発生しにくく、製造ラインにおいて機械による自動供給を容易に行うことができる。
【0042】
また、比較例では、加工位置精度の低いドリル加工により貫通孔51aを形成するため、貫通孔51aを狭ピッチで形成することが困難である。
これに対し、上記実施形態の製造方法では、第1ビアホール21hおよび第2ビアホール22hをレーザ加工により形成している(
図3参照)。レーザ加工は、ドリル加工よりも加工位置精度が高いため、より狭ピッチの加工が可能である。また、レーザ加工によれば、ドリル加工より高速な加工が可能であるため、リードタイムを短縮することができる。
【0043】
次に、比較例の製造方法では、
図13に示すように、貫通孔51aが形成された基板に無電解銅めっきを施し、次いで電解銅めっきを施す。これにより、貫通孔51aの内壁に非貫通スルーホール導体51が形成される。また、これらのめっき処理により、基板の上面および下面にめっき層410が形成される。
【0044】
次に、
図14に示すように、貫通孔51aに樹脂70を充填し、めっき層410の表面を研磨して不要な樹脂等を除去する。また、めっき層410をパターニングし、下面側にビルドアップ用シートSTを積層して加熱、加圧することで、下面側に絶縁層15および銅箔41を積層させる。その後、基板全体を貫通する貫通孔50aをドリル加工により形成する。
【0045】
ここで、比較例においては樹脂70の充填工程および基板の研磨工程が必要であるため、工程が長くなるとともに製造コストが増大する問題がある。また、上述のとおり基板に反りが生じやすいため、研磨後のめっき層410の厚さにばらつきが生じやすい。このため、研磨後のめっき層410の寸法が安定せず、歩留まりが低下しやすい。
これに対し、上記実施形態の製造方法は、研磨が不要であるため比較例の問題が生じにくく、比較例と比較して工程を短縮できるとともに製造コストを低減できる。
【0046】
次に、比較例の製造方法では、
図15に示すように、貫通孔50aが形成された基板に無電解銅めっきを施し、次いで電解銅めっき(パネルめっき)を施す。これにより、貫通孔50aの内壁にスルーホール導体50が形成される。また、基板の上面および下面には、めっき層410に重ねてさらにめっき層42が形成される。この後、上面および下面のめっき層410、42をパターニングして表層導体の回路パターンを形成することとなる。
【0047】
このとき、
図15の状態の基板の上面には、
図14および
図15でそれぞれ行われる2回の電解銅めっきにより、めっき層410およびめっき層42が積層されて厚くなっている。このため、該めっき層410、42をシード層とするMSAPでパターニングを行うことが困難である。仮にめっき層42上にめっきレジスト60を形成してパターンめっきを行った場合、めっきレジスト60の剥離後に除去すべきシード層(めっき層410、42)が厚く、該シード層をフラッシュエッチングにより除去すると、スルーホール導体50が消失したり、形成した回路パターンが所望の形状から変形したり、エッチング量の増大により回路幅精度が悪化したりする。そのため、シード層が厚い状態でMSAPを用いても高精度の回路形成は困難であり、歩留まりも安定しない。他方で、シード層となるめっき層410、42を、MSAPが適用できるように3μm~5μm程度の薄さまで研磨しようとしても、厚いシード層により基板に反りが生じやすいため、研磨後のシード層の厚さにばらつきが生じたり、シード層の一部が消失したりする。よって、比較例の製造方法では、MSAPを用いることは困難であり、
図15の状態からサブトラクティブ法によりめっき層410、42の一部を除去して回路パターンを形成することとなる。しかしながら、サブトラクティブ法では高精度の回路形成が困難である。
【0048】
これに対し、本実施形態では、
図10に示すように、表面に薄い銅箔41のみが形成されている状態で、該銅箔41をシード層とするMSAPにより表層導体40の回路パターンを形成することができる。また、本実施形態では研磨工程が不要であるため、シード層としての銅箔41の厚みが研磨によりばらつくことがなく、銅箔41の厚みを3μm~5μmで一様にすることができる。このように、シード層が薄く、かつ厚さのばらつきが少ないため、めっき処理後に銅箔41を除去するためのフラッシュエッチング量を少なくすることができる。よって、フラッシュエッチングによりスルーホール導体50や表層導体40が消失する不具合が生じにくい。このため、MSAPにより安定して高精度に回路パターンを形成することができ、また歩留まりを向上させることができる。具体的には、±10μm以下の回路幅精度を安定した歩留まりで実現可能である。76Ghz帯などの高周波帯域で用いられるアンテナ基板では、高精度な回路形成が必要であるところ、本実施形態のMSAPを適用した製造方法によれば、このような高周波帯域で使用可能な高精度な回路形成を安定した歩留まりで行うことができる。
また、1回の電解銅めっきにより表面導体40のめっき層42とスルーホール導体50とを形成でき、また表面導体40はこのめっき層42と薄い銅箔41とからなるため、スルーホール導体の厚みをt1とし、表層導体40の厚みをt2としたときの厚み比t1/t2を1に近づけることができる。より詳しくは、厚み比t1/t2を0.7以上1.0以下とすることができる。
また、研磨工程が不要であるため、仮に加工対象の基板が厚さ方向に非対称な構造であったとしても、安定した歩留まりで高精度な回路形成を行うことができる。また、研磨工程が不要であるため、物理研磨による寸法異常などに起因する歩留まりの低下を低減できる。
【0049】
〔変形例〕
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
図16は、変形例に係る印刷配線板1の断面図である。
本変形例の印刷配線板1は、コア層Cの-Z方向側に、第2ビルドアップ層B2に代えて制御基板Aが設けられている点で上記実施形態と異なる。すなわち、本変形例の印刷配線板1は、コア層Cおよび第1ビルドアップ層B1からなる多層アンテナ基板と、制御基板Aとが一体形成された構造の多層基板2を有する多重多層アンテナ基板である。本変形例では、制御基板Aの下面が多層基板2の第2面S2を構成する。以下では、上記実施形態との相違点について説明する。
【0050】
制御基板Aは、コア層Cの下面に積層された絶縁層15と、絶縁層15の-Z方向側に積層された5層の絶縁層16とを有する。また、制御基板Aは、絶縁層15、16の層間に設けられた内部導体層34と、第2面S2の一部を構成する表層導体40とを有する。また、制御基板Aは、内部導体層34および表層導体40を厚み方向に電気的に接続するためのフィルドビア24およびコンフォーマルビア25を有する。制御基板Aには、コア層Cと同様の構成が含まれていてもよい。
【0051】
このような構成の変形例に係る印刷配線板1も、コア層Cおよび第1ビルドアップ層B1を貫通するビア導体20を有し、該ビア導体20は、フィルドビア21、23とコンフォーマルビア22とがZ方向に連なった構成を有する。また、フィルドビア21、23は、厚み方向から見てコンフォーマルビア22と重なっており、かつ、コンフォーマルビア22に対して第1面S1側に位置している。よって、後述する上記実施形態による効果と同様の効果を奏する。
【0052】
〔効果〕
以上のように、本実施形態の印刷配線板1は、多層基板2を有し、多層基板2は、コア層Cおよび第1ビルドアップ層B1を有する。第1ビルドアップ層B1は、コア層Cの一方の面に積層されており、かつ、多層基板2の第1面S1を構成している。多層基板2には、コア層Cおよび第1ビルドアップ層B1を厚み方向に貫通するビア導体20が設けられている。ビア導体20は、フィルドビア21、23および該フィルドビア21、23に電気的に接続されたコンフォーマルビア22を有する。フィルドビア21、23は、厚み方向から見てコンフォーマルビア22と重なっており、かつ、コンフォーマルビア22に対して第1面S1側に位置している。
このような構成によれば、多層基板2のうち第1ビルドアップ層B1の表層側に第2フィルドビア23が位置し、多層基板2の内層側、すなわちコア層C側にコンフォーマルビア22が位置する。ここで、コンフォーマルビア22は、導体が形成する凹部に樹脂が充填されているため、樹脂が含まれる分だけ、金属のみからなるフィルドビアに比べて熱膨張率が大きい。また、多層基板2の表層側に位置する第1ビルドアップ層B1は、通常、内層側に位置するコア層Cよりも金属(導体)の体積割合が高い。よって、上記構成によれば、金属が多く存在する第1ビルドアップ層B1側に第2フィルドビア23が位置し、相対的に金属の割合が低く樹脂成分が多いコア層C側にコンフォーマルビア22が位置することとなる。これにより、ビア導体20は、コア層Cおよび第1ビルドアップ層B1のそれぞれの熱膨張率に起因する伸縮変形に追従しやすくなる。この結果、ビア導体20が断線(断裂)しにくくなり、印刷配線板1の信頼性を向上させることができる。
【0053】
また、コンフォーマルビア22はコア層Cの一部を貫通しており、第2フィルドビア23は第1ビルドアップ層B1を貫通している。
これにより、第1ビルドアップ層B1には、該第1ビルドアップ層B1と熱膨張率が近い第2フィルドビア23が位置し、コア層Cには、該コア層Cと熱膨張率が近いコンフォーマルビア22が位置する。よって、ビア導体20は、コア層Cおよび第1ビルドアップ層B1のそれぞれの熱膨張率に起因する伸縮変形に追従しやすくなる。この結果、ビア導体20がより断線しにくくなり、印刷配線板1の信頼性をより向上させることができる。
【0054】
また、厚み方向から見て、フィルドビア21、23の幅がコンフォーマルビア22の幅に等しい。
この構成によれば、コア層Cおよび第1ビルドアップ層B1のそれぞれの熱膨張率に起因する伸縮変形が、フィルドビア21、23およびコンフォーマルビア22の周囲に及ぶことが少なくなる。よって、多層基板2の中で寸法の変化する部分の体積が小さくなるため、ビア導体20がより断線しにくくなり、印刷配線板1の信頼性をより向上させることができる。
【0055】
また、多層基板2は、該多層基板2を厚み方向に貫通する貫通孔50aを有し、該貫通孔50aの内壁にはスルーホール導体50が設けられている。第1ビルドアップ層B1は、第1面S1の一部を構成する表層導体40を有し、該表層導体40は、スルーホール導体50に電気的に接続されている。また、スルーホール導体50の厚みをt1とし、表層導体40の厚みをt2としたときに、t1/t2が0.7以上1.0以下である。
これにより、スルーホール導体50の厚みと表層導体40の厚みとが近くなるため、インピーダンス整合を取りやすくなる。
【0056】
また、表層導体40は、ビア導体20に電気的に接続されている。
比較例との対比において説明したとおり、本実施形態では表層導体40の厚みを小さくできるため、表層導体40とビア導体20とが電気的に接続された構成において、ビア導体20から表層導体40にかけてのインダクタンスをより小さくすることができる。
【0057】
また、第1ビルドアップ層B1は、コア層Cよりも導体の体積割合が高い
このような構成において、第1ビルドアップ層B1の表層側に第2フィルドビア23を設け、コア層C側にコンフォーマルビア22を設けることで、ビア導体20は、コア層Cおよび第1ビルドアップ層B1のそれぞれの熱膨張率に起因する伸縮変形に追従しやすくなる。
【0058】
また、第1フィルドビア21は、ビア底がコンフォーマルビア22側に位置する向きで設けられており、コンフォーマルビア22は、ビア底が第1フィルドビア21側に位置する向きで設けられている。
これにより、第1フィルドビア21とコンフォーマルビア22との電気的な接続強度を高めることができる。
【0059】
また、本実施形態に係る印刷配線板1の製造方法は、コア層Cとなるコア層素体1aの一方の面から第1ビアホール21hを形成し、コア層素体1aの他方の面から第2ビアホール22hを形成して、ビアホール形成素体1bを形成する工程を有する。また、ビアホール形成素体1bにめっき処理を施して、第1ビアホール21hに第1フィルドビア21を形成するとともに、第2ビアホール22hに、第1フィルドビア21に電気的に接続されたコンフォーマルビア22を形成し、めっきビア形成素体1cを形成する工程を有する。また、めっきビア形成素体1cのうち少なくとも一方の面に第1ビルドアップ層B1となるビルドアップ用シートSTを積層して、多層基板素体1dを形成する工程を有する。また、多層基板素体1dの上記一方の面側の表面から、厚み方向から見てコンフォーマルビア22と重なる位置に第3ビアホール23hを形成して、ビアホール形成多層基板素体1eを形成する工程を有する。また、ビアホール形成多層基板素体1eにめっき処理を施して、第1フィルドビア21に電気的に接続された第2フィルドビア23を第3ビアホール23hに形成する工程を有する。
このような方法によれば、第2フィルドビア23を形成するためのめっき処理の前に、第1ビルドアップ層B1の表面にめっき処理によりめっき層が積層されることがないため、該表面に薄いシード層(銅箔41)が設けられた状態とすることができる。よって、第2フィルドビア23の形成と並行して、MSAPにより表層導体40の回路パターンを形成することができる。これにより、高精度な回路形成を安定した歩留まりで行うことができる。また、研磨工程が不要であるため、工程を短縮して製造コストを低減できるとともに、物理研磨による寸法異常などに起因する歩留まりの低下を低減できる。
【0060】
また、多層基板素体1dを形成する工程では、さらにめっきビア形成素体1cの他方の面にビルドアップ用シートSTを積層し、該ビルドアップ用シートSTに含まれる絶縁体をコンフォーマルビア22の凹部に充填する。
これにより、コンフォーマルビア22の凹部を効率よく絶縁体で充填することができる。
【0061】
また、ビアホール形成多層基板素体1eにめっき処理を施す前に、厚み方向に該ビアホール形成多層基板素体1eを貫通する貫通孔50aを形成する工程を有する。また、ビアホール形成多層基板素体1eにめっき処理を施す工程では、該めっき処理により、第3ビアホール23hに第2フィルドビア23を形成するとともに、貫通孔50aの内壁にスルーホール導体50を形成する。
これにより、1度のめっき処理により第2フィルドビア23およびスルーホール導体50を形成することができる。
【0062】
〔その他〕
なお、上記実施形態は例示であり、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、コア層Cの上面および下面にビルドアップ層が1層ずつ積層された構成を例示したが、これに限定されず、ビルドアップ層は2層以上積層されていてもよい。
【0063】
また、ビア導体20が2つのフィルドビア21、23を有する構成を例示したが、フィルドビアの数は1つまたは3つ以上であってもよい。
【0064】
また、コンフォーマルビア22がコア層Cの一部を貫通している構成を例示したが、コンフォーマルビア22がコア層Cの全体を貫通していてもよい。
【0065】
また、フィルドビア21、23、およびコンフォーマルビア22の幅が等しい構成を例示したが、これらのうち一部の幅が他と異なっていてもよい。
【0066】
また、印刷配線板として多層アンテナ基板を例示したが、本開示の印刷配線板の用途はこれに限らない。
【0067】
その他、上記実施の形態で示した構成、構造、位置関係および形状などの具体的な細部は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態で示した構成、構造、位置関係および形状を適宜組み合わせ可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本開示は、印刷配線板および印刷配線板の製造方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 印刷配線板
1a コア層素体
1b ビアホール形成素体
1c ビア形成素体
1d 多層基板素体
1e ビアホール形成多層基板素体
1f めっき形成多層基板素体
2 多層基板
11~16 絶縁層
20 ビア導体
21 第1フィルドビア
21h 第1ビアホール
22 コンフォーマルビア
22h 第2ビアホール
23 第2フィルドビア
23h 第3ビアホール
24 フィルドビア
25 コンフォーマルビア
31~34 内部導体層
31a、33a 下地導体
40 表層導体
41 銅箔
42 めっき層
50 スルーホール導体
50a 貫通孔
51 非貫通スルーホール導体
51a 貫通孔
60 めっきレジスト
70 樹脂
410 めっき層
A 制御基板
B1 第1ビルドアップ層
B2 第2ビルドアップ層
C コア層
S1 第1面
S2 第2面
ST ビルドアップ用シート