(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】特に風力タービンのロータハブ用の流体膜軸受
(51)【国際特許分類】
F03D 80/70 20160101AFI20240814BHJP
F16C 17/02 20060101ALI20240814BHJP
F16C 19/06 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
F03D80/70
F16C17/02
F16C19/06
(21)【出願番号】P 2022565813
(86)(22)【出願日】2021-04-23
(86)【国際出願番号】 EP2021060737
(87)【国際公開番号】W WO2021219517
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-12-22
(32)【優先日】2020-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519081710
【氏名又は名称】シーメンス ガメサ リニューアブル エナジー エー/エス
【氏名又は名称原語表記】Siemens Gamesa Renewable Energy A/S
【住所又は居所原語表記】Borupvej 16, 7330 Brande, Denmark
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アレハンドロ セルダ バレラ
(72)【発明者】
【氏名】ニルス カール フリューゼンデール
(72)【発明者】
【氏名】キム トムスン
(72)【発明者】
【氏名】モーテン トアハウゲ
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0040941(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0030964(US,A1)
【文献】特公平07-122444(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2014/0193264(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0086516(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0188988(US,A1)
【文献】国際公開第2013/191163(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 80/50
F03D 80/70
F16C 17/02
F16C 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力タービン(1)のロータハブ(3)用の流体膜軸受であって、互いに回転可能に接続された第1の部分(7)と第2の部分(6)とを備え、前記第1の部分(7)は、前記第1の部分(7)に沿って前記軸受(2)の周方向に延在しかつ互いに角度を付けて配置された少なくとも2つの環状の滑り面(14,16,17,32,33)を備え、前記第2の部分(6)は、前記環状の滑り面(14,16,17,32,33)の各々のためのパッド(8,9,20,21,22,23,28,29,47,48,49)の各々の群を備え、各々の群の各々のパッド(8,9,20,21,22,23,28,29,47,48,49)の各々のパッド滑り面(10,18,19,30,31)が、各々の前記環状の滑り面(14,16,17,32,33)を支持しており、各々の群の前記パッド(8,9,20,21,22,23,28,29,47,48,49)は、前記第2の部分に沿って前記軸受(2)の周方向に分布しており、前記群のうちの選択された1つの群のパッド(8,9,20,21,22,23,28,29,47,48,49)は、前記群のうちの更なる1つの群の前記パッド(8,9,20,21,22,23,28,29,47,48,49)に対して
、前記周方向にずれており、
かつ、軸線方向に重畳
している、流体膜軸受。
【請求項2】
前記軸受(2)の前記周の第1の半分にある前記選択された群の前記パッド(8,9,20,21,22,23,28,29,47,48,49)の数が、前記軸受(2)の前記周の第2の半分にある前記選択された群の前記パッド(8,9,20,21,22,23,28,29,47,48,49)の数よりも多く、かつ/または第1の種類のパッド(8,9,20,21,22,23,28,29,47,48,49)は、前記軸受(2)の前記周の前記第1の半分に配置されており、第2の種類のパッド(8,9,20,21,22,23,28,29,47,48,49)は、前記軸受(2)の前記周の前記第2の半分に配置されていることを特徴とする、請求項1記載の流体膜軸受。
【請求項3】
第1に、前記群のうちの選択された1つの群の少なくとも1つのパッド(8,9,20,21,22,23,28,29,47,48,49)は、周に沿った前記選択された群の前記パッド(8,9,20,21,22,23,28,29,47,48,49)の間隔が不規則になるように配置されており、かつ/または第2に、前記群のうちの前記選択された1つの群は、2つの異なる種類のパッド(8,9,20,21,22,23,28,29,47,48,49)を備えることを特徴とする、請求項1または2記載の流体膜軸受。
【請求項4】
前記パッド(8,9,20,21,22,23,28,29,47,48,49)のうちの1つの種類のパッドのみが、被覆を使用して、前記パッド滑り面(10,18,19,30,31)を形成しているか、または異なる種類のパッド(8,9,20,21,22,23,28,29,47,48,49)が、前記被覆に異なる材料を使用し、かつ/または前記異なる種類のパッド(8,9,20,21,22,23,28,29,47,48,49)が、異なる材料を使用して、前記被覆を支持するかまたは前記パッド滑り面(10,18,19,30,31)を形成する前記パッド(8,9,20,21,22,23,28,29,47,48,49)の各々の接触セクション(34)を形成しており、かつ/または異なる機構(35)を使用して、接触セクション(34)の傾斜を可能にすることを特徴とする、請求項3記載の流体膜軸受。
【請求項5】
前記選択された群の前記パッド(8,9,20,21,22,23,28,29,47,48,49)の前記パッド滑り面(10,18,19,30,31)によって支持される前記環状の滑り面(14,16,17,32,33)は、前記軸受(2)の半径方向に対して角度を付けて配置されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の流体膜軸受。
【請求項6】
前記第1の部分(7)は、前記軸受(2)の外側部分であり、前記環状の滑り面(14,16,17,32,33)のうちの少なくとも1つは、前記第1の部分(7)の内周に形成されており、かつ/または前記少なくとも1つの群のうちの前記パッド(8,9,20,21,22,23,28,29,47,48,49)の各々の前記パッド滑り面(10,18,19,30,31)は、凸形状を有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の流体膜軸受。
【請求項7】
前記第1の部分(7)は、前記第2の部分(6)に向かって半径方向に延在する環状の突出部を形成しており、前記環状の滑り面(14,16,17,32,33)は、前記突出部の半径方向の端部と、前記突出部の軸線方向の両端部とに形成されており、第1の群のパッド(8,9,20,21,22,23,28,29,47,48,49)は、前記突出部の一方の側に配置されており、第2の群のパッド(8,9,20,21,22,23,28,29,47,48,49)は、前記軸線方向で前記突出部の反対側に配置されていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の流体膜軸受。
【請求項8】
前記第1の部分(7)は、内側または外側の環状セクション(41)と、前記環状セクション(41)から前記第2の部分(6)に向かって半径方向に延在する2つの環状の突出部(42,43)とを形成しており、前記環状の滑り面(14,16,17,32,33)は、前記環状セクション(41)に形成されており、前記環状の突出部(42,43)の内面が、互いに対向しており、すべてのパッド(8,9,20,21,22,23,28,29,47,48,49)は、前記環状の突出部(42,43)同士の間に配置されていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の流体膜軸受。
【請求項9】
風力タービンであって、請求項1から8までのいずれか1項記載の流体膜軸受(2)を使用して前記風力タービン(1)の更なる構成要素(5)に接続されたロータハブ(3)を備えたロータを備え、前記ハブ(3)は、前記第1の部分(7)の一部もしくは前記第2の部分(6)の一部であるか、または前記第1の部分(7)もしくは前記第2の部分(6)に取り付けられている、風力タービン。
【請求項10】
前記軸受(2)の前記周の上半分または下半分にある前記選択された群の前記パッド(8,9,20,21,22,23,28,29,47,48,49)の数が、前記軸受(2)の前記周の残りの半分にある前記選択された群の前記パッド(8,9,20,21,22,23,28,29,47,48,49)の数よりも多く、かつ/または第1の種類のパッド(8,9,20,21,22,23,28,29,47,48,49)が、前記軸受の前記周の前記上半分に配置されており、第2の種類のパッド(8,9,20,21,22,23,28,29,47,48,49)が、前記軸受(2)の前記周の前記下半分に配置されていることを特徴とする、請求項9記載の風力タービン。
【請求項11】
前記ハブ(3)は、単一の軸受(2)によって前記更なる構成要素(5)に接続されていることを特徴とする、請求項9または10記載の風力タービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に風力タービンのロータハブ用の流体膜軸受であって、互いに回転可能に接続された第1の部分と第2の部分とを備える、流体膜軸受に関する。さらに、本発明は、風力タービンに関する。
【0002】
風力タービンは、一般に、ロータブレードが取り付けられるハブを備えており、ハブは、風力タービンのナセルまたは何らかの他の構成要素によって回転可能に支持される。ハブは、典型的に発電機のロータに直接的に結合されて直接駆動の風力タービンを形成するか、ギヤボックスを介して結合される。ハブは、1つ以上の軸受に支持することができる。典型的に、そのような軸受は転がり軸受として形成される。これらの軸受の機械加工には高い精度が必要なため、これらの軸受は典型的に非常に高価であり、摩耗および裂傷によって軸受が損傷する可能性がある。損傷した部分を交換するためには、一般的に、軸受全体を分解する必要がある。したがって、交換手順には費用がかかり、長い中断時間につながる可能性がある。
【0003】
このような玉軸受またはころ軸受に取って代わる滑り軸受は、例えば欧州特許出願公開第3276192号明細書から公知である。開示された構成は、ハウジングの両端部に駆動シャフトを支持するために2つの軸受を必要とする。ハブを軸線方向で支持するためには、スラスト軸受またはスラストカラーなどの付加的な更なる構成要素が必要である。風力タービンで単一の軸受を使用することができるようにする代替的な軸受構成は、例えば、国際公開第2013/034391号に開示されている。この軸受は、ハブに接続された軸受の回転する外輪に取り付けられた、間隔の狭いパッドを使用する。
【0004】
したがって、本発明の目的は、特に風力タービンに使用するための軸受をさらに改善すること、特にそのような軸受を使用する風力タービンの複雑さを減らし、摩耗および裂傷を減らし、かつ/または軸受の整備性を改善することである。
【0005】
課題は、特に風力タービンのロータハブ用の流体膜軸受であって、互いに回転可能に接続された第1の部分と第2の部分とを備え、第1の部分は、第1の部分に沿って軸受の周方向に延在しかつ互いに角度を付けて配置された少なくとも2つの環状の滑り面を備え、第2の部分は、環状の滑り面の各々のためのパッドの各々の群を備え、各々の群の各々のパッドの各々のパッド滑り面が、各々の環状の滑り面を支持しており、各々の群のパッドは、第2の部分に沿って軸受の周方向に分布しており、第1に、群のうちの選択された1つの群の少なくとも1つのパッドは、周に沿った選択された群のパッドの間隔が不規則になるように配置されており、かつ/または第2に、群のうちの選択された1つの群または群のうちの選択された1つの群は、2つの異なる種類のパッドを備え、かつ/または第3に、群のうちの選択された1つの群または群のうちの選択された1つの群のパッドは、群のうちの更なる1つの群のパッドに対して周方向にずれている、流体膜軸受によって解決される。
【0006】
少なくとも2つの環状の滑り面と、これらの滑り面を支持するパッドの各々の群とを使用することにより、同一の軸受によって半径方向および軸線方向の複合支持が可能になる。例えば、半径方向に対して実質的に直交する第1の環状の滑り面と、関連する半径方向のパッドとを使用して半径方向の支持を提供し、軸受の軸線方向に対して角度を付けて配置された更なる環状の滑り面を支持するパッドの2つの群を使用して、軸線方向の両方で軸線方向の支持を提供することが可能である。代替的に、例えば、軸受の半径方向および軸線方向の両方に対して角度を付けて配置されたパッドの各々の群によって支持される2つの環状の滑り面を使用することが可能である。この場合、パッドの各々の群は、半径方向および軸線方向の方向に支持を提供することができる。
【0007】
パッドの配置とパッドの種類とに関して説明したオプションにより、軸受の複雑さとコストとを減らすことが可能になる。1つの群のパッドの不規則な間隔は、軸受の軸線方向が水平方向に対してほぼ平行である場合、例えば水平方向に対して30°未満または15°未満の角度である場合に特に有利である。これは、風力タービンのハブの軸受では典型的である。この場合、半径方向の支持は主に、ハブの重力の引張力を補正するために必要である。したがって、例えば、半径方向の支持を提供するパッドのすべてまたは大部分を、軸受の内側に取り付ける場合には周の上半分に配置することができ、軸受の外側に取り付ける場合には周の下半分に配置することができる。これにより、必要なパッドの数を削減することができ、ひいては軸受の複雑さ、コスト、および重量を減らすことができる。
【0008】
一般に、選択された群のパッドの間隔が不規則であると、選択された群のすべての隣り合うパッドが、所与の測定方向において周で測定したときに等距離の配置になるわけではない。これは、例えば、軸受がこの群のうちの少なくとも3つのパッドを備え、少なくとも3つのパッドのうちの1つが、隣り合うパッドのうちの残りのパッドよりも隣り合うパッドの1つのパッドに近づくように移行される場合である。代替的に、例えば、周に沿ったパッド同士の間の距離の一方が相対的に小さく、他方が相対的に大きくなるように、軸受の周の特定のセクタに密集した2つのパッドを有することも可能である。パッド同士の間の距離は、例えば、選択された群で少なくとも10%、または少なくとも30%、または少なくとも50%で変化することができる。
【0009】
前述のように、半径方向の軸受の負荷は、ほとんどの使用状況で重力による引張力が支配的である。しかしながら、軸受が、例えば稀な風の状態の間、または風力タービンの取付けおよび/または整備の間に、予期しない負荷事象、または稀な負荷事象に対処することができる場合も有利である。したがって、パッドが外側部分に取り付けられている場合には軸受の周の上半分に、パッドが内側部分に取り付けられている場合には軸受の周の下半分に、少なくともいくつかのパッドを依然として配置して、そのような稀な負荷事象に対処することが有利な場合がある。より少ない数のパッドを使用して、これらの稀な負荷事象に対処する可能性がある。しかしながら、代替的または付加的に、異なる位置で異なる種類のパッドを使用することも有利とすることができる。主に稀な負荷事象中に支持を提供するパッドは、他のパッドと同じだけ使用される場合、これらの耐用年数が短くなるように設計することができる。これらのパッドに完全に負荷がかかることはほとんどないため、他のパッドとほぼ同じ耐用年数を依然として達成することができる。
【0010】
前述のように、本発明による流体膜軸受は、これらの滑り面を支持するためのパッドの各々の群を備えた少なくとも2つの環状の滑り面を使用する。環状の滑り面を支持する最も簡単なアプローチは、支持が望まれる各々の周方向の位置にすべての群のパッドを配置することである。このアプローチの欠点は、パッドの異なる群を軸線方向にわずかに離隔する必要があり、したがって軸線方向の軸受の長さが長くなることである。少なくとも1つの群のパッドを更なる1つの群のパッドに対して周方向にずらすことにより、これらの群のパッドは、同一の周方向の位置に配置される場合、軸線方向に重畳するように配置することができ、したがって軸受を短くすることができる。軸受を短くすると、軸受に必要な材料の量を減らすことができ、ひいては軸受のコストと重量とを削減することができる。付加的または代替的に、群同士の間の説明されたずれを使用して、より長い軸受を必要とせずに、特に、半径方向の支持を提供する群または複数の群のうちの少なくとも1つの群のうちのパッドのパッド滑り面を大きくすることができる。
【0011】
パッドの少なくとも3つの群を使用して、例えば1つの群が半径方向の支持を提供し、2つの群が軸線方向の支持を提供する場合、例えば、半径方向の支持を提供するパッドを軸線方向の支持を提供するパッドからずらすことのみが可能である。しかしながら、互いに軸線方向の支持を提供する2つの群のパッドをずらすこともまた可能である。
【0012】
流体膜軸受では、異なる滑り面同士の間の接触領域に潤滑剤を供給する必要がある。この潤滑に対する複数のアプローチは先行技術において公知であり、詳細には論じない。潤滑は、例えば、油浴潤滑、直接潤滑、スプレーバーによる潤滑、または他の種類の潤滑であってよい。好ましくは、油が流体膜軸受の潤滑剤として使用される。流体膜軸受は、好ましくは、流体力学的な軸受、または代替的に流体静力学的な軸受であってよい。流体力学的な潤滑によって潤滑されるいくつかのパッドと、流体静力学的な潤滑によって潤滑されるいくつかのパッドとを備えた、これらの種類の軸受を組み合わせて使用することもできる。潤滑剤の過剰な漏れを避けるために、軸受の異なる部分同士の間の接続部は密閉されることが好ましい。簡単にするために、部分同士の間のシールは本出願では図示または説明しない。なぜなら、このようなシールの実現形態は従来技術において公知であるからである。
【0013】
流体膜軸受では、一方の滑り面による他方の滑り面の支持は、力の間接的な伝達を伴う。なぜなら、これらの面同士の間に薄い潤滑膜が配置されるからである。場合によっては、例えば、流体力学的な軸受の回転速度が低い場合、または潤滑剤を供給するポンプが流体静力学的な軸受で動作していない場合、各々の滑り面が直接的に接触することがあり、ひいては力の直接的な交換によって支持が実現されることがある。
【0014】
軸受の周の第1の半分にある選択された群のパッドの数は、軸受の周の第2の半分にある選択された群のパッドの数よりも多くてよい。代替的または付加的に、第1の種類のパッドは、軸受の周の第1の半分に配置されていてよく、第2の種類のパッドは軸受の周の第2の半分に配置されていてよい。前述のように、これは、例えば軸線方向がほぼ水平であり、重力に対して強力な支持を提供する場合に有利であり得る。
【0015】
パッドのうちの1つの種類のパッドのみが、被覆を使用して、パッド滑り面を形成しているか、または異なる種類のパッドが、上記被覆に異なる材料を使用してよい。代替的または付加的に、異なる種類のパッドは、異なる材料を使用して、被覆を支持するかパッド滑り面を形成するパッドの各々の接触セクションを形成していてよい。付加的または代替的に、異なる種類のパッドは、異なる機構を使用して、接触セクションの傾斜を可能にしてよい。
【0016】
軸受に使用されるパッドは、典型的に、上述の接触セクションと、接触セクションを取付け面に取り付けるために使用される支持セクションとを備える。接触セクションと支持セクションとを接続する機構は、典型的には、接触セクションを少なくとも一方向に傾けて、第1の部分および第2の部分のわずかな位置ずれ、および公差を補償することを可能にする。このようなパッドを提供するための様々なアプローチは従来技術において公知であり、ひいては詳細には説明しない。場合によっては、接触セクションのみがパッドと見なされ、支持セクションがパッド支持体と見なされることに留意されたい。パッドの個々のセクションに焦点を当てていない本発明の部分では、説明したセクションの組み合わせを単にパッドと呼ぶことにする。
【0017】
接触セクションを形成するために使用される材料は、例えば、異なる種類の鋼であってよい。1つ以上の被覆は、例えば、バビット、ホワイトメタル、ポリマー、または何らかの他の被覆から選択することができる。傾斜を可能にする機構の例としては、ピボット、ボルトインソケット接続、または可撓性の支持体がある。可撓性の支持体は、例えば、パッドの支持部分と接触セクションとを同一の材料で形成し、これらのセクションを、同一の材料で製造されているが、より小さな直径を有し、ひいてはパッド滑り面のわずかな傾斜を可能にするためにある程度の可撓性を有している接続セクションによって接続することによって形成することができる。上記変形の異なる組み合わせは、コスト、重量、およびパッドの堅牢性を異ならせることにつながり、ひいては、これらのパラメータを最適化するために軸受で使用される少なくとも2つの種類のパッドを提供するために使用することができる。
【0018】
選択された群のパッドのパッド滑り面によって支持される環状の滑り面は、軸受の半径方向に対して角度を付けて配置されていてよい。換言すれば、選択された群のパッドは、パッド滑り面に少なくとも特定の量の半径方向の支持を提供する半径方向のパッドであってよい。前述のように、風力タービンのハブに軸受を使用することにより、軸線方向はほぼ水平になる。したがって、必要な軸線方向の支持量は軸受の周でほぼ一定であり、主に必要な半径方向の支持量が変化する。したがって、半径方向のパッドの種類または間隔を変えることは特に有利である。
【0019】
このような半径方向のパッドは、例えば、半径方向および軸線方向に対して少なくとも10°または20°、好ましくは35°から55°の角度でこれらのパッド滑り面を有するパッドの群であって、異なる軸線方向に面するパッドの群によって形成することができる。これらの種類のパッドは、半径方向の支持と軸線方向の支持とを同時に提供する。代替的に、半径方向に対して実質的に直交する、例えば半径方向に対して15°または10°または5°未満の角度で配置された少なくとも1つの半径方向のパッドの群を使用することが可能である。パッドの少なくとも1つの付加的な群、好ましくは2つの付加的な群を使用して、軸線方向の支持を提供することができる。これらは、軸線方向に対してほぼ直交することができる。
【0020】
一般的に言えば、半径方向に対して角度を付けて配置されたパッドまたは滑り面は、半径方向のパッドまたは半径方向の滑り面として識別することができる。軸線方向に対して角度を付けて配置されたパッドおよび滑り面は、軸線方向のパッドまたは軸線方向の滑り面として識別することができる。
【0021】
好ましい実施形態では、第1の部分は、軸受の外側部分であり、環状の滑り面のうちの少なくとも1つは、第1の部分の内周に形成されており、かつ/または少なくとも1つの群のうちのパッドの各々のパッド滑り面は、凸形状を有する。好ましくは、半径方向に対して角度を付けた環状の滑り面を支持するすべての群は、同じく凸形状である環状の滑り面の表面と一致するように凸形状である。したがって、第1の部分は軸受の外側部分として識別でき、第2の部分は軸受の内側部分として識別できる。
【0022】
特に回転可能な外側部分の代わりに、特に静的な内側部分に取り付けられたパッドを使用することにより、特に流体膜軸受が風力タービンで使用される場合に、パッドへのアクセスが容易になる。この場合、内側部分は典型的に、軸受の領域でほぼ管の形状を有している。したがって、内側部分は、パッドを取り付けることができる内側部分の壁に個人がアクセスするための自然なクロールスペース、またはさらに大きなアクセス空間を形成する。以下でより詳細に説明するように、内側部分へのパッドの取付けは、パッドのパッド滑り面の周端部が鋭角になることを回避するのにも役立ち、摩耗や裂傷を低減することにも役立つ。
【0023】
好ましくは、半径方向の支持を提供するパッドの各々のパッド滑り面は、凸形状を有している。滑り面が凸形状を有する場合、滑り面のどの点の接線も滑り面と交差しない。滑り面の凹形状を有しているパッドと比較して、半径方向のパッド滑り面の縁部が鋭角になることが回避され、パッドの耐用年数を延ばすのに役立つ。
【0024】
好ましくは、そのようなパッドが接触する半径方向のパッド滑り面は、軸受の回転軸に対して直交する断面において円のセグメントの形状を有することができる。好ましくは、これは、半径方向のパッド滑り面と交差する回転軸に対して直交する各々の断面について当てはまる。回転軸の方向は、軸線方向とも呼ぶことができる。
【0025】
外側部分の滑り面は、説明された1つ以上の断面において円形状を有してよく、両方の滑り面の形状が類似することにつながり、ひいては支持が改善される。
【0026】
第1の部分は、第2の部分に向かって半径方向に延在する環状の突出部を形成しており、環状の滑り面は、突出部の半径方向の端部と、突出部の軸線方向の両端部とに形成されており、第1の群のパッドは、突出部の一方の側に配置されており、第2の群のパッドは、軸線方向で突出部の反対側に配置されていてよい。突出部の半径方向の端部に形成された環状の滑り面は、特に半径方向のパッドを備える第3の群のパッドの滑り面によって支持することができる。
【0027】
突出部は、軸受の外輪を形成することができる。突出部は特に、軸受の周方向に対して直交する断面においてI字形状の断面を有することができる。
【0028】
第1の部分は、内側または外側の環状セクションと、環状セクションから第2の部分に向かって半径方向に延在する2つの環状の突出部とを形成しており、環状の滑り面は、環状セクションに形成されており、環状の突出部の内面が、互いに対向しており、すべてのパッドは、環状の突出部同士の間に配置されていてよい。
【0029】
第1の群のパッドの、特に半径方向のパッドのパッド滑り面は、環状の内側セクションまたは環状の外側セクションに形成された環状の滑り面を支持することができる。特に軸線方向のパッドの各々の群のパッド滑り面は、各々の突出部に配置された各々の環状の滑り面を支持することができる。突出部に配置された環状の滑り面が互いに対向するので、軸線方向の両方で軸線方向の支持を提供することができる。
【0030】
内側または外側の環状セクションおよび2つの突出部は、周方向に対して直交する断面においてU字形状の断面を有している軸受の内輪または外輪を形成することができる。
【0031】
半径方向の支持を提供する2つの群のパッドのパッド滑り面の法線は、半径方向に対して傾斜させることができ、これらの群のうちの第1の群のパッド滑り面は、軸受の第1の軸線方向の端部に面することができ、これらの群のうちの第2の群のパッド滑り面は、軸受の第2の軸線方向の端部に面することができる。
【0032】
これらのパッド滑り面の法線は、半径方向に対して90°未満で0°より大きい角度、好ましくは30°から60°の間の角度、例えば約45°の角度だけ傾斜させることができる。傾斜角度を大きくすることで、パッドによる軸線方向のより強力な支持が実現される一方、角度を小さくすることで半径方向のより強力な支持が提供される。軸受の異なる端部に向けてパッドを傾斜させることにより、半径方向のパッド滑り面が、異なる群ごとに異なる方向を向くようになる。したがって、パッドの2つの群は、軸線方向の両方で支持を提供する一方、依然として半径方向の支持を提供する。
【0033】
第1の部分は、第2の部分に向かって半径方向に延在して2つの環状の滑り面を形成する環状の突出部を形成することができる。環状の滑り面の法線は、軸受の異なる端部に向かって半径方向に対して傾斜している。環状の滑り面の各々は、パッドの群の1つによって軸線方向および半径方向に支持されており、外側部分の滑り面は、互いに対向しているかまたは互いに反対側を向いている。
【0034】
突出部は特に、周方向に対して直交する断面において先細のI字形状またはU字形状の断面を有している軸受の内輪または外輪を形成することができる。環状の滑り面は、特に、この断面において、例えば、先細のI字形状の輪が形成される場合には突出部の軸線方向の端部に、または例えば、先細のU字形状の輪が形成される場合には突出部によって形成される凹部に、V字形状に配置することができる。
【0035】
第1の群のパッドは、第2の群のパッドとは異なる周方向の位置に配置することができる。これにより、特に上述のように内輪または外輪の先細のU字形状が使用される場合に、軸線方向の軸受を短くすることを可能にすることができる。なぜなら、両側から軸線方向の支持を提供する異なる群のパッドの対を同一の周方向の位置ひいては異なる軸線方向の位置に配置する必要はなく、第2の部分の周に沿って一列に配置することができるためである。
【0036】
第1の部分または第2の部分は、一体部品として一体形成、特に鋳造することができ、風力タービン用のハブを備えることができる。これにより、風力タービンの組立てが簡素化され、必要な材料の量を減らし、ひいては特に軸受の重量とハブの重量とが削減することができる。代替的に、第1の部分または第2の部分は、例えばフランジ接続によって風力タービンのハブに取り付けることができる。
【0037】
例えば上述のように第1の部分の突出部によって形成することができる軸受の内輪または外輪は、例えば硬化させて耐摩耗性および耐損傷性のある表面を得ることができる鍛造鋼輪であってよい。代替的に、耐摩耗性および耐損傷性のある表面を得るために、被覆によって被覆することができる鋳鉄製の輪にすることもできる。他の実現形態もまた可能である。
【0038】
本発明は、風力タービンであって、本発明による流体膜軸受を使用して風力タービンの更なる構成要素に接続されたロータハブを備えたロータを備え、ハブは、第1の部分の一部もしくは第2の部分の一部であるか、または第1の部分もしくは第2の部分に取り付けられている、風力タービンにも関する。好ましくは、ハブは、第1の部分および第2の部分のうちの外側の一方に取り付けることができる。各々の部分とハブとの間の接続は、トルクプルーフ、つまり、トルクを伝達しないようにもしくは相対回動不能にすることができる。他の部分は、好ましくは、特にトルクプルーフ接続を介して、発電機のナセルおよび/またはステータに接続される。ハブに接続された部分はまた、トルクプルーフ接続を介して発電機のロータまたはギヤボックスの入力段に接続することができる。
【0039】
軸受の周の上半分または下半分にある選択された群のパッドの数は、軸受の周の残りの半分にある選択された群のパッドの数よりも多くてよい。付加的または代替的に、第1の種類のパッドが、軸受の周の上半分に配置されており、第2の種類のパッドが、軸受の周の下半分に配置されていてよい。これらの特徴は、本発明による軸受に関して既に説明された。好ましくは、ハブは、単一の軸受によって更なる構成要素に接続されている。
【0040】
本発明の他の目的および特徴は、添付の図面と併せて考慮される以下の詳細な説明から明らかになる。しかしながら、これらの図面は、説明のみを目的として設計された基本的な図にすぎず、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明による流体膜軸受の例示的な実施形態を備える、本発明による風力タービンの例示的な実施形態を示す図である。
【
図3】
図1に示す軸受に使用される半径方向のパッドの一般的な形状を示す図である。
【
図4】本発明による風力タービンの実施形態で使用することができる、本発明による流体膜軸受の様々な更なる実施形態の詳細図である。
【
図5】本発明による風力タービンの実施形態で使用することができる、本発明による流体膜軸受の様々な更なる実施形態の詳細図である。
【
図6】本発明による風力タービンの実施形態で使用することができる、本発明による流体膜軸受の様々な更なる実施形態の詳細図である。
【
図7】本発明による風力タービンの実施形態で使用することができる、本発明による流体膜軸受の様々な更なる実施形態の詳細図である。
【
図8】本発明による風力タービンの実施形態で使用することができる、本発明による流体膜軸受の様々な更なる実施形態の詳細図である。
【
図9】本発明による風力タービンの実施形態で使用することができる、本発明による流体膜軸受の様々な更なる実施形態の詳細図である。
【
図10】本発明による風力タービンの実施形態で使用することができる、本発明による流体膜軸受の様々な更なる実施形態の詳細図である。
【
図11】本発明による風力タービンの実施形態で使用することができる、本発明による流体膜軸受の様々な更なる実施形態の詳細図である。
【
図12】本発明による風力タービンの実施形態で使用することができる、本発明による流体膜軸受の様々な更なる実施形態の詳細図である。
【
図13】本発明による風力タービンの実施形態で使用することができる、本発明による流体膜軸受の様々な更なる実施形態の詳細図である。
【0042】
図1は、風力タービン1の更なる構成要素5に、流体膜軸受2を使用して回転可能に接続されたロータハブ3を備える風力タービン1の詳細図を示す。ハブ3は、トルクプルーフ接続を使用して、軸受2の第1の部分7に取り付けられる。例えば、フランジ接続を使用することができる。代替的に、ハブ3および第1の部分7は、単一の部品として形成、例えば鋳造することができる。
【0043】
第1の部分7はまた、トルクプルーフ接続を使用して構造4に接続される。構造4は、風力タービン1の発電機のロータを支持するために使用することができるが、単純化および明確化するためにロータは
図1には示されていない。
【0044】
軸受の第2の部分6は、環状の形状を有し、更なる構成要素5と一体部品として形成することができるか、またはトルクプルーフ接続を使用して更なる構成要素5に接続することができる。更なる構成要素5は、特に、風力タービン1の発電機のステータであるか、またはステータを支持することができるが、単純化および明確化するためにステータは図示されていない。
【0045】
本発明は、様々なパッドの実現および分布に焦点を当てているので、流体膜軸受の潤滑に関する詳細、例えば、潤滑剤を輸送するために任意に使用することができるシールおよびポンプは、図では省略されている。
【0046】
第1の部分7を半径方向に支持するために、第2の部分6は、第2の部分6の周に沿って分布したパッド8,9の第1の群を備える。この群のパッド8,9は、周に沿ったパッド8,9の間隔が不規則になるように配置される。この例では、半径方向の支持を提供する群のパッド8,9は、周の上半分にのみ配置されている。代替的に、周の異なる部分で異なる数または異なる種類のパッドを使用することができる。このような分布は有利である。なぜなら、半径方向の主要な負荷は、典型的に、ハブ3に作用する重力によるものであるからである。
【0047】
パッド8,9の各々は、第1の部分7の環状の滑り面14を半径方向に支持する、各々のパッド滑り面10を有している。滑り面10,14は、例えば、滑り面の堅牢性を改善し、かつ/または摩擦をさらに低減するために、被覆することができる。滑り面10,14は、典型的に通常の動作中は直接的に接触しないが、潤滑剤の薄膜は滑り面10,14の間に配置されるので、例えば回転速度が遅いとき、または潤滑剤を輸送するために使用されるポンプが作動していないときに、滑り面10,14間の接触が起こることがある。
【0048】
パッド滑り面10は、特に、周囲に第1の部分7のない第2の部分6と、個々のパッド8,9の一般的な形状の概略図とを示す
図2および
図3に見られるように、凸形状を有している。
図3に示されるように、パッド滑り面10は、軸受2の軸線方向に対して直交する断面における円のセグメント15の形状に少なくとも近似している。
図1では、軸線方向は水平方向と一致している。
【0049】
パッド滑り面10の凸形状は、環状の滑り面14の形状にぴったりと一致しており、同一の断面において少なくともほぼ円形である。凸面を使用する別の利点は、パッド滑り面10の縁部24,25が鋭角になることを回避することである。これにより、パッド滑り面10および環状の滑り面14の摩耗および裂傷を低減するのに役立つことができる。
【0050】
図3に示されるパッド8,9の一般的な形状に関して、軸受用のパッド、ひいては、パッド8,9および後述する他のパッドも、典型的に、取付け面または他の何らかの取付け点に対してパッドを支持するために用いられるパッドの支持セクションに対して、各々のパッドの滑り面の特定の傾斜量を許容することに留意すべきである。滑り面は、典型的には、傾斜を可能にする機構、例えばピボット接続またはボールインソケット接続によって支持セクションに取り付けられた接触セクションによって提供される。傾斜を可能にする機構として可撓性の支持体を設けることも可能である。この場合、接触セクションおよび支持セクションは、傾斜を可能にする機構を形成する同一の材料のより薄い部分によって接続された同一の材料から形成することができる。後述の例のいくつかはこれらの異なる部分を示しているが、接触セクションと支持セクションとの間の接続の正確な種類は、異なる種類のパッドが使用されている場合にのみ関連する。したがって、単純化するために、パッドは、
図1~
図3および後述の図のいくつかでは、材料の単一のブロックとして示されている。
【0051】
図1~
図3を参照して説明した例では、パッド8,9は、軸受の第2の部分6の本体11の貫通孔12に半径方向に挿入される。好ましくは、それらは、本体11にねじ止めまたはボルト締めすることができる基部プレート13を備える。半径方向のパッド滑り面10に加えられる半径方向の力は、基部プレート13を本体11に接続するために使用される接続要素によって吸収される必要があるので、貫通孔12の周に分布した多数の接続要素、例えば多数のねじまたはボルトを使用することが好ましい。
【0052】
説明された例では、パッド滑り面10および環状の滑り面14は、半径方向に対して実質的に直交し、ひいては第1の部分7、ひいてはハブ3のみを半径方向に支持することができる。第1の部分7、ひいてはハブ3の軸線方向の支持を提供するために、第1の部分7は、軸受2の軸線方向にほぼ直交する2つの付加的な環状の滑り面16,17を有している。環状の滑り面17は、第2の群のパッド20,21のパッド滑り面19によって支持される。環状の滑り面16は、パッド22,23の第3の群によって形成されるパッド滑り面18によって支持される。したがって、第1の部分7は軸線方向の両方で支持される。
【0053】
特に
図2に示すように、第1の群のパッド8,9は、第2の群のパッドおよび第3の群のパッド20~23に対して周方向にずれている。これにより、より短い軸受2を使用するか、またはより長い軸受2を使用することなく軸線方向により大きなパッド8,9の滑り面10を使用することが可能になる。
【0054】
図1に示される軸受の周方向に対して直交する断面において、環状の第1の部分7は、ほぼ「I」字の形状を有し、第2の部分6に向かって半径方向に延在する突出部を形成する。環状の滑り面14が、この突出部の半径方向の端部に形成されており、環状の滑り面16,17が、この突出部の軸線方向の端部に形成されている。
【0055】
パッド20~24は、内側部分6の本体11の貫通孔26で半径方向にパッド20~24を取り外すか、挿入することにより交換することができ、その結果、パッド20~24は、本体11と第1の部分7との間に挟まれる。パッド8,9およびパッド20~24の整備を容易にするために、ハブ3および第2の部分6、ならびに更なる構成要素5またはこれらの構成要素の部分群は、内部空間27を形成して、個人が第2の部分6にアクセスできるようにすることができる。前述のように、パッド8,9およびパッド20~24は両方とも、第2の部分6の本体11に半径方向に挿入されているため、そのような内部空間27から容易にアクセスすることができる。例えば
図12および
図13を参照して後述するように、パッドを取り付けるための他のアプローチもまた使用することができる。
【0056】
前述の例では、半径方向の支持を提供するパッド滑り面10は、半径方向に対して実質的に直交していた。したがって、第1の部分7、ひいてはハブ3の軸線方向の支持を実現するために、パッド20~23の付加的な群を使用することが必要であった。
図4は、軸受2の周方向に対して実質的に平行であるが、軸受2の半径方向および軸線方向に対して角度を付けて配置される2つの環状の滑り面32,33を形成する先細形状を有している、第1の部分7の代替的な実施形態を示す。実施形態では、パッド28,29の2つの群を使用し、各々の群は、環状の滑り面32,33のそれぞれ1つを支持する。パッド28,29の各々の群のパッド滑り面30,31の各々の法線は、半径方向に対して傾斜している。したがって、パッド28,29の2つの群は、半径方向の支持および軸線方向の支持を同時に提供するのに十分である。
【0057】
パッド28,29のこれらの対の複数は、第2の部分6の周に沿って離隔させることができる。好ましくは、両方の群のパッド28,29は、例えば周の上側部分により多数のパッド28,29を使用して、周に沿って不規則に離隔される。代替的または付加的に、2つの異なる種類のパッド28,29が周の異なる部分で使用される。両方のアプローチが有利である。なぜなら、半径方向の主要な負荷は典型的には重力によって引き起こされ、半径方向の負荷は周に沿って変化するためである。これは、後述する更なる実施形態にも当てはまる。
【0058】
整備を容易にするために、パッド28,29は、第2の部分6の本体11の貫通孔38,39に取り付けられる。前述したように、基部プレート13を使用して、各々のパッド28,29を本体11にボルト、ねじ、または他の方法で取り付けることができる。
【0059】
図4は、個々のパッド28,29のより詳細な構造も示している。パッド28,29の各々は、各々のパッド28,29を本体11に固定するための基部プレート13を備える支持セクション36を備える。各々の滑り面30,31は、各々の接触セクション34によって提供され、滑り面30,31は、例えば、各々の滑り面30,31を提供するために被覆することができる。接触セクション34と支持セクション36とを接続する機構35は、例えば、ボールインソケット接続または他の何らかの手段で実現して、各々のパッド滑り面30,31をわずかに傾斜させることを可能にすることができる。
図8を参照して後述するように、同一の環状の滑り面を支持するパッドの群内で異なる種類のパッドが使用される場合、異なる種類のパッドを区別する1つの方法は、例えば、群のいくつかのパッドに対しては、可撓性の接続部を使用し、群の残りのパッドに対しては、ボールインソケット接続を使用するなど、異なる種類のパッドに対して異なる機構35を使用することである。パッド28,29は、矢印37によって示されるように、例えば
図1に示される内部空間27内からパッド28,29を除去することによって容易に整備することができる。
【0060】
前述した実施形態のわずかな変形を
図5に示す。ほとんどの特徴が
図4に示す実施形態と同一であるため、異なる構成要素に対して同じラベルを使用する。これらの実施形態間の主要な相違は、第1の部分6の本体11へのパッド28,29の取付けである。
図4を参照して説明した実施形態は、パッド滑り面30,31を介して第1の部分からの力によって負荷が加えられたときにパッド28,29を取り外すことさえできるので、パッド28,29の特に容易な取外しを可能にする。この実施形態の欠点は、各々の基部プレート13を本体11に固定する固定手段が、第1の部分7によって半径方向のパッド滑り面30,31に加えられる任意の力に対してパッド28,29を支持する必要があることである。
【0061】
図5に示される実施形態が使用される場合、パッド滑り面30,31を介して第1の部分7によって加えられる力は、内側部分6の本体11に直接的に伝達される。この場合、パッド28,29を、支持軸線に対して平行に取り外すことができない。代わりに、パッド28,29は、
図5の矢印37によって示されるように、この軸線に対して直交して取り除かれる。パッド28,29には、例えば、
図1に示される内部空間27から共通の開口40によってアクセスすることができる。
【0062】
図6、
図7、および
図8は、パッドの別の群が半径方向の支持および軸線方向の支持に使用される限り、
図1~
図3を参照して説明した実施形態と同様の代替的な実施形態を示す。これらの実施形態間の第1の相違は、第1の部分7の形状である。第1の部分7は、
図1~
図3の実施形態では、軸受2の周方向に対して直交する断面においてI字形状を有しているが、
図6~
図8による実施形態は、
図6および
図7に示すように、環状の外側セクション41と、この環状の外側セクション41から第1の部分6に向かって延在する2つの突出部42,43とによって形成される断面においてU字形状を備えた第1の部分7を使用する。
【0063】
前述の実施形態と同様に、半径方向の支持を提供するパッド8,9,47,48,49と、第1の部分7に軸線方向の支持を提供するパッド20~23とは、軸受2の周方向に沿った異なる位置に設けられる。これは、例えば、第2の部分6の斜視図を示す
図8から明らかである。したがって、
図6および
図7は、パッド8およびパッド20,22と、第1の部分7との相互作用を示すために、軸受2の周に沿った異なる位置での軸受2の断面を示している。
【0064】
図6に示されるように、環状の滑り面14は、環状の外側セクション41によって形成される。パッド8は、前述の実施形態と実質的に同じ方法で第2の部分6の本体11に取り付けられる。突出部42,43と半径方向のパッド8との間には比較的大きな隙間45が存在しているので、パッド滑り面14のみが外側部分7と相互作用する。
【0065】
図7に示すように、パッド20,22は、第2の部分6の本体11によって形成された支持環44と、外側部分7の各々の突出部42,43との間に挟まれている。パッド20,22と第1の部分7の環状の外側セクション41との間には十分に大きな隙間46が存在しているので、軸線方向のパッド20,22は突出部42,43とのみ相互作用して第1の部分7を軸線方向に支持する。各々のパッド滑り面18,19は、各々の環状の滑り面16,17を支持する。
図7の環状の滑り面16,17は互いに対向している一方、
図1~
図3による実施形態で同一の機能を提供する環状の滑り面16,17は互いに反対側を向いている。
【0066】
説明した実施形態と
図1~
図3の実施形態との更なる相違は、
図8に示すように、環状の滑り面14を支持するパッドの群に付加的なパッド47,48,49を使用することである。付加的なパッド47,48,49が軸受2の周の下半分に配置され、この群の軸受は半径方向の支持のみを提供するため、パッド47,48,49は、軸受2の通常の動作中にほとんど負荷をかけられない。したがって、パッド47,48,49は主に、風力タービンの建設中もしくは整備中、または稀な風条件など、稀な負荷状況で付加的な半径方向の支持を提供するために使用される。したがって、この群で2つの異なる種類のパッドを使用することが有利であり、第1の種類のパッド8,9は、通常動作中に支持を提供し、第2の種類のパッド47,48,49は、稀な負荷状況で支持を提供する。
【0067】
パッド47,48,49が完全に負荷をかけられることはほとんどないので、第2の種類のパッドは、第1の種類のパッドよりも、堅牢性を低くすることができるか、または強い負荷がかかった場合に摩擦を大きくすることができる。例えば、パッド47,48,49のパッド滑り面に異なる被覆を使用することも、被覆を使用しないこともできる。代替的または付加的に、傾斜を可能にする異なる機構および/またはパッド47,48,49の他の構成要素に異なる材料を使用することができる。したがって、付加的なパッド47,48,49のコストおよび重量を低く抑えることができる。
【0068】
図9は、
図6~
図8を参照して説明した実施形態の変形を示す。軸受2の小さな周セクションのみが示されており、第1の部分7の一部を切り取って、パッド20~22の配置と半径方向の支持のためのパッド滑り面10の1つが示されている。明瞭さを向上させるために、異なるパッド20~22は、前述の例のように単に輪郭としてではなく、もう少し詳細に示されている。
【0069】
図9による実施形態と前述の実施形態との間の主要な相違は、軸線方向の支持を提供する異なるパッド20~22の配置である。前述の実施形態では、2つのパッド20,22が各々の周方向の位置に配置され、これらのパッド20,22の両方が支持環44によって支持されている。代わりに、
図9による実施形態は、軸線方向の支持のためにパッド20~22のすべてを異なる周方向の位置に配置する。したがって、パッド滑り面19が環状の滑り面17を支持する第1の群のパッド20,21は、
図9において突出部42に隠れている環状の滑り面16をパッド滑り面18が支持する第2の群のパッド22,23とは異なる周方向の位置に配置される。各々の周方向の位置に単一のパッド20~22のみを使用することにより、軸受の幅を縮小させることができ、これは場合によっては有利となることがある。
【0070】
図4および
図5を参照して前述した実施形態であって、半径方向および軸線方向に対して共に角度を付けて配置された2つの環状の滑り面32,33を使用し、したがって、軸線方向および半径方向で第1の部分7を支持する実施形態についても、軸受2の幅を同様に縮小させることを実現することが可能である。このような実施形態は、ここで、異なる周方向の位置における軸受2の周方向に対して直交する断面を示す
図10および
図11を参照して説明される。第1の部分7を支持するアプローチは、
図4および
図5と同様であるため、同一の目的または同様の目的を果たす構成要素には同じ参照番号が使用される。
【0071】
図4および
図5に示される実施形態の第1の相違は、第1の部分7の形状である。
図4および
図5に示される先細のI字形状の代わりに、第1の部分7は、ここで、2つの環状の滑り面32,33を形成する先細の端部を備えた2つの突出部を備える先細のU字形状を有している。したがって、環状の滑り面32,33は、
図10および
図11による実施形態では互いに対向している。
【0072】
環状の滑り面32,33のこの配置により、2つのパッド28,29を軸受2の周方向に同一の位置に配置することはできない。代わりに、パッド28,29を、周方向に特定の距離だけ変位させる。好ましくは、パッド28,29は、
図10に示される配向を備えた第1の群のパッド28と、
図11に示される配向を備えた第2の群のパッド29とが交互になるように配置される。
【0073】
図12は、説明した流体膜軸受2の更なる変形を示している。軸受2の全体的な設計は、
図1~
図3を参照して説明した軸受2であって、パッド8の群によって半径方向に支持され、かつパッド20,22の2つの群によって軸線方向に支持されたほぼI字形状の第1の部分7を備えた軸受2と同様である。
図12に示す例では、パッド20,22とパッド8とが同一の周方向の位置に配置されている。パッド8およびパッド20,22に対して異なる周方向の位置を使用すること、および/または異なる周方向の位置で軸線方向の支持の異なる方向のためにパッド20,22を配置することも可能である。
【0074】
図1~
図3を参照して説明した実施形態と
図12による実施形態との間の主要な相違は、軸線方向の支持のためのパッド20,22が第2の部分6の本体11に取り付けられる方法である。パッド20,22を第1の部分7と本体11との間に半径方向に挿入する代わりに、パッド20,22は、本体11の軸線方向の開口47に挿入され、開口の上に延在する基部プレート13を介して、例えば、基部プレート13を本体11にねじ止めまたはボルト締めすることによって、本体11に取り付けられる。このアプローチは、
図1を参照したパッド8を参照して既に説明された。
【0075】
第2の部分6は、パッド20の外側にある接続部50を介して更なる構成要素5に接続され、したがって、
図1を参照して説明したように、内部空間27から矢印37によって示される各々の方向に、パッド8およびパッド20,22を取り外すことができる。
【0076】
軸受2の更なる変形を
図13に示す。
図12に示す軸受2との主要な相違は、パッド8の取付け法が異なることである。基部プレート13によってパッドを取り付ける代わりに、半径方向のパッド8の支持セクション36は、第2の部分6の本体11によって直接的に支持される。これは、パッド8に強い負荷がかかると予想される場合に有利とすることができる。なぜなら、そうでなければ、これらの強い負荷は、基部プレート13を本体11に固定するねじまたはボルトによって支持されなければならないからである。
【0077】
図12による実施形態との別の相違は、更なる部分5への接続部50の配置である。したがって、
図13に示される実施形態では、パッド20は、更なる部分5および軸受2によって形成される内部空間27の外側にある。このような構成は、軸線方向のパッド20の交換をより煩雑にする可能性がある一方、場合によっては、例えば更なる部分5の直径を小さくする必要がある場合には有利とすることができる。
【0078】
明らかに、個々の実施形態に関して説明した特徴は、様々な方法で組み合わせることができる。また、軸受2の第1の部分7および第2の部分6の、風力タービン1の他の様々な部分への接続は変更することができる。例えば、第1の部分7をハブ3および/または構造4と一体部品として形成すること、または外側部分7をハブ3および/または構造4の部分の一方または両方に異なる接続、例えばフランジ接続によって接続することが可能である。同様に、更なる部分5および第2の部分6を一体部品として提供すること、または更なる部分5と第2の部分6とをフランジなどによって接続することが可能である。第1の部分7を軸受2の内側部分として使用し、第2の部分6を外側部分として使用することも可能である。
【0079】
本発明を好ましい実施形態を参照して詳細に説明したが、本発明は、当業者が本発明の範囲から逸脱することなく他の変形を導き出すことができる開示された例によって限定されない。