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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/64 20060101AFI20240814BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240814BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALI20240814BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240814BHJP
   H01M 50/531 20210101ALI20240814BHJP
【FI】
H01M4/64 A
H01M10/052
H01M10/0587
H01M4/13
H01M50/531
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022578851
(86)(22)【出願日】2021-07-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-14
(86)【国際出願番号】 CN2021105605
(87)【国際公開番号】W WO2022142256
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2022-12-20
(31)【優先権主張番号】202023228745.3
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521555605
【氏名又は名称】珠海冠宇電池股分有限公司
【氏名又は名称原語表記】Zhuhai CosMX Battery Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】No. 209, Zhufeng Road, Jing’an Town, Doumen District, Zhuhai City,Guangdong ,p,r,China, (1st Foor ,A plant south section)
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】劉 芬
(72)【発明者】
【氏名】彭 冲
【審査官】川口 陽己
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-206743(JP,A)
【文献】特開2018-097928(JP,A)
【文献】特開2014-075335(JP,A)
【文献】国際公開第2018/179900(WO,A1)
【文献】特表2013-546137(JP,A)
【文献】特開2020-042956(JP,A)
【文献】特開2007-095656(JP,A)
【文献】特開2004-259625(JP,A)
【文献】国際公開第2018/179885(WO,A1)
【文献】特開2016-071955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/64-4/84
H01M 10/05-10/0587
H01M 4/00-4/62
H01M 50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン電池であって、
正極シートと、負極シートと、セパレータと、を備え、
前記正極シート、前記セパレータ及び前記負極シートは順に積層された後に内から外へ捲回されて成形され、
前記正極シートは正極集電体を含み、前記正極集電体の少なくとも1つの機能表面には保護層が設けられており、前記保護層の、前記正極集電体から離れた表面には正極活性層が設けられており、前記正極集電体の捲回方向において、前記保護層の長さは前記正極活性層の長さより大きく、
前記正極集電体の少なくとも1つの機能表面は、活性層領域を含み、第1端部領域及び/又は第2端部領域を更に含み、前記第1端部領域は前記正極シートの捲回始端であり、前記第2端部領域は前記正極シートの捲回終端であり、
前記保護層は導電保護層及び絶縁保護層を含み、
前記導電保護層は、前記第1端部領域及び/又は第2端部領域、及び、活性層領域に設けられており、前記活性層領域に設けられる導電保護層の、前記正極集電体から離れた表面には前記正極活性層が設けられており、
前記絶縁保護層は、前記第1端部領域及び/又は第2端部領域における導電保護層の、前記正極集電体から離れた表面に設けられており、
ここで、前記導電保護層と正極集電体の間の接着力は前記導電保護層と正極活性層の間の接着力より大きく、及び/又は、前記導電保護層と正極集電体の間の接着力は前記正極活性層における活物質粒子同士の間の接着力より大きい
ことを特徴とするリチウムイオン電池。
【請求項2】
前記保護層は無機フィラーを含み、
前記無機フィラーのD50は前記正極活性層における活物質のD50より小さい
ことを特徴とする請求項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項3】
前記無機フィラーはリチウム含有遷移金属酸化物及び/又はセラミック材料を含む
ことを特徴とする請求項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項4】
前記リチウム含有遷移金属酸化物は、コバルト酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン三元材料、ニッケルコバルトアルミニウム三元材料、ニッケルコバルトマンガンアルミニウム四元材料、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガンリチウム、リン酸バナジウムリチウム、マンガン酸リチウム、リチウムリッチマンガン基のうちの1つ又は複数を含み、
前記セラミック材料は、アルミナ、ベーマイト、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素、モンモリロナイト、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムのうちの1つ又は複数を含む
ことを特徴とする請求項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項5】
前記導電保護層におけるバインダーの質量分率は、前記正極活性層におけるバインダーの質量分率より大きい
ことを特徴とする請求項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項6】
前記導電保護層は、50~98質量%の無機フィラーと、0.5~10質量%の第1導電剤と、1.5~50質量%の第1バインダーとを含有する
ことを特徴とする請求項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項7】
前記絶縁保護層は、50~96質量%のセラミック材料と、4~50質量%の第2バインダーとを含有する
ことを特徴とする請求項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項8】
前記保護層の厚さは前記正極活性層の厚さの1%~50%である
ことを特徴とする請求項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項9】
前記第1端部領域に設けられる導電保護層の厚さは1~25μmであり、前記第2端部領域に設けられる導電保護層の厚さは1~25μmであり、前記活性層領域に設けられる導電保護層の厚さは1~10μmである
ことを特徴とする請求項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項10】
前記第1端部領域及び/又は第2端部領域に設けられる導電保護層の厚さは、前記活性層領域に設けられる導電保護層の厚さと同一である
ことを特徴とする請求項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項11】
前記第1端部領域における導電保護層の、前記正極集電体から離れた表面に設けられる絶縁保護層の厚さは1~15μmであり、
前記第2端部領域における導電保護層の、前記正極集電体から離れた表面に設けられる絶縁保護層の厚さは1~15μmである
ことを特徴とする請求項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項12】
前記正極集電体の少なくとも1つの機能表面は、前記正極集電体が露出される実装領域を更に含み、
前記実装領域は前記正極集電体の1つの側面に連通する
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項13】
前記正極シートは正極タブを更に含み、
前記正極タブは、前記正極集電体の1つの機能表面の実装領域に設けられ、
前記実装領域の、捲回中心に近い側と捲回中心から遠い側には、いずれも前記保護層が設けられる
ことを特徴とする請求項12に記載のリチウムイオン電池。
【請求項14】
前記第1端部領域は、前記正極集電体の捲回方向に沿って、第1平坦領域、実装領域、第2平坦領域、第3平坦領域及び第1円弧領域を含み、
前記実装領域には正極タブが設けられており、前記正極シートの表面には第1テープが接着されており、
前記第1テープは、前記第3平坦領域における保護層の表面、前記第1円弧領域における保護層の表面、及び、前記活性層領域における正極活性層の少なくとも一部の表面に接着される
ことを特徴とする請求項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項15】
前記第2端部領域は、前記正極集電体の捲回方向に沿って、第2円弧領域及び第4平坦領域を含み、
前記正極シートの表面には第2テープが接着されており、
前記第2テープは、前記活性層領域に設けられる正極活性層の少なくとも一部の表面、前記第2円弧領域に設けられる保護層の表面、及び、前記第4平坦領域に設けられる保護層の少なくとも一部の表面に粘着される
ことを特徴とする請求項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項16】
前記正極集電体の少なくとも1つの機能表面は無地領域を含み、
前記無地領域は前記第2端部領域の、回中心から離れた端部に位置し、前記無地領域の表面には前記保護層が設けられない
ことを特徴とする請求項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項17】
前記正極集電体の、回中心から離れた端部の2つの機能表面はいずれも無地領域を含まない
ことを特徴とする請求項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項18】
前記負極シートは、負極集電体と、前記負極集電体の少なくとも1つの機能表面に設けられる負極活性層と、を含み、
前記負極活性層の長さは前記正極活性層の長さより大きい
ことを特徴とする請求項1乃至17のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項19】
前記負極集電体の少なくとも1つの機能表面は無地領域を含み、
前記無地領域は前記負極集電体の、回中心から離れた端部に位置し、前記無地領域の表面には前記負極活性層が設けられない
ことを特徴とする請求項18に記載のリチウムイオン電池。
【請求項20】
前記負極集電体の、回中心から離れた端部の2つの機能表面はいずれも無地領域を含まない
ことを特徴とする請求項18に記載のリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互引用>
本願は、2020年12月28日に中国特許庁に出願された、出願番号が202023228745.3であり、出願名称が「正極シート及びリチウムイオン電池」である中国特許出願の優先権を主張し、そのすべての内容を参照により本願に組み込む。
【0002】
本発明は、リチウムイオン電池に関し、二次電池の技術分野に属する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン電池は、エネルギー密度が高く、作業電圧が高く、重量が軽く、体積が小さいなどの利点がある。また、サイクル寿命が長い点と環境にやさしい点も、リチウムイオン電池が広く応用されることの必須条件である。1990年代以来、リチウムイオン電池は、日常の電子製品、電気自動車、及びその他のエネルギー貯蔵電源システムにおいてますます広く応用されるようになってきた。しかしながら、リチウムイオン電池に使用される材料及びリチウムイオン電池の構造は特殊性があるため、現在でも多くの安全上の懸念が存在している。特にリチウムイオン電池が硬い物により刺し貫かれる場合や重量物による衝撃を受けた場合、リチウムイオン電池の安全性には大きな懸念が存在する。近年、リチウムイオン電池の爆発と自燃事件は絶えずにメディアにより報告されてきて、人々のリチウムイオン電池の安全性能に対する要求もますます高くなっている。安全性は、リチウムイオン電池の大規模な工業応用が制約される最も重要な原因の1つになっている。リチウムイオン電池の安全性を如何に向上させることは、すでに国内外のリチウムイオン電池分野における喫緊の課題となっている。
【0004】
よく知られているように、リチウムイオン電池が鋭利なものに刺し貫かれた場合、正極活物質と負極活物質の短絡、正極活物質と負極集電体の短絡、正極集電体と負極集電体の短絡、及び、正極集電体と負極活物質の短絡のような4つのモードの短絡が発生する可能性がある。そのうち、正極集電体と負極活物質が短絡するときは電力が最も大きくて瞬間的に大量の熱が発生し、最も危険な短絡モードである。従来の技術では、正極集電体と負極活物質が短絡して発熱するのを防止するために、一般には正極集電体を2層塗布する。すなわち、正極集電体に保護被膜を塗布した後、保護被膜の、正極集電体から離れた表面に正極活物質層を塗布して保護被膜を被覆する。保護被膜は正極集電体を効果的に保護して、針刺し時に正極集電体と負極活物質が接触することを防止する。しかしながら、従来の技術による保護被膜は保護効果に限界があって、正極集電体と負極活物質の接触リスクが依然として存在する。また、正極集電体は一般に機械的強度が低く、セパレータとの密着力が弱いため、リチウムイオン電池が重量物の衝撃を受けた場合、引き裂きが発生しやすく、ひいてはリチウムイオン電池の故障につながる。
【0005】
リチウムイオン電池の針刺し時に発生する正極集電体と負極活物質の短絡を防止して、リチウムイオン電池に重量物の衝撃が加わった場合の正極集電体の引き裂きリスクを低減させてリチウムイオン電池の安全性能を向上させることは、現在リチウムイオン電池の分野における喫緊の課題である。
【発明の概要】
【0006】
本発明はリチウムイオン電池を提供する。当該リチウムイオン電池は、正極シートと、負極シートと、セパレータと、を備え、正極集電体の表面の保護層の保護領域を増加することによって針刺し時に正極集電体と負極活物質が接触するリスクを低減し、正極集電体の機械的強度を向上させて正極集電体が重量物により衝撃されるときに裂けることを防止し、針刺し過程及び重量物衝撃過程におけるリチウムイオン電池の安全リスクを低減して、リチウムイオン電池の安全性能を向上させる。
【0007】
本発明はリチウムイオン電池を提供する。前記リチウムイオン電池は、正極シートと、負極シートと、セパレータと、を備えており、前記正極シート、前記セパレータ及び前記負極シートが順に積層された後に内から外へ捲回されて成形される。
【0008】
そのうち、前記正極シートは正極集電体を含む。前記正極集電体の少なくとも1つの機能表面には保護層が設けられており、且つ前記保護層の、前記正極集電体から離れた表面には正極活性層が設けられる。前記正極集電体の捲回方向において、前記保護層の長さは前記正極活性層の長さより大きい。
【0009】
上述のリチウムイオン電池において、前記正極集電体の少なくとも1つの機能表面は活性層領域を含み、第1端部領域及び/又は第2端部領域を更に含む。
【0010】
前記保護層は導電保護層を含む。前記導電保護層は、前記第1端部領域及び/又は第2端部領域、及び、活性層領域に設けられており、且つ、前記活性層領域に設けられた導電保護層の、正極集電体から離れた表面には、前記正極活性層が設けられる。
【0011】
上述のリチウムイオン電池において、前記保護層は絶縁保護層を更に含む。前記絶縁保護層は、前記第1端部領域及び/又は第2端部領域における導電保護層の、前記正極集電体から離れた表面に設けられる。
【0012】
上述のリチウムイオン電池において、前記保護層は無機フィラーを含み、且つ前記無機フィラーのD50は前記正極活性層の活物質のD50より小さい。
【0013】
上述のリチウムイオン電池において、前記無機フィラーはリチウム含有遷移金属酸化物及び/又はセラミック材料を含む。
【0014】
上述のリチウムイオン電池において、前記リチウム含有遷移金属酸化物は、コバルト酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン三元材料、ニッケルコバルトアルミニウム三元材料、ニッケルコバルトマンガンアルミニウム四元材料、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガンリチウム、リン酸バナジウムリチウム、マンガン酸リチウム、リチウムリッチマンガン基のうちの1つ又は複数を含む。
【0015】
前記セラミック材料は、アルミナ、ベーマイト、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素、モンモリロナイト、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムのうちの1つ又は複数を含む。
【0016】
上述のリチウムイオン電池において、前記保護層と正極集電体の間の接着力は、前記保護層と正極活性層の間の接着力より大きく、及び/又は、前記保護層と正極集電体の間の接着力は、前記正極活性層における活物質粒子同士の間の接着力より大きい。
【0017】
上述のリチウムイオン電池において、前記保護層中のバインダーの質量分率は前記正極活性層中のバインダーの質量分率より大きい。
【0018】
上述のリチウムイオン電池において、前記保護層を前記正極集電体の表面から剥離した後、前記正極集電体上に残存する保護層の総質量は、剥離前の正極集電体上の保護層の総質量の10%以上である。
【0019】
上述のリチウムイオン電池において、前記保護層を前記正極集電体の表面から剥離した後、前記正極集電体上に残存する保護層の総面積は、剥離前の正極集電体上の保護層の総面積の70%以上である。
【0020】
上述のリチウムイオン電池において、前記導電保護層は、50~98質量%の無機フィラー、0.5~10質量%の第1導電剤、及び、1.5~50質量%の第1バインダーを含有する。
【0021】
上述のリチウムイオン電池において、前記絶縁保護層は、50~96質量%のセラミック材料及び4~50質量%の第2バインダーを含有する。
【0022】
上述のリチウムイオン電池において、前記保護層の厚さは前記正極活性層の厚さの1%~50%である。
【0023】
上述のリチウムイオン電池において、前記第1端部領域に設けられる導電保護層の厚さは1~25μmであり、前記第2端部領域に設けられる導電保護層の厚さは1~25μmであり、前記活性層領域に設けられる導電保護層の厚さは1~10μmである。
【0024】
上述のリチウムイオン電池において、前記第1端部領域及び/又は第2端部領域に設けられる導電保護層の厚さは、前記活性層領域に設けられる導電保護層の厚さと同一である。
【0025】
上述のリチウムイオン電池において、前記第1端部領域に設けられる導電保護層の、前記正極集電体から離れた表面における絶縁保護層の厚さは1~15μmであり、前記第2端部領域に設けられる導電保護層の、前記正極集電体から離れた表面における絶縁保護層の厚さは1~15μmである。
【0026】
上述のリチウムイオン電池において、前記正極集電体の少なくとも1つの機能表面は、前記正極集電体が露出する実装領域を更に含み、前記実装領域は前記正極集電体の1つの側面に連通する。
【0027】
上述のリチウムイオン電池において、前記正極シートは正極タブを更に含み、前記正極タブは前記正極集電体の1つの機能表面の実装領域に設けられており、前記実装領域の、捲回中心に近い側と捲回中心から遠い側のいずれにも前記保護層が設けられる。
【0028】
上述のリチウムイオン電池において、前記第1端部領域は、前記正極集電体の捲回方向に沿って、第1平坦領域、実装領域、第2平坦領域、第3平坦領域、及び、第1円弧領域を含む。前記実装領域には正極タブが設けられ、前記正極シートの表面には第1テープが接着されており、前記第1テープは、前記第3平坦領域に設けられる保護層の表面、前記第1円弧領域に設けられる保護層の表面、及び、前記活性層領域に設けられる正極活性層の少なくとも一部の表面に接着される。
【0029】
上述のリチウムイオン電池において、前記第2端部領域は、前記正極集電体の捲回方向に沿って、第2円弧領域及び第4平坦領域を含む。前記正極シートの表面には第2テープが接着されており、前記第2テープは、前記活性層領域に設けられる正極活性層の少なくとも一部の表面、前記第2円弧領域に設けられる保護層の表面、及び、前記第4平坦領域に設けられる保護層の少なくとも一部の表面に接着される。
【0030】
上述のリチウムイオン電池において、前記正極集電体の少なくとも1つの機能表面は無地領域を含む。前記無地領域は前記第2端部領域の、前記捲回中心から離れた端部に位置し、前記無地領域の表面には前記保護層が設けられていない。
【0031】
上述のリチウムイオン電池において、前記正極集電体の、前記捲回中心から離れた端部の2つの機能表面は、いずれも無地領域を含まない。
【0032】
上述のリチウムイオン電池において、前記負極シートは、負極集電体と、前記負極集電体の少なくとも1つの機能表面に設けられる負極活性層と、を含み、前記負極活性層の長さは前記正極活性層の長さより大きい。
【0033】
上述のリチウムイオン電池において、前記負極集電体の少なくとも一方の機能表面は無地領域を含み、前記無地領域は前記負極集電体の、前記捲回中心から離れた端部に位置し、前記無地領域の表面には前記負極活性層が設けられていない。
【0034】
上述のリチウムイオン電池において、前記負極集電体の、前記捲回中心から離れた端部の2つの機能表面は、いずれも無地領域を含まない。
【0035】
本発明によるリチウムイオン電池は、順に積層された後に捲回されて成形された正極シート、負極シート及びセパレータを備える。そのうち、正極シートの表面には保護層が設けられており、保護層の長さは正極活性層の長さより大きい。一方では、正極集電体上に設けられる保護層の面積を増加することによって、針刺し時に負極活物質と正極集電体が接触して短絡するリスクを低減して、正極シートの針刺しに対する安全性能を向上させることができる。他方では、正極集電体の機能表面に設けられる保護層の面積を増加することによって正極集電体の機械的強度を更に強化して、正極シートが重量物により衝撃されるときに正極集電体が裂けることを防止し、正極集電体の寿命を向上させ、正極シートが重量物による衝撃を受けるときに正極シートが失効して安全問題を引き起こすリスクを低減することができる。よって、上述の正極シートを備えるリチウムイオン電池は、より優れた安全性能を有し、現在のリチウムイオン電池に対する安全性能の要求をよりうまく満足できる。
【0036】
また、本発明のリチウムイオン電池は、製造工程が簡単であり、大型機器の協力が要らず、従来の生産手段と互換性を有し、針刺し時及び重量物衝撃時のリチウムイオン電池の安全性を低いコストで著しく向上させることができるため、工業的な適用においても広く普及されやすい。
【0037】
さらに、本発明においては、集電体の表面に保護層を設けることによって、正極集電体とセパレータの間の粘着能力を増加し、電解液の正極シートを浸す能力を向上させ、正極シートの充放電性能を向上させることができる。したがって、本発明に係るリチウムイオン電池は、より優れた充放電性能を有する正極シートを備えるため、より優れた充放電特性を有し、現在のリチウムイオン電池の総合的性能に対する要求をよりうまく満足できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明に係るリチウムイオン電池の実施例1の構造模式図である。
図2】本発明に係る正極集電体の実施例1の構造模式図である。
図3】本発明に係る正極集電体の実施例2の構造模式図である。
図4】本発明に係る正極集電体の実施例3の構造模式図である。
図5】本発明に係る正極シートの実施例1の構造模式図である。
図6】本発明に係る正極シートの実施例2の構造模式図である。
図7】本発明に係る正極シートの実施例3の構造模式図である。
図8】本発明に係る正極シートの実施例4の構造模式図である。
図9】本発明に係る正極シートの実施例5の構造模式図である。
図10】本発明に係る正極シートの実施例6の構造模式図である。
図11】本発明に係る正極シートの実施例7の構造模式図である。
図12】本発明に係る正極集電体の実施例4の構造模式図である。
図13】本発明に係る正極シートの実施例8の構造模式図である。
図14】本発明に係る正極シートの実施例9の構造模式図である。
図15】本発明に係る正極シートの実施例10の構造模式図である。
図16】本発明に係る正極シートの実施例11の構造模式図である。
図17】本発明に係るリチウムイオン電池の実施例2の構造模式図である。
図18】本発明に係るリチウムイオン電池の実施例3の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の目的、技術的手段及び利点をより明確にするために、本発明の実施例を参照しながら本発明の実施例に係る技術的手段を明確かつ完全に説明する。当然ながら、ここで説明される実施例は本発明の一部の実施例に過ぎず、すべての実施例ではない。当業者が本発明の実施例に基づいて創造的な労働を行わずに得られた他のすべての実施例はいずれも本発明の保護範囲内にある。
【0040】
本発明はリチウムイオン電池を提供する。前記リチウムイオン電池は、正極シートと、負極シートと、セパレータと、を備えており、前記正極シート、前記セパレータ及び前記負極シートが順に積層された後に内から外へ捲回されて成形される。
【0041】
ここで、前記正極シートは正極集電体を含み、前記正極集電体の少なくとも1つの機能表面には保護層が設けられており、且つ前記保護層の、前記正極集電体から離れた表面には正極活性層が設けられる。前記正極集電体の捲回方向において、前記保護層の長さは前記正極活性層の長さより大きい。
【0042】
図1は本発明に係るリチウムイオン電池の実施例1の構造模式図である。図1に示すように、リチウムイオン電池は、正極シートと、セパレータ(図示せず)と、負極シートと、を備える。正極シート、セパレータ及び負極シートは順に積層される。セパレータは、正極シートと負極シートの間に位置して正極シートと負極シートの接触を遮断する役割を果たすことによって、リチウムイオン電池の短絡問題を防止する。積層された正極シート、セパレータ及び負極シートをその一端から長さ方向に沿って捲回し、リチウムイオン電池の設計要件に従って捲回して成形した後、リチウムイオン電池を得ることができる。そのうち、正極シートは正極集電体100と、保護層200と、正極活性層300とを備える。正極集電体は一般に薄いシート状である。正極集電体の機能表面は、集電体の長さと幅からなる平面であり、具体的には正極集電体の上部表面及び下部表面を指し、正極活性層を担持するように用いられる。正極集電体100の少なくとも片方の機能表面には保護層200が設けられており、保護層200の、正極集電体100から離れた表面には正極活性層300が設けられる。且つ、保護層200の長さは正極活性層300の長さより大きく、すなわち、正極集電体100の表面における保護層200の保護面積を広める。一方では、正極集電体上に設けられる保護層の面積を増加することによって、針刺し時に負極活物質と正極集電体が接触して短絡するリスクを低減して、リチウムイオン電池の針刺し時に対する安全性能を向上させることができる。他方では、正極集電体の機能表面に設けられる保護層の面積を増加することによって正極集電体の機械的強度を更に強化して、正極シートが重量物により衝撃されるときに正極集電体が裂けることを防止し、正極集電体の寿命を向上させ、正極シートが重量物による衝撃を受けるときに正極シートが失効して安全問題を引き起こすリスクを低減し、リチウムイオン電池の、重量物衝撃に対する安全性能を向上させることができる。したがって、本発明に係るリチウムイオン電池は優れた安全性能を有する。
【0043】
1つの具体的な実施形態において、前記正極集電体の少なくとも1つの機能表面は、活性層領域を含み、さらに第1端部領域及び/又は第2端部領域を含む。すなわち、前記正極集電体の少なくとも片方の機能表面は第1端部領域及び活性層領域を含み、又は、前記正極集電体の少なくとも片方の機能表面は活性層領域及び第2端部領域を含み、又は、前記正極集電体の少なくとも片方の機能表面は第1端部領域、活性層領域及び第2端部領域を含む。第1端部領域及び第2端部領域はそれぞれ前記活性層領域の両側に位置し、すなわち、前記第1端部領域、活性層領域及び第2端部領域は、前記正極集電体の捲回方向に沿って順に設けられる。例えば、図2は本発明に係る正極集電体の実施例1の構造模式図である。図2に示すように、正極集電体100は2つの機能表面、すなわち第1機能表面a-1と第2機能表面a-2を有する。第1機能表面a-1及び第2機能表面a-2はそれぞれ、捲回方向に沿って第1端部領域a-3及び活性層領域a-4を順に含む。すなわち、正極集電体100は、2つの、それぞれ正極集電体100の第1機能表面a-1と正極集電体100の第2機能表面a-2に位置する上述の第1端部領域a-3、及び、2つの、それぞれ正極集電体100の第1機能表面a-1と正極集電体100の第2機能表面a-2に位置する活性層領域a-4を含むことができる。図3は本発明に係る正極集電体の実施例2の構造模式図である。図3に示すように、正極集電体100の第1機能表面a-1及び第2機能表面a-2はそれぞれ、捲回方向に沿って活性層領域a-4及び第2端部領域a-5を順に含む。図4は本発明に係る正極集電体の実施例3の構造模式図である。図4に示すように、正極集電体100の第1機能表面a-1及び第2機能表面a-2はそれぞれ、捲回方向に沿って第1端部領域a-3、活性層領域a-4及び第2端部領域a-5を順に含む。なお、第1機能表面a-1及び第2機能表面a-2は同じ領域を含んでもよく、異なる領域を含んでもよい。例えば、第1機能表面a-1は第1端部領域a-3、活性層領域a-4及び第2端部領域a-5を含むことができ、第2機能表面a-2は第1端部領域a-3及び活性層領域a-4を含むことができる。具体的には実際の生産状況に応じて設ける。
【0044】
本発明は、正極集電体100の材質に対して厳密に限定せず、例えば、正極集電体100の材質はアルミニウム箔であり得る。
【0045】
本発明の活性層領域a-4は、正極集電体の機能表面において正極活性層が設けられた領域を指す。正極活性層には活物質が含まれており、活物質は充放電時に電流を発生して外部に出力する。これに対応して、本発明による第1端部領域a-3及び第2端部領域a-5は、活性層領域a-4の両側にそれぞれ位置し、正極集電体100の機能表面における、正極活性層300を担持しない領域である。
【0046】
前記保護層は導電保護層を含み、前記導電保護層は前記第1端部領域及び/又は第2端部領域と、活性層領域とに設けられる。且つ、前記活性層領域に設けられる導電保護層の、正極集電体から離れた表面には、前記正極活性層が設けられる。
【0047】
図5は本発明に係る正極シートの実施例1の構造模式図である。図5に示すように、正極集電体の一方の機能表面は、捲回方向に沿って、第1端部領域a-3、活性層領域a-4及び第2端部領域a-5を含み、第1端部領域a-3及び活性層領域a-4には、導電保護層201が設けられている。図6は本発明に係る正極シートの実施例2の構造模式図である。図6に示すように、正極集電体の一方の機能表面は、捲回方向に沿って、第1端部領域a-3、活性層領域a-4及び第2端部領域a-5を含み、活性層領域a-4及び第2端部領域a-5には、導電保護層201が設けられている。図7は本発明に係る正極シートの実施例3の構造模式図である。図7に示すように、正極集電体の一方の機能表面は、捲回方向に沿って、第1端部領域a-3、活性層領域a-4及び第2端部領域a-5を含み、第1端部領域a-3、活性層領域a-4及び第2端部領域a-5には、導電保護層201が設けられている。なお、図5図7は導電保護層の設置形態を主に説明するためのものであっていずれも正極活性層を示していないが、正極活性層は、前記活性層領域の導電保護層201の、前記正極集電体100から離れた表面に設けられており、第1端部領域及び第2端部領域に設けられる導電保護層201の表面には、正極活性層300が設けられない。
【0048】
なお、正極集電体100の一方の機能表面における第1端部領域a-3、活性層領域a-4及び第2端部領域a-5に保護層が設けられる場合、他方の機能表面は厳密に限定されない。例えば、他方の機能表面には全く保護層が設けられなくてもよく、又は他方の機能表面には、第1端部領域及び/又は第2端部領域と、活性層領域とにおいて導電保護層が設けられてもよい。
【0049】
上述した、正極集電体100の一方の機能表面における第1端部領域、活性層領域及び第2端部領域に導電保護層201を設けること以外にも、本発明は、正極集電体100の2つの機能表面に導電保護層201を設けることを更に含むことは理解されるべきである。
【0050】
図8は本発明に係る正極シートの実施例4の構造模式図である。本実施例においては、正極集電体100の2つの機能表面に導電保護層が設けられる。本実施例において、図8に示すような正極集電体100の第1機能表面a-1及び第2機能表面a-2の、2つの第1端部領域a-3、2つの活性層領域a-4、及び、2つの第2端部領域a-5には、2つの導電保護層201が設けられ、且つ、活性層領域に設けられている導電保護層201の、正極集電体100から離れた表面に正極活性層300が設けられる。つまり、正極集電体100の2つの機能表面において正極活性層が設置されていない領域には、いずれも保護層が設けられており、保護層は正極集電体に対する保護を最大限に実現した。
【0051】
正極集電体の捲回方向に沿って、第1機能表面a-1に位置する第1端部領域a-3の長さと、第2機能表面a-2に位置する第1端部領域a-3の長さは、同じでもよく、異なってもよい。第1機能表面a-1に位置する活性層領域a-4の長さと、第2機能表面a-2に位置する活性層領域a-4の長さは、同じでもよく、異なってもよい。第1機能表面a-1に位置する第2端部領域a-5の長さと、第2機能表面a-2に位置する第2端部領域a-5の長さは、同じでもよく、異なってもよい。
【0052】
具体的に実施する場合には、正極集電体100の異なる機能表面における第1端部領域a-3、活性層領域a-4及び第2端部領域a-5の長さを、正極シートの設計要件に応じて総合的に考慮した上で設計することができる。第1端部領域a-3、活性層領域a-4及び第2端部領域a-5において保護層を設置することを、正極集電体100の1つの機能表面に対して行うか又は2つの機能表面に対して行うかは、正極シートの安全要件、正極シートの構造及び正極シートの生産コストなどを総合的に考慮した上で決めることができる。
【0053】
本発明に係る上述の技術案においては、正極シートの正極集電体の活性層領域a-4に導電保護層201を設けるだけでなく正極シートの正極集電体100の第1端部領域a-3及び第2端部領域a-5にも導電保護層201を設けることによって、正極集電体に対する保護層の保護効果をより強化して、非活性層領域の正極集電体の機械的強度を向上させ、針刺し時に正極集電体と負極活物質が接触するリスクを低減し、正極集電体が重量物により衝撃されるときに裂けることを防止することで、針刺し及び重量物衝撃による正極シートの安全リスクを低減し、リチウムイオン電池の、針刺し及び重量物衝撃に対する安全性能を向上させる。
【0054】
本発明は、正極集電体の機能表面において導電保護層201を形成する手段に対しても厳密に限定せず、例えば、具体的に実施する時には、二層塗布、グラビアコーティング、トランスファーコーティングのうちの1つ又は複数の方法によって正極集電体100の機能表面において導電保護層201を形成することができる。
【0055】
なお、導電保護層は、導電能力を有する必要があって、導電剤などのような導電材料を含まなければならない。リチウムイオン電池の安全性をより向上させるために、第1端部領域及び/又は第2端部領域の導電保護層の、正極集電体から離れた表面に絶縁保護層を設けることができる。絶縁保護層は導電剤を含まない。具体的に、前記保護層は絶縁保護層を更に含み、前記絶縁保護層は、前記第1端部領域及び/又は第2端部領域の導電保護層の、前記正極集電体から離れた表面に設けられる。
【0056】
図9は本発明に係る正極シートの実施例5の構造模式図である。図9に示すように、正極シートは、正極集電体100と、正極集電体の第1機能表面a-1の第1端部領域、活性層領域及び第2端部領域に設けられた導電保護層201と、第1端部領域及び第2端部領域に設けられた導電保護層201の、正極集電体100から離れた表面に設けられた絶縁保護層202と、活性層領域に設けられた導電保護層201の、正極集電体100から離れた表面に設けられた正極活性層300と、を含む。正極集電体100の第2機能表面a-2の表面の配置形態はそれと同じである。
【0057】
図10は本発明に係る正極シートの実施例6の構造模式図である。図10に示すように、正極シートは、正極集電体100と、正極集電体の第1機能表面a-1、第1端部領域、活性層領域及び第2端部領域に設けられた導電保護層201と、第1端部領域に設けられた導電保護層201の、正極集電体100から離れた表面に設けられた絶縁保護層202と、活性層領域に設けられた導電保護層201の、正極集電体100から離れた表面に設けられた正極活性層300と、を含む。正極集電体100の第2機能表面a-2の表面の配置形態はそれと同じである。
【0058】
図11は本発明に係る正極シートの実施例7の構造模式図である。図11に示すように、正極シートは、正極集電体100と、正極集電体の第1機能表面a-1、第1端部領域、活性層領域及び第2端部領域に設けられた導電保護層201と、第1端部領域及び第2端部領域に設けられた導電保護層201の、正極集電体100から離れた表面に設けられた絶縁保護層202と、活性層領域に設けられた導電保護層201の、正極集電体100から離れた表面に設けられた正極活性層300と、を含む。正極集電体100の第2機能表面a-2は、その表面の第1端部領域、活性層領域及び第2端部領域に導電保護層201が設けられ、正極集電体100から離れた、活性層領域に設けられた導電保護層201の、正極集電体100から離れた表面に正極活性層300が設けられ、第1端部領域及び第2端部領域に設けられた導電保護層の表面に絶縁保護層が設けられない。
【0059】
本発明は、正極集電体100の機能表面に対する保護層の設置方法について限定しない。具体的に実施するときには、正極シートの安全要件、正極シートの構造及び正極シートの生産コストなどを総合的に考慮することができる。
【0060】
また、本発明は、活性層領域に設けられた導電保護層201において正極活性層300を形成する方法について厳密に限定しない。具体的に実施するときには、導電保護層201が正極集電体100の活性層領域a-4に形成された後、塗布の方式によって、導電保護層201の、正極集電体100から離れた表面に正極活性層300を設けることができる。
【0061】
保護層の主成分は無機フィラーであり、前記無機フィラーは、リチウム含有遷移金属酸化物及び/又はセラミック材料である。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態において、前記リチウム含有遷移金属酸化物は、コバルト酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン三元材料、ニッケルコバルトアルミニウム三元材料、ニッケルコバルトマンガンアルミニウム四元材料、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガンリチウム、リン酸バナジウムリチウム、マンガン酸リチウム、リチウムリッチマンガン基のうちの1つ又は複数を含む。
【0063】
前記セラミック材料は、アルミナ、ベーマイト、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素、モンモリロナイト、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムのうちの1つまたは複数を含む。
【0064】
本発明の発明者らは研究したところ、材料によって、正極シートの安全性が受ける影響が異なることを発見した。例えば、セラミック材料であるアルミナを含む保護層は、リチウム含有遷移金属酸化物を含む保護層より安全性能が優れ、また、リチウム含有遷移金属酸化物がリン酸鉄リチウムである場合、その安全性能は、ニッケルコバルトマンガン三元材料である場合より優れる。
【0065】
さらに、本発明の発明者らは、無機フィラーのメジアン粒径D50もリチウムイオン電池の安全性に対してある程度の影響を与えることを発見した。小さいD50はリチウムイオン電池の安全性向上に有利である。そのため、無機フィラーのD50を前記正極活性層における活物質のD50より小さくする必要がある。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態において、前記無機フィラーのD50は0.1~6μmであり、前記正極活物質のD50は10~30μmである。
【0067】
本発明の発明者らが更に検討したところ、前記保護層と正極集電体の間の接着力が保護層と正極活性層の間の接着力より強い場合、及び/又は、前記保護層と正極集電体の間の接着力が正極活性層の活物質粒子同士の間の接着力より強い場合には、機械の乱用(例えば針刺し、重量物衝撃)が発生時に、正極集電体の表面が保護層によりうまく保護されて容易に露出しないことを発見した。それによって、正極集電体と負極シートが接触する確率が低下し、正極集電体と負極シートの短絡確率が低下し、電池の安全性が向上する。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態において、前記保護層と前記正極集電体の間の接着力は30N/mより大きい。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態において、前記保護層と前記正極集電体の間の接着力は35~300N/mである。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態において、前記保護層と前記正極集電体の間の接着力は35~200N/mである。
【0071】
保護層と正極活性層の間の接着力及び正極活性層の活物質粒子同士の間の接着力は主にバインダーにより提供されるため、保護層と正極集電体の間の接着力を向上させるためには、保護層中のバインダーの含有量を増加させることができると、当業者であれば理解できる。すなわち、前記保護層中のバインダーの質量分率を前記正極活性層中のバインダーの質量分率より大きくすることができる。
【0072】
さらに、保護層中のバインダーの添加量が適正であるか否かを確認するために、本発明は、接着力の検出方法を更に提供する。例えば、本発明のいくつかの実施形態において、前記正極シート上の保護層が剥離された後に前記正極集電体上に残存する保護層の総質量は、剥離前の正極集電体上の保護層の総質量の10%以上である。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態において、前記正極シート上の保護層が剥離された後に正極集電体上に残存する正極被膜の総面積は、剥離前の正極集電体上の保護層の総面積の70%以上である。
【0074】
なお、ここに記載の保護層は、導電保護層及び絶縁保護層を含み、すなわち、正極集電体100の機能表面に設けられるすべての保護層である。
【0075】
以上からわかるように、保護層の成分はリチウムイオン電池の安全性に対して大きな影響を与える。本発明においても、リチウムイオン電池の性能を総合的に考慮したうえ、保護層中の各成分の含有量を限定する。具体的に、前記導電保護層は50~98質量%の無機フィラー、0.5~10質量%の第1導電剤及び1.5~50質量%の第1バインダーを含有し、前記絶縁保護層は50~96質量%のセラミック材料及び4~50質量%の第2バインダー含有し、前記正極活性層は93~99質量%の正極活物質、0.5~5質量%の第2導電剤及び0.5~2質量%の第3バインダーを含有する。なお、本発明で限定する第1、第2、第3という用語は主に導電剤及びバインダーの添加位置を区別するために用いられるものであり、それらに対応する材料は同じであってもよく、異なってもよい。例えば、第1バインダー、第2バインダー及び第3バインダーはいずれもポリフッ化ビニリデンであってもよく、それらの区別は位置及び/又は含有量にある。
【0076】
正極活物質は、コバルト酸リチウム(LCO)、ニッケルコバルトマンガン三元材料(NCM)、ニッケルコバルトアルミニウム三元材料(NCA)、ニッケルコバルトマンガンアルミニウム四元材料(NCMA)、リン酸鉄リチウム(LFP)、リン酸マンガンリチウム(LMP)、リン酸バナジウムリチウム(LVP)、マンガン酸リチウム(LMO)のうちの1つ又は複数を含む。導電剤は、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェンのうちの1つ又は複数を含む。バインダーは、ポリフッ化ビニリデン、変性ポリフッ化ビニリデンのうちの1つ又は2つを含む。
【0077】
理解されるように、保護層200の厚さは正極シートの性能に対してある程度の影響を及ぼし、厚すぎる保護層はリチウムイオン電池のエネルギー密度に不利である。通常、前記保護層の厚さは前記正極活性層の厚さの1%~50%である。
【0078】
発明者らが検討したところ、前記第1端部領域に設けられる導電保護層の厚さを1~25μmにし、前記第2端部領域に設けられる導電保護層の厚さを1~25μmにし、前記活性層領域に設けられる導電保護層の厚さを1~10μmにする場合には、保護層で正極シートを保護するとともに、正極シートの総合的性能が保護層の設置によって受ける影響を低減することができることを発見した。
【0079】
正極シートの製造を容易にするために、前記第1端部領域及び/又は第2端部領域に設けられる導電保護層の厚さと、前記活性層領域に設けられる導電保護層の厚さとは同一である。すなわち、当業者は、導電保護層のスラリーを製造した後、当該スラリーを正極集電体の少なくとも1つの機能表面に塗布して導電保護層を得ることができる。
【0080】
本発明のいくつかの実施形態において、前記第1端部領域に設けられる導電保護層の、前記正極集電体から離れた表面に設けられる絶縁保護層の厚さは1~15μmであり、前記第2端部領域に設けられる導電保護層の、前記正極集電体から離れた表面に設けられる絶縁保護層の厚さは1~15μmである。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態において、正極活性層300の厚さは50~100μmである。
【0082】
また、本発明は、異なる領域に設置される導電保護層201及び絶縁保護層202の厚さに対して厳密に限定せず、当業者であれば、実際の生産要件又は電極シートの製造要件に応じて適正な厚さを選択することができる。図8を例にすると、正極集電体100の2つの機能表面に分布された2つの第1端部領域における導電保護層201の厚さL1とL2は、同一であってもよく、異なってもよい。正極集電体100の2つの機能表面に分布された2つの活性層領域における導電保護層201の厚さL3とL4は、同一であってもよく、異なってもよい。正極集電体100の2つの機能表面に分布された2つの第2端部領域における導電保護層201の厚さL5とL6は、同一であってもよく、異なってもよい。正極集電体100の片方の機能表面に分布された第1端部領域及び/又は第2端部領域、及び、活性層領域における、導電保護層のL1、L3、L5は、同一であってもよく、異なってもよい。なお、正極シートを設計するとき、L1、L2、L3、L4、L5、L6の大きさは互いに独立しており、具体的に実施するとき、L1、L2、L3、L4、L5、L6の大きさは正極シートの構造要件に応じて決定することができる。
【0083】
上述のようなリチウムイオン電池において、前記正極集電体の少なくとも1つの機能表面は、前記正極集電体を露出させる実装領域を更に含み、前記実装領域は前記正極集電体の1つの側面に連通する。
【0084】
図12は、本発明の正極集電体の実施例4の構造模式図である。図12に示すように、正極集電体100の少なくとも1つの機能表面は実装領域a-6を更に含み、実装領域a-6は第1端部領域a-3内に設けられ、実装領域a-6は正極集電体100の側面と連通する。正極集電体の側面とは、正極集電体の、面積が小さい4つの側面であり、具体には集電体の長さ又は幅と、高さとにより構成される平面である。
【0085】
実装領域a-6を正極集電体100の1つの側面に連通させることにより、正極タブ400を正極集電体100上に容易に設けることができる。つまり、前記正極シートは正極タブを更に含み、前記正極タブは、前記正極集電体の1つの機能表面の実装領域に設けられており、前記実装領域の、捲回中心に近い側と捲回中心から遠い側には、いずれも前記保護層が設けられる。
【0086】
図13は本発明に係る正極シートの実施例8の構造模式図である。図13に示すように、正極シートは正極タブ400を含み、正極タブは実装領域a-6内に設けられ且つ正極集電体100の表面に接続される。正極タブ400は第1端部領域a-3内に設けられ、すなわち正極シートの頭部領域に近接する。
【0087】
なお、実装領域a-6は活性層領域a-4に設けられてもよく、当業者であればタブの位置に応じて実装領域の位置を決めることができる。
【0088】
本発明は実装領域a-6の形状に対して厳密に限定せず、具体的な実施形態においてはタブ400によって実装領域a-6の大きさと形状を予め設定することができる。例えば、いくつかの実施形態において、正極タブ400として当該技術分野の一般的なシート型のタブを採用する場合、実装領域a-6の形状は矩形であってもよい。
【0089】
本発明は正極タブ400に対して厳密に限定せず、例えば、正極タブ400は、当該技術分野の一般的なアルミニウム製のタブであってもよい。本発明は、実装領域a-6における正極タブ400の設置形態に対して厳密に限定せず、例えば、正極タブ400は溶接により実装領域a-6に設けることができる。
【0090】
上述のようなリチウムイオン電池において、保護層の粉落ちを防止するために、正極シートの、捲回中心に近い表面にはさらに第1テープ900が接着されている。第1テープ900の接着位置に基づいて、第1端部領域を第1平坦領域、実装領域、第2平坦領域、第3平坦領域及び第1円弧領域に分割する。図14は本発明に係る正極シートの実施例9の構造模式図である。図14に示すように、正極集電体の捲回中心に近い側から、第1端部領域a-3を第1平坦領域a-3-1、実装領域a-6、第2平坦領域a-3-2、第3平坦領域a-3-3及び第1円弧領域a-3-4に分割し、第1円弧領域a-3-4と活性層領域a-4は互いに繋がる。このような領域の分割は、テープが接着される位置及び正極シートの捲回形態に従って分割される。第1テープと保護層の接着を容易にするために、第1テープ900は、正極タブ400からある程度の距離で離れるとともに、正極シートの捲回された円弧部を被覆しながら正極活性層に接着するまで延在することができる。すなわち、前記第1テープ900は、前記第3平坦領域a-3-3に設けられた保護層の表面、前記第1円弧領域a-3-4に設けられた保護層の表面、及び、前記活性層領域に設けられた正極活性層300の少なくとも一部の表面に接着される。
【0091】
正極シートの、捲回中心から離れた表面にはさらに第2テープ1000が接着されており、第2テープ1000の接着位置に基づいて、第2端部領域を第2円弧領域及び第4平坦領域に分割する。図15は本発明に係る正極シートの実施例10の構造模式図であり、図15に示すように、正極集電体100の2つの機能表面の第2端部領域は、正極集電体の捲回方向に沿って、第2円弧領域a-5-1及び第4平坦領域a-5-2に分割され、第2円弧領域a-5-1と活性層領域-4は互いに繋がる。第2円弧領域a-5-1及び第4平坦領域a-5-2は、第2テープの位置及び正極シートの捲回形態に基づいて分割される。第2テープと保護層の接着を容易にするために、第2テープ1000は、正極活性層の一部の表面に接着されるとともに、正極シートが捲回された円弧部を被覆することができる。すなわち、前記第2テープ1000は、前記活性層領域a-4に設けられた正極活性層300の少なくとも一部の表面、前記第2円弧領域a-5-1に設けられた保護層の表面、及び、前記第4平坦領域a-5-2に設けられた保護層の少なくとも一部の表面に接着される。
【0092】
なお、図14~15に示す保護層は導電保護層201であり、導電保護層201の、正極集電体101から離れた表面に絶縁保護層が設けられる場合、第1テープ及び第2テープは絶縁保護層の表面に接着される。
【0093】
当業者であればわかるように、リチウムイオン電池を製造するためには、捲回されて成形された正極シート、セパレータ及び負極シートを外装ケースに接着する必要がある。しかしながら、保護層と粘着テープの間の接着力には限界がある。それに鑑みて、前記正極集電体の少なくとも1つの機能表面は無地領域を含み、前記無地領域は前記第2端部領域の、前記捲回中心から離れた端部に位置し、且つ前記無地領域の表面には前記保護層が設けられない。すなわち、少なくとも一部の正極集電体100は、外装ケースに接着されやすいように露出しており、接着強度を向上させる。
【0094】
図16は本発明に係る正極シートの実施例11の構造模式図であり、図16に示すように、正極集電体100は、捲回方向に沿って、第1端部領域、活性層領域、第2端部領域及び無地領域(点線で囲まれた部分)を順に含む。第1端部領域、活性層領域及び第2端部領域には導電保護層201が設けられており、活性層領域に設けられた導電保護層201の、正極集電体100から離れた表面には正極活性層300が設けられており、第1端部領域は実装領域を含み、実装領域には正極タブ400が設けられる。無地領域の表面には保護層及び正極活性層が設けられず、正極集電体100が外部に露出する。
【0095】
また、正極集電体の、前記捲回中心から離れた端部の2つの機能表面は、いずれも無地領域を含まなくてもよい。すなわち、正極集電体100の2つの機能表面はいずれも、捲回方向に沿って第1端部領域、活性層領域及び第2端部領域を順に含み、無地領域を含まない。
【0096】
リチウムイオン電池はセパレータ800を更に含み、セパレータ800は正極シートと負極シートの間に設けられて正極シートと負極シートを遮断するために用いられる。セパレータは、当該技術分野の一般的な材料であってもよく、本発明ではその説明を省略する。
【0097】
リチウムイオン電池は負極シートを更に含み、前記負極シートは負極集電体と、前記負極集電体の少なくとも1つの機能表面に設けられた負極活性層と、を含む。負極活性層のリチウム析出を防止するために、前記負極活性層の長さは前記正極活性層の長さより大きい。
【0098】
当業者であればわかるように、負極シートの製造過程は、負極活性層のスラリーを製造すること、当該スラリーを負極集電体の少なくとも1つの機能表面に塗布して負極活性層を取得し、それによって負極シートを得ることを含む。塗布時の負極活性層スラリーの液垂れを防止するとともに負極シートの製造工程を簡素化するために、前記負極集電体の少なくとも1つの機能表面は無地領域を含み、前記無地領域は前記負極集電体の、前記捲回中心から離れた端部に位置し、前記無地領域の表面には前記負極活性層が設けられず、すなわち捲回中心の端部に位置する負極集電体は外部に露出する。負極シートの製造過程においては、負極集電体が負極活性をすべて担持できるように、負極活性スラリーの塗布長さを、負極集電体の長さより小さくなるように制御することができる。
【0099】
また、前記負極集電体の、前記捲回中心から離れた端部の2つの機能表面はいずれも無地領域を含まない。負極シートの製造過程においては、負極活性スラリーの塗布が完了後、余分の負極集電体を切断すればよい。
【0100】
以上の開示内容に基づき、当業者は工程要件に応じて、保護層のスラリー及び正極活性層のスラリーを製造して正極集電体の表面に塗布して正極シートを製造し、負極活性層のスラリーを製造して負極集電体の表面に塗布して負極シートを製造し、さらにセパレータを組み合わせて捲回してリチウムイオン電池を製造することができる。図17は本発明に係るリチウムイオン電池の実施例2の構造模式図であり、図17に示すように、リチウムイオン電池は、内から外へ捲回されて成形された正極シート、セパレータ800及び負極シートを含む。そのうち、正極シートは、正極集電体100と、正極集電体の2つの機能表面に設けられた導電保護層201と、を含む。活性層領域に設けられた導電保護層201の、正極集電体100から離れた表面には正極活性層300が設けられており、第1端部領域は実装領域を含み、正極タブ400は実装領域内に設けられて正極集電体に接続される。正極シートの、捲回中心に近い側及び捲回中心から離れた側にはそれぞれ第1テープ900及び第2テープ1000が接着されているとともに、正極集電体100の、捲回中心から離れた端部は無地領域(点線で囲まれた部分)を更に含む。図18は本発明に係るリチウムイオン電池の実施例3の構造模式図であり、図18に示すように、その基本的な構造は実施例2と同一であるが、違いとして、正極シートは絶縁保護層を更に含む。すなわち、正極シートの構造は図9を参考することができる。この2種類のリチウムイオン電池構造における負極シートの構造は基本的に同一であり、すなわち、負極シートは負極集電体500及び負極活性層600を含み、負極集電体500の、捲回中心に近い側には負極タブ700が設けられており、負極活性層600の長さは正極活性層300の長さより大きく、負極集電体500の、捲回中心から離れた端部は無地領域(図18で点線で囲まれた部分)を含む。
【0101】
以下、具体的な実施例によって本発明に係るリチウムイオン電池を詳細に説明する。
【0102】
(実施例1)
本実施例によるリチウムイオン電池は、捲回されて成形された正極シート、セパレータ及び負極シートを含む。
【0103】
正極シートは、正極集電体、導電保護層、正極活性層及びタブを含む。正極集電体は、捲回方向に沿って、第1端部領域、実装領域、活性層領域、第2端部領域及び無地領域を順に含む。導電保護層は、正極集電体の2つの機能表面に設けられた活性層領域及び第2端部領域を含む。正極タブは、実装領域に設けられ、正極集電体に接続される。正極活性層は、活性層領域における導電保護層の、正極集電体から離れた表面に設けられる。
【0104】
正極シートの第1端部領域及び第2端部領域の表面の導電保護層の表面には、それぞれ、第1テープ及び第2テープが接着されている。
【0105】
正極シートの作製プロセスは、以下の工程を含む。
【0106】
1、リン酸鉄リチウム、ポリフッ化ビニリデン及びカーボンブラックを乾燥粉末質量比58:38:4でN-メチルピロリドンに溶解し、均一に攪拌して導電性保護スラリーを調製する。ここで、リン酸鉄リチウムのD50は0.8μmである。
【0107】
2、グラビアコーティング法により導電性保護スラリーを正極集電体の2つの機能表面の2つの活性層領域及び2つの第2端部領域に塗布して2つの導電保護層を形成する。導電保護層の厚さはいずれも5μmである。ここで、正極集電体はアルミニウム箔である。
【0108】
3、コバルト酸リチウム、ポリフッ化ビニリデン及びカーボンブラックを乾燥粉末質量比97:1.5:1.5でN-メチルピロリドンに溶解し、均一に攪拌して正極活性スラリーを調製する。
ここで、コバルト酸リチウムのD50は15μmである。
【0109】
4、グラビアコーティング法により正極活性スラリーを、2つの活性層領域における導電保護層の、正極集電体から離れた表面に塗布して2つの正極活性層を形成する。その後、正極集電体を乾燥、圧延、分割、シート化することによって、正極シートを取得する。
ここで、2つの正極活性層の厚さは87μmである。
【0110】
製造できた正極シートを、当該技術分野の一般的な負極シート、セパレータ及び電解液と組み合わせて、一般的なリチウム電池の作製工程に従ってリチウムイオン電池を作製する。その電池容量は約4970mAhである。
【0111】
(実施例2)
本実施例によるリチウムイオン電池の構造は、実施例1と基本的に同一であり、違いとして、導電保護層は、正極集電体の2つの機能表面の第1端部領域、活性層領域及び第2端部領域に設けられる。
【0112】
本実施例による正極シートの作製工程は、実施例1と基本的に同一であり、違いとして、本実施例のステップ2は、導電性保護スラリーを正極集電体の2つの機能表面の2つの第1端部領域に塗布して導電保護層を形成することを更に含み、導電保護層の厚さは5μmである。
【0113】
(実施例3)
本実施例によるリチウムイオン電池は、構造及び作製プロセスが実施例2と基本的に同一であり、違いとして、本実施例3のステップ2において第2端部領域に設けられる導電保護層の厚さは15μmである。
【0114】
(実施例4)
本実施例によるリチウムイオン電池は、構造及び作製プロセスが実施例2と基本的に同一であり、違いとして、本実施例4のステップ2において第1端部領域及び第2端部領域に設けられる導電保護層の厚さはいずれも15μmである。
【0115】
(実施例5)
本実施例によるリチウムイオン電池の構造は実施例1と基本的に同一であり、違いとして、第2端部領域に設けられる導電保護層の、正極集電体から離れた表面には絶縁保護層が更に設けられる。
【0116】
本実施例による正極シートの作製プロセスは実施例1と基本的に同一であり、違いとしては、以下のステップを更に含む。
【0117】
1、アルミナ及びポリフッ化ビニリデンを乾燥粉末質量比88:12でN-メチルピロリドンに溶解し、均一に攪拌して絶縁保護スラリーを調製する。ここで、アルミナのD50は1.2μmである。
【0118】
2、グラビアコート法により絶縁保護スラリーを第2端部領域における導電保護層の、正極集電体から離れた表面に塗布して絶縁保護層を形成し、絶縁保護層の厚さは10μmである。
【0119】
(実施例6)
本実施例によるリチウムイオン電池の構造は実施例5と基本的に同一であり、違いとして、導電保護層は正極集電体の2つの機能表面の第1端部領域、活性層領域及び第2端部領域に設けられており、第1端部領域に設けられる導電保護層の、正極集電体から離れた表面には絶縁保護層が設けられる。
【0120】
本実施例による正極シートの作製プロセスは実施例5と基本的に同一であり、違いとして、本実施例6のステップ2は、導電性保護スラリーを正極集電体の2つの機能表面の2つの第1端部領域に塗布して導電保護層を形成することと、絶縁保護スラリーを第1端部領域における導電保護層の、正極集電体から離れた表面に塗布して絶縁保護層を形成することと、を更に含み、導電保護層の厚さは5μmであり、絶縁保護層の厚さは5μmである。
【0121】
(実施例7)
本実施例によるリチウムイオン電池は、構造及び作製プロセスが実施例6と基本的に同一であり、違いとして、本実施例7のステップ2における絶縁保護層の厚さはいずれも15μmである。
【0122】
(実施例8)
本実施例によるリチウムイオン電池は実施例4に比べて、構造が同一であり、作製プロセスが基本的に同一である。違いとして、ステップ1におけるリン酸鉄リチウム、ポリフッ化ビニリデン及びカーボンブラックの乾燥粉末質量比は69:28:3である。
【0123】
(実施例9)
本実施例によるリチウムイオン電池は、実施例8の構造と基本的に同一であり、違いとして、第1端部領域及び第2端部領域に設けられた導電保護層の、正極集電体から離れた表面に設けられる絶縁保護層を更に含む。
【0124】
本実施例による正極シートの製造プロセスは、実施例8と基本的に同一であり、違いとして、絶縁保護層の厚さは10μmである。
【0125】
(実施例10)
本実施例によるリチウムイオン電池は実施例8に比べて、構造が同一であり、作製プロセスが基本的に同一である。違いとして、ステップ1におけるリン酸鉄リチウム、ポリフッ化ビニリデン及びカーボンブラックの乾燥粉末質量比は85:10:5である。
【0126】
(実施例11)
本実施例によるリチウムイオン電池は、構造及び作製工程が実施例10と基本的に同一であり、違いとして、活性層領域に設けられる導電保護層の厚さは10μmである。
【0127】
(実施例12)
本実施例によるリチウムイオン電池の構造は実施例10と基本的に同一であり、違いとして、導電保護層は、正極集電体の2つの機能表面の活性層領域及び第2端部領域、及び、第2端部領域における導電保護層の、正極集電体から離れた表面に設けられた絶縁保護層、に設けられる。
【0128】
本実施例による正極シートの作製プロセスは実施例10と基本的に同一であり、違いとして、ステップ2は、導電性保護スラリーを正極集電体の2つの機能表面の2つの第1端部領域に塗布することを含まず、絶縁保護スラリーを第2端部領域における導電保護層の、正極集電体から離れた表面に塗布して絶縁保護層を形成することを含み、絶縁保護層の厚さは5μmである。
【0129】
(実施例13)
本実施例によるリチウムイオン電池は実施例10に比べて、構造が同一であり、作製プロセスが基本的に同一である。違いとして、ステップ3におけるコバルト酸リチウム、ポリフッ化ビニリデン及びカーボンブラックの乾燥粉末質量比は85:10:5である。
【0130】
(実施例14)
本実施例によるリチウムイオン電池は実施例13に比べて、構造が同一であり、作製プロセスが基本的に同一である。違いとして、ステップ1におけるリン酸鉄リチウム、ポリフッ化ビニリデン及びカーボンブラックの乾燥粉末質量比は97:1.5:1.5である。
【0131】
(実施例15)
本実施例によるリチウムイオン電池は実施例10に比べて、構造が同一であり、作製プロセスが基本的に同一である。違いとして、ステップ1における無機フィラーはアルミナである。
【0132】
(実施例16)
本実施例によるリチウムイオン電池は実施例15に比べて、構造が同一であり、作製プロセスが基本的に同一である。違いとして、ステップ1における無機フィラーであるアルミナのD50は0.5μmである。
【0133】
(実施例17)
本実施例によるリチウムイオン電池は実施例10に比べて、構造が同一であり、作製プロセスが基本的に同一である。違いとして、ステップ1における無機フィラーはリン酸鉄リチウム及びアルミナであり、リン酸鉄リチウムとアルミナの質量比は1:1であり、リン酸鉄リチウムのD50は0.8μmであり、アルミナのD50は0.5μmである。
【0134】
(実施例18)
本実施例によるリチウムイオン電池は実施例10に比べて、構造が同一であり、作製プロセスが基本的に同一であり、違いとして、ステップ1における無機フィラーであるリン酸鉄リチウムのD50は4μmである。
【0135】
(実施例19)
本実施例によるリチウムイオン電池は実施例10に比べて、構造が同一であり、作製プロセスが基本的に同一であり、違いとして、ステップ1における無機フィラーはニッケルコバルトマンガン酸リチウムであり、ニッケルコバルトマンガン酸リチウムのD50は4μmである。
【0136】
(実施例20)
本実施例によるリチウムイオン電池は実施例1を参考することができ、実施例1に対する違いとして、正極集電体の2つの機能表面は、捲回方向に沿って、第1端部領域、実装領域、活性層領域及び第2端部領域を順に含み、活性層領域及び第2端部領域にはいずれも導電性の安全被膜が設けられる。
【0137】
(比較例1)
本比較例によるリチウムイオン電池は、捲回されて成形された正極シート、セパレータ及び負極シートを含む。ここで、正極シートは正極集電体と、正極活性層領域に設けられる導電保護層と、導電保護層の、正極集電体から離れた表面に設けられる正極活性層と、を含む。正極シートの製造方法は以下のステップを含む。
【0138】
1、リン酸鉄リチウム、ポリフッ化ビニリデン及びカーボンブラックを乾燥粉末質量比58:38:4でN-メチルピロリドンに溶解し、均一に攪拌して保護スラリーを調製する。
【0139】
2、グラビアコーティング法により保護スラリーを正極集電体の2つの機能表面の活性層領域に塗布して2つの導電保護層を形成する。導電保護層の厚さはいずれも5μmである。
ここで、正極集電体はアルミニウム箔である。
【0140】
3、正極活性スラリーを調製し、塗布法により活性スラリーを2つの導電保護層の、正極集電体から離れた表面に塗布して2つの正極活性層を形成した後、正極集電体を乾燥、圧延、分割、シート化することによって正極シートを取得する。
ここで、2つの正極活性層の厚さは87μmである。
【0141】
表1は、実施例1~20及び比較例1による正極シートをリストして説明することにより、実施例1~20と比較例1による正極シートの違いをより直感的に説明する。
(表1)実施例1~20及び比較例1による正極シートに対する説明
【0142】
(実験例)
以上の実施例1~20及び比較例1に基づいて作製したリチウムイオン電池に対して、完全充電状態(100%まで充電された状態)での針刺し試験と重量物衝撃試験を行い、その試験結果は表2に示す通りである。
【0143】
1、完全充電状態での針刺し試験:リチウムイオン電池を常温環境に置き、リチウムイオン電池の電圧が4.45Vになるまで0.5Cの定電流で充電し、その後、電流が0.025Cに下がるまで定電圧充電し、充電を停止する。リチウムイオン電池の中心位置を、直径4mmの鋼釘で30mm/sの速度で垂直に貫通し、鋼釘がリチウムイオン電池内に300sとどまるようにする。この場合、リチウムイオン電池が発火も爆発もしなければ、合格と記録する。それぞれの実施例で得られたリチウムイオン電池を15個試験する。完全充電状態での針刺し試験の合格率は、完全充電状態での針刺し試験に合格したリチウムイオン電池の個数の、15に対する比である。
【0144】
2、重量物衝撃試験:リチウムイオン電池を常温環境に置き、リチウムイオン電池の電圧が4.45Vになるまで0.2Cで定電流充電した後、電流が0.025Cに下がるまで定電圧充電してから充電を停止し、さらに3.0Vになるまで0.5Cの定電流で放電する。このサイクルを5回繰り返し、電池が最後の1回で満充電されてから24時間以内に重量物衝撃試験を行う。リチウムイオン電池を平面に置き、直径が15.8±0.2mmの鋼柱を電池の中心に置き、鋼柱の縦軸を平面に平行にし、質量が9.1±0.1kgの重量物を610±25mmの高さから電池中心の上方の鋼柱に自由落下させ、6時間観察する。リチウムイオン電池が発火も爆発もしなければ、合格と記録する。それぞれの実施例で得られたリチウムイオン電池を10個試験する。重量物衝撃試験の合格率は、重量物衝撃試験に合格したリチウムイオン電池の個数の、10に対する比である。
【0145】
(表2) 実施例1~20及び比較例1によるリチウムイオン電池の安全性試験結果
表2から分かるように、
1、比較例1に比べて、実施例1~20のリチウムイオン電池は、完全充電状態での針刺し試験の合格率及び重量物衝撃試験の合格率がより高く、実施例1~20のリチウムイオン電池は、針刺し時及び重量物衝撃時により優れた安全性能を示した。つまり、正極集電体の表面にある保護層の保護面積を増加することにより、当該正極シートを備えたリチウムイオン電池の、針刺し及び重量物衝撃に対する安全性能を向上させることができる。
【0146】
2、実施例1に比べて、実施例2~7の完全充電状態での針刺し試験の合格率及び重量物衝撃試験の合格率がより高い。そのうち、実施例7の完全充電状態での針刺し試験の合格率及び重量物衝撃試験の合格率は最も優れた。つまり、保護層の厚さを増加することは、当該正極シートを備えたリチウムイオン電池の、針刺し及び重量物衝撃に対する安全性能の向上に有利である。それに、導電保護層上に絶縁保護層を更に設けることにより、当該正極シートを備えたリチウムイオン電池の、針刺し及び重量物衝撃に対する安全性能をより一層向上させることができる。
【0147】
3、実施例4に比べて、実施例8及び10の完全充電状態での針刺し試験の合格率及び重量物衝撃試験の合格率は低下した。つまり、保護層中のバインダーの含有量を増加させることにより、当該正極シートを備えたリチウムイオン電池の、針刺し及び重量物衝撃に対する安全性能をより一層向上させることができる。
【0148】
4、実施例10に比べて、実施例13の完全充電状態での針刺し試験の合格率及び重量物衝撃試験の合格率は向上した。その原因は、正極活性層中のバインダーの含有量が増加したが、バインダーの含有量が高すぎることはリチウムイオン電池の電気的性能に不利である。また、実施例14の完全充電状態での針刺し試験の合格率が低下した。つまり、保護層中のバインダーの含有量が少なすぎてはいけない。よって、保護層中のバインダーの含有量を増加することを推奨する。
【0149】
5、実施例10に比べて、実施例15~19の完全充電状態での針刺し試験の合格率及び重量物衝撃試験の合格率は相対的に高い。つまり、無機フィラーの種類も安全試験の違いに関係する。具体的には、「アルミナ>リン酸鉄リチウム>ニッケルコバルトマンガン三元材料」である。また、粒径の小さい無機フィラーは、当該正極シートを備えたリチウムイオン電池の、針刺し及び重量物衝撃に対する安全性能の更なる向上に有利である。
【0150】
なお、以上の各実施例は、本発明の技術的解決策を説明するためのものに過ぎず、それらを限定するためのものではない。前述の各実施例を参照して本発明を詳細に説明したが、当業者であれば、前述の各実施例に記載の技術的解決策を修正したり、その中の一部又はすべての技術構成を均等に置換したりすることができる。このような修正や均等置換に対応する技術的解決策の本質は、本発明の各実施例による技術的解決策の範囲から逸脱することはないことを理解すべきである。
【符号の説明】
【0151】
100…正極集電体
a-1…第1機能表面
a-2…第2機能表面
a-3…第1端部領域
a-3-1…第1平坦領域
a-3-2…第2平坦領域
a-3-3…第3平坦領域
a-3-4…第1円弧領域
a-4…活性層領域
a-5…第2端部領域
a-5-1…第2円弧領域
a-5-2…第4平坦領域
a-6…実装領域
200…保護層
201…導電保護層
202…絶縁保護層
300…正極活性層
400…正極タブ
500…負極集電体
600…負極活性層
700…負極タブ
800…セパレータ
900…第1テープ
1000…第2テープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18