(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】電力管理サーバ及び電力管理方法
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20240814BHJP
H02J 3/46 20060101ALI20240814BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
H02J13/00 311R
H02J3/46
H02J3/38 110
H02J13/00 301A
(21)【出願番号】P 2023127079
(22)【出願日】2023-08-03
(62)【分割の表示】P 2019175501の分割
【原出願日】2019-09-26
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】合川 真史
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-017976(JP,A)
【文献】特開2009-284723(JP,A)
【文献】特開2016-146688(JP,A)
【文献】特開2016-015850(JP,A)
【文献】特開2017-070131(JP,A)
【文献】特開2019-110641(JP,A)
【文献】特開2018-207722(JP,A)
【文献】国際公開第2017/038720(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/117071(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 13/00
H02J 3/46
H02J 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調整対象の変動周期として第1周期が指示された第1調整電源から、
電力系統の周波数の調整結果を含むレポートを第1時間間隔で受信す
る受信部を備え、
前記受信部は、前記調整対象の変動周期として前記第1周期よりも長い第2周期が指示された第2調整電源から、前記電力系統の周波数の調整結果を含むレポートを前記第1時間間隔よりも長い第2時間間隔で受信する、電力管理サーバ。
【請求項2】
調整対象の変動周期として第1周期が指示された第1調整電源から、
電力系統の周数の調整結果を含むレポートを第1時間間隔で受信するステップ
Aと、
前記調整対象の変動周期として前記第1周期よりも長い第2周期が指示された第2調整電源から、前記電力系統の周波数の調整結果を含むレポートを前記第1時間間隔よりも長い第2時間間隔で受信するステップ
Bと、を
備える、電力管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力管理サーバ及び電力管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力系統の電力需給バランスを維持するために、蓄電装置を調整電源として用いる技術(例えば、VPP(Virtual Power Plant)が知られている。このようなケースにおいては、施設から電力系統に供給される逆潮流電力によって、電力系統の周波数を調整する必要がる(以下、需給調整)。このような需給調整を可能とするために、調整電源をカテゴリに分けて、カテゴリ毎に適切な信号を送信する技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した技術では、調整対象の変動周期がカテゴリ毎に割り振られているに過ぎないため、需給調整の自由度が小さく、需給調整を適切に行うことができない可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、電力系統の周波数を適切に調整することを可能とする電力管理サーバ及び電力管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の特徴に係る電力管理サーバは、電力系統の周波数の変動調整を依頼する調整依頼を調整対象の変動周期毎に上位管理サーバから受信する受信部と、前記調整依頼によって依頼される前記調整対象の変動周期に応じて、前記電力系統の周波数の変動調整を指示する調整指示を調整電源に送信する送信部と、前記調整指示によって指示される前記調整対象の変動周期と前記調整電源との対応関係を管理する管理部と、前記電力系統の周波数の追加的な調整が必要になった場合に、前記対応関係に基づいて、追加的な調整指示を送信すべき調整電源を決定する制御部と、を備える。
【0007】
第2の特徴に係る電力管理方法は、電力系統の周波数の変動調整を依頼する調整依頼を調整対象の変動周期毎に上位管理サーバから受信するステップと、前記調整依頼によって依頼される前記調整対象の変動周期に応じて、前記電力系統の周波数の変動調整を指示する調整指示を調整電源に送信するステップと、前記調整指示によって指示される前記調整対象の変動周期と前記調整電源との対応関係を管理するステップと、前記電力系統の周波数の追加的な調整が必要になった場合に、前記対応関係に基づいて、追加的な調整指示を送信すべき調整電源を決定するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電力系統の周波数を適切に調整することを可能とする電力管理サーバ及び電力管理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電力管理システム100を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る施設300を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る電力管理サーバ200を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るローカル制御装置360を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る電力系統110の周波数の変動調整を説明するための図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る管理部210で管理される情報を説明するための図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る電力管理方法を示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る電力管理方法を示す図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る電力管理方法を示す図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る電力管理方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものである。
【0011】
[実施形態]
(電力管理システム)
以下において、実施形態に係る電力管理システムについて説明する。
【0012】
図1に示すように、電力管理システム100は、電力管理サーバ200と、施設300と、電力会社400と、を有する。
図1では、施設300として、施設300A~施設300Cが例示されている。
【0013】
各施設300は、電力系統110に接続される。以下において、電力系統110から施設300への電力の流れを潮流と称し、施設300から電力系統110への電力の流れを逆潮流と称する。
【0014】
電力管理サーバ200、施設300及び電力会社400は、ネットワーク120に接続されている。ネットワーク120は、これらのエンティティ間の回線を提供すればよい。例えば、ネットワーク120は、インターネットである。ネットワーク120は、VPN(Virtual Private Network)などの専用回線を含んでもよい。
【0015】
電力管理サーバ200は、発電事業者、送配電事業者或いは小売事業者、リソースアグリゲータなどの事業者によって管理されるサーバである。リソースアグリゲータは、VPP(Virtual Power Plant)において、発電事業者、送配電事業者及び小売事業者などに逆潮流電力を提供する電力事業者である。実施形態において、電力管理サーバ200を管理する事業者は、逆潮流電力の買取エンティティの一例である。
【0016】
電力管理サーバ200は、施設300に設けられるローカル制御装置360に対して、施設300に設けられる分散電源(例えば、太陽電池装置310、蓄電装置320又は燃料電池装置330)に対する制御を指示する制御メッセージを送信する。例えば、電力管理サーバ200は、潮流電力の制御を要求する潮流制御メッセージ(例えば、DR;Demand Response)を送信してもよく、逆潮流電力の制御を要求する逆潮流制御メッセージを送信してもよい。さらに、電力管理サーバ200は、分散電源の動作状態を制御する電源制御メッセージを送信してもよい。潮流電力又は逆潮流電力の制御度合いは、絶対値(例えば、○○kW)で表されてもよく、相対値(例えば、○○%)で表されてもよい。或いは、潮流電力又は逆潮流電力の制御度合いは、2以上のレベルで表されてもよい。潮流電力又は逆潮流電力の制御度合いは、現在の電力需給バランスによって定められる電力料金(RTP;Real Time Pricing)によって表されてもよく、過去の電力需給バランスによって定められる電力料金(TOU;Time Of Use)によって表されてもよい。
【0017】
施設300は、
図2に示すように、太陽電池装置310と、蓄電装置320と、燃料電池装置330と、負荷機器340と、ローカル制御装置360と、電力計380と、電力計390と、を有する。
【0018】
太陽電池装置310は、太陽光などの光に応じて発電を行う分散電源である。太陽電池装置310は、固定買取価格(FIT(Feed-in Tariff))が適用される分散電源の一例であってもよい。例えば、太陽電池装置310は、PCS(Power Conditioning System)及び太陽光パネルによって構成される。
【0019】
ここで、太陽電池装置310から出力される電力は、太陽光などの光の受光量によって変動し得る。従って、太陽電池装置310の発電効率を考慮した場合には、太陽電池装置310から出力される電力は、太陽光パネルの受光量によって変動し得る可変電力である。
【0020】
蓄電装置320は、電力の充電及び電力の放電を行う分散電源である。蓄電装置320は、固定買取価格が適用されない分散電源の一例であってもよい。例えば、蓄電装置320は、PCS及び蓄電セルによって構成される。
【0021】
燃料電池装置330は、燃料を用いて発電を行う分散電源である。燃料電池装置330は、固定買取価格が適用されない分散電源の一例であってもよい。例えば、燃料電池装置330は、PCS及び燃料電池セルによって構成される。
【0022】
例えば、燃料電池装置330は、固体酸化物型燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)であってもよく、固体高分子型燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)であってもよく、リン酸型燃料電池(PAFC:Phosphoric Acid Fuel Cell)であってもよく、溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC:Molten Carbonate Fuel Cell)であってもよい。
【0023】
実施形態において、太陽電池装置310、蓄電装置320及び燃料電池装置330は、VPPに用いられる調整電源であってもよい。調整電源は、施設300に設けられる分散電源の中でVPPに寄与する電源である。
【0024】
負荷機器340は、電力を消費する機器である。例えば、負荷機器340は、空調機器、照明機器、AV(Audio Visual)機器などである。
【0025】
ローカル制御装置360は、施設300の電力を管理する装置(EMS;Energy Management System)である。ローカル制御装置360は、太陽電池装置310の動作状態を制御してもよく、施設300に設けられる蓄電装置320の動作状態を制御してもよく、施設300に設けられる燃料電池装置330の動作状態を制御してもよい。ローカル制御装置360の詳細については後述する(
図4を参照)。
【0026】
実施形態において、電力管理サーバ200とローカル制御装置360との間の通信は、第1プロトコルに従って行われる。一方で、ローカル制御装置360と分散電源(太陽電池装置310、蓄電装置320又は燃料電池装置330)との間の通信は、第1プロトコルとは異なる第2プロトコルに従って行われる。例えば、第1プロトコルとしては、Open ADR(Automated Demand Response)に準拠するプロトコル、或いは、独自の専用プロトコルを用いることができる。例えば、第2プロトコルは、ECHONET Lite(登録商標)に準拠するプロトコル、SEP(Smart Energy Profile)2.0、KNX、或いは、独自の専用プロトコルを用いることができる。なお、第1プロトコルと第2プロトコルは異なっていればよく、例えば、両方が独自の専用プロトコルであっても異なる規則で作られたプロトコルであればよい。但し、第1プロトコル及び第2プロトコルは同一の規則で作られたプロトコルであってもよい。
【0027】
電力計380は、電力系統110から施設300への潮流電力及び施設300から電力系統110への逆潮流電力を測定する基幹電力計の一例である。例えば、電力計380は、電力会社400に帰属するスマートメータである。
【0028】
ここで、電力計380は、所定期間(例えば、30分)毎に、所定期間における潮流電力又は逆潮流電力の積算値を示す情報要素を含むメッセージをローカル制御装置360に送信する。電力計380は、自律的にメッセージを送信してもよく、ローカル制御装置360の要求に応じてメッセージを送信してもよい。電力計380は、所定期間毎に、所定期間における潮流電力又は逆潮流電力を示す情報要素を含むメッセージを電力管理サーバ200に送信してもよい。
【0029】
電力計390は、調整電源の個別出力電力を測定する個別電力計の一例である。電力計390は、調整電源のPCSの出力端に設けられてもよく、調整電源の一部であると考えてもよい。
図2では、電力計390として、電力計391と、電力計392と、電力計393と、が設けられる。電力計391は、太陽電池装置310の個別出力電力を測定する。電力計392は、蓄電装置320の個別出力電力を測定する。電力計393は、燃料電池装置330の個別出力電力を測定する。
【0030】
ここで、電力計390は、所定期間よりも短い間隔(例えば、1分)で、調整電源の個別出力電力を示す情報要素を含むメッセージをローカル制御装置360に送信する。調整電源の個別出力電力は、瞬時値によって表されてもよく、積算値によって表されてもよい。電力計390は、自律的にメッセージを送信してもよく、ローカル制御装置360の要求に応じてメッセージを送信してもよい。
【0031】
図1に戻って、電力会社400は、電力系統110などのインフラストラクチャーを提供するエンティティであり、例えば、発電事業者又は送配電事業者である。電力会社400は、電力管理サーバ200を管理するエンティティに対して、各種の業務を委託してもよい。
【0032】
(電力管理サーバ)
以下において、実施形態に係る電力管理サーバについて説明する。
図3に示すように、電力管理サーバ200は、管理部210と、通信部220と、制御部230と、を有する。電力管理サーバ200は、VTN(Virtual Top Node)の一例である。
【0033】
管理部210は、不揮発性メモリ又は/及びHDDなどの記憶媒体によって構成されており、施設300に関する情報を管理する。例えば、施設300に関する情報は、施設300に設けられる分散電源(太陽電池装置310、蓄電装置320又は燃料電池装置330)の種別、施設300に設けられる分散電源(太陽電池装置310、蓄電装置320又は燃料電池装置330)のスペックなどである。スペックは、太陽電池装置310の定格発電電力、蓄電装置320の定格電力、燃料電池装置330の定格電力であってもよい。
【0034】
通信部220は、通信モジュールによって構成されており、ネットワーク120を介してローカル制御装置360と通信を行う。通信モジュールは、IEEE802.11a/b/g/n、ZigBee、Wi-SUN、LTEなどの規格に準拠する無線通信モジュールであってもよく、IEEE802.3などの規格に準拠する有線通信モジュールであってもよい。
【0035】
上述したように、通信部220は、第1プロトコルに従って通信を行う。例えば、通信部220は、第1プロトコルに従って第1メッセージをローカル制御装置360に送信する。通信部220は、第1プロトコルに従って第1メッセージ応答をローカル制御装置360から受信する。
【0036】
制御部230は、少なくとも1つのプロセッサを含んでもよい。少なくとも1つのプロセッサは、単一の集積回路(IC)によって構成されてもよく、通信可能に接続された複数の回路(集積回路及び又はディスクリート回路(discrete circuits)など)によって構成されてもよい。
【0037】
制御部230は、電力管理サーバ200に設けられる各構成を制御する。例えば、制御部230は、制御メッセージの送信によって、施設300に設けられるローカル制御装置360に対して、施設300に設けられる分散電源(太陽電池装置310、蓄電装置320又は燃料電池装置330)に対する制御を指示する。制御メッセージは、上述したように、潮流制御メッセージであってもよく、逆潮流制御メッセージであってもよく、電源制御メッセージであってもよい。
【0038】
(ローカル制御装置)
以下において、実施形態に係るローカル制御装置について説明する。
図4に示すように、ローカル制御装置360は、第1通信部361と、第2通信部362と、制御部363とを有する。ローカル制御装置360は、VEN(Virtual End Node)の一例である。
【0039】
第1通信部361は、通信モジュールによって構成されており、ネットワーク120を介して電力管理サーバ200と通信を行う。通信モジュールは、IEEE802.11a/b/g/n、ZigBee、Wi-SUN、LTEなどの規格に準拠する無線通信モジュールであってもよく、IEEE802.3などの規格に準拠する有線通信モジュールであってもよい。
【0040】
上述したように、第1通信部361は、第1プロトコルに従って通信を行う。例えば、第1通信部361は、第1プロトコルに従って第1メッセージを電力管理サーバ200から受信する。第1通信部361は、第1プロトコルに従って第1メッセージ応答を電力管理サーバ200に送信する。
【0041】
第2通信部362は、通信モジュールによって構成されており、分散電源(太陽電池装置310、蓄電装置320又は燃料電池装置330)と通信を行う。通信モジュールは、IEEE802.11a/b/g/n、ZigBee、Wi-SUN、LTEなどの規格に準拠する無線通信モジュールであってもよく、IEEE802.3又は独自の専用プロトコルなどの規格に準拠する有線通信モジュールであってもよい。
【0042】
上述したように、第2通信部362は、第2プロトコルに従って通信を行う。例えば、第2通信部362は、第2プロトコルに従って第2メッセージを分散電源に送信する。第2通信部362は、第2プロトコルに従って第2メッセージ応答を分散電源から受信する。
【0043】
実施形態において、第2通信部362は、電力計380から逆潮流電力を特定する情報を少なくとも受信する第1受信部を構成する。第2通信部362は、電力計380から潮流電力を特定する情報を受信してもよい。第2通信部362は、2以上の調整電源の個別出力電力のそれぞれを特定する情報を各電力計390から受信する第2受信部を構成する。
【0044】
制御部363は、少なくとも1つのプロセッサを含んでもよい。少なくとも1つのプロセッサは、単一の集積回路(IC)によって構成されてもよく、通信可能に接続された複数の回路(集積回路及び又はディスクリート回路(discrete circuits)など)によって構成されてもよい。
【0045】
制御部363は、ローカル制御装置360に設けられる各構成を制御する。具体的には、制御部363は、施設300の電力を制御するために、第2メッセージの送信及び第2メッセージ応答の受信によって、分散電源の動作状態の設定を機器に指示する。制御部363は、施設300の電力を管理するために、第2メッセージの送信及び第2メッセージ応答の受信によって分散電源の情報の報告を分散電源に指示してもよい。
【0046】
(周波数の変動調整)
以下において、実施形態に係る電力系統110の周波数の変動調整について説明する。
【0047】
図5に示すように、周波数の変動調整に係る制御は、調整対象の変動周期毎に異なる。具体的には、周波数の変動調整に係る制御は、調整対象の変動周期が短周期(例えば、数十秒~数分程度)である短周期制御と、調整対象の変動周期が短周期よりも長い中周期(例えば、数分~数十分程度)である中周期制御と、調整対象の変動周期が中周期よりも長い長周期(例えば、数十分~数時間程度)である長周期制御と、を含む。
【0048】
ここで、短周期制御は、GF(Governor Free)と称されてもよい。短周期制御は、中周期制御では追従できないような需給変動を解消するための制御である。例えば、このような需給変動は、短周期制御で動作する調整電源の動作停止などが考えられる。
【0049】
中周期制御は、LFC(Load Frequency Control)と称されてもよく、AFC(Automatic Frequency Control)と称されてもよい。中周期制御は、需給予測が困難である需給変動を解消するための制御である。
【0050】
長周期制御は、DPC(Dispatching Power Control)と称されてもよく、EDC(Economic Load Dispatching Control)と称されてもよい。長周期制御は、需給予測に基づいた需給変動を解消するための制御である。
【0051】
このような前提下において、電力管理サーバ200の通信部220は、電力系統110の周波数の変動調整を依頼する調整依頼を調整対象の変動周期毎に上位管理サーバ(例えば、電力会社400)から受信する受信部を構成する。電力管理サーバ200の通信部220は、調整依頼によって依頼される調整対象の変動周期に応じて、電力系統110の周波数の変動調整を指示する調整指示を調整電源に送信する送信部を構成する。なお、電力管理サーバ200から施設300(ローカル制御装置360)に送信される制御メッセージは、施設300に送信される調整指示の一例であると考えてもよい。
【0052】
電力管理サーバ200の管理部210は、調整指示によって指示される調整対象の変動周期と調整電源との対応関係を管理する。例えば、管理部210は、
図6に示す対応関係を管理する。対応関係は、施設IDと、設備IDと、調整対象の変動周期と、を含む。
【0053】
施設IDは、調整指示が送信された調整電源を有する施設300を特定する情報要素である。設備IDは、調整電源を特定する情報要素である。設備IDは、調整電源の種別を示す情報要素を含んでもよく、調整電源に個別に割り当てられた文字列などの情報要素を含んでもよい。調整対象の変動周期は、調整指示によって調整電源に指示された調整対象の変動周期である。調整対象の変動周期は、短周期、中周期及び長周期を含む。
【0054】
電力管理サーバ200の制御部230は、電力系統110の周波数の追加的な調整が必要になった場合に、対応関係に基づいて、追加的な調整指示を送信すべき調整電源を決定する。
【0055】
第1に、制御部230は、調整指示を送信していない調整電源を、追加的な調整指示を送信すべき調整電源として決定してもよい。例えば、制御部230は、施設300Aの調整電源に対して調整指示が既に送信されており、施設300B及び施設300Cの調整電源に対して調整指示が送信されていない場合には、施設300B及び施設300Cの調整電源の中から追加的な調整指示を送信すべき調整電源を決定する。
【0056】
第2に、制御部230は、追加的な調整で必要な調整対象の変動周期が第1周期である場合に、第1周期よりも長い第2周期を調整対象の変動周期として指示する調整指示を送信した調整電源を、追加的な調整指示を送信すべき調整電源として決定してもよい。例えば、制御部230は、施設300Aの調整電源に対して長周期の調整指示が既に送信されており、施設300B及び施設300Cの調整電源に対して中周期の調整指示が既に送信されている状況において、追加的な調整で必要な調整対象の変動周期が中周期である場合には、施設300Aの調整電源の中から中周期の制御指示を送信すべき調整電源を決定する。
【0057】
制御部230は、上位管理サーバ(例えば、電力会社400)から追加的な調整依頼を受信した場合に、追加的な調整が必要であると判定してもよい。制御部230は、電力系統110の周波数の監視結果に基づいて電力系統110の周波数の変動調整が不十分であると判定した場合に、追加的な調整が必要であると判定してもよい。監視結果は、電力管理サーバ200が直接的に電力系統110の周波数を監視したものであってもよく、各施設300が電力系統110の周波数を監視した結果を取得したものであってもよい。
【0058】
(電力管理方法)
以下において、実施形態に係る電力管理方法について説明する。ここでは、調整指示が施設300単位で送信されるケースを例示する。
【0059】
第1に、調整指示を送信していない調整電源に対して追加的な調整指示を送信するケースについて例示する。
【0060】
図7に示すように、ステップS11において、電力管理サーバ200は、調整対象の変動周期が中周期である調整依頼を電力会社400から受信する。
【0061】
ステップS12において、電力管理サーバ200は、調整指示を送信すべき調整電源を決定する。ここでは、調整指示を送信すべき調整電源が施設300Aであるものとして説明を続ける。
【0062】
ステップS13において、電力管理サーバ200は、調整対象の変動周期が中周期である調整指示を施設300Aに送信する。施設300Aは、調整指示の受信に応じて、調整電源を中周期制御で制御する。
【0063】
ステップS14において、電力管理サーバ200は、調整対象の変動周期が長周期である調整依頼を電力会社400から受信する。
【0064】
ステップS15において、電力管理サーバ200は、管理部210で管理される対応関係に基づいて、調整指示を送信すべき調整電源を決定する。ここでは、施設300Bの調整電源に対して調整指示が送信されていないため、調整指示を送信すべき調整電源が施設300Bの調整電源であるものとして説明を続ける。
【0065】
ステップS16において、電力管理サーバ200は、調整対象の変動周期が長周期である調整指示を施設300Bに送信する。施設300Bは、調整指示の受信に応じて、調整電源を長周期制御で制御する。
【0066】
第2に、調整指示を送信済みの調整電源に対して追加的な調整指示を送信するケースについて例示する。
【0067】
図8に示すように、ステップS21において、電力管理サーバ200は、調整対象の変動周期が中周期である調整依頼を電力会社400から受信する。
【0068】
ステップS22において、電力管理サーバ200は、調整指示を送信すべき調整電源を決定する。ここでは、調整指示を送信すべき調整電源が施設300A及び施設300Bであるものとして説明を続ける。
【0069】
ステップS23において、電力管理サーバ200は、調整対象の変動周期が中周期である調整指示を施設300A及び施設300Bに送信する。施設300A及び施設300Bは、調整指示の受信に応じて、調整電源を中周期制御で制御する。
【0070】
ステップS24において、電力管理サーバ200は、調整対象の変動周期が短周期である調整依頼を電力会社400から受信する。
【0071】
ステップS25において、電力管理サーバ200は、管理部210で管理される対応関係に基づいて、調整指示を送信すべき調整電源を決定する。ここでは、施設300Bに対して短周期よりも長い中周期の調整指示が送信されているため、調整指示を送信すべき調整電源が施設300Bの調整電源であるものとして説明を続ける。但し、調整指示を送信すべき調整電源は施設300Aであってもよい。
【0072】
ステップS26において、電力管理サーバ200は、調整対象の変動周期が短周期である調整指示を施設300Bに送信する。施設300Bは、調整指示の受信に応じて、調整電源の制御を中周期制御から短周期制御に変更する。
【0073】
第3に、電力管理サーバ200が自律的に追加的な調整が必要であると判定するケースについて説明する。
【0074】
図9に示すように、ステップS31において、施設300Aは、長周期制御を行っている。
ステップS32において、電力管理サーバ200は、調整対象の変動周期が中周期である調整依頼を電力会社400から受信する。
【0075】
ステップS33において、電力管理サーバ200は、管理部210で管理される対応関係に基づいて、調整指示を送信すべき調整電源を決定する。ここでは、施設300Bの調整電源に対して調整指示が送信されていないため、調整指示を送信すべき調整電源が施設300Bの調整電源であるものとして説明を続ける。
【0076】
ステップS34において、電力管理サーバ200は、調整対象の変動周期が中周期である調整指示を施設300Bに送信する。施設300Bは、調整指示の受信に応じて、調整電源を中周期制御で制御する。
【0077】
ステップS35において、電力管理サーバ200は、追加的な調整が必要であるか否かを判定する。ここでは、追加的な調整が必要であると判定されたものとして説明を続ける。上述したように、電力系統110の周波数の監視結果に基づいて電力系統の周波数の変動調整が不十分であると判定した場合に、電力系統110の周波数の変動調整が不十分であると判定される。監視結果は、電力管理サーバ200が直接的に電力系統110の周波数を監視したものであってもよく、各施設300が電力系統110の周波数を監視した結果を取得したものであってもよい。監視結果は、後述する変更例1で説明するレポートによって取得されるものであってもよい。
【0078】
ステップS36において、制御部230は、管理部210で管理される対応関係に基づいて、調整指示を送信すべき調整電源を決定する。ここでは、施設300Aに対して中周期よりも長い長周期の調整指示が送信されているため、調整指示を送信すべき調整電源が施設300Aの調整電源であるものとして説明を続ける。
【0079】
ステップS37において、制御部230は、調整対象の変動周期が中周期である調整指示を施設300Aに送信する。施設300Aは、調整指示の受信に応じて、調整電源の制御を長周期制御から中周期制御に変更する。
【0080】
(作用及び効果)
実施形態では、電力管理サーバ200は、電力系統110の周波数の追加的な調整が必要になった場合に、管理部210で管理される対応関係に基づいて、追加的な調整指示を送信すべき調整電源を決定する。このような構成によれば、既に送信された調整指示に基づいた制御に与える影響を抑制することができ、電力系統110の周波数を適切に調整することができる。
【0081】
[変更例1]
以下において、実施形態の変更例1について説明する。以下においては、実施形態に対する相違点について説明する。
【0082】
実施形態では特に触れていないが、変更例1では、電力管理サーバ200の通信部220は、電力系統110の周波数の調整結果を含むレポートを調整電源から受信する。通信部220は、レポートを施設300から受信してもよい。調整結果は、調整指示に基づいて電力系統110の周波数を調整できたか否かを示す情報要素を含んでもよい。調整結果は、電力系統110の周波数の状態を含んでもよい。調整結果は、調整指示に基づいて調整電源を制御したか否かを示す情報要素を含んでもよい。調整結果は、調整電源の動作状態を示す情報要素を含んでもよい。
【0083】
このようなケースにおいて、通信部220は、調整対象の変動周期として第1周期が指示された第1調整電源(施設300)から、電力系統110の周波数の調整結果を含むレポートを第1時間間隔で受信する。一方で、通信部220は、調整対象の変動周期として第1周期よりも長い第2周期が指示された第2調整電源(施設300)から、電力系統110の周波数の調整結果を含むレポートを第1時間間隔よりも長い第2時間間隔で受信する。
【0084】
例えば、短周期制御が指示された調整電源を有する施設300は、短時間間隔でレポートを電力管理サーバ200に送信する。中周期制御が指示された調整電源を有する施設300は、短時間間隔よりも長い中時間間隔でレポートを電力管理サーバ200に送信する。長周期制御が指示された調整電源を有する施設300は、中時間間隔よりも長い長時間間隔でレポートを電力管理サーバ200に送信する。
【0085】
ここで、短時間間隔は、短周期制御における調整対象の短周期よりも短くてもよい。同様に、中時間間隔は、中周期制御における調整対象の中周期よりも短くてもよい。長時間間隔は、長周期制御における調整対象の長周期よりも短くてもよい。
【0086】
(電力管理方法)
以下において、実施形態に係る電力管理方法について説明する。ここでは、調整指示が施設300単位で送信され、レポートが施設300単位で送信されるケースを例示する。
【0087】
図10に示すように、ステップS41において、電力管理サーバ200は、調整対象の変動周期が長周期である調整指示を施設300Aに送信する。
【0088】
ステップS42において、施設300Aは、調整指示の受信に応じて、調整電源を長周期制御で制御する。
【0089】
ステップS43において、施設300Aは、電力系統110の周波数の調整結果を含むレポートを長時間間隔で電力管理サーバ200に送信する。言い換えると、電力管理サーバ200は、レポートを長時間間隔で施設300Aから受信する。
【0090】
ステップS51において、電力管理サーバ200は、調整対象の変動周期が中周期である調整指示を施設300Bに送信する。
【0091】
ステップS52において、施設300Bは、調整指示の受信に応じて、調整電源を中周期制御で制御する。
【0092】
ステップS53において、施設300Bは、電力系統110の周波数の調整結果を含むレポートを中時間間隔で電力管理サーバ200に送信する。言い換えると、電力管理サーバ200は、レポートを中時間間隔で施設300Bから受信する。
【0093】
ステップS61において、電力管理サーバ200は、調整対象の変動周期が短周期である調整指示を施設300Cに送信する。
【0094】
ステップS62において、施設300Cは、調整指示の受信に応じて、調整電源を短周期制御で制御する。
【0095】
ステップS63において、施設300Cは、電力系統110の周波数の調整結果を含むレポートを短時間間隔で電力管理サーバ200に送信する。言い換えると、電力管理サーバ200は、レポートを短時間間隔で施設300Cから受信する。
【0096】
(作用及び効果)
実施形態では、電力管理サーバ200は、第1周期が指示された第1調整電源(施設300)から第1時間間隔でレポートを受信し、第1周期よりも長い第2周期が指示された第2調整電源(施設300)から第1時間間隔よりも長い第2時間間隔でレポートを受信する。このような構成によれば、電力管理サーバ200と施設300(調整電源)との間の過剰な通信を抑制しながらも、レポートに基づいた適切な制御を行うことができる。
【0097】
[その他の実施形態]
本発明は上述した実施形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、この発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0098】
実施形態では、施設300に設けられるローカル制御装置360が電力管理サーバ200と通信を行う。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。施設300に設けられる調整電源が直接的に電力管理サーバ200と通信を行ってもよい。
【0099】
実施形態では、自然エネルギーを利用して電力を出力する調整電源として太陽電池装置310を例示した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。自然エネルギーを利用して電力を出力する調整電源は、風力発電装置、水力発電装置、地熱発電装置及びバイオマス発電装置の中から選択された1以上の調整電源を含んでもよい。
【0100】
実施形態では、各調整電源が別々のPCSを有するケースについて例示した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。2以上の調整電源に対して1つのマルチDCリンクのPCSが設けられてもよい。
【0101】
実施形態では、ローカル制御装置360が施設300に設けられるケースについて例示した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。ローカル制御装置360は、クラウドサービスによって提供されてもよい。
【0102】
実施形態では特に触れていないが、電力とは、瞬時値(kW)であってもよく、単位時間の積算値(kWh)であってもよい。
【符号の説明】
【0103】
100…電力管理システム、110…電力系統、120…ネットワーク、200…電力管理サーバ、210…管理部、220…通信部、230…制御部、300…施設、310…太陽電池装置、320…蓄電装置、330…燃料電池装置、340…負荷機器、360…ローカル制御装置、361…第1通信部、362…第2通信部、363…制御部、380…電力計、390…電力計、電力計、392…電力計、393…電力計、400…電力会社