(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】サンルーフメカユニットおよびサンルーフ装置
(51)【国際特許分類】
B60J 7/05 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
B60J7/05 A
(21)【出願番号】P 2023152356
(22)【出願日】2023-09-20
【審査請求日】2023-09-20
(31)【優先権主張番号】202320117995.4
(32)【優先日】2023-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】523359423
【氏名又は名称】愛信(蘇州)汽車技術中心有限公司
【氏名又は名称原語表記】AISIN(SUZHOU)TECHNICAL CENTER CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】深田 竜太
(72)【発明者】
【氏名】張 杰烽
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-050856(JP,A)
【文献】特開平10-029433(JP,A)
【文献】特開平04-103431(JP,A)
【文献】国際公開第2023/058638(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 7/02 - 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンルーフ装置の可動パネルを移動させるためのサンルーフメカユニットであって、
車両前後方向に延在し、前記可動パネルの車両幅方向における縁部を支持するパネル支持部と、
前記サンルーフ装置のガイドレールに車両前後方向に移動自在に支持されるスライダと、
車両前後方向の一端が前記パネル支持部に回動可能に連結されるとともに、前記スライダに設けられた第1ガイド溝に嵌められ、当該第1ガイド溝を相対移動可能な第1被ガイド部を車両前後方向の他端に有するリンクと、
を備え、
前記リンクは、前記一端と前記他端との間に、前記ガイドレールに車両前後方向に移動可能に支持される第1回動軸部をさらに有し、当該リンクは、当該第1回動軸部を中心に回動可能であり、
前記リンクが前記第1回動軸部を中心に回動する際に、前記パネル支持部の前記リンクに連結された一端が車両上下方向に変位
し、
前記第1ガイド溝は、車両前後方向に延びる水平部分と、前記スライダの、前記リンクの前記一端寄りのところにおいて前記水平部分から下方に向かって延びる下降部分と、を有し、
前記第1被ガイド部が前記下降部分を下方に移動する際に、前記リンクが前記第1回動軸部を中心に回動して、前記パネル支持部の前記一端を持ち上げる、ことを特徴とするサンルーフメカユニット。
【請求項2】
サンルーフ装置の可動パネルを移動させるためのサンルーフメカユニットであって、
車両前後方向に延在し、前記可動パネルの車両幅方向における縁部を支持するパネル支持部と、
前記サンルーフ装置のガイドレールに車両前後方向に移動自在に支持されるスライダと、
車両前後方向の一端が前記パネル支持部に回動可能に連結されるとともに、前記スライダに設けられた第1ガイド溝に嵌められ、当該第1ガイド溝を相対移動可能な第1被ガイド部を車両前後方向の他端に有するリンクと、
を備え、
前記リンクは、前記一端と前記他端との間に、前記ガイドレールに車両前後方向に移動可能に支持される第1回動軸部をさらに有し、当該リンクは、当該第1回動軸部を中心に回動可能であり、
前記リンクが前記第1回動軸部を中心に回動する際に、前記パネル支持部の前記リンクに連結された一端が車両上下方向に変位し、
前記サンルーフメカユニットは、制限部が設けられ、前記ガイドレールに固定されるとともに、車両前後方向において前記リンクに対して前記スライダとは反対側に位置する固定ブロックをさらに備え、
前記リンクは、前記制限部と係合することにより、前記リンクの、前記固定ブロックへの更なる移動を規制可能に設けられる被制限部を前記一端にさらに有する、ことを特徴とす
るサンルーフメカユニット。
【請求項3】
前記リンクと前記スライダは、車両前後方向において前記パネル支持部の前部に位置するフロントリンクとフロントスライダであり、
前記サンルーフメカユニットは、車両前後方向において前記パネル支持部の後部に位置するリアリンクとリアスライダと、をさらに備え、
前記リアリンクは、前記リアスライダと前記パネル支持部とを連結する、ことを特徴とする請求項1に記載のサンルーフメカユニット。
【請求項4】
前記リンクと前記スライダは、車両前後方向において前記パネル支持部の前部に位置するフロントリンクとフロントスライダであり、
前記サンルーフメカユニットは、車両前後方向において前記パネル支持部の後部に位置するリアリンクとリアスライダと、をさらに備え、
前記リアリンクは、前記リアスライダと前記パネル支持部とを連結する、ことを特徴とする請求項2に記載のサンルーフメカユニット。
【請求項5】
サンルーフ装置の可動パネルを移動させるためのサンルーフメカユニットであって、
車両前後方向に延在し、前記可動パネルの車両幅方向における縁部を支持するパネル支持部と、
前記サンルーフ装置のガイドレールに車両前後方向に移動自在に支持されるスライダと、
車両前後方向の一端が前記パネル支持部に回動可能に連結されるとともに、前記スライダに設けられた第1ガイド溝に嵌められ、当該第1ガイド溝を相対移動可能な第1被ガイド部を車両前後方向の他端に有するリンクと、
を備え、
前記リンクは、前記一端と前記他端との間に、前記ガイドレールに車両前後方向に移動可能に支持される第1回動軸部をさらに有し、当該リンクは、当該第1回動軸部を中心に回動可能であり、
前記リンクが前記第1回動軸部を中心に回動する際に、前記パネル支持部の前記リンクに連結された一端が車両上下方向に変位し、
前記リンクと前記スライダは、車両前後方向において前記パネル支持部の前部に位置するフロントリンクとフロントスライダであり、
前記サンルーフメカユニットは、車両前後方向において前記パネル支持部の後部に位置するリアリンクとリアスライダと、をさらに備え、
前記リアリンクは、前記リアスライダと前記パネル支持部とを連結し、
前記リアリンクは、車両前後方向の後端が前記パネル支持部に回動可能に連結され、車両前後方向の前端が第2回動軸部を介して前記ガイドレールに移動自在に支持されて、当該リアリンクは当該第2回動軸部を中心に回動可能であり、
当該リアリンクは、前記リアスライダに設けられる第2ガイド溝に嵌められ、当該第2ガイド溝を相対移動可能な第2被ガイド部をさらに備え、
前記リアリンクが前記第2被ガイド部の前記第2ガイド溝での相対移動に従って前記第2回動軸部を中心に回動すると、前記パネル支持部の前記リアリンクと連結された後端は、車両上下方向に変位する、ことを特徴とす
るサンルーフメカユニット。
【請求項6】
前記第2ガイド溝は、それぞれ水平方向に延びる第1部分および第2部分と、前記第1部分と前記第2部分とを連結する第3部分と、を有し、前記第2部分は、前記第1部分の車両上方かつ車両前方に位置し、
前記第1部分、前記第2部分及び前記第3部分は、前記第2被ガイド部が前記第1部分から前記第3部分を経由して前記第2部分に移動する際に、前記リアリンクが前記第2回動軸部を中心に回動して前記パネル支持部の前記後端を持ち上げるように構成されている、ことを特徴とする請求項5に記載のサンルーフメカユニット。
【請求項7】
車両ルーフに設置され、車両ルーフの開口を開閉する可動パネルと、
前記開口の車両幅方向両側の縁部に設けられ、それぞれ車両前後方向に延びる一対のガイドレールと、
各ガイドレールにそれぞれ設けられる請求項1~6のいずれか一項に記載のサンルーフメカユニットと、を備える、ことを特徴とするサンルーフ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンルーフメカユニットおよびサンルーフ装置に関し、特に車両のサンルーフ装置の可動パネルを移動させるためのサンルーフメカユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1のような、ルーフに形成された開口部を開閉するサンルーフ装置の可動ガラスを移動させるためのサンルーフメカユニットが知られている。当該サンルーフメカユニットは、可動ガラスを支持するガラス支持ロッドと、ガラス支持ロッドとスライダとを連結するリンクと、を有する。
【0003】
このサンルーフメカユニットは、スライダを駆動することによりリンクを昇降、移動させることで、可動ガラスを持ち上げて車両前後方向に移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】中国実用新案第2116174022号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のサンルーフメカユニットでは、リンクの一端がガラス支持ロッドに連結されるとともに、他端がスライダに連結されており、スライダを車両前後方向に移動させるように駆動する際に、リンクがスライダに連れて、スライダとの連結部を中心に回動するようになる。そのため、スライダが可動ガラスを持ち上げる方向に移動する際に、リンクがスライダとの連結部を中心に起立することになるため、このリンクの移動範囲が広い(すなわち、リンク全体の長さ)。よって、サンルーフ装置のガイドレールは、リンクの移動を確保するために、リンクの起立に合わせて高さを大きくする必要がある。また、リンクが起立する時の強度を確保するために、ガイドレールのスライド部に補強材等の構造を設ける必要があり、スライド部の幅が大きくなってしまう。そのため、サンルーフ装置の小型化に寄与せず、可動ガラスの大きさに基づく通風面積が小さくなってしまう。
【0006】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、サンルーフ装置のガイドレールの大きさを小さくして、ガイドレールの小型化を図ることができるサンルーフメカユニットおよびサンルーフ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明のサンルーフメカユニットは、サンルーフ装置の可動パネルを移動させるためのサンルーフメカユニットであって、車両前後方向に延在し、前記可動パネルの車両幅方向における縁部を支持するパネル支持部と、前記サンルーフ装置のガイドレールに車両前後方向に移動自在に支持されるスライダと、車両前後方向の一端が前記パネル支持部に回動可能に連結されるとともに、前記スライダに設けられた第1ガイド溝に嵌められ、当該第1ガイド溝を相対移動可能な第1被ガイド部を車両前後方向の他端に有するリンクと、を備え、前記リンクは、前記一端と前記他端との間に、前記ガイドレールに車両前後方向に移動可能に支持される第1回動軸部をさらに有し、当該リンクは、当該第1回動軸部を中心に回動可能であり、前記リンクが前記第1回動軸部を中心に回動する際に、前記パネル支持部の前記リンクに連結された一端が車両上下方向に変位する、ことを特徴とする。
【0008】
このような構造によれば、リンクがスライダとの連結部を中心に回動する方式に比べて、リンクの上下方向における移動範囲を減少することができ、そのため、リンクとスライダが動作するガイドレールの高さを小さくすることができ、リンクの移動を限りのある空間内に制限できる。そして、第1回動軸部がリンクの前端と後端との間に設けられたため、ガイドレールで当該第1回動軸部を支持して、リンクを効果的に支持することができ、ガイドレールにおいてリンクに合わせるための補強材等の構造を設ける必要がなく、これによって、ガイドレールの車両幅方向における寸法をさらに小さくすることができる。これによって、サンルーフ装置のガイドレールの小型化を図ることができる。
【0009】
本発明のサンルーフメカユニットにおいて、前記第1ガイド溝は、車両前後方向に延びる水平部分と、前記スライダの、前記リンクの前記一端寄りのところにおいて前記水平部分から下方に向かって延びる下降部分と、を有し、前記第1被ガイド部が前記下降部分を下方に移動する際に、前記リンクが前記第1回動軸部を中心に回動して、前記パネル支持部の前記一端を持ち上げることが好ましい。
【0010】
このような構造によれば、下降部分によりリンクをチルトアップすることができ、即ち、リンクが持ち上げられる高さの一部がスライダの高さに重なり、そのため、リンクとガイド溝を有しないスライダとを直接連結する方式に比べて、ガイドレールの高さをさらに縮小することができ、ガイドレールの小型化をさらに図ることができる。
【0011】
本発明のサンルーフメカユニットにおいて、制限部が設けられ、前記ガイドレールに固定されるとともに、車両前後方向において前記リンクに対して前記スライダとは反対側に位置する固定ブロックをさらに備え、前記リンクは、前記制限部と係合することにより、前記リンクの、前記固定ブロックへの更なる移動を規制可能に設けられる被制限部を前記一端にさらに有することが好ましい。
【0012】
このような構造によれば、簡単な方式でサンルーフ装置が閉じたときの位置を制御することができる。
本発明のサンルーフメカユニットにおいて、前記リンクと前記スライダは、車両前後方向において前記パネル支持部の前部に位置するフロントリンクとフロントスライダであり、前記サンルーフメカユニットは、車両前後方向において前記パネル支持部の後部に位置するリアリンクとリアスライダと、をさらに備え、前記リアリンクは、前記リアスライダと前記パネル支持部とを連結することが好ましい。
【0013】
このような構造によれば、前端と後端の2箇所からパネル支持部を支持することができ、パネル支持部の剛性を高めることができる。
本発明のサンルーフメカユニットにおいて、前記リアリンクは、車両前後方向の後端が前記パネル支持部に回動可能に連結され、車両前後方向の前端が第2回動軸部を介して前記ガイドレールに移動自在に支持されて、当該リアリンクは当該第2回動軸部を中心に回動可能であり、当該リアリンクは、前記リアスライダに設けられる第2ガイド溝に嵌められ、当該第2ガイド溝を相対移動可能な第2の被ガイド部をさらに備え、前記リアリンクが前記第2被ガイド部の前記第2ガイド溝での相対移動に従って前記第2回動軸部を中心に回動すると、前記パネル支持部の前記リアリンクと連結された後端は、車両上下方向に変位することが好ましい。
【0014】
本発明のサンルーフメカユニットにおいて、前記第2ガイド溝は、それぞれ水平方向に延びる第1部分および第2部分と、前記第1部分と前記第2部分とを連結する第3部分と、を有し、前記第2部分は、前記第1部分の車両上方かつ車両前方に位置し、前記第1部分、前記第2部分及び前記第3部分は、前記第2被ガイド部が前記第1部分から前記第3部分を経由して前記第2部分に移動する際に、前記リアリンクが前記第2回動軸部を中心に回動して前記パネル支持部の前記後端を持ち上げるように構成されていることが好ましい。
【0015】
このような構造によれば、サンルーフ装置のガイドレールにパネル支持部の後端を持ち上げるための他の構造、部品を設ける必要がなく、リアスライダを移動させるだけでパネル支持部の後端を持ち上げることができる。そのため、部品の点数を減らすことができ、ガイドレールの小型化をさらに図ることができる。
【0016】
本発明のサンルーフ装置は、車両ルーフに設置され、車両ルーフの開口を開閉する可動パネルと、前記開口の車両幅方向両側の縁部に設けられ、それぞれ車両前後方向に延びる一対のガイドレールと、各ガイドレールにそれぞれ設けられる上記のサンルーフメカユニットと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は本発明のサンルーフメカユニットを示す分解斜視図である。
【
図2】
図2は本発明のサンルーフメカユニットの要部を示す斜視図である。
【
図3】
図3は本発明のサンルーフメカユニットを示す断面図である。
【
図4】
図4は本発明のサンルーフメカユニットが可動パネルを開ける時の動作を説明するための正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて、本発明の好ましい実施形態について説明する。
(サンルーフメカユニットの構造)
図1は本発明のサンルーフメカユニットを示す分解斜視図である。
図2は本発明のサンルーフメカユニットの要部を示す斜視図である。
図3は本発明のサンルーフメカユニットを示す断面図である。また、図面において、矢印Xの方向は車両前後方向を表し、正方向は車両の前方であり、矢印Yの方向は車両幅方向を表し、正方向は車両の左方であり、矢印Zの方向は車両上下方向を表し、正方向は車両の上方である。そして、本発明の説明において、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」等の方向は、運転席に着席したドライバの方から見た車両の方向である。
【0019】
図面には示されていないが、本実施形態のサンルーフメカユニットが取り付けされたサンルーフ装置は、車両のルーフに取り付けられている。サンルーフ装置は、車両のルーフに設置され、車両のルーフの開口を開閉する可動パネルと、開口の車両幅方向Y両側の縁部に設けられ、それぞれ車両前後方向Xに延びる一対のガイドレール40(
図3を参照)と、を備える。サンルーフメカユニットは、サンルーフ装置の可動パネルを移動させるために用いられる。本実施形態では、可動パネルが後へ移動する際に車両ルーフの開口を開けることとした。そして、以下の説明において、車両幅方向Y右側のサンルーフメカユニットのみを示しており、実際に左側のサンルーフメカユニットの構造はこれと同一である。
【0020】
サンルーフメカユニットは、
図1~3に示すように、車両前後方向Xに延在し、可動パネルの車両幅方向Yにおける縁部を支持するパネル支持部10と、サンルーフ装置のガイドレール40に車両前後方向Xに移動自在に支持されるフロントスライダ20と、車両前後方向X上の前端がパネル支持部10に回動可能に連結されるとともに、フロントスライダ20に設けられた第1ガイド溝21に嵌められ、当該第1ガイド溝21を相対移動可能な第1被ガイド部31を車両前後方向X上の後端に有するフロントリンク30と、を備える。本実施形態では、第1被ガイド部31は、フロントリンク30の後端に形成される孔を介して第1ガイド溝21に嵌められるピンである。第1ガイド溝21は、車両前後方向Xに延びる水平部分21aと、フロントスライダ20の、フロントリンク30の前端寄りのところにおいて水平部分21aから下方に向かって延びる下降部分21bと、を有する。
【0021】
なお、フロントリンク30は、前端と後端との間に、サンルーフ装置のガイドレール40に車両前後方向Xに移動可能に支持される第1回動軸部32をさらに有し、フロントリンク30は、第1回動軸部32を中心に回動可能である。フロントリンク30が第1回動軸部32を中心に回動する際に、パネル支持部10の前端が車両上下方向Zにおいて変位する。本実施形態では、第1回動軸部32は、フロントリンク30から車両幅方向Yに突出する突出部である。
【0022】
また、サンルーフメカユニットは、
図1、2に示すように、サンルーフ装置のガイドレール40に固定されるとともに、車両前後方向Xにおいてフロントリンク30に対してフロントスライダ20とは反対側に位置する固定ブロック50をさらに備え、即ち、当該固定ブロック50は、フロントリンク30の車両前後方向Xにおける前方に位置する。固定ブロック50には、制限部51が設けられている。固定ブロック50は、
図2に示すように、車両幅方向Yに並ぶ2つの壁部からなり、当該2つの壁部の間に、フロントリンク30が挿入される隙間が隔てられ、制限部51は、当該2つの壁部にそれぞれ形成され、下方に向かうにつれて前方に傾斜して下降するガイド溝である。フロントリンク30は、被制限部33を前端にさらに有し、当該被制限部33は、フロントリンク30から車両幅方向Yにおける両側に突出する突起である。当該被制限部33は、制限部51と係合することにより、フロントリンク30の前方への移動を規制可能に設けられ、即ち、フロントリンク30の可動パネルが車両ルーフの開口を閉じる閉方向(本実施形態では、前方)への移動を規制する。一実施形態としては、例えば、被制限部33が制限部51において最底部に移動した際に、可動パネルの前方への移動が完全に規制される。
【0023】
サンルーフメカユニットは、車両前後方向Xにおいてパネル支持部10の後部に位置するリアスライダ60とリアリンク70と、をさらに備え、リアリンク70は、リアスライダ60とパネル支持部10とを連結する。具体的に、リアリンク70は、車両前後方向X上の後端がパネル支持部10に回動可能に連結され、車両前後方向X上の前端が第2回動軸部72を介してサンルーフ装置のガイドレール40に移動自在に支持されて、リアリンク70は第2回動軸部72を中心に回動可能である。リアリンク70は、リアスライダ60に設けられる第2ガイド溝61に嵌められ、当該第2ガイド溝61を相対移動可能な第2被ガイド部71をさらに備える。本実施形態では、第2被ガイド部71は、リアリンク70からリアスライダ60に向かって突出する突出部であり、第2回動軸部72は、リアリンク70の前端から車幅方向Yに突出する突出部である。
【0024】
第2ガイド溝61は、
図1に示すように、それぞれ水平方向に沿って延びる第1部分61aおよび第2部分61bと、第1部分61aと第2部分61bとを連結する第3部分61cと、を有し、第2部分61bは、第1部分61aの車両上方かつ車両前方に位置する。リアリンク70が第2被ガイド部71の第2ガイド溝61での相対移動に従って第2回動軸部72を中心に回動すると、パネル支持部10のリアリンク70と連結する後端は、車両上下方向Zに変位する。
【0025】
(サンルーフメカユニットの動作)
以下、
図4を参照しながら、サンルーフメカユニットの動作について説明する。
図4は、本発明のサンルーフメカユニットが可動パネルを開ける時の動作を説明するための正面図である。そのうち、
図4(a)は、可動パネルが完全に閉じられた際の状態を示し、
図4(b)は、サンルーフメカユニットが可動パネルの後端を持ち上げてチルトアップモードになる際の状態を示し、
図4(c)は、サンルーフメカユニットが可動パネルを開けた際の状態を示す。
【0026】
フロントリンク30は、
図4(a)に示すように、可動パネルが完全に閉じられた際に、固定ブロック50の2つの壁部の間に完全に挿入されることによって、被制限部33が制限部51の底端に当接される。また、リアリンク70の第2被ガイド部71は、リアスライダ60の第2ガイド溝61の第1部分61aの後端に位置する。
【0027】
サンルーフ装置をチルトアップモードにする際に、
図4(b)に示すように、フロントスライダ20とリアスライダ60をそれぞれ駆動してガイドレール40(
図3を参照)に沿って車両後方へ移動させる。この際に、リアリンク70の第2被ガイド部71は、第2ガイド溝61に沿って第1部分61aから第3部分61cを経由して上向きに第2部分61bまで移動し、これに伴って、リアリンク70が第2回動軸部72を中心に回動して、パネル支持部10の後端を持ち上げる。また、フロントリンク30の第1被ガイド部31は、フロントスライダ20がガイドレール40に沿って後方へ移動することに従って、第1ガイド溝21の水平部分21aを移動したものの、下降部分21bにはまだ入っていないため、フロントリンク30の位置が変化することなく、被制限部33は依然として制限部51の底端に当接する状態にある。このように、可動パネルは、後端が持ち上げられて前端が閉じたままに保持されるチルトアップ状態になり、例えば、開口の後端から通風可能である。
【0028】
図4(c)に示すように、通風モードからフロントスライダ20をさらに駆動して車両後方へ移動させると、フロントリンク30は、その第1被ガイド部31が水平部分21aから下降部分21bに入ることによって、第1被ガイド部31を中心に回動する。これに伴って、フロントリンク30は、被制限部33が制限部51に沿って上方まで移動することによって、パネル支持部10の前端を持ち上げて、パネル支持部10の前端と後端とを同一の高さにする。
図4(c)の状態では、フロントスライダ20とリアスライダ60をさらに駆動して車両後方へ移動させると、フロントリンク30の第1回動軸部32及びリアリンク70の第2回動軸部72がサンルーフ装置のガイドレール40に沿って移動して、可動パネルを持ち上げたまま車両後方へ移動することによって、車両ルーフの開口を完全に開ける。
【0029】
(サンルーフメカユニットの効果)
以下、本実施形態のサンルーフメカユニットの効果について説明する。
上記のように、本実施形態のサンルーフメカユニットにおいて、フロントスライダ20は、第1回動軸部32を中心にフロントリンク30を回動させるため、フロントリンクがフロントスライダとの連結部を中心に回動する方式に比べて、フロントリンクの上下方向Zにおける移動範囲を減少することができ、そのため、フロントリンクとフロントスライダが動作するガイドレールの高さを小さくすることができ、フロントリンク30の移動を限りのある空間内に規制できる。そして、第1回動軸部32がフロントリンク30の前端と後端との間に設けられたため、ガイドレール40で当該第1回動軸部32を支持して、フロントリンク30を効果的に支持することができ、ガイドレールにおいてフロントリンクに合わせるための補強材等の構造を設ける必要がなく、そのため、ガイドレールの車両幅方向Yにおける寸法をさらに小さくすることもできる。これによって、サンルーフ装置のガイドレールの小型化を図ることができる。
【0030】
また、本実施形態では、フロントスライダ20の第1ガイド溝21は、水平部分21aと下降部分21bとを有する構造であるため、フロントリンク30の第1被ガイド部31が下降部分21bを下へ移動することで、当該下降部分21bによりフロントリンク30の先端を当該下降部分21bの高さに応じた高さだけ持ち上げることができ、即ち、フロントリンク30の先端が持ち上げられる高さの一部がフロントスライダ20の高さに重なり、そのため、フロントリンクとガイド溝を有しないフロントスライダとを直接連結する方式に比べて、ガイドレールの高さをさらに縮小することができ、ガイドレールの小型化をさらに図ることができる。
【0031】
また、本実施形態では、制限部51が設けられた固定ブロック50をさらに備え、制限部51とフロントリンク30の被制限部33との係合により、フロントリンク30の、可動パネルがサンルーフ装置の開口を閉じる閉方向への移動を規制する。そのため、簡単な方式でサンルーフ装置が閉じたときの位置を制御することができる。
【0032】
また、本実施形態では、サンルーフメカユニットは、パネル支持部10の前後方向両端に、それぞれフロントスライダ20及びフロントリンク30と、リアスライダ60及びリアリンク70と、を有する。そのため、前端と後端の2箇所からパネル支持部10を支持することができ、パネル支持部10の剛性を高めることができる。
【0033】
また、本実施形態では、リアスライダ60は、第2ガイド溝61を有し、リアリンク70の第2被ガイド部71が第2ガイド溝61に嵌められ、第2ガイド溝61を相対移動可能である。そして、第2ガイド溝61は、第1部分61aと、第2部分61bと、第3部分61cと、を有し、リアリンク70は、第2被ガイド部71が第1部分61aから第3部分61cを経由して第2部分61bまで移動する際に、パネル支持部10の後端を持ち上げる。このようにリアスライダ60とリアリンク70とを設けることにより、サンルーフ装置のガイドレールにパネル支持部10の後端を持ち上げるための他の構造、部品を設ける必要がなく、リアスライダ60を移動させるだけでパネル支持部10の後端を持ち上げることができる。そのため、部品の点数を減らすことができ、ガイドレールの小型化をさらに図ることができる。
【0034】
(他の実施形態)
本発明は、上記の実施形態に限らず、次のように変更して実施することができる。
上記の実施形態では、フロントリンク30が当該フロントリンク30の前端と後端との間に設けられた第1回動軸部32を有し、フロントリンク30の後端部に設けられた第1被ガイド部31がフロントスライダ20に設けられる第1ガイド溝21に嵌められた構造について説明したが、これに限らない。リアリンクが当該リアリンクの前端と後端との間に設けられた回動軸部を有し、当該リアリンクの端部に設けられた被ガイド部がリアスライダに設けられたガイド溝に嵌められた構造であってもよい。つまり、可動パネルの車両ルーフでの前後位置及び可動パネルの開閉方向によっては、上記の好ましい実施形態で説明したフロントリンク及びフロントスライダの構造をパネル支持部の後部に用いて、リアリンク及びリアスライダとして使用してもよい。
【0035】
上記の実施形態では、第1被ガイド部31がフロントリンク30の後端に形成された孔を介して第1ガイド溝21に嵌められるピンである方式について説明したが、これに限らない。第1被ガイド部31は、フロントリンク30からフロントスライダ20に突出する突出部であってもよい。
【0036】
上記の実施形態では、第1回動軸部32がフロントリンク30から突出する突出部である方式について説明したが、これに限らず、第1回動軸部32は、フロントリンク30に形成される孔を介してガイドレール40に嵌められるピンであってもよい。同様に、第2被ガイド部71及び第2回動軸部72は、リアリンク70に形成される孔に挿入するピンであってもよい。
【0037】
上記の実施形態では、第1ガイド溝21が水平部分21aと下降部分21bとを有し、固定ブロック50の制限部51がガイド溝である構成について説明したが、これに限らない。第1ガイド溝21が下降部分21bを備えず、固定ブロック50の制限部51の、下方に向かうにつれて前方に傾斜して下降する形状のみによってフロントリンク30を回動させる構成であってもよい。あるいは、制限部51がガイド溝ではなく、被制限部33と前方から当接して位置規制を行うストッパーであり、フロントスライダ20の第1ガイド溝21の軌跡のみによってフロントリンク30を回動させて構成であってもよい。即ち、フロントスライダ20の移動に従ってパネル支持部10のフロントリンク30に連結される前端を車両上下方向Zに変位させれば、各種の構造を採用してもよい。
【0038】
上記の実施形態では、固定ブロック50は、制限部51がフロントリンク30の被制限部33に係合することによりフロントリンク30の可動パネルの閉方向への移動を規制することについて説明したが、これに限らない。固定ブロック50は、フロントリンク30を規制しなく、前方からフロントスライダ20に直接当接して可動パネルの閉方向への移動を規制してもよい。
【0039】
上記の実施形態では、第2ガイド溝61が第1部分61aと、第2部分61bと、第3部分61cと、を有する構造について説明したが、これに限らない。第2ガイド溝61は、他の形状であってもよく、サンルーフ分野における公知のリンクにおける被ガイド部を案内してパネル支持部10の一端を車両上下方向に変位させることができるガイド溝の如何なる形状も採用できる。
【0040】
以上、具体例を参照しながら、本発明について説明したが、本発明は当該具体例に限らない。当業者が当該具体例について適切な設計変更を加えた設計は、本発明の特徴を備える限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
10 パネル支持部
20 フロントスライダ
21 第1ガイド溝
30 フロントリンク
31 第1被ガイド部
32 第1回動軸部
33 被制限部
40 ガイドレール
50 固定ブロック
51 制限部
60 リアスライダ
61 第2ガイド溝
70 リアリンク
71 第2被ガイド部
72 第2回動軸部