(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】吐物用容器
(51)【国際特許分類】
A61J 19/00 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
A61J19/00 Z
(21)【出願番号】P 2023199601
(22)【出願日】2023-11-27
【基礎とした実用新案登録】
【原出願日】2020-12-17
【審査請求日】2023-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】397028636
【氏名又は名称】イトマン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520497542
【氏名又は名称】嶋 雅範
(73)【特許権者】
【識別番号】520497553
【氏名又は名称】谷山 絵梨子
(74)【代理人】
【識別番号】110003959
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100142217
【氏名又は名称】小笠原 宜紀
(74)【代理人】
【識別番号】100119367
【氏名又は名称】松島 理
(72)【発明者】
【氏名】嶋 雅範
(72)【発明者】
【氏名】谷山 絵梨子
【審査官】関本 達基
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-055347(JP,U)
【文献】登録実用新案第3073941(JP,U)
【文献】登録実用新案第3060379(JP,U)
【文献】特開2017-119523(JP,A)
【文献】特開2006-115988(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端側の開口部より吐瀉物やうがい等の吐物を受ける紙製の吐物用容器であって、
上端側に配される前記開口部と、前記吐物用容器の内側に突出する第一凸部と、前記第一凸部に使用者の親指をかけた際に、人差し指、中指、薬指及び小指の少なくともいずれか一がかかる位置に配され、前記吐物用容器の内側に突出する第二凸部とを有し、下端側に対して上端側が外側に広がるよう傾斜する側面部と、
前記側面部の下端側から内周側に連設された底面部と、
前記側面部の上端側から外周側に連設され、前記第一凸部の近傍が使用者の平均的な頭部の形状に沿うように湾曲している縁部と、
を備え、
前記第二凸部が、
前記側面部よりも前記吐物用容器の内側に配され、下端側に対して上端側が外側に広がるよう傾斜する第一面と、
前記側面部の上端から下端に向かって伸び、且つ、前記側面部から第一面に向かって伸びる、一方の面である第二面と、
前記側面部の上端から下端に向かって伸び、且つ、前記側面部から第一面に向かって伸びる、他方の面である第三面と、
を有し、
前記第二面と前記第三面との間隔が、前記側面部の下端から上端に向かって徐々に小さくなり、
前記底面部が、前記吐物用容器の内側に突出し、吐物を、前記吐物用容器の下端側に且つ
前記使用者のうち、吐物を排出する者である排出者側の前記側面部に向かう方向に跳ね返す第三凸部を有する吐物用容器。
【請求項2】
請求項1に記載の吐物用容器であって、
前記第二凸部は、前
記排出者の親指を前記第一凸部にかけた際に、該排出者の人差し指、中指、薬指及び小指の少なくともいずれか一がかかる位置に配さ
れる吐物用容器。
【請求項3】
請求項1
又は請求項2に記載の吐物用容器であって、
古紙からなることを特徴とする吐物用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐瀉物やうがい等の吐物を受け、使用後はマセレーターによって前記吐物と共に処理される紙製の吐物用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、日本国内の病院において、患者の汚物の処理にはプラスチック製の汚物用容器が用いられることが多い。使用後の汚物用容器は、ベッドパンウォッシャー用いて、又は、手洗いで洗浄した後、再利用される。しかしながら、この方法は、洗い残しによる感染症のおそれがあることや、手洗いの場合、手洗いを行う者の負担が大きいことが問題となっていた。また、洗浄されているとはいえ、他人が使用した汚物用容器を使用することに抵抗を感じる患者も多い。
【0003】
このような状況に鑑みて、従来から、使い捨ての汚物用容器が開発されている。例えば特許文献1では、新聞、雑誌等のリサイクル古紙で作られる汚物用容器の技術が開示されている。この技術によれば、使用後の汚物用容器は破砕機(マセレーター)を用いて破砕し、下水道等に放出処理して廃棄できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の使い捨ての汚物用容器は、単純な形状のものが多く、患者や患者の世話をする者にとって使用しやすい形状とはいえなかった。特に、吐物用容器は、患者又は患者の世話をする者が両手で把持して使用するものであるため、使用しにくい(把持しにくい)形状であると吐物をこぼしてしまう虞がある。すなわち、吐物用容器において、その形状が支えやすい形状であるか否かは非常に重要な課題といえる。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、患者や患者の世話をする者にとって使用しやすい形状であり、使い捨て可能な吐物用容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面に係る吐物用容器は、上端側の開口部より吐瀉物やうがい等の吐物を受ける紙製の吐物用容器であって、上端側に配される前記開口部と、前記吐物用容器の内側に突出する第一凸部と、前記第一凸部に使用者の親指をかけた際に、人差し指、中指、薬指及び小指の少なくともいずれか一がかかる位置に配され、前記吐物用容器の内側に突出する第二凸部とを有し、下端側に対して上端側が外側に広がるよう傾斜する側面部と、前記側面部の下端側から内周側に連設された底面部と、を備えることができる。前記構成によれば、使用者は、第一凸部及び第二凸部に指をかけてしっかりと把持することができ、例えば、吐物用容器を使用している際に手を滑らせるなどして吐物をこぼすということを防ぐことができる。また、側面部は、下端側に対して上端側が外側に広がるよう傾斜しており、側面部にかかった吐物を底面部に集めることができる。
【0008】
また、本発明の第2の側面に係る吐物用容器は、さらに、前記側面部の上端側から外周側に連設され、前記第一凸部の近傍が使用者の平均的な頭部の形状に沿うように湾曲している縁部を備え、前記側面部の前記第一凸部と前記第二凸部との間の範囲と連設される前記縁部の範囲の幅が、使用者の手の厚さ方向の平均的な幅よりも広くなるよう構成できる。前記構成によれば、把持者が吐物用容器を把持した際に、把持者の手が配される範囲と連設される範囲の縁部の幅が、使用者の手の厚さ方向の平均的な幅よりも広くなるよう構成されているので、病気やケガ等により握力が低下し、第一凸部及び第二凸部に指をかけても吐物用容器をしっかりと把持することができない人であっても、手に縁部を引っ掛けることで吐物用容器を把持することができる。また、縁部が使用者の平均的な頭部の形状に湾曲していることにより、吐物を吐き出す人の頭部と吐物用容器を密着させることができ、吐物用容器の使用時に周囲が汚れるのを防ぐことができる。
【0009】
さらにまた、本発明の第3の側面に係る吐物用容器は、前記底面部が、使用者から吐き出された吐物が、使用者に向かう下端側に、跳ね返るよう、前記吐物用容器の内側に突出する第三凸部を有することができる。前記構成によれば、第三凸部の側面に当たった吐物は下端側に跳ね返るので、吐物が側面部を越えて跳ね返り、周囲に飛び散る可能性を低くすることができる。
【0010】
さらにまた、本発明の第4の側面に係る吐物用容器は、古紙から製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る吐物用容器の斜視図である。
【
図2】本発明の一実施の形態に係る吐物用容器の平面図である。
【
図3】本発明の一実施の形態に係る吐物用容器の背面図である。
【
図4】本発明の一実施の形態に係る吐物用容器の平面図である。
【
図5】本発明の一実施の形態に係る吐物用容器の右側面図である。
【
図6】吐物用容器を把持した状態を示す模式図である。
【
図7】吐物の跳ね返り方を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示するものであって、本発明はそれらを以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
(吐物用容器1)
【0013】
本発明の一実施の形態に係る吐物用容器1について
図1~
図7に基づいて説明する。
【0014】
吐物用容器1は平面視(
図4)において、略角丸の長方形を長辺方向に湾曲させた形状(以下、「ソラマメ形状」と称す。)の紙製の容器であって、水に触れてから約4~8時間後に分解が始まるような耐水加工が施されている。吐物用容器1は、前述のとおり紙製の容器であるので、使用後は、マセレーターによって前記吐物と共に処理する、又は、吐物を別途処理した後に通常の可燃ごみとして処理することができる。なお、材料(紙の種類)は特に限定されないが、新聞の古紙とコピー用紙等上質紙の損紙とを重量比で7:3~8:2の割合で混合してなる再生紙等を用いることができる。
【0015】
また、吐物用容器1は、
図1~
図5に示すように、側面部11、底面部12及び縁部13とで構成される。側面部11は第一凸部111及び2つの第二凸部112を有し、底面部12は第三凸部121を有している。各部について以下で説明する。
(側面部11)
【0016】
側面部11は、
図1~
図5に示すように、下端側が底面部12の外周を取り囲むように配される部材であって、上端側が容器の開口部を形成する。側面部11は、下端側に対して上端側が外側に広がるよう傾斜しており側面部11にかかった吐物が流れて底面部12に集まるよう構成されている。また、側面部11は、第一凸部111と第二凸部112とを有している。
[第一凸部111]
【0017】
第一凸部111は、
図1及び
図4に示すように、吐物用容器1の内側に突出する部分(ソラマメ形状において内側に突出する部分)である。患者又は患者の世話をする者等の吐物用容器1を使用する際に吐物用容器1を把持する者(特許請求の範囲における「使用者」の一例に対応する。以下、「把持者」と称す。)は、
図6に示すように、吐物用容器1を把持する際、両手の親指をかけることができる。
[第二凸部112]
【0018】
第二凸部112は、
図1及び
図4に示すように、吐物用容器1の内側に突出する部分である。また、第二凸部112は、ソラマメ形状において外側に突出する側に、且つ、第一凸部111に手の大きさが平均的な人が親指をかけた際に、人差し指、中指、薬指及び小指がかかる位置に設けられ、把持者は、
図6に示すように、吐物用容器1を把持する際、人差し指、中指、薬指及び小指をかけることができる。さらにまた、第二凸部112は、
図3に示すように、略三角形状であり、吐物用容器1は2つの第二凸部112を有する。
【0019】
以上、説明したように、側面部11は第一凸部111及び第二凸部112を備え、把持者が吐物用容器1に指をかけてしっかりと把持することができる形状となっている。すなわち、吐物用容器1は把持しやすい形状であり、例えば、吐物用容器1を使用している際に手を滑らせるなどして吐物をこぼすということを防ぐことができる。
【0020】
なお、側面部11、第一凸部111及び第二凸部112は前述の態様に限定されず、例えば、側面部11、第一凸部111及び第二凸部112の形状、並びに、第一凸部111及び第二凸部112の数や位置等は適宜変更が可能である。
(底面部12)
【0021】
底面部12は、
図1~
図5に示すように、側面部11の下端側から内周側に連設される部材であって、吐物用容器1が受けた吐物が最終的に集まる部材である。また、底面部12は第三凸部121を有している。
[第三凸部121]
【0022】
第三凸部121は、
図1及び
図4に示すように、吐物用容器1の内側に突出する部分である。これにより、吐物の跳ね返りを抑え、吐物用容器1の使用時に周囲が汚れるのを防ぐことができる。具体的には
図7に示すように、第三凸部121を設けなかった場合(
図7中左側)と第三凸部121を設けた場合(
図7中右側)とでは、吐物の跳ね返り方向が変わる。すなわち、吐き出された吐物が第三凸部121の側面に当たった場合、吐物は下端側に跳ね返るので、吐物が側面部11を越えて跳ね返り、周囲に飛び散る可能性を低くすることができる。
【0023】
なお、底面部12及び第三凸部121の態様は前述のものに限定されず、底面部12及び第三凸部121の形状、並びに、第三凸部121の数や位置等は適宜変更が可能である。さらにいえば、第三凸部121は必ずしも設ける必要はない。例えば、吐物用容器1を側面部11が高い態様にした場合、そもそも吐物が側面部11を越えて跳ね返る可能性が低いので第三凸部121を設ける必要性は低い。
(縁部13)
【0024】
縁部13は、
図1~
図5に示すように、側面部11の上端側から外周側に連設される部材であって、第一凸部111の近傍が、平均的な人の頭部の形状に沿うように湾曲している。これにより、吐物を吐き出す人の頭部と吐物用容器1を密着させることができるので、吐物用容器1の使用時に周囲が汚れるのを防ぐことができる。
【0025】
また、縁部13は、
図6に示すように、把持者が吐物用容器1を把持した際に、把持者の手が配される範囲(第一凸部111と第二凸部112との間の範囲)と連設される範囲の幅が、手の大きさが平均的な人の手の厚さ方向の幅よりも広くなるよう構成されている。これにより、病気やケガ等により握力が低下し、第一凸部111及び第二凸部112に指をかけても吐物用容器1をしっかりと把持することができない人であっても、手に縁部13を引っ掛けることで吐物用容器1を把持することができる。
【0026】
なお、縁部13の態様は前述のものに限定されず、形状等は適宜変更が可能である。また、前述及び特許請求の範囲における「頭部の形状」とは、一義的に決まるものではなく、例えば、「唇と顎の間の形状」や「顎からこめかみにかけての形状」等、人の頭部における一部の形状であればよい。特に、前述の「唇と顎の間の形状」に沿った態様であれば、吐物を吐き出す人が身体を起こした状態での使用に適しており、「顎からこめかみにかけての形状」に沿った態様であれば、吐物を吐き出す人が横たわった状態での使用に適している。さらにまた、前述及び特許請求の範囲における「頭部の形状に沿う」とは、頭部の形状と縁部13の外縁部の形状が完全に一致していることのみを意味するものではない。吐物用容器1は紙製の容器であるので、容器の弾性を考慮したうえで、吐物を吐き出す人の頭部と吐物用容器1を密着させることができる形状であればよい。
【0027】
以上説明したように、本発明の一実施の形態に係る吐物用容器1は、患者や患者の世話をする者にとって使用しやすい形状であり、使い捨て可能な吐物用容器である。
【符号の説明】
【0028】
1…吐物用容器
11…側面部
111…第一凸部;112…第二凸部
12…底面部
121…第三凸部
13…縁部