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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】車両用フロアカーペット
(51)【国際特許分類】
   B60N 3/04 20060101AFI20240814BHJP
   A47G 27/02 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
B60N3/04 A
B60N3/04 C
A47G27/02 102
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023505114
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(86)【国際出願番号】 JP2021047201
(87)【国際公開番号】W WO2022190554
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-06-30
(31)【優先権主張番号】P 2021038952
(32)【優先日】2021-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000251060
【氏名又は名称】林テレンプ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】田島 新
(72)【発明者】
【氏名】岩野 和樹
(72)【発明者】
【氏名】満永 宙矢
(72)【発明者】
【氏名】岩城 万里
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-148936(JP,U)
【文献】実開昭60-084450(JP,U)
【文献】特開2016-172483(JP,A)
【文献】特開昭61-215133(JP,A)
【文献】特開2016-155461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 3/04
A47G 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元形状を有し、且つ、厚さ方向へ貫通した開口を有する車両用フロアカーペットであって、
前記車両用フロアカーペットの表面に配置されているカーペット層と、
該カーペット層の裏面と一体化された裏打ち樹脂層と、
該裏打ち樹脂層よりも裏側において部分的に存在する追加樹脂層と、を含み、
前記車両用フロアカーペットは、該車両用フロアカーペットの縁部及び前記開口から離れた部分において前記追加樹脂層の無い一般部と、前記表面が前記一般部から前記縁部に向かって立ち上がった立壁部と、を備え、
前記追加樹脂層は、前記厚さ方向へ前記車両用フロアカーペットを貫通した前記開口の周囲の少なくとも一部に存在する、車両用フロアカーペット。
【請求項2】
三次元形状を有し、且つ、厚さ方向へ貫通した開口を有する車両用フロアカーペットであって、
前記車両用フロアカーペットの表面に配置されているカーペット層と、
該カーペット層の裏面と一体化された裏打ち樹脂層と、
該裏打ち樹脂層よりも裏側において部分的に存在する追加樹脂層と、を含み、
前記車両用フロアカーペットは、該車両用フロアカーペットの縁部及び前記開口から離れた部分において前記追加樹脂層の無い一般部と、前記表面が前記一般部から前記縁部に向かって立ち上がった立壁部と、を備え、
前記追加樹脂層は、前記立壁部の少なくとも一部に存在し、
前記立壁部の少なくとも一部に存在する前記追加樹脂層は、前記車両用フロアカーペットの裏面に現れており、当該追加樹脂層で覆われていない部分の裏面に現れている層と一体化されている、車両用フロアカーペット。
【請求項3】
三次元形状を有し、且つ、厚さ方向へ貫通した開口を有する車両用フロアカーペットであって、
前記車両用フロアカーペットの表面に配置されているカーペット層と、
該カーペット層の裏面と一体化された裏打ち樹脂層と、
該裏打ち樹脂層よりも裏側において部分的に存在する追加樹脂層と、を含み、
前記車両用フロアカーペットは、該車両用フロアカーペットの縁部及び前記開口から離れた部分において前記追加樹脂層の無い一般部と、前記表面が前記一般部から前記縁部に向かって立ち上がった立壁部と、を備え、
前記追加樹脂層は、前記開口の周囲の少なくとも一部に存在し、且つ、前記立壁部の少なくとも一部に存在し、
前記立壁部に存在する前記追加樹脂層の目付は、前記開口の周囲に存在する前記追加樹脂層の目付よりも大きい、車両用フロアカーペット。
【請求項4】
前記車両用フロアカーペットは、前記縁部に外方へ出た延出部を備え、
前記追加樹脂層は、前記縁部において前記延出部の少なくとも一部に存在する、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の車両用フロアカーペット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元形状を有する車両用フロアカーペットに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に使用されるカーペットとして、フロアパネルからトーボードパネル等にかけての車体パネルに設置されるフロアカーペットが知られている。フロアカーペットは、三次元形状を有する車体パネルに合わせて三次元形状に成形され、マットフック等を通す開口を有している。また、フロアカーペットは、車室に面するカーペット層、及び、該カーペット層の裏面と一体化された裏打ち樹脂層を有している。特開平8-150865号公報には、フロアカーペットにおいて開口の無い平坦部の裏面に別体の遮音シートを貼り付けることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-150865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両用フロアカーペットにおいて、例えば、マットフック等を通す開口の周囲や、一般部から前縁部に向かって立ち上がったトーボード部は、高い剛性を有することが好ましい。上述した技術は、フロアカーペットにおいて開口の無い平坦部に別体のシート材が貼り付けられているため、その分の重量が増加している一方で開口の周囲やトーボード部の剛性が考慮されていない。
【0005】
本発明は、重量の増加を極力抑えながら剛性を高めた車両用フロアカーペットを開示するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両用フロアカーペットは、三次元形状を有し、且つ、厚さ方向へ貫通した開口を有する車両用フロアカーペットであって、
前記車両用フロアカーペットの表面に配置されているカーペット層と、
該カーペット層の裏面と一体化された裏打ち樹脂層と、
該裏打ち樹脂層よりも裏側において部分的に存在する追加樹脂層と、を含み、
前記車両用フロアカーペットは、該車両用フロアカーペットの縁部及び前記開口から離れた部分において前記追加樹脂層の無い一般部と、前記表面が前記一般部から前記縁部に向かって立ち上がった立壁部と、を備え、
前記追加樹脂層は、前記厚さ方向へ前記車両用フロアカーペットを貫通した前記開口の周囲の少なくとも一部に存在する、態様を有する。
また、本発明の車両用フロアカーペットは、三次元形状を有し、且つ、厚さ方向へ貫通した開口を有する車両用フロアカーペットであって、
前記車両用フロアカーペットの表面に配置されているカーペット層と、
該カーペット層の裏面と一体化された裏打ち樹脂層と、
該裏打ち樹脂層よりも裏側において部分的に存在する追加樹脂層と、を含み、
前記車両用フロアカーペットは、該車両用フロアカーペットの縁部及び前記開口から離れた部分において前記追加樹脂層の無い一般部と、前記表面が前記一般部から前記縁部に向かって立ち上がった立壁部と、を備え、
前記追加樹脂層は、前記立壁部の少なくとも一部に存在し、
前記立壁部の少なくとも一部に存在する前記追加樹脂層は、前記車両用フロアカーペットの裏面に現れており、当該追加樹脂層で覆われていない部分の裏面に現れている層と一体化されている、態様を有する。
【0007】
さらに、本発明の車両用フロアカーペットは、三次元形状を有し、且つ、厚さ方向へ貫通した開口を有する車両用フロアカーペットであって、
前記車両用フロアカーペットの表面に配置されているカーペット層と、
該カーペット層の裏面と一体化された裏打ち樹脂層と、
該裏打ち樹脂層よりも裏側において部分的に存在する追加樹脂層と、を含み、
前記車両用フロアカーペットは、該車両用フロアカーペットの縁部及び前記開口から離れた部分において前記追加樹脂層の無い一般部と、前記表面が前記一般部から前記縁部に向かって立ち上がった立壁部と、を備え、
前記追加樹脂層は、前記開口の周囲の少なくとも一部に存在し、且つ、前記立壁部の少なくとも一部に存在し、
前記立壁部に存在する前記追加樹脂層の目付は、前記開口の周囲に存在する前記追加樹脂層の目付よりも大きい、態様を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、重量の増加を極力抑えながら剛性を高めた車両用フロアカーペットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、車両用フロアカーペットの例を模式的に示す斜視図。
図2図2は、車両用フロアカーペットにおける前後方向に沿った垂直断面の例を模式的に示す断面図。
図3図3は、車両用フロアカーペットの裏面の例を模式的に示す底面図。
図4図4A~4Cは、立壁部の裏面上にある凹凸形状の垂直断面の例を模式的に示す断面図。
図5図5は、車両用フロアカーペットの製造方法の例を模式的に示す図。
図6図6は、緩衝材層を備える車両用フロアカーペットにおける前後方向に沿った垂直断面の例を模式的に示す断面図。
図7図7は、車両用フロアカーペットの別の製造方法の例を模式的に示す図。
図8図8は、裏打ち樹脂層に通気孔を有する車両用フロアカーペットの垂直断面の例を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を説明する。むろん、以下の実施形態は本発明を例示するものに過ぎず、実施形態に示す特徴の全てが発明の解決手段に必須になるとは限らない。
【0011】
(1)本発明に含まれる技術の概要:
まず、図1~8に示される例を参照して本発明に含まれる技術の概要を説明する。尚、本願の図は模式的に例を示す図であり、これらの図に示される各方向の拡大率は異なることがあり、各図は整合していないことがある。むろん、本技術の各要素は、符号で示される具体例に限定されない。
また、本願において、数値範囲「Min~Max」は、最小値Min以上、且つ、最大値Max以下を意味する。
【0012】
[態様1]
図1~3,6等に例示するように、本技術の一態様に係る車両用フロアカーペット1は、三次元形状2を有し、且つ、厚さ方向D3へ貫通した開口OP1を有する車両用フロアカーペット1である。本車両用フロアカーペット1は、表面1aに配置されているカーペット層10、該カーペット層10の裏面10bと一体化された裏打ち樹脂層15、及び、該裏打ち樹脂層15よりも裏側において部分的に存在する追加樹脂層20を含んでいる。本車両用フロアカーペット1は、該車両用フロアカーペット1の縁部34及び前記開口OP1から離れた部分において前記追加樹脂層20の無い一般部30、及び、前記表面1aが前記一般部30から前記縁部34に向かって立ち上がった立壁部32を備えている。前記追加樹脂層20は、前記開口OP1の周囲38及び前記立壁部32の少なくとも一部に存在する。
【0013】
車両用フロアカーペット1において、開口OP1の周囲38は、強い力が加わり易いため、高い剛性が求められる。また、車両用フロアカーペット1において、縁部34に向かって立ち上がった立壁部32は、反りといった変形が生じ易く、室内SP1から指で押される等して隙間が発生する可能性があるため、高い剛性が求められる。上記態様1では、車両用フロアカーペット1において、裏打ち樹脂層15よりも裏側に存在する追加樹脂層20が開口OP1の周囲38及び立壁部32の少なくとも一部に存在するので、開口OP1の周囲38及び立壁部32の少なくとも一部に高い剛性が付与される。例えば、立壁部32の少なくとも一部に追加樹脂層20が存在すると、室内SP1から指で押される等して隙間が発生することを防止することができる。
以上より、上記態様1は、重量の増加を極力抑えながら剛性を高めた車両用フロアカーペットを提供することができる。
尚、縁部34に向かって立ち上がった立壁部32には、高い剛性だけでなく、高い遮音性が求められる場合もある。追加樹脂層20が立壁部32の少なくとも一部に存在する場合、追加樹脂層20が遮音性を発揮するので、車両用フロアカーペットの遮音性が向上する。
【0014】
ここで、車両用フロアカーペットの三次元形状は、高低差が一般部の厚さを超える形状であるものとする。
三次元形状を有する車両用フロアカーペットの厚さ方向は、車両用フロアカーペットの表面に対して直交する方向とする。従って、車両用フロアカーペットの厚さ方向は、車両用フロアカーペットの部分に応じて異なる向きを有する。
車両用フロアカーペットの開口には、スリットにより形成された開閉可能な蓋部が配置されてもよい。
裏打ち樹脂層は、複数の層を含んでいてもよい。追加樹脂層も、複数の層を含んでいてもよい。
裏打ち樹脂層よりも裏側に追加樹脂層が存在することには、追加樹脂層が裏打ち樹脂層の裏面と一体化されていることと、追加樹脂層が緩衝材層等の層を介して裏打ち樹脂層の裏側に配置されていることと、の両方が含まれる。また、追加樹脂層は、開口の周囲と立壁部の両方に存在してもよいし、立壁部に存在しないで開口の周囲に存在してもよいし、開口の周囲に存在しないで立壁部に存在してもよい。さらに、立壁部に存在する追加樹脂層は、立壁部における縁部に存在していてもよいし、立壁部における縁部から離れていてもよい。
一般部は、車両用フロアカーペットにおいて縁部及び開口から離れた部分であって追加樹脂層の無い部分を意味する。従って、車両用フロアカーペットは、一般部及び立壁部の他に、追加樹脂層を有する縁部を備えていてもよいし、縁部及び開口から離れた部分であって追加樹脂層の有る部分を備えていてもよい。
尚、上述した付言は、以下の態様においても適用される。
【0015】
[態様2]
図2,3,6等に例示するように、前記追加樹脂層20は、前記開口OP1の周囲38の少なくとも一部に存在し、且つ、前記立壁部32の少なくとも一部に存在してもよい。この態様は、開口OP1の周囲38の少なくとも一部、及び、立壁部32の少なくとも一部に高い剛性が付与されるうえ、立壁部32の少なくとも一部に存在する追加樹脂層20が遮音性を発揮するので、重量の増加を極力抑えながら剛性及び遮音性を高めた車両用フロアカーペットを提供することができる。
【0016】
[態様3]
図2,3,6等に例示するように、前記追加樹脂層20は、前記立壁部32の少なくとも一部に存在していてもよい。図4A~4C等に例示するように、前記立壁部32に存在する前記追加樹脂層20は、該追加樹脂層20の裏面20bに凹凸形状25を有していてもよい。立壁部32に存在する追加樹脂層20の裏面20bの凹凸形状25は、重量の増加を極力抑えながら立壁部32に高い剛性を付与する。従って、本態様は、一般部から縁部に向かって立ち上がった立壁部の変形を効果的に抑制することができる。
【0017】
ここで、凹凸形状には、並行する複数の溝、並行する複数の突条、等が含まれる。溝や突条の向きには、車幅方向、車両前後方向、等が考えられる。
上述した付言は、以下の態様においても適用される。
【0018】
[態様4]
図1~3等に例示するように、本車両用フロアカーペット1は、前記縁部34に外方へ出た延出部36を備えていてもよい。前記追加樹脂層20は、前記縁部34において前記延出部36の少なくとも一部に存在してもよい。車両用フロアカーペット1において、縁部34の延出部36は、車両にフロアカーペット1を組み付ける時の持ち手等に使用されるため、強い力が加わり易い。本態様は、車両用フロアカーペット1において、裏打ち樹脂層15よりも裏側に存在する追加樹脂層20が縁部34の延出部36の少なくとも一部に存在するので、延出部36の少なくとも一部に高い剛性が付与される。従って、本態様は、車両用フロアカーペットの縁部において外方へ出た延出部の剛性を効果的に高めることができる。
【0019】
[態様5]
ところで、図5,7に例示するように、本技術の一態様に係る車両用フロアカーペット1の製造方法は、三次元形状2を有する車両用フロアカーペット1の製造方法であって、以下の工程(A),(B)を含んでいる。
(A)前記車両用フロアカーペット1の表面1aに配置されるカーペット層10、及び、該カーペット層10の裏面10bにある裏打ち樹脂層15を少なくとも含む元材50が移送方向D4へ移送されている状態において、前記移送方向D4と交差する幅方向D5において異なる位置にある複数の供給部120の供給量を該供給部120の単位で可変制御しながら前記複数の供給部120から追加樹脂40を部分的に前記元材50の裏面上に供給する追加樹脂供給工程ST1。
(B)前記裏打ち樹脂層15よりも裏側において部分的に存在する追加樹脂層20が前記追加樹脂40から形成されるように、前記元材50及び前記追加樹脂40を成形する成形工程ST2。
【0020】
上記態様5では、カーペット層10と裏打ち樹脂層15を少なくとも含む元材50が移送方向D4へ移送されている状態において、幅方向D5において異なる位置にある複数の供給部120のそれぞれから可変制御された供給量の追加樹脂40が部分的に元材50の裏面上に供給される。元材50及び追加樹脂40を含む材料が成形されると、裏打ち樹脂層15よりも裏側において部分的に存在する追加樹脂層20が追加樹脂40から形成され、三次元形状2を有する車両用フロアカーペット1が製造される。
フロアカーペットの裏面に別体のシート材を貼り付ける場合、部品点数の増加に伴うコストアップ、接着不良によるシート材の剥がれ、開口に対するシート材の位置ずれ、及び、立壁部など三次元形状への追従が難しいという不利益がある。
また、元材の裏面上に追加樹脂を単に押出成形する場合、元材の移送方向において一定の目付で追加樹脂層が形成されるため、追加樹脂層の目付を部分的に変える自由度が小さい。上記態様5は、幅方向D5において異なる位置に複数の供給部120があり、且つ、各供給部120から供給される追加樹脂40の供給量が可変制御されるので、移送方向D4及び幅方向D5において追加樹脂層20の目付を部分的に変える自由度が大きい。これにより、上記態様5は、車両用フロアカーペット1において剛性を高めたい部分に適切な目付の追加樹脂層20を配置することができる。従って、上記態様5は、重量の増加を極力抑えながら剛性を高めた車両用フロアカーペットの製造に好適な製造方法を提供することができる。
【0021】
ここで、元材は、カーペット層と裏打ち樹脂層により構成されてもよいし、カーペット層と裏打ち樹脂層に加えて緩衝材層等の層を裏打ち樹脂層の裏面に有していてもよい。
また、車両用フロアカーペットは、元材及び追加樹脂の成形物に緩衝材等の別部材を貼り付けることにより製造されてもよい。
【0022】
(2)車両用フロアカーペットの具体例:
図1は、自動車に設置される車両用フロアカーペット1を模式的に例示している。図2は、フロアカーペット1を有する自動車90の要部を模式的に例示する垂直断面図であり、図1に示すフロアカーペット1において開口OP1及び延出部36を通る位置における前後方向D1に沿った垂直断面を模式的に例示している。図2の下部には、自動車90における開口OP1付近の垂直断面の模式的な拡大図が示されている。図3は、フロアカーペット1の裏面1bを模式的に例示している。尚、本願の図中、FRONT、REAR、LEFT、RIGHT、UP、DOWNは、それぞれ、前、後、左、右、上、下を示す。左右の位置関係は、自動車90の前を見る方向を基準とする。また、符号D1は自動車の前後方向、符号D2は自動車の左右方向、符号D3はフロアカーペット1の厚さ方向を示す。分かり易く示すため、前後方向D1、左右方向D2、及び、上下方向の拡大率は異なることがあり、各図は整合していないことがある。特に、図2,4,6,8に示す断面は、各部の厚さが誇張して示されている。
【0023】
図2に示す例では、自動車90において車体パネル80の車室側面80aに緩衝材70が設置され、該緩衝材70上に三次元形状2のフロアカーペット1が設置されている。図2に示す車体パネル80は、不図示の凹凸を有するものの全体として略水平に配置された金属製フロアパネル81、及び、該フロアパネル81の前縁81aから前方に向かって斜めに立ち上がった金属製トーボード82を含んでいる。車体パネル80は、トーボード82の前縁からより鉛直に近い斜めに立ち上がった金属製ダッシュパネルを含んでいてもよい。該ダッシュパネルは自動車90において車室(室内SP1の例)とエンジンルームとの隔壁として機能し、トーボード82はダッシュパネルとフロアパネル81とを繋ぐ傾斜部として機能している。
【0024】
図2に示す緩衝材70は、フロアパネル81上の平坦部71、及び、トーボード82上の傾斜部72を含んでいる。尚、平坦部71は、緩衝材70のうち全体として略水平に配置された部位を意味し、凹凸を有していてもよい。緩衝材70は、衝撃吸収、吸音、及び、遮音の少なくとも一つのために使用され、車体パネル80上に部分的に配置されてもよい。緩衝材70には、フェルトのような繊維材、発泡熱可塑性樹脂やポリウレタンフォームのような発泡樹脂、該発泡樹脂の粉砕物の成形品、これらの組合せ、等を用いることができる。
【0025】
緩衝材70上のフロアカーペット1は、厚さ方向D3へ貫通した開口OP1を有し、概ね、車体パネル80の車室側面80aに沿った形状を有している。ここで、厚さ方向D3は、フロアカーペット1の表面1aに対して直交する方向であり、フロアカーペット1の部分に応じて異なる向きを有する。図1,2に示すように、フロアカーペット1は、フロアパネル81から上方にある一般部30、及び、表面1aが一般部30から縁部34に向かって立ち上がった立壁部32を備えている。本具体例の一般部30は、フロアカーペット1のうち縁部34及び開口OP1から離れた部分において追加樹脂層20の無い部分とする。一般部30は、概ねフロアパネル81に沿っており、凹凸があるものの全体として略水平に配置された平坦部に存在する。
【0026】
図1,3に示すフロアカーペット1は、自動車90のコンソールに合わせられた中央凹部1cにより分かれた左部1d及び右部1e、並びに、中央凹部1cの後ろにある接続部1fを含んでいる。左部1dは、中央凹部1c及び接続部1fの左にある。右部1eは、中央凹部1c及び接続部1fの右にある。接続部1fは、フロアカーペット1のうち後部において左部1dから右部1eに繋がっている。左部1d及び右部1eは、それぞれ、上述した一般部30及び立壁部32を備えている。フロアカーペット1は、コンソールやロッカーパネル等の車両構造物に沿うようにプレス成形(熱成形)された三次元形状2を有する。フロアカーペット1の三次元形状2は、高低差が一般部30の厚さを超える形状であるものとする。三次元形状2は、フロアカーペット1において室内SP1に面する表面1aの三次元形状2a、及び、フロアカーペット1において表面1aとは反対側の裏面1bの三次元形状2bを含んでいる。
【0027】
フロアカーペット1の縁部34には、前縁部、後縁部、左縁部、右縁部、中央凹部1cに沿った内縁部、等が含まれる。立壁部32の代表例は、図2に示すように、フロアカーペット1のうち概ねトーボード82から上方にあるトーボード部である。該トーボード部は、前述の平坦部の前縁30aから前方に向かって斜めに立ち上がっている。また、図1に示すフロアカーペット1において、立壁部32は、平坦部から後縁部に向かって立ち上がった部分、平坦部から左縁部に向かって立ち上がった部分、平坦部から右縁部に向かって立ち上がった部分、及び、平坦部から内縁部に向かって立ち上がった部分にも存在する。尚、前述の立壁部32の少なくとも一部が存在すれば、立壁部32に本技術を適用可能である。
【0028】
フロアカーペット1は、図3に示す折曲部3で折り曲げられた状態で製造元から搬入先まで輸送されてもよい。図3に示す折曲部3は、左右方向D2に沿った折曲部3a、及び、前後方向D1に沿った折曲部3bを含んでいる。この場合、例えば、折曲部3aを基点として表面1aを閉じるように左部1d及び右部1eを折り曲げ、折曲部3bを基点としてトーボード部同士を合わせるように接続部1fを折り曲げると、フロアカーペット1がコンパクトになる。
【0029】
フロアカーペット1に形成された開口OP1には、マットフック挿通用の開口OP2、シートレッグ挿通用の開口OP3、ロッカーパネルやコンソールにフロアカーペット1を取り付けるための開口(不図示)、VINと略される車両識別番号等の情報が背後に配置されたスリットSL1、等が含まれる。マットフックは、フロアカーペット1上にフロアマットを固定するため開口OP2に通されてフロアカーペット1に係止される。シートレッグは、室内SP1に存在する座席をフロアパネル81に固定するため開口OP3に通されてフロアパネル81に取り付けられる。スリットSL1は、フロアカーペット1において開口の周りの一部を残して切断された箇所である。フロアカーペット1にスリットSL1が形成されることにより、開口を開閉可能な蓋部がフロアカーペット1に繋がっている状態で形成される。蓋部が略長方形である場合、略長方形の3辺を切断するとスリットSL1が形成され、残りの1辺をヒンジ部としてフロアカーペット1に繋がっている開閉可能な蓋部が形成される。開口OP1は、フロアカーペット1において、図1~3に示すように一般部30に囲まれた部分にあってもよく、立壁部32に囲まれた部分にあってもよい。
【0030】
また、フロアカーペット1は、縁部34に外方へ出た延出部36を備えている。延出部36が外方へ出ていることは、例えば、延出部36がフロアカーペット1の前縁部から前方へ出ていること、延出部36がフロアカーペット1の後縁部から後方へ出ていること、延出部36がフロアカーペット1の左縁部から左方へ出ていること、延出部36がフロアカーペット1の右縁部から右方へ出ていること、中央凹部1cに沿った内縁部から中央凹部1cの方向へ出ていること、等を意味する。従って、延出部36は、図1~3に示すようにフロアカーペット1の後縁部以外にも、前縁部、左縁部、右縁部、内縁部、等に配置されてもよい。延出部36は、フロアカーペット1を持つための持ち手等に使用される。
【0031】
フロアカーペット1の断面構造の例として、図2に示すフロアカーペット1は、フロアカーペット1の表面1aに配置されているカーペット層10、該カーペット層10の裏面10bと一体化された裏打ち樹脂層15、及び、該裏打ち樹脂層15よりも裏側において部分的に存在する追加樹脂層20を含んでいる。図2に示す追加樹脂層20は、裏打ち樹脂層15の裏面15bに対して部分的に存在し該裏打ち樹脂層15と一体化されている。従って、フロアカーペット1の裏面1bには、追加樹脂層20の裏面20b、及び、裏打ち樹脂層15のうち追加樹脂層20で覆われていない部分の裏面15bが現れている。フロアカーペット1は、三次元形状2に成形された状態で、カーペット層10、裏打ち樹脂層15、及び、部分的な追加樹脂層20を含んでいる。図2,3に示す追加樹脂層20は、フロアカーペット1の裏面1bに対して、開口OP1の周囲38、立壁部32の一部、延出部36の一部、及び、折曲部3周辺に配置されている。開口OP1は、カーペット層10、裏打ち樹脂層15、及び、追加樹脂層20を貫通している。尚、追加樹脂層20が開口OP1の周囲38及び立壁部32の少なくとも一部に存在すれば、本技術を適用可能である。
【0032】
カーペット層10は、通気性を有する繊維材であり、フロアカーペット1に意匠性、良好な触感、耐摩耗性、吸音性、等の特性を付与する。カーペット層10には、表面1aに多数のパイルが立毛しているタフテッドカーペット、表面1aに多数の毛羽を有するニードルパンチドカーペット、等を用いることができる。タフテッドカーペットは、例えば、スパンボンド不織布といった不織布、各種繊維の編織物、等の基布にタフティング機でパイル糸を刺し込んでパイルを立毛させることにより、形成される。ニードルパンチドカーペットは、例えば、かぎのついた多数の針で不織布を突き刺し、繊維を絡ませて表面に毛羽を形成することにより、形成される。カーペット層10を構成する繊維には、合成繊維等を用いることができる。この合成繊維には、PP(ポリプロピレン)繊維といったポリオレフィン系繊維、ポリアミド系繊維、PET(ポリエチレンテレフタレート)繊維といったポリエステル系の繊維、アクリル系の繊維、等を用いることができる。
【0033】
カーペット層10の目付(単位面積あたりの重量)は、特に限定されないが、例えば、150~1500g/m2程度とすることができる。
【0034】
裏打ち樹脂層15は、フロアカーペット1の三次元形状2を維持する保形機能、室内SP1への騒音の侵入を抑制する遮音機能、室内SP1への振動の侵入を抑制する制振機能、等を発揮する。部分的な追加樹脂層20は、フロアカーペット1の剛性を部分的に高める補強機能、フロアカーペット1の遮音性の部分的に高める遮音増強機構、フロアカーペット1の制振性を部分的に高める制振増強機能、等を発揮する。
【0035】
裏打ち樹脂層15及び追加樹脂層20を形成するための樹脂には、エラストマーを含めて合成樹脂を広く用いることができ、フロアカーペット1を熱成形する点で熱可塑性樹脂が好ましい。該熱可塑性樹脂には、PE(ポリエチレン)樹脂やPP(ポリプロピレン)樹脂といったポリオレフィン樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー、酢酸ビニル樹脂やエチレン酢酸ビニル樹脂や塩化ビニル樹脂といったビニル樹脂、アクリル樹脂、AS(アクリロニトリルスチレン)樹脂、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)樹脂、これらの樹脂に充填材や着色剤といった添加剤を添加した材料、等を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、熱成形性の点で融点100~150℃程度の低融点の熱可塑性樹脂が好ましい。前述の充填材には、炭酸カルシウムやタルクや硫酸バリウムや金属酸化物といった無機充填材、金属粉、等を用いることができる。充填材の粒径は、特に限定されないが、例えば、5~20μm程度とすることができる。裏打ち樹脂層15と追加樹脂層20の少なくとも一方に充填材が含まれていると、フロアカーペット1に高い遮音性及び制振性が付与される。マスバックと呼ばれる高比重バッキングは、30~80重量%程度の充填材を含有していることがある。むろん、フロアカーペット1を軽量にする等の点から、充填材を含有していない合成樹脂から裏打ち樹脂層15と追加樹脂層20の少なくとも一方が形成されてもよい。例えば、充填材を含有している合成樹脂から裏打ち樹脂層15を形成し、充填材を含有していない合成樹脂から追加樹脂層20を形成すると、フロアカーペット1の重量増加を極力抑えながら所要箇所に補強機能、遮音増強機能、制振増強機能、等をフロアカーペット1に付与することができる。また、充填材を含有している合成樹脂から裏打ち樹脂層15を形成する場合、成形後の樹脂の収縮、例えば、熱成形後の熱可塑性樹脂が冷却により収縮することにより立壁部32に反りといった変形が生じることを抑制するため、充填材を含有している合成樹脂から追加樹脂層20を形成してもよい。
【0036】
追加樹脂層20を形成するための樹脂は、追加樹脂層20を裏打ち樹脂層15と一体化する点から、裏打ち樹脂層15に使用される樹脂と同系統の樹脂等といった相溶性の高い樹脂が好ましい。例えば、裏打ち樹脂層15に充填材を含有するPE樹脂を使用し、追加樹脂層20に充填材を含有しないLDPE(低密度ポリエチレン)樹脂を使用すること等が考えられる。
【0037】
裏打ち樹脂層15の目付は、特に限定されないが、例えば、80~2000g/m2
度とすることができる。
また、裏打ち樹脂層15は、複数の層により構成されてもよい。例えば、裏打ち樹脂層15は、カーペット層10の裏面10bと一体化された第一の裏打ち樹脂層、及び、該第一の裏打ち樹脂層の裏面と一体化された第二の裏打ち樹脂層を含んでいてもよい。第二の裏打ち樹脂層の材料は、第一の裏打ち樹脂層の材料とは異なっていてもよい。材料が異なることには、ベース樹脂が同じで充填材含有量が異なる場合が含まれる。
【0038】
追加樹脂層20の目付は、特に限定されないが、例えば、150~3000g/m2
度とすることができる。追加樹脂層20は、フロアカーペット1の部位に応じて異なる目付を有していてもよい。立壁部32に存在する追加樹脂層20の目付は、立壁部32の変形、例えば、反りを抑制する点から、開口OP1の周囲38に存在する追加樹脂層20の目付よりも大きい方が好ましい。また、立壁部32に高い遮音性能を付与する場合も、立壁部32に存在する追加樹脂層20の目付が開口OP1の周囲38に存在する追加樹脂層20の目付よりも大きい方が好ましい。さらに、一つに繋がっている追加樹脂層20において、該追加樹脂層20は、該追加樹脂層20の部位に応じて異なる目付を有していてもよい。
また、追加樹脂層20は、複数の層により構成されてもよい。例えば、追加樹脂層20は、裏打ち樹脂層15の裏面15bの一部と一体化された第一の追加樹脂層、及び、該第一の追加樹脂層の裏面及び裏打ち樹脂層15の裏面15bの一部と一体化された第二の追加樹脂層を含んでいてもよい。第二の追加樹脂層の材料は、第一の追加樹脂層の材料とは異なっていてもよい。
【0039】
フロアカーペット1において開口OP1はマットフックやシートレッグや取付具等を通したり背後の情報等を視認したりするための構造であるため、開口OP1の周囲38は、強い力が加わり易く、高い剛性が求められる。図3において開口OP1の周囲38に存在する追加樹脂層20は、開口OP1の全周囲を取り囲むように配置されている。これにより、開口OP1の周囲38に高い剛性が付与される。尚、追加樹脂層20の目付が大きいと開口OP1の周囲38の剛性が高くなる結果、寸法誤差により取付具等を通し難くなることが考えられる。そこで、開口OP1の周囲38に存在する追加樹脂層20の目付は、例えば、150~1200g/m2程度とすることができる。また、開口OP1の周囲3
8の全てに追加樹脂層20が存在すると、開口OP1の周囲38の剛性が高くなる結果、寸法誤差により取付具等を通し難くなることが考えられる。そこで、取付具等を通す作業を軽減させるため、開口OP1の周囲38の一部に追加樹脂層20の無い部分が存在してもよい。図3に示すスリットSL1の周囲38にも、追加樹脂層20が存在する。図3に示すようにスリットSL1に囲まれた開閉可能な蓋部に追加樹脂層20が存在すると、熱成形後の収縮により蓋部が裏面1b側に引っ張られるため、蓋部が表面1aに浮き上がることが抑制され、フロアカーペット1の良好な意匠が維持される。
【0040】
縁部34に向かって立ち上がった立壁部32は、反りといった変形が生じ易く、室内SP1から指で押される等して隙間が発生する可能性があるため、高い剛性が求められる。また、立壁部32は、高い剛性だけでなく、高い遮音性が求められる場合もある。例えば、フロアカーペット1のうち概ねトーボード82から上方にあるトーボード部は、音が発生するエンジンの近くにあるため、騒音を遮断する性能が高い方が好ましい。図2,3に示すトーボード部に存在する追加樹脂層20は、トーボード部における縁部34から離れており、トーボード部の一部に存在する。むろん、トーボード部における縁部34の剛性を高めるため、トーボード部の全体に追加樹脂層20が存在していてもよい。フロアカーペット1に高い保形性及び遮音性を付与する点から、立壁部32に存在する追加樹脂層20の目付は、開口OP1の周囲38に存在する追加樹脂層20の目付よりも大きい方が好ましく、例えば、1000~3000g/m2程度とすることができる。
【0041】
また、立壁部32の変形を効果的に抑制するため、立壁部32に存在する追加樹脂層20は、図2,3に示すように、追加樹脂層20の裏面20bに凹凸形状25を有していてもよい。図4Aは、立壁部32に存在する追加樹脂層20の裏面20bにある凹凸形状25の垂直断面を模式的に例示している。図4Aに示す凹凸形状25は、長手方向を左右方向D2に向けて並行する複数の溝26を有している。各溝26は、追加樹脂層20の裏面20bにある。
【0042】
尚、凹凸形状25の溝26は、図4Bに例示するように裏打ち樹脂層15の裏面15bに達していてもよい。図4Bに示す凹凸形状25は、長手方向を左右方向D2に向けて並行する複数の追加樹脂層20により構成されている。この場合も、追加樹脂層20が裏面20bに凹凸形状25を有することに含まれる。また、追加樹脂層20の裏面20bの凹凸形状25は、溝形状に限定されず、図4Cに例示するように複数の突条27でもよい。図4Cに示す凹凸形状25は、長手方向を左右方向D2に向けて並行する複数の突条27を有している。ただし、図4A,4Bに示す凹凸形状25は溝26同士の間に突条があるともいえ、図4Cに示す凹凸形状25は突条27同士の間に溝があるといえる。
さらに、溝26及び突条27の向きは、左右方向D2に限定されず、前後方向D1等でもよい。
【0043】
図4A~4Cに示す追加樹脂層20の裏面20bの凹凸形状25は、重量の増加を極力抑えながら立壁部32に高い剛性を付与する。従って、凹凸形状25は、フロアカーペット1において一般部30から縁部34に向かって立ち上がった立壁部32の変形を効果的に抑制することができる。特に、フロアカーペット1のうち概ねトーボード82から上方にあるトーボード部は面積が大きいため、トーボード部が凹凸形状25を有しているとトーボード部の変形を効果的に抑制する効果が大きい。
【0044】
トーボード部の他、フロアカーペット1において左右の縁部に向かって立ち上がった立壁部32の少なくとも一部には、剛性を高めるために追加樹脂層20を配置することが好ましい。当該部位の追加樹脂層20の目付は、例えば、600~1600g/m2程度と
することができる。フロアカーペット1において中央凹部1cに沿った内縁部に向かって立ち上がった立壁部32の少なくとも一部には、剛性を高めることに加えて遮音性を高めるために追加樹脂層20を配置することが好ましい。当該部位の追加樹脂層20の目付は、例えば、600~1600g/m2程度とすることができる。
【0045】
フロアカーペット1の縁部34に存在する延出部36は、自動車90にフロアカーペット1を組み付ける時の持ち手等に使用されるため、強い力が加わり易く、高い剛性が求められる。図3において、延出部36の一部に追加樹脂層20が存在している。追加樹脂層20は、延出部36の全体に存在していてもよい。いずれの場合も、裏打ち樹脂層15よりも裏側に存在する追加樹脂層20は、フロアカーペット1の縁部34において外方へ出た延出部36の剛性を効果的に高める。
【0046】
フロアカーペット1において折曲部3は、輸送時に折り曲げられるため、薄い追加樹脂層20を有していると折り皺の発生を抑制することができる。フロアカーペット1は折曲部3で折り曲げられるため、折曲部3に存在する追加樹脂層20の目付は、立壁部32に存在する追加樹脂層20の目付よりも小さい方が好ましく、例えば、150~1000g/m2程度とすることができる。
【0047】
(3)車両用フロアカーペットの製造方法の具体例:
図5は、図1~3に示す車両用フロアカーペット1を製造する方法を模式的に例示している。図5に示す製造方法は、以下の工程(A1),(B1)を含んでいる。
(A1)車両用フロアカーペット1の表面1aに配置されるカーペット層10、及び、該カーペット層10の裏面10bにある裏打ち樹脂層15を含む元材50が移送方向D4へ移送されている状態において、移送方向D4と直交する幅方向D5において異なる位置にある複数の供給部120の供給量を該供給部120の単位で可変制御しながら複数の供給部120から追加樹脂40を部分的に元材50の裏面上に供給する追加樹脂供給工程ST1。
(B1)裏打ち樹脂層15の裏面15bに対して部分的に存在し該裏打ち樹脂層15と一体化された追加樹脂層20が追加樹脂40から形成されるように、元材50及び追加樹脂40を成形する成形工程ST2。
【0048】
図5には、フロアカーペット1の製造に好適なカーペット製造装置100が示されている。カーペット製造装置100は、裏面15bを上に向けて元材50を移送方向D4へ搬送する移送機110、元材50における裏面15bに追加樹脂40を供給する複数の供給部120、制御部130、不図示の加熱機、プレス成形機200、不図示の裁断機、等を備えている。
【0049】
元材50は、三次元形状となる略平坦なカーペット層10、及び、三次元形状となる略平坦な裏打ち樹脂層15を含んでいる。元材50には、カーペット層10と裏打ち樹脂層15とが積層された状態でロール状に巻かれた長尺な裏打ち付き原反等を用いることができる。本具体例の元材50は、熱可塑性の裏打ち樹脂層15を含む長尺な裏打ち付き原反とする。この場合、元材50の移送方向D4は、元材50の長手方向となる。裏打ち樹脂層15に熱可塑性を発揮させる含有量の熱可塑性樹脂を裏打ち樹脂層15が含有する場合、裏打ち樹脂層15は熱可塑性を有する。
移送機110には、ベルトコンベヤといった公知のコンベヤ等を用いることができる。裏打ち樹脂層15及び追加樹脂40が熱可塑性を有する場合、ベルトコンベヤのベルトが多数の通気孔を有していると、熱風加熱等により裏打ち樹脂層15を予備加熱し追加樹脂40を溶融状態に維持するのに好適である。
【0050】
追加樹脂40は、フロアカーペット1において部分的に存在する追加樹脂層20となる。追加樹脂40には、追加樹脂層20を形成するための材料を使用すればよい。本具体例の追加樹脂40は、熱可塑性を有するものとする。追加樹脂40に熱可塑性を発揮させる含有量の熱可塑性樹脂を追加樹脂40が含有する場合、追加樹脂40は熱可塑性を有する。
複数の供給部120は、元材50の幅方向D5へ並べられている。尚、複数の供給部120は、幅方向D5において異なる位置にあれば幅方向D5からずれた方向へ並べられてもよい。図5に示す複数の供給部120は、幅方向D5において順に供給部121,122,123,124,125を含んでいる。むろん、供給部120の数は、2個以上であれば、4個以下でもよいし、6個以上でもよい。各供給部120は、吐出速度を変更可能に溶融状態の追加樹脂40を吐出するノズル126を有している。追加樹脂40の吐出速度を変更可能であることは、元材50が移送方向D4へ移動している最中に追加樹脂40の吐出速度が速くなったり遅くなったりと変わることがあることを意味する。従って、元材50の裏面に供給される追加樹脂40の供給量は、移送方向D4における位置に応じて変えることができ、且つ、幅方向D5における位置に応じて変えることができる。言い換えると、元材50の裏面に供給される追加樹脂40の供給量は、移送方向D4及び幅方向D5に沿った平面における二次元の位置に応じて変えることができる。
各供給部120が追加樹脂40を加熱するヒーターを備えていると、追加樹脂40を溶融状態に維持するのに好適である。
【0051】
制御部130は、移送機110による元材50の移送速度、各供給部120による追加樹脂40の吐出速度、等を制御する。吐出速度の制御には、吐出速度を0にすること、すなわち、供給部120に追加樹脂40を吐出させないことが含まれる。制御部130は、複数の供給部120による追加樹脂40の吐出速度を個別に制御する。例えば、図5に示すように、制御部130は、供給部121,123,125から追加樹脂40を吐出させずに供給部122,124から追加樹脂40を吐出させることが可能であり、供給部122による追加樹脂40の吐出速度と供給部124による追加樹脂40の吐出速度とを異ならせることが可能である。ここで、各供給部120による追加樹脂40の吐出速度を速くすると追加樹脂層20の目付を増やすことができ、各供給部120による追加樹脂40の吐出速度を遅くすると追加樹脂層20の目付を減らすことができる。図5には、比較的速い吐出速度で裏面15bに吐出された追加樹脂41、及び、比較的遅い吐出速度で裏面15bに吐出された追加樹脂42が示されている。追加樹脂41から形成される追加樹脂層20の目付は、追加樹脂42から形成される追加樹脂層20の目付よりも大きくなる。また、移送機110による元材50の移送速度を遅くすると幅方向D5の全体にわたって追加樹脂層20の目付を増やすことができ、移送機110による元材50の移送速度を速くすると幅方向D5の全体にわたって追加樹脂層20の目付を減らすことができる。制御部130は、図3に示す部分的な追加樹脂層20が所望の目付で形成されるように、移送機110による元材50の移送速度、各供給部120による追加樹脂40の吐出速度、等を制御する。略平坦な元材50が三次元形状2に熱成形されるため、元材50の部位に応じた展開率(延び率)に応じて追加樹脂40の供給量を変えることにより、フロアカーペット1における重量及び性能を最適化してもよい。例えば、元材50において、立壁部32となる部分は一般部30となる部分よりも追加樹脂40の供給量を多くすることが考えられる。
制御部130には、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory
)、RAM(Random Access Memory)、等を備え制御プログラムを実行するコンピューター等を用いることができる。
【0052】
追加樹脂供給工程ST1において、元材50が移送機110により移送方向D4へ移送され、各供給部120から可変制御された供給量の追加樹脂40が部分的に元材50における裏打ち樹脂層15の裏面15bに供給される。元材50及び追加樹脂40を含む材料は、フロアカーペット1を含む大きさに不図示の切断機によって切断され、不図示の加熱機に搬入される。
【0053】
図5に示す成形工程ST2は、元材50及び追加樹脂40を含む材料を加熱する加熱工程ST21、加熱された材料をプレス成形するプレス工程ST22、及び、成形された材料をフロアカーペット1の形状に裁断する裁断工程ST23を含んでいる。
【0054】
加熱工程ST21において、不図示の加熱機は、元材50及び追加樹脂40が含有している熱可塑性樹脂の融点よりも少し高い温度まで、元材50及び追加樹脂40を含む材料を加熱する。加熱機には、サクションヒーター(熱風循環ヒーター)、赤外線ヒーター、等を用いることができる。加熱された材料は、プレス成形機200に搬入される。
【0055】
プレス工程ST22において、プレス成形機200は、加熱工程ST21において加熱された材料をプレス成形する。プレス成形は、熱成形に含まれる。図5に示すプレス成形機200は、プレス成形型を構成する上型201及び下型202が近接及び離隔可能に設けられている。上型201は、フロアカーペット1の裏面1bの形状に合わせた型面を対向面に有する金型とされている。従って、上型201の型面は、追加樹脂層20の裏面20bにある凹凸形状25に合わせた凹凸形状を有している。図示していないが、上型201の型面は、材質マークやCCC(China Compulsory Certificate)マーク等といったマークを追加樹脂層20の裏面20bに刻印するための形状を有していてもよい。下型202は、フロアカーペット1の表面1aの形状に合わせた型面を対向面に有する金型とされている。従って、元材50及び追加樹脂40を含む材料は、型201,202の間で上下逆に配置される。むろん、元材50及び追加樹脂40を含む材料の配置は、自動車90に敷設される位置関係に合わせた配置等でもよい。プレス成形は、加熱を伴う熱間プレスでもよいし、加熱を伴わない冷間プレスでもよい。プレス成形機200が上型201及び下型202を近接させると、材料が三次元形状2にプレス成形される。追加樹脂層20の裏面20bには、凹凸形状25が形成され、上型201の型面がマークを刻印するための形状を有している場合にマークが刻印される。これにより、マークを有するシールを用意する必要が無くなる。プレス成形後に材料の温度が熱可塑性樹脂の融点よりも下がり該熱可塑性樹脂が固化すると、裏打ち樹脂層15と追加樹脂層20とが一体化された状態で三次元形状2が維持される。プレス工程ST22は、プレス成形された材料を冷却する冷却工程を含んでいてもよい。プレス成形機200が上型201及び下型202を離隔させると、三次元形状2のプレス成形物を取り出すことができる。型201,202の間から取り出されたプレス成形物は、不図示の裁断機に搬入される。
【0056】
裁断工程ST23において、裁断機は、冷却されたプレス成形物をフロアカーペット1の形状に裁断する。裁断機は、プレス成形物の外周を裁断し、該外周よりも内側においてスリットSL1を含む開口OP1を形成するようにプレス成形物を裁断する。これにより、図1~3に示すフロアカーペット1が得られる。裁断機には、裁断刃を備える裁断機、ウォータージェットによる裁断を行う裁断機、等を用いることができる。また、プレス成形物の裁断は、裁断刃による裁断やウォータージェット裁断以外にも、カッターを用いた手裁断等により行うことができる。
【0057】
以上説明したように、元材50が移送方向D4へ移送されている状態において、幅方向D5において異なる位置にある複数の供給部120のそれぞれから可変制御された供給量の追加樹脂40が部分的に元材50の裏面上に供給される。元材50及び追加樹脂40を含む材料が成形されると、カーペット層10の裏面10bと一体化された裏打ち樹脂層15の裏面15bと一体化された部分的な追加樹脂層20が追加樹脂40から形成され、三次元形状2を有するフロアカーペット1が製造される。図1~3に示すように、フロアカーペット1は、厚さ方向D3へ貫通した開口OP1を有し、表面が一般部30から縁部34に向かって立ち上がった立壁部32を備え、追加樹脂層20が開口OP1の周囲38、及び、立壁部32の一部に存在する。例えば、フロアカーペット1において開口OP1の周囲38に追加樹脂層20が存在することにより、開口OP1の周囲38に高い剛性が付与される。フロアカーペット1において立壁部32の一部に追加樹脂層20が存在することにより、立壁部32に高い剛性及び高い遮音性が付与される。従って、本具体例の車両用フロアカーペット1は、重量の増加が極力抑えられており、高い剛性及び高い遮音性を有する。
【0058】
尚、フロアカーペット1の裏面1bに別体のシート材を貼り付ける場合、部品点数の増加に伴うコストアップ、接着不良によるシート材の剥がれ、開口OP1に対するシート材の位置ずれ、及び、立壁部32など三次元形状2への追従が難しいという不利益がある。
また、元材50の裏面上に追加樹脂40を単に押出成形する場合、元材50の移送方向D4において一定の目付で追加樹脂層が形成されるため、追加樹脂層の目付を部分的に変える自由度が小さい。本具体例では、幅方向D5において異なる位置に複数の供給部120があり、且つ、各供給部120から供給される追加樹脂40の供給量が可変制御されるので、移送方向D4及び幅方向D5において追加樹脂層20の目付を部分的に変える自由度が大きい。これにより、フロアカーペット1において剛性を高めたい部分に適切な目付の追加樹脂層20を配置することができる。従って、本具体例の製造方法は、重量の増加を極力抑えながら剛性を高めた車両用フロアカーペット1の製造に好適である。
【0059】
図1~3に示すフロアカーペット1には、別部材が付加されてもよい。例えば、フロアカーペット1の裏面1bには、緩衝材70等の別部材が貼り付けられてもよい。
【0060】
(4)裏打ち樹脂層と追加樹脂層との間に別の層を備えるフロアカーペットの具体例:
図6に例示するように、追加樹脂層20は裏打ち樹脂層15から離隔していてもよい。図6は、裏打ち樹脂層15と追加樹脂層20との間に緩衝材層60を備える車両用フロアカーペット1における前後方向D1に沿った垂直断面を模式的に例示している。図6の下部には、フロアカーペット1における開口OP1付近の垂直断面の模式的な拡大図が示されている。図6に示す複数の要素のうち図1~3に示す要素と実質的に同じか類似する要素については、図1~3に示す符号を付して詳しい説明を省略する。
フロアカーペット1の表面1aの三次元形状は、図1に示す三次元形状2aと同じである。部分的な追加樹脂層20は緩衝材層60の裏面60bと一体化されているものの、追加樹脂層20の配置は、図3に示す追加樹脂層20の配置と同じである。開口OP1は、カーペット層10、裏打ち樹脂層15、緩衝材層60、及び、追加樹脂層20を貫通している。カーペット層10、裏打ち樹脂層15、及び、追加樹脂層20には、上述した材料を用いることができる。
【0061】
緩衝材層60は、カーペット層10の裏面10bと一体化された裏打ち樹脂層15の裏面15bと一体化されている。緩衝材層60は、図2に示す緩衝材70と同じく、衝撃吸収、吸音、及び、遮音の少なくとも一つのために使用され、裏打ち樹脂層15の裏面15bに対して部分的に配置されてもよい。緩衝材層60には、フェルトのような繊維材、発泡熱可塑性樹脂やポリウレタンフォームのような発泡樹脂、該発泡樹脂の粉砕物の成形品、これらの組合せ、等を用いることができる。前述の繊維材には、熱可塑性の繊維、耐熱性の繊維と熱可塑性の繊維との組合せ、等を用いることができ、リサイクルされた反毛繊維も用いることができる。前述の耐熱性の繊維には、ガラス繊維といった無機繊維等を用いることができる。熱可塑性の繊維には、熱可塑性樹脂(熱可塑性エラストマーを含む)の繊維、熱可塑性樹脂に添加剤を添加した繊維、等を用いることができ、PET繊維といったポリエステル系の繊維、PP繊維やPE繊維といったポリオレフィン系繊維、ポリアミド系繊維、これらの繊維の組合せ、等を用いることができる。前述の繊維材には、芯鞘構造やサイドバイサイド構造といったコンジュゲート構造の繊維も用いることができる。
むろん、緩衝材層60に使用可能な材料は、上述した緩衝材70にも使用可能である。
【0062】
緩衝材層60の目付は、特に限定されないが、例えば、600~3000g/m2程度
とすることができる。
また、緩衝材層60は、複数の層により構成されてもよい。例えば、緩衝材層60は、カーペット層10の裏面10bと一体化された第一の緩衝材層、及び、該第一の緩衝材層の裏面と一体化された第二の緩衝材層を含んでいてもよい。第二の緩衝材層の材料は、第一の緩衝材層の材料とは異なっていてもよい。
【0063】
図6に示す追加樹脂層20は、緩衝材層60の裏面60bに対して部分的に存在し該緩衝材層60の裏面60bと一体化されている。従って、フロアカーペット1の裏面1bには、追加樹脂層20の裏面20b、及び、緩衝材層60のうち追加樹脂層20で覆われていない部分の裏面60bが現れている。緩衝材層60の裏面60bと一体化された追加樹脂層20は、裏打ち樹脂層15よりも裏側において部分的に存在する。
【0064】
(5)緩衝材層を備える車両用フロアカーペットの製造方法の具体例:
図7は、図6に示す車両用フロアカーペット1を製造する方法を模式的に例示している。図7に示す複数の要素のうち図5に示す要素と実質的に同じか類似する要素については、図5に示す符号を付して詳しい説明を省略する。図7に示す製造方法は、以下の工程(A2),(B2)を含んでいる。
(A2)車両用フロアカーペット1の表面1aに配置されるカーペット層10、該カーペット層10の裏面10bにある裏打ち樹脂層15、及び、該裏打ち樹脂層15の裏面15bに重ねられた緩衝材層60を含む元材50が移送方向D4へ移送されている状態において、移送方向D4と直交する幅方向D5において異なる位置にある複数の供給部120の供給量を該供給部120の単位で可変制御しながら複数の供給部120から追加樹脂40を部分的に元材50の裏面上に供給する追加樹脂供給工程ST1。
(B2)緩衝材層60の裏面60bに対して部分的に存在し該緩衝材層60の裏面60bと一体化された追加樹脂層20が追加樹脂40から形成されるように、元材50及び追加樹脂40を成形する成形工程ST2。
【0065】
緩衝材層60を備えるフロアカーペット1も、カーペット製造装置100で製造することができる。図7に示す製造方法において、カーペット製造装置100は、カーペット層10と裏打ち樹脂層15を含む長尺な裏打ち付き原反の裏打ち樹脂層15に緩衝材層60を重ねる積層装置を備えていてもよい。図7に示す元材50は、熱可塑性の裏打ち樹脂層15を含む長尺な裏打ち付き原反の裏打ち樹脂層15に緩衝材層60が重ねられた長尺な材料とする。緩衝材層60は、熱可塑性樹脂を含有するものとする。
【0066】
追加樹脂供給工程ST1において、元材50が移送機110により移送方向D4へ移送され、各供給部120から可変制御された供給量の追加樹脂40が部分的に元材50における緩衝材層60の裏面60bに供給される。元材50及び追加樹脂40を含む材料は、フロアカーペット1を含む大きさに不図示の切断機によって切断され、不図示の加熱機に搬入される。加熱工程ST21において、不図示の加熱機は、元材50及び追加樹脂40が含有している熱可塑性樹脂の融点よりも少し高い温度まで、元材50及び追加樹脂40を含む材料を加熱する。プレス工程ST22において、プレス成形機200は、加熱工程ST21において加熱された材料をプレス成形する。型201,202の間から取り出されたプレス成形物は、不図示の裁断機に搬入される。裁断工程ST23において、裁断機は、冷却されたプレス成形物をフロアカーペット1の形状に裁断する。これにより、図6に示すフロアカーペット1が得られる。
【0067】
図6に示すフロアカーペット1は、裏打ち樹脂層15の裏面15bと一体化された緩衝材層60の裏面と一体化された部分的な追加樹脂層20を備え、三次元形状2を有する。図6に示すフロアカーペット1も、厚さ方向D3へ貫通した開口OP1を有し、表面が一般部30から縁部34に向かって立ち上がった立壁部32を備え、追加樹脂層20が開口OP1の周囲38、及び、立壁部32の一部に存在する。従って、図6に示すフロアカーペット1も、重量の増加が極力抑えられており、高い剛性及び高い遮音性を有する。
【0068】
(6)変形例:
本発明は、種々の変形例が考えられる。
例えば、本発明を適用可能な車両用フロアカーペットは、車室の床部に設置されるフロアカーペットに限定されず、荷室の床部に設置されるフロアカーペット等でもよい。
車両用フロアカーペットを設置可能な自動車は、ガソリン等を燃焼させるエンジンを搭載している自動車に限定されず、電気自動車等でもよい。電気自動車に設置されるフロアカーペットは、後部に電池パック用の大きな開口を有する。このように大きな開口の周囲も、高い剛性が求められる。電気自動車用のフロアカーペットにおいて電池パック用の大きな開口の周囲の少なくとも一部に追加樹脂層が存在すると、電池パック用の大きな開口の周囲に高い剛性が付与される。
裏打ち樹脂層15は、フロアカーペット1の吸音性を高めるための通気孔を有していてもよい。
【0069】
図8は、裏打ち樹脂層15に複数の通気孔18を有する車両用フロアカーペット1の要部を模式的に例示する垂直断面図である。図8に示す複数の要素のうち図2に示す要素と実質的に同じか類似する要素については、図2に示す符号を付して詳しい説明を省略する。
図8に示す裏打ち樹脂層15は、厚さ方向D3へ貫通した複数の通気孔18を有し、カーペット層10と緩衝材70とに空気を流通させることにより吸音機能を発揮させる。通気性を有する裏打ち樹脂層15を備えるフロアカーペット1は、高い吸音性を有するものの、裏面1bから室内SP1に音が通り抜けやすい性質も有する。例えば、フロアカーペット1のトーボード部は、音が発生するエンジンの近くにあるため、遮音性が高い方が好ましい。図8に示すトーボード部は、通気孔18を有する裏打ち樹脂層15の裏面15bと一体化された部分的な追加樹脂層20を備えている。これにより、フロアカーペット1は、一般部30にある通気孔18により高い吸音機能を発揮し、トーボード部に存在する追加樹脂層20により高い遮音機能を発揮する。従って、厚さ方向D3へ貫通した複数の通気孔18を有する裏打ち樹脂層15、及び、該裏打ち樹脂層15よりも裏側において部分的に存在する追加樹脂層20を備えるフロアカーペット1は、重量の増加が極力抑えられており、高い剛性、高い吸音性、及び、高い遮音性を有する。
【0070】
また、図6に示すフロアカーペット1の裏打ち樹脂層15が複数の通気孔を有していても、上述した効果が得られる。
【0071】
尚、追加樹脂層20は、開口OP1の周囲38と立壁部32の両方に存在することに限定されず、立壁部32に存在しないで開口OP1の周囲38に存在してもよいし、開口OP1の周囲38に存在しないで立壁部32に存在してもよい。追加樹脂層20が開口OP1の周囲38に存在すればフロアカーペット1に立壁部32が無くてもよく、追加樹脂層20が立壁部32に存在すればフロアカーペット1に開口OP1が無くてもよい。
【0072】
以上より、本技術は、厚さ方向D3へ貫通した開口OP1を有する車両用フロアカーペット1であって、
前記車両用フロアカーペット1の表面1aに配置されているカーペット層10と、
該カーペット層10の裏面10bと一体化された裏打ち樹脂層15と、
該裏打ち樹脂層15よりも裏側において部分的に存在する追加樹脂層20と、を含み、
前記車両用フロアカーペット1は、前記開口OP1から離れた部分において前記追加樹脂層20の無い一般部30を備え、
前記追加樹脂層20は、前記開口OP1の周囲38の少なくとも一部に存在する、態様を有する。この態様も、重量の増加を極力抑えながら剛性を高めた車両用フロアカーペットを提供することができる。
【0073】
また、本技術は、三次元形状2を有する車両用フロアカーペット1であって、
前記車両用フロアカーペット1の表面1aに配置されているカーペット層10と、
該カーペット層10の裏面10bと一体化された裏打ち樹脂層15と、
該裏打ち樹脂層15よりも裏側において部分的に存在する追加樹脂層20と、を含み、
前記車両用フロアカーペット1は、該車両用フロアカーペット1の縁部34から離れた部分において前記追加樹脂層20の無い一般部30と、前記表面が前記一般部30から前記縁部34に向かって立ち上がった立壁部32と、を備え、
前記追加樹脂層20は、前記立壁部32の少なくとも一部に存在する、態様を有する。この態様も、重量の増加を極力抑えながら剛性を高めた車両用フロアカーペットを提供することができる。
【0074】
(7)結び:
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、重量の増加を極力抑えながら剛性を高めた車両用フロアカーペット、該車両用フロアカーペットの製造に好適な製造方法、等の技術を提供することができる。むろん、独立請求項(実施形態に記載した態様を含む。)に係る構成要件のみからなる技術でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
また、上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術及び上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。
【符号の説明】
【0075】
1…フロアカーペット、1a…表面、1b…裏面、
1c…中央凹部、1d…左部、1e…右部、1f…接続部、
2,2a,2b…三次元形状、3,3a,3b…折曲部、
10…カーペット層、10b…裏面、
15…裏打ち樹脂層、15b…裏面、18…通気孔、
20…追加樹脂層、20b…裏面、25…凹凸形状、26…溝、27…突条、
30…一般部、30a…前縁、32…立壁部、34…縁部、36…延出部、38…周囲、40,41,42…追加樹脂、
50…元材、
60…緩衝材層、60b…裏面、
90…自動車、
100…カーペット製造装置、110…移送機、
120~125…供給部、126…ノズル、130…制御部、
200…プレス成形機、201…上型、202…下型、
SL1…スリット、
SP1…室内、
ST1…追加樹脂供給工程、ST2…成形工程、
ST21…加熱工程、ST22…プレス工程、ST23…裁断工程、
D1…前後方向、D2…左右方向、D3…厚さ方向、D4…移送方向、D5…幅方向、
OP1,OP2,OP3…開口。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8