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特許7538335トルク配分を制御するための制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】トルク配分を制御するための制御システム
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/188 20120101AFI20240814BHJP
   B60W 30/02 20120101ALI20240814BHJP
【FI】
B60W30/188
B60W30/02
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023512467
(86)(22)【出願日】2021-08-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-07
(86)【国際出願番号】 EP2021073199
(87)【国際公開番号】W WO2022038289
(87)【国際公開日】2022-02-24
【審査請求日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】2013081.1
(32)【優先日】2020-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512308720
【氏名又は名称】ジャガー ランド ローバー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Jaguar Land Rover Limited
【住所又は居所原語表記】Abbey Road Whitley Coventry CV3 4LF UNITED KINGDOM
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】オーウェン,サイモン
(72)【発明者】
【氏名】リチャーズ,カール
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-189814(JP,A)
【文献】特開昭64-060435(JP,A)
【文献】特表2016-534933(JP,A)
【文献】特表2016-536194(JP,A)
【文献】特開2020-121627(JP,A)
【文献】特開2007-161032(JP,A)
【文献】特開2017-141026(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0263268(US,A1)
【文献】国際公開第2019/162482(WO,A1)
【文献】特開2004-268901(JP,A)
【文献】特開2017-038470(JP,A)
【文献】特開2007-209182(JP,A)
【文献】特開2006-325397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/188
B60W 30/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両における第1の車軸と第2の車軸との間のトルク配分を制御するための制御システムであって、前記制御システムは、1つ以上のコントローラを含み、前記制御システムは、
車両がオーバーランしていることを検出し;
車両速度を検出し;
車両がオーバーランしており、前記車両速度が第1の速度閾値を下回る場合、トルク分布は、前記第1の車軸へのオーバーラントルクを減少させ、前記第2の車軸へのオーバーラントルクを増加させるように制御するように構成され
前記車両が前方に走行する場合、前記第1の車軸が前輪の車軸で且つ前記第2の車軸が後輪の車軸であり、
前記車両が後方に走行する場合、前記第1の車軸が後輪の車軸で且つ前記第2の車軸が前輪の車軸である、制御システム。
【請求項2】
前記制御システムは、
車両がオフロード路面にあることを検出し;
前記オフロード路面の検出に依存して、前記第1の車軸へのオーバーラントルクの減少および前記第2の車軸へのオーバーラントルクの増加を変化させるように構成されている、請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記制御システムは、
車両減速率を決定し;
前記車両減速率の決定に依存して、前記第1の車軸へのオーバーラントルクの減少および前記第2の車軸へのオーバーラントルクの増加を変化させるように構成されている、請求項1に記載の制御システム。
【請求項4】
前記第1の車軸におけるオーバーラントルクの減少量に応じて、前記第2の車軸におけるオーバーラントルクが増加される、請求項1に記載の制御システム。
【請求項5】
前記第1の車軸におけるオーバーラントルクの減少量だけ、前記第2の車軸におけるオーバーラントルクが増加される、請求項1に記載の制御システム。
【請求項6】
前記車両の勾配が閾値以上である場合、前記第1の車軸へのオーバーラントルクの減少は、前記第2の車軸へのオーバーラントルクの増加よりも大きい、請求項1に記載の制御システム。
【請求項7】
B-ISG、C-ISG、または第1の車軸配置に組み込まれた電気機械のうちの1つ以上を用いて前記第1の車軸に駆動トルクを加えることにより、前記第1の車軸のオーバーラントルクの量を減少させる、請求項1に記載の制御システム。
【請求項8】
前記第2の車軸へのオーバーラントルクは、電気機械からの回生ブレーキおよび/または摩擦ブレーキによって引き起こされる、請求項1-7のいずれかに記載の制御システム。
【請求項9】
前記第1の車軸へのオーバーラントルクの減少および前記第2の車軸へのオーバーラントルクの増加は、前記車両速度が第1の速度閾値を下回ることに依存し、
任意に前記第1の速度閾値は、GGS、砂、泥および轍、岩のうちの1つから選択される車両モードに依存する、請求項1に記載の制御システム。
【請求項10】
前記第1の車軸へのオーバーラントルクの減少および前記第2の車軸へのオーバーラントルクの増加は、前記車両減速率に依存する、請求項1に記載の制御システム。
【請求項11】
前記第1の車軸へのオーバーラントルクの減少および前記第2の車軸へのオーバーラントルクの増加は、オフロード路面の湿潤度に依存する、請求項1に記載の制御システム。
【請求項12】
クリープが発生すると、前記第1の車軸に対するオーバーラントルクの減少および第前記第2の車軸に対するオーバーラントルクの増加が中止される、請求項1に記載の制御システム。
【請求項13】
請求項1に記載の制御システムを備える車両。
【請求項14】
車両における第1の車軸と第2の車軸との間のトルク配分を制御する方法であって、該方法は、
車両がオーバーラン状態にあることを検出すること;
車両速度を検出すること;および
車両がオーバーラン状態にあり、かつ前記車両速度が第1の速度閾値を下回っている場合に、前記第1の車軸へのオーバーラントルクを減少させ、かつ前記第2の車軸へのオーバーラントルクを増加させるようにトルク配分を制御することを含み
前記車両が前方に走行する場合、前記第1の車軸が前輪の車軸で且つ前記第2の車軸が後輪の車軸であり、
前記車両が後方に走行する場合、前記第1の車軸が後輪の車軸で且つ前記第2の車軸が前輪の車軸である、方法。
【請求項15】
実行されると、請求項14の方法を実行するように構成されるコンピュータソフトウェア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両におけるトルク分布を制御するための制御システムに関する。本発明の態様は、トルク分布を制御するための制御システム、車両、方法、およびコンピュータソフトウェアに関連する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関が、ある条件下で負のエンジントルクを提供することは知られている。本願の内容では、負のエンジントルクは、車両を減速させる力を加えるトルクである。これは、運転中(静止していない)、ギアを入れているときに最も一般的で、ドライバが要求する駆動トルクは、車両の加速を行うため、または車両速度を維持するために必要な要求駆動トルクよりも小さくなる。これはオーバーラントルクとして知られている。ドライバの要求駆動トルクは、一般にアクセルペダルの位置と車両速度に基づく。
【0003】
低摩擦または緩い表面では、車両の駆動輪へのオーバーラントルクの供給は、これらの駆動輪に望ましくない量のスリップを発生させるのに十分であり得る。本発明の目的は、公知技術に関連する1つまたは複数の欠点に対処することである。
【発明の概要】
【0004】
本発明の態様および実施形態は、請求項に記載の制御システム、方法、車両およびコンピュータソフトウェアを提供する。
【0005】
本発明の態様によれば、車両における第1の車軸と第2の車軸との間のトルク配分を制御するための制御システムが提供され、制御システムは、1つ以上のコントローラを含み、制御システムは、車両がオーバーラン状態にあることを検出し、車両速度を検出し、車両がオーバーラン状態にあり車両速度が第1の速度閾値を下回るとき、第1の車軸に対するオーバーラントルクを減らし、第2の車軸に対するオーバーラントルクを増加するためにトルク配分を制御するように構成される。
【0006】
トルク配分の変更により、車両が柔らかい路面や地形を走行しているときに、車輪の前に物質のくさびができるのを抑えることができる。これは、停止後の車両の再始動能力を向上させるので、車両が静止する際の低速で特に有利である。
【0007】
任意に、装置は、第1の車軸が前車軸であり、第2の車軸が後車軸である、上述の制御システムを構成することができる。あるいは、本装置は、車両が後方に走行し、第1の車軸が後車軸であり、第2の車軸が前車軸である、上記の制御システムを構成することができる。
【0008】
任意に、装置は、車両がオフロード路面にあることを検出することと、オフロード路面を検出することに依存して、第1の車軸に対するオーバーラントルクの減少および第2の車軸に対するオーバーラントルクの増加を変化させることとを備える、上述の制御システムを構成することができる。
【0009】
任意に、装置は、車両減速率を決定することと、車両減速率の決定に依存して、第1の車軸へのオーバーラントルクの減少および第2の車軸へのオーバーラントルクの増加を変化させることと、を備える上述の制御システムを構成し得る。
【0010】
減速率を測定することで、路面の柔らかさや勾配の指標を得ることができる。これらは、トルク分布が条件に適切な場合に修正されるという利点を提供する。
【0011】
任意に、装置は、オーバーラントルクが第1の車軸上で減少される量に依存して第2の車軸上で増加される、上述の制御システムを構成することができる。
【0012】
車両の全体的な減速率に大きな影響を与えることなく、トルクの分布を制御することは有益である。一方の車軸からトルクを取り除き、他方の車軸に同量のトルクを加えることで、これが達成される。追加の表面抵抗または勾配を補償するために、小さな不足が有益である場合がある。
【0013】
任意に、装置は、オーバーラントルクが第1の車軸で減少したのと同じ量だけ第2の車軸で増加される、上述の制御システムを構成することができる。あるいは、装置は、車両の勾配が閾値を超える場合、第1の車軸へのオーバーラントルクの減少が第2の車軸へのオーバーラントルクの増加よりも大きい、上述の制御システムを構成することができる。
【0014】
任意に、装置は、第1の車軸のオーバーラントルクの量が、B-ISG、C-ISGまたは第1の車軸配置に組み込まれた任意の電気機械のうちの1つまたは複数を用いて第1の車軸に駆動トルクを加えることによって低減される、上記に記載の制御システムを構成することができる。
【0015】
任意に、装置は、第2の車軸へのオーバーラントルクが、電気機械からの回生ブレーキおよび/または摩擦ブレーキによって引き起こされる、上述の制御システムを構成することができる。
【0016】
トルクを分配するために、ハイブリッドシステムを有益に使用することができる。ERADによって生成された電気エネルギーは、例えば、B-ISGを駆動するために使用されてもよい。
【0017】
任意に、装置は、第1の車軸へのオーバーラントルクの減少および第2の車軸へのオーバーラントルクの増加が、車両速度が第1の速度閾値以下であることに依存する、上述の制御システムを構成することができる。
【0018】
柔らかい路面は、走行速度によって異なる挙動を示す。低速で必要なときにトルク配分を行うことは有益であるが、車輪の前に柔らかい材料のくさびが形成されない高速では必要ない。異なる表面と含水率は、材料のくさびが形成され得る速度が異なるので、異なるトルク分布または速度閾値を必要とするかもしれない。
【0019】
任意に、装置は、第1の速度閾値が、草-砂利-雪(GGS)、砂、泥および轍、岩のうちの1つから選択される車両モードに依存する、上述の制御システムを含むことができる。
【0020】
任意に、装置は、GGSモードの第1の速度閾値が0kphと70kphの間であり、砂モードの第1の速度閾値が0kphと50kphの間であり、泥と轍モードの第1の速度閾値が0kphと55kphの間であり、岩モードの第1の速度閾値が0kphと30kphの間にある、前の2段落に記載の制御システムを構成しても良い。
【0021】
任意に、装置は、第1の車軸へのオーバーラントルクの減少および第2の車軸へのオーバーラントルクの増加が、車両の減速率に依存する、上述の制御システムを構成することができる。
【0022】
任意に、装置は、第2の車軸へのオーバーラントルクの増加が、車両減速率が0.3g以上であり、かつ/または車両速度が10kph未満である場合にのみ実行される、上述の制御システムを構成することができる。
【0023】
任意に、装置は、第1の車軸へのオーバーラントルクの減少および第2の車軸へのオーバーラントルクの増加が、オフロード路面の濡れに依存する、上述の制御システムを構成することができる。
【0024】
任意に、装置は、クリープが発生すると、第1の車軸へのオーバーラントルクの減少および第2の車軸へのオーバーラントルクの増加が中止される、上述の制御システムを構成することができる。
【0025】
本発明の別の態様によれば、上述の制御システムを備える車両が提供される。
【0026】
本発明の別の態様によれば、車両における第1の車軸と第2の車軸との間のトルク配分を制御する方法が提供され、この方法は、車両がオーバーラン状態にあることを検出することと、車両速度を検出することと、車両がオーバーラン状態にあり車両速度が第1速度閾値を下回る場合、第1の車軸へのオーバーラントルクを低減し第2の車軸へのオーバーラントルクを増加するよう、トルク配分を制御することを含む。
【0027】
本発明の別の態様によれば、実行されると、上述した方法を実行するように構成されるコンピュータソフトウェアが提供される。
【0028】
本願の範囲内において、前の段落、特許請求の範囲および/または以下の説明および図面に記載された様々な態様、実施形態、例および代替案、特にその個々の特徴は、独立してまたは任意の組み合わせで取ることができることが明示的に意図される。すなわち、すべての実施形態および/または任意の実施形態の特徴は、そのような特徴が両立しない場合を除き、任意の方法および/または組み合わせで組み合わせることが可能である。本出願人は、元々そのように請求されていないが、他の請求項の特徴に依存し、及び/又はそれを取り込むために、元々提出された請求項を修正する権利を含め、それに応じて元々提出された請求項を変更する権利又は新しい請求項を提出する権利を有する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
次に、本発明の1つまたは複数の実施形態が、添付の図面を参照しながら、例示的にのみ説明される。
【0030】
図1図1は、本発明の実施形態による車両を側面から見た概略図である。
図2図2は、本発明によるパワートレインアレンジの実施形態を示す。
図2A図2Aは、様々な路面でのオーバーラン中の、車両のコーストダウン速度対時間のグラフの一例を示す図である。
図3図3は、図2に示すパワートレインの制御システムの一例を示す図である。
図4図4Aは、車両が緩い路面を走行している間の車両減速時の前車軸モータトルクのグラフと、本発明の実施形態の制御戦略例とを示す。 図4Bは、車両が緩い路面を走行している間の車両減速時の前車軸エンジントルクと、本発明の実施形態の制御戦略例とを示すグラフである。 図4Cは、車両が緩い路面を走行している間の車両減速時の後車軸モータまたはブレーキトルクと、本発明の実施形態の制御戦略例とのグラフである。
図5図5は、図2に示すパワートレインを制御するための制御フロー図の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態に係る車両のトルク分布制御方法について、添付の図を参照しながら説明する。
【0032】
図1は、本発明の実施形態に従った車両100を示す。車両100は、第1の車軸110および第2の車軸120を有し、各車軸は、例えば、それぞれ2つの車輪を有する。別の実施形態では、車両は、例えば、車両に6つまたは8つ以上の車輪を提供することができる2つ以上の車軸を有し得る。
【0033】
本明細書において、車軸に加えられるトルクは、車輪におけるトルクを指し、これは、エンジンまたはモータからの駆動またはオーバーラントルクに加えて、あらゆる制動トルクを含む。
【0034】
図2は、図1の車両に搭載された本発明の一実施形態によるパワートレイン200を示す図である。図示のパワートレイン200は、エンジン201に、変速機203に接続される電気機械202が接続されている。本実施形態のトランスミッション203は、ディファレンシャル(図示せず)およびアクスルドライブシャフト部品210を介して第1の車軸110にトルクを分配して前輪214,215に伝達できるFWDトランスミッションである。
【0035】
電気機械202は、エンジン201とトランスミッション203との間に位置するクランクシャフト連結型の電気機械であるクランクインテグレーテッドスタータジェネレータ(C-ISG)202である。C-ISGは、C-ISGが変速機に駆動トルクを与える間、エンジンを停止させるためのクラッチを有していてもよい。クラッチを閉じることで、エンジンがトランスミッションとC-ISGに駆動トルクを提供することができる。このモードでは、C-ISGは追加トルクを提供したり、エンジントルクの一部をバッテリの充電に使用したりすることができる。ベルト一体型スタータジェネレータ(B-ISG)205も設置されて示されており、これは、エンジンに搭載され、B-ISGからエンジンクランクシャフトプーリへの駆動ベルトを介してエンジンに接続される、典型的により小さい電気機械である。この実施形態では、C-ISG202とB-ISG205の両方が示されているが、他の実施形態では、C-ISGまたはB-ISGのいずれか一方のみを有することもできる。他の実施形態では、電気機械は、トランスミッション203の配置に、または車軸ドライブシャフト部品210の両方に統合されてもよい(いずれも図示せず)。
【0036】
実施形態の車両に装着された第2の車軸120は、電動後車軸ドライブ(ERAD)204、ドライブシャフト構成要素211および後輪216、217を含み得る。ERAD204は、第2の車軸120を介して正または負の電気駆動トルクを提供することができ、第1の車軸110と第2の車軸120との間に物理的な接続がないため、第1の車軸110に対して独立して作用し得る。別の実施形態では、4輪駆動(4x4)伝達能力を提供する従来の方法である、支軸およびセンターデフ配置(図示せず)によって提供される第1の車軸と第2の車軸との間の物理的接続があり得る。
【0037】
ERAD204は、正または負のトルクをトランスミッションアセンブリに与えることができる電気機械を含むことができ、これは、後車軸コンポーネント211を介して、次に車輪216、217にトルクを向けるオプションの差動を有する単速または多速トランスミッションのいずれかでありうる。図示の実施形態では、ERAD204は、単一のユニットに統合された、電気機械、トランスミッションのギア減速および差動出力を有することができる。車輪216,217への出力は、ドライブシャフト構成要素211を介して示されている。
【0038】
図2に記載された実施形態では、第1の車軸110および第2の車軸120は独立して駆動することができ、各車軸におけるトルク分布は別々である。この例示的な実施形態における第1の車軸110は、前車軸を駆動するが、他の実施形態では後車軸とすることもできる。エンジン201の出力はC-IMG202の入力に接続され、C-IMG202の出力はトランスミッション203の入力に接続され、トランスミッション203の出力は差動装置(図示せず)を介して前車軸ドライブシャフト部品210に接続される。前車軸ドライブシャフトコンポーネント210は、車輪214および215に接続されている。
【0039】
この前車軸の構成は、エンジン201またはC-IMG202またはB-ISG205である3つの可能なトルクソースを有する。以下の説明は、トルク源としてのC-IMG202の使用に集中するが、B-ISG205は、C-IMG202によって提供されるトルクを交換可能に支援または置換し得る。
【0040】
C-IMG202は、第1の車軸110に正または負の駆動トルクを提供して、車両をそれぞれ前進または後退させることができる。C-IMG202とエンジンとの間のオプションのクラッチ(図示せず)は、エンジンをトルク経路から切り離し、C-IMG202からの電気駆動のみを可能にし得るC-IMGの入力からのエンジン出力の切り離しを可能にし得る。
【0041】
図2の構成はまた、エンジン201から前車軸110に正の駆動トルクまたは負の駆動トルクを提供することができ、正の駆動トルクは、スロットルを使用して正の駆動トルクを要求するドライバの積であり、負の駆動トルクは、エンジンオーバーラン中に経験するエンジンの摩擦損失およびドライバのスロットル要求をある程度低減することによって生じる。エンジンオーバーランとは、走行中(停車中ではない)、ギアを入れた状態で、ドライバの要求する駆動トルクが、車両の加速や車両速度維持に必要な駆動トルクより小さい状態を指す。オーバーラントルクのレベルは、スロットル要求が減少したときのエンジンからの摩擦損失およびポンピング損失の結果である。エンジン201は、正または負のトルクをC-IMG202の入力に駆動することができ、これは、C-IMG202の出力に伝達され、その後、トランスミッション203を通り、ディファレンシャル(図示せず)を介して、ドライブシャフト部品210に入り、車輪に送られることになる。
【0042】
前車軸110のトルクは、エンジン201、C-IMG202、またはエンジン201とC-IMG202の組み合わせのいずれかによって提供され得る。第2の実施形態は、エンジンに正または負のトルクを加えることによって前車軸110を駆動し得るベルト統合スタータジェネレータ(B-ISG)205を含み得る。エンジントルクは、バッテリまたは車両電気システムに電荷を供給するために、C-IMG202またはB-ISG205に供給されることもできる。
【0043】
特定の走行条件や砂、砂利、頁岩、土、泥、岩などの緩い路面では、車輪や車軸が地面に沈み込むことがあるため、車両の進行が妨げられる可能性がある。また、制御不能なトルク入力により路面が変形すると、さらに悪化する可能性がある。
【0044】
例えば、図2の車両は、前車軸に従来のエンジンが接続されており、運転手がスロットルを操作していないと仮定すると、前車軸に作用する所定量のオーバーランブレーキトルク量を有する。高摩擦路面環境では、図2のように構成された車両を、この例ではERAD204を介して後車軸120のみで推進することが可能であり、このERADは、ドライバの要求する正のモータトルクと、必要に応じてエンジンのオーバーラン負トルクをシミュレートして提供できる。より低い表面摩擦を提供する路面に遭遇した場合、図2のような車両は、4輪駆動レベルの車両安定性を提供するために、両方の車軸が駆動トルクを提供することを可能にする。このような路面状態の認識は、運転手が車両モードを選択することによって、あるいは車両が自動的にモードを選択することによって、認識することができる。この構成では、両車軸から駆動トルクを供給する一方で、内燃エンジンが摩擦とポンピングの損失を発生させるため、車両は内燃エンジンに接続された第1の車軸を介してのみオーバーラントルクを供給することができる。この場合、エンジンはオーバーランブレーキの唯一の源であり、前車軸と後車軸の間に機械的な接続がないため、オーバーラントルクは前車軸にのみ作用する。このオーバーランブレーキは、エンジンによる自然な摩擦損失とポンピング損失によって引き起こされ、車両に負の減速トルクとして作用する。低速では、第1の車軸に関連する車輪に作用するこの減速トルクは、タイヤとの接触点で路面を変形させ始め、車輪の前に変形可能な材料のくさびを作り、車両が静止すると車輪の前のこの材料のくさびは、前軸が減速する割合を増加させ、車が次に離れようとするときに問題になる可能性がある。車輪が乗り越えなければならない物質的な障壁を形成するため、この物質的なくさびは車両運動の妨げになることがある。
【0045】
例えば、エンジン摩擦トルクが-80Nmの速度で、ドライバがスロットルを使って50Nmのエンジン燃焼トルクを要求しているような場合、ドライバによって小さなスロットル要求がなされている場合でも、オーバーラントルクが発生することがある。この場合、車両の正味の減速トルクは-30Nmになる。
【0046】
別の実施形態では、エンジンはドライブシャフトを介して後車軸に駆動力を与え、前車軸には電気アクスルドライブが提供される。この構成では、同じ制御方法を適用して、前記の説明とは逆方向に車軸間のトルクを分配することができる。したがって、高速走行時にはトルク配分が後方になり、車両が閾値以下に減速すると、C-IMGが後車軸へのオーバーラントルクを低減することができる。その後、前車軸駆動は、C-IMGのトルク低減を補償するためにオーバーラントルクを提供することができる。従来と同様に、B-ISGがC-IMGの機能を提供してもよい。
【0047】
図2Aは、様々な路面でのオーバーラン中の、車両のコーストダウン速度対時間のグラフ600の一例を示す。コーストダウンという用語は、ギアボックスが適切なギアにある状態で、ブレーキおよびスロットルをゼロにした状態で、平坦な路面における車両の減速プロファイルを説明する。車両に作用する減速力は、空気抵抗、車輪の転がり摩擦、駆動系損失、およびエンジンオーバーランである。図2Aは、ターマック610、濡れた草620、泥630、砂640のような様々な例示の路面に対するコーストダウン曲線の比較を示す。図2Aから、泥630および砂640が車両をより早く減速させることが分かる。このグラフは、自動変速機の固有の資質の一部として提供されるクリープトルクへの進入を示さないものである。典型的には、低摩擦表面または緩い表面構造での減速中に負のオーバーラントルクを経験している車輪は、車輪スリップを経験し始める。この車輪スリップは、減速中に車輪の前に材料ウェッジを形成し始める機構の一部である。例えば、ターマック表面610は、高剛性表面のため表面抵抗がほとんどないコーストダウン減速カーブを描くことになる。泥630と砂640は、舗装路610よりも徐々に速くなるコーストダウン曲線を示し、これは、減速時に車輪の前に物質のくさびを形成する傾向が強く、くさびが大きくなるにつれて減速速度が増加する可能性がある高抗力路面を示す。
【0048】
路面が濡れていたり、非常に柔らかい場合、車輪の前にある材料のくさびは、車輪と路面の間のスリップ量と同様に増加する可能性がある。車輪にかかるオーバーラントルクは、滑りをさらに増大させ、形成されるくさびの大きさを大きくする。そして、これは、より高い表面抗力をもたらす。
【0049】
車両100には、スロットルシステム220と、車両制御ユニット(VCU)226に接続されたポテンショメータのようなスロットル位置を検出する手段とが取り付けられている。車両には、油圧式ブレーキシステムを作動させることができるブレーキシステム222が取り付けられている。さらに、ブレーキシステム222は、C-IMG202およびERAD204からトルクを要求することができるVCU226に接続されている。
【0050】
VCU226は、エンジン201、C-IMG202、B-ISG205およびERAD204と通信しており、必要に応じてこれらのユニットに正または負のトルクを動的に要求することが可能である。
【0051】
車両100には、加速度、減速率を検出し、車輪速度センサまたはトラクションモータ速度レゾルバから車両の速度を決定することができる3軸または6軸加速度センサ224が取り付けられている場合がある。また、公知の計算方法を用いるVCUは、車両の勾配(傾斜)およびヨー運動を決定することができる。
【0052】
図3は、図2に示したパワートレインの制御システムの一例を示す。車両制御ユニット(VCU)226は、エンジン制御ユニット(ECU)410と通信しており、スロットルシステム220がエンジントルクを要求したときに、エンジン201にエンジントルクを要求することができる。車両制御ユニット(VCU)226は、C-IMG202制御ユニット420と通信しており、C-IMG202から正または負のトルクのいずれかを要求することができる。車両制御ユニット(VCU)226は、B-ISG205制御ユニット430と通信しており、B-ISG205から正または負のトルクのいずれかを要求することができる。車両制御ユニット(VCU)226は、ERAD204制御ユニット400と通信しており、ERAD204から正または負のトルクのいずれかを要求することができる。図3には、砂、泥と轍、雪、草/砂利/雪のような車両オフロードモードを選択することができるオフロードモードセレクタ450が示されている。オフロードモードセレクタ450は、VCU226と通信して、ドライバがどのタイプの路面を走行するつもりであるかを指示することができる。また、車両は、車両が走行中の路面または走行すると予測される路面に基づいて、車両が自動的に選択する「オート」モードを有することができる。選択された走行モードは、路面に最も適した方法で前車軸110と後車軸120との間のトルク配分を決定することができる。
【0053】
この文脈では、少なくとも1つの前輪および少なくとも1つの後輪がターマックまたはコンクリート以外の任意の表面を走行し接触しているとき、車両はオフロードになる。これは、ターマック道路に砂が吹き付けられたり、運転手が路肩に2つの車輪を置いたりすることで発生する可能性がある。
【0054】
図3は制御システムの物理的な実施形態を示しているが、実行される制御機能は、異なるアーキテクチャに分散されてもよい。コントローラは組み合わせたり分散させたりすることができ、同じ機能を実行するためにいくつかの異なるネットワークを採用することができる。同様に、制御ソフトウェア機能は、処理能力、メモリ空間および/またはネットワーク通信が利用可能な異なるコントローラで実行されることがある。例えば、VCUは別個のコントローラとして示されているが、VCUによって実行される機能はECUに実装することができ、別個のVCUの必要性を取り除くことができる。
【0055】
図4A図4Bおよび図4Cの組み合わせは、例えば砂のための車両減速中に1つまたは複数の車輪の前に変形可能な材料のくさびを構築する問題を緩和し得る1つの可能なモータトルク分布制御方法を示す。図4A、4Bおよび4Cの各々は、モータトルク分配制御方法が前車軸110と後車軸120との間で調整される必要があるため、同じ時間軸を共有している。
【0056】
図4Aは、車両が緩い路面を走行しているときの車両減速時のB-ISGモータトルクのグラフである。車両減速中に車両は、例えばSp1、Sp2、Sp3、Sp4といった様々な速度閾値を通過し、これにより様々な制御応答が引き起こされる。制御戦略の間の様々な時点で、前車軸モータトルクは、運転状況に依存して、FMT1、FMT2、FMT3、FMT4のレベルまで変化する。
【0057】
図4Bは、前車軸トルクのグラフを示す。これは、エンジントルク(図示せず)と図4AのB-ISGトルクの合計である。Sp1~Sp3の間、エンジンは-100Nmのオーバーラントルクを提供する。従来は、SP4の後に車両が静止すると、エンジンのオーバーラントルクが遷移し、FET4でクリープトルクを提供する(クリープが提供される場合)。
【0058】
図4Cは、後車軸トルクのグラフであり、ブレーキ操作によるもの、後車軸モータトルクによるもの、またはその両方である。ここで、3つのグラフ(4A、4B、4C)すべてを用いて、制御戦略の例を説明する。
【0059】
実施形態では、車両は砂、砂利/雪、土、泥、轍などのオフロード路面上にあることがあり、車両が減速すると、車輪の一部または全部が路面を変形させ、車輪の前に緩んだ路面のくさびを構築することがある。車両が高速で慣性を持っている間は、車両が運動に対してあまり抵抗なく路面に沿って通過するのが普通であるが、車両が減速すると、車両が路面に沈み込む可能性がある。さらに、減速時には、車輪で発生する負のトルクのために、材料のくさびがより急速に、より高い車両速度で構築することがある。この負のトルクと低摩擦表面は、駆動輪を車両速度よりも遅い速度で回転させる。このホイールスリップ(または回転不足)は、駆動輪がくさびの頂上を転がることを可能にするのではなく、駆動輪の前に緩い表面を構築する。 低車両速度でのこのオーバーラントルクは、車輪がその上を転がる代わりに、あらゆる緩いオフロード路面を車輪の前に押し出す傾向があり、車輪の前に材料のくさびが形成される原因となる。さらに、車両が前進方向に走行していて車両が減速している場合、後輪から前輪への重量移動が発生し、前輪をオフロード路面にさらに押し込む傾向がある。この効果は、問題車輪の前に蓄積された材料のくさびを悪化させ、この場合、エンジンのオーバーラントルクが前車軸を通って流れるため、前車軸に経験される。別の例として、車両がエンジンによって駆動される後車軸を有する場合、後車軸は、オーバーラン減速時に後輪の前に材料のくさびを形成する傾向がある車軸である。
【0060】
この物質のくさびは、一旦停止した車両が引き離される際の抵抗となり、また、ドライバが要求するブレーキ圧によって示されるように、ドライバが停止しようと意図しているよりも急速に車両を減速させる可能性があるため、減速時に車両のトルク分布を制御する方法によってこの問題を軽減するものである。
【0061】
図4A図4B図4Cは、例として砂地での減速時に材料ウェッジの蓄積を打ち消すための車輪トルク制御の方法の一例を説明している。減速条件は、スロットル要求がゼロ、ドライバのブレーキ要求がゼロ、図4Aの速度点Sp1での前進車両速度が30km/hである。Sp1でのホイールトルク分布は、FET1=-100Nm、RT1=0Nmであり、前車軸にかかる車両のオーバーラン減速トルクは-100Nmの正味マイナスである。この条件では、オーバーラントルクは前車軸にのみ発生し、車両は適度に速く移動しているため、オーバーラントルクによって前輪の前に物質が蓄積されることはない。速度ポイントSp1のように、後車軸で経験されるオーバーラントルクはない。
【0062】
スロットルを踏んでいないので、車輪の表面からの摩擦抵抗とエンジンのポンピングロスから生じるオーバーラントルクにより、車両は速度ポイントSp2まで減速することになる。速度点Sp2は時速20kmである。速度点SP2では、前車軸110および後車軸120のトルク分布が、前車軸モータトルクFMT2=50Nmこの正のトルクがB-ISG(代わりにこれはC-IMGでもよい)によってエンジンに直接加えられ、前車軸トルクFET2=-50Nmとなるように変わる。B-ISGのトルクは、内燃機関(ICE)に正のトルク値を入力し、-100Nmのポンピングと摩擦損失を部分的に打ち消すため、全体として前車軸トルク(この例では-50Nmのトルク)となる。 同時に後車軸のトルクもRT2=-50Nmに変更される。したがって、速度点Sp2において、正味の車両トルクは、前車軸110に-50Nm、後車軸120に-50Nmで、-100Nmである。この例では電気モータによって提供されるB-ISGトルクは、ICEに可燃性燃料と空気を供給することによっても提供できることに留意されたい。エンジンのこの「燃料付き」状態は、この例で説明したように、正のトルクの一部または全部を提供し、ICE駆動の(前)車軸のオーバーラントルクの一部または全部をキャンセルするように構成することができる。
【0063】
時速15km程度の速度ポイントSp3に移動すると、車軸トルク分布は再びFET3=0Nm、RT3=-100Nmに変化する。したがって、ブレーキまたはERADが後車軸に-100 Nmを加えることにより、車両のオーバーラントルクは-100 Nmとなる。前車軸にかかる0Nm(100NmのB-ISGトルクと-100NmのICEトルクの組み合わせ)は、車両の予想減速トルクを提供し、これは前輪の先行接触点の下の材料の蓄積を減らし、前輪が前車軸の車輪の前にある材料のくさびの一部または全部を転がすことを可能にする。
【0064】
速度点Sp4に移動すると、時速7km程度になり、「クリープ」機能が正の駆動トルクを発生させ始める速度点でもある。“クリープ”は、ほとんどの自動変速機を備えた車両で一般的であるように、車両の前進運動を実現するために自動的に要求されるエンジントルクとしてトルクFET4で図4Bに示されている。VCU226がクリープトルク命令を受信すると、VCU226は、モードが適合しない可能性があるので、本発明で説明したような車両内のトルク分布を制御する方法をキャンセルすることができ、クリープトルクは、図4Bに記されたゾーン1内の任意の時間に開始することができるが、表面のくさびの蓄積、車両の傾斜および重量ならびに他の車両入力に応じて、クリープ機能への入力はZ1に示されていない他の時間に開始することができることが分かっている。図4A及び図4Cは、クリープが動作しているときの速度Sp5において、FMT5=0Nm、FET5=20Nm、RT5=20Nmであることを示している。走行モードに応じて、クリープは、前車軸、後車軸、またはその両方によって提供されることがある。例えば、ストップ・スタート・システムによりICEが停止し、クリープが後車軸によって提供されることがある。逆に、トラクションバッテリの充電状態が低い場合、ICEは作動を続け、クリープトルクを提供することができる。低摩擦の状況では、両車軸からクリープトルクを供給することが好ましい。このトルクは、ドライバにシームレスなクリープ機能を提供するように配信される。ドライバの期待するトルク配信を妨げない限り、一方の車軸でクリープトルクの導入を配信しながら、他方の車軸で圧力修正を完了することも可能である。E-RADのクリープ機能トルクは、図4Cに示すゾーン2(Z2)のどの時点でも導入できるが、表面のくさびの蓄積、車両の傾斜と重量、その他の車両入力に応じて、Z2に示されていない他のタイミングでクリープ機能の導入を開始することができることが分かっている。したがって、クリープトルク機能による正味の加速トルクはあるが、本発明で説明した車両のトルク分布の制御方法はキャンセルされる可能性がある。
【0065】
SP4で車両速度が低下すると、車両オーバーラントルクは後車軸120から離れ、前車軸110に戻される。これにより、この例では後輪が、車両が停止するときにこれらの車輪によって与えられる完全なオーバーラントルクのために後車軸の車輪の前に蓄積された表面材料のくさびを巻き上げ、その上に乗せることができる。
【0066】
路面勾配と車両速度によっては、トルクの分布がこの実施形態で説明したようにならないことがあり、トルク分布の制御を可能にするために考慮する必要がある多くの要因がある。これらの要因には、とりわけ、タイヤサイズ、タイヤ圧、ホイールベース、車両重量が含まれる。例えば、第2の車軸が第1の車軸よりも幅広のタイヤであったり、荷台のないピックアップトラックのようにかなり軽量である場合、この機能のすべてのステップを開始する必要はないかもしれない。
【0067】
車両がクリープ機能を持たない場合、またはソフト面のドラッグトルクがクリープトルクよりも高い場合、車両はSP5位置P1、P2、P3で静止する(0kph)。提案された発明の一部ではないクリープトルク機能を除いて、車軸110、120に伝達される負または正のトルクはない。したがって、FMT5=0Nm、FET5=20Nm、RT5=20Nmである。クリープトルクが、モータが持っているトルク要求で回転することを可能にするには不十分である場合、モータはトルク要求が作用するのを防ぐことが知られており、これは熱の蓄積を防止し、エネルギーを節約する。電気機械はICEよりも速く駆動トルクの変化に対応できるため、ドライバが追加トルクを要求しても、性能の低下は感じられない。
【0068】
この例では、車両のトルク配分を制御する提案された方法は、速度点Sp4(例えば7kph)で中止されるが、路面、選択されたオフロードモードまたは車両の周囲条件に依存して、他の速度で本発明を中止することもできる。
【0069】
図4A図4CのSp4では、トルク制御が前車軸のオーバーランに戻る事象が示されているが、柔らかい路面での車輪の最良の停止位置を可能にするために、別のトルク分布もあり得る。
【0070】
トルクの変化は、各ステップでトルクの変化が提供される速度を制御するブレンド機能を含むことができ、この制御は、ドライバまたは他の車両の乗員によって変化が知覚されにくくする。
【0071】
上記のトルク分配戦略は、前進する車両において、車輪の前に物質的なくさびを形成する可能性が最も高い前輪214、215から後輪にトルクを再分配する。これにより、車両の正味の減速トルクプロファイルが一定に保たれる。車両速度が低下すると、車両の正味の減速トルクは他の車両と同様に変化することがあるが、同時に負の減速トルク分布のバランスは後車軸に移動する。すべての車両はオーバーランブレーキによる減速を経験し、通常、ブレーキの量は走行中のエンジンの速度、選択したギアボックスのギア、最終駆動比、およびそのエンジン速度での摩擦ポンプ損失によって決まる。提案された制御戦略は、車両の正味の負の減速トルクに影響を与えず、このようにして、運転手は、トルク再分配による車両の減速にいかなる違いも感じないであろう。本発明は、所望される場合には、総オーバーラントルクを変更することを排除しない。同様に、柔らかい路面での車両減速は、材料が車輪の前に蓄積されないため、本発明のトルク分布によって異なる場合がある。これは、硬い路面でのオーバーランの経験に基づくドライバの期待に近いオーバーラン挙動という利点がある。
【0072】
別の実施形態では、車両が後方に走行する場合、先行車輪は後車軸120上の後輪216,217となり、制御分布は逆となる。例えば、車両が逆走していた場合、先行車輪216,217はERAD204によって逆駆動され、後輪はエンジン201および/またはC-IMG202および/またはB-ISG205によって逆駆動される。車両が逆走していた場合、逆走中に走行するエンジンが、車輪214、215がそれらの前に材料のくさびを作る原因となるトルクを依然として生成し得るので、エンジン201のオーバーラントルクは、前車軸110にとって依然として問題となり得る。この材料のくさびを低減または防止するために、(逆走中の)エンジンオーバートルクは、依然として、C-IMG202および/またはB-ISG205がカウンタートルクを生成することによって打ち消され得る。ERADは、B-ISGまたはC-IMGのトルクを補償するためにトルクを提供する。
【0073】
いくつかの実施形態では、車両が走行している路面は、VCU226の制御戦略に影響を与える。図5に記載された例示的な実施形態では、ステップ500で開始し、VCU226はステップ510で車両が走行している表面を決定し、提案されたトルク分配方法は車両が特定の表面上を走行している場合にのみ適用される。トルク分配制御の方法は、ステップ505でドライバによって検出または選択されたオフロードモードに依存してもよい。例えば、VCU226は、車輪速度信号の観察を通じて、車両上の車輪が断続的に滑っていると判断してもよく、このことからVCU226は、車両が緩い路面を走行していると判断してもよい。あるいは、ドライバは、スイッチ、プッシュボタンまたは他の入力を介してオフロードモード選択を手動で操作し、「オート」、GGS、サンド、ロック、ダイナミック、マッドおよび轍を選択してもよい。「オート」は、自動地形対応選択であり、VCU226が車両が所定のタイプの路面にあることを認識したときに、最も適切な地形モードを自動的に選択することができる。自動地形認識は、車輪速度センサ、GPS、横方向および縦方向の加速度信号、ピッチヒーブおよびヨー信号、ならびに温度および気圧のような環境入力を含むがこれらに限定されない、表面タイプおよび摩擦レベルを検出するために車両センサからの多くの入力を使用する。これらは、VCU226への入力となり、地形に応じたGGS、砂、岩、動的、泥、轍の中から最適な選択可能モードに基づいて、トラクションを最大化するために最も適切な地形モードを選択することができるようになり得る。また、制御方法は、他の制御マップからの複数の選択基準の組み合わせとすることもできる。
【0074】
ステップ515では、エンジントルクマップ、ECU410を見るか、または例えばスロットル220の入力が検出されないことを検出することによって、オーバーラン検出が行われる。次に、VCU226は、ステップ520で、車両がオーバーランしているかどうかを判定し、答えがイエスであれば、VCU226はステップ530に進む。
【0075】
いくつかの実施形態では、車両の速度は、VCU226の制御戦略に影響を与える要因である。図5に記載された例示的な実施形態では、VCU226はステップ530で車両の速度を決定し、提案されたトルク分配方法は、速度が閾値以下である場合にのみ適用される。速度閾値は、検出されたオフロードモードまたはドライバによって選択されたオフロードモードに依存することができる。例えば、ダイナミックモードでは速度閾値は0kphと80kphの間であってもよく、グラスグラベルスノー(GGS)モードでは速度閾値は0kphと70kphの間であってもよく、サンドモードでは速度閾値は0kphと50kphの間であってもよく、泥および轍モードでは速度閾値は0kphと55kphの間であってもよく、岩モードでは速度閾値は0kphと30kphの間であってもよい。各モードの速度閾値は、車両の傾斜や地形が濡れているか乾いているかにも依存して変化する場合がある。
【0076】
いくつかの実施形態では、車両の減速率は、VCU226の制御戦略および車両内のトルク分配を制御する方法に影響を与える要因である。図5Bに記載された例示的な実施形態では、VCU226はステップ540で車両の減速率を決定し、提案されたトルク分配方法は、減速率が閾値より大きい場合にのみ適用される。減速率閾値の目標は、ドライバによって検出または選択されたオフロードモードに依存することができる。例えば、GGSの減速率閾値は0.9と0.2g制限の間で変化してもよく、砂の減速率閾値は0.9と0.15g制限の間で変化してもよく、泥と轍の減速率閾値は0.9と0.2g制限で変化してもよく、岩モード用減速率閾値は0.9と0.05g制限で変化してもよい。他の制限が適用されてもよく、車両の傾きや地形が濡れているか乾いているかに依存して変化してもよい。
【0077】
図5は、本発明の例示的な実施形態に係る動作の制御方法を示す。ステップ500は、制御シーケンスの開始であり、車両のイグニッションがオンであるときに開始され得る。ステップ500は、全てまたはコントローラのスイッチを入れ、全てのコントローラ400、410、420、430および226の間の通信を開始することができる。
【0078】
他の制御アーキテクチャが適用されてもよい。
【0079】
ステップ510で、VCU226は、オフロード検出手段505を使用して、車両がオフロードであるかどうかを判定する。車両がオフロードであると判定された場合、ステップ520に移行し、VCUは、オーバーラン検出手段515が車両エンジン201がオーバーランしていることを検出したかどうかを判定する。VCUがエンジン201がオーバーラン中であると判断した場合、VCU226はステップ530に移行し、ステップ530においてVCUは車両速度検出手段525が車両速度が閾値以下であることを検出したかどうかを判断する。VCU226がステップ530で車両速度が閾値以下であると判断した場合、VCU226はステップ540に移り、計算された減速率手段545を見て、ステップ540で車両の減速率が閾値よりも大きいかどうかを判断する。車両の減速率が閾値より大きい場合、VCU226は次のステップに移り、VCU226はC-IMG202および/またはB-ISG205に指示して第1の車軸110のトルクを増加させ、ERAD204に指示して第2の車軸120のトルクを減少させる。
【0080】
判定ステップ510,520,530または540のいずれかにおいて、分析が否定的であれば、VCU226コントローラは、ステップ510に戻り、プロセスを反復する。
【0081】
実施形態では、車両は、第1の車軸上のオーバーラントルクがどのように打ち消され、第2の車軸上の制動トルクの量がどのように制御されるかを決定し得る勾配にある可能性がある。例えば、車両が急な上り坂を前方に走行する場合、車両の重心(COG)が車両の後方に移動することがある。この例では、第1(前)車軸110の下向きの力が減少し、第2(後)車軸120の下向きの力が増加することで、第1および第2の車軸の牽引限界が変化している可能性がある。例えば、車軸の下向きの力が減少すれば、所定の車輪が地面に伝達できるトルクの量は減少し、逆に車軸の下向きの力が増加すれば、所定の車輪が地面に伝達できるトルクの量は増加する。
【0082】
この例では、車両のトルク配分を制御する方法は、車両の傾斜によって変化する車軸の下向きの力配分を考慮する必要がある場合があり、そうでなければ車輪のスリップやトラクションの喪失の危険性がある。
【0083】
車両の勾配が閾値以上である場合、第1の車軸への正トルクの量は、第2の車軸で低減されるトルクの量よりも多く低減される可能性がある。これは、車両の重量分布の変化と、トラクションの喪失がないことを保証するために車輪の各車軸で利用可能な下向きの力を考慮したものである。例えば、車両が傾斜地を前進している場合、COGは車両の後方に移動し、前車軸の下降力を減少させ、後車軸の下降力を増加させる。これにより、前車軸の利用可能なトラクションの量が減少し、後車軸の利用可能なトラクションの量が増加することになる。
【0084】
実施形態において、車両速度は、車両におけるトルク配分を制御する方法が開始されるタイミングを決定し得る。例えば、ある速度閾値以上では、車両のトルク分布は通常の車両と変わらないが、車両が速度閾値未満まで減速すると、車両のトルク分布を制御する方法が開始され、トルク分布が変更されるということがある。
【0085】
速度閾値は、時速10km程度、時速5km程度、または運転状況に応じた速度範囲内とすることができる。速度点閾値sp1、sp2、sp3、sp4は例示であり、これらの値は、車がどの路面を走行しているか、または車がどの地形応答モードにあるかによって変化し得る。
【0086】
例えば、砂のような表面は、圧縮された砂利よりも柔らかいと見なすことができ、両方の表面がオーバーランブレーキ状態中に車輪の前に材料が蓄積することがあるが、砂は材料のくさびが早く発生し、速度閾値(Sp1, Sp2, Sp3 Sp4)は圧縮砂利よりも高くなる可能性がある。
実施形態では、オーバーランブレーキ中に車両が減速した速度は、車両のトルク分布を制御する方法が開始されるタイミングを決定し得る。例えば、車両が急速に減速した場合、これは、表面が(砂のように)柔らかく、車輪での摩擦損失が増加するため、車両の転動エネルギーを吸収していることを示す可能性がある。コントローラが、減速率減速率閾値より高いことを検出した場合、車両のトルク配分を制御する方法が開始される。
【0087】
車両の減速率は、オンボードの加速度計224によって、または車輪速度センサの出力を監視することによって測定され得る。減速率は、メートル毎秒2乗または「g」で測定することができ、1gは9.81メートル毎秒2乗に等しい。

【0088】
例えば車両における車輪トルクを制御する方法は、第1の車軸上の負のエンジンオーバートルクの量が、第1の車軸への正のトルクを増加させることによって打ち消され、車両の減速率が0.3g以上であり、かつ/または車両速度が10kph以下である場合のいずれかの場合にのみ第2の車軸上でトルクが減少されるとする。
【0089】
車両は、電気、電気機械、または油圧(図示せず)である可能性のある制御可能なブレーキシステムを各車軸に有することになる。
【0090】
本願の範囲から逸脱することなく、本発明に様々な変更および修正を加えることができることが理解されよう。
図1
図2
【図 】
図2A
図3
図4
図5