(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】化合物、化合物を含有するゴム混合物、ゴム混合物を含む少なくとも1つの構成要素を有する車両用タイヤ、化合物の生成方法、並びに、老化保護剤及び/又は酸化防止剤及び/又はオゾン分解防止剤及び/又は染料としての化合物の使用
(51)【国際特許分類】
C07C 215/82 20060101AFI20240814BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20240814BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20240814BHJP
C08K 5/18 20060101ALI20240814BHJP
C07C 213/00 20060101ALI20240814BHJP
C07C 213/08 20060101ALI20240814BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
C07C215/82 CSP
C08L21/00
C08L9/00
C08K5/18
C07C213/00
C07C213/08
B60C1/00 A
B60C1/00 B
B60C1/00 Z
(21)【出願番号】P 2023519832
(86)(22)【出願日】2021-09-29
(86)【国際出願番号】 DE2021200132
(87)【国際公開番号】W WO2022069002
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】102020212507.4
(32)【優先日】2020-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510156561
【氏名又は名称】コンチネンタル・ライフェン・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【住所又は居所原語表記】Continental-Plaza 1,30175 Hannover,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ヤーコプ・アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ダウアー・ダーヴィット-ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】シュトローマイアー・ユリアン
(72)【発明者】
【氏名】ドライアー・アンナ-レーナ
(72)【発明者】
【氏名】レッカー・カルラ
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー・イェルク-アウグスト
(72)【発明者】
【氏名】マッツ・フローリアーン
(72)【発明者】
【氏名】グラーフ・レベッカ
(72)【発明者】
【氏名】フロールマン・ヤン
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-530464(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00617004(EP,A1)
【文献】米国特許第06770785(US,B1)
【文献】西独国特許出願公告第01220124(DE,B)
【文献】特開2003-96032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 215/82
C08L 21/00
C08L 9/00
C08K 5/18
C07C 213/00
C07C 213/08
B60C 1/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I)の化合物:
【化1】
。
【請求項2】
請求項1に記載の式I)の化合物
と少なくとも1種の充填材とを含有するゴム混合物
であって、前記充填材が30~500phrのシリカを含み、前記シリカの量が充填材総量に基づいて50重量%超である、ゴム混合物。
【請求項3】
少なくとも1種のジエンゴムを含有することを特徴とする、請求項2に記載のゴム混合物。
【請求項4】
天然ポリイソプレン(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエンゴム(BR)、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)、エマルジョン-重合スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)、ブチルゴム(IIR)及びハロブチルゴムからなる群から選択される少なくとも1種のジエンゴムを含有することを特徴とする、請求項3に記載のゴム混合物。
【請求項5】
少なくとも1つの構成要素中に、請求項2~4のいずれか一項に記載のゴム混合物を含む車両用タイヤ。
【請求項6】
少なくとも1つの外部構成要素中に請求項2~4のいずれか一項に記載の少なくとも1種のゴム混合物を含有
することを特徴とする、請求項5に記載の車両用タイヤ。
【請求項7】
前記外部構成要素が、トレッド、サイドウォール及び/又はフランジプロファイルであることを特徴とする、請求項6に記載の車両用タイヤ。
【請求項8】
請求項1に記載の式I)の化合物の生成プロセスであって、少なくとも以下のプロセスステップ:
a)式A)の物質
【化2】
を提供するステップ;
b)メチルイソブチルケトン(MIBK)及び水素又はメチルイソブチルケトン(MIBK)及びギ酸を提供するステップ;
c)前記ステップa)に係る物質と前記ステップb)に係る物質とを反応させて、式C)の物質
【化3】
を得るステップ:
d)
ルイス酸又はブレンステッド酸を提供するステップ;
e)前記式C)の物質と前記ステップd)に係る物質とを反応させて、前記式I)の物質
【化4】
を得るステップ
を含む、生成プロセス。
【請求項9】
前記ルイス酸が、三臭化ホウ素(BBr
3
)、三塩化アルミニウム(AlCl
3
)、三臭化アルミニウム(AlBr
3
)、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート(BF
3
*
OEt
2
)および塩化第二スズ(SnCl
4
)からなる群から選択され、前記ブレンステッド酸が、ヨウ化水素(HI)および臭化水素(HBr)からなる群から選択される、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
請求項1に記載の式I)の化合物の生成プロセスであって、少なくとも以下のプロセスステップ:
a1)式A)の物質
【化5】
を提供するステップ;
b1)
ルイス酸又はブレンステッド酸を提供するステップ;
c1)前記ステップa1)に係る物質と前記ステップb1)に係る物質とを反応させて、式C1)の物質
【化6】
を得るステップ;
d1)メチルイソブチルケトン(MIBK)及び水素を提供するステップ;
e1)前記式C1)の物質と、ステップd1)に係るメチルイソブチルケトン(MIBK)とを反応させて、前記式I)の物質
【化7】
を得るステップ
を含む、生成プロセス。
【請求項11】
前記ルイス酸が、三臭化ホウ素(BBr
3
)、三塩化アルミニウム(AlCl
3
)、三臭化アルミニウム(AlBr
3
)、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート(BF
3
*
OEt
2
)および塩化第二スズ(SnCl
4
)からなる群から選択され、前記ブレンステッド酸が、ヨウ化水素(HI)および臭化水素(HBr)からなる群から選択される、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
車両用タイヤ及び/又は技術的ゴム物品における、老化安定剤及び/又はオゾン分解防止剤としての請求項
2に記載の
ゴム混合物の使用。
【請求項13】
ゴム物品を製造するための請求項
2に記載の
ゴム混合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、化合物を含有するゴム混合物、少なくとも1つの構成要素中にゴム混合物を含む車両用タイヤ、化合物の生成プロセス、並びに、老化安定剤及び/又は酸化防止剤及び/又はオゾン分解防止剤及び/又は染料としての化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用タイヤ及び技術的ゴム物品は、特にゴムなどの高分子材料を採用していることが公知である。
【0003】
長期にわたる保管の場合、並びに、特に、度々高温である目的用途では、天然ゴム及び合成ポリマー(IR、BR、SBR、ESBR等など)、さらに天然及び合成油、脂肪及び潤滑剤は、本来の所望の特性に悪影響を及ぼす酸化反応に供される。ポリマーの種類に応じて、ポリマー鎖は、材料が液化するまで、又は、材料のその後の硬化が生じるまで短くなってしまう。
【0004】
従って、老化安定剤は、車両用タイヤ及び他の技術的ゴム物品の耐久性において決定的な役割を果たす。
【0005】
公知の老化安定剤は、芳香族アミン、例えば6-PPD(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)、IPPD(N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)又はSPPD(N-(1-フェニルエチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)である。
【0006】
これらの分子は、酸素若しくはオゾン、又は、アルキル、アルコキシ及びアルキルペルオキシラジカルなどの形成されるフリーラジカルと反応可能であり、これによりこれらを掃去し、従って、ゴム等をさらなる酸化反応から保護するものである。
【0007】
特にオゾンと反応してその掃去を達成する老化安定剤は、「オゾン分解防止剤」とも呼ばれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来技術に基づく車両用タイヤ又は他の技術的ゴム物品における向上した保護効果を達成するために、特に、これらの物品における老化安定剤として使用可能である新規化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、請求項1に記載の本発明の化合物により、化合物を含有する本発明のゴム混合物により、また、少なくとも1つの構成要素中に本発明のゴム混合物を含む本発明の車両用タイヤにより達成される。この目的はさらに、化合物の生成プロセスにより、並びに、老化安定剤及び/又は酸化防止剤及び/又はオゾン分解防止剤としての化合物の使用により達成される。
【0010】
請求項1に記載の化合物はさらに、染料として使用され得る。
【0011】
請求項1に記載の化合物は、式I):
【化1】
を有する。
【0012】
従って、式I)の化合物は、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-p-ヒドロキシフェニル-p-フェニレンジアミンである。
【0013】
公知の老化安定剤6PPD又はIPPDと比して、式I)の化合物は、おそらくはヒドロキシル基により酸素、オゾン又はフリーラジカル(上記を参照のこと)に対して高い反応性を示し、その結果、式I)の化合物は、特に車両用タイヤ及び他の技術的ゴム物品において、さらには油及び潤滑剤においても向上した保護効果を達成するものである。
【0014】
しかしながら、本発明は、特定の作用メカニズム又は特定の説明に拘束されるべきではない。
【0015】
独国特許第1220124号明細書には、式S1)の化合物:
【化2】
が開示されている。
【0016】
式S1)の化合物と比して、本発明の式I)の化合物は、ヒドロキシル基の形態でさらなる水素供与体を有し、それ故、式I)の化合物によるさらなるフリーラジカルの掃去を可能とする。
【0017】
例えばフェノールと芳香族アミンといった異なる老化安定剤クラスの組み合わせもまた、中国特許第105272892号明細書及び中国特許第107935867号明細書から公知である。しかしながら、個々のユニットは直接共役されておらず、脂肪族スペーサによって常に離間されている。それ故、基の間において直接的な影響/相互作用は存在しない。本発明の式I)の化合物は従って、同様に、中国特許第105272892号明細書及び中国特許第107935867号明細書の化合物と比して、向上した反応性を有し、それ故、向上した保護効果を有する。
【0018】
米国特許第6770785B1号明細書には、式S2及びS3の化合物
【化3】
が開示されている。
【0019】
式S2)の化合物と比して、本発明の式I)の化合物は、そのユニットが共役されており、それ故、より良好な保護効果がもたらされるという利点を有する。式S2)において、共役は-CH
2-NH部分によって中断されている。
【化4】
【0020】
式S3)の化合物と比して、本発明の式I)の化合物は、外側窒素原子が芳香族基ではなく脂肪族を有し、それ故、オゾンに対してより良好な保護効果をもたらすという利点を有する。
【0021】
外側窒素原子上に、1,3-ジメチルブチル基及び水素原子の代わりに脂肪族又は芳香族基のみを有し、すなわち、水素原子を有さず、且つ、従って窒素原子上で最大限に置換されている化合物/分子は、分子のこの部分が反応性に決定的な影響を有し、且つ、窒素原子から水素原子が排除される可能性が保護効果を共に決定するために、本発明の式I)に係る化合物と比してオゾンに対する劣った保護を同じように示す。
【0022】
本発明の式I)の化合物は、特に、空気ばね、ベローズ、コンベヤベルト、ベルト、駆動ベルト、ホース、ゴムバンド、プロファイル、シール、メンブラン、医療用途若しくはロボット用触感センサー、又は、靴底若しくはその一部、並びに/又は、油及び/若しくは潤滑剤などの車両用タイヤ及び/又は技術的ゴム物品における老化安定剤及び/又はオゾン分解防止剤として特に好適である。
【0023】
本発明の式I)の化合物は、特に、空気ばね、ベローズ、コンベヤベルト、ベルト、駆動ベルト、ホース、ゴムバンド、プロファイル、シール、メンブラン、医療用途若しくはロボット用触感センサー、又は、靴底若しくはその一部といったゴム物品の製造に特に好適である。
【0024】
言及されている物品又は物質において式I)に係る化合物を使用するために、前記化合物は、組成物で用いられると共に、前記組成物に組み込まれて用いられる。
【0025】
車両用タイヤ又は他の技術的ゴム物品において、これは、特にゴム混合物である。
【0026】
本発明はさらに、特に燃料又はエンジン用流体などの油及び潤滑剤における式I)の本発明に係る化合物の使用を提供する。本発明に係る化合物は従って、エンジンにおいて採用され得る。
【0027】
本発明はさらに、繊維及び/若しくはポリマー及び/若しくは紙における染料、並びに/又は、塗料及びコーティングにおける染料としての本発明の式I)に係る化合物の使用を提供する。
【0028】
それ故、本発明はさらに、ゴム混合物を提供する。
【0029】
本発明に係るゴム混合物は、式I)の化合物を含有する。本発明に係るゴム混合物は、原理上は、本発明の式I)の新規化合物が老化安定化及び/又はオゾン分解防止効果を介して特性の向上、特に耐久性の増大を達成する、いずれかのゴム混合物であり得る。
【0030】
本発明のゴム混合物は、少なくとも1種のゴムを含有する。
【0031】
本発明に係るゴム混合物が、0.1~10phr、特に好ましくは0.1~5phr、きわめて特に好ましくは1~5phrの式I)の化合物を含有する場合が好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【発明を実施するための形態】
【0033】
本書面において用いられている単位「phr」(ゴム100重量部当りの部)は、ゴム産業における混合物処方に係る量の従来の表示である。本書面において、個別の物質の重量部の投与量は、混合物中に存在するすべての高分子量(20000g/mol超のMw)であり、従って、固体のゴムの総質量100重量部に基づく。
【0034】
本発明の有利な実施形態において、本発明に係るゴム混合物は少なくとも1種のジエンゴムを含有する。
【0035】
従って、ゴム混合物は、ジエンゴム、又は、2種以上の異なるジエンゴムの混合物を含有し得る。
【0036】
ジエンゴムは、ジエン及び/又はシクロアルケンの重合又は共重合により形成され、それ故、主鎖又は側基のいずれかにおいてC=C二重結合を有するゴムである。
【0037】
ジエンゴムは、好ましくは、天然ポリイソプレン(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、エポキシ化ポリイソプレン(ENR)、ブタジエンゴム(BR)、ブタジエン-イソプレンゴム、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)、エマルジョン-重合スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)、スチレン-イソプレンゴム、20000g/mol超の分子量Mwを有する液体ゴム、ハロブチルゴム、ポリノルボルネン、イソプレン-イソブチレンコポリマー、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、アクリレートゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ポリスルフィドゴム、エピクロロヒドリンゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエンターポリマー、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム及び水素化スチレン-ブタジエンゴムからなる群から選択される。
【0038】
ニトリルゴム、水素化アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ハロブチルゴム及び/又はエチレン-プロピレン-ジエンゴムは、特に、ベルト、駆動ベルト及びホース、並びに/又は、靴底などの技術的ゴム物品の製造において用いられる。充填材、可塑剤、加硫系及び添加剤の観点において特異的であるこれらのゴムについて当業者に公知である混合組成物が採用されることが好ましい。
【0039】
すべての実施形態の天然及び/又は合成ポリイソプレンは、cis-1,4-ポリイソプレン又は3,4-ポリイソプレンであり得る。しかしながら、>90重量%のcis-1,4割合を有するcis-1,4-ポリイソプレンの使用が好ましい。第一に、このようなポリイソプレンは、チーグラーナッタ触媒を伴うか、又は、微細なリチウムアルキルを用いる溶液中における立体特異的重合により入手可能である。第二に、天然ゴム(NR)は、天然ゴム中のcis-1,4含有量が99重量%超である、このようなcis-1,4-ポリイソプレンである。
【0040】
1種以上の天然ポリイソプレンと1種以上の合成ポリイソプレンとの混合物もさらに考慮される。
【0041】
本発明の文脈において、「天然ゴム」という用語は、ヘベア(Hevea)ゴムの木から、及び、「非ヘベア(Hevea)」供給源から入手され得る天然ゴムを意味すると理解されるべきである。非ヘベア(Hevea)供給源としては、例えば、グアユール低木、及び、例えばTKS(ロシアタンポポ((Taraxacum kok-saghyz);ロシアタンポポ)などのタンポポが挙げられる。
【0042】
本発明のゴム混合物がブタジエンゴム(すなわちBR、ポリブタジエン)を含有する場合、これは、当業者に公知であるいずれの種類であってもよい。これらは高-cis及び低-cisタイプと呼ばれるものを含み、ここで、90重量%以上のcis含有量を有するポリブタジエンは高-cisタイプと称され、90重量%未満のcis含有量を有するポリブタジエンは低-cisタイプと称される。低-cisポリブタジエンの一例は、20%~50重量%のcis含有量を有するLi-BR(リチウム触媒ブタジエンゴム)である。高-cis BRでは、ゴム混合物において特に良好な特性及び低ヒステリシスが達成される。
【0043】
採用されるポリブタジエンは、変性及び官能化で末端基-変性されていてもよく、及び/又は、ポリマー鎖に沿って官能基化されていてもよい。変性は、ヒドロキシル基及び/又はエトキシ基及び/又はエポキシ基及び/又はシロキサン基及び/又はアミノ基及び/又はアミノシロキサン及び/又はカルボキシル基及び/又はフタロシアニン基及び/又はシラン-スルフィド基による変性から選択され得る。しかしながら、官能化としても公知である当業者に公知である他の変性もまた好適である。金属原子がこのような官能化の構成成分であってもよい。
【0044】
少なくとも1種のスチレン-ブタジエンゴム(スチレン-ブタジエンコポリマー)がゴム混合物中に存在している場合、これは、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)又はエマルジョン-重合スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)であり得、少なくとも1種のSSBR及び少なくとも1種のESBRの混合物もまた採用可能である。「スチレン-ブタジエンゴム」及び「スチレン-ブタジエンコポリマー」という用語は、本発明の文脈において同義に用いられている。
【0045】
用いられるスチレン-ブタジエンコポリマーは、ポリブタジエンについて上記に言及されている変性及び官能化により、ポリマー鎖に沿って末端基-変性及び/又は官能基化されていてもよい。
【0046】
少なくとも1種のジエンゴムは、天然ポリイソプレン(NR、天然ゴム)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエンゴム(BR)、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)、エマルジョン-重合スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)、ブチルゴム(IIR)及びハロブチルゴムからなる群から選択されることが好ましい。
【0047】
本発明の特に好ましい実施形態において、少なくとも1種のジエンゴムは、天然ポリイソプレン(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエンゴム(BR)、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)及びエマルジョン-重合スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)からなる群から選択される。
【0048】
本発明の特定の有利な実施形態において、ゴム混合物は、少なくとも1種の天然ポリイソプレン(NR)を、好ましくは、5~55phrの量で、及び、本発明の特定の有利な一実施形態においては、5~25phr、きわめて特に好ましくは5~20phrの量で含む。このようなゴム混合物は、良好な加工性及び加硫戻り安定性及び最適化された引裂き特性及び最適な転がり抵抗特徴を示す。
【0049】
本発明の特定の有利な実施形態において、ゴム混合物は、少なくとも1種のポリブタジエン(BR、ブタジエンゴム)を、好ましくは、10~80phr、特に好ましくは10~50phrの量、及び、本発明の特定の有利な実施形態においては、15~40phrの量で含む。これにより、本発明に係るゴム混合物の特に良好な引裂き及び摩耗特性、並びに、最適な制動特徴が達成される。
【0050】
本発明の特定の有利な実施形態において、ゴム混合物は、少なくとも1種の溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)を、好ましくは、10~80phr、特に好ましくは30~80phrの量、及び、本発明の特定の有利な一実施形態においては、50~70phrの量で含む。これにより、本発明に係るゴム混合物の特に良好な転がり抵抗特性が達成される。本発明の特に有利な実施形態において、SSBRは、最適で、且つ、バランスのとれた特性プロファイルを達成するために、少なくとも1種のさらなるゴムとの組み合わせで採用される。
【0051】
ゴム混合物が、少なくとも1種の充填材を、好ましくは、30~500phr、特に好ましくは50~400phrの量、次いで、好ましくは80~300phrの量で含有する場合が好ましい。
【0052】
本発明の有利な実施形態において、充填材は、カーボンブラック及びシリカからなる群から選択されることが好ましい補強用充填材である。
【0053】
本発明の特に有利な実施形態において、ゴム混合物は、充填材として、少なくとも1種のシリカを、好ましくは、30~500phr、特に好ましくは50~400phrの量、次いで、好ましくは80~300phrの量で含有する。
【0054】
これらの量では、シリカは特に、単独又は主充填材(充填材総量に基づいて50重量%超)として存在する。
【0055】
本発明のさらなる有利な実施形態において、ゴム混合物は、少なくとも1種のシリカを、さらなる充填材として、好ましくは、5~100phr、特に好ましくは5~80phr、次いで、好ましくは10~60phrの量で含有する。
【0056】
これらの量では、シリカは特に、特にカーボンブラックなどの他の主充填材に追加して、さらなる充填材として存在する。
【0057】
シリカは、タイヤゴム混合物のための充填材として好適である、当業者に公知であるシリカのいずれかの種類であり得る。しかしながら、35~400m2/g、好ましくは35~350m2/g、より好ましくは85~320m2/g、及び、もっとも好ましくは120~235m2/gの窒素表面積(BET表面積)(DIN ISO9277及びDIN66132に準拠)、並びに、30~400m2/g、好ましくは30~330m2/g、より好ましくは80~300m2/g、及び、もっとも好ましくは115~200m2/gのCTAB表面積(ASTM D3765に準拠)を有する微細な沈降シリカの使用が特に好ましい。このようなシリカは、例えばタイヤトレッド用のゴム混合物において、加硫ゴムの特に良好な物理特性をもたらす。混合時間の短縮による混合物の加工における利点もまた、同一の生成物特性を保持しながらもたらされることが可能であり、向上した生産性がもたらされる。用いられるシリカはそれ故、例えば、Evonik製のUltrasil(登録商標)VN3タイプ(商品名)、又は、HDシリカとして知られる高分散シリカ(例えば、Solvay製のZeosil(登録商標)1165 MP)であり得る。
【0058】
例えばBET表面積が異なる少なくとも2種の異なるシリカが本発明のゴム混合物に存在している場合、記載の量に係る数値は、存在するすべてのシリカの総量を指す。
【0059】
「ケイ酸」及び「シリカ」という用語は、本発明の文脈において同義に用いられている。
【0060】
ゴム混合物は、特にカーボンブラック、特に産業用カーボンブラック若しくは熱分解カーボンブラックなどのさらなる充填材、又は、さらなる補強用又は非補強用充填材を追加で含有していてもよい。
【0061】
本発明の文脈において、さらなる(非補強用)充填材としては、アルミノケイ酸塩、カオリン、チョーク、デンプン、酸化マグネシウム、二酸化チタン、又はゴムゲル及び繊維(例えばアラミド繊維、ガラスファイバー、炭素繊維、セルロース繊維)が挙げられる。
【0062】
さらに、任意に、補強用として、充填材は、例えばカーボンナノチューブ((CNT)であって、離散CNT、中空炭素繊維(HCF)、及び、ヒドロキシ、カルボキシ及びカルボニル基などの官能基の1つ以上を含有する変性CNTを含む)、グラファイト、及び、グラフェンであり、「炭素-シリカ二相充填材」として知られているものである。
【0063】
本発明の文脈において、酸化亜鉛は充填材に含まれない。
【0064】
本発明の特に有利な実施形態において、本発明に係るゴム混合物は、0.1~60phr、好ましくは3~40phr、特に好ましくは5~30phr、きわめて特に好ましくは5~15phrの少なくとも1種のカーボンブラックを含有する。これらの量では、カーボンブラックは特に、特にシリカなどの主充填材に追加して、さらなる充填材として存在する。
【0065】
本発明のさらなる有利な実施形態において、本発明に係るゴム混合物は、30~300phr、好ましくは30~200phr、特に好ましくは40~100phrの少なくとも1種のカーボンブラックを含有する。これらの量では、カーボンブラックは、単独又は主充填材として存在しており、従って、任意に、上記の下限側の量でシリカと組み合わせで存在している。
【0066】
好適なカーボンブラックは、当業者に知られているいずれかのカーボンブラックタイプを含む。
【0067】
一実施形態において、カーボンブラックは、30~250g/kg、好ましくは30~180g/kg、特に好ましくは40~180g/kg、及び、さらに特に好ましくは80~150g/kgのヨウ素吸着量としても知られているASTM D1510に準拠したヨウ素価、並びに、30~200ml/100g、好ましくは70~200ml/100g、特に好ましくは90~200ml/100gのASTM D2414に準拠したDBP値を有する。
【0068】
ASTM D2414に準拠したDBP値は、カーボンブラック又は淡色の充填材の、フタル酸ジブチルに係る特定の吸収体積を判定する。
【0069】
特に車両用タイヤのための、ゴム混合物中におけるこのような種類のカーボンブラックの使用により、耐摩耗性と蓄熱との間における最適な妥協が保証され、これは、次いで、生態学的に関連する転がり抵抗に影響する。ここで、それぞれゴム混合物においてカーボンブラックは1種類のみが使用されることが好ましいが、種々のカーボンブラックをゴム混合物に混合することも可能である。
【0070】
本発明の特定の有利な実施形態において、ゴム混合物は、5~60phr、特に好ましくは5~40phrの少なくとも1種のカーボンブラック、及び、50~300phr、好ましくは80~200phrの少なくとも1種のシリカを含有する。
【0071】
ゴム混合物はさらに、慣習的な添加剤を慣習的な重量部で含有可能であり、これらは、好ましくは、前記混合物の生成最中における少なくとも1つの一次混合ステージにおいて添加される。これらの添加剤としては以下を含む。
a)例えば、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(6PPD)、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(DPPD)、N,N’-ジトリル-p-フェニレンジアミン(DTPD)、N-(1,4-ジメチルペンチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(7PPD)、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(IPPD)などのジアミン、又は、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン(TMQ)などのジヒドロキノリンといった従来技術において公知である老化安定剤、
b)例えば酸化亜鉛及び脂肪酸(例えばステアリン酸)といった活性化剤、並びに/又は、例えば亜鉛エチルヘキサノエートといった亜鉛錯体などの他の活性化剤、
c)活性化剤及び/又は充填材の結合剤、特にカーボンブラック又はシリカ、例えばS-(3-アミノプロピル)チオ硫酸及び/又はその金属塩(カーボンブラックの結合)及びシランカップリング剤(シリカの結合)、
d)オゾン分解防止剤ワックス、
e)樹脂、特に内部タイヤ構成要素用の粘着性樹脂、
f)例えば2,2’-ジベンズアミドジフェニルジスルフィド(DBD)といった素練り助剤、並びに
g)特に脂肪酸エステル及び金属セッケン、例えば亜鉛セッケン及び/又はカルシウムセッケンなどの加工助剤、
h)特に芳香族、ナフテン又はパラフィン鉱油可塑剤、例えばMES(軽度抽出溶媒和物(mild extraction solvate))又はRAE(残留芳香族抽出物(residual aromatic extract))又はTDAE(処理済み蒸留芳香族抽出物(treated distillate aromatic extract))、又は、ゴム-液体油(RTL)若しくはバイオマス-液体油(BTL)(好ましくは、方法IP346で3重量%未満の多環式芳香族化合物の含有量を有する)、又は、トリグリセリド、例えばナタネ油又はファクチス又は炭化水素樹脂又は500~20000g/molの平均分子量(BS ISO11344:2004に準拠した、GPC=ゲルパーミエーションクロマトグラフィによる測定)を有する液体ポリマーなどの可塑剤。
【0072】
鉱油を用いる場合、これは、DAE(蒸留芳香族抽出物(distillate aromatic extracts))及び/又はRAE(残留芳香族抽出物(residual aromatic extract))及び/又はTDAE(処理済み蒸留芳香族抽出物(treated distillate aromatic extract))及び/又はMES(軽度抽出溶剤(mild extracted solvents))及び/又はナフテン油からなる群から選択されることが好ましい。
【0073】
特に有利な実施形態において、本発明に係るゴム混合物は、式I)の本発明の化合物に追加して、p-フェニレンジアミン(上記のリストa)を参照のこと)の群からさらなる老化安定剤を含有しない。特に好ましい実施形態において、本発明に係るゴム混合物は特に、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(6PPD)、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(DPPD)、N,N’-ジトリル-p-フェニレンジアミン(DTPD)、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(IPPD)、N-(1,4-ジメチルペンチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(7PPD)を含む群から、特に好ましくは、これらからなる群から選択されるジアミン系のさらなる老化安定剤を、0~0.1phr、特に0phrで含有する。
【0074】
好ましくは、本発明に従って存在する、きわめて少量の(0~0phr)、特に好ましくは0phrの上記のジアミン及び式I)の化合物は、向上した保護効果の達成を可能とする。本発明の式I)の化合物は、従来技術において公知である言及されたフェニレンジアミンを置き換えるものである。
【0075】
本発明のさらなる有利な実施形態において、言及されたジアミン老化安定剤の少なくとも1種のさらなる代表が存在しており、従って、本発明に係る化合物は、従来技術において公知であるジアミンを部分的にのみ置き換える。これはまた、最適な程度に至らないだけで、本発明に係る利点を達成する。
【0076】
有利な実施形態において、TMQなどのジヒドロキノリン系の老化安定剤が、本発明の式I)の化合物に追加してゴム混合物に存在する。特にTMQなどの、存在するジヒドロキノリンの量は、好ましくは0.1~3、特に0.5~1.5phrである。
【0077】
さらなる有利な実施形態において、本発明に係るゴム混合物は、さらなる老化安定剤を含有せず、すなわち、本発明の式I)の化合物以外のさらなる老化安定剤は0phrである。
【0078】
シランカップリング剤は、当業者に公知である任意の種類のものである。
【0079】
さらに、1種以上の異なるシランカップリング剤を互いに組み合わせて使用し得る。それ故、ゴム混合物は異なるシランの混合物を含有し得る。
【0080】
シランカップリング剤は、ゴム/ゴム混合物の混合中(インサイチュ)、又は、充填材のゴムへの添加前においても前処理(前変性)下において、シリカの表面シラノール基又は他の極性基と反応する。
【0081】
従来技術から知られているカップリング剤は、ケイ素原子上の脱離基として少なくとも1つのアルコキシ、シクロアルコキシ又はフェノキシ基を有すると共に、おそらくは開裂後に、ポリマーの二重結合との化学反応に進行可能である他の官能基を有する二官能性オルガノシランである。後者における基は、例えば以下の化学基を含み得る:
-SCN、-SH、-NH2又は-Sx-(ここで、x=2~8)。
【0082】
採用可能なシランカップリング剤としては、それ故、例えば、2~8個の硫黄原子を有する、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-チオシアナトプロピルトリメトキシシラン又は3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド、例えば3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(TESPT)、対応するジスルフィド(TESPD)、又は、1~8個の硫黄原子を有するスルフィドと内容の異なる種々のスルフィドとの他の混合物が挙げられる。TESPTはまた、例えばカーボンブラックとの混合物として添加され得る(商品名X50S(登録商標)、Evonik製)。
【0083】
例えば国際公開第99/09036号パンフレットから公知であるブロック型メルカプトシランもまた、シランカップリング剤として使用し得る。国際公開第2008/083241 A1号パンフレット、国際公開第2008/083242 A1号パンフレット、国際公開第2008/083243 A1号パンフレット、及び、国際公開第2008/083244 A1号パンフレットに記載のシランを用いることも可能である。例えば、NXTの名称で多数の変異形でMomentive(USA)から市販されているシラン、又は、VP Si 363(登録商標)の名称でEvonik Industriesにより市販されているものを使用することも可能である。
【0084】
さらなる添加剤の合計割合は、好ましくは3~150phr、より好ましくは3~100phr、及び、もっとも好ましくは5~80phrである。
【0085】
酸化亜鉛(ZnO)が、さらなる添加剤の合計割合に上記の量で含まれていてもよい。
【0086】
これは、当業者に公知であるいずれかの種類の酸化亜鉛、例えばZnO顆粒又は粉末であり得る。従来用いられる酸化亜鉛は一般に、10m2/g未満のBET表面積を有する。しかしながら、例えば「ナノ酸化亜鉛」と呼ばれる、10~100m2/gのBET表面積を有する酸化亜鉛を用いることも可能である。
【0087】
本発明に係るゴム混合物は、好ましくは、加硫形態で、特に車両用タイヤ又は他の加硫技術的ゴム物品において用いられる。
【0088】
本発明のゴム混合物の加硫は、好ましくは、加硫促進剤の補助を伴って、硫黄及び/又は硫黄ドナーの存在下に実施され、いくつかの加硫促進剤は同時に硫黄ドナーとして作用することが可能である。促進剤は、チアゾール促進剤及び/又はメルカプト促進剤及び/又はスルフェンアミド促進剤及び/又はチオカルバメート促進剤及び/又はチウラム促進剤及び/又はチオホスフェート促進剤及び/又はチオ尿素促進剤及び/又はキサントゲン酸塩促進剤及び/又はグアニジン促進剤からなる群から選択される。
【0089】
N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)及び/又はN,N-ジシクロヘキシルベンゾチアゾール-2-スルフェンアミド(DCBS)及び/又はベンゾチアジル-2-スルフェノモルホリド(MBS)及び/又はN-tert-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(TBBS)からなる群から選択されるスルフェンアミド促進剤、又は、グアニジンジフェニルグアニジン(DPG)などの促進剤の使用が好ましい。
【0090】
用いられる硫黄ドナー物質は、当業者に公知であるいずれかの硫黄ドナー物質であり得る。ゴム混合物が硫黄ドナー物質を含有する場合、後者は、好ましくは、例えばチウラムジスルフィド、例えばテトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)及び/又はテトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)及び/又はテトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、及び/又は、チウラムテトラスルフィド、例えばジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、及び/又は、ジチオリン酸塩、例えばDipDis(ビス(ジイソプロピル)チオホルホリルジスルフィド)及び/又はビス(O,O-2-エチルヘキシルチオホルホリル)ポリスルフィド(例えばRhenocure SDT 50(登録商標)、Rheinchemie GmbH)及び/又はジクロリルジチオリン酸亜鉛(例えばRhenocure ZDT/S(登録商標)、Rheinchemie GmbH)及び/又はアルキルジチオリン酸亜鉛、及び/又は、1,6-ビス(N,N-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン及び/又はジアリールポリスルフィド及び/又はジアルキルポリスルフィドを含む群から選択される。
【0091】
例えば商品名Vulkuren(登録商標)、Duralink(登録商標)若しくはPerkalink(登録商標)で入手可能であるものなどのさらなるネットワーク形成系、又は、国際公開第2010/049216 A2号パンフレットに記載のネットワーク形成系もまた、ゴム混合物において使用可能である。この系は、4個超の官能基と少なくとも1種の加硫促進剤とを架橋する加硫剤を含有する。
【0092】
促進剤TBBS及び/又はCBS及び/又はジフェニルグアニジン(DPG)を用いることが特に好ましい。
【0093】
加硫遅延剤がゴム混合物中に存在していてもよい。
【0094】
「加硫」及び「架橋」という用語は、本発明の文脈において同義に用いられている。
【0095】
本発明の好ましい展開において、複数の促進剤が、硫黄-架橋性ゴム混合物の生成中における最終混合ステージにおいて添加される。
【0096】
本発明の硫黄-架橋性ゴム混合物は、ゴム産業において慣習的であるプロセスにより生成され、ここでは、1つ以上の混合ステージにおいて、加硫系(硫黄及び加硫に影響を及ぼす物質)を除くすべての構成成分を含むベース混合物が先ず生成される。最終混合物は、最終混合ステージにおいて加硫系を添加することにより生成される。最終混合物は、例えばさらに加工され、及び、押出し成形操作又はカレンダ加工によって適切な形状とされる。
【0097】
加硫によるさらなる加工が続き、ここで、本発明の文脈において添加される加硫系により硫黄架橋が行われる。
【0098】
上記の本発明のゴム混合物は、車両用タイヤ、特に空気式車両用タイヤにおける使用に特に好適である。
【0099】
車両用タイヤにおける使用のために、加硫前の最終混合物としての混合物は、好ましくはトレッドの形状とされ、車両用グリーンタイヤの製造中に公知の方法で適用される。
【0100】
車両用タイヤにおけるサイドウォール又は他の本体混合物として使用される本発明のゴム混合物の生成は、既述のとおり実施される。混合物の押出し成形操作/カレンダ加工後の成形に違いが存在する。このように得られた、1つ以上の異なる本体混合物用のまだ加硫されていないゴム混合物の形状が、次いで、グリーンタイヤの製造に供される。
【0101】
ここで、「本体混合物」とは、基本的にスキージ、内側ライナ(内側層)、コアプロファイル、ベルト、ショルダー、ベルトプロファイル、カーカス、ビード補強、ビードプロファイル、フランジプロファイル及びバンデージなどのタイヤの内側構成要素のためのゴム混合物を指す。まだ加硫されていないグリーンタイヤがその後加硫される。
【0102】
駆動ベルト及び他のベルト、特にコンベヤベルトにおける本発明のゴム混合物の使用のために、押し出しされた、まだ加硫されていない混合物が適切な形状とされ、度々、同時に、又は、その後、補強部材、例えば合成繊維又はスチールコードが設けられる。これにより、通常、ゴム混合物の1つ及び/又はそれ以上のプライ、同等及び/又は異なる補強部材の1つ及び/又はそれ以上のプライ、並びに、同一及び/又は他のゴム混合物の1つ及び/又はそれ以上のさらなるプライからなるマルチプライ構造が得られる。
【0103】
本発明はさらに、少なくとも1つの構成要素中に本発明に係る化合物を含有する本発明に係るゴム混合物を含む車両用タイヤを提供する。
【0104】
加硫車両用タイヤは、少なくとも1つの構成要素中に、本発明に係る少なくとも1種のゴム混合物の加硫ゴムを含む。例えば存在するゴムといったほとんどの物質が、混合後既に、又は、加硫後においてのみ化学的に改変された形態で存在するか、存在し得ることを当業者は認識する。
【0105】
本発明の文脈において、「車両用タイヤ」は、産業用タイヤ、並びに、建設現場用車両、トラック、車及び二輪車両用タイヤを含む、空気式車両用タイヤ及び固体ゴムタイヤを意味すると理解されるべきである。
【0106】
本発明に係る車両用タイヤは、好ましくは、少なくとも1つの外部構成要素中に本発明に係るゴム混合物を含み、ここで、外部構成要素は、好ましくは、トレッド、サイドウォール及び/又はフランジプロファイルである。
【0107】
本発明に係る車両用タイヤは、それ故、任意に適合された組成の2つ以上の構成要素に本発明の式I)の化合物を含有する本発明に係るゴム混合物をも含み得る。
【0108】
本発明はさらに、式I)の化合物の生成プロセスを提供し、ここで、プロセスは、少なくとも以下のプロセスステップを含む。
a)式A)の物質
【化5】
を提供するステップ;
b)メチルイソブチルケトン(MIBK)及び水素又はメチルイソブチルケトン(MIBK)及びギ酸を提供するステップ;
c) ステップa)に係る物質とステップb)に係る物質とを、好ましくは、水素化触媒の存在下に反応させて、式C)の物質
【化6】
を得るステップ:
d)特に三臭化ホウ素(BBr
3)、三塩化アルミニウム(AlCl
3)、三臭化アルミニウム(AlBr
3)、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート(BF
3
*OEt
2)若しくは塩化第二スズ(SnCl
4)などのルイス酸、又は、特にヨウ化水素(HI)若しくは臭化水素(HBr)などのブレンステッド酸を提供するステップ;
e)式C)の物質とステップd)に係る物質とを反応させて、式I)の物質
【化7】
を得るステップ。
【0109】
ステップb)において、代替的なメチルイソブチルケトン(MIBK)及び水素が、MIBK及びギ酸よりも好ましい。
【0110】
ステップc)に存在する式C)の物質が、特にジクロロメタン(DCM)又はクロロホルム(CHCl3)などの好ましくは非プロトン性溶剤といった有機溶剤中に溶解され、次いで、ステップe)に従って反応に供されることが好ましい。
【0111】
本発明はさらに、式I)の化合物を生成するためのさらなるプロセスを提供し、ここで、プロセスは、少なくとも以下のプロセスステップを含む。
a1)式A)の物質
【化8】
を提供するステップ;
b1)特に三臭化ホウ素(BBr
3)、三塩化アルミニウム(AlCl
3)、三臭化アルミニウム(AlBr
3)、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート(BF
3
*OEt
2)若しくは塩化第二スズ(SnCl
4)などのルイス酸、又は、特にヨウ化水素(HI)若しくは臭化水素(HBr)などのブレンステッド酸を提供するステップ;
c1)ステップa1)に係る物質とステップb1)に係る物質とを反応させて、式C1)の物質
【化9】
を得るステップ;
d1)メチルイソブチルケトン(MIBK)及び水素を提供するステップ;
e1)式C1)の物質とステップd1)に係る物質とを、好ましくは、水素化触媒の存在下に反応させて、式I)の物質
【化10】
を得るステップ。
【0112】
水素との反応が、本発明の文脈において「水素化触媒」と称される好適な触媒を採用して実施されるプロセスステップが好ましい。
【0113】
プロセス(ステップc)/e1))の水素化触媒は、好ましくは、特にパラジウム(Pd)又は白金(Pt)などの貴金属触媒である。貴金属は、好ましくは、パラジウム炭素(Pd/C)などのように炭素(C)上で採用される。
【0114】
ラネーニッケル又は亜クロム酸銅などの他の公知の触媒を採用することも可能である。
【0115】
パラジウム炭素(Pd/C)が、ステップc)において水素化触媒として用いられることが好ましい。
【0116】
パラジウム炭素(Pd/C)が、ステップe1)において水素化触媒として用いられることが好ましい。
【0117】
水素が用いられるそれぞれのプロセスステップにおける水素圧力は、好ましくは、1~40bar、特に好ましくは10~30bar、きわめて特に好ましくは15~25barである。
【0118】
ステップc)/e1)における水素化反応は、オートクレーブ、特にステンレス鋼オートクレーブ中において実施されることが好ましい。
【0119】
プロセスステップc)及びe1)における温度は、室温(RT、特に20℃)~100℃、特に好ましくは40℃~80℃、きわめて特に好ましくは40℃~70℃であることが好ましい。
【0120】
過度に高い温度では、芳香族構成成分の望ましくない水素化がもたらされてしまう。
【0121】
すべてのプロセスステップであって、特にステップe)及びc1)は、保護ガス雰囲気中において有利に実施される。
【0122】
プロセスステップe)及びc1)は、-78(氷点下七十八)℃~+20℃、特に好ましくは-10℃~+10℃、特に0℃の温度で実施されることが好ましい。
【0123】
プロセスステップe)/c1)における反応は、それぞれの場合において、エーテル開裂である。原理上は、物質C)/A)の所望のエーテル開裂を行い得るいずれかの物質が好適である。エーテル開裂が行われる物質は、本発明の文脈において、「エーテル開裂試薬」とも称される。
【0124】
この目的のために、特に三臭化ホウ素(BBr3)、三塩化アルミニウム(AlCl3)、三臭化アルミニウム(AlBr3)、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート(BF3
*OEt2)若しくは塩化第二スズ(SnCl4)などのルイス酸、又は、特にヨウ化水素(HI)若しくは臭化水素(HBr)などのブレンステッド酸が採用可能であり、ブレンステッド酸は当業者に周知であると共に、そのpKa値によって特徴付けられ得る。
【0125】
Roempp Online Lexikon(URL:https://roempp.thieme.de/lexicon/RD-19-00110?searchterm=s%C3%A4ure)にも開示されているとおり、強ブレンステッド酸は-1.74~4.5のpKaを有し、及び、超強酸は-1.74未満のpKaを有する。
【0126】
本発明の文脈においては、特にヨウ化水素(HI)又は臭化水素(HBr)などの-1.74未満のpKaを有する超強ブレンステッド酸が好ましい。
【0127】
本発明の特に有利な実施形態において、c1)及びe)では、ルイス酸、特に三臭化ホウ素(BBr3)が採用される。
【0128】
式A)の物質及び三臭化ホウ素(BBr3)及びメチルイソブチルケトン(MIBK)は市販されている。BBr3に対する他の言及されている代替もまた市販されている。
【0129】
以下に、実施例を参照して、本発明をより具体的に明確にする。
【実施例】
【0130】
式I)の構成要素を以下のとおり生成した。
【0131】
X1):ステップc)に従うN-(1,3-ジメチルブチル)-N’-p-メトキシフェニル-p-フェニレンジアミン(式C)の化合物)の合成:
【化11】
5.00g(23.3mmol、1当量)の4-(4-メトキシフェニルアミノ)アニリン、2.00gのPd/C(パラジウム炭素C)(5%)(4.67mmolの基材上に0.2g)及び50.0mLのメチルイソブチルケトン(MIBK)を、Teflon製インライナを備えるステンレス鋼製オートクレーブに計量して仕込んだ。次いで、オートクレーブを水素(H
2)で20barに加圧し、60℃で10時間撹拌した。反応が終了した後、過剰量の水素を飛ばし、懸濁液を珪藻土(Celite(登録商標))でろ過し、エタノールで洗浄した。ろ液を乾燥するまで濃縮し、減圧下で乾燥した。残渣をシリカゲル(シクロヘキサン/酢酸エステル100:0→80:20)で精製した。オレンジ色の油;収率5.6g(理論値の80%)。
1H-NMR(500MHz,DMSO-d6)δ=8.09(s,1H),6.94(td,J=7.6,1.5Hz,1H),6.88(dd,J=7.6,1.4Hz,1H),6.69-6.63(m,2H),6.51(d,J=8.4Hz,1H),6.27(dd,J=8.5,2.5Hz,1H),6.21(d,J=2.5Hz,1H),4.82(d,J=8.9Hz,1H),3.30(dt,J=8.6,6.5Hz,1H),1.70(dp,J=13.5,6.7Hz,1H),1.38(dt,J=13.9,7.1Hz,1H),1.16(dt,J=13.5,6.8Hz,1H),1.02(d,J=6.1Hz,3H),0.87(dd,J=19.4,6.6Hz,6H).
13C-NMR(126MHz,DMSO-d6)δ=151.8,143.0,140.0,133.0,120.7,116.0,114.5,113.6,55.2,46.1,45.9,26.3,24.5,22.8,22.6,20.87(46.1及び45.9は鏡像異性体により分割されている)。
ESI-MS(電気スプレー電離質量分光測定)[M+H]
+=299。
【0132】
ステップe)に従うN-(1,3-ジメチルブチル)-N’-p-ヒドロキシフェニル-p-フェニレンジアミン(本発明の式I)の化合物)の合成:
【化12】
アルゴン雰囲気下で、5.70g(19.1mmol、1当量)のN-(1,3-ジメチルブチル)-N’-p-メトキシフェニル-p-フェニレンジアミンを20.0mLの無水ジクロロメタン(DCM)中に溶解し、0℃に冷却した。5.52mL(57.3mmol、5当量)の三臭化ホウ素を15mLの無水DCM中に溶解し、注意深く滴下した。混合物を一晩撹拌し、反応を、保護ガス下に、飽和NaHCO
3溶液の添加による氷冷で終了させた。50mLの酢酸/イソプロパノール3:1混合物を追加で添加した。有機相を、NaHCO
3飽和溶液及びNaCl飽和溶液で洗浄し、MgSO
4で乾燥させた。ろ過が完了したら、溶剤を乾燥するまで濃縮し、減圧下で乾燥した。薄い紫色から青色の固体;収率4.8g(理論値の88%)。
1H-NMR(500MHz,DMSO-d6)δ=8.63(s,1H),6.95(s,1H),6.76(d,J=8.7Hz,2H),6.71(d,J=8.8Hz,2H),6.59(d,J=8.7Hz,2H),6.51-6.44(m,2H),4.71(d,J=8.2Hz,1H),3.40-3.31(d,J=6.9Hz,1H),1.73(dp,J=13.4,6.7Hz,1H),1.49-1.37(m,1H),1.23-1.15(m,1H),1.05(d,J=6.1Hz,3H),0.91(d,J=6.6Hz,3H),0.87(d,J=6.6Hz,3H).
13C-NMR(126MHz,DMSO-d6)δ=149.8,142.5,138.1,133.9,119.9,117.0,115.6,113.3,46.1,45.9,26.3,24.5,22.8,22.6,20.8(46.1及び45.9は異性体により分割されている)。
ESI-MS [M+H]
+=285。
【0133】
ステップc)に係る反応の代替的変形例において、式C)の中間体化合物を以下のとおり生成した。
【0134】
X2):N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-p-メトキシフェニル-p-フェニレンジアミンの合成:
【化13】
保護ガス下に、0.40gのパラジウム炭素(5%)を20mLの無水エタノール及び1.00g(4.67mmol、1当量)の4-(4-メトキシフェニルアミノ)アニリン中に懸濁させ、0.88mL(23.3mmol、5当量)のギ酸(23.3mmol、5当量)及び1.17mL(9.33mmol、2当量)のメチルイソブチルケトンを順次に添加した。混合物を還流下で4時間加熱し、固形分をろ出し、溶剤を減圧下で除去した。残渣をシリカゲルで精製した(シクロヘキサン/酢酸エステル100:0→80:20)。オレンジ色の油;収率1.0g(理論値の73%)。
【0135】
スペクトルは、最初の成績(X1)と等しい。
【0136】
X1)に従うプロセスステップc)の成績は、X2)に従うものと比してより良好な再現性及びより少ない副産物の生成のために好ましい(アミン及びギ酸の反応からの副産物としてのギ酸塩)。
【0137】
本発明の化合物をまた、以下の代替的な合成経路により生成した。
【0138】
ステップc1)に従うN-p-ヒドロキシフェニル-p-フェニレンジアミン(式C1の化合物)の合成:
【化14】
保護ガス下に、20mLの脱気した酢酸及び10mLの臭化水素酸を先ず仕込み、1g(4.67mmol、1当量)の4-(4-メトキシフェニルアミノ)アニリンをその中に溶解し、120℃で24時間撹拌した。溶液をRTとしたら、飽和NaHCO
3溶液で中和し、3:1酢酸エステル/イソプロパノール混合物で抽出した。溶剤を除去し、残渣をシリカゲルで精製した(シクロヘキサン/酢酸エステル1:1)。茶色の固体;収率0.7g(理論値の75%)。
1H-NMR(500MHz,DMSO-d6)δ=8.64(s,1H),6.94(s,1H),6.73-6.68(m,4H),6.59(d,J=8.8Hz,2H),6.48(d,J=8.6Hz,2H),4.56(s,2H).
【0139】
ステップe1)に従う(1,3-ジメチルブチル)-N’-p-ヒドロキシフェニル-p-フェニレンジアミン(本発明の式I)の化合物)の合成:
【化15】
0.31g(1.55mmol、1当量)のN-p-ヒドロキシフェニル-p-フェニレンジアミン、0.66gのパラジウム炭素(5%)(4.67mmolの基材上に0.2g)及び20.0mLのメチルイソブチルケトンを、Teflon製インナーライナを備えるステンレス鋼製オートクレーブに計量して仕込んだ。次いで、オートクレーブを水素で20barに加圧し、60℃で10時間撹拌した。反応が終了した後、過剰量の水素を飛ばし、懸濁液を珪藻土(Celite(登録商標))でろ過し、エタノールで洗浄した。ろ液を乾燥するまで濃縮し、減圧下で乾燥した。NMR分析によれば、粗生成物は70%の標的分子を含有する。
【0140】
本発明の式I)の化合物は6PPDと比して高い反応性を示す。これは、例えば、メチルペルオキシド基との反応に係る、結合解離エネルギー(BDE)、及び、活性化自由エンタルピーΔ
RG
≠及び自由標準反応エンタルピーΔ
RG
oの計算と一致していた。これらの値は、表1において報告されている。
図1a及び1bは、値が関連する開裂メカニズムを示す。
【0141】
【0142】
表1から明らかであるとおり、本発明の式I)の化合物は、より低い結合解離エネルギー及びより低い自由エンタルピーを示す。
【0143】
式I)の化合物はそれ故、言及した用途において向上した保護効果を達成可能である。
【0144】
車両用タイヤ用のゴム混合物における使用のために、本発明の式I)の化合物が、例えば、6PPD、7PPD又はIPPD等などの従来技術において公知である老化安定剤の代わりに、ゴム混合物の製造における混合ステージの1つにおいて、当業者に公知の方法で添加される。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1.式I)の化合物:
【化16】
。
2.上記1に記載の式I)の化合物を含有するゴム混合物。
3.少なくとも1種のジエンゴムを含有することを特徴とする、上記2に記載のゴム混合物。
4.天然ポリイソプレン(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエンゴム(BR)、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)、エマルジョン-重合スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)、ブチルゴム(IIR)及びハロブチルゴムからなる群から選択される少なくとも1種のジエンゴムを含有することを特徴とする、上記3に記載のゴム混合物。
5.少なくとも1つの構成要素中に、上記2~4のいずれか一項に記載のゴム混合物を含む車両用タイヤ。
6.少なくとも1つの外部構成要素中に上記2~4のいずれか一項に記載の少なくとも1種のゴム混合物を含有し、前記外部構成要素は、好ましくは、トレッド、サイドウォール及び/又はフランジプロファイルであることを特徴とする、上記5に記載の車両用タイヤ。
7.上記1に記載の式I)の化合物の生成プロセスであって、少なくとも以下のプロセスステップ:
a)式A)の物質
【化17】
を提供するステップ;
b)メチルイソブチルケトン(MIBK)及び水素又はメチルイソブチルケトン(MIBK)及びギ酸を提供するステップ;
c)前記ステップa)に係る物質と前記ステップb)に係る物質とを反応させて、式C)の物質
【化18】
を得るステップ:
d)特に三臭化ホウ素(BBr
3
)、三塩化アルミニウム(AlCl
3
)、三臭化アルミニウム(AlBr
3
)、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート(BF
3
*
OEt
2
)若しくは塩化第二スズ(SnCl
4
)などのルイス酸、又は、特にヨウ化水素(HI)若しくは臭化水素(HBr)などのブレンステッド酸を提供するステップ;
e)前記式C)の物質と前記ステップd)に係る物質とを反応させて、前記式I)の物質
【化19】
を得るステップ
を含む、生成プロセス。
8.上記1に記載の式I)の化合物の生成プロセスであって、少なくとも以下のプロセスステップ:
a1)式A)の物質
【化20】
を提供するステップ;
b1)特に三臭化ホウ素(BBr
3
)、三塩化アルミニウム(AlCl
3
)、三臭化アルミニウム(AlBr
3
)、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート(BF
3
*
OEt
2
)若しくは塩化第二スズ(SnCl
4
)などのルイス酸、又は、特にヨウ化水素(HI)若しくは臭化水素(HBr)などのブレンステッド酸を提供するステップ;
c1)前記ステップa1)に係る物質と前記ステップb1)に係る物質とを反応させて、式C1)の物質
【化21】
を得るステップ;
d1)メチルイソブチルケトン(MIBK)及び水素を提供するステップ;
e1)前記式C1)の物質と、ステップd1)に係るメチルイソブチルケトン(MIBK)とを反応させて、前記式I)の物質
【化22】
を得るステップ
を含む、生成プロセス。
9.特に、空気ばね、ベローズ、コンベヤベルト、ベルト、駆動ベルト、ホース、ゴムバンド、プロファイル、シール、メンブラン、医療用途若しくはロボット用触感センサー、又は、靴底若しくはその一部、並びに/又は、油及び/若しくは潤滑剤などの特に車両用タイヤ及び/又は技術的ゴム物品における、老化安定剤及び/又はオゾン分解防止剤としての上記1に記載の式I)の化合物の使用。
10.特に、空気ばね、ベローズ、コンベヤベルト、ベルト、駆動ベルト、ホース、ゴムバンド、プロファイル、シール、メンブラン、医療用途若しくはロボット用触感センサー、又は、靴底若しくはその一部といったゴム物品を製造するための上記1に記載の式I)の化合物の使用。
11.特に燃料又はエンジン用流体などの油及び潤滑剤における上記1に記載の式I)の化合物の使用。
12.繊維及び/若しくはポリマー及び/若しくは紙における染料、並びに/又は、塗料及びコーティングにおける染料としての、上記1に記載の式I)の化合物の使用。