(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】センタバイパスマッドハンマ
(51)【国際特許分類】
E21B 1/24 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
E21B1/24
(21)【出願番号】P 2023520437
(86)(22)【出願日】2021-09-22
(86)【国際出願番号】 AU2021051105
(87)【国際公開番号】W WO2022067376
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-06-16
(32)【優先日】2020-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】523120524
【氏名又は名称】グッド ウォーター ホールディングス ピーティーワイ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GOOD WATER HOLDINGS PTY LTD
【住所又は居所原語表記】32A Second Avenue Claremont,Western Australia 6010 Australia
(74)【復代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100232275
【氏名又は名称】和田 宣喜
(72)【発明者】
【氏名】ストレンジ,ウォーレン ロス
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0270949(US,A1)
【文献】特開2011-021411(JP,A)
【文献】特開平08-100586(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0094702(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マッドハンマであって、
掘削泥水を含む掘削流体の単一の流れを受けるように構成されたピストンバレルであって、前記ピストンバレルが、前記マッドハンマの外部に掘削流体を排出する少なくとも1つの排出ポートを含む、ピストンバレルと、
前記ピストンバレル内に位置付けられ、前記掘削流体の第1の部分によって作動される
往復運動で移動するように構成されたピストンと、
前記ピストンを貫通して配置され、ドリルビットと流体連通するバイパスチューブと、
前記掘削流体の第2の部分を前記バイパスチューブに迂回するように構成された調整可能なバルブセットと、
前記ピストンと前記ピストンバレルとの間の接触を防止するように位置付けられた摩耗スリーブと、を備え、
前記バイパスチューブ内に迂回された前記掘削流体の前記第2の部分が、前記ドリルビットから排出され、前記ピストンを動作する掘削流体の前記第1の部分が、前記ドリルビットから離れて、前記少なくとも1つの排出ポートを介して前記ピストンバレルから排出される、マッドハンマ。
【請求項2】
前記摩耗スリーブが、耐摩耗性材料で構築される、請求項1に記載のマッドハンマ。
【請求項3】
前記耐摩耗性材料が、タングステン、bizaloy、炭素、及びダイヤモンド含浸鋼のうちの少なくとも1つである、請求項2に記載のマッドハンマ。
【請求項4】
前記調整可能なバルブセットが、前記バイパスチューブの受容端部に位置付けられる、請求項1から3のいずれか一項に記載のマッドハンマ。
【請求項5】
前記調整可能なバルブセットが、前記バイパスチューブの構成部品である、請求項1から4のいずれか一項に記載のマッドハンマ。
【請求項6】
前記ピストンの前記往復運動を発生させるように掘削流体の前記第1の部分を導くように構成された二次バルブセットをさらに備える、請求項1から5のいずれか一項に記載のマッドハンマ。
【請求項7】
前記バイパスチューブが、前記二次バルブセットを通って位置付けられる、請求項6に記載のマッドハンマ。
【請求項8】
前記二次バルブセットと前記ピストンバレルとの間の接触を防止するように位置付けられた二次摩耗スリーブをさらに備える、請求項6又は7に記載のマッドハンマ。
【請求項9】
前記バイパスチューブの内径が約2~3インチである、請求項1から8のいずれか一項に記載のマッドハンマ。
【請求項10】
前記バイパスチューブが、前記ピストンバレル内の中心に置かれる、請求項1から9のいずれか一項に記載のマッドハンマ。
【請求項11】
スタビライザウイング、シュラウド、及びビット保持システムのうちの少なくとも1つを有する駆動サブをさらに備える、請求項1から10のいずれか一項に記載のマッドハンマ。
【請求項12】
前記ピストンバレルが、使用時に前記ドリルビットから離れて上方方向に掘削流体を排出するように構成された少なくとも2つの排出ポートを備える、請求項1から11のいずれか一項に記載のマッドハンマ。
【請求項13】
前記ドリルビットが打撃ドリルビットである、請求項1から12のいずれか一項に記載のマッドハンマ。
【請求項14】
前記ピストンが、20~60ミリメートルのストローク長を有する、請求項1から13
のいずれか一項に記載の
マッドハンマ。
【請求項15】
前記ピストンが、毎秒10~25サイクルの速度で往復運動する、請求項1から14のいずれか一項に記載の
マッドハンマ。
【請求項16】
前記単一のフロードリルパイプが内部防噴装置を含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の
マッドハンマ。
【請求項17】
掘削泥水を含む掘削流体の単一の流れを送達するように構成された単一のフロードリルパイプと、
前記単一のフロードリルパイプと流体連通するマッドハンマであって、前記マッドハンマの外部に掘削流体を排出する少なくとも1つの排出ポートを含むピストンバレルと、
前記ピストンバレル内に位置付けられ、前記掘削流体の第1の部分によって作動される往復運動で移動するように構成されたピストンと、
前記ピストンを貫通して配置され、ドリルビットと流体連通するバイパスチューブと、
前記掘削流体の第2の部分を前記バイパスチューブに迂回するように構成された調整可能なバルブセットと、
前記ピストンと前記ピストンバレルとの間の接触を防止するように位置付けられた摩耗スリーブと、を備え、
前記バイパスチューブ内に迂回された前記掘削流体の前記第2の部分が、前記ドリルビットから排出され、前記ピストンを動作する掘削流体の前記第1の部分が、前記ドリルビットから離れて、前記排出ポートを介して前記ピストンバレルから排出される、マッドハンマと、を備えるシステム。
【請求項18】
前記ピストンが、20~60ミリメートルのストローク長を有する、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記ピストンが、毎秒10~25サイクルの速度で往復運動する、請求項17又は18に記載のシステム。
【請求項20】
前記単一のフロードリルパイプが内部防噴装置を含む、請求項17から19のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項21】
(a)掘削坑井内に、マッドハンマであって、前記マッドハンマが、
前記マッドハンマの外部に掘削流体を排出するように構成された少なくとも1つの排出ポートを含むピストンバレルと、
前記ピストンバレル内に位置付けられ、掘削流体の第1の部分によって作動される往復運動で移動するように構成されたピストンと、
前記ピストンを貫通して位置付けられ、打撃ドリルビットであって、前記ドリルビットがドリルビット面を有する、打撃ドリルビットと流体連通するバイパスチューブと、
前記掘削流体の第2の部分を前記バイパスチューブに迂回するように構成された調整可能なバルブセットと、
前記ピストンと前記ピストンバレルとの間の接触を防止するように位置付けられた摩耗スリーブと、
を備えるマッドハンマを位置付けることと、
(b)単一のフロードリルパイプを介して、前記掘削流体であって、前記掘削流体が掘削泥水を含む、前記掘削流体の単一の流れを前記マッドハンマに向けることと、
(c)前記掘削坑井において掘削するため前記マッドハンマを動作することと、を含み、
前記バイパスチューブに迂回された前記掘削流体の前記第2の部分が、前記ドリルビッ
ト面で前記ドリルビットから排出され、前記ピストンを動作する掘削流体の前記第1の部分が、前記ドリルビットから離れて、前記少なくとも1つの排出ポートを介して前記ピストンバレルから排出される、掘削方法。
【請求項22】
前記掘削泥水の前記第2の部分が、前記マッドハンマに送達される掘削流体の総体積の50%~80%である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記掘削流体が、圧力下で前記マッドハンマに送達される、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
前記掘削流体の単一の流れが、毎分約800ガロン~1,000ガロンの速度で前記マッドハンマに向けられる、請求項21から23のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体又はマッドハンマ、マッドハンマシステム、及び深い井戸の掘削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新たな排出ガスのない再生可能なベースロード地熱エネルギー供給の需要が増加しているため、事業者は熱エネルギー生産に十分な熱を見つけるためにより深く掘削することを強いられている。より深い掘削、特に陸上のより高いコストの多くは、典型的には、より硬い岩石、及びより硬い岩石に対抗するために要求されるより多くの泥水の重量の両方によって引き起こされる削進率(ROP)の低下、過剰に加圧されたリザーバ、及びより深い掘削にしばしば関連付けられるより高い静圧に関連付けられる。典型的なマッドロータリー掘削方法は、硬質岩石層において所望の性能測定基準よりも低い可能性がある。例えば、典型的なマッドロータリー掘削方法は、所望されるよりも掘削速度が遅く、ドリルビット寿命が短い可能性があり、硬質岩石層の作業コストが増加する。流体又はマッドハンマとドリルビットとを組み合わせた打撃掘削システムは、硬質層の掘削性能を高める試みで開発されてきた。
【0003】
流体又はマッドハンマシステムは、掘削流体中に存在する動力の一部分を、ドリルビットを地層内に駆動する機械的力に変換する。ドリルビットに衝突するピストン運動からの打撃力は、硬質岩石への削進率を500%超改善することができる。しかしながら、抗井制御及び地表への掘削くず輸送に必要な掘削流体中の泥水添加物は、流体ハンマの可動部品に高い摩耗率を引き起こす。作業構成部品のこの高い摩耗率、及び抗井の底部から掘削くずを取り除くために典型的な流体ハンマを通して圧送することができる流体の量が限られていることは、深い坑井の掘削のために使用が禁止されている典型的な流体ハンマシステムにとって重大な欠点である。したがって、回転トリコン掘削法は、一般に依然として使用される唯一の方法である。しかしながら、典型的な回転トリコン法の低い削進速度及び高いコストは、発電、脱塩、加熱、冷却及び廃水処理のために必要とされる地熱レベルに達するために深い硬質岩石坑井が必要とされるほとんどの国における地熱エネルギー生産の開発を少なくとも部分的に妨げる。
【0004】
典型的な流体ハンマシステムの1つは、米国特許出願公開第2018/0044991号明細書に開示されているものなどの二重循環水又は流体ハンマ(「DC流体ハンマ」)である。DC流体ハンマは、掘削泥水を清浄水から分離するために二重循環ドリルパイプシステムを使用する。通常はドリルパイプの環内に注入される清浄水は、ウォーターハンマを動作するために圧力下で圧送される。この清浄水作業は、DC流体ハンマの整備と再構築との間のより長い作業期間に寄与し得る。掘削泥水は、作業者がより深い坑井を掘削するときに掘削くずを地表に輸送することができるように、及び高いガス圧を含む地層流体が坑井に入るのを防止するように高い粘度を有する必要がある。高粘度掘削泥水は、典型的には、ドリルパイプシステムの内側チューブ内に圧送され、DC流体ハンマ内を通過する内側チューブを通ってDC流体ハンマのドリルビット面に送達される。これにより、構成部品を摩耗させる、泥水がDC流体ハンマの作業構成部品内を通過するのを防止する。清浄水及び掘削泥水の両方は、DC流体ハンマを出た後に混合し、掘削くずを地表に押しやる。
【0005】
しかしながら、典型的なDC流体ハンマは、いくつかの欠点を有する。DC流体ハンマは、掘削泥水を用いて深い坑井を掘削するとき、所望よりも急速に摩耗し、必要な期間機能することができないことがわかっている。例えば、DC流体ハンマの作業構成部品を通過する清浄水は、さらに構成部品を摩耗させることがわかっている。
【0006】
深い坑井を掘削するための典型的なDC流体ハンマの別の欠点は、大量の逸泥である。混合流全体が掘削くずを伴い坑井を出るとき、DC流体ハンマを動作するために圧力下でパイプに圧送することができる前に、全流体の一定割合を地表で約3~10ミクロンまで洗浄しなければならない。これは、典型的には、圧力下でドリルパイプまで送達される総流体量の約20~50%である。全流体のこの割合から取り出される泥水及び掘削添加剤は、DCのハンマの内側チューブを圧送されて下って、井戸の底部のハンマから排出された清浄水と混合される掘削泥水に戻されなければならない。交換されなければならない泥水の量は多くなる可能性があり、全体のDC流体ハンマ自体を毎日の運転で交換するよりも高くなり得るほどDC流体ハンマの運転コストが法外に高くなる可能性がある。
【0007】
典型的なDC流体ハンマのさらなる欠点は、DC流体ハンマが二重循環ドリルパイプから2つの別個の流れを受け取ることができるように、その運転が二重循環ドリルパイプを必要とすることである。1つの流れは清浄水であり、1つの流れは掘削泥水及び添加剤を含む。清浄な流れはハンマを作動させ、掘削泥水はドリルビット面に導かれる。しかしながら、二重循環ドリルパイプは、少なくとも二重循環ドリルパイプが米国石油協会(API)の認定を受けていないため、掘削システムの運転の複雑さを増大させる。
【0008】
API非認定のドリルパイプを使用して掘削システムを運転すると、怪我の危険又は坑井の底部に泥水を送達するために使用される内側チューブなどの設備の損傷が増加する可能性があり、したがって、そのようなシステムは適切な安全レベルを提供しない。例えば、少なくともいくつかの例では、二重循環ドリルパイプなどのAPI非認定のドリルパイプと共に、典型的な内部防噴装置(IBOP)を含めることは機械的に困難又は不可能でさえある。当業者に知られているように、IBOPは、トップドライブの下に位置するサブとすることができ、緊急事態又は暴噴の場合に遠隔で又は手動でオフにすることができる。IBOPがなければ、泥水を坑井の底部に送達する内側チューブは、危険なガスが坑井の地表に暴噴するための無制限で抑制されていない経路を提供する。さらに、内側チューブに内部安全システムを追加することは困難であり、又は不可能でさえある。API認定ドリルパイプなしで掘削システムを運転すると、掘削システムの運転コストも増加する(例えば、一部の保険会社は、そのようにしない安全性の懸念の中でドリラーがAPI認定された掘削パイプ及び安全システムを使用していない場合、良好な保険を提供しない)。したがって、典型的なオペレータは、API非認定ドリル配管を使用せず、したがってDC流体ハンマの有用性が低下する。
【0009】
少なくともいくつかの典型的なマッドハンマのさらなる欠点は、再研削と呼ばれ得るものである。再研削とは、ドリルビットが同じ岩石材料ユニットを何度もペーストになるまで再掘削、パウンディング、及び研削することを指し、削孔されている岩石はドリルビット面から洗い流されない。これは、典型的な流体、水、又はマッドハンマの作業部を通って押し出され、ドリルビットポートを通って排出され得る流体量の制限に起因する。その結果、掘削の生産又は速度が非常に遅くなり、ドリルビットが早期に故障する。例えば、一例として、再研削により、水、流体、又はマッドハンマドリルビットが、400メートル(1312.3フィート)以上持続するべきときに、わずか20メートル(65.6フィート)で故障する可能性がある。
【0010】
掘削泥水をドリルビット面に迂回することによって、典型的なDC流体ハンマは、フラッシングを増加させ、再研削を減少するのに役立つ。しかしながら、典型的なDC流体ハンマの運転は、過剰な流体又は泥水(例えば、総流体体積の70~80%)がドリルビット面に送達されることをもたらす可能性がある。過剰な流体又は泥水がドリルビット面に送達されると、高圧流体のクッションがドリルビットの下に形成される可能性があり、これにより、典型的なDC流体ハンマの生産レベルが大幅に低下することがわかっている。また、高圧流体クッションの問題を解決しようとして、典型的なDC流体ハンマの内側チューブを通る泥水の流れを減少すると、掘削くずを地表に持ち上げる、又は搬送するには不十分な総掘削流体体積が生じることがわかっている。その結果、掘削くずを地表に持ち上げるのに十分な量の泥水を坑井に送達するために、バイパスサブをDC流体ハンマの上方及び典型的な水、流体又はマッドハンマの上方に備える必要があることがわかった。ハンマの上方のバイパスサブから流れる大量の流れは、掘削くずを搬送しようとする下方から来る流れを制限する。さらに、少なくともいくつかの典型的な流体、水、マッド又はDC流体ハンマは、全坑井の体積のわずか20%を使用して流れるか又は運転するように制限され、これは、12インチ版(直径)(30.48cm)のDC流体ハンマでは毎分約200~300ガロンである。これは、5,000メートルより深い直径12.5インチの坑井を掘削するため毎分約1,000ガロンである総坑井体積をはるかに下回る。
【0011】
したがって、少なくとも上記の欠点を解決するマッドハンマ掘削システムが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】米国特許出願公開第2018/0044991号明細書
【発明の概要】
【0013】
本開示は、一般に、典型的な流体、マッド、及び水ハンマよりも効率が改善された、深い坑井における安全かつ実行可能な打撃掘削のためのマッドハンマ、マッドハンマシステム、及び方法に関する。
【0014】
「パイプトリッピングをする」又は「トリップをする」という用語は、ドリルストリングをボアから取り外し、又は引き出して、消耗した構成部品を調整又は交換し、次いでドリルストリングをボアに戻して延ばす物理的行為を説明すると理解される。
【0015】
第1の態様では、本発明は、掘削泥水を含む掘削流体の単一の流れを受けるように構成されたピストンバレルであって、ピストンバレルは、マッドハンマの外部に掘削流体を排出する少なくとも1つの排出ポートを含む、ピストンバレルと、ピストンバレル内に位置付けられ、掘削流体の第1の部分によって作動される往復運動で移動するように構成されたピストンと、ピストンを貫通して配置され、打撃ドリルビットと流体連通するバイパスチューブと、掘削流体の第2の部分をバイパスチューブに迂回するように構成された調整可能なバルブセットと、ピストンとピストンバレルとの間の接触を防止するように位置付けられた摩耗スリーブと、を備え、バイパスチューブ内に迂回された掘削流体の第2の部分は、ドリルビットから排出され、ピストンを動作する掘削流体の第1の部分は、ドリルビットから離れて、排出ポートを介してピストンバレルから排出される、マッドハンマを提供する。
【0016】
一実施形態では、ピストンバレルを含む掘削泥水を含む掘削流体を用いて動作するように構成されたマッドハンマが提供される。ピストンは、ピストンバレル内に位置付けられ、ピストンストローク長を有する往復運動で移動するように構成される。バイパスチューブは、ピストンを貫通して位置付けられる。バルブセットは、設定量の流体がバイパスチューブ内に流れることを可能にするように構成される。摩耗スリーブは、ピストンとピストンバレルとの間の接触を防止するように位置付けられる。ドリルビットは、バイパスチューブと流体連通している。
【0017】
第2の態様では、本発明は、掘削泥水を含む掘削流体の単一の流れを送達するように構成された単一のフロードリルパイプと、単一のフロードリルパイプと流体連通するマッドハンマであって、マッドハンマの外部に掘削流体を排出する少なくとも1つの排出ポートを含むピストンバレルと、ピストンバレル内に位置付けられ、掘削流体の第1の部分によって作動される往復運動で移動するように構成されたピストンと、ピストンを貫通して配置され、打撃ドリルビットと流体連通するバイパスチューブと、掘削流体の第2の部分をバイパスチューブに迂回するように構成された調整可能なバルブセットと、ピストンとピストンバレルとの間の接触を防止するように位置付けられた摩耗スリーブと、を備え、バイパスチューブ内に迂回された掘削流体の第2の部分は、ドリルビットから排出され、ピストンを動作する掘削流体の第1の部分は、ドリルビットから離れて、排出ポートを介してピストンバレルから排出される、マッドハンマと、を備えるシステムを提供する。
【0018】
一実施形態では、掘削泥水を含む掘削流体の単一の流れを送達するように構成された単一のフロードリルパイプを含むシステムが提供される。システムはまた、単一のフロードリルパイプと流体連通するマッドハンマを含むことができる。マッドハンマは、掘削泥水を含みピストンバレルを含む掘削流体を用いて動作するように構成される。ピストンは、ピストンバレル内に位置付けられ、ピストンストローク長を有する往復運動で移動するように構成される。バイパスチューブは、ピストンを貫通して位置付けられる。バルブセットは、設定量の流体がバイパスチューブ内に流れることを可能にするように構成される。摩耗スリーブは、ピストンとピストンバレルとの間の接触を防止するように位置付けられる。ドリルビットは、バイパスチューブと流体連通している。
【0019】
第3の態様では、本発明は掘削方法であって、掘削坑井内に、マッドハンマであって、マッドハンマの外部に掘削流体を排出するように構成された少なくとも1つの排出ポートを含むピストンバレルと、ピストンバレル内に位置付けられ、掘削流体の第1の部分によって作動される往復運動で移動するように構成されたピストンと、ピストンを貫通して配置され、打撃ドリルビットであって、ドリルビットがドリルビット面を有する、打撃ドリルビットと流体連通するバイパスチューブと、掘削流体の第2の部分をバイパスチューブに迂回するように構成された調整可能なバルブセットと、ピストンとピストンバレルとの間の接触を防止するように位置付けられた摩耗スリーブと、を含むマッドハンマを位置付けることと、単一のフロードリルパイプを介して掘削流体であって、掘削流体は掘削泥水を含む、掘削流体の単一の流れをマッドハンマに向けることと、掘削坑井において掘削するためマッドハンマを動作することと、を含み、バイパスチューブに迂回された掘削流体の第2の部分が、ドリルビット面でドリルビットから排出され、ピストンを動作する掘削流体の第1の部分は、ドリルビットから離れて、少なくとも1つの排出ポートを介してピストンバレルから排出される、方法を提供する。
【0020】
一実施形態では、方法は、掘削坑井にマッドハンマを位置付けることを含む。マッドハンマは、掘削泥水を含みピストンバレルを含む掘削流体を用いて動作するように構成される。ピストンは、ピストンバレル内に位置付けられ、ピストンストローク長を有する往復運動で移動するように構成される。バイパスチューブは、ピストンを貫通して位置付けられる。バルブセットは、設定量の流体がバイパスチューブ内に流れることを可能にするように構成される。バイパスチューブに流入する流体の設定量は、掘削流体中の掘削泥水の第1の部分を含む。掘削流体中の掘削泥水の第2の部分は、マッドハンマを作動するために、バイパスチューブの外部でマッドハンマ内に流入する。摩耗スリーブは、ピストンとピストンバレルとの間の接触を防止するように位置付けられる。ドリルビットは、バイパスチューブと流体連通し、ドリルビットは、ドリルビット面を有する。掘削流体の単一の流れは、単一のフロードリルパイプを介してマッドハンマに向けられ、掘削流体は掘削泥水を含む。マッドハンマは、掘削坑井内を掘削するために作動される。掘削泥水の第1の部分は、ドリルビット面でマッドハンマから出る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本開示の一態様による、掘削システムの断面図を示す。
【0022】
【
図2】本開示のさらなる態様による、マッドハンマの分解図を示す。
【0023】
【0024】
【
図4】本開示の一態様による、掘削方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書で使用される「サブ」という用語は、下部構造を指すと理解される。これは、ドリルストリングの多くの小さな構成部品、例えば、短いドリルカラー、クロスオーバー、フロートサブ、リフトサブ、ビットサブ、エントリサブ、及び循環サブに与えられる一般的な用語である。
【0026】
本開示は、典型的な流体又はマッドハンマと比較して寿命及び性能が向上したマッドハンマ100、200に関する。例えば、提供されるマッドハンマは、典型的な流体又はマッドハンマと比較して、深い坑井掘削のため向上した寿命及び性能を有し得る。別の例では、提供されるマッドハンマは、典型的な流体又はマッドハンマと比較して、硬質岩石層中の掘削のため向上した寿命及び性能を有し得る。提供されるマッドハンマは、より高粘度の流体(例えば50ミクロン)を用いて動作するように構築され、掘削泥水を含む掘削流体によって作動される(例えば、DC流体ハンマの設計におけるような清浄水の代わりに)。例えば、提供されるマッドハンマは、掘削流体によって提供されるマッドハンマの動作を可能にするために、少なくともいくつかの典型的な流体ハンマよりも大きなクリアランスをその構成部品間に含むことができる。
【0027】
掘削流体14の単一の流れは、標準的な単一のフロードリルパイプ12を介してマッドハンマ100に送達される。典型的な単一のフロードリルパイプはAPI認定されており、したがって、API非認定の二重循環ドリルパイプなどの他の非認証タイプのドリルパイプと共に使用される典型的なマッドハンマ(例えば、DC流体ハンマ)と比較して、提供されるマッドハンマの安全性及び使いやすさが向上する。例えば、内部防噴装置(IBOP)をマッドハンマ100と一緒に使用することができる。さらに、掘削流体を用いてマッドハンマを動作させることは、典型的なDC流体ハンマの動作と比較して、マッドハンマ100に微細に濾過された水が必要とされないため、典型的なDC流体ハンマで経験される高い割合での逸泥をもたらさない。
【0028】
提供されるマッドハンマ100、200は、マッドハンマのピストンバレル102内を往復運動するピストン106を含む。バルブセット132は、マッドハンマ100内の掘削流体の流れを制御して、ピストンの移動を生成する。そのような場合、ピストンの移動を生成するバルブセット132も往復運動する。掘削泥水を用いてマッドハンマを動作させることの1つの欠点は、掘削泥水が、マッドハンマの動作中に所望よりも急速にこれらの移動構成部品を摩耗させる傾向があることである(例えば、DC流体ハンマが解決しようとする問題の1つ)。
【0029】
掘削泥水によってもたらされる耐久性の問題に対抗するのを助けるために、マッドハンマ100は、マッドハンマのピストンバレル102とピストン106との間の接触を防止する、又は少なくとも低減する摩耗スリーブ134を含むことができる。いくつかの実施形態では、マッドハンマは、マッドハンマのピストンバレル102とピストンの移動を生成するバルブセット132との間の接触を防止する二次摩耗スリーブ136を含むことができる。1つ以上の摩耗スリーブは、マッドハンマの内部構成部品の摩耗を防止し、したがって交換が必要になる前に構成部品の寿命を延ばすのに役立つ。1つ以上の摩耗スリーブ134、136は、1つ以上の摩耗スリーブが十分に劣化したときに交換される。例えば、1つ以上の摩耗スリーブ134、136は、マッドハンマのドリルビット108がもつと予想される時間とほぼ同じ間もつように設計することができ、これにより摩耗スリーブ134、136とドリルビット108とを同時に交換することができる。
【0030】
マッドハンマ100を坑井から引き出す又はトリップすることは時間のかかるプロセスであり、したがって、ドリルビット108を交換すると同時に1つ以上の摩耗スリーブ134、136を交換することは、2回別個にマッドハンマ100を坑井から引き出すことと比較して、マッドハンマの運転効率を高める。さらに、1つ以上の摩耗スリーブ134、136を交換する運転コストは、典型的なDC流体ハンマに関連付けられた掘削逸泥の運転コストよりもはるかに低い(例えば、コストの1/10)場合がある。したがって、マッドハンマ100、200は、典型的なDC流体ハンマと比較すると、効率の向上及び運転上の安全性の向上をもたらす。
【0031】
マッドハンマ100、200は、ドリルビット108と流体連通するバイパスチューブ104を含む。マッドハンマ100、200に送達される掘削泥水を含む掘削流体14は、バイパスチューブ104を通って流れ、ドリルビット面120で出ることができる。これにより、バイパスチューブ104は、典型的なマッドハンマと比較して、ドリルビット面への掘削泥水の流れを増加させ、その結果、ドリルビット面120でのフラッシングが改善され、再研削が制限される。
【0032】
掘削流体14がバイパスチューブ104(
図1の断面図に中央の流れ16として示されている)に流入し、バイパスチューブを通って流れる量を制御するために、さらなるバルブセット130が設けられている。掘削流体14の単一の流れは、単一のフロードリルパイプ12に連通し、そこで流れ16の一部分がバイパスチューブ104に迂回される。迂回される掘削流体の量は、複数のバルブセット130から選択することによって変更することができる。大径を有するバルブセット130が選択されると、掘削流体14の大部分がバイパスチューブ104内に向けられ、したがって、より少ない量の掘削流体14がピストン106の動作に向けられる(
図1にフロー18A、18Bとして示されている)。小さなポート(例えば5mmの直径)を有するバルブセット130が複数のバルブセット130から選択される場合、より大量の掘削流体14がピストン106の動作に向けられ、より少ない量の掘削流体14がバイパスチューブ104に向けられる。
【0033】
バルブセット130(及びそれによってバイパスチューブ104への入口ポート)のサイズを小さくすると、ハンマ100の作業構成部品に送達される掘削流体の割合が増加する。所与の圧力及び流量、例えば1,000US GPM(米国ガロン/分)で6,000mで2,000psi D/Tでは、ポートサイズを縮小すると、掘削流体の割合が例えば30%から35%に増加し、同時にドリルビット面への掘削流体の流量が70%から65%に減少する。バルブセット130のポートのこの直径の低減により、ハンマの強度が高まり、ハンマが所与の流量でより大きな衝撃力をもたらすようになる。したがって、ドリルリグが1,000GPMを送達する容量しか有さず、硬質岩石層を破壊するためにピストン打撃力及び/又は打撃速度の増加が必要な場合、バルブセット130の(内側チューブの)ポートサイズを縮小することは、ビット寿命及び削進速度を改善するための調整オプションの1つである。ピストン106を駆動する掘削流体18A、18Bの体積が増加すると、ピストン106のサイクル速度をより速くすることもできる。最大で、ピストンサイクル速度は毎秒約25サイクルである。逆に、ピストン106を駆動する掘削流体18A、18Bの体積が減少すると、ピストンサイクル速度を最低、毎秒約10サイクル低下させることができる。
【0034】
地質がより柔らかい場合、ハンマがより小さい力で衝突するように、バルブセット130のポートのサイズを(バイパスチューブ104内で)大きくすることが有益であり得、バイパスチューブ104を通るビット面への掘削流体の増加した流れが、より柔らかい地質のために削進速度がより速い場合、掘削くずのフラッシング/除去を支援する。これは、地表に押し出すより多くの掘削くずが坑井の環内に存在することを意味するので、ドリルビットへのより多くの流れは、この追加の掘削くずの重量/体積を移動するのに役立つ。地表上のドリルリグポンプから送達される掘削流体の圧力及び体積を増加することによって、ピストン106の打撃速度を増加させることも可能である。これは、バルブセット130(バイパスチューブ104の入力ポート)を変更又は調整することなく生じ得る。例えば、ドリラーがピストン106の打撃速度を18BPS(毎秒のビート数)から20BPSに増加したい場合、ドリラーはマッドポンプのRPM(毎分の回転数)を増加して、ハンマ100への掘削流体の流れ及び圧力を増加することができる。この調整は、最適な打撃速度を維持するように掘削しながら、常に又は断続的に行なわれ得る。
【0035】
バルブセット130は、マッドハンマ100を坑井内に配置する前に選択されてマッドハンマに装備され、マッドハンマが坑井から取り除かれて摩耗スリーブ134、136及びドリルビット108のいずれか1つを交換するまで所定の位置に留まる。このとき、坑井に再挿入する前に、切削くずをフラッシュするためにピストンサイクル速度の増加が必要かどうか、又はバイパスチューブ104に迂回される掘削流体の増加に従って、バルブセット130を調整するためマッドハンマに変更がなされ得る。
【0036】
図1では、バルブセット130は、単一の流れ14がバイパスチューブ104及びに向けられる中央の流れ16と外側の流れ18A、18Bとに分離される断面で示されている。中央の流れ16は、二次バルブセット132及びピストン106を同軸に通って流れずにバイパスチューブ104に入る。流れ16は、バイパスチューブ104を通って連通し、ドリルビット面120において複数の排出流124A、124Bで排出される。
【0037】
一方、掘削流体の外側の流れ18A、18Bは、バイパスチューブ104の外部の摩耗スリーブ136によって保護されたバルブセット132に導かれる。外側の流れ18A、18Bは、ピストン106の周り及び/又はピストン106を通るように強制され、ピストンバレル102及び/又はピストン106から(ポート140を介して)出ることができ、その後、排出ポート110A、110Bを介してマッドハンマから排出されて、1つ以上の排出流112A、112Bを形成する。
【0038】
図2では、バルブセット130は、バイパスチューブ104の受容端部と協働し、バルブセット130とバイパスチューブ104との間に一対のOリング202を封入するためのフレア端部を有するチューブ又はパイプとして示されている。バルブセット130の内径は、直径5mmくらい小さくてもよい。バルブセットの内径は、12インチのマッドハンマを用いて5mmから10mm、15mm、20mm、25mm、30mmまで、最大約50mmまで増大することができる。バルブセット130の内径は、18インチのマッドハンマ内で約75mmまで増大することができる。
【0039】
ドリルビット面120に送達される掘削流体14の量を制限することにより、ドリルビット面に送達される掘削流体又は泥水が多すぎる場合に生じ得る高圧クッション問題を防止するのに役立ち得る。バルブセット130は、送達された掘削流体及び泥水の合計の40%~80%がバイパスチューブ104を通過してドリルビット面120に送出されることを可能にするように選択可能に設定される。いくつかの実施形態では、バルブセット130は、バイパスチューブ104の構成部品とすることができる。いくつかの実施形態では、バルブセット130は、バイパスチューブ104に流入し、バイパスチューブを通って流れることができる流体の量が調整可能であるように、例えば、それを通る流れを選択的に増加又は減少させるための調整可能な開口又はダイヤフラムを有するように構成することができる。さらに、バルブセット130は、送達される掘削流体の圧力変化によって調整することができる。例えば、バルブセット130は、2,000psiで完全に開き、掘削流体の圧力が低下するにつれて徐々に閉じるように構成することができる。逆に、バルブセット130は、圧力が増加するにつれて徐々に閉じるように構成することができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、調整は、複数の異なるサイズのバルブセットからバルブセット130を選択する際に提供することができる。そのような態様では、バルブセット130の調整可能性は、異なる掘削条件及び地質に基づいてバイパスチューブ104に流入する流体の量を制御する能力をドリルオペレータに提供する。バイパスチューブ104を通って流れないマッドハンマ100に送達された掘削流体の残りは、代わりに、圧力下でマッドハンマ100に押し込まれてマッドハンマを作動させる。バルブセット130が複数の異なるサイズのバルブセットから選択される場合、バルブセット130は、ハンマが新しいドリルビット108と共に坑井に降ろされる前に選択されて表面に設置される。したがって、バルブセット130は、ドリラーがバルブセットを調整することを選択するまで、30mmなどの設定された開口部を維持する。ドリラーは、以前の400メートルの掘削動作にわたるハンマ100の性能に基づいて、また、地質に応じて300m~1,000m掘削された最後のドリルビット108の条件から、バルブセットを選択する(したがって、バイパスチューブ104への必要なポートサイズにより決定する)。
【0041】
合計で約200~400ガロン/分(GPM)(757.1~1514.2リットル/分(LPM))しかドリル面に送達することができない典型的な水又は流体ハンマと比較して、本発明者は、12インチ(30.48cm)版(直径)のマッドハンマ100が合計で約800~1,000GPM(3028.3から3785.4LPM)を送達することができることを見出した。マッドハンマの12インチ版を参照すると、ハンマの外径(OD)は12インチであることが理解される。12インチのビットが、ハンマと共に使用することができるように、12インチのハンマは、約11インチのバレル直径を有することができる。12インチのビットは、12インチのハンマで使用するために典型的には12インチ~17インチの範囲である最小のビットのうちの1つである。
【0042】
一例では、この総送達流は、マッドハンマ100の作業構成部品を通るように強制される300GPM(1135.6LPM)と、バイパスチューブ104を通る700GPM(2649.8LPM)とを含むことができる。この総送達流は、5,000メートル(16,404フィート)より深い12.5インチ(31.75cm)の坑井を掘削するために総坑井体積の約80%~100%であり、これは、上述したように、少なくともいくつかの典型的な流体又はマッドハンマ(例えば、100%~150%)を超えて増加された流量容量である。
【0043】
したがって、マッドハンマ100、200は、掘削流体14の単一の流れを受け取り、掘削流体の計量された部分をドリルビット面120に送達し、掘削流体の残りの部分で動作しながら、マッドハンマの内部構成部品に対する掘削流体の縮退効果を制限する。典型的なマッドロータリー掘削方法と比較して、本発明者は、マッドハンマ100が硬質岩石層においてより速い速度(例えば、300ミリメートル/時間又は0.98フィート/時間と比較して10メートル/時間又は32.81フィート/時間)で掘削することを見出した。本発明者はまた、マッドハンマのドリルビット108が、硬質岩石層を掘削する場合に、典型的な高品質ロータリードリルビットよりも寿命が長い(例えば、寿命の終わりまで20メートル又は65.62フィートと比較して400メートル又は1312.3フィート)ことを見出した。
【0044】
図1は、本発明の一実施形態による掘削システム10の断面を示す。掘削システム10は、単一のフロードリルパイプ12とマッドハンマ100とを含む。単一のフロードリルパイプ12は、任意の適切な標準API認定ドリルパイプとすることができる。単一のフロードリルパイプ12は、マッドハンマ100に結合することができる。例えば、単一のフロードリルパイプ12は、マッドハンマ100の一端の雌ねじ部に結合する雄ねじ部を含むことができる。掘削流体の流れ14は、単一のフロードリルパイプ12を通ってマッドハンマ100に送達され得る。掘削流体は、当業者によって理解されるように、掘削泥水及び様々な添加剤を含む。
【0045】
マッドハンマ100の本体は、複数の構成部品から構成することができる。そのような構成部品は、ピストンバレル102、トップサブ126、駆動サブ138、及び/又は
図2の例示的なマッドハンマ200の分解図に示す1つ以上の構成部品などの他の適切な構成部品のうちの1つ以上を含むことができる。マッドハンマ100は、ピストン106を含む。ピストン106は、ピストンバレル102内に位置付けられる。ピストン106は、
図1の両矢印128の方向に往復運動で並進するように構成される。ピストン106の往復運動は、
図1の両矢印114によって指定されるピストンストローク長を画定する。様々な事例では、掘削作業のための所望の流体又は泥水圧がマッドハンマ100に送達されると、ピストン106は、毎秒約10~25サイクルの速度で往復運動を繰り返すことができる。サイクルは、ピストン106が2つのピストンストローク長を並進した後に開始位置に戻ると完了する。場合によっては、流体又は泥水がマッドハンマ100に送達される圧力を低下することによって、ピストン106を、毎秒10~25サイクルよりも低い速度で往復運動するように制御することができる。逆に、ピストンサイクル速度は、マッドハンマ100に送達される流体又は泥水の圧力の増加によって増加し得る。いくつかの実施形態では、ストローク長は、約20~60ミリメートル(0.79~2.36インチ)であり得る。少なくともいくつかの例では、ピストンストローク長は約40mm(1.57インチ)であり得る。
【0046】
いくつかの態様では、ピストン106が移動すると、ピストン106の一端の界面116でドリルビット108に衝突する。対向する端部では、ピストン106は、図示されているようないくつかの例では、バルブセット132に衝突する。他の例では、バルブセット132は、図示されているものとは異なるピストン106の反対側の端部に位置付けられ得る。いくつかの実施形態では、バルブセット132は、ピストン106の周りに位置付けられ得る。バルブセット132は、当業者によって理解されるように、ピストン106の移動を生成するように構成される。バルブセット132は、様々な事例では、単一のバルブを含むことができる、又は複数のバルブ若しくは他の適切な構成部品を含むことができる。場合によっては、バルブセット132は、1つ以上の逆止弁及び/又はプランジャを含むことができる。他の態様では、ピストン106は、バルブセット132の代わりに、又はそれに加えて、ポート140を含むことができる。ポート140は、ピストン106の移動を生成するように構成することができる。バルブセット132は、通過することができる掘削流体の量を制御する可変開口又はダイヤフラムをその中に有するように調整可能であり得る。いくつかの実施形態では、バルブセット132は、バルブ直径の範囲から選択することができる複数のバルブセット132のうちの1つである。
【0047】
様々な態様では、マッドハンマ100は、ピストン106とピストンバレル102との間に位置付けられた摩耗スリーブ134を含む。ピストン106がその往復運動で移動すると、ピストン106とピストンバレル102との間の摩擦が、ピストン106及び/又はピストンバレル102を劣化させる可能性がある。掘削流体を用いてマッドハンマ100を動作すると、この劣化の速度が速まる。この劣化を防止するのに役立つように、摩耗スリーブ134は、ピストン106とピストンバレル102との間の接触を防止するのに役立つ。ピストン106が移動するにつれて、摩耗スリーブ134は、(より高価な)ピストン106及び/又はピストンバレル102よりも劣化する。摩耗スリーブ134は、例えば、タングステン、bizaloy、炭素、又はダイヤモンド含浸鋼などの適切な耐摩耗性材料で構築される。摩耗スリーブ134は、摩耗スリーブ134がピストン106とピストンバレル102との間の接触を防止することができない摩耗限界まで劣化すると、交換可能である。様々な事例では、摩耗スリーブ134は、摩耗スリーブ134及びドリルビット108がそれぞれの摩耗限界に達する前に、マッドハンマ100の動作中にドリルビット108(例えば、約40時間の連続動作)とほぼ同じ長さにわたって持続するように構築される。
【0048】
マッドハンマ100がバルブセット132を含む例では、バルブセット132も往復運動する。そのような場合、マッドハンマ100は、バルブセット132とピストンバレル102との間に位置付けられた二次摩耗スリーブ136を含むことができる。バルブセット132及び/又はピストンバレル102の劣化を防止するのに役立つように、摩耗スリーブ136は、バルブセット132とピストンバレル102との間の接触を防止するのに役立つ。摩耗スリーブ134の説明は、二次摩耗スリーブ136にも等しく適用される。したがって、摩耗スリーブ134及び136は、掘削流体を用いてマッドハンマ100を動作する劣化誘発効果に照らして、マッドハンマ100の動作寿命を延ばす。
【0049】
いくつかの態様では、マッドハンマ100は、バイパスチューブ104を含む。バイパスチューブ104は、ピストン106を通って位置付けられる。場合によっては、バイパスチューブ104をバルブセット132を通して位置付けることができる。場合によっては、バイパスチューブ104は、ピストン106及び/又はピストンバレル102に対して中心に置かれる(例えば、長軸に沿って位置付けられる)。いくつかの態様では、バイパスチューブ104は、約2~3インチ(約5.08~7.62センチメートル)の内径を有する。バイパスチューブ104は、掘削流体がバイパスチューブ104を通ってドリルビット108に送達され得るように、ドリルビット108(例えば、界面118において)と流体連通している。マッドハンマ100は、マッドハンマ100に送達された掘削流体の計量された部分がバイパスチューブ104を通って導かれるように構成され、一方、送達された掘削流体の残りの部分は、マッドハンマ100に圧力下で押し込まれてマッドハンマ100を作動させる。例えば、掘削流体の流れ14から、流れ14の一部分16はバイパスチューブ104に流入し、一部分18A及び一部分18Bはマッドハンマ100に流入する。バイパスチューブ104を通ってドリルビット面120に送達される掘削流体の量を測定することは、ドリルビット面120に送達される掘削流体又は泥水が多すぎる場合に生じ得る高圧クッション問題を防止するのに役立つ。
【0050】
様々な態様では、バイパスチューブ104への計量された流れを制御するために、マッドハンマ100はバルブセット130を含む。バルブセット130は、単一のバルブ又はアダプタとすることができ、或いは複数のバルブ及び/又はアダプタとすることができる。いくつかの実施形態では、バルブセット130は、バイパスチューブ104の構成部品とすることができる。
図1及び
図2に示されているような他の例では、バルブセット130は、バイパスチューブ104の受容端部に位置付けられ得る。バルブセット130は、マッドハンマ100(例えば、流れ14)に送達される設定量(例えば、流れ16)の掘削流体14がバイパスチューブ104内に進行することを可能にするように構成することができる。場合によっては、設定量は、総送達掘削流体14の80%未満の量であり得る。場合によっては、設定量は、総送達掘削流体14の50%~80%であり得る。いくつかの態様では、バルブセット130は、単一の設定量の掘削流体のみをバイパスチューブ104内に許容するように構成されるように調整不可能であり得る。他の態様では、バルブセット130は、バルブセット130がバイパスチューブ104に流入できるように構成されている流体の設定量をドリルオペレータが調整できるように調整可能であり得る。バルブセット130は、通過することができる掘削流体の量を制御する可変開口又はダイヤフラムをその中に有するように調整可能であり得る。いくつかの実施形態では、バルブセット130は、バルブ直径の範囲から選択することができる複数のバルブセット130のうちの1つである。そのような態様では、調整可能性は、異なる掘削条件及び地質に基づいてドリルビット面120に送達される掘削流体14の量を変更する能力をドリルオペレータに提供する。
【0051】
マッドハンマ100は、ドリルビット108を含む。いくつかの態様では、ドリルビット108は、取り外し可能であるようにマッドハンマ100の本体に結合することができる。ドリルビット108は、ドリルビット面120を含む。ドリルビット108は、掘削流体16がドリルビット面120から出ることを可能にする1つ以上の出口ポート122A、122Bを含む。1つ以上の出口ポート122A、122Bは、バイパスチューブ104と流体連通している。バイパスチューブ104を通って移動する掘削流体の流れ16は、1つ以上の排出流124A、124Bとしてドリルビット面120で出る。1つ以上の排出流124A、124Bは、マッドハンマ100の動作中にドリルビット108から離れるように切削くずをフラッシュする。
【0052】
いくつかの態様では、マッドハンマ100の本体は、駆動サブ138及びシュラウド226(
図2に示すように)を含む駆動サブを含むことができる。このような態様では、駆動サブ138は、スタビライザウイングを含む。いくつかの態様では、駆動サブはまた、ドリルビット108を保持するための適切なビット保持システムを含むことができる。
【0053】
マッドハンマ100のピストンバレル102は、1つ以上の排出ポート110A、110Bを含む。これらの排出ポート110A、110Bは
図1に示されているが、いくつかの実施形態では、ピストンバレル102は単一の排出ポートのみ又は3つ以上の排出ポートを含んでもよいことを理解されたい。単一の排出ポートを有する実施形態では、排出ポートは、ピストンバレル102の任意の適切な部分の周りに延在することができる。掘削流体18A、18Bがピストン106を作動させたバルブセット132を通過した後、掘削流体は、1つ以上の排出ポート110A、110Bを通ってピストンバレル102から出ることができる。排出ポート110A、110Bから排出された掘削流体は、排出流112A及び112Bによって示されるように、ドリルビット108から離れる方向(例えば、動作中上方)に排出される。排出流112A、112Bをドリルビット108から離れるように導くことにより、切削くずをドリルビット108からフラッシングするのを助ける。
【0054】
図2は、本発明の一実施形態によるマッドハンマ200の分解斜視図を示す。マッドハンマ200は、同様の特徴は同様の番号を付されているマッドハンマ100に関して上述したように動作するように構成される。様々な事例では、マッドハンマ100は、マッドハンマ200の構成部品のいずれかを含むことができ、その逆も可能である。
図1及び
図2に示す構成部品は、必ずしも一定の縮尺で示されていないことも理解されたい。マッドハンマ200は、トップサブ126を含むことができる。マッドハンマ200は、バイパスチューブ104を含む。バルブセット130は、バイパスチューブ104の受容端部に位置付けられる。場合によっては、バイパスチューブ104とバルブセット130との間に1つ以上のOリング202が位置付けられる。マッドハンマ200は、ピストン106を含む。場合によっては、マッドハンマ200は、摩耗スリーブ134を含むことができる。マッドハンマ200は、ピストンバレル102を含む。場合によっては、マッドハンマ200は、駆動サブ138を含むことができる。マッドハンマ200は、ドリルビット108を含む。
【0055】
様々な事例では、マッドハンマ200は、1つ以上のOリング204、サークリップ206、分配器208、トップバレル又はサブ210、逆止弁又はプランジャ211、yリング又は逆止弁212、ばね214、圧縮バッファ216、バイパスチューブマウント218、ベアリングブッシュ220、1つ以上のビットストップリング222及び224、並びにシュラウド226の任意の適切な組み合わせを含むことができる。場合によっては、圧縮バッファ216は、鋼リングなどのリングであってもよい。逆止弁又はプランジャ211、yリング又は逆止弁212、ばね214、及び/又は圧縮バッファ216は、バルブセット132を備えることができる。場合によっては、ベアリングブッシュ220を冷間プレスすることができる。いくつかの例では、ビットストップリング222はOリングとすることができる。
図3は、
図2において分解して示されたマッドハンマ200の組立斜視図を示す。
【0056】
図4は、本開示の一態様による、掘削方法のフローチャートを示す。例示的な方法400は、
図4に示すフローチャートを参照して説明されているが、方法400に関連する行為を実行する多くの他の方法を使用できることが理解されよう。例えば、いくつかのブロックの順序は変更されてもよく、特定のブロックは他のブロックと組み合わされてもよく、記載されたブロックのいくつかはオプションである。
【0057】
マッドハンマ100、200は、掘削坑井内に位置付けることができる(ブロック402)。マッドハンマ100、200は、本明細書に記載の実施形態のいずれかとすることができる。掘削流体14の単一の流れは、単一のフロードリルパイプ12を介してマッドハンマ100、200に向けることができる(ブロック404)。掘削流体14は、掘削泥水を含む。単一のフロードリルパイプは、任意の適切な標準API認定ドリルパイプとすることができる。一例では、掘削坑井内に位置付けられたマッドハンマ100、200は、掘削流体14の単一の流れをマッドハンマ100、200に向けることを可能にする、掘削流体で動作するように構築される。これは、清浄水から掘削泥水を分離するために二重循環ドリルパイプシステムを必要とする少なくともいくつかの典型的なDC流体ハンマと比較している。そのような典型的なDC流体ハンマの少なくともいくつかは、単一のフロードリルパイプを介して動作することができない。いくつかの典型的なDC流体ハンマは、単一のフロードリルパイプを介して動作するように適合することができるが、そのような適合は、本明細書に記載の提供されたマッドハンマ100、200と比較して、非効率的なマッドハンマ又は流体ハンマをもたらす。
【0058】
マッドハンマ100、200を作動させて、掘削坑井を掘削することができる(ブロック406)。一例では、マッドハンマ100、200に向けられる掘削流体14の単一の流れのうち、掘削流体の一設定量(例えば、50%~80%)が、動作中にマッドハンマ100、200のバイパスチューブ104に流入する。様々な事例では、バイパスチューブ104に流入する掘削流体16は、ドリルビット面120でマッドハンマ100、200を出る。掘削流体14の単一の流れの残りの部分18A、18Bは、マッドハンマ100を動作させるために、バイパスチューブ104の外部でマッドハンマ100に流入することができる。いくつかの態様では、方法400は、マッドハンマ100、200の1つ以上の摩耗スリーブ(例えば、摩耗スリーブ134及び/又は摩耗スリーブ136)を交換することをさらに含むことができる。一例では、摩耗スリーブ134及び/又は摩耗スリーブ136は、それぞれの摩耗限界に達すると交換される。一例では、摩耗スリーブ134及び/又は摩耗スリーブ136は、それらのそれぞれの摩耗限界が、マッドハンマ100、200の動作中にドリルビット108の摩耗限界と到達するのにほぼ同じ時間を要するように構築される。
【0059】
本明細書で使用される場合、「約(about)」、「およそ(approximately)」及び「実質的に(substantially)」は、例えば、参照された数字の-10%~+10%、好ましくは参照された数字の-5%~+5%、より好ましくは参照された数字の-1%~+1%、最も好ましくは参照された数字の-0.1%~+0.1%の範囲などの数字の範囲内の数字を指すと理解される。
【0060】
本明細書及び特許請求の範囲における「備える(comprise)」、「備える(comprises)」、「含まれる(comprised)」若しくは「含む(comprising)」、「含む(including)」又は「有する(having)」などの用語は、包括的な意味で使用され、すなわち、記載された特徴の存在を特定するが、追加の又はさらなる特徴の存在を排除するものではない。
【0061】
さらに、本明細書におけるすべての数値範囲は、その範囲内のすべての整数、全体又は分数を含むと理解されるべきである。さらに、これらの数値範囲は、その範囲内の任意の数又は数のサブセットを対象とする請求項の支持を提供すると解釈されるべきである。例えば、1から10の開示は、1から8、3から7、1から9、3.6から4.6、3.5から9.9などの範囲を支持すると解釈されるべきである。
【0062】
本明細書に開示された例及び態様は、単なる例示として解釈されるべきであり、決して本開示の範囲を限定するものではない。説明した基本原理から逸脱することなく、上述の例の詳細に変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。換言すれば、上記の説明で具体的に開示された例の様々な修正及び改善は、添付の特許請求の範囲内にある。例えば、記載された様々な例の特徴の任意の適切な組み合わせが企図される。