(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】ダイ
(51)【国際特許分類】
B05C 5/02 20060101AFI20240814BHJP
B05C 11/00 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
B05C5/02
B05C11/00
(21)【出願番号】P 2024501063
(86)(22)【出願日】2023-01-27
(86)【国際出願番号】 JP2023002624
(87)【国際公開番号】W WO2023157609
(87)【国際公開日】2023-08-24
【審査請求日】2024-01-09
(31)【優先権主張番号】P 2022021520
(32)【優先日】2022-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000240341
【氏名又は名称】株式会社ヒラノテクシード
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹野 祐史
【審査官】土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-501044(JP,A)
【文献】国際公開第2018/143342(WO,A1)
【文献】米国特許第6423140(US,B1)
【文献】国際公開第2021/161649(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/025960(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/02
B05C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエブにストライプ塗工するダイにおいて、
左右方向に長い四角柱であって、上面が平面であり、短手方向の断面形状において下面の前部は前方に行くほど狭くなるように形成された第1本体と、
左右方向に長い四角柱であって、下面が平面であり、短手方向の断面形状において上面の前部は前方に行くほど狭くなるように形成された第2本体と、
前記第1本体の前記上面と前記第2本体の前記下面との間に挟まれたシムと、
を有し、
前記第1本体の上面の左右方向には、塗工液が溜まる液溜め部が形成され、
前記シムは、前記液溜め部の後方の前記上面に配される後片と、前記液溜め部の左右両側の前記上面に配される左右両片と、前記液溜め部の前方の前記上面に配され、かつ、前後方向に延びた複数の櫛歯片とを有し、
前記液溜め部の前方に位置する前記上面であるランド面に、複数の前記櫛歯片が所定間隔毎に固定されている、
ことを特徴とするダイ。
【請求項2】
複数の前記櫛歯片は、前記ランド面に所定間隔毎に設けられた嵌合溝に嵌合して固定されている、
請求項1に記載のダイ。
【請求項3】
前記ランド面には、所定間隔毎に突部が突出し、
複数の前記櫛歯片には、孔、又は凹部が形成され、
複数の前記櫛歯片の前記孔、又は前記凹部が、前記突部に係合し、前記櫛歯片は前記ランド面に固定されている、
請求項1に記載のダイ。
【請求項4】
前記シムは、前記後片と、前記左右両片と、複数の前記櫛歯片とが一体である、
請求項1に記載のダイ。
【請求項5】
前記シムは、前記後片と前記左右両片とが一体であり、複数の前記櫛歯片は、互いに別体であり、かつ、前記後片と前記左右両片とも別体である、
請求項1に記載のダイ。
【請求項6】
ウエブにストライプ塗工するダイにおいて、
左右方向に長い四角柱であって、後面が平面であり、短手方向の断面形状において前面の上部は上方に行くほど狭くなるように形成された第1本体と、
左右方向に長い四角柱であって、前面が平面であり、短手方向の断面形状において後面の上部は上方に行くほど狭くなるように形成された第2本体と、
前記第1本体の前記後面と前記第2本体の前記前面との間に挟まれたシムと、
を有し、
前記第1本体の後面の左右方向には、塗工液が溜まる液溜め部が形成され、
前記シムは、前記液溜め部の下方の前記後面に配される下片と、前記液溜め部の左右両側の前記後面に配される左右両片と、前記液溜め部の上方の前記後面に配され、かつ、上下方向に延びた複数の櫛歯片とを有し、
前記液溜め部の上方に位置する前記後面に、複数の前記櫛歯片が所定間隔毎に固定されている、
ことを特徴とするダイ。
【請求項7】
ウエブにストライプ塗工するダイにおいて、
左右方向に長い四角柱であって、上面が平面であり、短手方向の断面形状において下面の前部は前方に行くほど狭くなるように形成された第1本体と、
左右方向に長い三角柱であって、上面と下面が平面であり、短手方向の断面形状において前部は前方に行くほど狭くなるように形成された第2本体と、
左右方向に長い四角柱であって、下面が平面であり、短手方向の断面形状において上面の前部は前方に行くほど狭くなるように形成された第3本体と、
前記第1本体の前記上面と前記第2本体の前記下面との間に挟まれた第1シムと、
前記第2本体の前記上面と前記第3本体の前記下面との間に挟まれた第2シムと、
を有し、
前記第1本体の上面の左右方向には、塗工液が溜まる第1液溜め部が形成され、
前記第2本体の上面の左右方向には、塗工液が溜まる第2液溜め部が形成され、
前記第1シムは、前記第1液溜め部の後方の前記上面に配される第1後片と、前記第1液溜め部の左右両側の前記上面に配される第1左右両片と、前記第1液溜め部の前方の前記上面に配され、かつ、前後方向に延びた複数の第1櫛歯片とを有し、
前記第1液溜め部の前方に位置する前記上面に、複数の前記第1櫛歯片が所定間隔毎に固定され、
前記第2シムは、前記第2液溜め部の後方の前記上面に配される第2後片と、前記第2液溜め部の左右両側の前記上面に配される第2左右両片と、前記第2液溜め部の前方の前記上面に配され、かつ、前後方向に延びた複数の第2櫛歯片とを有し、
前記第2液溜め部の前方に位置する前記上面に、複数の前記第2櫛歯片が所定間隔毎に固定されている、
ことを特徴とするダイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエブの塗工装置に使用されるダイに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、長尺状のウエブに塗工液を、ストライプ塗工するダイを有する塗工装置が提案されている。このストライプ塗工は、ダイに櫛歯状のシムを組み付け、ウエブの幅方向に沿って非塗工部、塗工部、非塗工部、塗工部、非塗工部と交互に塗工する塗工方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-28839号公報
【文献】特開2017-35668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最近、ストライプ塗工する場合に、その塗工位置は非常に重要であり、高い精度が要求される。
【0005】
しかし、櫛歯状のシムは金属製であり、その形状が平面的に高精度、かつ、極めて薄く製作されるため、歪みを完全に払拭することはできず、ダイへの組み付け時にその歪みと、それぞれの櫛歯の位置決めが難しく、目的のストライプ塗工を精度よく実現することは難しいという問題点があった。
【0006】
そこで本発明は、ダイに櫛歯状のシムを組み付ける場合に、複数の櫛歯片が所定の位置に固定できるダイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ウエブにストライプ塗工するダイにおいて、左右方向に長い四角柱であって、上面が平面であり、短手方向の断面形状において下面の前部は前方に行くほど狭くなるように形成された第1本体と、左右方向に長い四角柱であって、下面が平面であり、短手方向の断面形状において上面の前部は前方に行くほど狭くなるように形成された第2本体と、前記第1本体の前記上面と前記第2本体の前記下面との間に挟まれたシムと、を有し、前記第1本体の上面の左右方向には、塗工液が溜まる液溜め部が形成され、前記シムは、前記液溜め部の後方の前記上面に配される後片と、前記液溜め部の左右両側の前記上面に配される左右両片と、前記液溜め部の前方の前記上面に配され、かつ、前後方向に延びた複数の櫛歯片とを有し、前記液溜め部の前方に位置する前記上面に、複数の前記櫛歯片が所定間隔毎に固定されている、ことを特徴とするダイである。
【0008】
また、本発明は、ウエブにストライプ塗工するダイにおいて、左右方向に長い四角柱であって、後面が平面であり、短手方向の断面形状において前面の上部は上方に行くほど狭くなるように形成された第1本体と、左右方向に長い四角柱であって、前面が平面であり、短手方向の断面形状において後面の上部は上方に行くほど狭くなるように形成された第2本体と、前記第1本体の前記後面と前記第2本体の前記前面との間に挟まれたシムと、を有し、前記第1本体の後面の左右方向には、塗工液が溜まる液溜め部が形成され、前記シムは、前記液溜め部の下方の前記後面に配される下片と、前記液溜め部の左右両側の前記後面に配される左右両片と、前記液溜め部の上方の前記後面に配され、かつ、上下方向に延びた複数の櫛歯片とを有し、前記液溜め部の上方に位置する前記後面に、複数の前記櫛歯片が所定間隔毎に固定されている、ことを特徴とするダイである。
【0009】
また、本発明は、ウエブにストライプ塗工するダイにおいて、左右方向に長い四角柱であって、上面が平面であり、短手方向の断面形状において下面の前部は前方に行くほど狭くなるように形成された第1本体と、左右方向に長い三角柱であって、上面と下面が平面であり、短手方向の断面形状において前部は前方に行くほど狭くなるように形成された第2本体と、左右方向に長い四角柱であって、下面が平面であり、短手方向の断面形状において上面の前部は前方に行くほど狭くなるように形成された第3本体と、前記第1本体の前記上面と前記第2本体の前記下面との間に挟まれた第1シムと、前記第2本体の前記上面と前記第3本体の前記下面との間に挟まれた第2シムと、を有し、前記第1本体の上面の左右方向には、塗工液が溜まる第1液溜め部が形成され、前記第2本体の上面の左右方向には、塗工液が溜まる第2液溜め部が形成され、前記第1シムは、前記第1液溜め部の後方の前記上面に配される第1後片と、前記第1液溜め部の左右両側の前記上面に配される第1左右両片と、前記第1液溜め部の前方の前記上面に配され、かつ、前後方向に延びた複数の第1櫛歯片とを有し、前記第1液溜め部の前方に位置する前記上面に、複数の前記第1櫛歯片が所定間隔毎に固定され、前記第2シムは、前記第2液溜め部の後方の前記上面に配される第2後片と、前記第2液溜め部の左右両側の前記上面に配される第2左右両片と、前記第2液溜め部の前方の前記上面に配され、かつ、前後方向に延びた複数の第2櫛歯片とを有し、前記第2液溜め部の前方に位置する前記上面に、複数の前記第2櫛歯片が所定間隔毎に固定されている、ことを特徴とするダイである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、液溜め部の前方に位置する上面に、シムの複数の櫛歯片を所定間隔毎に固定するため、ストライプ塗工する場合に塗工部の位置がずれない。
【0011】
また、本発明によれば、液溜め部の上方に位置する後面に、シムの複数の櫛歯片を所定間隔毎に固定するため、ストライプ塗工する場合に塗工部の位置がずれない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】ウエブに塗工部と非塗工部を形成した状態の平面図である。
【
図4】ランド面の嵌合溝に櫛歯片を嵌合しようとしている状態の一部斜視図である。
【
図5】ランド面における嵌合溝に櫛歯片を固定した状態の一部拡大斜視図である。
【
図6】第1本体とシムと第2本体とを、ボルトで結合した状態の斜視図である。
【
図7】第1本体とシムの櫛歯片と第2本体の組み合わせた状態の一部拡大斜視図である。
【
図9】ランド面のピンに櫛歯片を取り付けようとしている状態の一部拡大斜視図である。
【
図10】ランド面のピンに櫛歯片を取り付けた状態の一部拡大斜視図である。
【
図11】ランド面に櫛歯片を取り付けた状態の斜視図である。
【
図12】第1本体と櫛歯片と第2本体を取り付けた状態の一部拡大斜視図である。
【
図13】第1本体と櫛歯片と第2本体とピンとの一部拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態のウエブWにストライプ塗工を行う塗工装置1について図面を参照して説明する。長尺状のウエブWとしては、金属箔、フィルム、メッシュ状の金属、紙、布帛などである。
【実施形態1】
【0014】
実施形態1の塗工装置1について
図1~
図7を参照して説明する。
【0015】
(1)塗工装置1
塗工装置1の構造について
図1と
図2を参照して説明する。
【0016】
塗工装置1は、
図1に示すように、モータ3によって一定の回転速度で回転するバックアップロール2、ポンプ4、塗工液のタンク5、ダイ10を有している。
【0017】
バックアップロール2はウエブWを抱きかかえて下から上へ一定速度で走行させる。このバックアップロール2の後方には、ダイ10が水平方向(横向き)に配されている。ポンプ4は、タンク5に蓄積されている塗工液をダイ10に圧送し、ダイ10は、その前端部にある吐出口74から塗工液をウエブWにストライプ塗工する。これにより、
図2に示すように、ウエブWには、塗工部6と非塗工部7とが交互に形成できる。
【0018】
(2)ダイ10
次に、ストライプ塗工を行うダイ10について
図3~
図7を参照して説明する。なお、以下の説明で、左右方向とはウエブWの幅方向を意味し、前後方向に関しては、
図1においてダイ10の前方にバックアップロール2があるとして説明する。ダイ10は、
図3に示すように第1本体12と第2本体14とシム16とを有している。
【0019】
(2-1)第1本体12
第1本体12について説明する。
図3に示すように、第1本体12は、左右方向に長い四角柱であって、上面18は水平な平らな面で形成されている。下面20は水平な平らな面で形成されている。この下面20の前端部に続いて下傾斜面22が形成されている。下傾斜面22は、第1本体12の短手方向の断面形状において前方に行くほど狭くなるように形成されている。第1本体12の後面24は、垂直方向に平らな面で構成されている。第1本体12の左右両面は、垂直方向に平らな面で構成されている。
【0020】
図4と
図5に示すように、第1本体12の上面18の前端部と下傾斜面22の前端部が交わる位置には、下リップ部26が形成されている。この下リップ部26は左右方向に長い直方体であり、その前面は垂直方向に平らな面である。そして、この下リップ部26は、第1本体12の前端部から前方に突出した唇のようになっている。
【0021】
図3に示すように、第1本体12の上面18には、左右方向に長い液溜め部38が形成されている。液溜め部38は、平面形状が長方形であって第1本体12の上面18の中央部に設けられている。液溜め部38の左右方向における中央部の底面には塗工液が供給される供給口44が形成され、この供給口44は、下面20を貫通している。
【0022】
図3に示すように、液溜め部38の前方に位置する上面18と下リップ部26の上面を合わせて本明細書では「ランド面」40という。
図4に示すように、このランド面40には、所定間隔e毎に前後方向に延びた嵌合溝42がn個(n=>1、
図3、
図6では5個)形成されている。嵌合溝42の深さ寸法はaである。一方、ランド面40は、ランド面40の左右両側にある上面18(後から説明するシム16の左片48と右片50とが配される上面28)より寸法aだけ高く形成されている。嵌合溝42の幅dについては、後から説明する。
【0023】
図3に示すように、第1本体12における液溜め部38の外周部の位置には、複数のボルト孔56が上下方向に貫通している。
【0024】
(2-2)第2本体14
第2本体14について説明する。
図3に示すように、第2本体14は、左右方向に長い四角柱であって、左右方向の寸法に関しては第1本体12と同じ寸法で形成されている。第2本体14の下面30は、水平な平らな面で形成されている。上面28も水平な平らな面で形成されている。この上面28の前端部に続いて上傾斜面32が形成されている。上傾斜面32は、第2本体14の短手方向の断面形状において前方に行くほど狭くなるように形成されている。第2本体14の後面34は、平らな面で形成されている。第2本体14の左右両面は、平らな面で構成されている。
【0025】
上傾斜面32と下面30が交わる位置には、上リップ部36が形成されている。この上リップ部36は左右方向に長い直方体であり、その前面は垂直方向に平らな面である。そして、上リップ部36は、第2本体14の前端部から前方に唇のように突出した状態となっている。
【0026】
第1本体12の複数のボルト孔56の位置に対応して、第2本体14には複数のボルト孔60が上下方向に貫通している。
【0027】
(2-3)シム16
シム16について説明する。シム16は、
図3と
図4に示すように櫛歯状であり、厚さ寸法b(但し、b>aである)の薄い金属板より形成され、後片46、左片48、右片50、櫛歯片52が一体に形成されている。後片46は、平面形状が長方形であり、液溜め部38の後方にある上面18に配される。左片48は、平面形状が長方形であり、後片46の左端部から前方に延び、液溜め部38の左側の上面に配される。右片50は、平面形状が長方形であり、後片46の右端部から前方に延び、液溜め部38の右側の上面18に配される。櫛歯片52は、平面形状が長方形であり、左片48と右片50との間の後片46の前端部から所定間隔e毎に前方にn個(n=>1、
図3、
図6では5個)突出している。
【0028】
図4に示すように、それぞれの櫛歯片52は、ランド面40に設けられた複数の嵌合溝42に対応した位置に突出し、櫛歯片52の幅dは嵌合溝の幅dとほぼ同じ寸法に形成されているので、
図4と
図5に示すように、櫛歯片52は嵌合溝42に嵌合できる。
図2と
図5に示すように、櫛歯片52の長さは、その前端部が嵌合溝42の前端部、すなわち、下リップ部26の前端部と一致するように形成されている。
【0029】
ダイ10によってストライプ塗工をする場合に、この櫛歯片52の位置が、ウエブWの非塗工部7の位置に対応し、隣接する櫛歯片52,52の間が、塗工部6の位置に対応する。
図2に示すようにウエブWに形成される6個の非塗工部7の幅Dと非塗工部7の幅Eとは予め判明しているが、実際には非塗工部7の幅Dと嵌合溝の幅d、及び塗工部6の幅Eと隣接する櫛歯片52,52の間隔eとは完全に一致しない。そのため、予め実験を行い、非塗工部7の幅Dと塗工部6の幅Eが得られるように、櫛歯片52の幅dと櫛歯片52,52の間隔eとを求めておく。それに合わせてランド面40に嵌合溝42を形成する。
【0030】
第1本体12の複数のボルト孔56に位置に対応して、シム16には、複数のボルト孔58が貫通している。
【0031】
(3)ダイ10の組み立て方法
次に、ダイ10の組み立て方法について
図2~
図7を参照して説明する。
【0032】
第1に、
図3~
図5に示すように、第1本体12の上面18にシム16を組み付ける。この場合には、シム16の後片46は液溜め部38の後方にある上面18に配し、左片48は液溜め部38の左側にある上面18に配し、右片50は液溜め部38の右側にある上面18に配し、それぞれの櫛歯片52は嵌合溝42に嵌合させる。なお、
図7に示すように、ランド面40が、その左右両側にある上面18より高さaだけ高く形成されているので、ランド面40にある嵌合溝42に櫛歯片52を嵌合させても、第1本体12に配されたシム16の後片46、左片48、右片50と同じ高さになる。
【0033】
第2に、
図6と
図7に示すように、第1本体12とシム16の上に第2本体14を配して、複数のボルト54により一体に締結する。なお、複数のボルト54は、第2本体14の複数のボルト孔60、シム16の複数のボルト孔58、第1本体12の複数のボルト孔56の順番に螺合して締結する。すると、第1本体12の前端部の下リップ部26と、第2本体14の前端部の上リップ部36とにより、ダイ10の前端部から唇のように突出したリップ部分が形成される。このリップ部分の櫛歯片52と櫛歯片52との間には、吐出口74が形成され、吐出口74の上下方向の寸法c=b-aとなる。そして、これら吐出口74から塗工液を吐出し、ストライプ塗工できる。
【0034】
(4)塗工装置1の動作状態
次に、塗工装置1の動作状態について
図1、
図2、
図7を参照して説明する。
【0035】
図1に示すように、モータ3によって一定の回転速度でバックアップロール2が回転し、その後周面で抱きかかえたウエブWを下から上へ一定速度で走行する。ポンプ4は、タンク5に蓄積されている塗工液をダイ10の供給口44に圧送する。ダイ10に圧送された塗工液は、液溜め部38で左右に拡がり、櫛歯片52と隣接する櫛歯片52との間(液通路)を通り、リップ部分の前面にある吐出口74からウエブWに塗工され、ストライプ状の塗工部6を形成する。一方、櫛歯片52の位置は塗工液が塗工されず非塗工部7となる。これにより、ウエブWには、
図2に示すように、幅Eの塗工部6と幅Dの非塗工部7とが交互に形成され、ストライプ塗工ができる。
【0036】
(5)効果
本実施形態によれば、ウエブWに形成する非塗工部7の幅Dと塗工部6の幅Eに合わせて、ランド面40にあるシム16の櫛歯片52の幅dと隣接する櫛歯片52,52の間隔eを形成すると共に、櫛歯片52が嵌合溝42に嵌合しているので、ダイ10の組み立て時や塗工中に櫛歯片52の位置ずれが起こらず、塗工部6の幅寸法と非塗工部7の幅寸法は、設計通りの高い精度でウエブWに形成できる。
【0037】
(6)変更例
上記実施形態では、シム16の後片46と左右両片48,50、複数の櫛歯片52とは一体であったが、複数の櫛歯片52のみが後片46と左右両片48,50とは別体であってもよい。
【0038】
上記実施形態では、液溜め部38から延びる供給口44は、下面20に貫通しているが、これに限らず、第1本体12の後面に貫通していてもよい。
【実施形態2】
【0039】
次に、実施形態2の塗工装置1のダイ10について
図8~
図13を参照して説明する。本実施形態と第1の実施形態との異なる点は、厚さ寸法bのシム16の櫛歯片52の構造と、ランド面40の構造にある。
【0040】
実施形態1では、櫛歯状のシム16の櫛歯片52は、後片46と一体であったが、本実施形態では、
図8と
図11に示すように、櫛歯片52は後片46から独立し別体となっている。
図8に示すように、櫛歯片52は、長方形の金属板より形成され、櫛歯片52の幅は非塗工部7の幅Dと対応した寸法dに形成されている。また、櫛歯片52の前後方向の長さはランド面40の前後方向の長さと同じ寸法に形成されている。この櫛歯片52には、2個のピン孔62が上下方向に貫通し、このピン孔62は、平面視で長方形の櫛歯片52の前部と後部に開口している。なお、本実施形態のランド面40は、実施形態1と異なりシム16の左片48と右片50とが配される上面28と同じ高さに形成されている。
【0041】
ランド面40における櫛歯片52を取り付ける位置には、
図9に示すようにピン64が突出している。このピン64の位置は、
図11に示すように、隣接する櫛歯片52の間隔eがウエブWの塗工部6の幅Eと対応するように、
図13に示すように、ランド面40に予め埋設しておく。また、
図11に示すように、ピン64は、櫛歯片52の2個のピン孔62,62と対応するように前後方向に2個突出している。このピン64がランド面40から突出した突部である。
【0042】
シム16を第1本体12の上面に組み付ける場合には、
図8に示すように、シム16の後片46は液溜め部38の後方にある上面18に配し、左片48は液溜め部38の左側にある上面18に配し、右片50は液溜め部38の右側にある上面18に配する。そして、
図8と
図11に示すように、独立している櫛歯片52はそれぞれピン64が突出している位置に取り付ける。
【0043】
このようにシム16と複数の櫛歯片52を取り付けた後、
図12に示すように、第2本体14を上方から被せ、複数のボルトで固定する。なお、複数のボルトは、第2本体14の複数のボルト孔60、シム16の複数のボルト孔58、第1本体12の複数のボルト孔56の順番に螺合して締結する。すると、
図12に示すように、第1本体12の前端部の下リップ部26と、第2本体14の前端部の上リップ部36とにより、ダイ10の前端部から唇のように突出したリップ部分が形成される。このリップ部分の櫛歯片52と櫛歯片52との間には、吐出口74が形成され、吐出口74の上下方向の寸法は、シム16の厚みbと同じ寸法になる。そして、これら吐出口74から塗工液を吐出し、ストライプ塗工できる。
【0044】
本実施形態のダイ10であっても、ウエブWの非塗工部7に対応するように、ランド面40にピン64を設け、このピン64に合うように櫛歯片52を固定する。そのため、ウエブWの塗工部6と非塗工部7を精度良く形成してストライプ塗工を行うことができる。
【0045】
上記実施形態では、ランド面40にはピン64を前後方向に2個設けたが、設ける個数、位置はこれに限らない。例えば、平面視で3個のピン64を二等辺三角形の角部の位置に配し、櫛歯片52にも、それに対応させて3個のピン孔62を設けてもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、櫛歯片52にピン孔62を貫通して開口したが、これに代えて、ピン64が収納できる程度の凹部を櫛歯片52の下面にサグリ加工してもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、ランド面から突出する突部は、ピン64を用いたが、これに代えて、他の部材でもよく、例えば、ネジなどでもよい。
【実施形態3】
【0048】
次に、実施形態3の塗工装置1のダイ10について
図14を参照して説明する。
【0049】
実施形態2では、櫛歯片52のみシム16の後片46、左片48、右片50と独立させた。これに代えて本実施形態では左片48と右片50を2つに分割する。
【0050】
図14に示すように、左片48の前端部を、液溜め部38の前端部までとし、左片48の前方にあるランド面40の左端部には、左片48とは別体の平面形状が長方形の左前シム片66を配する。
【0051】
図14に示すように、右片50の前端部も、液溜め部38の前端部までとし、右片50の前方にあるランド面40の右端部には、右片50とは別体の平面形状が長方形の右前シム片68を配する。
【0052】
図14に示すように、左前シム片66には、その角部の内側に4個のピン孔が貫通し、ランド面40の左端部には4個のピン70が突出し、この4個のピン70に左前シム片66のピン孔を嵌め込むことにより、左前シム片66を位置決めしてランド面40に固定できる。
【0053】
図14に示すように、右前シム片68には、その角部の内側に4個のピン孔が貫通し、ランド面40の右端部には4個のピン72が突出し、この4個のピン72に右前シム片68のピン孔を嵌め込むことにより、右前シム片68を位置決めしてランド面40に固定できる。
【0054】
本実施形態であっても、ウエブWの非塗工部7と塗工部6に対応して、櫛歯状のシム16の櫛歯片52と左前シム片66と右前シム片68を簡単に取り付けできる。
【実施形態4】
【0055】
次に、実施形態4の塗工装置1について
図15を参照して説明する。
【0056】
上記実施形態1~3では、バックアップロール2の後方にダイ10を水平方向(横向き)に配していた。本実施形態ではこれに代えて、バックアップロール2の下方にダイ10を垂直方向(縦向き)に配している。
【0057】
図15に示すように、バックアップロール2はウエブWを下周面で抱きかかえて前後方向に一定速度で走行させる。このバックアップロール2の下方にダイ10が縦向きに配されている。ポンプ4は、タンク5に蓄積されている塗工液をダイ10に圧送し、ダイ10は、その上端部の吐出口74から塗工液をウエブWにストライプ塗工する。
【0058】
本実施形態のダイ10も第1本体12と第2本体14とシム16とより構成され、実施形態1における水平方向(横方向)のダイ10を90°回転させて垂直方向(縦方向)に配した状態となっている。
【0059】
すなわち、ダイ10の第1本体12は、左右方向に長い四角柱であって、後面が平面であり、短手方向の断面形状において前面の上部は上方に行くほど狭くなるように前傾斜面が形成されている。第1本体12の後面の左右方向には、塗工液が溜まる液溜め部38が形成されている。
【0060】
第2本体14は、左右方向に長い四角柱であって、前面が平面であり、短手方向の断面形状において後面の上部は上方に行くほど狭くなるように形成された後傾斜面が形成されている。
【0061】
櫛歯状のシム16は、第1本体12の後面と第2本体14の前面との間に挟まれている。シム16は、液溜め部38の下方の第1本体12の後面に配される下片と、液溜め部38の左右両側の第1本体12の後面に配される左右両片と、液溜め部38の上方の第1本体12の前面(ランド面)に配され、かつ、上下方向に下片から延びた複数の櫛歯片とを有している。
【0062】
第1本体12のランド面に、嵌合溝が上下方向に設けられ、シム16の複数の櫛歯片が所定間隔毎に固定される。
【0063】
本実施形態4は、実施形態1のダイ10を縦方向に配置した構造となっているが、これに代えて、実施形態2のダイ10を縦方向に配置した構造でもよい。具体的には、シム16が、下片と左右両片とが一体であり、複数の櫛歯片のみが別体である。そして、複数の櫛歯片は、第1本体12のランド面に所定間隔毎にピンで固定されている。
【0064】
また、本実施形態4では、バックアップロール2の下方にダイ10を垂直方向(縦向き)に配しているが、ダイ10を垂直方向から傾斜させた斜め配置でもよい。具体的には、第1本体12の後面と第2本体14の前面の側方から見た垂直方向に対する傾斜角θ°が0°<=θ°<=45°以下であればよい。なお、θ°=0°のときが本実施形態4であり、θ°=90°のときが本実施形態1、2である。
【0065】
ダイ10の設置方向については、0°<=θ°<=90°であればよく、例えば、θ°=45°のように斜めにダイを配置してもよい。
【実施形態5】
【0066】
次に、実施形態5の塗工装置100のダイ110について
図16を参照して説明する。実施形態1~4においては、一層の塗工液をストライプ塗工する塗工装置1であったが、本実施形態の塗工装置100は、塗工液を二層に積層してストライプ塗工できるものである。
【0067】
(1)ダイ110
まず、ダイ110について説明する。ダイ110は、バックアップロール102の後方に水平方向(横向き)に配されている。ダイ110は、第1本体112と、第1本体112の上に配された第1シム118と、第1シム118の上に配された第2本体114と、第2本体114の上に配された第2シム120と、第2シム120の上に配され第3本体116とを有する。
【0068】
第1本体112は、左右方向に長い四角柱であって、上面が平面であり、短手方向の断面形状において下面から続く前面は前方に行くほど狭くなるように形成されている。第1本体112の上面には、第1液溜め部122が設けられ、第1液溜め部122の左右方向の中央部に第1塗工液を供給する第1供給口126が設けられている。この第1供給口126は、第1本体112の後面に延びて、その後面から第1塗工液が供給される。
【0069】
第2本体114は、左右方向に長い三角柱であって、上面と下面が平面であり、短手方向の断面形状において前部は前方に行くほど狭くなるように形成されている。第2本体114の上面には、第2液溜め部124が設けられ、第2液溜め部124にも第2塗工液を供給する第2供給口128が設けられている。この第2供給口128は、第2本体114の後面に延びて、その後面から第2塗工液が供給される。
【0070】
第3本体116は、左右方向に長い四角柱であって、下面が平面であり、短手方向の断面形状において上面から続く前面は前方に行くほど狭くなるように形成されている。
【0071】
第1シム118は、第1本体112の上面と第2本体114の下面との間に挟まれている。第1シム118は、第1液溜め部122の後方の上面に配される第1後片と、第1液溜め部122の左右両側の上面に配される第1左右両片と、第1後片の前端部から所定間隔毎に突出した複数の第1櫛歯片とを有している。また、第1液溜め部122の前方に位置する第1本体112の上面(第1ランド面)には、複数の第1櫛歯片が所定間隔毎に嵌合して固定される第1嵌合溝が形成されている。
【0072】
第2シム120は、第2本体114の上面と第3本体116の下面との間に挟まれている。第2シム120は、第2液溜め部124の後方の上面に配される第2後片と、第2液溜め部124の左右両側の上面に配される第2左右両片と、第2後片の前端部から所定間隔毎に前後方向に突出した複数の第2櫛歯片とを有している。また、第2液溜め部124の前方に位置する第2本体114の上面(第2ランド面)には、複数の第2櫛歯片が所定間隔毎に嵌合して固定される第2嵌合溝が形成されている。
【0073】
(2)塗工装置100
塗工装置100について
図16を参照して説明する。モータ103によって一定速度で回転するバックアップロール102は、ウエブWを後周面で抱きかかえて下から上に走行させる。二層のストライプ塗工を行うダイ110は、バックアップロール102の後方に水平方向(横向き)に配されている。一層目に塗工される第1塗工液を、第1タンク105から第1ポンプ104によって、ダイ110の第1液溜め部122に圧送し、二層目に塗工される第2塗工液を、第2タンク107から第2ポンプ106によって、ダイ110の第2液溜め部132に圧送する。第1塗工液は、第1液溜め部122で左右に拡がり、第1櫛歯片と隣接する第1櫛歯片との間を通り、ダイ110の前面にある吐出口からウエブWに塗工され一層目の第1塗工部を塗工する。一方、第1櫛歯片の位置は第1塗工液が塗工されず第1非塗工部となる。第2塗工液は、第2液溜め部124で左右に拡がり、第2櫛歯片と隣接する第2櫛歯片との間を通り、ダイ110の前面にある吐出口からウエブWに塗工され一層目の第1塗工部の上に二層目の第2塗工部を塗工する。一方、第2櫛歯片の位置は第2塗工液が塗工されず非塗工部となる。
【0074】
本実施形態によれば、第1シム118の第1櫛歯片が第1本体112の第1ランド面に設けられた第1嵌合溝に嵌合し、第2シム120の第2櫛歯片が、第2本体114の第2ランド面に設けられた第2嵌合溝に嵌合して固定されているため、ウエブWの二層の塗工部6と非塗工部7とを精度良くストライプ塗工できる。
【0075】
(3)変更例1
上記実施形態5では実施形態1のダイ10の構造を適用して説明したが、これに代えて、変更例1では実施形態2のダイ10の構造を適用してもよい。すなわち、第1シム118の第1櫛歯片を独立させ、第2シム120の第2櫛歯片を独立させる。第1本体112の第1ランド面に非塗工部の位置に対応した第1ピンを突出させ、第2本体114の第2ランド面にも非塗工部の位置と対応した第2ピンを突出させる。そして独立した第1櫛歯片、第2櫛歯片をそれぞれ第1ピン、第2ピンに合わせて固定する。
【0076】
(4)変更例2
上記実施形態に代えて、変更例2では、バックアップロール102の下方にダイ110を垂直方向(縦向き)に配してもよい。
【0077】
(5)変更例3
上記実施形態では、塗工液を二層に積層してストライプ塗工したがこれに代えて、変更例3では、第1シムの第1櫛歯片と第2シムの第2櫛歯片との位置をずらして、それぞれ一層ずつウエブWにストライプ塗工してもよい。このときには、第1塗工液の第1塗工部と第2塗工液の第2塗工部とが、非塗工部を挟んで互いに交互に配されるように塗工する。
【変更例】
【0078】
次に、上記実施形態の変更例について説明する。
【0079】
上記実施形態では、下リップ部26と上リップ部36を設けたが、下リップ部26と上リップ部36を設けず、第1本体12の前端部は平らな上面18と下傾斜面22とが交差した状態でもよく、第2本体14の前端部も平らな下面30と上傾斜面32が交差した状態であってもよい。この場合には、ランド面40は、液溜め部38の前方にある第1本体12の上面18のみから形成される。
【0080】
また、上記実施形態では、ウエブWにストライプ塗工する塗工部6の幅は幅方向において全て同じであったが、それぞれ異なる幅で塗工部6を形成してもよい。この場合には、この異なる塗工部6の幅に合わせて、櫛歯片52の幅を設定する。
【0081】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0082】
10・・・ダイ、12・・・第1本体、14・・・第2本体、16・・・シム、18・・・上面、20・・・下面、38・・・液溜め部、40・・・ランド面、42・・・嵌合溝、46・・・後片、48・・・左片、50・・・右片、52・・・櫛歯片