(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】水中グライダの重量落下浮力システム
(51)【国際特許分類】
B63G 8/22 20060101AFI20240814BHJP
B63G 8/00 20060101ALI20240814BHJP
B63G 8/08 20060101ALI20240814BHJP
B63G 8/24 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
B63G8/22
B63G8/00 A
B63G8/08 Z
B63G8/24
(21)【出願番号】P 2024506741
(86)(22)【出願日】2022-05-11
(86)【国際出願番号】 US2022028835
(87)【国際公開番号】W WO2023014417
(87)【国際公開日】2023-02-09
【審査請求日】2024-02-02
(32)【優先日】2021-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520435267
【氏名又は名称】レイセオン ビービーエヌ テクノロジーズ コープ
【氏名又は名称原語表記】RAYTHEON BBN TECHNOLOGIES CORP.
【住所又は居所原語表記】10 Moulton Street Cambridge Massachusetts 02138 US
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100229448
【氏名又は名称】中槇 利明
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンタール,ベンジャミン ジャコブ
(72)【発明者】
【氏名】スタッセ,ジェームス ジョセフ
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第4301761(US,A)
【文献】中国特許出願公開第111907670(CN,A)
【文献】国際公開第2015/127244(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/067738(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/164135(US,A1)
【文献】特開平10-86894(JP,A)
【文献】特開平10-59282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63G 8/22
B63G 8/00
B63G 8/08
B63G 8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中自律航走体(AUV)のポンプレス浮力エンジンであって、
水中で前記AUVを下降させるために前記AUVの浮力を低減させる、液圧ポンプのない浮力低減構造と、
水中で前記AUVを上昇させるために事前に梱包された重量を前記AUVから落下させる重量落下
引張力構造と、を備え、
前記AUVは、下降時及び上昇時に前進
し、
前記重量落下引張力構造は、重量ワイヤと、前記重量ワイヤの部分を切断するためのカッターとを更に備え、前記重量ワイヤの前記切断される部分は、開口部から水中へ落下される、
ポンプレス浮力エンジン。
【請求項2】
前記浮力低減構造は、水の流入口/流出口と、容器とを備え、前記水の流入口/流出口から前記容器内に水を取り込むことにより、前記AUVの浮力は低減される、請求項1に記載のポンプレス浮力エンジン。
【請求項3】
浮力中立位置から離隔するように前記浮力を制御するための浮力コンパートメントをさらに備える、請求項
1に記載のポンプレス浮力エンジン。
【請求項4】
空気は、空気流出口を通して放出され、前記容器内の前記取り込まれた水により置き換えられる、請求項2に記載のポンプレス浮力エンジン。
【請求項5】
加圧ガスは、ガス流出口を通して放出され、前記容器内の前記取り込まれた水により置き換えられる、請求項2に記載のポンプレス浮力エンジン。
【請求項6】
前記浮力低減構造はさらに、バルブと、流量計とを備え、前記AUVの所望の深さを制御するために、前記バルブにより取水が制御され、前記バルブはコントローラにより制御される、請求項2に記載のポンプレス浮力エンジン。
【請求項7】
前記重量落下
引張力構造はさらに、ワイヤ供給器と、一端が前記AUVに固定され、他端がプーリシステムの周りに巻きつけられたばねとを備え、前
記重量ワイヤは、前記
ワイヤ供給器により供給され、エンコーダを有する破断部は、前記切断
される部分を前記開口部から水中に落下させるために、前記
重量ワイヤの一定の長さを測定する、請求項
1に記載のポンプレス浮力エンジン。
【請求項8】
前
記重量ワイヤは、鉛ワイヤである、請求項
7に記載のポンプレス浮力エンジン。
【請求項9】
前記重量落下
引張力構造は、粒状重量を含む容器を
更に備え、前記粒状重量は、前記容器から、バルブを有する開口を通って落下される、請求項
1に記載のポンプレス浮力エンジン。
【請求項10】
前記バルブはコントローラにより制御される、請求項
9に記載のポンプレス浮力エンジン。
【請求項11】
前記重量落下
引張力構造は中実重量を備え、開口部を通して前記中実重量を落下させることにより、前記浮力は低減される、請求項
1に記載のポンプレス浮力エンジン。
【請求項12】
前記重量落下
引張力構造はさらに、次
の落下
のために配置
されるように重量をシフトさせる引張力を
生成する、請求項
11に記載のポンプレス浮力エンジン。
【請求項13】
前記浮力低減構造は、1つ以上の空のスロットを備え、前記1つ以上の空のスロットは、水の流入口/流出口を介して水で充填され、前記1つ以上の空のスロット内の空気は、空気流出口から放出される、請求項
11に記載のポンプレス浮力エンジン。
【請求項14】
水中自律航走体(AUV)であって、
水中で前記AUVを下降させるために前記AUVの浮力を低減させる、液圧ポンプのない浮力低減構造と、
水中で前記AUVを上昇させるために事前に梱包された重量を前記AUVから落下させる重量落下
引張力構造と、
前記AUVを下降時及び上昇時に前進させる1つ以上のハイドロフォイルと、
前記AUVを操舵するための舵と、を備え
、
前記重量落下引張力構造は、重量ワイヤと、前記重量ワイヤの部分を切断するためのカッターとを更に備え、前記重量ワイヤの前記切断される部分は、開口部から水中へ落下される、
AUV。
【請求項15】
前記AUVの動きを制御するためのコントローラをさらに備える、請求項
14に記載のAUV。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、水中自律航走体(AUV)に関し、より具体的には、水中グライダの重量落下浮力システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水中自律航走体(AUV)は、航走体内のオペレータからの入力を必要とせずに、水中を走行する航走体である。AUVは通常、ケーブル接続を介して、または無線リモートコントロールを使用して、オペレータにより地上から制御され、給電される。水中グライダは、AUVのサブクラスであり、これは、有人航走体よりも安価であることから、近年、海洋学及び沿岸管理の長期データ収集などの水中の探索、研究、及び探査に魅力的なものとなっている。AUVは、水中で、例えば行方不明の飛行機及び船などの物体の残骸を発見するためにも使用されてきた。AUVはまた、諜報、監視、及び偵察、水雷対策、対潜水戦、標的の調査/特定、通信/ナビゲーションネットワークノード、ペイロード配送、ならびに情報活動などの軍事用途にも使用される。
【0003】
水中グライダは、従来のプロペラやスラスタの代わりに可変浮力推進力(エンジン)を用いる種類のAUVである。これは、プロファイリングフロートと同様に可変浮力を用いるが、上下のみ動くことができるフロートとは異なり、水中グライダは、ハイドロフォイル(水中翼)が取り付けられ、これにより、水中を下降しながら前方向に滑走することが可能となる。ある一定の深さで、グライダは正浮力に切り替わって再上昇及び前進し、その後、サイクルが繰り返される。
【0004】
浮力エンジンは、航走体または物体の浮力を変化させて、鉛直方向に移動させるデバイス、または水中グライダなどに可変浮力推進力を与えることにより前進運動をもたらすデバイスである。水中用途の場合、浮力エンジンは通常、液圧ポンプを含み、これは、作動液が充填された外部ブラダを膨張及び収縮させるか、または剛性プランジャを延伸及び退縮させる。
図1は、高圧ポンプ(バッテリを含む)を使用して、水、油、または空気を内部リザーバから外部ブラダに送り込み(バルブにより制御される)、これにより航走体の浮力を変化させる、典型的な浮力エンジンを示す。
【0005】
航走体の総体積の変化は、航走体の浮力を変化させ、必要に応じて航走体を上方または下方に移動させる。その際、エンジンを搭載した航走体の密度が変化する。その結果、水中グライダなどのAUVは、その浮力を調整することで、従来の推進方法なしで移動することができる。これにより、グライダは、浮力を制御する液体ポンプまたは化学的手段を使用して、作動状態を維持することが可能となる。水中グライダは、空中グライダの仕組みと同様の仕組みで作動する。水中グライダは、翼一式の表面を通る流体の流れ、この場合は水の流れを利用して、揚力及び推力を生成する。翼の先端の前部に重心(CG)を置くように、水中グライダ内に重量が持続的に設置及び分散され、その結果、効率的で滑らかな滑走勾配が生じる。浮力エンジンにより、水中グライダは、航走体の作動寿命にわたり滑水角を上下させるサイクルを繰り返すことで、より長い期間、滑走プロセスを続けることが可能となる。
【0006】
浮力エンジンがない場合、通常、水中グライダは、水上船により引き上げられるか、または1回だけ使用された後に、水面へ浮揚するパッケージを配備して水面で回収可能となる必要がある。浮力エンジンを追加することにより、水中グライダは、より長く作動状態を維持することができ、再利用できるため、実用的なツールとなる。
【0007】
他のAUVと比べて、グライダは、比較的低ノイズで作動するのに効果的である。ただし、浮力を制御するための液圧ポンプまたは任意の化学的手段を取り除くことで、ノイズは、周囲深海ノイズフロアを下回る。しかし、液圧ポンプまたは化学的手段を取り除くためには、浮力、CG、及び浮力中心(CB)を調整するための別のシステム及び方法が必要である。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、ノイズを生じ、エネルギーを消費する液圧ポンプを使用することなく、浮力、CG、及びCBを調整するための方法及びシステムに関する。本開示は、むしろ、重量の放出及び浮力の低減、ならびに質量及び浮力をそれぞれ配備した後に移動/スライドさせる仕組みにより、トリム及びピッチを制御する。
【0009】
いくつかの実施形態では、本開示は、水中自律航走体(AUV)のポンプレス浮力エンジンを説明する。ポンプレス浮力エンジンは、水中でAUVを下降させるためにAUVの浮力を低減させる、液圧ポンプのない浮力低減構造と、水中でAUVを上昇させるために事前に梱包された重量をAUVから落下させる重量落下構造とを備え、AUVは、下降時及び上昇時に前進する。
【0010】
いくつかの実施形態では、浮力低減構造は、水の流入口/流出口と、容器とを備え、AUVの浮力は、水の流入口/流出口から容器内へ水を取り込むことにより低減され、空気または高圧ガスは、空気流出口を通して放出され、容器内の取り込まれた水で置き換えられる。浮力低減構造はさらに、バルブと、流量計とを備え得、AUVの所望の深さを制御するために、バルブにより取水が制御され、バルブはコントローラにより制御される。
【0011】
いくつかの実施形態では、重量落下構造は、大重量ワイヤと、ワイヤの一部を切断するためのカッターとを備え、ワイヤの切断部分は、開口部から水中へ落下される。いくつかの実施形態では、重量落下構造はさらに、ワイヤ供給器と、一端がAUVに固定され、他端がプーリシステムの周りに巻きつけられたばねとを備え得、大重量ワイヤは、供給器により供給され、エンコーダを有する破断部は、切断部分を開口部から水中に落下させるために、ワイヤの一定の長さを測定する。
【0012】
添付の図面と併せて考察される下記の発明を実施するための形態を参照することにより、開示される本発明は、より良く理解されるようになるため、開示される本発明のより完全な認識、及び本発明に付随する特徴及び態様の多くが、より容易に明らかとなるであろう。添付の図面では、同様の参照記号は、同様の構成要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】本開示のいくつかの実施形態による、ポンプのない浮力エンジンを使用する水中航走体の動作を示す。
【
図3A】本開示のいくつかの実施形態による、ワイヤ重量及び空気放出部を有するポンプレス浮力エンジンを示す。
【
図3B】本開示のいくつかの実施形態による、ワイヤ重量及び高圧ガス放出部を有するポンプレス浮力エンジンを示す。
【
図4A】本開示のいくつかの実施形態による、粒状重量及び空気放出部を有するポンプレス浮力エンジンを示す。
【
図4B】本開示のいくつかの実施形態による、粒状重量及び高圧ガス放出部を有するポンプレス浮力エンジンを示す。
【
図5】本開示のいくつかの実施形態による、中実重量放出部を有するポンプレス浮力エンジンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
いくつかの実施形態によれば、システム及び方法は、重量及び浮力を使用して、密度の中心及び浮力の中心を、それぞれの中立位置から離隔するように制御し、同時にトリムを制御する。本開示は、浮力を制御するために液圧ポンプまたは化学的手段を使用しない。砂、鉛、及び他の種類の重量など、事前に梱包された重量と、浮力コンパートメントとを使用して、中立位置からの離隔率が制御される。いくつかの実施形態では、AUVは、走行サイクルごとに、周囲の水よりも軽い重量または体積のいずれかを落下させて、CB及び浮力を中立付近にシフトさせる。中立浮力からさらに離隔させることにより、グライダの速度は、液圧ポンプシステムと比べて大幅に増加する。本開示のシステム及び方法は、重量の放出及び浮力の解放、ならびに質量及び浮力をそれぞれ配備した後にスライドさせる単純な仕組みにより、トリムを制御する。これは、トリムを制御する二次システムを有する既存のシステムとは異なる。
【0015】
図2は、本開示のいくつかの実施形態による、ポンプなしで、重量及び浮力を使用する水中航走体の動作を示す。ポンプレス浮力エンジンを備えたAUV202が配備される場合、航走体は、自身の密度を増加させて、水面下に下降し、自身の動作を開始するのに好適な(所望の)深さに到達する。好適な深さに到達すると、航走体は、自身の動作を開始し、浮力エンジンは、滑走に最も効率的な値に密度を調整する。所定の深さに達すると、浮力エンジンは、密度を減少させ、グライダを表面(または所望の水深)に向かって上方に滑走させる。このようにして、AUVは、事前に設定された2つの深さの間で作動状態を維持する。
【0016】
図2に示されるように、AUV202は、重量の落下及び浮力の低下を順次行って、水中を移動するのに必要な中立付近での変動を達成する。航走体の発進時(点A)、航走体202は、中立浮力よりも重い。当技術分野では知られているように、物体が浸かっている流体(この場合では水)の密度と、物体の平均密度が等しい場合に、中立浮力は発生し、物体を下降させる重力(本体が浸かっている流体の密度よりも本体の密度が大きい場合)または物体を上昇させる重力(本体の密度がより小さい場合)と釣り合う浮力が生じる。中立浮力を有する物体は、下降することも上昇することもない。
【0017】
滑走経路の上部(点A及び点C)では、船首から浮力を低下させることにより(
図3~
図5に関して説明される)、航走体202は先頭を下に傾けて下降する。いくつかの実施形態において、走行の各区間の上部では、例えば潜水艦バラストタンクと同様に、浮力コンパートメントは、浮力を低下させる水で溢れている。滑走経路の底部(点B及び点D)では、船首から重量を放出することにより(
図3~
図5に関して説明される)、航走体は先頭を上に傾けて上昇する。このプロセスは、走行経路で繰り返される。いくつかの実施形態では、重量または浮力質量が放出されるたびに、残りの質量が船首により近づくようにシフトされる。本開示のポンプレス浮力エンジンにより、航走体202はその密度を変化させることが可能になるため、航走体202は二方向に滑走することができる。航走体202は、通常のグライダのように下方に滑走することができ、または周囲の水よりも自身の密度を低下させた場合、上方に滑走することができる。このようにして、浮力エンジンが稼働状態にある限り、航走体は作動し続け、エアロフォイル形状の翼をトリミングすることにより、前方へ走行することができる。
【0018】
図3Aは、本開示のいくつかの実施形態による、ワイヤ重量及び空気放出部を有するポンプレス浮力エンジンを示す。示されるように、AUV300Aは、液圧ポンプのない浮力低減構造302と、鉛ワイヤなどの大重量ワイヤ310を含む重量落下/低減構造とを備える。周囲の水(例えば海水)を水の流入口/流出口304から容器307に取り込むことにより、浮力は低減される。容器307内の空気は、空気流出口306から放出され、容器307内の水で置き換えられ、結果、AUV300Aの質量が増加する。これにより、AUV300Aの浮力が低減され、よってAUV300Aは潜水する。AUVの所望の深さを制御するために、取水がバルブ305により制御される。例えば、流量計308は、取り込まれた水の流れ及び量を測定し、AUVが所望の深さに到達すると、バルブを閉じる。バルブは、AUV内部の電子装置324により(例えばコントローラ324により実行されるプログラムにより)制御され、または既知の方法と同様に、航走体の外部から遠隔制御される。
【0019】
AUV300Aが所望の深さに到達すると、大重量ワイヤ310の一部(断片)312が切断されて、開口部309から周囲の水中に落下され、航走体の質量減少が生じ、これにより、航走体は上昇する(浮上する)。いくつかの実施形態では、鉛ワイヤなどの大重量ワイヤ310は、ばね314を含む供給器により供給/移動され、ばね314は、一端318が航走体に固定され、他端がプーリシステム316の周りに巻きつけられる。プーリシステム316は、カッター319と、エンコーダを有する破断部とを備え、これらは、ワイヤの一定の長さを(機械的に)測定し、ワイヤを切断して、切断部分を開口部309から落下させる。
図3Aの開示は、例として空気を使用するが、空気の代わりに高圧ガスが使用されてもよいことが、当業者には認識されよう。
【0020】
当技術分野では知られているように、ハイドロフォイル形状の翼322(簡潔にするために1つが示される)は、AUV300Aが下降(潜水)及び上昇(浮上)しているときに、AUV300Aを前方へ移動させる。当技術分野では知られているように、航走体の操舵は、航走体の尾端にある舵320を(例えば遠隔で)制御することにより達成され得る。
【0021】
図3Bは、本開示のいくつかの実施形態による、ワイヤ重量及び高圧ガス放出部を有するポンプレス浮力エンジンを示す。示されるように、AUV300Bにおける大重量ワイヤ310を含む重量落下/低減構造は、
図3Aのものと同様である。しかし、液圧ポンプのない浮力低減構造332は、窒素などの高圧ガスの容器337を備え、高圧ガスは流出口330から放出される。ガスは、容器337内の水により部分的に置き換えられ、
図3AのAUV300Aの場合と同様に、AUV300Bの質量の増加を生じる。
【0022】
AUVの所望の潜水率を制御するために、取水がバルブ335により制御される。AUV300Aの場合と同様に、
図3Bにて、流量計338は、取り込まれた水の流れ及び量を測定し、AUV300Bが所望の深さに達すると、バルブを閉じる。バルブは、AUV内部の電子装置により(例えばコントローラ324により実行されるプログラムにより)制御され、または既知の方法と同様に、航走体の外部から遠隔制御される。
図3Bの説明は、例として高圧ガスを使用するが、高圧ガスの代わりに空気が使用されてもよいことが、当業者には認識されよう。
【0023】
図4Aは、本開示のいくつかの実施形態による、粒状重量及び空気放出部を有するポンプレス浮力エンジンを示す。示されるように、浮力低減構造332は、
図3Bの構造332と同様である。しかし、重量低減は、バルブを有する開口部334を通して、容器332から砂などの粒状重量を排出することにより行われる。走行経路の底部で所定量の粒状重量(例えば砂)を排出するように、バルブは、AUV400A内部の電子装置324により(例えばコントローラ324により実行されるプログラムにより)制御され、または航走体の外部から遠隔制御される。この質量減少により、AUV400Aは上昇する(浮上する)。
【0024】
図4Bは、本開示のいくつかの実施形態による、粒状重量及び高圧ガス放出部を有するポンプレス浮力エンジンを示す。示されるように、粒状重量(例えば砂)を含む重量落下/低減構造は、
図4Aのものと同様である。しかし、液圧ポンプのない浮力低減構造332は、
図3Aのものと同様の高圧ガスの容器337を備え、高圧ガスは流出口330から放出される。このようにして、ガスは容器337内の水により置き換えられ、AUV400Bの浮力減少が生じる。この浮力低減により、AUV400Bは下降(潜水)する。
【0025】
当技術分野では知られているように、ハイドロフォイル形状の翼322(簡潔にするために1つが示される)は、AUV400A及びAUV400Bが下降(潜水)及び上昇(浮上)しているときに、AUV400A及びAUV400Bを前方へ移動させる。当技術分野では知られているように、航走体の操舵は、航走体の尾端にある舵320を(例えば遠隔で)制御することにより達成され得る。
【0026】
図5は、本開示のいくつかの実施形態による、中実重量放出部を有するポンプレス浮力エンジンを示す。示されるように、AUV500は、液圧ポンプを使用することなく、浮力低減構造及び重量落下/低減構造を備える。重量落下/低減構造は、重い中実重量502と、軽い重量または空のチャンバ504とを備える。水面または所望の水深に存在する間に、AUV500を所望の深さへ移動させるために、所定の質量の重量(502及び504)により浮力が設定される。
【0027】
例えば、ばねが開口部510へ向かって重量502をシフトさせ、開口部510を通して重量502を落下させるなど、引張力506で重量502を落下させることにより、所望の深さで、浮力が高められる。代替的に、重量502は(閉鎖状態の)開口部510の上に既に存在していてもよく、好適な時点(深さ)で、開口部510が開き、重量502を落下させる。その後、次に落下させる重量を設置/配置するために、引張力506により重量が前方へ(開口部に対して)シフトされる。その結果、航走体500の質量は減少し、その浮力が高まり、航走体を上昇(浮上)させる。
【0028】
水中の所望の水深に到達すると、落下させた重量502の空のスロット(または隣接する空のスロット504)に、水の流入口/流出口512を介して水が充填され、空のスロット内の空気は、空気流出口508から放出され、AUV500の質量増加が生じる。これにより、AUVの浮力が低減され、AUVは潜水及び沈水する。いくつかの実施形態では、AUV500を所望の深さまで移動させるために、AUV500内部の電子装置324が操作するバルブにより、取水が制御され得る。先と同様に、ハイドロフォイル形状の翼322は、AUV500が下降(潜水)及び上昇(浮上)しているときに、AUV500を前方へ移動させる。当技術分野では知られているように、航走体の操舵は、航走体の尾端にある舵320を操作することにより達成され得る。
【0029】
周知のように、浮力を解放して水を取り込むための1つの方法は、ガスで充填されたプラスチック容器/管またはガラス球などの空間を占めるいくらかの軽い重量を放出することである。いくつかの実施形態では、軽い重量または空のチャンバ504が放出されて、浮力が解放される。
【0030】
本開示のシステムは、浮力を制御するために液体ポンプまたは化学的手段を使用しない。前述のように、事前に梱包された重量及び浮力コンパートメントを使用して、中立CG及び中立CBからの離隔率が制御される。グライダの速度は翼により生成される揚力量に正比例するので、中立浮力からさらに離隔させることにより、航走体の速度は増加する。そして翼の揚力は、翼の周りの流速の二乗に比例する。より速く下降または上昇することにより、揚力量が増大し、よって、推力量が増大する。
【0031】
バッテリの電気エネルギーと比べて、格納された重量及び体積の潜在的エネルギーの場合、エネルギー格納の空間占拠比率は高いため、航走体の範囲も増大する。さらに、ノイズレベルは、ポンプがないことから、大幅に減少する。周囲ノイズフロア未満の速度で作動することにより、検出される可能性が低減され、または敵は位置特定を行うためにリソースを増やして費やさなければならない。さらに、脆弱な可動部分がないことから、AUVの空中投下が可能である。また、中立CG及び中立CBからの変動は、制限なしで制御され、従来のポンプシステムでは、体積を超えて質量及びCGを移動させることは不可能であり、それらの潜在的な上昇速度/下降速度は制限されることに、留意されたい。
【0032】
上記で説明された本発明の例示的実施形態及び他の実施形態に対し、本発明の広範な発明範囲から逸脱することなく、様々な修正が行われてもよいことが、当業者には認識されよう。したがって、本発明は、開示される特定の実施形態または構成に限定されず、むしろ添付の特許請求の範囲及び図面により定義される本発明の範囲及び趣旨から逸脱しない、あらゆる変更、適合、または修正を対象とする意図があることが、理解されよう。