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▶ リバイブ・エンバイロンメンタル・テクノロジー、エルエルシーの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】活性炭を再生するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/34 20060101AFI20240815BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20240815BHJP
   C02F 1/28 20230101ALI20240815BHJP
   C01B 32/36 20170101ALI20240815BHJP
【FI】
B01J20/34 C
B01J20/20 A
C02F1/28 D
C01B32/36
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021557084
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-27
(86)【国際出願番号】 US2020024774
(87)【国際公開番号】W WO2020198394
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-03-17
(31)【優先権主張番号】62/823,570
(32)【優先日】2019-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】524272365
【氏名又は名称】リバイブ・エンバイロンメンタル・テクノロジー、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ライアン・アール・ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】カヴィタ・ダス
(72)【発明者】
【氏名】ディヌウシャ・シリワルデナ
(72)【発明者】
【氏名】フランコ・パラ
(72)【発明者】
【氏名】ラモナ・ダーリントン・イエリー
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-047590(JP,A)
【文献】国際公開第2007/032998(WO,A1)
【文献】特開平02-006891(JP,A)
【文献】特公昭49-021039(JP,B1)
【文献】特表2007-520350(JP,A)
【文献】特開2006-181416(JP,A)
【文献】特開2014-039912(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108554395(CN,A)
【文献】SHUBO DENG; ET AL,ENHANCED ADSORPTION OF PERFLUOROOCTANE SULFONATE AND PERFLUOROOCTANOATE BY BAMBOO 以下備考,JOURNAL OF HAZARDOUS MATERIALS,NL,2015年,VOL:282,PAGE(S):150-157,https://doi.org/10.1016/j.jhazmat.2014.03.045,-DERIVED GRANULAR ACTIVATED CARBON
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/34
B01J 20/20
C02F 1/28
C01B 32/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフルオロアルキル物質(PFAS)及び/またはペルフルオロオクタンスルホネート(PFOS)により汚染された活性炭の再生方法であって、
吸着されたポリフルオロアルキル物質(PFAS)及び/またはペルフルオロオクタンスルホネート(PFOS)を有する活性炭を提供することと、
前記活性炭を、少なくとも50質量%のアルコール、及び少なくとも0.2質量%の塩基を含む溶液中で接触させることと、
前記溶液から前記活性炭を分離することと、
を含む、前記方法。
【請求項2】
ポリフルオロアルキル物質(PFAS)及び/またはペルフルオロオクタンスルホネート(PFOS)により汚染された活性炭の再生方法であって、
吸着されたポリフルオロアルキル物質(PFAS)及び/またはペルフルオロオクタンスルホネート(PFOS)を有する活性炭を提供することと、
前記活性炭を、少なくとも50質量%のアルコール、及び少なくとも0.5質量%の塩基を含む溶液中で接触させることと、
前記溶液から前記活性炭を分離することと、
を含む、前記方法。
【請求項3】
前記溶液から分離されている前記活性炭をすすぐことを更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記接触工程が、少なくとも1分、または少なくとも2分、または少なくとも10分、または少なくとも100分、または1~1000分の間実施される、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
得られた活性炭が、未使用の活性炭と比較して、PFOS及び/またはPFOAを同一でまたは優れて吸着する、請求項1~4のいずれかに記載の方法
【請求項6】
前記得られた活性炭が、2日間PFASに暴露した後で前記未使用の活性炭と比較すると、PFOS及び/またはPFOAを優れて吸着する、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記得られた活性炭が、前記未使用の活性炭と比較して、PFOS及び/またはPFOAを同一でまたは優れて脱着する、請求項1~4のいずれかに記載の方法
【請求項8】
前記得られた活性炭が、2日間PFASに暴露した後で前記未使用の活性炭と比較すると、PFOS及び/またはPFOAを優れて脱着する、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記活性炭から分離された前記溶液が、蒸留して、リサイクルして再使用されて活性炭を再生するアルコール溶液を生成する、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記接触工程が浸漬、すすぎ、及び/または吹付けを含む、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記接触工程が、前記活性炭の体積に少なくとも等しい体積の溶液で、少なくとも3回すすぐことを含む、請求項1~10のいずれかに記載の方法
【請求項12】
前記溶液が、少なくとも60、70、80、90、または95質量%のアルコールを含む、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記アルコールがメタノール、エタノール、プロパノール、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記活性炭が石炭に由来する顆粒状活性炭である、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記活性炭が、地下に配置され、PFASを含む地下水に暴露された顆粒状活性炭である、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
バッチプロセスで実施される、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
前記活性炭が、前記アルコール及び塩基溶液の流れの中で再生される、請求項1~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記再生された活性炭が、同一条件下で、未使用の活性炭と比較して少なくとも10%高い、PFOAまたはPFOSの脱着を有する、請求項1~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
PFASで汚染された水からPFASを除去する方法であって、前記PFASで汚染された水を活性炭に通して、PFASで汚染された活性炭を形成することと、その後、前記PFASで汚染された炭素を、請求項1~18のいずれかに記載の方法を使用して再生することと、を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年3月25日に出願された、米国仮特許出願番号第62/823,570号の優先権の利益を主張する。
【0002】
導入
ペルフルオロオクタンスルホネート(PFOS)及びペルフルオロオクタン酸(PFOA)、ならびに、数百種類の他の同様の化合物を含む、ペルフルオロアルキル及びポリフルオロアルキル物質(PFAS)は、多数の用途で、米国で幅広く使用されており、ヒトの健康及び環境へのリスクについての不確実性に関連する、広範囲にわたる汚染に起因する、非常に関連する懸念が存在する。既知のヒトの健康リスクがあるPFAS化合物の中には、自発的に徐々に廃止されたものもある(PFOA及びPFOS)一方で、受け継がれた汚染は残っている。更なる置き換えPFAS化合物は、その健康上のリスクの理解が限定的なままで導入されている。現在、PFOA及びPFOSのみが、連邦政府レベルで健康寿命勧告(Lifetime Health Advisories)で扱われており、飲料水中で、これら及び他のPFAS化合物の許容されるレベルを制御するための最大汚染レベル(MCL)は確立されていない。米国では、PFAS化学物質は今日まで、危険物質として列挙されておらず、水、汚れ、及び沈降物中でのPFAS汚染を監視及び制御するためのCERLCAプロセスの下での要件を定める。連邦政府の規制が現在存在しない中、汚れ及び地下水中でのPFASの存在の同定、ならびに、飲料水の処理に対しては、大部分の暴露評価及び緩和が制限されている。
【0003】
活性炭を使用して、水からPFASを吸収することは、様々なグループにより研究され続けている。例えば、Xiao,X.;Ulrich,B.A.;Chen,B.;Higgins,C.P.Sorption of Poly- and Perfluoroalkyl Substances(PFASs) Relevant to Aqueous Film-Forming Foam(AFFF)-Impacted Groundwater by Biochars、及び、Activated Carbon.Environ.Sci.Technol.2017,51,6342-6351 and Zhi,Y.and Liu,J.,Adsorption of perfluoroalkyl acids by carbonaceous adsorbents: Effect of carbon surface chemistry.Environ.Pollut.2015,202,168-176を参照のこと。
【発明の概要】
【0004】
第1の態様では、本発明は、ポリフルオロアルキル物質(PFAS)及び/またはペルフルオロオクタンスルホネート(PFOS)により汚染された活性炭の再生方法であって、吸着されたポリフルオロアルキル物質(PFAS)及び/またはペルフルオロオクタンスルホネート(PFOS)を有する活性炭を提供することと、活性炭を、少なくとも50質量%のアルコール、及び少なくとも0.2質量%の塩基を含む溶液中で接触させることと、溶液から活性炭を分離することと、を含む、上記方法を提供する。
【0005】
別の態様では、本発明は、ポリフルオロアルキル物質(PFAS)及び/またはペルフルオロオクタンスルホネート(PFOS)により汚染された活性炭の再生方法であって、吸着されたポリフルオロアルキル物質(PFAS)及び/またはペルフルオロオクタンスルホネート(PFOS)を有する活性炭を提供することと、活性炭を、少なくとも50質量%のアルコール、及び少なくとも0.5質量%の塩基を含む溶液中で接触させることと、溶液から活性炭を分離することと、を含む、上記方法を提供する。
【0006】
様々な実施形態における本発明の態様のいずれかは、以下の特徴:溶液から分離された活性炭をすすぐことの1つ、またはいずれかの組み合わせを更に特徴とでき、接触工程は、少なくとも1分、または少なくとも2分、または少なくとも10分、または少なくとも100分、または1~1000分の間実施され、接触工程はバッチプロセス、またはより好ましくは、フロースループロセスであることができ、得られた活性炭は、未使用の活性炭と比較して、(実施例の収着法で測定すると)PFOS及び/またはPFOAを同一でまたは優れて吸着し(図3及び4を参照のこと)、得られた活性炭は、2日間PFASに暴露した後で未使用の活性炭と比較すると、(実施例の収着法で測定すると)PFOS及び/またはPFOAを優れて吸着(または脱着)し、得られた活性炭は、未使用の活性炭と比較して、(実施例の収着法で測定すると)PFOS及び/またはPFOAを同一でまたは優れて脱着し、得られた活性炭は、2日間PFASに暴露した後で未使用の活性炭と比較すると、(実施例の収着法で測定すると)PFOS及び/またはPFOAを優れて脱着し(用語「未使用の」とは、再生処理への暴露を行うことなく、メーカーから受けた活性炭を意味する)、活性炭から分離された溶液は、好ましくは同じ部位で、蒸留して、リサイクルして再使用されて活性炭を再生するアルコール溶液を生成し、接触工程は浸漬、すすぎ、及び/または吹付けを含み、接触工程は、活性炭の体積に少なくとも等しい体積の溶液で、少なくとも3回すすぐことを含み(好ましくは、各すすぎの間には少なくとも2分ある)、溶液は、少なくとも60、70、80、90、または少なくとも約95質量%のアルコールを含み、アルコールはメタノール、エタノール、プロパノール、及びこれらの組み合わせから選択され、活性炭は石炭に由来する顆粒状活性炭であり、活性炭は、地下に配置され、PFASを含む地下水に暴露された顆粒状活性炭であり、活性炭は、アルコール及び塩基溶液の流れの中で再生される。
【0007】
本発明は、PFASを、PFASで汚染された水から取り除く方法であって、PFASで汚染された水を活性炭に通して、PFASで汚染された活性炭を形成することと、その後、PFASで汚染された炭素を、本明細書に記載の方法のいずれかを使用して再生することと、を含む、上記方法もまた含む。本発明は、方法のいずれかにより再生された活性炭もまた含む。
【0008】
更なる態様では、本発明は、活性炭を再生するためのシステムであって、入口及び出口を有する活性炭を含む容器と、容器の出口に接続された蒸留カラムと、を含む上記システムを提供し、少なくとも0.2質量%、または、少なくとも0.5質量%の塩基を含むアルコール溶液が、システムに存在する。
【0009】
方法またはシステムのいずれかは、実施例の章に記載されている、測定された特性を特徴とすることができる。実施例で記載するとおり、驚くべきことに、再生された活性炭は、未使用のGACよりも著しく優れて性能を発揮することが発見された。好ましい実施形態では、再生された活性炭は、同一条件下で、または、実施例に記載する条件下で、未使用の活性炭と比較して少なくとも10%(または少なくとも20%、または最大で、実施例で示す性能)高い、PFOAまたはPFOSの脱着を有する。割合は、吸着したPFOAまたはPFOSの総量に基づく絶対値ではなく、未使用のGACと比較した相対的なものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】PFASが水から取り除かれる部位であることができる、PFASで汚染された活性炭を再生するための一体化システムを概略的に示す。
図2】メタノール、エタノール、及びイソプロパノール中で、様々な量の塩基を用いる、PFOS及びPFOAの除去を示す。
図3】(経時的な液体PFAS濃縮に基づく)未使用、及び再生したGACへのPFAS吸着の、動力学的収着結果を示す。
図4】(経時的なGAC濃縮に基づく)未使用、及び再生したGACへのPFAS吸着の、動力学的収着結果を示す。
図5】顆粒状活性炭のPFAS除去を試験するための装置を概略的に示す。再生物は、リザーバから、羊毛の層に挟まれたGACのカラムを通ってポンプで運ばれる。
図6】第2セットの実験結果に関して、異なる時点におけるPFOA(上)及びPFOS(下)の除去割合を示す。
図7】カラム試験の終了時における、PFOA及びPFOSの全除去割合を示す。
図8】流出濃度のPFOAの全除去割合を示す。
図9】流出濃度のPFOSの全除去割合を示す。
図11】実験蒸留装置の写真である。
図12】フィールドから回収した2セットのGACからの蒸留結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示すシステムは、汚染水からPFASを除去するためのシステムを示す。従来のシステムとは違って、活性炭はその場で再生される。汚染水は、活性炭を通って移動する。活性炭はPFASを吸収し、比較的きれいな水が活性炭から出てくる。汚染された活性炭を含有する容器は、(任意に、別の活性炭含有容器で処理が継続している間に)ラインから外れ、溶液と接触した、汚染された活性炭は、活性炭からPFASを抽出し、PFAS含有溶液が、PFASで汚染された水を処理するために再び使用可能な、再生された活性炭を残しながら取り除かれる。PFAS含有溶液は、PFASが、蒸留などにより溶液から分離される場合には、別の容器に移すことができる。次に溶液を再度使用して、汚染された活性炭からPFASを抽出する。任意には、PFASは、適切な歯空き装置内の部位で、(例えば灰化、もしくは他の破壊操作により)破壊されることができるか、または、更なる処理のために運搬されることができる。
【0012】
PFASは、フッ素原子により囲まれる炭素原子の鎖を有する分子である。C-F結合は非常に安定しており、化合物は自然環境に残存する。いくつかのPFASは、水素、硫黄、及び/または窒素原子を含む。
【化1】
活性炭は多くの場合、水溶液中でPFASの吸着のために使用される。かかる溶液の特性決定及び改善のために活性炭を使用する際の実用的な問題は、活性炭が処理され、吸着されたPFAS及び/またはPFOSを取り除かなければならない、ということである。
【0013】
従来、活性炭を処理施設まで運搬することが必要であるが、これは高価であり厄介である。Battelleは、活性炭の再生及び交換コストを低減する、新規の技術を開発した。科学技術の有効性を指示する実験及びデータを、以下の実施例の章に示す。
【0014】
活性炭は、良好な吸着特性のための大きな表面積、Brunauer, Emmett及びTeller(BET)分析により測定すると、典型的には、少なくとも100m2/g、または少なくとも200m2/g、または少なくとも300m2/g、いくつかの実施形態では、200~1000m2/gの表面積を有する、多孔質炭素の形態である。好ましくは、活性炭は顆粒状活性炭(GAC)の形態であり、少なくとも0.1mm、または少なくとも0.2mm、または0.1~2.0mm、または0.2~1.0mm、または米国規格メッシュサイズで8~40メッシュサイズ(これらの範囲のいずれかに対して画定された範囲の、少なくとも85質量%)のサイズを有する。活性炭のある好ましい源は、石炭由来のものである。
【0015】
本発明で使用するアルコール類は、より広い範囲の態様に限定されない。しかし、部分的には、比較的低コスト及び比較的低い沸点の観点から、メタノール、エタノール、及びイソプロパノールが好ましく、エタノール及びイソプロパノールがより好ましい。高分子量アルコール類が好適である。アルコールは、単一の種類(例えば、あるアルコールの少なくとも90質量%、もしくは少なくとも95質量%)であってよく、または、アルコール類の混合物であってよい。活性炭を再生するための溶液は、少なくとも50質量%のアルコール(複数可)、または少なくとも80質量%、または少なくとも90質量%、または少なくとも95質量%のアルコールを含有する。
【0016】
活性炭を再生するための溶液は、少なくとも0.2質量%、または少なくとも0.3質量%、または少なくとも0.5質量%、いくつかの実施形態では、0.2~5質量%、または0.3~2質量%、または0.2~0.8質量%、または0.3~0.7質量%、または0.5~5質量%、または0.5~2質量%、または0.8~1.2質量%の範囲の塩基を含む。好ましい塩基としては、アンモニア(NH3)、NaOH、トリエチルアミン、及びエタノールアミンが挙げられる。驚くべきことに、我々は、再生された活性炭が、水溶液中でPFAS及び/またはPFOSを吸着及び/または脱着するための、優れた効率を有することを発見した。
【0017】
バッチプロセスで活性炭を再生することは可能であるものの、アルコール/塩基溶液が活性炭を通って通過する、フロースループロセスで再生するのが好ましい。いくつかの好ましい実施形態では、PFAS脱着工程の間に、活性炭の質量まで溶液(主に、または単に、アルコール+塩基からなる)を再生する体積は、2~100、もしくは5~50、もしくは6~20の範囲で少なくとも2mL/g、または最大約10mL/gである。再生処理(蒸留の前)は典型的には、周囲温度及び圧力で実施することができる。
【0018】
任意に、再生後に、活性炭を乾燥工程に供することができる。例えば、空気流を、再生された活性炭に通すことができる。
【0019】
本発明の活性炭再生を利用可能な例としては、以下が挙げられる:
● 活性炭が、部位に恒久的に、または半恒久的に固定された容器に含まれ、水(例えば、飲料水)処理が現場で行われ、PFAS濃縮物中のPFASが現場で焼却され(もしくは、別様においては破壊され)、または、廃棄場所にタンカートラックにより輸送される、現場のシステム(図1を参照のこと)からの活性炭の再生;
● GACが、水処理部位に輸送される容器に含まれ、水処理が現場で行われるトレーラー固定システム、及びPFAS濃縮物を用いる、活性炭の再生;
● 地下水、飲料水、またはエアーサンプリングとして反復使用のために再生可能な、受動性サンプリング装置で使用する、活性炭の再生;
● PlumeStop(商標)として使用する活性炭の再生;
● 地下水部位の改善/GAC処理/前処理で使用する活性炭の再生;
● 汚れコーティングとしてのin-situ配置の100日後、1年以上後(例えば、最大5年、または最大10年)で、PFAS及び他の汚染物質を吸着した後で場合により再生される、活性炭が、PFAS及び他の混合汚染物質で飽和する可能性があり、改善有効性を持続させるためにこれらの化学物質を放出する必要がある、任意の環境改善用途で使用する、活性炭の再生。
【0020】
本発明は、これらの工程の1つまたはそれ以上を含む方法を含む。本発明は、本出願のいずれかの場所で記載される構成成分及び組成物のいずれかを含むシステムもまた含む。例えば、本発明は、PFASを取り除き、活性炭を再生するための溶液を含む再生システムを含む。
【0021】
実施例
未使用の瀝青質石炭ベースの顆粒状活性炭(GAC)(Filtrasorb 400(F400),CalgonCarbon Corporation,Pittsburgh,PA USA)を、収着の動力学的実験のために使用した。GACは、メーカーにより提供される、947.8m2/gの表面積、0.58mL/Gの気孔体積、ならびに、6.01及び6.44L/Kgの、PFOA及びPFOSに対するlog Kd値を有する。
【0022】
第1の実験セット
工程1-未使用のGACのバルクPFAS汚染(フィールド処理ユニットから消費されたGACをシミュレーションするため)
F-400 GACを、全ての実験で使用した。まず、100gのGACを秤量し、0.8LのPFOA及びPFOS溶液を含有するIL HDPE瓶(初期濃度は500ug/L)に添加した。サンプルを、エンドオーバーエンドテーブル上部回転振盪器で20日間振盪した。20日目にサンプリングをした後、水溶液を別の容器にデカントし、GACを真空下にて一晩空気乾燥させ、得られた、PFOA及びPFOSで汚染された乾燥GACを、GAC再生実験のために使用した。
【0023】
工程2-PFASで汚染されたGACのカラム再生
実験室用研究を通して、Battelleは、PFASで汚染されているGACを再生するために使用可能な溶媒クラスを測定した。再生を成し遂げるために、1gのGACをカラムに配置し、5mLの溶媒を添加し、2分の接触時間を実施した後、バルブを開いて、溶媒を2~10分間、1滴ずつ流した。各サンプルについて、3つのかかる溶出液を個別に収集した。全ての溶出液を、3500rpmで10分間遠心分離にかけ、分析まで冷蔵した。塩基の濃度を0、0.5%、及び1%アンモニア(塩基)として、これらの実験を実施した。図2は、1%塩基での回収を示す。再生実験は周囲温度にて、撹拌を伴わず、固定床のGACを使用することで実施した。
【0024】
工程3-未使用のGAC、及び再生されたGACの取り込みの比較
工程3A:未使用のGACへの、PFAS吸着の収着動力学的実験
実験を、3通りの50mL PP遠心管で、初期のPFOSまたはPFOA濃度を150μg L-1で実施した(500uLの15ppm原液を添加した)。バックグラウンド電解質として0.01M NaClを使用する、5.0mg:50mLの溶液比率での吸着。PFOA/PFOS(初期濃度は150μg L-1)でスパイクした、50mLの0.01M NaCl溶液(GAC非含有)のみを含有する、別のセットの2通りの50mL PP遠心管を対照として使用する。50mLの0.01M NaCl溶液及びGACのみを含有する、50mL PP遠心管の2通りのサンプルを0日目に、対照液としてサンプリングする。サンプルを全て、オービタルシェーカーで室温(温度を記録)にて、約50rpmで回転させるか、または、適切な混合のために調節して、pH7.0で維持する。サンプリングは、0、2、5、12、及び20日目に実施した。各サンプリング時間において、5000gにて試験溶液を含有する遠心管を15分間、次いで0.25mLの上清をサンプリングし、0.25mLのメタノールで希釈してエッペンドルフチューブ(ポリプロピレン/ポリエチレン)に入れ、サンプル分析のために分析ラボに送った。
【0025】
分析ラボ:分析前に、サンプルをボルテックスし、10,000gで10分間遠心分離にかけ、非常に細かい懸濁した物質を除去した。上清から100uLのサンプルをHPLCバイアルに採取し、内部標準物質を加えた後、サンプルを、80/20メタノール/水(v/v)を使用して希釈し、500uLの総体積にし、液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)で分析した。
【0026】
結果及び議論
ラボで汚染したGACからの、PFOA及びPFOSの除去。表1及び図2に示すように、アルカリ性添加剤が、再生された溶媒に含まれるか否かにかかわらず、3種類のアルコール溶媒は、実験室で汚染したGACからPFOS及びPFOAを同様に除去することを、最初の等温線実験は示す。塩基添加剤が含まれない各アルコールに関して、PFOA及びPFOSの、再生溶媒への平均回収率は12%以下であり、大部分は標準偏差と重複しており、これらがお互いに有意差がないことを示した。0.5%及び1.0%の塩基添加剤を含むアルコール類に関しては、PFOA回収率(54%±4%)はPFOS(35%±7%)よりも高かったが、塩基が0.5%または1.0%の場合に、回収率に有意差はなかった。
【0027】
表1:PFOA及びPFOSに関する再生溶液の最初の選択
【表1】


【0028】
未使用及び再生されたGACへのPFAS吸着の、収着動力学的実験。
最適な再生溶液を選択した後、収着動力学的実験を実施して、未使用及び再生されたGACでのPFAS吸着を測定した。図3は、PFOA及びPFOSが全て、最初の暴露から20日以内にGACに吸着された本実験の結果を示す。この結果は、以前に全く使用されていなかった(未使用の)GAC、及び、上述のとおりに一度再生されていたGACの両方に関して真であることが発見された。水相で測定した平均濃度は、吸着率は、未使用及び再生されたGACの両方で非常に類似していたことを示す。図4は、GAC上でのPFOA及びPFOSの濃度を含む、本実験の結果、したがって、PFOA及びPFOSの水性濃度の結果における、経時的な実験の減少と比較した、経時的な濃度増加を示す。2日目~20日目に、再生されたGACのGAC濃度が全て、対応する未使用のGACサンプルよりも有意に高いGAC濃度を有するため、未使用のGACと比較して、再生されたGACにおいては、吸着能力が増加し得ることを、図CCでのPFOA結果は示唆する。しかし、PFOSの結果に関して、2日目のサンプルのみが有意差のある結果となっており、結果がより不鮮明となっている。
【0029】
走査型電子顕微鏡・エネルギー分散型分光計(SEM-EDS)をGACで実施して、GAC表面での脱着効果を調査した。消費されたGAC(PFASを含有する)は、未使用及び再生されたGACよりも4倍多い、フッ素の表面含有量を有することを、表面顕微鏡測定は示した。アルコール/塩基溶液で処理した後、再生されたGACの、フッ素の表面重量%は、非常に低いレベルに戻った。したがって、本プロセスは、GACからPFASを除去し、PFAS除去のために再使用することが可能となることを示した。更にBattelleは、フィールドで汚染されたGACからPFASを取り除くことをもまた、示した。
【0030】
第2の実験セット
再生溶媒及び添加剤の比率を更に同定するための、GAC再生-急速小規模カラム試験(RSSCT)
最良のPFAS除去溶媒及び添加剤組成物を選択するために、標準的な方法であるASTM D6586に基づく、急速小規模カラム試験(RSSCT)を、図5に示すように使用した。この標準的な方法は、水から可溶性PFASを吸着するために、再生したGACを評価するためのRSSCT法の概略を提供する。
【0031】
物質:カラム試験は、取り外し可能なポリプロピレンキャップを備える、ボロシリケートガラスバレルで構成される、Flex-Column(登録商標),Kimbleで実施した。取り込み実験を、高密度ポリエチレン(HDPE)ボトルで実施し、サンプルをHDPEボトル及びポリプロピレン(PP)管で収集した。
【0032】
ペルフルオロオクタン酸(PFOA、C815HO2、98%)及びペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS、C8HF173S、98%)(Sigma-Aldrich Co.)脱イオン水を含む2種類のペルフルオロアルキル酸を使用して、反応溶液を調製した。直鎖ペルフルオロアルキルカルボン酸及びスルホネートをWellington Laboratories(Guelph ON)から購入し、LC-MS/MSのために分析標準として使用した。これらは、ペルフルオロ-n-オクタン酸(PFOA)及びペルフルオロ-n-オクタンスルホネート(PFOS)を含んだ。13C標識PFASを、ペルフルオロ-1-[1,2,3,4-134]オクタンスルホネート(MPFOS)及びペルフルオロ-n-[1,2,3,4-134]オクタン酸(MPFOA)からなる定量化(内部)標準のために使用した。メーカーにより供給される各個別の標準または混合物の原液を、元のものをメタノール(HPLCグレード)で希釈することで調製した。元の標準及び原液を全て、冷蔵庫(約4℃)で保管した。使用した溶媒は全て、HPLCグレードであった。
【0033】
分析方法:サンプルは全て、負の電気スプレーモード、及びアイソトープ希釈法を用いて定量化した検体を使用するLC-MS/MSを使用する、既知の高PFAS濃度のサンプル用のDoD Quality Systems Manual 5.1 Table B-15基準に従い、連続希釈の後で分析した。
【0034】
GAC抽出:均質化したGACサンプルを秤量すると2.0g(±0.02g)であり、これを50mLのPP管に入れ、代理内部標準(SIS)で強化した。実験室対照サンプル(LCS)、マトリックススパイク(MS)、及びマトリックススパイク複製物(MSD)サンプルを、方法が必要としているため含めた。13.5mLのアセトニトリル及び1.5mLの0.25M水酸化アンモニウム(NaOH)をPP管に加え、Geno/Grinder(1200RPMで15分間)で抽出し、5分間2500RPMで遠心分離にかけた。得られた上清を、きれいな50mL PP管にデカントした。次に、2.7mLの新鮮なアセトニトリル及び0.3mLの0.25M NaOHをサンプルに添加し、Geno/Grinderで抽出して同一条件で遠心分離にかけた。得られた上清を、事前に収集した上清に加え、同一手順を繰り返した。収集した上清をきれいにするために、2.7mLのアセトニトリル、0.3mLの0.25M NaOH、及び10mgのSupelclean ENVLcarbを、2.1mLの抽出物及びGeno/Grindedに5分間500RPMで添加し、5分間2500RPMで遠心分離にかけて、分析のために上清をデカントした。
【0035】
カラムのセットアップ
5つのカラム(それぞれ再生溶液及び対照用)を、換気フード内でセットアップした。カラム(取り外し可能なポリプロピレンキャップ、及び、カラムの出口に固定された、20μm多孔率のHDPE床支持体を備える、ボロシリケートガラスバレルで構成される、Flex-Column(登録商標),Kimble)は、管材を接続するためのLuer-Lok(商標)を有した。カラムを、マニホールド(1/8インチの管材)を用いて平行にセットアップし、クランプでリングスタンドに固定した。個別の再生貯蔵容器をカラムに平行に繋ぎ、同時に実験を行った。各カラムに関して、ニードル弁を、流速を制御するために配管し、一方通行の1/8インチ逆止弁を、カラムの流出側で管材に取り付け、流量計を使用して流れを測定した。流入管材を、デジタルギアポンプ(Cole Parmer,Micro Pump GA Series)に接続した。圧力計を、カラムの流入側に取り付けた。カラムの設計基準、及び、RSSCTのベンチスケールデザインを表2に含める。
【0036】
表2:設計基準
【表2】
【0037】
カラム試験-一番性能の高い溶媒/添加剤システムを選択するための、ラボで汚染したGACによるスクリーン試験
カラムを、同量の、PFOA及びPFOSを含む、PFAS・ラボ汚染(スパイク)GACでドライパックした。個別の再生貯蔵容器をカラムに個別に接続し、上向きにポンプを駆動して、表2にある異なる再生配合物を、PFAS含有GACに導入した。4つの溶媒/添加剤の組み合わせのそれぞれに関して、2通りのカラムをセットアップした。再生溶媒をカラムに2時間通し、サンプルを4つの異なる時点(10、25、45、及び65分)で、PFAS分析のために、15mLのポリプロピレン遠心管に収集した。カラムを更に1時間運転し、溶出液を個別に、250mLのHDPEボトルに収集した(120分サンプル)。対照カラムもまた、汚染されていないGACを用いてセットアップし、バックグラウンド濃度レベルを確認した。各試薬/すすぎ水溶液のサンプルを収集し、パックしてNorwell,MA実験室に運搬した。この実験室でPFAS濃度を測定し、各再生溶液の相対的な有効性を測定した。ラボで汚染したGAC(処理前後)もまた送達して抽出及び分析し、吸着したPFASの量を見いだした。
【0038】
表3:溶媒及び添加比率
【表3】
【0039】
結果:ラボで汚染したGACからのPFOA及びPFOSの除去
エタノールにより、0~10分で除去が増加した(>85%)ため、エタノール及び0.5%NH4OHを溶媒系として選択した。これらの測定値周辺の大きなエラーバー、及び、溶出サンプルでの比較的低い濃度(伝播した誤差の相対的な不確実性を増加させる)が原因で、65~120分の溶出において、PFOA/PFOSが大きく寄与したことは、さほど懸念事項ではなかった。この溶媒最適化の質量バランスにより、約100%の質量バランス(見かけの前処理PFOA/PFOS濃度を用いる場合)が明らかとなり、測定したGAC抽出濃度を使用するときは、120~130%であった。
【0040】
表4:スクリーン試験におけるPFOA及びPFOSの質量バランス
【表4】
【0041】
結果:未使用のGAC及び再生されたGACの吸着を評価するための取り込み試験。
試験条件下で、PFOA及びPFOSが、未使用または再生したGACのいずれかを通って流れることは、本質的な完全な取り込みを示した(表5を参照のこと)。とても驚くべきことに、図10及び表6に示すように、再生された活性炭は、実質的に優れたPFOA、及び特にPFOSの脱着を示した。取り込み実験の間、64μmolのPFOA、及び41μmolのPFOSを未使用のGAC(2通りのカラムA及びB)に装填した。再生後、およそ5μmolのPFOA、及び20μmolのPFOSを各カラムに保持した。次に、52μmolのPFOA、及び32μmolのPFOSを、最初の再生から残っている同一のGACに装填した。再生前に当該GACを抽出すると、カラムBではわずか26μmolのPFOA、及び20μmolのPFOSが測定された。割合を占めるのは、装填されたPFOAの半分未満であり、装填されたPFOSは全く割合を占めなかったことを、この結果は示し、このことは、捨てられた誤ったデータポイントをもたらす実験エラーがあることを示している。したがって、カラムBは、再生されたGAC内での、除去されたPFOA及びPFOSの割合に含まれていたのみである(したがって、エラーバーを欠いていた)。
【0042】
表5:PFASの取り込み
【表5】


表6:PFAS脱着
【表6】
【0043】
蒸留実験
手順:
溶出溶媒を蒸留して、PFASで汚染された廃棄物を濃縮し、更なる再生サイクルのために溶媒をリサイクルすることは、GAC再生プロセスの効率を維持する重要な工程である。(最終的な廃棄のための)再生蒸留、及び、PFASで汚染された廃棄物汚染の可能性を示すため、2フィールドの、GAC再生溶媒(エタノール+1%水酸化アンモニウム)からの溶媒溶出液を使用して、蒸留実験を行った。PFAS含有再生物を蒸留装置(加熱マントル、リザーバフラスコ、冷却管、及び留出液収集容器)に配置し、加熱して煮沸し、元の体積が開始体積の10%以下にまで減少するまで維持した。サンプルを留出液、及び残りの、PFAS含有再生物から収集し、PFAS化合物が、溶媒と共に蒸留を受けやすいか否か(そして、どの化合物が受けやすいか)を測定した。
【0044】
表7:蒸留条件
【表7】
【0045】
結果
1.溶出液で検出されたPFAS検体を、蒸留プロセス後に最小の損失で濃縮した(濃縮因子は体積変化に一致し、質量は類似した)。
2.留出溶液中での、PFAS化学物質の最小濃縮物。
3.これらは、蒸留中に喪失されなかったことを、より短い鎖(C5及びC6)の濃度は示唆する(生のデータは、濃縮されたと思われるブチル(C4)を有する(以下に示さず))。
4.存在する少量のPFOS及びPFOAは、より長い(より効率的な)蒸留カラムを使用することで取り除かれると考えられている。
【表8】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11
図12