(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】被覆組成物及び被覆物品
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20240815BHJP
C09D 7/62 20180101ALI20240815BHJP
C09D 179/08 20060101ALI20240815BHJP
C09D 181/06 20060101ALI20240815BHJP
C09D 127/18 20060101ALI20240815BHJP
C09D 7/48 20180101ALI20240815BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D7/62
C09D179/08 B
C09D179/08 A
C09D181/06
C09D127/18
C09D7/48
B32B27/18 E
(21)【出願番号】P 2019022694
(22)【出願日】2019-02-12
【審査請求日】2022-01-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】山口 誠太郎
(72)【発明者】
【氏名】中谷 安利
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108822679(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0068552(KR,A)
【文献】国際公開第2009/129760(WO,A1)
【文献】特開2007-277422(JP,A)
【文献】特開2015-157474(JP,A)
【文献】特表2001-503807(JP,A)
【文献】特開平6-157262(JP,A)
【文献】特表2003-534440(JP,A)
【文献】特開2000-273352(JP,A)
【文献】特開平6-145645(JP,A)
【文献】Nivin M. Ahmed,Anticorrosive performance of titanium dioxide-talc hybrid pigments in alkyd paint formulations for protection of steel structures,Anti-Corrosion Methods and Materials,英国,2010年11月03日,Vol.57 No.3,Page.133-141
【文献】松山清、ほか1名,高圧二酸化炭素を用いたマイクロ・ナノ粒子の表面改質,高圧力の科学と技術,日本,2010年,Vol.20 No.1,Page.50-56
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性樹脂、及び、金属酸化物で被覆したタルクを含
み、前記金属酸化物は、酸化鉄、酸化スズ、及び、酸化ケイ素からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする被覆組成物。
【請求項2】
前記耐熱性樹脂は、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、芳香族ポリエーテルケトン樹脂、芳香族ポリエステル樹脂及びポリアリレンサルファイド樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1記載の被覆組成物。
【請求項3】
更に、含フッ素重合体を含む請求項1又は2記載の被覆組成物。
【請求項4】
前記含フッ素重合体は、テトラフルオロエチレンホモポリマー、変性ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、及び、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である請求項3記載の被覆組成物。
【請求項5】
前記耐熱性樹脂は、ポリエーテルスルホン樹脂と、ポリアミドイミド樹脂及びポリイミド樹脂からなる群より選択される少なくとも1種とからなり、
前記ポリエーテルスルホン樹脂は、前記ポリエーテルスルホン樹脂、前記ポリアミドイミド樹脂及び前記ポリイミド樹脂の合計量の65~85質量%である請求項1~4のいずれかに記載の被覆組成物。
【請求項6】
前記金属酸化物で被覆したタルクの含有量が、前記被覆組成物中の重合体成分の合計量に対して0.1~20質量%である請求項1~5のいずれかに記載の被覆組成物。
【請求項7】
前記金属酸化物が酸化鉄である請求項1~6のいずれかに記載の被覆組成物。
【請求項8】
金属又は非金属無機材料からなる基材上に直接塗布されるか、又は、耐熱性樹脂からなる層の上に塗布される請求項1~7のいずれかに記載の被覆組成物。
【請求項9】
基材と、
耐熱性樹脂(a)、含フッ素重合体(a)、及び、金属酸化物で被覆したタルクを含むプライマー層(A1)と、
含フッ素重合体(b)を含む含フッ素層(C1)とを有
し、
前記金属酸化物は、酸化鉄、酸化スズ、及び、酸化ケイ素からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする被覆物品。
【請求項10】
基材と、
耐熱性樹脂(b)、及び、金属酸化物で被覆したタルクを含むプライマー層(A2)と、
耐熱性樹脂(a)及び含フッ素重合体(a)を含む中間層(B1)と、
含フッ素重合体(b)を含む含フッ素層(C2)とを有
し、
前記金属酸化物は、酸化鉄、酸化スズ、及び、酸化ケイ素からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする被覆物品。
【請求項11】
基材と、
耐熱性樹脂(b)を含むプライマー層(A3)と、
耐熱性樹脂(a)、含フッ素重合体(a)、及び、金属酸化物で被覆したタルクを含む中間層(B2)と、
含フッ素重合体(b)を含む含フッ素層(C3)とを有
し、
前記金属酸化物は、酸化鉄、酸化スズ、及び、酸化ケイ素からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする被覆物品。
【請求項12】
耐熱性樹脂(a)は、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、芳香族ポリエーテルケトン樹脂、芳香族ポリエステル樹脂及びポリアリレンサルファイド樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である請求項9~11のいずれかに記載の被覆物品。
【請求項13】
耐熱性樹脂(b)は、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、芳香族ポリエーテルケトン樹脂、芳香族ポリエステル樹脂及びポリアリレンサルファイド樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である請求項10~12のいずれかに記載の被覆物品。
【請求項14】
含フッ素重合体(a)は、テトラフルオロエチレンホモポリマー、変性ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、及び、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である請求項9~13のいずれかに記載の被覆物品。
【請求項15】
含フッ素重合体(b)は、テトラフルオロエチレンホモポリマー、変性ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、及び、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である請求項9~14のいずれかに記載の被覆物品。
【請求項16】
プライマー層(A1)は、膜厚が5~90μmであり、
含フッ素層(C1)は、膜厚が5~90μmである
請求項9、12、14、15のいずれかに記載の被覆物品。
【請求項17】
プライマー層(A2)は、膜厚が5~90μmであり、
中間層(B1)は、膜厚が5~90μmであり、
含フッ素層(C2)は、膜厚が5~90μmである
請求項10、12~15のいずれかに記載の被覆物品。
【請求項18】
プライマー層(A3)は、膜厚が5~90μmであり、
中間層(B2)は、膜厚が5~90μmであり、
含フッ素層(C3)は、膜厚が5~90μmである
請求項11~15のいずれかに記載の被覆物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被覆組成物及び被覆物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ素樹脂は、低摩擦係数を有し、非粘着性、耐熱性等の特性に優れているので、食品工業用品、フライパンや鍋等の調理器具又は厨房用品、アイロン等の家庭用品、電気工業用品、機械工業用品等の表面加工に広く用いられている。
【0003】
特許文献1には、炭素鋼下地と、アミドイミドポリマー、ポリエーテルスルホン及びテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(FEP)を含むプライマー層と、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマー(PFA)、酸化鉄被覆雲母及びミクロタルクを含む層とをこの順で積層した積層体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、耐食性に優れる塗膜を与える被覆組成物を提供することを目的とする。本開示は、耐食性に優れる被覆物品を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、耐熱性樹脂、及び、金属酸化物で被覆したタルクを含むことを特徴とする被覆組成物に関する。
【0007】
上記耐熱性樹脂は、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、芳香族ポリエーテルケトン樹脂、芳香族ポリエステル樹脂及びポリアリレンサルファイド樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0008】
上記被覆組成物は、更に、含フッ素重合体を含むことが好ましい。
【0009】
上記含フッ素重合体は、テトラフルオロエチレンホモポリマー、変性ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、及び、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0010】
上記耐熱性樹脂は、ポリエーテルスルホン樹脂と、ポリアミドイミド樹脂及びポリイミド樹脂からなる群より選択される少なくとも1種とからなり、
上記ポリエーテルスルホン樹脂は、上記ポリエーテルスルホン樹脂、上記ポリアミドイミド樹脂及び上記ポリイミド樹脂の合計量の65~85質量%であることが好ましい。
【0011】
上記金属酸化物で被覆したタルクの含有量が、上記被覆組成物中の重合体成分の合計量に対して0.1~20質量%であることが好ましい。
【0012】
上記金属酸化物が酸化鉄であることが好ましい。
【0013】
上記被覆組成物は、金属又は非金属無機材料からなる基材上に直接塗布されるか、又は、耐熱性樹脂からなる層の上に塗布されることが好ましい。
【0014】
本開示は、基材と、
耐熱性樹脂(a)、含フッ素重合体(a)、及び、金属酸化物で被覆したタルクを含むプライマー層(A1)と、
含フッ素重合体(b)を含む含フッ素層(C1)とを有することを特徴とする被覆物品にも関する。
【0015】
本開示は、基材と、
耐熱性樹脂(b)、及び、金属酸化物で被覆したタルクを含むプライマー層(A2)と、
耐熱性樹脂(a)及び含フッ素重合体(a)を含む中間層(B1)と、
含フッ素重合体(b)を含む含フッ素層(C2)とを有することを特徴とする被覆物品にも関する。
【0016】
本開示は、基材と、
耐熱性樹脂(b)を含むプライマー層(A3)と、
耐熱性樹脂(a)、含フッ素重合体(a)、及び、金属酸化物で被覆したタルクを含む中間層(B2)と、
含フッ素重合体(b)を含む含フッ素層(C3)とを有することを特徴とする被覆物品にも関する。
【0017】
耐熱性樹脂(a)は、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、芳香族ポリエーテルケトン樹脂、芳香族ポリエステル樹脂及びポリアリレンサルファイド樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0018】
耐熱性樹脂(b)は、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、芳香族ポリエーテルケトン樹脂、芳香族ポリエステル樹脂及びポリアリレンサルファイド樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0019】
含フッ素重合体(a)は、テトラフルオロエチレンホモポリマー、変性ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、及び、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0020】
含フッ素重合体(b)は、テトラフルオロエチレンホモポリマー、変性ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、及び、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0021】
プライマー層(A1)は、膜厚が5~90μmであり、
含フッ素層(C1)は、膜厚が5~90μmである
ことが好ましい。
【0022】
プライマー層(A2)は、膜厚が5~90μmであり、
中間層(B1)は、膜厚が5~90μmであり、
含フッ素層(C2)は、膜厚が5~90μmである
ことが好ましい。
【0023】
プライマー層(A3)は、膜厚が5~90μmであり、
中間層(B2)は、膜厚が5~90μmであり、
含フッ素層(C3)は、膜厚が5~90μmである
ことが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本開示によれば、耐食性に優れる塗膜を与える被覆組成物を提供することができる。本開示によれば、耐食性に優れる被覆物品を提供することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本開示を具体的に説明する。
本開示は、耐熱性樹脂、及び、金属酸化物で被覆したタルクを含むことを特徴とする被覆組成物に関する。
本開示の被覆組成物は、耐食性に優れる塗膜を与えることができる。
【0026】
本開示の被覆組成物は、耐熱性樹脂を含む。
上記耐熱性樹脂は、通常、耐熱性を有すると認識されている樹脂であればよいが、含フッ素重合体は除くものとする。本明細書において、「耐熱性」とは、150℃以上の温度における連続使用が可能である性質を意味する。
【0027】
上記耐熱性樹脂としては、ポリアミドイミド樹脂(PAI)、ポリイミド樹脂(PI)、ポリエーテルスルホン樹脂(PES)、ポリエーテルイミド樹脂、芳香族ポリエーテルケトン樹脂、芳香族ポリエステル樹脂及びポリアリレンサルファイド樹脂等が挙げられ、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0028】
PAIは、分子構造中にアミド結合及びイミド結合を有する重合体からなる樹脂である。上記PAIとしては特に限定されず、例えば、アミド結合を分子内に有する芳香族ジアミンとピロメリット酸等の芳香族四価カルボン酸との反応;無水トリメリット酸等の芳香族三価カルボン酸と4,4-ジアミノフェニルエーテル等のジアミンやジフェニルメタンジイソシアネート等のジイソシアネートとの反応;芳香族イミド環を分子内に有する二塩基酸とジアミンとの反応等の各反応により得られる高分子量重合体からなる樹脂等が挙げられる。耐熱性に優れる点から、上記PAIとしては、主鎖中に芳香環を有する重合体からなるものが好ましい。
【0029】
PIは、分子構造中にイミド結合を有する重合体からなる樹脂である。上記PIとしては特に限定されず、例えば、無水ピロメリット酸等の芳香族四価カルボン酸無水物の反応等により得られる高分子量重合体からなる樹脂等が挙げられる。耐熱性に優れる点から、上記PIとしては、主鎖中に芳香環を有する重合体からなるものが好ましい。
【0030】
PESは、下記一般式:
【0031】
【0032】
で表される繰り返し単位を有する重合体からなる樹脂である。PESとしては特に限定されず、例えば、ジクロロジフェニルスルホンとビスフェノールとの重縮合により得られる重合体からなる樹脂等が挙げられる。
【0033】
上記芳香族ポリエーテルケトン樹脂は、アリーレン基とエーテル基[-O-]とカルボニル基[-C(=O)-]とで構成された繰り返し単位を含む樹脂である。上記芳香族ポリエーテルケトン樹脂としては、ポリエーテルケトン樹脂(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン樹脂(PEEKK)、ポリエーテルケトンエステル樹脂等が例示できる。上記芳香族ポリエーテルケトン樹脂は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
上記芳香族ポリエーテルケトン樹脂としては、PEK、PEEK、PEEKK及びポリエーテルケトンエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、PEEKがより好ましい。
【0034】
上記耐熱性樹脂は、PAI、PI及びPESからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。これにより、基材との密着性に優れ、塗膜を形成する際に行う焼成時の温度下でも充分な耐熱性を有し、得られる塗膜が耐食性及び耐水蒸気性に優れる。
PAI、PI及びPESは、それぞれ1種又は2種以上からなるものであってよい。
【0035】
上記耐熱性樹脂は、塗膜の耐食性に特に優れる点から、PESと、PAI及びPIからなる群より選択される少なくとも1種と、からなることが好ましい。言い換えると、上記耐熱性樹脂は、PESとPAIとの混合物、PESとPIとの混合物、又は、PESとPAIとPIとの混合物であることが好ましい。上記耐熱性樹脂は、PES及びPAIの混合物であることが特に好ましい。
【0036】
上記耐熱性樹脂が、PESと、PAI及びPIからなる群より選択される少なくとも1種とからなるものである場合、PESは、PESと、PAI及びPIからなる群より選択される少なくとも1種との合計量の65~85質量%であることが好ましい。より好ましくは、70~80質量%である。
【0037】
本開示の被覆組成物は、金属酸化物で被覆したタルク(以下、被覆タルクともいう)を含む。上記被覆タルクを上記耐熱性樹脂と組み合わせることにより、耐食性に優れる塗膜を与えることができる。上記被覆タルクは、また、顔料としても機能する。
【0038】
上記被覆タルクは、タルク粒子の外表面の一部又は全部が上記金属酸化物で被覆されたものであることが好ましい。
【0039】
上記金属酸化物は、金属の酸化物であれば特に限定されず、酸化チタン(TiO2(二酸化チタン)等)、酸化鉄(Fe2O3(三酸化二鉄)、Fe3O4(四酸化三鉄)等)、酸化スズ(SnO2(二酸化スズ)等)、酸化ケイ素(SiO2(二酸化ケイ素)等)等の1種又は2種以上を用いることができる。
耐食性に一層優れる塗膜が得られる点で、上記金属酸化物は酸化鉄であることが好ましく、Fe3O4(四酸化三鉄)であることがより好ましい。
【0040】
上記被覆タルクは、黒色であることが好ましい。この場合、上記被覆タルクは、黒色顔料としても機能する。
黒色顔料としては、カーボンブラックが広く用いられているが、得られる塗膜の耐食性が充分でないという問題がある。また、用途によっては、安全上の問題等により使用できるカーボンブラックが極めて限定されるという問題がある。
これに対し、黒色の被覆タルクは、耐食性を向上させつつ、塗膜を黒色に着色することができる。また、上記被覆タルクは安全性が高いので、調理器具や厨房用品といった、高い安全性が要求される用途にも適用できる。
黒色の被覆タルクとしては、例えば、Fe3O4(四酸化三鉄)で被覆したタルクが挙げられる。
【0041】
上記被覆タルクにおいて、上記金属酸化物は、上記金属酸化物と被覆の対象であるタルクとの合計量の5~80質量%であることが好ましい。より好ましい下限は10質量%、更に好ましい下限は20質量%、特に好ましい下限は30質量%である。また、より好ましい上限は70質量%、更に好ましい上限は60質量%である。
【0042】
上記被覆タルクの形状としては、球状、鱗片状等が挙げられるが、耐食性に一層優れる塗膜が得られる点で、鱗片状が好ましい。
【0043】
上記被覆タルクは、平均粒径が1~200μmであることが好ましい。上記平均粒径のより好ましい下限は2μmである。また、より好ましい上限は100μm、更に好ましい上限は50μm、更により好ましい上限は30μm、特に好ましい上限は20μmである。上記平均粒径は、レーザー回折・散乱式粒子径・粒度分布測定装置(日機装(株)製マイクロトラックMT3300II、媒体:純水、温度:室温)により測定して得られる粒度分布から算出する値である。
【0044】
上記被覆タルクは、アスペクト比(平均粒径/平均厚み)が2以上であることが好ましい。上記アスペクト比のより好ましい下限は3、更に好ましい下限は5である。また、好ましい上限は500、より好ましい上限は200、更に好ましい上限は100、特に好ましい上限は50である。
上記アスペクト比は走査型電子顕微鏡(SEM)により測定する平均粒径及び平均厚みから算出することができ、30個のサンプルについて測定したアスペクト比の平均値を採用する。
【0045】
上記被覆タルクの含有量は、上記被覆組成物中の重合体成分(例えば、上記耐熱性樹脂、及び、任意で、後述する含フッ素重合体)の合計量(固形分)に対し、0.1~20質量%であることが好ましい。上記含有量のより好ましい下限は0.5質量%、更に好ましい下限は1.0質量%である。また、より好ましい上限は15質量%、更に好ましい上限は10質量%である。
上記合計量は、上記被覆組成物を基材上に塗布したのち80~100℃の温度で乾燥し、380~400℃で45分間焼成した後の残渣における上記重合体成分の合計質量を意味する。
【0046】
本開示の被覆組成物は、更に、含フッ素重合体を含んでもよく、含まなくてもよいが、含むことが好ましい。含フッ素重合体を含むことにより、上記被覆組成物から形成される層の上に含フッ素層を設ける場合に、両層を強固に接着させることができる。
【0047】
上記含フッ素重合体は、主鎖又は側鎖を構成する炭素原子に直接結合しているフッ素原子を有する重合体である。上記含フッ素重合体は、非溶融加工性であってもよいし、溶融加工性であってもよい。
【0048】
上記含フッ素重合体は、含フッ素モノエチレン系不飽和炭化水素(I)を重合することにより得られるものであることが好ましい。
【0049】
上記「含フッ素モノエチレン系不飽和炭化水素(I)(以下、「不飽和炭化水素(I)」ともいう。)」とは、フッ素原子により水素原子の一部又は全部が置換されているビニル基を分子中に1個有する不飽和炭化水素を意味する。
【0050】
上記不飽和炭化水素(I)は、フッ素原子により置換されていない水素原子の一部又は全部が、塩素原子等のフッ素原子以外のハロゲン原子、及び、トリフルオロメチル基等のフルオロアルキル基からなる群より選択される少なくとも1種により置換されているものであってもよい。但し、上記不飽和炭化水素(I)は、後述のトリフルオロエチレンを除く。
【0051】
上記不飽和炭化水素(I)としては特に限定されず、例えば、テトラフルオロエチレン〔TFE〕、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕、クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕、ビニリデンフルオライド〔VdF〕、フッ化ビニル〔VF〕等が挙げられ、これらは、1種又は2種以上を用いることができる。
【0052】
上記含フッ素重合体は、上記不飽和炭化水素(I)の単独重合体であってもよい。上記不飽和炭化水素(I)の単独重合体としては、例えば、テトラフルオロエチレンホモポリマー〔TFEホモポリマー〕、ポリクロロトリフルオロエチレン〔PCTFE〕、ポリビニリデンフルオライド〔PVdF〕、ポリフッ化ビニル〔PVF〕等が挙げられる。TFEホモポリマーは非溶融加工性である。
【0053】
上記含フッ素重合体は、上記不飽和炭化水素(I)の共重合体であってもよい。上記共重合体としては、例えば、2種以上の上記不飽和炭化水素(I)の共重合体、少なくとも1種の上記不飽和炭化水素(I)と、上記不飽和炭化水素(I)と共重合し得る不飽和化合物(II)との共重合体が挙げられる。
【0054】
本開示において、1種又は2種以上の上記不飽和炭化水素(I)のみを重合することにより得られる重合体は、上記含フッ素重合体として用いることができるのに対して、1種又は2種以上の不飽和化合物(II)のみを重合することにより得られる重合体は、上記含フッ素重合体として用いることができない。この点で、上記不飽和化合物(II)は、上記不飽和炭化水素(I)と異なるものである。
【0055】
上記不飽和化合物(II)としては特に限定されず、例えば、トリフルオロエチレン〔3FH〕;エチレン〔Et〕、プロピレン〔Pr〕等のモノエチレン系不飽和炭化水素等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を用いることができる。
【0056】
上記不飽和炭化水素(I)の共重合体の具体例としては特に限定されず、TFE/HFP共重合体〔FEP〕、TFE/CTFE共重合体、TFE/VdF共重合体、TFE/3FH共重合体、Et/TFE共重合体〔ETFE〕、TFE/Pr共重合体等のTFE系共重合体;VdF/HFP共重合体;VdF/TFE/HFP共重合体;Et/CTFE共重合体〔ECTFE〕;Et/HFP共重合体等が挙げられる。
本明細書において、上記「TFE系共重合体」とは、TFEと、TFE以外のその他の単量体の1種又は2種以上とを共重合して得られるものを意味する。上記TFE系共重合体は、通常、上記TFE系共重合体中のTFE以外のその他の単量体に基づく重合単位の割合が、TFEに基づく重合単位と上記その他の単量体に基づく重合単位との合計質量の1質量%を超えていることが好ましい。
【0057】
上記TFE系共重合体における上記TFE以外のその他の単量体は、下記のTFEと共重合し得るその他の単量体(III)であってもよい。上記その他の単量体(III)は、下記一般式
X(CF2)mOnCF=CF2
(式中、Xは、-H、-Cl又は-Fを表し、mは、1~6の整数を表し、nは、0又は1の整数を表す。)で表される化合物(但し、HFPを除く。)、下記一般式
C3F7O[CF(CF3)CF2O]p-CF=CF2
(式中、pは、1又は2の整数を表す。)で表される化合物、及び、下記一般式
X(CF2)qCY=CH2
(式中、Xは、上記と同じであり、Yは、-H又は-Fを表し、qは、1~6の整数を表す。)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の単量体であることが好ましい。これらは、1種又は2種以上を用いることができる。
【0058】
上記その他の単量体(III)を用いたTFE系共重合体としては、TFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕共重合体〔PFA〕等が挙げられる。PFAとしては、国際公開第2002/088227号に記載の方法でフッ素化したPFAを使用することもできる。
【0059】
上記含フッ素重合体は、また、変性ポリテトラフルオロエチレン〔変性PTFE〕であってもよい。本明細書において、上記「変性PTFE」とは、得られる共重合体に溶融加工性を付与しない程度の少量の共単量体をTFEと共重合したものを意味する。上記共単量体としては特に限定されず、上記不飽和炭化水素(I)のうちHFP、CTFE等が挙げられ、上記不飽和化合物(II)のうち3FH等が挙げられ、上記その他の単量体(III)のうちPAVE、パーフルオロ(アルコキシビニルエーテル)、(パーフルオロアルキル)エチレン等が挙げられる。上記共単量体は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0060】
上記変性PTFEに含まれる上記共単量体に基づく重合単位の割合は、例えば、TFEに基づく重合単位と上記共単量体に基づく重合単位との合計質量の0.001~1質量%であることが好ましい。上記の割合は、上記共単量体としてPAVE、パーフルオロ(アルコキシビニルエーテル)等を用いる場合に特に好適である。
【0061】
上記含フッ素重合体としては、1種又は2種以上であってよく、上記不飽和炭化水素(I)の単独重合体の1種と上記不飽和炭化水素(I)の共重合体の1種又は2種類以上との混合物、又は、上記不飽和炭化水素(I)の共重合体の2種類以上の混合物であってもよい。
【0062】
上記混合物としては、例えば、TFEホモポリマーと上記TFE系共重合体との混合物、上記TFE系共重合体に属する2種類以上の共重合体の混合物等が挙げられ、このような混合物としては、例えば、TFEホモポリマーとPFAとの混合物、TFEホモポリマーとFEPとの混合物、TFEホモポリマーとPFAとFEPとの混合物、PFAとFEPとの混合物等が挙げられる。
【0063】
上記含フッ素重合体は、また、パーフルオロアルキル基を有するパーフルオロアルキル基含有エチレン性不飽和単量体(IV)(以下、「不飽和単量体(IV)」ともいう。)を重合することにより得られるものであってもよい。上記不飽和単量体(IV)は、下記一般式
【0064】
【0065】
(式中、Rfは、炭素数4~20のパーフルオロアルキル基を表し、R1は、-H又は炭素数1~10のアルキル基を表し、R2は、炭素数1~10のアルキレン基を表し、R3は、-H又はメチル基を表し、R4は、炭素数1~17のアルキル基を表し、rは、1~10の整数を表し、sは、0~10の整数を表す。)で表されるものである。
上記含フッ素重合体は、上記不飽和単量体(IV)の単独重合体であってもよいし、また、上記不飽和単量体(IV)と上記不飽和単量体(IV)と共重合し得る単量体(V)との共重合体であってもよい。
【0066】
上記単量体(V)としては特に限定されず、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、ジ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、N-メチロールプロパンアクリルアミド、(メタ)アクリル酸アミド、アルキル基の炭素数が1~20である(メタ)アクリル酸のアルキルエステル等の(メタ)アクリル酸誘導体;エチレン、塩化ビニル、フッ化ビニル、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン等の置換又は非置換エチレン;アルキル基の炭素数が1~20であるアルキルビニルエーテル、アルキル基の炭素数が1~20であるハロゲン化アルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類;アルキル基の炭素数が1~20であるビニルアルキルケトン等のビニルケトン類;無水マレイン酸等の脂肪族不飽和ポリカルボン酸及びその誘導体;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のポリエン等が挙げられる。
【0067】
上記含フッ素重合体は、例えば、乳化重合等の従来公知の重合方法等を用いることにより得ることができる。
【0068】
上記含フッ素重合体としては、得られる塗膜が耐食性及び耐水蒸気性に優れる点から、TFEホモポリマー、変性PTFE及び上記TFE系共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の重合体が好ましい。上記TFE系共重合体としては、PFA及びFEPからなる群より選択される少なくとも1種の共重合体が好ましい。
【0069】
上述したことから、上記含フッ素重合体としては、TFEホモポリマー、変性PTFE、PFA及びFEPからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、TFEホモポリマー、変性PTFE及びFEPからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、TFEホモポリマー及び変性PTFEからなる群より選択される少なくとも1種が更に好ましい。
【0070】
本開示の被覆組成物が上記含フッ素重合体を含む場合、上記耐熱性樹脂の含有量が、上記耐熱性樹脂及び上記含フッ素重合体の合計量(固形分)の15~50質量%であることが好ましく、15~40質量%であることがより好ましく、15~30質量%であることが更に好ましい。
上記合計量は、上記被覆組成物を基材上に塗布したのち80~100℃の温度で乾燥し、380~400℃で45分間焼成した後の残渣における上記耐熱性樹脂及び上記含フッ素重合体の合計質量を意味する。
【0071】
本開示の被覆組成物中の固形分に対し、上記耐熱性樹脂、上記被覆タルク及び上記含フッ素重合体(存在する場合)の合計量が80~100質量%であることが好ましく、90~100質量%であることがより好ましい。
上記合計量は、上記被覆組成物を基材上に塗布したのち80~100℃の温度で乾燥し、380~400℃で45分間焼成した後の残渣における上記耐熱性樹脂、上記被覆タルク及び上記含フッ素重合体の合計質量を意味する。
【0072】
本開示の被覆組成物は、液状であってもよく、粉体状であってもよい。上記被覆組成物は、液状であることが好ましい。
【0073】
上記被覆組成物は、液状である場合、液状媒体を含むことが好ましい。上記液状媒体は、水及び有機液体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。上記液状媒体は、水、及び、任意で有機液体を含むことがより好ましい。
本明細書において、「有機液体」とは、有機化合物であって、20℃程度の常温において液体であるものを意味する。
【0074】
上記液状媒体が主に有機液体からなるものである場合、上記耐熱性樹脂、上記被覆タルク及び上記含フッ素重合体は、上記液状媒体に粒子として分散したもの、上記液状媒体に溶解したもの、又は、その両者が混在したものである。上記有機液体としては、従来公知の有機溶剤等を用いてよく、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記液状媒体が主に有機液体からなるとは、上記液状媒体に対する有機液体の割合が50~100質量%であることを意味する。
【0075】
上記液状媒体が主に水からなるものである場合、上記芳香族ポリエーテルケトン樹脂及び上記耐熱性樹脂は、上記液状媒体に粒子として分散したものである。
上記液状媒体が主に水からなるとは、上記液状媒体に対する水の割合が50~100質量%であることを意味する。
【0076】
上記被覆組成物が液状である場合、上記耐熱性樹脂及び上記含フッ素重合体の粒子の平均粒子径は、0.01~40μmであることが好ましい。
【0077】
上記液状媒体が主に水からなるものである場合、上記耐熱性樹脂、上記被覆タルク及び上記含フッ素重合体からなる粒子を分散安定化させることを目的として、界面活性剤が添加されてもよい。上記界面活性剤としては従来公知のものを用いてよい。上記被覆組成物においては、上記耐熱性樹脂、上記被覆タルク及び上記含フッ素重合体からなる粒子を分散安定化させることを目的として、上記界面活性剤とともに、上記有機液体を併用することもできる。
【0078】
上記被覆組成物は、また、特公昭49-17017号公報に記載されている方法等により得られるオルガノゾルであってもよい。
【0079】
上記被覆組成物は、基材との密着性に優れる点から液状のものであることが好ましく、環境問題の点から上記液状媒体が主に水からなるものがより好ましい。上記被覆組成物が水を含むことは、好適な態様の1つである。
【0080】
上記被覆組成物が粉体状であることも、好ましい態様の1つである。この態様においては、乾燥工程が不要で、少ない塗装回数で厚い塗布膜を得ることが容易である。
【0081】
上記被覆組成物が粉体状である場合、上記耐熱性樹脂及び上記含フッ素重合体の粒子の平均粒子径は、1~50μmであることが好ましい。
【0082】
本開示の被覆組成物は、上記耐熱性樹脂、上記被覆タルク及び上記含フッ素重合体以外に、添加剤を更に含んでもよい。上記添加剤としては特に限定されず、例えば、レベリング剤、固体潤滑剤、沈降防止剤、水分吸収剤、界面活性剤、表面調整剤、チキソトロピー性付与剤、粘度調節剤、ゲル化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、色分かれ防止剤、皮張り防止剤、スリ傷防止剤、防カビ剤、抗菌剤、酸化防止剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、着色剤(酸化鉄、二酸化チタン等)等が挙げられる。
【0083】
本開示の被覆組成物は、得られる被覆物品に対する特性付与、物性向上、増量等を目的として、上記添加剤として充填材(但し、上記被覆タルクを除く)を含むものであってもよい。上記特性や物性としては、強度、耐久性、耐侯性、難燃性、意匠性等が挙げられる。
【0084】
上記充填材としては特に限定されず、例えば、木粉、石英砂、カーボンブラック、クレー、タルク(上記被覆タルクを除く)、ダイヤモンド、フッ素化ダイヤモンド、コランダム、ケイ石、窒化ホウ素、炭化ホウ素、炭化珪素、融解アルミナ、トルマリン、翡翠、ゲルマニウム、酸化ジルコニウム、炭化ジルコニウム、クリソベリル、トパーズ、ベリル、ガーネット、体質顔料、光輝性偏平顔料、鱗片状顔料、ガラス、ガラス粉、マイカ粉、金属粉(金、銀、銅、白金、ステンレス等)、各種強化材、各種増量材、導電性フィラー等が挙げられる。
【0085】
上記添加剤の含有量は、上記被覆組成物に対し、0.01~10.0質量%が好ましく、0.1~5.0質量%がより好ましい。
【0086】
本開示の被覆組成物は、金属又は非金属無機材料からなる基材上に直接塗布されるか、又は、耐熱性樹脂からなる層(以下、耐熱層ともいう)の上に塗布されることが好ましく、金属又は非金属無機材料からなる基材上に直接塗布されることがより好ましい。
【0087】
上記金属としては、鉄、アルミニウム、銅等の金属単体及びこれらの合金類等が挙げられる。上記合金類としては、ステンレス等が挙げられる。
上記非金属無機材料としては、ホーロー、ガラス、セラミック等が挙げられる。
【0088】
上記基材としては、金属からなるものが好ましく、アルミニウム又はステンレスからなるものがより好ましい。
【0089】
上記基材は、必要に応じ、脱脂処理、粗面化処理等の表面処理を行ったものであってもよい。上記粗面化処理の方法としては特に限定されず、酸又はアルカリによるケミカルエッチング、陽極酸化(アルマイト処理)、サンドブラスト等が挙げられる。上記表面処理は、上記基材や上記被覆組成物等の種類に応じて適宜選択すればよいが、例えば、サンドブラストであることが好ましい。
【0090】
上記基材は、380℃で空焼きして油等の不純物を熱分解除去する脱脂処理を実施したものであってもよい。また、表面処理後にアルミナ研掃材を用いて粗面化処理を施したアルミニウム基材を使用してもよい。
【0091】
上記耐熱層における耐熱性樹脂としては特に限定されず、本開示の被覆組成物に使用することができる上述の耐熱性樹脂と同様のものを挙げることができる。上記耐熱層における耐熱性樹脂は、本開示の被覆組成物に含まれる耐熱性樹脂と同一でもよく、異なってもよい。
上記耐熱層は、含フッ素重合体を含まないことが好ましい。
【0092】
上記基材又は上記耐熱層の上に上記被覆組成物を塗布する方法としては特に限定されず、上記被覆組成物が液状である場合、スプレー塗装、ロール塗装、ドクターブレードによる塗装、ディップ(浸漬)塗装、含浸塗装、スピンフロー塗装、カーテンフロー塗装等が挙げられ、なかでも、スプレー塗装が好ましい。上記被覆組成物が粉体状である場合、静電塗装、流動浸漬法、ロトライニング法等が挙げられ、なかでも、静電塗装が好ましい。
【0093】
上記被覆組成物の塗布の後、焼成を行ってもよいし、焼成を行わなくてもよい。また、上記被覆組成物が液状である場合、上記塗布の後、更に、乾燥を行ってもよいし、乾燥を行わなくてもよい。
【0094】
上記乾燥は、70~300℃の温度で5~60分間行うことが好ましい。上記焼成は、260~410℃の温度で10~30分間行うことが好ましい。
【0095】
上記被覆組成物が液状である場合、上記被覆組成物を上記基材上に塗布したのち、乾燥を行うことが好ましい。また、焼成を行わないことが好ましい。
【0096】
上記被覆組成物が粉体状である場合、上記被覆組成物を上記基材上に塗布したのち、焼成を行うことが好ましい。
【0097】
本開示の被覆組成物は、含フッ素重合体を含む層の下に塗布されることが好ましい。本開示の被覆組成物が含フッ素重合体を含む層の下塗り(プライマー)に用いられることは、好適な態様の1つである。
【0098】
本開示の被覆組成物は、後述する第1~第3の被覆物品を構成するプライマー層(A1)、プライマー層(A2)又は中間層(B2)を形成するために用いることができる。
【0099】
本開示は、基材と、耐熱性樹脂(a)、含フッ素重合体(a)、及び、金属酸化物で被覆したタルクを含むプライマー層(A1)と、含フッ素重合体(b)を含む含フッ素層(C1)とを有することを特徴とする被覆物品(以下、第1の被覆物品ともいう)にも関する。
第1の被覆物品は、耐食性に優れる。
【0100】
第1の被覆物品を構成する上記基材の材料としては、鉄、アルミニウム、銅等の金属単体及びこれらの合金類等の金属;ホーロー、ガラス、セラミック等の非金属無機材料等が挙げられる。上記合金類としては、ステンレス等が挙げられる。
【0101】
上記基材としては、金属からなるものが好ましく、アルミニウム又はステンレスからなるものがより好ましい。
【0102】
第1の被覆物品を構成するプライマー層(A1)は、耐熱性樹脂(a)、含フッ素重合体(a)、及び、金属酸化物で被覆したタルク(被覆タルク)を含む。
【0103】
プライマー層(A1)を構成する耐熱性樹脂(a)としては、上述した本開示の被覆組成物に使用し得る耐熱性樹脂と同様のものが例示できる。なお、耐熱性樹脂(a)は、含フッ素重合体を除くものとする。
耐熱性樹脂(a)は、PAI、PI及びPESからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、PESと、PAI及びPIからなる群より選択される少なくとも1種と、からなることがより好ましい。
【0104】
耐熱性樹脂(a)が、PESと、PAI及びPIからなる群より選択される少なくとも1種とからなるものである場合、PESは、PESと、PAI及びPIからなる群より選択される少なくとも1種との合計量の65~85質量%であることが好ましく、70~80質量%であることがより好ましい。
【0105】
プライマー層(A1)において、耐熱性樹脂(a)の含有量は、耐熱性樹脂(a)及び含フッ素重合体(a)の合計量の15~50質量%であることが好ましく、15~40質量%であることがより好ましく、15~30質量%であることが更に好ましい。
【0106】
プライマー層(A1)を構成する含フッ素重合体(a)としては、上述した本開示の被覆組成物に使用し得る含フッ素重合体と同様のものが例示できる。
含フッ素重合体(a)としては、TFEホモポリマー、変性PTFE、PFA及びFEPからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、TFEホモポリマー、変性PTFE及びFEPからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、TFEホモポリマー及び変性PTFEからなる群より選択される少なくとも1種が更に好ましい。
【0107】
プライマー層(A1)を構成する被覆タルクとしては、上述した本開示の被覆組成物に使用し得る被覆タルクと同様のものが例示できる。
上記被覆タルクとしては、酸化鉄で被覆したタルクが好ましく、Fe3O4(四酸化三鉄)で被覆したタルクがより好ましい。
上記被覆タルクとしては、また、黒色のものが好ましい。
【0108】
プライマー層(A1)において、上記被覆タルクの含有量は、耐熱性樹脂(a)及び含フッ素重合体(a)の合計量に対して0.1~20質量%であることが好ましい。上記含有量のより好ましい下限は0.5質量%、更に好ましい下限は1.0質量%である。また、より好ましい上限は15質量%、更に好ましい上限は10質量%である。
【0109】
プライマー層(A1)は、耐熱性樹脂(a)、含フッ素重合体(a)及び上記被覆タルク以外に、更に添加剤を含んでもよい。上記添加剤としては、上述した本開示の被覆組成物に使用し得る添加剤を例示することができる。
上記添加剤の含有量は、プライマー層(A1)の全質量に対し、0.01~10.0質量%が好ましく、0.1~5.0質量%がより好ましい。
【0110】
プライマー層(A1)は、膜厚が5~90μmであることが好ましい。膜厚が薄過ぎると、ピンホールが発生し易く、被覆物品の耐食性が低下するおそれがある。膜厚が厚過ぎると、クラックが生じ易くなり、被覆物品の耐水蒸気性が低下するおそれがある。上記プライマー層(A1)が液状組成物から形成される場合の膜厚のより好ましい上限は60μmであり、更に好ましい上限は50μmである。上記プライマー層(A1)が粉体状組成物から形成される場合の膜厚のより好ましい上限は80μmであり、更に好ましい上限は70μmである。
【0111】
第1の被覆物品を構成する含フッ素層(C1)は、含フッ素重合体(b)を含む。
【0112】
含フッ素層(C1)を構成する含フッ素重合体(b)としては、上述した本開示の被覆組成物に使用し得る含フッ素重合体と同様のものが例示できる。
含フッ素重合体(b)としては、TFEホモポリマー、変性PTFE、PFA及びFEPからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、TFEホモポリマー、変性PTFE及びPFAからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、PFAが更に好ましい。
【0113】
含フッ素層(C1)は、含フッ素重合体(b)以外に、添加剤を含んでもよい。上記添加剤としては特に限定されず、例えば、本開示の被覆組成物において例示した添加剤を用いることができる。
上記添加剤の含有量は、含フッ素層(C1)の全質量に対し、0.01~30質量%が好ましく、0.1~20質量%がより好ましい。
【0114】
含フッ素層(C1)は、得られる被覆物品に対する特性付与、物性向上、増量等を目的として、上記添加剤として充填材(但し、上記被覆タルクを除く)を含むものであってもよい。上記特性や物性としては、強度、耐久性、耐侯性、難燃性、意匠性等が挙げられる。充填材として光輝感を有するものを用いた場合、本開示の被覆物品は、良好な光輝感を有する。
【0115】
上記充填材としては特に限定されず、例えば、木粉、石英砂、カーボンブラック、クレー、タルク(上記被覆タルクを除く)、ダイヤモンド、フッ素化ダイヤモンド、コランダム、ケイ石、窒化ホウ素、炭化ホウ素、炭化珪素、融解アルミナ、トルマリン、翡翠、ゲルマニウム、酸化ジルコニウム、炭化ジルコニウム、クリソベリル、トパーズ、ベリル、ガーネット、体質顔料、光輝性偏平顔料、鱗片状顔料、ガラス、ガラス粉、マイカ粉、金属粉(金、銀、銅、白金、ステンレス等)、各種強化材、各種増量材、導電性フィラー等が挙げられる。上記充填材としては、本発明の含フッ素積層体が光輝感を有することを要求される場合、光輝性充填材が好ましい。上記「光輝性充填材」は、得られる含フッ素積層体に光輝感を付与することができる充填材である。
【0116】
上記充填材は、含フッ素重合体(b)の全質量に対して0.01~40質量%であることが好ましく、0.05~30質量%であることがより好ましく、0.1~10質量%であることが更に好ましい。
【0117】
含フッ素層(C1)は、膜厚が5~90μmであることが好ましい。膜厚が薄過ぎると、被覆物品の耐食性が低下するおそれがある。膜厚が厚過ぎると、被覆物品が水蒸気の存在下にある場合、水蒸気が被覆物品中に残存し易くなり、耐水蒸気性に劣る場合がある。上記含フッ素層(C1)が液状組成物から形成される場合の膜厚のより好ましい上限は60μmであり、更に好ましい上限は50μmであり、特に好ましい上限は40μmである。含フッ素層(C1)が粉体状組成物から形成される場合の膜厚のより好ましい上限は80μmであり、更に好ましい上限は75μmであり、特に好ましい上限は70μmである。
【0118】
第1の被覆物品において、プライマー層(A1)の膜厚が5~90μmであり、含フッ素層(C1)の膜厚が5~90μmであることは、好適な態様の1つである。
【0119】
第1の被覆物品においては、上記基材、プライマー層(A1)及び含フッ素層(C1)が、この順に積層されていることが好ましい。
言い換えると、上記基材の上にプライマー層(A1)が設けられ、プライマー層(A1)の上にフッ素層(C1)が設けられていることが好ましい。
【0120】
プライマー層(A1)は、上記基材と直接接していることが好ましい。
含フッ素層(C1)は、プライマー層(A1)と直接接していてもよく、他の層を介して接していてもよいが、直接接していることが好ましい。
【0121】
含フッ素層(C1)上に更に層が設けられていてもよいが、含フッ素層(C1)が最外層であることが好ましい。
【0122】
プライマー層(A1)の上面に文字、図面等の印刷が施されていてもよい。
【0123】
本開示は、基材と、耐熱性樹脂(b)、及び、金属酸化物で被覆したタルクを含むプライマー層(A2)と、耐熱性樹脂(a)及び含フッ素重合体(a)を含む中間層(B1)と、含フッ素重合体(b)を含む含フッ素層(C)とを有することを特徴とする被覆物品(以下、第2の被覆物品ともいう)にも関する。
第2の被覆物品は、耐食性に優れる。
【0124】
第2の被覆物品を構成する上記基材としては、上述した第1の被覆物品に使用し得る基材と同様のものが例示でき、好ましい例も同様である。
【0125】
第2の被覆物品を構成するプライマー層(A2)は、耐熱性樹脂(b)、及び、金属酸化物で被覆したタルク(被覆タルク)を含む。
【0126】
プライマー層(A2)を構成する耐熱性樹脂(b)としては、上述した本開示の被覆組成物に使用し得る耐熱性樹脂と同様のものが例示できる。なお、耐熱性樹脂(b)は、含フッ素重合体を除くものとする。
耐熱性樹脂(b)は、芳香族ポリエーテルケトン樹脂、PAI、PI及びPESからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、芳香族ポリエーテルケトン樹脂と、PAI及びPIからなる群より選択される少なくとも1種と、からなることがより好ましい。
上記芳香族ポリエーテルケトン樹脂としては、PEK、PEEK、PEEKK及びポリエーテルケトンエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、PEEKがより好ましい。
【0127】
耐熱性樹脂(b)が、芳香族ポリエーテルケトン樹脂と、PAI及びPIからなる群より選択される少なくとも1種とからなるものである場合、芳香族ポリエーテルケトン樹脂は、芳香族ポリエーテルケトン樹脂と、PAI及びPIからなる群より選択される少なくとも1種との合計量の1~50質量%であることが好ましく、3~48質量%であることがより好ましく、5~45質量%であることがより好ましい。
【0128】
プライマー層(A2)を構成する上記被覆タルクとしては、上述した本開示の被覆組成物及び第1の被覆物品に使用し得る被覆タルクと同様のものが例示でき、好ましい例も同様である。
【0129】
プライマー層(A2)において、上記被覆タルクの含有量は、耐熱性樹脂(b)に対して0.1~20質量%であることが好ましい。上記含有量のより好ましい下限は0.5質量%、更に好ましい下限は1.0質量%である。また、より好ましい上限は15質量%、更に好ましい上限は10質量%である。
【0130】
プライマー層(A2)は、含フッ素重合体を含まないことが好ましい。
【0131】
プライマー層(A2)は、耐熱性樹脂(b)及び上記被覆タルク以外に、更に添加剤を含んでもよい。上記添加剤としては、上述した本開示の被覆組成物に使用し得る添加剤を例示することができる。
上記添加剤の含有量は、プライマー層(A2)の全質量に対し、0.01~10.0質量%が好ましく、0.1~5.0質量%がより好ましい。
【0132】
プライマー層(A2)は、膜厚が5~90μmであることが好ましい。膜厚が薄過ぎると、ピンホールが発生し易く、被覆物品の耐食性が低下するおそれがある。膜厚が厚過ぎると、クラックが生じ易くなり、被覆物品の耐水蒸気性が低下するおそれがある。上記プライマー層(A2)が液状組成物から形成される場合の膜厚のより好ましい上限は60μmであり、更に好ましい上限は50μmである。上記プライマー層(A2)が粉体状組成物から形成される場合の膜厚のより好ましい上限は80μmであり、更に好ましい上限は70μmである。
【0133】
第2の被覆物品を構成する中間層(B1)は、耐熱性樹脂(a)及び含フッ素重合体(a)を含む。
【0134】
中間層(B1)を構成する耐熱性樹脂(a)としては、上述した第1の被覆物品に使用し得る耐熱性樹脂(a)と同様のものが例示でき、好ましい例も同様である。
【0135】
中間層(B1)において、耐熱性樹脂(a)の含有量は、耐熱性樹脂(a)及び含フッ素重合体(a)の合計量の15~50質量%であることが好ましく、15~40質量%であることがより好ましく、15~30質量%であることが更に好ましい。
【0136】
中間層(B1)を構成する含フッ素重合体(a)としては、上述した第1の被覆物品に使用し得る含フッ素重合体(a)と同様のものが例示でき、好ましい例も同様である。
【0137】
中間層(B1)は、耐熱性樹脂(a)及び含フッ素重合体(a)以外に、添加剤を含んでもよい。上記添加剤としては特に限定されず、例えば、本開示の被覆組成物において例示した添加剤を用いることができる。
上記添加剤の含有量は、中間層(B1)の全質量に対し、0.01~30質量%が好ましく、0.1~20質量%がより好ましい。
【0138】
中間層(B1)は、得られる被覆物品に対する特性付与、物性向上、増量等を目的として、上記添加剤として充填材を含むものであってもよい。上記特性や物性としては、強度、耐久性、耐侯性、難燃性、意匠性等が挙げられる。
【0139】
上記充填材としては特に限定されず、例えば、木粉、石英砂、カーボンブラック、クレー、タルク、ダイヤモンド、フッ素化ダイヤモンド、コランダム、ケイ石、窒化ホウ素、炭化ホウ素、炭化珪素、融解アルミナ、トルマリン、翡翠、ゲルマニウム、酸化ジルコニウム、炭化ジルコニウム、クリソベリル、トパーズ、ベリル、ガーネット、体質顔料、光輝性偏平顔料、鱗片状顔料、ガラス、ガラス粉、マイカ粉、金属粉(金、銀、銅、白金、ステンレス等)、各種強化材、各種増量材、導電性フィラー等が挙げられる。
【0140】
上記充填材は、中間層(B1)の全質量に対して0.01~40質量%であることが好ましく、0.05~30質量%であることがより好ましく、0.1~10質量%であることが更に好ましい。
【0141】
中間層(B1)は、膜厚が5~90μmであることが好ましい。膜厚が薄過ぎると、得られる被覆物品の耐摩耗性が充分ではない場合がある。膜厚が厚過ぎると、中間層(B1)から透過した水分が抜け難くなり、被覆物品の耐水蒸気性が低下するおそれがある。中間層(B1)の膜厚のより好ましい上限は60μmであり、更に好ましい上限は50μmである。
【0142】
第2の被覆物品を構成する含フッ素層(C2)は、含フッ素重合体(b)を含む。
【0143】
含フッ素層(C2)を構成する含フッ素重合体(b)としては、上述した第1の被覆物品に使用し得る含フッ素重合体(b)と同様のものが例示でき、好ましい例も同様である。
【0144】
含フッ素層(C2)は、含フッ素重合体(b)以外に、添加剤を含んでもよい。上記添加剤としては特に限定されず、例えば、本開示の被覆組成物において例示した添加剤を用いることができる。
上記添加剤の含有量は、含フッ素層(C2)の全質量に対し、0.01~30質量%が好ましく、0.1~20質量%がより好ましい。
【0145】
含フッ素層(C2)は、第1の被覆物品の含フッ素層(C1)において例示したのと同様の充填材を含むものであってもよい。
上記充填材は、含フッ素重合体(b)の全質量に対して0.01~40質量%であることが好ましく、0.05~30質量%であることがより好ましく、0.1~10質量%であることが更に好ましい。
【0146】
含フッ素層(C2)は、膜厚が5~90μmであることが好ましい。膜厚が薄過ぎると、被覆物品の耐食性が低下するおそれがある。膜厚が厚過ぎると、被覆物品が水蒸気の存在下にある場合、水蒸気が被覆物品中に残存し易くなり、耐水蒸気性に劣る場合がある。上記含フッ素層(C2)が液状組成物から形成される場合の膜厚のより好ましい上限は60μmであり、更に好ましい上限は50μmであり、特に好ましい上限は40μmである。含フッ素層(C2)が粉体状組成物から形成される場合の膜厚のより好ましい上限は80μmであり、更に好ましい上限は75μmであり、特に好ましい上限は70μmである。
【0147】
第2の被覆物品において、プライマー層(A2)の膜厚が5~90μmであり、中間層(B1)の膜厚が5~90μmであり、含フッ素層(C2)の膜厚が5~90μmであることは、好適な態様の1つである。
【0148】
第2の被覆物品においては、上記基材、プライマー層(A2)、中間層(B1)及び含フッ素層(C2)が、この順に積層されていることが好ましい。
言い換えると、上記基材の上にプライマー層(A2)が設けられ、プライマー層(A2)の上に中間層(B1)が設けられ、中間層(B1)の上にフッ素層(C2)が設けられていることが好ましい。
【0149】
プライマー層(A2)は、上記基材と直接接していることが好ましい。
中間層(B1)は、プライマー層(A2)と直接接していてもよく、他の層を介して接していてもよいが、直接接していることが好ましい。
含フッ素層(C2)は、中間層(B1)と直接接していてもよく、他の層を介して接していてもよいが、直接接していることが好ましい。
【0150】
含フッ素層(C2)上に更に層が設けられていてもよいが、含フッ素層(C2)が最外層であることが好ましい。
【0151】
プライマー層(A2)の上面、中間層(B1)の上面、又は、その両方に文字、図面等の印刷が施されていてもよい。
【0152】
本開示は、基材と、耐熱性樹脂(b)を含むプライマー層(A3)と、耐熱性樹脂(a)、含フッ素重合体(a)、及び、金属酸化物で被覆したタルクを含む中間層(B2)と、含フッ素重合体(b)を含む含フッ素層(C)とを有することを特徴とする被覆物品(以下、第3の被覆物品ともいう)にも関する。
第3の被覆物品は、耐食性に優れる。
【0153】
第3の被覆物品を構成する上記基材としては、上述した第1及び第2の被覆物品に使用し得る基材と同様のものが例示でき、好ましい例も同様である。
【0154】
第3の被覆物品を構成するプライマー層(A3)は、耐熱性樹脂(b)を含む。
【0155】
プライマー層(A3)を構成する耐熱性樹脂(b)としては、上述した第2の被覆物品に使用し得る耐熱性樹脂(b)と同様のものが例示でき、好ましい例も同様である。
【0156】
プライマー層(A3)は、含フッ素重合体を含まないことが好ましい。
【0157】
プライマー層(A3)は、耐熱性樹脂(b)以外に、更に添加剤を含んでもよい。上記添加剤としては、上述した本開示の被覆組成物に使用し得る添加剤を例示することができる。
上記添加剤の含有量は、プライマー層(A3)の全質量に対し、0.01~10.0質量%が好ましく、0.1~5.0質量%がより好ましい。
【0158】
プライマー層(A3)は、膜厚が5~90μmであることが好ましい。膜厚が薄過ぎると、ピンホールが発生し易く、被覆物品の耐食性が低下するおそれがある。膜厚が厚過ぎると、クラックが生じ易くなり、被覆物品の耐水蒸気性が低下するおそれがある。上記プライマー層(A3)が液状組成物から形成される場合の膜厚のより好ましい上限は60μmであり、更に好ましい上限は50μmである。上記プライマー層(A3)が粉体状組成物から形成される場合の膜厚のより好ましい上限は80μmであり、更に好ましい上限は70μmである。
【0159】
第3の被覆物品を構成する中間層(B2)は、耐熱性樹脂(a)、含フッ素重合体(a)、及び、金属酸化物で被覆したタルク(被覆タルク)を含む。
【0160】
中間層(B2)を構成する耐熱性樹脂(a)としては、上述した第1及び第2の被覆物品に使用し得る耐熱性樹脂(a)と同様のものが例示でき、好ましい例も同様である。
【0161】
中間層(B2)において、耐熱性樹脂(a)の含有量は、耐熱性樹脂(a)及び含フッ素重合体(a)の合計量の15~50質量%であることが好ましく、15~40質量%であることがより好ましく、15~30質量%であることが更に好ましい。
【0162】
中間層(B2)を構成する含フッ素重合体(a)としては、上述した第1及び第2の被覆物品に使用し得る含フッ素重合体(a)と同様のものが例示でき、好ましい例も同様である。
【0163】
中間層(B2)を構成する上記被覆タルクとしては、上述した本開示の被覆組成物並びに第1及び第2の被覆物品に使用し得る被覆タルクと同様のものが例示でき、好ましい例も同様である。
【0164】
中間層(B2)において、上記被覆タルクの含有量は、耐熱性樹脂(a)及び含フッ素重合体(a)の合計量に対して0.1~20質量%であることが好ましい。上記含有量のより好ましい下限は0.5質量%、更に好ましい下限は1.0質量%である。また、より好ましい上限は15質量%、更に好ましい上限は10質量%である。
【0165】
中間層(B2)は、耐熱性樹脂(a)、含フッ素重合体(a)及び上記被覆タルク以外に、添加剤を含んでもよい。上記添加剤としては特に限定されず、例えば、本開示の被覆組成物において例示した添加剤を用いることができる。
上記添加剤の含有量は、中間層(B2)の全質量に対し、0.01~30質量%が好ましく、0.1~20質量%がより好ましい。
【0166】
中間層(B2)は、第2の被覆物品の中間層(B1)において例示したのと同様の充填材を含むものであってもよい。
上記充填材は、中間層(B2)の全質量に対して0.01~40質量%であることが好ましく、0.05~30質量%であることがより好ましく、0.1~10質量%であることが更に好ましい。
【0167】
中間層(B2)は、膜厚が5~90μmであることが好ましい。膜厚が薄過ぎると、得られる被覆物品の耐摩耗性が充分ではない場合がある。膜厚が厚過ぎると、中間層(B2)から透過した水分が抜け難くなり、被覆物品の耐水蒸気性が低下するおそれがある。中間層(B2)の膜厚のより好ましい上限は60μmであり、更に好ましい上限は50μmである。
【0168】
第3の被覆物品を構成する含フッ素層(C3)は、含フッ素重合体(b)を含む。
【0169】
含フッ素層(C3)を構成する含フッ素重合体(b)としては、上述した第1及び第2の被覆物品に使用し得る含フッ素重合体(b)と同様のものが例示でき、好ましい例も同様である。
【0170】
含フッ素層(C3)は、含フッ素重合体(b)以外に、添加剤を含んでもよい。上記添加剤としては特に限定されず、例えば、本開示の被覆組成物において例示した添加剤を用いることができる。
上記添加剤の含有量は、含フッ素層(C3)の全質量に対し、0.01~30質量%が好ましく、0.1~20質量%がより好ましい。
【0171】
含フッ素層(C3)は、第1及び第2の被覆物品の含フッ素層(C1)及び(C2)において例示したのと同様の充填材を含むものであってもよい。
上記充填材は、含フッ素重合体(b)の全質量に対して0.01~40質量%であることが好ましく、0.05~30質量%であることがより好ましく、0.1~10質量%であることが更に好ましい。
【0172】
含フッ素層(C3)は、膜厚が5~90μmであることが好ましい。膜厚が薄過ぎると、被覆物品の耐食性が低下するおそれがある。膜厚が厚過ぎると、被覆物品が水蒸気の存在下にある場合、水蒸気が被覆物品中に残存し易くなり、耐水蒸気性に劣る場合がある。上記含フッ素層(C3)が液状組成物から形成される場合の膜厚のより好ましい上限は60μmであり、更に好ましい上限は50μmであり、特に好ましい上限は40μmである。含フッ素層(C3)が粉体状組成物から形成される場合の膜厚のより好ましい上限は80μmであり、更に好ましい上限は75μmであり、特に好ましい上限は70μmである。
【0173】
第3の被覆物品において、プライマー層(A3)の膜厚が5~90μmであり、中間層(B2)の膜厚が5~90μmであり、含フッ素層(C3)の膜厚が5~90μmであることは、好適な態様の1つである。
【0174】
第3の被覆物品においては、上記基材、プライマー層(A3)、中間層(B2)及び含フッ素層(C3)が、この順に積層されていることが好ましい。
言い換えると、上記基材の上にプライマー層(A3)が設けられ、プライマー層(A3)の上に中間層(B2)が設けられ、中間層(B2)の上にフッ素層(C3)が設けられていることが好ましい。
【0175】
プライマー層(A3)は、上記基材と直接接していることが好ましい。
中間層(B2)は、プライマー層(A3)と直接接していてもよく、他の層を介して接していてもよいが、直接接していることが好ましい。
含フッ素層(C3)は、中間層(B2)と直接接していてもよく、他の層を介して接していてもよいが、直接接していることが好ましい。
【0176】
含フッ素層(C3)上に更に層が設けられていてもよいが、含フッ素層(C3)が最外層であることが好ましい。
【0177】
プライマー層(A3)の上面、中間層(B2)の上面、又は、その両方に文字、図面等の印刷が施されていてもよい。
【0178】
第1の被覆物品は、例えば、基材上に、プライマー用被覆組成物(A1)を塗布することによりプライマー塗布膜(A1p)を形成する工程(A1)、
プライマー塗布膜(A1p)上に、含フッ素塗料(C1)を塗布することにより塗布膜(C1p)を形成する工程(C1)、並びに、
プライマー塗布膜(A1p)及び塗布膜(C1p)からなる塗布膜積層体を焼成することにより、上記基材、プライマー層(A1)及び含フッ素層(C1)からなる第1の被覆物品を形成する工程(D1)
を含む方法(以下、第1の製造方法ともいう)により、製造することができる。
【0179】
工程(A1)において、プライマー用被覆組成物(A1)は、耐熱性樹脂(a)、含フッ素重合体(a)、及び、金属酸化物で被覆したタルク(被覆タルク)を含むことが好ましい。
プライマー用被覆組成物(A1)は、更に、任意で添加剤を含むこともできる。
耐熱性樹脂(a)、含フッ素重合体(a)、上記被覆タルク及び上記添加剤については、上述したとおりである。
【0180】
プライマー用被覆組成物(A1)として、上述した本開示の被覆組成物を用いることが好ましい。
【0181】
上記基材上にプライマー用被覆組成物(A1)を塗布する方法としては特に限定されず、プライマー用被覆組成物(A1)が液状である場合、スプレー塗装、ロール塗装、ドクターブレードによる塗装、ディップ(浸漬)塗装、含浸塗装、スピンフロー塗装、カーテンフロー塗装等が挙げられ、なかでも、スプレー塗装が好ましい。プライマー用被覆組成物(A1)が粉体状である場合、静電塗装、流動浸漬法、ロトライニング法等が挙げられ、なかでも、静電塗装が好ましい。
【0182】
工程(A1)におけるプライマー用被覆組成物(A1)の塗布の後、工程(C1)を行う前に焼成を行ってもよいし、焼成を行わなくてもよい。また、プライマー用被覆組成物(A1)が液状である場合、上記塗布の後、更に、乾燥を行ってもよいし、乾燥を行わなくてもよい。
【0183】
工程(A1)において、上記乾燥は、70~300℃の温度で5~60分間行うことが好ましい。上記焼成は、260~410℃の温度で10~30分間行うことが好ましい。
【0184】
プライマー用被覆組成物(A1)が液状である場合、工程(A1)においては、上記基材上に塗布したのち、乾燥を行うことが好ましい。また、後述の工程(D1)において塗布膜積層体の焼成を行うため、焼成を行わないことが好ましい。
【0185】
プライマー用被覆組成物(A1)が粉体状である場合、工程(A1)においては、上記基材上に塗布したのち、焼成を行うことが好ましい。
【0186】
プライマー塗布膜(A1p)は、上記基材上にプライマー用被覆組成物(A1)を塗布した後、必要に応じて乾燥又は焼成することにより形成されるものである。プライマー塗布膜(A1p)は、得られる被覆物品においてプライマー層(A1)となる。
【0187】
工程(C1)は、プライマー塗布膜(A1p)上に含フッ素塗料(C1)を塗布することにより塗布膜(C1p)を形成する工程である。
【0188】
工程(C1)における含フッ素塗料(C1)は、含フッ素重合体(b)を含むことが好ましい。
含フッ素塗料(C1)は、更に、任意で添加剤を含むこともできる。
含フッ素重合体(b)及び上記添加剤については、上述したとおりである。
【0189】
含フッ素塗料(C1)は、粉体塗料であってもよく、水性塗料等の液状塗料であってもよい。乾燥工程が不要で、少ない塗装回数で厚い塗布膜を得ることが容易である点では、粉体塗料であることが好ましい。含フッ素塗料(C1)が液状塗料である場合は、含フッ素重合体(b)の粒子が液状媒体に分散された液状塗料であることが好ましく、含フッ素重合体(b)の粒子が主に水からなる水性媒体に分散された水性塗料であることがより好ましい。
【0190】
含フッ素塗料(C1)における含フッ素重合体(b)の粒子の平均粒子径は、液体塗料の場合は0.01~40μm、粉体塗料の場合は1~50μmであることが好ましい。
【0191】
含フッ素重合体(b)が溶融加工性である場合、含フッ素塗料(C1)は、球晶を微細化する目的で、少量のPTFE(TFEホモポリマー及び変性PTFEの少なくとも一方)を含んでもよい。この場合、PTFEの含有量は、含フッ素重合体(b)に対して0.01~10.0質量%とすることが好ましい。
【0192】
また、含フッ素塗料(C1)は、着色顔料を含有しないことが好ましい。着色顔料は、耐食性を悪化させる原因となり得るため、含フッ素塗料(C1)が着色顔料を含有しないものであれば、得られる被覆物品は、より優れた耐食性及び耐水蒸気性を有するものとなる。
【0193】
プライマー塗布膜(Ap)上に含フッ素塗料(C1)を塗布する方法としては特に限定されず、上述のプライマー用被覆組成物(A1)の塗布の方法と同じ方法等が挙げられる。含フッ素塗料(C1)が粉体塗料である場合は、静電塗装が好ましい。
【0194】
塗布膜(C1p)は、上記塗布ののち必要に応じて乾燥又は焼成することにより形成されてもよい。工程(C1)における乾燥又は焼成は、工程(A1)における乾燥又は焼成と同様の条件で行うことが好ましい。塗布膜(C1p)は、得られる被覆物品における含フッ素層(C1)となる。
【0195】
工程(D1)は、プライマー塗布膜(A1p)及び塗布膜(C1p)からなる塗布膜積層体を焼成することにより、上記基材、プライマー層(A1)及び含フッ素層(C)からなる第1の被覆物品を形成する工程である。
【0196】
工程(D1)における焼成は、工程(A1)及び(C1)における焼成と同様の条件で行うことが好ましい。
【0197】
第1の製造方法は、プライマー塗布膜(A1p)を形成する工程(A1)の後に、文字、図面等を印刷する工程を有するものであってもよい。上記文字、図面等は、例えば、被覆物品が炊飯釜である場合、水の量を示す文字と線等である。
【0198】
上記印刷の方法としては特に限定されず、例えば、パット転写印刷が挙げられる。上記印刷に用いる印刷インキとしては特に限定されず、例えば、PESとTFEホモポリマーと酸化チタンとからなる組成物が挙げられる。
【0199】
第2の被覆物品は、例えば、基材上に、プライマー用被覆組成物(A2)を塗布することによりプライマー塗布膜(A2p)を形成する工程(A2)、
プライマー塗布膜(A2p)上に、含フッ素塗料(B1)を塗布することにより塗布膜(B1p)を形成する工程(B1)、
塗布膜(B1p)上に含フッ素塗料(C2)を塗布することにより塗布膜(C2p)を形成する工程(C2)、並びに、
プライマー塗布膜(A2p)、塗布膜(B1p)及び塗布膜(C2p)からなる塗布膜積層体を焼成することにより、上記基材、プライマー層(A2)、中間層(B1)及び含フッ素層(C2)からなる第2の被覆物品を形成する工程(D2)
を含む方法により、製造することができる。
【0200】
工程(A2)は、基材上に、プライマー用被覆組成物(A2)を塗布することによりプライマー塗布膜(A2p)を形成する工程である。
【0201】
工程(A2)において、プライマー用被覆組成物(A2)は、耐熱性樹脂(b)、及び、金属酸化物で被覆したタルク(被覆タルク)を含むことが好ましい。
プライマー用被覆組成物(A2)は、更に、任意で添加剤を含むこともできる。
耐熱性樹脂(b)、上記被覆タルク及び上記添加剤については、上述したとおりである。
プライマー用被覆組成物(A2)は、含フッ素重合体を含まないことが好ましい。
【0202】
プライマー用被覆組成物(A2)として、上述した本開示の被覆組成物を用いることが好ましい。
【0203】
上記基材上にプライマー用被覆組成物(A2)を塗布する方法としては特に限定されず、プライマー用被覆組成物(A2)が液状である場合、スプレー塗装、ロール塗装、ドクターブレードによる塗装、ディップ(浸漬)塗装、含浸塗装、スピンフロー塗装、カーテンフロー塗装等が挙げられ、なかでも、スプレー塗装が好ましい。プライマー用被覆組成物(A2)が粉体状である場合、静電塗装、流動浸漬法、ロトライニング法等が挙げられ、なかでも、静電塗装が好ましい。
【0204】
工程(A2)におけるプライマー用被覆組成物(A2)の塗布の後、工程(B1)を行う前に焼成を行ってもよいし、焼成を行わなくてもよい。また、プライマー用被覆組成物(A2)が液状である場合、上記塗布の後、更に、乾燥を行ってもよいし、乾燥を行わなくてもよい。
【0205】
工程(A2)において、上記乾燥は、70~300℃の温度で5~60分間行うことが好ましい。上記焼成は、260~410℃の温度で10~30分間行うことが好ましい。
【0206】
プライマー用被覆組成物(A2)が液状である場合、工程(A2)においては、上記基材上に塗布したのち、乾燥を行うことが好ましい。また、後述の工程(D2)において塗布膜積層体の焼成を行うため、焼成を行わないことが好ましい。
【0207】
プライマー用被覆組成物(A2)が粉体状である場合、工程(A2)においては、上記基材上に塗布したのち、焼成を行うことが好ましい。
【0208】
プライマー塗布膜(A2p)は、上記基材上にプライマー用被覆組成物(A2)を塗布した後、必要に応じて乾燥又は焼成することにより形成されるものである。プライマー塗布膜(A2p)は、得られる被覆物品においてプライマー層(A2)となる。
【0209】
工程(B1)は、プライマー塗布膜(A2p)上に、含フッ素塗料(B1)を塗布することにより塗布膜(B1p)を形成する工程である。
【0210】
工程(B1)における含フッ素塗料(B1)は、耐熱性樹脂(a)及び含フッ素重合体(a)を含むことが好ましい。
含フッ素塗料(B1)は、更に、任意で添加剤を含むこともできる。
耐熱性樹脂(a)、含フッ素重合体(a)及び上記添加剤については、上述したとおりである。
【0211】
含フッ素塗料(B1)は、粉体塗料であってもよく、水性塗料等の液状塗料であってもよい。含フッ素塗料(B1)が液状塗料である場合は、耐熱性樹脂(a)及び含フッ素重合体(a)の粒子が液状媒体に分散された液状塗料であることが好ましく、耐熱性樹脂(a)及び含フッ素重合体(a)の粒子が主に水からなる水性媒体に分散された水性塗料であることがより好ましい。
【0212】
含フッ素塗料(B1)における耐熱性樹脂(a)及び含フッ素重合体(a)の粒子の平均粒子径は、液状塗料の場合は0.01~40μm、粉体塗料の場合は1~50μmであることが好ましい。
【0213】
含フッ素重合体(a)が溶融加工性である場合、含フッ素塗料(B1)は、球晶を微細化する目的で、少量のPTFE(TFEホモポリマー及び変性PTFEの少なくとも一方)を含んでもよい。この場合、PTFEの含有量は、含フッ素重合体(a)に対して0.01~10.0質量%とすることが好ましい。
【0214】
プライマー塗布膜(A2p)上に含フッ素塗料(B1)を塗布する方法としては特に限定されず、プライマー用被覆組成物(A2)の塗布の方法と同じ方法等が挙げられる。含フッ素塗料(B1)が粉体塗料である場合は、静電塗装が好ましい。
【0215】
工程(B1)においては、含フッ素塗料(B1)をプライマー塗布膜(A2p)上に塗布したのち、乾燥又は焼成を行ってもよい。工程(B1)における乾燥又は焼成は、工程(A2)における乾燥又は焼成と同様の条件で行うことが好ましい。
【0216】
含フッ素塗料(B1)をプライマー塗布膜(A2p)上に塗布したのち、焼成を行わないことが好ましい。後述の工程(D2)において塗布膜積層体の焼成を行う際に、全ての塗布膜を同時に焼成することができるからである。
【0217】
塗布膜(B1p)は、プライマー塗布膜(A2p)上に含フッ素塗料(B1)を塗布した後、必要に応じて乾燥又は焼成することにより形成される。塗布膜(B1p)は、得られる被覆物品において中間層(B1)となる。
【0218】
工程(C2)は、塗布膜(B1p)上に含フッ素塗料(C2)を塗布することにより塗布膜(C2p)を形成する工程である。
【0219】
工程(C2)における含フッ素塗料(C2)は、含フッ素重合体(b)を含むことが好ましい。
含フッ素塗料(C2)は、更に、任意で添加剤を含むこともできる。
含フッ素重合体(b)及び上記添加剤については、上述したとおりである。
【0220】
含フッ素塗料(C2)は、粉体塗料であってもよく、水性塗料等の液状塗料であってもよい。乾燥工程が不要で、少ない塗装回数で厚い塗布膜を得ることが容易である点では、粉体塗料であることが好ましい。含フッ素塗料(C2)が液状塗料である場合は、含フッ素重合体(b)の粒子が液状媒体に分散された液状塗料であることが好ましく、含フッ素重合体(b)の粒子が主に水からなる水性媒体に分散された水性塗料であることがより好ましい。
【0221】
含フッ素塗料(C2)における含フッ素重合体(b)の粒子の平均粒子径は、液体塗料の場合は0.01~40μm、粉体塗料の場合は1~50μmであることが好ましい。
【0222】
含フッ素重合体(b)が溶融加工性である場合、含フッ素塗料(C2)は、球晶を微細化する目的で、少量のPTFE(TFEホモポリマー及び変性PTFEの少なくとも一方)を含んでもよい。この場合、PTFEの含有量は、含フッ素重合体(b)に対して0.01~10.0質量%とすることが好ましい。
【0223】
また、含フッ素塗料(C2)は、着色顔料を含有しないことが好ましい。着色顔料は、耐食性を悪化させる原因となり得るため、含フッ素塗料(C2)が着色顔料を含有しないものであれば、得られる被覆物品は、より優れた耐食性及び耐水蒸気性を有するものとなる。
【0224】
塗布膜(B1p)上に含フッ素塗料(C2)を塗布する方法としては特に限定されず、上述のプライマー用被覆組成物(A2)の塗布の方法と同じ方法等が挙げられる。含フッ素塗料(C2)が粉体塗料である場合は、静電塗装が好ましい。
【0225】
塗布膜(C2p)は、上記塗布ののち必要に応じて乾燥又は焼成することにより形成されてもよい。工程(C2)における乾燥又は焼成は、工程(A2)における乾燥又は焼成と同様の条件で行うことが好ましい。塗布膜(C2p)は、得られる被覆物品における含フッ素層(C2)となる。
【0226】
工程(D2)は、プライマー塗布膜(A2p)、塗布膜(B1p)及び塗布膜(C2p)からなる塗布膜積層体を焼成することにより、上記基材、プライマー層(A2)、中間層(B1)及び含フッ素層(C2)からなる第2の被覆物品を形成する工程である。
【0227】
工程(D2)における焼成は、工程(A2)、(B1)及び(C2)における焼成と同様の条件で行うことが好ましい。
【0228】
第2の製造方法は、プライマー塗布膜(A2p)を形成する工程(A2)の後、上記塗布膜(B1p)を形成する工程(B1)の後、又は、その両方に、文字、図面等を印刷する工程を有するものであってもよい。上記文字、図面等は、例えば、被覆物品が炊飯釜である場合、水の量を示す文字と線等である。
【0229】
上記印刷の方法としては特に限定されず、例えば、第1の製造方法において例示した方法が挙げられる。
【0230】
第3の被覆物品は、例えば、基材上に、プライマー用被覆組成物(A3)を塗布することによりプライマー塗布膜(A3p)を形成する工程(A3)、
プライマー塗布膜(A3p)上に、含フッ素塗料(B2)を塗布することにより塗布膜(B2p)を形成する工程(B2)、
塗布膜(B2p)上に含フッ素塗料(C3)を塗布することにより塗布膜(C3p)を形成する工程(C3)、並びに、
プライマー塗布膜(A3p)、塗布膜(B2p)及び塗布膜(C3p)からなる塗布膜積層体を焼成することにより、上記基材、プライマー層(A3)、中間層(B2)及び含フッ素層(C3)からなる第3の被覆物品を形成する工程(D3)
を含む方法により、製造することができる。
【0231】
工程(A3)は、基材上に、プライマー用被覆組成物(A3)を塗布することによりプライマー塗布膜(A3p)を形成する工程である。
【0232】
工程(A3)において、プライマー用被覆組成物(A3)は、耐熱性樹脂(b)を含むことが好ましい。
プライマー用被覆組成物(A3)は、更に、任意で添加剤を含むこともできる。
耐熱性樹脂(b)及び上記添加剤については、上述したとおりである。
プライマー用被覆組成物(A3)は、含フッ素重合体を含まないことが好ましい。
【0233】
上記基材上にプライマー用被覆組成物(A3)を塗布する方法としては特に限定されず、プライマー用被覆組成物(A3)が液状である場合、スプレー塗装、ロール塗装、ドクターブレードによる塗装、ディップ(浸漬)塗装、含浸塗装、スピンフロー塗装、カーテンフロー塗装等が挙げられ、なかでも、スプレー塗装が好ましい。プライマー用被覆組成物(A3)が粉体状である場合、静電塗装、流動浸漬法、ロトライニング法等が挙げられ、なかでも、静電塗装が好ましい。
【0234】
工程(A3)におけるプライマー用被覆組成物(A3)の塗布の後、工程(B2)を行う前に焼成を行ってもよいし、焼成を行わなくてもよい。また、プライマー用被覆組成物(A3)が液状である場合、上記塗布の後、更に、乾燥を行ってもよいし、乾燥を行わなくてもよい。
【0235】
工程(A3)において、上記乾燥は、70~300℃の温度で5~60分間行うことが好ましい。上記焼成は、260~410℃の温度で10~30分間行うことが好ましい。
【0236】
プライマー用被覆組成物(A3)が液状である場合、工程(A3)においては、上記基材上に塗布したのち、乾燥を行うことが好ましい。また、後述の工程(D3)において塗布膜積層体の焼成を行うため、焼成を行わないことが好ましい。
【0237】
プライマー用被覆組成物(A3)が粉体状である場合、工程(A3)においては、上記基材上に塗布したのち、焼成を行うことが好ましい。
【0238】
プライマー塗布膜(A3p)は、上記基材上にプライマー用被覆組成物(A3)を塗布した後、必要に応じて乾燥又は焼成することにより形成されるものである。プライマー塗布膜(A3p)は、得られる被覆物品においてプライマー層(A3)となる。
【0239】
工程(B2)は、プライマー塗布膜(A3p)上に、含フッ素塗料(B2)を塗布することにより塗布膜(B2p)を形成する工程である。
【0240】
工程(B2)における含フッ素塗料(B2)は、耐熱性樹脂(a)、含フッ素重合体(a)、及び、金属酸化物で被覆したタルク(被覆タルク)を含むことが好ましい。
含フッ素塗料(B2)は、更に、任意で添加剤を含むこともできる。
耐熱性樹脂(a)、含フッ素重合体(a)、上記被覆タルク及び上記添加剤については、上述したとおりである。
【0241】
含フッ素塗料(B2)として、上述した本開示の被覆組成物を用いることが好ましい。
【0242】
含フッ素塗料(B2)は、粉体塗料であってもよく、水性塗料等の液状塗料であってもよい。含フッ素塗料(B2)が液状塗料である場合は、耐熱性樹脂(a)、含フッ素重合体(a)及び上記被覆タルクの粒子が液状媒体に分散された液状塗料であることが好ましく、耐熱性樹脂(a)、含フッ素重合体(a)及び上記被覆タルクの粒子が主に水からなる水性媒体に分散された水性塗料であることがより好ましい。
【0243】
含フッ素塗料(B2)における耐熱性樹脂(a)及び含フッ素重合体(a)の粒子の平均粒子径は、液状塗料の場合は0.01~40μm、粉体塗料の場合は1~50μmであることが好ましい。
【0244】
含フッ素重合体(a)が溶融加工性である場合、含フッ素塗料(B2)は、球晶を微細化する目的で、少量のPTFE(TFEホモポリマー及び変性PTFEの少なくとも一方)を含んでもよい。この場合、PTFEの含有量は、含フッ素重合体(a)に対して0.01~10.0質量%とすることが好ましい。
【0245】
プライマー塗布膜(A3p)上に含フッ素塗料(B2)を塗布する方法としては特に限定されず、プライマー用被覆組成物(A3)の塗布の方法と同じ方法等が挙げられる。含フッ素塗料(B2)が粉体塗料である場合は、静電塗装が好ましい。
【0246】
工程(B2)においては、含フッ素塗料(B2)をプライマー塗布膜(A3p)上に塗布したのち、乾燥又は焼成を行ってもよい。工程(B2)における乾燥又は焼成は、工程(A3)における乾燥又は焼成と同様の条件で行うことが好ましい。
【0247】
含フッ素塗料(B2)をプライマー塗布膜(A3p)上に塗布したのち、焼成を行わないことが好ましい。後述の工程(D3)において塗布膜積層体の焼成を行う際に、全ての塗布膜を同時に焼成することができるからである。
【0248】
塗布膜(B2p)は、プライマー塗布膜(A3p)上に含フッ素塗料(B2)を塗布した後、必要に応じて乾燥又は焼成することにより形成される。塗布膜(B2p)は、得られる被覆物品において中間層(B2)となる。
【0249】
工程(C3)は、塗布膜(B2p)上に含フッ素塗料(C3)を塗布することにより塗布膜(C3p)を形成する工程である。
【0250】
工程(C3)における含フッ素塗料(C3)は、含フッ素重合体(b)を含むことが好ましい。
含フッ素塗料(C3)は、更に、任意で添加剤を含むこともできる。
含フッ素重合体(b)及び上記添加剤については、上述したとおりである。
【0251】
含フッ素塗料(C3)は、粉体塗料であってもよく、水性塗料等の液状塗料であってもよい。乾燥工程が不要で、少ない塗装回数で厚い塗布膜を得ることが容易である点では、粉体塗料であることが好ましい。含フッ素塗料(C3)が液状塗料である場合は、含フッ素重合体(b)の粒子が液状媒体に分散された液状塗料であることが好ましく、含フッ素重合体(b)の粒子が主に水からなる水性媒体に分散された水性塗料であることがより好ましい。
【0252】
含フッ素塗料(C3)における含フッ素重合体(b)の粒子の平均粒子径は、液体塗料の場合は0.01~40μm、粉体塗料の場合は1~50μmであることが好ましい。
【0253】
含フッ素重合体(b)が溶融加工性である場合、含フッ素塗料(C3)は、球晶を微細化する目的で、少量のPTFE(TFEホモポリマー及び変性PTFEの少なくとも一方)を含んでもよい。この場合、PTFEの含有量は、含フッ素重合体(b)に対して0.01~10.0質量%とすることが好ましい。
【0254】
また、含フッ素塗料(C3)は、着色顔料を含有しないことが好ましい。着色顔料は、耐食性を悪化させる原因となり得るため、含フッ素塗料(C3)が着色顔料を含有しないものであれば、得られる被覆物品は、より優れた耐食性及び耐水蒸気性を有するものとなる。
【0255】
塗布膜(B2p)上に含フッ素塗料(C3)を塗布する方法としては特に限定されず、上述のプライマー用被覆組成物(A3)の塗布の方法と同じ方法等が挙げられる。含フッ素塗料(C3)が粉体塗料である場合は、静電塗装が好ましい。
【0256】
塗布膜(C3p)は、上記塗布ののち必要に応じて乾燥又は焼成することにより形成されてもよい。工程(C3)における乾燥又は焼成は、工程(A3)における乾燥又は焼成と同様の条件で行うことが好ましい。塗布膜(C3p)は、得られる被覆物品における含フッ素層(C3)となる。
【0257】
工程(D3)は、プライマー塗布膜(A3p)、塗布膜(B2p)及び塗布膜(C3p)からなる塗布膜積層体を焼成することにより、上記基材、プライマー層(A3)、中間層(B2)及び含フッ素層(C3)からなる第3の被覆物品を形成する工程である。
【0258】
工程(D3)における焼成は、工程(A3)、(B2)及び(C3)における焼成と同様の条件で行うことが好ましい。
【0259】
第3の製造方法は、プライマー塗布膜(A3p)を形成する工程(A3)の後、上記塗布膜(B2p)を形成する工程(B2)の後、又は、その両方に、文字、図面等を印刷する工程を有するものであってもよい。上記文字、図面等は、例えば、被覆物品が炊飯釜である場合、水の量を示す文字と線等である。
【0260】
上記印刷の方法としては特に限定されず、例えば、第1の製造方法において例示した方法が挙げられる。
【0261】
本開示の被覆組成物は耐食性に優れる塗膜を与えることができ、また、第1~第3の被覆物品は耐食性に優れる。このため、本開示の被覆組成物、及び、第1~第3の被覆物品は、耐食性が求められるあらゆる分野において好適に用いることができる。適用可能な用途としては特に限定されず、含フッ素重合体が有する非粘着性、耐熱性、滑り性等を利用した用途を挙げることができる。例えば、非粘着性を利用したものとして、フライパン、圧力鍋、鍋、グリル鍋、炊飯釜、オーブン、ホットプレート、パン焼き型、包丁、ガステーブル等の調理器具;電気ポット、製氷トレー、金型、レンジフード等の厨房用品;練りロール、圧延ロール、コンベア、ホッパー等の食品工業用部品;オフィースオートメーション(OA)用ロール、OA用ベルト、OA用分離爪、製紙ロール、フィルム製造用カレンダーロール等の工業用品;発泡スチロール成形用等の金型、鋳型;合板・化粧板製造用離型板等の成形金型離型;工業用コンテナ(特に半導体工業用)等が挙げられ、滑り性を利用したものとして、のこぎり、やすり等の工具;アイロン、鋏、包丁等の家庭用品;金属箔;電線;食品加工機、包装機、紡織機械等のすべり軸受;カメラ・時計の摺動部品;パイプ、バルブ、ベアリング等の自動車部品;雪かきシャベル;すき;シュート等が挙げられる。
【0262】
本開示の被覆組成物、及び、第1~第3の被覆物品は、調理器具又は厨房用品に用いられることが好ましく、調理器具に用いられることがより好ましく、炊飯釜に用いられることが更に好ましい。
第1~第3の被覆物品は、調理器具、厨房用品又はその構成部材であることも好ましく、調理器具又はその構成部材であることがより好ましく、炊飯釜又はその構成部材であることが更に好ましい。
【実施例】
【0263】
次に実施例を挙げて本開示を更に詳しく説明するが、本開示はこれらの実施例のみに限定されるものではない。「%」「部」は、それぞれ質量%、質量部を表す。
【0264】
製造例1 ポリアミドイミド樹脂水性分散体の調製
固形分29%のポリアミドイミド樹脂〔PAI〕ワニス(N-メチル-2-ピロリドン(以下、NMPという)を71%含む)を水中に投入してPAIを析出させた。これをボールミル中で48時間粉砕してPAI水性分散体を得た。得られたPAI水性分散体の固形分は、20%であった。
【0265】
製造例2 ポリエーテルスルホン樹脂水性分散体の調製
数平均分子量約24000のポリエーテルスルホン樹脂〔PES〕60部及び脱イオン水60部を、セラミックボールミル中でPESからなる粒子が完全に粉砕されるまで約10分間攪拌した。次いで、NMP180部を添加し、更に、48時間粉砕し、分散体を得た。得られた分散体を更にサンドミルで1時間粉砕し、PES濃度が約20%のPES水性分散体を得た。
【0266】
製造例3 ポリエーテルエーテルケトン水性分散体の調製
ASTM D1238 に準拠し、400℃、荷重2.16kgで測定したMFR(Melt Mass Flow Rate)が36g/10分で平均粒子径10μmのポリエーテルエーテルケトン〔PEEK〕35部、ポリエーテル系非イオン性界面活性剤4.7部、トリエチレングリコール10部、プロピレングリコール10部、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール0.25部、2-エチルヘキサノール0.25部、脱イオン水39.8部をサンドミルで1時間粉砕し、PEEK濃度が約35%のPEEK水性分散体を得た。
【0267】
製造例4 被覆組成物(1)の調製
製造例2で得られたPES水性分散体、及び、製造例1で得られたPAI水性分散体を、PESが、PESとPAIとの固形分合計量の75%となるように混合し、これにテトラフルオロエチレンホモポリマー〔TFEホモポリマー〕水性分散体(平均粒子径0.28μm、固形分60%、分散剤としてポリエーテル系非イオン性界面活性剤をTFEホモポリマーに対して6%含有している)を、PES及びPAIが、PES、PAI及びTFEホモポリマーの固形分合計量の25%となるように加え、増粘剤としてメチルセルロースをTFEホモポリマーの固形分に対して0.7%添加し、分散安定剤としてポリエーテル系非イオン性界面活性剤をTFEホモポリマーの固形分に対して6%添加して、ポリマーの固形分34%の水性分散液(被覆組成物(1))を得た。
【0268】
製造例5 被覆組成物(2)の調製
製造例4で作製した水性分散液に、この水性分散液の全固形分量に対して4.0%の酸化鉄(Fe3O4)被覆タルク(平均粒子径10μm)を添加して攪拌し、被覆組成物(2)を得た。
【0269】
製造例6 被覆組成物(3)の調製
製造例3で得られたPEEK水性分散体、及び、製造例1で得られたPAI水性分散体を、PEEKが、PEEKとPAIとの固形分合計量の25%となるように混合し、増粘剤としてメチルセルロースをポリマーの固形分に対して0.5%、分散安定剤としてポリエーテル系非イオン性界面活性剤をTFEホモポリマーの固形分に対して5%、表面調整剤としてエトキシ化2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールをポリマーの固形分に対して2.5%、各々添加し、固形分20%の被覆組成物(3)を得た。
【0270】
製造例7 被覆組成物(4)の調製
製造例6で作製した水性分散液に、この水性分散液の全固形分量に対して4.0%の酸化鉄(Fe3O4)被覆タルク(平均粒子径10μm)を添加して攪拌し、被覆組成物(4)を得た。
【0271】
製造例8 被覆組成物(5)の調製
テトラフルオロエチレンホモポリマー〔TFEホモポリマー〕水性分散体(平均粒子径0.28μm、固形分60%、分散剤としてポリエーテル系非イオン性界面活性剤をTFEホモポリマーに対して6%含有している)77.0部、グリセリン4.7部、アクリル樹脂エマルジョン(ブチルアクリレート系樹脂を含み、平均粒子径0.3μm、固形分40%)13.4部、ポリオキシエチレントリデシルエーテル3.9部、ラウリル硫酸ナトリウムの25%水溶液1.0部を混合して、固形分46%の水性分散液(被覆組成物(5))を得た。
【0272】
実施例1
アルミニウム板(A-1050P)の表面をアセトンで脱脂した後、JIS B 1982に準拠して測定した表面粗度Ra値が2.5~4.0μmとなるようにサンドブラストを行い、表面を粗面化した。エアーブローにより表面のダストを除去した後、製造例5で得られた被覆組成物(2)を、乾燥膜厚が約10μmとなるように、RG-2型重力式スプレーガン(商品名、アネスト岩田社製、ノズル径1.0mm)を用い、吹き付け圧力0.2MPaでスプレー塗装した。得られたアルミニウム板上のプライマー塗布膜を80~100℃で15分間乾燥し、室温まで冷却した。得られた塗布膜上に、PFA粉体塗料(商品名:ACX-34、ダイキン工業社製)を印加電圧40KV、圧力0.08MPaの条件で静電塗装し、380℃で20分間焼成し、冷却して上塗りに膜厚が約40μmのPFAからなる上塗り層を形成することにより、試験用塗装板を得た。得られた試験用塗装板は、アルミニウム板上に下塗り層及びPFAからなる上塗り層が形成されていた。
【0273】
実施例2
プライマー塗布膜上に、上塗りとして、製造例8で得られた被覆組成物(5)を焼成膜厚が約20μmとなるように、被覆組成物(2)と同様にスプレー塗装し、得られた塗布膜を80~100℃で15分間乾燥した後、380℃で20分間焼成し、冷却した以外は実施例1と同様に試験用塗装板を作製した。
【0274】
実施例3
下塗りにおける酸化鉄(Fe3O4)被覆タルク(平均粒子径10μm)の添加量を全固形分に対して2.0%に変更した以外は、実施例1と同様に試験用塗装板を作製した。
【0275】
実施例4
下塗りにおける酸化鉄(Fe3O4)被覆タルク(平均粒子径10μm)の添加量を全固形分に対して2.0%に変更した以外は、実施例2と同様に試験用塗装板を作製した。
【0276】
実施例5
実施例1と同様に、アルミニウム板の上に製造例7で得られた被覆組成物(4)を、乾燥膜厚が約10μmとなるように、スプレー塗装した後80~100℃で15分間乾燥し、室温まで冷却した。得られたプライマー塗布膜上に、製造例4で得られた被覆組成物(1)を、乾燥膜厚が約10μmとなるように、被覆組成物(4)と同様にスプレー塗装した。得られた塗布膜を80~100℃で15分間乾燥し、室温まで冷却した。得られた塗布膜上に、製造例8で得られた被覆組成物(5)を、焼成膜厚が約20μmとなるように、被覆組成物(4)と同様にスプレー塗装した。得られた塗布膜を80~100℃で15分間乾燥した後、380℃で20分間焼成し、冷却して試験用塗装板を得た。得られた試験用塗装板は、アルミニウム板上に下塗り層、中塗り層及びPTFEからなる上塗り層が形成されていた。
【0277】
実施例6
下塗りに製造例6で得られた被覆組成物(3)を使用し、中塗りに製造例5で得られた被覆組成物(2)を使用した以外は、実施例5と同様に、試験用塗装板を作製した。
【0278】
比較例1
下塗りに製造例4の被覆組成物(1)を使用した以外は実施例2と同様に、試験用塗装板を作製した。
【0279】
比較例2
下塗りにおける酸化鉄被覆タルクを、被覆していないタルク(平均粒子径10μm)に変更した以外は実施例2と同様に、試験用塗装板を作製した。
【0280】
比較例3
下塗りにおける酸化鉄被覆タルクを、酸化鉄で被覆したマイカ(雲母、平均粒子径15μm)に変更した以外は実施例2と同様に、試験用塗装板を作製した。
【0281】
(評価方法)
得られた試験用塗装板の塗膜について、下記の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0282】
<膜厚>
高周波式膜厚計(商品名:LZ-300C、ケット科学研究所製)を用いて測定した。
【0283】
<耐食試験>
得られた試験用塗装板を、塩化ナトリウム200gを水800gに溶解した溶液中に浸漬し、98℃で300時間保温した後、ブリスターの発生等の異常がないかを目視で調べた。膨れの発生等の異常がない場合、合格とし、膨れの発生等の異常が認められた場合、不合格とした。
【0284】