(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】液体測定システム
(51)【国際特許分類】
G01N 27/26 20060101AFI20240815BHJP
【FI】
G01N27/26 391Z
(21)【出願番号】P 2020029484
(22)【出願日】2020-02-25
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000219451
【氏名又は名称】東亜ディーケーケー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【氏名又は名称】柳井 則子
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】森川 範広
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-161347(JP,A)
【文献】特開2009-236575(JP,A)
【文献】特開2002-055076(JP,A)
【文献】特開平08-068888(JP,A)
【文献】特開平02-309240(JP,A)
【文献】特開2013-002913(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0042665(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26,27/333,27/416
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1測定箇所における被測定液中に配置された第1センサユニットと、
第2測定箇所における被測定液中に配置された第2センサユニットと、
前記第1センサユニットの信号と前記第2センサユニットの信号が入力される変換器とを備え、
前記第1測定箇所における被測定液と前記第2測定箇所における被測定液とは、連続する液相を形成しており、
前記第1センサユニットは、pH測定用のガラス電極と比較電極を有しており、
前記第2センサユニットは、pH測定用のガラス電極と比較電極を有しており、
前記変換器は、通常測定時は、前記第1センサユニットにおけるガラス電極と比較電極の信号に基づき、前記第1測定箇所における被測定液のpHに関する情報を出力し、前記第2センサユニットにおけるガラス電極と比較電極の信号に基づき、前記第2測定箇所における被測定液のpHに関する情報を出力し、
前記第1センサユニットにおけるガラス電極と比較電極の内、ガラス電極の異常を認識した後は、前記第2センサユニットにおけるガラス電極の信号と、前記第1センサユニットにおける正常な比較電極の信号に基づき、前記第1測定箇所における被測定液のpHに関する情報を出力する、液体測定システム。
【請求項2】
第1測定箇所における被測定液中に配置された第1センサユニットと、
第2測定箇所における被測定液中に配置された第2センサユニットと、
前記第1センサユニットの信号と前記第2センサユニットの信号が入力される変換器とを備え、
前記第1測定箇所における被測定液と前記第2測定箇所における被測定液とは、連続する液相を形成しており、
前記第1センサユニットは、pH測定用のガラス電極又は酸化還元電位測定用の金属電極と比較電極とを有しており、
前記第2センサユニットは、pH測定用のガラス電極又は酸化還元電位測定用の金属電極と比較電極とを有しており、
前記変換器は、通常測定時は、前記第1センサユニットにおけるpH測定用のガラス電極又は酸化還元電位測定用の金属電極と比較電極との信号に基づき、前記第1測定箇所における被測定液のpH又は酸化還元電位に関する情報を出力し、前記第2センサユニットにおけるpH測定用のガラス電極又は酸化還元電位測定用の金属電極と比較電極との信号に基づき、前記第2測定箇所における被測定液のpH又は酸化還元電位に関する情報を出力し、
前記第1センサユニットにおけるpH測定用のガラス電極又は酸化還元電位測定用の金属電極と比較電極の内、比較電極の異常を認識した後は、前記第2センサユニットにおける比較電極の信号と、前記第1センサユニットにおける正常なpH測定用のガラス電極又は酸化還元電位測定用の金属電極の信号に基づき、前記第1測定箇所における被測定液のpH又は酸化還元電位に関する情報を出力する、液体測定システム。
【請求項3】
第1測定箇所における被測定液中に配置された第1センサユニットと、
第2測定箇所における被測定液中に配置された第2センサユニットと、
前記第1センサユニットの信号と前記第2センサユニットの信号が入力される変換器とを備え、
前記第1測定箇所における被測定液と前記第2測定箇所における被測定液とは、連続する液相を形成しており、
前記第1センサユニットは、pH測定用のガラス電極又は酸化還元電位測定用の金属電極と比較電極と温度センサとを有しており、
前記第2センサユニットは、
温度センサと任意にその他の電極を有しており、
前記変換器は、通常測定時は、前記第1センサユニットにおけるpH測定用のガラス電極又は酸化還元電位測定用の金属電極と比較電極と温度センサとの信号に基づき、前記第1測定箇所における被測定液のpH又は酸化還元電位に関する情報を出力し、前記第2センサユニットにおける
温度センサの信号又は温度センサとその他の電極の信号に基づき、前記第2測定箇所における被測定液の性状に関する情報を出力し、
前記第1センサユニットにおけるpH測定用のガラス電極又は酸化還元電位測定用の金属電極と比較電極と温度センサの内、温度センサの異常を認識した後は、前記第2センサユニットにおける温度センサの信号と、前記第1センサユニットにおける正常なpH測定用のガラス電極又は酸化還元電位測定用の金属電極と比較電極との信号に基づき、前記第1測定箇所における被測定液のpH又は酸化還元電位に関する情報を出力する、液体測定システム。
【請求項4】
前記第2センサユニットが、ガラス電極と比較電極と温度センサとを有するpH測定用のセンサユニット、金属電極と比較電極と温度センサとを有する酸化還元電位測定用のセンサユニット、温度センサを有する隔膜式の溶存酸素電極からなる溶存酸素測定用のセンサユニット、及び温度センサのみからなる温度測定用のセンサユニットから選択されるいずれかである、請求項3に記載の液体測定システム。
【請求項5】
第1測定箇所における被測定液中に配置された第1センサユニットと、
第2測定箇所における被測定液中に配置された第2センサユニットと、
前記第1センサユニットの信号が入力される第1変換器と、
前記第2センサユニットの信号が入力される第2変換器とを備え、
前記第1測定箇所における被測定液と前記第2測定箇所における被測定液とは、連続する液相を形成しており、
前記第1センサユニットは、pH測定用のガラス電極と比較電極を有しており、
前記第2センサユニットは、pH測定用のガラス電極と比較電極を有しており、
前記第1変換器は、通常測定時は、前記第1センサユニットにおけるガラス電極と比較電極の信号に基づき、前記第1測定箇所における被測定液のpHに関する情報を出力し、
前記第2変換器は、通常測定時は、前記第2センサユニットにおけるガラス電極と比較電極の信号に基づき、前記第2測定箇所における被測定液のpHに関する情報を出力し、
前記第1変換器は、前記第1センサユニットにおけるガラス電極と比較電極の内、ガラス電極の異常を認識した後は、前記第2センサユニットにおけるガラス電極の信号を前記第2変換器から受信し、該受信した信号と、前記第1センサユニットにおける正常な比較電極の信号に基づき、前記第1測定箇所における被測定液のpHに関する情報を出力する、液体測定システム。
【請求項6】
第1測定箇所における被測定液中に配置された第1センサユニットと、
第2測定箇所における被測定液中に配置された第2センサユニットと、
前記第1センサユニットの信号が入力される第1変換器と、
前記第2センサユニットの信号が入力される第2変換器とを備え、
前記第1測定箇所における被測定液と前記第2測定箇所における被測定液とは、連続する液相を形成しており、
前記第1センサユニットは、pH測定用のガラス電極又は酸化還元電位測定用の金属電極と比較電極とを有しており、
前記第2センサユニットは、pH測定用のガラス電極又は酸化還元電位測定用の金属電極と比較電極とを有しており、
前記第1変換器は、通常測定時は、前記第1センサユニットにおけるpH測定用のガラス電極又は酸化還元電位測定用の金属電極と比較電極との信号に基づき、前記第1測定箇所における被測定液のpH又は酸化還元電位に関する情報を出力し、
前記第2変換器は、通常測定時は、前記第2センサユニットにおけるpH測定用のガラス電極又は酸化還元電位測定用の金属電極と比較電極との信号に基づき、前記第2測定箇所における被測定液の性状に関する情報を出力し、
前記第1変換器は、前記第1センサユニットにおけるpH測定用のガラス電極又は酸化還元電位測定用の金属電極と比較電極の内、比較電極の異常を認識した後は、前記第2センサユニットにおける比較電極の信号を前記第2変換器から受信し、該受信した信号と、前記第1センサユニットにおける正常なpH測定用のガラス電極又は酸化還元電位測定用の金属電極の信号に基づき、前記第1測定箇所における被測定液のpH又は酸化還元電位に関する情報を出力する、液体測定システム。
【請求項7】
第1測定箇所における被測定液中に配置された第1センサユニットと、
第2測定箇所における被測定液中に配置された第2センサユニットと、
前記第1センサユニットの信号が入力される第1変換器と、
前記第2センサユニットの信号が入力される第2変換器とを備え、
前記第1測定箇所における被測定液と前記第2測定箇所における被測定液とは、連続する液相を形成しており、
前記第1センサユニットは、pH測定用のガラス電極又は酸化還元電位測定用の金属電極と比較電極と温度センサとを有しており、
前記第2センサユニットは、
温度センサと任意にその他の電極を有しており、
前記第1変換器は、通常測定時は、前記第1センサユニットにおけるpH測定用のガラス電極又は酸化還元電位測定用の金属電極と比較電極と温度センサとの信号に基づき、前記第1測定箇所における被測定液のpH又は酸化還元電位に関する情報を出力し、
前記第2変換器は、通常測定時は、前記第2センサユニットにおける
温度センサの信号又は温度センサとその他の電極の信号に基づき、前記第2測定箇所における被測定液の性状に関する情報を出力し、
前記第1変換器は、前記第1センサユニットにおけるpH測定用のガラス電極又は酸化還元電位測定用の金属電極と比較電極と温度センサの内、温度センサの異常を認識した後は、前記第2センサユニットにおける温度センサの信号を前記第2変換器から受信し、該受信した信号と、前記第1センサユニットにおける正常なpH測定用のガラス電極又は酸化還元電位測定用の金属電極と比較電極との信号に基づき、前記第1測定箇所における被測定液のpH又は酸化還元電位に関する情報を出力する、液体測定システム。
【請求項8】
前記第2センサユニットが、ガラス電極と比較電極と温度センサとを有するpH測定用のセンサユニット、金属電極と比較電極と温度センサとを有する酸化還元電位測定用のセンサユニット、温度センサを有する隔膜式の溶存酸素電極からなる溶存酸素測定用のセンサユニット、及び温度センサのみからなる温度測定用のセンサユニットから選択されるいずれかである、請求項7に記載の液体測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体測定システムに関する。さらに詳しくは、複数のセンサユニットのいずれかに異常が発生した際に、測定の中断を回避するための液体測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
pH測定装置等の液体測定装置では、従来、センサの異常を検知する方法が種々検討されている。
例えば、特許文献1では、ガラス電極のインピーダンスと比較電極のインピーダンスとを各々測定することにより、ガラス電極の異常あるいは比較電極の異常を検知することが提案されている。
また、特許文献2では、隔膜式電極の外側に破損検知用の電極を設け、隔膜の抵抗値の変化に伴う電極内外の電圧の変化に基づいて隔膜の破損を検知することが提案されている。
これら特許文献1、2では、通常の測定を中断することなく、センサの異常を検知できるようになっている。
【0003】
また、pH測定装置等の液体測定装置では、定期的な校正や洗浄の作業が必要である。特許文献3では、校正や洗浄の作業の間の測定中断を避けるため、同一の被測定液に2つのセンサを配置し、常時は、一方のセンサのみの信号を用いて測定し、校正や洗浄の作業中は、他方のセンサの信号を用いて測定することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平2-309240号公報
【文献】特開平9-184820号公報
【文献】特開2013-2913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2のように、通常の測定を中断することなく、センサの異常を検知できれば、異常を生じたセンサを交換する等の迅速な対応が可能である。
しかし、迅速な対応がとれると言っても、異常が生じたセンサが存在する現場に保守担当者が赴き、対応が完了するまでには、一定の時間が必要であって、その間、測定は中断してしまう。
【0006】
そのため、中断期間中に、被測定液の性状に重大な変化が生じていても、その変化を知ることができず、対応が遅れてしまう。例えば、工場において、所定のpH内となるように管理していた原料液が、そのpHを外れたことを気がつかないまま、製品の製造を継続してしまったり、pHが中性付近を外れた排水をそのまま放流してしまったりする懸念があった。
【0007】
特許文献3のように、同一の被測定液に2つのセンサを配置しておけば、異常を検知した際にも、他方のセンサの信号を用いることにより測定中断を回避することが可能である。しかし、その場合は、常時測定用のセンサの他に、常時は測定に全く寄与しないセンサを用意しなければならず、設備のコストが嵩む問題がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、設備のコストを抑制しながら、センサの異常が生じた場合にも、被測定液の性状の変化の検出が完全に遮断される状況をできるだけ回避できる液体測定システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
【0010】
[1]第1測定箇所における被測定液中に配置された第1センサユニットと、
第2測定箇所における被測定液中に配置された第2センサユニットと、
前記第1センサユニットの信号と前記第2センサユニットの信号が入力される変換器とを備え、
前記第1測定箇所における被測定液と前記第2測定箇所における被測定液とは、連続する液相を形成しており、
前記第1センサユニットは、2以上の電極を有しており、
前記第2センサユニットは、前記第1センサユニットにおける2以上の電極の内、少なくとも1つの電極と機能が共通する代替可能電極を1以上含む電極を有しており、
前記変換器は、通常測定時は、前記第1センサユニットにおける2以上の電極の信号に基づき、前記第1測定箇所における被測定液の性状に関する情報を出力し、前記第2センサユニットにおける電極の信号に基づき、前記第2測定箇所における被測定液の性状に関する情報を出力し、
前記第1センサユニットにおける2以上の電極の内、前記代替可能電極と共通する機能を有する電極の異常を認識した後は、前記第2センサユニットにおける対応する前記代替可能電極の信号と、前記第1センサユニットにおける正常な電極の信号に基づき、前記第1測定箇所における被測定液の性状に関する情報を出力する、液体測定システム。
[2]前記変換器に信号を出力する3以上のセンサユニットを備え、
前記3以上のセンサユニットは、いずれも少なくとも1つの電極を有しており、
前記3以上のセンサユニットの内少なくとも1つは、2以上の電極を有しており、
前記3以上のセンサユニットは、3カ所以上の測定箇所における被測定液中に各々配置されており、
前記3カ所以上の測定箇所における被測定液は、互いに連続する液相を形成しており、
前記第1センサユニットは、前記3以上のセンサユニットの内、前記2以上の電極を有するセンサユニットであり、
前記第2センサユニットは、前記3以上のセンサユニットの内、前記代替可能電極を有する他のいずれかのセンサユニットである、[1]に記載の液体測定システム。
[3]前記変換器は、前記代替可能電極の信号と、前記第1センサユニットにおける正常な電極の信号に基づき、前記第1測定箇所における被測定液の性状に関する情報を出力する際、前記代替可能電極の信号を使用している旨の情報を併せて出力する、[1]又は[2]に記載の液体測定システム。
[4]前記変換器は、前記第1センサユニットにおける2以上の電極の内、いずれかの電極の異常の有無を、前記通常測定時に自動的に検知して認識する、[1]~[3]のいずれか一項に記載の液体測定システム。
[5]第1測定箇所における被測定液中に配置された第1センサユニットと、
第2測定箇所における被測定液中に配置された第2センサユニットと、
前記第1センサユニットの信号が入力される第1変換器と、
前記第2センサユニットの信号が入力される第2変換器とを備え、
前記第1測定箇所における被測定液と前記第2測定箇所における被測定液とは、連続する液相を形成しており、
前記第1センサユニットは、2以上の電極を有しており、
前記第2センサユニットは、前記第1センサユニットにおける2以上の電極の内、少なくとも1つの電極と機能が共通する代替可能電極を1以上含む電極を有しており、
前記第1変換器は、通常測定時は、前記第1センサユニットにおける2以上の電極の信号に基づき、前記第1測定箇所における被測定液の性状に関する情報を出力し、
前記第2変換器は、通常測定時は、前記第2センサユニットにおける電極の信号に基づき、前記第2測定箇所における被測定液の性状に関する情報を出力し、
前記第1変換器は、前記第1センサユニットにおける2以上の電極の内、前記代替可能電極と共通する機能を有する電極の異常を認識した後は、前記第2センサユニットにおける対応する前記代替可能電極の信号を前記第2変換器から受信し、該受信した信号と、前記第1センサユニットにおける正常な電極の信号に基づき、前記第1測定箇所における被測定液の性状に関する情報を出力する、液体測定システム。
[6]センサユニットと該センサユニットの信号が入力される変換器とのセットを3組以上備え、
前記3組以上のセットにおけるセンサユニットは、いずれも少なくとも1つの電極を有しており、
前記3組以上のセットにおけるセンサユニットの内少なくとも1つは、2以上の電極を有しており、
前記3組以上のセットにおけるセンサユニットは、3カ所以上の測定箇所における被測定液中に各々配置されており、
前記3カ所以上の測定箇所における被測定液は、互いに連続する液相を形成しており、
前記3組以上のセットにおける変換器は互いにネットワークを形成しており、
前記第1センサユニットは、前記3組以上のセットにおけるセンサユニットの内、前記2以上の電極を有するセンサユニットであり、
前記第2センサユニットは、前記3組以上のセットにおけるセンサユニットの内、前記代替可能電極を有する他のいずれかのセンサユニットである、[5]に記載の液体測定システム。
[7]前記第1変換器は、前記第1センサユニットにおける2以上の電極の内、いずれかの電極の異常の有無を、前記通常測定時に自動的に検知して認識する、[5]又は[6]に記載の液体測定システム。
[8]前記第1変換器は、前記受信した前記代替可能電極の信号と、前記第1センサユニットにおける正常な電極の信号に基づき、前記第1測定箇所における被測定液の性状に関する情報を出力する際、前記代替可能電極の信号を使用している旨の情報を併せて出力する、[5]~[7]のいずれか一項に記載の液体測定システム。
[9]前記第1センサユニットの回復措置終了を示す信号が入力されると、前記通常測定に復帰する、[1]~[8]のいずれか一項に記載の液体測定システム。
【発明の効果】
【0011】
本発明の液体測定システムによれば、設備のコストを抑制しながら、センサの異常が生じた場合にも、被測定液の性状の変化の検出が完全に遮断される状況を大幅に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る液体測定システムの概略構成図である。
【
図2】本発明の第2実施形態に係る液体測定システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
本実施形態の液体測定システムは、第1センサユニット10と、第2センサユニット20と、第1センサユニット10からの第1センサ信号11及び第2センサユニット20からの第2センサ信号21が入力される変換器30とで構成されている。
第1センサユニット10は、第1測定箇所15における被測定液中に配置されている。
第2センサユニット20は、第2測定箇所25における被測定液中に配置されている。
【0014】
第1センサユニット10は2以上の電極を有している。例えば、第1センサユニット10は、ガラス電極と比較電極と温度センサが複合化されたpH複合電極とすることができる。第1センサユニット10は複合化された電極には限られず、例えば、ガラス電極と比較電極と温度センサの各単能電極の組み合わせで構成されていてもよい。
【0015】
第2センサユニット20は第1センサユニット10における2以上の電極の内、少なくとも1つの電極と機能が共通する代替可能電極を1以上含む電極を有している。
例えば、第1センサユニット10がガラス電極と比較電極と温度センサが複合化されたpH複合電極である場合、第2センサユニット20は、ガラス電極と比較電極及び温度センサのいずれか1以上を代替可能電極として有している。
【0016】
第2センサユニット20は第1センサユニット10と同じ組み合わせの電極を総て有していてもよく、第1センサユニット10を構成する一部の電極のみを有していてもよい。第2センサユニット20は、第1センサユニット10における電極の内、1つの電極と共通する機能を有する単能電極のみから構成されていてもよく、2以上の電極を有していてもよい。第2センサユニット20が2以上の電極を有している場合、第2センサユニット20は複合化されていても単能電極の組み合わせであってもよい。
【0017】
変換器30は、通常測定時は、第1センサユニット10における2以上の電極の信号に基づき、第1測定箇所15における被測定液の性状に関する情報を出力信号31として外部に出力するようになっている。また、第2センサユニット20における電極の信号に基づき、第2測定箇所25における被測定液の性状に関する情報も、出力信号31として外部に出力するようになっている。
【0018】
出力信号31は、電極から得られる信号そのものでもよいし、電極から得られた信号を変換器30で変換した被測定液の性状そのものでもよい。
例えば、第1センサユニット10がガラス電極と比較電極と温度センサが複合化されたpH複合電極である場合、出力信号31の内、第1測定箇所15における被測定液の性状に関する情報は、第1センサユニット10のガラス電極と比較電極との間で得られる電圧及び温度センサから得られる抵抗値でもよいし、前記の電圧と抵抗値から換算したpH値及び温度でもよい。
【0019】
変換器30は、第1センサユニット10を構成する各々の電極の異常を個別に認識する。変換器30は、第2センサユニット20を構成する各々の電極の異常も個別に認識することが好ましい。
変換器30は、各々の電極の異常の有無を自動的に検知して認識する機能を有することが好ましい。
電極の異常検知方法は、公知の異常検知方法を適宜採用できる。異常検知方法は、通常測定を中断することなく行える方法であることが好ましい。これにより、何らかの異常が発生した場合、速やかに対応を取ることが可能となる。
【0020】
例えばpH測定用のガラス電極の異常は、ガラス電極の抵抗を測定する方法により検知できる。すなわち、正常なガラス電極の膜抵抗は数十~数百MΩであるが、クラックが生じたり割れたりした場合は0~数MΩとなるので異常が分かる。また、内部電極の電位をリードアウトするための導線に断線が生じた場合、ガラス電極の抵抗は無限大となる。
pH測定と平行してガラス電極の抵抗を直接測定する具体的な方法としては、特許文献1に開示された交流電圧を印加してインピーダンスを求める方法がある。
【0021】
酸化還元電位測定用の金属電極、例えば、白金電極、金電極などは、異常を生じる確率は低いが、被測定液中の固形物がぶつかって破損する場合もある。また、汚れによる測定値異常となる場合もある。酸化還元電位測定用の金属電極の異常は、測定値異常から間接的に判定できる。
イオン濃度測定用のイオン感応素子の劣化(寿命)や汚れによる異常は、測定値異常から間接的に判定できる。
【0022】
pH測定、酸化還元電位測定、イオン濃度測定等に使用される比較電極は、液絡部(ジャンクション)の汚れ、詰まりによる内部液の流出阻害、内部液の枯渇、試料水汚染による内部液の変質や濃度変化などにより異常が生じ得る。硫化水素を含む試料水では塩化銀内極が硫化銀に変質する場合もある。
【0023】
比較電極の異常は、比較電極の抵抗を測定する方法により検知できる。すなわち、比較電極の塩化カリウム溶液等の内部液が枯渇したり、液絡部(ジャンクション)の汚れ、詰まりで内部液の流出が阻害されたりすると、抵抗は極めて大きくなる。逆に液絡部の割れや脱落があると抵抗は極めて小さくなる。
pH測定と平行して比較電極の抵抗を直接測定する具体的な方法としては、特許文献1に開示された交流電圧を印加してインピーダンスを求める方法がある。
ガラス電極や温度センサに異常がないにもかかわらず、電位シフトによる指示値異常、指示値不安定などの不具合や、近傍検出器との測定値との差が生じた場合、間接的に比較電極の異常と判断することもできる。
【0024】
ポーラログラフ方式あるいはガルバニックセル方式で溶存酸素や溶存水素を測定するための隔膜式電極の破損は、隔膜の抵抗を測定する方法により検知できる。すなわち、正常な隔膜は、電極の内外を電気的に絶縁するが、隔膜にピンホールや破れが生じると抵抗が著しく低下する。
【0025】
溶存酸素や溶存水素の測定と平行して隔膜の抵抗を直接測定する具体的な方法としては、特許文献2に開示された方法がある。特許文献2に開示された方法では、電極外部に設けた隔膜破損検知用電極と電極本体内との間の電圧の変化により、隔膜の抵抗変化を検知するようになっている。
【0026】
複数極式や電磁式の電気伝導率セルは、異常を生じる確率は低いが、汚れや気泡の付着等により異常を生じた場合は、指示値がシフトしたり不安定になったりするので間接的に判定することができる。
pH測定、酸化還元電位測定、イオン濃度測定、溶存酸素測定等に使用される白金抵抗式又はサーミスタ等の温度センサの異常は、pH等の測定を継続しながら検知できる。具体的には、断線が生じると抵抗値が無限大となり、逆に白金を封止している樹脂中の不純物などの影響によりショートした場合は抵抗値が著しく低下するので、異常と判断できる。
【0027】
pH測定用のセンサユニットの場合は、校正作業中の電位に基づき、各電極の異常を検知してもよい。例えば、校正後の検量線の傾きが著しく低い場合は、ガラス電極の劣化であると判断できる。また、校正後の検量線のゼロ点が著しくゼロから外れている場合は、比較電極の異常が疑われる。例えば、電流や還元性ガス等によって塩化銀内極の塩化銀が銀に還元された場合、又は、試料水中の例えば硫化水素等による塩化銀内極の変質、あるいは、試料水汚染による内部液の変質や濃度変化などがおこると比較電極のゼロ点がシフトする。
また、酸を用いた薬液洗浄時に、出力が酸側に振れなければ、ガラス電極の異常と判断できる。
【0028】
変換器30は、第1センサユニット10及び第2センサユニット20を構成する各々の電極の異常を自動的に検知する他、管理者の入力作業により、各々の電極の異常を認識してもよい。
また、常時は、検知した異常をいずれの電極の異常であるかを自動的に判断して認識し、自動的な判断が困難である場合は警報を出力し、管理者の入力を待って、いずれの電極の異常であるかを認識してもよい。
【0029】
変換器30は、第1センサユニット10における2以上の電極の内、代替可能電極と共通する機能を有する電極の異常を認識すると、異常を検知された第1センサユニット10の電極に代えて、第2センサユニット20における対応する代替可能電極の信号を代替信号として使用する。
すなわち、その異常を認識した電極と共通する機能を有する第2センサユニット20における電極の信号と、第1センサユニット10における正常な状態を維持している電極の信号に基づき、第1測定箇所15における被測定液の性状に関する情報を出力信号31として出力する。
【0030】
この場合も、出力信号31は、各電極から得られる信号そのものでもよいし、各電極から得られた信号を変換器30で変換した被測定液の性状そのものでもよい。
第2センサユニット20における代替可能電極の信号を使用して、第1測定箇所15における被測定液の性状に関する情報を出力する場合、代替可能電極の信号を代替信号として使用している旨の情報も併せて出力することが好ましい。
【0031】
この液体測定システムの管理者は、変換器30から出力された代替可能電極の信号を代替信号として使用している旨の情報を受信することにより、第1センサユニット10の異常を知ることができる。そして、第1センサユニット10の交換、修理等の回復措置を取ることができる。
液体測定システムの管理者は、第1センサユニット10の交換、修理等の回復措置を終了すると、変換器30に回復措置終了の入力をする。これにより、液体測定システムは、通常測定に復帰する。
【0032】
第1測定箇所15における被測定液と第2測定箇所25における被測定液とは、連続する液相を形成している。
第1測定箇所15と第2測定箇所25とはできるだけ近接している方が、第2センサユニット20における代替可能電極の信号を代替信号として使用した場合の第1測定箇所15における被測定液の性状に関する情報の信頼性が高まるため、好ましい。
【0033】
第1測定箇所15と第2測定箇所25との許容される距離は、代替可能電極の種類等によって異なる。
第1測定箇所15と第2測定箇所25との許容される距離について、第1センサユニット10と第2センサユニット20の双方がガラス電極と比較電極と温度センサが複合化されたpH複合電極である場合を例にとって説明する。
すなわち、第2センサユニット20が代替可能電極として、ガラス電極と比較電極と温度センサを有する場合を例にとって説明する。
【0034】
第1センサユニット10のガラス電極のみの異常を認識した場合、第2センサユニット20のガラス電極と第1センサユニット10の比較電極との間の電位差を検出することとなる。この場合、ガラス電極と比較電極との距離が大きくなりすぎると液抵抗が大きくなるので、得られる電圧が不安定となる。特に電気伝導率が低い被測定液の場合、液抵抗が大きくなるので、その場合の第1測定箇所15と第2測定箇所25との距離は、1m以内が好ましい。
【0035】
同様に、第1センサユニット10の比較電極のみの異常を認識した場合、第2センサユニット20の比較電極と第1センサユニット10のガラス電極との間の電位差を検出することとなる。この場合も、ガラス電極と比較電極との距離が大きくなりすぎると液抵抗が大きくなるので、得られる電位差が不安定となる。特に電気伝導率が低い被測定液の場合、液抵抗が大きくなるので、その場合の第1測定箇所15と第2測定箇所25との距離は、1m以内が好ましい。
【0036】
一方、第1センサユニット10の温度センサのみの異常を認識し、第2センサユニット20の温度センサの信号を用いる場合の第1測定箇所15と第2測定箇所25との許容される距離は、通常特段の制限がない。
なぜなら、第1測定箇所15における被測定液と第2測定箇所25における被測定液は、連続する液相を形成しているので、極端に離間していなければ、通常ほぼ温度が等しいからである。
したがって、近傍に冷水乃至は温水の流入箇所がある等の事情がない限り、極端に離間しない範囲であればよい。
【0037】
第2センサユニット20が代替可能電極を含む2以上の電極を有する場合、変換器30は、第1センサユニット10と第2センサユニット20との役割を入れ替えて機能してもよい。
すなわち、変換器30が第2センサユニット20における2以上の電極の内、代替可能電極の異常を認識した後は、第1センサユニット10における代替可能電極と共通する機能を有する電極の信号と、第2センサユニット20における正常な電極の信号に基づき、第2測定箇所25における被測定液の性状に関する情報を出力してもよい。
【0038】
第1センサユニット10と第2センサユニット20とはpH測定用のセンサユニット同士の組み合わせに限られない。
例えば第1センサユニット10がガラス電極と比較電極と温度センサを有する場合、金属電極と比較電極と温度センサを有するセンサユニットは、代替可能電極として比較電極と温度センサを有するので、第2センサユニット20となり得る。
同様に、第1センサユニット10が金属電極と比較電極と温度センサを有する場合、ガラス電極と比較電極と温度センサを有するセンサユニットは、代替可能電極として比較電極と温度センサを有するので、第2センサユニット20となり得る。
【0039】
また、第1センサユニット10がガラス電極と比較電極と温度センサを有する場合や金属電極と比較電極と温度センサを有する場合、イオン感応素子と比較電極と温度センサを有するセンサユニットは、代替可能電極として比較電極と温度センサを有するので、第2センサユニット20となり得る。
【0040】
同様に、第1センサユニット10がイオン感応素子と比較電極と温度センサを有する場合、ガラス電極と比較電極と温度センサを有するセンサユニットや金属電極と比較電極と温度センサを有するセンサユニットは、代替可能電極として比較電極と温度センサを有するので、第2センサユニット20となり得る。
【0041】
同様に、温度センサを有する隔膜式の溶存酸素電極は、温度センサを有するpH測定用のセンサユニット、酸化還元電位測定用のセンサユニット、イオン濃度測定用のセンサユニット等と互いに第1センサユニット10と第2センサユニット20との関係になることができる。
【0042】
また、温度センサのみからなるセンサユニットは、第1センサユニット10が温度センサを有する隔膜式の溶存酸素電極、pH測定用のセンサユニット、酸化還元電位測定用のセンサユニット、イオン濃度測定用のセンサユニット等との関係で第2センサユニット20となり得る。
【0043】
なお、
図1では、変換器30に信号を出力するセンサユニットが、2つのみの例を示したが、変換器30に信号を出力するセンサユニットは3カ所以上の測定箇所における被測定液中に各々配置され、各々が少なくとも1つの電極を有している3つ以上でもよい。
その場合、3カ所以上の測定箇所における被測定液が互いに連続する液相を形成していれば、3つ以上のセンサユニットが、互いに第1センサユニット10又は第2センサユニット20として機能することができる。ただし、第1センサユニット10として機能するセンサユニットは、2つ以上の電極を有しているものに限られる。
変換器30は、いずれかのセンサユニットのいずれかの電極の異常を認識した際、そのセンサユニットを第1センサユニット10とし、代替可能電極の種類(異常を認識した電極の種類)と、各センサユニットの位置関係等を考慮して、最適なセンサユニットを第2センサユニット20として選択することが好ましい。
【0044】
[第2実施形態]
本実施形態の液体測定システムは、第1センサユニット10と、第2センサユニット20と、第1センサユニット10からの第1センサ信号11が入力される第1変換器50と、第2センサユニット20からの第2センサ信号21が入力される第2変換器60とで構成されている。
【0045】
第1センサユニット10は、第1測定箇所15における被測定液中に配置されている。
第2センサユニット20は、第2測定箇所25における被測定液中に配置されている。
第1センサユニット10の構成、第2センサユニット20の構成、第1センサユニット10と第2センサユニット20との関係は、各々第1実施形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0046】
第1変換器50は、通常測定時は、第1センサユニット10における2以上の電極の信号に基づき、第1測定箇所15における被測定液の性状に関する情報を第1出力信号51として外部に出力するようになっている。また、第2変換器60は、通常測定時は、第2センサユニット20における電極の信号に基づき、第2測定箇所25における被測定液の性状に関する情報を第2出力信号61として外部に出力するようになっている。
【0047】
第1実施形態の出力信号31と同様に、第1出力信号51と第2出力信号61は、各々電極から得られる信号そのものでもよいし、電極から得られた信号を変換器30で変換した被測定液の性状そのものでもよい。
【0048】
第1変換器50は、第1センサユニット10を構成する各々の電極の異常を個別に認識する。第2変換器60は、第2センサユニット20を構成する各々の電極の異常を個別に認識することが好ましい。
第1変換器50と第2変換器60とは、各々の電極の異常の有無を自動的に検知して認識する機能を有することが好ましい。
電極の異常検知方法は、第1実施形態で詳述したのと同様である。
【0049】
第1変換器50と第2変換器60は、変換器30と同様に、第1センサユニット10及び第2センサユニット20を構成する各々の電極の異常を自動的に検知する他、管理者の入力作業により、各々の電極の異常を認識してもよい。
また、常時は、検知した異常をいずれの電極の異常であるかを自動的に判断して認識し、自動的な判断が困難である場合は警報を出力し、管理者の入力を待って、いずれの電極の異常であるかを認識してもよい。
【0050】
第1変換器50は、第1センサユニット10における2以上の電極の内、代替可能電極と共通する機能を有する電極の異常を認識すると、異常を検知された第1センサユニット10の電極に代えて、第2センサユニット20における対応する代替可能電極の信号を代替信号として使用する。
具体的には、第1変換器50は第2センサユニット20における対応する代替可能電極の信号を第2提供信号62として出力するように第2変換器60に対して求め、第2変換器60は第2提供信号62を第1変換器50に提供し、第1変換器50はこれを受信する。
【0051】
これにより、第1変換器50は、異常を認識した電極と共通する機能を有する第2センサユニット20における電極の信号と、第1センサユニット10における正常な状態を維持している電極の信号に基づき、第1測定箇所15における被測定液の性状に関する情報を第1出力信号51として出力する。
【0052】
この場合も、第1出力信号51は、各電極から得られる信号そのものでもよいし、各電極から得られた信号を変換器30で変換した被測定液の性状そのものでもよい。
第2センサユニット20における代替可能電極の信号を使用して、第1測定箇所15における被測定液の性状に関する情報を出力する場合、受信した代替可能電極の信号を代替信号として使用している旨の情報も併せて出力することが好ましい。
【0053】
この液体測定システムの管理者は、第1変換器50から出力された代替可能電極の信号を代替信号として使用している旨の情報を受信することにより、第1センサユニット10の異常を知ることができる。そして、第1センサユニット10の交換、修理等の回復措置を取ることができる。
液体測定システムの管理者は、第1センサユニット10の交換、修理等の回復措置を終了すると、第1変換器50に回復措置終了の入力をする。これにより、液体測定システムは、通常測定に復帰する。
【0054】
第1測定箇所15における被測定液と第2測定箇所25における被測定液とは、連続する液相を形成している。
第1測定箇所15と第2測定箇所25との許容される距離は、第1実施形態で説明したのと同様である。
【0055】
第2センサユニット20が代替可能電極を含む2以上の電極を有する場合、第2変換器60は、第1センサユニット10と第2センサユニット20との役割を入れ替えて機能してもよい。
すなわち、第2変換器60が第2センサユニット20における2以上の電極の内、代替可能電極の異常を認識した後は、第1センサユニット10における代替可能電極と共通する機能を有する電極の信号と、第2センサユニット20における正常な電極の信号に基づき、第2測定箇所25における被測定液の性状に関する情報を出力してもよい。
具体的には、第2変換器60は第1センサユニット10における代替可能電極と共通する機能を有する電極の信号を第1提供信号52として出力するように第1変換器50に対して求め、第1変換器50は第1提供信号52を第2変換器60に提供する。
【0056】
これにより、第2変換器60は、異常を認識した代替可能電極と共通する機能を有する第1センサユニット10における電極の信号と、第2センサユニット20における正常な状態を維持している電極の信号に基づき、第2測定箇所25における被測定液の性状に関する情報を第2出力信号61として出力する。
【0057】
第1センサユニット10と第2センサユニット20とはpH測定用のセンサユニット同士の組み合わせに限られず、他の様々な組み合わせを取り得ることは、第1実施形態と同様である。
【0058】
なお、
図2では、センサユニットと変換器とのセットが2組のみの例を示したが、3カ所以上の測定箇所における被測定液中に各々配置され、各々が少なくとも1つの電極を有しているセンサユニットと、その信号が入力される変換器のセットを3組以上備えていてもよい。
その場合、3カ所以上の測定箇所における被測定液が互いに連続する液相を形成していれば、3つ以上の変換器が互いにネットワークを形成し、3つ以上のセンサユニットが、互いに第1センサユニット10又は第2センサユニット20として機能することができる。ただし、第1センサユニット10として機能するセンサユニットは、2つ以上の電極を有しているものに限られる。
各変換器は、組み合わせられたセンサユニットのいずれかの電極の異常を認識した際、代替可能電極の種類(異常を認識した電極の種類)と、各センサユニットの位置関係等を考慮して、最適なセンサユニットを第2センサユニット20として選択することが好ましい。
【0059】
また、第1実施形態の変換器30が、第2実施形態の第1変換器50または第2変換器60と信号を交換し合うようにしてもよい。
また、センサユニットと変換器との組み合わせが、3セット以上の場合、その内の1セット以上は、第1実施形態のように、2以上のセンサユニットと変換器の組み合わせでもよい。
【0060】
(作用)
本発明の液体測定システムによれば、第1センサユニットにおける異常が検知された電極の信号を、第2センサユニットにおける同等の機能を有する代替可能電極の信号で代替するため、第1測定箇所における被測定液の性状変化を継続して測定することができる。
【0061】
一部の電極の信号を第2測定箇所に配置されたセンサユニットにおける同等の機能を有する電極の信号に置き換えて求めた第1測定箇所における被測定液の性状は、その絶対値自体は、それまでの測定値からずれが生じる。
しかし、第1測定箇所における被測定液に重大な変化が生じれば、通常第1センサユニットにおける正常な電極の信号についても変化が生じるので、第1測定箇所における被測定液に重大な変化が生じた場合には、変化が生じたことを検知できる。
そのため、被測定液である原料を用いた製造の中止や、被測定液である排液の放流中止等の対応を即座に取ることができる。
【0062】
また、一部の電極の信号を第2測定箇所に配置されたセンサユニットにおける同等の機能を有する電極の信号に置き換えて求めた第1測定箇所における被測定液の性状は、その絶対値自体は、それまでの測定値からずれる。
しかし、センサユニットの感度は、それほど大きく変化しない場合が多い。したがって、絶対値のずれの分を補正すれば、真の性状に近い性状を継続して測定することが可能である。
【0063】
また、異常が検知された電極が温度測定電極であれば、連続する液相を形成している第1測定箇所における被測定液の温度と前記第2測定箇所における被測定液の温度とは、近似している場合が多い。そのため、第2測定箇所に配置されたセンサユニットにおける温度測定電極の信号に置き換えても、異常検知前と継続性のある測定が可能である。
【0064】
また、本発明の液体測定システムによれば、常時は測定に全く寄与しないセンサを用意する必要がないので、設備のコストを抑制することができる。
【符号の説明】
【0065】
10 第1センサユニット
11 第1センサ信号
15 第1測定箇所
20 第2センサユニット
21 第2センサ信号
25 第2測定箇所
30 変換器
31 出力信号
50 第1変換器
51 第1出力信号
52 第1提供信号
60 第2変換器
61 第2出力信号
62 第2提供信号