(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】回転往復駆動アクチュエーター
(51)【国際特許分類】
H02K 33/04 20060101AFI20240815BHJP
H02K 33/06 20060101ALI20240815BHJP
H02K 33/12 20060101ALI20240815BHJP
G02B 26/10 20060101ALN20240815BHJP
G02B 26/08 20060101ALN20240815BHJP
【FI】
H02K33/04 B
H02K33/06
H02K33/12
G02B26/10 104Z
G02B26/08 E
(21)【出願番号】P 2020135232
(22)【出願日】2020-08-07
【審査請求日】2023-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北村 泰隆
(72)【発明者】
【氏名】高橋 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】加賀美 雅春
(72)【発明者】
【氏名】大塚 裕樹
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/004514(WO,A1)
【文献】特開平08-322226(JP,A)
【文献】特開2005-287139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 33/04
H02K 33/06
H02K 33/12
G02B 26/10
G02B 26/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部と、
可動対象物が接続される軸部に固定された可動マグネットと、
コア体、及び前記コア体の一部に外装され、通電時に前記コア体に磁束を発生させるコイル体を有し、前記コア体から発生する磁束と前記可動マグネットとの電磁相互作用により、前記可動マグネットを往復回転駆動する駆動ユニットと、
を備える回転往復駆動アクチュエーターであって、
前記可動マグネットは、リング形状を成し、前記軸部の外周で、S極及びN極を成す偶数の磁極が交互に着磁されて構成され、
前記コア体の磁極であるコア磁極の数
は、前記可動マグネットの磁極数と等しく、
前記コア磁極は、前記可動マグネットと、前記軸部と直交する方向で、前記可動マグネットの外周側でエアギャップを開けて、対向して配置され、
前記駆動ユニットには、前記可動マグネットに対向して設けられた磁性体であり、前記可動マグネットを動作の基準位置に磁気吸引するマグネット位置保持部が設けられ、
前記コア体は
全体として、前記偶数のコア磁極の周囲を囲むように形成され、且つ、前記コア磁極を連続する形状を有し、
前記コイル体は、前記偶数のコア磁極のそれぞれに隣接して前記コア体に配置されている、
回転往復駆動アクチュエーター。
【請求項2】
前記マグネット位置保持部が前記可動マグネットを磁気吸引する前記基準位置は、前記可動マグネットの往復回転の回転中心位置である、
請求項1記載の回転往復駆動アクチュエーター。
【請求項3】
前記コア磁極は、前記コア体において前記コア磁極の周囲を囲む部位であるコア外周部に近接して配置され、且つ、前記コア外周部に対して、スペーサ部を介して固定されている、
請求項1または2記載の回転往復駆動アクチュエーター。
【請求項4】
前記コア磁極は、前記コア体において前記コア磁極の周囲を囲む部位であるコア外周部と隙間を開けて配置され、
前記コア磁極と前記コア外周部との間の前記隙間には、スペーサ部が配置されている、
請求項1または2記載の回転往復駆動アクチュエーター。
【請求項5】
前記スペーサ部は、前記コア磁極と前記コア外周部との間に挟まれて双方に固定されている、
請求項4記載の回転往復駆動アクチュエーター。
【請求項6】
前記スペーサ部は、前記コイル体のボビンと一体構造であることを特徴とする、
請求項3または4記載の回転往復駆動アクチュエーター。
【請求項7】
前記スペーサ部は、非磁性体である、
請求項3から6のいずれか一項に記載の回転往復駆動アクチュエーター。
【請求項8】
前記コア体は、それぞれの先端部に前記コア磁極を有し、かつ、前記コイル体がそれぞれに外装され、前記コア磁極が対向するように並行に配置された棒状の第1コア体及び第2コア体と、
前記第1コア体及び第2コア体を囲むように形成されたU字状をなし、両端部が前記第1コア体及び第2コア体のそれぞれの基端部に接合された磁性体である中継コアと、
を有する、
請求項1から7のいずれか一項に記載の回転往復駆動アクチュエーター。
【請求項9】
前記軸部の回転角度を検出する角度センサー部を有する、
請求項1から8のいずれか一項に記載の回転往復駆動アクチュエーター。
【請求項10】
可動対象物は、軸受に挟まれる位置に配置され、片側、ないし両側にアクチュエーターが配置されている、
請求項1から9のいずれか一項に記載の回転往復駆動アクチュエーター。
【請求項11】
可動対象物は、走査光を反射するミラーであることを特徴とする、
請求項1から10のいずれか一項に記載の回転往復駆動アクチュエーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転往復駆動アクチュエーターに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、複合機、レーザービームプリンタ等のスキャナーに回転駆動アクチュエーターが使用されている。具体的には、回転往復駆動アクチュエーターは、スキャナーのミラーを往復回転させることで、レーザー光の反射角度を変更して対象物に対する光走査を実現する。
【0003】
従来、この種の回転往復駆動アクチュエーターとしてガルバノモーターを用いたものが、特許文献1等に開示されている。ガルバノモーターとしては、コイルをミラーに取り付けたコイル可動タイプの他、特許文献1に開示された構造等の様々なタイプのものが知られている。
【0004】
特許文献1には、4つの永久磁石が、ミラーが取り付けられる回転軸に、回転軸径方向に着磁するように設けられ、コイルが巻回された磁極を有するコアが、回転軸を挟むように配置されたビームスキャナが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、コイル可動タイプの回転往復駆動アクチュエーターにおいては、駆動時のコイルの発熱により、ミラーの表面状態、回転軸へのミラーの接合状態、反りを含むミラーの形状等に悪影響を与えるおそれがある。また、コイル可動タイプの回転往復駆動アクチュエーターにおいては、通電時のコイルの発熱を考慮するとコイルへの入力電流も大きくしにくく、可動体であるミラーの大型化や高振幅化が困難であるという問題がある。さらに、可動体であるミラーに対して、コイルへの配線を固定体側に引き出す必要があり組み立て性が悪いという問題がある。
【0007】
また、特許文献1では、マグネットを可動体側に配置しているので、上述したコイル可動タイプでの問題を解消できるものの、マグネットをコアに対して中立位置に静止させる、つまり、マグネットの磁極の切り替わり部をコアのセンターに位置させるために、コア1極あたりに2極のマグネット、合計で、4極のマグネットが必要である。
【0008】
これにより、例えば、2極のマグネットを用いて同様の回転往復駆動アクチュエーターを構成する場合と比較して、可動体の振幅が小さくなる、つまり、揺動範囲が減少するという問題がある。また、少なくとも4つのマグネットを用いるので、部品点数が多く複雑な構成であり組立が難しい。
【0009】
さらに、近年、スキャナーに用いられる回転往復駆動アクチュエーターとして、可動体であるミラーの大型化等が想定される。この場合、特許文献1に示す回転往復駆動アクチュエーターを用いて片持ちで可動体を回転自在に支持する構造では、剛性が不足し、耐衝撃性及び耐振動性を確保することが難しい。
【0010】
また、回転往復駆動アクチュエーターにおいて電磁変換効率が低い場合、出力が低下し、所定の回転角度を得ることが困難となり、また、高速での駆動が困難となるという問題がある。
【0011】
これらを踏まえて、剛性を備え、耐衝撃性、耐振動性を有するとともに、組み立て性の向上が図られ、高振幅化を実現可能な回転往復駆動アクチュエーターが望まれている。
【0012】
本発明は、以上の点を考慮してなされたものであり、組み立てが容易で、電磁変換効率を高くして出力の向上を図ることにより、可動対象を高振幅で駆動できる回転往復駆動アクチュエーターを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の回転往復駆動アクチュエーターの一つの態様は、ベース部と、可動対象物が接続される軸部に固定された可動マグネットと、
コア体、及び前記コア体の一部に外装され、通電時に前記コア体に磁束を発生させるコイル体を有し、前記コア体から発生する磁束と前記可動マグネットとの電磁相互作用により、前記可動マグネットを往復回転駆動する駆動ユニットと、
を備える回転往復駆動アクチュエーターであって、
前記可動マグネットは、リング形状を成し、前記軸部の外周で、S極及びN極を成す偶数の磁極が交互に着磁されて構成され、
前記コア体の磁極であるコア磁極の数は、前記可動マグネットの磁極数と等しく、
前記コア磁極は、前記可動マグネットと、前記軸部と直交する方向で、前記可動マグネットの外周側でエアギャップを開けて、対向して配置され、
前記駆動ユニットには、前記可動マグネットに対向して設けられた磁性体であり、前記可動マグネットを動作の基準位置に磁気吸引するマグネット位置保持部が設けられ、
前記コア体は全体として、前記偶数のコア磁極の周囲を囲むように形成され、且つ、前記コア磁極を連続する形状を有し、
前記コイル体は、前記偶数のコア磁極のそれぞれに隣接して前記コア体に配置されている構成を採る。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、組み立てが容易で、電磁変換効率を高くして出力の向上を図ることにより、可動対象を高振幅で駆動できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施の形態の回転往復駆動アクチュエーターの外観斜視図である。
【
図2】回転往復駆動アクチュエーターの分解斜視図である。
【
図3】
図1の回転往復駆動アクチュエーターを駆動ユニット側から見た側面図である。
【
図5】駆動ユニットの変形例の説明に供する図である。
【
図7】回転往復駆動アクチュエーターの磁気回路の動作の説明に供する図である。
【
図8】回転往復駆動アクチュエーターの磁気回路の動作の説明に供する図である。
【
図9】実施の形態の回転往復駆動アクチュエーターの変形例1の外観斜視図である。
【
図10】変形例1の回転往復駆動アクチュエーターの要部構成を示す縦断面図である。
【
図11】変形例1の回転往復駆動アクチュエーターの角度センサー部を示す分解斜視図である。
【
図12】変形例1の回転往復駆動アクチュエーターを用いた一例としての光走査装置の要部構成を示すブロック図である。
【
図13】回転往復駆動アクチュエーターの他の構成例を示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0017】
<回転往復駆動アクチュエーターの全体構成>
図1は、実施の形態の回転往復駆動アクチュエーター100の外観斜視図である。
図2は、回転往復駆動アクチュエーター100の分解斜視図である。
【0018】
回転往復駆動アクチュエーター100は、例えばライダー(LIDAR:Laser Imaging Detection and Ranging)装置に用いられる。なお、回転往復駆動アクチュエーター100は、複合機、レーザービームプリンタ等の光走査装置にも適用可能である。
【0019】
回転往復駆動アクチュエーター100は、大きく分けて、ベース部110と、ベース部110に回転自在に支持されるミラー部120と、ミラー部120を往復回転駆動する駆動ユニット200と、を有する。
【0020】
ミラー部120は、回転往復駆動アクチュエーター100における可動対象物の一部であり、軸部141とともに可動体を構成する。ミラー部120は、
図1及び
図2に示すように、ミラーホルダー122の一面にミラー124を貼り付けることで形成されている。ミラーホルダー122は、挿通孔122aを有し、挿通孔122aには軸部141が挿通され、ミラーホルダー122と軸部141は固着される。
【0021】
ベース部110は、一対の壁部111a、111bを有する断面が略コの字状(U字状といってもよい)の部材で構成される。一対の壁部111a、111bにはそれぞれ軸部141が挿通される挿通孔112が形成されている。さらに、一対の壁部111a、111bにはそれぞれ挿通孔112と壁部111a、111bの外縁とを連通する切欠穴113が形成されている。
【0022】
これにより、軸部141にミラー部120を固着させた状態で、軸部141を、切欠穴113を介して挿通孔112の位置に配置させることができる。切欠穴113が無い場合には、一対の壁部111a、111bの間にミラー部120を配置させた状態で、軸部141を壁部111a、111bの挿通孔112及びミラーホルダー122の挿通孔122aの両方に挿通し、さらに軸部141とミラーホルダー122を固着させるといった煩雑な組立て作業が必要となる。これに対して、本実施の形態においては、切欠穴113を形成したので、予めミラー部120を固着させた軸部141を、簡単に挿通孔112に挿通させることができるようになる。
【0023】
軸部141の両端にはボールベアリング(軸受)151が取り付けられる。ボールベアリング151は、一対の壁部111a、111bの挿通孔112の位置に形成されたベアリング取付部114に取り付けられる。これにより、軸部141は、ボールベアリング151を介して回転自在にベース部110に取り付けられ、一対の壁部111a、111bの間には、ミラー部120が配置される。
【0024】
さらに、軸部141の一端には可動マグネット161が固着される。可動マグネット161は、駆動ユニット200内に配置され、駆動ユニット200により発生される磁束によって往復回転駆動される。具体的には、可動マグネット161は、コイル体220との協働により、可動体の軸部141を、ベース部110に対して動作基準位置から軸回りの一方向と他方向とに往復回転する。
【0025】
軸部141を含む可動体が動作基準位置に位置することは、本実施の形態では、可動マグネット161がコイル体220の励磁するコア体210の磁極211a、212aに対して中立な位置に位置することを意味する。この中立な位置は、軸回りの一方向と他方向(軸部141側から見て正転及び逆転)の双方のいずれの方向にも同様に回転が可能な位置である。
【0026】
可動マグネット161は、リング形状をなしており、軸部141の外周で、軸部141の回転軸方向と直交する方向に、S極及びN極が交互に着磁された偶数の磁極161a、161bを有する(
図3参照)。可動マグネット161は、本実施の形態では、2極に着磁されているが、可動時の振幅に応じて2極以上着磁されていてもよい。
【0027】
偶数の磁極161a、161bは、軸部141を挟み互いに反対側に向く異なる極性の着磁面を有する。本実施の形態では、磁極161a、161bは、軸部141の軸方向に沿う平面を境界として異なる極性である。
【0028】
また、偶数の磁極161a、161bは、軸部141の外周で、等間隔に着磁されて構成されている。
【0029】
このように可動マグネット161では、軸部141の外周に、S極及びN極をなす偶数の磁極161a、161bが交互に配置され、かつ、それぞれの磁極161a、161bは等間隔に配置されている。
【0030】
より具体的には、可動マグネット161は、それぞれの半円状の部位が異なる磁極161a、161bを構成している。半円状の部位の円弧状の湾曲面が、異なる磁極161a、161bの着磁面であり、この異なる磁極161a、161bの着磁面が軸回りに周方向に延在するように構成されている。
【0031】
言い換えれば、磁極161a、161bの着磁面は、軸部141の軸方向と直交する方向に並び、且つ、回転してそれぞれ第1コア体211、第2コア体212の磁極211a、212aに対向可能に配置される。
【0032】
可動マグネット161の磁極数は、コア体210の磁極数と等しい。
【0033】
可動マグネット161の磁極161a、161bの磁極切り替わり部161cは、コイル体220への非通電時において、第1コア体211、第2コア体212の磁極211a、212aの幅方向の中心位置と対向する位置に位置する。可動マグネット161は、本実施の形態では、磁極161a、161bという2極を有する。磁極切り替わり部161cは、可動マグネット161が、後述するマグネット位置保持部240により回転角度位置で保持されたとき、磁極211a、212aの各々に対して、軸部141を中心とした線で、対称となる位置に配置される。これにより、磁極211a、212aに、磁極切り替わり部161cの端部を向けて、その向きに対応して可動対象物を配置することにより、コイル227への励磁に対して回転方向が決まり、また、そのトルクも最大化できる。
【0034】
可動対象物であるミラー部120が取り付けられる軸部141は、ベース部110の一対の壁部111a、111bによって、ミラー部120を両側から支持するように軸支されている。これにより、軸部141を片持ちで軸支するよりもミラー部120の支持が強固となり、耐衝撃性や耐振動性を高めることができる。
【0035】
駆動ユニット200は、
図2及び
図3に示すように、コア体210と、コイル体220と、を有する。
図4は、駆動ユニットの構成を示す斜視図である。駆動ユニット200は、本実施の形態では、矩形板状に形成されている。
【0036】
図2から
図4に示すように、コイル体220は、コア体210に装着されるボビン225と、ボビン225に巻回されるコイル227とを有する。ボビン225にコイル227が巻回されることによって、矩形筒状のコイル体220が形成され、コア体210の一部を囲むように配設される。本実施の形態では、コイル体220は、ボビン225にコイル227を巻回して構成される第1コイル221及び第2コイル222を有する。
【0037】
コア体210では、コイル体220により励磁されて磁極211a、212aとなる一端部と他端部が、可動マグネット161を挟み、且つ、互いに対向するように配置されている。コア体210では、磁極211a、212aとなる一端部と他端部との間で連続する部位は、一端部の磁極211aと他端部の磁極212aとを囲むように構成されている。コア体210は、偶数のコア磁極である磁極211a、212aの周囲を囲むように形成されて、且つ、磁極211a、212aを連続する形状を有している。
【0038】
コア体210は、第1コア体211、第2コア体212及び中継コア213とからなる。コイル体220は、本実施の形態では、コア体210の第1コア体211及び第2コア体212のそれぞれに差し込むようにして取り付けられる。第1コア体211及び第2コア体212は、中継コア213により一体的に接続されている。コイル体220のコイルが通電されると、コア体210が励磁される。
【0039】
コア体210及びコイル体220は、止着材251を介してベース部110の壁部111aに固定される。
【0040】
コア体210において、第1コア体211、第2コア体212及び中継コア213は、それぞれ積層コアであり、例えば、ケイ素鋼板を積層して構成されている。
【0041】
第1コア体211及び第2コア体212は、可動マグネット161を挟むように形成された磁極211a、212aと、磁極211a、212aがそれぞれの一端部であり、且つ、互いに平行に配置される棒状の芯部211b、212bと、を有する。
【0042】
芯部211b、212bの他端部211c、212cは、中継コア213に接続されている。第1コア体211及び第2コア体212は、中継コア213とともに、コア体210を一体的な構造体として形成している。
【0043】
磁極211a、212aは、可動マグネット161に対して、可動マグネット161の軸と直交する方向で挟むように、互いに対向して配置されている。磁極211a、212aは、可動マグネット161の回転方向に沿う方向に湾曲する湾曲面を有する。
【0044】
第1コア体211及び第2コア体212の芯部211b、212bは、それぞれの磁極211a、212aから、磁極211a、212aの対向方向及び軸部141の延在方向の双方に直交する方向に延在するように配置される。
【0045】
芯部211b、212bには、それぞれ、コイル体220が外挿されている。具体的には、芯部211b、212bには、第1コイル221、第2コイル222が外装されている。これら第1コイル221及び第2コイル222におけるコイル線の巻回方向は、電流が供給された際に、磁極211a、212aの一方から他方に好適に磁束を流すように設定されている。
【0046】
第1コア体211の他端部は、第1コア体211と平行に配置される中継コア213における第1辺部2132の一端部に接続される。
第2コア体212の他端部は、第2コア体212と平行に配置される中継コア213における第2辺部2134の一端部に接続される。
中継コア213は、可動マグネット161及び磁極211a、212aを囲むように形成されている。
【0047】
中継コア213は、本実施の形態では、内部に第1コア体211及び第2コア体212が配置されるU字状に形成されている。中継コア213は、磁極211a、212a間を連絡するものである。
【0048】
具体的には、中継コア213は、互いに対向する第1コア体211の磁極211aと第2コア体212の磁極212aに加えて、第1コイル221と第2コイル222とを、軸部141と直交する3方から囲むように配置されている。中継コア213は、磁極211a、磁極211a、第1コイル221及び第2コイル222を、第1及び第2コア体211、212の他端部211c、212cとともに、軸部141と直交する残り一方から覆っている。
【0049】
中継コア213は、第1辺部2132及び第2辺部2134と、第1辺部2132及び第2辺部2134同士を接続する第3辺部2136と、を有する。中継コア213は、第1辺部2132、第2辺部2134及び第3辺部2136を一体に備える。中継コア213は、第1コア体211及び第2コア体212と同様に磁性体を積層して形成されている。中継コア213は、第1コア体211及び第2コア体212よりも厚みがある積層体である。中継コア213は、コア体210において磁極211a、212aの周囲を囲む部位であるコア外周部に相当する。
【0050】
第3辺部2136は、第1辺部2132の他端部及び第2辺部2134の他端部を連絡するものであり、双方を最短距離で接続する。中継コア213全体としては、第3辺部2136の両端部と、第1辺部2132及び第2辺部2134とが接合してなる角部分から、第3辺部2136の延在方向に突出した固定用の突出部を有するものの、U字状に形成されている。
【0051】
第3辺部2136は、直方形状体である。第3辺部2136は、第1コア体211と第2コア体212の対向方向、つまり、磁極211a、212aの対向方向で、且つ、可動マグネット161の軸と直交する方向に延在するように配置されている。
【0052】
図1から
図4に示すように、本実施の形態の例では、駆動ユニット200は、マグネット位置保持部240を有する。
このように、駆動ユニット200は、第1コイル221、第2コイル222が組付けられる第1コア体211、第2コア体212と、第1~第3辺部2132~2136を有するU字状の中継コア213とにより構成されている。具体的には、コア体210は、それぞれの先端部にコア磁極211a、212aを有し、かつ、コイル体220がそれぞれに外装された棒状の第1コア体211及び第2コア体212と、第1コア体211及び第2コア体212とを接続する中継コア213とを有する。第1コア体211及び第2コア体212は、コア磁極211a、212aが対向するように並行に配置されている。中継コア213は、第1コア体211及び第2コア体212を囲むようにU字状に形成されている。中継コア213は、第1コア体211及び第2コア体212を囲むように配置され、両端部が、第1コア体211及び第2コア体212のそれぞれの基端部に接合されている。これにより、コアの部品点数が最小構成となり、低コスト化、組み立て性の向上を図ることができる。
【0053】
マグネット位置保持部240は、マグネットにより構成されている。マグネット位置保持部240は、可動マグネット161との間に発生する磁気吸引力により、可動マグネット161とともに磁気バネとして機能する。磁気バネは、常態時では、可動マグネット161や軸部141等を含む可動体を、動作基準位置に位置するように、回転自在に保持する。ここで、常態時は、コイル体220に通電されていない状態である。また、磁気バネにより、マグネット位置保持部240は、可動マグネット161に対して、回動する可動マグネット161の位置が動作基準位置に位置するように、磁気吸引される。
【0054】
マグネット位置保持部240が可動マグネット161を磁気吸引する動作基準位置は、可動マグネット161の往復回転の回転中心位置である。可動体が動作基準位置に位置するとき、可動マグネット161の磁極の切り替わり部161cが、コイル体220側の磁極と対向する位置に位置する。
【0055】
マグネット位置保持部240は、第3辺部2136に可動マグネット161側に凸状に突出して取り付けられ、可動マグネット161に対してエアギャップGを空けて対向するように配置される。
【0056】
マグネット位置保持部240は、例えば、対向面をN極(
図6参照)に着磁されたマグネットである。マグネット位置保持部240は、第3辺部2136と一体的に形成されていてもよい。マグネット位置保持部240は、可動マグネット161の位置を動作基準位置に位置させて保持する。
【0057】
マグネット位置保持部240は、可動マグネット161側に向けて着磁されたマグネットである。マグネット位置保持部240は、動作基準位置(中立な位置)において、可動マグネット161の磁極切り替わり部161cを、磁極211a、212aと対向する位置に位置させる。すなわち、磁極211a、212aの軸周り方向の長さの中心に対して、偶数の磁極161、161bの磁極の切り替わり位置である磁極切り替わり部161cが、軸部141を中心とする軸の同一半径上に位置する。これにより、偶数の磁極161、161bは、磁極211a、212aに対して、軸回りの一方向と他方向の双方方向に同じく移動可能な位置にした状態となる。
【0058】
このように、マグネット位置保持部240は、可動マグネット161と互いに吸引し合い、可動マグネット161を動作基準位置に位置させることができる。これにより、可動マグネット161の磁極切り替わり部161cが、第1コア体211、第2コア体212の磁極211a、212aと対向する。この位置で、駆動ユニット200は最大トルクを発生して可動体を安定して駆動する。なお、可動マグネット161は、2極着磁されているので、コア体210との協働により、可動対象物を高振幅で駆動しやすくなるとともに、振動性能の向上を図ることができる。
【0059】
また、駆動ユニット200は、本実施の形態では、
図2から
図4に示すように、スペーサ部230を有する。スペーサ部230は、磁極211a、212aを、それぞれが近接する第1辺部2132、第2辺部2134に固定する。また、スペーサ部230は、コア体210において、磁極211aと磁極212aとの間のコア体210部分を通して、磁極211a、212a間に好適に磁束を流す機能を有する。
【0060】
スペーサ部230は、互いに隣り合うように並んで配置される第1コア体211と第1辺部2132との間と、第2コア体212と第2辺部2134との間のそれぞれの間で挟まれる双方に固定して設けられている。スペーサ部230は、磁極211a、212aに、第1辺部2132、第2辺部2134がスペーサ部230を介して固定することにより、コア体210自体の剛性を高めることができる。これにより、磁極211a、212aにおける可動マグネット161との磁気吸引力や衝撃による変形或いは破損を抑制することができる。
【0061】
スペーサ部230は、第1コア体211において自由端である磁極211aを、中継コア213の第1辺部2132に固定し、第2コア体212において自由端である磁極212aを、中継コア213の第2辺部2134に固定する。
また、スペーサ部230は、第1コア体211と第1辺部2132とが対向する方向、つまり、コア体210による磁気経路とは異なる方向に磁束が流れることを規制する。また、スペーサ部230は、第2コア体212と第2辺部2134とが対向する方向、つまり、コア体210の磁気経路として、第2コア体212と第2辺部2134の互いが連続する方向(磁束が流れる方向)とは、異なる方向に磁束が流れることを規制する。
【0062】
スペーサ部230は、磁石に吸着しない非磁性体であることが好ましく、スペーサ部230は、例えば、真鍮もしくはアルミ等の素材により形成されることが好ましい。
スペーサ部230は、互いに隣り合うように並ぶ第1コア体211と第1辺部2132に挟まれるように配置され、第1コア体211と第1辺部2132の双方に接着、溶接等により固定される。これにより、スペーサ部230は、素材を真鍮もしくはアルミ等のような非磁性かつ溶接可能な部材にすることで、より強固にコア体210に固定できる。
【0063】
なお、このスペーサ部230は、互いに隣り合う第1コア体211と第1辺部2132のうちの少なくとも一方、または、第2コア体212と第2辺部2134のうちの少なくとも一方に接着により固定される構成要素としてもよい。また、例えば、スペーサ部230は、駆動ユニット200においてコイル体220を構成する第1コイル221及び第2コイル222に一体的に設けてもよい。さらに、スペーサ部230は、互いに隣り合うように並ぶ第1コア体211と第1辺部2132の隙間に挟まれるように配置されるだけでもよく固定されてもよい。
【0064】
図5及び
図6に示す駆動ユニット200Aでは、スペーサ部230Aは、第1コイル221及び第2コイル222を構成するボビン225にそれぞれ一体に設けている。
【0065】
スペーサ部230Aは、第1コイル221A及び第2コイル222Aをそれぞれ第1コア体211及び第2コア体212に組み付けたときに、磁極211a、212aの裏面側に重なるように位置するように設けられている。スペーサ部230Aは、例えば、樹脂等によりボビン体225Aとして、ボビン225aと一体に成形されてなる。なお、駆動ユニット200Aは、駆動ユニット200と比較して、スペーサ部230A、第1コイル221A及び第2コイル222Aの構成のみ異なり、その他の構成は同様である。よって、駆動ユニット200と比較して、異なる構成要素のみ説明し、同様の構成要素については説明を省略する。
【0066】
これにより、スペーサ部230Aは、コイル体220Aとしての第1コイル221A及び第2コイル222Aをコア体210にそれぞれ組み付けるだけで、第1コア体211Aと第1辺部2132との間と、第2コア体212Aと第2辺部2134との間にそれぞれ配置される。このように、スペーサ部230Aと、ボビン225とを一体とすることで、部品点数の削減を図ることができ、同時に、磁極211a、212aの固定強度を高めることができる。
【0067】
<回転往復駆動アクチュエーター100の動作>
次に、回転往復駆動アクチュエーター100の動作について、
図3に加えて、
図7及び
図8を用いて説明する。
図7及び
図8は、回転往復駆動アクチュエーター100の磁気回路の動作の説明に供する図である。
【0068】
2つの磁極211a、212aは、可動マグネット161の外周とエアギャップGを空けて可動マグネット161を挟むように対向して配置される。
【0069】
図3に示すように、コイル体220(221、222)への非通電時において、可動マグネット161は、マグネット位置保持部240と可動マグネット161との磁気吸引力、つまり、磁気ばねにより動作基準位置に位置する。
【0070】
この動作基準位置(本実施の形態では、動作基準位置を常態時と呼ぶこともある)では、可動マグネット161の磁極161a、161bの一方がマグネット位置保持部240に吸引されて、磁極切り替わり部161cが、第1コア体211、第2コア体212の磁極211a、212aの中心位置と対向する位置に位置する。
【0071】
コイル体220に通電が行われると、コイル体220(221、222)は、第1コア体211、第2コア体212を励磁する。
【0072】
図7に示す方向でコイル体220が通電されると、磁極211aはN極に磁化され、磁極212aはS極に磁化される。
【0073】
この結果、第1コア体211では、N極に磁化された磁極211aから可動マグネット161に出射して、可動マグネット161、マグネット位置保持部240、中継コア213(第3辺部2136)を順に流れ、芯部211bに入射する磁束が形成される。
【0074】
また、第2コア212では、磁束は、芯部212bから中継コア213(第2辺部2134)側に出射して、中継コア213、マグネット位置保持部240、可動マグネット161を順に流れ、磁極212aに入射する。
【0075】
これにより、N極に磁化された磁極211aは、可動マグネット161のS極と引き合い、S極に磁化された磁極212aは、可動マグネット161のN極と引き合い、可動マグネット161には軸部141の軸回りにF方向のトルクが発生し、可動マグネット161はF方向に回転する。これに伴い、軸部141も回転し、軸部141に固定されるミラー部120も回転する。
【0076】
次に、
図8に示したように、コイル体220の通電方向が逆方向に切り替わると、磁極211aはS極に磁化され、磁極212aはN極に磁化され、磁束の流れも逆になる。
【0077】
これにより、S極に磁化された磁極211aは、可動マグネット161のN極と引き合い、N極に磁化された磁極212aは、可動マグネット161のS極と引き合い、可動マグネット161には軸部141の軸回りにF方向とは逆回りの方向のトルクが発生し、可動マグネット161はF方向とは逆の方向に回転する。これに伴い、軸部141も逆方向に回転し、軸部141に固定されるミラー部120も先の回転方向とは逆方向に回転する。回転往復駆動アクチュエーター100は、これを繰り返すことで、ミラー部120を往復回転駆動する。
【0078】
実際上、回転往復駆動アクチュエーター100は、電源供給部(例えば
図12の駆動信号供給部303に相当)からコイル体220に入力される交流波によって駆動される。つまり、コイル体220の通電方向は周期的に切り替わり、可動体には、軸回りのF方向のトルクと、F方向とは逆の方向(-F方向)のトルクが交互に作用する。これにより、可動体は、往復回転駆動される。
【0079】
因みに、通電方向の切り替わり時には、マグネット位置保持部240と可動マグネット161との間の磁気吸引力、つまり磁気バネにより、磁気バネトルクFM(
図7)又は-FM(
図8)が発生し可動マグネット161は動作基準位置に付勢される。
【0080】
以下に、回転往復駆動アクチュエーター100の駆動原理について簡単に説明する。本実施の形態の回転往復駆動アクチュエーター100では、可動体の慣性モーメントをJ[kg・m2]、磁気バネ(磁極211a、212a、マグネット位置保持部240及び可動マグネット161)のねじり方向のバネ定数をKspとした場合、可動体は、ベース部110に対して、式(1)によって算出される共振周波数Fr[Hz]で振動(往復回転)する。
【0081】
【0082】
可動体は、バネ-マス系の振動モデルにおけるマス部を構成するので、コイル体220に可動体の共振周波数Frに等しい周波数の交流波が入力されると、可動体は共振状態となる。すなわち、電源供給部からコイル体220に対して、可動体の共振周波数Frと略等しい周波数の交流波を入力することにより、可動体を効率良く振動させることができる。
【0083】
回転往復駆動アクチュエーター100の駆動原理を示す運動方程式及び回路方程式を以下に示す。回転往復駆動アクチュエーター100は、式(2)で示す運動方程式及び式(3)で示す回路方程式に基づいて駆動する。
【0084】
【0085】
【0086】
すなわち、回転往復駆動アクチュエーター100における可動体の慣性モーメントJ[kg・m2]、回転角度θ(t)[rad]、トルク定数Kt[N・m/A]、電流i(t)[A]、バネ定数Ksp[N・m/rad]、減衰係数D[N・m/(rad/s)]、負荷トルクTLoss[N・m]等は、式(2)を満たす範囲内で適宜変更できる。また、電圧e(t)[V]、抵抗R[Ω]、インダクタンスL[H]、逆起電力定数Ke[V/(rad/s)]は、式(3)を満たす範囲内で適宜変更できる。
【0087】
このように、回転往復駆動アクチュエーター100は、可動体の慣性モーメントJと磁気ばねのバネ定数Kspにより決まる共振周波数Frに対応する交流波によりコイルへの通電を行った場合に、効率良い大きな振動出力を得ることができる。
【0088】
本実施の形態の回転往復駆動アクチュエーター100によれば、トルクの発生効率が高いので、可動対象であるミラー124に熱が伝達しにくく、この結果、ミラー124の反射面の平面度の精度を確保できる。また、製造性が高く、組立精度がよく、可動対象が大型ミラーであっても高振幅で駆動できる。
【0089】
また、回転往復駆動アクチュエーター100によれば、ベース部110の一対の壁部111a、111b間で、軸部141を介して配置されるミラー部120を、軸部141の一方側で駆動ユニット200により回転往復移動可能に支持している。
【0090】
これにより、可動対象であるミラー部120の大きさに応じて、回転往復駆動アクチュエーター100自体を小さくでき、狭い配置スペースであっても効率良く用いることができる。また、駆動ユニット200は、ミラー部120を挟む一対の壁部111a、111bの一方側にのみ配置されているので、コイル227の配線などの部品の簡略化できる。
【0091】
<変形例1>
図9~
図11は、回転往復駆動アクチュエーターの変形例1としての回転往復駆動アクチュエーター100Aの説明に供する図であり、
図9は、変形例1である回転往復駆動アクチュエーター100Aの外観斜視図であり、
図10は、回転往復駆動アクチュエーター100Aの要部構成を示す縦断面図である。また、
図11は、回転往復駆動アクチュエーター100Aの角度センサー部130を示す分解斜視図である。
【0092】
回転往復駆動アクチュエーター100Aは、回転往復駆動アクチュエーター100の構成において、角度センサー部130を備える。
【0093】
角度センサー部130は、軸部141の回転角度を検出するものであり、ベース部110の一対の壁部111a、111bのうち、駆動ユニット200が取り付けられていない壁部111b側に取り付けられている。
【0094】
なお、回転往復駆動アクチュエーター100Aにおいて、角度センサー部130を有する点以外の構成は、回転往復駆動アクチュエーター100の構成要素と略同様である。よって、以下の回転往復駆動アクチュエーター100Aの説明に際し、主に、角度センサー部130の説明を行い、その他の構成要素、つまり回転往復駆動アクチュエーター100の構成要素と同様の構成要素についての説明は省略する。
【0095】
角度センサー部130は、回路基板131と、回路基板131に実装された光センサー132及びコネクター133と、エンコーダーディスク134と、ケース135と、を有する。回路基板131は止着材136によりケース135に固定される。ケース135は止着材137により壁部111bに固定される。
【0096】
エンコーダーディスク134は、取付材138を介して軸部141に固着して取り付けられ、可動マグネット161及びミラー部120と一体に回転する。つまり、取付材138は、軸部141が挿通されて固着される挿通孔と、エンコーダーディスク134が当接されて固着されるフランジ部とを有し、軸部141とエンコーダーディスク134との両方に固定される。この結果、エンコーダーディスク134の回転位置が軸部141の回転位置と同一となる。光センサー132は、エンコーダーディスク134に光を出射しその反射光に基づいてエンコーダーディスク134の回転位置(角度)を検出する。これにより、光センサー132によって可動マグネット161及びミラー部120の回転位置を検出できる。このように、可動マグネット161及び軸部141を含む可動体の回転角度を検知可能となり、駆動時の可動体、具体的には、可動対象物であるミラー部120の角度位置、速度制御を行うことができる。
【0097】
回転往復駆動アクチュエーター100Aにおいては、可動体の可動マグネット161、コイル体220及びコア体210などを有する駆動ユニット200は、ベース部110の一対の壁部111a、111bのうちの一方の壁部111aの外面側に取り付けられる。これに対して、軸部141の回転角度を検知する角度センサー部130は、ベース部110の一対の壁部111a、111bのうちの他方の壁部111bの外面側に取り付けられている。これにより、角度センサー部130の取り外しや組み付け位置の調整が容易となる。角度センサー部130の取り外しが容易となることにより、角度センサー部130に不具合が生じた場合に容易に交換できるようになる。
【0098】
また、角度センサー部130の組み付けを組み立ての最終段階で行うことが可能となる。この結果、他の部品の組み立てが正常であることを確認してから高価な角度センサー部130を組み付けることができるので、高価な角度センサー部130を他の部品の組み立て不良が原因で無駄にするといったリスクを抑制することができる。なお、本実施の形態の回転往復駆動アクチュエーター100、100Aは、光走査可能なスキャナーに用いられ、共振駆動が可能であるが、非共振駆動も可能である。
【0099】
図12は、変形例1の回転往復駆動アクチュエーター100Aを用いたスキャナーシステムの要部構成を示すブロック図である。
【0100】
光走査装置の一例としてのスキャナーシステム300は、回転往復駆動アクチュエーター100Aに加えて、レーザー発光部301、レーザー制御部302、駆動信号供給部303及び位置制御信号計算部304を有する。
【0101】
レーザー発光部301は、例えば、光源となるLD(レーザーダイオード)と、この光源から出力されるレーザー光を収束するためのレンズ系などで構成される。レーザー制御部302は、レーザー発光部301を制御する。レーザー発光部301で得られたレーザー光は、回転往復駆動アクチュエーター100のミラー124に入射される。
【0102】
位置制御信号計算部304は、角度センサー部130により取得された軸部141(ミラー124)の角度位置と、目標角度位置とを参照して、軸部141(ミラー124)を目標角度位置となるように制御する駆動信号を生成して出力する。例えば、位置制御信号計算部304は、取得した軸部141(ミラー124)の角度位置と、図示しない波形メモリに格納されているのこぎり波形データ等を用いて変換された目標角度位置を示す信号とに基づいて位置制御信号を生成して、この位置制御信号を駆動信号供給部303に出力する。
【0103】
駆動信号供給部303は、位置制御信号に基づいて、回転往復駆動アクチュエーター100のコイル体220に、軸部141(ミラー124)の角度位置が所望の角度位置となるような駆動信号を供給する。これにより、スキャナーシステム300は、回転往復駆動アクチュエーター100Aから所定の走査領域に走査光を出射することができる。
【0104】
<変形例2>
図13は、本実施の形態に係る回転往復駆動アクチュエーターの変形例2を示す斜視図である。
【0105】
変形例2の回転往復駆動アクチュエーター100Bは、回転往復駆動アクチュエーター100の構成に加えて、駆動ユニット200と同様に構成される他の駆動ユニット200Bを備える。
【0106】
すなわち、回転往復駆動アクチュエーター100Bは、ベース部110と、ベース部110に軸部141を介して回転自在に支持されるミラー部120と、軸部141の両端部側に配置され、ミラー部120を往復回転駆動する駆動ユニット200、200Bと、を有する。
【0107】
軸部141の他端部には、一端部と同様に可動マグネット161が取り付けられ、軸部141の一端側の駆動ユニット200と同様に、可動マグネット161に対応して駆動ユニット200Bが設けられている。なお、駆動ユニット200Bは、駆動ユニット200に電流を供給した際に、駆動ユニット200による可動マグネット161への往復回転と同じ往復回転になるように駆動する。
【0108】
回転往復駆動アクチュエーター100Bでは、可動対象物としてのミラー部120は、ボールベアリング151を介して一対の壁部111a、111b間に配置されている。ミラー部120は、ボールベアリング151に挟まれる位置に配置されて、ボールベアリング151を介して一対の壁部111a、111bで保持されているといえる。
【0109】
このように、可動対象物であるミラー部120をボールベアリング151で挟むため、ミラー部120を大きくした場合でも、安定して保持でき、耐衝撃性、耐振動性に優れ、駆動の信頼性の向上を図ることができる。
【0110】
加えて、ミラー部120は、ミラー部120を支持する軸部141の両側で駆動ユニット200、200Bにより往復回転移動自在に支持されているので、片側に駆動ユニット200、200Aを設けた構成よりも、より大きな駆動力を発生させることができる。
【0111】
<まとめ>
以上説明したように、本実施の形態の回転往復駆動アクチュエーター100は、ベース部110と、可動対象物(実施の形態の例ではミラー部120)が接続される軸部141に固定された可動マグネット161と、コア体210、及び、通電時にコア体210に磁束を発生させるコイル体220を有し、コア体210から発生する磁束と可動マグネット161との電磁相互作用により、可動マグネット161を往復回転駆動する駆動ユニット200と、を有する。
【0112】
さらに、回転往復駆動アクチュエーター100は、可動マグネット161が、リング形状を成し、軸部141の外周で、S極及びN極を成す偶数の磁極が交互に着磁されて、構成されている。コア体210の磁極数と可動マグネット161の磁極数は、等しく、コア体210の偶数の磁極は、可動マグネット161と、軸部141の外周側でエアギャップを挟み各々対向して配置されている。駆動ユニット200には、可動マグネット161に対向して設けられた磁性体であり、可動マグネット161を基準位置に磁気吸引するマグネット位置保持部240が設けられている。
【0113】
これにより、可動マグネット161がマグネット位置保持部240によって、通電方向の切り替わる度に中立位置(動作基準位置)に磁気吸引されるので、エネルギー効率が良く、応答性が良く、かつ高振幅の往復回転駆動が実現される。また、コイル可動タイプの回転往復駆動アクチュエーターと比較して、コイル体220での発熱が可動対象物に伝わりにくく、可動対象物がミラーである場合に、ミラーに熱による悪影響(接合劣化、反りなど)が及ぶことを回避できる。
【0114】
駆動ユニット200のコア体210では、磁極211a、212aのそれぞれが、可動マグネット161を挟み対向して配置され、磁極211a、212aのそれぞれに隣接して第1コイル221、第2コイル222が前記コア体210に配置されて外装されている。また、第1コイル221、第2コイル222が取り付けられる第1コア体211、第2コア体212の他端部211c、212cは、中継コア213に接続されている。中継コア213は、第1コイル221、第2コイル222、磁極211a、212a、及び可動マグネット161を、軸部141と直交する方向で囲むように配置されている。コア体210は、偶数のコア磁極である磁極211a、212aの周囲を囲むように形成されており、且つ、磁極211a、212aを連続する形状を有している。
【0115】
例えば、コア体210では、磁極211a、212bが、可動マグネット161を軸部141と直交する方向で挟む。また、これら磁極211a、212bに隣接して、軸部141と直交し且つ磁極211a、212bの対向方向と直交する方向に延在して第1コイル体221及び第2コイル体222が配置されている。そして、中継コア213における第1~3辺部2132、2134、2136及び他端部211c、212cと接続する部位と、他端部211c、212cとにより、磁極211a、212b及び第1コイル体221及び第2コイル体222を軸部141と直交する方向で囲っている。
【0116】
コア体210において、磁極211a、212aに隣接或いは近接してコイル体220(第1コイル221及び第2コイル222)が配置され、これらを囲むように磁極211aと磁極212aとを連絡する磁気回路が最短距離に形成されている。
これにより、磁気回路において磁気変換効率の向上を図ることができ、出力の向上を図ることができる。
【0117】
加えて、本実施の形態の回転往復駆動アクチュエーター100は、ベース部110には、軸受151を介して軸部141を回転自在に支持する一対の壁部111a、111bが立設されている。一対の壁部111a、111bの間には、可動対象物(実施の形態の例ではミラー部120)が配置されている。
【0118】
これにより、可動対象物(ミラー部120)は、可動対象物の両側で、ボールベアリング151で挟むように配置され、安定して保持することができ、回転往復駆動アクチュエーター100としての耐久性に関して信頼性の向上を図ることができる。
【0119】
また、軸部141の回転角度を検知する角度センサー部130は、一対の壁部111a、111bのうちの他方の壁部111bの外面側に取り付けられている。これにより、角度センサー部130の取り外しや組み付け位置の調整が容易となる。角度センサー部130の取り外しが容易となることにより、角度センサー部130に不具合が生じた場合に容易に交換できるようになる。また、角度センサー部130の組み付けを組み立ての最終段階で行うことが可能となる。この結果、他の部品の組み立てが正常であることを確認してから高価な角度センサー部130を組み付けることができるので、高価な角度センサー部130を他の部品の組み立て不良が原因で無駄にするといったリスクを抑制することができる。
【0120】
本発明の一つの態様においては、マグネット位置保持部240が可動マグネット161を磁気吸引して、常態時において可動マグネット161を位置させる動作基準位置は、可動マグネット161の軸部141回りの往復回転の回転中心位置である。
【0121】
本発明の一つの態様においては、可動マグネット161は、軸部141の外周で、偶数の磁極が等間隔に着磁されている。本発明の一つの態様においては、マグネット位置保持部240は、コア体210の偶数の磁極の間の位置であり、かつ、可動マグネット161の径方向に対向した位置に、配置されている。これらの構成によって、可動マグネット161、つまり、軸部141を含む可動体が、軸回りの一方と他方とに、中立の位置から同じ角度範囲で回転往復移動することとなり、駆動トルクを最大化でき、かつ、駆動トルクの向きを安定化できる。
【0122】
上述の実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することの無い範囲で、様々な形で実施することができる。
【0123】
上述の実施の形態では、角度センサー部130を取り付ける壁部111bがベース部110と一体に形成された壁部111bである場合について述べたが、角度センサー部130を取り付ける壁部はベース部110に一体に形成されたものではなく、後からベース部に取り付けられたものであってもよい。
【0124】
上述の実施の形態では、駆動ユニット200、200A、200Bが壁部111a、111bの外面側に取り付けられている場合について述べたが、駆動ユニット200、200A、200Bの位置はこれに限らない。駆動ユニット200は、例えば壁部111aの内面側に取り付けられてもよい。
【0125】
上述の実施の形態では、回転往復駆動アクチュエーター100が駆動する可動対象物、つまり軸部141に取り付けられる可動対象物がミラー部120である場合について述べたが、可動対象物はこれに限らない。例えば、カメラなどが可動対象物であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明は、例えば光走査装置等に好適である。
【符号の説明】
【0127】
100、100A 回転往復駆動アクチュエーター
110 ベース部
111a、111b 壁部
112 挿通孔
113 切欠穴
114 ベアリング取付部
120 ミラー部
122 ミラーホルダー
124 ミラー
122a 挿通孔
130 角度センサー部
131 回路基板
132 光センサー
133 コネクター
134 エンコーダーディスク
135 ケース
136、137、251 止着材
138 取付材
141 軸部
151 ボールベアリング
161 可動マグネット
161a、161b 磁極
161c 磁極切り替わり部
200、200A、200B 駆動ユニット
210 コア体
211 第1コア体
211a、212a 磁極(コア磁極)
211b、212b 芯部
211c、212c 他端部
212 第2コア体
213 中継コア
2132 第1辺部
2134 第2辺部
2136 第3辺部
220、220A コイル体
221、221A 第1コイル
222、222A 第2コイル
225、225a ボビン
225A ボビン体
227 コイル
230、230A スペーサ部
240 マグネット位置保持部
300 スキャナーシステム
301 レーザー発光部
302 レーザー制御部
303 駆動信号供給部
304 位置制御信号計算部