(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】無線システム、中継方法、および通信端末
(51)【国際特許分類】
H04W 88/16 20090101AFI20240815BHJP
H04W 84/12 20090101ALI20240815BHJP
【FI】
H04W88/16
H04W84/12
(21)【出願番号】P 2020166380
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000100746
【氏名又は名称】アイコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100174573
【氏名又は名称】大坂 知美
(74)【代理人】
【識別番号】100173462
【氏名又は名称】宮本 一浩
(72)【発明者】
【氏名】川崎 浩
【審査官】岡本 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-175563(JP,A)
【文献】国際公開第2017/006833(WO,A1)
【文献】特表2012-519401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
公衆回線に設けられた閉域網に接続される通信端末とローカルエリアネットワークに接続される通信端末との音声通信を中継するゲートウェイ装置と、
前記閉域網に接続され、前記閉域網を介して前記ゲートウェイ装置に接続され
、前記閉域網に接続される通信端末または前記ゲートウェイ装置を介して前記閉域網に接続されている前記ローカルエリアネットワークに接続される通信端末と通信を行う通信端末である閉域網側通信端末と、
前記閉域網における通信制御を行う閉域網側制御サーバと、
前記ローカルエリアネットワークに接続され、前記閉域網側通信端末と音声通信を行う通信端末であるLAN側通信端末と、
前記ローカルエリアネットワークにおける通信制御を行うLAN側制御サーバと、
を備え、
前記ゲートウェイ装置は、
前記閉域網に接続され、前記閉域網の通信規格に準拠した閉域網データの送受信を行う閉域網通信部と、
前記ローカルエリアネットワークに接続され、前記ローカルエリアネットワークの通信規格に準拠したLANデータの送受信を行うLAN通信部と、
前記LAN通信部で受信した前記LANデータに、前記閉域網での通信に要するヘッダを付加してカプセル化を行うことで前記閉域網データを生成し、前記閉域網通信部で受信した前記閉域網データから、前記閉域網での通信に要するヘッダを除去してデカプセル化を行うことで前記LANデータを生成する通信中継部と、
を有し、
前記閉域網通信部は、前記通信中継部が生成した前記閉域網データを前記閉域網に送信し、
前記LAN通信部は、前記通信中継部が生成した前記LANデータを前記ローカルエリアネットワークに送信し、
前記閉域網側通信端末は、
前記閉域網に接続され、前記閉域網の通信規格に準拠した閉域網データの送受信を行う端末側通信部と、
送信用データに基づいて前記ローカルエリアネットワークの通信規格に準拠したLANデータを生成し、前記LANデータに、前記閉域網での通信に要するヘッダを付加してカプセル化を行うことで前記閉域網データを生成するデータ生成部と、
前記端末側通信部で受信した前記閉域網データから、前記閉域網での通信に要するヘッダを除去してデカプセル化を行うことで前記LANデータを生成し、前記LANデータから受信データを抽出するデータ抽出部と、
を有し、
前記端末側通信部は、前記データ生成部で生成された前記閉域網データを前記閉域網に送信し、
前記閉域網側通信端末は、起動されると前記閉域網側制御サーバから前記LAN側制御サーバとの通信を行うためのネットワーク情報を取得する、
無線システム。
【請求項2】
前記通信中継部は、前記閉域網に接続される前記
閉域網側通信端末から前記閉域網のエッジルータを介して送信された前記閉域網データについて前記デカプセル化を行い、
前記通信中継部は、前記閉域網の前記エッジルータに接続されている前記
閉域網側通信端末に宛てられた前記LANデータについて前記カプセル化を行う、
請求項1に記載の
無線システム。
【請求項3】
前記通信中継部は、宛先IP(Internet Protocol)アドレス、発信元IPアドレス、およびUDP(User Datagram Protocol)ヘッダを含む前記閉域網での通信に要するヘッダを付加して前記カプセル化を行う、
請求項1または2に記載の
無線システム。
【請求項4】
前記閉域網通信部で受信した前記閉域網データをプロトコル変換することで前記LANデータを生成し、前記LAN通信部で受信した前記LANデータをプロトコル変換することで前記閉域網データを生成するデータ処理部をさらに備え、
前記データ処理部は、前記閉域網に接続される前記
閉域網側通信端末である無線局から、前記閉域網に設けられ、無線局間通信を制御する制御サーバを介して送信された前記閉域網データについて、前記閉域網データをプロトコル変換することで前記LANデータを生成する、
請求項3に記載の
無線システム。
【請求項5】
前記端末側通信部は、前記データ生成部で生成された前記閉域網データを、前記閉域網のエッジルータに送信する、
請求項
1から4のいずれか1項に記載の
無線システム。
【請求項6】
前記閉域網側通信端末は、起動されると、前記閉域網側制御サーバからレジストレーションの対象である前記LAN側制御サーバとの通信を行うための前記ネットワーク情報を取得し、
前記閉域網側通信端末は、前記ネットワーク情報を用いて前記LAN側制御サーバへ接続することで、前記LAN側制御サーバにレジストレーションされ、前記LAN側制御サーバから、他の通信端末と通信を可能にするための情報であるプロビジョニングデータを取得し、
前記閉域網側通信端末は、前記ゲートウェイ装置のカプセル化およびデカプセル化を介して、前記LAN側制御サーバに通信制御され、
前記LAN側通信端末は、前記LAN側制御サーバに直接的に通信制御される、
請求項1から5のいずれか1項に記載の無線システム。
【請求項7】
公衆回線に設けられた閉域網に接続される通信端末である閉域網側通信端末と、
ローカルエリアネットワークに接続される通信端末であるLAN側通信端末と、
前記閉域網側通信端末と前記LAN側通信端末との音声通信を中継するゲートウェイ装置と、
前記閉域網における通信制御を行う閉域網側制御サーバと、
前記ローカルエリアネットワークにおける通信制御を行うLAN側制御サーバと、を備える無線システムが行う中継方法であって、
前記閉域網側通信端末が行う、
起動されると前記閉域網側制御サーバから前記LAN側制御サーバとの通信を行うためのネットワーク情報を取得する情報取得ステップと、
送信用データに基づいて前記ローカルエリアネットワークの通信規格に準拠したLANデータを生成し、前記LANデータに、前記閉域網での通信に要するヘッダを付加してカプセル化を行うことで前記閉域網の通信規格に準拠した閉域網データを生成するデータ生成ステップと、
前記閉域網データの送受信を行う端末側通信ステップと、
受信した前記閉域網データから、前記閉域網での通信に要するヘッダを除去してデカプセル化を行うことで前記LANデータを生成し、前記LANデータから受信データを抽出するデータ抽出ステップと、
前記閉域網側制御サーバが行う、前記閉域網における通信制御を行う閉域網側通信制御ステップと、
前記LAN側制御サーバが行う、前記ローカルエリアネットワークにおける通信制御を行うLAN側制御ステップと、
前記ゲートウェイ装置が行う、
前記ローカルエリアネットワークの通信規格に準拠したLANデータを前記ローカルエリアネットワークから受信し、受信した前記LANデータに、前記閉域網での通信に要するヘッダを付加してカプセル化を行うことで、前記閉域網の通信規格に準拠した閉域網データを生成し、生成した前記閉域網データを前記閉域網に送信する閉域網側送受信ステップと、
前記閉域網データを前記閉域網から受信し、受信した前記閉域網データから、前記閉域網での通信に要するヘッダを除去してデカプセル化を行うことで前記LANデータを生成し、生成した前記LANデータを前記ローカルエリアネットワークに送信するLAN側送受信ステップと、
を備える中継方法。
【請求項8】
公衆回線に設けられた閉域網に接続され、前記閉域網に接続される通信端末またはゲートウェイ装置を介して前記閉域網に接続されているローカルエリアネットワークに接続される通信端末と通信を行う通信端末であって、
前記閉域網に接続され、前記閉域網の通信規格に準拠した閉域網データの送受信を行う端末側通信部と、
送信用データに基づいて前記ローカルエリアネットワークの通信規格に準拠したLANデータを生成し、前記LANデータに、前記閉域網での通信に要するヘッダを付加してカプセル化を行うことで前記閉域網データを生成するデータ生成部と、
前記端末側通信部で受信した前記閉域網データから、前記閉域網での通信に要するヘッダを除去してデカプセル化を行うことで前記LANデータを生成し、前記LANデータから受信データを抽出するデータ抽出部と、
を備え、
前記端末側通信部は、前記データ生成部で生成された前記閉域網データを前記閉域網に送信
し、
起動されると、前記閉域網における通信制御を行う閉域網側制御サーバから、前記ローカルエリアネットワークにおける通信制御を行うLAN側制御サーバとの通信を行うためのネットワーク情報を取得する、
通信端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線システム、中継方法、および通信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
音声通信を行う通信端末、例えば、トランシーバ、電話機等は、LAN(Local Area Network:ローカルエリアネットワーク)、公衆回線等のネットワークを介して接続され、互いに音声通信を行う。異なるネットワークを介して通信端末が音声通信を行うために、異なるネットワークの間にゲートウェイ装置が設けられる。この種のゲートウェイ装置が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されるゲートウェイ装置は、複数のインターフェースを有することで、例えば、LANに接続された電話機と公衆回線に接続されたトランシーバとの音声通信を可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されるゲートウェイ装置において、LANに接続された電話機と公衆回線に接続されたトランシーバとの音声通信を中継する際には、セキュリティを確保するために、L2TP/IPsec(Layer 2 Tunneling Protocol/Internet Protocol Security)に代表される複雑で高度なトンネル通信機能が必要となる。
【0006】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で、異なるネットワークに接続されている通信端末の間の音声通信を中継することが可能な無線システム、中継方法、および通信端末を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る無線システムは、
公衆回線に設けられた閉域網に接続される通信端末とローカルエリアネットワークに接続される通信端末との音声通信を中継するゲートウェイ装置と、
前記閉域網に接続され、前記閉域網を介して前記ゲートウェイ装置に接続され、前記閉域網に接続される通信端末または前記ゲートウェイ装置を介して前記閉域網に接続されている前記ローカルエリアネットワークに接続される通信端末と通信を行う通信端末である閉域網側通信端末と、
前記閉域網における通信制御を行う閉域網側制御サーバと、
前記ローカルエリアネットワークに接続され、前記閉域網側通信端末と音声通信を行う通信端末であるLAN側通信端末と、
前記ローカルエリアネットワークにおける通信制御を行うLAN側制御サーバと、
を備え、
前記ゲートウェイ装置は、
前記閉域網に接続され、前記閉域網の通信規格に準拠した閉域網データの送受信を行う閉域網通信部と、
前記ローカルエリアネットワークに接続され、前記ローカルエリアネットワークの通信規格に準拠したLANデータの送受信を行うLAN通信部と、
前記LAN通信部で受信した前記LANデータに、前記閉域網での通信に要するヘッダを付加してカプセル化を行うことで前記閉域網データを生成し、前記閉域網通信部で受信した前記閉域網データから、前記閉域網での通信に要するヘッダを除去してデカプセル化を行うことで前記LANデータを生成する通信中継部と、
を有し、
前記閉域網通信部は、前記通信中継部が生成した前記閉域網データを前記閉域網に送信し、
前記LAN通信部は、前記通信中継部が生成した前記LANデータを前記ローカルエリアネットワークに送信し、
前記閉域網側通信端末は、
前記閉域網に接続され、前記閉域網の通信規格に準拠した閉域網データの送受信を行う端末側通信部と、
送信用データに基づいて前記ローカルエリアネットワークの通信規格に準拠したLANデータを生成し、前記LANデータに、前記閉域網での通信に要するヘッダを付加してカプセル化を行うことで前記閉域網データを生成するデータ生成部と、
前記端末側通信部で受信した前記閉域網データから、前記閉域網での通信に要するヘッダを除去してデカプセル化を行うことで前記LANデータを生成し、前記LANデータから受信データを抽出するデータ抽出部と、
を有し、
前記端末側通信部は、前記データ生成部で生成された前記閉域網データを前記閉域網に送信し、
前記閉域網側通信端末は、起動されると前記閉域網側制御サーバから前記LAN側制御サーバとの通信を行うためのネットワーク情報を取得する。
【0008】
好ましくは、前記通信中継部は、前記閉域網に接続される前記閉域網側通信端末から前記閉域網のエッジルータを介して送信された前記閉域網データについて前記デカプセル化を行い、
前記通信中継部は、前記閉域網の前記エッジルータに接続されている前記閉域網側通信端末に宛てられた前記LANデータについて前記カプセル化を行う。
【0009】
好ましくは、前記通信中継部は、宛先IP(Internet Protocol)アドレス、発信元IPアドレス、およびUDP(User Datagram Protocol)ヘッダを含む前記閉域網での通信に要するヘッダを付加して前記カプセル化を行う。
【0010】
好ましくは、前記閉域網通信部で受信した前記閉域網データをプロトコル変換することで前記LANデータを生成し、前記LAN通信部で受信した前記LANデータをプロトコル変換することで前記閉域網データを生成するデータ処理部をさらに備え、
前記データ処理部は、前記閉域網に接続される前記閉域網側通信端末である無線局から、前記閉域網に設けられ、無線局間通信を制御する制御サーバを介して送信された前記閉域網データについて、前記閉域網データをプロトコル変換することで前記LANデータを生成する。
【0011】
好ましくは、前記端末側通信部は、前記データ生成部で生成された前記閉域網データを、前記閉域網のエッジルータに送信する。
【0012】
好ましくは、前記閉域網側通信端末は、起動されると、前記閉域網側制御サーバからレジストレーションの対象である前記LAN側制御サーバとの通信を行うための前記ネットワーク情報を取得し、
前記閉域網側通信端末は、前記ネットワーク情報を用いて前記LAN側制御サーバへ接続することで、前記LAN側制御サーバにレジストレーションされ、前記LAN側制御サーバから、他の通信端末と通信を可能にするための情報であるプロビジョニングデータを取得し、
前記閉域網側通信端末は、前記ゲートウェイ装置のカプセル化およびデカプセル化を介して、前記LAN側制御サーバに通信制御され、
前記LAN側通信端末は、前記LAN側制御サーバに直接的に通信制御される。
【0013】
本発明の第2の観点に係る中継方法は、
公衆回線に設けられた閉域網に接続される通信端末である閉域網側通信端末と、
ローカルエリアネットワークに接続される通信端末であるLAN側通信端末と、
前記閉域網側通信端末と前記LAN側通信端末との音声通信を中継するゲートウェイ装置と、
前記閉域網における通信制御を行う閉域網側制御サーバと、
前記ローカルエリアネットワークにおける通信制御を行うLAN側制御サーバと、を備える無線システムが行う中継方法であって、
前記閉域網側通信端末が行う、
起動されると前記閉域網側制御サーバから前記LAN側制御サーバとの通信を行うためのネットワーク情報を取得する情報取得ステップと、
送信用データに基づいて前記ローカルエリアネットワークの通信規格に準拠したLANデータを生成し、前記LANデータに、前記閉域網での通信に要するヘッダを付加してカプセル化を行うことで前記閉域網の通信規格に準拠した閉域網データを生成するデータ生成ステップと、
前記閉域網データの送受信を行う端末側通信ステップと、
受信した前記閉域網データから、前記閉域網での通信に要するヘッダを除去してデカプセル化を行うことで前記LANデータを生成し、前記LANデータから受信データを抽出するデータ抽出ステップと、
前記閉域網側制御サーバが行う、前記閉域網における通信制御を行う閉域網側通信制御ステップと、
前記LAN側制御サーバが行う、前記ローカルエリアネットワークにおける通信制御を行うLAN側制御ステップと、
前記ゲートウェイ装置が行う、
前記ローカルエリアネットワークの通信規格に準拠したLANデータを前記ローカルエリアネットワークから受信し、受信した前記LANデータに、前記閉域網での通信に要するヘッダを付加してカプセル化を行うことで、前記閉域網の通信規格に準拠した閉域網データを生成し、生成した前記閉域網データを前記閉域網に送信する閉域網側送受信ステップと、
前記閉域網データを前記閉域網から受信し、受信した前記閉域網データから、前記閉域網での通信に要するヘッダを除去してデカプセル化を行うことで前記LANデータを生成し、生成した前記LANデータを前記ローカルエリアネットワークに送信するLAN側送受信ステップと、
を備える。
【0014】
本発明の第3の観点に係る通信端末は、
公衆回線に設けられた閉域網に接続され、前記閉域網に接続される通信端末またはゲートウェイ装置を介して前記閉域網に接続されているローカルエリアネットワークに接続される通信端末と通信を行う通信端末であって、
前記閉域網に接続され、前記閉域網の通信規格に準拠した閉域網データの送受信を行う端末側通信部と、
送信用データに基づいて前記ローカルエリアネットワークの通信規格に準拠したLANデータを生成し、前記LANデータに、前記閉域網での通信に要するヘッダを付加してカプセル化を行うことで前記閉域網データを生成するデータ生成部と、
前記端末側通信部で受信した前記閉域網データから、前記閉域網での通信に要するヘッダを除去してデカプセル化を行うことで前記LANデータを生成し、前記LANデータから受信データを抽出するデータ抽出部と、
を備え、
前記端末側通信部は、前記データ生成部で生成された前記閉域網データを前記閉域網に送信し、
起動されると、前記閉域網における通信制御を行う閉域網側制御サーバから、前記ローカルエリアネットワークにおける通信制御を行うLAN側制御サーバとの通信を行うためのネットワーク情報を取得する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、閉域網データをデカプセル化することでLANデータを生成し、LANデータをカプセル化することで閉域網データを生成するため、簡易な構成で、異なるネットワークに接続されている通信端末の間の音声通信を中継することが可能な無線システム、中継方法、および通信端末を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施の形態に係る無線システムの構成を示すブロック図
【
図2】実施の形態に係る通信端末の構成を示すブロック図
【
図3】実施の形態におけるLANデータの例を示す図
【
図4】実施の形態における閉域網データの例を示す図
【
図5】実施の形態に係る通信端末の構成を示すブロック図
【
図6】実施の形態に係るゲートウェイ装置の構成を示すブロック図
【
図7】実施の形態におけるアドレステーブルの例を示す図
【
図8】実施の形態に係る無線システムが行う通信開始時の処理の一例を示すタイミングチャート
【
図9】実施の形態に係る無線システムが行う通信開始時の処理の他の一例を示すタイミングチャート
【
図10】実施の形態に係る無線システムの第1変形例の構成を示すブロック図
【
図11】実施の形態に係る無線システムの第2変形例の構成を示すブロック図
【
図12】実施の形態に係る通信端末の構成を示すブロック図
【
図13】本発明の実施の形態に係るゲートウェイ装置および通信端末のハードウェア構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係るゲートウェイ装置、通信端末、無線システム、および中継方法について図面を参照して詳細に説明する。なお図中、同一または同等の部分には同一の符号を付す。
【0018】
図1に示す無線システム1は、公衆回線の一例であるLTE(Long Term Evolution)網に設けられた閉域網に接続される通信端末とLAN(Local Area Network)に接続される通信端末との音声通信を可能にする。
【0019】
詳細には、無線システム1は、通信端末TM1a,TM1b,TM2a,TM2bと、閉域網10とLAN20とに接続されるゲートウェイ装置30と、閉域網10における通信制御を行う閉域網側制御サーバ13と、LAN20に接続され、LAN20における通信制御を行うLAN側制御サーバ40と、を備える。通信端末TM1a,TM1bは、閉域網10を介してゲートウェイ装置30に接続される閉域網側通信端末である。通信端末TM2a,TM2bは、LAN20に接続され、閉域網側通信端末である通信端末TM1a,TM1bと通信を行うLAN側通信端末である。
【0020】
通信端末TM1a,TM1b,TM2a,TM2bはそれぞれ、閉域網10およびLAN20に接続可能な通信機器、例えばIP(Internet Protocol)フォン、IPトランシーバ等である。例えば、通信端末TM1a,TM1b,TM2a,TM2bは、ユーザの操作に応じて、閉域網10またはLAN20に接続する。
図1の例では、通信端末TM1a,TM1bは、図示しない基地局を介して、閉域網10に接続されている。通信端末TM2a,TM2bは、図示しないアクセスポイントを介してLAN20に接続されている。無線システム1では、拠点内のネットワークであるLAN20に接続されている通信端末TM2a,TM2b間での内線通話だけでなく、拠点の外に位置する通信端末TM1a,TM1bと拠点内に位置する通信端末TM2a,TM2bとの間の内線通話が可能となる。
【0021】
閉域網10には、通信機器に接続されるエッジルータ11と、エッジルータ11間の通信を中継するコアルータ12と、閉域網10における通信端末TM1a,TM1bの通信を制御する閉域網側制御サーバ13が設けられている。
図1の例では、エッジルータ11に、通信端末TM1a,TM1bが接続され、RoIP(Radio Over Internet Protocol)通信が可能となる。閉域網10は、通信事業者が提供している仮想的に閉じられたネットワークである。閉域網10には、予め認証されたSIM(Subscriber Identity Module)カードが取り付けられた通信機器のみが接続することができる。通信端末TM1a,TM1b,TM2a,TM2bにはそれぞれ、予め認証されたSIMカードが取り付けられているものとする。閉域網10に接続される通信端末TM1a,TM1bには、LTE網のIPアドレスが割り当てられている。
【0022】
LAN20は、例えば、Ethernet(登録商標)で構成される。通信端末TM2a,TM2bは、無線LANトランシーバ接続によって、LAN20に接続される。LAN側制御サーバ40は、LAN20に接続される。
【0023】
ゲートウェイ装置30は、閉域網10およびLAN20のそれぞれに接続される。そして、ゲートウェイ装置30は、閉域網10に接続される通信端末TM1a,TM1bとLAN20に接続される通信端末TM2a,TM2bとの音声通信を中継する。
【0024】
LAN側制御サーバ40には、通信端末TM1a,TM1b,TM2a,TM2bがレジストレーションされる。これにより、通信端末TM1a,TM1b,TM2a,TM2bは、仮想的に同じL2(Layer 2)レベルのネットワーク上に存在することになる。この結果、通信端末TM1a,TM1b,TM2a,TM2bは、自装置に割り当てられたID,アドレス帳等を含むプロビジョニングデータをLAN側制御サーバ40からダウンロードすることが可能となる。通信端末TM1a,TM1b,TM2a,TM2bがプロビジョニングデータを取得し、設定を更新することで、通信端末TM1a,TM1b,TM2a,TM2bは互いに拠点内無線通信を行うことが可能となる。
【0025】
通信端末TM1a,TM1bの構成は互いに同じであるため、通信端末TM1aの構成について説明する。
図2に示すように、通信端末TM1aは、マイクから取得した音声に対して信号処理を行って送信用データを生成し、受信データに対して信号処理を行って音声を生成し、生成した音声をスピーカーから出力するアプリケーション部51を備える。通信端末TM1aはさらに、アプリケーション部51から取得した送信用データに基づいて閉域網データを生成するデータ生成部52と、閉域網10に対して閉域網データの送受信を行う端末側通信部53と、を備える。通信端末TM1aはさらに、端末側通信部53で受信した閉域網データから受信データを生成するデータ抽出部54を備える。
【0026】
アプリケーション部51は、マイクから音声を取得し、A-D(Analog-to-Digital)変換、ノイズフィルタリング、増幅等の信号処理を行って、送信用データを生成し、生成した送信用データをデータ生成部52に送る。
【0027】
データ生成部52は、送信用データに基づいてLAN20の通信規格に準拠したLANデータを生成する。例えば、データ生成部52は、
図3に示すように、送信用データを含むデータ領域に、宛先MAC(Media Access Control)アドレスおよび発信元MACアドレスを含むLANヘッダを付与して、LANデータを生成する。データ生成部52は、音声通信を行う際は、アプリケーション部51から取得した送信用データを用いてLANデータを生成する。一方、後述のARP(Address Resolution Protocol)リクエストまたはARPレスポンスを送信する場合には、データ生成部52は、アプリケーション部51から送信用データを取得せずに、ARPリクエストまたはARPレスポンスをデータ領域に含むLANデータを生成する。データ生成部52は、ARPリクエストによって得たMACアドレスが記憶されているMACアドレステーブルを保持している。
【0028】
データ生成部52は、LANデータをカプセル化することで、閉域網10の通信規格に準拠した閉域網データを生成する。例えば、データ生成部52は、
図4に示すように、LANデータに、宛先IPアドレス、発信元IPアドレス、およびUDP(User Datagram Protocol)ヘッダを含むLTEヘッダを付加してカプセル化を行うことで、閉域網データを生成する。この場合、LANデータ全体がLTEペイロードに含まれる。そして、データ生成部52は、生成した閉域網データを端末側通信部53に送信する。
【0029】
通信端末TM1aには、接続先情報を含む、通信端末TM1b,TM2a,TM2bとの音声通信を可能にするための情報であるプロビジョニングデータが、LAN側制御サーバ40からダウンロードされ、反映されている。換言すれば、通信端末TM1aは、レジストレーションの対象となるLAN側制御サーバ40にLAN20を介して接続されているゲートウェイ装置30のIPアドレスについての情報を保持している。
【0030】
UDPヘッダは、発信元ポート番号および宛先ポート番号を含む。閉域網10およびLAN20のそれぞれに接続される通信端末TM1a,TM1b,TM2a,TM2bには、各通信端末を一意に特定するポート番号が割り当てられている。通信端末TM1aが備えるデータ生成部52は、通信端末TM1aに割り当てられているポート番号を含むUDPヘッダを用いて、カプセル化を行う。
【0031】
端末側通信部53は、閉域網10に接続され、閉域網データの送受信を行う。詳細には、端末側通信部53は、データ生成部52から取得した閉域網データを閉域網10のエッジルータ11に送信し、エッジルータ11から受信した閉域網データをデータ抽出部54に送信する。端末側通信部53には、LTE網のIPアドレスが割り当てられている。
【0032】
データ抽出部54は、閉域網データをデカプセル化してLANデータを生成する。詳細には、閉域網データからLTEヘッダを除去するデカプセル化を行うことで、LANデータを生成する。そして、データ抽出部54はLANデータのデータ領域を取り出し、受信データを生成する。データ抽出部54は、受信データをアプリケーション部51に送信する。
【0033】
上述の構成を有する通信端末TM1a,TM1bと通信を行う通信端末TM2a,TM2bについて説明する。通信端末TM2a,TM2bは、LAN20に接続可能な無線LANトランシーバである。通信端末TM2a,TM2bの構成は互いに同じであるため、通信端末TM2aの構成について説明する。
図5に示すように、通信端末TM2aは、
図2に示す通信端末TM1aが備えるアプリケーション部51を備える。通信端末TM2aはさらに、アプリケーション部51から取得した送信用データに基づいてLANデータを生成するデータ生成部55と、LAN20に対してLANデータの送受信を行う端末側通信部56と、端末側通信部56で受信したLANデータから受信データを生成するデータ抽出部57を備える。
【0034】
データ生成部55は、データ生成部52と同様に、送信用データに基づいてLAN20の通信規格に準拠したLANデータを生成する。ARPリクエストまたはARPレスポンスを送信する場合には、データ生成部55は、データ生成部52と同様に、アプリケーション部51から送信用データを取得せずに、ARPリクエストまたはARPレスポンスをデータ領域に含むLANデータを生成する。データ生成部55は、ARPリクエストによって得たMACアドレスが記憶されているMACアドレステーブルを保持している。
【0035】
通信端末TM2aには、接続先情報を含む、通信端末TM1a,TM1b,TM2bとの音声通信を可能にするための情報であるプロビジョニングデータが、LAN側制御サーバ40からダウンロードされ、反映されている。
【0036】
端末側通信部56は、LAN20に接続され、LANデータの送受信を行う。詳細には、端末側通信部56は、データ生成部55から取得したLANデータをLAN20に送信し、LAN20から受信したLANデータをデータ抽出部57に送信する。端末側通信部56には、LAN20におけるIPアドレスが割り当てられている。
【0037】
データ抽出部57は、端末側通信部56から取得したLANデータからデータ領域を取り出し、受信データを生成する。データ抽出部57は、受信データをアプリケーション部51に送信する。
【0038】
閉域網10に接続されている通信端末TM1aと、LAN20に接続されている通信端末TM2aとは、ゲートウェイ装置30を介して通信する。
図6に示すように、ゲートウェイ装置30は、閉域網10に接続される閉域網通信部31と、閉域網10とLAN20との間の音声通信を可能にするためのデータのカプセル化またはデカプセル化を行う通信中継部32と、LAN20に接続されるLAN通信部33と、を備える。
【0039】
閉域網通信部31は、閉域網10に接続され、閉域網データの送受信を行う。閉域網通信部31には、LTE網のIPアドレスが割り当てられている。そして、閉域網通信部31は、受信した閉域網データを通信中継部32に送信する。
【0040】
LAN通信部33は、LAN20に接続され、LANデータの送受信を行う。LAN通信部33には、LAN20のIPアドレスが割り当てられている。LAN通信部33は、LAN20を介して受信したLANデータが含む宛先MACアドレスが自装置、すなわち、ゲートウェイ装置30でない場合には、受信したLANデータを通信中継部32に送信する。
【0041】
通信中継部32は、閉域網通信部31から取得した閉域網データからLTEヘッダを除去するデカプセル化を行うことで、LANデータを生成する。そして、通信中継部32は、生成したLANデータをLAN通信部33に送信する。通信中継部32は、LAN通信部33から取得したLANデータにLTEヘッダを付加するカプセル化を行うことで、閉域網データを生成する。そして、通信中継部32は、生成した閉域網データを閉域網通信部31に送信する。ゲートウェイ装置30が備える図示しない記憶装置には、
図7に示すアドレステーブルが記憶されている。通信中継部32は、アドレステーブルを参照し、LANデータの宛先MACアドレスに対応するIPアドレスをLTEヘッダに設定する。
【0042】
LAN側制御サーバ40は、通信端末TM1a,TM1b,TM2a,TM2bのレジストレーションを受け付ける。LAN側制御サーバ40は、レジストレーションされた通信端末TM1a,TM1b,TM2a,TM2bに対しプロビジョニングデータを送信する。レジストレーションを受け付けた後、LAN側制御サーバ40は、通信端末TM1a,TM1b,TM2a,TM2bから、通信端末TM1a,TM1b,TM2a,TM2bのIDまたはグループIDを含む宛先情報がデータ領域に含まれたLANデータを受信すると、LANデータをIDまたはグループIDが示す通信端末TM1a,TM1b,TM2a,TM2bに送信する。
【0043】
無線システム1は、以下のようにして、通信端末TM1a,TM1bのそれぞれとゲートウェイ装置30との間に、LTE網でパケットを送受信するための仮想的なパスであるLTEトンネルを確立する。LTEトンネルの確立とは、具体的に、ゲートウェイ装置30が通信端末TM1a,TM1bのそれぞれに割り当てられたIPアドレスを認識し、通信端末TM1a,TM1bと通信可能となることを意味する。
【0044】
通信端末TM1a,TM1bは起動されると、閉域網側制御サーバ13から、レジストレーションの対象であるLAN側制御サーバ40との通信を行うためのネットワーク情報を取得する。ネットワーク情報は、例えば、LAN側制御サーバ40にLAN20を介して接続されているゲートウェイ装置30のLTE網のIPアドレス、通信ポート情報、LAN側制御サーバ40のIPアドレス等を含む。通信ポート情報は、例えば、キープアライブパケットを送信するためのポート、LANデータをカプセル化して生成された閉域網データを送信するためのポート、通信制御のためのポート等を示す。通信端末TM1a,TM1bは、閉域網10を介してゲートウェイ装置30に定められた間隔でキープアライブパケットを送る。これにより、ゲートウェイ装置30は、通信端末TM1a,TM1bに割り当てられたLTE網のIPアドレスを認識する。
【0045】
そして、ゲートウェイ装置30は、
図7に示すアドレステーブルに、通信端末TM1aと確立したLTEトンネルであるトンネルTN1を示すポート番号および通信端末TM1aのIPアドレスを対応付けて記憶する。ゲートウェイ装置30は、
図7に示すアドレステーブルに、通信端末TM1bと確立したLTEトンネルであるトンネルTN2を示すポート番号および通信端末TM1bのIPアドレスを対応付けて記憶する。
【0046】
またゲートウェイ装置30は、ARPリクエストおよびARPレスポンスの送受信が完了した後に、通信端末TM2a,TM2bから通信端末TM1a,TM1bへのLANデータを受信すると、通信端末TM2a,TM2bのMACアドレスを認識することができる。そして、ゲートウェイ装置30は、
図7に示すアドレステーブルに、LAN20を示すポート番号および通信端末TM2aのMACアドレスを対応付けて記憶する。ゲートウェイ装置30は、
図7に示すアドレステーブルに、LAN20を示すポート番号および通信端末TM2bのMACアドレスを対応付けて記憶する。
【0047】
上述のようにLTEトンネルが確立された後、
図8に示すように、無線システム1において、ARPリクエストおよびARPレスポンスの送信が行われる。通信端末TM1aは、LAN20に接続される通信端末TM2a,TM2bとの音声通信を行うためにLAN側制御サーバ40のMACアドレスを要求するARPリクエストを送信する。詳細には、通信端末TM1aが備えるデータ生成部52は、ARPリクエストパケットを生成する(シーケンスSq1)。ARPリクエストパケットは、
図3に示すLANデータのデータ領域にARPリクエストが含まれるパケットである。シーケンスSq1で生成されたLANデータの宛先MACアドレスには、ブロードキャストアドレスが設定されている。
【0048】
そして、通信端末TM1aが備えるデータ生成部52は、ARPリクエストパケットをカプセル化して、閉域網データを生成し、端末側通信部53に送信する。
図8に示すように、端末側通信部53は、取得した閉域網データを閉域網10に送信する(シーケンスSq2)。閉域網データに含まれるLTEヘッダの宛先IPアドレスには、ゲートウェイ装置30のIPアドレスが設定され、LTEヘッダの発信元IPアドレスには、通信端末TM1aに割り当てられたLTE網のIPアドレスが設定されている。
【0049】
ゲートウェイ装置30が備える閉域網通信部31は、閉域網10を介して、通信端末TM1aから閉域網データを受信し、受信した閉域網データを通信中継部32に送信する。通信中継部32は、取得した閉域網データをデカプセル化し、LANデータを生成する(シーケンスSq3)。そして、通信中継部32は、生成したLANデータをLAN通信部33に送る。シーケンスSq3で生成されたLANデータは、ARPリクエストパケットである。
【0050】
LAN通信部33は、LANデータをブロードキャストで送信する。詳細には、LAN通信部33は、LANデータをLAN側制御サーバ40および通信端末TM2a,TM2bのそれぞれに送信する(シーケンスSq4)。
【0051】
通信中継部32は、シーケンスSq3で生成したLANデータがARPリクエストパケットであるため、ARPリクエストパケットをカプセル化して、通信端末TM1a以外の閉域網10に接続されている通信端末、すなわち、通信端末TM1bに送信するための閉域網データを生成する(シーケンスSq5)。そして、通信中継部32は、シーケンスSq5で生成した閉域網データを閉域網通信部31に送る。閉域網通信部31は、シーケンスSq5で生成された閉域網データを通信端末TM1bに送信する(シーケンスSq6)。
【0052】
通信中継部32は、シーケンスSq3で生成したLANデータから通信端末TM1aのMACアドレスと通信端末TM1aに割り当てられたポート番号を抽出する。そして、通信中継部32は、
図7に示すアドレステーブルに、通信端末TM1aとのLTEトンネルであるトンネルTN1を示すポート番号および通信端末TM1aのMACアドレスを対応付けて記憶する(シーケンスSq7)。詳細には、LTEヘッダが含むUDPヘッダの発信元ポート番号およびLANヘッダに含まれる発信元MACアドレスを対応付けて記憶する。
【0053】
ARPリクエストパケットであるLANデータを受信したLAN側制御サーバ40は、ARPレスポンスパケットを生成する(シーケンスSq8)。ARPレスポンスパケットは、
図3に示すLANデータのデータ領域にARPレスポンスが含まれるパケットである。宛先MACアドレスには、ARPリクエストパケットの発信元である通信端末TM1aのMACアドレスが設定されている。LAN側制御サーバ40は、シーケンスSq8で生成したARPレスポンスパケットをゲートウェイ装置30に送信する(シーケンスSq9)。
【0054】
ゲートウェイ装置30が備えるLAN通信部33は、LAN側制御サーバ40からARPレスポンスパケットを受信する。そして、LAN通信部33は、
図7に示すアドレステーブルを参照し、ARPレスポンスパケットに設定されている宛先MACアドレスは、トンネルTN1のレコードに記憶されているため、ARPレスポンスパケットを通信中継部32に送信する。通信中継部32は、ARPレスポンスパケットをカプセル化して、通信端末TM1aに送信するための閉域網データを生成する(シーケンスSq10)。通信中継部32は、アドレステーブルを参照し、閉域網データのLTEヘッダに含まれる宛先IPアドレスに、通信端末TM1aに割り当てられたLTE網のIPアドレスを設定する。そして、通信中継部32は、シーケンスSq10で生成した閉域網データを閉域網通信部31に送る。閉域網通信部31は、シーケンスSq10で生成された閉域網データを閉域網10に送信する(シーケンスSq11)。
【0055】
通信端末TM1aが備える端末側通信部53は、閉域網データを受信し、受信した閉域網データをデータ抽出部54に送信する。データ抽出部54は、閉域網データをデカプセル化し、ARPレスポンスパケットを抽出する(シーケンスSq12)。データ抽出部54は、抽出したARPレスポンスパケットからLANヘッダを除去し、ARPレスポンスを抽出する。
【0056】
上述の動作により、通信端末TM1aがLAN側制御サーバ40にレジストレーションされる。この結果、LAN側制御サーバ40からは、通信端末TM1aは、通信端末TM2a,TM2bと同様に、LAN20に接続されているように見える。
【0057】
上述の例では、通信端末TM1aからARPリクエストパケットを送信したが、
図9に示すように、LAN側制御サーバ40が通信端末TM1aのMACアドレスを要求するARPリクエストパケットを送信してもよい。
詳細には、LAN側制御サーバ40は、ARPリクエストパケットを生成する(シーケンスSq21)。そして、LAN側制御サーバ40は、宛先MACアドレスにブロードキャストアドレスが設定されたARPリクエストパケットをLAN20に送信する。詳細には、LAN側制御サーバ40は、ARPリクエストパケットを、通信端末TM2a,TM2bおよびゲートウェイ装置30のそれぞれに送信する(シーケンスSq22)。
【0058】
ゲートウェイ装置30が備えるLAN通信部33は、ARPリクエストパケットを受信すると、ARPリクエストの宛先MACアドレスがブロードキャストアドレスであるため、APRリクエストパケットを通信中継部32に送る。通信中継部32は、確立済みのLTEトンネルの相手先、すなわち、通信端末TM1a,TM1bにARPリクエストパケットを送信するための処理を行う。詳細には、通信中継部32は、ARPリクエストパケットをカプセル化し、通信端末TM1aに送信するための閉域網データを生成する(シーケンスSq23)。通信中継部32は、ARPリクエストパケットをカプセル化し、通信端末TM1bに送信するための閉域網データを生成する(シーケンスSq24)。そして、通信中継部32は、生成した閉域網データを閉域網通信部31に送信する。
【0059】
閉域網通信部31は、シーケンスSq23で生成された通信端末TM1a宛ての閉域網データを閉域網10に送信する(シーケンスSq25)。閉域網通信部31は、シーケンスSq24で生成された通信端末TM1b宛ての閉域網データを閉域網10に送信する(シーケンスSq26)。
【0060】
通信端末TM1aが備える端末側通信部53は、閉域網データを受信し、受信した閉域網データをデータ抽出部54に送信する。データ抽出部54は、閉域網データをデカプセル化し、ARPリクエストパケットを抽出する(シーケンスSq27)。データ抽出部54は、抽出したARPリクエストパケットをデータ生成部52に送信する。
【0061】
データ生成部52は、自装置宛てのARPリクエストパケットを取得すると、ARPレスポンスパケットを生成し、ARPレスポンスパケットをカプセル化して、閉域網データを生成し、端末側通信部53に送信する。端末側通信部53は、ARPレスポンスパケットをカプセル化して生成された閉域網データを閉域網10に送信する(シーケンスSq28)。
【0062】
ゲートウェイ装置30が備える閉域網通信部31は、閉域網データを受信し、受信した閉域網データを通信中継部32に送信する。通信中継部32は、取得した閉域網データをデカプセル化し、LANデータを生成する(シーケンスSq29)。シーケンスSq29で生成されたLANデータは、ARPレスポンスパケットである。LANデータがARPレスポンスパケットであって、ARPレスポンスパケットの宛先MACアドレスにはLAN側制御サーバ40のMACアドレスが設定されているため、通信中継部32は、生成したLANデータをLAN通信部33に送る。
【0063】
LAN通信部33は、LANデータをLAN側制御サーバ40に送信する(シーケンスSq30)。通信中継部32は、シーケンスSq29で生成したLANデータから通信端末TM1aのMACアドレスと通信端末TM1aに割り当てられたポート番号を抽出する。そして、通信中継部32は、
図7に示すアドレステーブルに、通信端末TM1aとのLTEトンネルであるトンネルTN1を示すポート番号および通信端末TM1aのMACアドレスを対応付けて記憶する(シーケンスSq31)。詳細には、LTEヘッダが含むUDPヘッダの発信元ポート番号およびLANヘッダに含まれる発信元MACアドレスを対応付けて記憶する。
【0064】
上述したようにアドレスが解決すると、通信端末TM1aおよびLAN側制御サーバ40は、所望の相手先のMACアドレスを含むLANデータを生成し、通信を行うことができる。
【0065】
以上説明した通り、実施の形態に係る無線システム1によれば、ゲートウェイ装置30が閉域網データのデカプセル化またはLANデータのカプセル化を行うことで、閉域網10に接続されている通信端末TM1a,TM1bとLAN20に接続されている通信端末TM2a,TM2bとの音声通信が可能となる。ゲートウェイ装置30は、プロトコル変換を行う必要がないため、ゲートウェイ装置30の構成は簡易である。
【0066】
ゲートウェイ装置30は、上述したように、プロトコル変換を行う必要がないため、ゲートウェイ装置30における処理は簡易である。このため、ゲートウェイ装置30が接続されている閉域網10およびLAN20のそれぞれに接続される通信端末の台数には、ゲートウェイ装置30の処理能力に起因する制限が生じない。
【0067】
本発明は、上述の実施の形態に限られない。
一例として、通信端末TM1a,TM1b,TM2a,TM2bは、SIP(Session Initiation Protocol)を用いて音声通信を行ってもよい。この場合、
図10に示すように、無線システム2は、LAN20に接続されるSIPサーバ41を備えればよい。ゲートウェイ装置30の動作は、上述の実施の形態と同様である。通信端末TM1a,TM1bは、ゲートウェイ装置30を介してSIPサーバ41のMACアドレスを要求するARPリクエストを送信し、ARPレスポンスを受け取ることで、SIPサーバ41にレジストレーションされる。
【0068】
SIPサーバ41からARPリクエストをブロードキャストしてもよい。通信端末TM1a,TM1b,TM2a,TM2bがSIPサーバ41にレジストレーションされると、通信端末TM1a,TM1b,TM2a,TM2bは、仮想的に同じL2レベルのネットワーク上に存在するため、例えば通信端末TM2a,TM2bがIP電話機である場合、通信端末TM2aは、同じLAN20に接続されている通信端末TM2bだけでなく、閉域網10に接続されている通信端末TM1a,TM1bとも内線通話をすることが可能である。
【0069】
通信端末TM1a,TM1b,TM2a,TM2bは、SIPサーバ41を介して、外線通話が可能な電話機に接続し、外線通話をすることも可能である。
【0070】
他の一例として、通信端末TM1a,TM1b,TM2a,TM2bは、IPトランシーバ、具体的にはLTEトランシーバとしての機能をさらに有してもよい。この場合、
図11に示すように、無線システム3が備える通信端末TM1a,TM1bは、閉域網側制御サーバ13にレジストレーションを行う。そして、閉域網側制御サーバ13は、LTEトランシーバとして動作する通信端末TM1a,TM1bの間の通信である無線局間通信を制御する。閉域網側制御サーバ13は、LTEトランシーバとして動作する通信端末TM1a,TM1bと、LAN20に接続されている通信端末TM2a,TM2bとの間の通信を制御する。
【0071】
この場合、
図12に示すように、通信端末TM1aは、実施の形態に係る通信端末TM1aの構成に加えて、LTEトランシーバとして動作する場合に、送信用データに基づいて、閉域網データであるRTP(Real-time Transport Protocol)パケットの生成およびRTPパケットから受信データを抽出するデータ処理部58を備える。
【0072】
詳細には、データ処理部58は、アプリケーション部51から取得した送信用データに基づいて、閉域網側制御サーバ13と通信を行うためのRTPパケットを生成する。そして、データ処理部58は、生成したRTPパケットを端末側通信部53に送信する。端末側通信部53は、データ処理部58から取得したRTPパケットを閉域網側制御サーバ13に送信する。
【0073】
端末側通信部53は、閉域網側制御サーバ13からRTPパケットを取得すると、取得したRTPパケットをデータ処理部58に送信する。データ処理部58は、端末側通信部53から取得したRTPパケットから受信データを抽出する。そして、データ処理部58は、抽出した受信データをアプリケーション部51に送信する。
【0074】
図11に示す閉域網側制御サーバ13は、LTEトランシーバとして動作する通信端末TM1a,TM1bの間の通信を制御する。通信端末TM1a,TM1bから取得したRTPパケットの宛先が、LAN20に接続されている通信端末TM2a,TM2bである場合、RTPパケットをゲートウェイ装置30に送信する。
【0075】
ゲートウェイ装置30が備える閉域網通信部31は、例えば、サーバ/クライアント方式で閉域網側制御サーバ13と通信する。ゲートウェイ装置30は、閉域網側制御サーバ13からRTPパケットを取得すると、通信中継部32に送信する。通信中継部32は、RTPパケットに対してプロトコル変換を行って、LANデータを生成する。詳細には、通信中継部32は、RTPパケットからLTEペイロードを取り出し、LTEペイロードをデータ領域に含む、通信端末TM2a,TM2b宛ての
図3に示す構成のLANデータを生成する。そして、通信中継部32は、生成したLANデータをLAN通信部33に送信する。
【0076】
ゲートウェイ装置30が閉域網側制御サーバ13との通信に用いるポートは、ゲートウェイ装置30がエッジルータ11との通信に用いるポートとは異なる。このため、ポートによって、ゲートウェイ装置30は、プロトコル変換の処理あるいはカプセル化またはデカプセル化の処理を行えばよい。
【0077】
LAN通信部33は、通信中継部32で生成されたLANデータをLAN側制御サーバ40に送信する。LAN側制御サーバ40は、ゲートウェイ装置30から取得したLANデータを、LANデータの宛先である通信端末TM2a,TM2bに送信する。
【0078】
ゲートウェイ装置30が備えるLAN通信部33は、閉域網10に接続されている通信端末TM1a,TM1b宛てのLANデータを取得すると、通信中継部32に送信する。通信中継部32は、LANデータに対してプロトコル変換を行って、閉域網データを生成する。詳細には、通信中継部32は、LANデータのデータ領域からデータを取り出し、通信端末TM1a,TM1b宛ての閉域網データを生成する。そして、通信中継部32は、閉域網データを閉域網通信部31に送信する。閉域網通信部31は、閉域網データを閉域網側制御サーバ13に送信する。閉域網側制御サーバ13は、閉域網データを宛先である通信端末TM1a,TM1bに送信する。
【0079】
通信端末TM1a,TM1b,TM2a,TM2bの構成は、上述の例に限られない。一例として、通信端末TM2a,TM2bは、LAN20に接続可能な無線LANトランシーバに限られず、LAN20に接続可能な任意の通信機器であればよい。一例として、通信端末TM2a,TM2bは、IP電話機でもよい。
【0080】
上述の実施の形態では、通信端末TM1a,TM1bと通信端末TM2a,TM2bとを異なる構成としたが、通信端末TM1a,TM1b,TM2a,TM2bは互いに同じ構成でもよい。この場合、通信端末TM1a,TM1b,TM2a,TM2bはいずれも、LTE接続が可能な
図2に示す通信端末TM1aの機能およびLAN接続が可能な
図5に示す通信端末TM2aの機能を有する通信機器である。詳細には、通信端末TM1a,TM1b,TM2a,TM2bは、閉域網10に接続されている場合は
図2に示す通信端末TM1aと同様の動作を行い、LAN20に接続されている場合は、
図5に示す通信端末TM2aと同様の動作を行えばよい。
【0081】
通信端末TM1a,TM1b,TM2a,TM2bは、RoIP接続およびSIP接続のそれぞれを利用可能な構成を有してもよい。この場合、無線システム1は、
図1の構成に加えて、
図10に示す無線システム2が備えるSIPサーバ41を備えればよい。通信端末TM1a,TM1b,TM2a,TM2bは、ユーザの操作に応じて、例えば、ユーザが利用するアプリケーションに応じて、RoIP接続またはSIP接続によって、閉域網10またはLAN20に接続すればよい。
【0082】
通信端末TM1a,TM1b,TM2a,TM2bは、LAN20が利用可能なエリアに位置している場合には、自動的にLAN20に接続し、LAN20が利用不可能なエリアに位置している場合には、自動的に閉域網10に接続してもよい。
【0083】
閉域網10は、任意の公衆回線に設けられる。一例として、閉域網10は、第4世代移動通信網または第3世代移動通信網に設けられてもよい。
【0084】
上述のゲートウェイ装置30および通信端末TM1a,TM1b,TM2a,TM2bはそれぞれ、
図13に示すように、各部を制御するハードウェア構成として、プロセッサ61と、メモリ62と、インターフェース63と、を備える。プロセッサ61、メモリ62およびインターフェース63は互いにバス60で接続されている。
【0085】
例えば、ゲートウェイ装置30および通信端末TM1a,TM1b,TM2a,TM2bにおける各機能は、プロセッサ61がメモリ62に記憶されたプログラムを実行することにより実現される。
【0086】
例えば、インターフェース63はゲートウェイ装置30と閉域網10およびLAN20とを接続し、通信を確立させるためのものである。詳細には、無線システム1が備えるゲートウェイ装置30は、インターフェース63を介して、閉域網10のエッジルータ11およびLAN20に接続される。例えば、通信端末TM1aは、インターフェース63を介して、閉域網10のエッジルータ11に接続される。インターフェース63は、必要に応じて複数の種類のインターフェースモジュールを有する。
【0087】
図13では、ゲートウェイ装置30および通信端末TM1a,TM1b,TM2a,TM2bはそれぞれ、プロセッサ61およびメモリ62を1つずつ有するが、ゲートウェイ装置30および通信端末TM1a,TM1b,TM2a,TM2bはそれぞれ、複数のプロセッサ61および複数のメモリ62を有してもよい。この場合、複数のプロセッサ61および複数のメモリ62が連携することで、ゲートウェイ装置30および通信端末TM1a,TM1b,TM2a,TM2bのそれぞれにおける各機能が実行されればよい。
【0088】
その他、上述のハードウェア構成やフローチャートは一例であり、任意に変更および修正が可能である。
【符号の説明】
【0089】
1,2,3 無線システム
10 閉域網
11 エッジルータ
12 コアルータ
13 閉域網側制御サーバ
20 LAN
30 ゲートウェイ装置
31 閉域網通信部
32 通信中継部
33 LAN通信部
40 LAN側制御サーバ
41 SIPサーバ
51 アプリケーション部
52,55 データ生成部
53,56 端末側通信部
54,57 データ抽出部
58 データ処理部
60 バス
61 プロセッサ
62 メモリ
63 インターフェース
TM1a,TM1b,TM2a,TM2b 通信端末