(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】ボビンの供給装置
(51)【国際特許分類】
B65H 67/06 20060101AFI20240815BHJP
B21F 23/00 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
B65H67/06 C
B21F23/00 Z
(21)【出願番号】P 2020190663
(22)【出願日】2020-11-17
【審査請求日】2023-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 彰
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 崇之
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-10077(JP,A)
【文献】実開昭60-86570(JP,U)
【文献】特開昭51-111567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 67/06
B21F 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯部とこの芯部の両端にフランジ部を有するボビンを、線材が巻き付けられていない空の状態で、線材の巻き付け装置に供給するボビンの供給装置において、
第一供給路と、第一供給路の延在方向後端に続いて配置された第二供給路と、第二供給路の延在方向後端に続いて配置された第三供給路と、前記第二供給路の延在方向先端側から延在方向後端側に向かって移動する押部を有する移動機構とを備えて、
前記第一供給路、前記第二供給路および前記第三供給路は、それぞれの延在方向に延在して互いに対向して配置された一方側部と他方側部とを有し、
前記第一供給路および前記第三供給路では、対向する前記一方側部と前記他方側部の少なくとも一方が対向する相手に対して近接および離反移動可能に設置されていて、
前記第一供給路および前記第三供給路はそれぞれ、延在方向先端から延在方向後端に向かって下方に傾斜することで、前記第一供給路および前記第三供給路に載置された前記ボビンがそれぞれの延在方向後端に向かって転動するように構成され、
前記第二供給路では前記一方側部と前記他方側部とがすき間をあけて対向して、前記すき間がガイドすき間として前記第二供給路の延在方向に延在していて、前記ボビンは前記芯部の長手方向が前記第二供給路の延在方向と平行な向きで前記第二供給路に載置されてそれぞれの前記フランジ部の下端部が前記ガイドすき間に係合した状態になり、前記押部を前記第二供給路の延在方向先端側から延在方向後端側に向かって移動させることで、前記第二供給路に載置された前記ボビンが前記押部に押されて、それぞれの前記フランジ部の下端部が前記ガイドすき間に係合した状態で延在方向後端に向かって移動するように構成されたことを特徴とするボビンの供給装置。
【請求項2】
平面視で、前記第一供給路と前記第三供給路とが平行に直線状に延在するとともに、前記第二供給路が前記第一供給路および前記第三供給路と直交する向きに直線状に延在する請求項1に記載のボビンの供給装置。
【請求項3】
前記移動機構が一定ストロークのシリンダ機構である請求項1または2に記載のボビンの供給装置。
【請求項4】
前記第二供給路の延在方向後端と前記第三供給路の延在方向先端と間に、前記第二供給路を通過した前記ボビンを一時的に保持した後に前記第三供給路に投入するボビン保持投入部を備えた請求項1~3のいずれかに記載のボビンの供給装置。
【請求項5】
対向する前記一方側部と前記他方側部のそれぞれのペアにおいて、前記一方側部と前記他方側部の少なくとも一方を対向する相手に対して近接および離反移動させる幅調整機構を備えた請求項1~4のいずれかに記載のボビンの供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボビンの供給装置に関し、さらに詳しくは、鋼線ワイヤなどの線材が巻き付けられるボビンを空の状態で、線材の巻き付け装置に供給するボビンの供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高圧ホースなどの耐圧性が要求されるホース類には、補強部材として鋼線ワイヤや樹脂コードなどの線材が埋設されている。ホース類などの製造工程では、このような線材は、ボビンから繰り出されて使用されている。使用される線材は、線材の巻き付け装置によってボビンに巻き付けられて、所定長さの線材が巻き付けられた多数のボビンが準備される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
使用するボビンが1種類の場合は、そのボビンの仕様に最適な専用の供給路を用いることで、空の状態のボビンを順次、線材の巻き付け装置に効率よく供給することができる。ところが、ボビンは1種類とは限らず、サイズが異なる複数種類のボビンが存在する。この場合、ボビンのサイズ毎に専用の供給路を設けると、供給路の数が増えて、それぞれの供給路の保管のためにより広いスペースが必要になるとともに管理作業も必要になる。さらには、使用するボビンのサイズ毎に供給路の交換作業を行う必要がある。それ故、サイズが異なる複数種類のボビンが存在している場合、線材の巻き付け装置に空の状態のボビンを供給するには作業が煩雑になるため、効率よくボビンを供給するには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、サイズが異なる複数種類のボビンが存在していても、空の状態のボビンを線材の巻き付け装置に効率よく供給できるボビンの供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明のボビンの供給装置は、芯部とこの芯部の両端にフランジ部を有するボビンを、線材が巻き付けられていない空の状態で、線材の巻き付け装置に供給するボビンの供給装置において、第一供給路と、第一供給路の延在方向後端に続いて配置された第二供給路と、第二供給路の延在方向後端に続いて配置された第三供給路と、前記第二供給路の延在方向先端側から延在方向後端側に向かって移動する押部を有する移動機構とを備えて、前記第一供給路、前記第二供給路および前記第三供給路は、それぞれの延在方向に延在して互いに対向して配置された一方側部と他方側部とを有し、前記第一供給路および前記第三供給路では、対向する前記一方側部と前記他方側部の少なくとも一方が対向する相手に対して近接および離反移動可能に設置されていて、前記第一供給路および前記第三供給路はそれぞれ、延在方向先端から延在方向後端に向かって下方に傾斜することで、前記第一供給路および前記第三供給路に載置された前記ボビンがそれぞれの延在方向後端に向かって転動するように構成され、前記第二供給路では前記一方側部と前記他方側部とがすき間をあけて対向して、前記すき間がガイドすき間として前記第二供給路の延在方向に延在していて、前記ボビンは前記芯部の長手方向が前記第二供給路の延在方向と平行な向きで前記第二供給路に載置されてそれぞれの前記フランジ部の下端部が前記ガイドすき間に係合した状態になり、前記押部を前記第二供給路の延在方向先端側から延在方向後端側に向かって移動させることで、前記第二供給路に載置された前記ボビンが前記押部に押されて、それぞれの前記フランジ部の下端部が前記ガイドすき間に係合した状態で延在方向後端に向かって移動するように構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第一供給路と第二供給路と第三供給路とを繋げるように形成されているので、供給装置の設置スペースに対応してそれぞれの供給路の延在方向を変えることで、設置スペースの制約を受け難くなる。そして、延在方向先端から延在方向後端に向かって下方に傾斜する第一供給路および第三供給路では、それぞれの供給路を構成する一方側部と他方側部の少なくとも一方が対向する相手に対して近接および離反移動可能に設置されていている。そのため、幅サイズが異なるボビンが載置されても、ボビンを円滑に転動させてそれぞれの供給路の延在方向後端に向かって移動させることができる。
【0008】
また、第二供給路では、一方側部と他方側部とがすき間をあけて対向して形成されたガイドすき間が第二供給路の延在方向に延在していている。そのため、外径サイズが異なるボビンが載置されても、ボビンのそれぞれのフランジ部の下端部をガイドすき間に係合させることができる。そのため、第二供給路の延在方向前端側から延在方向後端側に向かって移動する押部によってボビンを押して、このボビンをガイドすき間に沿ってガイドしつつ円滑に第二供給路の延在方向後端に向かって移動させるこができる。したがって、幅サイズや外径サイズが異なる複数種類のボビンが存在していても、煩雑な作業をすることなく、空の状態のボビンを第一供給路、第二供給路および第三供給路を通じて線材の巻き付け装置に効率よく供給することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明のボビンの供給装置を平面視で例示する説明図である。
【
図2】ボビンが載置されている第一供給路を側面視で例示する説明図である。
【
図3】
図2の第一供給路を横断面視で例示する説明図である。
【
図4】ボビンを第一供給路から第二供給路に移動させた状態を平面視で例示する説明図である。
【
図5】
図4の第二供給路を横断面視で例示する説明図である。
【
図6】ボビンを第二供給路の延在方向後端に向かって移動させている状態を平面視で例示する説明図である。
【
図7】ボビンを第二供給路からボビン保持投入部に移動させた状態を平面視で例示する説明図である。
【
図8】
図7のボビン保持投入部を側面視で例示する説明図である。
【
図9】ボビンをボビン保持投入部から第三供給路に移動させた状態を側面視で例示する説明図である。
【
図10】ボビン保持投入部の変形例を側面視で示す説明図である。
【
図11】ボビンをボビン保持投入部から第三供給路に移動させた状態を平面視で例示する説明図である。
【
図12】
図11の第三供給路を横断面視で例示する説明図である。
【
図13】ボビンが第三供給路から搬送台に載置された状態を側面視で例示する説明図である。
【
図14】線材が巻き付けられたボビンが、巻き付け装置の排出口から排出される状態を平面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のボビンの供給装置を、図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0011】
図1に例示する本発明のボビンの供給装置1(以下、供給装置1という)の実施形態は、線材14が巻き付けられていない空の状態のボビン13を、線材の巻き付け装置12に供給する。ボビン13は、芯部13aと、芯部13aの長手方向両端に接合された円盤状のフランジ部13bとを有している。尚、図面では巻き付け装置12を二点鎖線で記載している。巻き付け装置12は公知の構造、仕様のものである。
【0012】
供給装置1は、第一供給路2と、第二供給路5と、第三供給路7と、第二供給路5に設置された移動機構6とを備えている。第一供給路2、第二供給路5、第三供給路7は順次繋がるように配置されている。また、供給装置1の構成部材の動きを制御する制御部10が備わっている。第一供給路2の延在方向先端(
図1では右端)がボビン13の供給元(供給始点)であり、第三供給路7の延在方向後端(
図1では左端)がボビン13の供給先(供給終点)である。第三供給路7の延在方向後端は、巻き付け装置12の下方に位置している。この実施形態では、第二供給路5の延在方向後端と第三供給路7の延在方向先端と間に、ボビン保持投入部8が備わっている。
【0013】
この実施形態では、平面視で、第一供給路2と第三供給路7とが平行に直線状に延在し、第二供給路5が第一供給路2および第三供給路7と直交する向きに直線状に延在している。そして、第一供給路2の延在方向先端と第三供給路7の延在方向後端とが比較的近接した位置に設定されている。巻き付け装置12の操作盤12aが配置された位置に、線材14が巻き付けられたボビン13が一時的にストックされるストック部11が延在している。このストック部11の延長線上に第一供給路2の延在方向先端と、巻き付け装置12の排出口12bとが位置している。排出口12bは第三供給路7の延長線上に位置している。第一供給路2の延在方向先端と排出口12bとの離間距離は例えば、2m以内、或いは1m以内である。
【0014】
図1~
図3に例示するように第一供給路2は、延在方向に延在して互いに対向して配置された一方側部2aと他方側部2bとを有している。一方側部2aおよび他方側部2bはそれぞれ、
図3に例示するように底板と側板とを有する断面L字状体である。それぞれの底板上にボビン13のフランジ部13bの周面が当接して、ボビン13が第一供給路2に載置される。即ち、ボビン13は、芯部13aの長手方向を第一供給路2の延在方向と直交する向きにして、第一供給路2に載置される。
【0015】
第一供給路2は、延在方向先端から延在方向後端に向かって下方に所定の傾斜角度Aで傾斜している。したがって、第一供給路2に載置されたボビン13は、それぞれのフランジ部13bが一方側部2a、他方側部2bの底板の上を、第一供給路2の延在方向後端に向かって転動することで移動する。即ち、第一供給路2では載置されたボビン13が重力によって第一供給路2の延在方向後端に向かって移動するので、ボビン13を移動させる特別な移動機構は不要になっている。水平に対する傾斜角度Aは適宜設定することができ、例えば15°以内に設定される。
【0016】
この実施形態では、第一供給路2の延在方向後端の近傍に、ボビン検知センサ3とストッパ4a、4bとが設置されている。第一供給路2の延在方向に間隔をあけた2か所に先端側のストッパ4aと後端側のストッパ4bが設置されている。ストッパ4a、4bとしては、上下移動するシリンダ類のロッドなどを用いることができる。ストッパ4a、4bが上方に突出することで、芯部13aに係合してボビン13の転動を阻止する。ストッパ4a、4bが下方移動することで、
図4に例示するように、芯部13aとの係合が解除されてボビン13が転動して、第一供給路2の延在方向後端に向かって移動したボビン13はそのまま、第二供給路5の延在方向先端部に乗り移る。ストッパ4a、4bの上下移動はボビン検知センサ3の検知信号に基づいて制御部10によって制御される。或いは、ボビン検知センサ3が第二供給路5の延在方向先端部でのボビン13の有無を検知して、ボビン13が無くなった時にアラームを発する構成にすることもできるい。そして、このアラームが発せられた時に、ボビン13は作業者によって第二供給路5の延在方向先端部に補充される。
【0017】
一方側部2aは所定位置に固定されていて、他方側部2bは一方側部2aに対して近接および離反移動可能に設置されている。一方側部2aと他方側部2bの少なくとも一方が対向する相手に対して近接および離反移動可能に設置されていればよい。
【0018】
この実施形態では、幅調整機構2cによって他方側部2bが一方側部2aに対して近接および離反移動する。幅調整機構2cとしては、各種の流体シリンダや、サーボモータによって進退するロッド類を用いることができる。幅調整機構2cの動きは、制御部10によって制御される。幅調整機構2cは、一方側部2aと他方側部2bの少なくとも一方を対向する相手に近接および離反移動させて、第一供給路2の幅寸法を変更できるものであればよい。
【0019】
図1、
図4、
図5に例示するように、第二供給路5は、第一供給路2の延在方向後端に続いて配置されている。第二供給路5は、延在方向に延在して互いに対向して配置された一方側部5aと他方側部5bとを有している。
図5に例示するように、一方側部5aおよび他方側部5bはそれぞれ板状体であり、互いがすき間をあけて対向している。このすき間がガイドすき間5cとして第二供給路5の延在方向に延在している。ガイドすき間5cは、延在方向全長に渡って実質的に同じ大きさになっている。
【0020】
ボビン13は、芯部13aの長手方向を第二供給路5の延在方向と平行な向きにして、第二供給路5に載置される。載置されたボビン13のそれぞれのフランジ部13bの下端部は、ガイドすき間5cに係合した状態(埋入した状態)になる。それぞれのフランジ部13bは、下端からその外径の例えば5%~40%の高さの範囲がガイドすき間5cに埋入した状態になる。
【0021】
尚、第一供給路2の一方側部2aおよび他方側部2bと同様に、一方側部5aと他方側部5bの少なくとも一方が対向する相手に対して近接および離反移動可能に設置された仕様にすることもできる。即ち、この仕様にして、ガイドすき間5cの大きさを可変にすることもできる。
【0022】
移動機構6は、第二供給路5の延在方向先端側から延在方向後端側に向かって移動する押部6aを有する。この実施形態では、移動機構6としてサーボモータによって回転するロッド6bを有していて、ロッド6bに螺合する押部6bがロッド6bの回転によって、第二供給路5の延在方向に移動する。この実施形態では、ガイドすき間5cの中を押部6aが第二供給路5の延在方向に移動する。移動機構6の動きは制御部10によって制御される。
【0023】
移動機構6としてはその他に、第二供給路5の延在方向に進退するシリンダロッドを有するシリンダ機構などを用いることができる。シリンダロッドが進退することで、シリンダロッドに取付けられた押部6aを第二供給路5の延在方向に移動させることができる。
【0024】
第二供給路5に載置されたボビン13は、
図6に例示するように、第二供給路5の延在方向先端側から延在方向後端側に向かって移動する押部6aに押されて第二供給路5の延在方向後端に向かって移動する。
図7に例示するように、第二供給路5の延在方向後端に向かって移動したボビン13はそのまま、ボビン保持投入部8に乗り移る。
【0025】
ボビン保持投入部8は、第二供給路5を通過したボビン13を一時的に保持した後に第三供給路7に投入する。この実施形態では、
図7、
図8に例示するようにボビン保持投入部8は、1つのボビン13を保持する保持台8aと跳ね上げ機構8bとを有している。跳ね上げ機構8bは、第三供給路7の延在方向先端にヒンジ部材によって一端部を回転可能に接続された保持台8aを、上下方向に移動させるシリンダ類で構成されている。
【0026】
図9に例示するように、シリンダ類のシリンダロッドを上方に突出させることで、保持台8aをヒンジ部材を中心にして回転させて跳ね上げる。保持台8aを跳ね上げることにより、保持台8aに保持されているボビン13は第三供給路7に投入される。ボビン保持投入部8の動きは、制御部10によって制御される。
【0027】
図10に例示する構造のボビン保持投入部8を用いることもできる。このボビン保持投入部8は、保持台8aと、第三供給路7の延在方向に進退するロッドを有する押出し機構8cとを有している。押出し機構8cとしては流体シリンダやサーボモータで進退するロッドを用いることができる。押出し機構8cのロッドを第三供給路7に向かって前進させることで、保持台8aに保持されているボビン13が第三供給路7に投入される。
【0028】
図1、
図11、
図12に例示するように第三供給路7は、延在方向に延在して互いに対向して配置された一方側部7aと他方側部7bとを有している。一方側部7aおよび他方側部7bはそれぞれ、
図12に例示するように底板と側板とを有する断面L字状体である。それぞれの底板上にボビン13のフランジ部13bの周面が当接して、ボビン13が第三供給路7に載置される。即ち、ボビン13は、芯部13aの長手方向を第三供給路7の延在方向と直交する向きにして、第三供給路7に載置される。
【0029】
図9、
図10に例示するように第三供給路7は、延在方向先端から延在方向後端に向かって下方に所定の傾斜角度Aで傾斜している。したがって、第三供給路7に載置されたボビン13は、それぞれのフランジ部13bが一方側部7a、他方側部7bの底板の上を、第第三供給路7の延在方向後端に向かって転動することで移動する。即ち、第三供給路7では載置されたボビン13が重力によって第三供給路7の延在方向後端に向かって移動するので、ボビン13を移動させる特別な移動機構は不要になっている。水平に対する傾斜角度Aは適宜設定することができ、例えば15°以内に設定される。
【0030】
一方側部7aは所定位置に固定されていて、他方側部7bは一方側部7aに対して近接および離反移動可能に設置されている。一方側部7aと他方側部7bの少なくとも一方が対向する相手に対して近接および離反移動可能に設置されていればよい。
【0031】
この実施形態では、幅調整機構7cによって他方側部7bが一方側部7aに対して近接および離反移動する。幅調整機構7cの動きは、制御部10によって制御される。幅調整機構7cとしては、各種の流体シリンダや、サーボモータによって進退するロッド類を用いることができる。幅調整機構7cは、一方側部7aと他方側部7bの少なくとも一方を対向する相手に近接および離反移動させて、第三供給路7の幅寸法を変更できるものであればよい。
【0032】
次に、供給装置1を用いて、巻き付け装置12に空の状態のボビン13を供給する手順の一例を説明する。
【0033】
まず、
図2、
図3に例示するように、空の状態のボビン13を、芯部13aの長手方向を第一供給路2の延在方向に直交する向きにして第一供給路2に載置する。一方側部2aと他方側部2bとの対向間隔は、ボビン13の幅(フランジ部13bどうしの間隔)に応じて、幅調整機構2cによって適切な間隔に調整しておく。即ち、幅が異なるボビン13を巻き付け装置12に供給する際には、一方側部2aと他方側部2bとの対向間隔を変更して、第一供給路2の幅寸法を変更する。この対向間隔の調整によって、ボビン13はその幅方向に対して過不足ない状態で第一供給路2に載置される。
【0034】
第一供給路2に載置されたボビン13は、第一供給路2の延在方向後端に向かって転動する。転動したボビン13は、先端側のストッパ4aによって停止する。複数のボビン13をこのようにして第一供給路2に載置させてストックする。
【0035】
ボビン検知センサ3は、その前方にボビン13が存在することを検知しないと(存在しないことを検知する)と先端側のストッパ4aを下方移動させ、後端側のストッパ4bを上方移動させる。そして、第二供給路5の延在方向先端部にボビン13が存在することを検知しない(存在しないことを検知する)と、後端側のストッパ4bを下方移動させる。これにより、
図4に例示するようにボビン13が転動して第二供給路5の延在方向先端部に移動する。このようにして、ボビン13が1個ずつ、第一供給路2の延在方向後端部から第二供給路5の延在方向先端部に順次移動する。
【0036】
図4、
図5に例示するように、第二供給路5の延在方向先端部に移動したボビン13は、芯部13aの長手方向を第二供給路5の延在方向と平行する向きにして第二供給路5に載置される。載置されたボビン13のそれぞれのフランジ部13bの下端部は、
図5に例示するように、ガイドすき間5cに係合した状態になる。
【0037】
次いで、
図6に例示するように、移動機構6の押部6aを第二供給路5の延在方向先端部から延在方向後端部に向かって移動させる。この移動する押部6aによってボビン13を押すことにより、それぞれのフランジ部13bの下端部がガイドすき間5cに係合した状態のままで、ボビン13は第二供給路5の延在方向先端部から延在方向後端に向かって移動する。
【0038】
図7、
図8に例示するように、第二供給路5を移動したボビン13は、ボビン保持投入部8の保持台8aに保持される。保持台8aにボビン13が保持された後、
図9に例示するように、跳ね上げ機構8bを作動させる、或いは
図10に例示するように押出し機構8cを作動させることで、ボビン13はボビン保持投入部8から第三供給路7の延在方向先端部に移動する。
【0039】
図11、
図12に例示するように、第三供給路7の延在方向先端部に移動したボビン13は、芯部13aの長手方向を第三供給路7の延在方向に直交する向きにして第三供給路7に載置される。一方側部7aと他方側部7bとの対向間隔は、ボビン13の幅(フランジ部13bどうしの間隔)に応じて、幅調整機構7cによって適切な間隔に調整されている。即ち、幅が異なるボビン13を巻き付け装置12に供給する際には、一方側部7aと他方側部7bとの対向間隔を変更して、第三供給路7の幅寸法を変更する。この対向間隔の調整によって、ボビン13はその幅方向に対して過不足ない状態で第三供給路7に載置される。第三供給路7に載置されたボビン13は第三供給路7の延在方向後端に向かって転動する。
【0040】
図13に例示するように、第三供給路7の延在方向後端に転動して移動したボビン13は、搬送台9に収容される。次いで、搬送台9が移動することで、ボビン13は巻き付け装置12の巻き付け位置に搬送されて、線材14が芯部13aの周りに巻き付けられる。線材14としては鋼線ワイヤなどの金属線材、各種樹脂コードなどの樹脂線材が例示される。
図14に例示するように、所定長さの線材14が巻き付けられたボビン13は、巻き付け装置12の排出口12bから排出されて、ストック部11にストックされる。
【0041】
この供給装置1では、空の状態のボビン13が1個ずつ、上述したように第一供給路2、第二供給路5および第三供給路7を経て、巻き付け措置12に順次供給される。供給装置1は、第一供給路2と第二供給路5と第三供給路7とを繋げて形成されているので、供給装置1の設置スペースに制約があっても、その設置スペースに対応してそれぞれの供給路2、5、7の延在方向を変えることができる。それ故、この供給装置1は、設置スペースの制約を受け難くなる。
【0042】
この実施形態では、平面視で、第一供給路2と第三供給路7とが平行に直線状に延在するとともに、第二供給路5が第一供給路2および第三供給路7と直交する向きに直線状に延在している。いわば、これら供給路2、5、7が平面視でU字状になっているので、供給装置1をコンパクトなスペースに設置するには有利になっている。第一供給路2および第三供給路7は平面視で屈曲(湾曲)させて延在させることもできる。
【0043】
そして、第一供給路2の延在方向先端と第三供給路7の延在方向後端とが比較的近接した位置に設定されていて、第一供給路2の延在方向先端が、ストック部11や巻き付け装置12の操作盤12a、排出口12bと近接している。そのため、供給装置1に空の状態のボビン13を投入する作業、線材14が巻き付けられたボビン13を回収する作業、巻き付け装置12を操作盤12aによって操作する作業を近い位置で行うことができる。これ伴い、1人の作業者でもこれらすべての作業を行なうことが可能になっている。
【0044】
そして、第一供給路2および第三供給路7では、幅寸法が可変になっている。そのため、幅サイズが異なるボビン13が載置されても、ボビン13を円滑に転動させてそれぞれの供給路2、7の延在方向後端に向かって移動させることができる。
【0045】
尚、第一供給路2では、一方側部2aと他方側部2bとの対向間隔の調整を手動(人力)で行う構成にしてもよい。第三供給路7でも同様に、一方側部7aと他方側部7bとの対向間隔の調整を手動(人力)で行う構成にしてもよい。第二供給路5でも同様に、一方側部5aと他方側部5bとの対向間隔の調整を手動(人力)で行う構成にしてもよい。
【0046】
第二供給路5では、ガイドすき間5cが延在していているので、外径サイズ(フランジ部13bの外径サイズ)が異なるボビン13が載置されても、ボビン13のそれぞれのフランジ部13bの下端部をガイドすき間5cに係合させることができる。そのため、移動機構6によってボビン13をガイドすき間5cに沿ってガイドしつつ円滑に第二供給路5の延在方向後端に向かって移動させるこができる。
【0047】
したがって、この供給装置1によれば、幅サイズや外径サイズが異なる複数種類のボビン13が存在していても、煩雑な作業をすることなく、空の状態のボビン13を第一供給路2、第二供給路5および第三供給路7を通じて、巻き付け装置12に効率よく供給することが可能になっている。
【0048】
第二供給路5では、一方側部5aおよび他方側部5bのフランジ部13bと接触する部分を、6ナイロンやフッ素樹脂などの種々の低摩擦材によって被覆するとよい。これにより、一方側部5aおよび他方側部5bとフランジ部13bとの間の摩擦が低減して、ガイドすき間5cに沿ってボビン13をより円滑に移動させるには有利になり、それぞれの摩耗を低減するにも有利になる。
【0049】
この実施形態では、一方側部2aと一方側部7aとの離間距離が不変(常に一定)なので、移動機構6として一定ストロークのシリンダ機構を用いることができる。一定ストロークのシリンダ機構を用いることで、供給装置1をより簡素な構成にして、操作をより簡便にすることが可能になる。
【符号の説明】
【0050】
1 供給装置
2 第一供給路
2a 一方側部
2b 他方側部
2c 幅調整機構
3 ボビン検知センサ
4a、4b ストッパ
5 第二供給路
5a 一方側部
5b 他方側部
5c ガイドすき間
6 移動機構
6a 押部
6b ロッド
7 第三供給路
7a 一方側部
7b 他方側部
7c 幅調整機構
8 ボビン保持投入部
8a 保持台
8b 跳ね上げ機構
8c 押出し機構
9 搬送台
10 制御部
11 ストック部
12 線材の巻き付け装置
12a 操作盤
12b 排出口
13 ボビン
13a 芯部
13b フランジ部
14 線材