(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】CO濃度推定方法及び燃焼装置
(51)【国際特許分類】
F23N 5/00 20060101AFI20240815BHJP
F23N 5/24 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
F23N5/00 J
F23N5/24 107Z
(21)【出願番号】P 2020213184
(22)【出願日】2020-12-23
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 潤一
(72)【発明者】
【氏名】中山 賢一
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第98/02693(WO,A1)
【文献】特開平7-260144(JP,A)
【文献】特開平9-14657(JP,A)
【文献】特開2001-336742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23N 5/00
F23N 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内空間におけるCO濃度推定方法であって、
周期毎に、燃焼装置から当該室内空間に排出される排気流量及び排気内のCO濃度検出値を取得するステップと、
前回の周期におけるCO濃度推定値及び第1の係数の乗算値と、今回の周期で取得された前記CO濃度検出値及び第2の係数の乗算値との和に従って、今回の周期の前記CO濃度推定値を算出するステップとを備え、
前記第1及び第2の係数は、前記室内空間の容積及び換気率、並びに、前記周期の時間長を定数に含み、かつ、前記排気流量を変数として、前記排気流量が多い程、前記第2の係数が上昇するとともに前記第1の係数が低下するように可変に設定され、
前記第1の係数及び前記第2の係数の和は1.0以下であるとともに、当該和は、前記換気率が大きい程小さい値に設定される、CO濃度推定方法。
【請求項2】
前記燃焼装置は、燃料と空気との混合気の燃焼によって要求熱量を発生するように構成され、
前記排気流量は、前記要求熱量に基づいて算出される、請求項1記載のCO濃度推定方法。
【請求項3】
燃料の燃焼によって熱量を発生させる燃焼装置であって、
前記燃焼用の空気を給気するための送風ファンと、
前記空気及び前記燃料を燃焼する燃焼機構と、
前記燃焼機構からの排気の排出経路に設けられたCO濃度センサと、
室内空間に対して前記排気が導入されたときの当該室内空間におけるCO濃度を推定する制御部とを備え、
前記制御部は、一定の周期毎に、前記燃焼装置から排出される排気流量及び前記排気内のCO濃度検出値を取得するとともに、前回の周期におけるCO濃度推定値及び第1の係数の乗算値と、今回の周期で取得された前記CO濃度検出値及び第2の係数の乗算値との和に従って、今回の周期のCO濃度推定値を算出し、
前記第1及び第2の係数は、前記室内空間の容積及び換気率と、前記周期の時間長とを定数に含み、かつ、前記排気流量を変数として、前記排気流量が多い程、前記第2の係数が上昇するとともに前記第1の係数が低下するように可変に設定され、
前記第1の係数及び前記第2の係数の和は1.0以下であるとともに、当該和は、前記換気率が大きい程小さい値に設定される、燃焼装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記燃焼機構への要求熱量に基づいて、前記燃焼機構への燃料供給量及び前記送風ファンの回転数を制御し、
前記排気流量は、前記要求熱量に基づいて算出される、請求項3記載の燃焼装置。
【請求項5】
前記制御部は、各前記周期での前記CO濃度推定値と予め定められた判定値との比較に従って、前記燃焼機構での燃焼を禁止又は許可する、請求項3又は4に記載の燃焼装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記燃焼の許可時において、前記CO濃度推定値が第1の判定値よりも上昇すると前記燃焼を禁止するとともに、前記燃焼の禁止時において、前記CO濃度推定値が、前記第1の判定値よりも低く設定された第2の判定値よりも低下すると当該燃焼を解除する、請求項5記載の燃焼装置。
【請求項7】
ユーザに対して情報を報知する報知部を更に備え、
前記制御部は、前記CO濃度推定値が予め定められた判定値よりも上昇すると、前記報知部を用いて、前記室内空間の換気を促すメッセージを前記ユーザに対して報知する、請求項3又は4に記載の燃焼装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記燃焼機構の停止中における前記送風ファンの作動及び停止を、各前記周期での前記CO濃度推定値に基づいて制御可能である、請求項3~7のいずれか1項に記載の燃焼装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記燃焼の停止中において、前記CO濃度推定値が第3の判定値よりも高いときには前記送風ファンを作動するとともに、前記燃焼の停止中における前記送風ファンの作動時には、前記CO濃度推定値が、前記第3の判定値よりも低く設定された第4の判定値よりも低下すると前記送風ファンを停止する、請求項8記載の燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内空間のCO濃度推定方法及びCO推定濃度によって動作が制御される燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
給湯器に代表される燃焼装置において、万一不完全燃焼が発生すると、排気にCO(一酸化炭素)が含まれる様になる。このため、仮に、燃焼装置からの排気の全量が室内に導入されたときの当該室内のCO濃度が一定以上に上昇する前に、燃料(代表的には、ガス)の供給を遮断して、燃焼を自動的に停止させるための不完全燃焼防止装置の導入が求められることがある。例えば、家庭用ガス温水熱源機に係るJISS2112(9.7.5項)には、CO濃度が0.03(%)、即ち、300(ppm)に達する前に、バーナへのガス通路が自動的に閉ざされるかどうかの試験条件が示されている。
【0003】
特許第3727418号公報(特許文献1)には、上述の様なCO濃度の推定方法の一例が適用された燃焼機器の安全装置が記載されている。特許文献1では、COセンサによって検出される排気ガス中のCO濃度(CEXT)及び総排気ガス量(Q3)の積に従う室内へのCO流入量及び(1-exp(-n・t))の乗算をメインとする演算式(ここで、換気率n=Q1/V、但し、t:燃焼時間、Q1:換気扇による室内からの排出空気量、V:室内の容積)を用いて、室内のCO濃度推定値(Croom)を算出するCO濃度推定方法が記載されている。
【0004】
特許文献1のCO濃度推定方法では、上記演算式を用いて、検出される排気ガス中のCO濃度(CEXT)に対する、CO濃度推定値(Croom)が所定の危険判断基準値(例えば、T=300[ppm])に達するまでの所要時間(危険到達時間T)の変換データが予め求められる。
【0005】
更に、サンプリング時間tsp毎に検出される排気ガス中のCO濃度(CEXT)に対して、上記変換データから求められた危険到達時間Tに対するサンプリング時間tspの比(tsp/T)が順次求められて、当該(tsp/T)の積算値が所定の危険判断基準値に達すると、COガスに対する安全動作が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のCO濃度推定方法は、一定の燃焼条件、具体的には、同一の排気ガス量(Q3)及びCO濃度(CEXT)が一定時間連続した際のCO濃度推定には有効である一方で、排気ガス量(Q3)及びCO濃度(CEXT)が変動する下では推定精度が低下することが懸念される。
【0008】
更に、上述の危険判断基準値と比較される(tsp/T)の積算値については、燃焼停止後において、演算によって減少させることはできないため、燃焼停止後のCO濃度推定が困難である。これにより、(tsp/T)の積算値の上昇に応じて、一旦燃焼が禁止された際に、当該禁止による燃焼停止後において、適切に燃焼禁止を解除することが難しい。
【0009】
本発明はこの様な問題点を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、燃焼装置の排気に含まれたCO濃度検出値から当該排気が流入した室内のCO濃度推定値を高精度に算出するCO濃度推定方法、及び、当該CO濃度推定値を用いて制御される燃焼装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある局面では、室内におけるCO濃度推定方法であって、周期毎に、燃焼装置から当該室内に排出される排気流量及び排気内のCO濃度検出値を取得するステップと、前回の周期におけるCO濃度推定値及び第1の係数の乗算値と、今回の周期で取得されたCO濃度検出値及び第2の係数の乗算値との和に従って、今回の周期のCO濃度推定値を算出するステップとを備える。第1及び第2の係数は、室内の容積及び換気率と、周期の時間長とを定数に含み、かつ、排気流量を変数として、排気流量が多い程、第2の係数が上昇するとともに第1の係数が低下するように可変に設定される。第1の係数及び第2の係数の和は1.0以下であるとともに、当該和は、換気率が大きい程小さい値に設定される。
【0011】
本発明の他のある局面では、燃料の燃焼によって熱量を発生させる燃焼装置であって、送風ファンと、燃焼機構と、CO濃度センサと、制御部とを備える。送風ファンは、燃焼用の空気を給気する。燃焼機構は、送風ファンからの空気及び燃料を燃焼する。CO濃度センサは、燃焼機構からの排気の排出経路に設けられる。制御部は、室内空間に対して排気が導入されたときの当該室内空間におけるCO濃度を推定する。制御部は、一定の周期毎に、燃焼装置から排出される排気流量及び排気内のCO濃度検出値するとともに、前回の周期におけるCO濃度推定値及び第1の係数の乗算値と、今回の周期で取得されたCO濃度検出値及び第2の係数の乗算値との和に従って、今回の周期のCO濃度推定値を算出する。第1及び第2の係数は、室内空間の容積及び換気率と、周期の時間長とを定数に含み、かつ、排気流量を変数として、排気流量が多い程、第2の係数が上昇するとともに第1の係数が低下するように可変に設定される。第1の係数及び第2の係数の和は1.0以下であるとともに、当該和は、換気率が大きい程小さい値に設定される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、周期毎に取得されるCO濃度検出値と、1周期前のCO濃度推定値と、排気流量及び換気率が反映された第1及び第2の係数とを用いた演算により、順次取得されるCO濃度検出値及び室内空間及び室外の換気を反映して、周期毎にCO濃度推定値を更新することで、排気流量及びCO濃度検出値が一定でない場合にも、高精度にCO濃度推定値を算出できるとともに、燃焼停止後にCO濃度が低下する現象についてもCO濃度推定値に反映することができる。この結果、燃焼装置の排気に含まれたCO濃度検出値から当該排気が流入した室内のCO濃度推定値を高精度に算出するCO濃度推定方法、及び、当該CO濃度推定値を用いて制御される燃焼装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施の形態に係るCO濃度推定方法が適用される燃焼装置の一例である給湯装置の概略構成を説明するブロック図である。
【
図2】本実施の形態に係るCO濃度推定モデルを説明するための概念図である。
【
図3】排気流量Qを変数とする係数k1,k2の変化特性を説明する概念図である。
【
図4】本実施の形態に係るCO濃度推定方法の制御処理を説明するフローチャートである。
【
図5】本実施の形態に係るCO濃度推定方法による実験結果を示すグラフである。
【
図6】本実施の形態に係る燃焼装置におけるCO濃度推定を用いた安全制御の第1の例を説明するフローチャートである。
【
図7】本実施の形態に係る燃焼装置におけるCO濃度推定を用いた安全制御の第2の例を説明するフローチャートである。
【
図8】本実施の形態に係る燃焼装置におけるCO濃度推定を用いた安全制御の第3の例を説明するフローチャートである。
【
図9】本実施の形態に係る燃焼装置におけるCO濃度推定を用いた安全制御の第4の例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では図中の同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は原則的に繰返さないものとする。
【0015】
(CO濃度推定方法)
図1に示される様に、本実施の形態に係るCO濃度推定方法が適用される燃焼装置の一例として示される給湯装置100は、燃料(代表的には、ガス)を燃焼させるバーナ10と、送風ファン11と、熱交換器12と、バイパス弁15と、CO濃度センサ20と、制御部30と、リモコン110を備える。
【0016】
送風ファン11は、バーナ10に対して、燃料燃焼用の空気を供給する。送風ファン11による供給空気量は、ファン回転数に応じて決まる。熱交換器12は、バーナ10によって発生された燃焼ガスから熱回収を行なって、熱交換器12内部を通流する湯水を加熱する。バイパス弁15は、入水流量の一部を、熱交換器12を迂回するバイパス経路へ導く。給湯装置100は、当該バイパス経路を経由した非加熱水と、熱交換器12を経由する加熱水とを混合して、給湯設定温度に従って出湯することができる。この際の非加熱水と加熱水との流量比は、バイパス弁15によって制御される。
【0017】
CO濃度センサ20は、バーナ10からの燃焼ガスの排気経路に配置される。CO濃度センサ20としては、公知のものを適宜用いることが可能であり、たとえば、白金線コイルを酸化アルミなどの触媒によりコーティングして乾燥および焼成したものを適用することができる。排ガス中にCOが存在すると、COとの反応熱によって白金線コイルの抵抗値が上昇する原理に基づき、CO濃度センサ20の出力電圧は、CO濃度に応じて変化する。CO濃度センサ20の出力電圧は、制御部30へ送出される。制御部30は、CO濃度センサ20の出力電圧から、排気中のCO濃度検出値を取得することができる。
【0018】
リモコン110は、台所及び浴室等に配置された、給湯装置100を操作するための入力装置である。リモコン110は、給湯情報を表示するための表示部111と、給湯装置100の運転オンオフを操作する運転スイッチ112と、ユーザ等の入力設定操作を受け付けるための操作部113と、スピーカ114とを含む。表示部111は、代表的には、液晶パネルによって構成されており、ユーザが視認可能な態様で各種の情報を表示可能に構成されている。操作部113は、代表的には、プッシュボタンやタッチボタンによって構成されており、給湯設定温度に代表される、給湯装置100の設定操作を受け付け可能に構成されている。スピーカ114は、ユーザが聴覚で認識可能な音声、メロディー、警報音等を出力する。
【0019】
制御部30は、例えば、2心通信線によってリモコン110と通信可能であり、リモコン110に入力されたユーザ操作指示に従って給湯装置100が運転される様に、給湯装置100の構成機器の動作を制御する。制御部30は、代表的には、所定プログラムが予め記憶されたマイクロコンピュータによって構成することができる。
【0020】
例えば、制御部30は、バーナ10の燃焼の開始/停止、及び、バーナ10への燃料ガス供給量を制御するとともに、送風ファン11の作動/停止、及び、作動時のファン回転数を制御する。これにより、給湯装置100での燃焼のオンオフ、及び、燃焼オン時の発生熱量を制御することができる。
【0021】
例えば、制御部30は、熱交換器12から出力される加熱水の目標温度と入水温度との温度差と、図示しない流量センサによって検出された熱交換器12の通過流量との積に従って、バーナ10への要求熱量を算出するとともに、当該要求熱量に従ってバーナ10に供給される燃料流量を設定する。更に、制御部30は、当該燃料量に対して一定の空燃比で燃焼用空気が供給される様に、送風ファン11の回転数を制御する。
【0022】
更に、制御部30は、バイパス弁15の開度指令値を生成することにより、上述した加熱水及び非加熱水の流量比を制御することができる。この様に、制御部30は、バーナ10からの発生熱量、及び、バイパス弁15による流量比の制御によって、出湯温度を制御することができる。
【0023】
尚、給湯装置100からの排気流量(単位時間での排気量)は、送風ファン11による供給空気量に比例する。従って、給湯装置100の排気流量は、送風ファン11の回転数指令値の基となる、要求熱量から推定することができる。
【0024】
又、低流量のとき、又は、入水温度が高いとき等には、要求熱量が、バーナ10の安定的な連続燃焼によって出力可能な下限熱量よりも小さくなるケースがある。この様なケースには、バーナ10の燃焼期間及び燃焼停止期間を短時間内で意図的に繰り返し設ける、所謂、「間欠燃焼」によってバーナ10の発生熱量を適切に制御することができる。
【0025】
更に、本実施の形態に係る給湯装置100において、制御部30は、CO濃度センサ20から取得された排気中のCO濃度検出値COxを用いて、当該排気が予め定められた容積の所定室内に排出された際の、当該室内でのCO濃度推定を実行する。以下では、このCO濃度推定方法について詳細に説明する。
【0026】
図2は、本実施の形態に係るCO濃度推定モデルを説明するための概念図である。
【0027】
本実施の形態では、容積V[m3]及び換気率αを予め定められた定数とする解析対象となる室内空間200に対して、給湯装置100の排気が排出された場合における、当該室内空間200の雰囲気中のCO濃度推定値CO*(t)が求められる。
【0028】
尚、換気率αは、容積V[m3]に対する、室内空間200及び室外(外気)の間での単位時間での換気量[m3]の比で定義される。例えば、上記JISS2112(9.7.5項)には、V=16.8[m3]、α=0.5[1/h]の試験室において、当該試験室の雰囲気中のCO濃度が0.03%(=300ppm)に達する前に、バーナへのガス通路が自動遮断する試験条件が示されている。
【0029】
図2には、室内空間200に対する、単位時間でのCOの入出力収支が示される。矢印201には、給湯装置100からの排気によるCO流入が示される。当該単位時間での排気量(排気流量Q)と、CO濃度センサ20による当該排気のCO濃度検出値COx(t)を用いると、単位時間内ではQ・COx(t)のCO量が流入する。一方で、矢印202には、給湯装置100からの排気流量Qと入れ替わりによるCO流出が示される。これにより、室内空間200からは、CO濃度推定値CO*(t)及び排気流量Qの積に従うCO量が流出する。
【0030】
ここで、排気流量Qは、上述の様に、給湯装置100での送風ファン11による供給空気量に比例するので、上述の要求熱量から演算で求めることができる。尚、排気流量Qは、当該演算値に1.0以下の係数mを乗算することで、給湯装置100の排気のうちの室内空間200に導入される比率を表現することが可能である。但し、最悪のケースとして、排気の全量が室内空間200に導入された場合における安全を確保するためには、m=1.0としてCO濃度推定を実行することが好ましい。以下では、m=1.0として説明を進める。
【0031】
一方で、換気率αに従う室内及び室外間の空気の入れ替えに伴っても、室内空間200に対するCO流入及び流出が生じる。当該流入及び流出は、排気流量Q=0のときにも生じる。矢印203に示される様に、室内空間200からは、単位時間毎にV・α・CO*(t)のCO量が流出する。これとは反対に、矢印204に示される様に、室内空間200へは、単位時間毎にV・α・COoutのCO量が流入する。ここで、COoutは、室外におけるCO濃度であり、COout=0とすることができる。
【0032】
以下では、CO濃度センサ20の出力電圧から、制御部30がCO濃度検出値COx(t)を時間Ts[s]の経過毎、即ち、所定周期(周期の時間長Ts[s])毎に取得できるものとする。
図2の収支モデルにおいて、室内空間200における1周期(Ts)でのCO変化量は、矢印201,202,204によって流入及び流出するCO量の総和であるΣΔCOとして、下記の式(1)で示すことができる。
【0033】
ΣΔCO=Q・COx(t)-Q・CO*(t)-V・α・CO*(t)
=Q・COx(t)-(Q+V・α)・CO*(t)…(1)
式(1)中の排気流量Q及び換気率αについてはTs[s]の期間での値を示すものとなる。
【0034】
一方、容積Vの室内空間200では、
図2に示す様に、1周期間(時間長Ts)での当該ΣΔCOに応じて、CO濃度推定値が、1周期前の値であるCO*(t-Ts)から今回周期の値であるCO*(t)に変化したと考えることができる。この様な着想から、発明者らは、前回周期のCO濃度推定値であるCO*(t)と、今回周期のCO濃度検出値COx(t)とから、適切に設定された係数k1,k2を用いた線形結合によって、今回周期におけるCO濃度推定値CO*(t)を、下記の式(2)によって求めることとした。即ち、係数k1は「第1の係数」に対応し、係数k2は「第2の係数」に対応する。
【0035】
CO*(t)=k1・CO*(t-Ts)+k2・COx(t) …(2)
図2でのCO収支から、係数k1,k2の和は、1.0以下とされる(k1+k2≦1.0)。より具体的には、換気率α=0のときは、k1+k2=1.0であり、α>0のときは、k1+k2<1.0に設定される。
【0036】
又、式(1)を考慮すると、係数k1及びk2は、容積V、換気率α、排気流量Q、及び周期の時間長Tsから決まることが理解される。特に、容積V、換気率α、及び、時間長Tsは定数である一方で、排気流量Qを変数として、係数k1及びk2は設定される。
【0037】
図3(a)には、排気流量Qに対する係数k1の変化特性が概略的に示され、
図3(b)には、排気流量Qに対する係数k2の変化特性が概略的に示される。
【0038】
図3(b)に示される様に、係数k2は、排気流量Q=0のときはk2=0であり、排気流量Qが多い程k2の値が上昇する様に設定される。但し、排気流量Qの増加に応じて、係数k2の上昇レート(接線の傾き)は低下する。
【0039】
これに対して、
図3(a)に示される様に、係数k1は、排気流量Q=0のときに最大値を取る一方で、排気流量Qが多い程k1の値が低下する様に設定される。排気流量Q=0のときの係数k1の値(最大値)は、換気率α=0のときは1.0である。一方で、換気率α>0のときは、係数k1の最大値(Q=0のとき)は、1.0より小さく、かつ、換気率αが大きい程、小さい値に設定される。
【0040】
制御部30には、容積V、換気率α、及び、周期の時間長Tsの定数値、及び、
図3(a),(b)に示した特性が反映された、排気流量Qを入力とし、係数k1,k2を出力とする参照テーブル、又は、演算式を予め作成することができる。尚、容積V、換気率α、及び、周期の時間長Tsについては、推定対象となる給湯装置100(燃焼装置)及び室内空間200の特性に合わせた値を任意に設定可能である。
【0041】
図4には、本実施の形態に係るCO濃度推定方法の制御処理を説明するフローチャートが示される。
図4に示された制御処理は、例えば、制御部30によって、CO濃度検出値のサンプリング周期に相当するTsの経過毎に周期的に実行することができる。
図4には、n番目(n:自然数)の周期を今回の制御周期とする処理が示される。
【0042】
図4に示される様に、制御部30は、ステップ(以下、単に「S」と表記する)110では、CO濃度センサ20の出力電圧に基づき、今回の制御周期でのCO濃度検出値COx(n)を取得する。更に、制御部30は、S120では、今回の制御周期での給湯装置100の排気流量Qを取得する。
【0043】
上述の様に、排気流量Qは、給湯装置100でのバーナ10への要求熱量又は燃料供給量に基づいて演算で求めることができる。特に、要求熱量に基づく演算を用いることで、間欠燃焼の適用時に、燃焼期間及び燃焼停止期間のいずれであるかに依存して、排気流量Qの演算値が急変することを防止できる。
【0044】
更に、制御部30は、S130により、S120で取得した排気流量Qを用いて、係数k1及びk2を設定する。例えば、予め用意された上述の参照テーブル又は演算式を用いて、
図3に示した特性に従って、係数k1,k2を設定することができる。制御部30は、S140では、S110で取得したCO濃度検出値COx(n)、S130で設定された係数k1,k2、及び、前回の制御周期におけるCO濃度推定値CO*(n-1)を用いて、上述の式(2)の演算によって、今回の制御周期でのCO濃度推定値CO*(n)を算出する。
【0045】
制御部30は、S150では、S140で算出されたCO濃度推定値CO*(n)を、給湯装置100(燃焼装置)の制御に用いるために出力する。更に、S150では、次回の制御周期に備えて、S140で算出されたCO濃度推定値CO*(n)を、CO*(n-1)を示す変数に格納する。
【0046】
尚、
図4に示されたCO濃度推定方法のための制御処理は、給湯装置100(燃焼装置)の運転スイッチのオフ後(燃焼停止後)も実行される。即ち、当該制御処理は、運転スイッチのオンオフに依らず繰り返し実行することが可能である。CO濃度推定値CO*(t)は、電源投入時、又は、電源リセット時に初期化(CO*(t)=0)される一方で、それ以外の期間では、周期的に演算によって更新される。
【0047】
図5には、本実施の形態に係るCO濃度推定方法による実験結果が示される。
【0048】
図5では、V=16.8[m
3]、α=0.5[1/h]の試験室に対して、給湯装置100から排気(排気流量Q)を導入する実機実験を行った際における、給湯装置100の排気のCO濃度検出値COx(t)と、
図4の制御処理によって周期(時間長Ts)毎に算出されたCO濃度推定値CO*(t)と、当該試験室内に設置されたCOセンサによる雰囲気中のCO濃度実測値COa(t)とがプロットされる。
【0049】
図5では、時刻txまでの間、バーナ10によって間欠燃焼が行われる一方で、時刻tx以降では、燃焼が停止された場合の実験結果が示される。従って、時刻tx以降では、CO濃度推定値CO*(t)は、時刻tx以前よりも大幅に低下する。又、時刻tx以降では、燃焼用空気の供給が不要になった燃焼停止後にも送風ファン11の作動を継続するポストパージは非実行とされている。これにより、時刻tx以降では、Q=0であることから、式(2)中のk2=0であるが、0<k1<1.0である。
【0050】
時刻txまでの期間では、CO濃度検出値COx(t)が徐々に反映される式(2)の演算により、CO濃度推定値CO*(t)は、CO濃度推定値CO*(t)のレベルに向けて上昇している。係数k1,k2を適切に設定することにより、試験室の雰囲気中のCO濃度実測値COa(t)と大差無くCO濃度推定値CO*(t)を算出できていることが読み取れる。
【0051】
更に、燃焼が停止された時刻tx以降では、送風ファン11が停止されて、Q=0(k2=0)となるが、係数k1によって換気率αが反映された演算によって、室外との換気によるCO濃度の低下をトレースして、実際のCO濃度実測値COa(t)の挙動と同等に減少するCO濃度推定値CO*(t)が算出されていることが読み取れる。
【0052】
尚、時刻tx以降において、ポストパージが行われると、Q>0のときの係数k1の値が、Q=0(ポストパージ非実行時)の係数k1よりも小さくなる。このため、CO濃度推定値CO*(t)は、ポストパージ非実行時よりも低下レートが大きくなるように算出されることになる。又、ポストパージ中、即ち、燃焼停止後のCO濃度検出値COx(t)についても、係数k2(k2>0)を用いて、CO濃度推定値CO*(t)に反映される。この様に、ポストパージを実行した場合(Q>0)にも、係数k1,k2を通じて、CO濃度推定値CO*(t)を精度良く算出することが可能である。
【0053】
この様に、本実施の形態に係るCO濃度推定方法によれば、周期的に取得される給湯装置100の排気流量Q及び排気のCO濃度検出値COx(t)を用いて、当該排気が排出された室内の雰囲気中のCO濃度推定値CO*(t)を、実際のCO濃度実測値COa(t)の挙動と近似させて高精度に求めることができる。
【0054】
特に、式(2)を用いた本実施の形態のCO濃度推定方法によれば、間欠燃焼の適用時を含んで、排気流量Q及びCO濃度検出値COx(t)が一定でない場合にも、高精度にCO濃度推定値CO*(t)が算出できる。更に、燃焼停止後にCO濃度が低下する現象についても、燃焼停止に応じて低下したCO濃度検出値COx(t)を反映して、高精度にCO濃度推定値CO*(t)を算出することができる。
【0055】
(CO濃度推定値を用いた燃焼装置の制御)
次に、上述のCO濃度推定値を用いた給湯装置100に代表される燃焼装置の制御、具体的には、不完全燃焼状態の継続を防止するための安全制御について、
図6~
図9のフローチャートを用いて説明する。
【0056】
図6には、安全制御の第1の例として、CO濃度推定値を用いた燃焼禁止制御が示される。
図6に示された制御処理は、制御部30によって繰り返し実行される。
【0057】
図6に示される様に、制御部30は、S100により、
図4に示されたCO濃度推定演算を実行する。これにより、CO濃度検出値COx(t)の取得毎(例えば、Ts経過毎)に、CO濃度推定値CO*(t)が更新される。従って、
図6の制御処理は、Tsの経過毎に実行することができる。尚、上述の様に、
図4の制御処理については、給湯装置100(燃焼装置)の運転スイッチのオンオフに依らず繰り返し実行することが可能であるので、
図6において、S100の処理が実行される毎に、
図4のS150で算出された、最新のCO濃度推定値CO*(t)が取得される。
【0058】
制御部30は、S210では、燃焼禁止フラグFL=0であるか否かを確認する。燃焼禁止フラグFLは、燃焼禁止中にはFL=1に設定される一方で、燃焼が許可されている(禁止されていない)期間にはFL=0に設定される。燃焼禁止フラグFLのデフォルト値は0である。
【0059】
制御部30は、FL=0の場合(S210のYES判定時)、即ち、燃焼が許可されている場合には、S220により、S100で得られたCO濃度推定値CO*(t)を、予め定められた判定値C1と比較する。例えば、判定値C1は、上述の300ppmに対応して設定される。
【0060】
制御部30は、FL=0の場合に、CO濃度推定値CO*(t)が判定値C1よりも高いとき(S220のYES判定時)には、S250により、バーナ10の燃焼を禁止するとともに、S260により、燃焼禁止フラグFL=1に設定する。FL=1のとき(燃焼禁止時)には、制御部30からの指令に応じた電磁弁(図示せず)の閉止等によって、バーナ10への燃料供給経路が遮断される。
【0061】
一方で、制御部30は、FL=0の場合に、CO濃度推定値CO*(t)が判定値C1以下のとき(S220のNO判定時)には、S230により、バーナ10の燃焼を許可するとともに、S240により、燃焼禁止フラグFL=0に設定する。FL=0のとき(念表許可時)には、上記電磁弁は開放されるので、要求熱量に応じた燃料をバーナ10へ供給することができる。
【0062】
一旦、燃焼が禁止されると、以降の周期では、FL=1に設定されているため、S210がNO判定とされる。従って、制御部30は、S270により、S100で得られたCO濃度推定値CO*(t)を、予め定められた判定値C2と比較する。判定値C2は、燃焼の禁止及び解除が頻繁に切り替えられるハンチングを防止するために、判定値C1よりも低く設定される。
【0063】
制御部30は、FL=1の場合に、CO濃度推定値CO*(t)が判定値C2以上のとき(S270のNO判定時)には、S250に処理を進めて、燃焼禁止を継続するとともに、S260により、燃焼禁止フラグFL=1に設定する。
【0064】
一方で、制御部30は、FL=1の場合に、CO濃度推定値CO*(t)が判定値C2より低いとき(S270のYES判定時)には、S230に処理を進めて、燃焼禁止を解除して、燃焼を許可するとともに、S240により、燃焼禁止フラグFL=0に設定する。
【0065】
この様に、本実施の形態に係るCO濃度推定方法で求められたCO濃度推定値を用いて、給湯装置100(燃焼装置)での燃焼の禁止及び許可を制御することができる。特に、本実施の形態に係るCO濃度推定方法によれば、
図5で説明した様に、燃焼停止後、即ち、燃焼が禁止された期間でのCO濃度の低下を精度よく推定できるので、燃焼禁止後の解除タイミングを適切に設定できる。これにより、CO濃度が十分に低下していないのに燃焼禁止が解除されること、及び、過度に長期間に亘って燃焼を禁止することを防止することができる。
【0066】
従って、
図6に示された制御処理は、少なくとも給湯装置100の作動中(運転スイッチのオン時)に周期的に実行されるとともに、一旦燃焼が禁止された後においても、燃焼禁止が解除されるまで(燃焼禁止フラグFLが1から0に復帰するまで)は、運転スイッチがオフされても継続的に実行されることが好ましい。
【0067】
図7には、安全制御の第2の例として、
図6で説明した燃焼禁止制御と連動してユーザガイダンスを出力する制御が示される。
図7に示された制御処理は、
図6の制御処理と併せて、制御部30によって実行することができる。
【0068】
図7に示される様に、制御部30は、S310により、今回周期の燃焼禁止フラグFL=1であるか否かを確認するともに、S320により、前回周期での燃焼禁止フラグFL=1であるか否かを確認する。今回の制御周期において、燃焼禁止フラグFLが0から1に変化したときには、S310及びS320の両方がYES判定とされるので、制御部30は、S330により、ユーザガイダンスを出力する。S330では、例えば、リモコン110の表示部111及び/又はスピーカ114を用いて、ユーザに対して換気を促すメッセージを出力することができる。即ち、表示部111及び/又はスピーカ114によって、「報知部」の一実施例を構成することができる。
【0069】
一方で、S310及びS320のいずれかがNO判定とされると、制御部30は、S330の処理をスキップする。従って、燃焼禁止フラグFLが0から1に変化したタイミング以外では、上述のユーザガイダンスは出力されない。或いは、燃焼禁止フラグFLが0から1に変化したタイミングから、予め定められた時間(周期数)が経過するまでは、S310及びS320の両方をYES判定として、ユーザガイダンスの出力を継続するような変形例とすることも可能である。
【0070】
更に、制御部30は、S340では、現在の燃焼禁止フラグFLの値を、S320で用いられる、前回周期での燃焼禁止フラグFLの値を示す変数に格納する。
【0071】
この様に、本実施の形態で求められたCO濃度推定値を用いた、給湯装置100(燃焼装置)での燃焼の禁止及び許可を制御に加えて、CO濃度の上昇時には、ユーザに対して換気を促すガイダンスを自動的に出力することができる。
【0072】
図8には、安全制御の第3の例として、CO濃度推定値を用いたポストパージ制御が示される。
図8に示された制御処理は、給湯装置100の作動中(運転スイッチのオン時)に周期的に実行される。
【0073】
図8に示される様に、制御部30は、
図6と同様のS100により、
図4に示されたCO濃度推定演算を実行して、最新のCO濃度推定値CO*(t)を取得する。即ち、
図8の制御処理についても、Tsの経過毎に実行することができる。
【0074】
制御部30は、S410では、今回の制御処理の実行タイミングが、燃焼停止タイミングに該当するか否かを確認する。燃焼停止タイミングに該当する場合(S410のYES判定時)には、ポストパージの要否を判定するためのS420~S440の処理が実行される。一方で、燃焼停止タイミング以外では、S420~S440の処理はスキップされる。
【0075】
制御部30は、S420では、S100で得られたCO濃度推定値CO*(t)を、予め定められた判定値C3と比較する。制御部30は、燃焼停止タイミングにおけるCO濃度推定値CO*(t)が判定値C3よりも高いとき(S420のYES判定時)には、S430により、燃焼用空気の供給は不要になった燃焼停止後にも送風ファン11の作動を継続するポストパージを実行する。これにより、燃焼停止タイミング(即ち、現時点)から所定時間Tpが経過するまでの間、送風ファン11の作動指示が生成される。判定値C3は、判定値C1,C2よりも小さい。
【0076】
一方で、制御部30は、燃焼停止タイミングにおけるCO濃度推定値CO*(t)が判定値C3以下のとき(S420のNO判定時)には、S430により、ポストパージが不要と判断する。これにより、燃焼停止に同期して、送風ファン11は停止される。
【0077】
この様に、本実施の形態に係るCO濃度推定方法で求められたCO濃度推定値を用いて、給湯装置100(燃焼装置)での燃焼停止時におけるポストパージの要否を正確に判断することができる。
【0078】
図9には、安全制御の第4の例として、CO濃度推定値を用いたポストパージ制御の変形例が示される。
図9に示された制御処理は、少なくとも給湯装置100の作動中(運転スイッチのオン時)に周期的に実行されるとともに、ポストパージの実行中には、運転スイッチがオフされていても周期的に実行される。
【0079】
図9に示される様に、制御部30は、
図6と同様のS100により、
図4に示されたCO濃度推定演算を実行して、最新のCO濃度推定値CO*(t)を取得する。従って、
図9の制御処理についても、Tsの経過毎に実行することができる。
【0080】
制御部30は、S510では、燃焼停止中であるか否かを判定する。燃焼停止中(S510のYES判定時)には、制御部30は、S520~S580により、S100で取得したCO濃度推定値CO*(t)に基づいて、送風ファン11の作動及び停止、即ち、ポストパージを制御する。一方で、バーナ10での燃焼中には、以下のS520~S580の処理はスキップされる。
【0081】
制御部30は、S520では、ポストパージフラグFLp=0であるか否かを確認する。ポストパージフラグFLpは、ポストパージ中、即ち、送風ファン11の作動期間にはFLp=1に設定される。一方で、ポストパージの非実行時、即ち、送風ファン11の作動指令が生成されていない場合には、FLp=0に設定される。ポストパージフラグFLpのデフォルト値は0である。
【0082】
制御部30は、FLp=0の場合(S520のYES判定時)、即ち、ポストパージが実行されていない場合には、S530により、S100で得られたCO濃度推定値CO*(t)を、
図8のS420と同様の判定値C3と比較する。
【0083】
制御部30は、FLp=0の場合に、CO濃度推定値CO*(t)が判定値C3よりも高いとき(S530のYES判定時)には、S560により、ポストパージのために送風ファン11を作動させるとともに、S570により、ポストパージフラグFLp=1に設定する。S560では、送風ファン11の回転数指令値が設定されるが、当該回転数指令値は、CO濃度推定値CO*(t)に応じて変化させることも可能である。具体的には、CO濃度推定値CO*(t)が高い程、回転数指令値が高くなる様に、可変設定を行うことができる。
【0084】
一方で、制御部30は、FLp=0の場合に、CO濃度推定値CO*(t)が判定値C3以下のとき(S530のNO判定時)には、S540により、送風ファン11を停止して、ポストパージを非実行とする。更に、S550により、ポストパージフラグFLp=1に維持される。
【0085】
これにより、燃焼停止タイミングでは、CO濃度推定値CO*(t)及び判定値C3の比較に基づいて、
図8と同様に、ポストパージの実行及び非実行が制御される。
【0086】
ポストパージの実行中には、FLp=1に設定されているため、S520がNO判定とされる。従って、制御部30は、S580により、S100で得られたCO濃度推定値CO*(t)を、予め定められた判定値C4と比較する。判定値C4は、ポストパージの終了判定用であり、判定値C3よりも低く設定される。
【0087】
制御部30は、FLp=1の場合に、CO濃度推定値CO*(t)が判定値C4以上のとき(S580のNO判定時)には、S560に処理を進めて、送風ファン11の作動、即ち、ポストパージを継続するとともに、S260により、ポストパージフラグFLp=1に維持する。
【0088】
一方で、制御部30は、FLp=1の場合に、CO濃度推定値CO*(t)が判定値C4より低いとき(S580のYES判定時)には、S540に処理を進めて、送風ファン11の停止により、ポストパージを終了する。更に、S550により、ポストパージフラグFLp=0に設定される。
【0089】
この様に、本実施の形態に係るCO濃度推定方法で求められたCO濃度推定値を用いて、給湯装置100(燃焼装置)での燃焼停止後のポストパージの要否、及び、終了タイミングを制御することができる。特に、
図5で説明した様に、燃焼停止後、即ち、燃焼が禁止された期間でのCO濃度の低下を精度よく推定できるCO濃度推定値を用いることにより、ポストパージの終了タイミングを適切に設定できる。これにより、ポストパージが過度に長期間継続されることで、消費エネルギが増加することを防止できる。
【0090】
尚、本実施の形態では、燃焼装置として
図1の給湯装置100を例示したが、排気中のCO濃度検出値及び排気流量が取得できる限り、給湯装置の構成は任意である。又、給湯装置以外の燃焼装置の排気に対して、燃焼される燃料を限定することなく、本実施の形態で説明したCO濃度推定方法を適用することが可能である。
【0091】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0092】
10 バーナ、11 送風ファン、12 熱交換器、15 バイパス弁、20 COセンサ、30 制御部、100 給湯装置、110 リモコン、111 表示部、112 運転スイッチ、113 操作部、114 スピーカ、200 室内空間、C1~C4 判定値、CO* CO濃度推定値、COa CO濃度実測値、COx CO濃度検出値、FL 燃焼禁止フラグ、FLp ポストパージフラグ、Q 排気流量、Ts 周期時間長(CO濃度検出)。