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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】連結式給湯システム
(51)【国際特許分類】
   F24H 15/355 20220101AFI20240815BHJP
   F24H 1/10 20220101ALI20240815BHJP
   F24H 15/104 20220101ALI20240815BHJP
   F24H 15/335 20220101ALI20240815BHJP
   F24H 15/40 20220101ALI20240815BHJP
【FI】
F24H15/355
F24H1/10 Z
F24H15/104
F24H15/335
F24H15/40
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021008724
(22)【出願日】2021-01-22
(65)【公開番号】P2022112779
(43)【公開日】2022-08-03
【審査請求日】2023-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】奥村 和晃
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-016409(JP,A)
【文献】特開2020-052709(JP,A)
【文献】特開2007-093070(JP,A)
【文献】特開2016-023843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H1/10-1/16,15/00-15/493
F22B35/00-35/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列接続された複数の給湯装置と、要求される給湯能力に応じて前記複数の給湯装置のうちの使用台数を変更して給湯運転を制御する制御手段を有し、前記制御手段が、前記給湯運転の開始時に最初に使用する1台のメイン給湯装置と、前記メイン給湯装置の給湯能力が不足する場合に使用するサブ給湯装置を設定し、且つ前記複数の給湯装置間で前記メイン給湯装置を順次ローテーション設定することによって前記複数の給湯装置の累積負荷を平準化する平準化制御を行う連結式給湯システムにおいて、
前記制御手段は、前記複数の給湯装置の複数の部品について故障予兆の有無を夫々判定し、前記複数の給湯装置のうちの一部の給湯装置の部品が故障予兆有りと判定された故障予兆部品である場合に、前記平準化制御における前記メイン給湯装置として使用するメイン使用時間であって、前記故障予兆部品を有する給湯装置の前記メイン使用時間を増加させる故障予兆対応モードを備えたことを特徴とする連結式給湯システム。
【請求項2】
前記故障予兆対応モードは、前記一部の給湯装置が複数の給湯装置である場合には、前記一部の給湯装置のうち、算出される部品余命が最も短い前記故障予兆部品を有する給湯装置の前記メイン使用時間を増加させることを特徴とする請求項1に記載の連結式給湯システム。
【請求項3】
前記故障予兆対応モードは、前記一部の給湯装置が複数の給湯装置である場合には、前記一部の給湯装置のうち、予め設定された部品重要度が最も高い故障予兆部品を有する給湯装置の前記メイン使用時間を増加させることを特徴とする請求項1に記載の連結式給湯システム。
【請求項4】
前記複数の給湯装置に湯水を循環供給可能なように並列接続された複数のポンプを備え、
前記制御手段は、前記複数のポンプのうちの使用するポンプを順次ローテーションさせることによって前記複数のポンプの累積負荷を平準化するポンプ平準化制御を行い、前記複数のポンプについてポンプ故障予兆の有無を判定して前記ポンプ故障予兆が有る場合には、前記ポンプ平準化制御におけるポンプの使用時間を前記ポンプ故障予兆が無いポンプよりも増加させるポンプ故障予兆対応モードを備えたことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の連結式給湯システム。
【請求項5】
前記制御手段は、外部通信網を介して通信可能に接続された管理サーバであることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の連結式給湯システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の給湯装置を並列に接続して構成された連結式給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の給湯装置を並列に接続して構成された連結式給湯システムが広く利用されている。この連結式給湯システムは、複数の給湯装置の中から予め1台のメイン給湯装置を設定しておき、給湯開始時に最初にメイン給湯装置を使用して給湯する。そして、メイン給湯装置だけでは給湯能力が不足して対応できない場合には、メイン給湯装置以外のサブ給湯装置を不足する給湯能力に応じて使用して給湯する。
【0003】
給湯時にはメイン給湯装置が常に使用されるので、メイン給湯装置は、サブ給湯装置と比べて累積負荷が速く増加(消耗が速く進行)し、加熱能力の低下、故障等が発生し易くなる。このような事態を防ぐため、連結式給湯システムは、累積負荷を平準化するための制御を行っている。
【0004】
例えば特許文献1のように、他の加熱手段よりも使用実績が多い加熱手段の出力を低下させることによって、複数の加熱手段の累積負荷に相当する使用実績を平準化する給湯装置が知られている。また、特許文献2のように、メイン給湯装置としての使用時間が所定時間に達すると、次のメイン給湯装置を順次ローテーション設定することによって、複数の給湯装置の累積負荷を平準化する連結式給湯システムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-223745号公報
【文献】特開2020-16409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2のように複数の給湯装置の累積負荷を平準化すると、連結式給湯システムとしての耐用期間を長くすることが可能である。しかし、耐用期間の末期には何れの給湯装置も同程度に消耗しているので、同時期に複数の給湯装置が故障して修理が集中してしまい、1回の修理費用が高額になる虞がある。また、連結式給湯システムは、複数の給湯装置を使用することによって給湯できなくなる事態を防止しているが、累積負荷の平準化によって、複数の給湯装置が同時期に故障して給湯できなくなる虞がある。
【0007】
本発明の目的は、複数の給湯装置の故障発生時期を重ならないようにすることができる連結式給湯システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明の連結式給湯システムは、並列接続された複数の給湯装置と、要求される給湯能力に応じて前記複数の給湯装置のうちの使用台数を変更して給湯運転を制御する制御手段を有し、前記制御手段が、前記給湯運転の開始時に最初に使用する1台のメイン給湯装置と、前記メイン給湯装置の給湯能力が不足する場合に使用するサブ給湯装置を設定し、且つ前記複数の給湯装置間で前記メイン給湯装置を順次ローテーション設定することによって前記複数の給湯装置の累積負荷を平準化する平準化制御を行う連結式給湯システムにおいて、前記制御手段は、前記複数の給湯装置の複数の部品について故障予兆の有無を夫々判定し、前記複数の給湯装置のうちの一部の給湯装置の部品が故障予兆有りと判定された故障予兆部品である場合に、前記平準化制御における前記メイン給湯装置として使用するメイン使用時間であって、前記故障予兆部品を有する給湯装置の前記メイン使用時間を増加させる故障予兆対応モードを備えたことを特徴としている。
【0009】
上記構成によれば、制御手段がメイン給湯装置を順次ローテーション設定して複数の給湯装置の累積負荷を平準化することにより、連結式給湯システムの耐用期間を長期化している。この平準化制御において、故障予兆有りと判定された故障予兆部品を有する給湯装置について、メイン給湯装置として使用するメイン使用時間を増加する故障予兆対応モードを備えている。そして、この故障予兆対応モードによって、故障予兆部品を有する給湯装置の累積負荷が他の給湯装置よりも早く増加する。従って、連結式給湯システムは、故障予兆部品を有する給湯装置の故障発生時期を他の給湯装置の故障発生時期と重ならないようにすることができ、累積負荷の平準化によって発生し易くなる複数の給湯装置が同時期に故障する事態を防ぐことができる。
【0010】
請求項2の発明の連結式給湯システムは、請求項1の発明において、前記故障予兆対応モードは、前記一部の給湯装置が複数の給湯装置である場合には、前記一部の給湯装置のうち、算出される部品余命が最も短い前記故障予兆部品を有する給湯装置の前記メイン使用時間を増加させることを特徴としている。
上記構成によれば、複数の給湯装置が故障予兆部品を有する場合に、算出される部品余命が最短の故障予兆部品を有する給湯装置のメイン使用時間が増加する。これにより、複数の給湯装置において部品の故障予兆有りと判定された場合には、最も早期に故障発生が見込まれる部品余命が最短の故障予兆部品を有する給湯装置の累積負荷が、他の給湯装置よりも早く増加する。従って、部品余命が最短の故障予兆部品を有する給湯装置の故障発生時期を早めることができ、他の給湯装置の故障発生時期と重ならないようにすることができる。
【0011】
請求項3の発明の連結式給湯システムは、請求項1の発明において、前記故障予兆対応モードは、前記一部の給湯装置が複数の給湯装置である場合には、前記一部の給湯装置のうち、予め設定された部品重要度が最も高い故障予兆部品を有する給湯装置の前記メイン使用時間を増加させることを特徴としている。
上記構成によれば、複数の給湯装置が故障予兆部品を有する場合に、これらの故障予兆部品のうち、部品重要度が最も高い故障予兆部品を有する給湯装置のメイン使用時間が増加する。これにより、複数の給湯装置において部品の故障予兆有りと判定された場合には、そのうちの部品重要度が最も高い故障予兆部品を有する給湯装置の累積負荷が、他の給湯装置よりも早く増加する。従って、部品重要度が最も高い故障予兆部品を有する給湯装置の故障発生時期を早めることができ、他の給湯装置の故障発生時期と重ならないようにすることができる。
【0012】
請求項4の発明の連結式給湯システムは、請求項1~3の何れか1項の発明において、前記複数の給湯装置に湯水を循環供給可能なように並列接続された複数のポンプを備え、前記制御手段は、前記複数のポンプのうちの使用するポンプを順次ローテーションさせることによって前記複数のポンプの累積負荷を平準化するポンプ平準化制御を行い、前記複数のポンプについてポンプ故障予兆の有無を判定して前記ポンプ故障予兆が有る場合には、前記ポンプ平準化制御におけるポンプの使用時間を前記ポンプ故障予兆が無いポンプよりも増加させるポンプ故障予兆対応モードを備えたことを特徴としている。
上記構成によれば、給湯栓からすぐに温水を給湯できるように、複数の給湯装置への湯水の循環供給に使用されるポンプを順次ローテーションさせることによって、複数のポンプの累積負荷を平準化して、連結式給湯システムの耐用期間を長期化している。そして、このポンプ平準化制御におけるポンプ故障予兆が有るポンプの使用時間を増加させるポンプ故障予兆対応モードによって、ポンプ故障予兆が有るポンプの故障発生時期を早めることができ、他のポンプの故障発生時期と重ならないようにすることができる。
【0013】
請求項5の発明の連結式給湯システムは、請求項1~4の何れか1項の発明において、前記制御手段は、外部通信網を介して通信可能に接続された管理サーバであることを特徴としている。
上記構成によれば、複数の給湯装置による給湯運転の制御を管理サーバが行うので、連結式給湯システムの構成を簡素にすることができ、この連結式給湯システムの構成でも故障発生時期が重ならないように制御することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の連結式給湯システムによれば、複数の給湯装置の故障発生時期が重ならないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例に係る連結式給湯システムの構成を示す図である。
図2】給湯装置の構成を示す図である。
図3】実施例に係るメイン給湯装置の通常のローテーション設定例を示す図である。
図4】実施例に係る故障予兆対応モードを有する平準化制御のフローチャートである。
図5】駆動部品の故障予兆検知制御フローチャートである。
図6】温度センサの故障予兆検知制御フローチャートである。
図7】故障予兆対応モードのローテーション設定の1例を示す図である。
図8】故障予兆対応モードのローテーション設定の他の例を示す図である。
図9】故障予兆対応モードを有する平準化制御の他の例を示すフローチャートである。
図10】部品重要度の設定例を示す図表である。
図11】ポンプの通常のローテーション設定例を示す図である。
図12】ポンプの故障予兆対応モードのローテーション設定例を示す図である。
図13】連結式給湯システムの他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例
【0017】
最初に、連結式給湯システムの構成について説明する。
図1に示すように、給湯先として例えば給湯栓1a~1cの他にも図示外の複数の給湯栓を有する施設において、どの給湯栓からでもすぐに給湯可能なように、温水を循環させる循環通路2が敷設されている。この循環通路2に温水を供給する給湯器には、小流量の給湯から大流量の給湯まで対応可能であること、故障により給湯できない事態が発生しないことが要求されるので、給湯器として複数の給湯装置を有する連結式給湯システム10が循環通路2に接続されている。給湯栓から給湯された場合には、矢印Wで示すように上水が循環通路2に供給される。
【0018】
連結式給湯システム10は、並列接続された複数の給湯装置WH1~WH4と、複数の給湯装置WH1~WH4に湯水を循環供給可能なように循環通路2に並列接続された複数のポンプP1,P2と、使用するポンプP1,P2に応じて流路を切り替える切替弁11と、これらを駆動して給湯運転を制御する制御手段としてシステムコントローラ12を有する。尚、連結式給湯システム10の給湯装置の台数、ポンプの台数は、例えば必要な給湯能力等によって適宜設定可能である。
【0019】
システムコントローラ12には、各種設定等を行うための操作端末13と通信装置14が通信可能に接続され、システムコントローラ12が通信装置14を介して外部通信網3(例えばインターネット)に接続されている。外部通信網3には、例えば連結式給湯システム10から受信する運転情報に基づいて保守サービスの提供を管理する管理サーバ4が接続されている。管理サーバ4は、発生した不具合に迅速に対応可能なように、また発生する不具合を未然に防止可能なように、連結式給湯システム10の保守サービス提供者、製造者によって提供されたものである。
【0020】
次に、給湯装置WH1~WH4について説明するが、給湯装置WH1~WH4は同一構成なので、給湯装置WH1について説明し、給湯装置WH2~WH4の説明を省略する。
図2に示すように、給湯装置WH1は、燃料ガスを燃焼させて発生した熱を利用して湯水を加熱する燃焼式給湯器である。この給湯装置WH1は、燃料ガスを燃焼させるバーナ21と、燃焼用の空気を供給する燃焼ファン22と、燃焼により発生した燃焼ガスとの熱交換により湯水を加熱する熱交換器23を有する。
【0021】
熱交換器23は、燃焼ガスの顕熱を回収するための第1熱交換器23aと、顕熱が回収された燃焼ガスの潜熱を回収するための第2熱交換器23bを備え、第2熱交換器23bと第1熱交換器23aとが接続されている。第2熱交換器23bには、循環通路2から熱交換器23に上水又は循環する湯水を供給するための給水通路24が接続されている。第1熱交換器23aには、熱交換器23で加熱された湯水の出湯通路25が接続されている。第2熱交換器23bでは、燃焼ガスに含まれる水分が凝縮した酸性の凝縮水が発生するので、この凝縮水を集めるドレンパン23cと、ドレンパン23cで集めた凝縮水を中和する中和剤を収容した中和器26を備えている。中和器26は、水位H以上となるオーバーフローを検知する水位検知手段26aを有する。
【0022】
給水通路24は、開閉電磁弁27と、熱交換器23で加熱される前の上水又は湯水の温度を検知する給水温度センサ28と、熱交換器23に供給される上水又は湯水の流量を検知する給水流量センサ29を備えている。開閉電磁弁27の下流側で、給水通路24からバイパス通路30が分岐されて出湯通路25に接続されている。バイパス通路30は、給湯の温度調整のために出湯通路25の加熱された湯水に混合する加熱される前の上水又は湯水の流量を調整するための流量調整弁31を有する。
【0023】
出湯通路25は、熱交換器23で加熱された湯水の温度を検知する出湯温度センサ32と、温度調整後の湯水の温度を検知する給湯温度センサ33を備えている。また、給湯装置WH1は、燃焼ファン22の駆動制御、開閉電磁弁27と流量調整弁31の駆動制御、燃焼ファン22の駆動制御、バーナ21の燃焼制御を行う制御部34を備えている。
【0024】
制御部34は、給水温度センサ28、給水流量センサ29、出湯温度センサ32、給湯温度センサ33の検知信号を受信する。この制御部34はシステムコントローラ12に通信可能に接続され、システムコントローラ12の指令に基づいて開閉電磁弁27を開閉する。開閉電磁弁27が開状態のときに給水流量センサ29によって所定の流量以上の流量を検知すると燃焼を開始し、流量調整弁31を調整して温度調整した湯水を給湯する給湯運転を行う。
【0025】
給湯運転では、使用する給湯装置の駆動する部品は、設定された目標値(例えば燃焼ファン22の目標回転数等)となるように駆動される。尚、給湯運転には、例えば給湯栓1a~1cから給湯する場合だけでなく、ポンプP1又はポンプP2を駆動して循環通路2において循環する温水を再加熱する場合が含まれる。
【0026】
システムコントローラ12は、予め給湯装置WH1~WH4の中から1台のメイン給湯装置を設定し、残りをサブ給湯装置に設定する。例えば給湯装置WH1がメイン給湯装置に設定されている場合に、給湯装置WH1の開閉電磁弁27を開弁させ、サブ給湯装置に設定されている給湯装置WH2~WH4の開閉電磁弁27を閉弁させる。例えば給湯栓1aが開栓された場合、又は例えばポンプP1を駆動した場合に、メイン給湯装置に設定されている給湯装置WH1が、給水流量センサ29により所定の流量以上の流量を検知すると給湯運転を開始する。
【0027】
次に、システムコントローラ12による平準化制御について説明する。
システムコントローラ12は、図3に示すように、メイン給湯装置を順次ローテーション設定することにより、複数の給湯装置WH1~WH4の累積負荷を平準化する平準化制御を行う。
【0028】
例えばメイン給湯装置に設定されている給湯装置WH1のメイン給湯装置としての使用時間(メイン使用時間)が、予め設定された所定時間(例えば8時間)に達した場合には、給湯装置WH2を次のメイン給湯装置に設定する。そして、メイン給湯装置として給湯装置WH2使用して、給湯装置WH2のメイン使用時間の計時を開始すると共に、前のメイン給湯装置に設定されていた給湯装置WH1のメイン使用時間をゼロにリセットする。
【0029】
メイン給湯装置の燃焼時間が所定時間に達する度に、複数の給湯装置WH1~WH4の間でメイン給湯装置を順次ローテーション設定する。これにより給湯装置WH1~WH4のメイン使用時間が平準化されるので、各給湯装置WH1~WH4の累積負荷が平準化される。
【0030】
給湯運転において、複数の給湯栓1a~1c等が同時に使用されてメイン給湯装置だけでは加熱能力が不足する場合には、不足分を補うことができるようにサブ給湯装置を順次作動させて、必要な加熱能力に応じた使用台数に変更する。このとき燃焼させるサブ給湯装置の順番は、例えばメイン給湯装置に設定する順番に準じて前回のメイン給湯装置が最後に作動させるサブ給湯装置となるように設定されている。
【0031】
平準化制御によって、燃焼が特定の給湯装置に集中することがなくなり、連結式給湯システム10の耐用期間が長期化される。一方、複数の給湯装置WH1~WH4の累積負荷が平準化されるので、耐用年数の末期には複数の給湯装置WH1~WH4の一部に同時期に故障が発生することがある。
【0032】
故障が発生すると、管理サーバ4に故障発生が通知され、修理日程の調整後、保守サービス提供者から修理作業員が派遣される。同時期に複数の給湯装置が故障した場合には1回の修理費用が高額になってユーザの負担が大きくなる。そのため、システムコントローラ12は、各給湯装置WH1~WH4が夫々有する複数の部品について故障予兆の有無を判定し、故障予兆有りと判定された故障予兆部品を有する給湯装置をメイン給湯装置として使用する機会を増加させるように故障予兆対応モードの平準化制御を行う。この故障予兆対応モードを有する平準化制御について、図4のフローチャートに基づいて、図5図6を参照しながら説明する。図中のSi(i=1,2,・・・)はステップを表す。
【0033】
例えば給湯装置WH1がメイン給湯装置に設定されている場合に、S1において、設定されたローテーション時間が経過したか否か判定する。ローテーション時間は、メイン給湯装置として使用する時間であり、故障予兆部品が無い給湯装置については予め例えば8時間に設定されている。S1の判定がNoの場合はローテーション時間が経過するまで、即ち給湯装置WH1のメイン使用時間がローテーション時間になるまでS1の判定を繰り返す。S1の判定がYesの場合はS2に進む。
【0034】
S2において、複数の給湯装置WH1~WH4が有する複数の部品のうち、故障予兆有りと判定された故障予兆部品が有るか否か判定する。部品の故障予兆有無の判定は、システムコントローラ12によって給湯運転中又は待機中に行われ、この判定結果をS2で利用する。
【0035】
ここで、部品の故障予兆有無の判定について説明する。給湯運転に使用される給湯装置の駆動部品については、例えば図5のように、給湯運転のために設定した目標値となるように駆動し(S11)、この目標値に対する実績値を取得する(S12)。そして、取得した実績値が、予め設定された正常範囲内であり(S13でYesの場合)、且つ予め設定された故障予兆基準に到達した場合(S14でNoの場合)に、この部品が故障予兆部品と判定する(S16)。
【0036】
取得した実績値が、予め設定された正常範囲内であり(S13でYesの場合)、且つ故障予兆基準に未到達の場合(S14でYesの場合)は、故障予兆無しと判定する(S15)。取得した実績値が、予め設定された正常範囲を超えた場合(S13でNoの場合)には、故障発生と判定し、この部品を有する給湯装置の使用を禁止する。各部品の判定結果は管理サーバ4に送信される。
【0037】
また、給水温度センサ28、出湯温度センサ32、給湯温度センサ33については、給湯運転中には故障予兆の有無を検知することが困難である。それ故、待機中にこれらの温度センサが同じ温度を測定可能な状態にして、例えば図6のように、開閉電磁弁27を開弁した状態で燃焼させずにポンプP1又はポンプP2を駆動して(S21)、循環させる湯水の検知温度を夫々取得する(S22)。これらの互いの差温が予め設定された正常範囲内であり(S23でYesの場合)、且つ予め設定された故障予兆基準に到達した場合(S24でNoの場合)に、故障予兆基準に到達した組み合わせに共通する温度センサが故障予兆部品と判定される(S26)。複数の給湯装置WH1~WH4の間で、検知温度を比較するようにしてもよい。
【0038】
差温が予め設定された正常範囲内であり(S23でYesの場合)、且つ予め設定された故障予兆基準に未到達の場合(S24でYesの場合)は、故障予兆無しと判定する(S25)。差温が予め設定された正常範囲を超えた場合(S23でNoの場合)には、故障発生と判定し、この温度センサを有する給湯装置の使用を禁止する。各温度センサの判定結果は管理サーバ4に送信される。
【0039】
中和器26については、例えば給湯運転中に水位検知手段26aがオーバーフローを一時的に検知した後、給湯運転を停止しなくてもオーバーフローを検知しなくなった場合に、閉塞の兆候とみなされて故障予兆部品と判定される。また、熱交換器23については例えば算出される熱効率に基づいて、バーナ21については、例えば燃焼量を変化させたときの応答性に基づいて、故障発生、故障予兆有無が判定される。これらの判定結果は管理サーバ4に送信される。
【0040】
図4のS2の判定がNoの場合はS3に進み、S3において通常(通常モード)の平準化制御として、例えば次のメイン給湯装置のローテーション時間を所定時間(8時間)に設定してリターンする。
【0041】
一方、S2の判定がYesの場合はS4に進み、S4において故障予兆部品のうち、算出される部品余命が最短の故障予兆部品を有する給湯装置を特定してS5に進む。部品余命は、例えば予め設定されている部品の耐用時間から使用された時間を引き算して算出することができ、消耗スピード等を考慮して算出してもよい。尚、故障予兆部品が1つの場合には、部品余命の算出を省略してもよい。
【0042】
S5において、故障予兆対応モードの平準化制御を行ってリターンする。故障予兆対応モードの平準化制御では、メイン給湯装置のローテーション設定が一巡する間に、S4で特定した給湯装置のメイン給湯装置としての使用機会を増加させてメイン使用時間を増加させる。
【0043】
例えば、給湯装置WH1が最短の部品余命の故障予兆部品を有する場合には、図7のように給湯装置WH1が次にメイン給湯装置に設定される際に通常の8時間よりも長い12時間のローテーション時間を設定する。これにより、メイン給湯装置のローテーション設定が一巡する間の給湯装置WH1のメイン使用時間が増加する。
【0044】
また、図8に示すように、メイン給湯装置のローテーション設定が一巡する間の給湯装置WH1をメイン給湯装置に設定する回数を増加させることによって、メイン使用時間を増加させることもできる。図7図8を組み合わせた態様でメイン使用時間を増加させることも可能である。
【0045】
上記故障予兆対応モードの平準化制御によって、部品余命が最短であるため故障時期が最も早いと想定される故障予兆部品を有する給湯装置のメイン使用時間を増加させて、故障時期を早めることができる。そして、部品余命が最短の故障予兆部品を有する給湯装置の故障時期を早めるので、他の給湯装置の故障時期と重ならないようにすることができる。
【0046】
システムコントローラ12は平準化制御において、図6のS4で算出される部品余命が最短の故障予兆部品を有する給湯装置を特定する代わりに、図9のS34のように、予め設定された部品重要度が最も高い故障予兆部品を有する給湯装置を特定するように構成することもできる。部品重要度は、例えば図10のように、安全を優先すると共に燃焼制御に大きく影響する部品について高く、制御上代替可能な手段がある部品について低く設定されている。
【0047】
例えば、給水温度センサ28が検知する給水温度を使用せずに、給湯温度センサ33の検知温度が給湯設定温度となるように流量調整弁31のフィードバック制御可能である。また、熱交換器23は、例えば上水に含まれるミネラル成分の付着によって熱交換機能が低下しても、不足する給湯能力を他の給湯装置によって補うことが可能である。
【0048】
一方、燃焼ファン22は、送風能力が低下すると不完全燃焼となる虞があり、給湯温度センサ33の故障は火傷に至るような高温給湯の虞があるため、部品重要度が高く設定されている。部品重要度が同じ複数の故障予兆部品が有る場合には、算出される部品余命が最も短い故障予兆部品を有する給湯装置を特定してもよく、故障予兆部品を有する複数の給湯装置を特定してもよい。
【0049】
上記複数の給湯装置WH1~WH4の平準化制御と同様に、システムコントローラ12は、図11に示すように、複数のポンプP1,P2のうち、使用するポンプを使用時間毎(例えば8時間毎)に順次ローテーションすることによって、ポンプ累積負荷を平準化するポンプ平準化制御を行う。このポンプ平準化制御では、例えば図12に示すようにポンプ故障予兆が有るポンプP1の使用時間を通常よりも長い例えば12時間にすることにより、ポンプP1の故障発生時期を早めて、他のポンプP2の故障時期と重ならないようにすることができる。ポンプ故障予兆の有無は、システムコントローラ12が、ポンプ駆動時の例えば回転数等の設定値と、これに対する実績値に基づいて判定する。
【0050】
上記平準化制御、ポンプ平準化制御を行う制御手段は、管理サーバ4とすることもできる。これにより、図1の連結式給湯システム10だけでなく、図13のようにシステムコントローラ12を省略して簡素に構成された連結式給湯システム10Aにおいても、上記と同様の平準化制御、ポンプ平準化制御を行うことができる。尚、連結式給湯システム10Aは、複数の給湯装置WH1~WH4の各制御部34が通信装置14を介して外部通信網3に接続された管理サーバ4と通信可能に構成されている。
【0051】
上記実施例に係る連結式給湯システム10,10Aの作用、効果について説明する。
連結式給湯システム10の制御手段であるシステムコントローラ12は、メイン給湯装置を順次ローテーション設定して複数の給湯装置WH1~WH4の累積負荷を平準化することにより、連結式給湯システム10の耐用期間を長期化している。そして、この平準化制御において、メイン給湯装置として使用するメイン使用時間が、故障予兆有りと判定された故障予兆部品を有する給湯装置について増加される故障予兆対応モードを備えている。この故障予兆対応モードによって、故障予兆部品を有する給湯装置の累積負荷が他の給湯装置よりも早く増加する。従って、故障予兆部品を有する給湯装置の故障発生時期が他の給湯装置の故障発生時期と重ならないようにすることができ、累積負荷の平準化によって発生し易くなる複数の給湯装置が同時期に故障する事態を防ぐことができる。
【0052】
また、故障予兆対応モードでは、複数の給湯装置が故障予兆部品を有する場合に、算出される部品余命が最短の故障予兆部品を有する給湯装置のメイン使用時間を増加させる。これにより、複数の給湯装置において部品の故障予兆有りと判定された場合には、最も早期に故障発生が見込まれる部品余命が最短の故障予兆部品を有する給湯装置の累積負荷が、他の給湯装置よりも早く増加する。従って、部品余命が最短の故障予兆部品を有する給湯装置の故障発生時期を早めることができ、他の給湯装置の故障発生時期と重ならないようにすることができる。
【0053】
複数の給湯装置が故障予兆部品を有する場合には、これらの故障予兆部品のうち、予め設定された部品重要度が最も高い部品を有する給湯装置のメイン使用時間を増加させることもできる。これにより、複数の給湯装置において部品の故障予兆有りと判定された場合には、そのうちの部品重要度が最も高い故障予兆部品を有する給湯装置の累積負荷が、他の給湯装置よりも早く増加する。従って、部品重要度が最も高い故障予兆部品を有する給湯装置の故障発生時期を早めることができ、他の給湯装置の故障発生時期と重ならないようにすることができる。
【0054】
給湯栓1a~1cからすぐに温水を給湯できるように、複数の給湯装置WH1~WH4への湯水の循環供給に使用するポンプP1,P2についても同様に、使用するポンプを順次ローテーションさせることによって、複数のポンプP1,P2のポンプ累積負荷を平準化して、連結式給湯システム10の耐用期間を長くしている。そして、このポンプ平準化制御におけるポンプ故障予兆が有るポンプの使用時間を増加させるポンプ故障予兆対応モードによって、このポンプ故障予兆が有るポンプの故障発生時期を早めることができ、他のポンプの故障発生時期と重ならないようにすることができる。
【0055】
システムコントローラ12を省略して簡素化された連結式給湯システム10Aでは、管理サーバ4を制御手段として利用することもできる。複数の給湯装置WH1~WH4による給湯運転の制御を管理サーバ4が行うので、連結式給湯システム10Aの構成を簡素にすることができ、この連結式給湯システム10Aの構成でも、複数の給湯装置WH1~WH4の故障発生時期、複数のポンプP1,P2の故障発生時期が重ならないようにすることができる。
【0056】
その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく上記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態を包含するものである。
【符号の説明】
【0057】
1a~1c :給湯栓
2 :循環通路
3 :外部通信網
4 :管理サーバ
10 :連結式給湯システム
11 :切替弁
12 :システムコントローラ
13 :操作端末
14 :通信装置
21 :バーナ
22 :燃焼ファン
23 :熱交換器
23a:第1熱交換器
23b:第2熱交換器
23c:ドレンパン
24 :給水通路
25 :出湯通路
26 :中和器
26a:水位検知手段
27 :開閉電磁弁
28 :給水温度センサ
29 :給水流量センサ
30 :バイパス通路
31 :流量調整弁
32 :出湯温度センサ
33 :給湯温度センサ
34 :制御部
WH1~WH4 :給湯装置
P1,P2 :ポンプ
図1
図2
図3
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図5
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図9
図10
図11
図12
図13